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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E05F
管理番号 1373785
異議申立番号 異議2020-700942  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-06-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-12-02 
確定日 2021-04-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6715873号発明「ウインドレギュレータ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6715873号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6715873号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成30年2月22日に出願され、令和2年6月11日にその特許権の設定登録がされ、令和2年7月1日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年12月2日に特許異議申立人伊東沙織(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第6715873号の請求項1ないし3の特許に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
車両の窓ガラスの昇降方向に沿って設けられるガイドレールと、
前記ガイドレールと摺動して前記窓ガラスと共に移動するキャリアプレートと、
前記キャリアプレートを牽引するケーブルと、
モータによって回転駆動するドラムと、
前記ドラムを収容するドラムハウジング、及び前記ドラムハウジングに固定されて前記モータの一部を収容するモータハウジングからなるハウジングと、を備え、
前記ドラムハウジングは、前記ガイドレールの下端が嵌合する嵌合穴が形成された嵌合部と、前記モータハウジングを締結する第1の締結部材を有する締結孔と、を有し、
前記モータハウジングは、前記第1の締結部材に固定された第2の締結部材を挿通した挿通孔を有し、
前記モータハウジングと前記ドラムハウジングとは、前記第1の締結部材及び第2の締結部材の固定によって締結されており、
前記ドラムハウジングには、前記車両の車幅方向において前記締結孔と対向する位置に、前記モータハウジングと対向する面とは反対側に開口した開口部が形成されており、
前記ドラムハウジングの前記締結孔が、前記車両の前後方向において、前記ガイドレールと重なる位置に設けられている、
ウインドレギュレータ。
【請求項2】
前記ドラムハウジングの前記開口部の内側には、前記ガイドレールの下端が接触する前記嵌合穴の底面から立ち上がって設けられ、前記車両の車幅方向における前記ガイドレールの動きを規制する規制部が設けられている、
請求項1に記載のウインドレギュレータ。
【請求項3】
前記規制部は、前記ガイドレールと接触する突起を含んで構成されている、
請求項2に記載のウインドレギュレータ。」

3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として特開2015-121059号公報(以下「文献1」という。)を、従たる証拠として特開2015-148091号公報(以下「文献2」という。)、国際公開第2016/171200号(以下「文献3」という。)、特開2013-50017号公報(以下「文献4」という。)を提出し、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1ないし3に係る特許を取り消すべきものである旨、主張する。

4 文献の記載
(1)文献1
文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は決定で付した。以下同様。)
ア 「【0001】
本発明は、ワイヤ式のウインドレギュレータに関する。」

イ 「【0007】
本発明は、車両の窓ガラスを昇降させるワイヤ式ウインドレギュレータにおいて、窓ガラスの昇降方向に延びるガイドレールと、窓ガラスを支持してガイドレールに対して長手方向に摺動可能に支持されるスライダベースと、ドラムを回転可能に支持しガイドレールの一方の端部に接続されるドラムハウジングと、ガイドレールの他方の端部に支持されるワイヤガイドと、ドラムとスライダベースを接続してドラムの回転に応じてスライダベースをガイドレールに沿って移動させるワイヤと、ドラムハウジングに設けられガイドレールを長手方向へ移動可能に嵌合させる嵌合部と、ガイドレールとは別部材からなり、ドラムハウジングとガイドレールの一方に支持され、ガイドレールが嵌合部に嵌合した状態でドラムハウジングとガイドレールの他方に当接して、ドラムハウジングとガイドレールのワイヤの緩み方向への相対移動を規制する規制部材を備えたことを特徴とする。」

ウ 「【0014】
図1に示すウインドレギュレータ10は、ガイドレール11と、ガイドレール11の長手方向に可動に支持されるスライダベース12と、ガイドレール11の長手方向の一端部付近に回転可能に支持されたプーリー(ワイヤガイド)13と、ガイドレール11の長手方向の他端部側に接続されたドラムハウジング14と、ドラムハウジング14内に回転可能に支持されたドラム15(図2、図3)と、ドラム15を回転駆動させる駆動部16と、スライダベース12に対して正逆方向の牽引力を与える第1ワイヤ17及び第2ワイヤ18を有する。
【0015】
ガイドレール11は、金属等の板状材から形成した長尺材であり、コ字状断面をなす中央部11aの両側に、側方へ突出するフランジ11bを有している。ガイドレール11にはブラケット20、21が取り付けられ、完成状態のウインドレギュレータ10が、車両用ドアを構成するインナパネル(不図示)に対してブラケット20、21を介して固定される。このときガイドレール11は窓ガラスの昇降方向(上下方向)に長手方向を向けて設置され、プーリー13を支持する端部が上側、ドラムハウジング14に接続する端部が下側となる。これに対応して、ガイドレール11のうちプーリー13を支持する側の端部を上端部、ドラムハウジング14に接続する端部を下端部と呼ぶ。
【0016】
スライダベース12は、図示を省略する窓ガラスを支持しており、ガイドレール11のフランジ11bに対して、該ガイドレール11の長手方向に摺動可能に嵌合する。プーリー13は、ガイドレール11の上端部付近に設けられる支持軸25(図2)に対して回転可能に支持されており、外周部分にガイド溝13aを有する。なお、回転部材でなくガイドレール11に対して固定された部材としてプーリー13を構成することも可能である。
【0017】
図3に示すように、ドラムハウジング14に形成した凹部14a内にドラム15が回転可能に支持されている。凹部14aからドラムハウジング14の上面側に連通するワイヤ挿通溝14b(図7)が形成されている。ドラムハウジング14には第1ワイヤ17と第2ワイヤ18を挿通させる一対のワイヤ挿通溝14bが形成されているが、図7には第1ワイヤ17を挿通させる一方のワイヤ挿通溝14bのみが図示されている。ドラム15の外周面には螺旋状のワイヤ巻取り溝15aが形成されている。ドラム15の中心に形成した回転伝達孔15bに対して、駆動部16に設けた駆動軸16aが嵌合しており、駆動部16に設けたモータ22の駆動力で駆動軸16aを回転させることによってドラム15を正逆に回転させることができる。駆動部16は、固定ビス23(図2)を用いてドラムハウジング14に固定される。
【0018】
第1ワイヤ17は、中間部分がプーリー13のガイド溝13aに掛け回されており、プーリー13からガイドレール11に沿って下方に延びる一対の部分のうち一方の端部がドラム15に接続している。第1ワイヤ17の他方の端部には、エンドキャップにコイルバネを取り付けた構造のエンド部17aが設けられており、このエンド部17aがスライダベース12のワイヤ接続部12aに接続している。第2ワイヤ18は、一方の端部がドラム15に接続し、他方の端部に第1ワイヤ17のエンド部17aと同様の構造のエンド部18aが設けられている。第2ワイヤ18のエンド部18aは、第1ワイヤ17のエンド部17aとは反対側から(すなわち下方から)スライダベース12のワイヤ接続部12aに接続している。このようにドラム15とスライダベース12に接続した状態で、第1ワイヤ17と第2ワイヤ18にはそれぞれ張力が付与され、この張力は各ワイヤ17、18が延設されるガイドレール11の長手方向に沿って作用する。第1ワイヤ17と第2ワイヤ18はそれぞれ、対応するワイヤ挿通溝14bを通してドラムハウジング14の凹部14a内に挿入されており、該凹部14a内のドラム15の回転によってワイヤ巻取り溝15aへの巻き掛け量が変化する。ワイヤ巻取り溝15aへの第1ワイヤ17の巻き掛け量が多くなる方向にドラム15を回転させると、第1ワイヤ17に牽引されてスライダベース12がプーリー13に近づく方向(上方)に移動する。逆にワイヤ巻取り溝15aへの第2ワイヤ18の巻き掛け量が多くなる方向にドラム15を回転させると、第2ワイヤ18に牽引されてスライダベース12がドラムハウジング14に近づく方向(下方)に移動する。
【0019】
ドラムハウジング14は、ガイドレール11の下端部を嵌合させる嵌合部30を有する。嵌合部30は、上方を向く当付面30aから上方へ向けて突出する角突起(対向部)30bと押さえ突起(対向部)30cとを有し、図3に示すように、角突起30bと押さえ突起30cの間に差し込み溝30dが形成されている。角突起30bと押さえ突起30cには、差し込み溝30dを挟んで対向する位置関係にある規制部材挿入孔30eと規制部材挿入孔30fが形成されている(図3参照)。規制部材挿入孔30fは押さえ突起30cを貫通している。規制部材挿入孔30eと規制部材挿入孔30fに対して規制部材31を挿入可能である。規制部材挿入孔30eと規制部材挿入孔30fは円形断面孔であり、規制部材31はこの円形断面孔にガタなく嵌る円柱状のピンである。図3に示すように、規制部材31は規制部材挿入孔30eと規制部材挿入孔30fに対する両持ち状態で挿入支持され、この状態で規制部材31の中間部分が差し込み溝30d内に位置する。規制部材31は、規制部材挿入孔30e、30fに対して圧入によって挿入されて抜け止めされる。
【0020】
図7に示すように、中央部11aの内面を角突起30bの外面に沿わせる形でガイドレール11の下端部を嵌合部30に嵌合させることができる。この嵌合状態では、角突起30bの両側面に対して中央部11aの両側面が当接し、かつ図3に示すように中央部11aの一部が差し込み溝30dに挿入されて角突起30bと押さえ突起30cに挟まれるため、ドラムハウジング14に対してガイドレール11は、その長手方向と垂直な方向への移動が規制される。一方、この嵌合状態では、ドラムハウジング14に対してガイドレール11は長手方向の移動が許されており、ガイドレール11の下端面が当付面30aに当て付くまでガイドレール11を下方に移動させることができる。
【0021】
以上のように構成されるウインドレギュレータ10は、次のように組み立てられる。まず、ガイドレール11に対して、スライダベース12を摺動可能に支持させると共に、支持軸25を介してプーリー13を軸支させる。また、第1ワイヤ17と第2ワイヤ18はそれぞれ、図1に示すウインドレギュレータ10の完成状態で適切な張力を有するように長さを設定しておく。ブラケット20とブラケット21は任意のタイミングでガイドレール11に取り付けられる。
【0022】
続いて第1ワイヤ17と第2ワイヤ18の各々の一端と他端をスライダベース12とドラム15に接続する。このとき、図4に示すように、ドラムハウジング14の嵌合部30にガイドレール11の下端部を嵌合させ、さらにガイドレール11の下端面が当付面30aに当て付くまで差し込み溝30d内に深く差し込んだ状態にして、第1ワイヤ17と第2ワイヤ18の配索を行う。具体的には、第1ワイヤ17については、プーリー13のガイド溝13aに掛け回すと共に一端と他端をスライダベース12のワイヤ接続部12aとドラム15に接続させ、第2ワイヤ18については、プーリー13を経由せずに一端と他端をスライダベース12のワイヤ接続部12aとドラム15に接続させる。ガイドレール11の下端面が当付面30aに当て付く状態では、ガイドレール11の長手方向において、プーリー13とドラム15の距離、スライダベース12(ガイドレール11上の所定位置にあるものとする)とドラム15の距離がそれぞれウインドレギュレータ10の完成状態に比して短くなっているため、図4に示す通り、第1ワイヤ17と第2ワイヤ18の両方に張力がかからない弛緩した状態で配索を行うことができる。
【0023】
続いて、図5に示すように、ガイドレール11の下端面が当付面30aから離れる方向にガイドレール11とドラムハウジング14を相対移動させる。図5では、ガイドレール11に対してドラムハウジング14を下方に移動させる動きを矢印Fで示しているが、ドラムハウジング14に対してガイドレール11を上方に移動させてもよい。このガイドレール11とドラムハウジング14の相対移動によって、プーリー13とドラム15の距離が大きくなり、かつスライダベース12とドラム15の距離が大きくなり、第1ワイヤ17と第2ワイヤ18の張力が増加する。
【0024】
ガイドレール11の下端面が規制部材挿入孔30e及び規制部材挿入孔30fよりも上方に達したところで、図6及び図7に示すように規制部材31を規制部材挿入孔30fに挿入する。図3に示すように、規制部材31は差し込み溝30d内を横切って規制部材挿入孔30eの内部に達するまで挿入され、該規制部材挿入孔30eと規制部材挿入孔30fによる支持を受ける両持ち状態になる。このときガイドレール11には、第1ワイヤ17と第2ワイヤ18の張力によって該ガイドレール11の下端部を当付面30aに接近させる方向の力が作用するが、図3に示すように、差し込み溝30d内を横切る規制部材31に対してガイドレール11の下端面が当接することでガイドレール11の下方への移動、すなわち第1ワイヤ17と第2ワイヤ18の張りを緩める方向への移動が規制される。その結果、図1に示すように第1ワイヤ17と第2ワイヤ18が張られた状態が維持されてウインドレギュレータ10が完成する。
【0025】
以上のように、本実施形態のウインドレギュレータ10では、ガイドレール11の下端部をドラムハウジング14の嵌合部30に嵌合させ、嵌合部30によって、第1ワイヤ17と第2ワイヤ18を緩める位置(図4)と第1ワイヤ17と第2ワイヤ18を張らせる位置(図1、図5、図6)にガイドレール11を移動可能に案内し、張力がかからない前者の位置で第1ワイヤ17と第2ワイヤ18の組み付けを行うため、組み立て時の作業性に優れている。また、第1ワイヤ17と第2ワイヤ18に張力がかかる後者の位置は、ガイドレール11とは別部材からなる規制部材31を用いて維持するため、ガイドレール11の強度に影響を及ぼさずにドラムハウジング14に対するガイドレール11の長手方向の位置を決めることができる。」

エ 図面
(ア)図1




上記図1から、以下の点が看取できる。
・ガイドレール11が、上下方向に長手方向を向けて設置される点。

(イ)図2




上記図2から、以下の点が看取できる。
・駆動部16に3つの突出部が設けられており、ドラムハウジング14の前記3つの突出部と対向する位置に突出部が設けられている点。
・3つの固定ビス23が、駆動部16の横にあって、上記3つの突出部における各突出部の配置と近似した位置にある点。
・駆動部16がケース状となっており、当該駆動部16がモータ22の一部を収容している点。

(ウ)図3




(エ)図7




上記図7から、以下の点が看取できる。
・駆動部16に形成された3つの突出部のうち、嵌合部30に最も近い突出部、及び、他の2つの突出部のうち一方の突出部が、ドラムハウジング14に形成された3つの突出部のうち、嵌合部30に最も近い突出部、及び、他の2つの突出部のうち一方の突出部に、それぞれ重なっている点。
・ドラムハウジング14の3つの突出部のうち、嵌合部30に最も近い突出部の駆動部16と対向する面とは反対側の面のうち、略半分が嵌合部30に面しており、残りの略半分が、ドラムハウジング14外に露出している点。
・ガイドレール11の下端面が、ドラムハウジング14に形成された3つの突出部のうちの前記嵌合部30に最も近い突出部の中央に形成されている円形部分の上端よりも上方に位置している点。

オ 上記イ並びにエ(イ)及び(エ)から以下のことがいえる。
(ア)上記イ(【0017】)には「駆動部16は、固定ビス23(図2)を用いてドラムハウジング14に固定される」との記載、及び、上記エ(イ)における、3つの固定ビス23が、駆動部16の横にあって、駆動部16及びドラムハウジング14のそれぞれの3つの突出部における各突出部の配置と近似した位置にあって、なおかつ、エ(エ)のとおり、駆動部16及びドラムハウジング14のそれぞれの3つの突出部のうちの2つの突出部が重なっていることから、駆動部16及びドラムハウジング14の3つ目の突出部同士も重なっていている、すなわち、駆動部16及びドラムハウジング14のそれぞれの3つの突出部は、突出部同士が重なっていて固定ビス23により固定されていること。
(イ)上記エ(イ)の図で示される駆動部16の横にある固定ビス23が、駆動部16と、駆動部16の固定ビス23とは反対側にあるドラムハウジング14とを固定するのであるから、固定ビス23は、駆動部16に挿通されていること。

カ 上記アないしオからみて、文献1には次の発明(以下「文献1発明」という。)が記載されているものと認める。
文献1発明
「窓ガラスの昇降方向(上下方向)に長手方向を向けて設置されるガイドレール11と、
ガイドレール11の長手方向に可動に支持されるスライダベース12と、
ガイドレール11の長手方向の他端部側に接続されたドラムハウジング14と、
ドラムハウジング14内に回転可能に支持されたドラム15と
ドラム15を回転駆動させる駆動部16と、
スライダベース12に対して正逆方向の牽引力を与える第1ワイヤ17及び第2ワイヤ18と、を有する、
車両の窓ガラスを昇降させるワイヤ式ウインドレギュレータであって、
スライダベース12は、窓ガラスを支持しており、ガイドレール11のフランジ11bに対して、該ガイドレール11の長手方向に摺動可能に嵌合し、
駆動部16に設けたモータ22の駆動力で駆動軸16aを回転させることによってドラム15を正逆に回転させることができ、
駆動部16は、固定ビス23を用いてドラムハウジング14に固定され、
固定ビス23は、駆動部16に挿通されており、駆動部16がケース状となっており、当該駆動部16がモータ22の一部を収容しており、
ドラムハウジング14は、ガイドレール11の下端部を嵌合させる嵌合部30を有しており、前記嵌合部30は、上方を向く当付面30aから上方へ向けて突出する角突起(対向部)30bと押さえ突起(対向部)30cとを有し、角突起30bと押さえ突起30cの間に差し込み溝30dが形成されていて、角突起30bと押さえ突起30cには、差し込み溝30dを挟んで対向する位置関係にある規制部材挿入孔30eと規制部材挿入孔30fが形成されていて、規制部材31は、規制部材挿入孔30fに挿入され、差し込み溝30d内を横切って規制部材挿入孔30eの内部に達するまで挿入され、該規制部材挿入孔30eと規制部材挿入孔30fによる支持を受ける両持ち状態になり、差し込み溝30d内を横切る規制部材31に対してガイドレール11の下端面が当接することでガイドレール11の下方への移動規制されており、
駆動部16及びドラムハウジング14のそれぞれの3つの突出部は、突出部同士が重なっていて固定ビス23により固定されていて、
ドラムハウジング14の3つの突出部のうち、嵌合部30に最も近い突出部の駆動部16と対向する面とは反対側の面のうち、略半分が嵌合部30に面しており、残りの略半分が、ドラムハウジング14外に露出していて、
ガイドレール11の下端面が、ドラムハウジング14に形成された3つの突出部のうちの前記嵌合部30に最も近い突出部の中央に形成されている円形部分の上端よりも上方に位置している、
ウインドレギュレータ10。」

(2)文献2
文献2には、以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
本発明は、車両のドアの窓ガラスを昇降させるウインドレギュレータに関する。」

イ「【0015】
ウインドレギュレータ1は、窓ガラス90の移動方向に沿って配置されるガイドレール20と、ガイドレール20の長手方向に沿って架張されたワイヤ3と、ガイドレール20に案内されて窓ガラス90と共に移動する移動体4とを備えている。移動体4は、ワイヤ3の一部が巻き回されたドラム40(後述する図4に示す)と、ドラム40を回転駆動する駆動力を発生するモータ5と、ドラム40及びモータ5を保持するハウジング6と、ハウジング6に窓ガラス90を結合する結合部材71,72とを有している。移動体4の構成の詳細については後述する。」

ウ「【0022】
図3乃至図5に示すように、ハウジング6は、ドラム40を収容するドラムハウジング61と、後述するウォームギヤ機構80(図8に示す)を収容するギヤハウジング62とからなる。ドラムハウジング61とギヤハウジング62とは、複数のボルト63及びナット64(図4に示す)によって相互に締結されている。ドラムハウジング61及びギヤハウジング62は、共に樹脂からなる。より具体的には、ドラムハウジング61は例えばポリアセタール(POM)からなり、ギヤハウジング62は例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)からなる。
【0023】
ドラムハウジング61は主として窓ガラス90よりも車両の車幅方向における内側(ドア9の内壁92側)に配置され、ギヤハウジング62は、窓ガラス90よりも車両の車幅方向における外側(ドア9の外壁91側)に配置されている。なお、図5では、図面上方が車両の車幅方向における内側にあたり、図面下方が車両の車幅方向における外側にあたる。
【0024】
図4に示すように、ドラムハウジング61には、ドラム40を収容する収容空間61aが形成されている。また、ドラムハウジング61には、ワイヤ3を収容空間61aに導く第1ガイド溝611及び第2ガイド溝612が形成されている。第1ガイド溝611は、収容空間61aの上方に形成され、第1ワイヤ支持部材21に向かって開口している。第2ガイド溝612は、収容空間61aの下方に形成され、第2ワイヤ支持部材22に向かって開口している。第1ガイド溝611及び第2ガイド溝612は、収容空間61aの中心部よりもガイドレール20側に片寄った位置に形成されている。」

エ「【0029】
第1ワイヤ支持部材21とドラムハウジング61との間におけるワイヤ3を上部ワイヤ3aとし、第2ワイヤ支持部材22とドラムハウジング61との間におけるワイヤ3を下部ワイヤ3bとすると、ドラム40の回転により、上部ワイヤ3a及び下部ワイヤ3bの長さが変化する。つまり、移動体4の上昇時におけるドラム40の回転方向を正方向とし、移動体4の下降時におけるドラム40の回転方向を逆方向とすると、ドラム40が正方向に回転することにより、上部ワイヤ3aの長さが短くなると共に下部ワイヤ3bの長さが長くなる。また、ドラム40が逆方向に回転することにより、上部ワイヤ3aの長さが長くなると共に下部ワイヤ3bの長さが短くなる。この上部ワイヤ3a及び下部ワイヤ3bの長さの変化に応じて、移動体4がガイドレール20に対して上下方向に移動する。
【0030】
モータ5は、コネクタ部5aから供給される電流によって回転駆動力を発生する直流モータである。図6に示すように、モータ5は、カバー部材としてのヨーク51と、ヨーク51の内面に固定された一対の永久磁石52,53と、ヨーク51に回転可能に支持されたシャフト54と、シャフト54と一体回転するように設けられた電機子55及び整流子56と、シャフト54の回転に伴って整流子56と摺動するブラシ57と、ブラシ57を整流子56に押し付けるバネ58とを有している。ブラシ57は、コネクタ部5a(図3,図4に示す)の図略の端子に電気的に接続されている。
【0031】
モータ5は、コネクタ部5aに接続されるケーブルから供給される直流電流により電機子55に発生する磁界と一対の永久磁石52,53との間に発生する引力及び斥力によってシャフト54に回転駆動力を発生させる。シャフト54には、ギヤハウジング62に収容されたウォーム50が一体回転するように連結されている。ウォーム50は、中心部に設けられた軸部501と、軸部501の外周に設けられたギヤ部502とを有している。ウォーム50の軸部501とモータ5のシャフト54とは、連結部材59によって連結されている。
【0032】
ヨーク51は、鉄等の磁性体からなり、一対の永久磁石52,53間で磁束を通過させると共に、内部への水等の異物の侵入を抑止する。ヨーク51は、図7に示すように、筒部511と、筒部511の一端部を閉塞する底部512とを有し、かつ筒部511の他端部が開口した有底筒状である。本実施の形態では、円筒状の筒部511と円盤状の底部512とが一体に形成されている。また、本実施の形態では、筒部511の開口511a側の端部から外方に張り出す鍔部513が筒部511と一体に形成されている。鍔部513には、ヨーク51をギヤハウジング62に固定するためのボルト65(図3及び図4に示す)を挿通させる複数のボルト挿通孔513aが形成されている。」

オ「【0041】
ドラムハウジング61には、収容空間61aを形成する底部615の中心部に貫通孔615aが形成されている。また、底部615における貫通孔615aの周囲には、円筒状の突部615bが形成されている。突部615bの内側には、出力軸81の先端部から突出した被支持部810が挿入されている。これにより、被支持部810がドラムハウジング61に軸支され、出力軸81が回転可能に支持されている。
【0042】
ドラム40の中心孔42の内周面におけるドラムハウジング61の底部615側の端部には、内方に突出する内鍔部43が形成されている。内鍔部43の先端面は、突部615bの外周面に僅かな隙間を介して対向している。これにより、ドラム40が収容空間61a内に回転可能に支持されている。ドラム40の外周面は、底部615と共に収容空間61aを形成する周壁部616に対向している。
【0043】
また、ドラムハウジング61には、上下方向に延在する突条617が形成されている。突条617は、ドラムハウジング61の本体部610からドア9の内壁92側(車両インナ側)に向かって突出している。ドラムハウジング61は、突条617がガイドレール20と摺動することで、ガイドレール20に案内される。
【0044】
ガイドレール20は、例えば亜鉛鋼板等の金属板に折り曲げ加工を施すことによって形成されている。ガイドレール20は、その長手方向(上下方向)に延在する平板部200と、平板部200における幅方向の両端部からドラムハウジング61の本体部610に向かって立設された第1側板部201及び第2側板部202と、第1側板部201の先端部から平板部200とは反対側に突出した鍔部203とを一体に有している。ここで、幅方向とは、ガイドレール20の長手方向に直交する短手方向であり、車両の前後方向に相当する方向である。
【0045】
第1側板部201と第2側板部202との間には、ドラムハウジング61の突条617が配置されている。つまり、ドラムハウジング61は、突条617がガイドレール20の第1側板部201と第2側板部202との間に介在することで、ガイドレール20に対する傾きが規制されている。」

カ 図面
(ア)図1



上記図1から、窓ガラス90の昇降方向に沿って設けられるガイドレール20が看取できる。
また、図1の窓ガラスの配置を踏まえれば、図1の奥行き方向が車両の車幅方向であるといえる。

(イ)図3及び図4
図3 図4
「 「


」 」

上記図3から、3つのボルト63がギヤハウジング62上に配置されている点が看取でき、また上記図4から、3つのボルト63と3つのナット64が対応して配置されている点が看取できる。

(ウ)図5



(ウ)図6



上記図6から、ドラムハウジング61に固定され、モータ5の一部であるシャフト54を収容するギヤハウジング62が看取できる。

(エ)図8



上記図8から、ボルト63がギヤハウジング62に挿入され、ボルト63の先端部がドラムハウジング61に位置しており、ドラムハウジング61には、ギヤハウジング62と対向する面とは反対側にガイドレール20が設けられるとともに、その内側に突条617が配置されている点が看取できる。

キ 上記図8(エ)が、上記図1(ア)のD-D線断面図であることから(上記イの【0021】参照)、以下のことがいえる。
・図8の上下方向は、車両の車幅方向であること。

ク 上記カ及びキより以下のことがいえる。
ボルト63がギヤハウジング62に車両の車幅方向に挿入され、ボルト63の先端部がドラムハウジング61に位置しており、ドラムハウジング61には、ギヤハウジング61と対向する面とは反対側にガイドレール20が設けられるとともに、その内側に突条617が配置されていること。

(3)文献3
文献3には、以下の事項が記載されている。
ア「[0021](3)駆動部
図7及び図8に示すように、ドラムハウジング51は、ガイドレールとの嵌合部と円筒状のドラム収容部とを有する本体51aを有している。図7は、ケーブル導出溝とガイドレールとの位置関係を示す斜視図である。図8は、ドラム、ドラムハウジング、昇降用ワイヤ、ガイドレールを示す、図1のウインドレギュレータの部分拡大正面図である。本体51aには、ドラム55を収容する円柱状の凹所53が形成されている。凹所53から上昇側ケーブル33及び下降側ケーブル34をそれぞれ通して外部に導出するための上昇側ケーブル導出溝57及び下降側ケーブル導出溝59が本体51aに形成されている。また、本体51aの上部から左側に突出する部分の上面には、ガイドレール31の下端部を嵌合固定するための挿入穴61が形成されている。」

イ 図7




(4)文献4
文献4には、以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
本発明は、自動車のウインドガラスを昇降させるウインドレギュレータに関する。」

イ「【0037】
「ガイドレール固定部14(ガイドレール8の固定支持手段)」
図5に示すガイドレール固定部14は、モータ固定部13の上部に位置する部位となり、図10に示すようにガイドレール8の下端を挿入固定するための上下に貫通する開口部20として形成されている。開口部20の下端は前記密閉空間19(図11(a))に臨む。開口部20を構成する内壁には複数の固定リブ21が上下方向に沿って突設されており、この固定リブ21から圧接されることによりガイドレール8の下端がガイドレール固定部14に固定される。具体的には、ガイドレール8の下端は、第1枠面8Aが二箇所、第2枠面8Bが一箇所で固定リブ21から圧接されることによりフレーム9に対するP方向の位置決めがなされ、第1フランジ面8Fと第2フランジ面8Gとがそれぞれ一対の固定リブ21に挟持される態様で圧接されることによりフレーム9に対するQ方向の位置決めがなされる。」

ウ 図面
(ア)図5




(イ)図10




5 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と文献1発明とを対比する。
(ア)文献1発明の「車両」の「窓ガラスの昇降方向(上下方向)に長手方向を向けて設置されるガイドレール11」は、本件発明1の「車両の窓ガラスの昇降方向に沿って設けられるガイドレール」に相当する。

(イ)文献1発明の「スライダベース12」は、「窓ガラスを支持」していることから、窓ガラスと共に移動することは明らかであり、「ガイドレール11のフランジ11b」に「摺動可能に嵌合」していることから、「ガイドレール11」と摺動していることは明らかである。
そうすると、文献1発明の「窓ガラスを支持しており、ガイドレール11のフランジ11bに対して、該ガイドレール11の長手方向に摺動可能に嵌合」する「スライダベース12」は、本件発明1の「前記ガイドレールと摺動して前記窓ガラスと共に移動するキャリアプレート」に相当する。

(ウ)文献1発明の「第1ワイヤ17及び第2ワイヤ18」は、「スライダベース12」に対して「牽引力を与える」ものであるから、「スライダベース12」を牽引するものといえる。
そうすると、文献1発明の「スライダベース12」を牽引する「第1ワイヤ17及び第2ワイヤ18」は、本件発明1の「前記キャリアプレートを牽引するケーブル」に相当する。

(エ)文献1発明の「モータ22の駆動力で駆動軸16aを回転させることによって」「正逆に回転させる」「ドラム15」は、本件発明1の「モータによって回転駆動するドラム」に相当する。

(オ)文献1発明は、「ドラムハウジング14内に回転可能に支持されたドラム15」を有していることから、前記「ドラムハウジング14」は、その内部に「ドラム15」を収容しているといえる。
そうすると、文献1発明の「ドラム15」を収容している「ドラムハウジング14」は、本件発明1の「前記ドラムを収容するドラムハウジング」に相当する。

また、文献1発明の「固定ビス23を用いてドラムハウジング14に固定され」、「当該駆動部16がモータ22の一部を収容し」「ケース状となって」いる「駆動部16」は、本件発明1の「前記ドラムハウジングに固定されて前記モータの一部を収容するモータハウジング」に相当する。

さらに、文献1発明の「ドラムハウジング14」及び「ケース状となって」いる「駆動部16」からなるものは、それぞれハウジングとなっているといえることは明らかであるから、本件発明1の「ドラムハウジング」及び「モータハウジングからなるハウジング」に相当する。

(カ)文献1発明の「上方を向く当付面30aから上方へ向けて突出する角突起(対向部)30bと押さえ突起(対向部)30cとを有し、角突起30bと押さえ突起30cの間に差し込み溝30dが形成されて」いる「嵌合部30」と、本件発明1の「嵌合穴が形成された嵌合部」とは、「嵌合部」である点で共通する。

また、文献1発明は「固定ビス23」を用いて「ドラムハウジング14」と「駆動部16」とが固定されることから、「ドラムハウジング14」と「駆動部16」とが締結されること、及び、「ドラムハウジング14」に「締結孔」があることは明らかである。
そうすると、文献1発明の「締結孔」を有する「ドラムハウジング14」と、本件発明1の「第1締結部材を有する締結孔」を有する「ドラムハウジング」とは、「締結孔」を有する「ドラムハウジング」である点で共通する。

(キ)文献1発明は、「固定ビス23」が「駆動部16」に挿通されていることから、「駆動部16」が「挿通孔」を有していることは明らかである。
そうすると、文献1発明の「固定ビス23」を「挿通」した「挿通孔」を有する「駆動部16」と、本件発明1の「前記第1の締結部材に固定された第2の締結部材を挿通した挿通孔を有」する「前記モータハウジング」とは、「第2の締結部材を挿通した挿通孔を有」する「前記モータハウジング」の点で共通する。

(ク)文献1発明の「駆動部16」と「ドラムハウジング14」とが「固定ビス23」の固定によって締結されていることと、本件発明1の「前記モータハウジングと前記ドラムハウジングとは、前記第1の締結部材及び第2の締結部材の固定によって締結されて」いることとは、「前記モータハウジングと前記ドラムハウジングとは、第2の締結部材の固定によって締結されて」いる点で共通する。

よって、本件発明1と文献1発明とは、
「車両の窓ガラスの昇降方向に沿って設けられるガイドレールと、
前記ガイドレールと摺動して前記窓ガラスと共に移動するキャリアプレートと、
前記キャリアプレートを牽引するケーブルと、
モータによって回転駆動するドラムと、
前記ドラムを収容するドラムハウジング、及び前記ドラムハウジングに固定されて前記モータの一部を収容するモータハウジングからなるハウジングと、を備え、
前記ドラムハウジングは、前記ガイドレールの下端が嵌合する嵌合部と、前記モータハウジングを締結する締結孔と、を有し、
前記モータハウジングは、第2の締結部材を挿通した挿通孔を有し、
前記モータハウジングと前記ドラムハウジングとは、第2の締結部材の固定によって締結されている、
ウインドレギュレータ。」
で一致するものの、以下の点で相違している。

相違点1
「嵌合部」について、本件発明1では、「嵌合穴が形成された」ものであるのに対し、文献1発明では、「上方を向く当付面30aから上方へ向けて突出する角突起(対向部)30bと押さえ突起(対向部)30cとを有し、角突起30bと押さえ突起30cの間に差し込み溝30dが形成され」たものである点。

相違点2
本件発明1は、「第2の締結部材」が「第1の締結部材に固定され」、また、「前記モータハウジングと前記ドラムハウジングとは、前記第1の締結部材及び第2の締結部材の固定によって締結され」るものであって、「締結孔」が、前記「第1の締結部材」を有しているのに対し、文献1発明では、そのような特定がなされていない点。

相違点3
本件発明1は、「前記ドラムハウジングには、前記車両の車幅方向において前記締結孔と対向する位置に、前記モータハウジングと対向する面とは反対側に開口した開口部が形成」されているのに対し、文献1発明では、そのような特定がなされていない点。

相違点4
「ドラムハウジングの締結孔」について、本件発明1では、「前記車両の前後方向において、前記ガイドレールと重なる位置に設けられている」のに対し、文献1発明では、「ドラムハウジングの締結孔」の位置が明らかでなく、「ガイドレール11の下端面が、ドラムハウジング14に形成された3つの突出部のうちの前記嵌合部30に最も近い突出部の中央に形成されている円形部分の上端よりも上方に位置している」点。

イ 判断
事案に鑑み、まず、上記アの相違点3について検討する。
a 文献2には、ボルト63がギヤハウジング62に車両の車幅方向に挿入され、ボルト63の先端部がドラムハウジング61に位置しており、ドラムハウジング61には、ギヤハウジング61と対向する面とは反対側にガイドレール20が設けられるとともに、その内側に突条617が配置されている点が記載されている。
しかしながら、文献2には、相違点3に係る本件発明1の構成である「前記ドラムハウジングには、前記車両の車幅方向において前記締結孔と対向する位置に、前記モータハウジングと対向する面とは反対側に開口した開口部が形成」されている点は記載も示唆もされていない。
また、文献3及び文献4をみても相違点3に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。
よって、文献1発明において、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

さらに以下のとおり、検討を加える。
文献2の図8の番号617が指示するハッチングのない部分については、上記のとおり「開口部」と認定できないが、仮に、「ドラムハウジング61」に形成された「開口部」であるとしても、文献1発明は、「ドラムハウジング14」の「締結孔」においてナットなどの「第1の締結部材」を有しないから、文献1発明に「第1の締結部材」を挿入するための「開口部」を形成する動機付けは存在しない。
また、文献2に記載のハッチングのない部分が、仮に「開口部」の構成であるとしても、当該構成を、文献1発明の「ドラムハウジング14の3つの突出部のうち、嵌合部30に最も近い突出部の駆動部16と対向する面とは反対側の面」に適用すると、「ドラムハウジング14」の「嵌合部30に最も近い突出部」の「略半分」については、当該「略半分」が「面」する「嵌合部30」に、上記「開口部」を形成することになり、その結果、「規制部材31」がなくなって、ガイドレール11の下方への移動規制の機能が失われることになるから、阻害要因があるといえ、一方、「嵌合部30に最も近い突出部」の「残りの略半分」については、「ドラムハウジング14外に露出」している状態のものであるから、そもそも「開口部」を形成することができない。
よって、文献1発明において、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、甲2発明の図8には、図4に示されるナット64が明確に示されていないものの、図4、図8に示された内容を考慮すると、図8のボルト63の先端部と斜線でハッチングがなされたドラムハウジング61の本体部610との間にナットがあるべきことは明らかである。そしてこのナット64は、ボルト63の挿通した挿通孔とガイドレール20との間にある開口部(ハッチングのない部分)を介して挿入されることも構造上明らかである。そのため、甲2発明における開口部も、本件発明1の「前記ドラムハウジングには、前記車両の車幅方向において前記締結孔と対向する位置に、前記モータハウジングと対向する面とは反対側に開口した開口部が形成されており、」(要件I)における「開口部」と同じ役割を有する。よって、甲2発明の「ドラムハウジング61には、車幅方向において、ボルト63を挿通した挿通孔と対向する位置に、ギヤハウジング62と対向する面とは反対側に開口した開口部が設けられている」(要件I’)は、本件発明1の要件Iと一致する、旨主張する。(申立書第28頁第7行ないし第29頁第2行)

しかしながら、文献2の図8には、「ボルト63」は記載されているものの、「ナット64」は記載されていない。また、ボルト63の先端部に隣接するハッチングのない部分は「突条617」であって「開口部」ではない。申立人は、「突条」として指示されている「617」の部位を、ハッチングがされていないという理由で、「開口部」と主張するが、失当である。図8の例えば「810」が指示する部位はハッチングがされていないが、「被支持部」という部位である。ハッチングがされていないことが、「開口部」を認定する理由にはならない。
したがって、甲2発明が要件I’を有しているといえないので、上記主張を採用することはできない。

(イ)申立人は、文献1発明の駆動部16が、固定ビスの代わりに文献2に記載のボルト63を採用し、ボルトを挿通した挿通孔を有する構成を採用することについては阻害要因はなく、また、文献1発明の駆動部16とドラムハウジング14とは、固定ビス23の代わりに甲2発明のナット64及びボルト63を採用し、ナット及びボルトの固定によって締結される構成を採用することについても阻害要因はなく、また、文献1発明のドラムハウジング14では、車両の車幅方向において、駆動部16を締結するナット64が締結孔に挿入されるが、文献2に記載された事項のように、その締結孔と対向する位置に、ギヤハウジング62と対向する面とは反対側に開口した開口部を形成するという構成を採用することについて阻害要因はなく、さらに、奏する作用効果も予測不能なものではない。
したがって、文献1発明のウインドレギュレータに、文献2に記載された事項を適用し、本件発明1を得ることは当業者にとって容易である、旨主張する。(申立書第29頁第6ないし末行)

しかしながら、文献1発明の「ドラムハウジング14」では、「駆動部16」を締結するナットなどの「締結部材」を「締結孔」に有しておらず、また、文献2には「ドラムハウジング61」において「ギヤハウジング62と対向する面とは反対側に開口した開口部を形成するという構成」が記載されていないことは、上記イで述べたとおりである。したがって、上記構成に基づく主張は失当である。
なお、文献2に、仮に「ギヤハウジング62と対向する面とは反対側に開口した開口部を形成するという構成」が記載されているとしても、相違点3に係る本件発明1の構成とすることができないことは、上記イで述べたとおりである。
よって、申立人の主張を採用することはできない。

エ 小括
したがって、本件発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、文献1発明及び文献2ないし文献4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の構成を全て含み更に限定したものであるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、文献1発明及び文献2ないし文献4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-04-09 
出願番号 特願2018-29820(P2018-29820)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E05F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 砂川 充  
特許庁審判長 長井 真一
特許庁審判官 西田 秀彦
住田 秀弘
登録日 2020-06-11 
登録番号 特許第6715873号(P6715873)
権利者 株式会社城南製作所
発明の名称 ウインドレギュレータ  
代理人 特許業務法人平田国際特許事務所  
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