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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1373535
審判番号 不服2020-13889  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-02 
確定日 2021-05-11 
事件の表示 特願2019- 81774「光学フィルム、光学積層体及びフレキシブル画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月24日出願公開、特開2020-154274、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2019-81774号(以下「本件出願」という。)は、平成31年4月23日(先の出願に基づく優先権主張 平成30年4月27日 平成31年3月15日)の出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 元年 9月 5日付け:拒絶理由通知書
令和 元年11月 8日提出:意見書
令和 元年11月 8日提出:手続補正書
令和 2年 1月31日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 3月27日提出:意見書
令和 2年 3月27日提出:手続補正書
令和 2年 6月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 2年10月 2日提出:審判請求書
令和 2年10月 2日提出:手続補正書


第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、本件出願の請求項1?9に係る発明(令和2年10月2日に提出された手続補正書による補正前のもの)は、最先の先の出願(以下、単に「先の出願」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(下記の引用文献1?3に記載された発明)に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:国際公開第2008/133082号
引用文献2:特開2007-133162号公報
引用文献3:特開2009-215412号公報
(当合議体注:引用文献1は主引例であり、引用文献2?3は副引例を示す文献である。)


第3 本件発明
本件出願の請求項1?9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明9」という。)は、令和2年10月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本件発明1は、以下のとおりのものである。

「 ポリアミドイミドを含む光学フィルムであって、式(1)
0.1≦反射(SCE)b*/反射(SCI)b*≦1.5・・・(1)
[式(1)中、反射(SCE)b*はSCE方式で求められる該光学フィルムを反射した光のL*a*b*表色系におけるb*を示し、反射(SCI)b*はSCI方式で求められる該光学フィルムを反射した光のL*a*b*表色系におけるb*を示す]
を満たし、ヘーズは1%以下であり、全光線透過率Ttは85%以上である、光学フィルム。」

また、本件発明2?5は、本件発明1に対してさらに他の発明特定事項を付加したものであり、本件発明6は、本件発明1の「光学フィルム」に対してさらに他の発明特定事項を付加した「光学積層体」の発明であり、本件発明7?9は、本件発明1の「光学フィルム」に対してさらに他の発明特定事項を付加した「フレキシブル画像表示装置」の発明である。


第4 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
1 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶理由に引用文献1として引用され、先の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されている国際公開第2008/133082号(以下、同じく「引用文献1」という。)には、以下の記載事項がある。なお、当合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。

(1)「技術分野
[0001] 本発明は、液晶ディスプレー、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー、そして電子ペーパーなどの情報表示装置、そして太陽電池などの電気・電子装置の基材として有利に用いることができる、高弾性率、高耐熱性で、片面の表面平滑性が高いポリイミドフィルムに関する。本発明はさらに、本発明のポリイミドフィルムを用いた、液晶ディスプレー、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー、電子ペーパーなどの情報表示装置および太陽電池など電気・電子装置にも関する。
・・・省略・・・
発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0003] 本発明の目的は、ディスプレー用、電子ペーパー用の基材、特にベース材として特に有用な3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む酸成分と、p-フェニレンジアミンを含むジアミン成分とから得られる片面が粗面で片面が平滑性を有するポリイミドフィルムを提供することである。
課題を解決するための手段
[0004] 本発明は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む酸成分とp-フェニレンジアミンを含むジアミン成分とから得られたポリイミド樹脂及び該ポリイミド樹脂に分散された充填剤からなる充填剤含有ポリイミド樹脂領域の上に、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む酸成分とp-フェニレンジアミンを含むジアミン成分とから得られたポリイミド樹脂領域が連続的に形成されてなる、厚みが20?150μmの範囲のポリイミド樹脂フィルムであって、充填剤含有ポリイミド樹脂領域の側のフィルム表面のRaが1.0nmを超え、2.5nm以下であって、その逆側のフィルム表面のRaが1.0nm以下であるポリイミドフィルムにある。
・・・省略・・・
[0007] 本発明のポリイミドフィルムの好ましい態様を以下に示す。
1)上側のポリイミド樹脂領域が、充填剤を含まない領域であるか、あるいは充填剤を下側の充填剤含有ポリイミド樹脂領域に含まれている充填剤よりも少ない濃度で含有する領域である。
2)上側のポリイミド樹脂領域の厚みが0.6?1.2μmの範囲にある。
3)充填剤が、二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末、炭化ケイ素粉末、炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末、ポリイミド微細繊維、ポリイミド粉末、ポリアミド微細粉末、およびポリアミド粉末からなる群より選ばれる。
発明の効果
[0008] 本発明の片面が平滑性のポリイミドフィルムは、高弾性、高耐熱性、高耐折性であるため、ディスプレー用、電子ペーパー用の基材、特にベース材として有利に用いることができる。」

(2)「発明を実施するための最良の形態
[0009] 添付図面を参照して本発明のポリイミドフィルムの構成を説明すると、図1において、ポリイミドフィルム1は、充填剤含有ポリイミド樹脂領域2と充填剤を含有しないポリイミド樹脂領域3とからなり、充填剤含有ポリイミド樹脂領域2のポリイミドと充填剤を含有しないポリイミド樹脂領域3のポリイミドとは明確な境界面を示さず、連続している。
・・・省略・・・
[0035] 本発明のポリイミドフィルムの製造に用いられる充填剤は、フィルム製造時の易滑性と、ロール巻き取り巻きだし容易性を実現できるものであればよい。充填剤の例としては、微粒子状の二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素(シリカ)粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム(アルミナ)粉末、酸化亜鉛粉末などの無機酸化物粉末、微粒子状の窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末などの無機窒化物粉末、炭化ケイ素粉末などの無機炭化物粉末、および微粒子状の炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末などの無機充填剤、ポリイミド微細繊維、ポリイミド粒子、ポリアミド微細繊維、ポリアミド粒子などの有機充填剤を挙げることができる。これらの充填剤は二種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの充填剤を均一に分散させるために、それ自体公知の手段を利用することができる。
[0036] 充填剤の平均粒径は、フィルム製造時の易滑性の向上と、ロール巻き取り巻きだしの可能性を高めるものであればよく、平均粒径は、好ましくは0.005?0.5μm、より好ましくは0.005?0.2μm、さらに好ましくは0.01?0.1μmの範囲にある。」

(3)「[0045](実施例)
単層押出成形用ダイスを設けた製膜装置を使用して、参考例1で得た自己支持性フィルム製造用ポリイミド前駆体溶液を単層押出成形用ダイスを有する押出成形機構に供給し、前記のダイスから単層の薄膜状体を、吐出温度30℃で、一対の駆動輪の上に巻き掛けられて回動する表面平滑な支持体(金属製のベルト)の上面に連続的に押出し、そして、キャスティング炉において、前記支持体の上面の薄膜状体を、熱風吹き出し装置によって、約140℃の温度において、6分間乾燥し、自己支持性のフィルム(溶媒含有率:30?40重量%)を形成し、次いで、支持体上から自己支持性フィルムを剥離した。
[0046] 自己支持性フィルムの片面(A面)に、参考例2で得た塗布用ポリイミド前駆体溶液を、乾燥後の厚みが0.8?1.0μmとなるように、グラビアコータを用いて塗布し、塗布した自己支持性フィルムを、赤外線ヒータの内設されたキュア炉を通過させて、約150から450℃までの段階的に昇温される温度範囲において4分間加熱処理して、フィルムを形成し、さらにフィルムを常温まで冷却し巻き取り機の巻き取りロ-ルに巻き取って、厚さが50μmである芳香族ポリイミドフィルムを製造した。
[0047] 得られた芳香族ポリイミドフィルムの特性を評価した。
1)表面平滑性:
塗布側(Ra=0.95nm、Rms=1.21nm、Rmax=21.3nm)
塗布していない側(Ra=1.55nm、Rms=2.45nm、Rmax=57.4nm)
2)機械的特性:
引張弾性率:9850MPa(MD、TD平均値)
3)摩擦係数:動摩擦係数:0.34、静摩擦係数:0.35
4)線膨張係数(50-200℃):MD(長さ方向)12ppm/℃、TD(幅方向)12.2ppm/℃
産業上の利用可能性
[0048] 本発明の片面が平滑なポリイミドフィルムは、優れた耐熱性、優れた引張り弾性、適度な摩擦係数、適度な線膨張係数を有することにより、液晶ディスプレー、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー及び電子ペーパーなどのベース基材に有利に用いることができる。」

(4)「 請求の範囲
「[1] 3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む酸成分とp-フェニレンジアミンを含むジアミン成分とから得られたポリイミド樹脂及び該ポリイミド樹脂に分散された充填剤からなる充填剤含有ポリイミド樹脂領域の上に、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む酸成分とp-フェニレンジアミンを含むジアミン成分とから得られたポリイミド樹脂領域が連続的に形成されてなる、厚みが20?150μmの範囲のポリイミド樹脂フィルムであって、充填剤含有ポリイミド樹脂領域の側のフィルム表面のRaが1.0nmを超え、2.5nm以下であって、その逆側のフィルム表面のRaが1.0nm以下であるポリイミドフィルム。
[2] 上側のポリイミド樹脂領域が、充填剤を含まない領域であるか、あるいは充填剤を下側の充填剤含有ポリイミド樹脂領域に含まれている充填剤よりも少ない濃度で含有する領域である請求項1に記載のポリイミドフィルム。
[3] 上側のポリイミド樹脂領域の厚みが0.6?1.2μmの範囲にある請求項1に記載のポリイミドフィルム。
[4] 充填剤が、二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末、炭化ケイ素粉末、炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末、ポリイミド微細繊維、ポリイミド粒子、ポリアミド微細繊維、およびポリアミド粒子からなる群より選ばれる請求項1に記載のポリイミドフィルム。
[5] 請求項1乃至4のうちのいずれかに記載のポリイミドフィルムからなる、液晶ディスプレー、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー、電子ペーパーまたは太陽電池の基材。
[6] 請求項1乃至4のうちのいずれかに記載のポリイミドフィルムを備えた情報表示装置もしくは電気・電子装置。」

2 引用発明
引用文献1の上記1の記載に基づけば、引用文献1には、請求項1を引用する請求項4に記載のポリイミドフィルムとして、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む酸成分とp-フェニレンジアミンを含むジアミン成分とから得られたポリイミド樹脂及び該ポリイミド樹脂に分散された充填剤からなる充填剤含有ポリイミド樹脂領域の上に、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む酸成分とp-フェニレンジアミンを含むジアミン成分とから得られたポリイミド樹脂領域が連続的に形成されてなる、厚みが20?150μmの範囲のポリイミド樹脂フィルムであって、充填剤含有ポリイミド樹脂領域の側のフィルム表面のRaが1.0nmを超え、2.5nm以下であって、その逆側のフィルム表面のRaが1.0nm以下であって、
充填剤が、二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末、炭化ケイ素粉末、炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末、ポリイミド微細繊維、ポリイミド粒子、ポリアミド微細繊維、およびポリアミド粒子からなる群より選ばれる、ポリイミドフィルム。」


第5 対比・判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「ポリイミドフィルム」は、前記「第4」2で述べた構成を具備する。
この構成からみて、引用発明の「ポリイミドフィルム」が光学フィルムとして機能することは、明らかである(当合議体注:このことは、引用文献1の[0001]の技術分野についての記載、[0048]の産業上の利用可能性についての記載、請求の範囲の[5]の記載等からも確認できる。)。
そうしてみると、引用発明の「ポリイミドフィルム」は、本件発明1の「光学フィルム」に相当する。

(2)一致点及び相違点
以上より、本件発明1と引用発明とは、
「光学フィルム。」
の点で一致し、以下の点で相違する,又は一応相違する。

(相違点1)
「光学フィルム」が、本件発明1が、「ポリアミドイミドを含む」のに対して、引用発明は、一応、これが明らかではない点。

(相違点2)
「光学フィルム」が、本件発明1が、「0.1≦反射(SCE)b*/反射(SCI)b*≦1.5・・・(1)[式(1)中、反射(SCE)b*はSCE方式で求められる該光学フィルムを反射した光のL*a*b*表色系におけるb*を示し、反射(SCI)b*はSCI方式で求められる該光学フィルムを反射した光のL*a*b*表色系におけるb*を示す]を満た」すのに対して、引用発明の「ポリイミドフィルム」は、このように特定されていない点。

(相違点3)
「光学フィルム」が、本件発明1が、「ヘーズは1%以下であり、全光線透過率Ttは85%以上である」のに対して、引用発明の「ポリイミドフィルム」は、このように特定されていない点。

(3)判断
技術常識を考慮すると、「ポリアミドイミドを含む」か否かは「全光線透過率Tt」と関係し、「反射(SCE)b*/反射(SCI)b*」は「ヘーズ」に関係する。したがって、上記相違点1?相違点3は、技術的にみてひとまとまりの構成であるから、これら相違点1?相違点3について、まとめて検討する。
引用文献1には、少なくとも、「反射(SCE)b*」及び「反射(SCI)b*」に関する記載がない。そして、引用文献1には、引用発明の「ポリイミドフィルム」が、上記相違点1に係る「ポリアミドイミドを含む」ことを前提として、上記相違点2に係る「0.1≦反射(SCE)b*/反射(SCI)b*≦1.5」という要件並びに上記相違点3に係る「ヘーズは1%以下」及び「全光線透過率Ttは85%以上」という要件を満たすことについて、記載も示唆もない。
この点は、原査定の拒絶理由に示された、特開2007-133162号公報(以下「引用文献2」という。)についてみても同様である。また、原査定の拒絶理由に示された、特開2009-214312号公報(以下「引用文献3」という。)の【0074】には、ポリイミド樹脂に添加してもよい材料として「ポリアミドイミド樹脂」が例示されているが、その余については、引用文献1の場合と同様である。さらに、上記相違点1に係る「ポリアミドイミドを含む」ことを前提として、上記相違点2係る「0.1≦反射(SCE)b*/反射(SCI)b*≦1.5」という要件並びに上記相違点3に係る「ヘーズは1%以下」及び「全光線透過率Ttは85%以上」という要件を満たすことが、周知技術であるともいえない。
そして、上記相違点1?3に係る本件発明1の構成により、本件発明1は、本件明細書の【0008】に記載されたような作用効果を奏するものである。

さらに進んで検討すると、引用発明の「ポリアミドフィルム」は、「充填剤含有ポリイミド樹脂領域の側のフィルム表面のRaが1.0nmを超え、2.5nm以下であって、その逆側のフィルム表面のRaが1.0nm以下であ」る。そうしてみると、引用発明の「ポリアミドフィルム」の表面における光の散乱は、極めて小さいと理解される。また、引用発明の「充填剤」に関して、引用文献1の【0036】には、「充填剤の平均粒径は、フィルム製造時の易滑性の向上と、ロール巻き取り巻きだしの可能性を高めるものであればよく、平均粒径は、好ましくは0.005?0.5μm、より好ましくは0.005?0.2μm、さらに好ましくは0.01?0.1μmの範囲にある。」と記載されている。しかしながら、引用文献1には、「充填剤」の分量の範囲に関する記載はない。したがって、仮に、引用発明の「充填剤」に関して、当業者が引用文献1の記載を参考にしたとしても、少なくとも、上記相違点2に係る「0.1≦反射(SCE)b*/反射(SCI)b*≦1.5」という要件並びに上記相違点3に係る「ヘーズは1%以下」及び「全光線透過率Ttは85%以上」という要件を満たすものに到る蓋然性が高いとはいえない。
(当合議体注:引用文献1の【0043】に記載の参考例1では、「ポリアミック酸100質量部に対して」、「0.5質量部のコロイダルシリカ(平均粒子径;800Å)を加え」ているが、この記載を考慮しても、少なくとも上記相違点2に係る「0.1≦反射(SCE)b*/反射(SCI)b*≦1.5」という要件を満たすものに到る蓋然性が高いとはいえない。)

そうしてみると、当業者であっても、引用発明の「ポリイミドフィルム」を、上記相違点1?相違点3に係る本件発明1の構成の全てを具備したものとすることが、容易になし得たということはできない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、当業者であっても、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

2 本件発明2?9について
本件発明2?9は、本件発明1の構成を全て具備するものであるから、本件発明2?9も、本件発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたということができない。


第6 原査定について
上記第5で述べたように、本件出願の請求項1?9に係る発明は、当業者であっても、引用文献1?3に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたということができない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-04-15 
出願番号 特願2019-81774(P2019-81774)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 井口 猶二
関根 洋之
発明の名称 光学フィルム、光学積層体及びフレキシブル画像表示装置  
代理人 松谷 道子  
代理人 森住 憲一  

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