• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1373272
審判番号 不服2020-12692  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-10 
確定日 2021-05-11 
事件の表示 特願2019- 89152「グランド部材、シールドプリント配線板及びシールドプリント配線板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月25日出願公開、特開2019-125813、請求項の数(25)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成30年2月9日(優先権主張 平成29年2月13日)を国際出願日とする特願2018-552260号の一部を令和1年5月9日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

令和 2年 4月16日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 6月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 6月24日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 2年 9月10日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1?14、16、18?22、24
・引用文献等 1?3

<引用文献等一覧>
1.特許第4201548号公報
2.特開2013-152867号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平3-257769号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし25に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明25」という。)は、令和2年6月15日提出の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを有し、かつ、導電性を有する外部接続部材と、
前記第1主面側に配置された導電性フィラーと、
前記導電性フィラーを前記第1主面に固定する接着性樹脂とからなるグランド部材であって、
前記導電性フィラーは、低融点金属を含み、
前記導電性フィラーは、コア粒子及びその表面の少なくとも一部に形成された前記低融点金属からなる低融点金属層により構成されており、
前記低融点金属層を構成する前記低融点金属の含有率が8wt%以上であり、78wt%以下であり、
前記コア粒子は、ニッケル及び/又は銅からなり、
前記低融点金属は、錫であることを特徴とするグランド部材。
【請求項2】
前記コア粒子の平均粒子径は、1?200μmである請求項1に記載のグランド部材。
【請求項3】
前記低融点金属層の厚さは、0.1?50μmである請求項1又は2に記載のグランド部材。
【請求項4】
前記低融点金属層は、フラックスを含む請求項1?3のいずれかに記載のグランド部材。
【請求項5】
前記導電性フィラーの周囲が、前記接着性樹脂に覆われている請求項1?4のいずれかに記載のグランド部材。
【請求項6】
前記導電性フィラーの少なくとも一部が、前記接着性樹脂から露出している請求項1?5のいずれかに記載のグランド部材。
【請求項7】
前記低融点金属の融点は、300℃以下である請求項1?6のいずれかに記載のグランド部材。
【請求項8】
前記外部接続部材は、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、チタン、亜鉛及びステンレス鋼からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1?7のいずれかに記載のグランド部材。
【請求項9】
前記第2主面には、耐腐食層が形成されている請求項1?8のいずれかに記載のグランド部材。
【請求項10】
前記耐腐食層は、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項9に記載のグランド部材。
【請求項11】
ベースフィルム上にグランド回路を含むプリント回路と絶縁フィルムを順次設けてなる基体フィルムと、
シールド層、及び、前記シールド層に積層された絶縁層からなり、前記シールド層が前記絶縁層よりも前記基体フィルム側に配置されるように前記基体フィルムを被覆するシールドフィルムと、
前記シールドフィルムの絶縁層に配置されたグランド部材を備えるシールドプリント配線板であって、
前記グランド部材は、第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを有し、かつ、導電性を有する外部接続部材と、
前記第1主面側に配置された導電性フィラーと、
前記導電性フィラーを前記第1主面に固定する接着性樹脂とからなり、
前記導電性フィラーは、低融点金属を含み、
前記グランド部材の導電性フィラーは、前記シールドフィルムの絶縁層を貫いており、
前記グランド部材の導電性フィラーに含まれる前記低融点金属は、前記シールドフィルムのシールド層に接続しており、
前記グランド部材の外部接続部材は、外部グランドと電気的に接続可能になっており、
前記導電性フィラーは、コア粒子及びその表面の少なくとも一部に形成された前記低融点金属からなる低融点金属層により構成されており、
前記低融点金属層を構成する前記低融点金属の含有率が8wt%以上であり、78wt%以下であり、
前記コア粒子は、ニッケル及び/又は銅からなり、
前記低融点金属は、錫であることを特徴とするシールドプリント配線板。
【請求項12】
前記シールドフィルムは、接着剤層と、前記接着剤層に積層された前記シールド層と、前記シールド層に積層された前記絶縁層とからなり、
前記シールドフィルムの接着剤層は、前記基体フィルムと接触している請求項11に記載のシールドプリント配線板。
【請求項13】
前記シールドフィルムの接着剤層は、導電性接着剤層である請求項12に記載のシールドプリント配線板。
【請求項14】
前記シールドフィルムのシールド層は、金属からなる請求項12又は13に記載のシールドプリント配線板。
【請求項15】
前記シールドフィルムでは、前記接着剤層と前記シールド層との間及び/又は前記シールド層と前記絶縁層との間にはシールドフィルムの低融点金属層が形成されており、前記シールドフィルムの低融点金属層は、前記グランド部材の導電性フィラーと接続している請求項12?14のいずれかに記載のシールドプリント配線板。
【請求項16】
前記シールドフィルムのシールド層は、導電性接着剤層であり、前記シールドフィルムの導電性接着剤層は、前記基体フィルムと接触している請求項11に記載のシールドプリント配線板。
【請求項17】
前記シールドフィルムでは、前記シールド層と前記絶縁層との間にはシールドフィルムの低融点金属層が形成されており、前記シールドフィルムの低融点金属層は、前記グランド部材の導電性フィラーと接続している請求項16に記載のシールドプリント配線板。
【請求項18】
ベースフィルム上にグランド回路を含むプリント回路と絶縁フィルムを順次設けてなる基体フィルムと、
シールド層、及び、前記シールド層に積層された絶縁層を有するシールドフィルムと、
前記シールドフィルムの絶縁層の上に配置された請求項1?10のいずれかに記載のグランド部材とを備えるシールドプリント配線板の製造方法であって、
前記シールドフィルムの絶縁層より前記基体フィルム側に前記シールドフィルムのシールド層が配置されるように、前記シールドフィルムを前記基体フィルムに載置するシールドフィルム載置工程と、
前記グランド部材の導電性フィラーが前記シールドフィルムの絶縁層側を向くように、前記グランド部材を前記シールドフィルムに配置するグランド部材配置工程と、
前記グランド部材の導電性フィラーが前記シールドフィルムの絶縁層を貫通するように前記グランド部材を加圧する加圧工程と、
前記グランド部材の低融点金属を前記シールドフィルムのシールド層に接続させるために、前記グランド部材の低融点金属を加熱して軟化させる加熱工程と、
を有することを特徴とするシールドプリント配線板の製造方法。
【請求項19】
前記加圧工程及び前記加熱工程を同時に行う請求項18に記載のシールドプリント配線板の製造方法。
【請求項20】
前記シールドフィルムは、接着剤層と、前記接着剤層に積層された前記シールド層と、前記シールド層に積層された前記絶縁層とからなる請求項18又は19に記載のシールドプリント配線板の製造方法。
【請求項21】
前記シールドフィルムの接着剤層は、導電性接着剤層である請求項20に記載のシールドプリント配線板の製造方法。
【請求項22】
前記シールドフィルムのシールド層は、金属からなる請求項20又は21に記載のシールドプリント配線板の製造方法。
【請求項23】
前記シールドフィルムにおいて、前記接着剤層と前記シールド層との間及び/又は前記シールド層と前記絶縁層との間にはシールドフィルムの低融点金属層が形成されており、
前記加熱工程では、前記シールドフィルムの低融点金属層を軟化させて、前記グランド部材のコア粒子と接続させる請求項20?22のいずれかに記載のシールドプリント配線板の製造方法。
【請求項24】
前記シールドフィルムのシールド層は、導電性接着剤層である請求項18又は19に記載のシールドプリント配線板の製造方法。
【請求項25】
前記シールドフィルムにおいて、前記シールド層と前記絶縁層との間にはシールドフィルムの低融点金属層が形成されており、
前記加熱工程では、前記シールドフィルムの低融点金属層を軟化させて、前記グランド部材のコア粒子と接続させる請求項24に記載のシールドプリント配線板の製造方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、「シールドフィルム、シールドフレキシブルプリント配線板及びそれらの製造方法」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。

「【0065】
また、グランド部材としては、前述のものの他、図7に示す形態とすることもできる。図7(a)は平面図、図7(b)は、図7(a)のE-E線拡大断面図である。図7に示すシールドFPCは、基体フィルム31及びシールドフィルム35からなるシールドFPC本体を有し、新たにグランド部材45を有する。
【0066】
このグランド部材45は、金属箔46と、前記金属箔46の片面から突出する複数の金属フィラー48と、金属箔46と金属フィラー48との間にあって金属箔46に金属フィラー48を接着する接着剤層47とを有する。金属フィラー48がシールド層37の接着剤層37a及び金属薄膜層37bに接続され、金属箔46が露出してその近傍のグランド部に接続される。
【0067】
各金属フィラー48の形状及び大きさ並びに数は、シールドフィルム35のシールド層37と適切に接触できるように適宜定められる。本実施形態例において、金属フィラー48がシールドフィルム35を突き破って基体フィルム31にまで至らないように、接着剤層47によって高さを調整する。
【0068】
これら複数の金属フィラー48は一列に並んでいるが、複数列に並んで設けても良い。その際、縦横列を揃えても良いし、千鳥格子状に配置しても良い。
【0069】
接着剤層47は、異方導電性接着剤層であり、金属箔46と金属フィラー48を電気的にも接続する。
【0070】
金属箔46の形状及び大きさは、金属フィラー48が接着することができ、且つ、グランド部へ接続することができるように適宜定められる。金属箔46の一端に導体43がハンダ付けされている。導体43はグランド部へ接続される。なお、金属箔46の導体43への接続は、金属箔46が基体フィルム31及びシールドフィルム35からなるシールドFPC本体を横切るように設けられている場合、金属箔46の両端又は片端に導体43をハンダ付けして両端の導体又は片端の導体43をグランド部へ接続してもよい。金属箔46の材料としては銅、銀、アルミニウム等が挙げられる。
【0071】
このような構造のグランド部材45は、次のようにしてシールドフィルム35に取り付けられる。金属フィラー48をカバーフィルム36に押し付ける。すると、金属フィラー48がカバーフィルム36及び金属薄膜層37bを突き抜けて接着剤層37aに侵入し、接着剤層37a及び金属薄膜層37bと接続される。そして、接着剤層47によってその状態が維持される。
【0072】
なお、接着剤層37aに関して、シールド層37に金属薄膜層37bが含まれている場合、金属薄膜層37bによって金属フィラー48とシールド層37との電気的接続の確実性を得ることができるので接着剤層37aが異方導電性であってもよい。シールド層37に金属薄膜層37bが含まれていない場合、金属フィラー48とシールド層37との確実な電気的接続を得るために、接着剤層37aは異方導電性でないほうが好ましい。このような構造のシールドFPCによると、シールドFPCの任意の場所でグランドと接続することができる。なお、片面シールドのものについて述べてきたが、両面シールドのものも当然本発明に含まれる。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「銅、銀、アルミニウム等からなりグランド部へ接続することができる金属箔46と、
前記金属箔46の片面から突出する複数の金属フィラー48と、
金属箔46と金属フィラー48との間にあって金属箔46に金属フィラー48を接着する接着剤層47とを有し、
金属フィラー48は、シールドFPC本体のシールド層37と電気的接続する、グランド部材。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、「導電性粒子、異方性導電材料及び接続構造体」について、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0025】
本発明に係る導電性粒子は、銅を表面に有する粒子と、銅と接するように銅の表面上に配置されているはんだ層とを備える。該はんだ層は、スズを含み、かつスズ及び銅と3元系の金属間化合物を形成する金属(以下、金属Xと記載することがある)を含む。本発明に係る導電性粒子は、銅に接するはんだ層が、スズを含み、かつスズ及び銅と3元系の金属間化合物を形成する金属Xを含む。上記金属Xはスズ及び銅と(Cu,X)6Sn5、又はCu6(Sn,X)5という金属間化合物を形成する金属であることが好ましい。金属管化合物は、例えば、複数の金属元素が一定の比率で結合した化合物である。
【0026】
本発明に係る導電性粒子は上述した構成を備えているので、電極間を接続して接続構造体を得た場合に、接続構造体の熱衝撃に対する電気的な接続信頼性を高めることができる。例えば、接続構造体が高温に晒されたり、冷熱サイクルに晒されたりしても、電極間の接続抵抗が高くなり難く、導通信頼性が良好になる。これは、はんだ層が金属Xを含まない場合には、銅がスズとCu6Sn5という粗大な金属間化合物を作り、その金属間化合物界面からクラックが発生するのに対し、はんだ層が金属Xを含む場合には、銅とスズの界面に金属Xの濃化層(Cu,X)6Sn5、又はCu6(Sn,X)5の小粒界ができ、それがバリア層の役割を果たして銅の拡散を抑制することでCu6Sn5の金属間化合物の成長を抑えることができる結果、Cu6Sn5の金属間化合物界面からのクラックの発生が減り、信頼性が良好になるためである。
【0027】
熱衝撃に対する電気的な接続信頼性をより一層高める観点からは、上記はんだ層に上記金属が、金属粒子を用いて含有されていることが好ましい。熱衝撃に対する電気的な接続信頼性をより一層高める観点からは、本発明に係る導電性粒子では、上記はんだ層において、上記金属Xは粒塊で存在していることが好ましい。
【0028】
なお、上記「粒塊」とははんだ層の中に存在する金属塊や金属粒子を意味する。
【0029】
上記金属Xが粒塊である場合に、該粒塊の大きさは特に限定されないが、好ましくは1nm以上、より好ましくは10nm以上、好ましくは10000nm以下、より好ましくは1000nm以下である。
【0030】
上記金属Xとしては、ニッケル、コバルト、金、銀、マンガン、亜鉛、パラジウム及び鉄等が挙げられる。上記金属Xは、ニッケル、コバルト、金、銀、マンガン、亜鉛、パラジウム又は鉄であることが好ましく、ニッケル、コバルト又は鉄であることがより好ましく、ニッケルであることが更に好ましい。このような好ましい金属の使用により、接続構造体の熱衝撃に対する電気的な接続信頼性が更に一層高くなる。上記金属Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記金属Xが、ニッケル、コバルト又は鉄である場合に、上記金属Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。」

「【0047】
図3に、本発明の第3の実施形態に係る導電性粒子を断面図で示す。
【0048】
図3に示す導電性粒子21は、粒子22と、はんだ層3とを備える。粒子22は、銅粒子であり、銅を表面に有する。すなわち、粒子22の全体が銅である。はんだ層3は、粒子22における銅と接するように、銅の表面上に配置されている。導電性粒子21と導電性粒子1とでは、銅を表面に有する粒子のみが異なっている。
【0049】
銅を表面に有する粒子は、銅粒子であってもよく、基材粒子と基材粒子の表面上に配置された導電層とを有する粒子であってもよい。基材粒子の表面上に配置された導電層は、1層の構造を有していてもよく、2層以上の積層構造を有していてもよい。基材粒子の表面上に配置された導電層(はんだ層を除く)の表面が銅層であればよい。はんだ層は、1層の構造を有していてもよく、2層以上の積層構造を有していてもよい。」

したがって、上記引用文献2には、「銅粒子である粒子22と、スズを含み、かつスズ及び銅と3元系の金属間化合物を形成する金属Xを含み、銅と接するように銅の表面上に配置されているはんだ層3と、を備える導電性粒子21」という技術的事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、「貫通端子及びその接続方法」について、図面とともに次の事項が記載されている。

「[実施例]
第1図は、本発明に係る貫通端子を示す斜視図である。
該貫通端子1は、黄銅やベリリウム鋼、リン青銅等の高強度な導電金属を材料として、鋭利な尖端部2を有する砲弾状の導電金属体3を形成し、該導電金属体3の内部に、一方を開口した中空部4を形成し、該導電金属体3の外壁5に対し、基端から中間部にかけて該中空部4と連通する数条のスリット6を形成し、該中空部4にペースト状あるいは固形状のハンダ7を装填して成るものである。
ここで前記スリット6の替わりに、第2図に示す貫通端子1’のように、導電金属体3’の外壁5’に、中空部4’と連通する複数の孔8を多方向に向けて穿設してもよい。
第1図で、9,9は、フレキシブルフラットケーブルを示し、二枚積層させて導体部10,10の重ね合わせ部11に前記貫通端子1を図示しない工具等により打ち込み、さらに、打ち込んだ貫通端子1を後述するような適当な加熱手段で加熱することにより、第3図に示すように、内部のハンダ7が溶けてスリット6(貫通端子1’の場合は孔8)から流れ出し、各層の導体部10の貫通面近傍10aと該貫通端子1の外壁面5とを強固に接着する。
なおここで、フラットケーブル9の積層枚数に合わせてスリット6の長さや数、孔8の数、ハンダ7の量を設定することによって、より確実な接続が可能となる。
第4図は、本発明に係る貫通端子の他の例を示すものであり、この該貫通端子12は、尖端部13を有する十字錐状の導電金属体14に対し、外壁面15に固形ハンダ16を円錐形状に固着させたものである。
第5図は、貫通端子のその他の実施例を示すものであり、この貫通端子17は、一方に尖端部18を有する円柱状の導電金属体19に対し、外壁面にハンダメッキ20を施したものである。ハンダメッキ20の厚さは20?100μm程度でよく、また、貫通端子17の形状は円柱状に限らず、第6図に示すように、尖端部21を有する平板状のもの22や、図示はしないが三角柱状のものでもよい。」(2頁左下欄5行目から3頁左上欄8行目)

したがって、上記引用文献3には、「導電金属体の外側面に固形ハンダまたはハンダメッキを備える貫通端子」という技術的事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア.引用発明の「金属箔46」は「銅、銀、アルミニウム等からな」るから導電性を有しており、また「グランド部に接続することができる」から外部に接続することができる部材である。そして、「金属箔46」が「片面」と当該片面と反対側の面とを有することは明らかである。
よって、引用発明の「金属箔46」は、本願発明1の「第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを有し、かつ、導電性を有する外部接続部材」に相当する。
イ.引用発明の「金属フィラー48」は「シールドFPC本体のシールド層37と電気的接続する」ことから導電性を有していることは明らかであり、また、「前記金属箔46の片面から突出する」から、本願発明1とは「前記第1主面側に配置された導電性フィラー」である点で共通する。
ただし、「導電性フィラー」が、本願発明1では「低融点金属を含み、コア粒子及びその表面の少なくとも一部に形成された前記低融点金属からなる低融点金属層により構成されており、前記低融点金属層を構成する前記低融点金属の含有率が8wt%以上であり、78wt%以下であり、前記コア粒子は、ニッケル及び/又は銅からなり、前記低融点金属は、錫である」であるのに対して、引用発明にはその旨の特定がない点で相違する。
ウ.引用発明の「接着剤層47」は、「金属箔46と金属フィラー48との間にあって金属箔46に金属フィラー48を接着する」から、本願発明1とは「前記導電性フィラーを前記第1主面に固定する接着剤」である点で共通する。
ただし、「接着剤」が、本願発明1では「接着性樹脂」であるのに対して、引用発明にはその旨の特定がない点で相違する。
エ.引用発明の「グランド部材」は、本願発明1の「グランド部材」に相当する。

したがって、上記アないしエによれば、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。

(一致点)
「第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを有し、かつ、導電性を有する外部接続部材と、
前記第1主面側に配置された導電性フィラーと、
前記導電性フィラーを前記第1主面に固定する接着剤とからなるグランド部材。」

(相違点1)
「導電性フィラー」が、本願発明1では「低融点金属を含み、コア粒子及びその表面の少なくとも一部に形成された前記低融点金属からなる低融点金属層により構成されており、前記低融点金属層を構成する前記低融点金属の含有率が8wt%以上であり、78wt%以下であり、前記コア粒子は、ニッケル及び/又は銅からなり、前記低融点金属は、錫である」であるのに対して、引用発明にはその旨の特定がない点。
(相違点2)
「接着剤」が、本願発明1では「接着性樹脂」であるのに対し、引用発明にはその旨の特定がない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
上記「第4」「2」において説示したとおり、引用文献2には、「銅粒子である粒子22と、スズを含み、かつスズ及び銅と3元系の金属間化合物を形成する金属Xを含み、銅と接するように銅の表面上に配置されているはんだ層3と、を備える導電性粒子21」という技術的事項が記載されている。
そこで、相違点1に係る本願発明1の「導電性フィラー」と、引用文献2に記載の技術的事項に係る「導電性粒子21」を対比すると、本願発明1の「導電性フィラー」の「低融点金属層」は「錫である」のに対して、引用文献2に記載の技術的事項の「導電性粒子21」の「はんだ層3」は「スズ」と「スズ及び銅と3元系の金属間化合物を形成する金属X」を「含む」から、スズの他に金属Xを含む点で相違する。
また、引用文献2に記載の技術的事項の「導電性粒子22」の「はんだ層3」において「金属X」は必須の構成と認められることから(引用文献2の段落【0026】を参照。)、「金属X」を除くことには阻害要因があるといわざるを得ない。
よって、相違点1に係る本願発明1の「導電性フィラー」と、引用文献2に記載された上記技術的事項の「導電性粒子21」とは同一でなく、また、本願発明1の「導電性フィラー」は、引用文献2に記載された上記技術的事項の「導電性粒子21」から容易に想到しえたものともいえない。
したがって、引用発明の「金属フィラー48」として、引用文献2に記載された技術的事項の「導電性粒子21」を採用したとしても、本願発明1の上記相違点1に係る構成とはならない。
また、上記「第4」「3」において説示したとおり、引用文献3に記載される技術的事項は、「導電金属体の外側面に固形ハンダまたはハンダメッキを備える貫通端子」であるから、上記相違点1に係る構成について記載されていない。

したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2及び3に記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2ないし10及び18ないし25について
本願発明2ないし10及び18ないし25は、本願発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明、引用文献2及び3に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明11ないし17について
本願発明11ないし17は、本願発明1の「グランド部材」を備える「シールドプリント配線板」の発明であり、本願発明1の上記相違点1に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2及び3に記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし25は、当業者が引用文献1に記載された発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-04-13 
出願番号 特願2019-89152(P2019-89152)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 大介  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 畑中 博幸
永井 啓司
発明の名称 グランド部材、シールドプリント配線板及びシールドプリント配線板の製造方法  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ