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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1373487
審判番号 不服2020-12569  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-08 
確定日 2021-05-11 
事件の表示 特願2017-544392「無線装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月13日国際公開、WO2017/061157、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)7月8日(優先権主張 平成27年10月6日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 2年 4月 1日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 6月 8日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 6月22日付け:拒絶査定
令和 2年 9月 8日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年6月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
理由3(進歩性):この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由4(明確性):この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
理由3:
・請求項1ないし5、9ないし12に対して、引用文献1及び2

理由4:
請求項1ないし12の記載は、処理部又はプロセッサにより、判定をすることの技術的意味や動作が理解できないから、請求項1ないし12に係る発明は明確でない。

引用文献等一覧
1.ZTE,Design of DL LBT[online],3GPP TSG-RAN WG1#82 R1-154750,2015年8月19日,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_82/Docs/R1-154750.zip>(以下、「引用文献1」という。)
2.CATT,LAA-WIFI co-existence evaluation results for outdoor scenario[online],3GPP TSG RAN WG1 adhoc_LTE_LAA_1503 R1-151001,2015年3月20日,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_AH/LTE_LAA_1503/Docs/R1-151001.zip>(以下、「引用文献2」という。)

第3 本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、令和2年9月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
データの送信権の獲得に少なくともランダムバックオフを伴うLBT(Listen Before Talk)を実行する無線装置であって、
一つの第1の単位周波数帯域を含み、キャリアアグリゲーションにより形成される一つの通信チャネルに対応するグループに関する情報を取得し、該情報に基づいて前記第1の単位周波数帯域に関する前記LBTである第1のLBTを実行し、当該第1のLBTの実行結果が示す前記第1の単位周波数帯域の状態を、前記グループに含まれる全ての単位周波数帯域の状態であると判定する処理部、
を備え、
前記処理部は、前記第1のLBTの実行結果が示す前記第1の単位周波数帯域の状態がビジー状態である場合には、前記グループに含まれる前記第1の単位周波数帯域以外の第2の単位周波数帯域に関する前記LBTである第2のLBTを実行せずとも、前記全ての単位周波数帯域のうちの少なくともいずれかを用いた前記送信権の獲得が不可であると判定し、
前記処理部はさらに、前記第1の単位周波数帯域の状態がアイドル状態であり、かつ、前記第2の単位周波数帯域を用いて他の無線装置へデータを送信する場合には、前記第2のLBTを実行したうえで前記第2の単位周波数帯域を用いた前記送信権を獲得するように判定する、無線装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記第1のLBTの実行結果が示す前記第1の単位周波数帯域の状態がアイドル状態である場合に、前記グループに含まれる全ての前記単位周波数帯域を同時に使用してデータを送信する、請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記同時の使用を希望する前記単位周波数帯域の数を決定し、決定した数の前記単位周波数帯域を含む前記グループを選択する、請求項2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記単位周波数帯域の数は2のべき乗である、請求項3に記載の無線装置。
【請求項5】
前記単位周波数帯域の数は、前記グループのレベル値を表し、
前記グループは、下位グループとなる前記グループの集合によって該下位グループのそれぞれの前記レベル値が合算された上位レベル値を有する上位グループを形成可能であって、
前記下位グループのうちのいずれか一つの前記第1の単位周波数帯域は、前記上位グループの前記第1の単位周波数帯域を兼ねており、
前記処理部は、任意の前記レベル値の前記グループの使用を希望し、当該グループが前記上位グループに属する前記下位グループである場合に、前記上位グループの前記第1の単位周波数帯域に関する前記第1のLBTを実行し、当該第1のLBTの実行結果が示す前記第1の単位周波数帯域の状態を、前記上位グループに属する全ての前記下位グループに含まれる全ての前記単位周波数帯域の状態であると判定する、請求項3または4に記載の無線装置。
【請求項6】
前記グループは、基地局が使用可能な複数の前記単位周波数帯域のうちの一部の前記単位周波数帯域から成る、請求項1?5のいずれか一つに記載の無線装置。
【請求項7】
前記単位周波数帯域は、コンポーネントキャリアである、請求項1?6のいずれか一つに記載の無線装置。
【請求項8】
前記単位周波数帯域は、周波数が6GHz以上である、請求項1?7のいずれか一つに記載の無線装置。
【請求項9】
データの送信権の獲得に少なくともランダムバックオフを伴うLBT(Listen Before Talk)を実行する無線装置を用いた方法であって、
一つの第1の単位周波数帯域を含み、キャリアアグリゲーションにより形成される一つの通信チャネルに対応するグループに関する情報を取得し、該情報に基づいて前記第1の単位周波数帯域に関する前記LBTである第1のLBTを実行し、当該第1のLBTの実行結果が示す前記第1の単位周波数帯域の状態を、前記グループに含まれる全ての単位周波数帯域の状態であるとプロセッサにより判定すること、
を含み、
前記判定することは、前記第1のLBTの実行結果が示す前記第1の単位周波数帯域の状態がビジー状態である場合には、前記グループに含まれる前記第1の単位周波数帯域以外の第2の単位周波数帯域に関する前記LBTである第2のLBTを実行せずとも、前記全ての単位周波数帯域のうちの少なくともいずれかを用いた前記送信権の獲得が不可であると判定し、
前記判定することはさらに、前記第1の単位周波数帯域の状態がアイドル状態であり、かつ、前記第2の単位周波数帯域を用いて他の無線装置へデータを送信する場合には、前記第2のLBTを実行したうえで前記第2の単位周波数帯域を用いた前記送信権を獲得するように判定する、方法。」

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された、ZTE,Design of DL LBT([当審訳]:DL LBTのデザイン)[online],3GPP TSG-RAN WG1#82 R1-154750,2015年8月19日,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_82/Docs/R1-154750.zip>には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「1 Introduction
(中略)
Multiple channel access schemes have been evaluated during SI [2]:
・Category 1: No LBT
・Category 2: LBT without random back-off
・Category 3: LBT with random back-off with fixed size of contention window
・Category 4: LBT with random back-off with variable size of contention window
The TR recommends a Category 4 LBT mechanism to be the baseline at least for LAA DL transmission bursts containing PDSCH where the detailed description of Category 4 LBT scheme is as the following [2]:
(中略)
2 BL LBT with random back-off
For LBT category 4, an LAA node may perform CCA at any time of a subframe given random traffic arrival and random back-off during contention.
(中略)
4 Multi-carrier LBT
(中略)
Alt. 2, the candidate unlicensed carriers are divided into several groups. Within one group, a primary competition carrier is selected while others are secondary competition carriers. For the primary competition carrier, a full LBT (such as LBT Category 4) is performed. For the secondary competition carriers in a group, a simplified LBT (such as LBT Category 2) is performed. For this method, the way to group the unlicensed carriers and the way to determine the primary competition carrier should be further studied.
(後略)
」(1ページ7行目ないし3ページ32行目)

(当審訳:
1 序論
(中略)
SI [2]では、複数のチャネルアクセス方式が評価されている。
・カテゴリー1:LBTなし
・カテゴリー2:ランダムバックオフなしのLBT
・カテゴリー3:コンテンションウィンドウのサイズが固定されたランダムバックオフのLBT
・カテゴリー4:コンテンションウィンドウのサイズが可変のランダムバックオフを備えたLBT
本TRでは、少なくともPDSCHを含むLAA DL伝送バーストについては、カテゴリー4LBT機構をベースラインとすることを推奨しており、カテゴリー4LBT機構の詳細な説明は以下の通りである[2]。
(中略)
2 ランダムバックオフ付きDL LBT
LBTカテゴリー4の場合、LAAノードは、競合中にランダムなトラフィックの到着とランダムなバックオフが与えられると、サブフレームの任意の時点でCCAを実行できる。
(中略)
4 マルチキャリアLBT
(中略)
Alt.2では、候補となる無免許キャリアを複数のグループに分けている。1つのグループ内では、一次競争キャリアが選択され、他のキャリアは二次競争キャリアである。一次競争キャリアについては、完全なLBT(LBTカテゴリー4など)を実施する。グループ内の二次競争キャリアについては、簡略化されたLBT(LBTカテゴリ2など)を行う。この方法については、無免許キャリアをグループ化する方法や、一次競争キャリアを決定する方法をさらに検討する必要がある。
(後略))

上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

(1)上記「4 マルチキャリアLBT」には、「無免許キャリアを複数のグループに分けている。1つのグループ内では、一次競争キャリアが選択され、他のキャリアは二次競争キャリアである。一次競争キャリアについては、完全なLBT(LBTカテゴリー4など)を実施する。グループ内の二次競争キャリアについては、簡略化されたLBT(LBTカテゴリ2など)を行う。」と記載されている。
そうすると、引用文献1には、「1つのグループ内の一次競争キャリアでは、完全なLBT(LBTカテゴリー4)を行い、グループ内の二次競争キャリアでは、簡略化されたLBT(LBTカテゴリ2)を行う」ことが記載されている。
(2)上記「1 序論」には、「カテゴリー2:ランダムバックオフなしのLBT」及び「カテゴリー4:コンテンションウィンドウのサイズが可変のランダムバックオフを備えたLBT」と記載されている。
そうすると、引用文献1には、「LBTカテゴリー4は、ランダムバックオフを備えたLBTである。」こと、及び「LBTカテゴリー2は、ランダムバックオフなしのLBT」が記載されている。
(3)上記「2 ランダムバックオフ付きDL LBT」には、「LBTカテゴリー4の場合、・・・LAAノードは、・・・・CCAを実行できる。」と記載されている。
そうすると、引用文献1には、「LBTカテゴリー4では、CCAを実行するLAAノード」が記載されている。

以上を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「LBTカテゴリー4では、CCAを実行するLAAノードであって、
1つのグループ内の一次競争キャリアでは、完全なLBT(LBTカテゴリー4)を行い、グループ内の二次競争キャリアでは、簡略化されたLBT(LBTカテゴリ2)を行い、
LBTカテゴリー4は、ランダムバックオフを備えたLBTであり、
LBTカテゴリー2は、ランダムバックオフなしのLBTである、
LAAノード。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された、CATT,LAA-WIFI co-existence evaluation results for outdoor scenario([当審訳]:屋外シナリオのLAA-WIFI共存評価結果)[online],3GPP TSG RAN WG1 adhoc_LTE_LAA_1503 R1-151001,2015年3月20日,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_AH/LTE_LAA_1503/Docs/R1-151001.zip>には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「1 Introduction
In RAN1 #80, additional evaluation assumptions and methodologies for LAA-WIFI co-existence performance evaluation were discussed and agreed [1].
Agreements:
・Classify the evaluated LBT schemes according to the following categories:
- Category 1: No LBT
- Category 2: LBT without random back-off
- Category 3: LBT with random back-off with fixed size of contention window
- Category 4: LBT with random back-off with variable size of contention window
(後略)
」(1ページ7行目ないし1ページ15行目)

(当審仮訳:
1 はじめに
RAN1 #80では、LAA-WIFI共存性能評価のための追加評価の前提条件と方法論が議論され、合意された[1]。
合意:
・評価されたLBTスキームを次のカテゴリに従って分類する。
-カテゴリー1:LBTなし
-カテゴリー2:ランダムバックオフなしのLBT
-カテゴリー3:コンテンションウィンドウのサイズが固定されたランダムバックオフのLBT
-カテゴリー4:コンテンションウィンドウのサイズが可変のランダムバックオフを備えたLBT
(後略)
)

引用文献2からは、LBTスキームが、カテゴリ-1からカテゴリー4に分類されていることが読み取れる。
そうすると、「LBTスキームには、LBTなしのカテゴリー1及びカテゴリー2からカテゴリー4のLBTが存在する」という技術事項が引用文献2に記載されている。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

引用発明の「LAAノード」は、CCAとして、LBTカテゴリー4を実行するものであり、LBTカテゴリー4はランダムバックオフを備えたLBTを行うものである。またLBT動作は送信を行うための送信権を獲得する動作であることは技術常識であるから、当該動作を行うLAAノードは、無線を用いた無線装置であることは技術常識である。
そうすると、引用発明の「LAAノード」は、データの送信権の獲得にランダムバックオフを伴うLBTを実行する無線装置であるといえ、本願発明1と引用発明は「データの送信権の獲得に少なくともランダムバックオフを伴うLBTを実行する無線装置」を有する点で一致する。
また、引用発明の「LAAノード」は、「一次競争キャリアでは、完全なLBT(LBTカテゴリー4)を行う」ものであり、一次競争キャリアが少なくともコンポーネントキャリアで構成されるものであることは技術常識である。そして、コンポーネントキャリアは、単位周波数帯域と同義であるから、引用発明の「LAAノード」では、単位周波数帯域においてLBTを実行するものであるといえ、該一次競争キャリアではLBTカテゴリー4が行われるのだから、引用発明の「一次競争キャリア」は、本願発明1の「第1の単位周波数帯域」に相当する。
そして、LAAノードは単位周波数帯域に関するLBTであるLBTを実行するのだから、当該処理を実行する処理部を有することは自明である。
そうすると、本願発明1と引用発明は「第1の単位周波数帯域に関するLBTであるLBTを実行する処理部」を有するという点で共通する。

以上を総合すると、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「 データの送信権の獲得に少なくともランダムバックオフを伴うLBTを実行する無線装置であって、
単位周波数帯域に関するLBTであるLBTを実行する処理部、を備える、
無線装置。」

(相違点1)
単位周波数帯域に関する前記LBTであるLBTの実行について、本願発明1においては、「一つの第1の単位周波数帯域を含み、キャリアアグリゲーションにより形成される一つの通信チャネルに対応するグループに関する情報を取得し、該情報に基づいて第1のLBT」が実行されるものであるのに対し、引用発明においては、「一つの第1の単位周波数帯域を含み、キャリアアグリゲーションにより形成される一つの通信チャネルに対応するグループに関する情報を取得し、該情報に基づいて第1のLBT」が実行されることが特定されていない点。

(相違点2)
処理部について、本願発明1においては、「第1のLBTの実行結果が示す第1の単位周波数帯の状態を、グループに含まれる全ての単位周波数帯域の状態であると判定する」のに対し、引用発明においては、その旨の特定がなされていない点。

(相違点3)
処理部について、本願発明1においては、「第1のLBTの実行結果が示す第1の単位周波数帯域の状態がビジー状態である場合には、グループに含まれる前記第1の単位周波数帯域以外の第2の単位周波数帯域に関する前記LBTである第2のLBTを実行せずとも、全ての単位周波数帯域のうちの少なくともいずれかを用いた前記送信権の獲得が不可であると判定」するのに対し、引用発明において、その旨の特定がなされていない点。

(相違点4)
処理部について、本願発明1においては、「第1の単位周波数帯域の状態がアイドル状態であり、かつ、第2の単位周波数帯域を用いて他の無線装置へデータを送信する場合には、第2のLBTを実行したうえで前記第2の単位周波数帯域を用いた送信権を獲得するように判定する」のに対し、引用発明においては、その旨の特定がなされていない点。

(2)進歩性(特許法第29条第2項)についての判断
事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
相違点2に係る本願発明1の処理部について「第1のLBTの実行結果が示す第1の単位周波数帯の状態を、グループに含まれる全ての単位周波数帯域の状態であると判定する」という発明特定事項は、引用文献1及び引用文献2には記載も示唆もされていない。また、当該技術分野において周知技術であるともいえない。
よって、当業者といえども、引用発明の処理部を、上記相違点2のような「第1のLBTの実行結果が示す第1の単位周波数帯の状態を、グループに含まれる全ての単位周波数帯域の状態であると判定する」ものとすることは、容易に想到し得たとはいえない。
したがって、上記相違点1及び相違点3並びに相違点4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし8について
本願発明2ないし8は、本願発明1の発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.本願発明9について
本願発明9は、本願発明1の無線装置を方法として記載したものであって、上記1.で説示した相違点に係る本願発明1の発明特定事項と同様な発明特定事項を少なくとも備えるものであるから、本願発明1と同様な理由により、引用発明及び引用文献2に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
1.理由1(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし9は「第1のLBTの実行結果が示す第1の単位周波数帯の状態を、グループに含まれる全ての単位周波数帯域の状態であると判定する」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2.理由2(特許法第36条第6項第2号)について
審判請求時の補正により、請求項1において「前記処理部は、前記第1のLBTの実行結果が示す前記第1の単位周波数帯域の状態がビジー状態である場合には、前記グループに含まれる前記第1の単位周波数帯域以外の第2の単位周波数帯域に関する前記LBTである第2のLBTを実行せずとも、前記全ての単位周波数帯域のうちの少なくともいずれかを用いた前記送信権の獲得が不可であると判定し、前記処理部はさらに、前記第1の単位周波数帯域の状態がアイドル状態であり、かつ、前記第2の単位周波数帯域を用いて他の無線装置へデータを送信する場合には、前記第2のLBTを実行したうえで前記第2の単位周波数帯域を用いた前記送信権を獲得するように判定する、」ことが特定されたから、処理部による判定の技術的意味や動作は明確なものとなった。また、請求項1の従属項である請求項2ないし8、及び請求項9においても、同様の特定がされることにより、プロセッサによる判定の技術的意味や動作は明確なものとなった。
補正前の請求項3及び請求項4は、補正によって削除されている。
したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし9は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。また、本願発明1ないし9は、補正によって明確となった。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-04-20 
出願番号 特願2017-544392(P2017-544392)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 深津 始  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 廣川 浩
本郷 彰
発明の名称 無線装置及び方法  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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