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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01M 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01M 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01M |
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管理番号 | 1372718 |
異議申立番号 | 異議2019-700904 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-11-14 |
確定日 | 2021-03-11 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6513893号発明「非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6513893号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3、5?10〕、〔4、11?15〕について訂正することを認める。 特許第6513893号の請求項1?2、4?15に係る特許を維持する。 特許第6513893号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件の特許第6513893号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?10に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)11月30日(優先権主張 2017年(平成29年)12月27日 4件)に国際出願され、平成31年4月19日にその特許権の設定登録がされ、令和1年5月15日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和1年11月14日に、本件特許の請求項1?10(全請求項)に係る特許に対して、特許異議申立人である松本征二(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、以降の本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。 令和 2年 2月 7日付け : 取消理由通知書 令和 2年 4月 3日 : 特許権者による訂正請求書及び意見書 の提出 令和 2年 7月 3日 : 申立人による意見書の提出 令和 2年 9月14日付け : 取消理由通知書(決定の予告) 令和 2年11月13日 : 特許権者による訂正請求書及び意見書 の提出 (以下、本訂正請求書を「本件訂正請 求書」といい、本訂正請求書による訂 正の請求を「本件訂正請求」という。 また、本件訂正請求により、令和2年 4月3日付け訂正請求書による訂正の 請求は、取り下げられたものとみなす (特許法第120条の5第7項)。) なお、本件訂正請求の後に、令和2年11月18日付け通知書で、申立人に意見があれば意見書を提出するように通知したが、申立人は意見書を提出していない。 第2 本件訂正請求について 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)?(10)のとおりである(下線は訂正箇所を示す)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する多孔性被膜を有する耐熱性多孔質層と、」と記載されているものを、「前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜を有し、下記の形態(1)及び形態(2)の少なくとも一方である耐熱性多孔質層と、」に訂正するとともに、請求項1の末尾に続けて、 「 形態(1):耐熱性多孔質層が、無機粒子を含有し、無機粒子が、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有すし無機粒子を含有しない多孔性被膜によって結着され且つ覆われてなる層である。 形態(2):耐熱性多孔質層が、多孔質基材上に形成された内層であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種並びに無機粒子を含有する内層と、この内層の外面を覆うように形成された多孔性被膜であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜とを備える。」に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2、5?10も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に 「・・・(前略)・・・ 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層と、 を備えた非水系二次電池用セパレータ。」と記載されているものを、 「・・・(前略)・・・ 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層と、を備え、 前記耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合が50質量%?90質量%である、非水系二次電池用セパレータ。」に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2、5?10も同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に 「・・・(前略)・・・ 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層と、を備え、 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との間の剥離強度が5N/m?75N/mである、非水系二次電池用セパレータ。」と記載されているものを、 「・・・(前略)・・・ 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層と、を備え、 前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含み、 前記接着層に含まれる前記第一の接着性樹脂粒子と前記第二の接着性樹脂粒子との質量比が前記第一の接着性樹脂粒子:前記第二の接着性樹脂粒子=50:50?90:10であり、 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との間の剥離強度が5N/m?75N/mである、非水系二次電池用セパレータ。」に訂正する。 請求項4の記載を引用する請求項6?10も同様に訂正する。なお、請求項4の記載を引用する請求項6?10は、以下の訂正事項6?10のとおり、請求項11?15として記載する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5?10において、請求項3及び請求項4を引用する記載を削除し、請求項3及び請求項4を引用しないものに訂正する。すなわち、下記ア?カのとおり訂正する。 ア 特許請求の範囲の請求項5に「前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含む、請求項1?請求項4のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。」と記載されているものを、「前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含む、請求項1又は請求項2に記載の非水系二次電池用セパレータ。」に訂正する。 イ 特許請求の範囲の請求項6に「前記非水系二次電池用セパレータのガーレ値と前記多孔質基材のガーレ値との差が20秒/100mL?300秒/100mLである、請求項1?請求項5のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。」と記載されているものを、「前記非水系二次電池用セパレータのガーレ値と前記多孔質基材のガーレ値との差が20秒/100mL?300秒/100mLである、請求項1、請求項2及び請求項5のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。」に訂正する。 ウ 特許請求の範囲の請求項7に「前記非水系二次電池用セパレータのMD方向の引張強度及びTD方向の引張強度の少なくとも一方が500kgf/cm^(2)?3000kgf/cm^(2)である、請求項1?請求項6のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。」と記載されているものを、「前記非水系二次電池用セパレータのMD方向の引張強度及びTD方向の引張強度の少なくとも一方が500kgf/cm^(2)?3000kgf/cm^(2)である、請求項1、請求項2、請求項5及び請求項6のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。」に訂正する。 エ 特許請求の範囲の請求項8に「前記接着層の重量が前記積層体の片面あたり0.2g/m^(2)?2.0g/m^(2)である、請求項1?請求項7のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。」と記載されているものを、「前記接着層の重量が前記積層体の片面あたり0.2g/m^(2)?2.0g/m^(2)である、請求項1、請求項2及び請求項5?請求項7のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。」に訂正する。 オ 特許請求の範囲の請求項9に「前記多孔質基材がポリプロピレンを含有する微多孔膜である、請求項1?請求項8のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。」と記載されているものを、「前記多孔質基材がポリプロピレンを含有する微多孔膜である、請求項1、請求項2及び請求項5?請求項8のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。」に訂正する。 カ 特許請求の範囲の請求項10に「正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項1?請求項9のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。」と記載されているものを、「正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項1、請求項2、請求項5?請求項9のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6のうち、請求項4を引用するものを、新たな請求項11として下記のとおり訂正する。 「【請求項11】 前記非水系二次電池用セパレータのガーレ値と前記多孔質基材のガーレ値との差が20秒/100mL?300秒/100mLである、請求項4に記載の非水系二次電池用セパレータ。」 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7のうち、請求項4及び6を引用するものを、新たな請求項12として下記のとおり訂正する。 「【請求項12】 前記非水系二次電池用セパレータのMD方向の引張強度及びTD方向の引張強度の少なくとも一方が500kgf/cm^(2)?3000kgf/cm^(2)である、請求項4又は請求項11に記載の非水系二次電池用セパレータ。」 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8のうち、請求項4、6及び7を引用するものを、新たな請求項13として下記のとおり訂正する。 「【請求項13】 前記接着層の重量が前記積層体の片面あたり0.2g/m^(2)?2.0g/m^(2)である、請求項4、請求項11及び請求項12のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。」 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9のうち、請求項4及び6?8を引用するものを、新たな請求項14として下記のとおり訂正する。 「【請求項14】 前記多孔質基材がポリプロピレンを含有する微多孔膜である、請求項4及び請求項11?請求項13のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。」 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10のうち、請求項4及び6?9を引用するものを、新たな請求項15として下記のとおり訂正する。 「【請求項15】 正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項4及び請求項11?請求項14のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。」 2 訂正の適否についての判断 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1に係る訂正は、請求項1に記載の「耐熱性多孔質層」について、「耐熱性多孔質層」が有する「多孔性皮膜」を「無機粒子を含有しない」ものに限定すると共に、「形態(1):耐熱性多孔質層が、無機粒子を含有し、無機粒子が、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜によって結着され且つ覆われてなる層である。」か「形態(2):耐熱性多孔質層が、多孔質基材上に形成された内層であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種並びに無機粒子を含有する内層と、この内層の外面を覆うように形成された多孔性被膜であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜とを備える。」のいずれかの形態であるものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加について 願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)及び図面には、以下の記載がある(下線は当審が付した。以下、同様)。 「 【0025】 第一のセパレータにおける耐熱性多孔質層は、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する多孔性被膜を有する。該多孔性被膜は、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミド以外の成分を含有していてもよい。耐熱性多孔質層の形態例として、例えば、下記の形態(a)?(d)が挙げられる。」 「 【0028】 形態(c):耐熱性多孔質層が、さらに無機粒子を含有しており、無機粒子が、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する多孔性被膜によって結着され且つ覆われてなる層である。 【0029】 形態(d):耐熱性多孔質層が、多孔質基材上に形成された内層であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種並びに無機粒子を含有する内層と、この内層の外面を覆うように形成された多孔性被膜であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する多孔性被膜とを備える。内層は、無機粒子が全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種により結着されており、多孔性被膜よりも径の大きな多孔質構造である。耐熱性多孔質層は全体として、いわゆるスキン-コア構造を呈する。」 「 【0030】 図1A、図1B、図2A、図2B、図3A及び図3Bに、第一のセパレータが備える耐熱性多孔質層の実施形態例の走査型電子顕微鏡画像(SEM画像)を示す。図1A、図1B、図2A、図2B、図3A及び図3Bに示す耐熱性多孔質層は、無機粒子をも含有する形態である。 【0031】 図1A及び図1Bに示す耐熱性多孔質層は、多孔性被膜が全芳香族ポリアミドを含有する形態である。図1Aは、耐熱性多孔質層の外面(多孔質基材から遠い方の面)のSEM画像であり、図1Bは、耐熱性多孔質層及び多孔質基材の断面のSEM画像である。多孔性被膜は、耐熱性多孔質層の外面をなす被膜であり、微細孔を有する緻密な被膜である。 【0032】 図2A及び図2Bに示す耐熱性多孔質層は、多孔性被膜がポリアミドイミドを含有する形態である。図2Aは、耐熱性多孔質層の外面(多孔質基材から遠い方の面)のSEM画像であり、図2Bは、耐熱性多孔質層及び多孔質基材の断面のSEM画像である。多孔性被膜は、耐熱性多孔質層の外面をなす被膜であり、微細孔を有する緻密な被膜である。 【0033】 図3A及び図3Bに示す耐熱性多孔質層は、多孔性被膜がポリイミドを含有する形態である。図3Aは、耐熱性多孔質層の外面(多孔質基材から遠い方の面)のSEM画像であり、図3Bは、耐熱性多孔質層及び多孔質基材の断面のSEM画像である。多孔性被膜は、耐熱性多孔質層の外面をなす被膜であり、微細孔を有する緻密な被膜である。」 「 【0066】 [第一のセパレータにおける耐熱性多孔質層] 第一のセパレータにおける耐熱性多孔質層は、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する多孔性被膜を有する。多孔性被膜は、多数の微細孔を有し、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった被膜である。多孔性被膜は、走査型電子顕微鏡により確認することができ、セパレータの断面を観察したり、耐熱性多孔質層の外面を面垂直方向から観察したりすれば、耐熱性多孔質層の外面を成す膜状に広がった樹脂部が観察され、当該樹脂部中に多数の空孔が形成されていることが観察できる。微細孔を有する緻密な多孔性被膜は、後述する湿式塗工法において、塗工液又は凝固液の組成を調整することにより多孔質基材上に形成できる。」 「【図1A】 」 「【図1B】 」 「【図2A】 」 「【図2B】 」 「【図3A】 」 「【図3B】 」 そして、訂正事項1における「多孔性皮膜」が「無機粒子を含有しない」という特定を除く「形態(1)」、「形態(2)」に関する記載は、【0028】の「形態(c)」、【0029】の「形態(d)」についての下線を付した記載において、「形態(c)」を「形態(1)」に、「形態(d)」を「形態(2)」に変更したものである。 また、【0066】の「多孔性皮膜」に関する記載を考慮して【0030】?【0033】で挙げられた、図1A、1B、2A、2B、3A、3Bを参照すると、図1A、1B、2A、2B、3A、3Bの「多孔性被膜」は「無機粒子」を含んでいないといえる。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5号に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものか否かについて 訂正事項1に係る訂正は、請求項1に記載の「耐熱性多孔質層」を特定の形態のものに限定するものであって、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6号に適合する。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2に係る訂正は、請求項1に記載の「耐熱性多孔質層」を、「前記耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合が50質量%?90質量%である」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加について 訂正前の特許請求の範囲の請求項3には、以下の記載がある。 「【請求項3】 前記耐熱性多孔質層がさらに無機粒子を含有し、前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合が50質量%?90質量%である、請求項1又は請求項2に記載の非水系二次電池用セパレータ。」 また、本件特許明細書には、以下の記載がある(「・・・」は、省略を示す。以下、同様)。 「 【0010】 [1] 多孔質基材と、前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する多孔性被膜を有する耐熱性多孔質層と、前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層と、を備えた非水系二次電池用セパレータ。 ・・・ [3] 前記耐熱性多孔質層がさらに無機粒子を含有し、前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合が50質量%?90質量%である、[1]又は[2]に記載の非水系二次電池用セパレータ。 ・・・」 「 【0081】 第一のセパレータにおける耐熱性多孔質層が無機粒子を含有する場合、耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合は、耐熱性の観点から、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合は、耐熱性多孔質が多孔質基材から剥がれにくい観点から、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。」 したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5号に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものか否かについて 訂正事項2に係る訂正は、請求項1に記載の「耐熱性多孔質層」を所定の割合で「無機粒子」を有するものに限定するものであって、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6号に適合する。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3に係る訂正は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加について 訂正事項3に係る訂正は、請求項3を削除するものであって、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5号に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものか否かについて 訂正事項3に係る訂正は、請求項3を削除するものであって、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6号に適合する。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4に係る訂正は、請求項4に係る発明において、「接着性樹脂粒子」を「ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物」を含むものとし、「接着層」に含まれる「前記第一の接着性樹脂粒子と前記第二の接着性樹脂粒子との質量比が前記第一の接着性樹脂粒子:前記第二の接着性樹脂粒子=50:50?90:10」であるものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加について 訂正前の特許請求の範囲の請求項5には、以下の記載がある。 「【請求項5】 前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含む、請求項1?請求項4のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。」 また、本件特許明細書には、以下の記載がある。 「 【0128】 接着性樹脂粒子としては、2種以上の接着性樹脂粒子を組み合せて用いてもよい。接着層のイオン透過性、接着層の電極に対する接着性、接着層と耐熱性多孔質層との間の剥離強度、及び接着層のハンドリング性をバランスよく調整する観点からは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を用いることが好ましい。第一の接着性樹脂粒子(以下「樹脂粒子F」ともいう。)とは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を全固形分量に対して50質量%超含む粒子である。第二の接着性樹脂粒子(以下「樹脂粒子A」ともいう。)とは、アクリル系樹脂を全固形分量に対して50質量%超含む粒子である。」 「 【0133】 接着層に樹脂粒子Fと樹脂粒子Aとの混合物が含まれる場合、接着層に含まれる樹脂粒子Fと樹脂粒子Aの質量比は、接着層に求める特性に応じて調整すればよい。接着層に含まれる樹脂粒子Fと樹脂粒子Aの質量比は、樹脂粒子F:樹脂粒子A=50:50?90:10であることが好ましい。」 したがって、訂正事項4に係る訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5号に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更するものか否かについて 訂正事項4に係る訂正は、請求項4に記載の「接着性樹脂粒子」を「ポリフッ化ビニリデン系樹脂」と「アクリル系樹脂」に限定し、さらに「接着層」に含まれる「ポリフッ化ビニリデン系樹脂」と「アクリル系樹脂」の質量比を「50:50?90:10」に限定するものであって、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6号に適合する。 (5)訂正事項5?10 ア 訂正の目的について 訂正事項5に係る訂正において上記1(5)アに係る訂正は、多数項引用している請求項の引用請求項数の削減であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 訂正事項5に係る訂正において上記1(5)イに係る訂正及び訂正事項6に係る訂正は、n項(請求項1?5の「5項」)引用している1の請求項である請求項6をn-1以下の請求項(請求項6と請求項11の「2の請求項」)に変更するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 訂正事項5に係る訂正において上記1(5)ウに係る訂正及び訂正事項7に係る訂正は、n項(請求項1?6の「6項」)引用している1の請求項である請求項7をn-1以下の請求項(請求項7と請求項12の「2の請求項」)に変更するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 訂正事項5に係る訂正において上記1(5)エに係る訂正及び訂正事項8に係る訂正は、n項(請求項1?7の「7項」)引用している1の請求項である請求項8をn-1以下の請求項(請求項8と請求項13の「2の請求項」)に変更するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 訂正事項5に係る訂正において上記1(5)オに係る訂正及び訂正事項9に係る訂正は、n項(請求項1?8の「8項」)引用している1の請求項である請求項9をn-1以下の請求項(請求項9と請求項14の「2の請求項」)に変更するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 訂正事項5に係る訂正において上記1(5)カに係る訂正及び訂正事項10に係る訂正は、n項(請求項1?9の「9項」)引用している1の請求項である請求項10をn-1以下の請求項(請求項10と請求項15の「2の請求項」)に変更するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項5?10に係る訂正において、訂正事項3により請求項3が削除されたことにともない、請求項5?10が直接または間接的に引用する複数の請求項から請求項3を削除する訂正については、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加について 訂正事項5に係る訂正は、請求項5?10が直接または間接的に引用する複数の請求項から請求項3及び請求項4を削除するものであって、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであることは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5号に適合する。 訂正事項6?10に係る訂正は、請求項6?10が直接または間接的に引用する複数の請求項から請求項1?3を削除し、新たに請求項11?15とするものであって、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであることは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5号に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものか否かについて 訂正事項5に係る訂正は、請求項5?10が直接または間接的に引用する複数の請求項から請求項3及び請求項4を削除するものであって、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6号に適合する。 訂正事項6?10に係る訂正は、請求項6?10が直接または間接的に引用する複数の請求項から請求項1?3を削除し、新たに請求項11?15とするものであって、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6号に適合する。 (6)独立特許要件について 本件特許の全ての請求項に対して特許異議の申立てがされているので、本件訂正請求に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (7)一群の請求項について 本件訂正前の請求項2、3、5?10は、本件訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるので、本件訂正前の請求項1、?3、5?10は一群の請求項である。 また、本件訂正前の請求項6?10は、本件訂正前の請求項4を直接又は間接的に引用するものであって、請求項4の訂正に連動して訂正されるものであるので、本件訂正前の請求項4、6?10は一群の請求項である。 上記訂正前の2つの一群の請求項は、共通する請求項6?10を介して一体となるから、本件訂正前の請求項1?10は一群の請求項である。 よって、本件訂正前の請求項1?10に対応する訂正後の請求項1?15は一群の請求項である。 そして、本件訂正請求は、訂正後の請求項1?15について請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 (8)別の訂正単位とする求めについて 特許権者は、本件訂正請求書において、訂正後の1?3、5?10については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすること、及び、訂正後の請求項4、11?15については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。 そして、上記(1)?(3)、(5)で示したように、訂正事項1?3、5に係る訂正、すなわち、訂正後の請求項1?3、5?10についての訂正は、訂正要件を満足し、訂正が認められるから、訂正後の請求項〔1?3、5?10〕を一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として認める。 また、上記(4)、(5)で示したように、訂正事項4、6?10に係る訂正、すなわち、訂正後の請求項4、11?15についての訂正は、訂正要件を満足し、訂正が認められるから、訂正後の請求項〔4、11?15〕を一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として認める。 (9)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号または第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、訂正後の請求項〔1?3、5?10〕、〔4、11?15〕について訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記第2で検討したとおり、本件訂正請求書による本件訂正は適法なものであり認められるので、本件特許の請求項1?15に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1?15」といい、まとめて「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 多孔質基材と、 前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜を有し、下記の形態(1)及び形態(2)の少なくとも一方である耐熱性多孔質層と、 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層と、を備え、 前記耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合が50質量%?90質量%である、非水系二次電池用セパレータ。 形態(1):耐熱性多孔質層が、無機粒子を含有し、無機粒子が、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜によって結着され且つ覆われてなる層である。 形態(2):耐熱性多孔質層が、多孔質基材上に形成された内層であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種並びに無機粒子を含有する内層と、この内層の外面を覆うように形成された多孔性被膜であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜とを備える。 【請求項2】 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との間の剥離強度が5N/m?75N/mである、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 多孔質基材と、 前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂並びに無機粒子を含有する耐熱性多孔質層と、 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層と、を備え、 前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含み、 前記接着層に含まれる前記第一の接着性樹脂粒子と前記第二の接着性樹脂粒子との質量比が前記第一の接着性樹脂粒子:前記第二の接着性樹脂粒子=50:50?90:10であり、 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との間の剥離強度が5N/m?75N/mである、非水系二次電池用セパレータ。 【請求項5】 前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含む、請求項1又は請求項2に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項6】 前記非水系二次電池用セパレータのガーレ値と前記多孔質基材のガーレ値との差が20秒/100mL?300秒/100mLである、請求項1、請求項2及び請求項5のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項7】 前記非水系二次電池用セパレータのMD方向の引張強度及びTD方向の引張強度の少なくとも一方が500kgf/cm^(2)?3000kgf/cm^(2)である、 請求項1、請求項2、請求項5及び請求項6のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項8】 前記接着層の重量が前記積層体の片面あたり0.2g/m^(2)?2.0g/m^(2)である、請求項1、請求項2及び請求項5?請求項7のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項9】 前記多孔質基材がポリプロピレンを含有する微多孔膜である、請求項1、請求項2及び請求項5?請求項8のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項10】 正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項1、請求項2及び請求項5?請求項9のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。 【請求項11】 前記非水系二次電池用セパレータのガーレ値と前記多孔質基材のガーレ値との差が20秒/100mL?300秒/100mLである、請求項4に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項12】 前記非水系二次電池用セパレータのMD方向の引張強度及びTD方向の引張強度の少なくとも一方が500kgf/cm^(2)?3000kgf/cm^(2)である、 請求項4又は請求項11に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項13】 前記接着層の重量が前記積層体の片面あたり0.2g/m^(2)?2.0g/m^(2)である、請求項4、請求項11及び請求項12のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項14】 前記多孔質基材がポリプロピレンを含有する微多孔膜である、請求項4及び請求項11?請求項13のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項15】 正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項4及び請求項11?請求項14のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。」 第4 特許異議申立の理由及び取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要 1 特許異議申立の理由の概要 申立人は、証拠方法として、次の甲第1号証?甲第12号証(以下「甲1」等という。)を提出し、以下の申立理由1?3により、訂正前の請求項1?10に係る本件特許は取り消されるべきものである旨主張している。 甲第1号証(甲1):特開2012-99324号公報 甲第2号証(甲2):国際公開2014/083988号 甲第3号証(甲3):特開2013-219005号公報 甲第4号証(甲4):国際公開2016/047165号 甲第5号証(甲5):特開2016-207616号公報 甲第6号証(甲6):特開2001-6744号公報 甲第7号証(甲7):特開2016-139490号公報 甲第8号証(甲8):特開2017-132925号公報 甲第9の1号証(甲9の1):韓国公開特許第10-2017-0045438号公報 甲第9の2号証(甲9の2):甲第9の1号証の訳文(部分訳) 甲第10号証(甲10):特開2013-20769号公報 甲第11号証(甲11):特開2011-23162号公報 甲第12号証(甲12):国際公開2012/057037号 (1)申立理由1(明確性) 訂正前の請求項1の記載からは、「多孔性被膜」が何を被覆しているのかが明確でなく、請求項1の「前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する多孔性被膜を有する耐熱性多孔質層」とは、どのような層構造を指しているのかが不明である。 したがって、訂正前の請求項1および請求項1を引用する請求項2、3の記載は、特許を受けようとする発明が不明確である。 よって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(新規性) ア 申立理由2-1 訂正前の請求項4に係る発明は、甲2に記載された発明である。 したがって、訂正前の請求項4に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 イ 申立理由2-2 訂正前の請求項1に係る発明は、甲3に記載された発明である。 したがって、訂正前の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(進歩性) ア 申立理由3-1 訂正前の請求項1?10に係る発明は、甲1に記載された発明と、本件特許出願時における周知技術とから、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。 したがって、訂正前の請求項1?10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 イ 申立理由3-2 訂正前の請求項4?10に係る発明は、甲2に記載された発明と、本件特許出願時における周知技術とから、または、甲2に記載された発明と、甲1に記載された発明と、本件特許出願時における周知技術とから当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、訂正前の請求項4?10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 ウ 申立理由3-3 訂正前の請求項1に係る発明は、甲3に記載された発明から、または、甲3に記載された発明と、本件特許出願時における周知技術とから当業者が容易に発明をすることができたものである。 訂正前の請求項2及び4に係る発明は、甲3に記載された発明と、甲1に記載された発明とから、または、甲3に記載された発明と、甲1に記載された発明と、本件特許の出願時における周知技術とから当業者が容易に発明をすることができたものである。 訂正前の請求項7?10に係る発明は、甲3に記載された発明と、甲1に記載された発明と、本件特許出願時における周知技術とから当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、訂正前の請求項1、2、4、7?10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 エ 申立理由3-4 訂正前の請求項1に係る発明は、甲10に記載された発明と、本件特許出願時における周知技術とから当業者が容易に発明をすることができたものである。 訂正前の請求項2?10に係る発明は、甲10に記載された発明と、本件特許出願時における周知技術とから、または、甲10に記載された発明と、甲1に記載された発明と、本件特許出願時における周知技術とから当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、訂正前の請求項1?10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 オ 申立理由3-5 訂正前の請求項1に係る発明は、甲11に記載された発明と、本件特許出願時における周知技術とから当業者が容易に発明をすることができたものである。 訂正前の請求項2?10に係る発明は、甲11に記載された発明と、本件特許出願時における周知技術とから、または、甲11に記載された発明と、甲1に記載された発明と、本件特許出願時における周知技術とから当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、訂正前の請求項1?10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 カ 申立理由3-6 訂正前の請求項1に係る発明は、甲12に記載された発明と、本件特許出願時における周知技術とから当業者が容易に発明をすることができたものである。 訂正前の請求項2?10に係る発明は、甲12に記載された発明と、本件特許出願時における周知技術とから、または、甲12に記載された発明と、甲1に記載された発明と、本件特許出願時における周知技術とから当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、訂正前の請求項1?10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 2 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要 当審は、上記1の申立理由1?3について検討した結果、申立理由1(明確性)について採用し、申立理由2(新規性)について採用せず、申立理由3(進歩性)について一部採用し、令和2年9月14日付け取消理由通知書(決定の予告)において取消理由1(明確性)及び取消理由3(進歩性)として通知した。 また、当審は、当該取消理由に加え、職権審理によって、以下の取消理由も上記取消理由通知書(決定の予告)において取消理由1(明確性)及び取消理由3(進歩性)として通知した。 (1)(明確性)訂正前の請求項5?10に記載された発明は、請求項1または2を直接又は間接的に引用するから、申立理由1と同様の理由で明確でなく、同発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (2)(進歩性)訂正前の請求項5に係る発明は、甲3に記載された発明と、甲1に記載された発明と、本件特許の出願時における周知技術とから当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第5 当審の判断 当審は、特許権者が提出した令和2年11月13日付け意見書を踏まえて検討した結果、本件訂正による訂正後の請求項1、2、4?15は、以下のとおり、いずれも当審が通知した取消理由を解消しており、上記第4、1(1)?(3)に概要を示した申立理由1?3のいずれにも該当しないものと判断する。その理由は次のとおりである。 1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 1-1 取消理由1(明確性)(申立理由1を採用)について (1)取消理由1の概要 以下に示すとおり、訂正前の請求項1の「形態(1)」、「形態(2)」のいずれの形態においても、「多孔性被膜」が「無機粒子」を含み得るのか否か、「耐熱性多孔質膜」が「無機粒子」を含む場合における、「多孔性被膜」の有無の判定基準が不明であって、請求項1に記載の「多孔性被膜」に含まれるものの範囲が明確ではない。 ア 「多孔性被膜」が「無機粒子」を含み得るのか否かについて (ア)請求項1の「形態(1)」において、「多孔性被膜」が「無機粒子」を含み得るのか否かが明確であるとはいえない。 (イ)請求項1の「形態(2)」において、「多孔性被膜」が「無機粒子」を含み得るのか否かが明確であるとはいえない。 イ 「耐熱性多孔質膜」が「無機粒子」を含む場合における、「多孔性被膜」に含まれるものの範囲について (ア)「多孔性被膜」の有無の判定基準について、「多孔性被膜」が「無機粒子」を含む場合の「多孔性被膜」の有無の判定基準が明確とはいえず、「耐熱性多孔質膜」が「無機粒子」を含む場合における、「多孔性被膜」に含まれるものの範囲が不明確である。 (イ)「形態(1)」において、「無機粒子」が「多孔性被膜によって結着され且つ覆われてなる」に含まれるものの範囲について、「多孔性被膜」が「無機粒子」を含む場合における、「多孔性被膜」に含まれるものの範囲が不明確である。 (ウ)「無機粒子を含有する内層」を備えるものである「形態(2)」において、「この内層の外面を覆うように形成された多孔性被膜」に含まれるものの範囲について、「多孔性被膜」が「無機粒子」を含む場合における、「多孔性被膜」に含まれるものの範囲が不明確である。 なお、取消理由通知(決定の予告)の第5の1(3)における「耐熱性多孔質膜」は「多孔性被膜」の誤記である。 (取消理由の対象となった令和2年4月3日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び本件特許明細書には「耐熱性多孔質膜」という記載は無く、「「多孔性被膜」が「無機粒子」を含み得るのか否か」が不明であることを前提として、「「耐熱性多孔質膜」が「無機粒子」を含む場合における、「多孔性被膜」の有無の判定基準が不明」と判断していること、及び、同請求項1には、「・・・形態(1):耐熱性多孔質層が、無機粒子を含有し、無機粒子が、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する多孔性被膜によって結着され且つ覆われてなる層である。」、「形態(2):耐熱性多孔質層が、多孔質基材上に形成された内層であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種並びに無機粒子を含有する内層と、この内層の外面を覆うように形成された多孔性被膜であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する多孔性被膜とを備える。」と記載されているように、「耐熱性多孔質層」が「無機粒子」を含んでいることは特定されているから、上記「耐熱性多孔質膜」は「耐熱性多孔質層」ではなく、「多孔性被膜」の誤記であることは明らかである。) (2)特許権者の主張の概要 特許権者は、令和2年11月13日付け意見書において、概ね次のとおり主張している。 本件訂正請求による訂正によって、本件発明1の「多孔性被膜」は、「全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない」ものとなり、また、「多孔性被膜」は、「耐熱性多孔質層」に係る形態(1)又は形態(2)において特定された形状として、走査型電子顕微鏡を用いて確認できるものであるから、訂正後の本件発明1は明確である。 (3)当審の判断 上記(1)で示したように、取消理由1は、請求項1の「形態(1)」及び「形態(2)」のいずれの形態においても、「多孔性被膜」が「無機粒子」を含み得るのか否かが明確でなく、「多孔性被膜」が「無機粒子」を含み得る場合、「多孔性被膜」の有無の判定基準が不明であって、請求項1に記載の「多孔性被膜」に含まれるものの範囲が明確ではないために通知したものである。 そして、請求項1には、「多孔性被膜」が「形態(1)」及び「形態(2)」のいずれの形態であっても「無機粒子を含有しない」ことが記載されているから、「多孔性被膜」が「無機粒子」を含み得ないことは明確であり、「多孔性被膜」が「無機粒子」を含み得る場合がないから、そのような場合を前提とした上記取消理由1も解消している。 よって、本件発明1及び本件発明1に従属する本件発明2、5?10は、取消理由1について、特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものである。 1-2 取消理由3(進歩性)(申立理由3を一部採用)について (1)取消理由3の概要 ア 甲1を主たる引用例とした場合について 訂正前の請求項4?10に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項4?10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 イ 甲2を主たる引用例とした場合について 訂正前の請求項4?10に係る発明は、甲2に記載された発明、甲1に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項4?10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 ウ 甲3を主たる引用例とした場合について 訂正前の請求項4、5、7?10に係る発明は、甲3に記載された発明、甲1に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項4、5、7?10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 エ 甲10を主たる引用例とした場合について 訂正前の請求項4、5、7?10に係る発明は、甲10に記載された発明、甲1に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項4、5、7?10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 オ 甲11を主たる引用例とした場合について 訂正前の請求項4、5、7?10に係る発明は、甲11に記載された発明、甲1に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項4、5、7?10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 カ 甲12を主たる引用例とした場合について 訂正前の請求項4?10に係る発明は、甲12に記載された発明、甲1に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項4?10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)特許権者の主張の概要 特許権者は、令和2年11月13日付け意見書において、概ね次のとおり主張している。 訂正後の本件発明4と、甲1発明(セパレータ)、甲1-実施例1発明、甲2発明、甲3発明(セパレータ)、甲10発明(セパレータ)、甲11発明(セパレータ)、甲12発明(セパレータ)、及び甲12-実施例4発明とを対比すると、少なくとも以下の相違点があり、当該相違点は、甲2、甲5に記載が無いから、当業者が容易に想到し得ることではない。 <相違点> 訂正後の本件発明4は、「前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含み、前記接着層に含まれる前記第一の接着性樹脂粒子と前記第二の接着性樹脂粒子との質量比が前記第一の接着性樹脂粒子:前記第二の接着性樹脂粒子=50:50?90:10であ」るのに対し、甲1発明(セパレータ)、甲1-実施例1発明、甲2発明、甲3発明(セパレータ)、甲10発明(セパレータ)、甲11発明(セパレータ)、甲12発明(セパレータ)、及び甲12-実施例4発明はそのようなものではない点。 また、本件特許明細書の【表8】を参照すると、本件発明4は顕著な効果を奏する。具体的には、実施例D1(接着性樹脂粒子:PVDF粒子のみ)と実施例D19?D21(接着性樹脂粒子:PVDF粒子とアクリル樹脂粒子の混合物ととを電極の接着強度において比較すると、実施例D19?D21の接着強度が大幅に高く、実施例D1と実施例D19?D21とをセパレータの引張強度において比較すると、実施例D19?D21の引張強度が明らかに高く、実施例D2(接着性樹脂粒子:アクリル樹脂粒子のみ)と実施例D19?D21とをセパレータの引張強度において比較すると、実施例19?D21の方が優れていることが見てとれる。 つまり、第一の接着性樹脂粒子と第二の接着性樹脂粒子とを質量比50:50?90:10で混合してセパレータの表面に配置する音で、セパレータの引張強度と電極との接着強度とを高度に両立するという効果を奏し、この効果は当業者が予測し得た程度を超える。 (3)甲号証の記載事項及び甲号証に記載された発明 甲1?甲12には、以下の記載がある(下線は当審による。また、「・・・」は省略を示す。以下同じ)。 ア 甲1について (ア)甲1の記載事項 「【請求項1】 ポリオレフィン微多孔膜と、前記ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面に設けられ、耐熱性樹脂を含む耐熱性多孔質層とを備え、前記耐熱性多孔質層の前記ポリオレフィン微多孔膜に対する剥離力が0.05N/cm以上0.5N/cm以下である非水電解質二次電池用セパレータ。」 「【請求項3】 正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項1又は請求項2に記載の非水電解質二次電池用セパレータとを備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水電解質二次電池。」 「【0014】 本発明においては、耐熱性多孔質層のポリオレフィン微多孔膜に対する剥離力を所定の範囲に調整することで、電池デバイスを作製する際に生じやすいポリオレフィン微多孔膜と耐熱性多孔質層との間の剥がれの発生を防ぎ、高温下でポリオレフィンが耐熱性多孔質層に付着した状態で保持され、メルトダウンが防止されるので、従来に比べて、生産効率が高まることに加え、熱暴走や発火などに対する安全性が向上する。 【0015】 本発明における剥離力は、耐熱性多孔質層とポリオレフィン微多孔膜との間を剥離するのに必要とされる力を表すものであり、以下の方法で測定される。すなわち、剥離力は、ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面に耐熱性多孔質層を有する非水電解質二次電池用セパレータの両面(耐熱性多孔質層の表面)にテープを貼付して10mm×200mmのサイズに切り出し、得られたサンプル片の両面に貼付されたテープの各端部を一部剥がし、テンシロン(ORIENTECRTC-1210A)でその部分を握持して、引張り方向:サンプル片の面に直交する方向、引張り速度:200mm/minの引張り条件にて、セパレータの一方面と他方面に対してそれぞれ90°の方向に引張って剥離試験を行なうことにより得られる。ここで用いる剥離力は、サンプル片の3cm?10cmの範囲の応力値(引張り開始から3cm?10cm剥がしたときに連続測定して得られた値)を平均し、平均値として求められるものである。 【0016】 剥離力の範囲は、0.05N/cm以上0.5N/cm以下とする。剥離力が該範囲内であることにより、耐熱性多孔質層のポリオレフィン微多孔膜への接着が良好になる。剥離力は0.05N/cm未満であると、耐熱性多孔質層のポリオレフィン微多孔膜に対する接着が弱すぎて剥がれ易く、従って生産効率が低下するとともに高温時にメルトダウンを招きやすい。また、剥離力が0.5N/cmを超えると、剥離力としては強すぎる結果、ポリオレフィン微多孔膜の熱収縮が耐熱性多孔質層により強く拘束されるため、ポリオレフィン微多孔膜のシャットダウンの応答性が低下し急速な膜抵抗の上昇の阻害、シャットダウン温度が所定の所望の範囲を超えて高くなる場合などがある。また、界面の接着性は一般に凹凸や孔を閉塞させることで向上するので、強固な接着はイオン透過に必要な孔をも閉塞させてしまい、サイクル特性を低下させる原因になる場合がある。 中でも、剥離力は、上記と同様の理由から、0.05N/cm以上0.3N/cm以下が好ましく、更には0.08N/cm以上0.2N/cm以下が好ましい。」 「【0021】 (ポリオレフィン微多孔膜) 本発明の非水電解質二次電池用セパレータは、ポリオレフィンを含むポリオレフィン微多孔膜を設けて構成されている。・・・ 【0022】 本発明におけるポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテン等のモノマーを重合して得られる重合体(ホモ重合体や共重合体、多段重合体等)が挙げられる。具体的には、ポリオレフィンとして、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、ポリブテン、エチレンプロピレンラバー等を挙げることができる。これら重合体は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。」 「【0025】 ・・・ 更には、ポリオレフィン微多孔膜の良好な成形性を確保し、耐熱性、透過性を確保する観点から、ポリプロピレン樹脂を併用することが好ましい。・・・」 「【0030】 ポリオレフィン微多孔膜のガーレ値(JIS P8117)は、機械強度と膜抵抗をバランス良く得る観点から、50?500sec/100ccであることが好ましい。 ・・・」 「【0038】 (耐熱性多孔質層) 本発明の非水電解質二次電池用セパレータは、耐熱性樹脂を含む耐熱性多孔質層を設けて構成されている。この耐熱性多孔質層は、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった層をいう。・・・ 【0039】 -耐熱性樹脂- 耐熱性多孔質層を構成する耐熱性樹脂としては、融点200℃以上の結晶性高分子、あるいは融点を有しないが分解温度が200℃以上の高分子が適当であり、好ましくは全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、及びセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂が挙げられる。 【0040】 ・・・ さらに、耐熱性樹脂は、電解質溶液に対して不溶性であり、耐久性が高いことから全芳香族ポリアミドが好適であり、また、多孔質層を形成しやすく耐酸化還元性に優れるという観点から、メタ型全芳香族ポリアミドであるポリメタフェニレンイソフタルアミドがさらに好適である。」 「【0046】 -無機フィラー- 本発明における耐熱性多孔質層は、無機フィラーの少なくとも一種が含まれていることが好ましい。無機フィラーとしては、特に限定はないが、具体的にはアルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニアなどの金属酸化物、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩、リン酸カルシウムなどの金属リン酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物などが好適に用いられる。このような無機フィラーは、不純物の溶出や耐久性の観点から結晶性の高いものが好ましい。」 「【0050】 耐熱性多孔質層における無機フィラーの含有量としては、耐熱性向上効果、透過性及びハンドリング性の観点から、50?95質量%であることが好ましい。」 「【0058】 [非水電解質二次電池] 本発明の非水電解質二次電池は、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水電解質二次電池であって、上述した構成の非水電解質二次電池用セパレータを用いたことを特徴とする。非水電解質二次電池は、負極と正極とがセパレータを介して対向配置されている電池要素に電解液が含浸され、これが外装に封入された構造となっている。」 「【0064】 [測定方法] 本実施例における各値は、以下の方法に従って求めた。 (1)剥離力 非水電解質二次電池用セパレータの両面(耐熱性多孔質層の表面)にテープ(3M製、スコッチメンディングテープ810)を貼り、10mm×200mmに切り出した。両面に貼ったテープの各端部の一部を剥し、テンシロン(ORIENTEC RTC-1210A)にてその部分を握持して、引張り方向:サンプル片の面に直交する方向、引張り速度:200mm/minの引張り条件にて、セパレータの一方面と他方面に対してそれぞれ90°の方向に引張って剥離試験を実施した。剥離力は、3cm?10cmの応力値(引張り開始から3cm?10cm剥がしたときに連続測定して得られた値)を平均して求めた。」 「【0071】 (参考例1):界面重合法によるポリメタフェニレンテレフタルアミドの重合 イソフタル酸クロライド160.5gをテトラヒドロフラン1120mlに溶解し、撹拌しながら、メタフェニレンジアミン85.2gをテトラヒドロフラン1120mlに溶解した溶液を、細流として徐々に加えていくと白濁した乳白色の溶液が得られた。撹拌を約5分間継続した後、更に撹拌しながら炭酸ソーダ167.6g及び食塩317gを3400mlの水に溶かした水溶液を速やかに加え、5分間撹拌した。反応系は、数秒後に粘度が増大した後、再び低下し、白色の懸濁液が得られた。これを静置し、分離した透明な水溶液層を取り除き、ろ過することによって、ポリメタフェニレンイソフタルアミド(以下、PMIA(1)と略記することがある。)の白色重合体185.3gを得た。得られたPMIA(1)の数平均分子量は、2.0万であった。」 「【0073】 (参考例3):ポリオレフィン微多孔膜の作製 ハイゼックスミリオン340Mとハイゼックスミリオン030S(いずれも三井化学(株)製)を各々20/80の割合(質量比)になるように混合し、ポリオレフィン濃度が30質量%となるように流動パラフィン(松村石油研究所社製;スモイルP-350P;沸点480℃)とデカリンの混合溶媒中に溶解させ、孔径5μmのフィルターで濾過し、ポリオレフィン溶液を作製した。このポリオレフィン溶液の組成は、ポリオレフィン:流動パラフィン:デカリン=30:45:25(質量比)であった。 得られたポリオレフィン溶液を148℃でダイから押し出し、水浴中で冷却してゲル状テープ(ベーステープ)を作製した。このベーステープを60℃で8分、95℃で15分乾燥し、次いでベーステープを縦延伸、横延伸と逐次行なうことにより2軸延伸した。ここで、縦延伸では延伸倍率5.5倍、延伸温度90℃とし、横延伸では延伸倍率11.0倍、延伸温度105℃とし、面延伸倍率を60.5倍とした。横延伸の後は、125℃で熱固定を行なった。次に、これを塩化メチレン浴に浸漬し、流動パラフィンとデカリンを抽出した。その後、50℃で乾燥し、120℃でアニール処理することにより、ポリオレフィン微多孔膜を作製した。このとき、製膜、延伸、後処理の操作上、特に問題はなく、微多孔膜を良好に製造することができた。膜の特性を下記表1に示す。」 「【0075】 【表1】 【0076】 (実施例1) 参考例1で得たPMIA(1)と、平均粒子径0.8μmの水酸化アルミニウム(昭和電工社製;H-43M)とを、前記水酸化アルミニウムと前記PMIA(1)との量比が質量比で25:75となるように調整すると共に、PMIA(1)濃度が5.5質量%となるように調整しながら、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)の質量比が50:50である混合溶媒に混合し、塗工用スラリーを得た。 一対のマイヤーバー(番手#6)を、約20μmのクリアランスで対峙させた。マイヤーバーに、前記塗工用スラリーを適量のせ、進行方向と逆回転させつつ、一対のマイヤーバー間に参考例3のポリエチレン微多孔膜を通して、このポリエチレン微多孔膜の両面に塗工用スラリーを塗工した。そして、塗工後のポリエチレン微多孔膜を、質量比で水:DMAc:TPG=50:25:25の凝固液(40℃)中に浸漬した。次いで、水洗・乾燥を行ない、ポリエチレン微多孔膜の両面に表裏各2μmの耐熱性多孔質層を形成し、非水電解質二次電池用セパレータとした。 得られたセパレータは、合計厚みが16μmであり、膜物性については、剥離力が0.08N/cmで合格(○)であり、空孔率は45%、熱収縮率(TD)は3%、ガーレ値は250秒/100cc、突刺強度は390g、シャットダウン温度は141℃であった。また、サイクル特性に関しては、容量保持率は93%、変動幅は6%でいずれも合格(○)であった。また、耐短絡性も合格(○)であった。これらの結果をまとめて下記表2に示す。」 「【0083】 【表2】 」 (イ)甲1に記載された発明 a 上記摘示のうち、特に【請求項1】、【請求項3】、【0022】、【0025】、【0039】、【0046】、【0050】から、甲1には、以下の甲1発明(セパレータ)’が記載されていると認められる。 [甲1発明(セパレータ)’] 「ポリオレフィン微多孔膜と、前記ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面に設けられ、耐熱性樹脂を含む耐熱性多孔質層とを備え、前記耐熱性多孔質層の前記ポリオレフィン微多孔膜に対する剥離力が0.05N/cm以上0.5N/cm以下である非水電解質二次電池用セパレータであって、ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン樹脂を併用することが好ましく、耐熱性多孔質層を構成する耐熱性樹脂としては、好ましくは全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、及びセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であり、ポリメタフェニレンイソフタルアミドがさらに好適であり、耐熱性多孔質層は、無機フィラーの少なくとも一種が含まれていることが好ましく、耐熱性多孔質層における無機フィラーの含有量としては、50?95質量%であることが好ましい、非水電解質二次電池用セパレータ。」 b また、上記摘示のうち、特に【0071】、【0073】、【0075】、【0076】、【0083】から、以下の甲1-実施例1発明’が記載されていると認められる。 [甲1-実施例1発明’] 「ポリメタフェニレンイソフタルアミドと、水酸化アルミニウムとを、水酸化アルミニウムとポリメタフェニレンイソフタルアミドとの量比が質量比で25:75となるように調整するとともに、混合溶媒に混合し、塗工用スラリーを得、ポリエチレン微多孔膜の両面に塗工用スラリーを塗工し、塗工後のポリエチレン微多孔膜を凝固液中に浸漬し、次いで、水洗・乾燥を行ない、ポリエチレン微多孔膜の両面に耐熱性多孔質層を形成した、非水電解質二次電池用セパレータであって、前記非水電解質二次電池用セパレータは、剥離力が0.08N/cmであり、ガーレ値は250秒/100ccであり、ポリエチレン微多孔膜のガーレ値は124秒/100ccである非水電解質二次電池用セパレータ。」 イ 甲2について (ア)甲2の記載事項 「[0033]〔多孔質基材〕 本発明において多孔質基材とは、内部に空孔ないし空隙を有する基材を意味する。このような基材としては、微多孔膜;不織布、紙状シート等の繊維状物からなる多孔性シート;などが挙げられる。特に、セパレータの薄膜化及び高強度化の観点で、微多孔膜が好ましい。微多孔膜とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった膜を意味する。」 「[0035] 多孔質基材を構成する材料は、多孔質基材にシャットダウン機能を付与する観点からは、熱可塑性樹脂が好ましい。ここで、シャットダウン機能とは、電池温度が高まった場合に、構成材料が溶解して多孔質基材の孔を閉塞することによりイオンの移動を遮断し、電池の熱暴走を防止する機能をいう。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、シャットダウン機能を付与する観点から、流動伸び変形温度が200℃未満の樹脂が好ましい。」 「[0092]<第二実施形態に係る非水系二次電池用セパレータ> 第二実施形態に係るセパレータは、多孔質基材と、前記多孔質基材の片面又は両面に設けられた耐熱性多孔質層と、前記多孔質基材及び前記耐熱性多孔質層の積層体の両面に設けられた接着性多孔質層と、を備えている。そして、前記耐熱性多孔質層は、樹脂及びフィラーを含み、下記の式(2)を満たし、前記接着性多孔質層は、接着性樹脂を含む。」 「[0102]〔多孔質基材〕 第二実施形態における多孔質基材は、第一実施形態における多孔質基材と同義である。第二実施形態における多孔質基材の具体的態様及び好ましい態様は、第一実施形態における多孔質基材の具体的態様及び好ましい態様と同じである。」 「[0104] 第二実施形態において、耐熱性多孔質層は、樹脂及びフィラーを含む層である。耐熱性多孔質層は、下記の態様A及び態様Bが好ましい態様である。」 [0104] 第二実施形態において、耐熱性多孔質層は、樹脂及びフィラーを含む層である。耐熱性多孔質層は、下記の態様A及び態様Bが好ましい態様である。 [0105]-態様A- 態様Aの耐熱性多孔質層は、内部に多数の微細孔を有する層であり、微細孔が一方の面から他方の面へ連通した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった層である。態様Aは、例えば、樹脂がフィブリル状となって3次元の網目構造を形成し、この網目構造にフィラーが補足された態様;フィラーの含有量が比較的多い場合、樹脂がフィラー表面の少なくとも一部に付着してフィラー同士を連結し、フィラー間に隙間が形成された態様;が好ましい。 [0106]-態様B- 態様Bの耐熱性多孔質層は、粒子状の樹脂(樹脂粒子)とフィラー(無機フィラーが好ましい。)の集合体である。即ち、複数の樹脂粒子と複数のフィラーとが連結して層状の集合体を形成し、該集合体は、樹脂粒子の少なくとも一部を介して多孔質基材の表面に固定されている。該集合体は、全体として多孔質の層形状を構成しており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となっている。該集合体を構成する樹脂粒子は、粒子形状を保ちつつ互いに及びフィラーと連結していることが好ましい。樹脂粒子が粒子形状を保持していることは、耐熱性多孔質層表面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)で観察することにより確認し得る。態様Bは、態様Aよりも、セパレータの生産性に優れる。 [0107]-樹脂- 樹脂としては、電解液に安定であり、電気化学的に安定であり、且つ、フィラーを連結する機能を有する物が好ましい。 [0108] フィラーとして耐熱性の低い材料を用いる場合は、耐熱性樹脂(融点が200℃以上のポリマー、又は、融点を有さず分解温度が200℃以上のポリマー)を用いることが好ましい。フィラーとして耐熱性に優れた材料を用いる場合は、耐熱性でない樹脂を用いてもよく、耐熱性樹脂を用いてもよく、セパレータの耐熱性をより向上させる観点では、耐熱性樹脂を用いることが好ましい。 [0109] 耐熱性樹脂としては、例えば、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、セルロース、ポリビニルアルコール等が挙げられる。中でも、電解液の保持性に優れる観点から、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホンが好ましい。」 「[0120]-フィラー- フィラーとしては、電解液に安定であり、且つ、電気化学的に安定な物が好ましい。フィラーは、有機フィラー及び無機フィラーのいずれでもよい。フィラーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してよい。」 「[0150]〔接着性多孔質層〕 第二実施形態において、接着性多孔質層は、セパレータの両面に最外層として存在し、接着性樹脂を含み電極と接着し得る層である。第二実施形態に係るセパレータは、接着性多孔質層を両面に有するので、電池の両電極との接着性に優れる。また、第二実施形態に係るセパレータは、接着性多孔質層を両面に有するので、該層を片面に有する場合に比べて、電池のサイクル特性(容量維持率)に優れる。」 「[0153]-態様B’- 態様B’の接着性多孔質層は、粒子状の樹脂(樹脂粒子)の集合体である。即ち、複数の樹脂粒子が連結して層状の集合体を形成し、該集合体は、樹脂粒子の少なくとも一部を介して多孔質基材又は耐熱性多孔質層の表面に固定されている。該集合体は、全体として多孔質の層形状を構成しており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となっている。フィラーを含む場合は、樹脂粒子にフィラーが連結して集合体を形成する態様が好ましい。」 「[0159] 粒子状の樹脂(樹脂粒子)としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、フッ素系ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-アクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、架橋アクリル樹脂等の樹脂を含む粒子が挙げられる。中でも、耐酸化性に優れる点で、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む粒子が好ましい。 [0160] 樹脂粒子を構成するポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデンの単独重合体(ポリフッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンと他のモノマーとの共重合体(ポリフッ化ビニリデン共重合体)、ポリフッ化ビニリデンとアクリル系ポリマーの混合物、ポリフッ化ビニリデン共重合体とアクリル系ポリマーの混合物が挙げられる。」 「[0165] 樹脂粒子を構成するポリフッ化ビニリデンとアクリル系ポリマーの混合物、及びポリフッ化ビニリデン共重合体とアクリル系ポリマーの混合物は、耐酸化性の観点から、ポリフッ化ビニリデン又はポリフッ化ビニリデン共重合体を20質量%以上含むことが好ましい。」 「[0171] 接着性多孔質層の塗工量は、電極との接着性とイオン透過性の観点から、両面合計で0.5g/m^(2)?3.5g/m^(2)が好ましい。」 「[0190]<非水系二次電池> 本発明の非水系二次電池は、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であって、正極と、負極と、本発明の非水系二次電池用セパレータを備える。非水系二次電池は、負極と正極とがセパレータを介して対向した構造体に電解液が含浸された電池要素が、外装材内に封入された構造を有する。ドープとは、吸蔵、担持、吸着、又は挿入を意味し、電極の活物質にリチウムイオンが入る現象を意味する。」 「[0229]〔ガーレ値〕 ガーレ値(秒/100cc)は、JIS P8117(2009)に従い、ガーレ式デンソメータ(東洋精機社製G-B2C)を用いて測定した。」 「[0289]≪本発明の第二実施形態(1)≫ 本発明の第二実施形態に係るセパレータ、及び該セパレータを使用した電池を作製し、セパレータ及び電池の性能評価を行った。 [0290]<実施例101> 〔セパレータの作製〕 -耐熱性多孔質層の形成- ポリフッ化ビニリデン系樹脂(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、poly(vinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、PVDF-HFP、モル比95/5)70質量%とアクリルポリマー30質量%との混合物である平均粒子径250nmの樹脂粒子を含む水系エマルションを用意した。 [0291] フィラーとして、平均粒子径880nm、比重2.35g/cm^(3)、CPVC43体積%の水酸化マグネシウム(Mg(OH)_(2))を用意した。 [0292] 樹脂粒子を含む水系エマルションに、水酸化マグネシウムを分散させて、耐熱性多孔質層形成用塗工液を作製した。塗工液は、樹脂の濃度が7.4質量%となるように調整し、樹脂とフィラーの合計量に占めるフィラーの割合が90質量%となるように調整した。 [0293] 耐熱性多孔質層形成用塗工液を、ポリエチレン微多孔膜(膜厚9μm、ガーレ値160秒/100cc、空孔率43%、ポリエチレンの流動伸び変形温度140.4℃)の両面に、バーコータを使用して等量塗工し、60℃で乾燥した。 [0294] こうして、ポリエチレン微多孔膜の両面に、樹脂粒子と無機フィラーの集合体である耐熱性多孔質層が形成された積層体を得た。 [0295] -接着性多孔質層の形成- ポリフッ化ビニリデン系樹脂(PVDF-HFP、モル比97/3、重量平均分子量100万)を用意した。 [0296] PVDF-HFPを濃度が5質量%となるように、ジメチルアセトアミドとトリプロピレングリコールの混合溶媒(ジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=7/3[質量比])に溶解し、接着性多孔質層形成用塗工液を作製した。 [0297] 接着性多孔質層形成用塗工液を前記積層体の両面に等量塗工し、これを40℃の凝固液(水/ジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=57/30/13[質量比])に浸漬して固化させた。次いで、これを水洗し乾燥させた。 [0298] こうして、前記積層体の両面に、PVDF-HFPからなる接着性多孔質層が形成されたセパレータを得た。」 「[0302]<実施例102?104> 耐熱性多孔質層形成用塗工液における、樹脂とフィラーの合計量に占めるフィラーの割合を表3に示すとおりに変更した以外は実施例101と同様にしてセパレータを得た。そして、各セパレータを用いて、実施例101と同様にして、試験用電池を作製した。」 「[0339]<実施例121> スチレン-ブタジエンゴム(styrene-butadienerubber、SBR)からなる樹脂粒子(平均粒子径150nm)を濃度5.0質量%で含む水系エマルションを、接着性多孔質層形成用塗工液として使用し、塗工後に乾燥させて接着性多孔質層を形成した以外は実施例103と同様にしてセパレータを得た。そして、該セパレータを用いて、実施例101と同様にして、試験用電池を作製した。」 「[0348] [表4] 」 (イ)甲2に記載された発明 上記摘示、特に、実施例121に関する部分([0290]?[0298]、[0302]、[0339]、[0348])及び[0092]から、甲2には,次の甲2発明が記載されていると認められる。 [甲2発明] 「ポリフッ化ビニリデン系樹脂とアクリルポリマーとの混合物である樹脂粒子を含む水系エマルションに、水酸化マグネシウムを分散させて、耐熱性多孔質層形成用塗工液を作製し、耐熱性多孔質層形成用塗工液を、ポリエチレン微多孔膜の両面に等量塗工し、乾燥して、ポリエチレン微多孔膜の両面に、樹脂粒子と無機フィラーの集合体である耐熱性多孔質層が形成された積層体を備え、前記積層体の両面に、スチレン-ブタジエンゴムからなる樹脂粒子を含む水系エマルションを、接着性多孔質層形成用塗工液として使用し、塗工後に乾燥させて接着性多孔質層を形成した非水系二次電池用セパレータであって、 セパレータのガーレ値が375秒/100ccであり、ポリエチレン微多孔膜のガーレ値が160秒/100ccである、非水系二次電池用セパレータ。」 ウ 甲3について (ア)甲3の記載事項 「【0009】 本発明の二次電池用接着樹脂組成物(本明細書中「組成物」と記載することがある)は、二次電池用セパレータと二次電池用電極とを接着させるために用いられるものであり、下記接着樹脂を含む。 本発明の二次電池用接着樹脂組成物は、さらに、有機溶剤及び水を含むことが好ましい。 本明細書において、「二次電池用セパレータ」を「セパレータ」と、「二次電池用電極」を「電極」と記載することがある。」 「【0021】 本発明の組成物は、通常、接着樹脂の一部又は全部が有機溶剤及び水中に、微粒子状に分散しており、その微粒子の粒径は、好ましくは0.005?100μm、より好ましくは0.01?50μm、さらに好ましくは0.05?50μmである。かかる粒径は、本発明の組成物から有機溶剤及び水を除去した後、電子顕微鏡で100個の粒子の長径と短径とを測定し、その平均値をとることにより求められる。」 「【0027】 <接着層> 本発明の接着層は、本発明の組成物を含み、本発明の組成物に含まれる接着樹脂が二次電池用セパレータと二次電池用電極との間に介在して、セパレータと電極を接着させる層である。本発明の接着層は、実質的に上記接着樹脂のみからなることが好ましい。また、本発明の接着層は、本発明の組成物から形成されるものであることが好ましい。 【0028】 <積層体> 本発明の積層体は、本発明の接着層とセパレータ又は電極とを含む。積層体の少なくとも一つの最表面が接着層であることが好ましい。」 「【0031】 (セパレータ) セパレータとしては、例えば、ビスコースレーヨン、天然セルロース等の抄紙;セルロース、ポリエステル等の繊維を抄紙して得られる混抄紙;電解紙;クラフト紙;マニラ紙;ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリエステル不織布、ガラス繊維、多孔質ポリオレフィン(例えば、多孔質ポリエチレン、多孔質ポリプロピレン)、多孔質ポリエステル、アラミド繊維、ポリブチレンテレフタレート不織布、パラ系全芳香族ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンと6フッ化プロピレンとの共重合体、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂等の不織布又は多孔質膜;プロトン伝導型ポリマーの膜;等が挙げられる。電解紙、ビスコースレーヨン又は天然セルロースの抄紙、セルロース及びポリエステルの繊維を抄紙して得られる混抄紙、クラフト紙、マニラ紙、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリエステル不織布、マニラ麻シート、ガラス繊維シート、多孔質ポリオレフィンが好ましい。」 「【0034】 セパレータは、前記膜(好ましくは多孔質ポリオレフィン)と耐熱層とが積層されてなる積層多孔質フィルムであってもよい。 【0035】 耐熱層としては、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、芳香族ポリアミド、ポリイミド等のポリアミド系又はポリイミド系ポリマー;フィラー粒子を含む層;等が挙げられる。セパレータは、1種の耐熱層を有していてもよいし、2種類以上の耐熱層を有してもよい。 【0036】 前記フィラー粒子としては、無機物の微粒子又は有機物の微粒子が用いられる。 無機物の微粒子としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、ガラス等が挙げられる。 ・・・ 【0037】 耐熱層がフィラー粒子を含む層である場合、該層にはフィラー粒子以外に、フィラー粒子同士又はフィラー粒子と前記膜(好ましくは多孔質ポリオレフィン)とを結着させるために、結着剤が含まれてもよい。結着剤としては、電池の電解液に不溶であり、かつ、その電池の使用範囲で電気化学的に安定である樹脂が好ましい。 結着剤としては、・・・ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、芳香族ポリアミド、ポリイミド等のポリアミド系又はポリイミド系ポリマー・・・等が挙げられる。」 「【0050】 <二次電池用部材及びその製造方法> 本明細書において「二次電池用部材」とは、本発明の組成物により電極とセパレータとが接着された部材を表し、電極と接着層とセパレータとからなる。 かかる二次電池用部材は、例えば図2のように負極及びセパレータのみを接着させた部材であってもよいし、正極及びセパレータのみを接着させた部材(図示せず)であってもよいし、図3のように負極-セパレータ-正極-セパレータの順でそれぞれ接着し、これが複数回繰り返された部材(ただし、2つの最表面は負極及び正極である。)であってもよい。」 「【0058】 <二次電池> 本発明の製造方法により得られる二次電池用部材と電解液とを有する二次電池のうち、代表的なものとしてリチウムイオン二次電池について以下に説明する。 リチウムイオン二次電池は、正極及び負極の両極においてリチウムの酸化・還元が行われ、電気エネルギーを貯蔵、放出する電池である。 【0059】 (電解液) リチウムイオン二次電池に用いられる電解液としては、例えばリチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解液などが挙げられる。・・・」 (イ)甲3に記載された発明 上記摘示から、甲3には,次の甲3発明(セパレータ)が記載されていると認められる。 [甲3発明(セパレータ)] 「多孔質膜と耐熱層とが積層されてなる積層多孔質フィルムであり、 耐熱層としては、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、芳香族ポリアミド、ポリイミド等のポリアミド系又はポリイミド系ポリマー;フィラー粒子を含む層が挙げられ、 前記フィラー粒子としては、無機物の微粒子又は有機物の微粒子が用いられる、二次電池用セパレータであって、 接着樹脂の一部又は全部が有機溶剤及び水中に、微粒子状に分散した二次電池用接着樹脂組成物により電極と接着された、非水電解液が用いられるリチウムイオン二次電池に用いられる二次電池用セパレータ。」 エ 甲4について (ア)甲4の記載事項 「[0021] 本発明の蓄電デバイス用セパレータについて説明する。 本発明の蓄電デバイス用セパレータは、少なくとも多孔膜を含む基材と、前記基材の少なくとも一つの面に配置された熱可塑性ポリマーと、を備える。 ・・・ [0022][ポリマー層] 熱可塑性ポリマーを含有する層(ポリマー層)について説明する。 上記ポリマー層は、多孔膜、又は少なくとも一方の表面に無機フィラー及び樹脂製バインダを含む多孔層を有する多孔膜(これらをあわせて「基材」ともいう。)の少なくとも片面上に形成される。ポリマー層は、前記基材の少なくとも片面の、少なくとも一部の領域に形成されていればよい。 上記ポリマー層は、熱プレスの工程を経ることにより、電極とセパレータとの間を接着させることができる。すなわち、前記ポリマー層は、接着層として機能し得るものである。 [0023] ポリマー層の基材に対する担持量は、固形分として0.05g/m^(2)以上1.50g/m^(2)以下が好ましく、より好ましくは0.07g/m^(2)以上1.00g/m2以下であり、更に好ましくは0.10g/m^(2)以上0.70g/m^(2)以下である。ポリマー層の基材に対する担持量を0.05g/m^(2)以上1.50g/m^(2)以下の範囲に制御することは、得られるセパレータにおいて、基材の孔の閉塞によるサイクル特性(透過性)の低下を抑制しつつ、ポリマー層と基材との接着力を一層向上させる効果、を発現する観点から好ましい。 ・・・」 「[0026] ポリマー層における熱可塑性ポリマーは、粒状の熱可塑性ポリマーを含むことが好ましく、熱可塑性ポリマーのすべてが粒状の熱可塑性ポリマーであることがより好ましい。 ・・・」 オ 甲5について (ア)甲5の記載事項 「【請求項1】 融点が100?170℃である熱溶融性樹脂(A)を主成分とする樹脂多孔質層(I)と、耐熱温度が150℃以上で電気絶縁性のフィラーを主成分とし、かつ前記フィラーがバインダ樹脂(B)で結着されて形成された耐熱多孔質層(II)とを有する電気化学素子用セパレータであって、 少なくとも一方の表面に、加熱しながら加圧することによって電気化学素子が有する電極との接着性が発現する接着性樹脂(C)が存在しており、 前記接着性樹脂(C)は、(i)ポリフッ化ビニリデン、(ii)フッ化ビニリデンとフッ素を含有する重合性ビニルモノマーとの共重合体、および(iii)アクリル系樹脂と(i)または(ii)とで構成された樹脂組成物よりなる群から選択される少なくとも1種であり、かつ平均粒子径が0.01?0.5μmの球状の前記接着性樹脂(C)が分散している液を、前記樹脂多孔質層(I)および前記耐熱多孔質層(II)のうちの少なくとも一方の表面に塗布する工程を経て存在 させたものであり、 前記接着性樹脂(C)が存在する面での、前記接着性樹脂(C)の目付けが、0.1?1.5g/m^(2)であることを特徴とする電気化学素子用セパレータ。」 「【0014】 本発明の電気化学素子用セパレータ(以下、単に「セパレータ」という)は、その少なくとも片面に、加熱しながら加圧することによって接着性が発現する接着性樹脂(C)が存在している。本発明のセパレータは、この接着性樹脂(C)の作用によって電気化学素子を構成する正極および/または負極と接着して一体化することができる。よって、本発明のセパレータを使用し、これを正極および/または負極と一体化させた電極体を用いた電気化学素子では、高温貯蔵途中や充放電を繰り返した状況下においても、正極-負極間の距離にばらつきが生じ難く、充放電特性の低下が抑制される。」 「【0021】 接着性樹脂(C)には、(i)ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、(ii)フッ化ビニリデンとフッ素を含有する重合性ビニルモノマーとの共重合体、および(iii)アクリル系樹脂と(i)または(ii)とで構成された樹脂組成物よりなる群から選択される少なくとも1種を使用する。」 カ 甲6について (ア)甲6の記載事項 「【0021】即ち、発明者らは、正負電極と隔膜を接合する接着性樹脂層に使用する樹脂材料の検討を行ううち、樹脂材料の種類そのもの以外の要因として、樹脂材料と、その樹脂材料を隔膜あるいは電極上に塗布形成するために用いる溶媒・分散媒との組み合わせが電池特性に影響することを発見し、結果として、樹脂材料として適度の粒度を有する高分子粉体を使用し、これを溶解することなく接着剤層として用いることで電池の特性を改善できることを見出すに至ったものである。」 キ 甲7について (ア)甲7の記載事項 「【請求項1】 多孔膜の少なくとも片面に、無機フィラーと樹脂バインダとを含む多孔層を備える電池用セパレータであって、 前記電池用セパレータの150℃における熱収縮率が5.0%未満であり、かつ前記電池用セパレータの引張強度が120MPa以上である、 前記電池用セパレータ。」 「【0088】 本発明のセパレータの引張強度は、電池の機械的安定性を向上させるという観点から、120MPa以上であることが好ましく、より好ましくは130MPa以上、更に好ましくは150MPa以上である。」 ク 甲8について (ア)甲8の記載事項 「【請求項1】 TMA測定におけるフィルム溶断温度が180℃以上で且つ引張破断強度が40MPa以上であることを特徴とする耐熱性合成樹脂微多孔フィルム。」 「【0016】 耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの引張破断強度は、40MPa以上であり、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの引張破断強度が上記範囲内であると、デンドライトや異物によって耐熱性合成樹脂微多孔フィルムが破損するのを抑制し、電極間の短絡を効果的に抑制することができる。なお、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの引張破断強度は、JIS K 7127に準拠して測定し、S-S曲線に基づいて算出された値をいう。」 「【0141】 本発明の耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、耐熱性及び耐メルトダウン性の双方に優れている。したがって、この耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、非水電解液二次電池用セパレータとして好適に用いられる。」 ケ 甲9の1について (ア)甲9の1の記載事項 「 」 [訳(申立人が甲9の2として提出した訳を採用): 請求項1 二次電池用電極接着性コーティング分離膜において、ポリオレフィン系多孔性基材;及び前記多孔性基材の一面に形成される耐熱及び電極接着機能を具備するコーティング層;を含んでおり、前記コーティング層は耐熱性無機フィラー(inorganic filler)と電極との接着のためのヒートシール(heat seal)用有機高分子を含むことを特徴とする二次電池用電極接着性コーティング分離膜。] 「 」 [訳(申立人が甲9の2として提出した訳を採用): 請求項7 請求項1において、前記コーティング分離膜は厚さ10?30μm、気孔率30?55%、通気度100?400sec/100ml、引張強度500?2000kgf/cm^(2)であることを特徴とする二次電池用電極接着性コーティング分離膜。] コ 甲10について (ア)甲10の記載事項 「【請求項1】 ポリオレフィンを含む多孔質基材と、 前記多孔質基材の両面に設けられ、耐熱性樹脂を含む耐熱性多孔質層と、 前記耐熱性多孔質層の少なくとも一方の上に設けられ、フッ素系樹脂を含む接着性多孔質層と、 を備えた非水電解質電池用セパレータ。 【請求項2】 前記接着性多孔質層は、塗工量が0.5g/m^(2)以上3.5g/m^(2)以下の範囲である、請求項1に記載の非水電解質電池用セパレータ。」 「【請求項4】 前記耐熱性多孔質層は、無機フィラーを含み、前記無機フィラーの含有量が、前記耐熱性樹脂1質量部に対し1?10質量部の範囲である、請求項1?請求項3のいずれか1項に記載の非水電解質電池用セパレータ。」 「【請求項6】 前記耐熱性樹脂は、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド及びポリスルホンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1?請求項5のいずれか1項に記載の非水電解質電池用セパレータ。」 「【請求項8】 正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項1?請求項7のいずれか1項に記載の非水電解質電池用セパレータとを備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水電解質電池。」 「【0012】 前記ポリオレフィン微多孔膜としては、従来の非水電解質電池用セパレータに適用されているポリオレフィン微多孔膜の中から、十分な力学物性とイオン透過性を有するものを好適に用いることができる。 ・・・ ほかに、高温に晒されたときの電池の安全性を確保する観点からは、ポリエチレンに加えポリプロピレンも含むポリオレフィン微多孔膜が好適である。・・・」 「【0016】 [耐熱性多孔質層] 前記耐熱性多孔質層としては、微多孔膜状、不織布状、紙状、その他三次元ネットワーク状の多孔質構造を有した層を挙げることができる。耐熱性多孔質層としては、より優れた耐熱性が得られる観点から、微多孔膜状の層であることが好ましい。ここで、微多孔膜状の層とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった層をいう。耐熱性とは、200℃未満の温度領域で溶融ないし分解等を起こさない性状をいう。」 (イ)甲10に記載された発明 上記摘示から、甲10には、次の甲10発明(セパレータ)’が記載されていると認められる。 [甲10発明(セパレータ)’] 「ポリオレフィンを含む多孔質基材と、 前記多孔質基材の両面に設けられ、耐熱性樹脂を含む耐熱性多孔質層と、 前記耐熱性多孔質層の少なくとも一方の上に設けられ、フッ素系樹脂を含む接着性多孔質層と、を備え、 前記耐熱性樹脂は、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド及びポリスルホンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、 前記耐熱性多孔質層は、無機フィラーを含み、前記無機フィラーの含有量が、前記耐熱性樹脂1質量部に対し1?10質量部の範囲であり、 前記接着性多孔質層は、塗工量が0.5g/m^(2)以上3.5g/m^(2)以下の範囲である、 非水電解質電池用セパレータ。」 サ 甲11について (ア)甲11の記載事項 「【請求項1】 ポリオレフィン微多孔膜と、このポリオレフィン微多孔膜の両面に被覆され耐熱性樹脂を含んで構成された耐熱性多孔質層と、を備えた複合膜からなる非水系二次電池用セパレータであって、 水銀圧入法を用いて前記耐熱性多孔質層の単位面積当たりにおける細孔径(μm)と積算細孔容積(ml/m^(2))との関係を示す細孔プロットを求めた場合に、 この細孔プロットにおいて、所定の細孔径において積算細孔容積が負となる部分が生じることを特徴とする非水系二次電池用セパレータ。」 「【請求項8】 前記耐熱性多孔質層が無機フィラーを含むことを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の非水系二次電池用セパレータ。」 【請求項10】 前記耐熱性樹脂が、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミドから成る群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1?9のいずれかに記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項11】 前記耐熱性樹脂がポリメタフェニレンイソフタルアミドあることを特徴とする請求項10に記載の非水系二次電池用セパレータ。」 「【0025】 本発明において、耐熱性多孔質層は、ポリオレフィン微多孔膜の両面に被覆された耐熱性樹脂を含む多孔質被覆層である。この耐熱性多孔質層は、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が互いに連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となっている。・・・ 【0026】 本発明における耐熱性樹脂としては融点が200℃以上の樹脂が挙げられるが、これには実質的に融点が存在しない熱分解温度が200℃以上の樹脂も含まれる。このような耐熱性樹脂としては、例えば全芳香族ポリアミドやポリアミドイミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セルロース等を挙げることができる。これらのうち全芳香族ポリアミドが、二次電池の耐久性が優れたものになるため好ましい。上記の全芳香族ポリアミドにはメタ型とパラ型があるが、メタ型の方がより二次電池の耐久性に優れるという観点から好ましく、多孔構造を形成しやすいという観点からも好適である。特に、本発明においては全芳香族ポリアミドがポリメタフェニレンイソフタルアミドあることが好ましい。 【0027】 本発明におけるポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィンからなり、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった膜である。本発明におけるポリオレフィンとしては、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリメチルペンテン、これらの組合せ等が挙げられる。特に好ましいのはポリエチレンであるが、このポリエチレンとしては高密度ポリエチレンや、高密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンの混合物等が好適である。本発明では、このようなポリオレフィン微多孔膜により、シャットダウン機能が発現される。 【0028】 本発明において、耐熱性多孔質層には無機フィラーが含まれていることが好ましい。・・・」 「【0029】 耐熱性多孔質層中における無機フィラーの含有量は、耐熱性樹脂の体積に対し、0.4?4倍であることが好ましい。無機フィラーの含有量が耐熱性樹脂の含有量に対し0.4倍未満であると、無機フィラーの耐熱性向上の効果が十分に得られないことがある。また、無機フィラーの含有量が耐熱性樹脂の体積に対し4倍を超えると、耐熱性多孔質層が緻密化されすぎ、イオン透過性が低下する場合がある。」 「【0031】 本発明において、無機フィラーの種類としては、特に限定されるものではないが、例えば金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属炭酸塩、金属水酸化物などが挙げられる。中でもアルミナやジルコニア、シリカ、マグネシア、チタニアといった金属酸化物、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム、ベーマイトといった金属水酸化物、活性アルミナや活性炭、ゼオライト等の多孔性無機物が好適である。これらの無機フィラーは2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。」 「【0048】 [非水系二次電池] 本発明の非水系二次電池用セパレータは、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る形態の非水系二次電池であれば、いかなる形態の非水系二次電池においても適用可能である。一般的な非水系二次電池は、負極と正極がセパレータを介して対向している電池要素に電解液が含浸され、これが外装に封入された構造となっている。」 (イ)甲11に記載された発明 上記摘示から、甲11には、次の甲11発明(セパレータ)’が記載されていると認められる。 [甲11発明(セパレータ)’] 「ポリオレフィン微多孔膜と、 このポリオレフィン微多孔膜の両面に被覆され耐熱性樹脂を含んで構成された耐熱性多孔質層と、を備えた複合膜からなる非水系二次電池用セパレータであって、 水銀圧入法を用いて前記耐熱性多孔質層の単位面積当たりにおける細孔径(μm)と積算細孔容積(ml/m2)との関係を示す細孔プロットを求めた場合に、この細孔プロットにおいて、所定の細孔径において積算細孔容積が負となる部分が生じることを特徴とし、 前記耐熱性樹脂が、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミドから成る群から選ばれる少なくとも一種であり、特に、ポリメタフェニレンイソフタルアミドであり、 前記耐熱性多孔質層が無機フィラーを含み、 前記耐熱性多孔質層中における前記無機フィラーの含有量が前記耐熱性樹脂の体積に対し、0.4?4倍である、 非水系二次電池用セパレータ。」 シ 甲12について (ア)甲12の記載事項 「[0013]<非水電解質電池用セパレータ> 本発明の非水電解質電池用セパレータは、ポリオレフィン微多孔質基材(以下「微多孔質基材」及び「基材」とも称する。)と、前記ポリオレフィン微多孔質基材の片面又は両面に設けられ耐熱性高分子を含む耐熱性多孔質層とを備える。かかる構成により、前記非水電解質電池用セパレータは、シャットダウン機能と耐熱性とを有する。 ・・・」 「[0033] 前記ポリオレフィン微多孔質基材は、微多孔質基材の成型性、耐熱性及び機械強度の確保の観点から、ポリプロピレン樹脂を含んでもよい。」 「[0045] (耐熱性多孔質層) 本発明における耐熱性多孔質層は、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が一方の面から他方の面へ連通した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった層を意味する。」 「[0051][耐熱性高分子] ・・・例えば、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド及びセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂が挙げられる。 さらにかかる耐熱性樹脂は、電解質溶液に対し不溶性であり、耐久性が高いことにより全芳香族ポリアミドが好適であり、多孔質層を形成しやすく、電極反応において耐酸化還元性に優れるという観点から、メタ型全芳香族ポリアミドであるポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリパラフェニレンテレフタルアミドが更に好適であり、ポリメタフェニレンイソフタルアミドが特に好適である。 ・・・」 「[0053][無機フィラー] 前記耐熱性多孔質層には無機フィラーが含まれていることが好ましい。・・・ 」 「[0055] ・・・ 前記耐熱性多孔質層における無機フィラーの含有量は、耐熱性向上効果、透過性及びハンドリング性の観点から、50?95質量%であることが好ましい。 ・・・」 「[0063]<非水電解質二次電池> 本発明の非水電解質二次電池は、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水電解質二次電池であって、正極と、負極と、本発明の非水電解質電池用セパレータを備える。非水電解質二次電池は、負極と正極がセパレータを介して対向している電池要素に電解液が含浸され、これが外装に封入された構造を有する。 ・・・」 「[0073](6)ガーレ値 ポリオレフィン微多孔質基材及び非水電解質電池用セパレータのガーレ値は、JIS P8117に従って求めた。」 「[0077]<樹脂の製造> (重合例1) [界面重合法によるポリメタフェニレンイソフタルアミドの重合] イソフタル酸クロライド160.5gをテトラヒドロフラン1120mlに溶解させて溶液を調製した。別途、メタフェニレンジアミン85.2gをモレキュラーシーブで脱水乾燥させ、テトラヒドロフラン1120mlに溶解させて溶液を調製した。前者の溶液を撹拌しながら、後者の溶液を細流として徐々に加えて、白濁した乳白色の溶液を得た。撹拌を約5分間継続した後、更に撹拌しながら、炭酸ソーダ167.6gと食塩317gを3400mlの水に溶かした水溶液を速やかに加え、5分間撹拌した。反応物は数秒後に粘度が増大し、その後低下し、白色の懸濁液が得られた。これを静置し、分離した透明な水溶液層を取り除き、濾過し、ポリメタフェニレンイソフタルアミド(以下、PMIA(1)と称することがある。)を185.3g得た。 PMIA(1)は、重量平均分子量(ポリスチレン換算)(ダルトン)が7.5万であり、分子量100万以上の分子の含有量が20質量%であった。 [0078](重合例2) [ポリプロピレンの重合] 500mlのフラスコに20mlのヘプタン、4gのジエトキシマグネシウム及び1.2gのフタル酸ジn-ブチルを加え、90℃で撹拌しながら5mlの四塩化チタンを滴下後110mlの四塩化チタンを追加し、110℃で2時間反応させた。得られた生成物を80℃のヘプタン100mlで洗浄した。次に、115mlの四塩化チタンを加え110℃で2時間反応させた。反応終了後ヘプタンで数回洗浄し、固体触媒成分を得た。1Lのオートクレーブに400mlのヘプタン、1mmolのトリエチルアルミニウム、1-アリル-3,4-ジメトキシベンゼン0.12g及び前記固体触媒成分5mgを投入し、プロピレンモノマーを全圧9kg/cm^(2)になるように導入し、70℃で2時間重合を行い、重量平均分子量18万のアタクチップポリプロピレンを得た。 [0079]<ポリオレフィン微多孔質基材の製造> 本発明の実施例及び比較例で使用したポリオレフィン微多孔質基材(製造例1?製造例13)は、以下に記載の方法で製造した。 製膜材料として、下記のポリエチレン及びポリプロピレンを用意した。 ・GUR2126:Ticona社製、重量平均分子量415万 ・GURX143:Ticona社製、重量平均分子量56万 ・ハイゼックス8000F:プライムポリマー社製、重量平均分子量25万 ・ハイゼックス7000F:プライムポリマー社製、重量平均分子量20万 ・ポリプロピレン:前記重合例2、重量平均分子量18万 [0080](製造例1) GUR2126とGURX143とハイゼックス8000Fとハイゼックス7000Fを混合比2:37:13:48(質量比)の割合で混合した。このポリエチレン混合物のGPC測定による重量平均分子量(ポリスチレン換算)(ダルトン)は、46万であった。また、ポリオレフィンの総量に対する分子量10万以下のポリオレフィンの含有量は23質量%であった。 [0081] 上記のポリエチレン混合物を、ポリエチレン濃度が30質量%となるように流動パラフィン(松村石油研究所社製スモイルP-350P、沸点480℃)とデカリンの混合溶媒中に溶解させ、ポリエチレン溶液を作製した。このポリエチレン溶液の組成は、ポリエチレン:流動パラフィン:デカリン=30:45:25(質量比)であった。 [0082] 上記で得たポリエチレン溶液を148℃でダイから押し出し、0℃の水浴中の冷却ロールを通し、60℃/分以上の速度で急速に冷却してゲル状テープ(ベーステープ)を作製した。このベーステープを60℃で8分、95℃で15分乾燥した。次いで、縦延伸と横延伸とを順次行う2軸延伸にてベーステープを延伸し、横延伸の後に125℃で熱固定を行って、シートを得た。ここで、縦延伸(MD方向)は、延伸倍率が5倍で延伸温度が90℃であり、横延伸(TD方向)は、延伸倍率が8倍で延伸温度は105℃であり、面延伸倍率を40倍とした。 次に、上記で得たシートを塩化メチレン浴に浸漬し、流動パラフィンとデカリンを抽出除去した。その後、50℃で乾燥し塩化メチレンを除去し、120℃で10分アニール処理し、ポリオレフィン微多孔質基材を得た。以下、このポリオレフィン微多孔質基材をPO1と略称することがある。 [0083] PO1は、ベーステープの成膜、延伸、後処理の各工程において、操作上の問題なく良好に製造することができた。PO1の膜特性を表1に記載した。 [0084](製造例2?製造例9) 製造例1と同様にして、ただし、ポリオレフィンの総量に対する分子量10万以下のポリオレフィンの含有量が表1及び表2記載の質量%になるようにGUR2126とGURX143とハイゼックス8000Fとハイゼックス7000Fとポリプロピレンの混合比を変えてポリオレフィン溶液を作製し、ポリオレフィン微多孔質基材PO2?PO9を得た。 PO2?PO9は、ベーステープの成膜、延伸、後処理の各工程において、操作上の問題なく良好に製造することができた。PO2?PO9の膜特性を表1及び表2に記載した。」 「[0089] [表1] 」 「[0091]<非水電解質電池用セパレータの製造> (実施例1) -耐熱性多孔質層の塗工用スラリーの作製- 前記重合例1のPMIA(1)と、無機フィラーとして平均粒子径0.8μmの水酸化アルミニウム(昭和電工社製H-43M)とを用意した。両者の混合比(PMIA(1):水酸化アルミニウム)が25:75(質量比)で、PMIA(1)の濃度が5.5質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)との混合溶媒(DMAc:TPG=50:50[質量比])に混合し、塗工用スラリーを作製した。 [0092]-耐熱性多孔質層の形成- 約20μmのクリアランスで対峙させた一対のマイヤーバー(番手#6)に、上記塗工用スラリーを適量のせ、ポリオレフィン微多孔質基材PO1をマイヤーバー間に通して、一対のマイヤーバーを回転させない(無回転法)で、PO1の両面に塗工用スラリーを塗工した。 これを、両端をチャックで把持して、20℃の凝固液(水:DMAc:TPG=50:25:25[質量比])に浸漬した。次いで、水洗と乾燥を行い、PO1の両面に耐熱性多孔質層(両面各2μm)を設けた非水電解質電池用セパレータを得た。この非水電解質電池用セパレータの特性と、この非水電解質電池用セパレータを備えた電池の性能を表3に記載した。 [0093] (実施例2?実施例6) 実施例1において、ポリオレフィン微多孔質基材PO1を表3に記載の基材に替え、そのほかは同様にして、非水電解質電池用セパレータを製造した。各非水電解質電池用セパレータの特性と、各非水電解質電池用セパレータを備えた電池の性能を表3に記載した。」 「[0102] [表3] 」 「[請求項1] ポリオレフィンの総量に対する分子量10万以下のポリオレフィンの含有量が10質量%以上25質量%以下であるポリオレフィン微多孔質基材と、 前記ポリオレフィン微多孔質基材の片面又は両面に設けられ耐熱性高分子を含む耐熱性多孔質層とを備え、 下記式(1)で表されるSの最大値が0.8以上であり、 前記最大値を示す温度が130℃以上155℃以下である、非水電解質電池用セパレータ。 式(1) S=d(logR)/dT [式(1)中、Rは、非水電解質電池用セパレータを配置したセルを含む電池を用いて昇温速度1.6℃/分の条件で測定した前記セルの抵抗(ohm・cm^(2) )を表し、Tは温度(℃)を表す。]」 「[請求項6] 正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項1?請求項5のいずれか1項に記載の非水電解質電池用セパレータとを備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水電解質二次電池。」 (イ)甲12に記載された発明 a 上記摘示、特に、[0013]、[0033]、[0045]、[0051]、[0053]、[0055]、[0063]、請求項6から、甲12には、次の甲12発明(セパレータ)’が記載されていると認められる。 [甲12発明(セパレータ)’] 「ポリオレフィン微多孔質基材と、前記ポリオレフィン微多孔質基材の片面又は両面に設けられ耐熱性高分子を含む耐熱性多孔質層とを備え、 耐熱性高分子は、例えば、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド及びセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であり、全芳香族ポリアミドが好適であり、メタ型全芳香族ポリアミドであるポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリパラフェニレンテレフタルアミドが更に好適であり、ポリメタフェニレンイソフタルアミドが特に好適であり、 前記耐熱性多孔質層には無機フィラーが含まれていることが好ましく、 前記耐熱性多孔質層における無機フィラーの含有量は、耐熱性向上効果、透過性及びハンドリング性の観点から、50?95質量%であることが好ましく、 前記ポリオレフィン微多孔質基材は、ポリプロピレン樹脂を含んでもよい、 非水電解質電池用セパレータ。」 b また、上記摘示、特に、[0077]?[0084]、[0089]、[0091]?[0093]、[0102]から、甲12には、次の甲12-実施例4発明が記載されていると認められる。 [甲12-実施例4発明’] 「ポリメタフェニレンイソフタルアミドと、無機フィラーとして水酸化アルミニウムとを、両者の混合比(ポリメタフェニレンイソフタルアミド:水酸化アルミニウム)が25:75で、混合溶媒(DMAc:TPG=50:50[質量比])に混合し、塗工用スラリーを作製し、ポリオレフィン微多孔質基材PO4の両面に塗工用スラリーを塗工し、凝固液に浸漬し、次いで、水洗と乾燥を行い、ポリオレフィン微多孔質基材PO4の両面に耐熱性多孔質層を設けた、非水電解質電池用セパレータであって、 ガーレ値は245秒/100ccであり、ポリオレフィン微多孔質基材PO4のガーレ値は145秒/100ccであり、 ポリオレフィン微多孔質基材PO4は、ポリプロピレンを5質量%含む、 非水電解質電池用セパレータ。」 (4)甲1を主たる引用例とした場合について ア 甲1発明(セパレータ)’について (ア) 本件発明4について a 本件発明4と甲1発明(セパレータ)’との対比 (a)甲1発明(セパレータ)’の「ポリオレフィン微多孔膜」は、本件発明4の「多孔質基材」に相当する。 (b)甲1発明(セパレータ)’の「耐熱性樹脂を含む耐熱性多孔質層とを備え」、「耐熱性多孔質層を構成する耐熱性樹脂としては、好ましくは全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、及びセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であり、ポリメタフェニレンイソフタルアミドがさらに好適であり、耐熱性多孔質層は、無機フィラーの少なくとも一種が含まれていることが好ましく」との発明特定事項は、「耐熱性樹脂」が「全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド」である場合、または「無機フィラー」を含む場合に、本件発明4の「分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂及び無機粒子の少なくとも一方を含有する耐熱性多孔質層」に相当する。 (c)本件発明4には、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との間の剥離強度」の数値範囲が記載され、甲1発明(セパレータ)’には、「前記耐熱性多孔質層の前記ポリオレフィン微多孔膜に対する剥離力」の数値範囲が記載されているが、本件特許明細書の段落【0214】に記載の「剥離強度」の測定方法と、甲1の【0015】、【0064】に記載の「剥離力」の測定方法とは、測定サンプルの幅などにおいて測定方法が異なっており、両者の数値を直接換算することはできない。 (d)したがって、本件発明4と甲1発明(セパレータ)’とは、以下の一致点1-1-2において一致し、以下の相違点1-1-3、1-1-4、1-1-5、1-1-8において相違する。 [一致点1-1-2] 「多孔質基材と、 前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂及び無機粒子の少なくとも一方を含有する耐熱性多孔質層と、 を備えた非水系二次電池用セパレータ。」 [相違点1-1-3] 本件発明4は、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層」を備えるものであるのに対し、甲1発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 [相違点1-1-4] 本件発明4は、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との間の剥離強度が5N/m?75N/mである」のに対し、甲1発明(セパレータ)’は「前記耐熱性多孔質層の前記ポリオレフィン微多孔膜に対する剥離力が0.05N/cm以上0.5N/cm以下である」点。 [相違点1-1-5] 本件発明4は、「前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含」むものであるのに対し、甲1発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 [相違点1-1-8] 本件発明4は、「前記接着層に含まれる前記第一の接着性樹脂粒子と前記第二の接着性樹脂粒子との質量比が前記第一の接着性樹脂粒子:前記第二の接着性樹脂粒子=50:50?90:10であ」るのに対し、甲1発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 b 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点1-1-8から検討する。 甲2の[0160]、[0165]には、セパレータと電極とを接着する接着性樹脂粒子において、フッ化ビニリデンの単独重合体の構成が記載されているとともに、ポリフッ化ビニリデンとアクリル系ポリマーの混合物、及びポリフッ化ビニリデン共重合体とアクリル系ポリマーの混合物は、耐酸化性の観点からポリフッ化ビニリデンまたはポリフッ化ビニリデン共重合体をアクリル系ポリマーに対して20質量%以上含ことが好ましいことが記載されているが、接着層に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂の粒子とアクリル系樹脂の粒子との質量比を50:50?90:10とすることは記載されていない。 また、甲5には、セパレータと電極とを接着する接着層に含まれるポリフッ化ビニリデンの粒子とアクリル系樹脂の粒子との質量比については記載されていない。 そして、他の証拠においても、セパレータと電極との間の接着層に含まれるポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との質量比を前記第一の接着性樹脂粒子:前記第二の接着性樹脂粒子=50:50?90:10とすることは記載されていない。 ここで、(2)で示した特許権者が主張する本件発明4の効果について検討する。 本件特許明細書等には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物に関して以下の記載がある。 「 【0292】 <第二のセパレータの作製> [実施例D1] メタ型アラミド(ポリメタフェニレンイソフタルアミド、帝人、コーネックス)と、水酸化マグネシウム(協和化学社、キスマ5P、体積平均粒径0.8μm、BET比表面積6.8m^(2)/g)とを、両者の質量比が20:80で、メタ型アラミド濃度が4質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)の混合溶媒(DMAc:TPG=80:20[質量比])に攪拌混合し、塗工液(D1)を得た。 【0293】 ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子(融点140℃、体積平均粒径0.2μm)が水に分散したPVDF粒子分散液(固形分濃度7質量%)を用意した。 【0294】 一対のマイヤーバーに塗工液(D1)を適量のせ、ポリエチレン微多孔膜(厚さ6μm、空孔率40%、ガーレ値100秒/100mL)をマイヤーバー間に通して、塗工液(D1)を両面に等量塗工した。これを、凝固液(DMAc:TPG:水=30:8:62[質量比]、液温40℃)に浸漬し塗工層を固化させ、次いで、水温40℃の水洗槽で洗浄し、乾燥した。次いで、これを、PVDF粒子分散液を適量のせた一対のバーコータ間に通して、PVDF粒子分散液を両面に等量塗工し、乾燥した。こうして、ポリエチレン微多孔膜の両面に耐熱性多孔質層及び接着層が形成されたセパレータを得た。 【0295】 [実施例D2] PVDF粒子分散液を、アクリル樹脂粒子(ガラス転移温度59℃、体積平均粒径0.5μm)が水に分散したアクリル樹脂粒子分散液(固形分濃度7質量%)に変更した以外は、実施例D1と同様にしてセパレータを作製した。」 「 【0306】 [実施例D19] PVDF粒子分散液を、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子(融点140℃、体積平均粒径0.2μm)とアクリル樹脂粒子(ガラス転移温度59℃、体積平均粒径0.5μm)とが質量比90:10にて水に分散した水性分散液(固形分濃度7質量%)に変更した以外は、実施例D1と同様にしてセパレータを作製した。 【0307】 [実施例D20] PVDF粒子分散液を、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子(融点140℃、体積平均粒径0.2μm)とアクリル樹脂粒子(ガラス転移温度59℃、体積平均粒径0.5μm)とが質量比70:30にて水に分散した水性分散液(固形分濃度7質量%)に変更した以外は、実施例D1と同様にしてセパレータを作製した。 【0308】 [実施例D21] PVDF粒子分散液を、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子(融点140℃、体積平均粒径0.2μm)とアクリル樹脂粒子(ガラス転移温度59℃、体積平均粒径0.5μm)とが質量比50:50にて水に分散した水性分散液(固形分濃度7質量%)に変更した以外は、実施例D1と同様にしてセパレータを作製した。」 「 【0318】 【表8】 」 上記本件特許明細書等の記載から、特許権者が主張するように、接着層に含まれる樹脂粒子がポリフッ化ビニリデン樹脂粒子のみである実施例D1と、ポリフッ化ビニリデン系樹脂粒子とアクリル系樹脂粒子との質量比が50:50、70:30、90:10である実施例D19?D21とでは、実施例D19?D21の方が、「引張強度」及び「電極との接着強度」において優れていることが理解できる。 また、接着層に含まれる樹脂粒子がアクリル系樹脂粒子のみである実施例D2と、実施例D19?D21とでは、実施例D19?D21の方が、「引張強度」において優れていることが理解できる。 そして、これらの効果は、本件特許の出願時において当業者が予測し得ないものである。 そうすると、甲1発明(セパレータ)’において、セパレータと電極とを接着性樹脂粒子にて接着すると共に、当該接着性樹脂粒子として、引張強度及び電極との接着強度を高度に両立するという効果を予測して、ポリフッ化ビニリデン系樹脂粒子とアクリル系樹脂粒子との質量比が50:50?90:10のものを採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 c 小括 したがって、他の相違点に係る容易想到性について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1発明(セパレータ)’及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (イ) 本件発明12?15について 本件発明12?15は、請求項4を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点1-1-8において甲1発明(セパレータ)’と相違するものであるところ、当該相違点についての判断は、上記(ア)bのとおりであるから、本件発明12?15も、甲1発明(セパレータ)’ 及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 甲1-実施例1発明’について (ア) 本件発明4について a 本件発明4と甲1-実施例1発明’との対比 (a)甲1-実施例1発明’の「ポリエチレン微多孔膜」は、本件発明4の「多孔質基材」に相当する。 (b)甲1-実施例1発明’の「ポリメタフェニレンイソフタルアミド」は、本件発明4の「分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂」のうち「分子中にアミド結合を有する耐熱性樹脂」に相当する。 (c)甲1-実施例1発明’の「水酸化アルミニウム」は、本件発明の「無機粒子」に相当する。 (d)甲1-実施例1発明’の「耐熱性多孔質層」は「ポリエチレン微多孔膜」の「両面」に形成されたものである。 (e)上記(a)?(d)より、甲1-実施例1発明’における「耐熱性多孔質層」と、本件発明4の「前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂及び無機粒子の少なくとも一方を含有する耐熱性多孔質層」とは、「前記多孔質基材の両面に設けられ、分子中にアミド結合を有する耐熱性樹脂及び無機粒子の少なくとも一方を含有する耐熱性多孔質層」において一致する。 (f)上記ア(ア)a(c)で述べた理由により、本件発明4の「剥離強度」と甲1-実施例1発明’の「剥離力」とは直接相互に換算できるものではない。 (g)したがって、本件発明4と甲1-実施例1発明’とは、以下の一致点1-2-1において一致し、以下の相違点1-2-1、1-2-2、1-2-3、1-2-9において相違する。 [一致点1-2-1] 「多孔質基材と、 前記多孔質基材の両面に設けられ、分子中にアミド結合を有する耐熱性樹脂及び無機粒子の少なくとも一方を含有する耐熱性多孔質層と、 を備えた非水系二次電池用セパレータ。」 [相違点1-2-1] 本件発明4は、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層」を備えるものであるのに対し、甲1-実施例1発明’はそのようなものではない点。 [相違点1-2-2] 本件発明4は、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との間の剥離強度が5N/m?75N/mである」のに対し、甲1-実施例1発明’は、「前記耐熱性多孔質層の前記ポリオレフィン微多孔膜に対する剥離力が0.05N/cm以上0.5N/cm以下である」点。 [相違点1-2-3] 本件発明4は、「前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含」むものであるのに対し、甲1-実施例1発明’はそのようなものではない点。 [相違点1-2-9] 本件発明4は、「前記接着層に含まれる前記第一の接着性樹脂粒子と前記第二の接着性樹脂粒子との質量比が前記第一の接着性樹脂粒子:前記第二の接着性樹脂粒子=50:50?90:10であ」るのに対し、甲1-実施例1発明’はそのようなものではない点。 b 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点1-2-9から検討する。 相違点1-2-9は、上記相違点1-1-8と同様の相違点であり、上記ア(ア)bで述べた理由と同様の理由により、甲1-実施例1発明’において、セパレータと電極とを接着性樹脂粒子にて接着すると共に、当該接着性樹脂粒子として、引張強度及び電極との接着強度を高度に両立するという効果を予測してポリフッ化ビニリデン系樹脂粒子とアクリル系樹脂粒子との質量比が50:50?90:10のものを採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 c 小括 したがって、他の相違点に係る容易想到性について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1-実施例1発明’及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (イ) 本件発明11?15について 本件発明11?15は、請求項4を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点1-2-9において甲1-実施例1発明’と相違するものであるところ、当該相違点についての判断は、上記(ア)bとおりであるから、本件発明11?15も、甲1-実施例1発明’及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 甲1を主たる引用例とした場合についての結論 よって、本件発明4、11?15は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項4、11?15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すことはできない。 (5)甲2を主たる引用例とした場合について ア 本件発明4について (ア)本件発明4と甲2発明との対比 a 甲2発明の「ポリエチレン微多孔膜」は、本件発明4の「多孔質基材」に相当する。 b 甲2発明の「水酸化マグネシウム」、「無機フィラー」は、本件発明4の「無機粒子」に相当する。 c 上記bより、甲2発明の「樹脂粒子と無機フィラーの集合体である耐熱性多孔質層」は、本件発明4の「分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂及び無機粒子の少なくとも一方を含有する耐熱性多孔質層」と、「樹脂」及び「無機粒子」を含有する「耐熱性多孔質層」において一致する。 d 甲2発明と本件発明4とは、「多孔質基材」の「両面」に「耐熱性多孔質層」が設けられている点で一致する。 e 甲2発明の「ポリエチレン微多孔膜の両面に、樹脂粒子と無機フィラーの集合体である耐熱性多孔質層が形成された積層体」は、本件発明4の「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体」に相当する。 f 甲2発明の「スチレン-ブタジエンゴムからなる樹脂粒子」は、本件発明4の「接着性樹脂粒子」に相当する。 g 上記fより、甲2発明の「スチレン-ブタジエンゴムからなる樹脂粒子を含む水系エマルションを、接着性多孔質層形成用塗工液として使用し、塗工後に乾燥させて接着性多孔質層」は、本件発明4の「接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層」に相当する。 h 甲2発明と本件発明4とは、「積層体」の「両面」に「接着層」が設けられている点で一致する。 i したがって、本件発明4と甲2発明とは、以下の一致点2-1において一致し、以下の相違点2-1、2-2、2-7、2-8において相違する。 [一致点2-1] 「多孔質基材と、 前記多孔質基材の両面に設けられ、樹脂及び無機粒子の少なくとも一方を含有する耐熱性多孔質層と、 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層と、 を備えた非水系二次電池用セパレータ。」 [相違点2-1] 本件発明4は、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との間の剥離強度が5N/m?75N/mである」のに対し、甲2発明は、そのようなものではない点。 [相違点2-2] 本件発明5は、「前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含む」ものであるのに対し、甲2発明はそのようなものではない点。 [相違点2-7] 本件発明4は、「耐熱性多孔質層」が「分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂」を含有するものであるのに対し、甲2発明は、「耐熱性多孔質層」が含有する樹脂が「ポリフッ化ビニリデン系樹脂とアクリルポリマーとの混合物である樹脂粒子」である点。 [相違点2-8] 本件発明4は、「前記接着層に含まれる前記第一の接着性樹脂粒子と前記第二の接着性樹脂粒子との質量比が前記第一の接着性樹脂粒子:前記第二の接着性樹脂粒子=50:50?90:10であ」るのに対し、甲2発明はそのようなものではない点。 (イ)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点2-8から検討する。 相違点2-8は、上記相違点1-1-8と同様の相違点であり、上記(4)ア(ア)bで述べた理由と同様の理由により、甲2発明において、接着性樹脂粒子として、引張強度及び電極との接着強度を高度に両立するという効果を予測してポリフッ化ビニリデン系樹脂粒子とアクリル系樹脂粒子との質量比が50:50?90:10のものを採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ)小括 したがって、他の相違点に係る容易想到性について検討するまでもなく、本件発明4は、甲2発明と甲1に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 本件発明11?15について 本件発明11?15は,請求項4を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点2-8において甲2発明と相違するものであるところ、当該相違点についての判断は,上記ア(イ)のとおりであるから、本件発明11?15も、甲2発明と甲1に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 甲2を主たる引用例とした場合についての結論 よって、本件発明4、11?15は、甲2に記載された発明と甲1に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項4、11?15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すことはできない。 (6)甲3を主たる引用例とした場合について ア 本件発明4について (ア)本件発明4と甲3発明(セパレータ)との対比 a 甲3発明(セパレータ)の「多孔質膜」は、本件発明4の「多孔質基材」に相当する。 b 甲3発明(セパレータ)の「多孔質膜と耐熱層とが積層されてなる積層多孔質フィルム」との記載から、「耐熱層」を積層した状態でも多孔性が保たれていると認められるから、甲3発明(セパレータ)の「耐熱層」は、本件発明4の「耐熱性多孔質層」に相当する。 c 甲3発明(セパレータ)の「ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、芳香族ポリアミド、ポリイミド等のポリアミド系又はポリイミド系ポリマー」は、本件発明4の「分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂」に相当する。 d 甲3発明(セパレータ)の「無機物の微粒子」は、本件発明4の「無機粒子」に相当する。 e 上記b?dより、甲3発明(セパレータ)の「耐熱層としては、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、芳香族ポリアミド、ポリイミド等のポリアミド系又はポリイミド系ポリマー;フィラー粒子を含む層が挙げられ、前記フィラー粒子としては、無機物の微粒子又は有機物の微粒子が用いられる」との記載により特定される「耐熱層」は、本件発明4の「分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂及び無機粒子の少なくとも一方を含有する耐熱性多孔質層」に相当する。 f 甲3発明(セパレータ)の「耐熱層」は、「多孔質膜」の両面に設けられているか片面のみに設けられているか特定されていないが、「耐熱層」は、「多孔質膜」の両面に設けられているか片面に設けられるかのいずれかであり、それ以外の場合は想定し得ないでから、甲3発明(セパレータ)は、「耐熱層」が「多孔質膜」の「片面又は両面に設けられ」ているといえる。 g 甲3発明(セパレータ)の「多孔質膜と耐熱層とが積層されてなる積層多孔質フィルム」は、本件発明1の「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体」に相当する。 h 甲3発明(セパレータ)の「接着樹脂の一部又は全部が有機溶剤及び水中に、微粒子状に分散した二次電池用接着樹脂組成物」の個々の「微粒子状」の「接着樹脂」は、本件発明4の「接着性樹脂粒子」に相当し、甲3発明(セパレータ)の「二次電池用接着樹脂組成物」の全体は、本件発明4の「接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層」に相当する。 i 上記fで述べた理由と同様の理由で、甲3発明(セパレータ)の「二次電池用接着樹脂組成物」は、「多孔質膜と耐熱層とが積層されてなる積層多孔質フィルム」の「片面又は両面に設けられ」ているといえる。 j したがって、本件発明4と甲3発明(セパレータ)とは、以下の一致点3-2において一致し、以下の相違点3-2、3-3、3-8において相違する。 [一致点3-2] 「多孔質基材と、 前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂及び無機粒子の少なくとも一方を含有する耐熱性多孔質層と、 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層と、を備える 非水系二次電池用セパレータ。」 [相違点3-2] 本件発明4は、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との間の剥離強度が5N/m?75N/mである」のに対し、甲3発明(セパレータ)は、そのようなものではない点。 [相違点3-3] 本件発明4は、「前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含む」ものであるのに対し、甲3発明(セパレータ)はそのようなものではない点。 [相違点3-8] 本件発明4は、「前記接着層に含まれる前記第一の接着性樹脂粒子と前記第二の接着性樹脂粒子との質量比が前記第一の接着性樹脂粒子:前記第二の接着性樹脂粒子=50:50?90:10であ」るのに対し、甲3発明(セパレータ)はそのようなものではない点。 (イ) 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点3-8から検討する。 相違点3-8は、上記相違点1-1-8と同様の相違点であり、上記(4)ア(ア)bで述べた理由と同様の理由により、甲3発明(セパレータ)において、接着性樹脂粒子として、引張強度及び電極との接着強度を高度に両立するという効果を予測してポリフッ化ビニリデン系樹脂粒子とアクリル系樹脂粒子との質量比が50:50?90:10のものを採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ)小括 したがって、他の相違点に係る容易想到性について検討するまでもなく、本件発明4は、甲3発明(セパレータ)と甲1に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 本件発明12?15について 本件発明12?15は、請求項4を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点3-8において甲3発明(セパレータ)と相違するものであるところ、当該相違点についての判断は、上記ア(イ)のとおりであるから、本件発明12?15も、甲3発明(セパレータ)と甲1に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 甲3を主たる引用例とした場合についての結論 よって、本件発明4、12?15は、甲3に記載された発明と甲1に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項4、12?15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すことはできない。 (7)甲10を主たる引用例とした場合について ア 本件発明4について (ア)本件発明4と甲10発明(セパレータ)’との対比 a 甲10発明(セパレータ)’の「ポリオレフィンを含む多孔質基材」は、本件発明4の「多孔質基材」に相当する。 b 甲10発明(セパレータ)’の「耐熱性樹脂を含む耐熱性多孔質層」、「前記耐熱性樹脂は、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド及びポリスルホンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり」、「耐熱性多孔質層は、無機フィラーを含み」との発明特定事項は、「耐熱性樹脂」が「全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド」である場合に、本件発明4の「分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂及び無機粒子の少なくとも一方を含有する耐熱性多孔質層」に相当する。 c 甲10発明(セパレータ)’の「前記耐熱性多孔質層の少なくとも一方の上に設けられ、フッ素系樹脂を含む接着性多孔質層」は、本件発明4の「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層」と、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂が前記積層体に付着してなる接着層」である点で一致する。 d したがって、本件発明4と甲10発明(セパレータ)’とは、以下の一致点10-2において一致し、以下の相違点10-3、10-4、10-5、10-9において相違する。 [一致点10-2] 「多孔質基材と、 前記多孔質基材の両面に設けられ、分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂並びに無機粒子を含有する耐熱性多孔質層と、 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂が前記積層体に付着してなる接着層と、 を備えた非水系二次電池用セパレータ。」 [相違点10-3] 本件発明4は、「接着性樹脂粒子」が「接着層」を構成するものであるのに対し、甲10発明(セパレータ)’は、「接着性多孔質層」を構成する「フッ素系樹脂」が粒子状であるか不明な点。 [相違点10-4] 本件発明4は、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との間の剥離強度が5N/m?75N/mである」のに対し、甲10発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 [相違点10-5] 本件発明5は、「前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含む」ものであるのに対し、甲10発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 [相違点10-9] 本件発明4は、「前記接着層に含まれる前記第一の接着性樹脂粒子と前記第二の接着性樹脂粒子との質量比が前記第一の接着性樹脂粒子:前記第二の接着性樹脂粒子=50:50?90:10であ」るのに対し、甲10発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 (イ) 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点10-9から検討する。 相違点10-9は、上記相違点1-1-8と同様の相違点であり、上記(4)ア(ア)bで述べた理由と同様の理由により、甲10発明(セパレータ)’において、「接着性多孔質層」を接着性樹脂粒子からなる接着層とすると共に、当該接着性樹脂粒子として、引張強度及び電極との接着強度を高度に両立するという効果を予測してポリフッ化ビニリデン系樹脂粒子とアクリル系樹脂粒子との質量比が50:50?90:10のものを採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ)小括 したがって、他の相違点に係る容易想到性について検討するまでもなく、本件発明4は、甲10発明(セパレータ)’と甲1に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 本件発明12?15について 本件発明12?15は、請求項4を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点10-9において甲10発明(セパレータ)’と相違するものであるところ、当該相違点についての判断は,上記ア(イ)とおりであるから、本件発明12?15も、甲10発明(セパレータ)’と甲1に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 甲10を主たる引用例とした場合についての結論 よって、本件発明4、12?15は、甲10に記載された発明と甲1に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項4、12?15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すことはできない。 (8)甲11を主たる引用例とした場合について ア 本件発明4について (ア)本件発明4と甲11発明(セパレータ)’との対比 a 甲11発明(セパレータ)’の「ポリオレフィン微多孔膜」は、本件発明4の「多孔質基材」に相当する。 b 甲11発明(セパレータ)’の「耐熱性樹脂を含んで構成された耐熱性多孔質層」、「前記耐熱性樹脂が、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミドから成る群から選ばれる少なくとも一種であり、特に、ポリメタフェニレンイソフタルアミドであり」、「耐熱性多孔質層が無機フィラーを含み」との発明特定事項は、「耐熱性樹脂」が「全芳香族ポリアミド」、「ポリイミド」、「ポリメタフェニレンイソフタルアミド」である場合に、本件発明4の「分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂及び無機粒子の少なくとも一方を含有する耐熱性多孔質層」に相当する。 c したがって、本件発明4と甲11発明(セパレータ)’とは、以下の一致点11-2において一致し、以下の相違点11-3、11-4、11-5、11-10において相違する。 [一致点11-2] 「多孔質基材と、 前記多孔質基材の両面に設けられ、分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂及び無機粒子の少なくとも一方を含有する耐熱性多孔質層と、 を備えた非水系二次電池用セパレータ。」 [相違点11-3] 本件発明4は、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層」を備えるものであるのに対し、甲11発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 [相違点11-4] 本件発明4は、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との間の剥離強度が5N/m?75N/mである」のに対し、甲11発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 [相違点11-5] 本件発明5は、「前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含む」ものであるのに対し、甲11発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 [相違点11-10] 本件発明4は、「前記接着層に含まれる前記第一の接着性樹脂粒子と前記第二の接着性樹脂粒子との質量比が前記第一の接着性樹脂粒子:前記第二の接着性樹脂粒子=50:50?90:10であ」るのに対し、甲11発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 (イ) 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点11-10から検討する。 相違点11-10は、上記相違点1-1-8と同様の相違点であり、上記(4)ア(ア)bで述べた理由と同様の理由により、甲11発明(セパレータ)’において、セパレータと電極とを接着性樹脂粒子にて接着すると共に、当該接着性樹脂粒子として、引張強度及び電極との接着強度を高度に両立するという効果を予測してポリフッ化ビニリデン系樹脂粒子とアクリル系樹脂粒子との質量比が50:50?90:10のものを採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ)小括 したがって、他の相違点に係る容易想到性について検討するまでもなく、本件発明4は、甲11発明(セパレータ)’と甲1に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 本件発明12?15について 本件発明12?15は、請求項4を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点11-10において甲11発明(セパレータ)’と相違するものであるところ、当該相違点についての判断は,上記ア(イ)とおりであるから、本件発明12?15も、甲11発明(セパレータ)’と甲1に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 甲11を主たる引用例とした場合についての結論 よって、本件発明4、12?15は、甲11に記載された発明と甲1に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項4、12?15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すことはできない。 (9)甲12を主たる引用例とした場合について ア 甲12発明(セパレータ)’について (ア) 本件発明4について a 本件発明4と甲12発明(セパレータ)’との対比 (a)甲12発明(セパレータ)’の「ポリオレフィン微多孔膜」は、本件発明4の「多孔質基材」に相当する。 (b)甲12発明(セパレータ)’の「耐熱性高分子を含む耐熱性多孔質層とを備え」、「耐熱性高分子は、例えば、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド及びセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であり、全芳香族ポリアミドが好適であり、メタ型全芳香族ポリアミドであるポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリパラフェニレンテレフタルアミドが更に好適であり、ポリメタフェニレンイソフタルアミドが特に好適であり」、「前記耐熱性多孔質層には無機フィラーが含まれていることが好ましく」との発明特定事項は、「耐熱性高分子」が「全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド」である場合、または「無機フィラー」を含む場合に、本件発明4の「分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂及び無機粒子の少なくとも一方を含有する耐熱性多孔質層」に相当する。 (c)したがって、本件発明4と甲12発明(セパレータ)’とは、以下の一致点12-1-2において一致し、以下の相違点12-1-3、12-1-4、12-1-5、12-1-8において相違する。 [一致点12-1-2] 「多孔質基材と、 前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂並びに無機粒子を含有する耐熱性多孔質層と を備えた非水系二次電池用セパレータ。」 [相違点12-1-3] 本件発明4は、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層」を備えるものであるのに対し、甲12発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 [相違点12-1-4] 本件発明4は、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との間の剥離強度が5N/m?75N/mである」のに対し、甲12発明(セパレータ)’は、そのようなものではない点。 [相違点12-1-5] 本件発明5は、「前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含む」ものであるのに対し、甲12発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 [相違点12-1-8] 本件発明4は、「前記接着層に含まれる前記第一の接着性樹脂粒子と前記第二の接着性樹脂粒子との質量比が前記第一の接着性樹脂粒子:前記第二の接着性樹脂粒子=50:50?90:10であ」るのに対し、甲12発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 b 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点12-1-8から検討する。 相違点12-1-8は、上記相違点1-1-8と同様の相違点であり、上記(4)ア(ア)bで述べた理由と同様の理由により、セパレータと電極とを接着性樹脂粒子にて接着すると共に、当該接着性樹脂粒子として、引張強度及び電極との接着強度を高度に両立するという効果を予測してポリフッ化ビニリデン系樹脂粒子とアクリル系樹脂粒子との質量比が50:50?90:10のものを採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 c 小括 したがって、他の相違点に係る容易想到性について検討するまでもなく、本件発明4は、甲12発明(セパレータ)’及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (イ) 本件発明12?15について 本件発明12?15は、請求項4を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点12-1-8において甲12発明(セパレータ)’と相違するものであるところ、当該相違点についての判断は、上記(ア)bのとおりであるから、本件発明12?15も、甲12発明(セパレータ)’及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 甲12-実施例4発明’について (ア) 本件発明4について a 本件発明4と甲12-実施例4発明’との対比 (a)甲12-実施例4発明’の「ポリオレフィン微多孔質基材PO4」は、本件発明4の「多孔質基材」に相当する。 (b)甲12-実施例4発明’の「ポリメタフェニレンイソフタルアミド」は、本件発明4の「分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂」のうち「分子中にアミド結合を有する耐熱性樹脂」に相当する。 (c)甲12-実施例4発明’の「水酸化アルミニウム」は、本件発明の「無機粒子」に相当する。 (d)甲12-実施例4発明’の「耐熱性多孔質層」は「ポリエチレン微多孔膜」の「両面」に形成されたものである。 (e)上記(a)?(d)より、甲12-実施例4発明’における「耐熱性多孔質層」と、本件発明4の「前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂及び無機粒子の少なくとも一方を含有する耐熱性多孔質層」とは、「前記多孔質基材の両面に設けられ、分子中にアミド結合を有する耐熱性樹脂及び無機粒子を含有する耐熱性多孔質層」において一致する。 (f)したがって、本件発明4と甲12-実施例4発明’とは、以下の一致点12-2-1において一致し、以下の相違点12-2-1、12-2-2、12-2-3、12-2-7において相違する。 [一致点12-2-1] 「多孔質基材と、 前記多孔質基材の両面に設けられ、分子中にアミド結合を有する耐熱性樹脂及び無機粒子を含有する耐熱性多孔質層と、 を備えた、非水系二次電池用セパレータ。」 [相違点12-2-1] 本件発明4は、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層」を備えるものであるのに対し、甲12-実施例4発明’はそのようなものではない点。 [相違点12-2-2] 本件発明4は、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との間の剥離強度が5N/m?75N/mである」のに対し、甲12-実施例4発明’はそのようなものではない点。 [相違点12-2-3] 本件発明5は、「前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含む」ものであるのに対し、甲12-実施例4発明’はそのようなものではない点。 [相違点12-2-7] 本件発明4は、「前記接着層に含まれる前記第一の接着性樹脂粒子と前記第二の接着性樹脂粒子との質量比が前記第一の接着性樹脂粒子:前記第二の接着性樹脂粒子=50:50?90:10であ」るのに対し、甲12-実施例4発明’はそのようなものではない点。 b 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点12-2-7から検討する。 相違点12-2-7は、上記相違点1-1-8と同様の相違点であり、上記(4)ア(ア)bで述べた理由と同様の理由により、セパレータと電極とを接着性樹脂粒子にて接着する共に、当該接着性樹脂粒子として、引張強度及び電極との接着強度を高度に両立するという効果を予測してポリフッ化ビニリデン系樹脂粒子とアクリル系樹脂粒子との質量比が50:50?90:10のものを採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 c 小括 したがって、他の相違点に係る容易想到性について検討するまでもなく、本件発明4は、甲12-実施例4発明’及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (イ) 本件発明11?15について 本件発明11?15は、請求項4を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点12-2-7において甲12-実施例4発明’と相違するものであるところ、当該相違点についての判断は、上記(ア)bのとおりであるから、本件発明11?15も、甲12-実施例4発明’及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 甲12を主たる引用例とした場合についての結論 よって、本件発明4、11?15は、甲12に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項4、11?15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すことはできない。 2 取消理由として採用しなかった異議申立理由の判断 取消理由として全部または一部を採用しなかった上記「第4」の申立理由2、3について判断する。 (1)甲1に記載された発明を主たる引用例とした場合について 上記第4、1(3)アの申立理由3-1に対し、請求項1、2、及び同項を直接または間接的に引用する請求項5?10についての申立理由(進歩性)は、取消理由通知(決定の予告)において取消理由として採用していない。 ア 本件発明1について (ア)本件発明1と甲1発明(セパレータ)’との対比 a 本件発明1と甲1発明(セパレータ)’の「ポリオレフィン微多孔膜」は、本件発明1の「多孔質基材」に相当する。 b 甲1発明(セパレータ)は、「耐熱性樹脂」が「全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド」である場合、甲1発明(セパレータ)の「耐熱性樹脂を含む耐熱性多孔質層」は、本件発明1の「全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する多孔性被膜を有」する「耐熱性多孔質層」に対し、「全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する」「耐熱性多孔質層」の点で一致する。 c 甲1発明(セパレータ)’の「耐熱性多孔質層における無機フィラーの含有量としては、50?95質量%であることが好ましい」との発明特定事項における「耐熱性多孔質層における無機フィラーの含有量」は、本件発明1の「前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合が50質量%?90質量%である」との発明特定事項における「前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合」に相当する。また、甲1発明(セパレータ)’の「50?95重量%」との数値範囲と本件発明1の「50質量%?90質量%」との数値範囲は、「50質量%?90質量%」の範囲で一致する。 d したがって、本件発明1と甲1発明(セパレータ)’とは、以下の一致点1-1-5において一致し、以下の相違点1-1-1、1-1-9において相違する。 [一致点1-1-5] 「多孔質基材と、 前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する耐熱性多孔質層と、 前記耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合が50質量%?90質量%である、非水系二次電池用セパレータ。」 [相違点1-1-1] 本件発明1は、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層」を備えるものであるのに対し、甲1発明(セパレータ)はそのようなものではない点。 [相違点1-1-9] 本件発明1は、「耐熱性多孔質層」が「全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜」を有し、「形態(1):耐熱性多孔質層が、無機粒子を含有し、無機粒子が、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜によって結着され且つ覆われてなる層である。」、「形態(2):耐熱性多孔質層が、多孔質基材上に形成された内層であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種並びに無機粒子を含有する内層と、この内層の外面を覆うように形成された多孔性被膜であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜とを備える。」の「少なくとも一方である」のに対し、甲1発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 (イ) 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点1-1-9から検討する。 甲1発明(セパレータ)’において、「無機フィラー」を含有する「耐熱性多孔質層」に全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜を備える構成とすることは、甲1には何ら記載されておらず、他の証拠においても、上記構成とすることの動機付けとなるような記載は認められない。 また、本件特許明細書等には、多孔性被膜に関して以下の記載がある。 「【0067】 耐熱性多孔質層が多孔性被膜を有していると、接着層が耐熱性多孔質層の面上に配置された形態において、多孔性被膜に接着性樹脂粒子が付着していることにより、耐熱性多孔質層と接着層との間の界面破壊が発生しにくい。また、耐熱性多孔質層が多孔性被膜を有していると、耐熱性多孔質層が靱性に優れ、耐熱性多孔質層の凝集破壊が発生しにくい。」 そして、甲1発明(セパレータ)’は接着層を備えないから(相違点1-1-1)、「耐熱性多孔質層」が多孔性被膜を有することで、耐熱性多孔質層と接着層との間の界面破壊が発生しにくくなるという効果は予測できないし、また、「耐熱性多孔質層」が多孔性被膜を有することで、耐熱性多孔質層が靱性に優れ、耐熱性多孔質層の凝集破壊が発生しにくくなるという効果も、甲1の記載や他の証拠からは当業者が予測し得ないものである。 そうすると、甲1発明(セパレータ)’において、「耐熱性多孔質層」と接着層との間の界面破壊を発生しにくくし、「耐熱性多孔質層」が靱性に優れ、「耐熱性多孔質層」の凝集破壊を発生しにくくするという効果を予測して、相違点1-1-9に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ)小括 したがって、他の相違点に係る容易想到性について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明(セパレータ)’及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 本件発明2、5?10について 本件発明2、5?10は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点1-1-9において甲1発明(セパレータ)’と相違するものであるところ、当該相違点についての判断は、上記ア(イ)のとおりであるから、本件発明2、5?10も、甲1発明(セパレータ)’及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 甲1を主たる引用例とした場合についての結論 よって、本件発明1、2、5?10は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項1、2、5?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すことはできない。 (2)甲2に記載された発明を主たる引用例とした場合について 上記第4、1(2)アの申立理由2-1(請求項4に対する新規性)は、取消理由通知(決定の予告)において取消理由として採用していない。 ア 新規性について 上記1-2(5)ア(ア)で示したように、本件発明4と甲2発明とは、相違点2-1、2-2、2-7、2-8があるから同一でない。 よって、本件発明4は甲2に記載された発明と同一ではなく、請求項4に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すことはできない。 (3)甲3に記載された発明を主たる引用例とした場合について 上記第4、1(2)イの申立て理由2-2(請求項1に対する新規性)は、取消理由通知(決定の予告)において取消理由として採用していない。 また、上記第4、1(3)ウの申立理由3-3に対し、請求項1、2、及び同項を直接または間接的に引用する請求項5?10についての申立理由(進歩性)は、取消理由通知(決定の予告)において取消理由として採用していない。 ア 本件発明1について (ア)本件発明1と甲3発明(セパレータ)との対比 a 甲3発明(セパレータ)の「多孔質膜」は、本件発明1の「多孔質基材」に相当する。 b 甲3発明(セパレータ)の「多孔質膜と耐熱層とが積層されてなる積層多孔質フィルム」との記載から、「耐熱層」を積層した状態でも多孔性が保たれていると認められるから、甲3発明の「耐熱層」は、本件発明1の「耐熱性多孔質層」に相当する。 c 甲3発明(セパレータ)の「耐熱層としては、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、芳香族ポリアミド、ポリイミド等のポリアミド系又はポリイミド系ポリマー;フィラー粒子を含む層が挙げられ、前記フィラー粒子としては、無機物の微粒子又は有機物の微粒子が用いられる」との記載により特定される「耐熱層」は、「ポリイミド」、「無機物の微粒子」を含む場合に、本件発明1の「全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜」を有する「耐熱性多孔質層」において、「ポリイミドを含有する多孔性被膜を有」し、「無機粒子」を含有する「耐熱性多孔質層」の点で一致する。 d 甲3発明(セパレータ)の「耐熱層」は、「多孔質膜」の両面に設けられているか片面のみに設けられているか特定されていないが、「耐熱層」は、「多孔質膜」の両面に設けられているか片面に設けられるかのいずれかであり、それ以外の場合は想定し得ないから、甲3発明(セパレータ)は、「耐熱層」が「多孔質膜」の「片面又は両面に設けられ」ているといえる。 e 甲3発明の「多孔質膜と耐熱層とが積層されてなる積層多孔質フィルム」は、本件発明1の「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体」に相当する。 f 甲3発明(セパレータ)の「接着樹脂の一部又は全部が有機溶剤及び水中に、微粒子状に分散した二次電池用接着樹脂組成物」の個々の「微粒子状」の「接着樹脂」は、本件発明1の「接着性樹脂粒子」に相当し、甲3発明(セパレータ)の「二次電池用接着樹脂組成物」の全体は、本件発明1の「接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層」に相当する。 g 上記dで述べた理由と同様の理由で、甲3発明(セパレータ)の「二次電池用接着樹脂組成物」は、「多孔質膜と耐熱層とが積層されてなる積層多孔質フィルム」の「片面又は両面に設けられ」ているといえる。 h したがって、本件発明1と甲3発明(セパレータ)とは、以下の一致点3-4において一致し、以下の相違点3-7、3-9において相違する。 [一致点3-4] 「多孔質基材と、 前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、ポリイミドを含有する多孔性被膜を有する耐熱性多孔質層と、 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層と、を備え、 前記耐熱性多孔質が無機粒子を含有する、非水系二次電池用セパレータ。」 [相違点3-7] 本件発明1は、「前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合が50質量%?90質量%である」のに対し、甲3発明(セパレータ)は、「無機物の微粒子」の割合が特定されていない点。 [相違点3-9] 本件発明1は、「耐熱性多孔質層」が「全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜」を有し、「形態(1):耐熱性多孔質層が、無機粒子を含有し、無機粒子が、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜によって結着され且つ覆われてなる層である。」、「形態(2):耐熱性多孔質層が、多孔質基材上に形成された内層であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種並びに無機粒子を含有する内層と、この内層の外面を覆うように形成された多孔性被膜であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜とを備える。」の「少なくとも一方である」のに対し、甲3発明(セパレータ)はそのようなものではない点。 (イ) 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点3-9から検討する。 甲3発明(セパレータ)において、「無機物の微粒子」を含有する「耐熱層」に全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜を備える構成とすることは、甲3には何ら記載されておらず、他の証拠においても、上記構成とすることの動機付けとなるような記載は認められない。 また、甲3発明(セパレータ)において、「耐熱層」が多孔性被膜を有することで、本件特許明細書の【0067】に記載されているように、「耐熱層」と接着層との間の界面破壊が発生しにくくなり、「耐熱層」が靱性に優れ、「耐熱層」の凝集破壊が発生しにくくなるという効果は、甲3の記載や他の証拠からは当業者が予測し得ないものである。 そうすると、甲3発明(セパレータ)において、「耐熱層」と接着層との間の界面破壊を発生しにくくし、「耐熱層」が靱性に優れ、「耐熱層」の凝集破壊を発生しにくくするという効果を予測して、相違点3-9に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ)小括 したがって、本件発明1と甲3発明(セパレータ)とは、相違点3-7、3-9があるから同一でなく、また、他の相違点に係る容易想到性について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明(セパレータ)及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 本件発明2、5?10について 本件発明2、5?10は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点3-9において甲3発明(セパレータ)と相違するものであるところ、当該相違点についての判断は,上記ア(イ)のとおりであるから、本件発明2、5?10も、甲3発明(セパレータ)及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 甲3を主たる引用例とした場合についての結論 よって、本件発明1は甲3に記載された発明と同一ではなく、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すことはできない。 また、本件発明1、2、5?10は、甲3に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項1、2、5?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すことはできない。 (4)甲10に記載された発明を主たる引用例とした場合について 上記第4、1(3)エの申立理由3-4に対し、請求項1、2、及び同項を直接または間接的に引用する請求項5?10についての申立理由(進歩性)は、取消理由通知(決定の予告)において取消理由として採用していない。 また、上記第4、1(3)エの申立理由3-4に対し、請求項11(訂正前請求項6)及び同項を直接または間接的に引用する請求項12?15(訂正前請求項7?10)についての申立理由(進歩性)は、取消理由通知(決定の予告)において取消理由として採用していない。 ア 本件発明1について (ア)本件発明1と甲10発明(セパレータ)’との対比 a 甲10発明(セパレータ)’の「ポリオレフィンを含む多孔質基材」は、本件発明1の「多孔質基材」に相当する。 b 甲10発明(セパレータ)'は、「耐熱性樹脂」が「全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド」である場合、甲10発明(セパレータ)'の「耐熱性樹脂を含む耐熱性多孔質層」は、本件発明1の「全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する多孔性被膜を有」する「耐熱性多孔質層」に対し、「全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する」「耐熱性多孔質層」の点で一致する。 c 甲10発明(セパレータ)’の「前記無機フィラーの含有量が、前記耐熱性樹脂1質量部に対し1?10質量部の範囲であり」との発明特定事項は、「耐熱性多孔質層」における「無機フィラー」の「質量%」に換算すると、50質量%?約91質量%であるから、甲1発明の「前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合が50質量%?90質量%である」との発明特定事項と、「耐熱性多孔質層」に占める「無機粒子」の質量割合が「50質量%?90質量%」の範囲で一致する。 d 甲10発明(セパレータ)’の「前記耐熱性多孔質層の少なくとも一方の上に設けられ、フッ素系樹脂を含む接着性多孔質層」は、本件発明1の「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層」と、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂が前記積層体に付着してなる接着層」である点で一致する。 e したがって、本件発明1と甲10発明(セパレータ)‘とは、以下の一致点10-4において一致し、以下の相違点10-1、10-10において相違する。 [一致点10-4] 「多孔質基材と、 前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する多孔性被膜を有する耐熱性多孔質層と、 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂が前記積層体に付着してなる接着層と、を備え、 前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合が50質量%?90質量%である、非水系二次電池用セパレータ。」 [相違点10-1] 本件発明1は、「接着性樹脂粒子」が「接着層」を構成するものであるのに対し、甲10発明(セパレータ)’は、「接着性多孔質層」を構成する「フッ素系樹脂」が粒子状であるか不明な点。 [相違点10-10] 本件発明1は、「耐熱性多孔質層」が「全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜」を有し、「形態(1):耐熱性多孔質層が、無機粒子を含有し、無機粒子が、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜によって結着され且つ覆われてなる層である。」、「形態(2):耐熱性多孔質層が、多孔質基材上に形成された内層であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種並びに無機粒子を含有する内層と、この内層の外面を覆うように形成された多孔性被膜であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜とを備える。」の「少なくとも一方である」のに対し、甲10発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 (イ) 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点10-10から検討する。 甲10発明(セパレータ)’において、「無機フィラー」を含有する「耐熱性多孔質層」に全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜を備える構成とすることは、甲10には何ら記載されておらず、他の証拠においても、上記構成とすることの動機付けとなるような記載は認められない。 また、甲10発明(セパレータ)’において、「耐熱性多孔質層」が多孔性被膜を有することで、本件特許明細書の【0067】に記載されているように、「耐熱性多孔質層」と接着層との間の界面破壊が発生しにくくなり、「耐熱性多孔質層」が靱性に優れ、「耐熱性多孔質層」の凝集破壊が発生しにくくなるという効果は、甲10の記載や他の証拠からは当業者が予測し得ないものである。 そうすると、甲10発明(セパレータ)’において、「耐熱性多孔質層」と接着層との間の界面破壊を発生しにくくし、「耐熱性多孔質層」が靱性に優れ、「耐熱性多孔質層」の凝集破壊を発生しにくくするという効果を予測して、相違点10-10に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ)小括 したがって、他の相違点に係る容易想到性について検討するまでもなく、本件発明1は、甲10発明(セパレータ)’及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 本件発明2、5?10について 本件発明2、5?10は,請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点10-10において甲10発明(セパレータ)’と相違するものであるところ、当該相違点についての判断は,上記ア(イ)のとおりであるから、本件発明2、5?10も,甲10発明(セパレータ)’及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 本件発明11?15について 上記1-2(7)ア(ア)で示した本件発明4と甲10発明(セパレータ)’との相違点10-9は、上記1-2(7)ア(イ)で示したように、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 また、本件発明11は、請求項4を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点10-9において甲10発明(セパレータ)’と相違するものであるところ、当該相違点についての判断は,上記1-2(7)ア(イ)のとおりであるから、本件発明11も、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 そして、本件請求項11を引用する本件発明12?15についても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 エ 甲10を主たる引用例とした場合についての結論 よって、本件発明1、2、5?15は、甲10に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項1、2、5?15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すことはできない。 (5)甲11に記載された発明を主たる引用例とした場合について 上記第4、1(3)オの申立理由3-5に対し、請求項1、2、及び同項を直接または間接的に引用する請求項5?10についての申立理由(進歩性)は、取消理由通知(決定の予告)において取消理由として採用していない。 また、上記第4、1(3)オの申立理由3-5に対し、請求項11(訂正前請求項6)及び同項を直接または間接的に引用する請求項12?15(訂正前請求項7?10)についての申立理由(進歩性)は、取消理由通知(決定の予告)において取消理由として採用していない。 ア 本件発明1について (ア)本件発明1と甲11発明(セパレータ)’との対比 a 甲11発明(セパレータ)’の「ポリオレフィン微多孔膜」は、本件発明1の「多孔質基材」に相当する。 b 甲11発明(セパレータ)'は、「耐熱性樹脂」が「全芳香族ポリアミド」、「ポリイミド」または「ポリメタフェニレンイソフタルアミド」である場合、甲11発明(セパレータ)'の「耐熱性樹脂を含んで構成された耐熱性多孔質層」は、本件発明1の「全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する多孔性被膜を有」する「耐熱性多孔質層」に対し、「全芳香族ポリアミド」「及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する」「耐熱性多孔質層」の点で一致する。 c 甲11発明(セパレータ)’の「無機フィラー」は、本件発明1の「無機粒子」に相当する。 d したがって、本件発明1と甲11発明(セパレータ)’とは、以下の一致点11-4において一致し、以下の相違点11-1、11-9、11-11において相違する。 [一致点11-4] 「多孔質基材と、 前記多孔質基材の両面に設けられ、全芳香族ポリアミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する多孔性被膜を有する耐熱性多孔質層と、を備え、 前記耐熱性多孔質が無機粒子を含有する、非水系二次電池用セパレータ。」 [相違点11-1] 本件発明1は、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層」を備えるものであるのに対し、甲11発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 [相違点11-9] 本件発明1は、「前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合が50質量%?90質量%であ」るのに対し、甲11発明(セパレータ)’は、「前記耐熱性多孔質層中における前記無機フィラーの含有量が前記耐熱性樹脂の体積に対し、0.4?4倍である」点。 [相違点11-11] 本件発明1は、「耐熱性多孔質層」が「全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜」を有し、「形態(1):耐熱性多孔質層が、無機粒子を含有し、無機粒子が、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜によって結着され且つ覆われてなる層である。」、「形態(2):耐熱性多孔質層が、多孔質基材上に形成された内層であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種並びに無機粒子を含有する内層と、この内層の外面を覆うように形成された多孔性被膜であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜とを備える。」の「少なくとも一方である」のに対し、甲11発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 (イ) 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点11-11から検討する。 甲11発明(セパレータ)’において、「無機フィラー」を含有する「耐熱性多孔質層」に全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜を備える構成とすることは、甲11には何ら記載されておらず、他の証拠においても、上記構成とすることの動機付けとなるような記載は認められない。 また、甲11発明(セパレータ)’は接着層を備えないから(相違点11-1)、「耐熱性多孔質層」が多孔性被膜を有することで、本件特許明細書の【0067】に記載されているように、耐熱性多孔質層と接着層との間の界面破壊が発生しにくくなるという効果は予測できないし、また、「耐熱性多孔質層」が多孔性被膜を有することで、耐熱性多孔質層が靱性に優れ、耐熱性多孔質層の凝集破壊が発生しにくくなるという効果も、甲11の記載や他の証拠からは当業者が予測し得ないものである。 そうすると、甲11発明(セパレータ)’において、「耐熱性多孔質層」と接着層との間の界面破壊を発生しにくくし、「耐熱性多孔質層」が靱性に優れ、「耐熱性多孔質層」の凝集破壊を発生しにくくするという効果を予測して、相違点11-11に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ)小括 したがって、他の相違点に係る容易想到性について検討するまでもなく、本件発明1は、甲11発明(セパレータ)’及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 本件発明2、5?10について 本件発明2、5?10は,請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点11-11において甲11発明(セパレータ)’と相違するものであるところ、当該相違点についての判断は,上記ア(イ)のとおりであるから、本件発明2、5?10も,甲11発明(セパレータ)’及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 本件発明11?15について 上記1-2(8)ア(ア)で示した本件発明4と甲11発明(セパレータ)’との相違点11-10は、上記1-2(8)ア(イ)で示したように、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 また、本件発明11は、請求項4を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点11-10において甲11発明(セパレータ)’と相違するものであるところ、当該相違点についての判断は、上記1-2(8)ア(イ)のとおりであるから、本件発明11も、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 そして、本件請求項11を引用する本件発明12?15についても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 エ 甲11を主たる引用例とした場合についての結論 よって、本件発明1、2、5?15は、甲11に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項1、2、5?15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すことはできない。 (6)甲12に記載された発明を主たる引用例とした場合について 上記第4、1(3)カの申立理由3-6に対し、請求項1、2、及び同項を直接または間接的に引用する請求項5?10についての申立理由(進歩性)は、取消理由通知(決定の予告)において取消理由として採用していない。 ア 本件発明1について (ア) 本件発明1と甲12発明(セパレータ)’との対比 a 甲12発明(セパレータ)の「ポリオレフィン微多孔膜」は、本件発明1の「多孔質基材」に相当する。 b 甲12発明(セパレータ)'は、「耐熱性樹脂」が「全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド」である場合、甲12発明(セパレータ)'の「耐熱性高分子を含む耐熱性多孔質層」は、本件発明1の「全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する多孔性被膜を有」する「耐熱性多孔質層」に対し、「全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する」「耐熱性多孔質層」の点で一致する。 c 甲12発明(セパレータ)’の「前記耐熱性多孔質層における無機フィラーの含有量は、耐熱性向上効果、透過性及びハンドリング性の観点から、50?95質量%であることが好ましく」との発明特定事項における「耐熱性多孔質層における無機フィラーの含有量」は、本件発明1の「前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合が50質量%?90質量%である」との発明特定事項における「前記耐熱性多孔質層に占める前記無機粒子の質量割合」に相当する。また、甲12発明(セパレータ)’の「50?95重量%」との数値範囲と本件発明4の「50質量%?90質量%」との数値範囲は、「50質量%?90質量%」の範囲で一致する。 d したがって、本件発明1と甲12発明(セパレータ)’とは、以下の一致点12-1-5において一致し、以下の相違点12-1-1、12-1-9において相違する。 [一致点12-1-5] 「多孔質基材と、 前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する多孔性被膜を有する耐熱性多孔質層とを備え、 前記耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合が50質量%?90質量%である、非水系二次電池用セパレータ。」 [相違点12-1-1] 本件発明1は、「前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層」を備えるものであるのに対し、甲12発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 [相違点12-1-9] 本件発明1は、「耐熱性多孔質層」が「全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜」を有し、「形態(1):耐熱性多孔質層が、無機粒子を含有し、無機粒子が、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜によって結着され且つ覆われてなる層である。」、「形態(2):耐熱性多孔質層が、多孔質基材上に形成された内層であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種並びに無機粒子を含有する内層と、この内層の外面を覆うように形成された多孔性被膜であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜とを備える。」の「少なくとも一方である」のに対し、甲12発明(セパレータ)’はそのようなものではない点。 (イ) 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点12-1-9から検討する。 甲12発明(セパレータ)’において、「無機フィラー」を含有する「耐熱性多孔質層」に全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜を備える構成とすることは、甲12には何ら記載されておらず、他の証拠においても、上記構成とすることの動機付けとなるような記載は認められない。 また、甲12発明(セパレータ)’は接着層を備えないから(相違点12-1-1)、「耐熱性多孔質層」が多孔性被膜を有することで、本件特許明細書の【0067】に記載されているように、耐熱性多孔質層と接着層との間の界面破壊が発生しにくくなるという効果は予測できないし、また、「耐熱性多孔質層」が多孔性被膜を有することで、耐熱性多孔質層が靱性に優れ、耐熱性多孔質層の凝集破壊が発生しにくくなるという効果も、甲12の記載や他の証拠からは当業者が予測し得ないものである。 そうすると、甲12発明(セパレータ)’において、「耐熱性多孔質層」と接着層との間の界面破壊を発生しにくくし、「耐熱性多孔質層」が靱性に優れ、「耐熱性多孔質層」の凝集破壊を発生しにくくするという効果を予測して、相違点12-1-9に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ)小括 したがって、他の相違点に係る容易想到性について検討するまでもなく、本件発明1は、甲12発明(セパレータ)’及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 本件発明2、5?10について 本件発明2、5?10は,請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも上記相違点12-1-9において甲12発明(セパレータ)’と相違するものであるところ、当該相違点についての判断は,上記ア(イ)のとおりであるから、本件発明2、5?10も,甲12発明(セパレータ)’及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 甲12を主たる引用例とした場合についての結論 よって、本件発明1、2、5?10は、甲12に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項1、2、5?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではなく、取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおり、本件訂正は適法であるから、これを認める。 また、本件特許の請求項3に係る特許についての特許異議の申立ては、本件訂正により請求項3が削除された結果、申立ての対象が存在しないものとなった。したがって、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。 そして、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、4?15に係る特許を取り消すことはできないし、他に本件請求項1、2、4?15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 多孔質基材と、 前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜を有し、下記の形態(1)及び形態(2)の少なくとも一方である耐熱性多孔質層と、 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層と、を備え、 前記耐熱性多孔質層に占める無機粒子の質量割合が50質量%?90質量%である、非水系二次電池用セパレータ。 形態(1):耐熱性多孔質層が、無機粒子を含有し、無機粒子が全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜によって結着され且つ覆われてなる層である。 形態(2):耐熱性多孔質層が、多孔質基材上に形成された内層であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種並びに無機粒子を含有する内層と、この内層の外面を覆うように形成された多孔性被膜であって全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し無機粒子を含有しない多孔性被膜とを備える。 【請求項2】 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との間の剥離強度が5N/m?75N/mである、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 多孔質基材と、 前記多孔質基材の片面又は両面に設けられ、分子中にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を有する耐熱性樹脂及び無機粒子の少なくとも一方を含有する耐熱性多孔質層と、 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられ、接着性樹脂粒子が前記積層体に付着してなる接着層と、を備え、 前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含み、 前記接着層に含まれる前記第一の接着性樹脂粒子と前記第二の接着性樹脂粒子との質量比が前記第一の接着性樹脂粒子:前記第二の接着性樹脂粒子=50:50?90:10であり、 前記多孔質基材と前記耐熱性多孔質層との間の剥離強度が5N/m?75N/mである、非水系二次電池用セパレータ。 【請求項5】 前記接着性樹脂粒子が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む第一の接着性樹脂粒子とアクリル系樹脂を含む第二の接着性樹脂粒子との混合物を含む、請求項1又は請求項2に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項6】 前記非水系二次電池用セパレータのガーレ値と前記多孔質基材のガーレ値との差が20秒/100mL?300秒/100mLである、請求項1、請求項2及び請求項5のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項7】 前記非水系二次電池用セパレータのMD方向の引張強度及びTD方向の引張強度の少なくとも一方が500kgf/cm^(2)?3000kgf/cm^(2)である、請求項1、請求項2、請求項5及び請求項6のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項8】 前記接着層の重量が前記積層体の片面あたり0.2g/m^(2)?2.0g/m^(2)である、請求項1、請求項2及び請求項5?請求項7のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項9】 前記多孔質基材がポリプロピレンを含有する微多孔膜である、請求項1、請求項2及び請求項5?請求項8のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項10】 正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項1、請求項2及び請求項5?請求項9のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。 【請求項11】 前記非水系二次電池用セパレータのガーレ値と前記多孔質基材のガーレ値との差が20秒/100mL?300秒/100mLである、請求項4に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項12】 前記非水系二次電池用セパレータのMD方向の引張強度及びTD方向の引張強度の少なくとも一方が500kgf/cm^(2)?3000kgf/cm^(2)である、請求項4又は請求項11に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項13】 前記接着層の重量が前記積層体の片面あたり0.2g/m^(2)?2.0g/m^(2)である、請求項4、請求項11及び請求項12のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項14】 前記多孔質基材がポリプロピレンを含有する微多孔膜である、請求項4及び請求項11?請求項13のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。 【請求項15】 正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項4及び請求項11?請求項14のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-03-01 |
出願番号 | 特願2019-507959(P2019-507959) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(H01M)
P 1 651・ 121- YAA (H01M) P 1 651・ 537- YAA (H01M) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 近藤 政克 |
特許庁審判長 |
亀ヶ谷 明久 |
特許庁審判官 |
平塚 政宏 増山 慎也 |
登録日 | 2019-04-19 |
登録番号 | 特許第6513893号(P6513893) |
権利者 | 帝人株式会社 |
発明の名称 | 非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池 |
代理人 | 中島 淳 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 中島 淳 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 福田 浩志 |
代理人 | 福田 浩志 |