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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1373023
審判番号 不服2019-16483  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-05 
確定日 2021-04-07 
事件の表示 特願2016-517503「電気モータのための磁束シールド」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月 7日国際公開、WO2015/066158、平成28年11月10日国内公表、特表2016-535566〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)10月29日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2013年(平成25年)11月1日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下の通りである。

平成28年 5月19日 翻訳文提出
平成30年 2月20日付け 拒絶理由通知書
同年 5月23日 意見書、手続補正書の提出
同年10月31日付け 拒絶理由通知書
平成31年 2月 6日 意見書、手続補正書の提出
令和 元年 7月30日付け 平成31年2月6日の手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定
同年12月 5日 審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和元年12月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年12月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「 【請求項1】
軸を有するシャフトと、
ハウジングと、
ロータコアを含み、前記シャフトに取り付けられたとともに、前記ハウジング内に配置されたロータと、
前記ロータの第1の外面に取り付けられたとともに前記シャフトと同心である第1のエンドリングであって、導電材料を含む第1のエンドリングと、
前記ハウジング内のステータと、
前記シャフトと前記第1のエンドリングとの間に配置された第1の磁束シールドと、
を備え、前記ロータコアにスペーサが配置され、前記スペーサから前記シャフトの軸方向に回転式磁束シールドが延在することを特徴とする電気モータ。
【請求項2】
前記第1のエンドリングに取り付けられたコンテインメントリングをさらに備え、前記コンテインメントリングは、遠心力による前記第1のエンドリングの変形を低減するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気モータ。
【請求項3】
前記第1の磁束シールドは、前記ハウジングから前記ロータの前記第1の外面に延在していることを特徴とする請求項1に記載の電気モータ。
【請求項4】
前記第1の磁束シールドは、前記第1のエンドリングの基部の近くに延在していることを特徴とする請求項3に記載の電気モータ。
【請求項5】
前記ロータの第2の外面に取り付けられたとともに前記シャフトと同心である第2のエンドリングであって、導電材料を含む第2のエンドリングをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電気モータ。
【請求項6】
前記シャフトと前記第2のエンドリングとの間に配置された第2の磁束シールドをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の電気モータ。
【請求項7】
前記ステータは、第1のエンドターンを含み、前記第1の磁束シールド及び前記ハウジングの少なくとも一部は、正方形環状筐体を形成し、前記第1のエンドリング及び前記第1のエンドターンが前記正方形環状筐体内に含まれることを特徴とする請求項1に記載の電気モータ。
【請求項8】
前記ステータは、ステータコア及び第1のエンドターンを含み、前記電気モータは、前記ステータコア及び前記第1のエンドターンの間で前記ステータコアに取り付けられた第3の磁束シールドをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電気モータ。
【請求項9】
前記電気モータは、前記ロータコアと前記第1のエンドリングとの間にスペーサを備え、前記第1の磁束シールドは、前記スペーサと一体化し、且つ、前記スペーサと同じ材料で構築されていることを特徴とする請求項1に記載の電気モータ。
【請求項10】
前記ハウジングから前記ロータの第1の外面に向かって延在する固定式磁束シールドをさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の電気モータ。
【請求項11】
前記固定式磁束シールドは、前記第1エンドリングに面するディスク形状部分を含むことを特徴とする請求項10に記載の電気モータ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年5月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

「 【請求項1】
軸を有するシャフトと、
ハウジングと、
前記シャフトに取り付けられたとともに、前記ハウジング内に配置されたロータと、
前記ロータの第1の外面に取り付けられたとともに前記シャフトと同心である第1のエンドリングであって、導電材料を含む第1のエンドリングと、
前記ハウジング内のステータと、
前記シャフトと前記第1のエンドリングとの間に配置された第1の磁束シールドと、
を備えることを特徴とする電気モータ。
【請求項2】
前記第1のエンドリングに取り付けられたコンテインメントリングをさらに備え、前記コンテインメントリングは、遠心力による前記第1のエンドリングの変形を低減するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気モータ。
【請求項3】
前記第1の磁束シールドは、前記ハウジングから前記ロータの前記第1の外面に延在していることを特徴とする請求項1に記載の電気モータ。
【請求項4】
前記第1の磁束シールドは、前記第1のエンドリングの基部の近くに延在していることを特徴とする請求項3に記載の電気モータ。
【請求項5】
前記ロータの第2の外面に取り付けられたとともに前記シャフトと同心である第2のエンドリングであって、導電材料を含む第2のエンドリングをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電気モータ。
【請求項6】
前記シャフトと前記第2のエンドリングとの間に配置された第2の磁束シールドをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の電気モータ。
【請求項7】
前記ステータは、第1のエンドターンを含み、前記第1の磁束シールド及び前記ハウジングの少なくとも一部は、正方形環状筐体を形成し、前記第1のエンドリング及び前記第1のエンドターンが前記正方形環状筐体内に含まれることを特徴とする請求項1に記載の電気モータ。
【請求項8】
前記ステータは、ステータコア及び第1のエンドターンを含み、前記電気モータは、前記ステータコア及び前記第1のエンドターンの間で前記ステータコアに取り付けられた第3の磁束シールドをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電気モータ。
【請求項9】
前記ロータは、ロータコアを含み、前記電気モータは、前記ロータコアと前記第1のエンドリングとの間にスペーサを備え、前記第1の磁束シールドは、前記スペーサと一体化し、且つ、前記スペーサと同じ材料で構築されていることを特徴とする請求項1に記載の電気モータ。
【請求項10】
前記ハウジングから前記ロータの第1の外面に向かって延在する固定式磁束シールドをさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の電気モータ。
【請求項11】
前記固定式磁束シールドは、前記第1エンドリングに面するディスク形状部分を含むことを特徴とする請求項10に記載の電気モータ。」

2 補正の適否
(1)翻訳文新規事項について
本件補正が、特許法第184条の12第2項の規定により読み替える同法第17条の2第3項の規定に適合するか、すなわち、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)に記載した事項の範囲内においてするものであるかについて、以下、検討する。

ア 本件補正により請求項1に追加された事項
上記1(1)に示すとおり、本件補正により、請求項1に係る発明は、「前記シャフトと前記第1のエンドリングとの間に配置された第1の磁束シールド」を備え、更に「前記ロータコアにスペーサが配置され、前記スペーサから前記シャフトの軸方向に回転式磁束シールドが延在する」ことが特定されたため、シャフトと第1のエンドリングとの間に配置された第1の磁束シールドに加え、スペーサからシャフトの軸方向に延在する回転式の回転式磁束シールドを有することとなった。

イ 翻訳文等に記載された事項
翻訳文等には、本件補正により特定された「回転式磁束シールド」に関連して、次の記載がある(下線は、当審で付与した。)。

(ア)「【請求項1】
ステータと、
シャフトと、
前記シャフトに取り付けられたロータであって、前記シャフトと同心のエンドリングを有するロータと、
前記エンドリング内部の前記シャフトの周囲の磁束シールドと、
を備えることを特徴とする電気モータ。」

(イ)「【請求項8】
前記電気モータ用のハウジング、および、前記ステータのコアと前記ステータのエンドターンとの間のステータ固定式磁束シールドをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電気モータ。」

(ウ)「【請求項10】
前記磁束シールドはロータ磁束シールドを備え、前記ロータ磁束シールドは前記ステータ固定式磁束シールドと同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項8に記載の電気モータ。」

(エ)「【請求項15】
前記磁束シールドは回転式磁束シールドを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気モータ。
【請求項16】
前記回転式磁束シールドは前記ロータのコア上のスペーサから延在し、前記スペーサは前記ロータのコアから離隔して前記エンドリングを配置するように機能することを特徴とする請求項15に記載の電気モータ。
【請求項17】
前記回転式磁束シールドおよび前記スペーサは、断面においてL字状を形成することを特徴とする請求項16に記載の電気モータ。」

(オ)「【背景技術】
【0001】
電気モータは数多くの異なる背景において使用される。一般に、電気モータは、ハウジング内のロータ(回転子)およびステータ(固定子)で構成される。ロータおよびステータはいずれも、銅または別の導電材用を含みうる。例えば、ステータは銅製エンドターンを有し、ロータは銅製エンドリングを有する。これらの銅製の構成要素はいずれも、モータが作動している時、励磁を引き起こす。銅部分からの磁束のいくらかの量は漏れを起こし、すなわち、磁束線は、モータの駆動部分内部で終結しない。モータの非駆動部分に近接する磁束線は、モータのトルクに貢献しない。とりわけ、モータが高速(すなわち、高周波)で作動している時、漏れはモータの動力を低下させうる。電磁気の観点からすれば、漏れ磁束は必ずしも損失とみなされないが、モータを実際上小さくすることとなり、望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
第1の様態において、電気モータはステータ、シャフト、該シャフトに取り付けられたロータであって、シャフトと同心のエンドリングを有するロータ、および、エンドリング内部のシャフトの周囲の磁束シールドを含む。
【0003】
・・・電気モータは、電気モータ用のハウジング、および、ステータのコア(core)とステータのエンドターンとの間のステータ固定式磁束シールド(stator stationary flux shield)をさらに含む。ステータ固定式磁束シールドはリング形状である。磁束シールドはロータ磁束シールドを含み、ロータ磁束シールドはステータ固定式磁束シールドと同じ材料でできている。電気モータは、ロータの反対の端部に、別のエンドリングを、および該別のエンドリング内部のシャフト周囲に別の磁束シールドをさらに備える。磁束シールドは固定式磁束シールドを含む。固定式磁束シールドは、筒状部分を備える。固定式磁束シールドは筒状部分から延在するディスク状部分を備える。磁束シールドは回転式磁束シールドを備える。回転式磁束シールドはロータのコア上のスペーサから延在し、スペーサはロータのコアから間隔を空けてエンドリングを配置するよう機能する。回転式磁束シールドおよびスペーサは断面においてL字状を形成する。」

(カ)「【0009】
この例(当審注:下記(ク)に示す図1の例)では、ベアリングインサート108を保持するハウジング102の部分が、ロータのエンドリング106Cとシャフト101の対応する部位との間に位置するシールド110も備える。この軸対称の形状において、磁束シールド110は、その中で磁束シールド110がシャフトの周囲を回転延伸するカップまたはシリンダ(筒体)とみなされうる。ある実施では、磁束シールドはベアリングインサートから、基本的にロータの外面まで延在しうる。ロータのエンドリングをロータの両端に有する実施においては、各エンドリングが磁束シールドを有していてもよい。
【0010】
磁束シールドは、磁気的に許容的ではあるが、導電性ではない材料によって製造されてもよい。例えば、1つ以上の磁束シールドが、アルミニウム、マグネシウム、および/または不動態銅から作られてもよい。
【0011】
図2-6は導電性磁束シールドの実施例を示している。各実施例は、ハウジング部材200によって保持される、ハウジング102の一部およびベアリングインサート108の一部、および、ロータおよびステータの一部をそれぞれ示している。図2では、磁束シールド202は、軸方向に、部材200からロータコア部106Bに向かって延在する。そうすることにより、磁束シールドはロータのエンドリング106Cのすぐ近くを通過する。この例では、磁束シールドはロータコアの付近、すなわち、ロータを構成する積層のうち、最外部の積層付近で終結する。ここで磁束シールド202は、エンドリングに面する場所において、ベアリングインサートが取り付けられている場所よりも、いくらか薄くなっている。別の実施においては、磁束シールドは、実質的に一定の厚さであるか、またはエンドリング付近では、他の領域よりも厚みがあってもよい。」

(キ)「【0019】
ただし、別の実施では、1つ以上の回転式磁束シールドが使用されてもよい。回転式磁束シールドは、固定式磁束シールドに加えて、またはその代替として使用されてもよい。図4-6はロータ磁束シールド400の例を示している。ここで、スペーサ402はロータコア部分106Bに位置している。ここで、モータは、基本的に長方形の外形のロータエンドリング404を有する。ある実施では、例えば、コンテインメントリング406によって、ロータエンドリングの半径方向の変形が防止または軽減されうる。
【0020】
ロータ磁束シールド400は、例えば筒状のような任意の形状であってもよい。ここでは、ロータ磁束シールドはスペーサから軸方向に延在し、結果として、これらの構成要素は断面においてL字型を形成する。上記の例と同様に、筐体は、ハウジング102、部材200およびロータ磁束シールド400によって定められる。
【0021】
図5では、固定式磁束シールド500が提供される。ある実施例において、固定磁束(stationary flux)はモータのハウジングによって提供される。ここでは、固定式磁束シールドは部材200から延在している。
【0022】
固定式磁束シールド500は、ここでは基本的に筒状の第1部分500Aを含んでいる。固定式磁束シールドは、例えば、その端部において、第1部分500Aから延在する第2部分500Bを含んでいる。例えば、第2部分は基本的に円盤形状であってもよく、結果としてその1つの面がロータエンドリング404の方向に向いている。ここで、第2部分は、残りのロータから見て別の方向に向いた、ロータエンドリングの表面領域の一部を覆っている。別の実施においては、第2部分は、エンドリングのより小さな表面領域、またはより大きな表面領域を覆っていてもよい。
【0023】
固定式磁束シールドはステータ磁束シールドと共に使用されてもよい。図6は、ステータ磁束シールド300が、ロータ磁束シールド400および固定式磁束シールド500と共に使用されている例を示している。」

(ク)上記(キ)に示す【0019】に記載された図4ないし図6として、翻訳文等には、次の図面(FIG.4ないしFIG.6)が記載されている。また、これらの図の理解のため、翻訳文等に記載されている図1(FIG.1)を併せて示す。これらの図において、参照番号に付けられた名称等は、理解のために合議体が付与したものである。




ウ 新規事項についての判断
上記イ(カ)に示す事項、及び(ク)に示す図1の記載から、翻訳文等には、ロータのエンドリング106Cとシャフト101の対応する部位との間に磁束シールド110を備えた電気モータが記載されているといえる。しかし、図1には、回転式磁束シールドを有する電気モータは示されていない。
さらに、このような磁束シールドを備えた電気モータに関し、上記イ(キ)に示す事項から、翻訳文等には、1つ以上の回転式磁束シールドが使用されてもよいことが示され、そのような例として、図4ないし6(上記イ(ク)参照)が示されることが記載されている。そして、これら図4ないし6の記載をみると、ロータコア部分106Bにスペーサ402が配置され、このスペーサからシャフトの軸方向に延在する筒状のロータ磁束シールド400を有する電気モータがが示されており、さらに、図4には、固定式磁束シールドが明示されていないものの、図5及び6をみると、このようなロータ磁束シールド400と共に、固定式磁束シールド500がモータのハウジングに固定されることも示されている。そして、このような事項は、翻訳文の上記イ(キ)に示す記載とも整合している。
しかし、ロータ磁束シールド400と共に固定式磁束シールド500を備えている図5及び6の例では、固定式磁束シールド500は、ロータエンドリング404の図面上の上方(モータシャフトの軸方向上側)にあり、シャフトとロータエンドリング404との間には、配置されていない。
すなわち、翻訳文等には、ロータコアにスペーサ402が配置され、スペーサ402から前記シャフト101の軸方向に回転式磁束シールド400があると共に、固定式磁束シールドを備える電気モータは記載されているといえるが、上記アに示すような、シャフトと第1のエンドリングとの間に配置された第1の磁束シールドに加え、スペーサからシャフトの軸方向に延在する回転式の回転式磁束シールドを有する電気モータについては、記載されているとはいえない。また、このような事項が翻訳文等の記載から自明であるともいえない。また、翻訳文等には、ほかの記載をみても、ロータ磁束シールド400がシャフトの軸方向に延在しているものにおいて、シャフトとロータエンドリング404との間に固定式磁束シールドを配置することは記載されていない。
そして、回転式磁束シールドを有する電気モータを示す図4ないし6の記載をみると、シャフトとロータエンドリング404との間には、ロータ磁束シールド400があり、これに加えてシールドする必要がなく、また、固定式磁束シールド500を配置する余地もないため、ロータ磁束シールド400がシャフトの軸方向に延在しているものにおいては、シャフトとロータエンドリング404との間には、固定式磁束シールドを配置していないものと理解できる。
これに対し、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、前記1(1)に示す通りであるが、翻訳文等には、前述のように、ロータ磁束シールド400と共に固定式磁束シールド500を備えているものにおいて、固定式磁束シールド500をシャフトとロータエンドリング404(本件補正後の請求項1に係る発明の「第1のエンドリング」に相当する。)との間に配置することは、記載されておらず、また翻訳文等の記載から自明な事項ともいえないから、特許請求の範囲の請求項1の記載を「前記シャフトと前記第1のエンドリングとの間に配置された第1の磁束シールド」を備え、「前記ロータコアにスペーサが配置され、前記スペーサから前記シャフトの軸方向に回転式磁束シールドが延在する」とする本件補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。
なお、仮に、本件補正後の請求項1の記載において、「回転式磁束シールド」が「第1の磁束シールド」である、あるいは「第1の磁束シールド」の一部であるとすると、第1の磁束シールドである回転式磁束シールドが「前記シャフトと前記第1のエンドリングとの間に配置され」ることとなる。しかし、この請求項1を引用する請求項3では、「前記第1の磁束シールドは、前記ハウジングから前記ロータの前記第1の外面に延在している」ことが特定されており、これは、回転式磁束シールドがハウジングから延在することを特定することとなる。しかし、このような事項は、翻訳文等には記載されておらず、また自明な事項ともいえないから、仮に、本件補正後の請求項1の記載において、「回転式磁束シールド」が「第1の磁束シールド」である、あるいは「第1の磁束シールド」の一部であるとしても、本件補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。

エ 小括
したがって,本件補正は、翻訳文等に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえず、特許法第184条の12第2項の規定により読み替える同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(2)補正の目的について
上記(1)に示すように本件補正は、新規事項の追加を含む補正であるが、仮に新規事項の追加を含むのものでないとして、本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」は、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られる。また、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。
これを本件補正において検討すると、本件補正の前後で請求項の数は、11で変わらず、請求項2ないし11については、本件補正の前後で同様の事項が特定されていることから、本件補正後の請求項1は本件補正前の請求項1に対応するものと解される。
そして、本件補正前の請求項1の記載は、前記1(2)に示す通りであるところ、本件補正前の請求項1に係る発明は、シャフトとハウジング、ロータ、第1のエンドリング、ステータ及び第1の磁束シールドを、発明を特定するために必要な事項として備える電気モータの発明である。これに対し、本件補正後の請求項1には、「前記ロータコアにスペーサが配置され、前記スペーサから前記シャフトの軸方向に回転式磁束シールドが延在する」ことが記載されているが、この補正事項は、本件補正前の請求項1に係る発明である電気モータを特定するために必要な事項であるシャフトとハウジング、ロータ、第1のエンドリング、ステータ及び第1の磁束シールドのいずれを限定するものでもなく、実質的に回転式磁束シールドについての事項を付加する補正であるから、本件補正は、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものとはいえない。
よって、本件補正は、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の解決しようとする課題が同一であるものには該当せず、特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものには該当しない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)独立特許要件について
上記(1)に示すように、本件補正は、新規事項を追加する補正であり、また、上記(2)に示すように補正の目的要件を満たしていないが、仮に、本件補正が新規事項の追加でなく、また限定的減縮を目的とするもの(特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするもの)であるとすると、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しなければならないから、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下、検討する。

ア 本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

イ 本願の発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明の翻訳文は、平成30年5月23日付け手続補正書及び令和元年12月5日付け手続補正書により補正されていないから、本願の発明の詳細な説明の翻訳文には、(1)イ(オ)ないし(キ)に示す事項が記載され、また(1)イ(ク)に示す図面が示されている。

ウ サポート要件について
本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるためには、特許法第36条第6項1号の規定により、本件補正後の請求項1に係る発明が、発明の詳細な説明に記載したものでなければならない(以下、「サポート要件」という。)。そして、本件補正後の請求項1に係る発明がサポート要件に適合するためには、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,本件補正後の請求項1に係る発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当該発明の技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか,または,その記載や示唆がなくとも当業者が技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでなければならない。
そこで、発明の詳細な説明の記載をみると、発明の詳細な説明には、上記(1)イに示す事項が記載されており、これより、発明の詳細な説明には、「電気モータは、ハウジング内のロータ(回転子)およびステータ(固定子)で構成され」(【0001】)、これらの「構成要素はいずれも、モータが作動している時、励磁を引き起こ」(【0001】)し、「磁束のいくらかの量は漏れを起こ」(【0001】)すが、「モータの非駆動部分に近接する磁束線は、モータのトルクに貢献しない」(【0001】)ため、望ましくないことを解決する課題としてなされた発明として、「ハウジング102の部分が、ロータのエンドリング106Cとシャフト101の対応する部位との間に位置するシールド110も備え」(【0009】 上記イ(カ)参照)た電気モータ(上記イ(ク)に示す図1の記載参照。)が示され、さらにロータコアにスペーサ402が配置され、スペーサ402から前記シャフト101の軸方向に回転式磁束シールド400があると共に、ロータエンドリング404のモータシャフトの軸方向端部側にある固定式磁束シールドを備える電気モータは記載されているが、ロータ磁束シールド400がシャフトの軸方向に延在しているものにおいて、シャフトとロータエンドリング404との間に固定式磁束シールドを配置することは記載されていない(上記(1)ウ参照)。
そうすると、発明の詳細な説明には、「シャフトと前記第1のエンドリングとの間に配置された第1の磁束シールドと、を備え」た電気モータにおいて、「ロータコアにスペーサが配置され、前記スペーサから前記シャフトの軸方向に回転式磁束シールドが延在すること」は記載されていないから、このような事項を発明特定事項とする請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
したがって、本願の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないから、特許法第36条第6項第1号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

実施可能要件について
本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるためには、特許法第36条第4項1号の規定により、本願の発明の詳細な説明の記載が、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなければならない(以下、「実施可能要件」という。)。そして、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するためには、発明の詳細な説明の記載が、これをみた当業者によって、本願出願当時に通常有する技術常識に基づき、過度な試行錯誤を要することなく、発明の実施をすることができる程度の記載であることが必要となる。
そこで、本願の発明の詳細な説明の記載をみると、発明の詳細な説明には、上記(1)ウに示す通り、ロータ磁束シールド400と共に固定式磁束シールド500を備えていることは、記載されているが、このような例である図5及び6では、固定式磁束シールド500が、ロータエンドリング404の図面上の上方(モータシャフトの軸方向上側)にあり、ロータ磁束シールド400を備えたものにおいて、固定式磁束シールド500が、シャフトとロータエンドリング404との間には、配置されたものは記載されていない。これは、図5及び6の記載からみて、シャフトとロータエンドリング404との間には、ロータ磁束シールド400があり、固定式磁束シールド500を配置する余地もないため、ロータ磁束シールド400がシャフトの軸方向に延在しているものにおいては、シャフトとロータエンドリング404との間には、固定式磁束シールドを配置していないものと理解できる。また、発明の詳細な説明のほかの記載をみても、ロータ磁束シールド400がシャフトの軸方向に延在しているものにおいて、シャフトとロータエンドリング404との間に固定式磁束シールドを配置することは記載されていない。
そうすると、発明の詳細な説明の記載は、当業者が「前記シャフトと前記第1のエンドリングとの間に配置された第1の磁束シールド」を備え、「前記ロータコアにスペーサが配置され、前記スペーサから前記シャフトの軸方向に回転式磁束シールドが延在する」電気モータの発明を実施できる程度に記載したものであるとはいえない。
したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項1号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

オ 独立特許要件についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

(4)本件補正についてのむすび
以上のことから、本件補正は、特許法第184条の12第2項の規定により読み替える同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、また、同法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するものであるから、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年12月5日にされた手続補正(本件補正)は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成30年5月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができず、また、引用文献1に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献1:特開平9-215286号公報

3 引用文献1の記載及び記載された発明
(1)引用文献1の記載
引用文献1には、図面とともに、次のアないしスに示す事項が記載されている(下線は、当審で付加した。)。

ア 「【請求項1】 複数の棒状導体の両端を短絡環で短絡して構成されたかご形巻線を回転子鉄心のスロット内に納めて形成されたかご形回転子、及び巻線をされた固定子鉄心を有するかご形誘導電動機において、上記回転子鉄心の軸方向長さが上記固定子鉄心の軸方向長さよりも長いことを特徴とするかご形誘導電動機。
【請求項2】 複数の棒状導体の両端を短絡環で短絡して構成されたかご形巻線を回転子鉄心のスロット内に納めて形成されたかご形回転子、及び巻線をされた固定子鉄心を有するかご形誘導電動機において、上記短絡環を取り巻くように磁性体を配置したことを特徴とするかご形誘導電動機。」

イ 「【請求項4】 短絡環を取り巻くように配置された磁性体が回転子円周方向につながっていることを特徴とする請求項2又は請求項3記載のかご形誘導電動機。」

ウ 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、かご形誘導電動機及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図19は、従来のかご形誘導電動機の断面図を示したものである。1は固定子、2は固定子1の固定子鉄心、3は固定子巻線、4は回転子、5は回転子鉄心、6はかご形導体の導体バー、7はかご形導体の短絡環、8はシャフトである。
【0003】従来のかご形誘導電動機の回転子4は、積層された回転子鉄心5に銅またはアルミの棒を軸方向に対して平行に差し込みかご形導体の導体バー6を形成し、両端を短絡環7で短絡して、かご形導体としたものをシャフト8に固定して構成される。また、固定子1は固定子鉄心2に三相巻線されたものが用いられ、これに三相交流電圧が加えられると回転子4の導体バー6、短絡環7に電流が流れ、このかご形導体の導体バー6、短絡環7の電流による磁束と固定子1の三相巻線3に流れる電流との相互作用により回転子4が回転する。」

エ 「【0005】この発明は・・・、インバータ電源のような高調波を含む電源が接続されても、その2次損失を低く抑え、効率の良いかご形誘導電動機を得ることを目的とする。」

オ 「【0007】また、この発明に係るかご形誘導電動機は、複数の棒状導体の両端を短絡環で短絡して構成されたかご形巻線を回転子鉄心のスロット内に納めて形成されたかご形回転子、及び巻線をされた固定子鉄心を有するかご形誘導電動機において、短絡環を取り巻くように磁性体を配置したことを特徴とするものである。」

カ 「【0009】また、この発明に係るかご形誘導電動機は、短絡環を取り巻くように配置された磁性体が回転子円周方向につながっていることを特徴とするものである。」

キ 「【0022】実施の形態2.この発明における実施の形態2によるかご形誘導電動機の断面図を図2に示す。図2においては、2次漏れリアクタンスを大きくすることができる構成であり、10は短絡環7の周囲に短絡環の電流がつくる磁界の方向に短絡環7を取り巻くように配置した磁性体であり、例えば、低炭素鋼でできている。また、図3はこの実施の形態2における回転子4の斜視図で、理解を助けるために磁性体10の一部を切り欠いて表示している。
【0023】かご形誘導電動機の2次漏れリアクタンスのうち、所謂短絡環漏れリアクタンスは短絡環7の形状によって決まるが、これは、短絡環7の周囲が空気であるため、空気の透磁率を基に求められたパーミアンス(磁気導通率)によって求められているものである。
【0024】ところが、この発明のように短絡環7の周りに磁性体10を配置することにより、パーミアンスが大きくなり、短絡環漏れリアクタンスが大きくなる。このように短絡環7の周囲に短絡環の電流がつくる磁界の方向に短絡環7を取り巻くように磁性体10を配置することで、2次漏れリアクタンスを大きくすることができる。
【0025】さらに、この磁性体10に切り欠きや、穴11を設けることにより回転子4の動バランスつまり動釣り合いを調整でき、回転振動や、発生音の小さいかご形誘導電動機を得ることができる。
【0026】また、この磁性体10を、回転子4の円周方向につながったリング状に形成しておけば、回転による遠心力に対し短絡環の破損を防止できるが、回転子4の円周方向につながっていなくても2次漏れリアクタンスを増加させる効果はある。
【0027】また、図2、図3では短絡環7を取り囲むように磁性体10を配置しているが、例えば外周には磁性体を設けない形状でも良い。要するに、この実施の形態2における短絡環の近傍に配置した磁性体は、2次漏れリアクタンスを大きくし、高調波2次電流を流れにくくし、高調波2次銅損を抑制することができる。」

ク 「【0046】また、この発明によるかご形誘導電動機は、短絡環の周囲に磁性体を配置したので2次漏れリアクタンスが増加し、高調波を含む電源で駆動しても効率のよい誘導電動機が得られる。」

ケ 引用文献1には、【図2】、【図3】として、下のような図が記載されている。


上記【図2】において、参照番号4が8(シャフト8)を含む部材を示すように矢印が記載されているが、これは、以下に示す、引用文献1の従来のかご形誘導電動機の断面図である【図19】において、同じ参照番号4が参照番号5(回転子鉄心5)を含む部材を示すように記載され、参照番号4が回転子を表すものであること(前記(ウ)参照。)から、【図2】における参照番号4の示す矢印は、誤記であり、回転子鉄心を表す参照番号5を含む部材が回転子4であると解される。


コ 上記キ及び【図2】、【図3】に示される実施の形態2によるかご形誘導電動機が上記ウ及び【図19】に示されるかご形誘導電動機を従来の例としてなされたものであることを考慮すると、引用文献1に記載された実施の形態2のかご形誘導電動機は、シャフト8を備え、このシャフト8は回転子4の回転中心となるものであるから軸を有しているといえる。

サ 引用文献1の【図2】に示される実施の形態2のかご形誘導電動機を示す断面図である【図2】には、従来のかご形誘導電動機を示す【図19】と同様に、固定子1と回転子4を取り囲むように二重線が記載されていることから、その中に回転子4と固定子1を配置したハウジングを有しているといえる。

シ 上記ウの記載からみて、回転子4がシャフト8に固定されている。
また、上記ウの記載から、回転子4の積層された回転子鉄心5に差し込まれた銅またはアルミの棒の両端を短絡環7で短絡していることから、回転子4の端部には、短絡環7が取り付けられているといえる。この短絡環7は、【図2】及び【図3】の記載からみて、シャフト8と同心であり、銅またはアルミの棒の両端を短絡環7で短絡しているものであり、ここでいう短絡とは、電気的な短絡であると解されるから、短絡環7は、導電性を有しているといえる。
これらのことは、引用文献1に記載された従来のかご形誘導電動機と実施の形態2のかご形誘導電動機において同様であるといえる。

ス 上記キの記載から、実施の形態2のかご形誘導電動機は、短絡環7の周囲に短絡環7を取り巻くように磁性体10を配置している。この短絡環7は、回転子4の端部にシャフト8と同心となるように取り付けられ(上記シ参照)ており、この短絡環7を取り巻くように配置される磁性体10は、シャフト8と短絡環7との間にも配置されることとなる。上記ケに示す引用文献1の図2の記載からもシャフト8と短絡環7との間に、磁性体10が配置されているといえる。

(2)引用発明
上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が、記載されているといえる。

「軸を有するシャフト8と、
ハウジングと、
前記シャフト8に固定されるとともに、前記ハウジング内に配置された回転子4と、
前記回転子4の端部に取り付けられるとともに前記シャフト8と同心である短絡環7であって、導電性を有している短絡環7と、
前記ハウジング内の固定子1と、
前記シャフト8と前記短絡環7との間に配置された磁性体10と、
を備えるかご形誘導電動機。」

3 対比及び判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「軸」、「シャフト8」は、それぞれ、本願発明の「軸」、「シャフト」に相当するから、引用発明の「軸を有するシャフト8」は、本願発明の「軸を有するシャフト」に相当する。
引用発明の「ハウジング」は、本願発明の「ハウジング」に相当する。
引用発明の「前記シャフト8に固定される」は、本願発明の「前記シャフトに取り付けられた」に相当し、引用発明の「回転子4」は、本願発明の「ロータ」に相当するから、引用発明の「前記シャフト8に固定されるとともに、前記ハウジング内に配置された回転子4」は、本願発明の「前記シャフトに取り付けられたとともに、前記ハウジング内に配置されたロータ」に相当する。
引用発明の「前記回転子4の端部」は、回転子4の外面の一部分であるから、本願発明の「前記ロータの第1の外面」に相当し、引用発明の「前記回転子4の端部に取り付けられる」は、本願発明の「前記ロータの第1の外面に取り付けられた」に相当する。また、引用発明の「短絡環7」は、本願発明の「第1のエンドリング」に相当する。引用発明の「導電性を有している短絡環7」は、短絡環7が導電材料を含んでいなければ、短絡環7が「導電性を有」することはないから、引用発明の「導電性を有している短絡環7」は、本願発明の「導電材料を含む第1のエンドリング」に相当する。よって、引用発明の「前記回転子4の端部に取り付けられるとともに前記シャフト8と同心である短絡環7であって、導電性を有している短絡環7」は、本願発明の「前記ロータの第1の外面に取り付けられたとともに前記シャフトと同心である第1のエンドリングであって、導電材料を含む第1のエンドリング」に相当する。
引用発明の「固定子1」は、本願発明の「ステータ」に相当するから、引用発明の「前記ハウジング内の固定子1」は、本願発明の「前記ハウジング内のステータ」に相当する。
引用発明の「磁性体10」は、磁性体であることにより、磁束シールドの作用を有するから、本願発明の「第1の磁束シールド」に相当する。したがって、引用発明の「前記シャフト8と前記短絡環7との間に配置された磁性体10」は、本願発明の「前記シャフトと前記第1のエンドリングとの間に配置された第1の磁束シールド」に相当する。
引用発明の「かご形誘導電動機」は、本願発明の「電気モータ」に相当する。

(2)一致点、相違点について
上記(1)より、本願発明と引用発明とは、次の点で一致し、相違点はない。

一致点
「軸を有するシャフトと、
ハウジングと、
前記シャフトに取り付けられたとともに、前記ハウジング内に配置されたロータと、
前記ロータの第1の外面に取り付けられたとともに前記シャフトと同心である第1のエンドリングであって、導電材料を含む第1のエンドリングと、
前記ハウジング内のステータと、
前記シャフトと前記第1のエンドリングとの間に配置された第1の磁束シールドと、
を備える電気モータ。」

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当する。よって、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-10-30 
結審通知日 2020-11-04 
審決日 2020-11-18 
出願番号 特願2016-517503(P2016-517503)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三島木 英宏  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 山本 健晴
長馬 望
発明の名称 電気モータのための磁束シールド  
代理人 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所  
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