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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1373017
審判番号 不服2019-7857  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-12 
確定日 2021-04-07 
事件の表示 特願2017-164911「LED構造」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月25日出願公開、特開2018- 14509〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年1月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年2月10日、米国)に出願した特願2014-556150号の一部を平成29年8月30日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 7月 2日付け 拒絶理由通知書
平成30年 9月27日 意見書・手続補正書の提出
平成31年 1月31日付け 拒絶査定
令和 1年 6月12日 本件審判請求・手続補正書の提出
令和 2年 3月18日付け 拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」という。)
令和 2年 9月18日 意見書・手続補正書の提出


第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、令和2年9月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである

「発光ダイオード(LED)のための構造であって:
N型層と、活性層と、P型層とを有するLEDダイであって、第1表面と、前記第1表面の反対側にある第2表面と、少なくとも1つの側面とを有するLEDダイ;
第1表面と、前記第1表面の反対側にある第2表面と、少なくとも1つの側面とを有する少なくとも1つの金属電極であって、前記少なくとも1つの金属電極の第1表面は前記LEDダイの第2表面に配置される、少なくとも1つの金属電極;及び
第1部分及び第2部分を有する一体的なモールド材料を有するパッケージであって、前記一体的なモールド材料の第1部分は、前記LEDダイの第1表面を封止し、前記LEDダイの第1表面上にレンズを形成し、前記一体的なモールド材料の第2部分は、前記LEDダイの側面の少なくとも一部分と、前記少なくとも1つの金属電極の側面の少なくとも一部分とを封止し、且つ隣接する複数のLEDダイの間の部分を封止し、前記一体的なモールド材料は前記少なくとも1つの金属電極の第2表面をカバーしない、パッケージ;
前記一体的なモールド材料の第2部分の第2表面に設けられる反射層;
を有し、前記一体的なモールド材料の第2部分は第1表面及び第2表面を有し、当該第1表面は前記LEDダイの第1表面とともに実質的に平坦であり、当該第2表面は前記少なくとも1つの金属電極の第2表面とともに実質的に平坦である、LEDのための構造。」

第3 拒絶の理由
令和2年3月18日付けで当審が通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

●理由1.(新規事項の追加)
令和元年6月12日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

●理由2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

●理由3.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

●理由4.(進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



●理由1.(新規事項の追加)について
・請求項1-6

●理由2(サポート要件)について
・請求項1-6

●理由3(明確性)について
・請求項1-6

●理由4(進歩性)について
・請求項 1-6
・引用文献等 1-3

<引用文献等一覧>
1.特表2007-523483号公報
2.国際公開第2011/099384号
3.特開2006-106479号公報


第4 引用文献の記載、引用発明の認定
1 引用文献1:特表2007-523483号公報
(1)引用文献1の記載

当審拒絶理由に引用され、本願の原出願の優先日前に日本国内において頒布された文献である、特表2007-523483号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審で付加した。以下同様である。)

「【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載された光電素子、請求項16の上位概念に記載された装置および請求項21の上位概念に記載された方法に関する。」

「【0144】
図1には、概略的な断面図に基づいた本発明による光電素子の第1の実施例が示されている。
【0145】
光電素子1は半導体機能領域2を含む。この半導体機能領域は支持体3上に配置されている。半導体機能領域は、ビーム生成またはビーム受光のために設けられているアクティブゾーン400を含み、ラテラル方向のメイン延在方向を有している。
【0146】
アクティブゾーンは、例えばヘテロ構造、殊にダブルヘテロ構造、一重または多重量子井戸構造またはpn接合を含む。
【0147】
半導体機能領域2、殊にそのアクティブゾーン400は、例えば多数の半導体層を含むおよび/または例えばGaNまたはGaPに基づく。半導体機能領域がGaPをベースにしている場合、光電素子は有利には、赤外スペクトル領域から黄緑スペクトル領域での放射に対して設けられ、GaNに基づいた半導体機能領域の場合には、有利には、紫外スペクトル領域から緑スペクトル領域における放射に対する。上述のスペクトル領域に対しては、GaPないしGaNベースのIII-V半導体材料が、得られる内部量子効果が高いことから、特に適している。光電素子に対しては例えばInGaNまたはInGaAlPが特に適している。
【0148】
支持体3は有利には次のような材料を含んでいる。すなわち、成長基板として半導体機能領域のエピタキシャル製造に適している材料を含んでいる。ないしはこの支持体は有利には、半導体機能領域の製造に対して適切な成長基板から成る。GaPベースの半導体機能領域には例えばGaAsまたはGeが特に適しており、GaNベースの半導体機能領域には例えばSiCまたはサファイアが成長基板に特に適している。
【0149】
アクティブゾーン400は、貫通孔9として構成された孔部を有している。ここでこの貫通孔は半導体機能領域を完全に貫通する。孔部の領域内には、接続導体材料8が配置されている。この貫通孔はラテラル方向において有利には完全に半導体機能領域によって取り囲まれており、従って半導体機能領域によってラテラル方向で境界付けされている。
【0150】
半導体機能領域はカバー部4によって覆われている。このカバー部は有利にはビーム透過性に構成されており、例えばシリコーン、BCB、ガラス、Al_(2)O_(3)等のスピンオン酸化物またはラッカを含んでいる。
【0151】
半導体機能領域2上には、有利には支持体3の方を向いていない半導体機能領域の面上には、電流拡張層5が配置されている。この電流拡張層は有利には、半導体機能領域の側方に配置された、有利には半導体機能領域に接する半導体材料に対する良好な電気的接触接続特性を有している。
・・・(中略)・・・
【0159】
接続導体材料8は、半導体機能領域2の方を向いていない、支持体の面で、第1の第1の接続部11と導電性接続されている。第1の接続部と、支持体の間には、例えばSiNを含有している別の絶縁材料10aが配置されている。この別の絶縁材料は、第1の接続部を電気的に、第2の接続部12から絶縁させる。ここでこの第2の接続部は、半導体機能領域の方を向いていない支持体の面に配置されている。有利には、別の絶縁材料10aは、ラテラル方向において第1の接続部よりも大きい拡張を有している。これによって、接続部11と接続部12の短絡の危険性がさらに低減される。
【0160】
接続部12は、有利には導電性に構成されている支持体と導電性に接続されている。従って、半導体機能領域は第1の接続部と第2の接続部を介して電気的に駆動制御可能である。例えば第1の接続部および/または第2の接続部は金属、例えばTi、Pt、AlまたはAuを含有する。合金、殊にこれらの材料の少なくとも1つを含む合金、例えばAuGeも接続部のこの構成に適している。
・・・(中略)・・・
【0171】
図2には、概略的な断面図に基づいた本発明による光電素子の第2の実施例が示されている。
【0172】
ここで示された素子は実質的に、図1に示された素子に相応している。
【0173】
図1に示された素子とは異なって、図2では、電流拡張層5の後に、別の絶縁材料10bが配置されている。この絶縁材料層は例えばSiNを含み、絶縁作用を及ぼすだけでなく、有利には半導体機能領域2および殊に半導体機能領域のアクティブゾーンに関して、保護作用または不動態化作用を及ぼす。この絶縁材料10bは有利には、半導体機能領域2のエッジにも配置され、特に有利には垂直方向に、半導体機能領域の第1の主要面6から第2の主要面13へ延在する。危害を与える外部影響からのアクティブゾーンの保護は、このような付加的な絶縁層ないしパッシブ化層によって格段に高められる。素子の電気的な接触接続は、図1に示された素子でのように、第1のコンタクト材料を介して半導体機能領域2の第1の主要面6の側から行われる。ここでこのコンタクト材料は、接続材料8と導電性接続されている。
・・・(中略)・・・
【0176】
接続導体材料8は第1の第1の接続部11と導電性に接続されている。この第1の接続部は、絶縁材料10aを介して、半導体機能領域に対向している支持体の主要面の側から電気的に第2の接続部12と絶縁されている。支持体3の方を向いていない接続部11および12の面にはそれぞれ第1のはんだ層14ないし第2のはんだ層15が配置されている。これらのはんだ層は例えばAuGeを含み、各接続部と有利には導電性接続されている。この種のはんだ層を介して、例えばはんだ、接続部11および12を介して外部接続部(例えば導体プレートの導体路または類似の外部導体装置)との接続が容易になる。
【0177】
さらに、図1に示された実施例とは異なって、図2の示された光電素子にはカプセル封入部16が設けられている。このカプセル封入部はウィンドウ17を含む。このウィンドウは、半導体機能領域の第1の主要面から見てカバー部4の後ろに配置されている。ここでこのカバー部は、半導体機能領域を少なくとも部分的に覆うないしは半導体機能領域内に埋設されている。さらに、カプセル封入部16はカプセル封入エレメント18を含む。このカプセル封入エレメントは支持体の方向においてカバー部4の後に配置されている、ないしは第1の主要面に対向する、半導体機能領域の面に配置されている。カプセル封入エレメント18は支持体3を有利には、半導体機能領域2の方を向いていない側から例えばペンチ状に囲む。殊にカプセル封入エレメント18は、半導体機能領域2の第2の主要面13の領域においてカバー部4と接している。カプセル封入部16は、有利にはウェハ結合体内に構成されている。ここでこのカプセル封入部は、カバー部4とカプセル封入エレメント18および場合によってはウィンドウ17を含む。
【0178】
図2でカバー部4およびカプセル封入エレメント18の領域内に示された破線は、カプセル封入部の種々の部分の間の境界領域を示している。有利にはカバー部4およびカプセル封入エレメント18は既に実質的に外部影響に対してハーメチックに密閉されたカプセル封入部を構成している。カプセル封入エレメントの材料は有利には任意に、製造方法の範囲内で選択され、殊に実質的にビーム透過性に構成されている。なぜなら、カプセル封入エレメント18の領域において、僅かな程度しか、半導体機能領域によって受光されるべきビームまたは半導体機能領域において生成されるべきビームがカプセル封入部に入射しないからである。ウィンドウ17およびカバー部4は有利には、このビームに関してビーム透過性に構成されており、有利には素子の効率を高める。
【0179】
ウィンドウ17は例えばガラス、ガラスプレートの一部または実質テクにカバー部と同じ材料を含む。後者の場合にはカバー部4とウィンドウ17を有利には1つのステップで構成することができる。殊にカバー部およびウィンドウを1つの部分として共通の構造体内に構成することができる。この場合にはウィンドウとカバー部の間の破線は仮想の線に相応する。しかしウィンドウとカバー部が2つの部分として実現される場合、破線はこれらのエレメントの間の境界領域をあらわす。
【0180】
この実施例ではウィンドウ17内には光学エレメント19が構成されている。この光学エレメントは有利には既にウェハ結合体内に設けられている。このためにウィンドウ材料は、適切に構造化される。カバー部とウィンドウを1つの部分として構成する場合には、カバー部は殊に光学エレメントの構成に相応して形成される。ウィンドウの構造化は例えば、エッチングプロセスまたは、場合によっては積層後にまだ塑性変形可能なウィンドウ材料内へ、光学エレメントの構造をスタンピングすることによって得られる。この実施例ではこの光学エレメントはレンズの形状に湾曲して構成され、有利には光電素子の効率が高まる。さらに均一なビーム分布のための分散エレメントを設けることができる。この分散エレメントは、例えば、ウィンドウ等から構造されている構造体によって、またはウィンドウ内および/またはカバー部内に配置されている分散粒子によって実現される。光学エレメントは場合によっては、フレネルレンズとしても構成される。」

「【0188】
図2に示された図とは異なり、さらに支持体3が配置され得る。殊に、カバー部および/またはウィンドウ層が半導体機能領域2を有利には完全に機械的に安定化させる場合には支持体は薄くされるまたは殊に完全に除去される。しかも半導体機能領域に損害が与えられる危険が高められることはない。これによって、より薄い光電素子を構成することが容易になる。半導体機能領域の支持体が省かれる場合には、カプセル封入エレメント18は、半導体機能領域の第2の主要面の側13から実質的に平らに延在することができる、ないしカプセル封入エレメントを平らな層として構成することができる。」

「【0246】
半導体機能領域の第2の主要面13の側から、このような構造体の前または後ろに絶縁層10aが設けられる。半導体機能領域から見てこの後ろには第1の接続部11が配置されている。この第1の接続部は絶縁層10aによって第2の接続部12と電気的に絶縁されている。この第2の接続部は同じように第2の主要面の側から、支持体層の完全な除去のもとで、支持体層ないし半導体機能領域上に被着されている。半導体機能領域2は第1の接続部11と接続導体8および電流拡張層5を介して、第1の主要面6の側から導電性に接続されている。また半導体機能領域の第2の主要面13は、第2の接続部12と、場合によっては、構造化された支持体層から生じる支持体3を介して導電性に接続されている。」

「【0256】
図5には、本発明の装置の実施例が概略的な断面図に基づいて示されている。
【0257】
ラテラル方向で相互に隣接して配置されている、例えば3つの光電素子1の接続部11および12はそれぞれ外部の接続部23および24と導電性に接続されている。光電素子の配置は、ウェハ結合体内の半導体機能領域2のそれに相当する。示された装置は、一体として連続しているカバー部4および/またはカプセル封入エレメント18によって構成されているカプセル封入部16によって機械的に安定されている、および損傷を与える外部の影響から保護されている。この種の装置は、次の場合に図4iに示された構造体から生じる。すなわち、生じる光電素子ないし装置が、殊に平面状にアレイとして配置され得る複数の半導体機能領域を有するようにこの構造体が個別化される場合である。半導体機能領域のアクティブゾーンは、図5では、見やすくするために省かれている。」


図1は以下のものである。

図2は以下のものである。

図5は以下のものである。


【0177】の記載から、カプセル封入部16は、カバー部4、ウィンドウ17及びカプセル封入エレメント18からなる。
そして、図2から、絶縁材料10bは電流拡張層5の上面と、電流拡張層5の側面及び半導体機能領域2の側面とを覆うことが見て取れる。
また、図2から、カプセル封入部16は、絶縁部材10bの上面、絶縁部材10bの側面、支持体3の側面、第2の接続部12の側面、第2のはんだ層15の側面の一部、支持体3の底部の一部を覆っており、第2のはんだ層15の底面は覆っていないことが見て取れる。

(2)引用発明
引用文献1の第2の実施例の素子は、図1に示された素子に相応するものであるから、この点を踏まえて上記をまとめると、引用文献1の第2の実施例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「光電素子1は半導体機能領域2を含み、(【0145】)
半導体機能領域は支持体3上に配置され、(【0145】)
半導体機能領域はアクティブゾーン400を含み、(【0145】)
アクティブゾーンはpn接合を含み、(【0146】)
支持体3は半導体機能領域の製造に対して適切な成長基板から成り、(【0148】)
第2の接続部12は、半導体機能領域の方を向いていない支持体の面に配置され、(【0159】)
第2の接続部12は金属を含有し、(【0160】)
半導体機能領域の第2の主要面13は、第2の接続部12と導電性に接続され、(【0246】)
支持体3の方を向いていない第2の接続部12の面には、第2のはんだ層15が配置され、(【0176】)
支持体3の方を向いていない半導体機能領域の面上には、電流拡張層5が配置され、(【0151】)
電流拡張層5の後に、別の絶縁材料10bが配置され、(【0173】)
絶縁材料10bは電流拡張層5の上面と、電流拡張層5の側面及び半導体機能領域2の側面とを覆い(上記(1)ウ)
カプセル封入部16は、絶縁部材10bの上面、絶縁部材10bの側面、支持体3の側面、第2の接続部12の側面、第2のはんだ層15の側面の一部、支持体3の底部の一部を覆っており、第2のはんだ層15の底面は覆っておらず、(上記(1)ウ)
ウィンドウ17内には光学エレメント19がレンズの形状に湾曲して構成された(【0180】)
光電素子の構造。(【0001】)」


2 引用文献2:国際公開第2011/099384号
(1)
当審拒絶理由において引用され、本願の原出願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2011/099384号(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。

「[0204]
[第5実施形態]
図20は、本発明の第5の実施の形態に係る発光装置を示す概略断面である。
[0205]
<発光装置の構造>
本実施の形態において、発光装置100Aは、半導体層104bの表面に電極104cが配置される発光素子104Aと、発光素子104Aの電極104cに接合される導電部材102と、発光素子104Aの電極104c及び導電部材102の周囲を被覆する反射部材114と、発光素子104Aにおける電極104cが形成された面と対向する上面及び側面を覆う透光性部材108と、を備えて構成される。
[0206]
発光素子104Aは、対向する一対の主面を有する透光性基板104aの一方の主面上に、半導体層104bが形成されてなる。さらに半導体層104bの表面に正電極及び負電極(以下、電極ともいう)が形成されている。本発明の発光装置100Aにおいて、発光素子104Aは、電極形成面と対向する透光性基板104a側を主光取り出し面として配置する。具体的に、図20の発光素子100Aでは、透光性基板104aの上面が発光素子104Aの上面を形成している。透光性基板104aの下面側に、第1の半導体層、活性層、第2の半導体層とを順に備える半導体層104bが積層されている。また、第1の半導体層及び第2の半導体層には、負電極及び正電極が各々設けられている。発光素子100Aの電極104cは、反射率の高い金属により形成されていることが好ましく、例えばAg又はAlを含むものが好適である。これにより、発光素子104Aからの光を電極104cによって反射して、透光性基板104a側から取り出すことができる。
[0207]
導電部材102は、例えば鍍金により形成され、発光素子104Aの正電極及び負電極に、導電性のダイボンド部材111を介して接着されている。導電部材102は、発光素子104Aと接続され、発光装置100Aの電極端子として機能する。導電部材102の下面は外部に露出しており、発光装置100Aの外表面の一部を形成している。
[0208]
反射部材114は、絶縁性を有しており、少なくとも導電部材102及びダイボンド部材111等の導電部の側面を被覆している。本実施の形態においては、反射部材114は、さらに発光素子104Aの電極104cの側面を被覆している。さらに、反射部材114は、発光装置100Aの側面に露出するように下方において延設されている。
[0209]
透光性部材108は、発光素子104A及びその周囲に設けられた反射部材114の上、に設けられる。透光性部材108には、蛍光体などが含有されていてもよい。
本実施の形態においては、透光性部材108は、発光素子104Aにおける透光性基板104aの上面及び側面と、半導体層104bの側面と、を被覆している。透光性部材108と反射部材114との界面は、電極104cと半導体層104bとの界面と同一若しくは界面よりも上に配置されている。
[0210]
このように本実施の形態に係る発光装置100Aは、導電部材102及びダイボンド部材111の側面が反射部材114で被覆されている。これにより、発光素子104Aからの光が導電部材102やダイボンド部材111に入射することにより生じる光の損失を低減することができる。なお、図20に示すように、透光性部材108の下面は、略全面で反射部材114に被覆されていることが好ましい。発光素子104Aの下方に進行する光を高反射率の反射部材114または電極104cによって反射させることによって、効率よく光を取り出すことができる。
また、一般的に、発光素子と波長変換部材を用いた光源は、セラミックスや樹脂を用いたパッケージに発光素子を実装し、その後、波長変換部材を設けているが、本発明の発光装置を各種パッケージ等に実装することにより、パッケージに実装する前の段階において色選別を行うことが可能であるため、パッケージ実装後の歩留まりが向上する。」

(2)
図20は以下のものである。


(3)
以上をまとめると、引用文献2には、次の技術事項が記載されている。
「半導体層104bの表面に電極104cが配置される発光素子104Aと、発光素子104Aの電極104cに接合される導電部材102と、発光素子104Aの電極104c及び導電部材102の周囲を被覆する反射部材114と、発光素子104Aにおける電極104cが形成された面と対向する上面及び側面を覆う透光性部材108と、を備えて構成され、
透光性部材108の下面は、略全面で反射部材114に被覆されており、
発光素子104Aの下方に進行する光を高反射率の反射部材114または電極104cによって反射させることによって、効率よく光を取り出す発光装置100A。」

第5 対比、一致点及び相違点
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1)
引用発明における「光電素子の構造」は、本願発明の「発光ダイオード(LED)のための構造」に相当する。
(2)
引用発明における「半導体機能領域2」は「pn接合」を含む「アクティブゾーン」を含むから、N型層、活性層、P型層を備えている。
また、引用発明における「絶縁部材10b」の上面、「支持体3」の底面、「絶縁部材10b」及び「支持体3」の側面は、それぞれ、本願発明の「LEDダイ」の「第1表面」、「第2表面」、「少なくとも1つの側面」に相当する。
したがって、引用発明1における、「半導体機能領域2」、「支持体3」、「電流拡張層5」、「絶縁部材10b」からなる部分は、本願発明の「LEDダイ」に相当する。

(3)
「接続部12」は、「支持体3」の「半導体機能領域2」と反対側に設けられ、金属を含有するものであるから、引用発明1における「少なくとも1つの金属電極」に相当する。
そして、引用発明における「接続部12」の上面、「接続部12」の底面、「接続部12」の側面は、それぞれ、本願発明における金属電極の「第1表面」、「第2表面」、「側面」に相当する。

(4)
引用発明における「カプセル封入部16」を、「絶縁部材10b」より上の部分と下の部分とに分けて考える。
「カプセル封入部16」の「絶縁部材10b」より上の部分は、「絶縁部材10b」の上面を封止すると共に、「レンズの形状の光学エレメント19」を構成するから、本願発明の「モールド材料の第1部分」に相当する。
また、「カプセル封入部16」の「絶縁部材10b」より下の部分は、「絶縁部材10b」の側面と「支持体3」の側面と「接続部12」の側面とを封止している。
また、「接続部12」の底面は「第2のはんだ層15」に覆われており、「カプセル封入部16」に覆われていない。
そうすると、引用発明の「カプセル封入部16」は、本願発明の「パッケージ」の「一体的なモールド材料の第1部分は、前記LEDダイの第1表面を封止し、前記LEDダイの第1表面上にレンズを形成し、前記一体的なモールド材料の第2部分は、前記LEDダイの側面の少なくとも一部分と、前記少なくとも1つの金属電極の側面の少なくとも一部分とを封止し、且つ隣接する複数のLEDダイの間の部分を封止し、前記一体的なモールド材料は前記少なくとも1つの金属電極の第2表面をカバーしない」ことと、「一体的なモールド材料の第1部分は、LEDダイの第1表面を封止し、LEDダイの第1表面上にレンズを形成し、一体的なモールド材料の第2部分は、LEDダイの側面の少なくとも一部分と、少なくとも1つの金属電極の側面の少なくとも一部分とを封止し、一体的なモールド材料は少なくとも1つの金属電極の第2表面をカバーしない」点で共通する。


2 一致点、相違点
以上をまとめると、本願発明と引用発明とは、次の(一致点)で一致し、(相違点1)、(相違点2)及び(相違点3)で相違する。

(一致点)
「発光ダイオード(LED)のための構造であって:
N型層と、活性層と、P型層とを有するLEDダイであって、第1表面と、前記第1表面の反対側にある第2表面と、少なくとも1つの側面とを有するLEDダイ;
第1表面と、前記第1表面の反対側にある第2表面と、少なくとも1つの側面とを有する少なくとも1つの金属電極であって、前記少なくとも1つの金属電極の第1表面は前記LEDダイの第2表面に配置される、少なくとも1つの金属電極;及び
第1部分及び第2部分を有する一体的なモールド材料を有するパッケージであって、前記一体的なモールド材料の第1部分は、前記LEDダイの第1表面を封止し、前記LEDダイの第1表面上にレンズを形成し、前記一体的なモールド材料の第2部分は、前記LEDダイの側面の少なくとも一部分と、前記少なくとも1つの金属電極の側面の少なくとも一部分とを封止し、前記一体的なモールド材料は前記少なくとも1つの金属電極の第2表面をカバーしない、パッケージ;
を有するLEDのための構造。」

(相違点1)
LEDダイを封止するパッケージが、本願発明は、「隣接する複数のLEDダイの間の部分を封止」する一方、引用発明はこの点が特定されていない点。

(相違点2)
本願発明は「前記一体的なモールド材料の第2部分の第2表面に設けられる反射層」を備えるのに対し、引用発明はこのような構成を備えていない点。

(相違点3)
「一体的なモールド材料の第2部分」について、本願発明は、「第1表面及び第2表面を有し、当該第1表面は前記LEDダイの第1表面とともに実質的に平坦であり、当該第2表面は前記少なくとも1つの金属電極の第2表面とともに実質的に平坦である」ことが特定されているのに対し、引用発明は、そのような特定がされていない点。


第6 判断
1 相違点1
引用文献1の【0256】-【0257】には、引用発明の他の実施形態として、複数の光電素子1を「一体として連続しているカバー部4および/またはカプセル封入エレメント18によって構成されているカプセル封入部16」により封入する構成が開示されており、ここで、隣接する光電素子1の間も「カバー部4およびカプセル封入エレメント18によって構成されているカプセル封入部16」により封止することが、図5から見て取れる。
そうすると、引用発明においても、複数の光電素子1を備え、隣接する光電素子1の間も「カプセル封入部16」により封止することで、相違点1に係る構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。

2 相違点2
引用発明は、光電素子に関する発明であるから、光を効率よく取り出す、ないし、発光効率を向上させるという課題を有するものである。
そうすると、引用発明において、引用文献2に記載されている、電極の周囲で、LEDダイを被覆する部材の下に反射部材を設けることで、効率よく光を取り出すという技術事項を採用することで、相違点2に係る「一体的なモールド材料の第2部分の第2表面に設けられる反射層」を備えることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。

3 相違点3
(1)
引用発明における「カプセル封入部16」の上面は「表面」を構成しており、その形状は、「レンズの形状に湾曲して構成される」(【0180】)凸状部分と、凸状部分に連なり平坦となっている平坦部分とで構成されていることが、引用文献1の図2の記載から見て取れる。
また、引用文献1の【0188】に「より薄い光電素子を構成することが容易になる」と記載されているように、光電素子の全体の厚みを薄くすることは周知の課題であるから、引用発明において、「ウインドウ17」の集光特性に支障が出ない範囲で光電素子の全体の厚みを薄くする動機付けはあるといえる。
そして、引用発明において、光電素子の厚みを薄くするに際して、「ウインドウ17」及び「カバー部4」のうち、集光特性に影響を与えない、上記平坦部分を含む面と「絶縁部材10b」の上面との間の部分をより薄く設ける態様として、上記平坦部分を含む面と「絶縁部材10b」の上面とを、同一の面とすることは、当業者にとって容易になしえることである。

(2)
引用発明における「カプセル封入部16」の底面は、本願発明に係る「一体的なモールド材料の第2部分」の「第2表面」に相当するものの、引用文献1において、「カプセル封入部16」の底部は、「接続部12」と平坦であることは記載されていない。
しかしながら、引用文献2の図20にも開示されているように、光電素子の底面を平坦とすることは周知技術であるし、光電素子を他の基板へマウントするに際し、その施工性の向上を図ることは周知の課題であるから、このような周知技術や周知の課題に基づいて、引用発明において、「カプセル封入部16」の底面と「接続部12」の底面とを平坦とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。

4 請求人の主張について
請求人は意見書において「一体的なモールド材料の第2部分」の「第1表面は前記LEDダイの第1表面とともに実質的に平坦」であることは引用文献1-3に記載されていないと主張している。
しかしながら、当該主張については、上記3で説示したとおりであるし、当該主張に係る本願発明の構成について本願の発明の詳細な説明の【0034】には、「レンズ44は、LEDチップ16の上面と略同じ高さに示されているが、パッケージ同士を接続するレンズ材料40の厚さは、硬化させられたシリコーンの場合において容易な分離を可能とするいずれの厚さであっても良い。」と記載されているように、格別な効果を奏するものとは認められず、上記3の判断に影響を与えるものではない。
よって、請求人の主張は採用できない。

5 まとめ
以上検討したとおり、引用発明において、相違点1-3に係る構成を備えることは、いずれも当業者にとって容易に想到し得たことである。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。



 
別掲
 
審理終結日 2020-11-02 
結審通知日 2020-11-04 
審決日 2020-11-18 
出願番号 特願2017-164911(P2017-164911)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H01L)
P 1 8・ 121- WZ (H01L)
P 1 8・ 55- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高椋 健司  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 田中 秀直
瀬川 勝久
発明の名称 LED構造  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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