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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 B65D 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 B65D 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 B65D |
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管理番号 | 1374451 |
審判番号 | 不服2020-11272 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-08-13 |
確定日 | 2021-06-16 |
事件の表示 | 特願2018-228221「箱詰めキット」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月14日出願公開、特開2019- 38616、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成26年3月31日に特許出願した特願2014-73178号の一部を平成30年12月5日に分割して新たな特許出願としたものであって、平成31年1月4日付けで上申書及び手続補正書が提出され、令和元年10月7日付けで拒絶の理由が通知され、令和2年2月7日付けで意見書が提出され、同年4月24日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)された。本件審判は、原査定に対して令和2年8月13日に請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2007-252749号公報 2.特開2011-240959号公報 3.特開2004-075193号公報 4.特開2011-235954号公報(周知技術を示す文献) 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正(以下、「本件補正」という。)によって、請求項1、3のそれぞれに「前記仕切り材は、個々の又は2個以上の飲料用水素含有水製品を区切るように設けられてなり」、「容器内部の空間と容器外部の空間との連通を断つ」なる発明特定事項(以下、「本件補正事項」という。)が追加された。 本件補正により請求項1、3のそれぞれに追加された本件補正事項は、段落【0010】、【0012】及び【0020】に記載されているから、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。 また、本件補正は、補正前の請求項1、6における発明特定事項である、「仕切り材」、「容器体の底部が上を向き、反対に前記キャップが下を向いた姿勢にて箱内に装填」のそれぞれに限定を付加するものであり、かつ、補正前の請求項1、6に記載された発明と、補正後の請求項1、3に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、以下「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-4に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができる(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する)ものである。 第4 本願発明 本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、令和2年8月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 飲料用水素含有水製品が箱内に装填されてなる箱詰めキットであって、 該飲料用水素含有水製品は、可撓性を有する袋状の容器体と、該容器体内に差し込まれたスパウトと、該容器体の頂部に取着された該スパウトのキャップとを備えてなるスパウト付包装容器の内部に、飲料用水素含有水が充填されてなるものであり、 前記箱は、2個以上の飲料用水素含有水製品が、前記容器体の底部が上を向き、反対に前記キャップが下を向いた逆さ姿勢が保たれるように、前記箱の内部空間を格子状に仕切る仕切り材を設けてなり、 前記仕切り材の高さは、前記容器体の底部よりも低い位置に設定されており、 前記仕切り材は、個々の又は2個以上の飲料用水素含有水製品を区切るように設けられてなり、 そして前記飲料用水素含有水製品は、前記容器体の底部が上を向き、反対に前記キャップが下を向いた姿勢にて箱内に装填され、容器内部の空間と容器外部の空間との連通を断つことを特徴とする、飲料用水素含有水製品の箱詰めキット。 【請求項2】 前記飲料用水素含有水製品は、前記容器体の底部が上を向き、反対に前記キャップが下を向いた姿勢にて箱内に前記容器体の周囲が前記仕切り材に当接するように装填されている、請求項1に記載の箱詰めキット。 【請求項3】 可撓性を有する袋状の容器体と、該容器体内に差し込まれたスパウトと、該容器体の頂部に取着された該スパウトのキャップとを備えてなるスパウト付包装容器の内部に、飲料用水素含有水が充填されてなる飲料用水素含有水製品を、箱詰めする方法であって、 前記箱は、2個以上の飲料用水素含有水製品が、前記容器体の底部が上を向き、反対に前記キャップが下を向いた逆さ姿勢が保たれるように、前記箱の内部空間を格子状に仕切る仕切り材を設けてなり、 前記仕切り材の高さは、前記容器体の底部よりも低い位置に設定されており、 前記仕切り材は、個々の又は2個以上の飲料用水素含有水製品を区切るように設けられてなり、 該飲料用水素含有水製品を、前記容器体の底部が上を向き、反対に前記キャップが下を向いた姿勢にて箱内に装填し、容器内部の空間と容器外部の空間との連通を断つことを特徴とする、飲料用水素含有水製品の箱詰め保存法。 【請求項4】 該飲料用水素含有水製品を、前記容器体の底部が上を向き、反対に前記キャップが下を向いた姿勢にて箱内に前記容器体の周囲が前記仕切り材に当接するように装填する、請求項3に記載の箱詰め保存法。」 第5 引用文献 (1)引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付与した。以下、同様。) ア.「【0014】 即ち本発明は、可撓性を有する素材より成り内容物を充填された際に略直方体状になる袋部の下方中央部に吐出口を構成する吐出部が突出して形成されており充填されたペースト状の歯科用印象材を歯科用印象材練和装置に供給する歯科用印象材の容器を、梱包箱内に複数収納する際に用いられる歯科用印象材の容器用支持部材であって、前記容器の吐出部を挿通可能な大きさの開口穴が略等間隔で複数併設されていると共にその上面に該容器の吐出部近傍の部位が載置される矩形状を成す載置片と、該載置片の開口穴併設方向と直角な両端縁より下方に折曲して形成され該載置片の上面に載置される該容器の吐出部が梱包箱の底面と接触しない高さに該載置片を維持せしめる一対の支持片と、両該支持片の下端より上方に折曲して形成され少なくとも該載置片の上面に載置される該容器の側部に当接する高さを有していると共に該載置片の上面に載置される隣合う該容器間に位置する部位にその上縁端側より帯状に切り込まれた区画片挿入部が設けられている一対の仕切片とから成る容器保持片と、該容器保持片の該仕切片の対向する両区画挿入部に挿入係合され両該仕切片同士の間隔を維持せしめる区画片とから構成されていることを特徴とする歯科用印象材の容器用支持部材である。」 イ.「【0027】 この容器保持片1の一対の仕切片1c,1cは、それぞれの支持片1b,1bの下端より上方に折曲して形成され少なくとも載置片1aの上面に載置される歯科用印象材の容器Cの側部に当接する高さを有していると共に載置片1aの上面に載置される隣合う歯科用印象材の容器C,C間に位置する部位にその上縁端側より帯状に切り込まれた区画片挿入部1caが設けられており、この仕切片1cの高さとしては、図6に示す如く載置片1aの上面に載置された歯科用印象材の容器Cの側部の高さより高いものであってもよく、また載置片1aの上面に載置された歯科用印象材の容器Cの側部の下方の一部にのみ当接するものであってもよいが、載置片1aの上面に載置された歯科用印象材の容器Cの側部の上端近傍にまで当接するような高さを有していれば、歯科用印象材の容器Cを安定して保持することができて好ましい。」 ウ.「【0028】 2は容器保持片1の仕切片1cの対向する両区画挿入部1caに挿入係合され両仕切片1c,1c同士の間隔を維持せしめる区画片であり、容器保持片1を梱包箱Bに設置する際にその形状を維持させると共に、容器保持片1の載置片1aの上面に載置された歯科用印象材の容器Cが容器保持片1の載置片1aの開口穴1aa併設方向へ倒れないように歯科用印象材の容器Cを支持する役目を果たす。」 エ.「【0029】 この区画片2としては、容器保持片1の仕切片1cの対向する両区画挿入部1ca,1caに挿入係合され両仕切片1c,1c同士の間隔を維持せしめることができる形状のものであれば何でもよく、例えばその高さが区画挿入部1cと高さ方向の長さが略同一の寸法で、その幅が歯科用印象材の容器Cを容器保持片1の載置片1aに載置した際の両仕切片1c,1c同士間の長さと両仕切片1c,1cの厚さとを足した長さと略同一の寸法で、その厚さが区画挿入部1cの幅方向の長さと略同一の寸法である単なる板状のものであってもよいが、この区画片2として図1に示す如くその高さが区画挿入部1cと高さ方向の長さよりも長い寸法であって、その高さ方向の両側縁部の上方側に、仕切片1cの厚さと略同一の寸法の分だけ幅方向へ凸状を成しそれぞれ対向する両区画挿入部1ca,1caへ挿入係合される挿入片2a(図4に示す区画片2の高さ方向の両側縁部の上方側に形成された凸部の如き形状)が形成されていれば、区画挿入部1caに挿入係合させた際に挿入片2aより下方の側端が仕切片1cに当接するので、容器保持片1に区画片2を挿入係合させ易いばかりでなく、両仕切片1c,1c同士の間隔を維持せしめる力や容器保持片1と区画片2との係合力が増して好ましい。」 オ.「【0030】 そして、図5に示す如く梱包箱Bに容器保持片1を2つ並設する態様の場合には、区画片2として、図4に示す如くその高さが区画挿入部1cと高さ方向の長さよりも長い寸法であって、その幅が並設される2つの容器保持片1,1のそれぞれの仕切片1cの区画挿入部1caに挿入係合可能な幅を有し、その高さ方向の両側縁部の上方側に前記したような挿入片2aが形成されていると共に、その幅方向の中心に下方側より切り欠かれて形成され隣合う容器保持片1,1の当接する両仕切片1c,1cを挟み込む挿入溝2bが形成されているものを用いれば、2つの容器保持片1を1つの区画片2でそれぞれの両仕切片1c,1c同士の間隔を維持せしめた状態とすることができるので、その組立て作業性を向上させることができて好ましい。」 カ.「【0034】 かくして、本発明に係る歯科用印象材の容器用支持部材を梱包箱B内に設置した後に、図7に示す如き歯科用印象材の容器Cを図5及び図6に示す如くその吐出部C2が下方となるようにそれぞれの容器保持片1及び区画片2によって区画された空間にそれぞれ挿入し、歯科用印象材の容器Cがその吐出部C2を載置片1aの開口穴1aaより突出した状態で収納すれば、ペースト状の歯科用印象材を充填された歯科用印象材の容器C内に残存する空気はペーストの粘性に抗して長時間掛けて徐々に上方へと移行し、最終的には歯科用印象材の容器C内の吐出部C2と反対側の方へと集まるから、このような状態の未使用の歯科用印象材の容器Cを歯科用印象材練和装置に装着して送出手段を起動させても、空気が直ちに送出手段内に入り込んでしまうことがないので、ペースト状の歯科用印象材の吐出量が不安定になってしまう現象の発生を最小限にすることができる。」 上記記載事項及び図示内容から、以下の事項が認められる。 キ.上記記載事項カの「図7に示す如き歯科用印象材の容器Cを図5及び図6に示す如くその吐出部C2が下方となるように」との記載と、図6、7の図示内容から、歯科用印象材の容器Cは、 袋部C1の底部が上を向き、反対に吐出部C2が下を向いた姿勢となっていることが理解できる。 ク.上記記載事項オの「図5に示す如く梱包箱Bに容器保持片1を2つ並設する態様」との記載と、図5の図示内容から、容器用支持部材は、梱包箱Bの内部空間を格子状に仕切ることが理解できる。 上記記載事項、図示内容及び認定事項を総合し、本願発明1の記載ぶりに倣って整理すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 (引用発明1) 歯科用印象材が充填された容器Cが梱包箱B内に収納されたものであって、 該歯科用印象材が充填された容器Cは、袋部C1と、吐出部C2とを備えてなる吐出部C2付容器Cの内部に、歯科用印象材が充填されてなるものであり、 前記梱包箱Bは、2個以上の歯科用印象材が充填された容器Cが、袋体の袋部C1が上を向き、反対に前記吐出部C2が下を向いた姿勢が保たれるように、前記梱包箱Bの内部空間を格子状に仕切る容器用支持部材を設けてなり、 前記容器用支持部材は、前記容器Cの側部の下方の一部のみに当接されており、 前記容器用支持部材は、個々の歯科用印象材が充填された容器Cを区切るように設けられてなり、 そして前記歯科用印象材が充填された容器Cは、袋部C1の底部が上を向き、反対に前記吐出部C2が下を向いた姿勢にて梱包箱B内に収納され、歯科用印象材が充填された容器Cが梱包箱Bに詰められたもの。 (2)引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ケ.「【0016】 本発明のスパウト付包装容器は水素含有水を充填するためのものであって、可とう性を備えた袋状の容器体と、スパウトとキャップとを備えてなる。」 コ.「【0019】 図1に示すように、ガゼットタイプのスパウト付包装容器1は、内容物(水素含有水)を充填すると箱状(直方体状)の形状となる(図1(b))。この包装容器は、アルミラミネートシートを熱溶着して袋状に成形してなる容器体2と、樹脂製のスパウト3から構成される。なお図1では省略されているが、スパウト3の開口部を封止する樹脂製のキャップが備え付けられる。 容器体2は、正面シート21a、背面シート21bと、これら両シートの間に2つに折り畳まれて挟まれた右側面シート21cおよび左側面シート21dから構成される。 そして容器体2は、正面シート21aの右側縁と右側シート21cの前側縁、右側シート21cの後側縁と背面シート21bの右側縁、背面シート21bの左側縁と左側シート21dの後側縁、並びに左側シート21dの前側縁と正面シート21aの左側縁とが夫々ヒートシールされることによって底部22、まち部23を有する袋状に形成される。 また、スパウト3は、正面シート21aと背面シート21bの間に挿入された状態で両シートの上縁略中央部とヒートシールされることにより装着されている。」 サ.「【0027】 そして本発明は、前記スパウト付包装容器に充填・密封されてなる飲料用水素含有水製品にも関する。」 上記記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている (引用発明2) 飲料用水素含有水製品は、可とう性を有する袋状の容器体2と、該容器体2内に差し込まれたスパウト3と、該容器体2の頂部に取着された該スパウト3のキャップ10とを備えてなるスパウト付包装容器1の内部に、飲料用水素含有水が充填されてなるものであること。 第6 対比・判断 (1)本願発明1について 本願発明1と引用発明1とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、引用発明1の「梱包箱B」が本願発明1の「箱」に相当し、以下それぞれ、引用発明1の「袋部C1」、「容器用支持部材」が本願発明1の「可撓性を有する袋状の容器体」、「仕切り材」に相当する。 引用発明1の「吐出部C2」と、本願発明1の「スパウト」とは、内容物を導出する部分という限りで共通する。 引用発明1の「歯科用印象材が充填された容器C」と、本願発明1の「飲料用水素含有水製品」とは、内容物が充填された容器である限りにおいて共通する。 引用発明1の「歯科用印象材が充填された容器Cが梱包箱B内に収納されたもの」と、本願発明1の「飲料用水素含有水製品が箱内に装填されてなる箱詰めキット」とは、「内容物が充填された容器が箱内に装填されてなる箱」という限りで共通する。 上記記載事項イの「この仕切片1cの高さとしては、図6に示す如く載置片1aの上面に載置された歯科用印象材の容器Cの側部の高さより高いものであってもよく、また載置片1aの上面に載置された歯科用印象材の容器Cの側部の下方の一部にのみ当接するものであってもよい」との記載、及び、上記記載事項エの「この区画片2としては、容器保持片1の仕切片1cの対向する両区画挿入部1ca,1caに挿入係合され両仕切片1c,1c同士の間隔を維持せしめることができる形状のものであれば何でもよく、例えばその高さが区画挿入部1cと高さ方向の長さが略同一の寸法で」との記載から、引用発明1の「前記容器用支持部材は、前記容器Cの側部の下方の一部のみに当接されており」は、本願発明1の「前記仕切り材の高さは、前記容器体の底部よりも低い位置に設定されており」に相当する。 してみると、本願発明1と引用発明1とは、両者が 「内容物が充填された容器が箱内に装填されてなる箱であって、 該内容物が充填された容器は、可撓性を有する袋状の容器体と、内容物を導出する部分とを備えてなる包装容器の内部に、内容物が充填されてなるものであり、 前記箱は、2個以上の内容物が充填された容器が、前記容器体の底部が上を向き、反対に前記内容物を導出する部分が下を向いた逆さ姿勢が保たれるように、前記箱の内部空間を格子状に仕切る仕切り材を設けてなり、 前記仕切り材の高さは、前記容器体の底部よりも低い位置に設定されており、 前記仕切り材は、個々の内容物が充填された容器を区切るように設けられてなり、 そして前記内容物が充填された容器は、前記容器体の底部が上を向き、反対に前記内容物を導出する部分が下を向いた姿勢にて箱内に装填されている、内容物が充填された容器の箱。」 で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 内容物が充填された容器について、本願発明1では、容器の内部に充填されるものが「飲料用水素含有水」であるのに対して、引用発明1では「歯科用印象材」である点。 (相違点2) 内容物を導出する部分において、本願発明1では、容器は、容器体内に差し込まれたスパウトと、容器体の頂部に取着された該スパウトのキャップとを備えているのに対して、引用発明1では、吐出部が包装体内に差し込まれているか不明であり、キャップを備えているかも不明である点。 (相違点3) 本願発明1では、飲料用水素含有水製品は、容器内部の空間と容器外部の空間との連通を断つのに対して、引用発明1では、連通を断つのか不明である点。 まず、上記相違点1-2について検討する。 引用発明1は、2種のペースト原料を練和して歯科用印象材ペーストを調製する際、歯科用印象材ペーストの原料を充填した容器内に残存する空気が、練和装置の送出手段に入り込むという課題に着目し、該課題を解決するためになされたものである(引用文献1の段落【0011】を参照。)。 一方、引用発明2は、飲料用水素含有水充填時の空気の混入(空気溜まり)を抑制した構造の袋状容器を用い(引用文献2の段落【0006】を参照。)、さらに容器を密封するタイミングにあわせて容器内に残存する空気を排出するという充填方法によって、スパウト開口部のシール・キャップ後の空気の残存の防止を図った技術である(同段落【0026】を参照。)。 引用発明1が歯科用印象材ペーストを収容する容器内に残存する空気に着目したものであるのに対し、引用発明2は、飲料用水素含有水充填時に混入する空気に着目したものであって、技術分野も解決しようとする課題も異なるから、引用発明1の箱に、引用発明2の飲料用水素含有水製品を収容しようとする動機付けがない。また、引用文献3、4にも、この動機付けについて示唆する記載はない。 仮に引用発明1に引用発明2を組み合わせることができたとしても、引用発明1の容器は、逆さ姿勢で内容物を吐出するものであるところ、引用発明2の吐出部を、容器体内に差し込まれたスパウトを採用すると、内容物を最後まで吐出することが困難となるため、両者を組み合わせることには、阻害要因があるというべきである。 よって、相違点3を検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1、2、及び引用文献3、4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 (2)本願発明2-4について 本願発明2-4も、相違点1、2に係る発明特定事項を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、2、及び引用文献3、4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定について 審判請求時の補正により、本願発明1-4は相違点1-3に係る発明特定事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-05-28 |
出願番号 | 特願2018-228221(P2018-228221) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B65D)
P 1 8・ 55- WY (B65D) P 1 8・ 572- WY (B65D) P 1 8・ 575- WY (B65D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 加藤 信秀 |
特許庁審判長 |
井上 茂夫 |
特許庁審判官 |
藤原 直欣 矢澤 周一郎 |
発明の名称 | 箱詰めキット |
代理人 | 特許業務法人はなぶさ特許商標事務所 |