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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1374358
審判番号 不服2020-577  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-15 
確定日 2021-05-20 
事件の表示 特願2016-130875「電子機器、文字入力制御方法、及び文字入力制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月11日出願公開、特開2018- 6988〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年6月30日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年 7月11日付け :拒絶理由通知書
令和元年 9月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和元年10月 7日付け :拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和2年 1月15日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成2年1月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年 1月15日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由](補正の適否の判断)
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。なお、以下、本件補正後の請求項1に係る発明を「本件補正発明」という。)

「 【請求項1】
複数の第1の物理キーと前記第1の物理キーに対応付けられた複数の第2の物理キーとを含む筐体と、
前記第1の物理キー及び前記第2の物理キーの操作に基づいて処理を実行するコントローラと
を備え、
複数の前記第1の物理キーは、当該第1の物理キーを構成する一辺の長さよりも、前記筐体の第1の縁の側近くに寄った位置に沿って並び、
複数の前記第2の物理キーは、当該第2の物理キーを構成する一辺の長さよりも、前記筐体の第2の縁の側近くに寄った位置に沿って並ぶ
電子機器。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和元年9月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
複数の第1の物理キーと前記第1の物理キーに対応付けられた複数の第2の物理キーとを含む筐体と、
前記第1の物理キー及び前記第2の物理キーの操作に基づいて処理を実行するコントローラと
を備え、
複数の前記第1の物理キーは、前記筐体の第1の縁の側近くに寄った位置に沿って並び、
複数の前記第2の物理キーは、前記筐体の第2の縁の側近くに寄った位置に沿って並ぶ
電子機器。」

2 補正の適否
本件補正の上記補正事項は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「複数の前記第1の物理キー」について、「当該第1の物理キーを構成する一辺の長さよりも」前記筐体の第1の縁の側近くに寄った位置に沿って並んでいる構成であることを限定し、また、「複数の前記第2の物理キー」について、「当該第2の物理キーを構成する一辺の長さよりも、」前記筐体の第2の縁の側近くに寄った位置に沿って並んでいる構成であることを限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項など
ア 引用文献1、引用発明について
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である、国際公開第2008/029492号(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審で付与した。以下同様。)

a 請求項1
「請求の範囲
[1] 文字データを入力するための複数のキーであって、それぞれ1つのキーに対して複数の文字データが割り当てられたキーが左右2列に配置されたキーグループと、前記左右2列に配置されたキーグループのキーのいずれか1つによって第1の信号が入力された際に、この第1の信号が入力されたキーに割り当てられた複数の文字データを、この第1の信号が入力されたキーが配置された側と左右反対側のキーグループのキーの配列に対応させて縦1列に表示するディスプレイと、
前記左右2列に配置されたキーグループのキーのいずれか1つによって第1の信号が入力された後、この第1の信号が入力されたキーが配置された側と左右反対側のキーグループのキーのいずれか1つによって第2の信号が入力された際に、前記ディスプレイに表示される複数の文字データの配列に従ってこの第2の信号が入力されたキーに対応する文字データを入力データとする制御部とを有する入力装置。」

b 段落[0002]-段落[0010]
「[0002]従来、携帯電話機に電話番号を入力する入力装置として、1から0までの押しボタンが使用されている。また、携帯電話機による文字通信を行うため、この電話番号入力用の押しボタンに文字記号を割り当てて入力可能にしている。そもそも携帯電話機が固定電話機から発達した歴史から、電話番号の1から0までの数字及び文字や記号等を入力する押しボタンの配列は、3列4行のものが世界的に普及しており、0から1の数字とAからZ等の文字等の組合せは概ね同様の数字及び文字グループで構成されている。わが国では、図1に示すように、この数字及び文字グループに、かな文字配列を組み合わせたキーボード2を採用した携帯電話機1が大多数である。

・・・(中略)・・・

発明が解決しようする課題
[0008] 特許文献1に記載のように、押されたキーに隣接するキー部分に情報を表示する方法は、構造的および視覚的に実用的ではなぐ非常に構造が複雑であってコストがかかるため現実的ではない。また、特許文献2に記載のテンキーボードでは、それぞれの数字キーに割り当てられているアルファベット文字等の配置順を覚えていなければならないという問題がある。
[0009] また、特許文献3に記載のデバイスインターフェースでは、広い主ディスプレイの左右にキーが配置されており、筐体を片手に持ったまま、その手で操作することが困難である。また、このデバイスインターフェースでは、1つのキーにより入力した際に、次に左右のキーにより入力できる文字記号を主ディスプレイ上に並べて表示するため、入力された文章を表示する主ディスプレイ上のスペースが残り少なくなってしまい、長い文章を入力する際には、入力された文章を見ながら入力することが困難である。
[0010] そこで、本発明が解決しようとする課題は、携帯電話機や携帯端末等の携帯機器の数字と文字の入力装置として既に一般的に普及している押しボタンに宛がう数字及び文字のグループ構成を変えず、しかも操作が簡単で、入力文字の選択確定を速やかに行うことが可能な入力装置を提供することにある。」

c 段落[0029]
「[0029]本発明の実施の形態における携帯機器としての携帯電話機は、図2に示すように、携帯電話本体24に、制御部30、主ディスプレイ23、文字モード切替キー22、選択ディスプレイ21、数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列キーグループ、6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループや、「*(アスタリスク)」、「記号」、「#(シャープ)」のキー等から構成される入力装置を備える。本実施形態における携帯電話機では、1番のキー11から0番のキー20までのキーグループを、図1に示した従来の一般的な携帯電話機の押しボタン配列のような左上の数字キー"1"から始まる3列4行のキーボード2の配列ではなく図2に示すように、左列の1番のキー11から始まり、5番のキー15まで下方縦列に5行、さらに、右列の6番のキー16から0番のキー20まで下方縦列に5行を配置した2列5行の配列としている。」

d 図2
「[図2]



「上記図2、段落[0029]を参照すると、数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列キーグループは、キー11から15の横の長さよりも、携帯電話本体24の左側の縁の側近くに寄った位置に沿って並び、6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループは、キー16から20の横の長さよりも、携帯電話本体24の右側の縁の側近くに寄った位置に沿って並ぶことが、図示されていると認められる。」

e 段落[0038]-段落[0041]
「[0038]本実施形態における入力装置の動作について説明すると、図2において、1番のキー11から5番のキー15までの左列のキーグループの1つのキーを押下することにより1次選択すると、このキー押下が第1の信号として制御部30へ入力され、選択されたキーに予め割り当てられた複数の文字からなる文字グループの情報(文字データ)が、左列のキーグループと右列のキーグループの中間位置に配置された選択ディスプレイ21に縦1列に表示される。このとき、当該文字グループの文字数は行の数以内に設定されており、表示される各文字は、必ず1次選択されたキーの反対側、すなわち、左列のキーグループによって1次選択がなされた場合には右列の真横のキーに各々1対1で宛がわれる。しかして、選択したい文字に対応する右列の真横のキーを押下することにより2次選択を行うと、このキー押下が第2の信号として制御部30へ入力される。これにより、制御部30は、選択ディスプレイ21に表示される複数の文字データの配列に従ってこの第2の信号が入力されたキーに対応する文字データを入力データとして確定する。

・・・(中略)・・・・
[0041]同様に、文字モード切替キー22が操作されて、力な文字モードに切り替えられた状態で、左列2番のキー12が押下されると、制御部30は、この2番のキー12に割り当てられているかな文字、すなわち表1の2行目の文字グループ「かきくけこ」を、図6に示すように候補文字として選択ディスプレイ21上に表示する。これらの候補文字「かきくけこ」は右列の真横の各キー16?20にそれぞれ対応しているので、例えば右列の9番のキー19が押下されると、制御部30はこの9番のキー19に対応する文字「け」を入力データとして確定し、主ディスプレイ23に表示する。なお、文字モード切替キー22が操作されて、数字モードに切り替えられた状態であれば、対応する各キー11?20の数字が主ディスプレイ23に入力される。」

f 図6
「[図6]




g 段落[0047]
「[0047]また、このように横に細長いキーの効果として、通常、片手でキーを操作するときは中央部に近接したほうが効率がよく、一方、両手親指で操作する場合は両端部にあるほうが良いが、その両方の使用方法に対応できることが挙げられる。また、図9はかな文字が不要な言語圏において使用する図7の携帯電話機の別の例を示しており、かな文字を省略して1番から0番のキー11?20の文字グループの構成を変えたものである。このように、かな文字を省略することにより1つのキー当たりに割り当てるアルファベット文字等を増やすことができるので、前述の1次選択したキーを押下したままの状態で2次選択を行う連続入力を効果的に行うことが可能である。」

(イ)上記記載からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 携帯電話本体24に、
制御部30、
数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列キーグループ、
6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループから構成される入力装置を備え、
数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列キーグループは、キー11から15の横の長さよりも、携帯電話本体24の左側の縁の側近くに寄った位置に沿って並び、
6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループは、キー16から20の横の長さよりも、携帯電話本体24の右側の縁の側近くに寄った位置に沿って並び、
1番のキー11から5番のキー15までの左列のキーグループの1つのキーを押下することにより1次選択すると、このキー押下が第1の信号として制御部30へ入力され、
選択されたキーに予め割り当てられた複数の文字からなる文字グループの情報(文字データ)が、左列のキーグループと右列のキーグループの中間位置に配置された選択ディスプレイ21に縦1列に表示され、
このとき、表示される各文字は、必ず1次選択されたキーの反対側、すなわち、左列のキーグループによって1次選択がなされた場合には右列の真横のキーに各々1対1で宛がわれ、
選択したい文字に対応する右列の真横のキーを押下することにより2次選択を行うと、このキー押下が第2の信号として制御部30へ入力され、
これにより、制御部30は、選択ディスプレイ21に表示される複数の文字データの配列に従ってこの第2の信号が入力されたキーに対応する文字データを入力データとして確定し、
左列2番のキー12が押下されると、
2行目の文字グループ「かきくけこ」を候補文字として選択ディスプレイ21上に表示し、
これらの候補文字「かきくけこ」は右列の真横の各キー16?20にそれぞれ対応しており、
右列の9番のキー19が押下されると、制御部30はこの9番のキー19に対応する文字「け」を入力データとして確定し、主ディスプレイ23に表示する、
携帯電話。」

(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列キーグループ」の各「キー」は「押下」によりキーを選択していることから、「物理キー」といえる。したがって、引用発明の当該「左列キーグループ」は、本件補正発明の「複数の第1の物理キー」に相当する。
また、引用発明の「6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループ」は、各「キー」が「押下」によりキーを選択しており、「左列のキーグループによって1次選択がなされた場合には右列の真横のキーに各々1対1で宛がわれ」ることから、本件補正発明の「前記第1の物理キーに対応付けられた複数の第2の物理キー」に相当する。
そして、引用発明の「携帯電話本体24」は、本件補正発明の「筐体」に相当する。
よって、引用発明の「数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列のキーグループ」と「6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループ」とを備える「携帯電話本体24」は、本件補正発明の「複数の第1の物理キーと前記第1の物理キーに対応付けられた複数の第2の物理キーとを含む筐体」に相当する。

イ 引用発明は、「1番のキー11から5番のキー15までの左列のキーグループの1つのキーを押下することにより1次選択すると、このキー押下が第1の信号として制御部30へ入力され、選択されたキーに予め割り当てられた複数の文字からなる文字グループの情報(文字データ)が、左列のキーグループと右列のキーグループの中間位置に配置された選択ディスプレイ21に縦1列に表示され、選択したい文字に対応する右列の真横のキーを押下することにより2次選択を行うと、このキー押下が第2の信号として制御部30へ入力され、これにより、制御部30は、選択ディスプレイ21に表示される複数の文字データの配列に従ってこの第2の信号が入力されたキーに対応する文字データを入力データとして確定」している。
すなわち、引用発明は、「左列のキーグループの1つのキー押下」が「第1の信号として制御部30へ入力され、」「選択ディスプレイ」に「文字グループの情報(文字データ)」を表示し、「右列の真横のキー」「押下」が「第2の信号として制御部30へ入力され、」「第2の信号が入力されたキーに対応する文字データを入力データとして確定」している。
そして、「キー押下」は「物理キーの操作」といえるものであり、「選択ディスプレイ」に「文字グループの情報(文字データ)」を表示すること、及び「第2の信号(キー押下)が入力されたキーに対応する文字データを入力データとして確定」することは、いずれも「処理を実行する」ことといえるものである。よって、引用発明の「制御部30」は、「物理キーの操作に基づいて処理を実行するコントローラ」といえる。
したがって、上記アを参照すると、引用発明の「数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列キーグループ」及び「6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループ」は、それぞれ、本件補正発明の「複数の第1の物理キー」及び「複数の第2の物理キー」に相当しているから、引用発明の「制御部30」は、本件補正発明の「前記第1の物理キー及び前記第2の物理キーの操作に基づいて処理を実行するコントローラ」に相当するといえる。

ウ 上記アを参照すると、引用発明の「数字の1番のキー11から5番のキーまでの左列キーグループ」は本件補正発明の「複数の第1の物理キー」に相当し、引用発明の「携帯電話本体24」は、本件補正発明の「筐体」に相当しているから、引用発明の「数字の1番のキー11から5番のキー15までの左列キーグループは、キー11から15の横の長さよりも、携帯電話本体24の左側の縁の側近くに寄った位置に沿って並」ぶことは、本件補正発明の「複数の前記第1の物理キーは、当該第1の物理キーを構成する一辺の長さよりも、前記筐体の第1の縁の側近くに寄った位置に沿って並び」と「複数の前記第1の物理キーは、前記筐体の第1の縁の側近くに寄った位置に沿って並」んでいる点で共通している。

エ 上記アを参照すると、引用発明の「6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループ」は、本件補正発明の「複数の第2の物理キー」に相当し、引用発明の「携帯電話本体24」は、本件補正発明の「筐体」に相当しているから、引用発明の「6番のキー16から0番のキー20までの右列キーグループは、キー16から20の横の長さよりも、携帯電話本体24の右側の縁の側近くに寄った位置に沿って並」んでいることは、本件補正発明の「複数の前記第2の物理キーは、当該第2の物理キーを構成する一辺の長さよりも、前記筐体の第2の縁の側近くに寄った位置に沿って並」んでいることと「複数の前記第2の物理キーは、前記筐体の第2の縁の側近くに寄った位置に沿って並」んでいる点で共通している。

オ 引用発明の「携帯電話」は、本件補正発明の「電子機器」に相当する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 複数の第1の物理キーと前記第1の物理キーに対応付けられた複数の第2の物理キーとを含む筐体と、
前記第1の物理キー及び前記第2の物理キーの操作に基づいて処理を実行するコントローラと
を備え、
複数の前記第1の物理キーは、前記筐体の第1の縁の側近くに寄った位置に沿って並び、
複数の前記第2の物理キーは、前記筐体の第2の縁の側近くに寄った位置に沿って並ぶ
電子機器。」

(相違点1)
複数の第1の物理キーの並びが、本件補正発明では、「当該第1の物理キーを構成する一辺の長さよりも、」前記筐体の第1の縁の側近くに寄った位置に沿って並ぶのに対して、引用発明では、「キー11から15の横の長さよりも、」前記筐体の第1の縁の側近くに寄った位置に沿って並ぶ点。

(相違点2)
複数の第2の物理キーの並びが、本件補正発明では、「当該第2の物理キーを構成する一辺の長さよりも、」前記筐体の第1の縁の側近くに寄った位置に沿って並ぶのに対して、引用発明では、「キー16から20の横の長さよりも、」前記筐体の第1の縁の側近くに寄った位置に沿って並ぶ点。

(4)判断
ア 上記相違点1,2について
まず、キー構成する一辺に、横の辺が含まれていることは自明であるから、「キー」の「横の長さ」は「キーを構成する一辺の長さ」といえるものである。
そして、上記(3)アを参照すると、「数字の1番のキー11から5番のキーまでの左列キーグループ」は、本件補正発明の「複数の第1の物理キー」に相当しているから、引用発明の「キー11から15の横の長さよりも、」前記筐体の第1の縁の側近くに寄った位置に沿って並ぶことは、「当該第1の物理キーを構成する一辺の長さよりも、」前記筐体の第1の縁の側近くに寄った位置に沿って並ぶ構成を含むものである。
また、同様に、上記(3)アを参照すると、引用発明の「キー16から20の横の長さよりも、」前記筐体の第1の縁の側近くに寄った位置に沿って並ぶことは、本件補正発明の「当該第2の物理キーを構成する一辺の長さよりも、」前記筐体の第1の縁の側近くに寄った位置に沿って並ぶことを含むものである。
したがって、引用発明は、本件補正発明と表現上の違いはあるものの実質的に相違する点はない。

上記のとおり、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

また、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、仮に、「物理キーを構成する一辺」が「物理キー」の縦の辺であったとしても、上記(2)ア(ア)gを参照すると、引用文献1には、「また、このように横に細長いキーの効果として、通常、片手でキーを操作するときは中央部に近接したほうが効率がよく、一方、両手親指で操作する場合は両端部にあるほうが良いが、その両方の使用方法に対応できることが挙げられる。・・・(以下、省略)」と記載され、「両手親指で操作する場合に両端部にある方が良い」ことが記載されており、その両端部とキーの間をどのように設定するかは、設計事項にすぎない。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は,特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年1月15日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、令和元年9月20日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の理由は、以下のとおりである。

理由1(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(新規性)、理由2(進歩性)
・請求項 1-4
・引用文献等 1

●理由2(進歩性)
・請求項 1-4
・引用文献等 1-3

<引用文献等一覧>
1.国際公開第2008/029492号
2.特開2008-90753号公報
3.特開2006-148536号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)ア(ア)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明を特定するために必要な事項である「複数の前記第1の物理キー」について、「当該第1の物理キーを構成する一辺の長さよりも」前記筐体の第1の縁の側近くに寄った位置に沿って並んでいる構成であることを削除し、「複数の前記第2の物理キー」について、「当該第2の物理キーを構成する一辺の長さよりも、」前記筐体の第2の縁の側近くに寄った位置に沿って並んでいる構成であることを削除したものである。

本願発明と引用発明を対比すると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。

(一致点)
「 複数の第1の物理キーと前記第1の物理キーに対応付けられた複数の第2の物理キーとを含む筐体と、
前記第1の物理キー及び前記第2の物理キーの操作に基づいて処理を実行するコントローラと
を備え、
複数の前記第1の物理キーは、前記筐体の第1の縁の側近くに寄った位置に沿って並び、
複数の前記第2の物理キーは、前記筐体の第2の縁の側近くに寄った位置に沿って並ぶ
電子機器。」

そうしてみると、本願発明と引用発明との間に相違点はない。
また、本願発明は、表現上の差違を考慮したとしても引用発明から容易になし得たものと認められる。

そうすると、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明ついて検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-03-09 
結審通知日 2021-03-16 
審決日 2021-03-30 
出願番号 特願2016-130875(P2016-130875)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐伯 憲太郎  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 太田 龍一
小田 浩
発明の名称 電子機器、文字入力制御方法、及び文字入力制御プログラム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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