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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 C12Q |
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管理番号 | 1373080 |
審判番号 | 不服2019-17316 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-12-23 |
確定日 | 2021-04-15 |
事件の表示 | 特願2016-570171「蛍光ベースの検出方法によるサンプル中の微生物を検出する方法」拒絶査定不服審判事件[平成27年 8月27日国際公開、WO2015/124315、平成29年 3月16日国内公表、特表2017-506912]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯、本願発明 本願は、平成27年2月20日(パリ条約による優先権主張 平成26年2月21日 欧州特許庁、2件)を国際出願日とする出願であり、令和1年8月19日付けで拒絶査定がなされ、同年12月23日に拒絶査定不服の審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。 本願の請求項1?15に係る発明は、令和1年12月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載されたものであり、そのうち請求項10に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものと認める。 「【請求項10】 蛍光標識を含むオフレートの遅い修飾アプタマー(SOMAmer)であって、Staphylococcus aureus細胞に特異的なヌクレオチド配列を含み、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11および配列番号12からなる群から選択されるヌクレオチド配列またはそれに少なくとも90%同一である配列を含むことを特徴とする、前記SOMAmer。」 なお、本願発明は、令和1年8月19日付けでなされた拒絶査定時の特許請求の範囲(平成31年4月8日付け手続補正書)の請求項10に係る発明と同じである。 第2 原査定の理由 令和1年8月19日付け拒絶査定は、この出願の請求項1?15に係る発明は、その出願の日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた下記1.の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)、という理由を含むものである。 (外国語特許出願) 1.PCT/US2015/015979 (国際公開第2015/126769号、特表2017-507668号公報) 第3 当審の判断 1.発明者及び出願人 この出願の発明者(5名)は、その出願前の上記外国語特許出願に係る発明をした者(2名)と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人(2名)が上記外国語特許出願の出願人(1名)と同一でもない。 2.外国語特許出願明細書等の記載 拒絶査定で引用文献1として引用された、本願優先日前の平成26年2月18日に第一の優先権(優先権主張番号61/940,955)を主張する外国語特許出願であって、その出願後に国際公開第2015/126769号として国際公開がされた、外国語特許出願の明細書、特許請求の範囲または図面(以下、「外国語特許出願明細書等」という。)には次の事項が記載されており、同様の事項が上記第一の優先権の書類にも記載されている。なお、外国語特許出願明細書等は英文であるから、国際公開第2015/126769号のパテントファミリーである特表2017-507668号公報の記載を翻訳文として用いる。また、下線は当審が付したものである。 ア 「発明の概要 [0007] 本開示は、精製した組換または天然タンパク質を用いる多重修飾DNAライブラリでのSELEXによる、いくつかの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)細胞表面関連タンパク質に対する新規の遅いオフ速度の修飾アプタマー(SOMAmer)試薬の生成について記載する。nM未満のKdを有する高親和性結合剤を、ブドウ球菌タンパク質A(SpA)、クランピング因子(ClfA、ClfB)、フィブロネクチン結合タンパク質(FnbA、FnbB)及び鉄調節表面決定因子(Isd)について取得した。いくつかのアプタマーは、試験した全ての株からの黄色ブドウ球菌細胞に特異的に結合したが、他のブドウ球菌や他の細菌には結合しなかった。SpA及びClfAアプタマーが、低細胞密度マトリクスからの黄色ブドウ球菌細胞の選択的捕捉及び濃縮に有用であることが培養やPCRに示されるように証明され、PCR阻害剤の検出限界の改善及び効率的な除去につながった。黄色ブドウ球菌細胞の検出は、細菌細胞表面をアプタマーで被覆し次いでアプタマーのqPCRを行った場合にゲノムPCRと比べて桁違いに強化された。 [0008] 本開示は試料中の微生物の有無の検出方法を記載し、該方法が、a)試料と第一アプタマーを接触させ混合物を形成し、ここで該第一アプタマーは微生物の第一細胞表面タンパク質に結合して複合体を形成可能であり、かつ第一タグを含み、ここで該第一タグは固体支持体に結合可能であり、b)該第一タグの該固体支持体への結合を可能にする条件下で、該混合物と該固体支持体を接触させ、c)該固体支持体を洗浄して該複合体に関して混合物を濃縮し、及び/または該固体支持体を洗浄して未結合物質を実質的に除去し、c)該混合物と第二アプタマーを接触させ、ここで該第二アプタマーは該微生物の該第一細胞表面タンパク質または第二細胞表面タンパク質に結合可能であり、及びd)アッセイを行って該第二アプタマーを検出し、ここで該第二アプタマーの検出は該微生物が該試料中に存在することを示し、該第二アプタマーの未検出は該微生物が該試料中に存在しないことを示す、ことを含む。 [0009] 本開示はさらに試料中の微生物の有無の検出方法を提供し、該方法が、以下のことを含む: [0010] a)該試料を固体支持体に接触させ、ここで第一アプタマーは第一タグを介して該固体支持体に結合し、及びここで該第一アプタマーは微生物の第一細胞表面タンパク質に結合して複合体を形成可能であり;b)該固体支持体を洗浄して該複合体に関して混合物を濃縮し、及び/または該固体支持体を洗浄して未結合材料を実質的に除去し;c)該混合物を第二アプタマーと接触させ、ここで該第二アプタマーは該微生物の該第一細胞表面タンパク質または第二細胞表面タンパク質に結合可能であり、かつ第二タグを含み、及びd)アッセイを行って該第二アプタマーを検出し、ここで該第二アプタマーの検出は該微生物が該試料中に存在することを示し、該第二アプタマーの未検出は該微生物が該試料中に存在しないことを示す、こと。 [0011] 別の態様において、該第一アプタマー及び該第二アプタマーの該少なくとも1つはさらに少なくとも1つのC-5修飾ピリミジンを含む。関連の態様において、該C-5修飾ピリミジンは5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシシチジン(BndC);5-(N-2-フェニルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシシチジン(PEdC);5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシシチジン(PPdC);5-(N-1-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシシチジン(NapdC);5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシシチジン(2NapdC);5-(N-1-ナフチル-2-エチルカルボキシアミド)-2’-デオキシシチジン(NEdC);5-(N-2-ナフチル-2-エチルカルボキシアミド)-2’-デオキシシチジン(2NEdC);5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BndU);5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(iBudU);5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(TrpdU);5-(N-[1-(3-トリメチルアモニウム(trimethylamonium)プロピル]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジンクロライド及び5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NapdU)からなる群より選択される。 [0012] 別の態様において、該第二アプタマーは増幅可能である。関連の態様において、該第二アプタマーは酵素的増幅(例えばPCRまたはqPCRによる)用テンプレートである。さらに別の関連の態様において、該第二アプタマーは、該第二アプタマーまたは該第二アプタマーの1以上の領域にハイブリダイズ可能なPCRプライマーによって増幅される。 [0013] 別の態様において、該第二アプタマーは第二タグを含み、ここで該第二タグは、染料、量子ドット、放射標識、PCRプライマー部位、電気化学官能基、及び酵素に加えて検出可能な酵素基質からなる群より選択される。 [0014] 別の態様において、該第一タグは、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ペプチド核酸、ロックド核酸、オリゴ糖、多糖、抗体、アフィボディ、抗体模倣物、細胞受容体、リガンド、脂質、ビオチン、ポリヒスチジン、またはこれら構造物の断片もしくは誘導体のいずれかからなる群より選択される。 [0015] 別の態様において、固体支持体はビーズ及び基材からなる群より選択される。関連の態様において、該ビーズは、ポリマービーズ、アガロースビーズ、ポリスチレンビーズ、アクリルアミドビーズ、固体コアビーズ、多孔性ビーズ、常磁性ビーズ、ガラスビーズ、マイクロビーズ、及び制御細孔ビーズからなる群より選択される。さらに別の関連の態様において、該基材は、マイクロタイターウェル、シクロオレフィン共重合体基材、膜、プラスチック基材、ナイロン、ラングミュア-ブロジェット膜、ガラス、ゲルマニウム基材、シリコン基材、シリコンウェーハチップ、フロースルーチップ、ナノ粒子、ポリテトラフルオロエチレン基材、ポリスチレン基材、ヒ化ガリウム基材、金基材及び銀基材からなる群より選択される。 [0016] 別の態様において、該アッセイは、限定されないが、PCR、qPCR、質量分析、配列決定ハイブリダイゼーション等を含む群より選択される。関連の態様において、該アッセイはPCR及びqPCRからなる群より選択される。 [0017] 別の態様において、該微生物は、限定されないが、細菌細胞、寄生虫及びウイルスを含む群より選択される。 [0018] 別の態様において、該微生物は、細菌細胞である。関連の態様において、該細菌細胞は病原性である。さらに別の関連の態様において、該細菌細胞はブドウ球菌細胞である。別の関連の態様において、該細菌細胞は黄色ブドウ球菌細胞である。 [0019] 別の態様において、該第一細胞表面タンパク質及び該第二細胞表面タンパク質は同じタンパク質であるかまたは異なるタンパク質である。 [0020] 別の態様において、該第一細胞表面タンパク質は細菌細胞表面タンパク質である。 [0021] 別の態様において、該第二細胞表面タンパク質は細菌細胞表面タンパク質である。 [0022] 別の態様において、該第一細胞表面タンパク質はSPA、ClfA、ClfB、FnbA、FnbB、IsdA、IsdB、IsdC、IsdH及びSasDからなる群より選択される。関連の態様において、該第一細胞表面タンパク質はSPA及びClfAからなる群より選択される。 [0023] 別の態様において、該第二細胞表面タンパク質は、SPA、ClfA、ClfB、FnbA、FnbB、IsdA、IsdB、IsdC、IsdH及びSasDからなる群より選択される。関連の態様において、該第二細胞表面タンパク質はSPA及びClfAからなる群より選択される。 [0024] 別の態様において、該第一アプタマーはGGCWWCGGGWACCWAWWAWNGGWWWAGCC(N)nGWC(配列番号14)の配列を有する核酸分子を含み、ここでWがそれぞれの存在について独立してC-5修飾ピリミジン、Nが非修飾または修飾ヌクレオチドのいずれか、及びnが0、1、2、3、4または5である。関連の態様において、nは2である。関連の態様において、該第一アプタマーの長さが少なくとも約32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50個のヌクレオチドである。さらに別の関連の態様において、該第一アプタマーの長さが約32?約100個のヌクレオチド(または32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99もしくは100個のヌクレオチド)である。 [0025] 別の態様において、該第一アプタマーがAWCWGGWWC(N)nAWCWGGWWWWWAAG(配列番号15)の配列を有する核酸分子を含み、ここでWがそれぞれの存在について独立して、C-5修飾ピリミジン、Nが非修飾または修飾ヌクレオチドのいずれか、及びnが0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30である。関連の態様において、nは5?20(または5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20)である。別の態様において、nは10?18(または10、11、12、13、14、15、16、17もしくは18)である。関連の態様において、nは約16である。さらに別の関連の態様において、該第一アプタマーの長さが少なくとも約18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50個のヌクレオチドである。 [0026] 別の態様において、該第一アプタマーの長さが約18?約100個のヌクレオチド(または18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99もしくは100個のヌクレオチド)である。 [0027] 別の態様において、該第一アプタマーが配列番号1?8及び10?12からなる群より選択される配列を有する核酸分子を含み、ここでWがC-5修飾ピリミジンである。 [0028] 別の態様において、該第二アプタマーがGGCWWCGGGWACCWAWWAWNGGWWWAGCC(N)nGWC(配列番号14)の配列を有する核酸分子を含み、ここでWがそれぞれの存在について独立して、C-5修飾ピリミジン、Nが非修飾または修飾ヌクレオチドのいずれか、及びnが0、1、2、3、4、または5である。関連の態様において、nは2である。関連の態様において、該第二アプタマーの長さが少なくとも約32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50個のヌクレオチドである。さらに別の関連の態様において、該第二アプタマーの長さが約32?約100個のヌクレオチド(または32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99もしくは100個のヌクレオチド)である。 [0029] 別の態様において、該第二アプタマーがAWCWGGWWC(N)nAWCWGGWWWWWAAG(配列番号15)の配列を有する核酸分子を含み、ここでWが、それぞれの存在について独立して、C-5修飾ピリミジン、Nが非修飾または修飾ヌクレオチドのいずれか、及びnが0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30である。関連の態様において、nは5?20(または5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20)である。別の態様において、nは10?18(または10、11、12、13、14、15、16、17もしくは18)である。関連の態様において、nは約16である。 [0030] 別の態様において、該第二アプタマーの長さが少なくとも約18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50個のヌクレオチドである。 [0031] 別の態様において、該第二アプタマーの長さが約18?約100個のヌクレオチド(または長さが18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99もしくは100個のヌクレオチド)である。 [0032] 別の態様において、該第二アプタマーが配列番号1?8及び10?12からなる群より選択される配列を有する核酸分子を含み、ここでWがC-5修飾ピリミジンである。」 イ 「[0094] 本発明の1つの目的は、タンパク質シグナルをアプタマーシグナルに変換することである。その結果として、収集/検出されたアプタマーの量は、結合した標的分子量及び試料中の標的分子量の指標となり、またそれらに直接比例し得る。第2分配またはキャッチの後に、第二固体支持体からアプタマー-標的親和性またはアプタマー-標的共有結合複合体を溶出させることなく、多くの検出スキームを用いることができる。以下の検出法の実施形態に加えて、他の検出法が当業者に既知である。 [0095] 多くの検出法は、検出の前にアプタマーに取り込まれる明示的な標識を必要とする。これらの実施形態において、核酸合成のための標準技術を用いて、合成中または合成後のいずれかに、例えば、蛍光色素または化学発光色素等の標識をアプタマー内に取り込むことができる。適切な試薬とともに標準的な酵素反応を用いて、合成中または合成後のいずれかに、放射性標識を取り込むことができる。標識化はまた、好適な酵素技術を用いることによって、第2分配及び溶出の後に行うことができる。例えば、上述の標識を有するプライマーを用いて、PCRにより、溶出したアプタマーの増幅産物内に標識が取り込まれる。定量化のためにゲル技術を用いる場合、同様にPCRを用いて異なるサイズの質量標識を取り込むことができる。これらの質量標識はまた、さらなる多重化能力のために、異なる蛍光色素または化学発光色素も取り込むことができる。合成中または合成後のいずれかにアプタマーに取り込まれる特異的タグを用い、次いで、タグと会合し、かつ標識を担持するプローブを添加することによって、標識を間接的にアプタマーに添加してもよい。標識は、上述のもの、及び、例えば、比色読み取りのための標準的なアッセイに使用される酵素を含む。これらの酵素は、酵素基質と合わさって作用し、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)及びアルカリホスファターゼ(AP)等の酵素を含む。標識は、電気化学的検出のための電気化学的官能基である材料または化合物も含んでよい。 [0096] 例えば、アプタマーは、試験試料と接触させる前に、上述のように^(32)P等の放射性同位元素で標識してもよい。4つの基本的アッセイ、及び上述のようなそのバリエーションのうちのいずれか1つを利用して、アッセイ終了時に第二固体支持体上の放射活性を定量するだけで、アプタマーを検出し得る。放射活性のカウントは、元の試験試料中の標的の量に正比例する。同様に、試験試料と接触させる前に、アプタマーを上述のように蛍光色素で標識すると、第二固体支持体上で直接、単純な蛍光読み取りが可能となる。同様に、アプタマーの溶出を必要とせずに、第二固体支持体からの直接的な読み取りのために、化学発光標識または量子ドットを利用することができる。」 ウ 「[00107] SOMAmer:SOMAmer(またはSOMAmer試薬)という用語は、本明細書で用いる際、そのオフ速度の特徴が改良されているアプタマーを指す。SOMAmer試薬は、あるいは、遅いオフ速度の(Slow Off-Rate)修飾アプタマーとも称され、ここにその全体を参照として組み入れる、「改良されたOff-Rateを有するアプタマー生成方法(Method for Generating Aptamers with Improved Off-Rates)」と題する米国特許出願公開第20090004667号に記載の改良されたSELEX法により選択されてよい。遅いオフ速度の修飾アプタマーは、30分以上、60分以上、90分以上、120分以上、150分以上、180分以上、210分以上、または240分以上のオフ速度(t1/2)を有するアプタマー(疎水性修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含むアプタマーを含む)を指す。」 エ 「[00160] SOMAmer(遅いオフ速度の修飾アプタマー)試薬は、一本鎖DNA(ssDNA)からできており、アミノ酸側鎖の模倣物を備えるその5-プライム位置にて修飾されたピリミジン残基を含有し、またきわめて遅い(長い(30分超))解離速度を有する(Gold et al.,2010)。こうした特性は、標準的なRNAまたはDNAアプタマーと比べて、アプタマーのより良い親和性及びより良い運動特性につながる。実質的にはあらゆるタンパク質をSELEX(指数的濃縮によるリガンドの系統進化法)に用いて、キネティックチャレンジ(kinetic challenge)、分配(partitioning)、及び修飾ssDNAのランダムライブラリからの増幅を用いた選択を複数回行うことにより、特異的な高親和性アプタマーを生成可能である(Gold et al.,2010; Vaught et al.,2010)。抗体と比べてアプタマーが有利な点としては、溶液中の例外的な温度安定性、低分子量、より高い多重化能力、熱、乾燥、溶剤に対する化学的安定性、可逆的再生性、試薬製造の簡易化、一貫したロット性能及びより低いコストがあげられる。アプタマーは、1000個超のヒトタンパク質に対して生成されており、SomaLogicが開発した、これらのタンパク質を少ない(0.1ml)血液試料において同時にかつ高い精度をもって測定するためのSOMAscan(商標)プロテオミックプラットフォームの基盤となっている。この高度多重化アッセイの適用は、医療の様々な領域におけるバイオマーカーの発見につながった(Gold et al., 2012)。微生物タンパク質に関しては、我々は以前にクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)毒素のためのアプタマーの特性について報告し、これら結合剤の広範囲にわたる利用可能性を示した(Ochsner et al., 2013)。 [00161] 遅いオフ速度の修飾アプタマー(SOMAmer試薬)試薬を、精製組み換えまたは天然タンパク質を使用する多重修飾DNAライブラリでのSELEXによって、いくつかの黄色ブドウ球菌細胞表面関連タンパク質に対して生成した。nM未満のKdを有する高親和性結合剤を、ブドウ球菌タンパク質A(SpA)、クランピング因子(ClfA、ClfB)、フィブロネクチン結合タンパク質(FnbA、FnbB)及び鉄調節表面決定因子(Isd)について取得した。さらにスクリーニングを行ったところ、いくつかのアプタマーは試験した全株の黄色ブドウ球菌細胞に特異的に結合するが、他のブドウ球菌または他の細菌には特異的に結合しないことが明らかになった。培養及びPCRで示されたようにSpA及びClfAアプタマーは、低細胞密度マトリクスからの黄色ブドウ球菌細胞の選択的捕捉及び濃縮に有用であることが実証され、このことは、PCR阻害剤の検出限界の改善及び効率的な除去につながった。細菌細胞表面をアプタマーで被覆し、次いでこのアプタマーにqPCRを行った場合に、黄色ブドウ球菌細胞の検出は桁違いに増強された。また、蛍光標識したSpAアプタマーも、フローサイトメトリーにおけるその直接的検出剤としての有用性が実証された。」 オ 「実施例 実施例1:黄色ブドウ球菌タンパク質に結合特異性を有するアプタマーの選択及び同定 [00208] 本実施例では、以下の10個の黄色ブドウ球菌表面関連タンパク質:SpA、ClfA、ClfB、FnbA、FnbB、SasD、IsdA、IsdB、IsdC及びIsdHに結合特異性を有するアプタマーの選択及び産生のための代表的な方法を提供する。 黄色ブドウ球菌標的の精製 [00209] 所望の標的または標的ドメインをコードする遺伝子の当該部分を黄色ブドウ球菌NRS384(USA300)ゲノムDNAからプライマーを用いてPCR増幅し、pCR-Script SK+(ストラタジーン)にクローニングした。clfA、clfB、fnbA、sasD、isdA、isdB、isdC、及びisdH遺伝子を、BamHI-SacIカセットとしてアミノ末端Strep-tag及びカルボキシ末端His10-tagを擁する発現ベクターpET-51b(EMD-ノバジェン)に移した。標的の1つ、fnbBは、NdeI-BamHI断片としてアミノ末端His10-tagを擁するpET-14b(EMD-ノバジェン)にクローニングした。プラスミドの配列決定を行い、クローニングしたDNA断片と、His-tag及びStrep tagについてベクターがコードする配列との遺伝子同一性及び適切な遺伝子融合を検証した。 [00210] 組換タンパク質は、大腸菌BL21(DE3)またはBL21(DE3)/pLysE(EMD/ノバジェン)にて過剰発現させた。可溶性タンパク質の最適な発現のための条件として、増殖温度(25?37℃)及び誘導時間(4?15時間)を最適化した。0.1?0.8 lの培養物からの細胞を10mlのBugBuster/Benzonase試薬(EMDミリポア)を用いて溶解した。Ni-NTAアガロース及びStrep・Tactin(登録商標)、Superflow(商標)アガロース(EMDミリポア)上での連続親和性クロマトグラフィーによって組換え体、His10/Strep標識したタンパク質を、可溶性画分から精製した。天然ブドウ球菌タンパク質Aは、VWRから購入し、NHS-PEG4-ビオチン(ピアスバイオテクノロジー)でビオチン化した。タンパク質濃度は、Quick Start Bradfordタンパク質アッセイキット(バイオラッド)を用いて測定した。 [00211] 大腸菌にて過剰発現させたところ、10個全ての組換え黄色ブドウ球菌細胞表面タンパク質が可溶性画分に見られた。Ni-NTAアガロース及びStreptactin Sepharose上の連続親和性クロマトグラフィーにより0.1?1.5mgの各タンパク質が95%超の純度で生じた(図3を参照)。 アプタマー選択 [00212] 5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-dU(BndU)、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-dU(NapdU)、及び5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-dU(TrpdU)を有する別個のライブラリを、黄色ブドウ球菌タンパク質を用いるSELEXに使用した。各選択は、PCR増幅に要する固定配列で挟んだ40個の連続ランダム化位置を含有する1nmolの(1014?1015)配列から開始した。SELEXは実質的に記載のように行った(Gold et al., 2010; Vaught et al., 2010; Ochsner et al., 2013)。緩衝液SB18TをSELEXを通して用い、続いて40mmol l-1 HEPES pH7.5、0.1mol l-1NaCl、5mmol l-1 KCl、5mmol l-1MgCl2、及び0.05%Tween-20からなる結合アッセイを行った。選択は8ラウンド行い、また、ラウンド2から、10 mmol l-1デキストラン硫酸を用いたキネティックチャレンジ(kinetic challenge)を開始し、遅いオフ速度を支持した。組換えタンパク質上のHis10-タグに結合する常磁性Talon Dynabeads(登録商標)Talon(登録商標)(インビトロジェン)、またはビオチン化SPA用MyOneストレプトアビジンC1ビーズ(ライフテクノロジーズ)を用いてアプタマー標的複合体の分配を行った。選択した配列を、80μlの40mmol l-1 NaOHを用いてビーズが結合した標的から溶出、20μlの160mmol l-1 HClを用いて中和、次いでKOD EX DNAポリメラーゼ(インビトロジェン?ライフテクノロジーズ)を用いてPCR増幅した。次のラウンド用の修飾DNAを、KOD EX DNAポリメラーゼを用い、プライマー伸長法によってPCR産物のアンチセンス鎖から調製、記載のように精製した(Gold et al., 2010)。 [00213] ラウンド3?8における選択DNAのDNA再会合キネティック分析(C0t)を、後のラウンドにおける配列収束評価に使用したところ、いくつかの配列または配列ファミリーの存在度の増加が示された。溶液結合放射能分析試験(下記を参照)において良好な親和性(Kd≦10nmol l-1)を示したアプタマープールをクローニングし、1プールにつき48個のクローンの配列を決定した。最高12個の個別アプタマーを配列パターン並びに多様性に基づいて選び、さらに特性評価のため酵素的に調製した。 [00214] 合成アプタマーを標準的なホスホラミダイト法により1μmolスケールで48?50マー(mer)にて調製し、HPLC精製を行った。アプタマーは5’ビオチン-dAまたは5’フルオレセイン-ビオチン-dA、及び3’?5’エキソヌクレアーゼに対する安定性を高めるため、3’末端(3’idT)に逆方向dTヌクレオチドを含有させた。 [00215] これらタンパク質でのSELEXを、3つの別々のssDNAライブラリを用いて8ラウンド行い、またC0t再会合キネティックによって、配列複雑性の低減が示された。プール親和性アッセイによって、ssDNA C-5修飾ヌクレオチド、BndU、NapdU、またはTrpdUで得られた合計22個のプールについて、0.13?8.90nmol l-1の範囲のプール親和性を有するアプタマーの選択に成功したことが確認された。黄色ブドウ球菌細胞への特異的結合は観察されたが、表皮ブドウ球菌、スタフィロコッカス・ヘモリチカス、化膿性連鎖球菌、大便連鎖球菌、大腸菌、または緑膿菌への特異的結合は観察されなかった。 [00216] 各プールから48個のクローンについて決定した配列のアライメントにより、共通配列パターンを有する多コピークローン及びファミリーが示された。代表的なクローンを親和性アッセイにてスクリーニングにかけたところ、アプタマーのKdは0.03?2.17nmol l-1の範囲であった(表1)。 表1 ![]() [00217] 表1のアプタマーの長さは、通常、39?40個のヌクレオチドであり、C-5修飾ピリミジン(例えば、BndU、TrpdUまたはNapdU)を含む。さらに、これら表1のアプタマーは、約8?約21個のC-5修飾ピリミジン(8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、19または21個のC-5修飾ピリミジン)を含むか、または、C-5修飾ピリミジンを約20%?約53%(または20%、22.5%、25%、27.5%、30%、30.8%、32.5%、35%、37.5%、40%、45%、47.5%もしくは52.5%)含む。表1のアプタマーは、通常、約0.03nM?約4.7nM(または0.03、0.07、0.08、0.14、0.15、0.16、0.22、0.35、0.47、0.63、0.73、0.79、0.84、1.3、1.35、1.98、2.17、3.9及び4.73nM)のKdを有する。 [00218] SPAタンパク質及び別個にClfAタンパク質を標的とする選択したクローンのヌクレオチド配列を下表2にあるように同定する。 表2 ![]() ^( * )は、SPAタンパク質を標的とする配列中のヌクレオチド「W(下線付き)」がC-5修飾ヌクレオチド(特にNapdU)であることを示す。 + は、ClfAタンパク質を標的とする配列中のヌクレオチド「W(下線付き)」がC-5修飾ヌクレオチド(特にBndU)であることを示す。」 3.先願明細書発明 外国語特許出願明細書等には、第一、第二アプタマーを用いて試料中の微生物の有無の検出方法において、検出される微生物が黄色ブドウ球菌であること、使用される第二アプタマーがC-5修飾ピリミジンと染料からなる第二タグを含むこと、第二アプタマーが配列番号1?8及び10?12から選択されるヌクレオチド配列を有する核酸分子であること(上記ア)が記載され、さらに、SELEXにより、黄色ブドウ球菌タンパク質に結合特異性を有する配列番号1?8及び10?12として示されるヌクレオチド配列を有するアプタマーが選択及び同定されたこと(実施例1、表2)が記載されていると認められる。 そうすると、外国語特許出願明細書等には次の発明(以下、「先願明細書発明」という。)が記載されていると認められる。 「試料中の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の検出において第二アプタマーとして使用されるアプタマーであって、アプタマーはC-5修飾ピリミジンを含み、第二タグを含み、SELEXで選択及び同定されたものであり、黄色ブドウ球菌タンパク質に結合特異性を有し、表2に配列番号1?8及び10?12として示されるヌクレオチド配列を有する核酸分子から選ばれる、アプタマー。」 4.対比 本願発明において、アプタマーが配列番号3のヌクレオチド配列である場合と、先願明細書発明において、アプタマーが表2に配列番号2として示されるヌクレオチド配列である場合の発明を対比する。 外国語特許出願明細書等の「SOMAmer(遅いオフ速度の修飾アプタマー)試薬は、一本鎖DNA(ssDNA)からできており、アミノ酸側鎖の模倣物を備えるその5-プライム位置にて修飾されたピリミジン残基を含有し、またきわめて遅い(長い(30分超))解離速度を有する」、「遅いオフ速度の修飾アプタマー(SOMAmer試薬)試薬を、精製組み換えまたは天然タンパク質を使用する多重修飾DNAライブラリでのSELEXによって、いくつかの黄色ブドウ球菌細胞表面関連タンパク質に対して生成した。」(上記エ)の記載から、引用発明のC-5修飾ピリミジンを含み、SELEXで選択及び同定されたものであるアプタマーは、本願発明にいう「オフレートの遅い修飾アプタマー(SOMAmer)」に該当すると認められる。 また、先願明細書発明の配列番号2のヌクレオチド配列[WCGGCWWCGGGWACCWAWWAWCGGWWWAGCCCAGWCAGAA](WはC-5修飾ヌクレオチド)は、本願発明の配列番号3のヌクレオチド配列[TCGGCTTCGGGTACCTATTATCGGTTTAGCCCAGTCAGAA](TはC-5修飾ピリミジン)と同じであると認められる。 さらに、引用発明の「第二タグ」は、本願発明の「蛍光標識」と「標識」である点で共通する。 したがって、両者は、 「標識を含むオフレートの遅い修飾アプタマー(SOMAmer)であって、Staphylococcus aureus細胞に特異的なヌクレオチド配列を含み、配列番号2のヌクレオチド配列またはそれに少なくとも90%同一である配列を含むことを特徴とする、前記SOMAmer。」 である点で一致し、次の点で一応相違すると認められる。 (一応の相違点) アプタマーが含む標識が、本願発明では蛍光標識であるのに対して、先願明細書発明では「第二タグ」である点。 5.判断 (一応の相違点)について 先願明細書発明における「第二タグ」は、染料、量子ドット、放射標識、PCRプライマー部位、電気化学官能基、及び酵素に加えて検出可能な酵素基質からなる群より選択されるものであり([0013])、蛍光色素は染料に該当するものであるところ、外国語特許出願明細書等には「多くの検出法は、検出の前にアプタマーに取り込まれる明示的な標識を必要とする。これらの実施形態において、核酸合成のための標準技術を用いて、合成中または合成後のいずれかに、例えば、蛍光色素または化学発光色素等の標識をアプタマー内に取り込むことができる。」(上記イ)、「蛍光標識したSpAアプタマーも、フローサイトメトリーにおけるその直接的検出剤としての有用性が実証された。」(上記エ)と記載されており、アプタマーを蛍光標識することが記載されているから、先願明細書発明における「第二タグ」としての蛍光標識は外国語特許出願明細書等に記載されているに等しい事項である。 (本願発明に特定される他のヌクレオチド配列について) 外国語特許出願明細書等の表2の記載からみて、先願明細書発明の配列番号1、3?8、10?12のヌクレオチド配列は、本願発明の配列番号2、4?9、10?12のヌクレオチド配列と同じであり、また、表1に標的タンパク質SPAのクローン番号4531-56として示されるアプタマーは、本願発明の配列番号1(本願明細書の表3に標的:SpA、Seq no:4534-56として示されている。)のヌクレオチド配列のアプタマーと同じものであると認められる。 6.審判請求人の主張について 審判請求人は審判請求書において請求項10に係る発明について、以下の点を主張している。 「請求項10,11に記載のSOMAmerの構成要件(例えば、SOMAmerが具体的なヌクレオチド配列を含むこと、当該配列がS.aureus細胞に特異的であること、および、SOMAmerが蛍光標識を含むこと)がそれぞれ、引用文献1に記載されているとしても、引用文献1には、これらの構成要件の各々が全体として必須要件として記載されておらず(例えば、SOMAmerに含まれるヌクレオチド配列は全てS.aureus細胞に特異的とすべきことや、請求項10または11に係る1つの発明とすることは示唆されていない)、その構成要件全体としての効果(段落番号0085を参照)も教示されていませんので、本願発明のSOMAmerは、発明全体として引用文献1に開示されていません。」 しかし、上記4.のとおり、外国語特許出願明細書等には、SOMAmerの具体的なヌクレオチド配列や、当該配列がS.aureus細胞に特異的であることが記載され、SOMAmerが標識を含むことも記載されている。また、上記5.のとおり、SOMAmerを蛍光標識することも、外国語特許出願明細書等に記載されているに等しいといえる。 審判請求人は本願明細書の段落0085に記載される 「この実験は、S.aureusのフローサイトメトリーによる検出に対する本発明に係るSOMAmerの遅いオフレート特性の利点を証明する:高い結合/検出効率は、極めて短い時間枠内で、より低い試薬濃度で達成され得る。」という効果が外国語特許出願明細書に開示されていないと主張しているが、先願明細書発明は、本願発明と同じく「オフレートの遅い修飾アプタマー(SOMAmer)」に関するものであるから、審判請求人の主張する効果は本願発明においてのみ奏されるものではなく、先願明細書発明でも奏される効果であるといえる。 なお、審判請求人が提出した令和2年9月14日付け上申書には、「令和1年12月23日付審判請求書において主張したとおり、原審における拒絶理由は全て解消されましたので、原査定を取り消す、本願は特許するものとする、との審決を賜るものと確信しますが、前置審査官殿による前置報告がなされたこともあり、審判合議体において、万が一、本願発明の特許性につきなお疑義が払しょくできないとされる場合には、本審判請求人は、さらなる補正の用意もあることから、合議体による拒絶理由通知に基づく補正の機会を与えていただき、また必要に応じその前後において合議体との面接の機会を頂戴したく、ここに希求する次第であります。」と記載されているが、合議体は本願に係る発明の内容を十分に理解でき、また、審判請求人から具体的な補正案などが提示されている訳でもないから、新たに拒絶理由を通知することはしない。 7.小括 したがって、本願発明は、その出願の日前の外国語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、この出願の請求項10に係る発明は特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-11-17 |
結審通知日 | 2020-11-18 |
審決日 | 2020-12-01 |
出願番号 | 特願2016-570171(P2016-570171) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
Z
(C12Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 牧野 晃久、吉田 知美 |
特許庁審判長 |
長井 啓子 |
特許庁審判官 |
一宮 里枝 中島 庸子 |
発明の名称 | 蛍光ベースの検出方法によるサンプル中の微生物を検出する方法 |
代理人 | 葛和 清司 |
代理人 | 葛和 清司 |