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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60N
管理番号 1375291
審判番号 不服2020-17473  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-22 
確定日 2021-07-06 
事件の表示 特願2016-70192号「シートヒータおよび乗物用シート」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月5日出願公開、特開2017-178130号、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月31日の出願であって、平成31年3月15日付けで拒絶理由が通知され、令和1年7月16日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月24日付けで最後の拒絶理由が通知され、令和2年4月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年4月27日付けの手続補正について同年9月16日付けで補正の却下の決定がされるとともに同日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、同年12月22日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定の概要及び原査定の概要
1 補正の却下の決定の概要
令和2年9月16日付けの補正の却下の決定の概要は次のとおりである。
令和2年4月27日付けの手続補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるが、当該補正後の以下の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、独立特許要件を満たさないから、令和2年4月27日付けの手続補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反し、同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

・請求項1?8
・刊行物等1?4

[刊行物等]
1.特開2009-269480号公報
2.特開2011-156970号公報
3.特開2009-178247号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2012-162207号公報(周知技術を示す文献)
この順に、以下それぞれ「引用文献1」ないし「引用文献4」という。

2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
この出願の以下の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1?7
・刊行物等1、2

・請求項8?10
・刊行物等1?3

[刊行物等]
1.特開2009-269480号公報
2.特開2011-156970号公報
3.特開2009-178247号公報
これらの文献は、上記の「引用文献1」ないし「引用文献3」である。

第3 本願発明
本願の請求項1?8に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明8」という。)は、令和2年12月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される次のとおりの発明である。
「 【請求項1】
シートの異なる部位に配置される複数のヒータユニットと、複数の前記ヒータユニットの出力を制御する制御装置と、を備えたシートヒータであって、
複数の前記ヒータユニットは、シートクッションの座面に対応する部位に配置されるクッションヒータユニットと、シートバックの着座者の腰部に対応する部位に配置される腰部ヒータユニットと、着座者の腰部に対応する部位よりも上方の部位に配置される肩部ヒータユニットと、を含み、
前記クッションヒータユニット、前記腰部ヒータユニットおよび前記肩部ヒータユニットは、それぞれ、前記制御装置に接続され、
前記制御装置は、シートの加熱の指示を受けたときに、前記ヒータユニットの最大出力に対する割合である出力割合をすべての前記ヒータユニットで同じにして、少なくとも1つの前記ヒータユニットが配置される部位の温度を所定温度まで上昇させる第1制御と、少なくとも1つの前記ヒータユニットが配置される部位の温度が前記所定温度に達した後に、前記クッションヒータユニットの出力割合と、前記腰部ヒータユニットの出力割合と、前記肩部ヒータユニットの出力割合とをそれぞれ個別に制御する第2制御とを実行し、
前記第2制御において、
前記クッションヒータユニットの出力割合を、前記腰部ヒータユニットの出力割合よりも小さくし、
前記肩部ヒータユニットの出力割合を、前記クッションヒータユニットの出力割合よりも小さくすることを特徴とするシートヒータ。
【請求項2】
前記腰部ヒータユニットに対応する部位に配置される温度センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記温度センサから取得した検知温度に基づいて、前記腰部ヒータユニットに対する必要制御量を算出し、当該必要制御量を前記腰部ヒータユニットの出力割合とすることを特徴とする請求項1に記載のシートヒータ。
【請求項3】
前記制御装置は、前記必要制御量に基づいて、前記クッションヒータユニットの出力割合を算出することを特徴とする請求項2に記載のシートヒータ。
【請求項4】
前記制御装置は、前記シートが配置される環境の環境温度に基づいて、前記ヒータユニットの出力割合を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシートヒータ。
【請求項5】
前記制御装置は、前記環境温度の変化に応じて、前記ヒータユニットの出力割合を制御するための目標温度を設定することを特徴とする請求項4に記載のシートヒータ。
【請求項6】
前記制御装置は、前記環境温度として、前記シートが配置される環境の温度を調節する空調装置の設定温度を取得することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のシートヒータ。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第2制御において、前記第1制御よりも前記ヒータユニットの出力割合を小さくすることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のシートヒータ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のシートヒータと、
シートクッションと、
シートバックと、
ヘッドレストと、を備えたことを特徴とする乗物用シート。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審が付した。以下同様である。)。
(1a)
「【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、省エネと快適性を両立する座席用ヒータを提供することを目的とする。
・・・
【0017】
図1は本実施の形態における座席用ヒータの平面図、図2は本発明の座席用ヒータを車両用座席に組み付けた斜視図である。図中、座席用ヒータは、自動車の座席に配設されるもので、クッション部面状発熱体1、バック部面状発熱体2、および、クッション部面状発熱体1とバック部面状発熱体2の発熱動作を制御する制御部3を備えている。クッション部面状発熱体1は、さらに、大腿部11、尻中央部12、その他のクッション部20の各面状発熱体で構成されている。バック部面状発熱体2は、さらに、腰中央部13、背中中央部14、肩部15、その他バック部21の各面状発熱体で構成されている。ここで、各面状発熱体は、不織布などの基材に電気ヒータ線を所定のピッチで蛇行配設したものを使用した面状の電気ヒータである。制御部3は各面状発熱体へ所定の順に通電を行う制御を行なう。なお図においては、判り易くするために便宜上、大腿部や尻中央部、腰中央部等を暖める各面状発熱体を斜線で示し、その他の部位を暖める各面状発熱体を斜線無しで示している。
【0018】
上記構成による作用を図3に基づき説明する。図3は制御部3による面状発熱体11?15、20、21への通電制御パターンを示した動作図である。図中、グラフの縦軸は通電のオン・オフを示し、横軸は経過時間である。上段グラフが面状発熱体11?15、下段グラフが面状発熱体20、21への通電制御パターンを示している。同図より、時刻t0で先ず、面状発熱体11?15への通電が開始される。大腿部、尻中央部、腰中央部、背中中央部、肩部は暖感覚が早く熱供給に対し暖房効果が高いという特徴があるため、先ず、これらの部位に相対して配設された面状発熱体11?15に通電を行って暖房効果をより早く促進させている。
・・・
【0031】
(実施の形態3)
本発明の第3の実施の形態として、暖房立ち上がりの快適性をより重視する場合は、発熱動作順として、図5に示すように、時刻t0で人体の各接触部位に相対して配設された全ての面状発熱体11?15、20、21の発熱動作を行い、一定時間経過後の時刻t1以降は、面状発熱体20、21の通電をオフし、大腿部と臀部中央部と背中中央部と腰中央部と肩の部位に相対して配設された面状発熱体11?15の内、少なくとも1つの発熱動作を継続して行なう構成としてもよい。この構成により、先ず、人体の各接触部位に相対して配設された全ての面状発熱体11?15、20、21の発熱動作を行うことにより、着座する人体が早く暖房感を得られるので、快適性がより向上するとともに、一定時間経過後に大腿部と臀部中央部と背中中央部と腰中央部と肩の部位に相対して配設された面状発熱体11?15の内、少なくとも1つの発熱動作を行なうことにより、暖房の立ち上がり後は暖感覚が早く熱供給に対し暖房効果が高い部位のみを効率的に暖房することにより、発熱エネルギーを削減して省エネを実現することができる。 【0032】
また、加熱部位の分け方は図1以外の分け方も可能である。面状発熱体の通電順序、タイミングの設定は図3以外の設定も可能である。
・・・
【0049】
尚、加熱部位の分け方は図1以外の分け方も可能である。面状発熱体の通電順序、タイミングの設定は図7以外の設定も可能である。」
(1b)
図1、図2、図5は以下のとおりである。

(2)引用文献1に記載された発明

「実施の形態3」に関して、「加熱部位の分け方は図1以外の分け方も可能である。」(段落【0032】)と記載されているから、「実施の形態3」では、段落【0017】に記載の図1の加熱部位を採用しているものと認められるところ、段落【0017】の「クッション部面状発熱体1は、さらに、大腿部11、尻中央部12、その他のクッション部20の各面状発熱体で構成されている。バック部面状発熱体2は、さらに、腰中央部13、背中中央部14、肩部15、その他バック部21の各面状発熱体で構成されている。」という記載、段落【0017】の「面状発熱体11?15」、「面状発熱体20、21」という記載、及び、図1、図2から、クッション部面状発熱体1は、左右の大腿部の面状発熱体11,11及び左右の大腿部の面状発熱体11,11の間の面状発熱体20と、尻中央部の面状発熱体12及び尻中央部の面状発熱体12の左右の面状発熱体20,20とで構成され、バック部面状発熱体2は、腰中央部の面状発熱体13及び腰中央部の面状発熱体13の左右の面状発熱体21,21と、背中中央部の面状発熱体14と背中中央部の面状発熱体14の左右の面状発熱体21,21と、左右の肩部の面状発熱体15,15と左右の肩部の面状発熱体15,15の間の面状発熱体21とで構成されるものとして特定できる。

段落【0018】の「図3は制御部3による面状発熱体11?15、20、21への通電制御パターンを示した動作図である。」という記載などから、「実施の形態3」に関する図5も、制御部3による面状発熱体11?15、20、21への通電制御パターンを示した動作図であることが明らかであること、及び段落【0031】の図5に関する説明から、制御部3は、時刻t0で人体の各接触部位に相対して配設された全ての面状発熱体11?15、20、21の発熱動作を行い、一定時間経過後の時刻t1以降は、面状発熱体20、21の通電をオフし、大腿部と臀部中央部と背中中央部と腰中央部と肩の部位に相対して配設された面状発熱体11?15の内、少なくとも1つの発熱動作を継続して行うことが、明らかである。

上記ア、イ及び摘記(1a)から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「クッション部面状発熱体1、バック部面状発熱体2、および、クッション部面状発熱体1とバック部面状発熱体2の発熱動作を制御する制御部3を備えている、座席用ヒータであって、
クッション部面状発熱体1は、左右の大腿部の面状発熱体11,11及び左右の大腿部の面状発熱体11,11の間の面状発熱体20と、尻中央部の面状発熱体12及び尻中央部の面状発熱体12の左右の面状発熱体20,20とで構成され、
バック部面状発熱体2は、腰中央部の面状発熱体13及び腰中央部の面状発熱体13の左右の面状発熱体21,21と、背中中央部の面状発熱体14と背中中央部の面状発熱体14の左右の面状発熱体21,21と、左右の肩部の面状発熱体15,15と左右の肩部の面状発熱体15,15の間の面状発熱体21とで構成され、
各面状発熱体は、不織布などの基材に電気ヒータ線を所定のピッチで蛇行配設したものを使用した面状の電気ヒータであり、
制御部3は、時刻t0で人体の各接触部位に相対して配設された全ての面状発熱体11?15、20、21の通電をオンし発熱動作を行い、一定時間経過後の時刻t1以降は、上記の面状発熱体20、21の通電をオフし、大腿部と臀部中央部と背中中央部と腰中央部と肩の部位に相対して配設された面状発熱体11?15の内、少なくとも1つの発熱動作を継続して行う、
座席用ヒータ。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)
「【0007】
本発明のシートヒータは、シートクッションの着座面に設けられた発熱体からなると共に、シートクッションの着座面前部の発熱密度が着座面後部の発熱密度よりも高くなるように構成されたことを特徴とする。
・・・
【0014】
ここで、本実施形態では、図1および図2に示すように、シートクッション2の着座面2Sを、着座面前部2Sfと着座面後部2Srとに区画(分割)してある。そして、図3に示すように、着座面前部2Sfに配置した電気抵抗線11aの蛇腹状ピッチP1を、着座面後部2Srに配置した電気抵抗線11aの蛇腹状ピッチP2よりも密に(小さく)して、着座面前部2Sfの発熱密度を、着座面後部2Srの発熱密度よりも高くしてある。このとき、発熱密度Hdは、ヒータ発熱量Hqをヒータ面積Hsで割った値、つまり、Hd=Hq/Hsとなる。
・・・
【0042】
以上の構成により第4の実施形態のシートヒータ310によれば、シートバック3の背もたれ面上部3Luに設けた上部ヒータ12Uの発熱密度を、着座面前部2Sfの発熱密度および背もたれ面下部3Llの発熱密度よりも低くしてある。このため、バッテリーなどのように使用可能な電力量が一定である場合に、温冷感や快適感の向上に効果が少ない背もたれ面上部3Luの消費電力量を減らせることができる。これにより、限られた電力量を、大腿部が位置する着座面前部2Sfや腰部が位置する背もたれ面下部3Llの発熱に有効に利用できるため、加温がより必要な大腿部や腰部の速暖感を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、上部ヒータ12Uが設けられる背もたれ面上部3Luの領域と、下部ヒータ12Lが設けられる背もたれ面下部3Llの領域と、を上下方向に所定割合の比、例えば、背もたれ面下部3Llをシートバック3の全高の下端から30?60%の領域内に設定している。これにより、発熱密度が高い下部ヒータ12Uによって腰部を効率良く暖めることができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、着座面前部2Sfの発熱密度と、着座面後部2Srの発熱密度と、背もたれ面下部3Llの発熱密度と、背もたれ面上部3Luの発熱密度と、を所定割合の比、例えば、(1.5?3.1):1:(1.2?3.0):(0.8?3.0)としている。このため、加温初期では大腿部に対応する着座面前部2Sfを最も早く暖め、安定期では尻部が位置する着座面後部2Srの温度を低く保つことができる。また、温冷感や快適感の向上に効果が少ない背もたれ面上部3Luの発熱密度を、腰部が位置する背もたれ面下部3Llよりも小さくしている。これにより、他の部分により多くの電力を配分して、必要な部分の即断感をより向上させることができる。
【0045】
以上、第1から第4の実施形態によって説明したシートヒータ10、110、210、310では、人間の特性(部位による感覚の違いなど)を考慮した構成となっており、限られた電力量を効率的に配分して必要な身体部位の速暖性と身体全体の快適性の継続を得ることができる。
【0046】
図13は、第4の実施形態のシートヒータ310による着座面前部2Sf、着座面後部2Sr、背もたれ面下部3Llおよび背もたれ面上部3Luの温度変化を示すグラフである。このグラフに示すように、加温初期(区間X)では、着座面前部2Sfの温度(実線で示す特性ア)が着座面後部2Srの温度(破線で示す特性イ)、背もたれ面下部3Llの温度(一点鎖線で示す特性ウ)および背もたれ面上部3Luの温度(二点鎖線で示す特性エ)よりも高くなっている。そして、加温安定期(区間Y)では、背もたれ面下部3Llの温度が着座面前部2Sfの温度に到達した後、それら両方がほぼ一定温度に保たれるとともに、着座面後部2Srの温度と背もたれ面上部3Luの温度とがほぼ等しくなった後、ほぼ一定温度が保たれる。この加温安定期では、着座面前部2Sfと背もたれ面下部3Llの温度が、着座面後部2Srと背もたれ面上部3Luの温度よりも高い状態で維持される。
【0047】
このように、加温初期では、大腿部が位置する着座面前部2Sfの温度が、他の部位より優先して温度上昇するため速暖感が向上する。また、安定期には着座面前部2Sfと背もたれ面下部3Llの温度が、着面後部2Srと背もたれ面3Luの温度より高めに維持されるので、暖かさ感が向上するとともに、尻部の蒸れなどの不快感を抑えることができる。
【0048】
つまり、加温初期では、暖かさ感の向上に最も効果的な大腿部の温度を早く上昇させ、加温安定期では、腰部および大腿部の温度が高めに保たれるので、気持ち良く感ずる快適感を向上させることができる。
【0049】
次に、着座面前部2Sfに前部ヒータ11F、着座面後部2Srに後部ヒータ11R、背もたれ面下部3Llに下部ヒータ12Lおよび背もたれ面上部3Luに上部ヒータ12Uが設けられた座席1を用いて、被験者(8名)による感応実験を行った結果は図14および図15のようになり、その考察を以下述べる。この場合の座席1は、各ヒータ11F、11R、12Lおよび12Uの表面温度が独立に制御が可能となっている。また、図14は、大腿部、尻部、腰部および背中部の部分加温による暖かさ感を棒グラフの高さで示し、図15は、同部位の部分加温による快適感を棒グラフの高さで示してある。
【0050】
(1)大腿部では、加温による暖かさ感の向上効果が大きく(図14参照)、また、加温による快適感の向上効果も大きい(図15参照)。この結果から加温初期の温度上昇を可能な限り早くし、かつ、安定期の温度も高めとするため発熱密度を大きくすることが好ましい。なお、大腿部では体表面近くに太い動脈が通っているため、大腿部を暖めることにより大腿部から下腿部に流れる血液が暖められることにより、暖かさを感じやすくなると考えられる。
【0051】
(2)尻部では、加温による暖かさ感の向上効果が大きく(図14参照)、また、加温による快適感の向上効果も大きい(図15参照)。しかし、尻部の加温は、加温初期においては暖かさ感の向上が見込めるが、それ以上に安定期に温度が高くなることは、蒸れ感や熱さによる不快感などのデメリットが大きくなると考えられる。このため、尻部の発熱密度は小さめにすることが好ましい。
【0052】
(3)腰部では、加温による暖かさ感の向上効果が小さくなる(図14参照)一方、加温による快適感の向上効果は大きくなる(図15参照)。これにより、安定期の温度を高くするために発熱密度を大きくすることが好ましい。
【0053】
(4)背中部では、加温による暖かさ感の向上効果が小さく(図14参照)、また、加温による快適感の向上効果も小さい(図15参照)。このことは、背中部は加温初期および安定期共に温度をあまり高くする必要がないため、発熱密度を小さくし、その分の電力は、より効率的に暖かさ感や快適感の向上が見込める部位に振り分けるのが好ましい。」
(2b)
図1、図2、図13は、以下のとおりである。

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(3a)
「【0004】
しかし、乗員が快適な温度を感じる乗員の各部位の暖め方は、暖房初期と定常時では異なり、上述したヒータユニットでは、端にヒータ配線間隔を変えただけであるので、乗員の各部位対する相対的な温度関係は常に一定であるので、乗員が暖房初期と定常時に渡って快適となるものではない。
・・・
【0024】
ヒータ制御部20は、後述するように、暖房開始後には初期モードで各ヒータユニット6?8の出力を制御し、暖房開始後所定の条件を満たすと、移行期を経て定常モードで各ヒータユニット6?8の出力を制御する。暖房開始直後には、乗員を素早く暖める必要があるが、車両用座席加熱装置SHで使用可能な電力には限りがある。そこで、初期モードでは、伝熱効率が悪いため即暖感が得られにくい腰部よりも、即暖感が得られやすい大腿部および臀部を優先して温めるために、ヒータ制御部20は大腿部ヒータユニット6および臀部ヒータユニット7の出力を最大とする。
・・・
【0030】
移行期における制御によって各ヒータユニット6?8の出力を制御している際に、腰部温度センサ24で検出した背部下部5の表面近傍の温度が定常モードにおける目標温度領域下限値を超えた場合には、ヒータ制御部20は、定常モードで各ヒータユニット6?8の出力を制御する。ヒータ制御部20は、定常モードでは、大腿部ヒータユニット6を再びオンする。そして、ヒータ制御部20は、各センサ22?24で検出した座席表面の温度が、それぞれ定常モードにおける目標温度領域に収まるように、かつ、座席表面の温度の大小関係が腰部近傍、臀部近傍、大腿部近傍の順で小さくなるように各ヒータユニット6?8の出力を制御する(温度制御する)。なお、定常モードでは、各ヒータユニット6?8に通電されるが、座席10の各部が適度に暖まっているため、各ヒータユニット6?8で消費される電力の合計値は、車両用座席加熱装置SHに割り当てられる使用可能な電力内に収まる。」

4 引用文献4について
補正の却下の決定に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
(4a)
「【0026】
本シートヒータにおいて、2以上の発熱体は、着座者の肩、背中、腰、尻及び腿に対応したシートの各位置に配設されている発熱体、すなわち図1に示される発熱体31?35を含むものとすることができる。
このとき基準発熱量は、着座者の身体の各部位が適度に温められるように、発熱体ごとに定めておくことができる。基準発熱量は、その発熱体の最大発熱量としてもよいし、最大発熱量に対して一定の比率で定めてもよい。また、各発熱体の最大発熱量は同一でなくてもよいが、以下の説明においては、簡単のためすべての発熱体の最大発熱量を同じとし、その最大発熱量に対比して基準発熱量の値を表わすこととする。例えば、肩部に設けられている発熱体31の基準発熱量は最大発熱量の60%、背中部に設けられている発熱体32の基準発熱量は最大発熱量の40%、腰部に設けられている発熱体33の基準発熱量は最大発熱量の40%、尻部に設けられている発熱体34の基準発熱量は最大発熱量の60%、腿部に設けられている発熱体35の基準発熱量は最大発熱量の70%程度とするように定めておくことができる。」
(4b)
図1は、以下のとおりである。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(ア)
引用発明において、「各面状発熱体は、不織布などの基材に電気ヒータ線を所定のピッチで蛇行配設したものを使用した面状の電気ヒータであ」ることから、引用発明の「クッション部面状発熱体1」を「構成」する「左右の大腿部の面状発熱体11,11及び左右の大腿部の面状発熱体11,11の間の面状発熱体20」及び「尻中央部の面状発熱体12及び尻中央部の面状発熱体12の左右の面状発熱体20,20」、並びに、「バック部面状発熱体2」を「構成」する「腰中央部の面状発熱体13及び腰中央部の面状発熱体13の左右の面状発熱体21,21」、「背中中央部の面状発熱体14と背中中央部の面状発熱体14の左右の面状発熱体21,21」及び「左右の肩部の面状発熱体15,15と左右の肩部の面状発熱体15,15の間の面状発熱体21」は、それぞれ、シートの異なる部位に配置されたヒータユニットであり、本願発明1の「シートの異なる部位に配置される複数のヒータユニット」に相当する。
(イ)
引用発明において、「制御部3は、時刻t0で人体の各接触部位に相対して配設された全ての面状発熱体11?15、20、21の通電をオンし発熱動作を行」うこと、及び、上記(ア)を踏まえると、引用発明の「クッション部面状発熱体1とバック部面状発熱体2の発熱動作を制御する制御部3」は、実質的には、引用発明の各「面状発熱体」の「発熱動作を制御する制御部3」であって、各「面状発熱体」の出力を制御することが明らかであるから、引用発明の「クッション部面状発熱体1とバック部面状発熱体2の発熱動作を制御する制御部3」は、引用発明の「複数の前記ヒータユニットの出力を制御する制御装置」に相当する。
(ウ)
引用発明の「クッション部面状発熱体1」の「尻中央部の面状発熱体12及び尻中央部の面状発熱体12の左右の面状発熱体20,20」、「バック部面状発熱体2」の「腰中央部の面状発熱体13及び腰中央部の面状発熱体13の左右の面状発熱体21,21」、及び、「バック部面状発熱体2」の「左右の肩部の面状発熱体15,15と左右の肩部の面状発熱体15,15の間の面状発熱体21」は、それぞれ、本願発明1の「シートクッションの座面に対応する部位に配置されるクッションヒータユニット」、「シートバックの着座者の腰部に対応する部位に配置される腰部ヒータユニット」、及び、「着座者の腰部に対応する部位よりも上方の部位に配置される肩部ヒータユニット」に相当する。
(エ)
引用発明の「座席用ヒータ」は、本願発明1の「シートヒータ」に相当する。
(オ)
上記(ア)?(エ)から、
引用発明の
「クッション部面状発熱体1、バック部面状発熱体2、および、クッション部面状発熱体1とバック部面状発熱体2の発熱動作を制御する制御部3を備えている、座席用ヒータであって、
クッション部面状発熱体1は、左右の大腿部の面状発熱体11,11及び左右の大腿部の面状発熱体11,11の間の面状発熱体20と、尻中央部の面状発熱体12及び尻中央部の面状発熱体12の左右の面状発熱体20,20とで構成され、
バック部面状発熱体2は、腰中央部の面状発熱体13及び腰中央部の面状発熱体13の左右の面状発熱体21,21と、背中中央部の面状発熱体14と背中中央部の面状発熱体14の左右の面状発熱体21,21と、左右の肩部の面状発熱体15,15と左右の肩部の面状発熱体15,15の間の面状発熱体21とで構成され、
各面状発熱体は、不織布などの基材に電気ヒータ線を所定のピッチで蛇行配設したものを使用した面状の電気ヒータであ」る構成は、
本願発明1の
「シートの異なる部位に配置される複数のヒータユニットと、複数の前記ヒータユニットの出力を制御する制御装置と、を備えたシートヒータであって、
複数の前記ヒータユニットは、シートクッションの座面に対応する部位に配置されるクッションヒータユニットと、シートバックの着座者の腰部に対応する部位に配置される腰部ヒータユニットと、着座者の腰部に対応する部位よりも上方の部位に配置される肩部ヒータユニットと、を含」む構成に相当する。

引用発明の「制御部3は、時刻t0で人体の各接触部位に相対して配設された全ての面状発熱体11?15、20、21の通電をオンし発熱動作を行」う構成から、「全ての面状発熱体11?15、20、21」が「制御部3」に電気的に接続されていることが明らかである。
このことと、上記ア(ウ)を踏まえると、引用発明の「制御部3は、時刻t0で人体の各接触部位に相対して配設された全ての面状発熱体11?15、20、21の通電をオンし発熱動作を行」う構成と、本願発明1の「前記クッションヒータユニット、前記腰部ヒータユニットおよび前記肩部ヒータユニットは、それぞれ、前記制御装置に接続され」る構成とは、「前記クッションヒータユニット、前記腰部ヒータユニットおよび前記肩部ヒータユニットは、前記制御装置に接続され」る構成において共通している。

(ア)
引用発明の「制御部3は、時刻t0で人体の各接触部位に相対して配設された全ての面状発熱体11?15、20、21の通電をオンし発熱動作を行」うことは、実質的に、シートの加熱の指示を受けたときに行うことが明らかであり、「全ての面状発熱体11?15、20、21」が単に通電されるだけであり、出力割合を調整することはないから(図5も参照)、シートの加熱の指示を受けたときに、最大出力に対する割合である出力割合を「全ての面状発熱体11?15、20、21」で同じにしているといえる。
そして、上記の「発熱動作を行」うことは、「一定時間経過」するまで行われるから、引用発明の「制御部3」は、「面状発熱体11?15、20、21」が配置される部位の温度を所定温度まで上昇させる制御を実行していることが、明らかである。
(イ)
引用発明の「制御部3」は、「一定時間経過後の時刻t1以降は、上記の面状発熱体20、21の通電をオフし、大腿部と臀部中央部と背中中央部と腰中央部と肩の部位に相対して配設された面状発熱体11?15の内、少なくとも1つの発熱動作を継続して行う」ことは、上記(ア)の制御とは別の制御であって、「クッション部面状発熱体1」の「尻中央部の面状発熱体12及び尻中央部の面状発熱体12の左右の面状発熱体20,20」、「バック部面状発熱体2」の「腰中央部の面状発熱体13及び腰中央部の面状発熱体13の左右の面状発熱体21,21」、及び、「バック部面状発熱体2」の「左右の肩部の面状発熱体15,15と左右の肩部の面状発熱体15,15の間の面状発熱体21」を制御する、制御を実行することが、明らかである。
(ウ)
上記(ア)、(イ)及びア(ウ)から、
引用発明の「制御部3は、時刻t0で人体の各接触部位に相対して配設された全ての面状発熱体11?15、20、21の通電をオンし発熱動作を行い、一定時間経過後の時刻t1以降は、上記の面状発熱体20、21の通電をオフし、大腿部と臀部中央部と背中中央部と腰中央部と肩の部位に相対して配設された面状発熱体11?15の内、少なくとも1つの発熱動作を継続して行う」構成と、
本願発明1の「前記制御装置は、シートの加熱の指示を受けたときに、前記ヒータユニットの最大出力に対する割合である出力割合をすべての前記ヒータユニットで同じにして、少なくとも1つの前記ヒータユニットが配置される部位の温度を所定温度まで上昇させる第1制御と、少なくとも1つの前記ヒータユニットが配置される部位の温度が前記所定温度に達した後に、前記クッションヒータユニットの出力割合と、前記腰部ヒータユニットの出力割合と、前記肩部ヒータユニットの出力割合とをそれぞれ個別に制御する第2制御とを実行」する構成とは、
「前記制御装置は、シートの加熱の指示を受けたときに、前記ヒータユニットの最大出力に対する割合である出力割合をすべての前記ヒータユニットで同じにして、少なくとも1つの前記ヒータユニットが配置される部位の温度を上昇させる第1制御と、前記クッションヒータユニットと、前記腰部ヒータユニットと、前記肩部ヒータユニットとを制御する第2制御とを実行する」構成において共通している。

以上から、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「シートの異なる部位に配置される複数のヒータユニットと、複数の前記ヒータユニットの出力を制御する制御装置と、を備えたシートヒータであって、
複数の前記ヒータユニットは、シートクッションの座面に対応する部位に配置されるクッションヒータユニットと、シートバックの着座者の腰部に対応する部位に配置される腰部ヒータユニットと、着座者の腰部に対応する部位よりも上方の部位に配置される肩部ヒータユニットと、を含み、
前記クッションヒータユニット、前記腰部ヒータユニットおよび前記肩部ヒータユニットは、前記制御装置に接続され、
前記制御装置は、シートの加熱の指示を受けたときに、前記ヒータユニットの最大出力に対する割合である出力割合をすべての前記ヒータユニットで同じにして、少なくとも1つの前記ヒータユニットが配置される部位の温度を上昇させる第1制御と、前記クッションヒータユニットと、前記腰部ヒータユニットと、前記肩部ヒータユニットとを制御する第2制御とを実行する、シートヒータ。」
<相違点1>
本願発明1では、前記クッションヒータユニット、前記腰部ヒータユニットおよび前記肩部ヒータユニットは、「それぞれ、」前記制御装置に接続されているのに対して、引用発明では、「クッション部面状発熱体1とバック部面状発熱体2の発熱動作を制御する制御部3を備え」る点。
<相違点2>
本願発明1では、
前記制御装置は、シートの加熱の指示を受けたときに、前記ヒータユニットの最大出力に対する割合である出力割合をすべての前記ヒータユニットで同じにして、少なくとも1つの前記ヒータユニットが配置される部位の温度を「所定温度まで」上昇させる第1制御と、「少なくとも1つの前記ヒータユニットが配置される部位の温度が前記所定温度に達した後に、」前記クッションヒータユニット「の出力割合」と、前記腰部ヒータユニット「の出力割合」と、前記肩部ヒータユニット「の出力割合」とを「それぞれ個別に」制御する第2制御とを実行し、
「前記第2制御において、
前記クッションヒータユニットの出力割合を、前記腰部ヒータユニットの出力割合よりも小さくし、
前記肩部ヒータユニットの出力割合を、前記クッションヒータユニットの出力割合よりも小さくする」のに対して、
引用発明では、
「前記制御装置は、シートの加熱の指示を受けたときに、前記ヒータユニットの最大出力に対する割合である出力割合をすべての前記ヒータユニットで同じにして、少なくとも1つの前記ヒータユニットが配置される部位の温度を上昇させる第1制御と、前記クッションヒータユニットと、前記腰部ヒータユニットと、前記肩部ヒータユニットとを制御する第2制御とを実行する」点。

(2)判断
事案に鑑み、最初に相違点2について検討する。

(ア)
引用文献2について、以下のことがいえる。
a
摘記(2a)の段落【0014】には、「シートクッション2の着座面2Sを、着座面前部2Sfと着座面後部2Srとに区画(分割)してある。」及び「着座面前部2Sfに配置した電気抵抗線11aの蛇腹状ピッチP1を、着座面後部2Srに配置した電気抵抗線11aの蛇腹状ピッチP2よりも密に(小さく)して、着座面前部2Sfの発熱密度を、着座面後部2Srの発熱密度よりも高くしてある。」と記載されていることから、「発熱密度」は、「電気抵抗線11aの蛇腹状ピッチP1」で設定されるものであり、すなわち、ヒータの出力割合を制御できるものではない。
b
また、摘記(2a)の段落【0044】には、「着座面前部2Sfの発熱密度と、着座面後部2Srの発熱密度と、背もたれ面下部3Llの発熱密度と、背もたれ面上部3Luの発熱密度と、を所定割合の比、例えば、(1.5?3.1):1:(1.2?3.0):(0.8?3.0)としている。」と記載され、同段落【0046】には、「加温安定期(区間Y)では、・・・着座面後部2Srの温度と背もたれ面上部3Luの温度とがほぼ等しくなった後、ほぼ一定温度が保たれる。この加温安定期では、・・・背もたれ面下部3Llの温度が、着座面後部2Srと背もたれ面上部3Luの温度よりも高い状態で維持される。」(図13も参照)と記載され、段落【0051】、【0052】、【0053】には、それぞれ、「尻部では、・・・安定期に・・・発熱密度は小さめにすることが好ましい。」、「腰部では、・・・安定期の温度を高くするために発熱密度を大きくすることが好ましい。」、「背中部は加温初期および安定期共に温度をあまり高くする必要がないため、発熱密度を小さくし、その分の電力は、より効率的に暖かさ感や快適感の向上が見込める部位に振り分けるのが好ましい。」と記載され、これらの記載と上記aで述べたことを総合すると、背もたれ面下部3Llの温度が、着座面後部2Srと背もたれ面上部3Luの温度よりも高い状態で、着座面後部2Srの温度と背もたれ面上部3Luの温度とがほぼ等しいことが記載されているが、シートの加熱の指示を受けたときに、各ヒータの出力割合をすべて同じにして、ヒータが配置される部位の温度を所定温度まで上昇させることや、背もたれ面上部3Luの温度を着座面後部2Srの温度よりも小さくする、すなわち、肩部ヒータユニットの出力割合を、前記クッションヒータユニットの出力割合よりも小さくすることは、記載も示唆もされていない。
(イ)
引用文献3について、以下のことがいえる。
摘記(3a)の段落【0024】には、「初期モードでは、・・・ヒータ制御部20は大腿部ヒータユニット6および臀部ヒータユニット7の出力を最大とする。」と記載され、同段落【0030】には、「ヒータ制御部20は、各センサ22?24で検出した座席表面の温度が、それぞれ定常モードにおける目標温度領域に収まるように、かつ、座席表面の温度の大小関係が腰部近傍、臀部近傍、大腿部近傍の順で小さくなるように各ヒータユニット6?8の出力を制御する(温度制御する)。」と記載されていることから、腰部近傍、臀部近傍、大腿部近傍の各ヒータユニット6?8の出力をそれぞれ個別に制御することは記載されているが、肩部にはヒータユニットが設けられておらず、シートの加熱の指示を受けたときに、各ヒータの出力割合をすべて同じにして、ヒータが配置される部位の温度を所定温度まで上昇させることや、肩部ヒータユニットの出力割合を、前記クッションヒータユニットの出力割合よりも小さくすることは、記載も示唆もされていない。
(ウ)
引用文献4について、以下のことがいえる。
摘記(4a)の段落【0026】には、「肩部に設けられている発熱体31の基準発熱量は最大発熱量の60%、・・・腰部に設けられている発熱体33の基準発熱量は最大発熱量の40%、尻部に設けられている発熱体34の基準発熱量は最大発熱量の60%、・・・程度とするように定めておくこと」が記載され、腰部に設けられている発熱体33の基準発熱量は、肩部に設けられている発熱体31の基準発熱量や尻部に設けられている発熱体34の基準発熱量より小さいものであって、クッションヒータユニットの出力割合を、腰部ヒータユニットの出力割合よりも小さくし、肩部ヒータユニットの出力割合を、クッションヒータユニットの出力割合よりも小さくすることは、記載も示唆もされていない。
また、シートの加熱の指示を受けたときに、各ヒータの出力割合をすべて同じにして、ヒータが配置される部位の温度を所定温度まで上昇させることも、記載も示唆もされていない。

上記アのとおりであるから、上記相違点2に係る本願発明1の構成の「制御装置」が「実行する」「第1制御」及び「第2制御」に関して、「シートの加熱の指示を受けたときに、前記ヒータユニットの最大出力に対する割合である出力割合をすべての前記ヒータユニットで同じにして、少なくとも1つの前記ヒータユニットが配置される部位の温度を所定温度まで上昇させる第1制御」及び「少なくとも1つの前記ヒータユニットが配置される部位の温度が前記所定温度に達した後に、」「第2制御」「を実行し」、「前記第2制御において、前記クッションヒータユニットの出力割合を、前記腰部ヒータユニットの出力割合よりも小さくし、前記肩部ヒータユニットの出力割合を、前記クッションヒータユニットの出力割合よりも小さくする」ことは、いずれの引用文献にも記載も示唆もされていない。
特に、「前記第2制御において、前記クッションヒータユニットの出力割合を、前記腰部ヒータユニットの出力割合よりも小さくし、前記肩部ヒータユニットの出力割合を、前記クッションヒータユニットの出力割合よりも小さくする」ことは、いずれの引用文献にも記載も示唆もされていない。

上記ア、イのとおりであるから、引用発明に、引用文献2ないし4に記載された技術事項を適用しても、上記相違点2に係る本願発明1の構成には到らないし、当該適用により、上記相違点2に係る本願発明1の構成を想到できるといえる根拠もない。

(3)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明2?8について
本願発明2?8は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本願発明1と同様に、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
令和2年12月22日付けの手続補正により、本願発明1?8は、上記相違点2に係る本願発明の構成を有するものとなっており、上記第5で述べたとおり、拒絶査定において引用された引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-06-17 
出願番号 特願2016-70192(P2016-70192)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 一正久島 弘太郎  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
出口 昌哉
発明の名称 シートヒータおよび乗物用シート  
代理人 小川 啓輔  
代理人 稲垣 達也  
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