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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A47G
管理番号 1374254
審判番号 不服2020-8935  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-26 
確定日 2021-06-01 
事件の表示 特願2017-113833号「保管ボックス」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月27日出願公開、特開2018-202052号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年6月8日の出願であって、令和1年10月31日付けで拒絶理由通知がされたが、請求人から意見書の提出がなく、令和2年4月22日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされた。これに対し、同年6月26日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

理由1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
・請求項1-2、6
・引用文献等 1

●理由2(進歩性)について
・請求項3-4
・引用文献等 1

・請求項5-6
・引用文献等 1

<引用文献等一覧>
1.特開2003-120098号公報

第3 本願発明
本願請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。)は、令和2年6月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
配達された荷物を格納する保管ボックス本体と、その保管ボックス本体の開口部に開閉自在に配した開閉扉とを備える保管ボックスであって、
係止手段と、
その係止手段によって係止されることで前記開閉扉を施錠する被係止手段と、
使用者によって操作されることにより前記被係止手段を前記係止手段に係止させる施錠手段と、
伝票が配置される伝票配置手段と、
前記施錠手段が使用者によって操作されたことにより前記被係止手段が前記係止手段に係止されたことに基づいて、前記開閉扉が施錠された場合に限り、前記伝票配置手段に配置された前記伝票に受領の証を付す付加手段とを備えること特徴とする保管ボックス。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与。以下同様。)。
「【請求項1】 前面が開口した箱体に開閉扉の基端部が回動可能に枢着されてなる宅配荷物受け取りボックスにおいて、
開閉扉前面に設置された施錠レバーと一体に扉内面に沿ってスライドし、先端部を扉側端部から進退可能に設置されたラッチレバーと、箱体内側のラッチレバーの進退路上に設置された施錠杆を有し、ラッチレバーの先端部に施錠杆を係合させて箱体開口面に開閉扉を固定する施錠手段と、
操作端部が箱体前面に設置されていて操作端部を押動操作することにより施錠杆をラッチレバーの進退路上からずらしてラッチレバーとの係合を解除する解錠手段と、
箱体内部に回動自在に枢着された回動プレートと、回動プレートの回動に伴ってラッチレバーの進退路上から後退可能に設置されたストッパーピンを有し、荷物未収納時にストッパーピンをラッチレバーの進退路上に進出させてラッチレバーと施錠杆との係合を不能とするストッパー手段と、
スタンプ保持体と、ラッチレバーの縁部に当接可能に設置されたスタンプ杆と、スタンプ保持体とスタンプ杆を連結した連結レバーとを有し、開閉扉を施錠操作したときにラッチレバーに当接するスタンプ杆が変位するのに連動して連結レバーがスタンプ保持体を押動して受領スタンプを押捺する押捺手段とを備えてなることを特徴とする宅配荷物受け取りボックス。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、宅配荷物が配達される際に、受取人が不在のときや、在宅のときでも受取人が応対しなくとも荷物の受け取りを行えるように構成された宅配荷物の受け取りボックスに関する。」

「【0004】本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、電気作動装置を用いることなく、収納口の施錠及び受領証への自動押捺機能を備えた宅配荷物受け取りボックスを簡易な構造で構成することを課題とする。」

「【0007】図1に示されるように、このボックス1は、内部を中空とした箱体2の前面に開口部21とパネル部22を設けるとともに、箱体2の前面側端部に設けた支軸23で開閉扉3の基端部を回動可能に枢着し、開閉扉3で開口部21を開放及び閉鎖できるように設けてある。箱体2には、後述の施錠・解錠手段、押捺手段等を構成する機構が内蔵され、解錠手段の操作端部を露出又は閉鎖する開閉式の枠部10と、押捺手段の受領証挿入口11がパネル部22に設置されている。図中、符号12は開閉式枠部10に取り付けられた鍵、13は新聞や手紙等宅配荷物以外の配達物品を箱体2内に取り入れる受け口である。
【0008】開閉扉3は、その中央に前後を貫通して水平に伸びた溝孔31を有し、施錠手段を構成する施錠レバー32とラッチレバー33を、この溝孔31に沿ってスライド可能に支持して構成されている。詳しくは、施錠レバー32はその先端を溝孔31から扉前面側に突出させ、その基端を扉後面側に配されたラッチレバー33に一体に固着してある。ラッチレバー33は、図3に示されるように、矩形板材の一端部をさらに細幅で適宜な長さ延出させた先細りの横長形状に形成され、太幅部に穿設された2条の長孔33aに、溝孔31の上下両部に突設させた軸部31aを係入させて扉内面に沿って摺動可能に支持されている。ラッチレバー33の細幅部の先端には後述の施錠杆が係合する孔部33bが穿設され、また、細幅部の基部には下側に突き出たカム34が固着されている。ラッチレバー33は、その太幅部の端部と扉後面側に植設されたピン(図示せず)との間でバネ35が張架されて開閉扉3を軸支する支軸23方向に常時弾圧付勢され、弾性力に抗して施錠レバー32を溝孔31の端部一杯まで押動させると、扉側端部に形成された開口からラッチレバー33の先端細幅部を扉外側へ進出させ、その状態から施錠レバー32を押動する力を弱めれば、バネ35の弾性力によって施錠レバー32とラッチレバー33が元の位置までスライド移動せしめられ、ラッチレバー33の先端細幅部は開閉扉3の内部に後退移動するようになっている。
【0009】パネル部22に面した箱体2の内部には、支柱24で支持された錠ケース4が設置され、その内部に施錠手段を構成する施錠杆41と解錠手段を構成する解錠レバー42が設けられている。詳しくは、施錠ケース4は上下及び左右側部を枠材で囲むとともに、開閉扉3側の側縁にラッチレバー34の先端部が進入可能な切欠部4aを設けてなり(図4参照)、内部に施錠杆41と解除レバー42を一体に支持する支持枠板43を前後に摺動可能に設置して構成されている。施錠杆41は、箱体2の開口部21を開閉扉3で閉めて施錠した際に開閉扉3の側端部からパネル部22の後面側へと進出するラッチレバー33の進退路上に、その湾曲した先端部が交差するように向けて支持枠板43の上面に固定されている。解錠レバー42は、その先端部をパネル部22に設置された枠部11の開口11内に嵌め入れ、後端部を支持枠板43の上端部に螺子止めして支持枠板43の上部に水平に支持されている。支持枠部43は、図5に示されるように、施錠ケース4の前面に固着された前側枠板4bとの間で張架されたバネ44によって前方へ常時弾圧付勢され、通常は施錠杆41の先端部がラッチレバー33の進退路上に位置するが、解錠レバー42の先端部を押動すると、支持枠板43が後方へスライドするのに伴って施錠杆41の先端部がラッチレバー33の進退路上から後退するようになっている。」

「【0011】受領スタンプを押捺する押捺手段を構成する機構は、錠ケース4の上部と側部に設置されている。詳しくは、施錠ケース4の上部には、スペーサを介して施錠ケース4の上面に支持板71を取り付け、その支持板71の上面に支軸72、72を立設するとともに、両支軸間にスタンプSを下向きに保持したスタンプ受け台73を支軸に沿って上下に摺動可能に装填し、且つ両支軸の周囲にバネ74を介装してスタンプ受け台73を上方へ弾圧付勢してなるスタンプ保持体7が設置されている。支持板71の下面と錠ケース4の上面間の空隙は、パネル部22に設置された受領証挿入口11と連通し、受領証を支持板71の下面に差し入れて押捺ができるようになっている。また、錠ケース4の側部には、図4に示されるように、外方に突設させた枠部4c、4dに逆さL字形に形成された連結レバー8が挿通して上下に摺動可能に支持されている。この連結レバー8は、その表面に植設されたピン81と前記枠部4cとの間にバネ82が張設されて上向きに弾圧付勢されており、その水平に折れた上端部を前記スタンプ保持体7の上部に一体に固定してある。また、連結レバー8の錠ケース4の切欠部4aに近接する位置には、コ字形の支承部材91を介して連結レバー8と一体に連結した棒状のスタンプ杆9が突設させてある。このスタンプ杆9は、箱体2の開口部21を開閉扉3で閉めて施錠した際に開閉扉3の側端部からパネル部22の後面側へと進出するラッチレバー33の進退路上であってラッチレバー33の下縁部に当接する位置に設置されており、ラッチレバー33の進退動作に伴いラッチレバー33の下縁部に沿って下方に変位したときに、これと連結した連結レバー8でスタンプ保持体7を下方に押動して受領スタンプを自動で押捺させ得るようになっている。」

「【0015】次に作業者は、開閉扉3を閉め、施錠レバー32を開閉扉3の端部側へ押動して施錠操作を行う。また、このとき受領証挿入口11から受領押捺欄を上方に向けた受領証をボックス内部に挿入しておく。
【0016】施錠レバー32を押動すると、図7に示されるように、施錠レバー32と一体のラッチレバー33が開閉扉3の側端部から錠ケース4の切欠部4aを通ってケース内に進出し、その先端に形成された孔部33bに施錠杆41が係合してレバーが当該進出位置に保持され、開閉扉3は開口部21を閉鎖して箱体2に施錠される。
【0017】また、図8に示されるように、ラッチレバー33が錠ケース4内に進出する過程において、スタンプ杆9がラッチレバー33の下縁部に当接し(同図(A))、スタンプ杆9がラッチレバー33に固着されたカム34に当接すると、カム34の周面に沿ってスタンプ杆9が下方へ変位し、これに連動して連結レバー8がスタンプ保持体7を下方へ押動し、スタンプ杆9が最も下方に変位した位置で受領証への押捺が行われる(同図(B))。ラッチレバー33が施錠位置まで進出すると、スタンプ杆9は受領証に押捺が行われた位置より若干上方に位置し(同図(C))、作業者は受領スタンプが捺印された受領証を受領証挿入口11から引き抜くことができる。」

「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の宅配荷物受け取りボックスの一実施形態の外観を示した図である。
【図2】受け取りボックスの内部機構を示した前面側横断面図である。
【図3】受け取りボックスの内部機構を開閉扉を除いて示した概略正面図である。
【図4】受け取りボックス内の施錠ケースの外観図である。
【図5】施錠ケースの構成を拡大して示した図である。
【図6】ストッパー手段の構成を拡大して示した図である。
【図7】受け取りボックス内に荷物を収納した後に開閉扉を施錠した状態の内部機構を示した前面側拡大横断面図である。
【図8】(A)?(C)は開閉扉を施錠する際の施錠手段と押捺手段の動作過程を示した図である。」

以下の図面が示されている。



(2)認定事項
上記(1)の記載事項から、以下のことが認定できる。
ア 【請求項1】の下線部の記載から、前面が開口した箱体2に開閉扉3の基端部が回動可能に枢着されてなる宅配荷物受け取りボックス1において、開閉扉前面に設置された施錠レバー32と一体に扉内面に沿ってスライドし、先端部を扉側端部から進退可能に設置されたラッチレバー33と、箱体内側のラッチレバー33の進退路上に設置された施錠杆41を有し、ラッチレバー33の先端部に施錠杆41を係合させて箱体開口面に開閉扉3を固定する施錠手段と、スタンプ保持体7と、ラッチレバー33の縁部に当接可能に設置されたスタンプ杆9と、スタンプ保持体7とスタンプ杆9を連結した連結レバー8とを有し、開閉扉3を施錠操作したときにラッチレバー33に当接するスタンプ杆9が変位するのに連動して連結レバー8がスタンプ保持体7を押動して受領スタンプを押捺する押捺手段とを備えてなる宅配荷物受け取りボックスであること。
なお、各構成要素に符号を付している。

イ 段落【0009】の下線部の記載から、パネル部22に面した箱体2の内部には、支柱24で支持された錠ケース4が設置され、施錠ケース4は上下及び左右側部を枠材で囲むとともに、開閉扉3側の側縁にラッチレバー33の先端部が進入可能な切欠部4aを設けてなること。

ウ 段落【0011】の下線部の記載から、施錠ケース4の上部には、スペーサを介して施錠ケース4の上面に支持板71を取り付け、支持板71の下面と錠ケース4の上面間の空隙は、パネル部22に設置された受領証挿入口11と連通し、受領証を支持板71の下面に差し入れて押捺ができるようになっていること。

エ 段落【0008】の下線部の記載から、ラッチレバー33の細幅部の先端には施錠杆41が係合する孔部33bが穿設され、また、細幅部の基部には下側に突き出たカム34が固着されていること。

オ 段落【0017】の下線部の記載から、ラッチレバー33が錠ケース4内に進出する過程において、スタンプ杆9がラッチレバー33の下縁部に当接し、スタンプ杆9がラッチレバー33に固着されたカム34に当接すると、カム34の周面に沿ってスタンプ杆9が下方へ変位し、これに連動して連結レバー8がスタンプ保持体7を下方へ押動し、スタンプ杆9が最も下方に変位した位置で受領証への押捺が行われ、ラッチレバー33の孔部33bに施錠杆41が係合する施錠位置まで進出すると、スタンプ杆9は受領証に押捺が行われた位置より若干上方に位置し、作業者は受領スタンプが捺印された受領証を受領証挿入口11から引き抜くことができること。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)により、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「前面が開口した箱体2に開閉扉3の基端部が回動可能に枢着されてなる宅配荷物受け取りボックス1において、
開閉扉前面に設置された施錠レバー32と一体に扉内面に沿ってスライドし、先端部を扉側端部から進退可能に設置されたラッチレバー33と、箱体内側のラッチレバー33の進退路上に設置された施錠杆41を有し、ラッチレバー33の先端部に施錠杆41を係合させて箱体開口面に開閉扉3を固定する施錠手段と、
スタンプ保持体7と、ラッチレバー33の縁部に当接可能に設置されたスタンプ杆9と、スタンプ保持体7とスタンプ杆9を連結した連結レバー8とを有し、開閉扉3を施錠操作したときにラッチレバー33に当接するスタンプ杆9が変位するのに連動して連結レバー8がスタンプ保持体7を押動して受領スタンプを押捺する押捺手段とを備えてなる宅配荷物受け取りボックスであって、
パネル部22に面した箱体2の内部には、支柱24で支持された錠ケース4が設置され、施錠ケース4は上下及び左右側部を枠材で囲むとともに、開閉扉3側の側縁にラッチレバー33の先端部が進入可能な切欠部4aを設けてなり、
施錠ケース4の上部には、スペーサを介して施錠ケース4の上面に支持板71を取り付け、支持板71の下面と錠ケース4の上面間の空隙は、パネル部22に設置された受領証挿入口11と連通し、受領証を支持板71の下面に差し入れて押捺ができるようになっており、
ラッチレバー33の細幅部の先端には施錠杆41が係合する孔部33bが穿設され、また、細幅部の基部には下側に突き出たカム34が固着されており、
ラッチレバー33が錠ケース4内に進出する過程において、スタンプ杆9がラッチレバー33の下縁部に当接し、スタンプ杆9がラッチレバー33に固着されたカム34に当接すると、カム34の周面に沿ってスタンプ杆9が下方へ変位し、これに連動して連結レバー8がスタンプ保持体7を下方へ押動し、スタンプ杆9が最も下方に変位した位置で受領証への押捺が行われ、ラッチレバー33の孔部33bに施錠杆41が係合する施錠位置まで進出すると、スタンプ杆9は受領証に押捺が行われた位置より若干上方に位置し、作業者は受領スタンプが捺印された受領証を受領証挿入口11から引き抜くことができる宅配荷物受け取りボックス。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、
ア 後者の「宅配荷物受け取りボックス」の「前面が開口した箱体2」は、前者の「配達された荷物を格納する保管ボックス本体」に相当し、後者の「箱体開口面」及び「開口部21」は、前者の「保管ボックス本体の開口部」に相当し、後者の「基端部が回動可能に枢着されてなる」「開閉扉3」は、前者の「開閉自在に配した開閉扉」に相当する。
そして、後者の「前面が開口した箱体2に開閉扉3の基端部が回動可能に枢着されてなる宅配荷物受け取りボックス1」は、前者の「配達された荷物を格納する保管ボックス本体と、その保管ボックス本体の開口部に開閉自在に配した開閉扉とを備える保管ボックス」に相当する。

イ 後者の「施錠杆41」は、前者の「係止手段」に相当する。

ウ 後者の「ラッチレバー33の細幅部の先端に」「穿設され」「施錠杆が係合する孔部33b」は、「開閉扉3」を施錠することは明らかであるから、前者の「その係止手段によって係止されることで前記開閉扉を施錠する被係止手段」に相当する。

エ 上記イ及びウを踏まえると、後者の「開閉扉前面に設置された施錠レバー32と一体に扉内面に沿ってスライドし、先端部を扉側端部から進退可能に設置されたラッチレバー33と、箱体内側のラッチレバー33の進退路上に設置された施錠杆41を有し、ラッチレバー33の先端部に施錠杆41を係合させて箱体開口面に開閉扉3を固定する施錠手段」は、前者の「使用者によって操作されることにより前記被係止手段を前記係止手段に係止させる施錠手段」に相当する。

オ 後者の「施錠ケース4の上部には、スペーサを介して施錠ケース4の上面に支持板71を取り付け、支持板71の下面と錠ケース4の上面間の空隙は、パネル部22に設置された受領証挿入口11と連通し、受領証を支持板71の下面に差し入れて押捺ができるようになっており」との事項における「支持板71」及び「受領証挿入口11」を併せたものは、前者の「伝票が配置される伝票配置手段」に相当する。

カ 後者の「スタンプ保持体7と、ラッチレバー33の縁部に当接可能に設置されたスタンプ杆9と、スタンプ保持体7とスタンプ杆9を連結した連結レバー8とを有し、開閉扉3を施錠操作したときにラッチレバー33に当接するスタンプ杆9が変位するのに連動して連結レバー8がスタンプ保持体7を押動して受領スタンプを押捺する押捺手段」と、前者の「前記施錠手段が使用者によって操作されたことにより前記被係止手段が前記係止手段に係止されたことに基づいて、前記開閉扉が施錠された場合に限り、前記伝票配置手段に配置された前記伝票に受領の証を付す付加手段」とは「前記施錠手段が使用者によって操作されたことにより前記伝票配置手段に配置された前記伝票に受領の証を付す付加手段」の点で共通する。

そうすると、両者は、本願発明1の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「配達された荷物を格納する保管ボックス本体と、その保管ボックス本体の開口部に開閉自在に配した開閉扉とを備える保管ボックスであって、
係止手段と、
その係止手段によって係止されることで前記開閉扉を施錠する被係止手段と、
使用者によって操作されることにより前記被係止手段を前記係止手段に係止させる施錠手段と、
伝票が配置される伝票配置手段と、
前記施錠手段が使用者によって操作されたことにより、前記伝票配置手段に配置された前記伝票に受領の証を付す付加手段とを備える保管ボックス。」

そして、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
「前記施錠手段が使用者によって操作されたことにより前記伝票配置手段に配置された前記伝票に受領の証を付す付加手段」に関し、
本願発明1は、「前記被係止手段が前記係止手段に係止されたことに基づいて、前記開閉扉が施錠された場合に限り」伝票に受領の証を付す構成であるのに対し、
引用発明は、「ラッチレバー33が錠ケース4内に進出する過程において、スタンプ杆9がラッチレバー33の下縁部に当接し、スタンプ杆9がラッチレバー33に固着されたカム34に当接すると、カム34の周面に沿ってスタンプ杆9が下方へ変位し、これに連動して連結レバー8がスタンプ保持体7を下方へ押動し、スタンプ杆9が最も下方に変位した位置で受領証への押捺が行われ、ラッチレバー33が施錠位置まで進出すると、スタンプ杆9は受領証に押捺が行われた位置より若干上方に位置し、作業者は受領スタンプが捺印された受領証を受領証挿入口11から引き抜くことができる」構成である点。

(2)判断
ア 理由1(新規性)について
上記相違点について検討する。
引用発明は「ラッチレバー33が錠ケース4内に進出する過程において、スタンプ杆9がラッチレバー33の下縁部に当接し、スタンプ杆9がラッチレバー33に固着されたカム34に当接すると、カム34の周面に沿ってスタンプ杆9が下方へ変位し、これに連動して連結レバー8がスタンプ保持体7を下方へ押動し、スタンプ杆9が最も下方に変位した位置で受領証への押捺が行われ、ラッチレバー33が施錠位置まで進出すると、スタンプ杆9は受領証に押捺が行われた位置より若干上方に位置し、作業者は受領スタンプが捺印された受領証を受領証挿入口11から引き抜くことができる」構成(以下「構成A」という。)であって、「開閉扉を施錠する際の施錠手段と押捺手段の動作過程」を示した図である【図8】の(A)?(C)をも参照すると、(B)の段階で受領証への押捺が行われ、(C)の段階で、ラッチレバー33の孔部33bに施錠杆41が係合し、開閉扉3の施錠が完了するとともに受領証を受領証挿入口11から引き抜き可能となることが理解できるから、上記相違点は実質的な相違点である。
したがって、本願発明1は、引用発明とはいえない。

イ 理由2(進歩性)について
引用発明は、段落【0004】に記載されているように「電気作動装置を用いることなく、収納口の施錠及び受領証への自動押捺機能を備えた宅配荷物受け取りボックスを簡易な構造で構成することを課題とする」ところ、機械的な構成である上記構成Aにより、受領証への押捺が行われた後に、開閉扉3を施錠の完了と捺印された受領証を受領証挿入口11から引き抜きを可能とする一連の動作を行うものであるから、この作用機序に代えて、孔部33bが施錠杆41に係合されたことに基づいて、開閉扉3が施錠された場合に限り伝票に受領の証を付す構成に変更することには動機付けがあるとはいえず、むしろ阻害要因が存在するといえる。
したがって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2?6について
本願発明2?6は、本願発明1の全ての構成を含み、さらに限定を加えたものであるから、本願発明1と同様の理由により、本願発明2、6は引用発明とはいえないし、本願発明2?6は当業者が引用発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1、2、6は引用発明とはいえないし、本願発明1?6は当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-05-13 
出願番号 特願2017-113833(P2017-113833)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (A47G)
P 1 8・ 121- WY (A47G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 遠藤 邦喜  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 島田 信一
八木 誠
発明の名称 保管ボックス  
代理人 岡田 伸一郎  

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