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審決分類 |
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正しない H04N |
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管理番号 | 1373264 |
審判番号 | 訂正2020-390082 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2020-09-08 |
確定日 | 2021-04-08 |
事件の表示 | 特許第5793962号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 経緯 本件訂正審判に係る特許第5793962号(以下、「本件特許」という。)に係る発明は、平成23年5月25日に特許出願されたものであって、平成27年8月21日に特許権の設定登録がなされたものである。 そして、令和2年9月8日に特許権者である富士ゼロックス株式会社より、本件特許に対して本件訂正審判の請求がなされ、これに対して令和2年11月10日付けで訂正拒絶理由が通知されたところ、令和2年12月9日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5793962号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?4、8について訂正することを認める、との審決を求める、というものである。 第3 訂正拒絶理由の概要 令和2年11月10日付けで当審が通知した訂正拒絶理由の概要は以下のとおりである。 訂正事項1?4は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正でない訂正事項を含むものであり、特許法第126条第5項の規定に適合していないから、訂正を認めることはできない。 第4 令和2年12月9日に提出された手続補正書による補正の適否についての当審の判断 1 令和2年12月9日に提出された手続補正書による補正の内容 本件補正は、審判請求書、訂正明細書、訂正特許請求の範囲を全文補正しているものであり、審判請求書及び審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲、訂正明細書に対して、以下の補正をするものである。 なお、下線は、補正箇所である。 (1)審判請求書の「6.請求の理由」について ア 「(1)一群の請求項1?4に係る訂正 2)訂正事項 ア 訂正事項1」に、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる、制御部」とあるのを、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる、制御部」と補正する。 イ 「(1)一群の請求項1?4に係る訂正 2)訂正事項 イ 訂正事項2」に、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる、制御部」とあるのを、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる、制御部」と補正する。 ウ 「(1)一群の請求項1?4に係る訂正 3)訂正の理由 イ 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明 (ア)訂正事項1 (a)訂正の目的について」に、 「そこで、訂正後の請求項1の特許発明では、各「処理」が、「外部からの処理」であることを明らかにした。」とあるのを、 「そこで、訂正後の請求項1の特許発明では、各「処理」が、それぞれ、「外部からの処理」、「外部からの処理の実行指示に基づいた処理」、「外部からの処理の実行指示に基づいた処理」であることを明らかにした。」と補正する。 エ 「(1)一群の請求項1?4に係る訂正 3)訂正の理由 イ 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明 (イ)訂正事項2 (a)訂正の目的について」に、 エ-1 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる、制御部」とあるのを、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる、制御部」と補正する。 エ-2 「訂正後の明細書の段落【0007】に記載された実施例では、その処理について、「外部からの処理」である旨を明らかにするものである。」とあるのを、 「訂正後の明細書の段落【0007】に記載された実施例では、その処理について、それぞれ、「外部からの処理」、「外部からの処理の実行指示に基づいた処理」、「外部からの処理の実行指示に基づいた処理」である旨を明らかにするものである。」と補正する。 オ 「(2)請求項8に係る訂正 2)訂正事項 ア 訂正事項1」に、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行が終了した際に前記操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる機能」とあるのを、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行が終了した際に前記操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる機能」と補正する。 カ 「(2)請求項8に係る訂正 2)訂正事項 イ 訂正事項2」に、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行が終了した際に前記操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる機能」とあるのを、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行が終了した際に前記操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる機能」と補正する。 キ 「(2)請求項8に係る訂正 3)訂正の理由 ア 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明 (ア)訂正事項1 (a)訂正の目的について」に、 「そこで、訂正後の請求項8の特許発明では、各「処理」が、「外部からの処理」であることを明らかにした。」とあるのを、 「そこで、訂正後の請求項8の特許発明では、各「処理」が、それぞれ、「外部からの処理」、「外部からの処理の実行指示に基づいた処理」、「外部からの処理の実行指示に基づいた処理」であることを明らかにした。」と補正する。 ク 「(2)請求項8に係る訂正 3)訂正の理由 ア 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明 (イ)訂正事項2 (a)訂正の目的について」に、 ク-1 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行が終了した際に前記操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる機能」とあるのを、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行が終了した際に前記操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる機能」と補正する。 ク-2 「訂正後の明細書の段落【0007】に記載された実施例では、その処理について、「外部からの処理」である旨を明らかにするものである。」とあるのを、 「訂正後の明細書の段落【0007】に記載された実施例では、その処理について、それぞれ、「外部からの処理」、「外部からの処理の実行指示に基づいた処理」、「外部からの処理の実行指示に基づいた処理」である旨を明らかにするものである。」と補正する。 (2)訂正審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲について ア 請求項1に、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる、制御部」とあるのを、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる、制御部」と補正する。(以下、「補正事項1」という。) イ 請求項8に、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行が終了した際に前記操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる」とあるのを、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行が終了した際に前記操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる」と補正する。(以下、「補正事項2」という。) (3)訂正審判請求書に添付された訂正明細書の段落0007について ア 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる、制御部」とあるのを、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる、制御部」と補正する。(以下、「補正事項3」という。) イ 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行が終了した際に前記操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる機能」とあるのを、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行が終了した際に前記操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる機能」と補正する。(以下、「補正事項4」という。) 2 補正に対する当審の判断 上記補正事項1?4について検討する。 (1)補正事項1について 上記補正事項1は、「当該外部からの処理の実行が終了した際に」と「当該外部からの処理の実行終了後」とを、それぞれ、「当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行が終了した際に」と「当該外部からの処理の実行指示に基づいた処理の実行終了後」とに補正するものである。 補正事項1による補正により、本件補正前には、「外部からの処理」を実行し、終了した際の動作を規定するものであったものが、本件補正後には、「外部からの処理の実行指示に基づいた処理」を実行し、終了した際の動作を規定するものとなり、実行し、終了する「処理」の内容が変更されている。 したがって、当該補正事項1による補正は、軽微な瑕疵の補正等の微修正に止まるものではなく、訂正事項の同一性を失わせるものである。 また、訂正事項の削除でもない。 (2)補正事項2?4について 補正事項2は、補正事項1に対応する訂正明細書の記載を補正するものであり、補正事項3は、訂正特許請求の範囲の請求項8に対して、請求項1と同様の補正をしたものであり、補正事項4は、補正事項3に対応する訂正明細書の記載を補正するものであるから、補正事項2?4についても、上記(1)と同様である。 したがって、当該補正事項2?4による補正は、軽微な瑕疵の補正等の微修正に止まるものではなく、訂正事項の同一性を失わせるものである。 また、訂正事項の削除でもない。 そうすると、本件補正は、審判請求の要旨を変更するものであるから、特許法第131条の2第1項の規定を満たさず、本件補正は認められない。 第5 本件審判請求に対する当審の判断 1 訂正の内容 上記第4に示したとおり、本件補正は認められないから、本件訂正審判に係る訂正の内容は、審判請求書に記載された以下のとおりである。 なお、下線は、訂正の箇所である。 (1)一群の請求項1?4に係る訂正 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「当該処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる、制御部」と記載されているのを、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる、制御部」に訂正する。 イ 訂正事項2 明細書の段落【0007】に 「当該処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる、制御部」と記載されているのを、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる、制御部」に訂正する。 (2)請求項8に係る訂正 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項8に 「前記処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該処理の実行が終了した際に前記操作受付部が前記低電力状態である場合、当該処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる機能」と記載されているのを、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行が終了した際に前記操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる機能」に訂正する。 エ 訂正事項4 明細書の段落【0007】に 「前記処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該処理の実行が終了した際に前記操作受付部が前記低電力状態である場合、当該処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる機能」と記載されているのを、 「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該外部からの処理の実行が終了した際に前記操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる機能」に訂正する。 2 当審の判断 (1)訂正事項1について ア 請求項1に係る発明 訂正事項1を判断するに当たり、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「訂正前発明1」という。)を分説すると次のとおりである。 A?Eは、構成要件を区別するために当審で付与したものであり、以下、「構成A」?「構成E」という。 A 媒体に画像を形成する画像形成機能部を含む複数の機能部と、 B 外部からの処理の実行指示を受信する受信機能部と、 C 利用者の操作を受け付ける操作受付部と、 D1 少なくとも前記操作受付部の動作状態と前記機能部の動作状態とを個別に、当該操作受付部および当該機能部のうちいずれかの機能を発揮するときの動作状態である高電力状態と当該いずれかの機能を発揮するときの動作状態ではなく当該高電力状態よりも消費電力の小さい動作状態である低電力状態とを遷移させて制御し、 D2 当該操作受付部の操作により少なくとも特定の種類の処理の実行を受け付けた場合、当該処理の実行終了後、第1設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させ、 D3 当該処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合であって当該処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる D 制御部と、 を備えることを特徴とする、 E 画像処理装置。 イ 訂正事項1の検討 訂正事項1は、構成D3における3箇所の「当該処理」について、 「当該処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合」を「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合」に訂正(以下、「訂正事項1-1」という。)し、 「当該処理の実行が終了した際」を「当該外部からの処理の実行が終了した際」 に訂正(以下、「訂正事項1-2」という。)し、 「当該処理の実行終了後」を「当該外部からの処理の実行終了後」に訂正(以下、「訂正事項1-3」という。)するものである。 イ-1 訂正事項1-1 訂正前発明1には、「処理」に関する記載として、構成D3の「当該処理」との記載より前に、構成Bの「外部からの処理の実行指示」、及び、構成D2の「当該操作受付部の操作により少なくとも特定の種類の処理の実行を受け付けた場合、当該処理の実行終了後」がある。(下線は、強調のために当審で付したものである。) 構成D3の「当該処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合」を「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合」とする訂正は、構成D3の「当該処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合」との記載における「当該処理の実行指示」が、構成Bの「外部からの処理の実行指示」又は、構成D2の「操作受付部の操作」による「特定の種類の処理の実行」の指示のうち前者を指すことを明瞭にしようとするものであるから、訂正事項1-1は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、本件特許明細書には訂正事項1-1に関連する記載として、以下のような記載がある。 「外部からのジョブの実行指示を受信する受信機能部」(段落0011) 「実行するジョブ(処理)」(段落0048) 「実行するジョブが外部からの遠隔操作(リモート操作)に基づく印刷処理」(段落0048) 「外部機器(コンピュータ等)からの遠隔操作によるジョブの実行指示があったこと」(段落0049、0054) 「画像形成装置1の節電モードが遠隔操作によるジョブの実行指示により解除された場合」(段落0056) 「節電モードの解除が遠隔操作によるジョブの実行指示によるものであった場合」(段落0057) 「画像形成装置1の節電モードが遠隔操作によるジョブの実行指示により解除された場合」(段落0060) これらの記載から、訂正事項1-1により訂正された「前記外部からの処理の実行指示を前記受信機能部が受信した場合」は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、訂正事項1-1は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 また、訂正事項1-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。 イ-2 訂正事項1-2、訂正事項1-3 訂正事項1-2及び訂正事項1-3はいずれも、「処理の実行(が)終了」という構成を、「外部からの処理の実行(が)終了」という構成に訂正しているものである。 そして、本件特許明細書には訂正事項1-2、訂正事項1-3に関連する記載として、以下のような記載がある。 「実行されたジョブが終了すると」、「節電モードの解除が遠隔操作によるジョブの実行指示によるものであった場合、UIユニット4は低電力状態である」。「この場合、各ユニットの制御部は、自ユニットを直ちに低電力状態へ移行させる」(段落0057) 「節電モードの解除がユーザによる節電ボタン140の操作によるものであった場合、」「UIユニット4は低電力状態ではない」。「この場合、」「ジョブの終了から一定時間が経過したならば」「自ユニットを低電力状態へ移行させる」(段落0058) 「UIユニット4が低電力状態である場合にも、タイマー機能による計時を行い、一定時間経過後にユニットが低電力状態へ移行するように構成しても良い。この場合、」「UIユニット4が低電力状態でない場合」「におけるユニットが低電力状態へ移行するまでの時間(以下、第1設定時間)よりも、UIユニット4が低電力状態である場合」「におけるユニットが低電力状態へ移行するまでの時間(以下、第2設定時間)が短くなるように設定される。」(段落0061) ここで、段落0048には「実行するジョブ(処理)」と記載されていることからみて、段落0057の「実行されたジョブが終了すると」、「遠隔操作によるジョブの実行指示」、段落0058の「ジョブの終了」との記載における各「ジョブ」も「処理」を意味するものといえる。 すなわち、本件特許明細書の段落0057、0058、0061には、特許請求の範囲の「処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる」ことは記載されている。 しかしながら、段落0011の記載からみて、外部から受信するのは、ジョブ(処理)の実行指示である。 また、段落0048の「実行するジョブが外部からの遠隔操作(リモート操作)に基づく印刷処理」との記載について検討するに、外部から受信するのは、「印刷処理」というジョブ(処理)ではなく、遠隔操作(リモート操作)であり、段落0049、0054の「外部機器(コンピュータ等)からの遠隔操作によるジョブの実行指示があったこと」との記載を勘案すると、外部から受信する「遠隔操作(リモート操作)」は、ジョブの実行指示のことを指すものである。 したがって、上記段落には、外部からの「実行指示」を受信することは記載されているものの、「外部からの処理」を実行し、終了した際の動作についての記載はなく、また、示唆する記載もない。 また、本件特許明細書全体を見ても、「外部からの処理」を実行し、終了した際の動作についての記載はなく、また、示唆する記載もない。 加えて、訂正事項1-2、訂正事項1-3の「当該外部からの処理の実行(が)終了」との記載より前には、「外部からの処理の実行指示」(構成B、訂正事項1-1により訂正された構成D3)との記載はあるものの、上記のとおり、両記載が同じものを意味するものと解することはできないから、「当該外部からの処理の実行(が)終了」における「当該」に対応する構成についても記載はなく、また、示唆する記載もない。 そうすると、訂正事項1-2、訂正事項1-3により、「当該処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる」を「当該外部からの処理の実行が終了した際に当該操作受付部が前記低電力状態である場合、当該外部からの処理の実行終了後、当該第1設定時間よりも短い時間である第2設定時間が経過した後に、前記高電力状態である当該機能部の動作状態を前記低電力状態へ移行させる」と訂正することは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正でないので、訂正事項1-2、訂正事項1-3は特許法第126条第5項の規定に適合しない。 したがって、訂正事項1は、特許法第126条第5項の規定に適合しない訂正事項1-2、訂正事項1-3を含むから、訂正事項1について訂正を認めることはできない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落0007の記載を訂正するものであるが、上記(1)で検討したように、訂正事項1が、特許法第126条第5項の規定に適合しない訂正事項を含むものである以上、訂正事項2についても、同様に、特許法第126条第5項の規定に適合しない訂正事項を含むから、訂正を認めることはできない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項1と同様の訂正を請求項8に対して行う訂正であり、上記(1)で検討したように、訂正事項1が、特許法第126条第5項の規定に適合しない訂正事項を含むものである以上、訂正事項3についても、同様に、特許法第126条第5項の規定に適合しない訂正事項を含むから、訂正を認めることはできない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正事項3に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落0007の記載を訂正するものであるが、上記(3)で検討したように、訂正事項3が、特許法第126条第5項の規定に適合しない訂正事項を含むものである以上、訂正事項4についても、同様に、特許法第126条第5項の規定に適合しない訂正事項を含むから、訂正を認めることはできない。 第6 まとめ 以上から、本件の訂正審判の請求は、特許法第126条第5項の規定に適合しておらず、訂正を認めることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-02-05 |
結審通知日 | 2021-02-10 |
審決日 | 2021-02-26 |
出願番号 | 特願2011-117330(P2011-117330) |
審決分類 |
P
1
41・
841-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 橋爪 正樹 |
特許庁審判長 |
五十嵐 努 |
特許庁審判官 |
樫本 剛 渡辺 努 |
登録日 | 2015-08-21 |
登録番号 | 特許第5793962号(P5793962) |
発明の名称 | 画像処理装置およびプログラム |
代理人 | 古部 次郎 |