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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1373156
審判番号 不服2020-13989  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-06 
確定日 2021-05-06 
事件の表示 特願2016-112897「カードリーダ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月14日出願公開、特開2017-219971、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成28年6月6日の出願であって,令和2年1月14日付けで拒絶の理由が通知され,同年3月3日に意見書が提出されたところ,同年7月2日付けで拒絶査定(謄本送達日同年7月9日)がなされ,これに対して同年10月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされ,同年11月30日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(令和2年7月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1-7
・引用文献等 1-3

<引用文献等一覧>
1.特開平08-272922号公報
2.特開平05-342416号公報
3.特開2006-085361号公報


第3 審判請求時の補正について

本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1ガイド部材」,「第2ガイド部材」,及び,「静電容量センサ」について,「前記カード通過路を通過する前記カードが前記カードの厚さ方向において接触する」,「前記カード通過路を通過する前記カードが前記カードの厚さ方向で接触する」,及び,「前記カード通過路よりも第1方向側に配置され」との限定(以下,「限定事項」という。)を付加するものであって,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また,当初明細書の段落【0010】に,「カードが、第1ガイド部材や第2ガイド部材と接触しながらカード通過路を通過する」と記載され,同【0034】に,「静電容量センサ12は、ガイド部材15の下側の面に取り付けられており、カード通過路6よりも下側に配置されている。」と記載されているから,上記限定事項は,当初明細書等に記載された事項であり,新規事項を追加するものではないといえる。
そして,本願請求項1?7に係る発明は,以下第4?第6に示すように,独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明

本願請求項1?7に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明7」という。)は,令和2年10月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された,次のとおりのものと認める。(下線は補正箇所を示すものである。)

「 【請求項1】
カードの挿入口から挿入された前記カードが通過するカード通過路と、前記カード通過路を閉鎖するためのシャッタ部材と、前記シャッタ部材よりも奥側に配置され前記カードの磁気ストライプに記録された磁気データの読取および前記磁気ストライプへの磁気データの記録の少なくともいずれか一方を行う磁気ヘッドと、前記シャッタ部材よりも奥側に配置される静電容量センサとを備えるとともに、
前記カード通過路を通過する前記カードの厚さ方向の一方を第1方向とし、第1方向の反対方向を第2方向とすると、前記カード通過路の第1方向側の面の少なくとも一部を構成し前記カード通過路を通過する前記カードが前記カードの厚さ方向において接触する第1ガイド部材と、前記カード通過路の第2方向側の面の少なくとも一部を構成し前記カード通過路を通過する前記カードが前記カードの厚さ方向で接触する第2ガイド部材とを備え、
前記第1ガイド部材は、絶縁性材料で形成され、
前記第2ガイド部材は、導電性材料で形成され、
前記静電容量センサは、前記カード通過路よりも第1方向側に配置され、前記第1ガイド部材に取り付けられていることを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
前記カードに形成されるICチップの外部接続端子に接触してデータの通信を行う複数のIC接点バネを有するIC接点ブロックと、前記IC接点ブロックを移動させるブロック移動機構とを備え、
前記ブロック移動機構は、前記第2ガイド部材の第2方向側の面に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のカードリーダ。
【請求項3】
前記静電容量センサは、前記第1ガイド部材の第1方向側の面に取り付けられていることを特徴とする請求項1または2記載のカードリーダ。
【請求項4】
前記カード通過路での前記カードの通過方向と前記カードの厚さ方向とに直交する方向を前記カードの幅方向とすると、
前記静電容量センサは、前記カードの幅方向において前記磁気ストライプが通過する位置に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカードリーダ。
【請求項5】
前記静電容量センサの色は、前記第1ガイド部材の色と同じであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のカードリーダ。
【請求項6】
前記カード通過路での前記カードの通過方向と前記カードの厚さ方向とに直交する方向を前記カードの幅方向とすると、
前記静電容量センサは、長方形状の薄板状に形成される検知部を備え、
前記検知部は、一対の電極を備えるとともに、前記検知部の厚さ方向と前記カードの厚さ方向とが一致し、かつ、前記検知部の長辺の方向と前記カードの通過方向とが一致するように配置され、
一対の前記電極は、前記カードの幅方向において所定の間隔をあけた状態で配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のカードリーダ。
【請求項7】
前記電極は、前記カードの幅方向の一方側へ突出するとともに前記カードの通過方向において一定のピッチで配置される複数の凸部と、前記凸部の間に形成される複数の凹部とを備える櫛歯状に形成され、
一対の前記電極のうちの一方の前記電極の前記凹部の中に他方の前記電極の前記凸部が入り込むとともに、他方の前記電極の前記凹部の中に一方の前記電極の前記凸部が入り込んでいることを特徴とする請求項6記載のカードリーダ。」


第5 引用例

1 引用例1に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開平8-272922号公報(平成8年10月18日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

A 「【0004】本発明の目的は上記欠点に鑑み、他人のカ-ドを盗む為のトラップ等の異物の仕掛けを一対の金属部材間の静電容量や走行路の横幅全域を走査する走査部材で検出して他人のカ-ドを不正に使用する犯罪が防止出来るカ-ドリ-ダの走行路への異物挿入検出機構を提案することである。」

B 「【0008】カ-ドリ-ダの走行路への異物挿入検出機構Aは、図1で基板1の前面に固定された磁気カ-ド2を挿入するゲ-トブロック本体3に組み込まれている。ゲ-トブロック本体3の上側の基板1の前面にシャッタ装置Bが設けられている。ゲ-トブロック本体3には図1、図2で、磁気カ-ド2の挿入口3aと走行路3bと磁気カ-ド検出用磁気ヘッド10の挿入用透孔3cと走行路3bを横切るシャッタ板挿入用横孔3dと異物挿入検出機構Aを設ける凹部3eとが形成されている。異物挿入検出機構Aは走行路3bの上下前後の凹部3e内に固定された絶縁体4、4と絶縁体5、5と、絶縁体4、4に固定されて絶縁体5、5方向に向けて突出された静電容量検出用の一対の金属部材6、6と、一対の金属部材6、6に接続された静電容量検出回路11とで構成されている。一対の金属部材6、6は走行路3bの全横幅にわたって対向して配設されている。シャッタ装置Bは図1、図3から図6で、基板1の前面に固定されたソレノイド12とシャッタ板7と作動板13とソレノイド12に接続された図示しない制御装置とで構成されている。」

C 「【0012】基板1の裏面に向けて屈曲された屈曲板1b、1bにカ-ドリ-ダCの枠板22、23が取り付けられている。枠板22、23には送りロ-ラ24、25、26の軸27、28、29が軸承されている。送りロ-ラ25の軸28にパットロ-ラ30が固定され、パットロ-ラ30の下方に磁気カ-ド2の磁気ストライプ2aに記録された情報が読み取り書き込みされる磁気ヘッド31が設けられている。送りロ-ラ24、25、26の下方には送りパットロ-ラ32、33、34の軸35、36、37が枠板22、23に軸承されている。各送りロ-ラと各送りパットロ-ラの間にカ-ドリ-ダCの走行路38が設けられている。送りロ-ラ24、25、26は軸27、28、29に固定されたプ-リ39、40、41、42とベルト43、44、45を介して電動機46の回転軸に固定されたプ-リ47で回転される。」

D 「【0014】異物挿入検出機構Aの動作は、図示しないトラップ等の異物が仕掛けられる時、挿入口3aに磁気カ-ド2と共に図示しないトラップ等の異物が走行路3bに挿入されて前記動作が行われた後、トラップ等の異物がゲ-トブロック本体3の走行路3bやカ-ドリ-ダCの走行路38に残されたまま磁気カ-ド2が引き抜かれると、トラップ等の異物が一対の金属部材6、6の湾曲部6cの間に残る共に、シャッタ板7が閉塞されない。カ-ドの挿入が無いモ-ドにおいて、トラップ等の異物が一対の金属部材6、6の湾曲部6cの間に残ると、トラップ等の異物が細い針金や薄いフィルム等であっても、誘電率が変わって静電容量が変化する。この静電容量の変化は静電容量検出回路11で検出される。この検出で図示しない制御装置を通してカ-ドリ-ダCの停止と使用不可能の表示、ブザ-音発生等がなされる。」

E 「

図2」

2 引用発明

(1)上記記載事項Aの,「他人のカ-ドを盗む為のトラップ等の異物の仕掛けを一対の金属部材間の静電容量や走行路の横幅全域を走査する走査部材で検出して他人のカ-ドを不正に使用する犯罪が防止出来るカ-ドリ-ダ」との記載から,引用例1には,“他人のカードを盗む為のトラップ等の異物の仕掛けを一対の金属部材間の静電容量や走行路の横幅全域を走査する走査部材で検出して他人のカードを不正に使用する犯罪が防止出来るカードリーダ”について記載されたものであるといえる。

(2)上記記載事項Bの,「カ-ドリ-ダの走行路への異物挿入検出機構Aは…磁気カ-ド2を挿入するゲ-トブロック本体3に組み込まれ」との記載,「ゲ-トブロック本体3の上側の基板1の前面にシャッタ装置Bが設けられ」との記載,及び,「ゲ-トブロック本体3には…磁気カ-ド2の挿入口3aと走行路3bと…(中略)…が形成され」との記載,並びに,上記(1)の認定事項から,引用例1には,“カードリーダの走行路への異物挿入検出機構は,磁気カードを挿入するゲートブロック本体に組み込まれ,前記ゲートブロック本体の上側の基板の前面にシャッタ装置が設けられ,前記ゲートブロック本体には磁気カードの挿入口と走行路とが形成され”ることが記載されているといえる。

(3)上記記載事項Cの「パットロ-ラ30の下方に磁気カ-ド2の磁気ストライプ2aに記録された情報が読み取り書き込みされる磁気ヘッド31が設けられ」との記載,及び上記(2)の認定事項から,引用例1には,“パットローラの下方に前記磁気カードの磁気ストライプに記録された情報が読み取り書き込みされる磁気ヘッドが設けられ”ることが記載されているといえる。

(4)上記記載事項Dの「異物挿入検出機構Aの動作は…(中略)…トラップ等の異物が一対の金属部材6、6の湾曲部6cの間に残ると…(中略)…誘電率が変わって静電容量が変化する。この静電容量の変化は静電容量検出回路11で検出される」との記載,及び上記(2)の認定事項から,引用例1には,“前記異物挿入検出機構の動作は,トラップ等の異物が一対の金属部材の湾曲部の間に残ると,誘電率が変わって静電容量が変化し,この静電容量の変化は静電容量検出回路で検出される”ことが記載されているといえる。

(5)以上,上記(1)?(4)より,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「他人のカードを盗む為のトラップ等の異物の仕掛けを一対の金属部材間の静電容量や走行路の横幅全域を走査する走査部材で検出して他人のカードを不正に使用する犯罪が防止出来るカードリーダであって,
カードリーダの走行路への異物挿入検出機構は,磁気カードを挿入するゲートブロック本体に組み込まれ,前記ゲートブロック本体の上側の基板の前面にシャッタ装置が設けられ,前記ゲートブロック本体には磁気カードの挿入口と走行路とが形成され,
パットローラの下方に前記磁気カードの磁気ストライプに記録された情報が読み取り書き込みされる磁気ヘッドが設けられ,
前記異物挿入検出機構の動作は,トラップ等の異物が一対の金属部材の湾曲部の間に残ると,誘電率が変わって静電容量が変化し,この静電容量の変化は静電容量検出回路で検出される
カードリーダ。」

3 引用例2に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開平5-342416号公報(平成5年12月24日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

F 「【0007】
【実施例】以下、図に基づいて本発明の一実施例を説明する。図1は本発明に係るカードリーダのカード搬送路の斜視図、図2は同じく平断面図、図3は図2のIII-III線断面図、図4は同じく要部の分解斜視図、図5は同じく要部の正断面図である。これらの図において、符号2で示すものは、全体が合成樹脂からなるロアーフレームで、平板状に形成され前後に細長状に形成されたカード搬送壁3と、カード搬送壁3の両側部に立設した二対の前、後部カードガイド壁4、4および5、5と、前部カードガイド壁4、4の前面に形成された取付台部6、6と、カード搬送壁3の側面中央に突出形成した載置台部7、8とから概略構成されており、このロアーフレーム2の上下面には、高さの異なるボス2a、2bが複数突出形成されている。載置台部7、8には、位置決めダボ7a、8aと図示しないねじ孔が設けられている。」

G 「

図3」

4 引用例3に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2006-85361号公報(平成18年3月30日公開。以下,これを「引用例3」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

H 「【0025】
磁気処理部8は、カード挿入口から挿入されたカードに形成されている磁気ストライプに磁気ヘッド8aを当接させ、該磁気ストライプに対するデータの書き込みや、読み取りや行う。磁気ヘッド8aはカードに形成されている磁気ストライプに当接する位置に取り付けられている。IC処理部9は、カード挿入口から挿入されたカードの表面に形成されているIC接点にICヘッド9aを当接させ、このカードに搭載されているICに対するデータの書き込みや、読み取りや行う。IC処理部9は、ICヘッド9aを挿入されたカードから離間させた位置と、挿入されたカードの表面に形成されているIC接点に当接させた位置と、の間で駆動する。IC処理部9は、通常ICヘッド9aをカードから離間させた位置に保持している。」


第6 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明と本願発明1とは,“カードリーダ”である点で一致する。

イ 引用発明の「カードリーダの走行路」,「ゲートブロック本体の上側の基板の前面」に「設けられ」る「シャッタ装置」,及び「磁気カードの磁気ストライプに記録された情報が読み取り書き込みされる磁気ヘッド」は,それぞれ本願発明1の「カードの挿入口から挿入された前記カードが通過するカード通過路」,「カード通過路を閉鎖するためのシャッタ部材」,及び「カードの磁気ストライプに記録された磁気データの読取および前記磁気ストライプへの磁気データの記録の少なくともいずれか一方を行う磁気ヘッド」に相当する。
引用発明の「磁気ヘッド」は,「ゲートブロック本体の上側の基板の前面にシャッタ装置が設けられ,前記ゲートブロック本体には磁気カードの挿入口と走行路とが形成され」ることから,「シャッタ装置」よりも奥側に配置されているといえ,当該「磁気ヘッド」は,本願発明1の「磁気ヘッド」と,“シャッタ部材よりも奥側に配置され”る点でも一致する。
引用発明の「異物挿入検出機構」は,「トラップ等の異物が一対の金属部材の湾曲部の間に残ると,誘電率が変わって静電容量が変化し,この静電容量の変化は静電容量検出回路で検出される」よう「動作」するものであって,引用発明は「他人のカードを盗む為のトラップ等の異物の仕掛けを一対の金属部材間の静電容量や走行路の横幅全域を走査する走査部材で検出して他人のカードを不正に使用する犯罪が防止出来るカードリーダ」であるところ,引用発明の「シャッタ装置」よりも奥側に配置された,“静電容量センサ”を備えるものであるといえることから,引用発明と本願発明1とは,“シャッタ部材よりも奥側に配置される静電容量センサ”を備える点で一致する。
以上を総合して,引用発明と本願発明1とは,“カードの挿入口から挿入された前記カードが通過するカード通過路と,前記カード通過路を閉鎖するためのシャッタ部材と,前記シャッタ部材よりも奥側に配置され前記カードの磁気ストライプに記録された磁気データの読取および前記磁気ストライプへの磁気データの記録の少なくともいずれか一方を行う磁気ヘッドと,前記シャッタ部材よりも奥側に配置される静電容量センサとを備える”点で一致する。

ウ 引用発明の「ゲートブロック本体」は,「磁気カードの挿入口と走行路とが形成され」るものであり,当該「ゲートブロック本体」の上側と下側は,本願発明1の「第2ガイド部材」と「第1ガイド部材」に相当するといえ,当該上側と下側はそれぞれ,“カード通過路を通過する”“カードの厚さ方向の一方を第1方向とし,第1方向の反対方向を第2方向”としたときの,“第2方向”及び“第1方向”に相当する。
したがって,引用発明と本願発明1とは,下記の点(相違点1)で相違するものの,“前記カード通過路を通過する前記カードの厚さ方向の一方を第1方向とし,第1方向の反対方向を第2方向とすると,前記カード通過路の第1方向側の面の少なくとも一部を構成する第1ガイド部材と,前記カード通過路の第2方向側の面の少なくとも一部を構成する第2ガイド部材とを備える”点で一致する。

エ 以上,ア?ウの検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
カードの挿入口から挿入された前記カードが通過するカード通過路と,前記カード通過路を閉鎖するためのシャッタ部材と,前記シャッタ部材よりも奥側に配置され前記カードの磁気ストライプに記録された磁気データの読取および前記磁気ストライプへの磁気データの記録の少なくともいずれか一方を行う磁気ヘッドと,前記シャッタ部材よりも奥側に配置される静電容量センサとを備えるとともに,
前記カード通過路を通過する前記カードの厚さ方向の一方を第1方向とし,第1方向の反対方向を第2方向とすると,前記カード通過路の第1方向側の面の少なくとも一部を構成する第1ガイド部材と,前記カード通過路の第2方向側の面の少なくとも一部を構成する第2ガイド部材とを備えるカードリーダ。

〈相違点1〉
本願発明1の「第1ガイド部材」が,「前記カード通過路を通過する前記カードが前記カードの厚さ方向において接触する」とともに,「第2ガイド部材」が「前記カード通過路を通過する前記カードが前記カードの厚さ方向で接触する」ものであるのに対し,引用発明は,「磁気カード」と「走行路」との接触状態については特定されていない点。

〈相違点2〉
本願発明1の「第1ガイド部材は、絶縁性材料で形成され」るとともに,「前記第2ガイド部材は、導電性材料で形成され」るものであるのに対し,引用発明の「ゲートブロック本体」に「形成」される「走行路」の材質については特定されていない点。

〈相違点3〉
本願発明1の「静電容量センサは、前記カード通過路よりも第1方向側に配置され、前記第1ガイド部材に取り付けられている」ものであるのに対し,引用発明の「異物挿入検出機構」は,「磁気カードを挿入するゲートブロック本体に組み込まれ」るものである点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,先に相違点1及び2について検討する。
本願発明1は,「第1ガイド部材」が「カード通過路を通過する…カードが前記カードの厚さ方向において接触」し,「第2ガイド部材」が「カード通過路を通過する前記カードが前記カードの厚さ方向で接触する」とともに,それぞれ「絶縁性材料」及び「導電性材料」で形成されることにより,「カード2が、ガイド部材15、16と接触しながらカード通過路6を通過するため、カードリーダ1の内部が帯電状態となるおそれがあるが、本形態では、ガイド部材16が導電性材料で形成されている。また、ガイド部材16は、カードリーダ1の金属製のフレームと電気的に結合しており、このフレームは接地されている。そのため、本形態では、カード2がカード通過路6を通過する際にガイド部材15、16が帯びる電気を、ガイド部材16を介して逃がすことが可能になる。したがって、本形態では、カードリーダ1の内部での静電気の発生を防止することが可能になる。」(段落【0043】)といった格別な効果を奏するものである。
一方,引用発明は,「カードリーダの走行路への異物挿入検出機構は,磁気カードを挿入するゲートブロック本体に組み込まれ,前記ゲートブロック本体の上側の基板の前面にシャッタ装置が設けられ,前記ゲートブロック本体には磁気カードの挿入口と走行路とが形成され」るものであり,当該「走行路」と「磁気カード」が接触することは自明であるものの,とりわけ,本願発明1の「第2ガイド部材」に相当する,「ゲートブロック本体」の上側部分を導電性材料で形成することは,記載も示唆もされておらず,引用発明において,上記相違点1及び2の構成を採用することは,当業者といえども容易になし得たとまではいうことができない。
また,相違点1及び2の構成は,上記第5に示した引用例2及び3にも記載されておらず,本願の出願前に周知な構成ともいえないから,上記その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明並びに引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2?7について
本願発明2?7は,本願発明1を直接又は間接的に引用するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明並びに引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について

<特許法29条2項について>

審判請求時の補正により,本願発明1?7は,上記第4に示すとおりのものとなっており,上記第6に示したとおり,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1?3(上記第5の引用例1?3)に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-04-15 
出願番号 特願2016-112897(P2016-112897)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 小林 秀和
山崎 慎一
発明の名称 カードリーダ  
代理人 小平 晋  

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