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審決分類 |
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B06B |
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管理番号 | 1372969 |
審判番号 | 無効2019-800069 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2019-09-17 |
確定日 | 2021-01-12 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第5209345号発明「振動発生装置、画像彫刻装置、及び振動発生装置のバネ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第5209345号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、1、2、3、〔4-7〕について訂正することを認める。 特許第5209345号の請求項4-7に係る特許を維持する。 特許第5209345号の請求項1-3に係る特許についての無効理由を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第5209345号に係る出願は、平成20年2月29日の出願であって、平成25年3月1日に特許権の設定登録がなされた。 請求人日本メカトロニクス株式会社により令和元年9月17日に無効審判の請求がなされ、被請求人スカラビジャパン株式会社により令和元年11月26日に答弁書及び訂正請求書が提出され、請求人により令和2年1月10日に弁駁書が提出され、被請求人により令和2年1月23日に訂正請求書を補正する手続補正書が提出された。 その後、令和2年1月29日付で審理事項通知書が通知され、請求人により令和2年2月19日付口頭審理陳述要領書が提出され、被請求人により令和2年2月18日付口頭審理陳述要領書が提出され、令和2年3月5日付で審理事項通知書が通知され、請求人により令和2年3月9日(差出日:令和2年3月11日)付口頭審理陳述要領書(2)が提出され、被請求人により令和2年3月11日付口頭審理陳述要領書(2)が提出され、令和2年3月11日に口頭審理が行われ、被請求人により令和2年3月24日付上申書が提出された。 そして、令和2年4月7日付で審決の予告が通知され(送達日:令和2年4月15日)、これに対し被請求人より令和2年6月2日付で訂正請求書が提出され、令和2年7月8日付で請求人に訂正請求書副本の送付通知がされたが(発送日:令和2年7月9日)、弁駁書は提出されなかったものである。 2.訂正の内容 令和2年6月2日付の訂正請求書による訂正は、特許第5209345号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?7について訂正することを求めるものであり、その訂正事項1?15は以下のとおりである。 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「請求項3記載の振動発生装置であって、前記永久磁石側のコイル収容空間部及び二対の両極部間と前記電磁石側の可動子のコイル両側との間の4カ所に前記バネを対称に配置した、ことを特徴とする振動発生装置。」と記載されているのを、「固定側に支持された永久磁石側の対向する両極部間にコイル及び可動子からなる電磁石側の極部が隙間を有して配置され、前記永久磁石側に対して前記電磁石側をバネによりフローティング支持し、前記バネを、一側に尖端部を備えると共に他側に円弧状部を備える断面水滴形に屈曲形成し、前記バネの尖端部側は、前記永久磁石側に支持されると共に、前記バネの円弧状部側が前記電磁石側の可動子を支持し、前記コイルへの通電を正逆切り換えることにより前記電磁石側を振動させる振動発生装置であって、前記永久磁石側は、中央部に前記電磁石側のコイルを振動可能に収容するコイル収容空間部を備えると共に、このコイル収容空間部の両側に前記対向する永久磁石側の両極部を一対備え、前記電磁石側の可動子は、前記コイルの両側に両極部が突出されて前記永久磁石側の両極部間にそれぞれ配置され、前記永久磁石側のコイル収容空間部及び二対の両極部間と前記電磁石側の可動子のコイル両側との間の4カ所に前記バネを対称に配置した、ことを特徴とする振動発生装置。」に訂正する。 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に「請求項2?4の何れかに記載の振動発生装置であって、」と記載されているのを、「請求項4記載の振動発生装置であって、」に訂正する。 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に「請求項2?5の何れかに記載の振動発生装置を備えた画像彫刻装置であって、」と記載されているのを、「請求項4又は5に記載の振動発生装置を備えた画像彫刻装置であって、」に訂正する。 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?6の何れか1項記載の画像彫刻装置であって、」と記載されているのを、「請求項6記載の振動発生装置であって、」に訂正する。 訂正事項8 明細書の【発明の名称】に「振動発生装置、画像彫刻装置、及び振動発生装置のバネ」とあるのを「振動発生装置及び画像彫刻装置」に訂正する。 訂正事項9 明細書の段落【0001】に「振動発生装置、画像彫刻装置、及び振動発生装置のバネ」とあるのを「振動発生装置及び画像彫刻装置」に訂正する。 訂正事項10 明細書の段落【0006】に「本発明は、微細な振動に的確に対応可能とするため、固定側に支持された永久磁石側又は電磁石側の対向する両極部間に電磁石側又は永久磁石側の極部が隙間を有して配置され、前記永久磁石側又は電磁石側に対して前記電磁石側又は永久磁石側をバネによりフローティング支持し、前記バネを、一側に尖端部を備えると共に他側に円弧状部を備える断面水滴形に屈曲形成し、前記バネの尖端部側は、前記永久磁石側又は電磁石側に支持されると共に、前記バネの円弧状部側が前記電磁石側又は永久磁石側を支持し、前記電磁石又は永久磁石側への通電を正逆切り換えることにより前記電磁石側又は永久磁石側を振動させることを振動発生装置の最も主要な特徴とする。」と記載されているのを、「本発明は、微細な振動に的確に対応可能とするため、固定側に支持された永久磁石側の対向する両極部間にコイル及び可動子からなる電磁石側の極部が隙間を有して配置され、前記永久磁石側に対して前記電磁石側をバネによりフローティング支持し、前記バネを、一側に尖端部を備えると共に他側に円弧状部を備える断面水滴形に屈曲形成し、前記バネの尖端部側は、前記永久磁石側に支持されると共に、前記バネの円弧状部側が前記電磁石側の可動子を支持し、前記コイルへの通電を正逆切り換えることにより前記電磁石側を振動させる振動発生装置であって、前記永久磁石側は、中央部に前記電磁石側のコイルを振動可能に収容するコイル収容空間部を備えると共に、このコイル収容空間部の両側に前記対向する永久磁石側の両極部を一対備え、前記電磁石側の可動子は、前記コイルの両側に両極部が突出されて前記永久磁石側の両極部間にそれぞれ配置され、前記永久磁石側のコイル収容空間部及び二対の両極部間と前記電磁石側の可動子のコイル両側との間の4カ所に前記バネを対称に配置したことを振動発生装置の特徴とする。」に訂正する。 訂正事項11 明細書の段落【0008】の記載を削除する。 訂正事項12 明細書の段落【0009】に「本発明の振動発生装置は、微細な振動に的確に対応可能とするため、固定側に支持された永久磁石側又は電磁石側の対向する両極部間に電磁石側又は永久磁石側の極部が隙間を有して配置され、前記永久磁石側又は電磁石側に対して前記電磁石側又は永久磁石側をバネによりフローティング支持し、前記バネを、一側に尖端部を備えると共に他側に円弧状部を備える断面水滴形に屈曲形成し、前記バネの尖端部側は、前記永久磁石側又は電磁石側に支持されると共に、前記バネの円弧状部側が前記電磁石側又は永久磁石側を支持し、前記電磁石又は永久磁石側への通電を正逆切り換えることにより前記電磁石側又は永久磁石側を振動させる。」と記載されているのを、「本発明の振動発生装置は、微細な振動に的確に対応可能とするため、固定側に支持された永久磁石側の対向する両極部間にコイル及び可動子からなる電磁石側の極部が隙間を有して配置され、前記永久磁石側に対して前記電磁石側をバネによりフローティング支持し、前記バネを、一側に尖端部を備えると共に他側に円弧状部を備える断面水滴形に屈曲形成し、前記バネの尖端部側は、前記永久磁石側に支持されると共に、前記バネの円弧状部側が前記電磁石側の可動子を支持し、前記コイルへの通電を正逆切り換えることにより前記電磁石側を振動させる振動発生装置であって、前記永久磁石側は、中央部に前記電磁石側のコイルを振動可能に収容するコイル収容空間部を備えると共に、このコイル収容空間部の両側に前記対向する永久磁石側の両極部を一対備え、前記電磁石側の可動子は、前記コイルの両側に両極部が突出されて前記永久磁石側の両極部間にそれぞれ配置され、前記永久磁石側のコイル収容空間部及び二対の両極部間と前記電磁石側の可動子のコイル両側との間の4カ所に前記バネを対称に配置した。」に訂正する。 訂正事項13 明細書の段落【0021】に「この 1204275244687_0 には、彫刻テーブル17に」と記載されているのを、「この彫刻テーブル17に」に訂正する。 訂正事項14 明細書の段落【0025】に「両極部35a,37b」と記載されているのを、「両極部35a,37a」に訂正する。 訂正事項15 明細書の段落【0042】に「両極部35a,37b」と記載されているのを、「両極部35a,37a」に訂正する。 3.訂正の適否 (1)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア.一群の請求項について 訂正前の請求項7について、請求項1?3を直接的又は間接的に引用しているものであったが、訂正事項1?3によって請求項7は請求項1?3を直接的にも又は間接的にも引用しないものとなった。したがって、訂正前の請求項1?3、7に対応する訂正後の請求項1?3、7は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項ではなくなった。 訂正前の請求項5?7について、請求項4を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項4によって記載が訂正される請求項に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項4?7に対応する訂正後の請求項4?7は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。 イ.訂正の適否 (ア)訂正事項1 a 訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するというものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記aに記載したとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aの理由から明らかなように、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、全ての請求項について無効審判の対象とされているので、訂正事項1に関して、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (イ)訂正事項2 a 訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するというものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記aに記載したとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aの理由から明らかなように、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、全ての請求項について無効審判の対象とされているので、訂正事項2に関して、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (ウ)訂正事項3 a 訂正の目的 訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除するというものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記aに記載したとおり、訂正事項3は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aの理由から明らかなように、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、全ての請求項について無効審判の対象とされているので、訂正事項3に関して、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (エ)訂正事項4 a 訂正の目的 訂正事項4は、訂正前の請求項4が、訂正前の請求項3を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項4が請求項3を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 更に、訂正事項4は、訂正前の請求項2に、「通電」について「前記電磁石側への通電」と記載されており、電磁石側の何に通電するのか不明瞭であったが、訂正後の請求項4は、「前記コイルへの通電」と記載され、電磁石側の通電対象を明瞭にし、又、訂正前の請求項3に、「振動可能に収容する」対象について「前記電磁石側のコイル部」であることを特定しているが、訂正後の請求項4は、「前記電磁石側のコイル」との記載により、訂正後の請求項4の収容対象を訂正前の請求項2の記載の「コイル及び可動子からなる電磁石側」という表現に一致させたものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記aの理由から明らかなように、訂正事項4は、訂正前の請求項2の「前記電磁石側への通電」を、通電対象を明瞭にする「前記コイルへの通電」にし、訂正前の請求項3の「前記電磁石側のコイル部」を、訂正前の請求項2の記載に合わせて「前記電磁石側のコイル」にするものであり、当該訂正により訂正前の請求項2、3に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ訂正前の請求項2、3に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 同様に、訂正後の請求項4を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項5?7についても、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 段落【0043】に、「これに対し、コイル39への通電を正逆切り換えると両極部47a,47bが」と記載されていることから、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、全ての請求項について無効審判の対象とされているので、訂正前の請求項4?7に係る訂正事項4に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (オ)訂正事項5 a 訂正の目的 訂正事項5は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項2?4を引用する記載であったものを、訂正前の請求項2、3の削除に伴って訂正前の請求項2、3との間の引用関係を解消する訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記aの理由から明らかなように、訂正事項5は、訂正前の請求項2、3の削除に伴って訂正前の請求項2、3との間の引用関係を解消する訂正であるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aの理由から明らかなように、訂正事項5は、訂正前の請求項2、3の削除に伴って訂正前の請求項2、3との間の引用関係を解消する訂正であるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、全ての請求項について無効審判の対象とされているので、訂正前の請求項5?7に係る訂正事項5に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (カ)訂正事項6 a 訂正の目的 訂正事項6は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項2?5を引用する記載であったものを、訂正前の請求項2、3の削除に伴って訂正前の請求項2、3との間の引用関係を解消する訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記aの理由から明らかなように、訂正事項6は、訂正前の請求項2、3の削除に伴って訂正前の請求項2、3との間の引用関係を解消する訂正であるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aの理由から明らかなように、訂正事項6は、訂正前の請求項2、3の削除に伴って訂正前の請求項2、3との間の引用関係を解消する訂正であるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、全ての請求項について無効審判の対象とされているので、訂正前の請求項6?7に係る訂正事項6に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (キ)訂正事項7 a 訂正の目的 訂正事項7は、訂正前の請求項7の記載が訂正前の請求項1?6の記載を直接的に引用する記載であったものを、訂正前の請求項1?5との間の直接的な引用関係を解消し、訂正前の請求項1?3の削除に伴い請求項4、5との間を直接的に引用する請求項6を介して間接的な引用関係とする訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記aの理由から明らかなように、訂正事項7は、請求項1?5との間の直接的な引用関係を解消し、請求項4、5との間は直接的に引用する請求項6を介して間接的な引用関係とするものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記aの理由から明らかなように、訂正事項7は、請求項1?5との間の直接的な引用関係を解消し、請求項4、5との間は直接的に引用する請求項6を介して間接的な引用関係とするものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、全ての請求項について無効審判の対象とされているので、訂正前の請求項7に係る訂正事項7に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (ク)訂正事項8 a 訂正の目的 訂正事項8は、訂正前の【発明の名称】に記載された「振動発生装置、画像彫刻装置、及び振動発生装置のバネ」を、「振動発生装置及び画像彫刻装置」と訂正し、特許請求の範囲の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記aの理由から明らかなように、訂正事項8は、特許請求の範囲の記載と整合させるための発明の名称の一部削除の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項8は、特許請求の範囲の記載と整合させるための発明の名称の一部削除の訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (ケ)訂正事項9 a 訂正の目的 訂正事項9は、明細書の段落【0001】に「振動発生装置、画像彫刻装置、及び振動発生装置のバネ」と記載されているのを、「振動発生装置及び画像彫刻装置」とし、特許請求の範囲の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記aの理由から明らかなように、訂正事項9は、特許請求の範囲の記載と整合させるための訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項9は、特許請求の範囲の記載と整合させるための訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (コ)訂正事項10 a 訂正の目的 訂正事項10は、訂正事項1、4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の請求項4の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項10は、訂正事項1、4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の請求項4の記載との整合を図るための訂正であり、「(エ)訂正事項4」で述べたように、[通電]をコイルへの通電に限定し、「コイル部」を「コイル」に明瞭にする訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項10は、訂正事項1、4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の請求項4の記載との整合を図るための訂正であり、「(エ)訂正事項4」で述べたように、「電磁石側への通電」を「コイルへの通電」に限定し、「コイル部」を「コイル」に明瞭にする訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (サ)訂正事項11 a 訂正の目的 訂正事項11は、明細書の段落【0006】に「前記バネを、一側に尖端部を備えると共に他側に円弧状部を備える断面水滴形に屈曲形成し、」と記載されている事項と重複した段落【0008】の記載を削除するための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項11は、明細書の段落【0006】に「前記バネを、一側に尖端部を備えると共に他側に円弧状部を備える断面水滴形に屈曲形成し、」と記載されている事項と重複した段落【0008】の記載を削除する訂正であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項11は、明細書の段落【0008】の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (シ)訂正事項12 a 訂正の目的 訂正事項12は、訂正事項1、4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の請求項4の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項12は、訂正事項1、4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の請求項4の記載との整合を図るための訂正であり、「(エ)訂正事項4」で述べたように、[通電]をコイルへの通電に限定し、「コイル部」を「コイル」に明瞭にする訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項12は、訂正事項1、4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の請求項4の記載との整合を図るための訂正であり、「(エ)訂正事項4」で述べたように、「電磁石側への通電」を「コイルへの通電」に限定し、「コイル部」を「コイル」に明瞭にする訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (ス)訂正事項13 a 訂正の目的 訂正事項13は、明細書の段落【0021】に「この1204275244687_0には、彫刻テーブル17に」と記載されているのを、「この彫刻テーブル17に」に訂正するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項13は、明細書の段落【0021】の「この1204275244687_0には、彫刻テーブル17に」を、「この彫刻テーブル17に」に訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項13は、明細書の段落【0021】の「この1204275244687_0には、彫刻テーブル17に」を「この彫刻テーブル17に」と訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (セ)訂正事項14 a 訂正の目的 訂正事項14は、明細書の段落【0025】の「両極部35a,37b」を、「両極部35a,37a」に訂正し、図面の符号の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項14は、明細書の段落【0025】の符号の記載を図面の符号の記載との整合を図るための訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項14は、明細書の記載と図面との整合を図るための訂正であるから願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (ソ)訂正事項15 a 訂正の目的 訂正事項15は、明細書の段落【0042】の「両極部35a,37b」を、「両極部35a,37a」に訂正し、図面の符号の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項15は、明細書の段落【0042】の符号の記載を図面の符号の記載との整合を図るための訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項15は、明細書の記載と図面との整合を図るための訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ.明細書又は図面の訂正と関係する請求項についての説明 訂正事項8、9は、特許請求の範囲の記載との整合を図ることを目的とするものであり、一群の請求項[4?7]に関係する訂正である。 訂正事項10、11、12は、特許請求の範囲の請求項4の記載との整合を図ることを目的とするものであり、一群の請求項[4?7]に関係する訂正である。 訂正事項13は、明細書の明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、これは、請求項6、7に関し、一群の請求項[4?7]に関係する訂正である。 訂正事項14、15は、明細書の符号の記載と図面の符号の記載との整合を図ることを目的とするものであり、一群の請求項[4?7]に関係する訂正である。 したがって、訂正事項8?15は、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。 エ.別の訂正単位とする求め 訂正前の請求項7が請求項1?3を直接的に引用するものであったが、請求項1?3の削除に伴い、訂正後の請求項7は請求項1?3との直接的な引用関係を解消し、訂正前の請求項5?7が請求項4を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項4によって記載が訂正される請求項に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項4と、訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5?7については、別の訂正単位とすることを認める。 (2)むすび したがって、本件訂正は特許法第134条の2第1項ただし書き第1?4号に規定する事項を目的とするものであり、特許法第134条の2第3項の規定に適合し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項?第6項の規定に適合する。 よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、〔4-7〕について訂正することを認める。 4.本件発明 本件訂正により訂正された請求項1ないし7に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」等といい、請求項1ないし7に係る発明を「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 固定側に支持された永久磁石側の対向する両極部間にコイル及び可動子からなる電磁石側の極部が隙間を有して配置され、 前記永久磁石側に対して前記電磁石側をバネによりフローティング支持し、 前記バネを、一側に尖端部を備えると共に他側に円弧状部を備える断面水滴形に屈曲形成し、 前記バネの尖端部側は、前記永久磁石側に支持されると共に、前記バネの円弧状部側が前記電磁石側の可動子を支持し、 前記コイルへの通電を正逆切り換えることにより前記電磁石側を振動させる振動発生装置であって、 前記永久磁石側は、中央部に前記電磁石側のコイルを振動可能に収容するコイル収容空間部を備えると共に、このコイル収容空間部の両側に前記対向する永久磁石側の両極部を一対備え、 前記電磁石側の可動子は、前記コイルの両側に両極部が突出されて前記永久磁石側の両極部間にそれぞれ配置され、 前記永久磁石側のコイル収容空間部及び二対の両極部間と前記電磁石側の可動子のコイル両側との間の4カ所に前記バネを対称に配置した、 ことを特徴とする振動発生装置。 【請求項5】 請求項4記載の振動発生装置であって、 前記永久磁石側に、前記バネの尖端部側を嵌合支持させる尖端支持凹部を設け、 前記電磁石の可動子に、前記バネの円弧状部を嵌合支持させる円弧面を設けた、 ことを特徴とする振動発生装置。 【請求項6】 請求項4又は5に記載の振動発生装置を備えた画像彫刻装置であって、 前記コイルへの通電の切り換えを彫刻信号に基づいて行わせ前記電磁石側に連動構成された彫刻針により被彫刻媒体を彫刻する、 ことを特徴とする画像彫刻装置。 【請求項7】 請求項6記載の画像彫刻装置であって、 前記バネは、前記尖端部側が円弧状部側に対して両側に突出するように長く形成された、 ことを特徴とする画像彫刻装置。」 5.請求人の主張 請求人は、本件発明の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする旨の無効審判を請求し、本件発明に係る特許請求の範囲の記載が明確でないから、本件発明は、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきであると主張している。なお、訂正が認められたので、請求人が口頭審理で述べたように第29条第1項柱書の主張、請求項7の記載に関する主張は取り下げられた。 6.被請求人の主張 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする旨主張している。 7.無効理由 請求人が主張する無効理由は以下のとおりである。 本件発明1 「固定側に支持された永久磁石側又は電磁石側の対向する両極部間に電磁石側又は永久磁石側の極部が隙間を有して配置され」において、「固定側」と「永久磁石側」と「電磁石側」の3つの構成要素が記載されているが、各構成要素の構成、及び互いの関係が特定されておらず、発明も不明確であり、「永久磁石側、電磁石側」の「対向する両極部」がどのような構成を表しているか不明確である。特に、「極部」とは何なのか明確でない。 「前記永久磁石側又は電磁石側に対して前記電磁石側又は永久磁石側をバネによりフローティング支持し」において、「電磁石側、永久磁石側」の構成が特定されておらず、「バネ」と両「磁石側」の関係が不明確であり、「永久磁石側又は電磁石側に対して永久磁石側又は電磁石側」との構成では「永久磁石側」に対して「永久磁石側」をバネによりフローティング支持する場合及び「電磁石側」に対して「電磁石側」をバネによりフローティング支持する場合も排除しておらず、又、バネにより磁石側をフローティング支持することができる具体的な構成も特定されておらず、具体的なフローティング支持の構成も想起できない。 「前記バネの尖端部側は、前記永久磁石側又は電磁石側に支持されると共に、前記バネの円弧状部側が前記電磁石側又は永久磁石側を支持し」において、「電磁石側、永久磁石側」の構成が特定されておらず、「バネ」と「電磁石側、永久磁石側」の関係が不明確である。 「前記電磁石又は永久磁石側への通電を正逆切り換えることにより前記電磁石側又は永久磁石側を振動させる」において、永久磁石側の構成が特定されておらず、永久磁石側への通電を正逆切り替えることによりどのような原理で電磁石側または永久磁石側を振動させるのか不明である。 本件発明2 「固定側に支持された永久磁石側の対向する両極部間にコイル及び可動子からなる電磁石側の極部が隙間を有して配置され」において、「固定側」と「永久磁石側」の構成及び互いの関係が特定されていないため発明が不明確であり、また、永久磁石側の「極部」とは何か特定されておらず、発明が不明確であり、「永久磁石側の対向する両極部」の構成も同様に特定されておらず不明確である。また、「極部」が一般的な意味での『最端部』を指すものであっても具体的な構成が想起できない。また、「電磁石側の極部」についても構成を特定することができず、コイルの極部なのか、可動子の極部なのか、両方の極部なのか、「極部」は部材の先端部をいうのか不明確である。 「前記バネの尖端部側は、前記永久磁石側に支持されると共に、前記バネの円弧状部側が前記電磁石側の可動子を支持し」において、永久磁石側のバネの支持される部分と、可動子の形状が特定されておらず、バネの一側と他側とでどのようにして可動子を支持し、「バネ」によりどの様にして電磁石側をフローティング支持しているのか、具体的な構成が特定されておらず、発明が不明確であり、又、フローティング支持するための具体的な構成が何ら想起できない。 「前記電磁石側への通電を正逆切り換えることにより前記電磁石側を振動させる」において、「電磁石側への通電」とあるが、通電すればなぜ電磁石側が振動するのか具体的な構成が特定されておらず、技術的な面からの説明もなく、「永久磁石側、電磁石側」の配置との整合もない。 本件発明3 「前記永久磁石側は、中央部に前記電磁石側のコイルを振動可能に収容するコイル収容空間部を備えると共に、このコイル収容空間部の両側に前記対向する永久磁石側の両極部を一対備え」において、「永久磁石側」の「両極部」は不明確であり、特に「極部」が永久磁石側のコイル収容空間部の両側のどの位置の、どの様な形状の部位か明確ではなく、「対向する永久磁石側の両極部を一対備え」の構成も不明確であり、請求項3に係る発明の具体的な構成が想起できない。 「前記電磁石側の可動子は、前記コイルの両側に両極部が突出されて前記永久磁石側の両極部間にそれぞれ配置された」において、「可動子」の「両極部」の構成は不明確であり、「コイルの両側に両極部が突出」の構成についても不明確である。 本件発明4 請求項4が引用する請求項3は請求項2を引用しており、請求項2に「バネの一側は永久磁石側に支持されると共に、他側が電磁石側の可動子を支持し」と記載されており、「前記永久磁石側のコイル収容空間部及び二対の両極部間と前記電磁石側の可動子のコイル両側との間の4カ所に前記バネを対称に配置した」の、電磁石側の「可動子のコイル両側との間」の記載と矛盾する。 本件発明5 請求項2?請求項4のいずれの請求項も引用する本件請求項5において、「前記永久磁石側に、前記バネの尖端部側を嵌合支持させる尖端支持凹部を設け」は、請求項4の「前記永久磁石側のコイル収容空間部及び二対の両極部間と前記電磁石側の可動子のコイル両側との間の4カ所に前記バネを対称に配置した」と矛盾し、永久磁石側の構成は、請求項4の構成より広い技術的範囲を有している。 「前記電磁石の可動子に、前記バネの円弧状部を嵌合支持させる円弧面を設けた」は、請求項4の「前記永久磁石側のコイル収容空間部及び二対の両極部間と前記電磁石側の可動子のコイル両側との間の4カ所に前記バネを対称に配置した」と矛盾する。 本件発明6 「前記コイルへの通電の切り換えを彫刻信号に基づいて行わせ前記電磁石側に連動構成された彫刻針により被彫刻媒体を彫刻する」において、「電磁石側」と「彫刻針」との連動構成が不明確であり、どのようにして被彫刻媒体を彫刻できるか明確でなく、具体的な構成も想起できない。 通電の切り換えを彫刻信号に基づいて行っていることが記載されているのみであり、発明を特定するための事項に技術的な不備がある結果、発明が不明確となっており、彫刻信号についての特定がなく請求項6の構成では被彫刻媒体を彫刻できず、発明の詳細な説明の欄にも具体的な説明が無いから当業者が当該発明を実施することもできない。 8.無効理由についての判断 (1)本件発明1?3 請求項1?3は、上記のとおり、訂正により削除されたので、請求項1?3に係る無効理由は、無効理由の対象が存在しないものとなった。 (2)本件発明4 訂正事項4記載のように、訂正前の請求項4が引用する請求項3は請求項2を引用しているから、本件発明2?3に係る無効理由も検討する。 (ア)請求人は、「固定側に支持された永久磁石側の対向する両極部間にコイル及び可動子からなる電磁石側の極部が隙間を有して配置され」において、「固定側」と「永久磁石側」の構成及び互いの関係が特定されていないため発明が不明確であり、また、永久磁石側の「極部」とは何か特定されておらず、発明が不明確であり、「永久磁石側の対向する両極部」の構成も同様に特定されておらず不明確であると主張するが、「対向」とは「互いに向き合うこと」であるから、固定側の両極部が互いに向き合うことが解り明確であり、又、「極部」とは磁極部のことであり、端にあって磁束が出入りする箇所のことであるから、請求人の上記主張は採用できない。 (イ)請求人は、「前記バネの尖端部側は、前記永久磁石側に支持されると共に、前記バネの円弧状部側が前記電磁石側の可動子を支持し」において、永久磁石側のバネの支持される部分と、可動子の形状が特定されておらず、バネの一側と他側とでどのようにして可動子を支持し、「バネ」によりどの様にして電磁石側をフローティング支持しているのか、具体的な構成が特定されておらず、発明が不明確であり、又、フローティング支持するための具体的な構成が何ら想起できないと主張するが、訂正後の請求項4には、「前記永久磁石側に対して前記電磁石側をバネによりフローティング支持し、前記バネを、一側に尖端部を備えると共に他側に円弧状部を備える断面水滴形に屈曲形成し」、「前記永久磁石側のコイル収容空間部及び二対の両極部間と前記電磁石側の可動子のコイル両側との間の4カ所に前記バネを対称に配置した」と記載され、永久磁石側のバネの支持される部分、可動子の形状、フローティングの支持構造が明確となったため、請求人の上記主張は採用できない。 (ウ)「前記電磁石側への通電を正逆切り換えることにより前記電磁石側を振動させる」において、「電磁石側への通電」とあるが、通電すればなぜ電磁石側が振動するのか具体的な構成が特定されておらず、技術的な面からの説明もなく、「永久磁石側、電磁石側」の配置との整合もないとの主張は「コイルへの通電」との訂正により解消された。 (エ)請求人は、「前記永久磁石側は、中央部に前記電磁石側のコイルを振動可能に収容するコイル収容空間部を備えると共に、このコイル収容空間部の両側に前記対向する永久磁石側の両極部を一対備え」において、「永久磁石側」の「両極部」は不明確であり、特に「極部」が永久磁石側のコイル収容空間部の両側のどの位置の、どの様な形状の部位か明確ではなく、「対向する永久磁石側の両極部を一対備え」の構成も不明確であると主張するが、「対向」とは「互いに向き合うこと」であるから、固定側の両極部が互いに向き合うことが解り明確であり、又、「極部」とは磁極部のことであり、端にあって磁束が出入りする箇所のことであるから、請求人の上記主張は採用できない。 (オ)請求人は、「前記電磁石側の可動子は、前記コイルの両側に両極部が突出されて前記永久磁石側の両極部間にそれぞれ配置された」において、「可動子」の「両極部」の構成は不明確であり、「コイルの両側に両極部が突出」の構成についても不明確であると主張するが、「コイルの両側に両極部が突出」は、「前記永久磁石側の両極部間にそれぞれ配置」するための構成として明確であるから、請求人の上記主張は採用できない。 (カ)請求人は、「バネの一側は永久磁石側に支持されると共に、他側が電磁石側の可動子を支持し」と記載されており、「前記永久磁石側のコイル収容空間部及び二対の両極部間と前記電磁石側の可動子のコイル両側との間の4カ所に前記バネを対称に配置した」の、電磁石側の「可動子のコイル両側との間」の記載と矛盾すると主張するが、「バネの一側は永久磁石側に支持されると共に、他側が電磁石側の可動子を支持し」との記載はなく、仮に「前記バネの尖端部側は、前記永久磁石側に支持されると共に、前記バネの円弧状部側が前記電磁石側の可動子を支持し」が該当するとしてもバネの支持構造を特定するものであり、「前記永久磁石側のコイル収容空間部及び二対の両極部間と前記電磁石側の可動子のコイル両側との間の4カ所に前記バネを対称に配置した」はバネの装置における配置を特定するものであるから、両者の記載に矛盾はなく、請求人の上記主張は採用できない。 (3)本件発明5 (ア)請求人は、請求項4を引用する請求項5において、「前記永久磁石側に、前記バネの尖端部側を嵌合支持させる尖端支持凹部を設け」は、請求項4の「前記永久磁石側のコイル収容空間部及び二対の両極部間と前記電磁石側の可動子のコイル両側との間の4カ所に前記バネを対称に配置した」と矛盾し、永久磁石側の構成は請求項4の構成より広い技術的範囲を有していると主張するが、請求項4の当該記載はバネの装置における配置を特定し、請求項5の当該記載はバネの支持構造を特定するものであるから両者に矛盾はなく、請求人の上記主張は採用できない。 (イ)請求人は、「前記電磁石の可動子に、前記バネの円弧状部を嵌合支持させる円弧面を設けた」は、請求項4の「前記永久磁石側のコイル収容空間部及び二対の両極部間と前記電磁石側の可動子のコイル両側との間の4カ所に前記バネを対称に配置した」と矛盾すると主張するが、請求項4の当該記載はバネの装置における配置を特定し、請求項5の当該記載はバネの支持構造を特定するものであるから両者に矛盾はなく、請求人の上記主張は採用できない。 (4)本件発明6 (ア)請求人は、「前記コイルへの通電の切り換えを彫刻信号に基づいて行わせ前記電磁石側に連動構成された彫刻針により被彫刻媒体を彫刻する」において、「電磁石側」と「彫刻針」との連動構成が不明確であり、どのようにして被彫刻媒体を彫刻できるか明確でなく、具体的な構成も想起できないと主張するが、「連動」とは「機械などで、一部分を動かすことによって他の部分も統一的に動くこと」であり、電磁石側が動くことによって電磁石側と連動するよう構成された彫刻針が電磁石側と統一的に動いて彫刻するのであるから何等不明確な点は無く、請求人の上記主張は採用できない。 (イ)請求人は、通電の切り換えを彫刻信号に基づいて行っていることが記載されているのみであり、発明を特定するための事項に技術的な不備がある結果、発明が不明確となっており、彫刻信号についての特定がなく請求項6の構成では被彫刻媒体を彫刻できず、発明の詳細な説明の欄にも具体的な説明が無いから当業者が当該発明を実施することもできないと主張するが、彫刻信号のオンオフに合わせて彫刻針が振動し、その振動によって彫刻されるのであるから何等不明確な点は無く、請求人の上記主張は採用できない。 (5)むすび 以上のとおり、請求項4?7の記載は明確であり、請求項4?7に係る特許は請求人が主張する無効理由によっては、取り消すことはできない。 請求項1?3は、訂正により削除されたので、請求項1?3に係る無効理由は、無効理由の対象が存在しないものとなった。 9.むすび 以上のとおり、請求人が主張する無効理由によっては本件発明4?7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明4?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項1?3に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除されたので、請求項1?3に係る無効理由は、無効理由の対象が存在しないものとなったため、特許法第135条の規定により却下する。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 振動発生装置及び画像彫刻装置 【技術分野】 【0001】 本発明は、彫刻針と被彫刻板との相対動により被彫刻板へ彫刻を行わせるものなどに供される振動発生装置及び画像彫刻装置に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、パスポート等の小冊子状の被彫刻媒体や、紙等からなるシート状やカード状等の被彫刻媒体に画像彫刻を施して偽造防止や美的付加価値の付与に用いられる画像彫刻装置が知られている(例えば、特許文献1)。 【0003】 このような画像彫刻装置は、画像データを電気信号に変換した画像信号に基づいて振動する彫刻針により微細彫刻を行ない、写真や図形等の画像を媒体上に生成するものである。 【0004】 前記彫刻針に振動を与える振動発生装置には、弾性体としてコイルばね等が用いられており、微細な振動に弾性体が対応できず、正確な微細彫刻等に限界を招いていた。 【特許文献1】 特開2002-86993号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 解決しようとする問題点は、彫刻針に振動を与える振動発生装置には、弾性体としてコイルばね等が用いられており、微細な振動に対応できず、正確な微細彫刻等に限界を招いていた点である。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明は、微細な振動に的確に対応可能とするため、固定側に支持された永久磁石側の対向する両極部間にコイル及び可動子からなる電磁石側の極部が隙間を有して配置され、前記永久磁石側に対して前記電磁石側をバネによりフローティング支持し、前記バネを、一側に尖端部を備えると共に他側に円弧状部を備える断面水滴形に屈曲形成し、前記バネの尖端部側は、前記永久磁石側に支持されると共に、前記バネの円弧状部側が前記電磁石側の可動子を支持し、前記コイルへの通電を正逆切り換えることにより前記電磁石側を振動させる振動発生装置であって、前記永久磁石側は、中央部に前記電磁石側のコイルを振動可能に収容するコイル収容空間部を備えると共に、このコイル収容空間部の両側に前記対向する永久磁石側の両極部を一対備え、前記電磁石側の可動子は、前記コイルの両側に両極部が突出されて前記永久磁石側の両極部間にそれぞれ配置され、前記永久磁石側のコイル収容空間部及び二対の両極部間と前記電磁石側の可動子のコイル両側との間の4カ所に前記バネを対称に配置したことを振動発生装置の特徴とする。 【0007】 コイルへの通電の切り換えを彫刻信号に基づいて行わせ前記電磁石側に連動構成された彫刻針により被彫刻媒体を彫刻することを画像彫刻装置の最も主要な特徴とする。 【0008】(削除) 【発明の効果】 【0009】 本発明の振動発生装置は、微細な振動に的確に対応可能とするため、固定側に支持された永久磁石側の対向する両極部間にコイル及び可動子からなる電磁石側の極部が隙間を有して配置され、前記永久磁石側に対して前記電磁石側をバネによりフローティング支持し、前記バネを、一側に尖端部を備えると共に他側に円弧状部を備える断面水滴形に屈曲形成し、前記バネの尖端部側は、前記永久磁石側に支持されると共に、前記バネの円弧状部側が前記電磁石側の可動子を支持し、前記コイルへの通電を正逆切り換えることにより前記電磁石側を振動させる振動発生装置であって、前記永久磁石側は、中央部に前記電磁石側のコイルを振動可能に収容するコイル収容空間部を備えると共に、このコイル収容空間部の両側に前記対向する永久磁石側の両極部を一対備え、前記電磁石側の可動子は、前記コイルの両側に両極部が突出されて前記永久磁石側の両極部間にそれぞれ配置され、前記永久磁石側のコイル収容空間部及び二対の両極部間と前記電磁石側の可動子のコイル両側との間の4カ所に前記バネを対称に配置した。 【0010】 このため、バネが微細な振動に対応することができ、微細な振動を出力することが可能となる。 【0011】 コイルへの通電の切り換えを彫刻信号に基づいて行わせ前記電磁石側に連動構成された彫刻針により被彫刻媒体を彫刻する。 【0012】 このため、正確な微細彫刻等を可能とする。 【0013】 一側に尖端部を備えると共に他側に円弧状部を備える断面水滴形に屈曲形成した。 【0014】 このため、微細な振動に的確に対応可能となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0015】 微細な振動に的確に対応可能とするという目的を、断面水滴形のバネにより実現した。 【実施例1】 【0016】 図1は、本発明の実施例1に係る画像彫刻装置の外観を示す概略斜視図、図2は、画像彫刻装置の主要部を示す斜視図である。 【0017】 図1,図2のように画像彫刻装置1は、制御装置等が格納されている装置本体3を有し、装置本体3の上部に、X軸テーブル(彫刻テーブル)5、Y軸テーブル(図示せず)、Z駆動機構等を備えている。 【0018】 X軸テーブル(彫刻テーブル)5は、被彫刻媒体を載置固定してX軸方向(横方向)に往復移動させる。Y軸テーブル(明示せず)は、X軸方向に対して直交するY軸方向に彫刻テーブル5を往復移動させる。Z軸機構は、彫刻ヘッド7等を備え、彫刻ヘッド7を上下方向に移動させる。 【0019】 前記彫刻ヘッド7は、彫刻針を有し、入力される画像信号(彫刻信号)に基づいて彫刻針を振動させ、被彫刻媒体に画像を彫刻する。 【0020】 この彫刻ヘッド7は、その後方に配設されているZ軸駆動部9が有するステッピングモータ、タイミングベルト、ボールねじ等の駆動機構により上下動可能に、又、その下に配設されているY軸駆動部11により駆動されるY軸テーブルによって前後方向の移動が可能になっている。 【0021】 前記彫刻ヘッド7の前方にX軸駆動装置13が配設されている。このX軸駆動装置13は、往復運動機構(X軸駆動部)15と、該機構15上に載設され、横方向(X軸方向)に往復移動(運動)される彫刻テーブル17とで構成されている。この彫刻テーブル17にパスポート等の小冊子状の被彫刻媒体19が保持固定されている状態を示している。 【0022】 前記彫刻ヘッド7には、図3、図4のような振動発生装置21が設けられている。図3は、振動発生装置の一部を省略した正面図、図4は、同平面図である。 【0023】 図3,図4のように、振動発生装置21は、永久磁石側23に対して電磁石側25がバネ27によりフローティング支持されたことを主要な構成とする。 【0024】 図5は、永久磁石に係り、(a)は、平面図、(b)は、一部省略正面図である。 【0025】 図3?図5のように、前記永久磁石側23は、磁石ブロック29及びヨーク31からなっている。磁石ブロック29は、直方体形状に形成され、3個が上下に積層されている。ヨーク31は、複数枚のヨークプレート33が横方向に積層されたものであり、上部35及び下部37の各一端が磁石ブロック29の上下に結合され、同他端の上下に、対向する永久磁石側23の両極部35a,37aが二対備えられている。 【0026】 永久磁石側23は、ヨーク31の中央部に前記電磁石側25のコイル39側を振動可能に収容するコイル収容空間部41が備えられている。コイル収容空間部41は、上下部41a,41bが円弧の上下長穴状に形成され、ヨークプレート33の積層方向に貫通形成されている。このコイル収容空間部41の両側に前記永久磁石側23の対向する両極部35a,37aを二対備えた構成となっている。 【0027】 前記永久磁石側23に、前記バネ27の尖端部27a側を嵌合支持させる尖端支持凹部43が設けられている。尖端支持凹部43の形状は、バネ27の尖端部27a側の外形に対応し、尖端部27aを隙間無く嵌合支持させる構成となっている。 【0028】 この永久磁石側23には、一対の取付ブラケット45が取り付けられ、取付ブラケット 45の締結部45aが、固定側である彫刻ヘッド7のベースに締結固定されている。 【0029】 図6(a)は、コイルの平面図、(b)は、同概略側面図、図7(a)は、可動子の平面図、(b)は、同概略正面図である。 【0030】 図3?図7のように、電磁石側25は、前記コイル39に可動子47が嵌合して取り付けられたものである。 【0031】 図6のように、コイル39は、中央の嵌合孔49の回りに巻かれており、配線51、53が、制御部側の駆動回路に接続されている。 【0032】 図7のように、前記可動子47は、複数枚の可動子プレート55が前記ヨークプレート33の積層方向と同方向へ積層されたものであり、中央の嵌合部57の両側に両極部47a,47bが形成されている。可動子47の嵌合部57が、コイル39の嵌合孔49に嵌合する。嵌合孔49及び嵌合部57間は、僅かな隙間を備えているが、両者間を接着剤などで固定することも可能である。 【0033】 こうして、コイル39の両側に両極部47a,47bが突出されている。この両極部47a,47bは、前記永久磁石側23の両極部間にそれぞれ上下の隙間を有して配置されている。 【0034】 前記可動子47には、前記バネ27の円弧状部27bを嵌合支持させる円弧面59が嵌合部57の両側に上下4カ所に形成されている。 【0035】 可動子の幅方向中央(図7の上下部中央)には、一対の板状の支持アーム61を介してピン支持ブロック63が取り付けられ、ピン支持ブロック63に支持ピン65の上端が固定されている。支持ピン65の下端には、図示しない彫刻針を取り付けた図示しない針支持ブロックが固定されている。針支持ブロックは、彫刻ヘッド7のベース側に板バネなどにより支持され動きがガイドされている。 【0036】 図8は、バネに係り、(a)は、正面図、(b)は、側面図である。 【0037】 図3のように、バネ27は、永久磁石側23のコイル収容空間部41及び二対の両極部35a,37a間と前記電磁石側25の可動子47のコイル39両側との間の4カ所に対称に配置されている。 【0038】 図3,図8のように、バネ27は、板ばねで線対称の断面水滴形に形成され、一側に前記尖端部27aを備えると共に他側に前記円弧状部27bを備えている。尖端部27aは、板ばねを屈曲形成した突き合わせ部となっている。尖端部27aは、前記永久磁石側23の尖端支持凹部43にほぼ隙間無く嵌合する形状であり、円弧状部27bは、前記電磁石側25の円弧面59にほぼ隙間無く嵌合する曲率を有している。 【0039】 バネ27が尖端支持凹部43及び円弧面59間に介設されると、バネ27の対称線が、45°斜めとなるように設定は位置されることになる。 【0040】 このバネ27は、尖端部27aの両側部27cが円弧状部27b側に対し突出するように長く形成されている。従って、尖端部27a側を永久磁石側23の尖端支持凹部43に確実に支持させながら、円弧状部27bを、電磁石側25の円弧面59に確実に当接させることができる。 【0041】 図9は、永久磁石側23の磁極を示し、図10は、電磁石側25の磁極の切り換えを示す説明図である。 【0042】 図9のように、磁石ブロック29の上部がN極、下部がS極であるとすると、両極部35a,37aは、それぞれN極,S極となる。 【0043】 これに対し、コイル39への通電を正逆切り換えると両極部47a,47bが、図10のように(S極,N極)、(N極,S極)となるように交互に切り換えられる。この切り換えにより、両極部47a,47bが(S極,N極)であると極部47aが永久磁石側23の極部35aのN極に引き付けられると共に極部47bが永久磁石側23の極部37aのS極に引き付けられる。両極部47a,47bが(N極,S極)に切り換えられると極部47aが永久磁石側23の極部37aのS極に引き付けられると共に極部47bが永久磁石側23の極部35aのN極に引き付けられる。 【0044】 このような永久磁石側23及び電磁石側25間の作用により電磁石側25が、微小に揺動回転する。 【0045】 この揺動回転時に、バネ27が電磁石側25の円弧面59から荷重を受けて断面を変形させるように撓み、円弧面59からの荷重が解放されると断面形状を復帰させるように円弧面59を付勢する。 【0046】 従って、小型のバネ27でも電磁石側25の微小な揺動回転に的確に追従し、電磁石側25の微小振動を付勢することができる。 【0047】 しかも、4個のバネ27が、線対称で45に配置され、バネ27の付勢力が円弧面59に電磁石側25の揺動回転方向に均一に作用させることが可能となり、微小揺動振動に対して的確な付勢力を働かせることができる。 【0048】 このような微小振動は、支持アーム61を介してピン支持ブロック63、支持ピン65へと伝達され、コイル39への通電の切り換えを彫刻信号に基づいて行わせることで、画像データを電気信号に変換した信号に基づいて彫刻針を振動させることにより微細彫刻を確実に行わせることができる。 [実施例の効果] 本発明実施例の画像彫刻装置1は、永久磁石側23の対向する両極部35a,37a間にコイル39及び可動子47からなる電磁石側25の極部47a,47bが隙間を有して配置され、前記永久磁石側23に対して前記電磁石側25をバネ27によりフローティング支持し、前記バネ27を、一側に尖端部27aを備えると共に他側に円弧状部27bを備える断面水滴形に屈曲形成し、前記バネ27の尖端部27a側は、前記永久磁石側23に支持されると共に、前記バネ27の円弧状部27b側が前記電磁石側25の可動子47を支持し、前記電磁石側25への通電を正逆切り換えることにより前記電磁石側25を振動させる。 【0049】 このため、小型のバネ27でも電磁石側25の微小な揺動回転に的確に追従し、電磁石側25の微小振動を付勢することができる。従って、コイル39への通電の切り換えを彫刻信号に基づいて行わせることで、画像データを電気信号に変換した信号に基づいて彫刻針を振動させることにより微細彫刻を確実に行わせることができる。 【0050】 前記永久磁石側23は、中央部に前記電磁石側25のコイル39部を振動可能に収容するコイル収容空間部41を備えると共に、このコイル収容空間部41の両側に前記対向する永久磁石側23の両極部35a,37aを一対備え、前記電磁石側25の可動子47は 、前記コイル39の両側に両極部47a,47bが突出されて前記永久磁石側23の両極部35a,37a間にそれぞれ配置された。 【0051】 このため、コイル39への通電の切り換えにより微細彫刻をより確実に行わせることができる。 【0052】 前記永久磁石側23のコイル収容空間部41及び一対の両極部35a,37a間と前記電磁石側25の可動子47のコイル39両側との間の4カ所に前記バネ27を対称に配置した。 【0053】 このため、電磁石側25の微小な揺動振動に対して4カ所のバネ27により均一の取れた付勢力を介して確実に微小振動させることができ、微細彫刻をより確実に行わせることができる。 【0054】 前記永久磁石側23に、前記バネ27の尖端部27a側を嵌合支持させる尖端支持凹部43を設け、前記電磁石側25の可動子47に、前記バネ27の円弧状部27bを嵌合支持させる円弧面59を設けた。 【0055】 このため、バネ27により電磁石側25の支持を正確に行わせ、無駄のない確実な微小振動を可能とする。 [その他] 前記永久磁石側23と電磁石側25との配置を換え、電磁石側25の極部間に永久磁石側23の極部を介設してフローティング支持し、永久磁石側23を微小振動させる構成にすることも可能である。 【0056】 前記バネ27は、断面水滴形に形成されるものであれば、尖端部27a及び円弧状部27bを同一長さに形成する等、形状は自由に選択できる。 【図面の簡単な説明】 【0057】 【図1】画像彫刻装置の外観を示す概略斜視図である。(実施例1) 【図2】画像彫刻装置の主要部を示す斜視図である。(実施例1) 【図3】振動発生装置の一部を省略した正面図である。(実施例1) 【図4】振動発生装置の一部を省略した平面図である。(実施例1) 【図5】永久磁石に係り、(a)は、平面図、(b)は、一部省略正面図である。(実施例1) 【図6】(a)は、コイルの平面図、(b)は、同概略側面図である。(実施例1) 【図7】(a)は、可動子の平面図、(b)は、同概略正面図である。(実施例1) 【図8】バネに係り、(a)は、正面図、(b)は、側面図である。(実施例1) 【図9】永久磁石側の磁極を示す説明図である。(実施例1) 【図10】電磁石側の磁極の切り換えを示す説明図である。(実施例1) 【符号の説明】 【0058】 1 画像彫刻装置 23 永久磁石側 25 電磁石側 27 バネ 27a 尖端部 27b 円弧状部 35a,37a 極部 47 可動子 47a,47b 極部 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 固定側に支持された永久磁石側の対向する両極部間にコイル及び可動子からなる電磁石側の極部が隙間を有して配置され、 前記永久磁石側に対して前記電磁石側をバネによりフローティング支持し、 前記バネを、一側に尖端部を備えると共に他側に円弧状部を備える断面水滴形に屈曲形成し、 前記バネの尖端部側は、前記永久磁石側に支持されると共に、前記バネの円弧状部側が前記電磁石側の可動子を支持し、 前記コイルへの通電を正逆切り換えることにより前記電磁石側を振動させる振動発生装置であって、 前記永久磁石側は、中央部に前記電磁石側のコイルを振動可能に収容するコイル収容空間部を備えると共に、このコイル収容空間部の両側に前記対向する永久磁石側の両極部を一対備え、 前記電磁石側の可動子は、前記コイルの両側に両極部が突出されて前記永久磁石側の両極部間にそれぞれ配置され、 前記永久磁石側のコイル収容空間部及び二対の両極部間と前記電磁石側の可動子のコイル両側との間の4カ所に前記バネを対称に配置した、 ことを特徴とする振動発生装置。 【請求項5】 請求項4記載の振動発生装置であって、 前記永久磁石側に、前記バネの尖端部側を嵌合支持させる尖端支持凹部を設け、 前記電磁石の可動子に、前記バネの円弧状部を嵌合支持させる円弧面を設けた、 ことを特徴とする振動発生装置。 【請求項6】 請求項4又は5に記載の振動発生装置を備えた画像彫刻装置であって、 前記コイルへの通電の切り換えを彫刻信号に基づいて行わせ前記電磁石側に連動構成された彫刻針により被彫刻媒体を彫刻する、 ことを特徴とする画像彫刻装置。 【請求項7】 請求項6記載の画像彫刻装置であって、 前記バネは、前記尖端部側が円弧状部側に対して両側に突出するように長く形成された、 ことを特徴とする画像彫刻装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2020-10-30 |
結審通知日 | 2020-11-05 |
審決日 | 2020-11-30 |
出願番号 | 特願2008-51095(P2008-51095) |
審決分類 |
P
1
113・
537-
YAA
(B06B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 仲村 靖 |
特許庁審判長 |
柿崎 拓 |
特許庁審判官 |
堀川 一郎 窪田 治彦 |
登録日 | 2013-03-01 |
登録番号 | 特許第5209345号(P5209345) |
発明の名称 | 振動発生装置及び画像彫刻装置 |
代理人 | 須藤 大輔 |
代理人 | 須藤 雄一 |
代理人 | 須藤 雄一 |
代理人 | 須藤 大輔 |