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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1373810
異議申立番号 異議2021-700012  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-06-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-01-06 
確定日 2021-05-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第6719656号発明「染毛料組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6719656号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 [第1]手続の経緯
特許第6719656号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成30年3月15日(優先権主張 2017年3月29日)を国際出願日とする出願であって、令和2年6月18日にその特許権の設定登録がされ、同年7月8日に特許掲載公報が発行され、令和3年1月6日にその特許に対し、特許異議申立人:臼井智晃(以下、単に「申立人」ということがある)により特許異議の申立てがされたものである。

[第2]本件特許発明
特許第6719656号の請求項1?4の特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
下記成分A、下記成分B、下記成分C、及び下記成分Dを含有し、
前記成分Aの含有量が0.5?3.0質量%であり、
前記成分Bの含有量が0.05?1.0質量%であり、
前記成分Cの含有量が0.01?0.5質量%であり、
前記成分Dの含有量が0.1?1.5質量%であり、
前記成分A及び前記成分Bの合計量と、前記成分C及び前記成分Dの合計量の質量比[{(成分Aの含有量)+(成分Bの含有量)}/{(成分Cの含有量)+(成分Dの含有量)}]が0.1?5.0である、染毛料組成物。
成分A:HC青16
成分B:塩基性茶16及び塩基性茶17からなる群より選ばれる1以上の染料
成分C:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料
成分D:HC青2
【請求項2】
前記成分C100質量%中の、前記HC黄2の含有量が50.0質量%以上である請求項1に記載の染毛料組成物。
【請求項3】
カラーリンス又はカラートリートメントである請求項1又は2に記載の染毛料組成物。
【請求項4】
さらに、下記成分Eを含有する請求項3に記載の染毛料組成物。
成分E:カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、及びシリコーン油からなる群より選ばれる1以上の成分 」

※当審注:
・以下、上記請求項1?請求項4に係る発明を順に「特許発明1」?「特許発明4」ということがあり、また、これらをまとめて単に「特許発明」ということがある)
・以下、上記請求項1の「[{(成分Aの含有量)+(成分Bの含有量)}/{(成分Cの含有量)+(成分Dの含有量)}]」を、単に「(成分A+成分B)/(成分C+成分D)」、「(A+B)/(C+D)」等と略記することがある。


[第3]特許異議申立ての理由

申立人は、特許異議申立書(以下、単に「異議申立書」ということがある)において、以下の甲号証を提出しつつ、本件発明は次の1?3(以下、「申立理由1」?「申立理由3」等ということがある)により取り消されるべきものと主張している。

1 申立理由1:特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
特許発明1?4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1?3、5、6号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それら特許発明1?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明についてなされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

2 申立理由2:特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
特許発明1?4は、甲第4号証に記載された発明及び甲第1?6号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それら特許発明1?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明についてなされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

3 申立理由3:特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)
特許発明1?4は、概要次の(1)、(2)の点において、特許明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるから、それら特許発明1?4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない請求項の発明についてなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(1) 特許明細書の段落【0006】には、【発明が解決しようとする課題】として、「本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、毛髪に対する十分な染色性を有するにもかかわらず、皮膚への染着性は抑えられた染毛料組成物を提供することである。」と記載されているところ、特許明細書の比較例1-6?1-10には、「塩基性青75」を0.05質量%含有すると、「皮膚汚れ」の評価が「×」になることが記載されている。ここで、直接染料の含有量が多くなると、さらに地肌汚れが生じやすいことは本件特許優先日前周知技術であることから、比較例1-6?1-10の処方に「HC青16」を添加しても「塩基性青75」による皮膚汚れを改善することは常識的にあり得ない。
即ち、特許明細書には、「塩基性青75」を0.05質量%以上含有した場合には、皮膚への染着性は抑えられた染毛料組成物を提供するこができないことが開示されているといえるから、本件特許発明1?4は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求している。

(2) 本件特許請求の範囲の請求項1には、「前記成分A及び前記成分Bの合計量と、前記成分C及び前記成分Dの合計量の質量比[{(成分Aの含有量)+(成分Bの含有量)}/{(成分Cの含有量)+(成分Dの含有量)}]が0.1?5.0」と記載されているところ、特許明細書の【0096】?【0098】では、実施例1-1、実施例2-1、実施例1-7及び実施例2-11について「ダメージ毛に対する色ムラ」が評価されており、実施例1-1(A+B/C+Dの比「1.27」)及び実施例2-1(A+B/C+Dの比「0.41」)では「○」、実施例1-7(A+B/C+Dの比「33.3」)及び実施例2-11(A+B/C+Dの比「9.09」)では「×」という結果が記載されている。そして、直接染料の含有量におけるHC染料の割合を大きくすれば、ダメージ毛に対する色ムラが少なくなることは予測されるものの、HC染料の割合をどの程度まで小さくしても(A+B/C+Dを大きくしても)色ムラが「良好」であるかどうかは、実験をしてみなければ判然としない。
してみると、「前記成分A及び前記成分Bの合計量と、前記成分C及び前記成分Dの合計量の質量比」の上限値である「5.0」において、ダメージ毛に対する色ムラを改善するとは認められないから、特許発明1?4は、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。

[甲号証]
・甲第1号証:特開2014-101292号公報
・甲第2号証:特表2016-501207号公報
・甲第3号証:特開2016-216431号公報
・甲第4号証:特開2014-101291号公報
・甲第5号証:特開2013-144645号公報
・甲第6号証:特開2016-41672号公報

※当審注:
・以下、「甲第1号証」?「甲第6号証」を、順に「甲1」?「甲6」と略記することがある。


[第4]当審の判断

1.甲号証の記載事項
※当審注:下線は当審による。

(1)甲1
・甲1a)特許請求の範囲
「 【請求項1】
下記(A)?(D)の染料を含有し、pHが4?6の範囲内であることを特徴とする染毛料組成物。
(A)塩基性青75(Basic Blue 75)
(B)塩基性茶16(Basic Brown 16)及び塩基性茶17(Basic Brown 17)から選ばれる1種以上
(C)HC青2(HC Blue No.2)
(D)HC黄4(HC Yellow No.4)
【請求項2】
前記染毛料組成物における各染料の含有量が(A)≦0.5質量%、(B)≦0.5質量%、(C)≦1.0質量%、(D)≦0.5質量%であり、かつ、塩基性染料(A)、(B)の合計含有量T BasicとHC染料(C)、(D)の合計含有量T HCとの質量比T Basic/T HCが1.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の染毛料組成物。 」

・甲1b)【0001】?【0008】
「 【技術分野】
【0001】
本発明は染毛料組成物に関する。更に詳しくは本発明は、カラートリートメントにおける直接染料として特定の塩基性染料及びHC染料を組合わせて用いることにより、オーバータイム時の変色や、染毛料の継続使用あるいは染毛料と酸化染毛剤との継続使用における変色を有効に抑制できる染毛料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
染毛用の組成物は、通常、酸化染料を用いる酸化染毛剤等の永久染毛剤、直接染料を用いる半永久染毛料、毛髪を一時的に着色する一時染毛料に大別される。これらの内、半永久染毛料は永久染毛剤と比較して染毛力、染着力が劣るものの、酸化染毛剤のように酸化剤等を用いないので、毛髪に与えるダメージが少ない。半永久染毛料の一種として染毛効果とヘアコンディショニング効果を同時に示すカラートリートメントがある。
【0003】
ヘアトリートメント等の毛髪化粧料における優れたコンディショニング用成分としてカチオン性界面活性剤が汎用される一方、半永久染毛料に用いる直接染料としては、従来、主にアニオン性染料である酸性染料が用いられてきた。しかし、カラートリートメントにおいて、カチオン性界面活性剤とアニオン性の酸性染料を併用すると両者がコンプレックスを形成してしまう。そこで、カチオン性や非イオン性等の直接染料が好ましく用いられる。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
・・・直接染料は酸化染料に比較して染毛力や染着力が劣る。これに対して、染着力が比較的優れた塩基性染料の配合量を多くして染毛力を高めようとすると、塩基性染料の皮膚への染着(地肌汚れ)が懸念される。
【0007】
次に、直接染料はシャンプー堅牢性等が不十分である(色落ちし易い)ため、特に多種の色彩の染料を併用する黒色系の染毛料では色落ちにより変色し易い。従って、染毛料の継続使用(繰返しの使用)の際や、染毛料の使用後数日から数週間経過した後に酸化染毛剤で染毛するという継続使用の際に、染毛色調が変化し易い。更に酸性染料以外の直接染料は染料自体が変色や褪色を起こし易く(・・・)、オーバータイム時の変色も多い。「オーバータイム」とは、染毛料の処理時間が正規に規定された時間を超過してしまうことを言う。
【0008】
そこで本発明は、酸性染料以外の直接染料を用いたカラートリートメントにおける地肌汚れを抑制すると共に、カラートリートメントの継続使用における変色を抑制し、かつオーバータイム時の変色も抑制し、カラートリートメント使用後に酸化染毛剤で染毛するという継続使用の際に染毛色調の変色を抑制することを、解決すべき課題とする。 」

・甲1c)【0009】?【0018】
「 【課題を解決するための手段】
【0009】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための第1発明の構成は、下記(A)?(D)の染料を含有し、pHが4?6の範囲内である、染毛料組成物である。
【0010】
(A)塩基性青75(Basic Blue 75)
(B)塩基性茶16(Basic Brown 16)及び塩基性茶17(Basic Brown 17)から選ばれる1種以上
(C)HC青2(HC Blue No.2)
(D)HC黄4(HC Yellow No.4)
【0011】
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための第2発明の構成は、前記第1発明に係る染毛料組成物における各染料の含有量が(A)≦0.5質量%、(B)≦0.5質量%、(C)≦1.0質量%、(D)≦0.5質量%であり、かつ、塩基性染料(A)、(B)の合計含有量T BasicとHC染料(C)、(D)の合計含有量T HCとの質量比T Basic/T HCが1.5以下である、染毛料組成物である。
【発明の効果】
【0012】
(第1発明の効果)
第1発明の染毛料組成物のように、直接染料として塩基性染料とHC染料を併用すると、コンディショニング用成分としてカチオン性界面活性剤を含有する場合でも、直接染料と界面活性剤がコンプレックスを形成すると言う不具合を起こさない。
【0013】
塩基性染料はカチオン性であるため、相対的に染着性と水溶性に優れるという特性を持つ。HC染料は非イオン性であり水溶性は低いが、毛髪のキューティクルの内部まで入って蓄積しやすく、特に繰り返しの使用において染毛力を向上させると言う特性を持つ。そして、相対的に染着性やシャンプー堅牢性に優れた塩基性染料に対して更にHC染料を併用すると、強い染着力と十分なシャンプー堅牢性が得られることが分かった。又、塩基性染料に対してHC染料を組合わせると、カラーバリエーションが拡張されるだけでなく、結果的に塩基性染料の過剰配合が回避され、塩基性染料の過剰配合に起因する地肌汚れを抑制できる。
【0014】
更に、特に黒色系や茶色系に必須の重要な配合色である青色系の塩基性染料として、通常は塩基性青99(Basic Blue 99)が標準的に使用されるが、塩基性青99は染毛料や酸化染毛剤の継続使用における変色、及びオーバータイム時の変色等の傾向が大きいことが判明した。第1発明の染毛料組成物では、青色系の塩基性染料として塩基性青99に代えて塩基性青75を含有する。塩基性青75は、塩基性染料としては、色落ちし難いだけでなく、変色も起こし難い。
【0015】
なお、塩基性染料としての塩基性茶16及び塩基性茶17は染料自体の安定性が良いと言う利点があり、HC染料としてのHC青2も染料自体の安定性が良いと言う利点があり、更にHC黄4も染料自体の安定性が良いと言う利点がある。
【0016】
第1発明の染毛料組成物は、塩基性染料として基本的配合色である青色系の塩基性青75と、茶色系の塩基性茶16及び/又は塩基性茶17を用いと共に、HC染料として基本的配合色である青色系のHC青2と、黄色系のHC黄4を用いるため、これらの各染料の配合量の調節により、染毛色をある程度まで任意に調節できる。
【0017】
染毛料組成物は、変色の抑制のため、pHが4?6の範囲内に調整されていることが必要である。
【0018】
(第2発明の効果)
第2発明の染毛料組成物においては、「塩基性青75の配合量を0.5質量%以下」、「塩基性茶16/塩基性茶17の配合量を0.5質量%以下」、「HC青2の配合量を1.0質量%以下」、「HC黄4の配合量が0.5質量%以下」としたもとで、これら塩基性染料の合計含有量とHC染料の合計含有量との質量比T Basic/T HCを1.5以下とするため、(1)これらの塩基性染料やHC染料の皮膚への染着(地肌汚れ)が更に良好に抑制されるだけでなく、(2)塩基性染料とHC染料との染毛効果が良好にバランスされる結果として、カラートリートメントを継続使用した場合やオーバータイム時の染毛色調が一層安定化し、変色し難くなる。 」

・甲1d)【0020】?【0035】
「 【0020】
〔染毛料組成物〕
本発明の染毛料組成物は、塩基性染料とHC染料を含有し、半永久染毛料としての染毛効果を示す染毛料である。・・・
・・・
【0023】
〔染毛料組成物の必須成分〕
本発明の染毛料組成物は、必須成分として、(A)塩基性青75(Basic Blue 75)、(B)塩基性茶16(Basic Brown 16)及び塩基性茶17(Basic Brown 17)から選ばれる1種以上、(C)HC青2(HC Blue No.2)及び(D)HC黄4(HC Yellow No.4)を含有する。
・・・
【0024】
(塩基性青75)
(A)成分である塩基性青75・・・
【0025】
・・・
染毛料組成物における(A)成分の含有量は限定されないが、「第2発明の効果」の項で述べた理由から、好ましくは0.5質量%以下である。又、含有量の下限値を0.01質量%とすることが好ましい。
【0026】
(塩基性茶16、塩基性茶17)
(B)成分である塩基性茶16・・・
【0027】
・・・
(B)成分である塩基性茶17・・・
【0028】
・・・
染毛料組成物における(B)成分の含有量は限定されないが、「第2発明の効果」の項で述べた理由から、好ましくは0.5質量%以下である。又、含有量の下限値を0.01質量%とすることが好ましい。
【0029】
(HC青2)
(C)成分であるHC青2・・・
・・・
【0030】
・・・
染毛料組成物における(C)成分の含有量は限定されないが、「第2発明の効果」の項で述べた理由から、好ましくは1.0質量%以下である。又、含有量の下限値を0.01質量%とすることが好ましい。
【0031】
(HC黄4)
(D)成分であるHC黄4・・・
・・・
【0032】
・・・
染毛料組成物における(D)成分の含有量は限定されないが、「第2発明の効果」の項で述べた理由から、好ましくは0.5質量%以下である。又、含有量の下限値を0.01質量%とすることが好ましい。
【0033】
(塩基性染料(A)、(B)の合計含有量、HC染料(C)、(D)の合計含有量)
塩基性染料(A)、(B)の合計含有量T Basicと、HC染料(C)、(D)の合計含有量T HCとの質量比T Basic/THCは限定されないが、「第2発明の効果」の項で述べた理由から、好ましくは1.5以下である
塩基性染料(A)、(B)の合計含有量T Basicは限定されないが、上記した(A)成分の好ましい含有量と(B)成分の好ましい含有量との合計値である1.0質量%以下が好ましい。
【0034】
HC染料(C)、(D)の合計含有量T HCは限定されないが、上記した(C)成分の好ましい含有量と(D)成分の好ましい含有量との合計値である1.5質量%以下が好ましい。
【0035】
(水)
なお、染毛料組成物は、その製剤上、実際には水を必要とする。 」

・甲1e)【0036】?【0076】
「 【0036】
〔染毛料組成物におけるその他の有用成分〕
本発明の染毛料組成物は、上記した必須成分の他に、好ましくは、以下の成分を含有する。以下において、染毛料組成物中における配合量を特に記載しないものについては、必要に応じて適宜に配合量が決定される。
【0037】
(カチオン性界面活性剤)
本発明の染毛料組成物は、コンディショニング成分としてカチオン性界面活性剤の1種以上を含有することが好ましい。
・・・
【0043】
(カチオン性ポリマー)
染毛料組成物は、カチオン性界面活性剤以外のコンディショニング成分としてカチオン性ポリマーを好ましく含有することができる。
・・・
【0050】
(その他の染料)
染毛料組成物は、上記した(A)?(D)成分以外の塩基性染料、HC染料その他の各種の直接染料を含有することができる。但し、アニオン性の直接染料は好ましくなく、含有するとしても本発明の効果を妨げない程度の配合量に制限して含有することが好ましい。
【0051】
(A)、(B)成分以外の塩基性染料としては、Basic Blue3、Basic Blue 6、Basic Blue 7、Basic Blue 9、Basic Blue 26、Basic Blue 41、Basic Blue 47、Basic Brown 4、Basic Green 1、Basic Green 4、Basic Orange 1、Basic Orange 2、Basic Orange 31、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 22、Basic Red 46、Basic Red 51、Basic Red 76、Basic Red 118、Basic Violet 1、Basic Violet 3、Basic Violet 4、Basic Violet 10、Basic Violet11:1、Basic Violet 14、Basic Violet 16、Basic Yellow 11、Basic Yellow 28、Basic Yellow 57、Basic Yellow 87等を選択して用いることができる。
【0052】
なお、変色を起こし易いBasic Blue 99等の塩基性染料は、余り含有しないことが好ましく、含有するとしても染毛料組成物中の1質量%以下に制限することが好ましい。
【0053】
(C)、(D)成分以外のHC染料としては、HC Blue No.5、HC Blue No.6、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.13、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Orange No.3、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.7、HC Red No.10、HC Red No.11、HC Red No.13、HC Red No.14、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.2、HC Yellow No.5、HC Yellow No.6、HC Yellow No.9、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12、HC Yellow No.13、HC Yellow No.14、HC Yellow No.15、2-アミノ-6-クロロ-4ニトロフェノ-ル、2-アミノ-3-ニトロフェノ-ル、4-アミノ-3-ニトロフェノ-ル、ヒドロキシアントラキノンアミノプロピルメチルモルホニウムメトサルフェ-ト、3-メチルアミノ-4-ニトロフェノキシエタノ-ル、2-ニトロ-5-グリセリルメチルアニリン等を例示できる。
【0054】
なお、HC染料中でも変色を起こし易い4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノ-ル、3-ニトロ-p-ヒドロキシエチルアミノフェノ-ル等は余り含有しないことが好ましく、含有するとしても染毛料組成物中の0.5質量%以下に制限することが好ましい。
【0055】
上記以外の染料として、天然染料、HC染料以外のニトロ染料、分散染料等が挙げられる。
【0056】
天然染料としては、クチナシ色素、ウコン色素、アナトー色素、銅クロロフィリンナトリウム、パプリカ色素、ラック色素等を例示できる。
【0057】
ニトロ染料としては、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-4-ニトロフェノール、2-アミノ-5-ニトロフェノール、ピクラミン酸、ピクリン酸、及びそれらの塩を例示できる。
【0058】
分散染料としては、Disperse Black 9、Disperse Blue 1、Disperse Blue 3、Disperse Blue 7、Disperse Brown 4、Disperse Orange 3、Disperse Red 11、Disperse Red 15、Disperse Red 17、Disperse Violet 1、Disperse Violet 4、Disperse Violet 15等を例示できる。
【0059】
(カチオン性界面活性剤以外の界面活性剤)
カチオン性界面活性剤以外の界面活性剤を、カチオン性界面活性剤と組み合わせて配合しても良い。但し、アニオン性界面活性剤は好ましくなく、含有するとしても本発明の効果を妨げない程度の配合量に制限して含有することが好ましい。従って両性イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤が好ましい。
・・・
【0065】
(油性成分)
油性成分として、油脂、ロウ、炭化水素、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン、高級アルコール等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を使用することができる。これらの油性成分の内、25℃、1気圧下で液状のエステルや、高級アルコールは特に好ましい。
・・・
【0073】
(水溶性ポリマー)
前記したカチオン性ポリマー以外の各種の水溶性ポリマーを配合することができる。但し、アニオン性ポリマーは好ましくなく、含有するとしても本発明の効果を妨げない程度の配合量に制限して含有することが好ましい。これらの水溶性ポリマーとして、両性ポリマー、各種の天然系ポリマーが好ましい。
・・・
【0076】
〔染毛料組成物におけるその他の任意的配合成分〕
本発明の染毛料組成物は、以上の各成分の他にも、例えば、溶剤、増粘剤、酸性アミノ酸を除くアミノ酸類、ソルビトール、マルトース等の糖類、パラベン、安息香酸ナトリウム等の防腐成分、EDTA-2Na、ジエチレントリアミン5酢酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸等のキレート成分、フェナセチン、8-ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、フェノキシエタノール、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等の安定成分、pH調整成分、亜硫酸Na等の酸化防止剤、植物又は生薬抽出物、アスコルビン酸類を含むビタミン類、香料、等から選ばれる1種以上を配合しても良い。また、例えば、「医薬部外品原料規格2006」(薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種を配合してもよい。 」

・甲1f)【0077】?【0092】
「 【実施例】
【0077】
次に本発明の実施例及び比較例を説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例及び比較例によって限定されない。
【0078】
〔染毛料組成物の調製〕
後述の表1、表2に示す実施例1?16及び表3に示す比較例1?12に係る組成の1剤式の染毛料組成物を、それぞれ常法に従いクリーム状の乳化剤として調製した。
【0079】
表1?表3において、各成分の含有量を示す数値は質量%単位の表記である。・・・、染毛料組成物におけるそれぞれ(A)成分?(D)成分の各成分に該当する染料については、表1?表3の成分名の欄の左側欄外にそれぞれ、「A」?「D」と付記した。
【0080】
・・・、「原液pH」の欄には各実施例、各比較例に係る染毛料組成物のpHを表示し、「[(A)+(B)]/[(C)+(D)]」の欄には各実施例、各比較例に係る染毛料組成物における塩基性染料(A)、(B)の合計含有量とHC染料(C)、(D)の合計含有量との質量比(即ち、前記の質量比T Basic/T HC)を表示した。
【0081】
〔染毛料組成物の評価〕
・・・
【0082】
(染毛力)
各実施例、各比較例に係る染毛料組成物1gをそれぞれ、白髪混じりの人毛毛束に塗布し、10分間放置後に水洗することにより、人毛毛束に対する染毛処理を完了した。
【0083】
上記染毛処理の完了後に10名のパネラーが人毛毛束の染色の程度を目視にて観察し、染毛力が、非常に優れる(5点)、優れる(4点)、やや優れる(3点)、やや悪い(2点)、悪い(1点)、の5段階で評価した。各パネラーの採点結果の平均値を少数点第1位で四捨五入して、各例の評価点を算出した。その評価結果を各表の「染毛力」の欄に示す。
【0084】
なお、付記すれば、染毛力の評価点の高い染毛料組成物ほど、低温での保存時における染料の析出が少なく、染毛料組成物における「染毛力」と「染料析出の無さ」との間には直線的な相関性が認められた。
【0085】
(染毛料の連用や酸化染毛剤使用による変色抑制)
上記の「染毛力」の項に述べた染毛処理を行った各実施例、各比較例に係る人毛毛束(各例ごとに2本ずつ)について、その染毛色調を確認しておいた。
【0086】
そして、各例ごとに2本ずつの染毛処理済みの人毛毛束の内の1本の毛束に対しては、同一の染毛処理を更に4回繰り返して行い、人毛毛束に対する染毛料の連用を行った。又、染毛処理済みの他の1本の毛束に対しては、更に、一般的な酸化染毛剤(茶色系)であるホーユー株式会社の「シエロヘアカラーEXミルキー(商標)」を用いて、酸化染毛処理を行い、染毛料と酸化染毛剤の継続使用を行った。
【0087】
そして各実施例、各比較例ごとに、上記の染毛料の連用後の1本の毛束の染毛色調と、上記の酸化染毛剤の継続使用後の他1本の毛束の染毛色調について、最初の染毛処理後に確認した染毛色調との対比により、変色の抑制が良好であるか否かを目視にて観察し、これらの2本の毛束の観察結果を総合して、変色抑制効果を評価した。
【0088】
この評価は10名のパネラーが行い、変色抑制効果が、非常に優れる(4点)、優れる(3点)、やや劣る(2点)、劣る(1点)、の4段階で評価した。各パネラーの採点結果の平均値を算出し、平均値が3.6点以上であれば「◎」、平均値が2.6点以上で3.5点以下であれば「○」、平均値が1.6点以上で2.5点以下であれば「△」、平均値が1.5点以下であれば「×」と評価した。評価結果を各表の「染毛料の連用や酸化染毛剤使用による変色抑制」の欄に示す。
【0089】
(オーバータイム時の変色抑制)
各実施例、各比較例に係る染毛料組成物1gをそれぞれ、白髪混じりの人毛毛束に塗布し、30分間放置後に水洗することにより、人毛毛束に対するオーバータイムの染毛処理を完了した。そして、各実施例、各比較例ごとに、毛束の染毛色調について、上記の「染毛力」の評価において染毛処理を行った人毛毛束との対比により、変色の抑制が良好であるか否かを目視にて観察し、これらの毛束との対比観察の結果を総合して、変色抑制効果を評価した。
【0090】
この評価は10名のパネラーが行い、変色抑制効果が、非常に優れる(4点)、優れる(3点)、やや劣る(2点)、劣る(1点)、の4段階で評価した。各パネラーの採点結果の平均値を算出し、平均値が3.6点以上であれば「◎」、平均値が2.6点以上で3.5点以下であれば「○」、平均値が1.6点以上で2.5点以下であれば「△」、平均値が1.5点以下であれば「×」と評価した。評価結果を各表の「オーバータイム時の変色抑制」の欄に示す。
【0091】
(地肌汚れ)
各実施例、各比較例に係る染毛料組成物1gをそれぞれ、腕の内側部における直径1cmの円形のエリアに塗布し、10分間放置した後、温水で洗い流した。次に、石鹸を使用して指で1分間軽く擦り、温水で洗い流した。
【0092】
以上の処理の後、10名のパネラーが地肌汚れ(皮膚への染着の度合い)を目視にて観察し、地肌汚れが、非常に少ない(4点)、少ない(3点)、やや多い(2点)、多い(1点)、の4段階で評価した。各パネラーの採点結果の平均値を算出し、平均値が3.6点以上であれば「◎」、平均値が2.6点以上で3.5点以下であれば「○」、平均値が1.6点以上で2.5点以下であれば「△」、平均値が1.5点以下であれば「×」と評価した。評価結果を各表の「地肌汚れ」の欄に示す。 」

・甲1g)【0093】?【0095】
「 【0093】
【表1】


【0094】
【表2】


【0095】
【表3】



・甲1h)【0096】
「 〔その他の実施例〕
上記の表1?表3に示した実施例とは別の、本発明の染毛料組成物(1剤式)の実施例を以下に示す。精製水についての「質量%」の項の「残量」の意味、及び乳酸についての「pH5に調整」の意味は表1?表3に示した実施例の場合と同様である。
【0096】
(実施例17)
質量%
Basic Blue 75 0.1
Basic Brown 16 0.3
HC Blue No.2 0.5
HC Yellow No.4 0.1
ミリスチン酸オクチルドデシル 1.5
ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド 3
ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム 0.2
セタノール 5
ミツロウ 0.5
流動パラフィン 3
グリセリン 2
乳酸 pH5に調整
フェノキシエタノール 0.3
ジメチルポリシロキサン 0.5
海泥〔マリンシルトFP;株式会社アンコール・アン製〕 1
黒米エキス〔黒米エキス-PC;オリザ油化株式会社製〕 0.1
海藻エキス
〔ファルコレックスケルプ;一丸ファルコス株式会社製〕 0.1
香料 0.5
精製水 残量
(実施例18)
質量%
Basic Blue 75 0.01
Basic Brown 17 0.1
HC Blue No.2 0.5
HC Yellow No.4 0.1
ミリスチン酸オクチルドデシル 1.5
ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド 3
セトステアリルアルコール 8
流動パラフィン 0.5
グリセリン 1
乳酸 pH5に調整
フェノキシエタノール 0.3
アモジメチコン 0.5
加水分解コラーゲン 0.1
ローヤルゼリーエキス 0.1
アボカド油 0.1
タウリン 0.1
テアニン 0.1
アセチルグルコサミン 0.1
香料 0.5
精製水 残量
(実施例19)
質量%
Basic Blue 75 0.02
Basic Brown 16 0.1
Basic Brown 17 0.1
HC Blue No.2 0.5
HC Yellow No.4 0.1
ミリスチン酸オクチルドデシル 1.5
ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド 2
ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド 1
ステアリルアルコール 8
グリセリン 2
乳酸 pH5に調整
フェノキシエタノール 0.3
サクラエキス〔サクラエキスB;一丸ファルコス株式会社製〕 0.1
桜の花エキス〔桜の花エキス-PC;オリザ油化株式会社製〕 0.1
酵母エキス(3)〔赤ワイン酵母エキス;永遠幸メディカル
コスメティック株式会社〕 0.1
香料 0.5
精製水 残量 」

(2)甲2

・甲2a)特許請求の範囲
「 【請求項1】
化粧品用キャリヤー中に
(a)式(I):
【化1】

[式中、R1、R2、R3は独立してC_(1)?C_(6)アルキル基を意味し、
nは2?8の整数を意味し、
A^(-)は生理学的に許容可能なアニオンを意味する]
で示される少なくとも1つのカチオン性アントラキノン誘導体、
(b)式(I)とは異なる少なくとも1つの更なるカチオン性直接染料、
(c)少なくとも1つの両性および/または双性イオン性界面活性剤、および
(d)少なくとも1つのカチオン性ポリマー
を含有する、ケラチン繊維、特にヒトの毛を染色するための剤。
【請求項2】
式(I)[式中、R1およびR2はそれぞれメチル基を意味し、R3はn-プロピル基を意味し、nは2または3、好ましくは3を意味する]で示される少なくとも1つのカチオン性アントラキノン誘導体(a)を含有することを特徴とする、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
剤の総重量に基づいてそれぞれの場合に0.0005?0.5重量%、好ましくは0.02?0.4重量%、より好ましくは0.05?0.3重量%、特に好ましくは 0.10?0.35重量%の総量で、式(I)で示される1つ以上のカチオン性アントラキノン誘導体を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の剤。
【請求項4】
式(I)とは異なるカチオン性直接染料(b)は、ベーシックイエロー87、ベーシックオレンジ31、ベーシックレッド51、ベーシックバイオレット2およびカチオンブルー347からなる群、好ましくはベーシックイエロー87、ベーシックオレンジ31、ベーシックレッド51およびベーシックバイオレット2からなる群から選択される少なくとも1つの染料であることを特徴とする、請求項1?3のいずれかに記載の剤。
【請求項5】
剤の総重量に基づいてそれぞれの場合に0.0005?0.55重量%、好ましくは0.005?0.40重量%、より好ましくは0.025?0.30重量%、特に好ましくは0.05?0.20重量%の総量で、式(I)とは異なる1つ以上のカチオン性直接染料(b)を含有することを特徴とする、請求項1?4のいずれかに記載の剤。
・・・ 」

・甲2b)【0002】?【0009】
「 【背景技術】
【0002】
直接染料または酸化染料はいずれも一般的にケラチン繊維を染色するために使用されている。・・・。直接染料はより穏やかな条件下で適用される。しかしながら、直接染料は、特に毛を洗った際、或いは外的影響(例えば、日光、または例えばスイミングプールの水のような反応性環境化学物質)に対しても、着色の堅牢度特性が不十分であるという欠点を有する。そのような着色は一般に酸化的着色よりシャンプー洗浄に対してもはるかに感受性であるので、しばしば望ましくない色合いの変化、または目に見える変色さえより迅速に起こる。
【0003】
魅力的な毛の色に加えて、消費者は光沢のある毛を望む。・・・、消費者は魅力的な毛の色も光沢のある毛も要求する。実用的な理由から、このために、消費者は毛を1回しか処理しないことを好む。
【0004】
多様な色合いに毛を着色するための様々な方法は、先行技術から既に知られている。多種多様な組成物は例えばCA 2613049 A1に開示されている。しかしながら、強い着色と同時に非常に高い光沢をもたらす新規な着色剤に対する要求はなお存在する。
【0005】
特に、長期にわたる光沢をもたらすことができる新規な着色剤に対する要求が存在する。そのような剤を用いて染色した毛は、1週間後または最長数週間後にその光沢を失ってはならず、複数回毛を洗った後であってもその光沢はなお顕著でなければならない。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、毛を強く着色すると同時に非常に高い光沢を毛にもたらす新規な直接染料を提供することである。本発明の剤によりもたらされる着色の光沢は長続きし、複数回毛を洗った後も持続する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
意外なことに、特定のカチオン性アントラキノン誘導体および別のカチオン性染料と、両性または双性イオン性界面活性剤と、カチオン性ポリマーとの組み合わせを含有する剤が、毛を強く着色すると同時に毛に高光沢をもたらすことが見出された。更に、そのような剤によりもたらされる光沢は長続きし、複数回毛を洗った後またはシャンプー処理した後であってもなお認識することができる。
【0009】
それと同時に、そのような剤は、技術的適用性、堅牢度特性、毒性プロファイル、工業生産性および貯蔵安定性に関する、ケラチン繊維用着色剤に対する他の要求の全ても満たす。 」

・甲2c)【0015】?【0026】
「 【0015】
第一の重要な成分(a)として、本発明の剤は式(I):
【化2】

[式中、R1、R2、R3は独立してC_(1)?C_(6)アルキル基を意味し、
nは2?8の整数を意味し、
A^(-)は生理学的に許容可能なアニオンを意味する]
で示される少なくとも1つのカチオン性アントラキノン誘導体を含有する。
・・・
【0023】
特に強くて光沢のある着色は、本発明の剤において、式(I)で示されるカチオン性アントラキノン誘導体として化合物(Ia):
【化3】

[式中、A^(-)は、生理学的に許容可能なアニオン、好ましくは硫酸メチルイオン(H_(3)COSO_(3)^(-))または臭化物イオン、特に好ましくは臭化物イオンを意味する]
が使用される場合にもたらされ得る。
【0024】
A^(-)が臭化物イオンを意味する化合物(Ia)は、HC Blue 16、Bluequat BまたはBluequat bromideの名称でも知られており、3-{[9,10-ジヒドロ-4-(メチルアミノ)-9,10-ジオキソ-1-アントラセニル]アミノ}-N,N-ジメチル-N-プロピル-1-プロパンアミニウムブロミドの化学名でも知られている。
【0025】
ケラチン繊維を染色するための本発明の剤は、好ましくは、剤の総重量に基づいてそれぞれの場合に0.0005重量%以上0.5重量%以下の量で式(I)で示される化合物を含有する。これらの量的記載の計算は、それぞれの場合に、本発明の剤に含まれる式(I)で示されるアントラキノン染料の全ての総量に基づく。
【0026】
1つの特に好ましい態様では、本発明の剤は、剤の総重量に基づいてそれぞれの場合に0.0005?0.5重量%、好ましくは0.02?0.4重量%、より好ましくは0.05?0.3重量%、特に好ましくは 0.10?0.35重量%の総量で、式(I)で示される1つ以上のカチオン性アントラキノン誘導体を含有することを特徴とする。 」

・甲2d)【0027】?【0050】
「 【0027】
第二の重要な成分として、本発明の剤は、式(I)で示される化合物とは異なる少なくとも1つの更なるカチオン性直接染料(b)を含有する。これに関して、カチオン性染料とは、カチオン電荷を有する染料を意味すると理解される。
【0028】
このカチオン電荷は、第四級窒素原子に位置し得る。第四級窒素原子は4つの異なった有機基を有し、その結果、その窒素原子は正電荷を持つ。しかしながら、直接染料の窒素含有複素環にカチオン電荷が位置することも可能である。この複素環が発色団系の一部である場合は、直接染料の正電荷が発色団系全体にわたって非局在化されることもあり得る。最後に、カチオン性染料がカチオン性トリアリールメタン染料であることも可能であり、この場合、カチオン電荷はトリアリールメタン系において非局在化されている。
【0029】
特に強い着色は、本発明の剤が、式(I)で示される化合物とは異なる更なるカチオン性直接染料(b)として下記群から選択される少なくとも1つの染料を含有する場合に、長期にわたる高光沢と共にもたらされ得る:ベーシックブルー7、ベーシックブルー26、ベーシックバイオレット2、ベーシックバイオレット14、ベーシックイエロー57、ベーシックレッド76、ベーシックブルー99、ベーシックブラウン16、ベーシックブラウン17、ベーシックイエロー87、ベーシックオレンジ31、ベーシックレッド51およびカチオンブルー347。
【0030】
従って、別の特に好ましい態様は、式(I)で示される化合物とは異なる更なるカチオン性直接染料(b)として下記群から選択される少なくとも1つの染料を含有することを特徴とする剤である:ベーシックブルー7、ベーシックブルー26、ベーシックバイオレット2、ベーシックバイオレット14、ベーシックイエロー57、ベーシックレッド76、ベーシックブルー99、ベーシックブラウン16、ベーシックブラウン17、ベーシックイエロー87、ベーシックオレンジ31、ベーシックレッド51およびカチオンブルー347。
・・・
【0047】
特に好ましいカチオン性直接染料(b)は下記化合物である。
【化4】

【0048】
式(I)で示される化合物とは異なるカチオン性直接染料は、本発明の剤に好ましい量的範囲で含まれる。この量は、高光沢を達成するのに十分多く、しかしながら、染料の過剰な使用濃度に関する欠点(例えば、皮膚の増大した変色、または起こり得る皮膚炎)を回避するのに十分少なく選択しなければならない。
【0049】
これらの必要条件は、本発明の剤が、式(I)で示される化合物とは異なる1つ以上のカチオン性直接染料(b)を、剤の総重量に基づいてそれぞれの場合に0.0005重量%以上0.55重量%以下の総量で含有する場合に満たされる。
【0050】
別の特に好ましい態様では、本発明の剤は、式(I)で示される化合物とは異なる1つ以上のカチオン性直接染料(b)を、剤の総重量に基づいてそれぞれの場合に0.0005?0.55重量%、好ましくは0.005?0.40重量%、より好ましくは0.025?0.30重量%、特に好ましくは0.05?0.20重量%の総量で含有することを特徴とする。 」

・甲2e)【0051】?【0101】
「 【0051】
第三の重要な成分として、本発明の剤は少なくとも1つの両性および/または双性イオン性界面活性剤(c)を含有する。
・・・
【0077】
別の好ましい態様では、本発明の剤は、剤の総重量に基づいてそれぞれの場合に、0.1?4.0重量%、好ましくは0.2?2.5重量%、より好ましくは0.4?1.8重量%、特に好ましくは 0.6?0.9重量%の総量で1つ以上の両性および/または双性イオン性界面活性剤(c)を含有することを特徴とする。
【0078】
第四の重要な成分として、本発明の剤は少なくとも1つのカチオン性ポリマー(d)を含有する。
・・・
【0101】
従って、別の好ましい態様では、本発明の剤は、剤の総重量に基づいてそれぞれの場合に、0.1?2.0重量%、好ましくは0.2?1.3重量%、より好ましくは0.3?0.9重量%、特に好ましくは0.4?0.8重量%の総量で1つ以上のカチオン性ポリマー(d)を含有することを特徴とする。 」

・甲2f)【0118】?【0120】
「 【0118】
式(I)で示されるカチオン性アントラキノン染料および式(I)で示される化合物とは異なる更なるカチオン性染料(b)に加えて、本発明の剤は、任意成分として、更なる非イオン性および/またはアニオン性直接染料を含有してよい。
【0119】
好ましいアニオン性直接染料は、以下の国際的な名称または商品名で知られている化合物である:Acid Yellow 1、Yellow 10、Acid Yellow 23、Acid Yellow 36、Acid Orange 7、Acid Red 33、Acid Red 52、Pigment Red 57:1、Acid Blue 7、Acid Green 50、Acid Violet 43、Acid Black 1、Acid Black 52、ブロモフェノールブルーおよびテトラブロモフェノールブルー。
【0120】
特に、非イオン性ニトロ染料およびキノン染料、並びに中性アゾ染料は、非イオン性直接染料として適している。好ましい非イオン性直接染料は、1,4-ジアミノ-2-ニトロベンゼン、2-アミノ-4-ニトロフェノール、1,4-ビス-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-2-ニトロベンゼン、3-ニトロ-4-(2-ヒドロキシエチル)アミノフェノール、2-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-4,6-ジニトロフェノール、4-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-3-ニトロ-1-メチルベンゼン、1-アミノ-4-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-5-クロロ-2-ニトロベンゼン、4-アミノ-3-ニトロフェノール、1-(2’-ウレイドエチル)アミノ-4-ニトロベンゼン、2-[(4-アミノ-2-ニトロフェニル)アミノ]安息香酸、4-[(3-ヒドロキシプロピル)アミノ]-3-ニトロフェノール、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、6-ニトロ-1,2,3,4-テトラヒドロキノキサリン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、ピクラミン酸およびその塩、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、4-エチルアミノ-3-ニトロ安息香酸および2-クロロ-6-エチルアミノ-4-ニトロフェノールに加えて、以下の国際的な名称または商品名で知られている化合物である:HC Yellow 2、HC Yellow 4、HC Yellow 5、HC Yellow 6、HC Yellow 12、HC Orange 1、Disperse Orange 3、HC Red 1、HC Red 3、HC Red 7、HC Red 10、HC Red 11、HC Red 13、HC Red BN、HC Blue 2、HC Blue 11、HC Blue 12、Disperse Blue 3、HC Violet 1、Disperse Violet 1、Disperse Violet 4およびDisperse Black 9。 」

・甲2g)【0154】?【0161】
「 【実施例】
【0154】
実施例:
以下の組成物を調製した。量は、特に記載の無い限り、重量パーセントで使用活性物質についてそれぞれの場合に表されていると理解される。
【0155】
【表1】

【0156】
【表2】

【0157】
ブロンドに染色した毛束(Kerling製、一般的なブロンド染料で1回染色したブロンド)の光沢を、適当な装置を用いて測定した。次いで、予め調製しておいた着色組成物を、測定した毛束(Kerling)に適用し(溶液比4:1、毛1gあたりクリーム4g)、30分間作用させた。続いて、毛束を濯いで乾かした。光沢装置で、乾かした毛束を再度測定
した。
【0158】
光沢装置は、光吸収内層を備えた光沢チャンバーである。測定する毛束をシリンダーに固定し、光沢チャンバー中央に配置した。小さい開口部をシリンダー上方に配置することにより、照明光源として、毛束を照射する棒状ガス放電灯をシリンダー上に固定した。デジタルカメラを用いて各毛束の光沢曲線を測定し、画像分析により評価した。次いで、毛束(L)の光沢値を、以下のReich and Robbins式^((1))に従って計算した。
・・・
^((1)):C. ReichおよびC.C. Robbins, J. Soc. Cosmet. Chem. 44, 221-234(1993)
【0159】
本発明の剤の適用前および適用後に測定した光沢を比べることにより、光沢の変化を評価した。光沢の変化が有意であるかどうかを計算するためには、統計的手法を用いた。
【0160】
測定において、以下の光沢値を得た。光沢値が高いほど光沢が高いことを示している。
【0161】
【化19】



(3)甲3

・甲3a)特許請求の範囲
「 【請求項1】
カチオン性ポリマーの含有量が0.01質量%未満であり、シリコーンの含有量が0.01質量%未満である毛髪化粧料組成物であって、
(A)ノニオン性ポリマー、(B)エステル油、及び(C)直接染料を含有する毛髪化粧料組成物。
【請求項2】
前記(B)エステル油は、水添ヒマシ油と脂肪酸とのエステルである請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項3】
前記(C)直接染料は、Basic Red 51、Basic Brown 16、HC Blue No.2、及びHC Yellow No.4から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1又は請求項2に記載の毛髪化粧料組成物。 」

・甲3b)【0002】?【0007】
「 【0002】
一般に、ケラチン繊維の一種である毛髪を染色するための毛髪化粧料組成物として、直接染料を含有する染毛料組成物が知られている。直接染料を含有する染毛料組成物は、毛髪の表面付近のケラチンに直接染料が吸着することにより毛髪を染色する。従来より、特許文献1に開示されるようなシリコーンを配合する染毛料組成物が知られている。シリコーンは、毛髪の表面に付着し、コーティングする作用により、毛髪塗布時の塗布感等を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2005-139155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、シリコーンの毛髪に対する高吸着力により、毛髪が重たく感じられる等の問題が生じていた。そこで、近年、ノンシリコンタイプの毛髪化粧料組成物が広く消費者に受け入れられている。一般に、ノンシリコンタイプの毛髪化粧料組成物は、シリコーンを配合しない代わりに、カチオン性ポリマーを配合することにより毛髪塗布時の塗布感を向上させている。
【0005】
しかしながら、カチオン性ポリマーを配合するノンシリコンタイプの毛髪化粧料組成物を、直接染料を含有する染毛料組成物に適用した場合、直接染料の種類によっては、製剤の安定性が低下することがあり、カチオン性ポリマーと直接染料を容易に併用することができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、直接染料を含有し、シリコーン及びカチオン性ポリマーを実質的に含まない毛髪化粧料組成物において、毛髪塗布時の塗布感を向上できる毛髪化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、直接染料を含有する毛髪化粧料組成物において、ノニオン性ポリマー及びエステル油を併用することにより、毛髪塗布時の塗布感を向上できることを見出したことに
基づくものである。尚、成分の含有量を示す質量%の数値は、水等の可溶化剤も含めた剤型中における数値である。 」

・甲3c)【0017】?【0025】
「 【0017】
(C)直接染料は、毛髪を染色するために配合される。直接染料は、反応性がなく、それ自体で発色可能なものを示す。直接染料の具体例は、例えば、酸性染料、ニトロ染料、塩基性染料(カチオン染料)、分散染料等が挙げられる。
【0018】
酸性染料の具体例は、例えば赤色2号、・・・等が挙げられる。
【0019】
ニトロ染料の具体例は、例えば4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-4-ニトロフェノール、2-アミノ-5-ニトロフェノール、ピクラミン酸、ピクリン酸、及びそれらの塩、HC Blue No.2、HC Blue No.4、HC Blue No.5、H C Blue No.6、HC Blue No.8、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.13、HC Blue No.14、HC Brown No.1、HC Brown No.2、HC Green No.1、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Orange No.3、HC Orange No.5、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.7、HC Red No.8、HC Red No.9、HC Red No.10、HC Red No.11、HC Red No.13、HC Red No.14、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.5、HC Yellow No.6、HC Yellow No.7、HC Yellow No.8、HC Yellow No.9、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12、HC Yellow No.13、HC Yellow No.14、HC Yellow No.15等が挙げられる。
【0020】
塩基性染料(カチオン染料)の具体例は、例えば赤色213号、赤色214号、Basic Blue 3、Basic Blue 6、Basic Blue 7、Basic Blue 9、Basic Blue 26、Basic Blue 41、Basic Blue 75、Basic Blue 99、Basic Brown 4、Basic Brown 16、Basic Brown 17、Basic Brown 1、Basic Brown 4、Basic Orange 1、Basic Orange 2、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 22、Basic Red 46、Basic Red 51、Basic Red 76、Basic Red 118、Basic Violet 1、Basic Violet 2、Basic Violet 3、Basic Violet 4、Basic Violet 10、Basic Violet 11:1、Basic Violet 14、Basic Violet 16、Basic Yellow 11、Basic Yellow 28、Basic Yellow 57等が挙げられる。
【0021】
分散染料の具体例は、例えばDisperse Black 9、・・・等が挙げられる。
・・・
【0023】
これらの直接染料の中で、染毛力に優れ、地肌汚れが少ない観点から、Basic Red 51、Basic Brown 16、HC Blue No.2、及びHC Yellow No.4が好ましく、Basic Red 51がより好ましく適用される。
【0024】
毛髪化粧料組成物中における(C)直接染料の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。(C)直接染料の含有量が0.001質量%以上の場合には、染毛力をより向上させることができる。一方、(C)直接染料の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。含有量が3質量%以下の場合には、毛髪化粧料組成物中における(C)直接染料の溶解性をより向上させることができる。また、地肌汚れをより少なくすることができる。
【0025】
また、(C)直接染料の全含有量の合計に対する、Basic Red 51、Basic Brown 16、HC Blue No.2、及びHC Yellow No.4の各含有量の合計の質量比は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.6以上である。質量比を0.2以上とすることにより、染毛処理後の地肌汚れをより抑えることができる。 」

・甲3d)【0061】?【0063】
「 【0061】
<参考試験例1:毛髪化粧料組成物の地肌汚れの評価>
表2に示される各成分を混合して各参考例の毛髪化粧料組成物としての半永久染毛料組成物を調製した。得られた各半永久染毛料組成物について、下記の基準に従い、地肌汚れについて評価した。評価結果を表2に示す。なお、表2における各成分の配合を示す数値の単位は質量%である。
【0062】
(地肌汚れ)
各参考例の半永久染毛料組成物0.1gを腕内側部に直径1cmの円形状に塗布し、20分間放置した後、水洗した。このときの腕内側部をパネラー10名が目視で観察することにより、各参考例の半永久染毛料組成物について地肌が汚れ難いか否かを判断した。地肌が汚れ難いと認められると応えたパネラーの人数が9人以上であった場合には「優れる:5」、7?8人であった場合には「良好:4」、5?6人であった場合には「可:3」、3?4人であった場合には「やや不良:2」、2人以下であった場合には「不良:1」とする5段階の評価を下した。この評価結果を表2の“地肌汚れの評価”欄に示す。
【0063】
【表2】

表2に示されるように、直接染料としてBasic Red 51、Basic Brown 16、HC Blue No.2、及びHC Yellow No.4から選ばれる少なくとも1種のみを使用する参考例1,2は、かかる染料以外も使用する参考例3,4に対し、地肌汚れの評価に優れることが確認された。 」

(4)甲4

・甲4a)特許請求の範囲
「 【請求項1】
下記の(A)成分?(C)成分を含有することを特徴とする染毛料組成物。
(A)海泥
(B)カチオン性界面活性剤の1種以上
(C)塩基性染料の1種以上
【請求項2】
前記(B)成分がアルキルアミドアミン及びその塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の染毛料組成物。
【請求項3】
前記(A)成分の含有量が乾物量として0.05?1質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の染毛料組成物。
【請求項4】
更に下記の(D)成分を含有することを特徴とする請求項1?請求項3のいずれかに記載の染毛料組成物。
(D)カチオン化ヒアルロン酸
【請求項5】
更に下記の(E)成分を含有することを特徴とする請求項1?請求項4のいずれかに記載の染毛料組成物。
(E)HC染料 」

・甲4b)【0001】
「 【技術分野】
【0001】
本発明は染毛料組成物に関する。更に詳しくは本発明は、直接染料として塩基性染料を用いたカラートリートメントの毛髪染着力を向上させる反面、地肌汚れを改善し、併せて処理後の毛髪感触も向上させる染毛料組成物に関する。 」

・甲4c)【0002】?【0008】
「 【背景技術】
【0002】
染毛用の組成物は、通常、酸化染料を用いる酸化染毛剤等の永久染毛剤、直接染料を用いるヘアマニキュア、カラートリートメント等の半永久染毛料、毛髪を一時的に着色するカラースプレー等の毛髪一時着色料(一時染毛料)に大別される。これらの内、半永久染毛料は、永久染毛剤と比較して染毛力や染毛の持続性が劣るものの、酸化染毛剤のようにアルカリ剤(第1剤)や酸化剤(第2剤)を用いないので、毛髪に与えるダメージが少ないことが知られている。半永久染毛料の一種であるカラートリートメントとは、ヘアコンディショニング効果を持ちながら、同時に半永久染毛料としての染毛効果も示すヘアトリートメントである。
【0003】
半永久染毛料に用いる直接染料として、旧来の酸性染料等に加え、2001年4月からは、塩基性染料や、ニトロ染料として分類できるHC染料も使用可能となった。・・・
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、塩基性染料を用いたカラートリートメントにおいては、第1の問題として、塩基性染料の染毛効果がやや低いと言う問題がある。塩基性染料の配合量を多くすることで染毛効果を高めようとすると、地肌汚れ(塩基性染料の皮膚への染着)が懸念される。更に、塩基性染料を用いたカラートリートメントにおいては、染毛力の向上(染毛効果)と優れたコンディショニング効果を如何に両立させるか、と言う第2の問題がある。本願発明者の研究によれば、コンディショニング効果を目的としてカチオン性界面活性剤を多量に配合すると、塩基性染料による染毛が阻害される恐れがある。
【0006】
そこで本発明は、塩基性染料を用いたカラートリートメントにおける上記の第1、第2の問題を解消し、塩基性染料の毛髪染着力を向上させる反面、地肌汚れを抑制し、併せて処理後の毛髪感触も向上させる染毛料組成物を提供することを解決すべき課題とする。
【0007】
このような課題の解決手段に関連して、近年、毛髪化粧料におけるコンディショニング用配合成分として、海泥と呼ばれる無機質のアニオン性微粒子も一部で注目されている。・・・
【0008】
本願発明者は、カラートリートメントに用いる直接染料としてカチオン性である塩基性染料を配合し、主たるコンディショニング用成分としてカチオン性界面活性剤を配合したもとで、更にコンディショニング用成分としてアニオン性である海泥を配合すると、カラートリートメントにおける上記の第1、第2の問題が解消され、塩基性染料の毛髪染着力向上、地肌汚れの抑制、及び毛髪感触の向上を実現できる染毛料組成物となることを見出し、本発明を完成した。 」

・甲4d)【0028】?【0037】
「 【0028】
〔染毛料組成物の必須成分〕
本発明の染毛料組成物は、必須成分として、(A)成分:海泥、(B)成分:カチオン性界面活性剤の1種以上、及び(C)成分:塩基性染料の1種以上、を含有する。
【0029】
((A)成分:海泥)
(A)成分である海泥とは、「海シルト」、「くちゃ」とも呼ばれる含硫ケイ酸アルミニウム質のアニオン性のシルトである。海泥は我が国の沖縄本島・中南部地域の海底から採掘される沈殿物であり、ミネラル成分を多く含んでいる。海泥は、その60%が5μm以下の極めて細かい粒子からなり、粒度が高くザラツキを感じさせない無機質の微粒子であって、優れた電気的吸着性と、水洗で簡単に落とせると言う特性を持ち、ヘアトリートメントに配合した場合に優れたコンディショニング効果をもたらす。「海泥」としては、例えば原料海泥から特に微細な粒径部分を選別したものや、電気泳動等によりアニオン性のより明確な粒子部分を選別したもの等の、加工された海泥も含まれる。市販品としては、例えば、(株)アンコール・アン社の商標名「マリンシルトFP」が挙げられる。
【0030】
染毛料組成物における海泥の含有量は限定されないが、乾物量(乾燥時質量)として0.05?1質量%の範囲内、特に0.1?0.5質量%の範囲内であることが好ましい。
【0031】
((B)成分:カチオン性界面活性剤)
(B)成分であるカチオン性界面活性剤としては、「第2発明の効果」として前記した理由から、アルキルアミドアミン型が特に好ましい。カチオン性界面活性剤としては、その他にも、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルケニルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩及びジアルケニルジメチルアンモニウム塩を包含する第4級アンモニウム塩型や、アルキルアミン塩型、ピリジニウム系等の各種のカチオン性界面活性剤を限定なく用いることができる。そしてこれらのカチオン性界面活性剤から選ばれる1種以上を任意に選択して用いる。
【0032】
アルキルアミドアミン型のカチオン性界面活性剤として、アルキルアミドアミン及びその塩が挙げられる。アルキルアミドアミンとは、カルボン酸(特に脂肪酸)と3級アミノアルキルアミンとのアミドである。具体的には、例えば、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノエチルアミド等のアルキロイルアミドエチルジエチルアミンや、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド等のアルキロイルアミドプロピルジメチルアミン、ステアリン酸ジメチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノエチルアミド等のアルキロイルアミドエチルジメチルアミンが例示される。これらのアルキルアミドアミンを中和して第3級アミン塩とする中和剤としては、限定はされないが、有機酸、無機酸、酸性アミノ酸等が挙げられ、具体的には、乳酸、グリコール酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、塩酸、硫酸、リン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられる。アルキルアミドアミンと中和剤の中和は、染毛料組成物の調製工程中で行っても、あるいはあらかじめアルキルアミドアミンと中和剤の塩を形成させてから配合しても良い。
【0033】
アルキルアミドアミン型以外のカチオン性界面活性剤としては、具体的には、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化イソステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ココイルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化イソステアリルラウリルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化γ-グルコンアミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、塩化ジ(ポリオキシエチレン)オレイルメチルアンモニウム、塩化ドデシルジメチルエチルアンモニウム、塩化オクチルジヒドロキシエチルメチルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム、塩化ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチル(エチルベンジル)アンモニウム、塩化ベヘン酸アミドプロピル-N,N-ジメチル-N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)アンモニウム、塩化ベンザルコニウムを例示できる。
【0034】
染毛料組成物におけるカチオン性界面活性剤の含有量は限定されないが、好ましくは1?3質量%の範囲内である。含有量をこの範囲内とすることにより毛髪感触向上効果をより良好に確保でき、かつ、塩基性染料の毛髪への染着もより良好に確保できる。
【0035】
((C)成分:塩基性染料)
(C)成分である塩基性染料の種類は限定されず、Basic Blue 3、Basic Blue 6、Basic Blue 7、Basic Blue 9、Basic Blue 26、Basic Blue 41、Basic Blue 47、Basic Blue 75、Basic Blue 99、Basic Brown 4、Basic Brown 16、Basic Brown 17、Basic Green 1、Basic Green 4、Basic Orange 1、Basic Orange 2、Basic Orange 31、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 22、Basic Red 46、Basic Red 51、Basic Red 76、Basic Red 118、Basic Violet 1、Basic Violet 3、Basic Violet 4、Basic Violet 10、Basic Violet11:1、Basic Violet 14、Basic Violet 16、Basic Yellow 11、Basic Yellow 28、Basic Yellow 57、Basic Yellow 87等から選ばれる1種以上を任意に選択して用いることができる。
【0036】
染毛料組成物における塩基性染料の含有量は限定されないが、好ましくは0.1?0.3質量%の範囲内である。含有量が0.1質量%未満であると、絶対量の不足から、染毛料組成物の染毛力が幾分不足し勝ちになる恐れがある。含有量が0.3質量%を超えると、幾分、皮膚への染着による地肌汚れが生じる恐れがある。
【0037】
(水)
なお、染毛料組成物は、その製剤上、実際には水を必要とする。 」

・甲4e)【0038】?【0067】
「 【0038】
〔染毛料組成物におけるその他の成分〕
本発明の染毛料組成物は、以上の必須成分の他に、以下の成分を好ましく含有することができ、あるいは任意に含有することができる。以下に述べる各成分について、染毛料組成物中におけるその配合量を特に記載しないものについては、必要に応じて適宜に配合量が決定される。
【0039】
(塩基性染料以外の染料)
塩基性染料以外の染料として、各種の直接染料を塩基性染料と組み合わせて配合しても良い。但し、酸性染料は好ましくなく、含有するとしても本発明の効果を妨げない程度の配合量に制限して含有することが好ましい。好ましい直接染料として、天然染料、ニトロ染料、分散染料等が挙げられる。特に「第5発明の効果」の欄で述べた理由から、ニトロ染料の一種であるHC染料を併用することが好ましい。好ましくは、HC染料は、染毛料組成物中に0.2?1.2質量%の範囲内で配合される。
【0040】
天然染料としては、クチナシ色素、・・・等を例示できる。
【0041】
ニトロ染料としては、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、・・・及びそれらの塩を例示できる。
【0042】
又、HC染料としては、HC Blue No.2、HC Blue No.5、HC Blue No.6、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.13、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Orange No.3、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.7、HC Red No.10、HC Red No.11、HC Red No.13、HC Red No.14、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.5、HC Yellow No.6、HC Yellow No.9、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12、HC Yellow No.13、HC Yellow No.14、HC Yellow No.15等を例示できる。
【0043】
分散染料としては、Disperse Black 9、・・・等を例示できる。
【0044】
(カチオン性界面活性剤以外の界面活性剤)
カチオン性界面活性剤以外の界面活性剤を、カチオン性界面活性剤と組み合わせて配合しても良い。但し、アニオン性界面活性剤は好ましくなく、含有するとしても本発明の効果を妨げない程度の配合量に制限して含有することが好ましい。従って両性イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤が好ましい。
・・・
【0050】
(油性成分)
油性成分として、油脂、ロウ、炭化水素、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン、高級アルコール等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を使用することができる。これらの油性成分の内、25℃、1気圧下で液状のエステルや、高級アルコールは特に好ましい。
・・・
【0058】
(水溶性ポリマー)
各種の水溶性ポリマーを配合することができる。但し、アニオン性ポリマーは好ましくなく、含有するとしても本発明の効果を妨げない程度の配合量に制限して含有することが好ましい。これらの水溶性ポリマーとして、カチオン性ポリマー、両性ポリマー、各種の天然系ポリマーが好ましい。
・・・
【0067】
(その他の成分)
本発明の染毛料組成物は、以上の各成分の他にも、例えば、溶剤、増粘剤、酸性アミノ酸を除くアミノ酸類、ソルビトール、マルトース等の糖類、パラベン、安息香酸ナトリウム等の防腐成分、EDTA-2Na、ジエチレントリアミン5酢酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸等のキレート成分、フェナセチン、8-ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、フェノキシエタノール、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等の安定成分、pH調整成分、亜硫酸Na等の酸化防止剤、植物又は生薬抽出物、アスコルビン酸類を含むビタミン類、香料、等から選ばれる1種以上を配合しても良い。また、例えば、「医薬部外品原料規格2006」(薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種を配合してもよい。 」

・甲4f)【0068】?【0078】
「 【実施例】
【0068】
次に本発明の実施例及び比較例を説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例及び比較例によって限定されない。
【0069】
〔染毛料組成物の調製〕
後述の表1?表3に示す実施例1?27及び表4に示す比較例1?5に係る組成の1剤式の染毛料組成物を、それぞれ常法に従いクリーム状の乳化剤として調製した。なお、比較例2は乳化できなかったため、後述の評価を行っていない。
【0070】
表1?表4において、各成分の含有量を示す数値は質量%単位の表記である。又、「精製水」について「残量」と表記しているのは、「各成分の合計含有量が100質量%となるような量(いわゆるquantum sufficit)」の意味である。次に、染毛料組成物におけるそれぞれ(A)成分?(E)成分の各成分に該当するものについては、表1?表4の成分名の欄の左側欄外にそれぞれ、「A」?「E」と付記した。「A」である海泥としては、(株)アンコール・アン社の商標名「マリンシルトFP」を用いた。
【0071】
〔染毛料組成物の評価〕
以上のように調製した各実施例、各比較例に係る染毛料組成物を用いて、それぞれ以下の評価を行った。
(地肌汚れ)
各実施例、各比較例に係る染毛料組成物1gをそれぞれ、腕の内側部における直径1cmの円形のエリアに塗布し、10分間放置した後、温水で洗い流した。次に、石鹸を使用して指で1分間軽く擦り、温水で洗い流した。
【0072】
以上の処理の後、10名のパネラーが地肌汚れ(皮膚への染着の度合い)を目視にて観
察し、地肌汚れが非常に少ない(4点)、地肌汚れが少ない(3点)、地肌汚れがやや多い(2点)、地肌汚れが多い(1点)、の4段階で評価した。各パネラーの採点結果の平均値を算出し、平均値が3.6点以上であれば「◎」、平均値が2.6点以上で3.5点以下であれば「○」、平均値が1.6点以上で2.5点以下であれば「△」、平均値が1.5点以下であれば「×」と評価した。評価結果を各表の「地肌汚れ」の欄に示す。
【0073】
(染毛直後の染毛力)
各実施例、各比較例に係る染毛料組成物1gをそれぞれ白髪混じりの人毛毛束1gに塗布し、10分間放置後に水洗することにより、人毛毛束に対する染毛処理を完了した。
【0074】
上記染毛処理の完了の直後に10名のパネラーが人毛毛束の染色の程度を目視にて観察し、非常に優れる(5点)、優れる(4点)、やや優れる(3点)、やや悪い(2点)、悪い(1点)、の5段階で評価した。各パネラーの採点結果の平均値を少数点第1位で四捨五入して、各例の評価点を算出した。その評価結果を各表の「染毛直後染毛力」の欄に示す。
【0075】
(連用染毛後の染毛力)
上記「染毛直後の染毛力」の項に述べた染毛処理を行った各実施例、各比較例に係る人毛毛束に対し、更にシャンプー後に染毛処理を行った後、人毛毛束をヘアドライヤーで乾燥させるというサイクルを4回繰り返すことにより、人毛毛束に対する連用の染毛処理を完了した。
【0076】
上記した連用染毛処理の完了の直後に10名のパネラーが人毛毛束の染色の程度を目視にて観察し、非常に優れる(5点)、優れる(4点)、やや優れる(3点)、やや悪い(2点)、悪い(1点)、の5段階で評価した。各パネラーの採点結果の平均値を少数点第1位で四捨五入して、各例の評価点を算出した。その評価結果を各表の「染毛直後染毛力」の欄に示す。
【0077】
(ドライ時の毛髪へのハリ・コシの付与)
上記の「染毛直後の染毛力」の項に述べた染毛処理を完了した人毛毛束をヘアドライヤーで乾燥させた後、10名のパネラーが人毛毛束へのハリ・コシの付与の度合いを手触りにより評価し、非常に良好である(4点)、良好である(3点)、やや悪い(2点)、悪い(1点)、の4段階で評価した。各パネラーの採点結果の平均値を少数点第1位まで算出し、平均値が3.6点以上であれば「◎」、平均値が2.6点以上で3.5点以下であれば「○」、平均値が1.6点以上で2.5点以下であれば「△」、平均値が1.5点以下であれば「×」と評価した。評価結果を各表の「ドライ時の毛髪へのハリ・コシの付与」の欄に示す。
【0078】
(ドライ時の毛髪への滑らかさの付与)
上記の「染毛直後の染毛力」の項に述べた染毛処理を完了した人毛毛束をヘアドライヤーで乾燥させた後、10名のパネラーが人毛毛束への滑らかさの付与の度合いを手触りにより評価し、非常に良好である(4点)、良好である(3点)、やや悪い(2点)、悪い(1点)、の4段階で評価した。各パネラーの採点結果の平均値を少数点第1位まで算出し、平均値が3.6点以上であれば「◎」、平均値が2.6点以上で3.5点以下であれば「○」、平均値が1.6点以上で2.5点以下であれば「△」、平均値が1.5点以下であれば「×」と評価した。評価結果を各表の「ドライ時の毛髪への滑らかさの付与」の欄に示す。 」

・甲4g)【0079】?【0082】
「 【0079】
【表1】


【0080】
【表2】


【0081】
【表3】


【0082】
【表4】



(5)甲5

・甲5a)特許請求の範囲
「 【請求項1】
アルカリ剤を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを混合する酸化染毛剤において、前記第1剤と第2剤とを混合した直後に、バイコンティニュアスミクロエマルション相又はラメラ液晶相を含有することを特徴とする酸化染毛剤。
【請求項2】
前記第1剤及び/又は第2剤中に、バイコンティニュアスミクロエマルション相又はラメラ液晶相を形成する下記成分(a)?(c)を含有することを特徴とする請求項1記載の酸化染毛剤。
(a)イオン性界面活性剤
(b)(無機性値/有機性値)比の値が0.8?1.5の範囲内である両親媒性物質
(c)水
【請求項3】
前記第1剤及び/又は第2剤中に、バイコンティニュアスミクロエマルション相又はラメラ液晶相を形成する下記成分(d)?(f)を含有することを特徴とする請求項1記載の酸化染毛剤。
(d)非イオン性界面活性剤
(e)油分
(f)水
・・・ 」

・甲5b)【0001】
「 【技術分野】
【0001】
本発明は酸化染毛剤に関する。更に詳しくは、基剤にバイコンティニュアスミクロエマルション相又はラメラ液晶相を含有させることによって、ダメージを受けた毛髪(染毛剤、パーマ剤などの化学的な損傷、摩擦などの物理的な損傷を受けた毛髪)と、ダメージを受けていない健常毛髪の両方に対して、優れた染色性を有する酸化染毛剤に関する。 」

・甲5c)【0005】
「 【0005】
毛髪の表面を覆うキューティクルは、疎水性の物質を主成分として構成され、毛髪内部の領域を保護して毛髪を健康な状態に保つ役割を果たしている。ところが、毛髪は、化学的な影響、例えば染毛処理及び脱色処理、並びに物理的な影響、例えば紫外線、摩擦および熱などによりダメージを受けていることが多い。ダメージを受けた毛髪は、疎水性を有するキューティクルが部分的に失われている。このようにキューティクルが失われた部位では、その周囲よりも疎水性が低下している。また、キューティクルの損失は、毛髪全体に均等に行き渡って生じる現象ではなく、特に化学的な影響及び物理的な影響を繰り返し受けた毛先付近において多く発生している。
【0006】
このように、染毛剤、パーマ剤などの化学的な損傷、摩擦などの物理的な損傷を受けた毛髪(ダメージ毛髪)は親水的である(油をはじきやすい)。一方、ダメージを受けていない健常毛髪の毛髪表面は疎水的である(水をはじきやすい)。よって、同一の染毛剤を使用した場合でも、ダメージ毛髪である毛先付近と健常毛髪である根元部分とで仕上がりの髪色が異なったり、毛髪保護を目的として染毛剤中に配合された水性または油性トリートメント成分がその効果を十分に発揮できずに仕上がり感触が異なったりする場合がある。 」

(6)甲6

・甲6a)特許請求の範囲
「 【請求項1】
毛髪の表面に付着した塩基性染料の密着性を高める4級アンモニウム塩の共重合体と、
浸透性染料が内部に浸透した前記毛髪の表面をコーティング被膜するコーティング膜形成剤と、
植物エキスを含有することを特徴とする染毛料。
【請求項2】
前記植物エキスは、加水分解コンキオリン、オウゴンエキス、アルテア根エキス、カンゾウ根エキスであることを特徴とする請求項1に記載の染毛料。 」

・甲6b)【0002】?【0013】
「 【背景技術】
【0002】
従来、染毛剤と比べて毛髪へのダメージが少なく、HC染料又は塩基性染料を併用した染毛料が利用されている(・・・)。
HC染料は、分子径が小さくキューティクルの隙間から毛髪の内部に浸透して分子間力(ファンデルワールス力)により着色する染料である。
【0003】
一方、塩基性染料(イオン性染料)は分子量が大きく、HC染料のように、キューティクルの隙間から毛髪の内部に浸透することができない。塩基性染料は、毛髪を中性からアルカリ性の状態にしてマイナスイオンになった状態の毛髪に対して、プラスイオンで毛髪の表面にイオン結合で着色する染料である。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、HC染料は、イオン性染料のように毛髪とイオン結合せず、分子間力のみで着色しているため、結合力が極めて弱く、洗髪等により毛髪の内部から外部へ流れ出やすく、イオン性染料と比べると色落ちしやすく色持ちが悪いという問題があった。
【0006】
また、塩基性染料は、前述のように毛髪がアルカリ性の状態で毛髪の表面にイオン結合するものであるが、従来の毛髪をマイナスイオンの状態にするカチオン性の配合成分では、塩基性染料との間のイオン結合の結合力が弱く、色付きが悪いという問題があった。
【0007】
さらに、毛髪に着色したHC染料又は塩基性染料は、紫外線により色素が劣化しやすく、色落ちの原因となっていた。
【0008】
上記従来技術の問題点に鑑み、本発明は染料の色落ちを低減して染毛の色持ちを長期間維持することができる染毛料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための第1の手段として、毛髪の表面に付着した塩基性染料の密着性を高める4級アンモニウム塩の共重合体と、浸透性染料が内部に浸透した前記毛髪の表面をコーティング被膜するコーティング膜形成剤と、植物エキスを含有することを特徴
とする染毛料を提供することにある。
【0010】
上記の課題を解決するための第2の手段として、前記第1の手段において、前記植物エキスは、加水分解コンキオリン、オウゴンエキス、アルテア根エキス、カンゾウ根エキスであることを特徴とする染毛料を提供することにある。
【発明の効果】
【0011】
上記のような本発明によれば、浸透性染料と塩基性染料が付着した染毛の表面を覆うコーティング膜を形成しているので、塩基性染料と比べて結合が弱い浸透性染料の色落ちを低減して、毛髪の色持ちを長期間維持することができる。
【0012】
また4級アンモニウム塩の共重合体を用いているため、イオン結合による塩基性染料と毛髪の密着性を高めて、色素の色付きを良くすることができる。
【0013】
加水分解コンキオリン、オウゴンエキス、アルテア根エキス、カンゾウ根エキスの植物エキスを用いているため、毛髪に着色した色素の紫外線による劣化を低減して、染料の色持ちを長時間維持することができる。 」

・甲6c)【0018】?【0019】
「 【0018】
本実施形態に係る着色剤は、物理吸着により染着する浸透性染料と、化学吸着により染着する塩基性染料を併用している。
浸透性染料となるHC染料は、一般に、キューティクルの隙間から毛髪の内部に浸透して分子間力によって着色する染料である。浸透性染料は、毛髪の内部に浸透し、髪色の明るい箇所となる白髪部分に色合いを与えるため、特に白髪への着色効果が高い。本発明の染毛料は、HC染料に一例として、HC青2、HC黄4、HC赤3、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノールを用いている。
【0019】
塩基性染料となるイオン性色素は、毛髪の表面にあるうろこ状のキューティクルに作用し、特にケラチンタンパクのマイナス箇所とイオン結合する。具体的には、毛髪を中性からアルカリ性の状態にしてマイナスイオンになった状態の毛髪に対して、プラスイオンで毛髪の表面にイオン結合で着色する染料である。本発明の染毛料は、塩基性染料に一例として、塩基性赤76、塩基性茶16、塩基性青99、塩基性黄57を用いている。 」

・甲6d)【0027】
「 【0027】
本発明の染毛料を毛髪に塗布すると、分子径の小さいHC染料20は、毛髪のキューティクル16の隙間から毛髪の内部に浸透して分子間力によって付着して染着する。
また、塩基性染料30は、毛髪を中性からアルカリ性の状態にしてマイナスイオンになった状態の毛髪に対して、プラスイオンで毛髪の表面にイオン結合で着色する。このとき、配合した4級アンモニウム塩の共重合体によって、塩基性染料がプラスイオンを帯び、4級アンモニウム塩の共重合体の塩基性によって毛髪がマイナスイオンになっている状態のときにイオン結合し易くなり、塩基性染料と毛髪の密着性を高めることができる。 」


2.申立理由1,2についての判断

2-1.申立理由1について

(1)甲1に記載された発明
摘記甲1aの請求項1によれば、甲1には、次の発明:
「 下記の4種の染料:
・塩基性青75(Basic Blue 75)
・塩基性茶16(Basic Brown 16)及び塩基性茶17(Basic Brown 17)から選ばれる1種以上
・HC青2(HC Blue No.2)
・HC黄4(HC Yellow No.4)
を含有し、pHが4?6の範囲内であることを特徴とする染毛料組成物。」
(以下、「甲1発明」ということがある)が記載されているものと認められる。

(2)対比・判断

(2-1)特許発明1について
ア 特許発明1と甲1発明とを対比するに、
・甲1発明の「塩基性茶16(Basic Brown 16)及び塩基性茶17(Basic Brown 17)から選ばれる1種以上」は、特許発明1の「成分B:塩基性茶16及び塩基性茶17からなる群より選ばれる1以上の染料」に相当すること;
・甲1発明の「HC青2(HC Blue No.2)」は、特許発明1の「成分D:HC青2」に相当すること;
・甲1発明の「HC黄4(HC Yellow No.4)」は、特許発明1の「成分C:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料」中の「HC黄4」に相当すること;
・甲1発明には、「塩基性青75(Basic Blue 75)」を含むことや「pHが4?6の範囲内であること」の規定があるが、特許発明1ではそのような「(A)塩基性青75(Basic Blue 75)」を含む染毛料組成物の態様やpH4?6の範囲内のものである染毛料組成物の態様を特段除外するものではないから、これらの点は相違点とはならないこと;
を併せ踏まえると、両者は
「 下記成分B、下記成分C、及び下記成分D:
成分B:塩基性茶16及び塩基性茶17からなる群より選ばれる1以上の染料
成分C:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料
成分D:HC青2
を含有する、染毛料組成物 」
の点で一致するが、次の点(以下、単に「相違点1」ということがある)において相違する。
[相違点1]:
特許発明1が、次の[要件1]及び[要件2]:
[要件1] 「前記成分Bの含有量が0.05?1.0質量%であり、
前記成分Cの含有量が0.01?0.5質量%であり、
前記成分Dの含有量が0.1?1.5質量%であり、」
かつ、これら成分B?成分Dと共に、
「成分A:HC青16」を「0.5?3.0質量%」の含有量で含む
[要件2] [要件1]の「成分A」?「成分D」において
「 [{(成分Aの含有量)+(成分Bの含有量)}
/{(成分Cの含有量)+(成分Dの含有量)}]
が0.1?5.0である 」
を共に満たすものである のに対し、
甲1発明には、上記[要件1]及び[要件2]を共に満たすことの限定はない 点

イ 以下、上記相違点1について検討する。

(ア) まず、相違点1の[要件1]について検討する。

a(a) 甲1には、甲1発明において、
・塩基性青75の含有量を好ましくは0.5質量%以下とすること(甲1aの請求項2及び甲1dの【0025】)や、例えば0.01?0.6質量%の範囲内とすること(甲1gの実施例1?16);
・塩基性茶16又は塩基性茶17(特許発明1における「成分B」相当成分)の含有量を好ましくは0.01?0.5質量%の範囲内とすること(甲1aの請求項2及び甲1dの【0028】)や、例えば0.1?1質量%とすること(甲1gの実施例1?16);
・HC黄4(特許発明1における「成分C」相当成分)の含有量を好ましくは0.01?0.5質量%の範囲内とすること(甲1aの請求項2及び甲1dの【0032】、甲1gの実施例1?16);
・HC青2(特許発明1における「成分D」相当成分)の含有量を好ましくは0.01?1.0質量%の範囲内とすること(甲1aの請求項2及び甲1dの【0030】や、例えば0.1?1.5質量%とすること(甲1gの実施例1?16);
・上記塩基性茶16又は塩基性茶17、HC黄4、HC青2、及び塩基性青75以外にも、他の塩基性染料、HC染料又はその他の各種染料をも含有し得ること(甲1e【0050】?【0058】);
が、併せて記載されてはいる。

(b) しかしながら、甲1には、甲1発明において、
塩基性茶16又は塩基性茶17の含有量を0.05?1.0質量%、 HC黄4の含有量を0.01?0.5質量%、
HC青2の含有量を0.1?1.5質量%
とし、かつ、
塩基性青75に加えて、さらにHC青16(特許発明1の「成分A」相当成分)を0.5?3.0質量%の含有量で併せ含有せしめること
の具体的記載乃至示唆はない。

一方、甲1では、甲1発明において配合される染料成分及びその配合割合に関し、
・塩基性染料の配合量を多くして染毛力を高めようとすると、塩基性染料の皮膚への染着(地肌汚れ)が懸念されること(甲1b【0006】);
・塩基性染料にHC染料を組み合わせることで、結果的に塩基性染料の過剰配合が回避され、塩基性染料の過剰配合に起因する地肌汚れを抑制し得ること(甲1c【0013】);
及び
・塩基性染料75は、青色系の塩基性染料として通常用いられる塩基性青99に比して色落ちし難く変色も起こし難いこと(甲1c【0014】);
を踏まえた上で、甲1発明において、
塩基性青75の含有量を ≦0.5質量% とし、
塩基性茶16又は塩基性茶17の含有量を ≦0.5質量% とし、
HC黄4の含有量を ≦0.5質量% とし、
HC青2の含有量を ≦1.0質量% とする
と共に、
塩基性染料の合計含有量T BasicとHC染料(C)、(D)の合計含有量T HCとの質量比T Basic/T HCを1.5以下とする
こと(甲1a請求項2、甲1c【0018】、甲1d【0025】、【0028】、【0030】、【0032】、【0033】)により、塩基性染料やHC染料の皮膚への染着(地肌汚れ)がさらに良好に抑制されつつ、塩基性染料とHC染料との染毛効果が良好にバランスされる結果としてオーバータイム時の染色色調が一層安定化すること等が記載されている(甲1c【0018】)。
実際、甲1発明の「実施例」として記載されている甲1の表1?表2(甲1g)の各「実施例」の染毛料組成物の中でも、塩基性青75の含有量が0.1?0.6質量%と比較的多く、及び/又は、T Basic/T HC の比が1.5超である、実施例1?8の組成物に比して、塩基性青75の含有量が0.01?0.05質量%と比較的少なく、かつ、T Basic/T HC の比が1.5未満である実施例9?16の組成物の方が、総じて「染毛料の連用や酸化染毛剤使用による変色抑制」及び「オーバータイム時の変色抑制」について(各評価共、実施例1?8ではいずれも「○」であるのに対し、実施例9?16ではいずれも「◎」)のみならず、「地肌汚れ」(の抑制)及び「染毛力」についても優れることが示されている[ 実施例1?8では、「地肌汚れ」について、実施例3、4{塩基性青75の含有量(どちらも0.1質量%)、T Basic/T HC の比(実施例3では0.18、実施例4では0.42)共に、実施例1?8の中で最小}では「◎」、実施例1、2、5?8では「○」; 「染毛力」については実施例1?8のいずれも「3」?「4」; であるのに対し、実施例9?16では、いずれも、「地肌汚れ」について「◎」、「染毛力」について「4」?「5」; である]。

そして、これらの甲1の記載を併せみた当業者にしてみれば、甲1発明に対し、他の青系の塩基性染料である例えばHC青16(例えば特許明細書の【0019】や甲2(甲2a?甲2c)におけるHC青16に関する記載等からみて、HC青16は塩基性(カチオン性)染料に該当するものと認められる)を0.5質量%以上追加配合することで、塩基性染料の過剰配合となり(また、それに応じてT Basic/T HC の比も大きくなり)、少なくとも「地肌汚れ」の抑制性において甲1の実施例1?8の各染毛料組成物よりむしろ好ましくない結果が得られる可能性が高まる、ということはできるとしても、実施例9?16よりさらに好ましい結果をもたらすことを企図して、甲1発明に対し上記塩基性染料HC青16を0.5質量%以上追加配合することを、これらの甲1の記載に基づいて容易に想到し得た、ということはできない。

(c) さらに、甲1によれば、塩基性青75は、塩基性茶16及び/又は塩基性茶17(成分B相当)、HC青2(成分D相当)及びHC黄4(成分C相当成分)と共に、甲1発明における「必須成分」(甲1d【0023】)であることから、青色の塩基性染料という点において塩基性青75と共通するとはいえ、甲1発明における塩基性青75に代えてHC青16を、しかも0.5質量%以上?3.0質量%の高含有量で配合することも、甲1の記載により動機付けられていたとは到底いえない。

(d) そうすると、当業者であっても、甲1発明において、より十分な染色性を付与すると共に地肌汚れ(皮膚への染着)の抑制性をより向上せしめることを企図して、塩基性青75と共に含まれる各種染料中の塩基性茶16又は塩基性茶17の含有量を0.05?1.0質量%、HC黄4の含有量を0.01?0.5質量%、HC青2の含有量を0.1?1.5質量%とし、かつ、さらに塩基性染料であるHC青16を併せて配合せしめること、並びに、その際のHC16青の含有量を0.5質量%以上?3.0質量%とすることが、甲1の記載を以て動機付けられ得たということはできない。

b (a) また、甲2?甲6について、
・甲2には、「(a)式(I)のカチオン性アントラキノン誘導体」であるカチオン性直接染料、「(b)式(I)とは異なる少なくとも1つの更なるカチオン性直接染料」と共に「(c)少なくとも1つの両性および/または双性イオン性界面活性剤」、及び「(d)少なくとも1つのカチオン性ポリマー」を含む、ケラチン繊維を染色するための剤(甲2a請求項1)であって、ヒトの毛髪に対し強い着色性と共に長期にわたる高い光沢性をもたらす直接染料(甲2b【0005】、【0007】)について記載されており、上記成分(a)としてカチオン性(塩基性)のHC青16(「BluequatB」)を0.0005?0.5重量%の配合割合で(甲2a、甲2c)、成分(b)としてベーシックレッド51、へーシックイエロー87、ベーシックオレンジ31、ベーシックバイオレット2のいずれか1種以上0.0005?0.55重量%(甲2a、甲2d)と共に成分(c)、(d)と併せ配合してなる組成物(甲2g表2のE1?E4)が、「BluequatB」を含有しない組成物(甲2g表1のV1?V4)に比して光沢性が高いことを示す試験結果(甲2g【0161】)等も記載されている。

しかしながら、甲2には、毛髪に対し十分な染色性をもたらすと共に皮膚への染着性が抑制された染毛料組成物を得ることを企図して、HC青16を0.5?3.0質量%の含有量で、0.05?1.0質量%の塩基性茶16又は塩基性茶17、0.01?0.5質量%のHC黄4、及び0.1?1.5質量%のHC青2と共に配合してなる染毛料組成物を得ることを動機付ける記載乃至示唆は認められない。

・甲3には、「カチオン性ポリマーの含有量が0.01質量%未満であり、シリコーンの含有量が0.01質量%未満である毛髪化粧料組成物であって、 (A)ノニオン性ポリマー、(B)エステル油、及び(C)直接染料を含有する毛髪化粧料組成物」(甲3a請求項1)であって、シリコーン及びカチオン性ポリマーを実質的に含まない直接染料含有毛髪化粧料組成物において、ノニオン性ポリマー及びエステル油を併用することで毛髪塗布時の塗布感を向上せしめた毛髪化粧料組成物について記載されており(甲3a、甲3b)、直接染料として各種HC染料や塩基性染料を用い得ること(甲3c【0019】?【0020】)と共に、「参考処方例」として、ノニオン性ポリマー(ヒドロキシエチルセルロース)、エステル油(イソステアリン酸硬化ヒマシ油)、及び直接染料としてBasic Red 51、Basic Brown 16(塩基性茶16)、HC Blue No.2(HC青2)、HC Yellow No.4(HC黄4)、Basic Blue75(塩基性青75)のいずれか1種以上を配合した組成物(参考例1?参考例4)について、Basic Blue75(塩基性青75)をBasic Red 51又はHC Yellow No.4(HC黄4)と組み合わせて配合してなるもの(参考例3又は4)に比して、Basic Red 51、Basic Brown 16(塩基性茶16)及びHC Yellow No.4(HC黄4)を組み合わせて配合してなるもの(参考例1)や、HC Blue No.2(HC青2)を単独で配合してなるもの(参考例2)の方が、地肌汚れ(の抑制性)において優れていることを示す試験結果(甲3d)等も記載されている。

しかしながら、甲3には、直接染料として塩基性染料であるHC青16を用いることの具体的な記載乃至示唆は見当たらないし、ましてや、塩基性青75を配合する甲1発明のような染毛料組成物に対し、毛髪に対しさらに十分な染色性をもたらすと共に皮膚への染着性が一層抑制された染毛料組成物を得ることを企図して、塩基性青75に加えて(又は代えて)、さらにHC青16を0.5?3.0質量%の含有量で、0.05?1.0質量%の塩基性茶16又は塩基性茶17、0.01?0.5質量%のHC黄4の含有量、及び0.1?1.5質量%のHC青2と共に配合してなる染毛料組成物とすることを動機付ける記載乃至示唆は認められない。

・甲4には、次の3種の成分:海泥、カチオン性界面活性剤の1種以上、及び塩基性染料の1種以上 を含有することを特徴とする染毛料組成物や、さらにHC染料を含有する染毛料組成物(甲4a請求項1、5)について記載されており、塩基性染料及びカチオン性界面活性剤を用いたカラートリートメントにおいてさらに海泥を併せて配合することにより、塩基性染料の毛髪染着力を向上させつつ地肌汚れを抑制し、併せて処理後の毛髪感触等をも向上させ得ること(甲4b?甲4c)と共に、当該染毛料組成物の例として、塩基性染料であるBasic Blue 75(塩基性青75)0.02質量% 及びBasic Brown 16(塩基性茶16)0.2質量% と共に、HC Blue No.2(HC青2)0.5質量% 及びHC Yellow No.4(HC黄4)0.05質量% を併せ含む各種染毛料組成物(甲4f表3中の実施例23?25、27)等が記載されている。

しかしながら、甲4には、塩基性染料としてHC青16を用いることの具体的な記載乃至示唆は見当たらないし、ましてや、上記実施例23?25、27のような組成物において、毛髪に対しさらに十分な染色性をもたらすと共に皮膚への染着性が一層抑制された染毛料組成物を得ることを企図して、Basic Blue75(塩基性青75)に加えて(又は代えて)、さらにHC青16を0.5?3.0質量%の含有量で配合することを動機付ける記載乃至示唆は認められない。

・甲5には、「アルカリ剤を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを混合する酸化染毛剤において、前記第1剤と第2剤とを混合した直後に、バイコンティニュアスミクロエマルション相又はラメラ液晶相を含有することを特徴とする酸化染毛剤」(甲5a請求項1)について記載されており、併せて、ダメージを受けた毛髪においてはキューティクルが部分的に失われていることにより、同一の染毛剤を使用した場合でもダメージ部分を有する毛先付近と健常毛髪である根元部分とで仕上がりの髪色が異なる場合があること等が記載されている。
また、甲6には、「毛髪の表面に付着した塩基性染料の密着性を高める4級アンモニウム塩の共重合体と、 浸透性染料が内部に浸透した前記毛髪の表面をコーティング被膜するコーティング膜形成剤と、 植物エキスを含有することを特徴とする染毛料」(甲6a請求項1)について記載されており、併せて、HC染料は、分子径が小さくキューティクルの隙間から毛髪の内部に浸透して分子間力(ファンデルワールス力)により着色する染料である一方、塩基性染料(イオン性染料)は分子量が大きく、HC染料のようにキューティクルの隙間から毛髪の内部に浸透することができないが、毛髪を中性からアルカリ性の状態にしてマイナスイオンになった状態の毛髪に対して毛髪の表面にイオン結合で着色する染料であること(甲6b【0002】?【0003】、甲6c、甲6d)等が記載されている。

しかしながら、そもそも甲5は、アルカリ剤を含む第1剤と酸化剤を含む第2剤とを混合して用いる二剤型の酸化染毛剤であって、塩基性染料及びHC染料を直接染料として用いる染毛料組成物に関するものではない(甲5a請求項1)。また、これら甲5、甲6にも、塩基性染料としてHC青16を用いることの具体的な記載乃至示唆は見当たらないし、ましてや、より十分な染色性を付与すると共に地肌汚れ(皮膚への染着)の抑制性をより向上せしめることを企図して、塩基性茶16又は塩基性茶17の含有量を0.05?1.0質量%、HC黄4の含有量を0.01?0.5質量%、HC青2の含有量を0.1?1.5質量%とし、かつ、さらにHC青16を0.5?3.0質量%の含有量で配合してなる染毛料組成物とすることを動機付ける記載乃至示唆は見出せない。

(b) そうすると、甲1のみならず甲2?甲6の記載を併せ踏まえたとしても、甲1発明において、より十分な染色性を付与すると共に地肌汚れ(皮膚への染着)の抑制性をより向上せしめることを企図して、塩基性茶16又は塩基性茶17の含有量を0.05?1.0質量%、HC黄4の含有量を0.01?0.5質量%、HC青2の含有量を0.1?1.5質量%とすると共に、塩基性青75に加えて(又は代えて)、さらに塩基性染料であるHC青16を併せて配合せしめること、並びに、その際のHC16青の含有量を0.5質量%以上?3.0質量%とすることが、当業者にとり動機付けられていたということはできない。

(イ) そして、以上の(ア)での[要件1]についての検討を踏まえれば、甲1発明において、「成分A:HC青16」を「0.5?3.0質量%」の含有量とすることを含む[要件1]を満たすことを前提として規定される[要件2]を満たす組成とすることもまた、甲1?甲6の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

(ウ) してみると、甲1発明は、甲1に記載された発明、若しくは、甲1に記載された発明及び甲1?甲6のいずれかの記載に基づき、当業者が容易に想到し得た発明である、ということはできない。

(エ) そして、特許発明の奏する効果に関し、特許明細書の表1?表4には、特許発明の「実施例」としての各種カラーリンス(カラートリートメント)(表1)並びにカラーシャンプー(表3)における各染色性、皮膚汚れ(の抑制)、堅牢性、放置時間延長時の変色抑制性及び色調に関する試験結果が、「比較例」としての各種カラーリンス(カラートリートメント)(表2)並びにカラーシャンプー(表4)における各試験結果と共に記載されているところ、それら試験結果をみるに、特許発明1の上記[要件1]及び[要件2]を共に満たす実施例の各種染毛料組成物(実施例1-1、1-5、1-8、1-10?1-17(以上カラーリンス(カラートリートメント))、実施例2-1、2-3?2-8、2-10(以上カラーシャンプー)は、いずれも、成分A:HC青16に相当する青色塩基性染料として(当該成分Aの代わりに)塩基性青75を0.02質量%又は0.05質量%含む比較例(比較例1-6?1-10、2-2。なお、これら塩基性青75を含む比較例の態様は、当該塩基性青75の含有量等からみて、甲1発明の態様に相当するものともいえる)や、成分A?成分Dのいずれかを含まない比較例(比較例1-1?1-5、2-1)に比して、少なくとも「染色性」、「皮膚汚れ」に係る評価のみならず「堅牢性」及び「変色抑制」に係る評価のいずれもが併せて「◎」又は「○」であることが示されている。
即ち、特許明細書には、特許発明1に係る染毛料組成物が、上記相違点1に係る要件を満たす成分組成のものとすることにより、少なくとも十分な染色性及び皮膚汚れの抑制性と共に堅牢性や変色抑制性においても併せ優れるという、甲1や甲2?甲6の記載のいずれからも予期し得ない格別な効果をもたらすものであることが、そのことを例証する試験結果と共に記載されているといえる。

ウ なお、申立人は、異議申立書において、概要次の事項(ア)及び(イ):
(ア) 甲1の表1中には、「実施例1」として、塩基性青0.6質量%を塩基性茶0.4質量%、HC青20.4質量%及びHC黄40.1質量%と共に含む染毛料組成物が記載されていること、甲2には毛を強く着色すると同時に非常に高い光沢を毛にもたらす新規な直接染料としてHC青16が記載されていること、及び、甲3には、(甲1の)塩基性青75が塩基性茶16、HC青2及びHC黄4に比して地肌汚れを生じ易い直接染料であることが記載されていることから、甲1の上記塩基性青75に代えて成分A:HC青16を0.6質量%含有せしめることは、当業者が容易に想到し得たことであり; また、そうであれば、(成分A+成分B)/(成分C+成分D)を2.0とすることも併せて容易想到であること;
(イ) 甲1の【0018】には、塩基性染料の合計含有量とHC染料の合計含有量との質量比に着目してそれらの染料の皮膚への染着(地肌汚れ)や塩基性染料とHC染料との染毛効果を調整するという技術思想が開示されているから、染着力と地肌汚れを改善するために上記質量比を調整してみることは当業者が容易になし得ること;
を述べつつ、これらの事項に基づき、特許発明1がこれら甲号証の記載に基づいて容易に想到し得たものであり、その効果もそれら甲号証の記載から当業者にとり予測可能であった旨を主張する。
しかしながら、申立人の引用する「実施例1」の態様を含む甲1の請求項1の発明(上のアの「甲1発明」)において、必須成分である塩基性青75に代えてHC青16を(しかも0.5質量%以上の含有量で)含有せしめることが、甲1?甲6の記載を踏まえても当業者にとり到底容易想到とはいえず、また、当該HC青16を0.5?3.0質量%含み上記相違点1に係る要件を満たす特許発明1が甲1?甲6のいずれからも予期し得ない格別の効果を奏することは、上のイ(ア)?(エ)で検討・説示したとおりである。
よって、上の(ア)、(イ)はいずれも失当であり、これらの事項に基づく申立人の主張は採用できない。

エ したがって、特許発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、又は、甲1に記載された発明及び甲1?甲6のいずれかに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2-2)特許発明2?4について
特許発明2?4は、いずれも特許発明1を直接又は間接的に引用してなる発明である。
そうすると、これらの特許発明2?4についてはいずれも、特許発明1に係る上記相違点1以外の相違点の有無、並びにその容易想到性等について検討するまでもなく、特許発明1について(2-1)で述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明に基づいて、又は、甲1に記載された発明及び甲1?甲6のいずれかに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである、ということはできない。

(3)小活
以上述べたとおりであるから、特許発明1?4は、そのいずれも、甲第1号証に記載された発明及び甲第1?3、5、6号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、それら特許発明1?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
よって、申立人による申立理由1は、理由がない。


2-2.申立理由2について

(1)甲4に記載された発明
摘記甲4aの請求項1及び請求項5によれば、甲4には、次の発明:
「 下記の3種の成分:
・海泥
・カチオン性界面活性剤の1種以上
・塩基性染料の1種以上
を含有し、さらに
HC染料
を含有することを特徴とする染毛料組成物。 」
(以下、「甲4発明」ということがある)が記載されているものと認められる。

(2)対比・判断

(2-1)特許発明1について
ア 特許発明1と甲4発明とを対比するに、
・甲4発明の「塩基性染料」は、特許発明1の「HC青16」及び「塩基性茶16及び塩基性茶17からなる群より選ばれる1以上の染料」に相当すること;
・甲4発明の「HC染料」は、特許発明1の「HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料」及び「HC青2」に相当すること;
・甲4発明は、「海泥」及び「カチオン性界面活性剤の1種以上」を併せ含むものであるが、特許発明1ではそのような「海泥」や「カチオン性界面活性剤」の1種以上をも併せ含む染毛料組成物の態様を特段除外するものではないから、これらの点は相違点とはならないこと;
を踏まえると、両者は
「 塩基性染料及びHC染料を含有する染毛料組成物 」
の点で一致するが、次の点(以下、単に「相違点2」ということがある)において相違する。
[相違点2]:
特許発明1では、次の[要件3]及び[要件4]:
[要件3] 「塩基性染料」が、次の「成分A」及び「成分B」:
「成分A:HC青16」
「成分B:塩基性茶16及び塩基性茶17からなる群より選ばれる1以上の染料」
であり、
「前記成分Aの含有量が0.5?3.0質量%」
「前記成分Bの含有量が0.05?1.0質量%」
であり、かつ、
「HC染料」が、次の「成分C」及び「成分D」:
「成分C:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料」
「成分D:HC青2」
であり、
「前記成分Cの含有量が0.01?0.5質量%」
「前記成分Dの含有量が0.1?1.5質量%」
である
[要件4] [要件3]の「成分A」?「成分D」において
「 [{(成分Aの含有量)+(成分Bの含有量)}
/{(成分Cの含有量)+(成分Dの含有量)}]
が0.1?5.0である 」
を共に満たすものである; のに対し、
甲4発明には、上記[要件3]及び[要件4]を共に満たすことの限定はない;


イ 以下、上記相違点2について検討する。

(ア) まず、相違点2の[要件3]について検討する。

a(a) 甲4には、甲4発明の染毛料組成物に関し、塩基性染料及びカチオン性界面活性剤を用いたカラートリートメントにおいてさらに海泥を併せて配合することにより、塩基性染料の毛髪染着力を向上させつつ地肌汚れを抑制し、併せて処理後の毛髪感触等をも向上させ得ること(甲4b?甲4c)や、当該染毛料組成物の例として、塩基性染料であるBasic Blue 75(塩基性青75)0.02質量% 及びBasic Brown 16(塩基性茶16)0.2質量% と共に、HC Blue No.2(HC青2)0.5質量% 及びHC Yellow No.4(HC黄4)0.05質量% を併せ含む各種染毛料組成物(甲4f表3中の実施例23?25、27)等が記載されている。

(b) しかしながら、甲4には、塩基性染料としてHC青16を用いることの具体的な記載乃至示唆は見当たらない。また、甲4には、塩基性染料の含有量は好ましくは0.1?0.3質量%の範囲内であって、0.3質量%を超えると、皮膚への染着による地肌汚れが生じる恐れがあることが記載されている(甲4d【0036】)ことから、例えば上記実施例23?25、27のような組成物において、毛髪に対しさらに十分な染色性をもたらすと共に皮膚への染着性が一層抑制された染毛料組成物を得ることを企図して、Basic Blue75(塩基性青75)に加えて(又は代えて)さらにHC青16を、しかも0.5質量%以上の含有量で配合することが、甲4の記載から動機付けられているということもできない。
そうすると、当業者にとってみても、甲4発明において、より十分な染色性を付与すると共に地肌汚れ(皮膚への染着)の抑制性をより向上せしめることを企図して、塩基性茶16又は塩基性茶17を0.05?1.0質量%、HC黄4を0.01?0.5質量%、及びHC青2を0.1?1.5質量%とすると共に、さらに塩基性染料であるHC青16を併せて配合せしめること、並びに、その際のHC16青の含有量を0.5質量%以上?3.0質量%とすることが、甲4の記載を以て動機付けられ得たということはできない。

b また、甲1?甲3,甲5、甲6の各記載事項については、2-1.(2)(2-1)イ(ア)a?bで述べたとおりであるから、甲4のみならず甲1?甲3、甲5及び甲6の記載を併せ踏まえたとしても、甲4発明において、より十分な染色性を付与すると共に地肌汚れ(皮膚への染着)の抑制性をより向上せしめることを企図して、塩基性茶16又は塩基性茶17の含有量を0.05?1.0質量%、HC黄4の含有量を0.01?0.5質量%、HC青2の含有量を0.1?1.5質量%とし、かつ、さらに塩基性染料であるHC青16を併せて配合せしめること、並びに、その際のHC16青の含有量を0.5質量%以上?3.0質量%とすることが、当業者に対し動機付けられていたということはできない。

(イ) そして、以上の(ア)での[要件3]についての検討を踏まえれば、甲4発明において、「成分A:HC青16」を「0.5?3.0質量%」の含有量とすることを含む[要件3]を満たすことを前提として規定される[要件4]を満たす組成とすることもまた、甲1?甲6の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

(ウ) してみると、甲4発明は、甲4に記載された発明、若しくは、甲4に記載された発明及び甲1?甲6のいずれかの記載に基づき、当業者が容易に想到し得た発明である、ということはできない。

(エ) そして、2-1.(2)(2-1)イ(エ)で述べたとおり、特許発明1は、上記相違点2に係る要件を満たす成分組成のものとすることにより、少なくとも十分な染色性及び皮膚汚れの抑制性と共に堅牢性や変色抑制性においても併せ優れるという、甲1?甲6の記載のいずれからも予期し得ない、特許明細書に記載された格別な効果をもたらすものである。

ウ なお、申立人は、異議申立書において、特許発明1と甲4に記載された発明との相違点に関し、概要次の事項(ア)?(ウ):
(ア) 甲4記載の発明において、毛を強く着色すると同時に高い光沢をもたらすHC青16を使用することは甲2の記載に基づき当業者が容易になし得ることであり;
また、その際、甲1の【0006】や甲3の【0024】の記載から、甲4記載の発明において甲2記載のHC青16の含有量をどの程度とするかは、染着力及び地肌汚れを勘案して当業者が適宜設定し得る事項であり;
さらに、甲3の【0084】(表2)の記載から看取できるとおり、塩基性青75が地肌汚れを生じ易いことは公知であるから、HC青16が塩基性青75に比して皮膚汚れを生じにくいことは当業者が予想し得たこと;
(イ) 成分A:HC青16と同様に、染着力及び地肌汚れを勘案して成分B?成分Dの各染料の含有量をどの程度とするかについても、当業者が適宜設定し得ること;
(ウ) 甲1の【0018】の記載をも勘案すれば、染着力及び地肌汚れを改善するために塩基性染料とHC染料の質量比を調整して0.1?5.0とすることにもまた、当業者にとり格別な困難性を有することではなく;
また、特許明細書の実施例1-1、実施例2-1、実施例1-7及び実施例2-11における(成分A+成分B)/(成分C+成分D)の比の値と「ダメージ毛に対する色ムラ」の評価結果との対比から、HC染料の割合が大きくなるとダメージ毛に対する色ムラがより少なくなることが把握されるが、かかる効果は甲5の【0005】、【0006】や甲6の【0018】や【0027】の記載を踏まえれば当業者が予測し得たこと;
を述べつつ、特許発明1は甲4、甲1?甲3、甲5及び甲6の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることを主張する。
しかしながら、上のア?イで検討し説示したとおり、甲4に記載された発明において上記相違点2に係る[要件3]及び[要件4]を満たす染毛料組成物とすることは、甲1?甲6の記載を踏まえても当業者にとり容易に想到し得たことではなく、また、特許発明1は、当該相違点2に係る[要件3]及び[要件4]を満たすことで、甲1?甲6から予期し得ない格別の効果がもたらすものであるから、上の(ア)?(ウ)はいずれも失当であり、これらの事項に基づく申立人の主張は何ら採用の限りではない。

エ したがって、特許発明1は、甲4に記載された発明に基づいて、又は、甲4に記載された発明及び甲1?甲6のいずれかに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2-2)特許発明2?4について
特許発明2?4は、いずれも特許発明1を直接又は間接的に引用してなる発明である。
そうすると、これらの特許発明2?4についてはいずれも、特許発明1に係る上記相違点2以外の相違点の有無、並びにその容易想到性等について検討するまでもなく、特許発明1について(2-1)で述べたのと同様の理由により、甲4に記載された発明に基づいて、又は、甲4に記載された発明及び甲1?甲6のいずれかに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)小活
以上述べたとおりであるから、特許発明1?4は、そのいずれも、甲第4号証に記載された発明及び甲第1?6号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、それら特許発明1?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
よって、申立人による申立理由2は、理由がない。


3 申立理由3について

本項3では、まず、3-1.において、特許明細書の記載を検討し、本件特許の請求項1?4に係る発明が特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものであることを示した上で、その後の3-2.において、3-1.での検討・説示を踏まえ、申立理由3に関する申立人の[第3]3(1)及び(2)がいずれも当を得たものでないことを示す。

3-1.特許発明1?4についてのサポート要件に係る判断

(1) 特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2) そこで、(1)の点を踏まえ、以下検討する。

ア 本件特許の特許請求の範囲に記載された請求項1?4に係る発明は、上の[2]のとおりである。

イ 一方、特許明細書には、次のような記載がある(下線は当審による)。

(i) 「 【0003】
・・・毛髪や頭皮へのダメージが小さい処理剤として、塩基性染料やHC染料を用いた染毛料が知られている。上記染毛料の中でも、洗髪時のシャンプーと同時に毛髪を染色することができるカラーシャンプーや、洗髪後のリンス、トリートメントと同時に毛髪を染色することができるカラーリンス又はカラートリートメントは、簡便性に優れ、さらに、染色の均一性にも優れるという利点がある(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、従来の上記染毛料は、皮膚への染着性が高く、即ち、皮膚に付着した場合に皮膚に色がつきやすいという欠点があり、特に、カラーシャンプー、カラーリンスやカラートリートメントの場合には、洗髪時に手袋等を用いずに使用するため、指先や頭皮が着色してしまう問題があった。上記着色を抑制するために、染毛料中の染料濃度を低くする場合には、毛髪に対する染色性が低下する。このため、毛髪に対する染色性は高く、皮膚への染着性は抑えられた染毛料が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2014-101292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、毛髪に対する十分な染色性を有するにもかかわらず、皮膚への染着性は抑えられた染毛料組成物を提供することである。
・・・
【発明の効果】
【0013】
本発明の染毛料組成物は、十分に優れた毛髪に対する染色性を有する。このため、カラーシャンプー、カラーリンスやカラートリートメントとして用いる場合には、少ない回数の使用によって、十分に毛髪の染色効果を発揮し得る。また、ヘアマニキュアとして用いる場合にも、比較的短時間の施術時間で十分な染色効果を得ることができる。さらに、本発明の染毛料組成物は、皮膚への染着性が低く、使用時の指や頭皮の着色が極めて少ない。 」

(ii) 「 【0016】
本発明の染毛料組成物は、成分A、成分B、成分C、及び成分Dを少なくとも含む。本発明の染毛料組成物は、用途に応じて、さらに、必須成分である上記成分A?D以外の成分を含んでいてもよい。中でも、本発明の染毛料組成物がカラーリンス又はカラートリートメントである場合には、本発明の染毛料組成物は、さらに、カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、及びシリコーン油からなる群より選ばれる1以上の成分を含むことが好ましい。本明細書において、上記「カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、及びシリコーン油からなる群より選ばれる1以上の成分」を「成分E」と称する場合がある。
【0017】
本発明の染毛料組成物は、さらに上記A?E以外の成分(他の成分)を含んでいてもよい。上記の成分、例えば、成分A、成分B、成分C、成分D、成分Eや他の成分は、それぞれ、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が用いられていてもよい。 」

(iii) 「 【0019】
[成分A:HC青16]
・・・。成分Aは、毛髪に対する染色性が非常に優れるにもかかわらず、皮膚への染着性が極めて低い。このため、成分Aを用いることにより、毛髪への高い染色性と皮膚への染着の抑止性を両立した染毛料組成物を得ることができる。
・・・
【0020】
成分Aは、・・・、1-プロパンアミニウム,3-[[9,10-ジヒドロ-4-(メチルアミノ)-9,10-ジオキソ-1-アントラセニル]アミノ]-N,N-ジメチル-N-プロピル-,ブロミド:1-Propanaminium,3-[[9,10-dihydro-4-(methylamino)-9,10-dioxo-1-anthracenyl]amino]-N,N-dimethyl-N-propyl-,bromideである。
【0021】
成分Aは、市販品を用いることもできる。成分Aの市販品としては、例えば、アルテックケミカル社製、商品名「HC Blue No.16」が挙げられる。
【0022】
本発明の染毛料組成物100質量%中の、成分Aの含有量は、特に限定されないが、0.05?3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.2?2.0質量%、さらに好ましくは0.5?1.0質量%である。上記含有量が0.05質量%以上であると、毛髪に対する染色性、特に白髪を染色する効果がより向上するため好ましい。上記含有量が3.0質量%以下であると、安全性がより一層向上するため好ましい。また、水洗後に水に溶けだした染料によるタオルや衣服等への色移りがより一層抑制されるため好ましい。 」

(iv) 「 【0023】
[成分B:塩基性茶16及び塩基性茶17からなる群より選ばれる1以上の染料]
成分Bは、・・・、塩基性茶16及び/又は塩基性茶17である。上記塩基性茶16は、・・・、[8-[(p-アミノフェニル)アゾ]-7-ヒドロキシ-2-ナフチル]トリメチルアンモニウムクロリド:[8-[(p-Aminophenyl)azo]-7-hydroxy-2-naphthyl]trimethylammonium chlorideである。上記塩基性茶17は、・・・、[8-[(4-アミノ-3-ニトロフェニル)アゾ]-7-ヒドロキシ-2-ナフチル]トリメチルアンモニウムクロリド:[8-[(4-Amino-3-nitrophenyl)azo]-7-hydroxy-2-naphthyl]trimethylammonium chlorideである。成分Bは、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が用いられていてもよい。
【0024】
成分Bは、市販品を用いることもできる。塩基性茶16の市販品としては、例えば、センシエント テクノロジーズ ジャパン株式会社製、商品名「ARIANOR MAHOGANY」;保土谷化学工業株式会社製、商品名「AHC BROWN SP」が挙げられる。塩基性茶17の市販品としては、例えば、センシエント テクノロジーズ ジャパン株式会社製、商品名「ARIANOR SIENNA BROWN」が挙げられる。
【0025】
本発明の染毛料組成物100質量%中の、成分Bの含有量は、特に限定されないが、0.05?1.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1?0.5質量%である。上記含有量が0.05質量%以上であると、毛髪に対する染色性、特に白髪を染色する効果がより向上するため好ましい。上記含有量が1.0質量%以下であると、安全性がより一層向上するため好ましい。また、水洗後に水に溶けだした染料によるタオルや衣服等への色移りがより一層抑制されるため好ましい。上記成分Bの含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての成分Bの含有量の合計量である。 」

(v) 「 【0026】
[成分C:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料]
成分Cは、・・・、HC黄4及び/又はHC黄2である。上記HC黄4は、・・・、2-[[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-4-ニトロフェニル]アミノ]エタノール:2-[[2-(2-hydroxyethoxy)-4-nitrophenyl]amino]ethanolである。上記HC黄2は、・・・、2-[(2-ニトロフェニル)アミノ]エタノール:2-[(2-Nitrophenyl)amino]ethanolである。成分Cは、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が用いられていてもよい。
【0027】
成分Cは、市販品を用いることもできる。HC黄4の市販品としては、例えば、テルカ社製、商品名「COLOREX HCY4」が挙げられる。HC黄2の市販品としては、例えば、テルカ社製、商品名「COLOREX HCY2」が挙げられる。
【0028】
本発明の染毛料組成物100質量%中の、成分Cの含有量は、特に限定されないが、0.01?0.5質量%が好ましく、より好ましくは0.01?0.2質量%、さらに好ましくは0.02?0.1質量%である。上記含有量が0.01質量%以上であると、堅牢性がより向上するため好ましい。上記含有量が0.5質量%以下であると、安全性がより一層向上するため好ましい。また、水洗後に水に溶けだした染料によるタオルや衣服等への色移りがより一層抑制されるため好ましい。上記成分Cの含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての成分Cの含有量の合計量である。
【0029】
成分Cとしては、耐光性(光安定性)により一層優れる観点から、HC黄2がより好ましい。即ち、成分CはHC黄2を必須成分として含むことが好ましく、HC黄2であることがより好ましい。成分C100質量%中のHC黄2の含有量は、50.0質量%以上(即ち、50.0?100質量%)が好ましく、より好ましくは70.0質量%以上、さらに好ましくは90.0質量%以上である。成分CはHC黄2のみからなることが最も好ましい。成分CがHC黄2を必須成分として含むことにより、黄色の退色がより一層抑制されるため好ましい。特に、黄色の染料を用いて調製した灰色を呈色する染毛料の場合には、黄色成分の退色により、染毛料全体の呈する色調の変化が大きいため、上記範囲でのHC黄2の使用が有効である。

(vi) 「 【0030】
[成分D:HC青2]
・・・HC青2は、・・・、2,2’-[[4-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-3-ニトロフェニル]イミノ]ビスエタノール:2,2’-[[4-[(2-Hydroxyethyl)amino]-3-nitrophenyl]imino]bisethanolである。
【0031】
成分Dは、市販品を用いることもできる。成分Dの市販品としては、例えば、テルカ社製、商品名「COLOREX HCB2」が挙げられる。
【0032】
本発明の染毛料組成物100質量%中の、成分Dの含有量は、特に限定されないが、0.1?1.5質量%が好ましく、より好ましくは0.2?1.5質量%、さらに好ましくは0.5?1.0質量%である。上記含有量が0.1質量%以上であると、堅牢性がより向上するため好ましい。さらに、青色の染料として、成分Aと成分Dを組み合わせることにより、染色速度を適切に調節できるため、ダメージ毛(例えば、ブリーチ毛)に対する染色ムラが生じにくくなり好ましい。これは、以下の理由によるものと推定される。成分Aはカチオン性であるため、染着速度がはやく堅牢性にも優れるがダメージ毛や損傷部位に吸着しやすく染色ムラがでやすい特性を有する。一方、成分Dはノニオン性であるため損傷の有無によらず均一に吸着しやすい特性を有する。上記含有量が1.5質量%以下であると、安全性がより一層向上するため好ましい。また、水洗後に水に溶けだした染料によるタオルや衣服等への色移りがより一層抑制されるため好ましい。 」

(vii) 「 【0033】
本発明の染毛料組成物は、ブリーチ処理された毛等のダメージ毛に対する色ムラがより少なくなる観点から、塩基性染料に分類される成分A及び成分Bの合計量と、HC染料に分類される成分C及び成分Dの合計量の質量比[{(成分Aの含有量)+(成分Bの含有量)}/{(成分Cの含有量)+(成分Dの含有量)}]は、特に限定されないが、0.1?10.0が好ましく、より好ましくは0.5?5.0である。 」

(viii) 「 【0034】
以下に、本発明の染毛料組成物がカラーリンス、カラートリートメント、及びヘアマニキュアのうちのいずれかである場合の好ましい任意成分について説明する。
【0035】
[成分E:カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、及びシリコーン油からなる群より選ばれる1以上の成分]
本発明の染毛料組成物がカラーリンス、カラートリートメント、及びヘアマニキュアのうちのいずれかである場合、本発明の染毛料組成物は、成分Eを含むことが好ましい。成分Eは、カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、及びシリコーン油からなる群より選ばれる1以上の成分(少なくとも1の成分)である。成分Eを含むと、染毛料組成物による水洗時のきしみ感の低減の効果が向上するため好ましい。成分Eは、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が用いられていてもよい。
【0036】
上記カチオン性界面活性剤(カチオン界面活性剤)としては、例えば、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩、アルキルアミン、脂肪酸アミドアミン等が挙げられる。
・・・
【0041】
上記カチオン性ポリマー(カチオンポリマー)としては、例えば、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等の第4級窒素含有セルロースエーテル誘導体;塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガム等の第4級窒素含有グァーガム誘導体;カチオン性澱粉、ジアリル第4級アンモニウム塩重合物、ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、第4級化ポリビニルピロリドン誘導体、ポリグリコールポリアミン縮合物、アジピン酸・ジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミン共重合物、カチオン化デキストラン等が挙げられる。上記の中でも、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、ジアリル第4級アンモニウム塩重合物、ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物が好ましく、より好ましくは、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウムである。
【0042】
上記シリコーン油としては、例えば、メチルポリシロキサン、平均重合度が650?7000である高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノール等の鎖状シリコーン;メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン;アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等のアミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の変性シリコーン等が挙げられる。中でも、鎖状シリコーン、アミノ変性シリコーンが好ましい。
【0043】
本発明の染毛料組成物が成分Eを含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、成分Eの含有量は、特に限定されないが、0.5?10.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0?5.0質量%である。上記含有量が0.5質量%以上であると、水洗時にきしみ感がより一層低減するため好ましい。上記含有量が10.0質量%を超える場合には、連続使用により成分Eが毛髪に蓄積され、毛髪にごわつきが生じる場合がある。上記成分Eの含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての成分Eの含有量の合計量である。
【0044】
・・・、本発明の染毛料組成物は、多価アルコールを含むことが好ましい。上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、グルコース、マルトース、マルチトール、スクロース、マンニトール、ソルビトール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等が挙げられる。本発明の染毛料組成物100質量%中の、多価アルコールの含有量は、特に限定されないが、染料の溶解性の観点から、0.5?10.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0?5.0質量%である。本発明の染毛料組成物が多価アルコールを含む場合、上記多価アルコールの含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての多価アルコールの含有量の合計量である。
【0045】
・・・、本発明の染毛料組成物は、高級アルコールを含むことが好ましい。上記高級アルコールとしては、例えば、炭素数16?22のアルコールが挙げられ、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。本発明の染毛料組成物が高級アルコールを含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、高級アルコールの含有量は、特に限定されないが、経時での安定性の観点から、1.0?10.0質量%が好ましく、より好ましくは3.0?8.0質量%である。上記高級アルコールの含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての高級アルコールの含有量の合計量である。
【0046】
・・・、本発明の染毛料組成物は、炭化水素油を含むことが好ましい。上記炭化水素油としては、例えば、α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等が挙げられる。本発明の染毛料組成物が炭化水素油を含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、炭化水素油の含有量は、特に限定されないが、塗布時の染毛料組成物のなじみやすさの観点から、0.5?10.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0?5.0質量%である。上記炭化水素油の含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての炭化水素油の含有量の合計量である。
【0047】
本発明の染毛料組成物は、毛髪の染色性をより一層向上させる観点から、脂肪酸部分の炭素数が12以下であるエステル化合物を含んでもよい。上記エステル化合物としては、例えば、カプリン酸グリセリル等のカプリン酸エステル、カプリル酸エステル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル等が挙げられる。本発明の染毛料組成物が上記エステル化合物を含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、上記エステル化合物の含有量は、特に限定されないが、染色性の観点から、0.5?5.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0?3.0質量%である。上記エステル化合物の含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての上記エステル化合物の含有量の合計量である。
【0048】
・・・、本発明の染毛料組成物は、経時での安定性観点から、ノニオン性界面活性剤(ノニオン界面活性剤)を含んでいてもよい。上記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油、脂肪酸アルキロールアミド等が挙げられる。本発明の染毛料組成物がノニオン性界面活性剤を含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、ノニオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、経時での安定性の観点から、0.5?10.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0?5.0質量%である。上記ノニオン性界面活性剤の含有量は、本発明の染毛料組成物中の全てのノニオン性界面活性剤の含有量の合計量である。
【0049】
・・・、本発明の染毛料組成物は、水を含む。水は、特に限定されないが、精製水が好ましい。本発明の染毛料組成物100質量%中の、水の含有量は、特に限定されないが、50.0?90.0質量%が好ましく、より好ましくは60.0?80.0質量%である。
【0050】
・・・、本発明の染毛料組成物は、l-メントール、1,8-シネオール、カンファ等の清涼剤;フェノキシエタノール等の防腐剤;オリーブ油、マカデミアナッツ油、アルガンオイル等の植物油;シリカ等の吸湿剤;ヒアルロン酸又はその誘導体、コラーゲン又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、抗酸化剤、金属封鎖剤、ビタミン類、動植物抽出エキス、パール化剤、着色剤、香料等を含んでいてもよい。 」

(ix) 「 【0051】
以下に、本発明の染毛料組成物がカラーシャンプーである場合の好ましい任意成分について説明する。
【0052】
・・・、本発明の染毛料組成物は、洗浄性の観点から、アニオン性界面活性剤(アニオン界面活性剤)、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる1以上の界面活性剤(少なくとも1の界面活性剤)を含む。中でも、染色性を維持しながら洗浄性を向上させる観点から、ノニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤が好ましい。本発明の染毛料組成物100質量%中の、界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、染色性と洗浄性の観点から、1.0?20.0質量%が好ましく、より好ましくは5.0?15.0質量%である。上記界面活性剤の含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての界面活性剤の含有量の合計量である。
【0053】
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ミリスチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;テトラデセンスルホン酸ナトリウム等のα-オレフィンスルホン酸塩;ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、オレオイルメチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム等のN-アシルメチルタウリン塩;スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等のスルホコハク酸アルキル塩;スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウリル二ナトリウム等のスルホコハク酸ポリオキシエチレンアルキル塩;ラウリルリン酸ナトリウム、セチルリン酸ナトリウム、セチルリン酸ジエタノールアミン等のモノアルキルリン酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸トリエタノールアミン等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ラウロイルサルコシンカリウム、ラウロイルサルコシントリエタノールアミン、ミリストイルサルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシン塩;ラウロイルメチルアラニンナトリウム、ラウロイルメチルアラニントリエタノールアミン、ミリストイルメチルアラニンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルアラニンナトリウム等のN-アシル-N-メチル-β-アラニン塩;ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン等のN-アシルグルタミン酸塩;ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム等のN-アシルグリシン塩;ラウリルグリコール酢酸ナトリウム(ドデカン-1,2-ジオール酢酸ナトリウム)、ラウリルグリコール酢酸カリウム、ミリスチルグリコール酢酸ナトリウム、ミリスチルグリコール酢酸カリウム、パルミチルグリコール酢酸ナトリウム、パルミチルグリコール酢酸カリウム、ステアリルグリコール酢酸ナトリウム、ステアリルグリコール酢酸カリウム、ベヘニルグリコール酢酸ナトリウム、ベヘニルグリコール酢酸カリウム等のアルキルエーテルグリコール酢酸塩等が挙げられる。中でも、染色性の観点から、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグルタミン酸塩等のアミノ酸由来のアニオン性界面活性剤が好ましい。本発明の染毛料組成物がアニオン性界面活性剤を含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、アニオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、染色性と洗浄性の観点から、0.5?5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5?2.0質量%である。上記アニオン性界面活性剤の含有量は、本発明の染毛料組成物中の全てのアニオン性界面活性剤の含有量の合計量である。
【0054】
上記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のアルキルアミドベタイン型両性界面活性剤;アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N-アシルアミノエチル-N-2-ヒドロキシエチルグリシン塩等のグリシン型両性界面活性剤;アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤;N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-プロピルスルホン酸塩、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-(2-ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩及びN-脂肪酸アミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-(2-ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩、アルキルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤;アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリニウム型両性界面活性剤等が挙げられる。中でも、洗浄性の観点から、アルキルアミドベタイン型両性界面活剤が好ましい。本発明の染毛料組成物が両性界面活性剤を含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、両性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、洗浄性の観点から、1.0?20.0質量%が好ましく、より好ましくは5.0?15.0質量%である。上記両性界面活性剤の含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての両性界面活性剤の含有量の合計量である。
【0055】
上記ノニオン性界面活性剤としては、本発明の染毛料組成物がカラーリンス、カラートリートメント、及びヘアマニキュアのうちのいずれかである場合の任意成分として例示したノニオン性界面活性剤が挙げられる。中でも、粘性の付与の観点から、脂肪酸アルキロールアミドが好ましい。本発明の染毛料組成物がノニオン性界面活性剤を含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、ノニオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、粘性の付与の観点から、0.5?10.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0?5.0質量%である。上記ノニオン性界面活性剤の含有量は、本発明の染毛料組成物中の全てのノニオン性界面活性剤の含有量の合計量である。
【0056】
上記カチオン性界面活性剤としては、成分Eとして例示されたカチオン性界面活性剤が挙げられる。中でも、使用後の毛髪の風合いを良好とする観点から、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベへニルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウム、塩化アルキル(20?22)トリメチルアンモニウムが好ましい。本発明の染毛料組成物がカチオン性界面活性剤を含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、カチオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、使用後の毛髪の風合いの観点から、0.1?5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5?3.0質量%である。上記カチオン性界面活性剤の含有量は、本発明の染毛料組成物中の全てのカチオン性界面活性剤の含有量の合計量である。
【0057】
本発明の染毛料組成物がカラーシャンプーである場合、本発明の染毛料組成物は、水を含む。水は、特に限定されないが、精製水が好ましい。本発明の染毛料組成物100質量%中の、水の含有量は、特に限定されないが、50.0?90.0質量%が好ましく、より好ましくは60.0?80.0質量%である。
【0058】
本発明の染毛料組成物がカラーシャンプーである場合、本発明の染毛料組成物は、l-メントール、1,8-シネオール、カンファ等の清涼剤;フェノキシエタノール等の防腐剤;オリーブ油、マカデミアナッツ油、アルガンオイル等の植物油;シリカ等の吸湿剤;ヒアルロン酸又はその誘導体、コラーゲン又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、抗酸化剤、金属封鎖剤、ビタミン類、動植物抽出エキス、パール化剤、着色剤、香料等を含んでいてもよい。 」

(x) 「 【0060】
本発明の染毛料組成物の製造方法は、特に限定されず、常法に従って、製造することができる。具体的には、以下の方法等が挙げられる。例えば、カラーリンス又はカラートリートメントの場合には、70?90℃に加熱して十分溶解させた水相に、70?90℃に加熱した油相を徐々に入れ、5分間しっかり攪拌し、乳化を行う。乳化後、20?40℃まで冷却し、精製水に溶解させた染料を入れ、十分に均一攪拌した後、pH調整剤を入れ、十分に均一攪拌してクリーム状の染毛料組成物を得る。カラーシャンプーの場合には、常温において染料を十分溶解させた水相に、各種界面活性剤を徐々に入れて攪拌し、安定剤、pH調整剤を入れて十分に均一攪拌して、粘性のある液状の染毛料組成物を得る。
【0061】
本発明の染毛料組成物のpHは、特に限定されないが、染色性の観点から、4.0?8.0が好ましく、より好ましくは5.0?8.0である。さらに、染毛料組成物の安定性の観点から、上記pHは、6.5以下であることが好ましい。特に、本発明の染毛料組成物がカラーリンス、カラートリートメントやヘアマニキュアの場合、pHは4.0?6.5が好ましく、カラーシャンプーの場合、pHは5.0?6.5が好ましい。
【0062】
本発明の染毛料組成物の剤型は、特に限定されないが、例えば、液状、粘性液状、ジェル状、乳液状、クリーム状等が挙げられる。中でも、染色性と風合いの観点から、クリーム状が好ましい。 」

(xi) 「 【実施例】
【0068】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量。所謂純分)であり、特記しない限り「質量%」で表す。但し、表中のポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム液及びアミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体エマルションの配合量は商品自体の配合量で示した。なお、実施例1-2?1-4、1-6、1-7、1-9、2-2、及び2-9は参考例として記載するものである。 」

・(xi-1) 「 【0069】
実施例1-1?1-17、比較例1-1?1-10:カラーリンス(又はカラートリートメント)
表に記した組成に従い、各染毛料組成物を調製し、下記試験1?7の評価試験に供した。上記各染毛料組成物はカラーリンス(又はカラートリートメント)である。評価結果は表に併記する。
【0070】
実施例2-1?2-11、比較例2-1?2-2:カラーシャンプー
表に記した組成に従い、各染毛料組成物を調製し、下記試験1?7の評価試験に供した。上記各染毛料組成物はカラーシャンプーである。評価結果は表に併記する。
【0071】
実施例及び比較例の各染毛料組成物のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製、商品名「卓上型pHメータ F-74」)を用いて測定した。
【0072】
[試験1:染色性の評価]
試験用毛束として、未処理の白色人毛毛束(株式会社ビューラックス製、長さ10cm、重さ1g)を用いた。
【0073】
(評価用毛束の調製:カラーリンスの場合)
試験用毛束を市販のシャンプーを用いて洗浄した後、軽く水気を切り、以下の調製に用いた。上記試験用毛束に、製造直後の実施例及び比較例で得られた各染毛料組成物0.5gを塗布し、1分間ハケを用いて毛束(毛髪)全体に馴染ませた。次いで、5分間放置後、40℃のぬるま湯を用いて、毛束から染毛料組成物を十分に洗い流し、タオルドライを行った後、ドライヤーを用いて十分に乾燥させ、評価用毛束を調製した。
【0074】
(評価用毛束の調製:カラーシャンプーの場合)
試験用毛束を40℃のぬるま湯により十分に洗浄した後、以下の調製に用いた。上記試験用毛束に、製造直後の実施例及び比較例で得られた各染毛料組成物0.2gを塗布し、1分間手で泡立たせて馴染ませた。次いで、5分間放置後、40℃のぬるま湯を用いて、毛束から染毛料組成物を十分に洗い流し、タオルドライを行った後、ドライヤーを用いて十分に乾燥させ、評価用毛束を調製した。
【0075】
上記で得られた評価用毛束を観察し、染色性を以下の基準で評価した。なお、染色性の評価は、4名の専門評価員が行った。
<染色性の評価基準>
◎(優れる):非常に濃く染色されている。
○(良好):十分に染色されている。
×(不良):染色が薄い。
【0076】
さらに、試験1で得られた評価用毛束の色調を表に示した。
【0077】
[試験2:皮膚汚れ(染着性)の評価]
製造直後の実施例及び比較例で得られた各染毛料組成物0.5gをそれぞれ、前腕内側部における直径1cmの円形のエリアに塗布した。5分間放置後、塗布部を、ぬるま湯で洗い流し、次いで、石鹸を使用して30秒間軽く擦り、ぬるま湯で洗い流した。
【0078】
上記塗布部を観察し以下の基準で評価した。なお、皮膚汚れの評価は、4名の専門評価員が行った。
<皮膚汚れの評価基準>
◎(優れる):皮膚汚れが全く残らない。
○(良好):皮膚汚れが僅かに残る。
×(不良):皮膚汚れが明らかに残る。
【0079】
[試験3:堅牢性の評価]
試験1(染色性の評価)の評価の後、各評価用毛束を、40℃のぬるま湯にて十分に洗った後、市販のシャンプーを用いて1分間しっかり洗浄した。さらに、40℃のぬるま湯にて十分に洗い流しを行い、タオルドライ後、ドライヤーを用いて十分に乾燥させた。
【0080】
上記で得られた評価用毛束を観察し、堅牢性を以下の基準で評価した。なお、堅牢性の評価は、4名の専門評価員が行った。
<堅牢性の評価基準>
○(良好):試験後に毛髪の色の落ち方が小さい。
×(不良):試験後に毛髪の色の落ち方が大きい。
【0081】
[試験4:放置時間延長時の変色抑制の評価
試験1(染色性の評価)の評価用毛束の調製において、「5分間放置」を「30分間放置」に変更した以外は、試験1と同様にして評価用毛束を調製した。
【0082】
各実施例、各比較例ごとに、試験4で調製した評価用毛束と、試験1で調製した評価用毛束の染色された色調を対比して、放置時間延長時の変色抑制の度合を以下の基準で評価した。なお、評価は、4名の専門評価員が行った。
<放置時間延長時の変色抑制の評価基準>
○(良好):試験4で調製した評価用毛束の色調は、試験1で調製した評価用毛束の色調から変化が全くない。
×(不良):試験4で調製した評価用毛束の色調は、試験1で調製した評価用毛束の色調から変化がある。
【0083】
【表1】


【0084】
【表2】


【0085】
【表3】


【0086】
【表4】



・(xi-2) 「 【0087】
また、実施例1-1、実施例1-10?1-14、実施例2-1、実施例2-4、実施例2-8、実施例2-9、比較例1-6?1-10、比較例2-1、及び比較例2-2について、下記試験5の評価試験に供した。
【0088】
[試験5:耐光性の評価]
試験1(染色性の評価)の評価の後、各評価用毛束に、耐堅牢性試験機強キセノンフェードメーター(「キセノンウェザーメーターX-25」、スガ試験機株式会社製)を用い、6300kJ/m2の条件で光を照射した。
【0089】
上記で得られた評価用毛束を観察し、耐光性を以下の基準で評価した。なお、耐光性の評価は、4名の専門評価員が行った。
<耐光性の評価基準>
○(良好):試験5で調製した評価用毛束の色調は、試験1で調製した評価用毛束の色調から変化が全くない又はほとんどない。
△(やや不良):試験5で調製した評価用毛束の色調は、試験1で調製した評価用毛束の色調から明らかに変化がある。
×(不良):試験5で調製した評価用毛束の色調は、試験1で調製した評価用毛束の色調から非常に大きな変化がある。
【0090】
試験5(耐光性の評価)の結果、実施例1-13は耐光性がやや不良(△)であり、実施例1-14、実施例2-4、比較例1-6?1-10、及び比較例2-2は耐光性が不良(×)であった。他の実施例、比較例は耐光性が良好(〇)であった。
【0091】
また、全ての実施例及び比較例について、下記試験6の評価試験に供した。
【0092】
[試験6:安定性の評価]
実施例及び比較例で得られた各染毛料組成物を50℃の恒温槽に4週間保管し、50℃、4週間保管後の各染毛料組成物を調製した。
試験1(染色性の評価)の評価用毛束の調製において、「製造直後の実施例及び比較例で得られた各染毛料組成物」を、上記「50℃、4週間保管後の各染毛料組成物」に変更した以外は、試験1と同様にして評価用毛束を調製した。
【0093】
上記で得られた評価用毛束を観察し、試験1で調製した評価用毛束と比較して、安定性を以下の基準で評価した。なお、安定性の評価は、4名の専門評価員が行った。
<安定性の評価基準>
○(良好):試験6で調製した評価用毛束の色調は、試験1で調製した評価用毛束の色調から変化がない。
×(不良):試験6で調製した評価用毛束の色調は、試験1で調製した評価用毛束の色調から明らかに変化がある。
【0094】
試験6(安定性の評価)の結果、実施例2-6、実施例2-10、及び比較例1-8は安定性が不良(×)であり、他の実施例、比較例は安定性が良好(○)であった。
【0095】
さらに、実施例1-1、実施例1-7、実施例2-1、及び実施例2-11について、下記試験7の評価試験に供した。
【0096】
[試験7:ダメージ毛に対する色ムラの評価]
試験1(染色性の評価)の評価用毛束の調製において、「未処理の白色人毛毛束(株式会社ビューラックス製、長さ10cm、重さ1g)」を「ブリーチ処理した毛束(株式会社スタッフス製、レベル14、長さ10cm、重さ1g)」に変更した以外は、試験1と同様にして評価用毛束を調製した。
【0097】
上記で得られた評価用毛束を観察し、ダメージ毛に対する色ムラを以下の基準で評価した。なお、ダメージ毛に対する色ムラの評価は、4名の専門評価員が行った。
<ダメージ毛に対する色ムラの評価基準>
○(良好):毛束全体が均一に染まっている。
×(不良):毛束全体が均一に染まっておらず、色ムラがある。
【0098】
その結果、実施例1-1及び実施例2-1はダメージ毛に対する色ムラが良好(○)であり、実施例1-7及び実施例2-11はダメージ毛に対する色ムラが不良(×)であった。 」

(xii) 「 【0100】
さらに、以下に、本発明の染毛料組成物の処方例を示す。
【0101】
(処方例1)カラーリンス(クリーム)
HC青16 0.5質量%
塩基性茶16 0.3質量%
HC黄4 0.06質量%
HC青2 0.6質量%
ステアリルアルコール 7.0質量%
塩化アルキルトリメチルアンモニウム液(純分80質量%)3.0質量%
ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド 1.0質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル(5E.O.) 0.5質量%
流動パラフィン 3.0質量%
ジプロピレングリコール 5.0質量%
2-エチルヘキサン酸セチル 2.0質量%
塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]
ヒドロキシエチルセルロース 0.5質量%
メチルポリシロキサン 2.0質量%
乳酸 適量(pH5に調整)
フェノキシエタノール 0.5質量%
水溶性コラーゲン(3) 0.1質量%
アルガンオイル 0.1質量%
L-グルタミン酸 0.1質量%
精製水 残量
合計 100質量%
【0102】
(処方例2)カラーリンス(乳液)
HC青16 1.0質量%
塩基性茶17 1.0質量%
HC黄4 0.08質量%
HC青2 1.2質量%
セタノール 6.0質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル(5E.O.) 2.0質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0質量%
流動パラフィン 5.0質量%
ジプロピレングリコール 3.0質量%
カプリン酸グリセリル 2.0質量%
ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム液(純分40質量%)
1.0質量%
アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン
共重合体エマルション(純分40質量%) 1.5質量%
クエン酸 適量(pH5に調整)
安息香酸ナトリウム 0.5質量%
ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム 0.5質量%
シリカ 0.2質量%
海藻エキス(1) 0.1質量%
l-メントール 0.1質量%
精製水 残量
合計 100質量%
【0103】
(処方例3)ヘアマニキュア(ジェル)
HC青16 0.7質量%
塩基性茶16 0.3質量%
HC黄2 0.1質量%
HC青2 1.5質量%
ヒドロキシエチルセルロース 2.5質量%
エタノール 10.0質量%
ベンジルアルコール 5.0質量%
ポリプロピレングリコール 3.0質量%
イソノナン酸イソノニル 1.5質量%
塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]
ヒドロキシエチルセルロース 0.5質量%
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 0.5質量%
エデト酸二ナトリウム 0.2質量%
グリコール酸 適量(pH5に調整)
ツバキ油 0.1質量%
パンテノール 0.1質量%
精製水 残量
合計 100質量%
【0104】
(処方例4)カラーシャンプー
HC青16 0.5質量%
塩基性茶16 0.2質量%
HC黄4 0.2質量%
HC青2 1.5質量%
ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム液(純分30質量%)
5.0質量%
ラウリン酸アミドプロピルベタイン液(純分30質量%)30.0質量%
ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド 2.0質量%
塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]
ヒドロキシエチルセルロース 0.2質量%
ジプロピレングリコール 3.0質量%
カプリン酸グリセリル 1.0質量%
モノラウリン酸ポリグリセリル 0.1質量%
高重合メチルポリシロキサン(1) 0.1質量%
メチルポリシロキサン 0.4質量%
クエン酸 適量(pH5に調整)
フェノキシエタノール 0.5質量%
水溶性コラーゲン(3) 0.1質量%
ホホバ油 0.1質量%
精製水 残量
合計 100質量%
【0105】
(処方例5)カラーシャンプー
HC青16 3.0質量%
塩基性茶16 1.0質量%
HC黄2 0.01質量%
HC青2 0.8質量%
N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン液
(純分30質量%) 5.0質量%
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液(純分30質量%)30.0質量%
ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド 2.0質量%
塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]
グァーガムジプロピレングリコール 0.2質量%
ポリプロピレングリコール 3.0質量%
カプリル酸グリセリル 1.0質量%
アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体
エマルション(純分40質量%) 0.5質量%
クエン酸 適量(pH5に調整)
安息香酸ナトリウム 0.5質量%
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1質量%
ラベンダー油 0.1質量%
クワエキス 0.1質量%
精製水 残量
合計 100質量%
【0106】
(処方例6)カラーリンス(クリーム)
HC青16 0.5質量%
塩基性茶16 0.3質量%
HC黄2 0.03質量%
HC青2 0.6質量%
ステアリルアルコール 5.0質量%
ベヘニルアルコール 2.0質量%
塩化アルキルトリメチルアンモニウム液(純分80質量%)3.0質量%
ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド 1.0質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル(5E.O.) 0.5質量%
流動パラフィン 3.0質量%
ジプロピレングリコール 5.0質量%
2-エチルヘキサン酸セチル 2.0質量%
塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]
ヒドロキシエチルセルロース 0.5質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 1.0質量%
ポリメチルシルセスキオキサン 0.5質量%
エタノール 5.0質量%
乳酸 適量(pH5に調整)
シア脂 1.0質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
水溶性コラーゲン(3) 0.1質量%
加水分解シルク液 0.1質量%
精製水 残量
合計 100質量%
【0107】
(処方例7)カラーリンス(クリーム)
HC青16 0.5質量%
塩基性茶16 0.5質量%
HC黄2 0.035質量%
HC黄4 0.015質量%
HC青2 0.4質量%
セタノール 8.0質量%
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(純分28質量%)5.8質量%
ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド 1.0質量%
流動パラフィン 3.0質量%
1,3-ブチレングリコール 5.0質量%
(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)デカグリセリル液 1.2質量%
濃グリセリン 0.8質量%
ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム液(純分40質量%)
1.0質量%
マイクロクリスタリンワックス 1.0質量%
エタノール 3.0質量%
乳酸 適量(pH5に調整)
安息香酸ナトリウム 0.5質量%
ケイ皮エキス 0.1質量%
カンゾウ抽出末 0.1質量%
精製水 残量
合計 100質量% 」

ウ 以下、イの摘記(i)?(xii)の記載について検討する。

(ア) 特許発明により解決されるべき課題は、特許明細書の摘記(i)の【0006】に記載されているとおりの、
「毛髪に対する十分な染色性を有するにもかかわらず、皮膚への染着性は抑えられた染毛料組成物を提供すること」
にあるといえる。

(イ) 一方、特許明細書の摘記(iii)?(vii)には、特許発明に係る成分A?成分D及びそれら各成分がとり得る好ましい含有量、並びに、(成分A+成分B)/(成分C+成分D)のとり得る好ましい比等について記載されており、特に
・摘記(iii)の【0019】及び【0022】から、成分Aが毛髪に対する染色性に非常に優れるにもかかわらず皮膚への染着性が低いことや、成分Aの含有量を特許発明に規定される範囲内とすることにより、毛髪に対する染色性や安全性が一層向上すると共にタオルや衣服等への色移りが一層抑制されるため好ましいこと;
が説明され、
・摘記(iv)の【0025】から、成分Bの含有量を特許発明に規定される範囲内とすることにより、毛髪に対する染色性や安全性が一層向上すると共にタオルや衣服等への色移りが一層抑制されるため好ましいこと;
が説明され、
・摘記(v)の【0028】?【0029】から、成分Cの含有量を特許発明に規定される範囲内とすることにより、堅牢性や安全性がより向上すると共にタオルや衣服等への色移りが一層抑制されるため好ましいこと; また、成分CのうちHC黄2が耐光性(光安定性)により優れ、成分C中に50.0質量%以上含まれることがより好ましいこと;
が説明され、
・摘記(vi)の【0032】?【0033】には、青色の染料として成分Dを成分Aと組み合わせて採用することにより染色速度を適切に調節し得るため、ダメージ毛に対する染色ムラが生じにくくなり好ましいこと; その際の成分Dの含有量を特許発明に規定される範囲内とすることにより、堅牢性や安全性がより向上すると共にタオルや衣服等への色移りが抑制されるため好ましいこと;
が説明され、
・摘記(vii)には、ダメージ毛に対する色ムラがより少なくなる観点から、(A+B)/(C+D)の比を特許発明に規定される範囲とすることがより好ましいこと;
が説明されている。

(ウ) また、摘記(xi)(xi-1)の表1及び表3に示される試験結果によれば、それらの表の実施例の染毛料組成物のうち
(a) 実施例1-1、1-5、1-8、1-10?1-17(以上カラーリンス(カラートリートメント))、実施例2-1、2-3?2-8、2-10(以上カラーシャンプー)
の各染毛料組成物は、いずれも特許発明1に係る組成物中の成分A?成分Dの各含有量、及び、(成分A+成分B)/(成分C+成分D)の比に係る要件を満たす染毛料組成物であることから、文字通り特許発明1の実施例に該当するものと認められる[中でも特に、次の(a)’の実施例群:
(a)’ 実施例1-1、1-5、1-8、1-10?1-12、1-15?1-17、実施例2-1、2-3、2-5?2-8、2-10
の各染毛料組成物は、いずれも特許発明2の成分CのHC黄2の含有量に係る要件をも併せ満たしていることから、特許発明2の実施例にも該当するものであり、次の(a)’’の実施例群:
(a)’’ 実施例1-1、1-5、1-8、1-10?1-12、1-15?1-17
の各染毛料組成物は、いずれも特許発明3、4の実施例にも該当するものである]。
ここで、これら(a)の各実施例の染毛料組成物は、いずれも「染色性」、「皮膚汚れ」(の少なさ)共に「◎」又は「○」であって、毛髪に対する十分な染色性及び皮膚への染着の抑制性を併せ示すものであるから、前述の(ア)の課題を解決する染毛料組成物であると認識することができる。
[ なお、表1及び表3に「実施例」として示される組成物のうち、
・実施例1-2?1-4、1-6、1-9、実施例2-2、2-9は、いずれも成分Aの含有量が特許発明に規定される範囲より少なく;
・実施例1-7は、(A+B)/(C+D)の比が特許発明に規定される範囲より小さく;
・実施例2-11は、成分C、成分Dの含有量が特許発明に規定される範囲より少なく、かつ、(A+B)/(C+D)の比が特許発明に規定される範囲より小さい;
ことから、これらの染毛料組成物は特許発明に規定される成分A?成分Dの各含有量及び(A+B)/(C+D)の比に係る要件を併せ満たすものではないが、表1及び表3に示される試験結果によれば、これらにおいても「染色性」、「皮膚汚れ」(の少なさ)は共に「◎」又は「○」であって、毛髪に対する十分な染色性及び皮膚への染着の抑制性を併せ具備するものであるから、少なくともこれらの染毛料組成物の態様もまた、前述の(ア)の課題を解決する染毛料組成物であると認識することができる。 ]

(エ) そして、上述の(イ)?(ウ)で検討した箇所を含む特許明細書の摘記(ii)?(xii)の記載を併せみた当業者であれば、(ウ)の(a)(実施例1-1、1-5、1-8、1-10?1-17、実施例2-1、2-3?2-8、2-10)以外の態様の染毛料組成物であっても、特許発明に規定される成分A?成分Dの各含有量及び(A+B)/(C+D)の比に係る要件を満たす成分組成とし、また、カラーリンス(又はカラートリートメント)とするかカラーシャンプーとするかに応じて摘記(viii)(成分Eに関する記載を含む)又は(ix)の任意成分に関する記載や(xii)の様々な処方例に関する記載を参照しつつ、例えば(x)の製造条件に係る記載に基づき製造された染毛料組成物であれば、上記b(a)の各実施例と同様の、毛髪に対する十分な染色性及び皮膚への抑えられた染着性を併せもたらし得るものである、と推測することに特段の不合理性は認められない。

(3) 以上(1)?(2)で検討し説示したとおりであるから、特許発明1?4は、特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であって、当該発明の詳細な説明の記載に基づき、(2)ウ(ア)の課題を解決できると当業者が認識し得る範囲のものである、ということができる。
よって、特許発明1?4は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)に適合するものである。


3-2.申立人の主張について
3-1.で検討・説示したとおり、特許発明1?4はいずれもその記載がサポート要件を満たしているから、以下に述べるとおり、申立人のいう[第3]3(1)及び(2)の点はいずれも採用できない。

(1)[第3]3(1)について
申立人は、発明が解決しようとする課題について、特許明細書の【0006】の記載を引用した上で、特許明細書の比較例1-6?1-1-10には、「塩基性青75」を0.05質量%含有すると、「皮膚汚れ」の評価が「×」になることが記載されているところ、直接染料の含有量が多くなるとさらに地肌汚れが生じやすいことは本件特許優先日前周知技術であるから、比較例1-6?1-10の処方に「HC青16」を添加しても「塩基性青75」による皮膚汚れを改善することは常識的にあり得ないことを述べつつ、これらのことに基づき、特許明細書には、「塩基性青75」を0.05質量%以上含有した場合には皮膚への染着性は抑えられた染毛料組成物を提供するこができないことが示されているから、特許発明1?4は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されておらず発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求しているものである旨を主張する。

しかしながら、特許発明1?4に規定される、成分A(「HC青16」)を0.5?3.0質量%含むこと、及びその他の成分A?成分D(若しくは成分A?成分E)に係る要件を満たす、例えば「実施例」に係る実施例1-1、1-5、1-8、1-10?1-17、2-1、2-3?2-8、2-10が、いずれも十分な染色性及び皮膚への染着の抑制性において共に優れ、特許明細書の【0006】に記載された解決すべき課題を達成し得ること、並びに、それらの実施例の態様以外にも、特許明細書の記載に基づいて、請求項1?4に規定される成分(A)?(D)若しくは成分(A)?(E)に係る要件を満たす態様の染毛料組成物が、上記課題を解決し得るものと認識し得るものであることは、3-1.で検討し説示したとおりである。
また、特許発明1?4の染毛料組成物は、請求人のいう「塩基性青75」を0.02質量%(比較例1-6)?0.05質量%(比較例1-7?1-10)含むことを要件とするものではない。そして、申立人が引用する比較例1-6?1-10の染毛料組成物は、いずれも成分A(「HC青16」)を0.5?3.0質量%の範囲内で含有するものでない点において特許発明1?4に係る染毛料組成物ではなく、このことを以て(「実施例」ではなく)「比較例」とされていることは、表2中に示された上記各比較例の成分組成からみて明らかである。

よって、申立人の上記主張は、請求項1?4の記載及び実施例、比較例を含む特許明細書の記載事項の正確な把握に基づいた合理的なものとはいえず、採用できない。

(2)[第3]3(2)について
申立人は、実施例1-1((A+B)/(C+D)の比:1.27)及び実施例2-1((A+B)/(C+D)の比:0.41)の色ムラの評価がいずれも「○」であるのに対し、実施例1-7((A+B)/(C+D)の比:33.3)及び実施例2-11((A+B)/(C+D)の比:9.09)の色ムラの評価がいずれも「×」であることに基づき、(A+B)/(C+D)の比が上限値の「5.0」である場合においてまでダメージ毛に対する色ムラを改善するとは認められないから、特許発明1?4は、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない旨を主張する。

しかしながら、そもそも、ダメージ毛における色ムラの改善は、特許発明により解決されるべき課題の中に含まれていない[特許発明により解決されるべき課題は、特許明細書の【0006】に記載されているとおりの、「毛髪に対する十分な染色性を有するにもかかわらず、皮膚への染着性は抑えられた染毛料組成物を提供すること」にあることは、既に3-1.(2)ウ(ア)で述べたとおりである]。
また、特許発明1?4がいずれも特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であって、当該発明の詳細な説明の記載に基づきこの課題を解決できると当業者が認識し得る範囲のものであることも、3-1.で検討し説示したとおりである。[ なお、申立人が引用する実施例1-7や2-11が、少なくとも上述の課題に係る十分な染色性及び皮膚への染着の抑制性において、実施例1-1や2-1と同様に優れている(「染色性」及び「皮膚汚れ」のいずれの評価も「◎」又は「○」)であることも、表1及び表3において示されているとおりである。]

よって、ダメージ毛における色ムラの改善の可否に基づき特許発明におけるサポート要件違反の有無を論じる上述の申立人の主張は、そもそも特許発明についてサポート要件違反の有無を検討する際の前提となる、発明が解決すべき課題(3-1.(1)、(2)ウ(ア))の正確な把握に基づくものであるとはいえず、これまた採用の限りでない。

3-3.小括
以上述べたとおりであるから、特許発明1?4は、特許明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものではなく、それら特許発明1?4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たす請求項の発明についてなされたものである。
よって、申立人による申立理由3は、理由がない。

[第5]むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議申立人による特許異議申立理由によっては、本件の請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-05-14 
出願番号 特願2019-509233(P2019-509233)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A61K)
P 1 651・ 121- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮部 裕一  
特許庁審判長 原田 隆興
特許庁審判官 佐々木 秀次
大久保 元浩
登録日 2020-06-18 
登録番号 特許第6719656号(P6719656)
権利者 株式会社マンダム
発明の名称 染毛料組成物  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  

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