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審決分類 |
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 H01R 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01R 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 H01R 審判 全部申し立て 特17条の2、3項新規事項追加の補正 H01R 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01R |
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管理番号 | 1374898 |
異議申立番号 | 異議2020-700215 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-03-27 |
確定日 | 2021-04-09 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6583474号発明「プラグ、ソケット、および、それらを備える基板接続用コネクタ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6583474号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、請求項〔1?3〕、〔4?7〕について訂正することを認める。 特許第6583474号の請求項1?7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6583474号の請求項1?7に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)9月17日を国際出願日として出願された、特願2016-548479号の一部を平成30年4月27日に新たな特許出願として出願され、令和1年9月13日にその特許権の設定登録がされ、令和1年10月2日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和2年3月27日 :特許異議申立人内山信一(以下、「異議申立人」 という。)による特許異議の申立て 令和2年6月15日付け:取消理由通知書 令和2年8月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和3年1月8日付け :訂正拒絶理由通知書 令和3年1月27日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出 特許権者によって令和2年8月17日に提出された訂正請求書による訂正の請求に対して異議申立人から意見書は提出されなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正請求書の補正について 特許権者は、令和3年1月27日に提出の手続補正書により、令和2年8月17日に提出された訂正請求書の「6 請求の理由」を補正しようとするものであり、その補正の内容は実質的には次のとおりのものである。 令和3年1月8日付け訂正拒絶理由書で指摘した訂正事項1-3について、補正前の請求項1において「前記ソケット連結部材の前記一対の突起片にそれぞれ係止される、前記端子固定壁に沿って延びる一対の係止片を有し、前記ソケット連結部材の着脱方向および前記短手方向に沿った該ソケット連結部材の位置を規制するストッパ部材」と記載されているのを、「前記ソケット連結部材の前記一対の突起片にそれぞれ係止される一対の係止片を有し、前記ソケット連結部材の着脱方向および前記短手方向に沿った該ソケット連結部材の位置を規制するストッパ部材」に補正し、同じく訂正事項2-3について、補正前の請求項4において「前記ソケット連結部材の前記一対の突起片にそれぞれ係止される、前記端子固定壁に沿って延びる一対の係止片を有し、前記ソケット連結部材の着脱方向および前記短手方向に沿った該ソケット連結部材の位置を規制するストッパ部材」と記載されているのを、「前記ソケット連結部材の前記一対の突起片にそれぞれ係止される一対の係止片を有し、前記ソケット連結部材の着脱方向および前記短手方向に沿った該ソケット連結部材の位置を規制するストッパ部材」に補正する。 訂正事項1-3に付いての補正は、実質的には、複数の訂正事項から構成される訂正事項1-3について、その一部の訂正事項を削除するものと認められ、訂正請求書の要旨を変更しないものであると認められる。訂正事項2-3についても同様である。 したがって、令和3年1月27日に提出の手続補正書による、令和2年8月17日に提出された訂正請求書の補正は認められる。 これによって、令和3年1月8日付け訂正拒絶理由書で通知した訂正拒絶理由は解消した。 2 令和2年8月17日に提出された訂正請求書について (1)訂正の内容 令和3年1月27日付けの手続補正により補正された訂正請求書(以下、当該訂正請求書による請求を「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す)。 ・訂正事項1-1 請求項1に、「第1の基板に配され、ソケット接続口を有し移動可能に支持され、隅部と、嵌合用窪み部とを内側に有するソケット連結部材」とあるのを、「第1の基板に配され、互いに離隔した一対の端子固定壁と互いに離隔した一対の側壁部に囲まれたソケット接続口を有し、移動可能に支持され、隅部と、嵌合用窪み部とを内側に有し、前記一対の側壁部のそれぞれが、反対方向外側に延びる一対の突起片を有する、ソケット連結部材」と訂正する(請求項1を引用する請求項2及び3についても同様に訂正する。)。 ・訂正事項1-2 請求項1に、「該ソケット連結部材を着脱方向に対し直交する方向に移動可能に支持するとともに前記第1の基板に電気的に接続される少なくとも一つの電源用コンタクト端子および信号用コンタクト端子を含む複数のコンタクト端子」とあるのを、「該ソケット連結部材を着脱方向に対し直交する長手および短手方向に移動可能に支持するとともに前記第1の基板に電気的に接続される少なくとも一つの電源用コンタクト端子および信号用コンタクト端子を含む複数のコンタクト端子」と訂正する(請求項1を引用する請求項2及び3についても同様に訂正する。)。 ・訂正事項1-3 請求項1に、「前記ソケット連結部材の少なくとも1つの突起片に係止される係止片を有し、前記ソケット連結部材の着脱方向に沿った該ソケット連結部材の位置を規制するストッパ部材」とあるのを、「前記ソケット連結部材の前記一対の突起片にそれぞれ係止される一対の係止片を有し、前記ソケット連結部材の着脱方向および前記短手方向に沿った該ソケット連結部材の位置を規制するストッパ部材」と訂正する(請求項1を引用する請求項2及び3についても同様に訂正する。)。 ・訂正事項1-4 請求項1に、「前記プラグの電源用コンタクト端子の接触片部は、前記ソケット連結部材のソケット接続口を形成する互いに離隔した一対の端子固定壁のうちのいずれかに固定され」とあるのを、「前記プラグの電源用コンタクト端子の接触片部は、前記ソケット連結部材のソケット接続口を形成する前記互いに離隔した一対の端子固定壁のうちのいずれかに固定され」と訂正する(請求項1を引用する請求項2及び3についても同様に訂正する。)。 ・訂正事項2-1 請求項4に、「基板に配され、接続端部が接続されるソケット接続口を有し移動可能に支持され、該接続端部の誤挿入防止用の突起部が係合される隅部と、該挿入防止用の突起部が干渉される嵌合用窪み部とを内側に有するソケット連結部材」とあるのを、「基板に配され、接続端部が接続される、互いに離隔した一対の端子固定壁と互いに離隔した一対の側壁部に囲まれたソケット接続口を有し、移動可能に支持され、該接続端部の誤挿入防止用の突起部が係合される隅部と、該挿入防止用の突起部が干渉される嵌合用窪み部とを内側に有し、前記一対の側壁部のそれぞれが、反対方向外側に延びる一対の突起片を有するソケット連結部材」と訂正する(請求項4を引用する請求項5?7についても同様に訂正する。)。 ・訂正事項2-2 請求項4に、「該ソケット連結部材を着脱方向に対し直交する方向に移動可能に支持するとともに前記基板に電気的に接続される少なくとも一つの電源用コンタクト端子および信号用コンタクト端子を含む複数のコンタクト端子」とあるのを、「該ソケット連結部材を着脱方向に対し直交する長手および短手方向に移動可能に支持するとともに前記基板に電気的に接続される少なくとも一つの電源用コンタクト端子および信号用コンタクト端子を含む複数のコンタクト端子」と訂正する(請求項4を引用する請求項5?7についても同様に訂正する。)。 ・訂正事項2-3 請求項4に「前記ソケット連結部材の少なくとも1つの突起片に係止される係止片を有し、前記ソケット連結部材の着脱方向に沿った該ソケット連結部材の位置を規制するストッパ部材」とあるのを、「前記ソケット連結部材の前記一対の突起片にそれぞれ係止される一対の係止片を有し、前記ソケット連結部材の着脱方向および前記短手方向に沿った該ソケット連結部材の位置を規制するストッパ部材」と訂正する(請求項4を引用する請求項5?7についても同様に訂正する。)。 ・訂正事項2-4 請求項4に、「前記電源用コンタクト端子の接触片部は、前記ソケット連結部材のソケット接続口を形成する互いに離隔した一対の端子固定壁のうちのいずれかに固定され」とあるのを、「前記電源用コンタクト端子の接触片部は、前記ソケット連結部材のソケット接続口を形成する前記互いに離隔した一対の端子固定壁のうちのいずれかに固定され」と訂正する(請求項4を引用する請求項5?7についても同様に訂正する。)。 ・一群の請求項について 訂正前の請求項1?3について、請求項2及び3は、請求項1を引用しているものであるから、訂正事項1-1?1-4は、一群の請求項についてされたものである。 訂正前の請求項4?7について、請求項5?7は、請求項4を引用しているものであるから、訂正事項2-1?2-4は、一群の請求項についてされたものである。 (2)訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1-1 訂正事項1-1は、請求項1における「ソケット連結部材」の構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1-1によるソケット連結部材の構成の限定は、明細書の段落【0039】及び【0040】並びに【図1】の記載に基づいているといえるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。 さらに、訂正事項1-1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 イ 訂正事項1-2 訂正事項1-2は、請求項1における「ソケット連結部材」の移動可能方向を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1-2によるソケット連結部材の移動可能方向の限定は、明細書の段落【0038】及び【図3】の記載に基づいているといえるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。 さらに、訂正事項1-2は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 ウ 訂正事項1-3 訂正事項1-3は、請求項1における「ストッパ部材」の構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1-3によるストッパ部材の構成の限定は、明細書の段落【0039】及び【0040】並びに【図1】及び【図3】の記載に基づいているといえるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。 さらに、訂正事項1-3は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 エ 訂正事項1-4 訂正事項1-4は、訂正事項1-1による訂正に伴う請求項1における発明特定事項の記載の整合を図るための訂正であって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実施上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 オ 訂正事項2-1 訂正事項2-1は、請求項4における「ソケット連結部材」の構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2-1によるソケット連結部材の構成の限定は、明細書の段落【0039】及び【0040】並びに【図1】の記載に基づいているといえるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。 さらに、訂正事項2-1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 カ 訂正事項2-2 訂正事項2-2は、請求項4における「ソケット連結部材」の移動可能方向を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2-2によるソケット連結部材の移動可能方向の限定は、明細書の段落【0038】及び【図3】の記載に基づいているといえるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。 さらに、訂正事項2-2は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 キ 訂正事項2-3 訂正事項2-3は、請求項4における「ストッパ部材」の構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2-3によるストッパ部材の構成の限定は、明細書の段落【0039】及び【0040】並びに【図1】及び【図3】の記載に基づいているといえるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。 さらに、訂正事項2-3は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 ク 訂正事項2-4 訂正事項2-4は、訂正事項2-1による訂正に伴う請求項4における発明特定事項の記載の整合を図るための訂正であって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実施上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕及び〔4?7〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 [本件発明1] 「第1の基板に配され、互いに離隔した一対の端子固定壁と互いに離隔した一対の側壁部に囲まれたソケット接続口を有し、移動可能に支持され、隅部と、嵌合用窪み部とを内側に有し、前記一対の側壁部のそれぞれが、反対方向外側に延びる一対の突起片を有する、ソケット連結部材と、該ソケット連結部材を着脱方向に対し直交する長手および短手方向に移動可能に支持するとともに前記第1の基板に電気的に接続される少なくとも一つの電源用コンタクト端子および信号用コンタクト端子を含む複数のコンタクト端子と、前記ソケット連結部材の前記一対の突起片にそれぞれ係止される一対の係止片を有し、前記ソケット連結部材の着脱方向および前記短手方向に沿った該ソケット連結部材の位置を規制するストッパ部材と、を備えるプラグと、 第2の基板に配され、前記ソケット連結部材のソケット接続口に取り外し可能に接続される接続端部であって、前記隅部に係合され、または、前記嵌合用窪み部に干渉する誤挿入防止用の突起部が形成される接続端部を有し、該接続端部がソケット接続口に接続される場合、前記プラグの複数のコンタクト端子に電気的に接続されるとともに該第2の基板に電気的に接続される少なくとも一つの電源用コンタクト端子および信号用コンタクト端子を含む複数のコンタクト端子を備えるソケットと、を備え、 前記プラグの電源用コンタクト端子の接触片部は、前記ソケット連結部材のソケット接続口を形成する前記互いに離隔した一対の端子固定壁のうちのいずれかに固定され、前記信号用コンタクト端子の接触片部の面積よりも大なる面積を有する接触片部に連結される複数に分岐した可動片部を有することを特徴とする基板接続用コネクタ。」 [本件発明2] 「前記プラグおよびソケットは、それぞれ、静電気を前記第1の基板および前記第2の基板に逃がす静電気除去部材をさらに備え、該静電気除去部材が、前記複数のコンタクト端子に隣接して配される接地用コンタクト端子であることを特徴とする請求項1記載の基板接続用コネクタ。」 [本件発明3] 「前記プラグおよびソケットは、それぞれ、静電気を前記第1の基板および前記第2の基板に逃がす静電気除去部材をさらに備え、該ソケットに設けられる静電気除去部材が、向かい合う前記コンタクト端子相互間に所定の距離をもって配置される少なくとも一つの接地用プレートであることを特徴とする請求項1記載の基板接続用コネクタ。」 [本件発明4] 「基板に配され、接続端部が接続される、互いに離隔した一対の端子固定壁と互いに離隔した一対の側壁部に囲まれたソケット接続口を有し、移動可能に支持され、該接続端部の誤挿入防止用の突起部が係合される隅部と、該挿入防止用の突起部が干渉される嵌合用窪み部とを内側に有し、前記一対の側壁部のそれぞれが、反対方向外側に延びる一対の突起片を有するソケット連結部材と、該ソケット連結部材を着脱方向に対し直交する長手および短手方向に移動可能に支持するとともに前記基板に電気的に接続される少なくとも一つの電源用コンタクト端子および信号用コンタクト端子を含む複数のコンタクト端子と、前記ソケット連結部材の前記一対の突起片にそれぞれ係止される一対の係止片を有し、前記ソケット連結部材の着脱方向および短手方向に沿った該ソケット連結部材の位置を規制するストッパ部材と、を備え、 前記電源用コンタクト端子の接触片部は、前記ソケット連結部材のソケット接続口を形成する前記互いに離隔した一対の端子固定壁のうちのいずれかに固定され、前記信号用コンタクト端子の接触片部の面積よりも大なる面積を有する接触片部に連結される複数に分岐した可動片部を有することを特徴とするプラグ。」 [本件発明5] 「前記プラグは、静電気を前記基板に逃がす静電気除去部材をさらに備え、 該静電気除去部材が、前記複数のコンタクト端子に隣接して配される接地用コンタクト端子であることを特徴とする請求項4記載のプラグ。」 [本件発明6] 「請求項4記載のプラグのソケット連結部材のソケット接続口に取り外し可能に接続される接続端部であって、前記隅部に係合され、または、前記嵌合用窪み部に干渉する誤挿入防止用の突起部が形成される接続端部と、 基板に配される前記接続端部が前記プラグのソケット接続口に接続される場合、前記プラグにおける電源用コンタクト端子、および、信号用コンタクト端子にそれぞれ、接続されるとともに該基板に電気的に接続される電源用コンタクト端子、および、信号用コンタクト端子と、を備えて構成されるソケット。」 [本件発明7] 「前記ソケットは、静電気を前記基板に逃がす静電気除去部材をさらに備え、該静電気除去部材は、前記信号用コンタクト端子に隣接して配される接地用コンタクト端子であることを特徴とする請求項6記載のソケット。」 第4 取消理由通知書に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1?7に係る特許に対して、当審が令和2年6月15日付けで特許権者に対して通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 本件特許の請求項1?7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、請求項1?7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 刊行物 引用文献1:特開2007-220327号公報(異議申立人の提出した甲 第1号証、以下同様。) 引用文献2:特開2005-63796号公報(甲第2号証の1) 引用文献3:特開2006-120448号公報(甲第2号証の2) 引用文献4:特開2006-286530号公報(甲第3号証の1) 引用文献5:特開2013-120702号公報(甲第3号証の2) 引用文献6:特開2012-129109号公報(甲第3号証の3) 引用文献7:特開平8-321358号公報(甲第4号証の1) 引用文献8:特開2007-242416号公報(甲第4号証の2) 引用文献9:国際公開第2007/094149号(甲第5号証の1) 引用文献10:特開2007-18785号公報(甲第5号証の2) 2 当審の判断 (1)引用文献1の記載事項及び発明 ア 取消理由通知において引用した引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 「【0001】 本発明は、基板に対して固定された固定側ハウジングと相手方コネクタと嵌合する嵌合部を有した可動側ハウジングとを有し、可動側ハウジングが固定側ハウジングに対して移動自在な構成とすることにより、相手方コネクタとの嵌合結合時にハウジング同士の位置ずれがあった場合でもこれを吸収してコネクタ同士を確実に結合させることができるようにしたフローティング型コネクタに関する。」 「【0006】 このように構成された低背型のフローティング型コネクタにおいては、複数のコンタクト130は信号伝達に用いられており、信号用の小さな電流の伝達を行えば良く、また小型コンパクト化の要求に伴ってその幅は極く細いものであった。ところが、このコネクタを介して信号電流とともに電源電流の伝達を求められることがあり、このような場合に、信号用コンタクトは幅が細すぎて電源用のコンタクトとして用いるのに適していないという問題があった。電源用コンタクトとして幅が広いコンタクトを用いるということが考えられるが、幅の広いコンタクトを用いた場合には、可動側ハウジング120が固定側ハウジング110に対して移動できるようする可撓部(中間部)も幅広となるため、この移動に対する抵抗力が大きくなりすぎるという使用上の問題がある。 【0007】 本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、電源用コンタクトを備えるとともに、相手方コネクタとの嵌合時にハウジング同士の位置ずれを吸収するときの抵抗力を小さく抑えることが可能な構成のフローティング型コネクタを提供することを目的としている。」 「【0010】 本発明に係るフローティング型コネクタでは、電源用コンタクトにおいて電源用接触部と電源用接合部を繋ぐ電源用中間部が、可動側ハウジングが固定側ハウジングに対して移動したときに対する抵抗力が小さくなるような構成であるので、幅広で電源用として大きな容量を確保した電源用コンタクトを設けた上で、相手方コネクタとの嵌合時にハウジング同士の位置ずれを吸収するときの抵抗力を小さく抑えて実用上での問題のないフローティングコネクタを得ることができる。」 「【0011】 以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図1?図12(図8を除く)は本発明の一実施形態に係るフローティング型コネクタであるレセプタクルコネクタ1およびその構成部品を示している。また、図8および図11にはこのレセプタクルコネクタ1と嵌合するプラグコネクタ70を示している。本実施形態では説明の便宜上、各図中に示すように前後、左右、上下方向を定義しているが、実際の使用はこの方向に限定されるものではなく、このことは請求の範囲の記載についても同様である。 【0012】 レセプタクルコネクタ1は、下面側において基板90に対して固定される固定側ハウジング10と、上方に開口した受容凹部(嵌合空間)23を有した可動側ハウジング20と、これら固定側ハウジング10および可動側ハウジング20の双方に跨って保持された複数の信号用コンタクト30と、これらコンタクト30と同列に並んで配設された電源用コンタクト40と、固定金具50とを有して構成されている。 【0013】 固定側ハウジング10および可動側ハウジング20は図1および図2に示すように前後方向に延びた矩形形状を有しており、ともに樹脂等の電気絶縁性材料から構成される。固定側ハウジング10は上下方向に貫通した内部空間12を有した枠形状の部材から構成される。内部空間12を形成する前後方向に延びた左右壁11,11の内面には、信号用コンタクト30を保持するための多数の信号用コンタクト取り付け溝13aが前後に並んで且つ上下に延びて設けられ、左右壁11,11の前部側には左右一対の電源用コンタクト取り付け溝13bが上下に延びて設けられている。上記のように固定側ハウジング10に形成される内部空間12は必ずしも上下に貫通する必要はなく、少なくとも上方に開口した空間であれば良い。 【0014】 可動側ハウジング20は平板状の基部21と、この基部21の中央から矩形枠状に下方に突出した前後方向に長い形状の突出部22とを有している。突出部22は、外周面が固定側ハウジング10の上記内部空間12内に上方から、少なくとも左右に間隙を有して入り込むことができる形状に形成されている。この突出部22には上面側に開口した上記受容凹部23が形成されており、突出部22は全体として矩形状の有底鉢状に形成されている。受容凹部23の内壁面には上記信号用コンタクト30を保持するための多数の信号用コンタクト取り付け溝24aが前後に並んで且つ上下に延びて設けられ、受容凹部23の内壁面の前部側には左右一対の電源用コンタクト取り付け溝24bが上下に延びて設けられている。これらコンタクト取り付け溝24a,24bの下部は突出部22の底壁を貫通する信号用および電源用コンタクト取り付け孔24c,24dに繋がって上下に貫通している。 【0015】 各信号用コンタクト30は例えば板金(弾性体からなる導電性材料)を打ち抜き加工した後、図2に示すように所定の形状に曲げ成形されて構成されている。各信号用コンタクト30は一端側において信号用コンタクト取り付け溝13内に挿入されて固定側ハウジング10に保持され、他端側において信号用コンタクト取り付け溝24内に挿入されて可動側ハウジング20に保持され、この結果、固定側ハウジング10と可動側ハウジング20とが複数の信号用コンタクト30を介して繋がってレセプタクルコネクタ1が構成される。各信号用コンタクト30は、このように両ハウジングに跨って保持された状態で内側に位置する信号用接触部34と、下面外側に延びる信号用リード部(信号用接合部)33と、これらを繋ぐ逆U字状の信号可撓部(信号用中間部)35とを有して構成される。なお、信号用コンタクト30は可動側ハウジング20の左右両側に、前後方向に一定のピッチで並んで設けられる(図1参照)。」 「【0018】 電源用コンタクト40は、図6および図7に示すように、可動側ハウジング20に保持される第1電源用コンタクト41と、固定側ハウジング10に保持される第2電源用コンタクト45とから構成される。これら第1および第2電源用コンタクト41,45は、例えば板金(弾性体からなる導電性材料)を打ち抜き加工した後、図示の形状に曲げ成形されて作られる。第1電源用コンタクト41は、可動側ハウジング20の電源用コンタクト取り付け溝24b内に挿入配設される電源用接触部42と、第2電源用コンタクト46と当接接触する第1当接部44と、電源用接触部42と第1当接部44とを繋ぐ逆U字状の第1可撓部43とから構成される。電源用接触部42の下部の左右側端には左右に突出した第3圧入係止部42aが形成されており、この第3圧入係止部42aが可動側ハウジング20の電源用コンタクト取り付け孔24d内に圧入保持される。 【0019】 第2電源用コンタクト45は、上記第1当接部44と当接接触する第2当接部46と、第2当接部46に繋がる逆U字状の第2可撓部47と、第2可撓部47の下部に繋がって外方に水平に延びる電源用リード部(電源用接合部)48とから構成される。第2可撓部47の左右側端には左右に突出した第4圧入係止部47aが形成されており、この第4圧入係止部47aが固定側ハウジング10の電源用コンタクト取り付け溝13b内に圧入保持される。第2当接部46の内面には内方に突出する接触突起46aが形成されており、この接触突起46aが第1電源用コンタクト41の第1当接部44と当接接触するように構成されている。」 「【0021】 以上のように構成されたレセプタクルコネクタ1と嵌合接続される相手方コネクタであるプラグコネクタ70について、図8および図11を参照して説明する。プラグコネクタ70は図示のようにレセプタクルコネクタ1の受容凹部23と嵌合し得る形状の突起部72を有した電気絶縁性材料からなるプラグハウジング71と、このプラグハウジング71に保持された弾性体かつ導電性材料からなる複数の信号用コンタクト73と、同じくプラグハウジング71に保持された弾性体かつ導電性材料からなる左右一対の電源用コンタクト75とを有する。これら信号用コンタクト73および電源用コンタクト75は、レセプタクルコネクタ1の各信号用コンタクト30および電源用コンタクト40と対応するよう、突起部72の左右両側に、前後方向に所定のピッチで設けられている。 【0022】 各信号用コンタクト73は、図示のようにS字状に折り曲げ成形された信号用接触部73a(なお、信号用接触部73aは、図11に示すように「く」の字状に折り曲げ成形しても良い)と、信号用接触部73aの下部に設けられた係止保持部73bと、係止保持部73bの下端から直角に折れ曲がって外方に延びる信号用リード部73cとから構成される。係止保持部73bにおいてプラグハウジング71に係止保持されるため、信号用接触部73aは片持ち状態で上方に延び左右に弾性変形自在となっている。信号用リード部73cはプラグコネクタ70が取り付けられる基板(図示せず)上の所定の配線パターンに半田接合(サーフェスマウント)されている。同様に、電源用コンタクト75は係止保持部(図示せず)において片持ち支持されて上方に延びた電源用接触部75aが左右方向に弾性変形自在となっており、係止保持部に一体に繋がって外方に延びる電源用リード部75cがこの相手方コネクタ70が取り付けられる基板(図示せず)上の所定の配線パターンに接続されている。 【0023】 プラグコネクタ70の突起部72をレセプタクルコネクタ1の受容凹部23内に、図16に示すように上方から挿入すると、プラグコネクタ70の突起部72はレセプタクルコネクタ1の受容凹部23内に嵌入する。このときプラグコネクタ70の信号用コンタクト73はレセプタクルコネクタ1の信号用コンタクト30(信号用接触部34)と接触しつつ左右方向に弾性変形させられるので、両信号用コンタクト30,73は適切な接触力をもって接触し、両コネクタ1,70間での信号伝送が可能となる。同様に、電源用コンタクト75はレセプタクルコネクタ1の電源用コンタクト40(第1電源用コンタクト41の電源用接触部42)と接触しつつ左右方向に弾性変形させられるので、両信号用コンタクト40,73は適切な接触力をもって接触し、両コネクタ1,70間での電源接続(電力伝送)が可能となる。」 「【0027】 上記のように可動側ハウジング20を左右方向へ移動させて両嵌合部72,23を嵌合させるときに、信号用コンタクト30の可撓部35を弾性変形させるために必要な力(これを第1変形力と称する)と、電源用コンタクト40の第1可撓部44および第2可撓部47を弾性変形させるために必要な力(これを第2変形力と称する)とがこの移動に対する抵抗力として作用する。このとき、信号用コンタクト30は一体に繋がった状態で固定側ハウジング10と可動側ハウジング20とに跨って配設されているため、第1変形力は大きくなる傾向がある。しかしながら、信号用コンタクト30は信号電流という低電流を伝達するものであるため極く細い形状であり、第1変形力が過度に大きくなることはなく、所望の値に抑えることができる。 【0028】 これに対して電源用コンタクト40は電源電流という比較的大きな電流を流す必要から、図示のように信号用コンタクト30より大きな幅を有しており、信号用コンタクト30と同一の側面形状の一体に繋がった構成とした場合には第2変形力が過度に大きくなりすぎてプラグコネクタ70の嵌合に要する力が大きくなりすぎるという問題がある。しかしながら、上述のように、電源用コンタクト40を第1および第2電源用コンタクト41,45の二つに分割して構成しているめ、第1可撓部44および第2可撓部47をそれぞれ独立して弾性変形させることになり、第2変形力を小さく抑えることができる。この結果、レセプタクルコネクタ1の受容凹部23の中心軸面S1とプラグコネクタ70の突起部72の中心軸面S2とが一致していない場合でも、可動側ハウジング20を比較的小さな抵抗力で左右に移動させることができ、レセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ70とをスムーズに嵌合させることが可能である。」 「【0031】 これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態においては、第2変形力を小さくするため、電源用コンタクト40を第1および第2電源用コンタクト41,42に分割しているが、これを弾性変形力が小さくなるような材料もしくは形状として、信号用コンタクトと同一の側面視形状となる一体構成としても良い。」 「【請求項1】 上方に開口した内部空間を有し、下面側において基板等に接合固定可能な固定側ハウジングと、上方に開口した相手方コネクタと嵌合する嵌合空間を有し、前記固定側ハウジングの前記内部空間内に少なくとも左右方向に間隙を有して配置される部分を有した可動側ハウジングと、一端側が前記固定側ハウジングに保持されるとともに他端側が前記可動側ハウジングに保持されて前後方向に並んで配設された複数の信号用コンタクトと、一端側が前記固定側ハウジングに保持されるとともに他端側が前記可動側ハウジングに保持されて前記信号用コンタクトと同列に前後方向に並んで配設され、前記信号用コンタクトより前後方向寸法が大きな電源用コンタクトとを有して構成され、 前記複数の信号用コンタクトがそれぞれ、前記一端側において前記嵌合空間内に露出して設けられて前記相手側コネクタの信号用コンタクトと接触するための信号用接触部と、前記他端側において前記基板の信号配線部に接合される信号用接合部と、前記信号用接触部と前記信号用接合部を繋ぐ信号用中間部を有し、前記信号用中間部が弾性変形可能であり、前記信号用中間部が弾性変形して前記可動側ハウジングが前記固定側ハウジングに対して少なくとも左右方向に移動自在であり、前記電源用コンタクトが、前記一端側において前記嵌合空間内に露出して設けられて前記相手側コネクタの電源用コンタクトと接触する電源用接触部と、前記他端側において前記基板の電源配線部に接合される電源用接合部と、前記電源用接触部と前記電源用接合部を繋ぐ電源用中間部を有し、 前記電源用中間部が、前記可動側ハウジングが前記固定側ハウジングに対して移動したときに対する抵抗力が小さくなるような構成であることを特徴とするフローティング型コネクタ。」 イ 上記記載事項及び図面の記載内容並びに当業者における技術常識を勘案すると、次の事項が認定できる。 受容凹部23は矩形状で、前後方向に延びる一対の内壁それぞれに多数の信号用コンタクト30と電源用コンタクト40が保持されている(段落【0014】及び【図2】?【図4】)。 電源用コンタクト40および信号用コンタクト30は、基板90(の回路)に電気的に接続されているものといえる。 電源用接触部42は、信号用コンタクト30の信号用接触部34の面積よりも大なる面積を有する(段落【0028】及び【図3】?【図4】)。 ウ 引用文献1の記載事項、図示内容及び上記認定事項を総合し、本件発明1の記載ぶりに倣って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 [引用発明] 「一方の基板90に配され、前後方向に延びる一対の内壁それぞれに多数の信号用コンタクト30と電源用コンタクト40が保持されている矩形状受容凹部23を有し、移動可能に支持される可動側ハウジング20と、 該可動側ハウジング20を着脱方向に対し直交する方向に移動可能に支持するとともに前記基板90に電気的に接続される[Wユ9]少なくとも一つの電源用コンタクト40および信号用コンタクト30を含む複数のコンタクト端子とを備える固定側ハウジング10と、 を備えるレセプタクルコネクタ1と、 他方の基板に配され、前記可動側ハウジング20の矩形状受容凹部23に取り外し可能に接続される突起部72を有し、該突起部72が受容凹部23に接続される場合、前記レセプタクルコネクタ1の複数のコンタクト端子に電気的に接続されるとともに該他方の基板に電気的に接続される少なくとも一つの電源用コンタクト75および信号用コンタクト73を含む複数のコンタクト端子を備えるプラグコネクタ70と、を備え、 前記レセプタクルコネクタ1の電源用コンタクト40の電源用接触部42は、前記可動側ハウジング20の矩形状受容凹部23の前後方向に延びる一対の内壁それぞれに固定され、 前記信号用コンタクト30の信号用接触部34の面積よりも大なる面積を有する電源用接触部42に連結される、前記可動側ハウジング20が固定側ハウジング10に対して移動したときに対する抵抗力が小さくなるように構成されている電源用中間部を有する、 レセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ70とからなる嵌合接続構成。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「一方の基板90」は、本件発明1の「第1の基板」に相当する。 以下同様に、「矩形状受容凹部23」は、「ソケット接続口」に、「可動側ハウジング20」は、「ソケット連結部材」に、「電源用コンタクト40」は、「電源用コンタクト端子」に、「信号用コンタクト30」は、「信号用コンタクト端子」に、「複数のコンタクト端子」は、「複数のコンタクト端子」に、「レセプタクルコネクタ1」は、「プラグ」に、「他方の基板」は、「第2の基板」に、「突起部72」は、「接続端部」に、「電源用コンタクト75」は、「電源用コンタクト端子」に、「信号用コンタクト73」は、「信号用コンタクト端子」に、「プラグコネクタ70」は、「ソケット」に、「電源用接触部42」は、「接触片部」に、それぞれ相当する。 引用発明の「矩形状受容凹部23」のうち「前後方向に延びる一対の内壁」は、「多数の信号用コンタクト30と電源用コンタクト40が保持されている」から、本件発明1の「一対の端子固定壁」に相当し、引用発明の矩形状受容凹部23の前後方向に延びる一対の内壁以外の一対の内壁は、本件発明1の「互いに離隔した一対の側壁部」に相当する。 引用発明の、「該可動側ハウジング20を着脱方向に対し直交する方向に移動可能に支持する」は、本件発明1の「該ソケット連結部材を着脱方向に対し直交する長手および短手方向に移動可能に支持する」との対比において、「該ソケット連結部材を着脱方向に対し直交する長手方向に移動可能に支持する」との限度で一致する。 引用発明の「前記レセプタクルコネクタ1の電源用コンタクト40の電源用接触部42は、前記可動側ハウジング20の矩形状受容凹部23の前後方向に延びる一対の内壁それぞれに固定され」ることは、本件発明1の「前記プラグの電源用コンタクト端子の接触片部は、前記ソケット連結部材のソケット接続口を形成する前記互いに離隔した一対の端子固定壁のうちのいずれかに固定され」ることに相当する。 引用発明の「電源用中間部」は、「前記可動側ハウジング20が固定側ハウジング10に対して移動したときに対する抵抗力が小さくなるように構成され」ており、「該可動側ハウジング20を着脱方向に対し直交する方向に移動可能に支持する」ものであることからみて、本件発明1の「複数に分岐した可動片部」と、「可動片部」である限りにおいて一致する。 引用発明の「レセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ70とからなる嵌合接続構成」は、当該接続構成により、一方の基板90と他方の基板を接続するコネクタが形成されるといえるから、本件発明1の「基板接続用コネクタ」に相当する。 したがって、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] 「第1の基板に配され、互いに離隔した一対の端子固定壁と互いに離隔した一対の側壁部に囲まれたソケット接続口を有し移動可能に支持されるソケット連結部材と、該ソケット連結部材を着脱方向に対し直交する方向に移動可能に支持するとともに前記第1の基板に電気的に接続される少なくとも一つの電源用コンタクト端子および信号用コンタクト端子を含む複数のコンタクト端子と、を備えるプラグと、 第2の基板に配され、前記ソケット連結部材のソケット接続口に取り外し可能に接続される接続端部を有し、該接続端部がソケット接続口に接続される場合、前記プラグの複数のコンタクト端子に電気的に接続されるとともに該第2の基板に電気的に接続される少なくとも一つの電源用コンタクト端子および信号用コンタクト端子を含む複数のコンタクト端子を備えるソケットと、を備え、 前記プラグの電源用コンタクト端子の接触片部は、前記ソケット連結部材のソケット接続口を形成する前記互いに離隔した一対の端子固定壁のうちのいずれかに固定され、前記信号用コンタクト端子の接触片部の面積よりも大なる面積を有する接触片部に連結される可動片部を有する基板接続用コネクタ。」 [相違点1] 本件発明1は、「プラグ」の「ソケット連結部材」が、「隅部と、嵌合用窪み部とを内側に有」するとともに、「ソケット」の「接続端部」には、「前記隅部に係合され、または、前記嵌合用窪み部に干渉する誤挿入防止用の突起部が形成される」ものであるのに対し、引用発明が係る構成を備えているとは特定されていない点。 [相違点2] 本件発明1の「プラグ」は、「前記一対の側壁部のそれぞれが、反対方向外側に延びる一対の突起片を有する、ソケット連結部材」と、「前記ソケット連結部材の前記一対の突起片にそれぞれ係止される一対の係止片を有し、前記ソケット連結部材の着脱方向および前記短手方向に沿った該ソケット連結部材の位置を規制するストッパ部材」とを備えているのに対し、引用発明の「レセプタクルコネクタ1」は、かかる構成、すなわち、固定側ハウジング10に対する可動側ハウジング20の上下方向(着脱方向)及び左右方向(短手方向)に沿った位置を規制する構成を備えていない点。 [相違点3] 本件発明1は、プラグにおいて「ソケット連結部材を着脱方向に対し直交する長手および短手方向に移動可能に支持する」ものであるのに対し、引用発明は、レセプタクルコネクタ1において「可動側ハウジング20を着脱方向に対し直交する左右方向に支持する」ものである点。 [相違点4] 本件発明1は、電源用コンタクト端子が、「前記信号用コンタクト端子の接触片部の面積よりも大なる面積を有する接触片部に連結される複数に分岐した可動片部を有する」ものであるのに対し、引用発明は、電源用コンタクト40が、「可動側ハウジング20が固定側ハウジング10に対して移動したときに対する抵抗力が小さくなるように構成されている電源用中間部を有する」ものである点。 イ 判断 (ア)事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。 取消理由通知において引用した引用文献9には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 「[0001] 本発明は、プリント基板等に取り付けられ、複数の基板を電気的に接続するために用いられるコネクタに関するものである。」 「[0011] このコネクタはプラグ1とソケット2からなり、プラグ1に接続された一方の接続対象物としての第1の基板100と、ソケット2に接続された他方の接続対象物としての第2の基板200とを電気的に接続させるために用いられるものである。 [0012] プラグ1には、第1の基板100側に配置される第1の固定ハウジング10と、第1の固定ハウジング10に対して幅方向(図中X方向)、前後方向(図中Y方向)及び上下方向(図中Z方向)に移動可能に設けられた第1の可動ハウジング20と、一端側が第1の固定ハウジング10に保持されるとともに他端側が第1の可動ハウジング20に保持され、第1の固定ハウジング10に対する第1の可動ハウジング20の移動に伴って?性変形するように形成された第1の端子としての複数のプラグ端子30と、第1の可動ハウジング20の移動を規制する一対の第1のストッパ部材40とが設けられている。 [0013] 第1の固定ハウジング10は合成樹脂の成形品からなり、上面が開口した箱型形状をなしている。即ち、第1の固定ハウジング10は、前面部11、背面部12、幅方向両側面部13及び底面部14からなり、前面部11及び背面部12には、各プラグ端子30を保持する複数の端子孔15と、各端子孔15の配列方向(図中X方向)両端側において第1の固定ハウジング10の外側に向力って突出する一対の突出部16と、幅方向両端側の上部に形成された一対の凹部17とがそれぞれ設けられている。また、各側面部13の上部には、第1の可動ハウジング20を係合する係合部18がそれぞれ設けられている。 [0014] 第1の可動ハウジング20は合成樹脂の成形品からなり、上面が開口した箱型形状をなすハウジング本体21が設けられている。ハウジング本体11の幅方向側壁部には、各プラグ端子30を保持する複数の端子孔22が上下方向に延びるとともに、ハウジング本体21の底面21aを貫通するように形成されている。また、ハウジング本体21の前面及び後面には、第1の可動ハウジング20の外側に向かって延出するフランジ23がそれぞれ設けられており、ハウジング本体21の幅方向両側面には、第1の固定ハウジング10の係合部18に係合する突起24がそれぞれ設けられている。 「[0016] 各ストッパ部材40は、金属板を折り曲げ加工することによって前後方向(図中Y方向)に延びるように形成されており、一端側と他端側とが互いに対向するように略コ字状に形成された規制部本体41と、規制部本体41の前後方向両端からそれぞれ前方または後方に延びる一対の基板接続部42とが設けられている。規制部本体41は、第1の固定ハウジング10の凹部17に圧入可能に形成され、各基板接続部42は、規制部本体41が溝部17に圧入されると、第1の基板100に接触するようになっている。 [0017] ここで、各プラグ端子30を第1の固定ハウジング10に取り付ける場合には、端子孔15にプラグ端子30を上方から圧入する。このとき、図4に示すように、プラグ端子30の第1の真直部32の上端側が第1の固定ハウジング10の端子孔15に保持される。また、各プラグ端子30に対して第1の可動ハウジング20を上方から圧入すると、ブラグ端子30の接触部35が、ハウジング本体21の底面21aを貫通し、第1の可動ハウジング20の端子孔22に保持される。この場合、第1の可動ハウジング20の突起24は第1の固定ハウジング10の係合部18内に配置され、係合部18によって突起24即ち第1の可動ハウジング20の前後方向及び下方への移動が所定範囲内に規制される。また、第1のストッパ部材40が第1の固定ハウジング10の溝部17に圧入されると、係合部18の上方が規制部本体41によって覆われ、第1の可動ハウジング20の幅方向及び上方への移動が所定範囲内に規制される。」 「[0021]第2の可動ハウジング60は合成樹脂の成形品からなり、上面が開口した箱型形状 をなすハウジング本体61が設けられている。ハウジング本体61の底面中央部には、上方に突出するとともに第1の可動ハウジング20のハウジング本体21に嵌合可能に 形成された嵌合部62が設けられており、嵌合部62の前面及び後面には、各ソケット 端子70を保持する複数の端子孔63がハウジング本体61の底面部を上下方向に貫通するように形成されている。(以下略)」 引用文献9の記載から引用文献9には、次の技術的事項(以下、「引用文献9に記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 「上面が開口した箱型形状をなすハウジング本体21が設けられた第1の可動ハウジング20と、該第1の可動ハウジング20を幅方向、前後方向及び上下方向に移動可能に設ける第1の固定ハウジング10とからなるプラグ1と、第1の可動ハウジングのハウジング本体21に嵌合可能に形成された嵌合部62を設けたソケット2と、からなるコネクタにおいて、ハウジング本体21の幅方向両側面に、第1の固定ハウジング10の両側面部13に設けた係合部18に係合する突起24を設け、第1のストッパ部材40を固定ハウジング10に圧入することにより、係合部18の上方をストッパ部材40の規制部本体41によって覆い、係合部18、突起24及びストッパ部材40によって、第1の固定ハウジング10に対する第1の可動ハウジング20の前後方向、幅方向及び上下方向への移動を所定範囲内に規制する技術的事項。」 ここで、引用文献9に記載の技術的事項の、「ハウジング本体21」の「開口」、「第1の可動ハウジング20」、「突起24」、「第1の固定ハウジング10」、「ストッパ部材40」、「規制部本体41」、「上下方向」、「前後方向」、「嵌合部62」及び「ソケット2」は、それぞれ、本件発明1の、「ソケット接続口」、「ソケット連結部材」、「突起片」、「プラグ」、「ストッパ部材」、「係止片」、「着脱方向」、「短手方向」、「接続端部」及び「ソケット」に相当する。 また、引用文献9に記載の技術的事項の突起24は、ハウジング本体21を形成する互いに離隔した側壁部のそれぞれに設けられているといえる。 したがって、引用文献9に記載の技術的事項は、本件発明1のプラグについて、「ソケット連結部材」が「一対の側壁部のそれぞれが」「突起片を有」する構成、及び、「ソケット連結部材の」「突起片にそれぞれ係止される」「係止片を有し、ソケット連結部材の着脱方向」「に沿った該ソケット連結部材の位置を規制するストッパ部材」の構成を備えているが、突起片がソケット連結部材の側壁部のそれぞれから「反対方向外側に延びる一対の」ものであり、これに対応する係止片を「一対の」ものであるとの構成を備えていない。 また、引用文献9に記載の技術的事項のストッパ部材40は、第1の可動ハウジング20の幅方向(図1中X方向)及び上方への移動を規制するものの(段落[0012]及び[0017]を参照。)、前後方向(図1中Y方向)の位置を規制するものではなく、本件発明1における「ソケット連結部材の」「短手方向に沿った該ソケット連結部材の位置を規制するストッパ部材」との構成を備えていない。 したがって、引用文献9に記載の技術的事項を引用発明に適用したとしても、相違点2に係る本件発明1の構成に至らない。 また、引用文献9には、引用文献9に記載の技術的事項の突起24を、ハウジング本体21の側壁部のそれぞれから反対方向外側に延びる一対のものとして構成し、ストッパ部材40の規制部本体41を、反対方向外側に延びる一対のものとして構成された突起24にそれぞれ係合する一対のものとしてストッパ部材40に構成することが可能であるとの記載も示唆もないし、このことが可能であることを示すその他の証拠もない。 また、取消理由通知において引用した引用文献10には、固定用ブロック12に対し、可動用ハウジング14がフローティング支持されたコネクタ10において、可動用ハウジング14の突出部32と固定用ブロック12に固定された固定タブ18が係合することで、抜去方向(着脱方向)への可動用ハウジング14の移動を防止し、フローティングの範囲を所定範囲に規制する構成が記載されているものの(引用文献10の段落【0016】?【0018】並びに【図1】(A)【図3】及び【図5】を参照。)、本件発明1の「プラグ」について、「ソケット連結部材」の一対の側壁部のそれぞれが、「反対方向外側に延びる一対の」突起片を有するとともに、ソケット連結部材の一対の突起片にそれぞれ係止される「一対の」係止片を有し、ソケット連結部材の「短手方向に沿ったソケット連結部材の位置を規制するストッパ部材」を「備え」ていることまでも記載ないし示唆するものではないという点では、引用文献9と同様である。 したがって、引用発明において、引用文献9及び10に記載された事項に基いて相違点2に係る本件発明1の構成となすことは当業者であっても容易ではない。 なお、取消理由通知で引用した引用文献2?8においても、相違点2に係る本件発明1の構成は記載されていないし示唆もされていない。 (イ)次に、相違点4について検討する。 引用発明の「電源用中間部」は、「可動側ハウジング20が固定側ハウジング10に対して移動したときに対する抵抗力が小さくなるように構成されている」ものであるところ、ここでの抵抗力とは、引用文献1の記載(段落【0027】を参照。)によれば、可動側ハウジング20が固定側ハウジング10に対して、左右方向(本件発明1の「短手方向」)に移動したときに信号用コンタクト30及び電源用コンタクト40を弾性変形させるために必要な力である。そして、引用文献1には、係る抵抗力を小さくするための具体的な構成として、電源用コンタクト40を、可動側ハウジング20に保持される第1電源用コンタクト41と、固定側ハウジング10に保持される第2電源用コンタクト45との、2つの部材から構成し、両電源用コンタクト41、45にそれぞれ可撓部43、47を有する構成が記載されている(段落【0018】、【0019】及び【0028】を参照。)。 このように、引用文献1には、もっぱら可動側ハウジング20が固定側ハウジング10に対して左右方向に移動したときの抵抗力を小さくするという課題が示され、かかる課題を解決する具体的手段についての記載があるにとどまり、それに加え、可動側ハウジング20が固定側ハウジング10に対し前後方向(本件発明1の「長手方向」)に移動したときの課題及びその解決手段については記載も示唆もない。 したがって、仮に、可動側ハウジングが固定側ハウジングに左右方向のみならず前後方向に移動可能であるというフローティングコネクタが当業者に周知・慣用の技術であったとしても、もっぱら可動側ハウジング20が固定側ハウジング10に対し左右方向に移動したときの課題および当該課題解決手段を開示する引用文献1に接した当業者においては、可動側ハウジング20が固定側ハウジング10に対し左右方向に移動したときの課題のみならず、可動側ハウジング20が固定側ハウジング10に対し前後方向に移動したときの課題までをも認識し、かかる課題を解決しようと試みることはもはや容易に想到し得たことであるということはできない。 よって、引用発明において、相違点4に係る本件発明1の構成となすことは、当業者であっても容易ではない。 (ウ)以上のとおりであるので、その余の相違点1及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明及び引用文献2?10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、それぞれ、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定する発明特定事項を付加したものである。 したがって、本件発明2及び3と引用発明との間には、少なくとも相違点2及び4が存在するから、上記(2)イと同様の理由により、本件発明2及び3は、引用発明及び引用文献2?10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明4について 本件発明4は、実質的には、本件発明1の「プラグ」と「ソケットと、を備え」た「基板接続用コネクタ」のうち「プラグ」に関する部分を取り出し独立した発明としたものである。 上記(2)アでの本件発明1と引用発明との相違点1?4は、もっぱら本件発明1における「プラグ」の構成について生じているものである。 したがって、本件発明4と引用発明との間には、上記(2)アの相違点1?4と同じ相違点が存在することとなる。 してみると、上記(2)イと同様の理由により、本件発明4は、引用発明及び引用文献2?10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件発明5について 本件発明5は、本件発明4の発明特定事項を全て含み、更に限定したものである。 本件発明4が、上記(4)で説示のとおり、引用発明及び引用文献2?10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明5も同様に、引用発明及び引用文献2?10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)本件発明6について 本件発明6は、実質的には、本件発明1の「プラグ」と「ソケットと、を備え」た「基板接続用コネクタ」のうち「ソケット」に関する部分を取り出した上で、当該「ソケット」が請求項4に記載のプラグ(本件発明4)と接続されることを特定した発明である。 したがって、本件発明6には、実質的に、本件発明1の発明特定事項が全て含まれることとなるところ、本件発明1は、上記(2)で説示のとおり、引用発明及び引用文献2?10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明6も、同様の理由により、引用発明及び引用文献2?10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない (7)本件発明7について 本件発明7は、本件発明6の発明特定事項を全て含み、更に限定したものである。 本件発明6が、上記(6)で説示のとおり、引用発明及び引用文献2?10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明7も同様に、引用発明及び引用文献2?10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (8)小括 上記(2)?(7)のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由によって、本件発明1?7に係る特許を取り消すことはできない。 なお、異議申立人の提出したその他の証拠(甲第2号証の3?甲第2号証の8、甲第3号証の4、甲第4号証の3?甲第4号証の10)にも、相違点2に係る本件発明1の構成は記載されていないし示唆もされていないから、異議申立人の提出した証拠によっては、本件発明1?7に係る特許について、特許法第29条第2項の規定に違反することを理由として特許を取り消すことはできない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立て理由について 1 異議申立人は、特許異議申立書において、請求項1及び4に記載の「隅部」と「嵌合用窪み部」とが、形状の異なるものであると限定される場合には、係る事項は、願書に添付された明細書又は図面との関係において新たな技術的事項を導入するものであり、新規事項の追加に該当する旨主張する(特許異議申立書第72ページ第10行?第74ページ下から7行))。 しかしながら、請求項1には、「隅部」と「嵌合用窪み部」に関して、「ソケット連結部材」に「隅部と、嵌合用窪み部とを内側に有し」という記載、及び「ソケット」に「前記隅部に係合され、または、前記嵌合用窪み部に干渉する誤挿入防止用の突起部が形成され」という記載があるのみで、これらの記載からすれば、請求項1では、ソケットに形成された突起部に係合されるソケット連結部材の部分を「隅部」とし、干渉する部分を「窪み部」と規定するにとどまり、「隅部」と「嵌合用窪み部」とが、それぞれ形状の異なるものであるとの限定はされていない(この点は、請求項4を引用する請求項6においても同様である。)。 したがって、異議申立人の、請求項1及び4に記載の「隅部」と「嵌合用窪み部」とが、形状の異なるものであると限定される場合には、新規事項の追加に該当する旨の主張は採用できない。 2 異議申立人は、特許異議申立書において、請求項1及び4に記載の「隅部」と「嵌合用窪み部」に関し、「隅部」と「嵌合用窪み部」とが同一の形状であるものなのか、それぞれの形状が異なるものなのか不明であるので、特許を受けようとする発明が不明確である旨も主張する(特許異議申立書第74下から6行?下から4行)。 しかしながら、請求項1には、「ソケット連結部材」が「隅部と、嵌合用窪み部とを内側に有し」、これに対応して、「ソケット」に「前記隅部に係合され、または、前記嵌合用窪み部に干渉する誤挿入防止用の突起部が形成され」るとあるので、「隅部」及び「嵌合用窪み部」の形状を問わず、ソケットの突起部に係合されるソケット連結部材の部分を「隅部」であり、ソケットの突起部に干渉するソケット連結部材の部分を「嵌合用窪み部」であることが当業者に明確に理解できる。 したがって、異議申立人の特許を受けようとする発明が不明確であるとの主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件の請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件の請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 第1の基板に配され、互いに離隔した一対の端子固定壁と互いに離隔した一対の側壁部に囲まれたソケット接続口を有し、移動可能に支持され、隅部と、嵌合用窪み部とを内側に有し、前記一対の側壁部のそれぞれが、反対方向外側に延びる一対の突起片を有する、ソケット連結部材と、該ソケット連結部材を着脱方向に対し直交する長手および短手方向に移動可能に支持するとともに前記第1の基板に電気的に接続される少なくとも一つの電源用コンタクト端子および信号用コンタクト端子を含む複数のコンタクト端子と、前記ソケット連結部材の前記一対の突起片にそれぞれ係止される一対の係止片を有し、前記ソケット連結部材の着脱方向および前記短手方向に沿った該ソケット連結部材の位置を規制するストッパ部材と、を備えるプラグと、 第2の基板に配され、前記ソケット連結部材のソケット接続口に取り外し可能に接続される接続端部であって、前記隅部に係合され、または、前記嵌合用窪み部に干渉する誤挿入防止用の突起部が形成される接続端部を有し、該接続端部がソケット接続口に接続される場合、前記プラグの複数のコンタクト端子に電気的に接続されるとともに該第2の基板に電気的に接続される少なくとも一つの電源用コンタクト端子および信号用コンタクト端子を含む複数のコンタクト端子を備えるソケットと、を備え、 前記プラグの電源用コンタクト端子の接触片部は、前記ソケット連結部材のソケット接続口を形成する前記互いに離隔した一対の端子固定壁のうちのいずれかに固定され、前記信号用コンタクト端子の接触片部の面積よりも大なる面積を有する接触片部に連結される複数に分岐した可動片部を有することを特徴とする基板接続用コネクタ。 【請求項2】 前記プラグおよびソケットは、それぞれ、静電気を前記第1の基板および前記第2の基板に逃がす静電気除去部材をさらに備え、該静電気除去部材が、前記複数のコンタクト端子に隣接して配される接地用コンタクト端子であることを特徴とする請求項1記載の基板接続用コネクタ。 【請求項3】 前記プラグおよびソケットは、それぞれ、静電気を前記第1の基板および前記第2の基板に逃がす静電気除去部材をさらに備え、該ソケットに設けられる静電気除去部材が、向かい合う前記コンタクト端子相互間に所定の距離をもって配置される少なくとも一つの接地用プレートであることを特徴とする請求項1記載の基板接続用コネクタ。 【請求項4】 基板に配され、接続端部が接続される、互いに離隔した一対の端子固定壁と互いに離隔した一対の側壁部に囲まれたソケット接続口を有し、移動可能に支持され、該接続端部の誤挿入防止用の突起部が係合される隅部と、該挿入防止用の突起部が干渉される嵌合用窪み部とを内側に有し、前記一対の側壁部のそれぞれが、反対方向外側に延びる一対の突起片を有するソケット連結部材と、該ソケット連結部材を着脱方向に対し直交する長手および短手方向に移動可能に支持するとともに前記基板に電気的に接続される少なくとも一つの電源用コンタクト端子および信号用コンタクト端子を含む複数のコンタクト端子と、前記ソケット連結部材の前記一対の突起片にそれぞれ係止される一対の係止片を有し、前記ソケット連結部材の着脱方向および前記短手方向に沿った該ソケット連結部材の位置を規制するストッパ部材と、を備え、 前記電源用コンタクト端子の接触片部は、前記ソケット連結部材のソケット接続口を形成する前記互いに離隔した一対の端子固定壁のうちのいずれかに固定され、前記信号用コンタクト端子の接触片部の面積よりも大なる面積を有する接触片部に連結される複数に分岐した可動片部を有することを特徴とするプラグ。 【請求項5】 前記プラグは、静電気を前記基板に逃がす静電気除去部材をさらに備え、 該静電気除去部材が、前記複数のコンタクト端子に隣接して配される接地用コンタクト端子であることを特徴とする請求項4記載のプラグ。 【請求項6】 請求項4記載のプラグのソケット連結部材のソケット接続口に取り外し可能に接続される接続端部であって、前記隅部に係合され、または、前記嵌合用窪み部に干渉する誤挿入防止用の突起部が形成される接続端部と、 基板に配される前記接続端部が前記プラグのソケット接続口に接続される場合、前記プラグにおける電源用コンタクト端子、および、信号用コンタクト端子にそれぞれ、接続されるとともに該基板に電気的に接続される電源用コンタクト端子、および、信号用コンタクト端子と、を備えて構成されるソケット。 【請求項7】 前記ソケットは、静電気を前記基板に逃がす静電気除去部材をさらに備え、該静電気除去部材は、前記信号用コンタクト端子に隣接して配される接地用コンタクト端子であることを特徴とする請求項6記載のソケット。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-03-26 |
出願番号 | 特願2018-87162(P2018-87162) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(H01R)
P 1 651・ 853- YAA (H01R) P 1 651・ 121- YAA (H01R) P 1 651・ 851- YAA (H01R) P 1 651・ 561- YAA (H01R) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 山本 裕太 |
特許庁審判長 |
平田 信勝 |
特許庁審判官 |
尾崎 和寛 杉山 健一 |
登録日 | 2019-09-13 |
登録番号 | 特許第6583474号(P6583474) |
権利者 | 山一電機株式会社 |
発明の名称 | プラグ、ソケット、および、それらを備える基板接続用コネクタ |
代理人 | 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人谷・阿部特許事務所 |