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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1375440
審判番号 不服2019-12123  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-12 
確定日 2021-07-13 
事件の表示 特願2016-544612「注視によるメディア選択及び編集のためのシステム並びに方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 9日国際公開、WO2015/103444、平成29年 3月16日国内公表、特表2017-507400、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)12月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年12月31日 米国、2014年5月9日 米国、2014年11月4日 米国、2014年11月4日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年12月25日 :手続補正書の提出
平成30年 8月27日付け:拒絶理由通知
平成30年12月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 5月 7日付け:拒絶査定
令和 元年 9月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年10月21日付け:拒絶理由通知
令和 3年 1月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 2月 9日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知
令和 3年 5月 7日 :意見書、手続補正書の提出

以下、平成30年8月27日付けの拒絶理由を「原審拒絶理由」、令和元年5月7日付けの拒絶査定を「原査定」、令和2年10月21日付けで通知された拒絶理由を「当審拒絶理由1」、令和3年2月9日付けで通知された拒絶理由を「当審拒絶理由2」、令和3年5月7日に提出された手続補正書による手続補正を「本件補正」という。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
なお、原査定の備考欄には、「●理由2(特許法第36条第4項第1号)について」との記載があるが、原審拒絶理由における理由2の内容からすれば、当該記載は「●理由2(特許法第36条第6項第1号)について」の誤記と認められる。

[理由1](進歩性欠如)
本願請求項1ないし10に係る発明は、以下の引用文献A及びBに記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[理由2](サポート要件違反)
本願請求項1ないし13に係る発明は、以下の点において発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1及び11に記載の「第二レファレンスフレーム」は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(2)請求項9に記載の「ユーザーにとって妥当である前記メディアイメージのセクションを選択し、トリミング、クロッピング、回転、パン、ズーム、及び前記セクションの所望される順序での配列のうちの少なくとも1つによって前記メディアイメージのセクションを編集する」は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

また、原査定には、なお書きとして、以下の拒絶の理由について説示がなされている。

[理由3](サポート要件違反)
本願請求項1ないし10に係る発明は、以下の点において発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(3)請求項1に記載の「前記ディスプレイの上又は近傍に1つ以上の領域又はインジケーターとを備え、前記1つ以上のプロセッサーは、タグを前記メディアイメージと関連付けるために、前記視線追跡データを分析して、前記ユーザーが前記1つ以上の領域又はインジケーターに向かって注視する時点を識別するように構成されている」は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

[理由4](進歩性欠如)
本願請求項11ないし13に係る発明については、以下の引用文献A及びBに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
A 特開2004-180298号公報
B 特表2007-531579号公報

第3 当審拒絶理由1の概要
当審拒絶理由1の概要は次のとおりである。

[理由1](明確性要件違反)
本願請求項1ないし9に係る発明は、以下の点において明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
[理由2](サポート要件違反)
本願請求項1ないし9に係る発明は、以下の点において発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1に記載の「請求項1には、「前記1つ以上のプロセッサーは、前記ユーザーにとって妥当である前記タグ付けされたメディアイメージのセクションを選択し、トリミング、クロッピング、回転、パン、ズーム、及び前記セクションの所望される順序での配列のうちの少なくとも1つによって前記タグ付けされたメディアイメージのセクションを編集するように構成されている」は、明確ではなく、また、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(2)請求項1に記載の「第二レファレンスフレーム」は、いかなるものであるのか明確ではなく、また、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(3)請求項1に記載の「前記ディスプレイの上又は近傍に1つ以上の領域とを備え」がいかなる態様であるのか明確ではなく、また、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(4)請求項1の記載において、「識別」された「時点」をどのように用いて、「メディアイメージのセクション」に「タグ付け」がなされるのか、明確でない。

[理由3]
本願請求項1ないし9に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
1 特開2005-252734号公報(当審で新たに引用した文献)
2 特表2007-531579号公報(原査定の引用文献B)
3 特開2004-180298号公報(原査定の引用文献A)

第4 当審拒絶理由2の概要
当審拒絶理由2の概要は次のとおりである。

[理由1](明確性要件違反)
本願請求項1ないし9に係る発明は、以下の点において明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1に記載の「前記タグ付け」は、この記載より先には前記されていないため、何を指し示しているのか明確ではない。
(2)請求項1に記載の「時間」は、時刻又は期間のいずれであるのか明確ではない。
(3)請求項1の記載において、「メディアイメージ」と「シーン」との関係が明確ではない。

[理由2](サポート要件違反)
本願請求項1ないし9に係る発明は、以下の点において発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1に記載の「タグを前記メディアイメージと関連付ける前に、前記視線追跡データを分析して、前記ユーザーが前記メディアイメージ内の同じ人物または位置に向けられた時間を前記メディアイメージに追加する」ことは、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(2)請求項1の記載において、「前記1つ以上のプロセッサーは、前記タグ付けの間に前記ユーザーが見ているシーン中の位置を表わす注視点情報を取得するように構成されている」は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

第5 本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり、このうち本願発明1は、以下のとおりの発明である。

「 ウェアラブルデバイスと、
ユーザーの周囲のメディアイメージを取り込むように前記ウェアラブルデバイス上に搭載されたシーンカメラと、
前記ウェアラブルデバイスが前記ユーザーに装着されたときに前記ユーザーに視認可能であるように前記ウェアラブルデバイス上に搭載されるディスプレイと、
1つ以上のプロセッサーとを備え、
前記ユーザーの少なくとも片方の眼にレファレンスフレームを投射し、前記ユーザーの前記少なくとも片方の眼の視線追跡データを出力する視線追跡サブシステムとを備え、
前記1つ以上のプロセッサーは、前記ディスプレイに2つ以上の識別された位置を表示して前記ユーザーに前記2つ以上の識別された位置を順に見るように指示し、
前記ディスプレイは、前記シーンカメラによって取り込まれたメディアイメージを表示し、
前記1つ以上のプロセッサーは、前記視線追跡データを分析して、タグを前記メディアイメージと関連付けるタグ付けの直前に前記ユーザーが前記メディアイメージ内の同じ人物または位置に向けられた時間の長さを前記メディアイメージに追加するように構成されており、
前記1つ以上のプロセッサーは、前記タグ付けの手順の過程に前記ユーザーが見ているメディアイメージの位置を表わす注視点情報を取得するように構成されている、メディアイメージを編集するためのシステム。」

なお、本願発明2ないし9は、本願発明1を減縮したものである。
また、本願発明1ないし8及び9はそれぞれ、概ね、原査定時の請求項1ないし8及び10に対応している。

第6 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
当審拒絶理由1に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、頭部装着型カメラ、より詳しくは、頭部に装着した状態で被写体を撮影し得るようになされた頭部装着型カメラに関する。」

「【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたような構成では、カメラの撮影レンズの光軸と視軸とが一致していないために、いわゆるパララックスが発生してしまい、特に近距離にある被写体に対しては、視線方向と、同一被写体を望む撮影レンズの画角と、にずれを生じるようになる。これに対して該特許文献1に記載の技術は、このようなパララックスを考慮したものとはなっていないために、視線方向に基づく正確なレンズ回動制御を行うことができなかった。
【0006】
また、上記特許文献2に記載されているような技術は、撮影者の意思に基づく画像編集ではなく、また、撮影者の動き等に基づく画像編集でもないために、必ずしも撮影者に満足の行く編集結果を得られるとは限らなかった。さらに、該特許文献2に記載された技術では、全てのフレーム画像に対して変化度合いを検出しているために、編集処理に長い時間を要するという課題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、撮像される画像における撮影者の注視点を正確に求めることができる頭部装着型カメラを提供することを目的としている。
【0008】
また、本発明は、撮影者の意思を反映した編集処理を行うことを可能とする頭部装着型カメラを提供することを目的としている。」

「【0014】
なお、本実施例の頭部装着型カメラは、画像を撮像する機能に着目すれば撮像装置であり、画像を再生する機能に着目すれば画像再生装置でもある。そして、後述するように、危険防止機能付き頭部装着型表示装置となっている。さらに、この頭部装着型カメラは、画像を編集することも可能であるために、画像編集装置を兼ねたものとなっている。
…(中略)…
【0017】
この頭部装着型カメラ(以下では適宜、「カメラ」と略称する。)1は、図1に示すように、略めがね型をなす頭部装着部2と、この頭部装着部2と例えば接続手段たるケーブル3を介して接続された本体部たる制御/記録部4と、該カメラ1に係る操作入力を遠隔で行うためのリモートコントロール部(以下では、リモコン部と略称する。)5と、に大別される。」

「【0020】
上記制御/記録部4は、画像データ記録手段、生体情報記録手段、処理手段、パララックス補正手段、演算手段、危険防止手段、相対速度検出手段、相対速度距離検出手段、歩行検出手段、角膜反射光検出手段、領域設定手段、最小値検出手段、瞳孔検出手段、視線方向演算手段を兼ねたものであり、このカメラ1全体の制御を行うとともに、上記頭部装着部2により撮像された画像の記録を行い、さらに記録後の画像を編集するための画像編集装置としても機能し得るように構成されたものである。この制御/記録部4は、腰のベルト等に取り付けた状態、あるいは上着の内ポケット等に収納した状態、などの各種の状態で使用することができるように、やはり可能な範囲内での小型軽量化が図られたものとなっている。もちろん、ケーブル3として長いものを用いるなどにより、この制御/記録部4をカバンなどに収納した状態で使用することも可能である。」

「【0024】
この頭部装着部2は、一般的な眼鏡におけるレンズ、リム、ブリッジ、智などに相当する部分であるフロント部11と、このフロント部11の左右両側から後方(被写体と反対側)に向けて各延設されており該フロント部11に対して折り畳み可能となっているテンプル部12と、を有して構成されている。
【0025】
上記フロント部11は、画像表示用の光学系の一部や視線方向検出用の光学系の一部や電気回路等を内蔵する保持手段たるフレーム部13を有して構成されている。
…(中略)…
【0027】
さらに、上記フレーム部13には、左右両眼に各対応するように導光部材たる透明光学部材14,15が取り付けられている。これらの透明光学部材14,15の内の、一方である透明光学部材14は後述するように視線方向を検出するために用いられ、他方である透明光学部材15は後述するように画像を表示するために用いられるようになっている。そして、これらの透明光学部材14,15は、それぞれの機能を果たすために必要な最小限の大きさとなるように形成されている。」

「【0037】
さらに、フレーム部13の左眼側(つまり、図2や図3における右側)の側面の継手29には、被写体像を撮像するための撮像手段であり測距手段も兼ねた撮像部30が、台座33を介して、撮影方向を調節可能に固定されるようになっている。」

「【0062】
図11は頭部装着型カメラの主として電子回路に係る構成を示すブロック図である。
【0063】
このカメラ1の構成は、上述したように、撮像機能を有する頭部装着部2と、この頭部装着部2により撮影された画像を記録する機能を備えると共に当該カメラ1全体の制御を行う機能を備えた制御/記録部4と、該カメラ1を遠隔操作するためのリモコン部5と、に大別される。これらの内でも上記頭部装着部2は、さらに、撮像を行うための撮像手段たる撮像部30と、主としてシースルー表示を行うための表示手段であり危険防止手段も兼ねたシースルー画像表示部6と、撮影者の視線方向を検出したり撮影者の頭部の動きに伴う角速度を検出したりするための生体情報検出手段であり視線方向検出手段と角速度検出手段とを兼ねた視線方向/角速度検出部7と、に分けられる。これら撮像部30とシースルー画像表示部6と視線方向/角速度検出部7とは、何れも、上記ケーブル3を介して、上記制御/記録部4と接続されるようになっている。」

「【0064】
上記シースルー画像表示部6は、LEDドライバ112と、LED113と、集光レンズ114と、LCD115と、LCDドライバ117と、HOE116と、HOE25と、投光用LED16aと、LEDドライバ118と、集光レンズ16bと、上記スイッチ39と、第4CPU111と、を有して構成されている。このシースルー画像表示部6は、本実施例においては、観察者の片方の眼(ここでは、具体例として右眼)側にのみ配設されている。従って、観察者は、シースルー画像を、該片眼側のみで観察するようになっている。
…(中略)…
【0068】
上記LCD115は、上記投影手段を構成するものであって、上記撮影画枠や撮影された映像などを表示するためのものであり、上記集光レンズ114を介したLED113の光により背面側から照明される透過型の液晶表示手段となっている。
【0069】
上記LCDドライバ117は、上記第4CPU111の制御に基づいて、LCD115を駆動して撮影画枠等を表示させるものであり、後述するようなパララックスを補正するための補正手段も兼ねている。」

「【0087】
次に、上記視線方向/角速度検出部7は、上記シースルー画像表示部6が配設されているのとは反対側の片眼(ここでは、具体例として左眼)側に配設されるようになっている。この視線方向/角速度検出部7は、視線方向検出装置として機能する視線方向検出部と、角速度検出装置として機能する角速度検出部と、に大別される。
【0088】
上記視線方向検出部は、視線方向検出手段であって、LEDドライバ124と、LED125と、集光レンズ126と、反射ミラー127と、ハーフミラー128と、HOE24と、HOE129と、反射ミラー131と、結像レンズ132と、バンドパスフィルタ133と、CCD134と、CCDドライバ135と、CDS/AGC回路136と、A/D変換回路137と、TG138と、を有して構成されている。これらの内のLEDドライバ124、LED125、集光レンズ126、反射ミラー127、およびHOE24は、観察者の眼へ赤外平行光束を投光するための赤外光投影手段たる投光系を構成している。また、上述した内のHOE24、ハーフミラー128、HOE129、反射ミラー131、結像レンズ132、バンドパスフィルタ133、およびCCD134は、観察者の眼から反射された光束を受光するための受光系を構成している。
【0089】
また、上記角速度検出部は、角速度検出手段であって、角速度センサ141,142と、増幅器143,144と、A/D変換回路145と、を有して構成されている。
【0090】
そして、これら視線方向検出部と角速度検出部とを含む視線方向/角速度検出部7全体を制御するためのものとして、第2CPU121が設けられている。」

「【0136】
上記制御/記録部4は、分離回路151と、DSP回路152と、遅延回路153と、多重化回路154と、メモリ155と、圧縮/伸張回路156と、記録用メモリ157と、D/A変換回路158と、上記LCD48(図10参照)と、LCDドライバ160と、第1操作スイッチ162と、受信回路163と、電源回路164と、第1CPU161と、を有して構成されている。」

「【0189】
上記フレーム部13の内部における上記透明光学部材15の上部となる位置に、上記LED113,集光レンズ114,LCD115,HOE116が図13に示すように順に配置されている。これらの各部材は、フレーム部13内に設けられた保持枠により挟み込まれるようにして固定されている。このとき、上記LED113は、電気回路基板181に実装された状態で、上記保持枠により固定されるようになっている。また、これらの内のHOE116は、上述したように、LED113からの光を鉛直下方へ向けて反射するように、傾けて配置されている。」

「【0192】
次に、図15、図16を参照して、視線方向/角速度検出部7における視線方向検出部の光学系の構成の一例について説明する。図15は視線方向検出部の光学系の一構成例を示す一部断面を含む正面図、図16は視線方向検出部の光学系の一構成例を示す左側面図である。
…(中略)…
【0195】
このような構成において、上記LED125から赤外光が発光されると、集光レンズ126により平行光束に変換された後に、反射ミラー127により鉛直下方へ反射される。
【0196】
この反射ミラー127により反射された赤外光は、透明光学部材14の内部に入って、該透明光学部材14内に配置されているハーフミラー128を透過し、HOE24により観察者の眼へ向けて反射される。
【0197】
一方、観察者の眼から反射された赤外光は、上記HOE24により上方へ向けて反射され、さらに、ハーフミラー128により側方へ向けて反射される。この反射光は、さらにHOE129により上方へ向けて反射され、フレーム部13内に配設された反射ミラー131に到達する。
【0198】
この反射ミラー131により側方へ向けて反射された光は、結像レンズ132とバンドパスフィルタ133とを介して、上記HOE24により反射された赤外光の波長域に係る観察者の眼の像として、CCD134上に結像される。
【0199】
このCCD134によって変換された画像信号は、上記CDS/AGC回路136、A/D変換回路137、多重化回路104等を介して、上記制御/記録部4へ転送され、該制御/記録部4内の第1CPU161において、後述するように、プルキンエ像の位置と、瞳孔の中心位置と、が求められ、さらにこれらの相対的な関係から視線方向が求められる。」

「【0256】
次に、このようなカメラ1の動作について、図54および図55を参照して説明する。図54はカメラの動作の一部を示すフローチャート、図55はカメラの動作の他の一部を示すフローチャートである。これら図54および図55は、カメラの動作の流れを、図面の都合上、2図に分割して示したものである。
…(中略)…
【0265】
また、上記ステップS6において、録画モードに設定されていると判断された場合には、標準撮影画枠に設定するとともに、フルオートモードであることを示す情報表示206(文字「FA」)と、録画中であることを示す情報表示207(文字「REC」)と、を上記図27に示したようにシースルー表示する(ステップS7)。
【0266】
そして、動画データ、角速度データ、視線方向データ、音声データを、上記記録用メモリ157に後述する図43に示すように記録してから(ステップS8)、上記ステップS2へ戻って、上述したような処理を繰り返して行う。」

「【0312】
次に、図36?図39を参照して、視線方向検出の原理について説明する。
…(中略)…
【0319】
眼球221が、回旋中心O周りに光軸Lmに対して角度θだけ回旋すると、瞳孔の中心位置とプルキンエ像Piの位置との間に相対的なずれが生じる。今、角膜の曲率中心O’から瞳孔の中心iまでの距離をLxとすると、光軸Lmの方向から見たときの瞳孔中心iとプルキンエ像PiとのCCD134の撮像面上における距離d(図38においては実距離であるように図示しているが、より正確には距離dは撮像面上の距離であるものとする。)は、次の数式12により表わされる。
【0320】
[数12]

…(以下略)」

「【0339】
ところで、眼の各器官の大きさは、年齢毎に、性別毎に、あるいは人種毎に異なり、ひいては個人毎に異なるといえる。また、視線方向検出部を製作する際の個体差(機器毎の個体差)や、頭部装着部2の装着の仕方、などによっても、視線方向検出部の眼との相対的な位置関係が微妙に変化する。従って、上記数式12に基づいた一律的なパラメータにより求めた視線方向は、全ての撮影者に対して正確であるとはいえない。
【0340】
このような理由から、本実施例のカメラ1では、視線方向検出に係るキャリブレーションを、必要に応じて所望に行うことができるようになっている。これにより、使用者毎の最適化を行うことが可能である。
【0341】
図58は、視線方向検出に係るキャリブレーションの処理を示すフローチャートである。
【0342】
例えば、上記第1操作スイッチ162のメニューボタン63やメニュー選択スイッチ66,67,68,69、確定スイッチ65などを操作することによりキャリブレーションモードを選択すると、このキャリブレーション処理が開始される。
【0343】
処理を開始すると、まず、上記図31に示したようなキャリブレーション用の指標P1?P5の内の何れを表示させるかを設定する(ステップS61)。
【0344】
そして、設定した指標を例えば点滅してシースルー表示する(ステップS62)。この表示は、上述したように、視線方向検出部を含む視線方向/角速度検出部7が配設されている側の眼とは異なる側の眼により観察可能となっている。
【0345】
例えば、まず指標P1を点滅させて、この指標P1を注視するように、観察者を促す。観察者は、指標P1を注視した状態となったら、所定のキー操作を行う。このキー操作入力を検出すると、上記CCD134により画像データを取り込んで、上記数式12に基づき、瞳孔中心iとプルキンエ像Piとの間の距離dを演算する(ステップS63)。このときに、指標P1を注視することにより得られた距離dの値をd1とする。
【0346】
そして、上記指標P1?P5の全てについて上記ステップS61?S63の処理が終了したか否かを判断する(ステップS64)。
【0348】
ここで、上記数式12は理想的な場合にのみ成立する式であり、実際には、上述したような種々の誤差を考慮する必要がある。そこで、上記数式12を修正して、
[数13]

として、補正情報Δdを加えることにする。
【0349】
この数式13において、角度θは、指標P1?P5の表示位置により予め設定される値(指標P1?P5に各対応して、それぞれ角度θ1?θ5とする。)である。また、距離dは、視線方向検出部により実際に検出される値(上述した距離d1?d5)である。さらに、Lxは、個人毎に異なる値であるものとする。
【0350】
この数式13に、既知である上記角度θ1?θ5と、上記ステップS63において各求めた距離d1?d5と、上述したような結像レンズ132の結像倍率β1と、を代入することにより、ΔdとLxとを未知数とする5つの数式(一次式)が求められる。2つの未知数Δd,Lxを求めるためには、これらの未知数を含む2つの一次式を連立すれば良いために、可能な解の組として、5C2=10(組)の解が求められることになる。そして、これらの解の組に所定の統計演算を行うことにより、各個人毎のパラメータとして最も確からしいと考えられるΔdおよびLxを求める(ステップS65)。
【0351】
その後、このようにして求めたΔdおよびLxを、上記EEPROM102に記憶してから(ステップS66)、このキャリブレーションの処理を終了する。
【0352】
なお、実際に視線方向を検出するに当たっては、上述したようなキャリブレーションによって求めたΔdおよびLxと、実際に検出した瞳孔中心iとプルキンエ像Piとの距離dと、を上記数式13に代入し、視線方向θを算出して求めることになる。」

「【0353】
このようにして求めた視線方向のデータは、撮影時にリアルタイムで利用することができると共に、撮影後に例えば後述するような画像編集を行う際に利用することもできる。従って、動画データを記録するときには、後述するように、求めた視線方向を、検出されたタイム情報に関連付けて、動画データとともに記録するようになっている。」

「【0354】
撮影時にリアルタイムで視線方向データを利用する例としては、撮像部30の撮影光学系31のピントを、視線方向の被写体に自動的に合わせることが挙げられる。この場合には、CCD87に結像される被写体像の中の、上記視線方向に対応する部分を中心とした所定範囲について焦点検出を行うようにすればよい。このときには、上記図35を参照して説明したように、パララックスを考慮すると良い。」

「【0356】
上記記録用メモリ157に記録されるデータは、例えば、この図43に示すようなデータ構造となっている。
【0357】
すなわち、該データは、静止画データ管理エリアと、動画データ管理エリアと、編集済動画データ管理エリアと、静止画データエリアと、動画データエリアと、音声データエリアと、角速度データエリアと、視線方向データエリアと、編集済動画データエリアと、を有して構成されている。
…(中略)…
【0365】
上記視線方向データエリアは、上記視線方向/角速度検出部7からの画像データに基づき上記第1CPU161等により算出された視線方向データが、ユニット単位で記録される領域である。なお、この視線方向データエリアに記録する視線方向データとしては、上記視線方向/角速度検出部7の視線方向検出部からの画像データに基づき求めた視軸方向を示す角度θそのものであっても良いが、これに代えて、上記数式10に示したように、視軸方向の被写体を撮像部30から見た角度となるパララックス補正された角度θ’を記録するようにしても構わないし、あるいはこれらの両方を記録するようにしても良い。こうして、視線方向データ(視線方向情報)には、視線方向が所定時間間隔で記録されることになるために、視線方向の連続的な移動量を算出することが可能であり、また、視線方向の移動速度を算出することも可能である。従って、視線方向データは、視線方向の連続的な移動量と、視線方向の移動速度と、の少なくとも一方を含むということができる。
…(中略)…
【0368】
動画データは、該動画データの撮像と同時的に収録された音声データ、そして、該動画データの撮像と同時的に検出された角速度データおよび視線方向データと、その時間的な関係に応じて相互に関連付けられて記録されている必要がある。そこで、本実施例においては、これらの各データを所定時間毎にまとめてユニットという単位とし、ユニット内に含まれる各データが実際に記録されているメモリ領域の先頭アドレスを、上記動画データ管理エリアにまとめて記録している。従って、動画データ管理エリアに記録されている管理データを参照することにより、所望のユニットに含まれる動画データ、音声データ、角速度データ、および視線方向データにアクセスすることが可能となっている。」

「【0387】
次に、図59は、編集処理を示すフローチャートである。
【0388】
例えば、上記第1操作スイッチ162のメニューボタン63やメニュー選択スイッチ66,67,68,69、確定スイッチ65などを操作することにより編集モードが選択されると、この編集処理が開始されるようになっている。
…(中略)…
【0390】
こうして、画像ファイルの選択が行われた場合には、上記図44に示したような動画データ管理エリアに記録されている管理情報を参照して、選択された画像ファイルに対応する視線方向データを読み出す(ステップS72)。
【0391】
そして、読み出した視線方向データに基づいて、注視時間が所定時間t1以上であるか否かを判断する(ステップS73)。ここで注視しているか否かは、視線方向を表わすベクトルの大きさの変化が所定量以内であれば、一定の方向を注視しているものとする。
【0392】
ここで注視時間が所定以上であると判断された場合には、ズームアップ処理を行う(ステップS74)。
…(中略)…
【0395】
ΔX,ΔYをX方向,Y方向のそれぞれに対する所定の視線位置変化量であるとする。このとき、X方向,Y方向の視線位置変化が各々ΔX,ΔY以下で、かつ注視時間が上記所定時間t1以上であるときは、図49に示すように、注視点に向けて画像をゆっくりと拡大して行く。つまり、注視点が徐々に画像の中央にくるように、拡大とトリミング(拡大領域の変更)とを同時に実行して行く。一定の拡大量に達したところでその状態をしばらく維持し、再び、注視時間の終了t0に向けてゆっくりと元の倍率(標準の画角)へ戻して行く。」

「【0421】
なお、この図59に示したような編集処理の例においては、生体情報としての視線情報や角速度情報に基づいて、ズーミング、カッティング、スムージング、ぶれ補正を行うようにしているが、編集処理は、これらに限られるものではない。例えば、角速度データの時間的な変動パターンに基づいて、撮影者が歩行中であるか否かを判断し、歩行中であると判断されたときには、通常よりも広角側にズーミング処理を行うようにすることが考えられる。また、これとは逆に、歩行中であると判断されたときには、画像の変動を抑制するように画像の一部を切り出して、切り出した画像を望遠側にズーミング(拡大)するようにしても良い。このような処理を行うことにより、画像の変動を少なくして、視覚的に違和感のない動画像を再生することが可能となる。」

「【図1】



「【図2】



「【図3】



「【図4】



「【図11】



「【図31】



「【図36】



(2)引用発明
前記(1)より、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 カメラの撮影レンズの光軸と視軸とが一致していないために発生するいわゆるパララックスを考慮して、撮像される画像における撮影者の注視点を正確に求めることができ、撮影者の意思を反映した編集処理を行うことを可能とする頭部装着型カメラであって、
頭部装着型カメラ1は、略めがね型をなす頭部装着部2と、この頭部装着部2と接続手段を介して接続された制御/記録部4と、該カメラ1に係る操作入力を遠隔で行うためのリモートコントロール部(リモコン部)5とを備え、
制御/記録部4は、カメラ1全体の制御を行うとともに、上記頭部装着部2により撮像された画像の記録を行い、さらに記録後の画像を編集するための画像編集装置としても機能し得るように構成されたものであり、記録用メモリ157と、第1CPU161とを有して構成されており、
頭部装着部2は、フロント部11と、テンプル部12とを有して構成され、
フロント部11は、画像表示用の光学系の一部や視線方向検出用の光学系の一部や電気回路等を内蔵する保持手段たるフレーム部13を有して構成され、
フレーム部13は、左右両眼に各対応するように導光部材たる透明光学部材14,15が取り付けられて、透明光学部材14は、視線方向を検出するために用いられ、透明光学部材15は、画像を表示するために用いられるようになっており、
フレーム部13には、被写体像を撮像するための撮像手段であり測距手段も兼ねた撮像部30が固定され、
頭部装着型カメラの電子回路に係る構成としては、頭部装着部2は、撮像部30と、シースルー表示を行うための表示手段であるシースルー画像表示部6と、
撮影者の視線方向を検出したり撮影者の頭部の動きに伴う角速度を検出したりするための生体情報検出手段であり視線方向検出手段と角速度検出手段とを兼ねた視線方向/角速度検出部7と、に分けられ、
シースルー画像表示部6は、LEDドライバ112と、LED113と、集光レンズ114と、LCD115と、LCDドライバ117と、HOE116と、HOE25と、投光用LED16aと、LEDドライバ118と、集光レンズ16bと、上記スイッチ39と、第4CPU111と、を有して構成され、観察者の右眼側にのみ配設されており、従って、観察者は、シースルー画像を、該片眼側のみで観察するようになっており、
LCD115は、撮影画枠や撮影された映像などを表示するためのものであり、
フレーム部13の内部における透明光学部材15の上部となる位置に、LED113,集光レンズ114,LCD115,HOE116が順に配置され、
LCDドライバ117は、第4CPU111の制御に基づいて、LCD115を駆動して撮影画枠等を表示させるものであり、パララックスを補正するための補正手段も兼ねており、
視線方向/角速度検出部7は、シースルー画像表示部6が配設されているのとは反対側の左眼側に配設され、視線方向検出装置として機能する視線方向検出部と、角速度検出装置として機能する角速度検出部とに大別され、
視線方向検出部は、観察者の眼へ赤外平行光束を投光するための赤外光投影手段たる投光系(LEDドライバ124、LED125、集光レンズ126、反射ミラー127、およびHOE24)と、観察者の眼から反射された光束を受光するための受光系(HOE24、ハーフミラー128、HOE129、反射ミラー131、結像レンズ132、バンドパスフィルタ133、およびCCD134)とで構成され、
LED125から赤外光が発光されると、集光レンズ126により平行光束に変換された後に、反射ミラー127により鉛直下方へ反射され、反射ミラー127により反射された赤外光は、透明光学部材14の内部に入って、該透明光学部材14内に配置されているハーフミラー128を透過し、HOE24により観察者の眼へ向けて反射され、観察者の眼から反射された赤外光は、HOE24により上方へ向けて反射され、さらに、ハーフミラー128により側方へ向けて反射され、この反射光は、さらにHOE129により上方へ向けて反射され、フレーム部13内に配設された反射ミラー131に到達し、反射ミラー131により側方へ向けて反射された光は、結像レンズ132とバンドパスフィルタ133とを介して、HOE24により反射された赤外光の波長域に係る観察者の眼の像として、CCD134上に結像され、
このCCD134によって変換された画像信号は、上記CDS/AGC回路136、A/D変換回路137、多重化回路104等を介して、制御/記録部4へ転送され、該制御/記録部4内の第1CPU161において、プルキンエ像の位置Piと、瞳孔の中心位置iと、が求められ、さらに、瞳孔の中心位置iとプルキンエ像の位置PiとのCCD134の撮像面上における距離dの相対的な関係(数式12)から視線方向θが求められ、
[数式12]

上記数式12に基づいた一律的なパラメータにより求めた視線方向は、全ての撮影者に対して正確であるとはいえないから、視線方向検出に係るキャリブレーションを、必要に応じて所望に行うことができるようになっており、
視線方向検出に係るキャリブレーションの処理は、
上記数式12を修正して、
[数式13]

として、補正情報Δdを加え、
キャリブレーション用の指標P1?P5の内の何れを表示させるかを設定し、設定した指標を例えば点滅してシースルー表示し、例えば、まず指標P1を点滅させて、この指標P1を注視するように、観察者を促し、CCD134により画像データを取り込んで、上記数式12に基づき、瞳孔中心iとプルキンエ像Piとの間の距離d1を演算し、指標P1?P5の全てについて上記処理を行い、
上記数式13において、角度θは、指標P1?P5の表示位置により予め設定される値(指標P1?P5に各対応して、それぞれ角度θ1?θ5とする。)であり、また、距離dは、視線方向検出部により実際に検出される値(距離d1?d5)であり、さらに、Lxは、個人毎に異なる値であり、上記数式13に、既知である上記角度θ1?θ5と、各求めた距離d1?d5と、結像レンズ132の結像倍率β1と、を代入することにより、ΔdとLxとを未知数とする5つの数式(一次式)が求められ、 各個人毎のパラメータとして最も確からしいと考えられるΔdおよびLxを求め、実際に視線方向を検出するに当たっては、キャリブレーションによって求めたΔdおよびLxと、実際に検出した瞳孔中心iとプルキンエ像Piとの距離dとを上記数式13に代入し、視線方向θを算出して求め、
録画モードに設定されている場合、動画データ、角速度データ、視線方向データ、音声データを、記録用メモリ157に記録する処理を繰り返し行い、
視線方向のデータは、撮影時にリアルタイムで利用することができると共に、撮影後に画像編集を行う際に利用することもでき、従って、動画データを記録するときには、求めた視線方向を、検出されたタイム情報に関連付けて、動画データとともに記録するようになっており、
記録用メモリ157に記録されるデータは、静止画データ管理エリアと、動画データ管理エリアと、編集済動画データ管理エリアと、静止画データエリアと、動画データエリアと、音声データエリアと、角速度データエリアと、視線方向データエリアと、編集済動画データエリアと、を有して構成され、
視線方向データエリアは、視線方向/角速度検出部7からの画像データに基づき第1CPU161等により算出された視線方向データが、ユニット単位で記録される領域であり、視線方向データ(視線方向情報)には、視線方向が所定時間間隔で記録されることになるために、視線方向の連続的な移動量を算出することが可能であり、また、視線方向の移動速度を算出することも可能であり、従って、視線方向データは、視線方向の連続的な移動量と、視線方向の移動速度と、の少なくとも一方を含むということができ、
動画データは、該動画データの撮像と同時的に収録された音声データ、そして、該動画データの撮像と同時的に検出された角速度データおよび視線方向データと、その時間的な関係に応じて相互に関連付けられて記録されている必要があるため、これらの各データを所定時間毎にまとめてユニットという単位とし、ユニット内に含まれる各データが実際に記録されているメモリ領域の先頭アドレスを、動画データ管理エリアにまとめて記録しており、従って、動画データ管理エリアに記録されている管理データを参照することにより、所望のユニットに含まれる動画データ、音声データ、角速度データ、および視線方向データにアクセスすることが可能となっており、
撮影時にリアルタイムで視線方向データを利用する例としては、撮像部30の撮影光学系31のピントを、視線方向の被写体に自動的に合わせることが挙げられ、この場合には、CCD87に結像される被写体像の中の、視線方向に対応する部分を中心とした所定範囲について焦点検出を行い、
編集モードが選択され、画像ファイルの選択が行われた場合、動画データ管理エリアに記録されている管理情報を参照して、選択された画像ファイルに対応する視線方向データを読み出し、読み出した視線方向データに基づいて、注視時間が所定時間t1以上であるか否かを判断し、注視時間が所定以上であると判断された場合には、ズームアップ処理を行い、X方向,Y方向の視線位置変化が各々ΔX,ΔY以下で、かつ注視時間が上記所定時間t1以上であるときは、注視点に向けて画像をゆっくりと拡大して行く、つまり、拡大とトリミング(拡大領域の変更)とを同時に実行して行き、
編集処理の例においては、視線情報に基づいて、ズーミングを行うようにしているが、編集処理は、これらに限られるものではない、
頭部装着型カメラ。」

2 引用文献2(引用文献B)について
当審拒絶理由1に引用された引用文献2(原査定の引用文献B)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0008】
別の実施態様では、人の瞼の動きを検出する自蔵式のデバイスが提供され、そのデバイスは、人の頭に装着されるデバイスと、そのデバイス上に取り付けられ、そのデバイスを装着した人の目に向けて光を放射するエミッタと、そのエミッタからの光を検出するカメラとを備えている。センサは目が閉じているか開いているかを示す出力信号を発生し、フレーム上のトランスミッタは、離れた場所に出力信号を無線送信するためにセンサに結合されている。フレームは、眠気による瞼の動きを検出するため、予め設定した閾値と出力信号とを比較するプロセッサを備えることもできる。前の実施態様と同様に、エミッタとセンサには、赤外線を放射及び検出する固体型バイオセンサデバイスを用いることができ、あるいは1次元又は2次元等のアレイであって、フレーム上に所定の配置で形成されたエミッタ及び/又はセンサからなるアレイを用いることもでき、例えば、片目あるいは両目の方向に対して配置された1以上のエミッタ及び/又はセンサからなる、垂直、水平、対角又は他の線状又は幾何学的アレイが含まれる。特に、エミッタ及び/又はセンサのアレイにより、別の箇所で記載したものと同一の視覚パラメータの測定を行うことができる。」

「【0058】
シーン調整情報は、画像撮影シーケンス中のシーン構図における変化を特徴づけるデータ記録を含むこともできる。例えば、ディジタル信号処理装置40は、ベクトル分析または相関分析を用いて、構図中に撮影された評価画像の組を比較し、比較された画像の組でのシーン構図における変化を特徴づけるデータを得ることができる。画像撮影シーケンス中の基準(fiducials)の動きの分析を含む、他の形式のシーン分析を用いることもできる。あるいは、シーン調整データは、GPSデータに基づくシーン調整情報を得る任意のシーン調整センサ76、慣性運動センサ、マルチ位置流体スイッチ、ジャイロスコープ情報から、または画像撮影シーケンス中のカメラシステム20の動きを示すデータを生成できる既知の他のセンサを用いて得ることもできる。このシーン調整情報は、画像撮影中の視線の動きに関する情報に相関させることができる。」

「【0089】
エミッタ822はフレーム812に固定されているので、基準フレーム850はユーザーに対して実質的に一定である。そのため、プロセッサは、基準フレーム850に対する直交軸(x-y又は角-半径等)における瞳孔の位置を決定することができる。あるいは、基準フレームが削除された場合、瞳孔の位置は、ユーザーの目の上のすべての静止しているキラキラ光る点に対して又は他の所定の基準点に対して決定することができる。例えば、カメラ830自身は目の上に光の点を投射し、その光は反射されカメラにより検出される。この”キラキラ光る”点は、カメラ830がフレーム812に対して固定されているので、実質的に静止しており、それが所望の基準点を与え、それに基づいて引き続く目の相対運動を決定することができる。」

「【0132】
図23には、本明細書に記載したいずれかの装置又はシステムを用い、検出された目の動きに基づいてコンピューティングデバイスをコントロールする方法の一例が示されている。例えば、図18Aの装置910が用いられ、ユーザーの片目又は両目を撮像するための光ファイバーバンドル924を含んでいる。必要により、以下に説明するように、装置は1以上の外部カメラを含むことができ、それらはユーザーの前方視界に沿って外側に位置するように、ユーザーの片目又は両目の近くに配置されている。まず、工程2310では、そのような装置を含むシステムを初期化することが好ましく、すなわち、ベース又は基準位置等であり、直交成分を有する基準フレームを設定する。例えば、ユーザーはディスプレイ上のポインター又は他の所定位置を見るように指示され、それにより、ユーザーの目を維持し、結果としてユーザーの瞳孔を実質的に静止させる。プロセッサは、ユーザーの目を実質的に静止させながら、カメラ830からの映像データを解析することができ、これにより、基準点又は”ベース位置”に対応する映像上の瞳孔位置を決定する。例えば、ポインター又はベース位置は、ユーザーの瞳孔に対し実質的にまっすぐに配置することができる。必要に応じ、ユーザーはディスプレイ上の2以上の確認位置を連続して見るように指示され、これによりユーザーの目の相対的な動きに対する尺度を提供することができる。この場合、ユーザーにディスプレイの反対側のコーナーを見させることが好ましく、これにより、ディスプレイに対する適切な目の動きの限界を確認することができる。」

「【図13】



よって、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「 人の頭に装着されるデバイスと、そのデバイス上に取り付けられ、そのデバイスを装着した人の目に向けて光を放射するエミッタと、そのエミッタからの光を検出するカメラ又はセンサとを備え、
エミッタとセンサには、フレーム上に所定の配置で形成されたエミッタ及び/又はセンサからなる1次元又は2次元等のアレイを用いることもでき、
エミッタはフレームに固定されているので、基準フレームはユーザーに対して実質的に一定であるため、プロセッサは、基準フレームに対する直交軸(x-y又は角-半径等)における瞳孔の位置を決定することができる、
あるいは、カメラからの映像データを解析することができ、これにより、基準点又は”ベース位置”に対応する映像上の瞳孔位置を決定すること、及び、
GPS、慣性運動センサ、マルチ位置流体スイッチ、ジャイロスコープなどの任意のシーン調整センサ又は既知の他のセンサを用いてシーン調整データを得て、画像撮影中の視線の動きに関する情報に相関させることができること。」

3 引用文献3(引用文献A)について
当審拒絶理由1に引用された引用文献3(原査定の引用文献A)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】
カメラシステムであって、
画像撮影シーケンスの間にシーンの画像を撮影する画像撮影システムと、
前記カメラシステムのユーザの目の視線方向を含む目の情報を決定するアイモニタリングシステムと、
前記画像撮影シーケンスの間に前記決定した目の情報を記憶し、記憶された目の情報を
前記シーン画像に関連づけるコントローラと、
を含むカメラシステム。」

「【0088】
さらに別の実施形態では、重要領域を示す視線方向パス530内のパターンを識別することができる。例えば、図13の領域534内のこれらのパターンは肯定的な重要性の領域を示してもよく、一方、領域536及び542の画像など、簡単にしか見られていない領域は重要度が低いと考えられる。否定的な重要性を示唆するパターンもある。例えば、領域538では、視線移動パス530はアーカイブ画像532の端部に繰り返し集束している。このようなパターンは、ユーザ4がアーカイブ画像532の端部にある重要でない材料を除外するように画像を構図しようとしていることを示唆することができる。肯定的に重要なパターンと否定的に重要なパターンとを識別することにより、アーカイブ画像における重要領域を決定することができる。」

よって、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「 カメラシステムであって、
画像撮影シーケンスの間にシーンの画像を撮影する画像撮影システムと、
前記カメラシステムのユーザの目の視線方向を含む目の情報を決定するアイモニタリングシステムと、
前記画像撮影シーケンスの間に前記決定した目の情報を記憶し、記憶された目の情報を
前記シーン画像に関連づけるコントローラと、
を含むカメラシステムにおいて、
重要領域を示す視線方向パス内のパターンを識別し、
簡単にしか見られていない領域は重要度が低いと考え、
肯定的に重要なパターンと否定的に重要なパターンとを識別することにより、アーカイブ画像における重要領域を決定すること。」

第7 当審拒絶理由2についての判断
1 理由1(明確性要件違反)について
本件補正により
(1)本件補正前の請求項1に記載されていた「前記タグ付け」は「タグ付け」と補正され、
(2)本件補正前の請求項1に記載されていた「時間」は、「時間の長さ」と補正され、
及び、
(3)本件補正前の請求項1に記載されていた「ユーザーが見ているシーン」は、「ユーザーが見ているメディアイメージ」と補正された。
その結果、請求項1ないし9に係る発明は、明確となった。
よって、理由1(明確性要件違反)は、解消した。

2 理由2(サポート要件違反)について
本件補正により、
(1)本件補正前の請求項1に記載されていた「タグを前記メディアイメージと関連付ける前に」は、「タグを前記メディアイメージと関連付けるタグ付けの直前に」と補正され、
及び、
(2)本件補正前の請求項1に記載されていた「タグ付けの間に」は、「タグ付けの手順の過程に」と補正された。
その結果、請求項1ないし9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとなった。
よって、理由2(サポート要件違反)は、解消した。

以上のとおり、当審拒絶理由2は、解消した。

第8 当審拒絶理由1についての判断
1 理由1(明確性要件違反)及び理由2(サポート要件違反)について
本件補正後の請求項1においては、「回転、パン、ズーム」及び「編集」に関する記載、「第二レファレンスフレーム」に関する記載、「前記ディスプレイの上又は近傍に1つ以上の領域とを備え」との記載並びに「タグを前記メディアイメージと関連付けるために、前記視線追跡データを分析して、前記ユーザーが前記1つ以上の領域に向かって注視する時点を識別する」との記載が削除されており、請求項1ないし9に係る発明は、明確であるとともに、発明の詳細な説明に記載したものである。
よって、理由1(明確性要件違反)及び理由2(サポート要件違反)は、解消した。

2 理由3(進歩性欠如)について
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(ア)「ウェアラブルデバイス」について
引用発明の「頭部装着部2」は、本願発明1の「ウェアラブルデバイス」に相当する。

(イ)「シーンカメラ」について
引用発明の「頭部装着部2は、フロント部11と、テンプル部12とを有して構成され」及び「フロント部11は、画像表示用の光学系の一部や視線方向検出用の光学系の一部や電気回路等を内蔵する保持手段たるフレーム部13を有して構成され」との構成からすれば、「頭部装着部2」は、「フレーム部13」を有して構成されたものである。
そして、引用発明の「フレーム部13には、被写体像を撮像するための撮像手段であり測距手段も兼ねた撮像部30が固定され」との構成において、「撮像部30」は、「被写体像を撮像するため」のものであり、「被写体」は撮影者(ユーザー)の周囲に存在することは明らかであるから、「撮像部30」は、ユーザーの周囲の像(メディアイメージ)を取り込む「シーンカメラ」といい得るものである。また、「撮像部30」は、「頭部装着部2」の「フレーム部13」に固定されたものであるから、前記(ア)を参酌すれば、「ウェアラブルデバイス」上に搭載されているといい得るものである。
よって、引用発明は、本願発明1の「ユーザーの周囲のメディアイメージを取り込むように前記ウェアラブルデバイス上に搭載されたシーンカメラ」との構成を備える。

(ウ)「ディスプレイ」について
引用発明において、「頭部装着型カメラの電子回路に係る構成」に含まれる「シースルー画像表示部6」に含まれる「LCD115」は、「撮影画枠や撮影された映像などを表示するためのもの」すなわち「ディスプレイ」といい得るものである。また、引用発明において、「LCD115」は、「フレーム部13の内部における透明光学部材15の上部となる位置」に「配置され」との構成を備えているから、「LCD115」は、「頭部装着部2」(ウェアラブルデバイス)が観察者(ユーザー)に装着されたときに前記観察者(ユーザー)に視認可能であるように前記「頭部装着部2」(ウェアラブルデバイス)上に搭載されるものといえる。
また、引用発明の「撮影された映像」及び「制御/記録部4」に記録される「画像(ファイル)」は、本願発明1の「シーンカメラによって取り込まれたメディアイメージ」に相当する。
そうすると、引用発明は、本願発明1の「前記ウェアラブルデバイスが前記ユーザーに装着されたときに前記ユーザーに視認可能であるように前記ウェアラブルデバイス上に搭載されるディスプレイ」及び「前記ディスプレイは、前記シーンカメラによって取り込まれたメディアイメージを表示し」との構成を備える。

(エ)「プロセッサー」について
引用発明において、カメラ1全体の制御を行う「制御/記録部4」が備える「第1CPU161」及び「シースルー画像表示部6」が備える「第4CPU111」は、本願発明1の「1つ以上のプロセッサー」に相当する。

(オ)「視線追跡サブシステム」について
引用発明は、「視線方向/角速度検出部7は、シースルー画像表示部6が配設されているのとは反対側の左眼側に配設され、視線方向検出装置として機能する視線方向検出部と、角速度検出装置として機能する角速度検出部とに大別され」との構成を備えることから、「視線方向検出部」は、「左眼側」すなわち「片方の眼」の側に配設されるものである。
そして、「視線方向検出部」は、「観察者の眼へ赤外平行光束を投光するための赤外光投影手段たる投光系(LEDドライバ124、LED125、集光レンズ126、反射ミラー127、およびHOE24)と、観察者の眼から反射された光束を受光するための受光系(HOE24、ハーフミラー128、HOE129、反射ミラー131、結像レンズ132、バンドパスフィルタ133、およびCCD134)とで構成され」ていることから、左側の眼(片方の眼)に「赤外平行光束」を投光するものである。本願発明1の「レファレンスフレーム」は、「片方の眼」に「投射」されるものであるから、「光」である。
そうすると、引用発明と、本願発明1の「前記ユーザーの少なくとも片方の眼にレファレンスフレームを投射し」とは、「前記ユーザーの少なくとも片方の眼に光を投射し」との構成を備える点において共通する。
引用発明の構成からすると、「シースルー画像表示部6」が備える「第4CPU111」が、視線方向検出に係るキャリブレーションとして、LCD115(ディスプレイ)に指標P1?P5を順次シースルー表示し、指標(P1?P5)毎に、指標を注視するように観察者を促し、視線方向検出部の投光系が左側の眼(片方の眼)に赤外光を投光し、視線方向検出部の受光系が、赤外光の反射光を受光して観察者の眼の像の画像信号に変換し、当該画像信号を、制御/記録部4に転送し、制御/記録部4の第1CPU161が、プルキンエ像の位置Piと瞳孔の中心位置iとを求め、さらに、瞳孔の中心位置iとプルキンエ像の位置PiとのCCD134の撮像面上の距離d(d1?d5)を求め、これら数値の相対的な関係(数式12)から視線方向θ(θ1?θ5)を求め、角度θ1?θ5、距離d1?d5と、結像レンズ132の結像倍率β1とから、キャリブレーション用の数式13を代入することにより数式13のΔdおよびLxを求め、視線方向検出の際に、求めたΔdおよびLxと、実際に検出した瞳孔の中心位置iとプリキンエ像の位置iと距離dを数式13に代入して、視線方向θを算出するものであって、加えて、視線方向θは、所定時間間隔で繰り返し算出され、算出された視線方向θは、「視線方向データ」として、記録用メモリ157に記録されるものである。また、「視線方向データ」は、所定時間間隔で繰り返し算出され、記録されて、視線方向の連続的な移動量と視線方向の移動速度を含むものであるから、「視線追跡データ」といい得るものである。
そうすると、引用発明の「視線方向検出部」は、「制御/記録部4」と協働して、少なくとも片方の眼の「視線追跡データ」を出力し、記録するという、視線追跡のためのサブシステムといい得るものであるから、後述する相違点を除くと、本願発明1の「前記ユーザーの前記少なくとも片方の眼の視線追跡データを出力する視線追跡サブシステム」を構成しているといえる。
以上から、引用発明と、本願発明1の「前記ユーザーの少なくとも片方の眼にレファレンスフレームを投射し、前記ユーザーの前記少なくとも片方の眼の視線追跡データを出力する視線追跡サブシステム」とは、「前記ユーザーの少なくとも片方の眼に光を投射し、前記ユーザーの前記少なくとも片方の眼の視線追跡データを出力する視線追跡サブシステム」との構成を備える点において共通する。

(カ)「2つ以上の識別された位置」について
前記(オ)を参酌すると、引用発明の「指標(P1?P5)」は、本願発明1の「2つ以上の識別された位置」に相当し、引用発明において「第4CPU111」が「LCD115(ディスプレイ)」に「指標P1?P5」を順次「シースルー表示」することは、本願発明1の「前記1つ以上のプロセッサーは、前記ディスプレイに2つ以上の識別された位置を表示して」との構成に相当し、引用発明において、順次「シースルー表示」される「指標」(P1?P5)を注視するように、観察者を促すことは、本願発明1の「前記ユーザーに前記2つ以上の識別された位置を順に見るように指示し」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明1の「前記1つ以上のプロセッサーは、前記ディスプレイに2つ以上の識別された位置を表示して前記ユーザーに前記2つ以上の識別された位置を順に見るように指示し」との構成を備える。

(キ)「タグ付け」について
引用発明の
「 編集モードが選択され、画像ファイルの選択が行われた場合、動画データ管理エリアに記録されている管理情報を参照して、選択された画像ファイルに対応する視線方向データを読み出し、読み出した視線方向データに基づいて、注視時間が所定時間t1以上であるか否かを判断し、注視時間が所定以上であると判断された場合には、ズームアップ処理を行い、X方向,Y方向の視線位置変化が各々ΔX,ΔY以下で、かつ注視時間が上記所定時間t1以上であるときは、注視点に向けて画像をゆっくりと拡大して行く、つまり、拡大とトリミング(拡大領域の変更)とを同時に実行して行き、」
において、「編集モード」において、「視線方向データ」に基づいて「注視時間」が所定時間t1以上であるか否かを判断することは、本願発明1の「視線追跡データを分析」することに相当し、また、注視時間が所定以上であると判断された場合に、その時間位置及び画像位置において、「ズームアップ処理」を行うことは、本願発明1の「タグを前記メディアイメージと関連付けるタグ付け」に対応する。(本願発明1において「タグ」、「タグ付け」及び「関連付ける」の定義は具体的に規定されていない。引用発明において、ズームアップすべき時間位置及び画像位置が判断されることは、そのような時間位置及び画像位置が「タグ」として画像に関連付けられているといえる。)
また、引用発明の「注視時間」は、本願発明1の「前記ユーザーが前記メディアイメージ内の同じ人物または位置に向けられた時間の長さ」に相当するものの、引用発明において、「注視時間」が分析される際に、当該「注視時間」が「画像ファイル」(メディアイメージ)に追加(記録)されることは特定されていない。
よって、引用発明と、本願発明1の「前記1つ以上のプロセッサーは、前記視線追跡データを分析して、タグを前記メディアイメージと関連付けるタグ付けの直前に前記ユーザーが前記メディアイメージ内の同じ人物または位置に向けられた時間の長さを前記メディアイメージに追加するように構成されており」とは、「前記1つ以上のプロセッサーは、前記視線追跡データを分析して、タグを前記メディアイメージと関連付けるタグ付けるように構成されており」との構成を備える点において共通する。

(ク)「注視点情報」の「取得」について
引用発明において、「ズームアップ処理」にあたり、すなわち、「タグ付けの手順の過程」において、「視線方向データ」と画像とに基づいて、ズームアップの画像上の対象位置である、ユーザーが見ているメディアイメージの位置を表す「注視点情報」を取得するものといえる。
よって、前記(キ)を参酌すると、引用発明は、本願発明1の「前記1つ以上のプロセッサーは、前記タグ付けの手順の過程に前記ユーザーが見ているメディアイメージの位置を表わす注視点情報を取得するように構成されている」との構成を備える。

(ケ)「メディアイメージを編集するためのシステム」について
引用発明の「頭部装着型カメラ」は、「撮影者の意思を反映した編集処理を行うことを可能とする」ものであるから、本願発明1の「メディアイメージを編集するためのシステム」に相当する。

イ 一致点・相違点
前記(1)より、本願発明1と引用発明とは、次の点において一致ないし相違点する。

[一致点]
「ウェアラブルデバイスと、
ユーザーの周囲のメディアイメージを取り込むように前記ウェアラブルデバイス上に搭載されたシーンカメラと、
前記ウェアラブルデバイスが前記ユーザーに装着されたときに前記ユーザーに視認可能であるように前記ウェアラブルデバイス上に搭載されるディスプレイと、
1つ以上のプロセッサーとを備え、
前記ユーザーの少なくとも片方の眼に光を投射し、前記ユーザーの前記少なくとも片方の眼の視線追跡データを出力する視線追跡サブシステムとを備え、
前記1つ以上のプロセッサーは、前記ディスプレイに2つ以上の識別された位置を表示して前記ユーザーに前記2つ以上の識別された位置を順に見るように指示し、
前記ディスプレイは、前記シーンカメラによって取り込まれたメディアイメージを表示し、
前記1つ以上のプロセッサーは、前記視線追跡データを分析して、タグを前記メディアイメージと関連付けるタグ付けるように構成されており、
前記1つ以上のプロセッサーは、前記タグ付けの手順の過程に前記ユーザーが見ているメディアイメージの位置を表わす注視点情報を取得するように構成されている、メディアイメージを編集するためのシステム。」

[相違点]
<相違点1>
「視線追跡サブシステム」において、前記ユーザーの少なくとも片方の眼に投射される「光」が、本願発明1では「レファレンスフレーム」であるのに対して、引用発明の「光」は、「レファレンスフレーム」とは特定されていない点。

<相違点2>
本願発明1は、「タグ付けの直前に前記ユーザーが前記メディアイメージ内の同じ人物または位置に向けられた時間の長さを前記メディアイメージに追加する」ように構成されているのに対し、引用発明は、「ズームアップ処理」(タグ付け)の際に、「注視時間」が分析されるものの、当該「注視時間」を画像に追加することは特定されていない点。

ウ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討すると、相違点2に係る本願発明1の「タグ付けの直前に前記ユーザーが前記メディアイメージ内の同じ人物または位置に向けられた時間の長さを前記メディアイメージに追加する」という構成は、上記引用文献1ないし3には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし9について
本願発明2ないし9も、上記相違点2に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第9 原査定についての判断
1 理由1(進歩性欠如)について
本件補正後の請求項1ないし9は、「タグ付けの直前に前記ユーザーが前記メディアイメージ内の同じ人物または位置に向けられた時間の長さを前記メディアイメージに追加する」という技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献A及びB(当審拒絶理由1における引用文献2及び1。)には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし9は、当業者であっても、原査定における引用文献A及びBCに基いて容易に発明をすることができたものではない。
よって、理由1(進歩性欠如)は、解消した。
なお、原査定のなお書きにおいて説示された理由4(進歩性欠如)は、対象となる原査定時の請求項11ないし13は本件補正後の特許請求の範囲には存在しない。
よって、理由4(進歩性欠如)も、解消した。

2 理由2(サポート要件違反)
本件補正後の請求項1ないし9には、「第二レファレンスフレーム」、「ユーザーにとって妥当である前記メディアイメージのセクションを選択し、トリミング、クロッピング、回転、パン、ズーム、及び前記セクションの所望される順序での配列のうちの少なくとも1つによって前記メディアイメージのセクションを編集する」及び「インジケーター」との記載は存在しない。
よって、理由2(サポート要件違反)及びなお書きで説示された理由3(サポート要件)は、解消した。

したがって、原査定を維持することはできない。

第10 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-06-22 
出願番号 特願2016-544612(P2016-544612)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 滝谷 亮一  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 小田 浩
林 毅
発明の名称 注視によるメディア選択及び編集のためのシステム並びに方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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