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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
管理番号 1374924
異議申立番号 異議2020-700138  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-02 
確定日 2021-04-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6570684号発明「ウレタン系粘着剤の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6570684号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第6570684号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、平成25年11月18日(以下「原出願日」という。)に出願した特願2013-237686号(以下「原出願」という。)の一部を新たな特許出願として平成30年3月14日に出願したものであって、令和元年8月16日にその特許権の設定登録がされ、同年9月4日に特許掲載公報が発行され、令和2年3月2日(特許異議申立書には同年2月29日と表示されているが、規定により同年3月2日に差し出されたものと認定した。)に請求項1?7に係る特許に対して特許異議申立人 大木 健一(以下「申立人」という。)によって特許異議の申立てがなされたものである。
その後、令和2年6月30日付で当審から取消理由が通知され(発送日は同年7月6日)、同年9月1日に特許権者によって意見書の提出と共に訂正請求(訂正の内容を以下「本件訂正」という。)がされ、当審は期間を指定して申立人に意見書を提出する機会を与えたが期間内に応答がなかった。

第2 本件訂正について
1 訂正事項
本件訂正は次の訂正事項からなるものである。当審が、訂正箇所に下線を付した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「ポリウレタン系樹脂とフルオロ有機アニオンを含むイオン性液体を含むウレタン系粘着剤の製造方法であって、」との記載を、「ポリウレタン系樹脂とフルオロ有機アニオンを含むイオン性液体を含むウレタン系粘着剤の製造方法であって、
該ポリウレタン系樹脂はウレタンプレポリマーを経由せずに得られ、」と訂正する。(請求項1を直接または間接的に引用する請求項2?7も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の「該ポリオール(A)と該多官能イソシアネート化合物(B)におけるNCO基とOH基の当量比がNCO基/OH基として1.0を超えて5.0以下であり、」との記載を、「該ポリオール(A)と該多官能イソシアネート化合物(B)におけるNCO基とOH基の当量比がNCO基/OH基として1.5?3.0であり、」と訂正する。(請求項1を直接または間接的に引用する請求項2?7も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1の「該ポリオール(A)は数平均分子量Mnが400?20000のポリオールを含み、」との記載を、「該ポリオール(A)は数平均分子量Mnが400?20000のポリオールを含み、該ポリオール(A)がOH基を3個有するポリオール(トリオール)を含み、該ポリオール(A)中の該OH基を3個有するポリオール(トリオール)の含有割合が70重量%?100重量%であり、」と訂正する(請求項1を直接または間接的に引用する請求項2?7も同様に訂正する)。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項2?7は、いずれも直接または間接的に請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1?7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。そして、本件訂正は一群の請求項ごとに行われたものである。
3 訂正の目的要件、実質上の拡張・変更の有無、新規事項追加の有無
(1)訂正事項1
ア 目的要件
本件訂正前の請求項1の「ポリウレタン系樹脂」には、ウレタンプレポリマーを経由して得られた樹脂も含まれると解されるところ、訂正後の請求項1に規定された「ポリウレタン系樹脂」には、ウレタンプレポリマーを経由して得られたものを含まないことが特定されたと解されるため、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上の拡張・変更の有無
前記アのように、訂正事項1は、「ポリウレタン系樹脂」をより狭い範囲に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の9で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項追加の有無
本件の願書に添付された明細書の段落【0079】には、「ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させてポリウレタン系樹脂を得る方法としては、塊状重合や溶液重合などを用いたウレタン化反応方法など、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法を採用し得る。ただし、従来の、いわゆるウレタンプレポリマーを経由させて得られるポリウレタン系樹脂では、本発明の効果が発現し得ないおそれがあるため、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させてポリウレタン系樹脂を得る方法としては、好ましくは、ウレタンプレポリマーを経由させてポリウレタン系樹脂を得る方法以外の方法である。」と記載されている。そして、好ましくないとされるウレタンプレポリマーを経由したものを含まないと訂正することは、新規事項を追加するものとはいえない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の9で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
ア 目的要件
本件訂正前の請求項1において「該ポリオール(A)と該多官能イソシアネート化合物(B)におけるNCO基とOH基の当量比がNCO基/OH基として」、「1.0を超えて5.0以下」であったのに対し、訂正事項2により、当該比が「1.5?3.0」とされ、数値範囲が減縮されているから、訂正事項2は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上の拡張・変更の有無
前記アのように、訂正事項2は、NCO基とOH基の当量比ををより狭い範囲に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の9で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項追加の有無
本件の願書に添付された明細書の段落【0048】には、「ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)における、NCO基とOH基の当量比は、NCO基/OH基として、1.0を超えて5.0以下であり、好ましくは1.1?5.0であり、より好ましくは1.2?4.0であり、さらに好ましくは1.5?3.5であり、特に好ましくは1.8?3.0である。」と記載されており、下限値として1.5を採用し、上限値として3.0を採用することが記載されている以上、1.5?3.0と特定することは、明細書に記載された範囲内の事項であり、新規事項を追加するものとはいえない。
(3)訂正事項3
ア 目的要件
本件訂正前の請求項1においてポリオールに含まれるトリオールの比率について特定がなかったのに対して、訂正事項3により「該ポリオール(A)がOH基を3個有するポリオール(トリオール)を含み、該ポリオール(A)中の該OH基を3個有するポリオール(トリオール)の含有割合が70重量%?100重量%」であることを特定したものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上の拡張・変更の有無
前記アのように、訂正事項1は、「ポリオール(A)」をより狭い範囲に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の9で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項追加の有無
本件の願書に添付された明細書の段落【0030】には、「本発明においては、ポリオール(A)として、好ましくは、OH基を3個有するポリオール(トリオール)を必須成分として採用する。・・・ポリオール(A)中の、OH基を3個有するポリオール(トリオール)の含有割合は、好ましくは50重量%?100重量%であり、より好ましくは70重量%?100重量%であり、さらに好ましくは80重量%?100重量%であり、さらに好ましくは90重量%?100重量%であり、特に好ましくは95重量%?100重量%であり、最も好ましくは実質的に100重量%である。」と記載されていることから、トリオールの含有割合を70重量%?100重量%と特定することは、新規事項を追加するものとはいえない。
4 本件訂正についての小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の9で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、本件訂正を認める。

第3 本件発明
前記第2で検討したように本件訂正は適法であり認められるから、本件請求項1?7に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明7」という。)は、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
ポリウレタン系樹脂とフルオロ有機アニオンを含むイオン性液体を含むウレタン系粘着剤の製造方法であって、
該ポリウレタン系樹脂はウレタンプレポリマーを経由せずに得られ、
該ウレタン系粘着剤は、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)と触媒とフルオロ有機アニオンを含むイオン性液体を含有するウレタン系粘着剤組成物を調製し、該ポリオール(A)と該多官能イソシアネート化合物(B)におけるNCO基とOH基の当量比がNCO基/OH基として1.5?3.0であり、該ポリオール(A)は数平均分子量Mnが400?20000のポリオールを含み、該ポリオール(A)がOH基を3個有するポリオール(トリオール)を含み、該ポリオール(A)中の該OH基を3個有するポリオール(トリオール)の含有割合が70重量%?100重量%であり、該ウレタン系粘着剤組成物を基材層上に塗布して乾燥することによって、該基材層上に形成させる、
ウレタン系粘着剤の製造方法。
【請求項2】
前記触媒の量が、前記ポリオール(A)に対して、0.02重量%?0.10重量%である、請求項1に記載のウレタン系粘着剤の製造方法。
【請求項3】
前記イオン性液体が、前記フルオロ有機アニオンとオニウムカチオンから構成される、請求項1または2に記載のウレタン系粘着剤の製造方法。
【請求項4】
前記オニウムカチオンが、窒素含有オニウムカチオン、硫黄含有オニウムカチオン、リン含有オニウムカチオンから選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載のウレタン系粘着剤の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオール(A)として、数平均分子量Mnが7000?20000のトリオールと、数平均分子量Mnが2000?6000のトリオールと、数平均分子量Mnが400?1900のトリオールとを併用する、請求項1から4までのいずれかに記載のウレタン系粘着剤の製造方法。
【請求項6】
前記ポリオール(A)が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオールから選ばれる少なくとも1種である、請求項1から5までのいずれかに記載のウレタン系粘着剤の製造方法。
【請求項7】
前記多官能イソシアネート化合物(B)の前記ポリオール(A)に対する含有割合が5重量%?60重量%である、請求項1から6までのいずれかに記載のウレタン系粘着剤の製造方法。」

第4 取消理由の概要
令和2年6月30日付けの当審からの取消理由通知は審尋も兼ねるものであったが、取消理由に関する部分は以下のとおりのものである。
1 サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について
(1)本件特許明細書の段落【0292】以下に記載された【表1】?【表13】の各実施例の「[NCO基]/[OH基]当量比」の項が2である実施例しか存在しない。また、本件明細書の段落【0305】に記載された【表14】には、比較例が記載されているが、各比較例の「[NCO基]/[OH基]当量比」の項が2である例しか存在しない。
(2)本件訂正前の特許請求の範囲に規定された「NCO基/OH基として1.0を超えて5.0以下」の全ての範囲において、「帯電防止性に非常に優れ、糊残り防止性やリワーク性にも優れた、ウレタン系粘着剤を提供することができる。」という課題が解決できると認識できる範囲にあるということができない。
2 進歩性(特許法第29条第2項)について
(1)引用文献
甲1:特開2011-190420号公報
甲2:特開2007-238766号公報
甲3:特開2011-105937号公報
甲4:特開2011-63749号公報
甲5:原出願の審査段階で提出された平成29年11月15日付け意見書
甲6:AGC株式会社、「プレミノール(PREMINOL)」というタイトルのウェブページのプリントアウト(検索日:令和2年2月28日)
甲7:特開2010-49058号公報
(2)甲1を主引用例とする理由
本件発明1?7は、甲1発明及び甲1?4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明である。
(3)甲2を主引用例とする理由
本件発明1?7は、甲2発明及び甲2、4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 前記第4、1の記載要件についての当審の判断
1 前記第2、1(2)に記載したように、訂正事項2により訂正前の「[NCO基]/[OH基]当量比」は、「1.0を超えて5.0以下」から「1.5?3.0」に訂正された。
2 そうすると、本件明細書に実施例とされた「[NCO基]/[OH基]当量比」が2である近傍の当量比に特定されることとなったため、前記第4、1の取消理由は理由がなく、また、本件発明1における「[NCO基]/[OH基]当量比」が課題を解決できない部分を包含するということもできないので、本件発明1及び引用する本件発明2?7の記載が特許法第36条第6項第1号に規定された要件を満たさないということはできない。

第6 前記第4、2の進歩性についての当審の判断
1 甲号証の記載事項
(1)甲1には、次の記載がある。下線は当審が付した。
ア 「【請求項1】
ポリウレタンポリオール(A)を50?95重量%、多官能イソシアネート化合物(B)を0.5?20重量%、炭素数が10?30である脂肪酸エステル(C)を0.5?50重量%含有することを特徴とするウレタン粘着剤。
【請求項2】
基材と、請求項1記載の粘着剤から形成されてなる粘着剤層とを有することを特徴とする粘着テープ。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープや粘着ラベル、好ましくはガラスや鏡面などの表面保護粘着シートに用いられるウレタン粘着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス、鏡、金属、プラスチック等の表面の汚れや傷つきを防ぐために、表面保護粘着シートが用いられている。これを構成する粘着剤の一つとして、アクリル系粘着剤が挙げられる。しかしながら、アクリル系粘着剤は粘着力に優れているが、被着体に貼付した後、再度被着体から剥がそうとすると、その粘着力の強さゆえに被着体へ粘着剤が残ってしまったり(即ち、糊残り)、また一般に貼付後、経時で粘着力が上昇してしまうため、再剥離性に劣るという問題点があった。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、再剥離性を維持しつつ、基材への密着性、濡れ広がり性(粘着シートの糊面を基材に接触させた後、粘着シートが自重で基材と密着していく現象)、泡抜け性(貼付時にはさみこんだ気泡が指で押し広げたときに抜けるかどうか)が良好なウレタン系粘着剤を提供することを目的とする。
・・・
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、再剥離性を維持しつつ、基材への密着性、濡れ広がり性、泡抜け性が良好なウレタン粘着剤を提供することができた。」
ウ 「【0010】
まず、本発明に用いるポリウレタンポリオール(A)について説明する。 本発明に用いるポリウレタンポリオール(A)は、ポリエステルポリオール(a1)と、ポリエーテルポリオール(a2)とを、触媒存在下又は無触媒で有機ポリイソシアネ-ト化合物(a3)と反応させてなるものである。」
エ 「【0015】
本発明に用いるポリエーテルポリオール(a2)は、2官能性のポリエーテルポリオールも用いることができるが、数平均分子量が1,000?5,000であり、かつ1分子中に少なくとも3個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールを一部もしくは全部用いることにより、更に粘着力と再剥離性のバランスがとれる。数平均分子量が1,000未満では3官能以上のポリオールは反応性が高くなり、ゲル化しやすくなる。また、数平均分子量が5,000超過では3官能以上のポリオールは反応性が低くなり、さらにはポリウレタンポリオール(A)自体の凝集力が小さくなる。好ましくは数平均分子量2,500?3,500で少なくとも3官能以上のポリオールを一部もしくは全部用いる。」
オ 「【0038】
本発明に用いられる粘着剤は、ポリウレタンポリオール(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、炭素数が10?30である脂肪酸エステル(C)を必須成分として含有するものであり、3成分の合計100重量%中にポリウレタンポリオール(A)を50?95重量%、多官能イソシアネート化合物(B)を0.5?20重量%、炭素数が10?30である脂肪酸エステル(C)を0.5?50重量%含有することが好ましく、ポリウレタンポリオール(A)を65?85重量%、多官能イソシアネート化合物(B)を10?15重量%、炭素数が10?30である脂肪酸エステル(C)を5?25重量%含有することがより好ましい。多官能イソシアネート化合物(B)が、0.5重量%未満では粘着剤としての凝集力が低下し、20重量%越えると粘着力が低下する。また、炭素数が10?30である脂肪酸エステル(C)が、0.5重量%未満では脂肪酸エステルを添加する効果がほとんど現れず、50重量%を越えると、粘着剤の主剤たるポリウレタンポリオール(A)が相対的に少なくなる結果、粘着剤の凝集力が不足し再剥離性が悪化する。
・・・
【0040】
本発明の粘着テープは、上記ウレタン粘着剤を基材に塗布してなるものである。」
カ 「【0046】
(合成例1)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにポリエステルポリオールP-1010(2官能ポリエステルポリオール、OH価112、分子量1,000、クラレ株式会社製)81重量部、ポリエーテルポリオールG-3000B(3官能ポリエーテルポリオール、OH価56、分子量3,000、旭電化株式会社製)101g、ヘキサメチレンジイソシアネート(住友バイエル株式会社製)19重量部、トルエン134重量部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.05重量部、2-エチルヘキサン酸錫0.02重量部を仕込み、90℃まで徐々に昇温し2時間反応を行う。IRで残存イソシアネート基の消滅を確認した上で冷却し反応を終了することでポリウレタンポリオール溶液を得た。このポリウレタンポリオール溶液は無色透明で不揮発分60%、粘度3,300cps、Mn(数平均分子量)=15,500、Mw(重量平均分子量)=46,000であった。分子量測定に関しては、島津製作所製Prominenceを用いて実施した(カラム;TOSOH製TSKgelGMH×2本連結、検出器;RID-10A、溶媒;THF、流速;1ml/分)。」
キ 「【0047】
(実施例1)
合成例1で合成したポリウレタンポリオール溶液100重量部に対して、炭素数10?30である脂肪酸エステル(C)としてパルミチン酸イソプロピル(IPP)を8.3重量部と、イソシアネート基を有する化合物(B)としてヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体75重量%酢酸エチル溶液を16.7重量部とを配合し、粘着剤を得た。
得られた粘着剤を剥離紙に乾燥塗膜25μmになるように塗工し、100℃-2分乾燥させ、ポリエチレンテレフタレートフィルム(膜厚50μm)を貼着した。塗工後室温で1週間経過させ、試験用粘着シートを得た。該粘着シートを用いて、以下に示す方法に従って、粘着力、再剥離性、濡れ広がり性、泡抜け性の試験をした。
【0048】
<粘着力>
得られた試験用粘着シートの剥離紙を剥がし、露出した粘着剤層を厚さ0.4mmのステンレス板(SUS304)に23℃-50%RH雰囲気下で貼着し、2kgのローラーを1往復させる方式で圧着し、圧着後24時間以上放置し、ショッパー型剥離試験器にて剥離強度(180度ピール、引っ張り速度300mm/分;単位g/25mm幅)を測定した。
【0049】
<再剥離性>
得られた試験用粘着シートの剥離紙を剥がし、露出した粘着剤層をガラス板に貼着した後、40℃-80%RHの条件下に24時間放置した。その後、23℃-50%RHに取り出し30分間放置した後、再剥離性を目視で評価した。
評価基準は以下のとおりである。
◎:ガラス板への粘着剤層移行の全くないもの
○:ガラス板への粘着剤層移行がごくわずかにあるもの
△:ガラス板への粘着剤層移行が部分的にあるもの
×:ガラス板への粘着剤層移行が完全に移行しているもの
【0050】
<濡れ広がり性>
得られた試験用粘着シートを、10cm×15cmの長方形に切り取る。次いで剥離紙を剥がし、粘着シートの両端を手で持ちながら露出した粘着剤層の中心部をガラス板に接触させた後、手を離し、自重で粘着剤層全体がガラス板に貼着するまでの秒数を測定することにより、濡れ広がり状態を評価した。評価基準は
以下のとおりとした。
◎:粘着剤層全体がガラス板に密着するまでに要した時間が、3秒未満のもの○:粘着剤層全体がガラス板に密着するまでに要した時間が、3秒以上?5秒未満のもの
△:粘着剤層全体がガラス板に密着するまでに要した時間が、5秒以上のもの
×:粘着剤層全体がほとんどガラス板に密着していかないもの
【0051】
<泡抜け性>
得られた試験用粘着シートを、10cm×15cmの長方形に切り取る。次いで剥離紙を剥がし、ガラス板にわざと気泡を挟みこむように貼り付ける。挟み込んだ気泡を指で押し広げ、気泡の抜け具合を評価した。評価基準は以下のとおりとした。
◎:気泡を指で簡単に押し広げられるもの
○:気泡を指でやや強く擦ると押し広げられるもの
△:気泡を指で強く擦ると押し広げられるもの
×:気泡を指で押し広げることが困難なもの
・・・
【0058】
【表1】


(2)甲2には次の記載がある。
ア 「【請求項1】
ウレタン系樹脂と、該ウレタン系樹脂100質量部に対し、20℃で液体であるイオン性化合物0.0001?100質量部を含有することを特徴とする接着剤。
【請求項2】
前記ウレタン系樹脂が、3価以上のポリオールを含むポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)を少なくとも反応させてなるウレタン樹脂を含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記ウレタン系樹脂が、3価以上のポリオールを含むポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)、及びモノアミノポリオール(c)を少なくとも反応させてなるウレタンウレア樹脂を含む、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項4】
感圧性であることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項5】
更にポリイソシアネート硬化剤を含む、請求項1?4のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項6】
請求項5に記載の接着剤を硬化させてなる、接着剤硬化物。
【請求項7】
基材と、該基材上に請求項1?5のいずれか1項に記載の接着剤又は請求項6に記載の接着剤硬化物からなる接着層を有してなる積層体。
【請求項8】
接着層表面の固有抵抗が10^(5)Ω以上10^(11)Ω以下である請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
接着層に対し10kVの電圧を2分間印加したとき、印加停止直後の帯電圧が2.0kV以下で、かつ印加停止1分後の帯電圧が0.5kV以下である、請求項7又は8に記載の積層体。
【請求項10】
保護フィルムとして使用される、請求項7?9のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
3価以上のポリオールを含むポリオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させてイソシアネート末端を有するウレタンプレポリマーを得た後、該ウレタンプレポリマーをモノアミノポリオール(c)と反応させて、末端にヒドロキシル基を有するウレタンウレア樹脂とした後、20℃で液体であるイオン性化合物を加えることを特徴とする、接着剤の製造方法。」
イ 「【0002】
近年、再剥離、再貼付可能であることを特徴とした感圧性接着剤(以下、粘着剤と称することがある。)の開発が活発になされており、なかでも物品の表面保護フィルム用粘着剤は成長する情報電子機器、自動車分野においても非常に注目すべき技術分野である。
感圧性接着剤(粘着剤)として用いられる樹脂は、アクリル樹脂、ゴム系樹脂に大別される。アクリル樹脂は粘着特性に優れ、広範な用途に用いられている。しかし、再剥離性が不十分なため、被着体への糊残りの問題が指摘されている。ゴム系樹脂は、粘着特性を制御するために可塑剤などの低分子量成分の添加が必要であり、これが経時とともにブリードするため著しい性能低下を引き起こす。その他にも、近年、粘着剤に求められている性能としては、再剥離性、透明性、均一性、粘着力の剥離速度依存性低減、粘着力の経時変化(重粘着力化)抑制などがある。
【0003】
ウレタン系樹脂(ウレタン樹脂及びウレタンウレア樹脂を含む。)は、主成分としてポリオール成分とポリイソシアネート成分を含み、その分子設計の容易さやウレタン基の高い凝集力を利用して、新たな粘着剤材料として用いられ始めている。例えば特許文献1では、ヒドロキシル基を有する特定の鎖延長剤を用いることによって側鎖に化学的架橋点としてのヒドロキシル基を導入したウレタンウレア樹脂が開示されている。特許文献2ではウレタン樹脂とセルロース系樹脂を混合することにより粘着力の剥離速度依存性と経時変化を抑制する方法が開示されている。
【0004】
ところで、前述の情報電子機器、自動車分野で用いられる保護フィルムにおいては、剥離の際の帯電(剥離帯電)が工程上大きな問題となっており、高い帯電防止性能を有する保護フィルムが求められている。
樹脂用帯電防止剤として現在多く利用されている界面活性剤は、混合した界面活性剤が樹脂表面にブリードアウトして水和層を形成し、それが表面帯電を除電する。特許文献3では2液架橋型のアクリル系粘着剤に界面活性剤を添加することにより被着物からの剥離帯電を抑制する方法が開示されている。しかし粘着剤においてこの機構は、被着体汚染などの欠点を内包しており、さらに界面活性剤を大量に添加しなければ帯電防止性能が発現しないという問題がある。
【0005】
またウレタン系粘着剤に界面活性剤を添加する場合、ウレタン分子の高い極性による界面活性剤との相溶性の悪さも問題点として挙げられる。
・・・」
ウ 「【0006】
本発明は上記実状に鑑みなされたものであり、表面凹凸にも追従する柔軟な塗膜を有しつつも、接着力の剥離速度依存性が低く、経時変化が抑制されたウレタン系接着剤であり、かつ高い帯電防止性能と均一透明性を兼ね備えた接着剤と、それを塗布し硬化した積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ウレタン系樹脂の高い極性に着目し、室温で液体であるイオン性化合物(イオン性液体)をウレタン系樹脂に配合することにより上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、ウレタン系樹脂と、該ウレタン系樹脂100質量部に対し、20℃で液体であるイオン性化合物0.0001?100質量部を含有する接着剤に関する。」
エ 「【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、優れた粘着性能と帯電防止性と透明性を両立するウレタン系接着剤を提供できる利点がある。基材にこの接着剤を塗布した積層体は帯電防止性と透明性を兼ね備えるので、情報電子機器、自動車分野を始め各種ディスプレイや偏光板など光学部材を含む広い用途の表面保護フィルムとして使用できる利点がある。
また本発明のウレタン系接着剤は再剥離性など優れた粘着性能と帯電防止性を有するので、高速剥離性が求められる分野の軽粘着剤としても使用できる利点がある。」
オ「【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の接着剤は、ウレタン系樹脂を主成分とする接着剤であって、ウレタン系樹脂100質量部に対し、20℃で液体であるイオン性化合物0.0001?100質量部を含有する。本発明者らの検討によれば、ウレタン系樹脂は分子構造に起因する高い極性を有するので、20℃で液体であるイオン性化合物(以下、イオン性液体と称することがある。)との相溶性が高く、イオン性液体を添加したウレタン系接着剤は均一で透明性に優れることが分かった。またこの接着剤は高い接着性と帯電防止性を備えることが分かった。これはイオン性化合物が液状であるため接着剤内で固定されにくく、接着層表面に出やすいため帯電防止性能が発現されやすいと考えられる。
【0022】
なお本明細書において、ウレタン系樹脂とはウレタン樹脂とウレタンウレア樹脂を含む概念である。ウレタン系樹脂を主成分とするとは、接着剤中に最も多量に含まれるものがウレタン系樹脂であることを言う。また「接着剤」の用語は最も広義に解釈され、「粘着剤」は、「感圧性接着剤」として「接着剤」の意義に含まれるものと解釈されるべきである。
【0023】
本発明で用いるイオン性化合物は20℃で液体であるものとする。イオン性化合物とはイオン(アニオン及びカチオン)で構成される塩であり、20℃で液体であるとは少なくとも20℃において固体もしくは気体ではない、あるいは固形物を含有しないことを意味する。
このようなイオン性化合物としては種類は特に限定されないが、例えばオニウム塩が好ましく挙げられる。オニウム塩とは化学結合に関与しない電子対を有する化合物が、該電子対によって他の陽イオン型の化合物と配位結合して生ずる化合物を言う。なかでも帯電防止性と入手しやすさの点で含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、及び含リンオニウム塩が好ましく用いられる。特に優れた帯電防止性能が得られる理由から、含窒素オニウム塩がより好ましく用いられる。
・・・
【0025】
含窒素オニウム塩のアニオン成分としては、20℃で液体であることを満足するものであれば特に限定されず、例えばCl^(-)、Br^(-)、I^(-)、AlCl_(4 )^(-)、Al_(2)Cl_(7)^(-)、BF_(4)^(-)、PF_(6)^(-)、ClO_(4)^(-)、NO_(3)^(-)、CH_(3)COO^(-)、CF_(3)COO^(-)、CH_(3)SO_(3)^(-)、CF_(3)SO_(3)^(-)、(CF_(3)SO_(2))_(2)N^(-)、(CF_(3)SO_(2))_(3)C^(-)、AsF_(6)^(-)、SbF_(6)^(-)、NbF_(6)^(-)、TaF_(6)^(-)、F(HF)_(n)^(-)、(CN)_(2)N^(-)、C_(4)F_(9)SO_(3)^(-)、(C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)N^(-)、C_(3)F_(7)COO^(-)、(CF_(3)SO_(2))(CF_(3)CO)N^(-)などが用いられる。なかでもフッ素原子を含むアニオン成分は、低融点のイオン性化合物が得られやすいことから特に好ましく用いられる。」
カ「【0095】
・・・更に、後述するポリイソシアネート硬化剤混合後のポットライフ延長剤として、触媒(d)のブロック剤(e)を含んでいてもよい。ブロック剤(e)の好ましい配合量は、用いる材料によって変動するが、一般的には、触媒(d)のモル数の10倍以上が好ましく、また1000倍以下が好ましい。更に好ましくは50倍以上であり、また500倍以下である。ブロック剤(e)として作用する物質には、触媒の中心金属と錯体を形成して反応性空軌道を塞ぐキレート化合物や、不可逆的な触媒毒として作用する硫黄系の化合物等がある。中でもブロック作用が可逆的であり、触媒活性の再生が可能であることからキレート化合物が好ましく用いられる。キレート化合物としては、アセチルアセトン、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオンのような1,3-ジケトン化合物、アセト酢酸アルキルエステルのような3-ケトエステル化合物、マロン酸ジアルキルのようなマロン酸ジアルキル化合物、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミンのようなポリアミン化合物、クラウンエーテル類のようなポリエーテル化合物等が挙げられる。中でも、有機溶剤への溶解性や、必要に応じて除去が可能な沸点を有していることから、アセチルアセトンが特に好ましい。」
キ 「【0112】
以下、本発明を実施例を用いて更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例により限定されるものではない。
[接着剤の調製]
表-1に示す配合で、主剤(E)の溶液とイオン性化合物(A)を混合後、1時間、十分に攪拌した後、硬化剤(F)を添加しさらに1時間、均一になるまで攪拌した。必要に応じて溶剤で希釈し、塗工液の粘度を500?3000mPa・s(25℃)になるようにして感圧性接着剤を調製した。
【0113】
ただしC-14は、主剤溶液に帯電防止剤X-1を混合したところ相溶せず白濁した。またC-15は、主剤溶液に帯電防止剤X-2を混合したところ直ちに黄色の固形物が析出した。またC-16は、主剤溶液に帯電防止剤X-3を混合したところ溶解しなかった。
【0114】
【表1】


(2)甲2には次の記載がある。
ア 「【請求項1】
ウレタン系樹脂と、該ウレタン系樹脂100質量部に対し、20℃で液体であるイオン性化合物0.0001?100質量部を含有することを特徴とする接着剤。
【請求項2】
前記ウレタン系樹脂が、3価以上のポリオールを含むポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)を少なくとも反応させてなるウレタン樹脂を含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記ウレタン系樹脂が、3価以上のポリオールを含むポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)、及びモノアミノポリオール(c)を少なくとも反応させてなるウレタンウレア樹脂を含む、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項4】
感圧性であることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項5】
更にポリイソシアネート硬化剤を含む、請求項1?4のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項6】
請求項5に記載の接着剤を硬化させてなる、接着剤硬化物。
【請求項7】
基材と、該基材上に請求項1?5のいずれか1項に記載の接着剤又は請求項6に記載の接着剤硬化物からなる接着層を有してなる積層体。
【請求項8】
接着層表面の固有抵抗が10^(5)Ω以上10^(11)Ω以下である請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
接着層に対し10kVの電圧を2分間印加したとき、印加停止直後の帯電圧が2.0kV以下で、かつ印加停止1分後の帯電圧が0.5kV以下である、請求項7又は8に記載の積層体。
【請求項10】
保護フィルムとして使用される、請求項7?9のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
3価以上のポリオールを含むポリオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させてイソシアネート末端を有するウレタンプレポリマーを得た後、該ウレタンプレポリマーをモノアミノポリオール(c)と反応させて、末端にヒドロキシル基を有するウレタンウレア樹脂とした後、20℃で液体であるイオン性化合物を加えることを特徴とする、接着剤の製造方法。」
イ 「【0002】
近年、再剥離、再貼付可能であることを特徴とした感圧性接着剤(以下、粘着剤と称することがある。)の開発が活発になされており、なかでも物品の表面保護フィルム用粘着剤は成長する情報電子機器、自動車分野においても非常に注目すべき技術分野である。
感圧性接着剤(粘着剤)として用いられる樹脂は、アクリル樹脂、ゴム系樹脂に大別される。アクリル樹脂は粘着特性に優れ、広範な用途に用いられている。しかし、再剥離性が不十分なため、被着体への糊残りの問題が指摘されている。ゴム系樹脂は、粘着特性を制御するために可塑剤などの低分子量成分の添加が必要であり、これが経時とともにブリードするため著しい性能低下を引き起こす。その他にも、近年、粘着剤に求められている性能としては、再剥離性、透明性、均一性、粘着力の剥離速度依存性低減、粘着力の経時変化(重粘着力化)抑制などがある。
【0003】
ウレタン系樹脂(ウレタン樹脂及びウレタンウレア樹脂を含む。)は、主成分としてポリオール成分とポリイソシアネート成分を含み、その分子設計の容易さやウレタン基の高い凝集力を利用して、新たな粘着剤材料として用いられ始めている。例えば特許文献1では、ヒドロキシル基を有する特定の鎖延長剤を用いることによって側鎖に化学的架橋点としてのヒドロキシル基を導入したウレタンウレア樹脂が開示されている。特許文献2ではウレタン樹脂とセルロース系樹脂を混合することにより粘着力の剥離速度依存性と経時変化を抑制する方法が開示されている。
【0004】
ところで、前述の情報電子機器、自動車分野で用いられる保護フィルムにおいては、剥離の際の帯電(剥離帯電)が工程上大きな問題となっており、高い帯電防止性能を有する保護フィルムが求められている。
樹脂用帯電防止剤として現在多く利用されている界面活性剤は、混合した界面活性剤が樹脂表面にブリードアウトして水和層を形成し、それが表面帯電を除電する。特許文献3では2液架橋型のアクリル系粘着剤に界面活性剤を添加することにより被着物からの剥離帯電を抑制する方法が開示されている。しかし粘着剤においてこの機構は、被着体汚染などの欠点を内包しており、さらに界面活性剤を大量に添加しなければ帯電防止性能が発現しないという問題がある。
【0005】
またウレタン系粘着剤に界面活性剤を添加する場合、ウレタン分子の高い極性による界面活性剤との相溶性の悪さも問題点として挙げられる。
・・・」
ウ 「【0006】
本発明は上記実状に鑑みなされたものであり、表面凹凸にも追従する柔軟な塗膜を有しつつも、接着力の剥離速度依存性が低く、経時変化が抑制されたウレタン系接着剤であり、かつ高い帯電防止性能と均一透明性を兼ね備えた接着剤と、それを塗布し硬化した積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ウレタン系樹脂の高い極性に着目し、室温で液体であるイオン性化合物(イオン性液体)をウレタン系樹脂に配合することにより上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、ウレタン系樹脂と、該ウレタン系樹脂100質量部に対し、20℃で液体であるイオン性化合物0.0001?100質量部を含有する接着剤に関する。」
エ 「【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、優れた粘着性能と帯電防止性と透明性を両立するウレタン系接着剤を提供できる利点がある。基材にこの接着剤を塗布した積層体は帯電防止性と透明性を兼ね備えるので、情報電子機器、自動車分野を始め各種ディスプレイや偏光板など光学部材を含む広い用途の表面保護フィルムとして使用できる利点がある。
また本発明のウレタン系接着剤は再剥離性など優れた粘着性能と帯電防止性を有するので、高速剥離性が求められる分野の軽粘着剤としても使用できる利点がある。」
オ「【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の接着剤は、ウレタン系樹脂を主成分とする接着剤であって、ウレタン系樹脂100質量部に対し、20℃で液体であるイオン性化合物0.0001?100質量部を含有する。本発明者らの検討によれば、ウレタン系樹脂は分子構造に起因する高い極性を有するので、20℃で液体であるイオン性化合物(以下、イオン性液体と称することがある。)との相溶性が高く、イオン性液体を添加したウレタン系接着剤は均一で透明性に優れることが分かった。またこの接着剤は高い接着性と帯電防止性を備えることが分かった。これはイオン性化合物が液状であるため接着剤内で固定されにくく、接着層表面に出やすいため帯電防止性能が発現されやすいと考えられる。
【0022】
なお本明細書において、ウレタン系樹脂とはウレタン樹脂とウレタンウレア樹脂を含む概念である。ウレタン系樹脂を主成分とするとは、接着剤中に最も多量に含まれるものがウレタン系樹脂であることを言う。また「接着剤」の用語は最も広義に解釈され、「粘着剤」は、「感圧性接着剤」として「接着剤」の意義に含まれるものと解釈されるべきである。
【0023】
本発明で用いるイオン性化合物は20℃で液体であるものとする。イオン性化合物とはイオン(アニオン及びカチオン)で構成される塩であり、20℃で液体であるとは少なくとも20℃において固体もしくは気体ではない、あるいは固形物を含有しないことを意味する。
このようなイオン性化合物としては種類は特に限定されないが、例えばオニウム塩が好ましく挙げられる。オニウム塩とは化学結合に関与しない電子対を有する化合物が、該電子対によって他の陽イオン型の化合物と配位結合して生ずる化合物を言う。なかでも帯電防止性と入手しやすさの点で含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、及び含リンオニウム塩が好ましく用いられる。特に優れた帯電防止性能が得られる理由から、含窒素オニウム塩がより好ましく用いられる。
・・・
【0025】
含窒素オニウム塩のアニオン成分としては、20℃で液体であることを満足するものであれば特に限定されず、例えばCl^(-)、Br^(-)、I^(-)、AlCl_(4 )^(-)、Al_(2)Cl_(7)^(-)、BF_(4)^(-)、PF_(6)^(-)、ClO_(4)^(-)、NO_(3)^(-)、CH_(3)COO^(-)、CF_(3)COO^(-)、CH_(3)SO_(3)^(-)、CF_(3)SO_(3)^(-)、(CF_(3)SO_(2))_(2)N^(-)、(CF_(3)SO_(2))_(3)C^(-)、AsF_(6)^(-)、SbF_(6)^(-)、NbF_(6)^(-)、TaF_(6)^(-)、F(HF)_(n)^(-)、(CN)_(2)N^(-)、C_(4)F_(9)SO_(3)^(-)、(C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)N^(-)、C_(3)F_(7)COO^(-)、(CF_(3)SO_(2))(CF_(3)CO)N^(-)などが用いられる。なかでもフッ素原子を含むアニオン成分は、低融点のイオン性化合物が得られやすいことから特に好ましく用いられる。」
カ 「【0095】
・・・更に、後述するポリイソシアネート硬化剤混合後のポットライフ延長剤として、触媒(d)のブロック剤(e)を含んでいてもよい。ブロック剤(e)の好ましい配合量は、用いる材料によって変動するが、一般的には、触媒(d)のモル数の10倍以上が好ましく、また1000倍以下が好ましい。更に好ましくは50倍以上であり、また500倍以下である。ブロック剤(e)として作用する物質には、触媒の中心金属と錯体を形成して反応性空軌道を塞ぐキレート化合物や、不可逆的な触媒毒として作用する硫黄系の化合物等がある。中でもブロック作用が可逆的であり、触媒活性の再生が可能であることからキレート化合物が好ましく用いられる。キレート化合物としては、アセチルアセトン、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオンのような1,3-ジケトン化合物、アセト酢酸アルキルエステルのような3-ケトエステル化合物、マロン酸ジアルキルのようなマロン酸ジアルキル化合物、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミンのようなポリアミン化合物、クラウンエーテル類のようなポリエーテル化合物等が挙げられる。中でも、有機溶剤への溶解性や、必要に応じて除去が可能な沸点を有していることから、アセチルアセトンが特に好ましい。」
キ 「【0112】
以下、本発明を実施例を用いて更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例により限定されるものではない。
[接着剤の調製]
表-1に示す配合で、主剤(E)の溶液とイオン性化合物(A)を混合後、1時間、十分に攪拌した後、硬化剤(F)を添加しさらに1時間、均一になるまで攪拌した。必要に応じて溶剤で希釈し、塗工液の粘度を500?3000mPa・s(25℃)になるようにして感圧性接着剤を調製した。
【0113】
ただしC-14は、主剤溶液に帯電防止剤X-1を混合したところ相溶せず白濁した。またC-15は、主剤溶液に帯電防止剤X-2を混合したところ直ちに黄色の固形物が析出した。またC-16は、主剤溶液に帯電防止剤X-3を混合したところ溶解しなかった。
【0114】
【表1】


ク 「【0115】
なお表中、主剤(E)と硬化剤(F)の質量部は固形分の質量部である。
(1)主剤(E)
E-1:攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計及び滴下漏斗を備え、摺り合わせ部をテフロン(登録商標)リングでシールした4口のセパラブルフラスコに、ジオールである2官能ポリプロピレングリコール(第一工業製薬株式会社製「ハイルーブD-660」)267.9g、トリオールである3官能ポリプロピレングリコール(第一工業製薬株式会社製「ポリハードナーT-500」)148.8g、ポリイソシアネートであるイソホロンジイシソアネート(デグサジャパン株式会社製)59.5g、トルエン36.2g、触媒としてジオクチルスズジラウレート(日東化成株式会社製「ネオスタンU-810」)0.05mgを仕込み、90℃まで徐々に昇温して2時間反応を行った。イソシアネート価を確認した後に、トルエン400gを加え、60℃まで冷却し、モノアミノポリオールであるジイソプロパノールアミンの50質量%トルエン溶液47.6gを30分かけて滴下し、トルエン40gで滴下漏斗内を洗浄した。次いでネオスタンU-810を200mg追加し、よく攪拌して全体を均一としてから100℃まで昇温し、3時間加熱した。赤外吸収スペクトル(IR)で、2270cm^(-1)付近の吸収極大が消失したことから、イソシアネート基が完全に消費されたことを確認して加熱を終了し、60℃以下になったところでアセチルアセトン3.365gを添加し、よく攪拌し、本発明のウレタンウレア組成物を得た。この溶液は無色透明で、固形分50質量%であった。これを主剤(E-1)とする。
【0116】
主剤(E-1)の合成において、ジオール/トリオールのモル比は75/25であり、ウレタンプレポリマー(D)に含まれるイソシアネート基に対するモノアミノポリオール(c)のモル比(R)は0.667であった。
E-2:ウレタン樹脂系感圧性接着剤(東洋インキ製造製「サイアバインSH101」)。溶剤を除く固形分は60質量%であった。
【0117】
(2)硬化剤(F)
F-1:脂肪族系多官能イソシアネート(旭化成ケミカル製「デュラネートD-101」)。固形分は100質量%であった。主剤(E-1)の末端ヒドロキシル基に対する硬化剤(F-1)のイソシアネート基のモル比はNCO/OH=1.3であった。
F-2:脂肪族系多官能イソシアネート(東洋インキ製造製「サイアバインT-501B」)。固形分は75質量%であった。
【0118】
(3)イオン性化合物(A)
A-1:脂環式アンモニウム系イオン性液体(1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、アルドリッチ製)。20℃で液体であった。
A-2:脂肪族アンモニウム系イオン性液体(トリオクチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、東京化成工業製)。20℃で液体であった。
A-3:ピリジニウム系イオン性液体(広栄化学工業製「IL-P14」)。20℃で液体であった。
【0119】
(4)その他の帯電防止剤
X-1:ポリオキシエチレン系帯電防止剤(花王製、「アミート302」)
X-2:特殊カルボン酸重合体帯電防止剤(花王製、「ホモゲノールL-1820」)
X-3:過塩素酸リチウム(アルドリッチ製)。20℃で固体である。」
ケ 「【0120】
[実施例1?12、比較例1?4]
感圧性接着剤C-1?C-16を、基材であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製「T100-38」、幅280mm、厚み38μm)上に、アプリケータもしくはバーコータで塗工し、120℃で1分間、セーフベンオーブンにて乾燥し、接着層を片面に有する粘着シートを作成した。この粘着シートの接着層面に離型フィルムであるシリコンセパレータ(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製「MRF-25」、幅270mm、厚み25μm)を貼り合わせ、40℃で3日間養生した。得られた評価サンプルについて後述する評価方法に従って粘着層厚み、光学特性、帯電圧を評価した。結果を表-2に示す。
【0121】
また該接着剤C-1?C-16を、塗布厚みを変えた以外は同様にPETフィルムに塗工し離型フィルムを貼り合わせ同様にして評価サンプルを得た。このサンプルについて粘着層厚み、表面固有抵抗を評価した。結果を表-2に示す。 ただしC-14を用いた比較例2については、接着剤をPETフィルムに塗布したところ白色の固形物が析出した。また養生後も硬化が完全には進行せず、以後の評価は不可能であった。
【0122】
またC-15を用いた比較例3については、接着剤をPETフィルムに塗布したところフィルム上に黄色の固形物が残った。また続く評価においてもSUS板などへの貼付、剥離後に多くの糊残りが観察され、評価不可能であった。
またC-16を用いた比較例4については、帯電防止剤X-3が溶解せずPETフィルムへの塗工は不可能であった。
【0123】
【表2】


コ 「【0140】
以上、実施例1?12からも明らかなように、本発明に関わるイオン性化合物を添加したウレタン系接着剤は優れた帯電防止性能を発現し、また光学的にも均一な透明性を有する。特にその除電の早さは従来の界面活性剤系帯電防止剤を添加した接着剤には見られない優れた特性である。更に、実施例13?30からも明らかなように、本発明に関わるイオン性化合物を添加したウレタン系接着剤は、塗工性、再剥離性、透明性、均一性に優れている。」
(3)甲3には次の記載がある。
ア 「【請求項1】
ポリウレタンが、少なくとも次の出発物質の化学反応生成物を含むことを特徴とする、ポリウレタンをベースとする感圧接着剤:
a)少なくとも一種の脂肪族または脂環式ジイソシアネート、及び3又は3より大きいイソシアネート官能価を有する少なくとも一種の脂肪族または脂環式ポリイソシアネートを含み、3又は3より大きいイソシアネート官能価を有する脂肪族または脂環式ポリイソシアネートの、ポリイソシアネートの割合としての物質量分率が、少なくとも18%である、ポリイソシアネート、及びb)感圧接着性のヒドロキシル官能化ポリウレタンプレポリマーの少なくとも一種。
・・・
【請求項5】
請求項1に記載のポリイソシアネート中のイソシアネート基の総数と、前記感圧接着性のヒドロキシル官能化ポリウレタンプレポリマー中のイソシアネート基の反応に利用できるヒドロキシル基の総数との比が、0.9?5.0の範囲内であることを特徴とする、請求項1?4のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
・・・
【請求項10】
請求項1?9のいずれか一つに記載の感圧接着剤を少なくとも一種含む接着テープ。
【請求項11】
少なくとも次の出発物質を反応させることを特徴とする、請求項1?10のいずれか一つに記載の感圧接着剤を調製する方法:
a)少なくとも一種の脂肪族または脂環式ジイソシアネート、及び3又は3より大きいイソシアネート官能価を有する少なくとも一種の脂肪族または脂環式ポリイソシアネートを含み、3又は3より大きいイソシアネート官能価を有する脂肪族または脂環式ポリイソシアネートの、ポリイソシアネートの割合としての物質量分率が、少なくとも18%である、ポリイソシアネート、及び
b)感圧接着性のヒドロキシル官能化ポリウレタンプレポリマーの少なくとも一種。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンをベースとする感圧接着剤(PSA)に関し、また、該PSAをベースとする感圧接着剤層および接着テープ、接着テープにおける感圧接着剤層、支持体層または機能層としての該PSAの使用、ならびに該PSAを製造するための方法にも関する。」
ウ 「【0117】
当業者にとって驚くべきことに、さらには予想不可能なことに、本発明による感圧接着性のヒドロキシル官能化ポリウレタンプレポリマーに分枝が存在し、本発明のポリイソシアネートとの反応の後に高度に架橋したポリマー構造の形成をもたらすときにおいても、PSA用途に十分である程度まで流動性である成分が、特に有利なことに同時に製造される。これは、本発明による感圧接着性のヒドロキシル官能化ポリウレタンプレポリマーと本発明によるポリイソシアネートとの反応が約1.0のNCO/OH比で行われるときにおいても、特に当てはまる。また、NCO/OH比がより高いと、PSA用途に関して有利な粘弾性特性をもたらす。ここで、NCO/OH比は、感圧接着性のヒドロキシル官能化ポリウレタンプレポリマー中のイソシアネート基との反応に利用できるヒドロキシル基の総数に対する、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総数の比を意味する。本明細書において、このNCO/OH比はまた、「NCO/OHポリイソシアネート:プレポリマー」としても特定される。この比は、本発明の感圧接着剤の製造過程そのときまでは含まれていた全てのNCO基およびOH基、したがってプレポリマーを調製するのに含まれたポリオールのOH基を含めた、NCO/OH比とは区別されるべきである。後者のNCO/OH比は、「NCO/OH合計」として本明細書において特定される。」
エ 「【0201】
PSAを調製するために、アセトン溶液中のプレポリマーを室温でポリイソシアネート混合物(例2aおよび2b)と混合した。それぞれの混合比を表13に列挙する。調製の過程のそのときまで収容されていた全てのNCO基およびOH基のNCO/OH比(表および以下において「NCO/OH合計」によって特定する)は各場合において1.05であった。初めに存在したOH基の大部分は既に反応によって消費されて、プレポリマーを形成した。表10に列挙した重量分率を基づいて、ポリイソシアネートとの反応に利用できるOHはさらに13.0mmolであった。感圧接着性のヒドロキシル官能化ポリウレタンプレポリマー中のイソシアネート基との反応に利用できるヒドロキシル基の総数に対する、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総数の比は、常に2.0であった。このNCO/OH比を表13および以下において「NCO/OHポリイソシアネート:プレポリマー」と称する。混合物を25μm厚のポリエステルフィルム上にコーティングした。溶媒を70℃で蒸発させた。これにより、ポリエステルフィルム上に50μmの層を与え、記載した試験方法を用いてこれを特徴づけた。」
オ 「【0208】
【表13】

表13:ポリイソシアネート混合物:プレポリマー混合比」
(4)甲4には次の記載がある。
ア 「【請求項1】
3-メチル-1,5-ペンタンジオール(a1)と官能基数が3以上の多価アルコール(a2)とを必須に含むポリオール成分と、ダイマー酸(b)を必須に含むポリカルボン酸成分とを反応して得られるポリエステルポリオール(A)を含むポリエステルポリオール組成物であって、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(a1)の使用量が、全ポリオール成分の合計モル数に対して、10モル%以上であり、且つ、前記ポリエステルポリオール(A)の平均官能基数が2.05?3.00の範囲であることを特徴とするワンショット成形用ポリエステルポリオール組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオール(A)において、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(a1)と官能基数が3以上の多価アルコール(a2)とのモル比が、(a1)/(a2)=70/30?99/1の範囲である請求項1記載のワンショット成形用ポリエステルポリオール組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオール(A)において、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(a1)の使用量が、全ポリオール成分の合計モル数に対して、50モル%以上である請求項1記載のワンショット成形用ポリエステルポリオール組成物。
【請求項4】
請求項1?3の何れかに記載のワンショット成形用ポリエステルポリオール組成物とポリイソシアネート(B)とを必須に反応して得られることを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。」
イ 「【0011】
ところで、ポリウレタン樹脂組成物の成形方法には、一般に、プレポリマー成形とワンショット成形の2通りの方法がある。
【0012】
プレポリマー成形は、予め、ポリイソシアネートとポリオール〔例えば、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(3MPD)とダイマー酸との反応物〕とを反応(第1ステップ反応)させてプレポリマーとした後、次いで、前記プレポリマーと鎖伸長剤〔例えば、トリメチロールプロパン(TMP)〕とを反応(第2ステップ反応)させる二段反応であって、この場合、ポリマー分子中のTMP単位の周辺は主としてウレタン結合になる。
【0013】
これに対して、ワンショット成形は、ポリイソシアネートとポリオール〔例えば、3MPDとTMPとダイマー酸との反応物〕との一段反応であって、この場合、ポリマー分子中のTMP単位の周辺は主としてエステル結合になる。
【0014】
このように、プレポリマー成形とワンショット成形では、原料組成が同じであっても、最終的に得られるポリウレタン樹脂の微細構造が全く異なるために、ポリウレタン樹脂組成物の性能が相違する。」
ウ 「【0061】
<ポリエステルポリオール(A1)?(A9)の合成>
〔合成例1〕
2L4つ口フラスコに、ポリオール成分として3-メチル-1,5-ペンタンジオール(3MPD)(a1)216.9部とトリメチロールプロパン(TMP)(a2)12.9部、ポリカルボン酸成分としてダイマー酸(b)831.8部、及び、触媒としてテトラブチルチタネート0.01部仕込み、窒素導入管より窒素ブローしながら220℃で反応させた。
30時間反応後に、酸価0.32、水酸基価60.9、平均官能基数2.20、Mn2018のポリエステルポリオール(A1)を得た。
【0062】
〔合成例2〕
2L4つ口フラスコに、ポリオール成分として3MPD(a1)181.9部とTMP(a2)51.5部、ポリカルボン酸成分としてダイマー酸(b)828.0部、及び、テトラブチルチタネート0.01部仕込み、窒素導入管より窒素ブローしながら220℃で反応させた。
30時間反応後に、酸価0.28、水酸基価76.7、平均官能基数2.78、Mn2025のポリエステルポリオール(A2)を得た。
【0063】
〔合成例3〕
2L4つ口フラスコに、ポリオール成分として3MPD(a1)170.1部とTMP(a2)64.5部、ポリカルボン酸成分としてダイマー酸(b)826.7部、及び、テトラブチルチタネート0.01部仕込み、窒素導入管より窒素ブローしながら220℃で反応させた。
30時間反応後に、酸価0.25、水酸基価81.3、平均官能基数2.98、Mn2048のポリエステルポリオール(A3)を得た。
【0064】
〔合成例4〕
2L4つ口フラスコに、ポリオール成分として3MPD(a1)189.6部とグリセリン(a2)36.0部、ポリカルボン酸成分としてダイマー酸(b)841.6部、及び、テトラブチルチタネート0.01部仕込み、窒素導入管より窒素ブローしながら、220℃で反応させた。
30時間反応後に、酸価0.34、水酸基価78.2、平均官能基数2.81、Mn2010のポリエステルポリオール(A4)を得た。
【0065】
〔合成例5〕
合成例5は必須成分である多価アルコール(a2)を用いず行った合成例である。
2L4つ口フラスコに、ポリオール成分として3MPD(a1)233.2部、ポリカルボン酸成分としてダイマー酸(b)833.1部、及び、テトラブチルチタネート0.01部仕込み、窒素導入管より窒素ブローしながら220℃で反応させた。
30時間反応後に、酸価0.20、水酸基価55.7、平均官能基数2.00、Mn2010のポリエステルポリオール(A5)を得た。
【0066】
〔合成例6〕
2L4つ口フラスコに、ポリオール成分として3MPD(a1)112.7部とTMP(a2)127.8部、ポリカルボン酸成分としてダイマー酸(b)820.4部、及び、テトラブチルチタネート0.01部仕込み、窒素導入管より窒素ブローしながら220℃で反応させた。
30時間反応後に、酸価0.30、水酸基価107.8、平均官能基数3.93、Mn2042のポリエステルポリオール(A6)を得た。
【0067】
〔合成例7〕
2L4つ口フラスコに、ポリオール成分として3MPD(a1)に代えて2-メチル-1,3-プロパンジオール(2MPD)228.5部、ポリカルボン酸成分としてダイマー酸(b)833.2部、及び、テトラブチルチタネート0.01部仕込み、窒素導入管より窒素ブローしながら、220℃で反応させた。
30時間反応後に、酸価0.17、水酸基価55.5、平均官能基数2.00、Mn2020のポリエステルポリオール(A7)を得た。
【0068】
〔合成例8〕
2L4つ口フラスコに、ポリオール成分として3MPD(a1)に代えて2-メチル-1,3-プロパンジオール(2MPD)205.2部とTMP(a2)25.8部、ポリカルボン酸成分としてダイマー酸(b)830.5部、及び、テトラブチルチタネート0.01部仕込み、窒素導入管より窒素ブローしながら
、220℃で反応させた。
30時間反応後に、酸価0.31、水酸基価66.2、平均官能基数2.44、Mn2056のポリエステルポリオール(A8)を得た。
【0069】
〔合成例9〕
2L4つ口フラスコに、ポリオール成分として3MPD(a1)219.0部、ポリカルボン酸成分としてダイマー酸(b)781.0部、及び、テトラブチルチタネート0.01部仕込み、窒素導入管より窒素ブローしながら220℃で反応させた。
30時間反応後に、酸価0.18、水酸基価56.2、平均官能基数2.00、Mn2012のポリエステルポリオール(A9)を得た。」
エ 「【0070】
〔実施例1?4〕及び〔比較例1?4〕
<ワンショット成形による成形品の作成>
実施例1?4及び比較例1?4として、前記合成例1?8で得たポリエステルポリオール(A1)?(A8)を含むワンショット成形用ポリエステルポリオール組成物と、ポリイソシアネート(B)であるハイプロックス1225(クルードMDI、DIC株式会社製)とを、[NCO]/[OH]=1.05モル比の配合比に従い混合攪拌し、夫々、ワンショット成形用ポリウレタン樹脂組成物を混合液として調整し、直径4.0cm×厚み1.2cmの円柱金型に注入した。
次いで、それら金型を熱風乾燥機中、120℃で2時間加熱して樹脂を一次硬化させ、更に110℃で16時間加熱して二次硬化させ、熱硬化性ポリウレタン成形品(円柱体)を作製した。この成形品(円柱体)を上述の試験に供した。
評価結果を第1表及び第2表-1に記載した。
【0071】
第1表の実施例1?4から、本発明のポリウレタン樹脂組成物を用いたワンショット成形品(円柱体)は、適度な柔軟性を有し、且つ、耐水性(耐加水分解性)、反発弾性、圧縮永久歪みに共に優れており、比較例に較べ、物理的な耐久性が求められる用途に対しても展開できることが判る。」
オ 「【0073】
〔比較例5〕
<プレポリマー成形による成形品の作成>
比較例5では、以下の操作に従い、プレポリマー成形にて成形品を作成した。
2L四つ口フラスコに、ポリエステルポリオール(A9)1000部とポリイソシアネート(B)であるハイプロックス1225(クルードMDI、DIC株式会社製)339部とを仕込み、80℃で3時間反応させ、NCO%が4.74のウレタンプレポリマーを得た。
次いで、このウレタンプレポリマーをTMP62.2部と[NCO]/[OH]=1.05になるよう混合攪拌し、ポリウレタン樹脂組成物を混合液として調整し、直径4.0cm×厚み1.2cmの円柱金型に注入した。
次いで、それら金型を熱風乾燥機中、120℃で2時間加熱して樹脂を一次硬化させ、
更に110℃で16時間加熱して二次硬化させ、熱硬化性ポリウレタン成形品(円柱体)を作製した。この成形品(円柱体)を上述の試験に供した。
評価結果を第2表-2に記載した。
【0074】
第2表-2の比較例5は、プレポリマー成形による実験結果である。
比較例5は、実施例2(ワンショット成形用)とポリオール成分のモル比を同様にしてプレポリマー法にて成形評価したものだが、TMPを第2ステップ反応で追加するため、MDI-TMP-MDIのセグメントがより多く形成され、ワンショット成形法と比較して、成形物が硬くなり、反発弾性に劣ることが判る。
【0075】
これに対して、本発明のポリウレタン樹脂組成物を用いたワンショット成形(実施例1?4)では、多価アルコール(a2)であるTMPは既にポリオール鎖にほぼ均一に組み込まれており、MDIで架橋させるだけなので、目的とする適度な柔軟性(即ち、適度な硬度)、反発弾性、圧縮永久歪みをバランスよく得ることができ、しかも優れた耐水性(耐加水分解性)をも具備することができる。
【0076】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、良好な疎水性を維持し耐水性(耐加水分解性)に優れ、適度な柔軟性を有し、且つ、反発弾性と圧縮永久歪みを向上させることができるので、例えば、フォーム、エラストマー、フィルム、接着剤、塗料などの広範囲の用途に用いることができる。」
(5)甲5には次の記載がある。
ア 「本願明細書の段落[0076]でも言及しておりますように、ポリウレタン系樹脂を得る方法として、従来、「ウレタンプレポリマー」を経由させて得る方法が知られています。「ウレタンプレポリマー」は、ポリオールとポリイソシアネートを反応させてポリウレタン系樹脂を得る際に、ポリオールと過剰のポリイソシアネートとを反応条件等を調整して反応させることにより中間体として得られるイソシアネート基末端プレポリマーのことです。ポリウレタン系樹脂の製造原料の一つとして「ウレタンプレポリマー」を用いると、反応時間が短縮できたり、反応条件を温和にできたりするという利点があります。」
イ 「そして、本願請求項1に記載のポリウレタン系樹脂は、本願明細書の段落[0076]でも明確に言及しておりますように、「ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させて得られるポリウレタン系樹脂」であり、拒絶理由通知書においてご認定されているような「ウレタンプレポリマーを硬化させて得られる」ものとは全く異なります。」
(6)甲6には次の記載がある。
ア 1頁製品概要の項
「プレミノールは、特殊な合成技術と重合プロセスの開発により、低モノオールと超高分子量を実現した高機能ポリオールです。
強度と耐久性に優れ、適度な反発とやわらかさを備えた、最先端ウレタンを可能にします。」
イ 1頁特長の項
「プレミノール(PREMINOL)は、AGC独自のポリオール合成技術により開発された高分子量・低副生物ポリエーテルポリオールです。」
(7)甲7には次の記載がある。
ア 「【0097】
さらに、トリメチロールプロパンと、脂肪族ポリイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等)あるいは脂環式ポリイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート等)のアダクトなども好ましく用いられる。トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートからなるアダクトの例を下記構造式(a)に示す。
【0098】
【化7】

【0099】
このような芳香族系ポリイソシアネートと併用する脂肪族系ポリイソシアネートとしては市販品を用いることができる。例えば、上記トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートからなるアダクトとしてスミジュールHT(住化バイエルン社製)が挙げられる。
また、ポリイソシアネートとしては、電荷発生性分子骨格を有するポリイソシアネートあるいは電荷輸送性分子骨格を有するポリイソシアネートなども用いられる。」
イ 「【0334】
・・・ヘキサメチレンジイソシアネートのポリオールアダクト体[スミジュールHT:NCO%=13%、固形分75%;住化バイエルン社製]」
2 甲1に記載された発明を主引用例とした場合の検討
(1)甲1発明の認定
ア NCO基とOH基の当量比について
(ア)前記1(1)カ?キに摘記した甲1の段落【0046】?【0047】に記載された合成例1及び実施例1におけるNCO基及びOH基について検討する。
(イ)ポリウレタンポリオールのOH基過剰量
ポリウレタンポリオールを合成するための原料は次のとおり。
ポリエステルポリオールP-1010(2官能、分子量1000):81重量部
ポリエーテルポリオールG-3000B(3官能、分子量3000)」:101g
ヘキサメチレンジイソシアネート(2官能、分子量168.2:当審調査):19重量部
以下、重量部はgを表すこととして検討する。
プレポリマー中のOH基過剰量(mol/g)は、次のように計算できる。
(81×2/1000+101×3/3000-19×2/168.2)/(81+101+19)=(0.16200+0.10100-0.22592)/201=0.0001845(mol/g)
(ウ)実施例1の水酸基量
合成例1のポリウレタンポリオールの60%溶液が100重量部用いられていることから、OH基は、0.0001845(mol/g)×100×0.6=0.01107mol含まれることがわかる。
(エ)実施例1のNCO基量
ヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体については、前記1(7)アに摘記した甲7の記載のようにスミジュールHTとして市販されており、その分子中のNCO基の重量比が13%であることがわかる。
その化合物の75重量%溶液を16.7重量部を加えるのであるから、NCO基の重量は次のように計算できる。
16.7×0.75×0.13=1.628g
そして、NCO基のダルトン数が42であるから、そのモル数は、
1.628/42=0.03876mol
(オ)NCO基とOH基の当量比
そうすると、甲1の実施例1におけるNCO基とOH基の当量比は、
0.03876/0.01107であるから、3.501であると認められる。
イ 甲1発明
甲1の実施例1から、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が認定できる。
「数平均分子量15500のポリウレタンポリオール(A’)と多官能イソシアネート化合物であるヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体(B’)とを含有するウレタン粘着剤を離型紙上に塗布して、乾燥させ、その後ポリエステルフィルムに貼着する粘着剤の製造方法であって、ポリウレタンポリオール(A’)との多官能イソシアネート化合物であるヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体(B’)におけるNCO基とOH基の当量比がNCO基/OH基として3.501である製造方法。」
(2)本件発明1との対比・判断
ア ポリオールについて
甲1発明の「ポリウレタンポリオール」は、分子中にポリオールが含まれるから、本件発明1の「ポリオール」に相当する。また、甲1発明の「数平均分子量15500ポリウレタンポリオール」は、本件発明1の「ポリオールは数平均分子量が400?20000のポリオールを含み」を充足する。ただし、甲1発明の「ポリウレタンポリオール」は、ジイソシアネート化合物がその合成前後の2段階で添加されることから、ウレタンプレポリマーであるといえる。
イ 甲1発明の粘着剤は、複数の成分からなるから、本件発明1の「粘着剤組成物」に相当する。また、甲1発明の「塗布して、乾燥させ」は、本件発明1の「塗布して乾燥する」に相当する。
ウ 甲1発明の「粘着剤を離型紙上に塗布して、乾燥させ、その後ポリエステルフィルムに貼着する」ことは、ポリエステルフィルム上に粘着剤層を設けるためであることは明らかである。そうすると、甲1発明の「ポリエステルフィルム」が本件発明の「基材」に相当し、甲1発明の「ポリエステルフィルムに貼着する」は、本件発明の「基材層上に形成させる」に相当する。
エ 一致点
そうすると、本件発明1と甲1発明とは次の点で一致する。
「ポリウレタン系樹脂を含むウレタン系粘着剤の製造方法であって、
該ウレタン系粘着剤は、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有するウレタン系粘着剤組成物を調製し、該ポリオール(A)は数平均分子量Mnが400?20000のポリオールを含み、該ウレタン系粘着剤組成物を塗布して乾燥することによって、該基材層上に形成させる、
ウレタン系粘着剤の製造方法。」である点。
オ 相違点
本件発明1と甲1発明とは次の点で相違する。
(ア)相違点1-1
本件発明1においては、「ウレタン系粘着剤」に「フルオロ有機アニオンを含むイオン性液体を含む」のに対して、甲1発明においてはその点が特定されていない点。
(イ)相違点1-2
本件発明1においては、「ポリウレタン系樹脂はウレタンプレポリマーを経由せずに得られ」ると特定されているのに対して、甲1発明におけるポリウレタン系樹脂はウレタンプレポリマーを経由して得られるものである点。
(ウ)相違点1-3
本件発明1においては、「該ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)におけるNCO基とOH基の当量比がNCO基/OH基として1.5?3.0であ」るのに対して、甲1発明においては、NCO基とOH基の当量比がNCO基/OH基として3.501である点。
(エ)相違点1-4
本件発明1においては、「該ポリオール(A)がOH基を3個有するポリオール(トリオール)を含み、該ポリオール(A)中の該OH基を3個有するポリオール(トリオール)の含有割合が70重量%?100重量%であ」るのに対し、甲1発明1においてはその点が明らかでない点。
(オ)相違点1-5
本件発明1においては、ウレタン系粘着剤組成物に触媒を含むのに対して、甲1発明においては触媒は含まれない点。
(カ)相違点1-6
「該ウレタン系粘着剤組成物を塗布して乾燥することによって、該基材層上に形成させる」について、本件発明1においては、「該ウレタン系粘着剤組成物を基材層上に塗布して乾燥することによって、該基材層上に形成させる」するのに対して、甲1発明においては、「該ウレタン系粘着剤組成物離型紙上に塗布して、乾燥させ、その後ポリエステルフィルムに貼着」する点。
カ 相違点についての判断
(ア)前記相違点1-2及び1-4について検討する。
a 甲1発明におけるポリオールは、ウレタンプレポリマーであり、さらに、トリオールが含まれるか明らかでないポリオールである。そして、甲1には甲1発明におけるポリオールを、本件発明1のように、ウレタンプレポリマーでないものとし、さらに、「該ポリオール(A)中の該OH基を3個有するポリオール(トリオール)の含有割合が70重量%?100重量%」であるポリオールに置換することを動機づける記載等はないし、他の証拠(甲2?4)をみても、当業者にとって容易に想到しうることといえる記載はない。
b 前記1(4)に摘記した甲4には、ワンショット法に用いるポリオールについて開示されているが、同1(4)イに摘記した段落【0014】に記載されているように、「プレポリマー成形とワンショット成形では、原料組成が同じであっても、最終的に得られるポリウレタン樹脂の微細構造が全く異なるために、ポリウレタン樹脂組成物の性能が相違する」ため、所定の性能のウレタン系粘着剤組成物を得ることができなくなってしまう。したがって、甲1発明におけるポリオールをワンショット法に用いられるポリオールに置き換えることには阻害事由があって、当業者が容易に想到しうるものということはできない。
(イ)そうすると、前記相違点1-1、1-3、1-5、1-6について検討するまでもなく、本件発明1における相違点1-2、1-4に係る構成は当業者が容易に想到できることとはいえないから、本件発明1は甲1発明及び甲1?4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
キ 本件発明2?7は、本件発明1を包含し、さらに特定する発明であるから、本件発明1と同様に甲1発明及び甲1?4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
ク 小括
本件発明1?7は、甲発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ということはできない。
3 甲2に記載された発明を主引用例とした場合の検討
(1)甲2発明の認定
ア 前記1(2)クに摘記した甲2における実施例1に注目すると、段落【0123】の【表2】から、接着剤C-1を用いていることが読み取れる。
イ 接着剤C-1は、前記1(2)キの【表1】に記載されているように、主剤としてE-1、硬化剤としてF-1、イオン性化合物としてA-1を用いるものである。
ウ 主剤(E-1)について
主剤(E-1)は、前記1(2)キに摘記した段落【0115】?【0116】において説明されたウレタンウレア樹脂であるが、まとめると、前記1(2)アの甲2の請求項11記載の「3価以上のポリオールを含むポリオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させてイソシアネート末端を有するウレタンプレポリマーを得た後、該ウレタンプレポリマーをモノアミノポリオール(c)と反応させて得られる、末端にヒドロキシル基を有するウレタンウレア樹脂」である。
エ 硬化剤(F-1)について
硬化剤(F-1)は、前記1(2)キに摘記した段落【0117】に記載のとおり、「脂肪族系多官能イソシアネート(旭化成ケミカル製「デュラネートD-101」)」であり、「主剤(E-1)の末端ヒドロキシル基に対する硬化剤(F-1)のイソシアネート基のモル比はNCO/OH=1.3」である。
オ イオン性化合物(A-1)について
イオン性化合物(A-1)は、前記1(2)基に摘記した段落【0118】に記載のとおり「脂環式アンモニウム系イオン性液体(1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、アルドリッチ製)」である。
カ 甲2発明
以上の検討と、前記1(2)キに摘記した甲2の段落【0112】の記載を踏まえると、甲2から以下の発明(以下「甲2発明」という。)が認定できる。
「3価以上のポリオールを含むポリオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させてイソシアネート末端を有するウレタンプレポリマーを得た後、該ウレタンプレポリマーをモノアミノポリオール(c)と反応させて、末端にヒドロキシル基を有する主剤であるウレタンウレア樹脂(E-1)の溶液と、
イオン性化合物である1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(A-1)を混合後、1時間、十分に攪拌した後、
硬化剤である脂肪族系多官能イソシアネート(F-1)を、前記主剤(E-1)の末端ヒドロキシル基に対する硬化剤(F-1)のイソシアネート基のモル比がNCO/OH=1.3となるように添加しさらに1時間、均一になるまで攪拌し、必要に応じて溶剤で希釈し、塗工液の粘度を500?3000mPa・s(25℃)になるようにして調製した感圧性接着剤を、
基材であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケータもしくはバーコータで塗工し、乾燥する、接着層を片面に有する粘着シートの製造方法」
(2)甲2発明と本件発明1との対比・判断
ア 甲2発明の「ウレタンウレア樹脂」は、末端にOH基を複数有するから、本件発明1の「ポリオール」に相当する。ただし、甲2発明の「ウレタンウレア樹脂」は、ジイソシアネート化合物がその合成前後の2段階で添加されることから、ウレタンプレポリマーであるといえる。
イ 甲2発明の「硬化剤である脂肪族系多官能イソシアネート(F-1)」は、本件発明1の「多官能イソシアネート」に相当する。
ウ 甲2発明の「イオン性化合物である1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド」について、イミドがアニオン部分であり、フルオロ置換されたメタンを有し、20℃で液体であるから、「フルオロ有機アニオンアニオンを含むイオン性液体」に相当する。
エ 甲2発明の「感圧性接着剤」は、本件発明1の「ウレタン系粘着剤組成物」に相当する。
オ 甲2発明の「基材であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケータもしくはバーコータで塗工し、乾燥する、接着層を片面に有する粘着シートの製造方法」は、接着層の製造方法でもあるから、本件発明1の「該ウレタン系粘着剤組成物を基材層上に塗布して乾燥することによって、該基材層上に形成させる、ウレタン系粘着剤の製造方法。」に相当する。
カ 一致点
以上から、本件発明1と甲2発明とは次の点で一致する。
「ポリウレタン系樹脂とフルオロ有機アニオンを含むイオン性液体を含むウレタン系粘着剤の製造方法であって、
該ウレタン系粘着剤は、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)とフルオロ有機アニオンを含むイオン性液体を含有するウレタン系粘着剤組成物を調製し、該ウレタン系粘着剤組成物を基材層上に塗布して乾燥することによって、該基材層上に形成させる、
ウレタン系粘着剤の製造方法。」
キ 相違点
本件発明1と甲2発明とは次の点で相違する。
(ア)相違点2-1
本件発明1においては、ウレタン系粘着剤に「触媒」が含まれるのに対して、甲2発明においては、感圧性接着剤に触媒が含まれているか明らかでない点。
(イ)相違点2-2
本件発明1においては、「該ポリオール(A)は数平均分子量Mnが400?20000のポリオールを含」むのに対して、甲2発明におけるウレタンウレア樹脂の数平均分子量が明らかでない点。
(ウ)相違点2-3
本件発明1においては、「ポリウレタン系樹脂はウレタンプレポリマーを経由せずに得られ」ると特定されているのに対して、甲2発明におけるポリウレタン系樹脂はウレタンプレポリマーを経由して得られるものである点。
(エ)相違点2-4
本件発明1においては、「該ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)におけるNCO基とOH基の当量比がNCO基/OH基として1.5?3.0であ」るのに対して、甲2発明においては、NCO基とOH基の当量比がNCO基/OH基として1.3である点。
(オ)相違点2-5
本件発明1においては、「該ポリオール(A)がOH基を3個有するポリオール(トリオール)を含み、該ポリオール(A)中の該OH基を3個有するポリオール(トリオール)の含有割合が70重量%?100重量%であ」るのに対し、甲1発明1においてはその点が明らかでない点。
ク 相違点についての判断
(ア)前記相違点2-3及び2-5について検討する。
a 甲2発明における主剤(E-1)は、ウレタンプレポリマーであるウレタンウレア樹脂であって、トリオールが含まれるか明らかでないポリオールである。そして、甲1には甲1発明におけるポリオールを、本件発明1のように、ウレタンプレポリマーでないものとし、さらに、「該ポリオール(A)中の該OH基を3個有するポリオール(トリオール)の含有割合が70重量%?100重量%」であるポリオールに置換することを動機づける記載等はないし、他の証拠(甲4)をみても、当業者にとって容易に想到しうることといえる記載はない。
b 前記1(4)に摘記した甲4には、ワンショット法に用いるポリオールについて開示されているが、同1(4)イに摘記した段落【0014】に記載されているように、「プレポリマー成形とワンショット成形では、原料組成が同じであっても、最終的に得られるポリウレタン樹脂の微細構造が全く異なるために、ポリウレタン樹脂組成物の性能が相違する」ため、所定の性能のウレタン系粘着剤組成物を得ることができなくなってしまう。したがって、甲2発明におけるウレタンウレア樹脂をワンショット法に用いられるポリオールに置き換えることには阻害事由があって、当業者が容易に想到しうるものということはできない。
(イ)そうすると、前記相違点2-1、2-2、2-4、2-6について検討するまでもなく、本件発明1における相違点2-3、2-5に係る構成は当業者が容易に想到できることとはいえないから、本件発明1は甲2発明及び甲2、4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
キ 本件発明2?7は、本件発明1を包含し、さらに特定する発明であるから、本件発明1と同様に甲2発明及び甲2、4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
ク 小括
本件発明1?7は、甲2発明及び甲2、4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ということはできない。

第7 取消理由に採用しなかった特許異議の申立理由について
1 サポート要件について-その1
(1)申立人は、本件発明に係る製造方法が、ウレタンプレポリマー法を経由するポリウレタン系樹脂の製造方法とポリウレタンプレポリマー法を経由しないポリウレタン系樹脂の製造方法の両方を包含するため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないと主張する。
(2)しかしながら、本件訂正のうち、前記第2、1(1)における訂正事項1によって、本件発明は「ウレタンプレポリマーを経由せずに得られ」と特定されたから、前記(1)の申立人の主張は理由がない。
2 サポート要件について-その2
(1)申立人は、本件発明1において「該ポリオール(A)は数平均分子量Mnが400?20000のポリオールを含み」と特定するのみであり、どの程度含まれるのかが特定されていないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないと主張する。
(2)本件発明1が特定するところは、本件発明1において含有される「ポリオール」について数平均分子量が、「400?20000」以外のポリオール(以下「本件外ポリオール」という。)も許容されるということと認められる。そして、申立人の主張によっても、本件外ポリオールの存在によって、本件発明の課題である「帯電防止性に非常に優れ、糊残り防止性やリワーク性にも優れた、ウレタン系粘着剤を提供することができる。」(本件明細書段落【0031】)を解決できないということはできない。
(3)したがって、前記(1)の申立人の主張は理由がない。
3 サポート要件について-その3
(1)申立人は、本件明細書に記載された実施例においては、数平均分子量10000の高分子成分のポリオールを主成分として用い、数平均分子量3000の中分子成分のポリオールを少量、より分子量の小さい数平均分子量1000の中分子量’のポリオールを微量用いた例しか記載されていないから、これらの比率を入れ替えた場合に上記2(2)の課題が解決できないことから、本件発明5がサポート要件を欠くと主張し、また、本件発明1?4、6、7の内、本件発明5を引用しない部分については、ポリオールが3種類用いることが特定されていないから、上記2(2)の課題を解決できないからサポート要件を欠くと主張する。
(2)しかしながら、前記(1)において、申立人が主張する「課題が解決できない」という両部分について、それを認めるに足る証拠はない。そして、本件発明1?7における特定により、本件発明の課題が解決できることは、本件明細書の記載に裏付けられているといえ、申立人の主張は理由がない。

第8 むすび
1 本件訂正は適法であり、認められる。
2 本件発明1?7に係る特許は、取消理由通知の理由及び特許異議の申立ての理由によって取り消すべきものということはできず、また、他に本件発明1?7を取り消すべき理由を発見しない。
3 よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン系樹脂とフルオロ有機アニオンを含むイオン性液体を含むウレタン系粘着剤の製造方法であって、
該ポリウレタン系樹脂はウレタンプレポリマーを経由せずに得られ、
該ウレタン系粘着剤は、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)と触媒とフルオロ有機アニオンを含むイオン性液体を含有するウレタン系粘着剤組成物を調製し、該ポリオール(A)と該多官能イソシアネート化合物(B)におけるNCO基とOH基の当量比がNCO基/OH基として1.5?3.0であり、該ポリオール(A)は数平均分子量Mnが400?20000のポリオールを含み、該ポリオール(A)がOH基を3個有するポリオール(トリオール)を含み、該ポリオール(A)中の該OH基を3個有するポリオール(トリオール)の含有割合が70重量%?100重量%であり、該ウレタン系粘着剤組成物を基材層上に塗布して乾燥することによって、該基材層上に形成させる、
ウレタン系粘着剤の製造方法。
【請求項2】
前記触媒の量が、前記ポリオール(A)に対して、0.02重量%?0.10重量%である、請求項1に記載のウレタン系粘着剤の製造方法。
【請求項3】
前記イオン性液体が、前記フルオロ有機アニオンとオニウムカチオンから構成される、請求項1または2に記載のウレタン系粘着剤の製造方法。
【請求項4】
前記オニウムカチオンが、窒素含有オニウムカチオン、硫黄含有オニウムカチオン、リン含有オニウムカチオンから選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載のウレタン系粘着剤の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオール(A)として、数平均分子量Mnが7000?20000のトリオールと、数平均分子量Mnが2000?6000のトリオールと、数平均分子量Mnが400?1900のトリオールとを併用する、請求項1から4までのいずれかに記載のウレタン系粘着剤の製造方法。
【請求項6】
前記ポリオール(A)が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオールから選ばれる少なくとも1種である、請求項1から5までのいずれかに記載のウレタン系粘着剤の製造方法。
【請求項7】
前記多官能イソシアネート化合物(B)の前記ポリオール(A)に対する含有割合が5重量%?60重量%である、請求項1から6までのいずれかに記載のウレタン系粘着剤の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-31 
出願番号 特願2018-46281(P2018-46281)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C09J)
P 1 651・ 121- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 貴浩  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 木村 敏康
門前 浩一
登録日 2019-08-16 
登録番号 特許第6570684号(P6570684)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 ウレタン系粘着剤の製造方法  
代理人 籾井 孝文  
代理人 籾井 孝文  
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