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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  A47L
審判 一部申し立て 2項進歩性  A47L
管理番号 1374876
異議申立番号 異議2019-701048  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-20 
確定日 2021-03-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6537774号発明「自走式清掃装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6537774号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕〔3〕について訂正することを認める。 特許第6537774号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6537774号(以下、「本件特許」という。)の請求項1-3に係る特許についての出願は、平成26年2月28日に出願され、令和元年6月14日にその特許権の設定登録がされ、令和元年7月3日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 元年12月20日 : 特許異議申立人 仲川 優子(以下、「特許異議申立人」という。)による請求項1、2に対する特許異議の申立て
令和 2年 3月18日付け: 取消理由通知書
令和 2年 5月25日 : 特許権者 住友重機械工業株式会社(以下、「特許権者」という。)による意見書及び訂正請求書の提出
令和 2年 6月19日付け: 通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和 2年 7月17日 : 特許異議申立人による意見書の提出
令和 2年 8月12日付け: 訂正拒絶理由通知書
令和 2年 9月15日 : 特許権者による意見書の提出
令和 2年10月30日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
令和 3年 1月 4日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
(なお、令和2年6月19日付け通知書で特許異議申立人には意見書提出の機会が与えられており、令和3年1月4日提出の訂正請求書によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、本件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断したため、特許法第120条の5第5項ただし書に規定される特別の事情があるときに該当し、特許異議申立人に改めて意見書提出の機会を与えなかったものである。)


2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
令和3年1月4日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のア、イのとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「液体を床面に散布する散布部と、前記散布部によって液体が散布された床面の清掃を行う清掃ユニットと、前記散布部によって液体が散布された床面と前記清掃ユニットと間の摩擦を推定する推定部と、前記清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する調整部と、を備え、前記推定部の推定結果に応じて前記調整部により前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整される、自走式清掃装置。」と記載されているのを、「支持台を含む走行部と、液体を床面に散布する散布部と、前記散布部によって液体が散布された床面の清掃を行う清掃ユニットと、前記散布部によって液体が散布された床面と前記清掃ユニットと間の摩擦を推定する推定部と、前記清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する調整部と、を備え、前記清掃ユニットは、本体部及び前記調整部を含み、前記調整部は、支持バネ、調整プレート、及び調整ネジを含み、前記支持台は、前記支持台の下部フレームに固定される部材、支持部、及び前記調整部を介して前記清掃ユニットの前記本体部を支持し、前記支持バネは、前記支持部と前記調整プレートとの間に配置され、前記調整ネジは、前記本体部の天板に形成されたネジ穴と係合し、且つ、先端が前記調整プレートと接触するように構成されており、前記清掃ユニットが床面に押しつけられた状態で清掃が行われているときの前記推定部の推定結果に応じて、前記調整部の前記調整ネジの回転により、前記天板と前記調整プレートとの間の距離が増減されて前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整される、自走式清掃装置。」に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記推定部は、前記推定結果に基づいて清掃対象の床面を複数の清掃領域に分割し、前記調整部は、前記複数の清掃領域のそれぞれで前記清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する、請求項1又は2に記載の自走式清掃装置。」と記載されているのを、「液体を床面に散布する散布部と、前記散布部によって液体が散布された床面の清掃を行う清掃ユニットと、前記散布部によって液体が散布された床面と前記清掃ユニットと間の摩擦を推定する推定部と、前記清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する調整部と、を備え、前記推定部の推定結果に応じて前記調整部により前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整され、前記推定部は、前記推定結果に基づいて清掃対象の床面を複数の清掃領域に分割し、前記調整部は、前記複数の清掃領域のそれぞれで前記清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する、自走式清掃装置。」に訂正する。

訂正前の請求項1-3は、請求項2及び3が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項についてされたものである。
また、訂正後の請求項3に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。


(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1及び2に係る「清掃ユニット」の支持構造及び「調整部」に関し、「支持台を含む走行部」を備える自走式清掃装置において「清掃ユニットは、本体部及び調整部を含み、前記調整部は、支持バネ、調整プレート、及び調整ネジを含み、前記支持台は、前記支持台の下部フレームに固定される部材、支持部、及び前記調整部を介して前記清掃ユニットの前記本体部を支持し、前記支持バネは、前記支持部と前記調整プレートとの間に配置され、前記調整ネジは、前記本体部の天板に形成されたネジ穴と係合し、且つ、先端が前記調整プレートと接触するように構成されており、前記清掃ユニットが床面に押しつけられた状態で清掃が行われているときの前記推定部の推定結果に応じて、前記調整部の前記調整ネジの回転により、前記天板と前記調整プレートとの間の距離が増減されて前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整される」と、具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
また、願書に添付した明細書には、次の記載がある。なお、下線は当審にて付与した。
「走行部10は、自走式清掃装置100の走行に関する機能要素であり、主に、支持台11、駆動輪12、及び従動輪13を含む。」(段落[0014])
「白色で示す部分(回転ブラシ41、本体部42、及び第1調整部44を含む部分であり、以下、「清掃ユニットPU」とする。)は、支持台11に対してZ軸方向に変位可能な部分を示す。」(段落[0030])
「本実施形態では、第1調整部44は、図3に示すように、支持バネ44a、調整プレート44b、及び調整ネジ44cを含む。」(段落[0036])
「図1に示すように、支持台11は、支持ブロック15、支持部43、及び第1調整部44を介して本体部42を支持する。なお、支持ブロック15は、支持台11の下部フレーム11aに固定される部材であり、支持部43に剛結合される。」(段落[0029])
「支持部43は、図3に示すように、ベース43a及びリニアブッシュ43bを含む。」(段落[0032])
「支持バネ44aは、清掃ユニットPUの自重を支持可能な圧縮コイルバネである。本実施形態では、支持バネ44aは、ベース43aの横プレート43ahと調整プレート44bとの間に配置される左右一対の支持バネ44aL、44aRである。」(段落[0037])
「調整ネジ44cは、本体部42の天板42cに形成されたネジ穴42cH1と係合するネジである。」(段落[0040])
「調整プレート44bは、+Z側の面の中央部分を調整ネジ44cの-Z側の端部に接触させている。」(段落[0038])
「回転ブラシ41は、床面に押し付けられた状態で回転し、その床面の汚れを擦り落とす。」(段落[0021])
「調整ネジ44cがネジ締め方向に回転させられると、ブラシ昇降軸42aL、42aRは、リニアブッシュ43bL、43bRにガイドされながら、調整プレート44bに対して+Z方向に変位する。ブラシ昇降軸42aL、42aRが締結される本体部42の天板42cと調整プレート44bとの間の距離が増大するためである。なお、調整プレート44bは、Z軸方向にほとんど変位しない。清掃ユニットPUの自重に変化がなく、支持バネ44aに作用する力にほとんど変化がないので、支持バネ44aがさらに圧縮されることもないためである。一方、調整ネジ44cが反対方向に回転させられると、ブラシ昇降軸42aL、42aRは、リニアブッシュ43bL、43Rにガイドされながら、調整プレート44bに対して-Z方向に変位する。本体部42の天板42cと調整プレート44bとの間の距離が減少するためである。」(段落[0041])
「第1調整部44は、清掃ユニットPUの自重による押し付け力を調整する機能要素である。清掃ユニットPUの自重による押し付け力(以下、「自重押し付け力」とする。)は、回転ブラシ41を床面に押し付ける実際の押し付け力(以下、「正味押し付け力」とする。)のうちの、清掃ユニットPUの自重に起因する力である。」(段落[0035])
「推定部61は、床面の摩擦状態にかかわらず一定の回転数で回転する回転ブラシ用電動モータ41aのモータ消費電流iに基づいて床面の摩擦係数を推定する。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、推定部61は、床面の摩擦状態にかかわらず一定のモータ消費電流で回転する回転ブラシ用電動モータ41aの回転数に基づいて床面の摩擦係数を推定してもよい。」(段落[0081])
「押し付け力調整部D6は、押し付け力を調整する機能要素である。例えば、押し付け力調整部D6は、推定部61の推定結果に関する情報に応じて調整ネジ44cの調整状態及び押し付け軸45bの伸縮状態を自動的に変化させるアクチュエータである。具体的には、押し付け力調整部D6は、調整ネジ44c及び清掃ユニット側軸45b1を自動的に回転させる電動アクチュエータである。」(段落[0073])
したがって、訂正事項1に係る訂正箇所は、願書に添付した明細書における上記下線部に記載されているから、訂正事項1は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲においてしたものである。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項3について他の請求項との引用関係を解消するものであるから、引用関係の解消を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項?第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕〔3〕について訂正することを認める。


3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1-3に係る発明(以下、請求項の番号とともに「本件発明1」などという。また、これらの発明をまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1-3に記載された次の事項により特定されるとおりの、以下のものである。

【請求項1】
支持台を含む走行部と、
液体を床面に散布する散布部と、
前記散布部によって液体が散布された床面の清掃を行う清掃ユニットと、
前記散布部によって液体が散布された床面と前記清掃ユニットと間の摩擦を推定する推定部と、
前記清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する調整部と、を備え、
前記清掃ユニットは、本体部及び前記調整部を含み、
前記調整部は、支持バネ、調整プレート、及び調整ネジを含み、
前記支持台は、前記支持台の下部フレームに固定される部材、支持部、及び前記調整部を介して前記清掃ユニットの前記本体部を支持し、
前記支持バネは、前記支持部と前記調整プレートとの間に配置され、
前記調整ネジは、前記本体部の天板に形成されたネジ穴と係合し、且つ、先端が前記調整プレートと接触するように構成されており、
前記清掃ユニットが床面に押しつけられた状態で清掃が行われているときの前記推定部の推定結果に応じて、前記調整部の前記調整ネジの回転により、前記天板と前記調整プレートとの間の距離が増減されて前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整される、
自走式清掃装置。

【請求項2】
前記清掃ユニットは、電動モータと、前記電動モータにより回転駆動される回転ブラシとを含み、
前記推定部は、前記回転ブラシの回転数を一定に保った状態で前記電動モータで消費される電流の値から床面と前記回転ブラシとの間の摩擦を推定する、
自走式清掃装置。

【請求項3】
液体を床面に散布する散布部と、
前記散布部によって液体が散布された床面の清掃を行う清掃ユニットと、
前記散布部によって液体が散布された床面と前記清掃ユニットと間の摩擦を推定する推定部と、
前記清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する調整部と、を備え、
前記推定部の推定結果に応じて前記調整部により前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整され、
前記推定部は、前記推定結果に基づいて清掃対象の床面を複数の清掃領域に分割し、
前記調整部は、前記複数の清掃領域のそれぞれで前記清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する、
自走式清掃装置。


4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
当審が令和2年10月30日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
ア 請求項1に係る発明は、引用例1(特開平1-68229号公報 甲第1号証)に記載された発明であるか、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものである。また、請求項1に係る発明は、引用例2(特表2003-534086号公報 甲第3号証)に記載された発明であるか、引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものである。よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号、又は、同第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
イ 請求項2に係る発明は、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものである。よって、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

(2)引用例1の記載
引用例1には以下の事項が記載されている。
a 「本発明の主たる目的は、所望のツールトルクのために種々に設定でき、保守整備中の表面に変化があったとしても、表面に接したツールの圧力を変えることにより、加えられたツールトルクを選定した設定値に自動的に維持させるため、表面保守整備ツールを駆動する電動モータの負荷電流又は流体圧力モータの差動流体圧を感知できる自動ツールトルク補正器を提供することである。
本発明の別の目的は、比較回路を利用するスクラバーや掃引器即ちスイーパ-の如き表面保守整備機械に使用し、表面保守整備ツールを駆動する電動モータの負荷電流又は流体圧力モータの差動流体圧を表わす信号を所望のツールトルクを表わす信号に変え、その結果を基準値と比較して、保守整備中の表面に接したツールの圧力を制御することにより、加えられたツールトルクを所望のレベルに維持する自動ツールトルク補正器を提供することである。」(第3ページ左上欄第4行?右上欄第3行)
b 「しかるに、本発明においては、掃引ブラシやスクラバーブラシや研磨パッドの如き1つもしくは複数の回転可能な表面保守整備ツールを具備し表面保守整備ツールを駆動する1つもしくは複数の電動モータを具備する。直流電動モータでは、モータを通る電流がモータの負荷に比例することは当業者にとって周知である。それ故、1つもしくは複数のツール駆動モータ内の電流を表わす信号は、モータによりツールに加えられているトルクを表わすことになる。」(第3ページ左下欄第20行?右下欄第10行)
c 「ツール内に発生するトルクは、保守整備中の表面に及ぼすツールの下向きの圧力、及び表面自体又は表面上の泥によるツールの回転に対する抵抗の関数である。それぞれの表面は、その面肌や表面上に付着した泥の状態に応じて抵抗が種々異なる。しかしながら、面肌や泥付着状態に変化があったとしても、必要に応じ表面に及ぼすツールの下向きの圧力を調整することにより、ツール内のトルクを一定値に維持することができる。このようにするためには、ツールの垂直位置を若干変化させる。しかしながら、このようにツールの垂直位置を変化させても実行中の保守整備の質を損ねることはない。その理由は、一定の選択した値のツールトルクでツールにより常時実質的に一定の仕事量をこなせるからである。一定のトルクを加えた場合、ツールの寿命が延び、表面保守整備機械に必要なエネルギが少なくて済み、駆動モータをその定格容量内に維持でき、ツールトルク制御手段を有さない表面保守整備機械に比べて一層均一な表面例えば床清掃を行なえるという利点が得られる。」(第4ページ左上欄第17行?第4ページ右上欄第19行)
d 「第1図において、スクラバーの如き車両10は米国ミネソタ州 ミネアポリス所在のテナント社(Tennant Company)又はその子会社で米国ニューヨーク州ナイアガラフォール(Niagara Falls)所在のテナント・トレンド社(Tennant Trend, Inc.)により製造された型式のものでよい。このスクラバーはハウジング12と、オペレータ即ち運転手が車両の速度及び方向を制御するために使用する後部操作制御装置14とを有する。運転手は制御パネル15を使用してツールトルクを制御する。車両はツールである一対の回転ブラシ又はパッド16と、2つの駆動車輪18とを有する。スクイージ-(ゴム掻取り器)20は車両の後部に通常位置し、既知の方法で床を掃引し、たまった水を除去する。通常、スクイージ-には真空装置が取付けてあって、スクイージ-で集めた水を吸引除去する。真空ホースを22にて示す。
スクラバーに関連して本発明を説明するが、スィーパや研磨機や艶だし機の如き、表面保守整備ツールを使用するその他の車両に本発明を応用できることは言うまでもない。
このような表面保守整備機械により保守できる表面も種々様々である。例えば、表面は、すべての形式の床、船舶の甲板、街路、車道、駐車場及び掃引、掃除、研磨、磨き、艶だしを必要とするその他の表面でよい。
制御回路を第2A図及び第2B図に示す。運転手は多数の制御スイッチ手段のうちから2つのスイッチを使用してツールトルクを選択する。24はツールトルク選択ボタンであり、26は特別掃除ボタンである。特別掃除ボタン26を付勢すると、所定期間(例えば15秒間)だけ、ツールのトルクを実質上増大させることにより、保守整備中の床等の表面に積極的な掃除力を作用させ、その後は、制御が元の設定状態に戻る。」(第4ページ右上欄第20行?右下欄第17行)
e 「各ツールトルク制御回路は、普通の可変抵抗によりまず設定されその後は一定値維持される電圧を提供し、各電圧は所望のツールトルクを表わす。ツールトルク制御回路38?48は簡単に取外すことができ、別の応用において必要なら、別の値を有するツールトルク制御回路と容易に交換できる。選択ボタン24を断続的に閉じることにより制御されるようなセレクタスイッチ36は、選択した電圧の1つを別のセレクタスイッチ50へ送り、このセレクタスイッチ50はまた、特別掃除ボタン26からの入力をタイマ52を介して受取る。上述のように、特別掃除の作動期間は、タイマ52により制御されるような時間を指定した期間であり、この情報は、セレクタスイッチ36からの出力と一緒になってセレクタスイッチ50のための入力を提供する。
ツールトルク選択ボタン24の代りに、セレクタスイッチ50に接続した可変電位差計を用いることにより、別個の値のツールトルクの代りに無数に可変な範囲のツールトルクを提供することもできる。この場合、4ビツトカウンタ28、デコーダ30、リセット回路34、セレクタスイッチ36及びツールトルク制御回路38?48は不要である。またこの場合1表示器32は電位差計に接続することができる。
図示の例においては、2つのツール駆動モータを用いるが、本発明は3つ以上又は単一のツール駆動モータを有する表面保守整備機械にも同等に応用できる。ツール駆動モータは54,56にて示し、第1図に示す形式のスクラバーでは、図示のように、36ボルト(36V)供給源により普通にバッテリー駆動せしめられる。2つのツール駆動モータのための供給電圧は、ツール駆動モータ54,56にそれぞれ対応するツールモータ端子58.60から利用する。ツールトルクを制御するためには、2つのツール駆動モータのうちの1つにおける負荷電流を感知するだけでよく、この機能を果すのは、ツール駆動モータの負荷電流を運ぶラインを取巻くトロイダル形状のコア又はコイルの形をした感知装置62である。コア即ち感知装置62の出力は、2つのツール駆動モータのうちの1つにおける負荷電流を表わす電圧であって、電流センサ増幅器64へある入力を提供する。電流センサ増幅器64への別の入力はセレクタスイッチ50からの出力であり、この入力は電流センサ増幅器64のゲインを制御するために使用する。電力供給源66が電流センサ増幅器64に接続されている。電流センサ増幅器64からの出力は、所望のツールトルクを表わす信号により修正あるいは増幅されたような、2つのツール駆動モータのうちの1つにおける負荷電流を表示する電圧である。」(第5ページ左上欄第20行?右下欄第16行)
f 「このようにして、加えられたツールトルクが選択したツールトルクに一致している場合は、選択したツールトルクに関係なく、電流センサ増幅器64の電流出力は1つの特定な電圧となり、この電流出力は、作業条件によりツールトルクが変動するにつれて、基準電圧値から上下に変動する。
電流センサ増幅器64からの出力は切換え装置68へ送られ、この切換え装置は、電流センサ増幅器64の出力又はある別の制御機能(後述)を表わす信号を積分回路70へ送る。積分回路70からの出力はアップ比較器72及びダウン比較器74へ送られる。アップ比較器72は高いレベルの基準値を有し、ダウン比較器74は低いレベルの基準値を有し、積分回路70からの電圧出力がアップ比較器72のための基準値を越えた場合又はダウン比較器74のための基準値より低い場合には、表面保守整備ツールの昇降運動を生じさせるための適当な信号が発生する。この表面保守整備ツールの昇降運動により、保守整備中の表面に対する表面保守整備ツールの力が変化し、装具におけるトルクすなわちツール駆動モータ54に、おける電流が変化し、その結果制御ループが閉じ、加えられたツールトルクが運転手の選択した値に維持される。」(第6ページ右上欄第4行?左下欄第9行)
g 「比較器72.74からの出力は電力前置増幅器76へ送られ、この電力前置増幅器へは、アップ速度制御回路80及びダウン速度制御回路78からの入力も送られてくる。これらの制御回路は、表面保守整備ツールをいかに迅速に昇降させるかを制御するパルス幅変調制御回路である。これらの制御回路は、最初に所望の状態に設定した後は、調整する必要がない。電力前置増幅器76の出力はMOSFET増幅器82及びMOSFET増幅器84へ送られ、これら2つのMOSFET増幅器は、比較器の出力を更に処理して、これらの出力が表面保守整備ツールを昇降させるアクチュエータ86を駆動するのに有効な信号レベルとなるようにする。」(第7ページ左上欄第10行?右上欄第4行)
h 「特定の選択したツールトルクを表わすデコーダ30からのデジタル出力も同様に多数の使用目的を有する。これらのデジタル出力は、どのツールトルク電圧を上述の比較回路へ送るかを決定するばかりか、真空ファン、水供給源、洗浄剤供給源等の始動・停止や開閉を行なうためにも使用される。」(第8ページ右下欄第10?16行)
i 引用例1の車両10は駆動車輪18によって移動するから、駆動車輪18を支持するシャーシを含む走行部を備えることは明らかである。

以上の記載によれば、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「駆動車輪18を支持するシャーシを含む走行部と、
水供給源又は洗浄剤供給源と、
ツール駆動モータ54,56と、前記ツール駆動モータ54,56により駆動せしめられ、床面の掃除を行うツールである一対の回転ブラシ16と、
上記ツール駆動モータ54,56の負荷電流を感知する感知装置62と
上記ツールの昇降運動を生じさせるアクチュエータ86とを備え、
前記床面に掃除力を作用させて掃除しているときに、ツールトルク選択ボタン24により選択された電圧と前記感知装置62の出力とが、電流センサ増幅器64へ入力され、アップ比較器72、ダウン比較器74、電力前置増幅器76、MOSFETアップ増幅器82、MOSFETダウン増幅器84を介して上記アクチュエータ86が駆動されてツールの昇降運動が生じることにより、ツールトルクが運転手の選択した値に維持される、
駆動車輪18を有する車両10。」


(3)引用例2の記載
引用例2には以下の事項が記載されている。
a 「(技術分野)
本発明は、自律移動装置に関し、更に具体的には、床などの表面を処理するための、自己駆動式、自己誘導式の表面処理装置に関する。」(段落[0001])
b 「本発明の自律移動表面処理装置は、単に洗浄だけでなく、様々な表面処理に使用することができる。」(段落[0012])
c 「自律移動表面処理装置10の底面図である図2を参照すると、シェル20は、以下で詳細に説明の如く、自律移動表面処理装置10が障害物に接触するとにたわむように、シャーシ34の上に取り付けられている。一対のモーターギアボックス36が、シャーシ34の上に取り付けられ、各モーターギアボックス36が車輪38を駆動する。」(段落[0020])
d 「図17は、別の代替表面処理モジュール、すなわち圧力調整式表面処理モジュール190の、立面で見た断面略図である。上述のように、マイクロコントローラー130は、補助出力152を通して、圧力調整式モジュール190の表面処理パッド192にかかる圧力を調整することにより、モーターオーバートルク、車輪スリップ、及び異常車輪速度などの状態に応ずることができる。したがって、表面処理パッド192にかかる圧力は、床又は他の表面24の摩擦特性を相殺するように調整することができる。例えば、マイクロコントローラー130は、例えば高摩擦の床若しくは他の表面24により生じたオーバートルク状態に、表面処理パッド192の圧力を減少することにより応じることができるし、又は例えば低摩擦の床若しくは他の表面24により生じた低トルク状態に、表面処理パッド192の圧力を増加することにより応じることができる。可撓性の袋194が、表面処理パッド192と圧力調整モジュール190の上部本体部分196との間に配置される。可撓性の袋には、流体、例えば水が入っていて水頭室198と流体連通状態であり、水頭室は、チャンネル202を通じて流体貯蔵室200と選択的に流体連通状態である。チャンネル202を通る流体通路は、チャンネル202内に羽根車を有するモーター204の作動により、マイクロコントローラー130で制御される。その結果、マイクロコントローラー130は、表面処理パッド192より上の水頭をもたらす水頭室198内の流体の高さを調節することにより、表面処理パッド192にかかる圧力を制御する。」(段落[0054])
e 「圧力調整モジュール190は、シャーシ34のモジュール受け入れ域44に嵌合する、又はパチンと嵌るように構成することができる。これにより、圧力調整モジュール190の重量の一部を車輪に転嫁することが可能になり、その部分は、水頭により与えられる表面処理パッド192への荷重により決まる。当然のことながら、流体貯蔵室200及びその内容物は、自律移動表面処理装置10の車輪によって実質的に支持される。更に、圧力調整モジュール190は、シャーシ34のモジュール受け入れ域44内にある対応する電気コネクター(図示せず)と結合する、電気コネクター(図示せず)を有して構成され、モーター204を補助出力152経由でマイクロコントローラー130と電気的に接続するようになっている。」(段落[0055])
f 「圧力調整モジュール190内で使用する流体は、床又は他の表面24に適用する、洗浄流体、バフオイル、懸濁ワックス、又は研磨剤などの表面処理流体であってもよいことを更に理解されたい。流体は、好ましくは、可撓性の袋194及び表面処理パッド192の底の穴又は孔を通り、次にシート型表面処理手段172の多孔型などの多孔質要素を通って、床又は他の表面24へ適用される。好ましくは、多孔質要素は良好な灯心特性を有し、すなわち流体が毛管作用で多孔質要素を通って吸引される。多孔質要素は、例えば、スポンジ、発泡シート、交絡繊維を有する織布又は不織布、顆粒状吸収性材料を含む多孔性材料であってよい。水頭(圧力)を変えることにより、流体の適用速度、並びに表面処理パッド192及びシート型表面処理手段172にかかる下向き圧力を制御することができる。流体適用速度は、例えば、モーター電流により検知された抗力に関連して制御することができ、モーター電流は、ざらざらした又は汚れた床領域に行き当たると(これにより、床とパッドの間の大きな摩擦によって典型的に引き起こされて抗力が増す)圧力と流体適用速度を増加するなどの、流体適用作業に従って検知を続ける。あるいは、流体は、表面処理パッド192及びシート型表面処理手段172の表面を通して制御された適用速度で適用するよりも、可撓性の袋194の(自律移動表面処理装置10の前向き動作に関連して)前側に配置した孔から、同じ方法で制御した速度で適用することができる。別の代替案では、流体は、モーター204とは独立した別のモーターを使用して、流体貯蔵室200から適用することもできる。もちろん、流体は、圧力調整モジュール190内、別のモジュール内、又はシャーシ34内の別の流体貯蔵室から適用することもできる。いずれの場合でも、流体適用速度は、同じ方法で、例えばモーター電流センサー140により検知された抗力に関連して、マイクロコントローラー130により制御されるのが好ましい。」(段落[0056])

以上の記載によれば、引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「シャーシ34の上に取り付けられている一対のモーターギアボックス36及び各モーターギアボックス36に駆動される車輪38等と、
表面処理流体を床又は他の表面24に適用する手段と、
表面処理パッド192を有する圧力調整モジュール190と、
床とパッドの間の摩擦によって引き起こされる抗力に関連するモーターの電流を検知するモーター電流センサー140と、
水頭(圧力)を変えることにより、流体の適用速度並びに表面処理パッド192及びシート型表面処理手段172にかかる下向き圧力を制御するマイクロコントローラー130と、を備え、
前記表面処理パッド192にかかる下向き圧力を制御しているときに、前記表面処理パッド192と前記圧力調整式表面処理モジュール190の上部本体部分196との間に配置される可撓性の袋194と流体連通状態である水頭室198内の流体の高さを調節することにより、前記表面処理パッド192が前記床又は他の表面24に付与する圧力を前記床又は他の表面24の摩擦特性を相殺するように制御する、
自律移動表面処理装置10。」


5 当審の判断
(1)引用例1を主引例とする場合
ア 本件発明1について
本件発明1と引用発明1とを対比すると、後者の「駆動輪18を支持するシャーシを含む走行部」は、前者の「支持台を含む走行部」に相当し、後者の「水供給源又は洗浄剤供給源」は、前者の「液体を床面に散布する散布部」に相当する。
また、引用発明1では床面の掃除を行うことを前提に、水供給源又は洗浄剤供給源を有していることから、後者の「床面」は前者の「散布部によって液体が散布された床面」に相当し、後者の「ツール駆動モータ54,56と、前記ツール駆動モータ54,56により駆動せしめられ、床面の掃除を行うツールである一対の回転ブラシ16」は、前者の「床面の清掃を行う清掃ユニット」に相当する。
後者の「ツール駆動モータの負荷電流を感知する感知装置62」と前者の「散布部によって液体が散布された床面と清掃ユニットと間の摩擦を推定する推定部」とは、「散布部によって液体が散布された床面と清掃ユニットと間の負荷に関する値を得る負荷取得部」という点で共通する。
さらに、後者の「ツールの昇降運動を生じさせるアクチュエータ86」が前者の「清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する調整部」に相当する。
また、後者の「前記床面に掃除力を作用させて掃除しているときに、ツールトルク選択ボタン24により選択された電圧と前記感知装置62の出力とが、電流センサ増幅器64へ入力され、アップ比較器72,ダウン比較器74、電力前置増幅器76、MOSFETアップ増幅器82,MOSFETダウン増幅器84を介して上記アクチュエータ86が駆動されてツールの昇降運動が生じることにより、ツールトルクが運転手の選択した値に維持される」という事項と、前者の「前記清掃ユニットが床面に押し付けられた状態で清掃が行われているときの前記推定部の推定結果に応じて、前記調整部の前記調整ネジの回転により、前記天板と前記調整プレートとの間の距離が増減されて前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整される」という事項は、「前記清掃ユニットが床面に押し付けられた状態で清掃が行われているときの前記負荷取得部の出力に応じて、前記調整部により、前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整される」という点で共通する。
そして、後者の「駆動車輪18を有する車両10」は前者の「清掃装置」に相当する。
したがって、本件発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「支持台を含む走行部と、
液体を床面に散布する散布部と、
前記散布部によって液体が散布された床面の清掃を行う清掃ユニットと、
前記散布部によって液体が散布された床面と前記清掃ユニットと間の負荷に関する値を得る負荷取得部と、
前記清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する調整部と、を備え、
前記清掃ユニットが床面に押し付けられた状態で清掃が行われているときの前記負荷取得部の出力に応じて、前記調整部により、前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整される
清掃装置。」

<相違点1>
床面と清掃ユニットと間の負荷に関する値を得る負荷取得部に関し、本件発明1では「摩擦を推定する推定部」であるのに対し、引用発明1では「ツール駆動モータの負荷電流を感知する感知装置62」である点
<相違点2>
清掃ユニットの支持構造に関し、本件発明1では「前記清掃ユニットは、本体部及び前記調整部を含み、前記調整部は、支持バネ、調整プレート、及び調整ネジを含み、前記支持台は、前記支持台の下部フレームに固定される部材、支持部、及び前記調整部を介して前記清掃ユニットの前記本体部を支持し、前記支持バネは、前記支持部と前記調整プレートとの間に配置され、前記調整ネジは、前記本体部の天板に形成されたネジ穴と係合し、且つ、先端が前記調整プレートと接触するように構成されて」いるのに対し、引用発明1の具体的な支持構造は不明である点。
<相違点3>
調整部による調整機構に関し、本件発明1では、調整部の「前記調整ネジの回転により、前記天板と前記調整プレートとの間の距離が増減されて」前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整されるのに対し、引用発明1では「アクチュエータ86が駆動されてツールの昇降運動が生じることにより」押し付け力が調整される点。
<相違点4>
清掃装置に関し、本件発明1では「自走式」であるのに対し、引用発明1では「駆動車輪18を有」しているものの、「自走式」であるか不明な点。

事案に鑑みて、相違点2について先に検討すると、相違点2に係る本件発明1の「前記清掃ユニットは、本体部及び前記調整部を含み、前記調整部は、支持バネ、調整プレート、及び調整ネジを含み、前記支持台は、前記支持台の下部フレームに固定される部材、支持部、及び前記調整部を介して前記清掃ユニットの前記本体部を支持し、前記支持バネは、前記支持部と前記調整プレートとの間に配置され、前記調整ネジは、前記本体部の天板に形成されたネジ穴と係合し、且つ、先端が前記調整プレートと接触するように構成されて」いる点は、引用例1には記載されておらず自明の事項ともいえず、また本願出願前において周知技術であるともいえない。
そして、本件発明1は相違点2に係る構成を備えることによって、床面の摩擦状態に応じて押し付け力を変化させることができ、押し付け力不足による清掃能力の低下、及び、過剰な押し付け力による電力消費量の増大を防止することで、液体が散布された床面をより効率的に清掃できるといった特有の効果を奏する。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本件発明1は、引用発明1であるとはいえず、また、当業者であっても引用発明1に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

イ 本件発明2について
本件発明2も、本件発明1と同様に「前記清掃ユニットは、本体部及び前記調整部を含み、前記調整部は、支持バネ、調整プレート、及び調整ネジを含み、前記支持台は、前記支持台の下部フレームに固定される部材、支持部、及び前記調整部を介して前記清掃ユニットの前記本体部を支持し、前記支持バネは、前記支持部と前記調整プレートとの間に配置され、前記調整ネジは、前記本体部の天板に形成されたネジ穴と係合し、且つ、先端が前記調整プレートと接触するように構成されて」いるものであるから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明1に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。


(2)引用例2を主引例とする場合
ア 本件発明1について
本件発明1と引用発明2とを対比すると、後者の「シャーシ34の上に取り付けられている一対のモーターギアボックス36及び各モーターギアボックス36に駆動される車輪38等」が前者の「支持台を含む走行部」に相当し、以下同様に、「表面処理流体を床又は他の表面24に適用する手段」が「液体を床面に散布する散布部」に相当し、「表面処理パッド192を有する圧力調整モジュール190」が「散布部によって液体が散布された床面の清掃を行う清掃ユニット」に相当する。
また、後者の「床とパッドの間の摩擦によって引き起こされる抗力に関連するモーターの電流を検知するモーター電流センサー140」と後者の「前記散布部によって液体が散布された床面と前記清掃ユニットと間の摩擦を推定する推定部」とは、「前記散布部によって液体が散布された床面と前記清掃ユニットと間の負荷に関連する値を得る負荷取得部」という点で共通する。
さらに、後者の「水頭(圧力)を変えることにより、流体の適用速度並びに表面処理パッド192及びシート型表面処理手段172にかかる下向き圧力を制御するマイクロコントローラー130」が後者の「前記清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する調整部」に相当する。
また、後者の「前記表面処理パッド192にかかる下向き圧力を制御しているとき」が前者の「前記清掃ユニットが床面に押し付けられた状態で清掃が行われているとき」に相当し、後者の「前記表面処理パッド192と前記圧力調整式表面処理モジュール190の上部本体部分196との間に配置される可撓性の袋194と流体連通状態である水頭室198内の流体の高さを調節することにより、前記表面処理パッド192が前記床又は他の表面24に付与する圧力を前記床又は他の表面24の摩擦特性を相殺するように制御する」という事項と前者の「前記推定部の推定結果に応じて、前記調整部の前記調整ネジの回転により、前記天板と前記調整プレートとの間の距離が増減されて前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整される」という事項は「負荷取得部の出力に応じて調整部により清掃ユニットの床面への押し付け力が調整される」という点で共通する。
さらに、後者の「自律移動表面処理装置10」は前者の「自走式清掃装置」に相当する。
したがって、本件発明1と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「支持台を含む走行部と、
液体を床面に散布する散布部と、
前記散布部によって液体が散布された床面の清掃を行う清掃ユニットと、
前記散布部によって液体が散布された床面と前記清掃ユニットと間の負荷に関連する値を得る負荷取得部と、
前記清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する調整部と、を備え、
前記清掃ユニットが床面に押し付けられた状態で清掃が行われているときの前記負荷取得部の出力に応じて前記調整部により前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整される、
自走式清掃装置。」

<相違点1>
散布部によって液体が散布された床面と清掃ユニットと間の負荷に関連する値を得る負荷取得部に関し、本件発明1では「摩擦を推定する推定部」であるのに対し、引用発明2では「摩擦によって引き起こされる抗力に関連するモーターの電流を検知するモーター電流センサー140」である点。
<相違点2>
清掃ユニットの支持構造に関し、本件発明1では「前記清掃ユニットは、本体部及び前記調整部を含み、前記調整部は、支持バネ、調整プレート、及び調整ネジを含み、前記支持台は、前記支持台の下部フレームに固定される部材、支持部、及び前記調整部を介して前記清掃ユニットの前記本体部を支持し、前記支持バネは、前記支持部と前記調整プレートとの間に配置され、前記調整ネジは、前記本体部の天板に形成されたネジ穴と係合し、且つ、先端が前記調整プレートと接触するように構成されて」いるのに対し、引用発明2の具体的な支持構造は不明である点。
<相違点3>
調整部による調整機構に関し、本件発明1では、調整部の「前記調整ネジの回転により、前記天板と前記調整プレートとの間の距離が増減されて」前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整されるのに対し、引用発明1では「水頭室198内の流体の高さを調節することにより」押し付け力が調整される点。

事案に鑑みて、相違点2について先に検討すると、相違点2に係る本件発明1の「前記清掃ユニットは、本体部及び前記調整部を含み、前記調整部は、支持バネ、調整プレート、及び調整ネジを含み、前記支持台は、前記支持台の下部フレームに固定される部材、支持部、及び前記調整部を介して前記清掃ユニットの前記本体部を支持し、前記支持バネは、前記支持部と前記調整プレートとの間に配置され、前記調整ネジは、前記本体部の天板に形成されたネジ穴と係合し、且つ、先端が前記調整プレートと接触するように構成されて」いる点は、引用例2には記載されておらず自明の事項ともいえず、また本願出願前において周知技術であるともいえない。
そして、本件発明1は相違点2に係る構成を備えることによって、床面の摩擦状態に応じて押し付け力を変化させることができ、押し付け力不足による清掃能力の低下、及び、過剰な押し付け力による電力消費量の増大を防止することで、液体が散布された床面をより効率的に清掃できるといった特有の効果を奏する。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本件発明1は、引用発明2であるとはいえず、また、当業者であっても引用発明2に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。


(3) 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、(1)「支持台を含む走行部」、(2)「支持台は、支持バネを介して清掃ユニットを支持する」こと、(3)清掃ユニットが昇降可能に構成される」ことは、甲第7号証(特許第4430983号公報)に記載されていると主張する。
しかし、甲第7号証にも上記(1)及び(2)における相違点2に係る本件発明1の「前記清掃ユニットは、本体部及び前記調整部を含み、前記調整部は、支持バネ、調整プレート、及び調整ネジを含み、前記支持台は、前記支持台の下部フレームに固定される部材、支持部、及び前記調整部を介して前記清掃ユニットの前記本体部を支持し、前記支持バネは、前記支持部と前記調整プレートとの間に配置され、前記調整ネジは、前記本体部の天板に形成されたネジ穴と係合し、且つ、先端が前記調整プレートと接触するように構成されて」いる点については記載されていない。
よって、本件発明1及び本件発明2は、引用発明1若しくは引用発明2及び甲第7号証に記載されている事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。


6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1に係る発明は、甲第2号証(特開平3-191939号公報)に記載された発明に、甲第3号証に記載されているような周知技術を適用することにより、容易に相当することができたものであり、請求項2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に、甲第4-甲第11号証に記載されているような周知技術を適宜適用することにより、容易に発明をすることができたものである旨を主張する。
そこで、甲第2号証を主引例とする場合について検討する。

(1)甲第2号証の記載
甲第2号証には以下の事項が記載されている。
ア 「[実施例]
第1図は一般にスクラバと呼称される工業用の洗浄機をその全体を符号10で示している。この洗浄機は以下に詳細に述べるように本発明を利用している。本発明に関する点の外については通常のスクラバである。スクラバはフレーム11を有しており、このフレームは種々の機械要素を支持すると共に機械の側部に沿った2つの長手方向の部材13を有している。第1図にはその部材13の一方のみが示され、他方の部材はこの部材13と同様で機械の反対側にある。このスクラバはバッテリ駆動型であって、モータ駆動されかつ操縦可能な単一の前輪12を有することができる。2つの後輪14がスクラバの残りの重量を支持している。また、オペレータ用のシート16、操縦ハンドル18および適宜な制御装置が設けられている。」(第5ページ右下欄第1行?第17行)
イ 「ブラシ、モータ及びこれらに関連する部品が洗浄ヘッドに組み込まれており、洗浄ヘッドは図面においてはその全体を符号24で示されている。このスクラバの作動工具は2つのディスク型の洗浄ブラシ26であり、これらの洗浄ブラシは減速器を介して電動機により駆動されて垂直な軸線の回りで回転する。これは通常の構成であり図面にはその概略だけを示している。洗浄ヘッドはまた洗浄液を床に撒くための手段と、水を制御するための適宜なスカートとを有している。」(第6ページ左上欄第3行?第12行)
ウ 「作業位置において、洗浄ヘッドは不均一な床面の波打ちに従うように上下することができる。また、リンクは、後述するように、洗浄ヘッドが側方に動けるようにする。
第2図に示す電動の直線アクチュエータ30等により洗浄ヘッドに垂直方向の力が加えられる。アクチュエータ30は機械の中心の略下方においてフレーム11に対して長手方向に取り付けられていて、ばね負荷型のベルクランクおよびリンク機構を介して作動する。」(第6ページ右上欄第3行?第12行)
エ 「更に第3図を参照すると、アクチュエータ30が収縮するとベルクランク32を時計方向へ動かす。運搬時におけるように洗浄ヘッドの荷重がベルクランク38によって支持されているならば、ベルクランク38は、ブラシ26が床に接触して洗浄ヘッドの荷重を支持するまで、ベルクランク32と共に時計方向に動く。アクチュエータ30が更に収縮すると、ばね40を圧縮すると共に案内ボルト44を介して更にベルクランク38に時計方向の力を与え、この力はリンク46、48および50を介して洗浄ヘッドおよび洗浄ブラシに更に下向きの力を加える。ブラシが作動位置にあると、アクチュエータ30の小さな伸びおよび収縮がばね42あるいは40を圧縮してブラシに種々の上方あるいは下方向きの力を与えることが理解されよう。
米国特許第4,757,566号は、床に対して作用するこのようなブラシにおける望ましいトルク荷重は適宜な電子的制御により一定に保つことができることを教示している。ブラシ駆動モータにおける負荷電流はブラシのトルクと共に変化し、このモータの負荷電流を検知する装置を用いて、負荷電流が増加するとアクチュエータ30を延ばし、また負荷電流が低下するとアクチュエータを収縮させることができる。これは床に対するブラシの圧力を変え、ブラシに加わるトルクを変化させる。ブラシのトルクを所望の値に一定に保つためのフィードバック・ループを用いることができる。ばね40、42が緩衝作用を行い、フィードバック・ループがアクチュエータを伸縮するまでの間に、ブラシに床の凹凸に対する柔軟な追従性を与える。ブラシの力を制御するためのこの方式が本発明の装置に応用される。ブラシが稼働しているときに、リンク46、48および50を介して洗浄ヘッドに垂直な力を与えるための装置を設けることが望ましい。このような力の制御を行うための詳細は本発明を構成するものではない。」(第6ページ右下第1行?第7ページ左上欄第17行)

以上の記載によれば、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「フレーム11と、モータ駆動されかつ操縦可能な前輪12と、スクラバ10の残りの重量を支持する後輪14等と、
洗浄液を床に撒くための手段と、
前記床に対して作用する洗浄ブラシ26、ブラシ駆動モータ及びこれらに関連する部品が組み込まれている洗浄ヘッド24と、
前記ブラシ駆動モータにおける負荷電流を検知する装置と、
前記床に対する前記洗浄ブラシ26の圧力を制御するための方式と、を備え、
前記洗浄ブラシ26の圧力を制御するための方式は、アクチュエータ30と、ばね負荷型のベルクランクおよびリンク機構とを備え、
前記洗浄ブラシが作動位置にあるとき、前記負荷電流が増加すると前記アクチュエータ30を延ばし、前記負荷電流が低下すると前記アクチュエータ30を収縮させることにより、前記床に対する前記洗浄ブラシ26の圧力を変える、
オペレータにより操縦可能な前記スクラバ10。」

(2)本件発明1について
本件発明1と甲2発明とを対比すると、後者の「フレーム11と、モータ駆動されかつ操縦可能な前輪12と、スクラバの残りの重量を支持する後輪等」は前者の「支持台を含む走行部」に相当し、以下同様に、「洗浄液を床に撒くための手段」は「液体を床面に散布する散布部」に、「前記床に対して作用する洗浄ブラシ26、ブラシ駆動モータ及びこれらに関連する部品が組み込まれている洗浄ヘッド24」は「前記散布部によって液体が散布された床面の清掃を行う清掃ユニット」に、それぞれ相当する。
後者の「前記ブラシ駆動モータにおける負荷電流を検知する装置」と、前者の「前記散布部によって液体が散布された床面と前記清掃ユニットと間の摩擦を推定する推定部」とは、「散布部によって液体が散布された床面と清掃ユニットと間の負荷に関する値を得る負荷取得部」という点で共通する。
後者の「前記床に対する前記洗浄ブラシ26の圧力を制御するための方式」は前者の「前記清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する調整部」に相当する。
後者の「洗浄ブラシが作動位置にあるとき、前記負荷電流が増加するとアクチュエータ30を延ばし、前記負荷電流が低下するとアクチュエータ30を収縮させることにより、前記床に対する前記洗浄ブラシ26の圧力を変える」という事項と、前者の「前記清掃ユニットが床面に押し付けられた状態で清掃が行われているときの前記推定部の推定結果に応じて、前記調整部の前記調整ネジの回転により、前記天板と前記調整プレートとの間の距離が増減されて前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整される」という事項は、「前記清掃ユニットが床面に押し付けられた状態で清掃が行われているときの前記負荷取得部の出力に応じて、前記調整部により、前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整される」という点で共通する。
後者の「スクラバ10」は前者の「清掃装置」に相当する。

したがって、本件発明1と甲2発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「支持台を含む走行部と、
液体を床面に散布する散布部と、
前記散布部によって液体が散布された床面の清掃を行う清掃ユニットと、
前記散布部によって液体が散布された床面と前記清掃ユニットと間の負荷に関する値を得る負荷取得部と、
前記清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する調整部と、を備え、
前記清掃ユニットが床面に押し付けられた状態で清掃が行われているときの前記負荷取得部の出力に応じて、前記調整部により、前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整される、
清掃装置。」

<相違点1>
床面と清掃ユニットと間の負荷に関する値を得る負荷取得部に関し、本件発明1では「摩擦を推定する推定部」であるのに対し、甲2発明では「前記ブラシ駆動モータにおける負荷電流を検知する装置」である点
<相違点2>
清掃ユニットの支持構造に関し、本件発明1では「前記清掃ユニットは、本体部及び前記調整部を含み、前記調整部は、支持バネ、調整プレート、及び調整ネジを含み、前記支持台は、前記支持台の下部フレームに固定される部材、支持部、及び前記調整部を介して前記清掃ユニットの前記本体部を支持し、前記支持バネは、前記支持部と前記調整プレートとの間に配置され、前記調整ネジは、前記本体部の天板に形成されたネジ穴と係合し、且つ、先端が前記調整プレートと接触するように構成されて」いるのに対し、甲2発明では「前記洗浄ブラシ26の圧力を制御するための方式は、アクチュエータ30と、ばね負荷型のベルクランクおよびリンク機構」である点。
<相違点3>
調整部による調整機構に関し、本件発明1では、調整部の「前記調整ネジの回転により、前記天板と前記調整プレートとの間の距離が増減されて」前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整されるのに対し、甲2発明では「前記負荷電流が増加するとアクチュエータ30を延ばし、前記負荷電流が低下するとアクチュエータ30を収縮させることにより」前記床に対する前記洗浄ブラシ26の圧力を変える点。
<相違点4>
清掃装置に関し、本件発明1では「自走式」であるのに対し、甲2発明では「オペレータにより操縦可能」である点。

事案に鑑みて、相違点2について先に検討すると、相違点2に係る本件発明1の「前記清掃ユニットは、本体部及び前記調整部を含み、前記調整部は、支持バネ、調整プレート、及び調整ネジを含み、前記支持台は、前記支持台の下部フレームに固定される部材、支持部、及び前記調整部を介して前記清掃ユニットの前記本体部を支持し、前記支持バネは、前記支持部と前記調整プレートとの間に配置され、前記調整ネジは、前記本体部の天板に形成されたネジ穴と係合し、且つ、先端が前記調整プレートと接触するように構成されて」いる点は、甲第2号証には記載されていない。
ここで、異議申立人は、甲第3号証には「洗浄等に使用される自律移動表面処理装置」(段落[0012]、図17)について記載されており、清掃装置を自走式とすることは当業者にとって周知であるとも主張している。
しかし、仮に甲第3号証に、異議申立人が主張する周知技術が記載されているとしても、相違点2に係る本件発明1の上記の点は記載されておらず自明の事項ともいえず、また、本願出願前において周知技術であるともいえない。
そして、本件発明1は相違点2に係る構成を備えることによって、床面の摩擦状態に応じて押し付け力を変化させることができ、押し付け力不足による清掃能力の低下、及び、過剰な押し付け力による電力消費量の増大を防止することで、液体が散布された床面をより効率的に清掃できるといった特有の効果を奏する。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、甲2発明及び甲第3号証に記載されている事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)本件発明2について
本件発明2も、本件発明1と同様に「前記清掃ユニットは、本体部及び前記調整部を含み、前記調整部は、支持バネ、調整プレート、及び調整ネジを含み、前記支持台は、前記支持台の下部フレームに固定される部材、支持部、及び前記調整部を介して前記清掃ユニットの前記本体部を支持し、前記支持バネは、前記支持部と前記調整プレートとの間に配置され、前記調整ネジは、前記本体部の天板に形成されたネジ穴と係合し、且つ、先端が前記調整プレートと接触するように構成されて」いるものであり、この点は、甲第4-甲第11号証にも記載されていないから、本件発明2は、当業者であっても、甲2発明及び甲第4-甲第11号証に記載されている事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

したがって、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由によって、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。


7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持台を含む走行部と、
液体を床面に散布する散布部と、
前記散布部によって液体が散布された床面の清掃を行う清掃ユニットと、
前記散布部によって液体が散布された床面と前記清掃ユニットと間の摩擦を推定する推定部と、
前記清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する調整部と、を備え、
前記清掃ユニットは、本体部及び前記調整部を含み、
前記調整部は、支持バネ、調整プレート、及び調整ネジを含み、
前記支持台は、前記支持台の下部フレームに固定される部材、支持部、及び前記調整部を介して前記清掃ユニットの前記本体部を支持し、
前記支持バネは、前記支持部と前記調整プレートとの間に配置され、
前記調整ネジは、前記本体部の天板に形成されたネジ穴と係合し、且つ、先端が前記調整プレートと接触するように構成されており、
前記清掃ユニットが床面に押し付けられた状態で清掃が行われているときの前記推定部の推定結果に応じて、前記調整部の前記調整ネジの回転により、前記天板と前記調整プレートとの間の距離が増減されて前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整される、
自走式清掃装置。
【請求項2】
前記清掃ユニットは、電動モータと、前記電動モータにより回転駆動される回転ブラシとを含み、
前記推定部は、前記回転ブラシの回転数を一定に保った状態で前記電動モータで消費される電流の値から床面と前記回転ブラシとの間の摩擦を推定する、
請求項1に記載の自走式清掃装置。
【請求項3】
液体を床面に散布する散布部と、
前記散布部によって液体が散布された床面の清掃を行う清掃ユニットと、
前記散布部によって液体が散布された床面と前記清掃ユニットと間の摩擦を推定する推定部と、
前記清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する調整部と、を備え、
前記推定部の推定結果に応じて前記調整部により前記清掃ユニットの床面への押し付け力が調整され、
前記推定部は、前記推定結果に基づいて清掃対象の床面を複数の清掃領域に分割し、
前記調整部は、前記複数の清掃領域のそれぞれで前記清掃ユニットの床面への押し付け力を調整する、
自走式清掃装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-17 
出願番号 特願2014-39631(P2014-39631)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (A47L)
P 1 652・ 121- YAA (A47L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 一ノ瀬 薫  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 小川 恭司
柿崎 拓
登録日 2019-06-14 
登録番号 特許第6537774号(P6537774)
権利者 住友重機械工業株式会社
発明の名称 自走式清掃装置  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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