ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L |
---|---|
管理番号 | 1374970 |
異議申立番号 | 異議2021-700091 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-01-26 |
確定日 | 2021-06-10 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6733986号発明「メタリック調熱可塑性樹脂ペレット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6733986号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6733986号(請求項の数6。以下、「本件特許」という。)は、2019年(令和1年)10月28日(優先権主張 2018年10月31日)を国際出願日とする特許出願(特願2020-513677号)に係る特許であって、令和2年7月13日に設定登録がされ(特許掲載公報の発行日は同年8月5日である。)、令和3年1月26日に、本件特許の請求項1?6に係る特許に対して、特許異議申立人である嶋崎孝明(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 請求項1?6に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、請求項1?6に係る発明を、順に「本件発明1」等という。)。 「【請求項1】 熱可塑性樹脂(A)100重量部、メタリック粒子(B)0.5?10質量部、ならびに板状、繊維状および/または粒状フィラー(C)2?10質量部を含むメタリック調熱可塑性樹脂ペレットであって、 前記ペレットは長軸方向に対する垂直断面が円形または楕円形の円柱形状を有し、 前記ペレットの長さが0.5?2.8mmであり、かつ断面の長径が0.5?2.8mmであり、 前記ペレットの長さ(mm)と前記断面の長径(mm)との積が0.5?5.5であり、 前記メタリック粒子(B)が、金属としてのアルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、チタンおよび銅;前記金属のうち2種以上の金属の合金;ならびに前記金属および前記合金の酸化物、窒化物、硫化物および炭化物からなる群から選択される1種以上の無機材料の粒子であり、 前記メタリック粒子(B)の平均粒子径が1?100μmであり、 前記フィラー(C)が膨潤性層状珪酸塩、タルク、カオリン、ワラストナイト、炭酸カルシウム、シリカ、およびマイカからなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の無機フィラーであり、 前記フィラー(C)の平均粒子径が0.01?10μmである、メタリック調熱可塑性樹脂ペレット。 【請求項2】 前記熱可塑性樹脂(A)がポリアミドであり、 前記ペレットの長さ(mm)と前記断面の長径(mm)との積が0.5?2である、請求項1に記載のメタリック調熱可塑性樹脂ペレット。 【請求項3】 前記熱可塑性樹脂(A)がポリアミド、ポリオレフィンまたはポリカーボネートである、請求項1に記載のメタリック調熱可塑性樹脂ペレット。 【請求項4】 前記メタリック粒子(B)の含有量が1?5質量部である、請求項1?3のいずれかに記載のメタリック調熱可塑性樹脂ペレット。 【請求項5】 前記熱可塑性樹脂(A)がポリアミドである、請求項1?4のいずれかに記載のメタリック調熱可塑性樹脂ペレット。 【請求項6】 請求項1?5のいずれかに記載のメタリック調熱可塑性樹脂ペレットを用いて、射出成形または押出成形して得られる成形体。」(以下、請求項1?6に係る発明を、順に「本件発明1」等という。) 第3 特許異議申立ての申立理由 申立人は、本件発明1?6は下記1及び2のとおりの取消理由があるから、本件特許の請求項1?6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものであると主張し、証拠方法として、下記3の甲第1号証?甲第6号証(以下、順に「甲1」等という。)を提出した。 1 申立理由1(甲1を主引用文献とする進歩性) 請求項1?6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲1に記載された発明、並びに甲1及び甲3?甲6に記載された事項に基づいて、本件特許優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 申立理由2(甲2を主引用文献とする進歩性) 請求項1?6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲2に記載された発明、及び甲2?甲6に記載された事項に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 3 証拠方法 甲1:特開2014-167049号公報 甲2:特開2015-59201号公報 甲3:特開2008-133465号公報 甲4:特開平7-96519号公報 甲5:特開2002-249598号公報 甲6:片倉コープアグリ株式会社のホームページ、無機材料事業[事業紹介]、2015年 第4 当審の判断 1 申立理由1について (1)甲1に記載された発明 甲1には、「非晶性ポリアミド樹脂(A-1)と脂肪族ポリアミド樹脂(A-2)の合計100質量部に対し、層状珪酸塩(B)1?10質量部、メタリック顔料(C)0.5?5質量部を含むポリアミド樹脂組成物」(請求項1)、及び、その課題は「メタリック感および耐傷付き性に優れるポリアミド樹脂組成物を提供すること」(【0007】)であること、が記載されている。 そして、上記ポリアミド樹脂組成物を用いた具体例として、実施例3?19のポリアミド樹脂組成物ペレットが記載されており(【0047】?【0061】)、実施例3(【0057】、表1及び表2)に着目すると、以下の発明が記載されているといえる。 「非晶性ポリアミドを30質量部および脂肪族ポリアミドであるPA6を70質量部からなるポリアミド樹脂100質量部、層状珪酸塩成分である膨潤性フッ素雲母(コープケミカル社製ME-100)3.8質量部、メタリック顔料であるアルミ粉末マスターバッチ(ポリエチレンに対して平均粒径20μmのアルミ粉末を70質量%練り込んだもの)1質量部からなるポリアミド樹脂組成物ペレット。」(以下、「甲1発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比及び検討 (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「層状珪酸塩である膨潤性フッ素雲母(コープケミカル社製ME-100)」について、甲1にはその平均粒子径は記載されていないが、甲6には、「ソマシフME-100」は、平均粒径3?7μmおよび陽イオン交換容量(CEC)100?120meq/100gであることが記載され(3頁の「親水性膨潤性雲母 ソマシフMEシリーズの物性表」)、また、当該記載は本件明細書に「膨潤性フッ素雲母、コープケミカル社製「ME-100」、平均粒径4.6μm、陽イオン交換容量110ミリ当量/100g、板状」(【0068】)との記載とも整合するから、甲1発明の「層状珪酸塩である膨潤性フッ素雲母(コープケミカル社製ME-100)」は、本件発明1の「前記フィラー(C)が膨潤性層状珪酸塩、タルク、カオリン、ワラストナイト、炭酸カルシウム、シリカ、およびマイカからなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の無機フィラー」及び「前記フィラー(C)の平均粒子径が0.01?10μmである」に相当するといえる。 甲1発明の「平均粒径20μmのアルミ粉末」は、本件発明1の「金属としてのアルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、チタンおよび銅;前記金属のうち2種以上の金属の合金;ならびに前記金属および前記合金の酸化物、窒化物、硫化物および炭化物からなる群から選択される1種以上の無機材料の粒子であ」る「メタリック粒子(B)」に相当する。 甲1発明の「非晶性ポリアミド」及び「脂肪族ポリアミド」は、本件発明1の「熱可塑性樹脂(A)」に相当し、甲1発明の「ポリアミド樹脂組成物ペレット」は、上記「ポリアミド樹脂」と「メタリック顔料成分」を構成する「アルミ粉末」を含有するものであるから、本件発明1の「メタリック調熱可塑性樹脂ペレット」に相当する。 そして、甲1発明の「ポリアミド樹脂」、「層状珪酸塩成分である膨潤性フッ素雲母(コープケミカル社製ME-100)」及び「アルミ粉末」の各配合量は、本件発明1の「熱可塑性樹脂」、メタリック粒子(B)」及び「フィラー(C)」の配合量を満たすものである。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「熱可塑性樹脂(A)100重量部、メタリック粒子(B)0.5?10質量部、ならびに板状、繊維状および/または粒状フィラー(C)2?10質量部を含むメタリック調熱可塑性樹脂ペレットであって、 前記メタリック粒子(B)が、金属としてのアルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、チタンおよび銅;前記金属のうち2種以上の金属の合金;ならびに前記金属および前記合金の酸化物、窒化物、硫化物および炭化物からなる群から選択される1種以上の無機材料の粒子であり、 前記メタリック粒子(B)の平均粒子径が1?100μmであり、 前記フィラー(C)が膨潤性層状珪酸塩、タルク、カオリン、ワラストナイト、炭酸カルシウム、シリカ、およびマイカからなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の無機フィラーである、メタリック調熱可塑性樹脂ペレット。」 の点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:本件発明1が「ペレットは長軸方向に対する垂直断面が円形または楕円形の円柱形状を有し、 前記ペレットの長さが0.5?2.8mmであり、かつ断面の長径が0.5?2.8mmであり、前記ペレットの長さ(mm)と前記断面の長径(mm)との積が0.5?5.5であ」るのに対して、甲1発明は、ペレットの形状が特定されていない点 (イ)相違点の検討 相違点1について検討する。 甲3には、請求項1、【0002】、【0004】及び【0024】に、表面意匠性とハイサイクル性の両方に優れたペレットブレンド物の提供を課題とした、ポリアミド樹脂30?100重量%および無機充填材70?0重量%を含有するポリアミド樹脂組成物ペレット(A)と、ポリアミド樹脂に滑剤を1?30重量%含む滑剤ペレット(B)とを、ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)/滑剤ペレット(B)=80?99.5/20?0.5の重量比で含むペレットブレンド物(請求項1、【0004】)、上記ペレット(A)は、その形状が楕円柱または円柱状であり、ペレット長は好ましくは2?4mmであり、断面が楕円形の場合は長径が2?3.5mm及び短径が1?2.5mmであり、断面が円形の場合は直径2?3mmのものが好ましいこと、これにより成形過程の分級を防ぎ、未溶融物の発生や空気の巻き込みを抑制した可塑化が可能となり、機械的強度や表面意匠性に優れた成形品を得ることができること(以上、【0024】)が記載されている。 甲4には、請求項1、【0004】、【0016】及び【0019】に、脂肪族ポリアミドと強化繊維とを含有する原料を溶融混練し、ダイより押出されたストランドを水中にて冷却後カッティングしてペレットを製造する方法において、ダイからの押出量とストランドの水中での冷却長さとを所定の関係とすることにより、ペレットを長時間乾燥することなしに防湿袋に包装することができること(請求項1、【0004】)、ストランドの断面は円又は円に近い楕円であり、その径は好ましくは2?3mmであること(【0016】)、ペレットの形状は、円筒状でありその長さは好ましくは2?4mmであること(【0019】)が記載されている。 また、甲5には、耐熱性、低吸水性に優れ、外観の変色が少なく、重量や強度のばらつきの少ない成形品の提供を課題とした、ペレットの平均体積が0.001?21mm^(3)である小型部品用ポリアミド樹脂ペレット(請求項1、【0004】)、ペレットの断面の形状が円状またはだ円状であり、ペレットの平均長さが1.0?3.0mmであり、断面の平均直径が0.5?3.0mmであること(【0008】)、上記平均体積が6?14mm^(3)であると射出成形において可塑化がスムーズに行われ、重量や強度のばらつきがなく、色相が良好な成形品が得られること(【0047】)、ペレットの平均長さは好ましくは1.5?2.0mm、長さ方向に直角な断面の平均直径は好ましくは2.0?2.5mmであること(【0049】)が記載されている。 甲3?甲5の記載から、長軸方向に対する垂直断面が円形または楕円形の円柱形状を有し、ペレットの長さ及び断面の長径が0.5?2.8mmを含む範囲内の数値としたポリアミド樹脂組成物ペレットが、本件優先日前に知られていたことは理解できる。 しかしながら、甲3?甲5には、ペレットの長さや断面の長径を相違点1に係る範囲を含む数値にすることは記載されているが、前記ペレットの長さ(mm)と前記断面の長径(mm)との積が0.5?5.5であることについては記載がない。そうすると、相違点1に係る「ペレットの長さが0.5?2.8mmであり、かつ断面の長径が0.5?2.8mmであり、前記ペレットの長さ(mm)と前記断面の長径(mm)との積が0.5?5.5であ」ることは、甲3?甲5には記載も示唆もされていない。 そして、甲1発明が解決しようとする課題は、メタリック感および耐傷付き性に優れるポリアミド樹脂組成物の提供であり(【0007】)、甲3?甲5には、ペレットの長さや断面の長径を各甲号証に記載された範囲を含む数値にすることは記載されているが、メタリック感および耐傷付き性に優れることは記載も示唆もされていない。 そうすると、甲1発明において、甲3?甲5の記載から、上記相違点1における本件発明1の「ペレットの長さが0.5?2.8mmであり、かつ断面の長径が0.5?2.8mmであり、前記ペレットの長さ(mm)と前記断面の長径(mm)との積が0.5?5.5であ」ることを採用することは動機付けられず、相違点1は当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 イ 本件発明1の効果について 本件発明1に係るメタリック調熱可塑性樹脂ペレットは、「メタリック発色性、表面平滑性およびフローマーク抑制特性に優れ、メタリック外観を十分に有する成形体を得ることができる」(【0012】)という格別顕著な効果を奏するものであり、その効果は、実施例7?12と比較例1?6との対比、特に樹脂組成物の成分組成が同じであってペレットの形状が異なる実施例7?10と比較例3?4との対比によって具体的に確認することができる。そして、上記効果は甲1及び甲3?甲6に記載も示唆もされておらず、甲1及び甲3?甲6の記載から予測し得ないものである。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明、並びに甲1及び甲3?甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2?6について 本件発明2?6は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有する発明であるから、上記(2)において本件発明1について述べたのと同じ理由により、本件発明2?6は、甲1に記載された発明、並びに、甲1及び甲3?甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 申立理由2について (1)甲2に記載された発明 甲2には、「ポリアミド樹脂(A)100質量部、層状珪酸塩(B)1?7質量部、板状フィラー(C)0.05?20質量部およびメタリック顔料(D)0.5?5質量部を含むポリアミド樹脂組成物であって、ポリアミド樹脂(A)が、2種以上のアミノカルボン酸単位から構成されるものであり、板状フィラー(C)が、タルクおよび/またはマイカであることを特徴とするポリアミド樹脂組成物」(請求項1)、及び、その課題は「剛性が向上し、表面平滑性および金属光沢性に優れるポリアミド樹脂組成物を提供すること」(【0004】)であること、が記載されている。 そして、上記ポリアミド樹脂組成物を用いた具体例として、実施例1?27のポリアミド樹脂組成物ペレットが記載されており(【0046】?【0068】)、そのうち、実施例1に着目すると、以下の発明が記載されているといえる。 「層状珪酸塩である膨潤性フッ素雲母(コープケミカル社製ME-100)を5.3質量%含有するポリアミド樹脂100質量部、板状フィラーであるマイカ(平均粒子径27μm)10質量部、メタリック顔料であるアルミ粉末マスターバッチ(ポリエチレンに対しアルミ粉末(平均粒径20μm)を70質量%練り込んだもの)1質量を一括混合し、溶融混練を行い、ペレタイズしたポリアミド樹脂組成物ペレット」(以下、「甲2発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比及び検討 (ア)対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「層状珪酸塩である膨潤性フッ素雲母(コープケミカル社製ME-100)」について、甲2にはその平均粒子径は記載されていないが、甲6には、「ソマシフME-100」は、平均粒径3?7μmおよび陽イオン交換容量(CEC)100?120meq/100gであることが記載され(3頁の「親水性膨潤性雲母 ソマシフMEシリーズの物性表」)、また、当該記載は本件明細書に「膨潤性フッ素雲母、コープケミカル社製「ME-100」、平均粒径4.6μm、陽イオン交換容量110ミリ当量/100g、板状」(【0068】)との記載とも整合するから、甲2発明の「層状珪酸塩である膨潤性フッ素雲母(コープケミカル社製ME-100)」は、本件発明1の「前記フィラー(C)が膨潤性層状珪酸塩、タルク、カオリン、ワラストナイト、炭酸カルシウム、シリカ、およびマイカからなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の無機フィラー」及び「前記フィラー(C)の平均粒子径が0.01?10μmである」に相当するといえる。なお、甲2発明の「板状フィラーであるマイカ(平均粒子径27μm)」は、物質としては本件発明1の「フィラー(C)」に包含されるものであるが、本件発明1の平均粒子径を満たさないから、本件発明1の「フィラー(C)」に相当するものではない。 甲2発明の「アルミ粉末(平均粒径20μm)」は、本件発明1の「金属としてのアルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、チタンおよび銅;前記金属のうち2種以上の金属の合金;ならびに前記金属および前記合金の酸化物、窒化物、硫化物および炭化物からなる群から選択される1種以上の無機材料の粒子であり、前記メタリック粒子(B)の平均粒子径が1?100μmであ」る「メタリック粒子(B)」に相当する。 甲2発明の「ポリアミド樹脂」は本件発明1の「熱可塑性樹脂(A)」に相当し、甲2発明の「ポリアミド樹脂組成物ペレット」は、上記「ポリアミド樹脂」と「メタリック顔料成分」である「アルミ粉末」を含有するものであるから、本件発明1の「メタリック調熱可塑性樹脂ペレット」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、 「熱可塑性樹脂(A)100重量部、メタリック粒子(B)0.5?10質量部、ならびに板状、繊維状および/または粒状フィラー(C)2?10質量部を含むメタリック調熱可塑性樹脂ペレットであって、 前記メタリック粒子(B)が、金属としてのアルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、チタンおよび銅;前記金属のうち2種以上の金属の合金;ならびに前記金属および前記合金の酸化物、窒化物、硫化物および炭化物からなる群から選択される1種以上の無機材料の粒子であり、 前記メタリック粒子(B)の平均粒子径が1?100μmであり、 前記フィラー(C)が膨潤性層状珪酸塩、タルク、カオリン、ワラストナイト、炭酸カルシウム、シリカ、およびマイカからなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の無機フィラーであり、 前記フィラー(C)の平均粒子径が0.01?10μmである、メタリック調熱可塑性樹脂ペレット。」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点2:本件発明1が「ペレットは長軸方向に対する垂直断面が円形または楕円形の円柱形状を有し、 前記ペレットの長さが0.5?2.8mmであり、かつ断面の長径が0.5?2.8mmであり、前記ペレットの長さ(mm)と前記断面の長径(mm)との積が0.5?5.5であ」るのに対して、甲2発明は、ペレットの形状が特定されていない点 (イ)相違点の検討 相違点2について検討する。 上記1(2)ア(イ)で述べたように、甲3?甲5には、長軸方向に対する垂直断面が円形または楕円形の円柱形状を有し、ペレットの長さ及び断面の長径が0.5?2.8mmを含む範囲内の数値としたポリアミド樹脂組成物ペレットが記載されているといえるが、甲3?甲5には、「ペレットの長さが0.5?2.8mmであり、かつ断面の長径が0.5?2.8mmであり、前記ペレットの長さ(mm)と前記断面の長径(mm)との積が0.5?5.5であ」ることは記載も示唆もされていない。 また、上記2(1)で述べたように、甲2発明が解決しようとする課題は、「剛性が向上し、表面平滑性および金属光沢性に優れるポリアミド樹脂組成物を提供すること」(【0004】)であり、甲3?甲5には、ペレットの長さや断面の長径を各甲号証に記載された範囲内にすることと上記課題との関連性については記載も示唆もされていない。 そうすると、甲2発明において、甲3?甲5の記載から、上記相違点2における本件発明1の「ペレットの長さが0.5?2.8mmであり、かつ断面の長径が0.5?2.8mmであり、前記ペレットの長さ(mm)と前記断面の長径(mm)との積が0.5?5.5であ」ることを採用することは動機付けられず、相違点2は当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 イ 本件発明1の効果について 上記1(2)イで述べたように、本件発明1に係るメタリック調熱可塑性樹脂ペレットは、格別顕著な効果を奏するものであり、当該効果は甲2?甲6に記載も示唆もされておらず、甲2?甲6の記載から予測し得ないものである。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2に記載された発明、及び甲2?甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2?6について 本件発明2?6は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有する発明であるから、上記(2)において本件発明1について述べたのと同じ理由により、本件発明2?6は、甲2に記載された発明、及び甲2?甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1?6は、甲1に記載された発明、並びに甲1及び甲3?甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないし、甲2に記載された発明、及び甲2?甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由1及び2によっては、本件発明1?6に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび したがって、請求項1?6に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2021-05-28 |
出願番号 | 特願2020-513677(P2020-513677) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C08L)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 三宅 澄也 |
特許庁審判長 |
大島 祥吾 |
特許庁審判官 |
橋本 栄和 近野 光知 |
登録日 | 2020-07-13 |
登録番号 | 特許第6733986号(P6733986) |
権利者 | ユニチカ株式会社 |
発明の名称 | メタリック調熱可塑性樹脂ペレット |
代理人 | 山尾 憲人 |
代理人 | 北原 康廣 |