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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16K
管理番号 1375474
審判番号 不服2020-12426  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-04 
確定日 2021-07-13 
事件の表示 特願2018-247496「低騒音ゲートバルブ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 7月 9日出願公開、特開2020-106127、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年12月28日の出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 元年11月25日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 1月24日付け:意見書、手続補正書
令和 2年 6月 4日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 2年 9月 4日付け:拒絶査定不服審判請求書、手続補正書

第2 原査定の概要
原査定(平成2年6月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1?2に係る発明は、以下の引用文献1?2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願の請求項3に係る発明は、以下の引用文献1?3に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
さらに、本願の請求項4?5、7に係る発明は、以下の引用文献1?4に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開昭58-152907号公報
2.特開2015-215009号公報
3.特表平4-505797号公報
4.実願昭49-81386号(実開昭51-9157号)のマイクロフィルム

第3 本願発明
本願の請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明7」という。)は、令和2年9月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1?7は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
ゲート開口を開閉する弁板と、該弁板に先端が連結された弁シャフトと、該弁シャフトを介して前記弁板を開閉動作させる駆動機構とを有し、
前記駆動機構は、前記弁シャフトが変位自在に貫通するボンネットと、該ボンネットに前記弁シャフトを挟んで互いに平行に取り付けられた左右一対のエアシリンダと、該一対のエアシリンダに対してエアを給排するヘッド側ポート及びロッド側ポートとを有し、
前記エアシリンダは、前記ボンネットに固定されたシリンダハウジングと、該シリンダハウジングの内部に前進、後退自在なるように収容されたピストンと、該ピストンに基端を連結されて先端が前記シリンダハウジングの外部に突出する駆動ロッドと、前記ピストンの一面側及び他面側に形成されたヘッド側圧力室及びロッド側圧力室とを有し、
前記ヘッド側圧力室は、前記シリンダハウジング及びボンネットに形成されたヘッド側主流路を通じて前記ヘッド側ポートに連通し、前記ロッド側圧力室は、前記シリンダハウジング及びボンネットに形成されたロッド側主流路を通じて前記ロッド側ポートに連通しており、
前記一対のエアシリンダの駆動ロッドには、前記弁シャフトの基端部がシャフト支持機構を介して支持されていて、前記ピストン及び駆動ロッドの前進ストロークにより、前記弁板は、前記ゲート開口を密閉する密閉位置から、前記ゲート開口に対向するが該ゲート開口を閉鎖しない中間位置を経て、前記ゲート開口を全開にする全開位置に移動し、前記ピストン及び駆動ロッドの後退ストロークにより、前記弁板は、前記全開位置から、前記中間位置を経て、前記密閉位置に移動し、
前記エアシリンダはまた、前記弁板でゲート開口を開閉するときの衝撃を緩和するヘッド側エアクッション機構及びロッド側エアクッション機構を有し、
前記ヘッド側エアクッション機構は、前記ヘッド側圧力室とヘッド側主流路とを並列に結ぶヘッド側連通路及びヘッド側絞り流路と、後退する前記ピストンが後退ストローク端に近づいたとき前記ヘッド側連通路を遮断する遮断機構とを有し、該遮断機構は、前記ピストンの後退ストロークにおいて、前記弁板が前記中間位置に到達する前に前記ヘッド側連通路を遮断し、
前記ロッド側エアクッション機構は、前記ロッド側圧力室とロッド側主流路とを並列に結ぶロッド側連通路及びロッド側絞り流路と、前進する前記ピストンが前進ストローク端に近づいたとき前記ロッド側連通路を遮断する遮断機構とを有し、該遮断機構は、前記ピストンの前記前進ストロークにおいて、前記弁板が前記中間位置を通り過ぎた後に前記ロッド側連通路を遮断し、
前記ボンネットには、前記弁板が全開位置から中間位置に到達した際に前記シャフト支持機構が緩衝的に当接するダンパが設けられている、
ことを特徴とする低騒音ゲートバルブ。
【請求項2】
前記ヘッド側エアクッション機構の遮断機構は、前記ピストンが後退ストロークの中間点を過ぎたあと、前記弁板が前記中間位置に到達する前に、前記ヘッド側連通路を遮断することを特徴とする請求項1に記載のゲートバルブ。
【請求項3】
前記ヘッド側エアクッション機構の遮断機構は、前記ヘッド側圧力室の端壁から該ヘッド側圧力室内に突出するヘッド側クッション軸と、前記ピストンが後退ストローク端に近づいたときに前記ヘッド側クッション軸が嵌合するように該ピストンに形成された凹状のヘッド側クッション穴と、該ヘッド側クッション穴の内周と前記ヘッド側クッション軸の外周との間をシールするヘッド側クッションパッキンとを有し、前記ヘッド側クッション軸の内部に前記ヘッド側連通路が形成されており、
前記ロッド側エアクッション機構の遮断機構は、前記ロッド側圧力室の端壁に形成された凹状のロッド側クッション穴と、前記ピストンが前進ストローク端に近づいたときに該ロッド側クッション穴内に嵌合するロッド側クッション軸と、前記ロッド側クッション穴の内周と該ロッド側クッション軸の外周との間をシールするロッド側クッションパッキンとを有し、前記ロッド側クッション穴によって前記ロッド側連通路が形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のゲートバルブ。
【請求項4】
前記ヘッド側クッションパッキンは、前記ヘッド側圧力室からヘッド側クッション穴へ向かうエアの流れは遮断するが、ヘッド側クッション穴からヘッド側圧力室へ向かうエアの流れは許容するように形成され、
前記ロッド側クッションパッキンは、前記ロッド側圧力室からロッド側クッション穴へ向かうエアの流れは遮断するが、ロッド側クッション穴からロッド側圧力室へ向かうエアの流れは許容するように形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のゲートバルブ。
【請求項5】
前記一対のエアシリンダにおけるヘッド側エアクッション機構の全てのヘッド側連通路及びヘッド側絞り流路は、前記ヘッド側主流路に連通し、前記一対のエアシリンダにおけるロッド側エアクッション機構の全てのロッド側連通路及びロッド側絞り流路は、前記ロッド側主流路に連通しており、それにより、前記一対のエアシリンダにおけるヘッド側エアクッション機構同士及びロッド側エアクッション機構同士は互いに同期して動作することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のゲートバルブ。
【請求項6】
前記ダンパはエアダンパからなり、該エアダンパは、前記ボンネットに形成されたダンパ室と、該ダンパ室の内部に固定的に収容されたクッション部材と、前記ダンパ室の内部に、基端を前記クッション部材に対向させると共に先端を前記ボンネットの外部に突出させた姿勢で摺動自在なるように収容されたダンパロッドと、該ダンパロッドと前記クッション部材との間に形成されたダンパ圧力室とを有し、該ダンパ圧力室は前記ロッド側主流路に連通している、
ことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のゲートバルブ。
【請求項7】
前記エアシリンダに、前記弁板を全開位置にロックするための第1ロック機構と、前記弁板を密閉位置にロックするための第2ロック機構とが設けられていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のゲートバルブ。」

第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献2について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された特開2015-215009号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は、理解を容易にするために当審で付与した。)。
ア 「【0020】
図1及び図2に示すように、本発明に係るゲートバルブ1は、図示しない真空処理チャンバに連通させるためのゲート開口2を有する中空の弁箱3と、該弁箱3内に収容された弁板4と、先端側に前記弁板4が固定的に取り付けられた円柱状の弁シャフト5と、駆動ロッド21を有するエアシリンダ20と、前記駆動ロッド21の先端部に固定された第1ブロック30と、前記弁シャフト5の基端側に固定されると共に、前記第1ブロック30に対し弾性体から成る連結部材6により相対的に可動に連結された第2ブロック40とから構成されている。
そして、後に詳述するように、該ゲートバルブ1は、前記弁板4を、前記ゲート開口2を密閉する密閉位置P3(図7?図11参照)と該ゲート開口2を全開にする全開位置P1(図1及び図2参照)との間で、該ゲート開口2と離間して対向する中間位置P2(図4及び図5参照)を通じて往復移動させる弁移動機構と…をさらに備えている。」
イ 「【0021】
…そして、前記側壁2aの内面における前記ゲート開口2の外周部には、該ゲート開口2を取り囲むように、平坦面から成る環状の弁シート8が設けられており、前記弁板4の移動に伴ってシール部材9を該弁シート8に対し接離させることにより、該ゲート開口2を開閉することができるようになっている。」
ウ 「【0022】
前記弁箱3における前記側壁3a、3bと略垂直を成す底面には、ボンネット10が気密に固定されている。該ボンネット10には貫通穴10aが設けられており、前記弁シャフト5がその軸線L1方向及びそれと垂直方向(すなわち、前記弁シート8の面に対して垂直方向)に移動可能に挿通されている。…」
エ 「【0023】
前記エアシリンダ20、20は、前記弁シャフト5を挟んで向かい合う位置にそれぞれ設けられている。これらエアシリンダ20は、前記第1ブロック30のうち後述する一対のカムフレーム32、32に対向させて前記ボンネット10の外面10bに垂直に固定された中空のシリンダハウジング22と、該ボンネット10と垂直を成した(すなわち、前記弁シート8の面と平行を成した)軸線L2を有する前記駆動ロッド21と、前記シリンダハウジング22内において前記軸線L2方向に往復動可能に設けられ、前記駆動ロッド21の基端部が固定された駆動ピストン23とをそれぞれ有している。」
オ 「【0025】
前記シリンダハウジング22の内部には、駆動ピストン23を挟んだ両側に、ロッド側の第1圧力室24aとヘッド側の第2圧力室24bとがそれぞれ設けられている。そして、該シリンダハウジング22のロッド側の端部には、前記駆動ロッド21を気密かつ摺動自在に支持すると共に、前記駆動ピストン23を駆動ロッド21の進出端において当接させるカラー部材24dが気密に嵌合されている。その一方で、該シリンダハウジング22のヘッド側の端部には、前記駆動ピストン23を駆動ロッド21の後退端で当接させる当接部24cが設けられている。」
カ 「【0026】
また、前記シリンダハウジング22の外周には、前記第1圧力室24aに対し圧縮空気を給排するための第1ポート25aと、前記第2圧力室24bに対し圧縮空気を給排するための第2ポート25bとが設けられており、これら第1及びポート25a、25bは、前記シリンダハウジング22や前記カラー部材24dに設けられた給排気流路を通じて、前記第1及び第2圧力室24a、24bに対しそれぞれ接続されている。」
キ 「【0028】
その一方で、本実施形態において、前記第2ブロック40は、前記弁シャフト5の基端部5bに固定されたレバー部材41より構成されている。…」
ク 「【0033】
そして、これらガイド溝33並びに第1及び第2ガイドローラ27a、27bが、前記弁移動機構のうち、弁板4を図1及び図2に示す全開位置P1と図4及び5に示す中間位置P2との間で移動させる平行移動機構を構成している。この平行移動機構においては、前記第1ブロックと第2ブロックとが相対運動することなく一体を成して前記弁シャフトの軸線L1方向に移動することにより、前記弁板4を、そのシール面4aに装着されたシール部材9を弁箱3の内面に接触させることなく、前記弁シート8の面に対し平行に移動させることができるようになっている。」
ケ 「【0042】
さらに、前記弁移動機構は、前記平行移動機構及び垂直移動機構に加えて、これら平行移動機構と垂直移動機構とを相互に切り換えるためのストッパ機構70を備えている。このストッパ機構70は、前記一対のレバー部材41の第1肩部41cにおける前記ボンネット10と対向する面にそれぞれ設けられた停止ローラ71と、前記ボンネット10の外面10bにおける該停止ローラ71と対向する位置にそれぞれ設けられた停止部72とを有している。
このとき、前記停止ローラ71は、前記第1肩部41c上において、前記弁シャフト5の軸線L1と垂直方向すなわち弁シート8の面と垂直方向に回転可能に支持されている。また、前記停止部72は、前記停止ローラ71を当接させて、前記レバー部材41がさらに前記軸線L1に沿って前記弁シャフト5の先端方向へ移動するのを阻止すると同時に、該停止ローラ71が前記弁シート8の面と垂直方向へ転動して、前記レバー部材41が同方向へ移動するのを許容する。」
コ 「【0043】
次に、前記ゲートバルブ1の基本的な動作について具体的に説明する。
まず、エアシリンダ20の第2ポート25bから圧縮空気を第2圧力室24bに供給すると共に、第1ポート25aから第1圧力室24aの圧縮空気を排気することにより、駆動ピストン23をロッド側の端部まで移動させてカラー部材に当接させると、図1及び図2に示すように、シリンダハウジング22内からの駆動ロッド21が進出して、第1ブロック30(ロッドアーム31及びカムフレーム32)と第2ブロック40(レバー部材41)とが弁箱3やボンネット10から最も離間した位置に移動する。それに伴って、弁板4はゲート開口2から弁シャフト5の軸線L1方向に完全に退避した全開位置P1に移動され、ゲート開口2と背面側開口2aとの間に通路が形成される。その結果、この通路を通じてチャンバ内に対しワークを出し入れすることができる。」
サ 「【0045】
次に、図4に示すように、エアシリンダ20の第1ポート25aから圧縮空気を第1圧力室24aに供給すると共に、第2ポート25bから第2圧力室24bの圧縮空気を排気することにより、前記駆動ピストン23をヘッド方向に移動させて、駆動ロッド21をその軸線L2に沿ってリンダハウジング22内へと後退させる。すると同時に、ロッドアーム31及びカムフレーム32とレバー部材41とが、圧縮バネ6の変形(伸縮や屈曲等)による相対移動を伴うことなく一体となって、駆動ロッド21の移動方向と同方向(弁シャフト5の軸線L1方向)に移動する。
【0046】
それに伴って、弁板4は弁シャフト5の軸線L1に沿ってゲート開口2方向へと移動する。その間、弁板4は弁シート8の面に対して平行移動する。そして、図4及び図5に示すように、レバー部材41の停止ローラ71がボンネット10の外面10bの停止部72に当接して該レバー部材41の軸線L1方向への移動が阻止されると、図5に示すように、弁板4がゲート開口2と離間して対向する(すなわち、シール部材9が弁シート8と離間して対向する)中間位置P2に達し、該弁板4の弁シート8の面に対する平行移動が停止される。」
シ 「【0048】
続いて、図7に示すように、さらにエアシリンダ20の第1圧力室24aに圧縮空気を供給することにより、前記駆動ピストン23をヘッド方向に移動させて、さらに駆動ロッド21を後退させる。すると、上述のように、レバー部材41から成る第2ブロック40は、上記ストッパ機構70(停止ローラ71及び停止部72)により軸線L1方向への移動が既に阻止されているため、ロッドアーム31及びカムフレーム32から成る第1ブロック30のみが、前記圧縮バネ6を圧縮しながら軸線L1方向に移動する。それに伴って、前記レバー部材41は、前記垂直移動機構により、前記弁シート8側に向かって軸線L1に対して垂直方向へ移動する。
【0049】
その結果、前記弁板4が、前記中間位置P2から、図8に示すように、前記密閉位置P3のうち最小の接触圧(圧縮量)をもってシール部材9を弁シート8に対し当接させる第1密閉位置P3aに達する。そして、チャンバでの通常の真空処理においては、この位置が密閉位置として使用される。」

ス 上記ア、イ、クの記載事項及び図1(下図)の図示内容からみて、弁移動機構は弁シャフト5を介して弁板4を開閉動作させているといえ、また、上記ア、エ、カ、コの記載事項及び図1(下図)の図示内容からみて、弁移動機構は、ボンネット10と、該ボンネット10に弁シャフト5を挟んで互いに平行に取り付けられた左右一対のエアシリンダ20と、第2ポート25b及び第1ポート25aと、を有していることがわかる。

セ 上記エ、オの記載事項及び図1(下図)の図示内容からみて、駆動ピストン23はシリンダハウジング22の内部に進出、後退するように収容されており、駆動ロッド21は駆動ピストン23に基端を固定されて先端がシリンダハウジング22の外部に突出していることがわかる。

ソ 上記ア、エ、キの記載事項及び図1(下図)の図示内容からみて、一対のエアシリンダ20の駆動ロッド21には、弁シャフト5の基端部が第1ブロック30及びレバー部材41を介して支持されていることがわかる。

タ 上記ア、オ、コ?シの記載事項及び図1、4?5、7?8(下図)の図示内容からみて、駆動ピストン23及び駆動ロッド21の進出範囲により、弁板4は、ゲート開口2を密閉する密閉位置P3から、前記ゲート開口2と離間して対向する中間位置P2を経て、前記ゲート開口2を全開にする全開位置P1に移動し、前記駆動ピストン23及び駆動ロッド21の後退範囲により、前記弁板4は、前記全開位置P1から、前記中間位置P2を経て、前記密閉位置P3に移動していることがわかる。

チ 上記サの記載事項及び図1、4(下図)の図示内容からみて、ボンネット10には、弁板4が全開位置P1から中間位置P2に到達した際にレバー部材41の停止ローラ71が当接する停止部72が設けられていることがわかる。



(2) 引用発明
上記ア?チに示した事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「ゲート開口2を開閉する弁板4と、該弁板4に先端が固定された弁シャフト5と、該弁シャフト5を介して前記弁板4を開閉動作させる弁移動機構とを有し、
前記弁移動機構は、前記弁シャフト5が移動可能に挿通するボンネット10と、該ボンネット10に前記弁シャフト5を挟んで互いに平行に取り付けられた左右一対のエアシリンダ20と、該一対のエアシリンダ20に対して圧縮空気を給排する第2ポート25b及び第1ポート25aとを有し、
前記エアシリンダ20は、前記ボンネット10に固定されたシリンダハウジング22と、該シリンダハウジング22の内部に進出、後退するように収容された駆動ピストン23と、該駆動ピストン23に基端を固定されて先端が前記シリンダハウジング22の外部に突出する駆動ロッド21と、前記駆動ピストン23のヘッド側及びロッド側に設けられた第2圧力室24b及び第1圧力室24aとを有し、
前記第2圧力室24bは、前記シリンダハウジング22に設けられた給排気流路を通じて前記第2ポート25bに接続し、前記第1圧力室24aは、前記シリンダハウジング22に設けられた給排気流路を通じて前記第1ポート25aに接続しており、
前記一対のエアシリンダ20の駆動ロッド21には、前記弁シャフト5の基端部が第1ブロック30及びレバー部材41を介して支持されていて、前記駆動ピストン23及び駆動ロッド21の進出範囲により、前記弁板4は、前記ゲート開口2を密閉する密閉位置P3から、前記ゲート開口2と離間して対向する中間位置P2を経て、前記ゲート開口2を全開にする全開位置P1に移動し、前記駆動ピストン23及び駆動ロッド21の後退範囲により、前記弁板4は、前記全開位置P1から、前記中間位置P2を経て、前記密閉位置P3に移動し、
前記ボンネット10には、前記弁板4が全開位置P1から中間位置P2に到達した際に前記レバー部材41の停止ローラ71が当接する停止部72が設けられている、
ゲートバルブ。」

2.引用文献1について
また、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭58-152907号公報(以下、「引用文献1」という。)には、第1図とともに以下の事項が記載されている。

・「従来、シリンダ端部にクツシヨン機構を設けるものがある…。すなわち、従来の速度制御可能なエアシリンダは、例えば第1図に示されるように、シリンダチユーブa内で移動可能なピストンbの両側にそれぞれ所定の長さのクツシヨンカラーc、c’を設けると共に、シリンダチユーブ両端のエンドカバーe、e’にはそのクツシヨンカラーを収容し得る軸方向穴d、d’をそれぞれ形成しかつその軸方向穴を給、排気ポートf、f’にそれぞれ連通させてその軸方向穴を主空気通路とし、各軸方向穴の開口端にはクツシヨンカラーの外周と係合して軸方向穴とピストン室g、g’との連通を阻止し得るシール部材h、h’を設け、ピストンが例えば右方に所定のストローク移動してクツシヨンカラーcが軸方向穴に入つた後は軸方向穴dを介してのピストン室fからの排気を阻止して絞り通路iのみから排気するようにし、それにより速度を制御するようになつている。」(第1ページ右下欄第6行?第2ページ左上欄第9行)


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を、その有する機能に照らして対比すると、引用発明における「固定」、「弁移動機構」、「移動可能に挿通」、「圧縮空気」、「第2ポート25b」、「第1ポート25a」、「進出、後退する」、「駆動ピストン23」、「ヘッド側及びロッド側」、「設けられた」、「第2圧力室24b」、「第1圧力室24a」、「第1ブロック30及びレバー部材41」、「進出範囲」、「後退範囲」は、それぞれ、本願発明1における「連結」、「駆動機構」、「変位自在に貫通」、「エア」、「ヘッド側ポート」、「ロッド側ポート」、「前進、後退自在なる」、「ピストン」、「一面側及び他面側」、「形成された」、「ヘッド側圧力室」、「ロッド側圧力室」、「シャフト支持機構」、「前進ストローク」、「後退ストローク」に相当する。
さらに、引用発明における「前記ゲート開口2と離間して対向する中間位置P2」は、その有する機能に照らして対比すると、本願発明1における「前記ゲート開口に対向するが該ゲート開口を閉鎖しない中間位置」に相当する。
また、引用発明における「前記第2圧力室24bは、前記シリンダハウジング22に設けられた給排気流路を通じて前記第2ポート25bに接続し、前記シリンダハウジング22に設けられた給排気流路を通じて前記第1圧力室24aは、前記第1ポート25aに接続」することと、本願発明1における「前記ヘッド側圧力室は、前記シリンダハウジング及びボンネットに形成されたヘッド側主流路を通じて前記ヘッド側ポートに連通し、前記ロッド側圧力室は、前記シリンダハウジング及びボンネットに形成されたロッド側主流路を通じて前記ロッド側ポートに連通して」いることとは、「前記ヘッド側圧力室は、前記シリンダハウジングに形成されたヘッド側主流路を通じて前記ヘッド側ポートに連通し、前記ロッド側圧力室は、前記シリンダハウジングに形成されたロッド側主流路を通じて前記ロッド側ポートに連通して」いることという限りで一致するものである。
さらに、引用発明における「ゲートバルブ」と、本願発明1における「低騒音ゲートバルブ」とは、「ゲートバルブ」という限りで一致するものである。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「ゲート開口を開閉する弁板と、該弁板に先端が連結された弁シャフトと、該弁シャフトを介して前記弁板を開閉動作させる駆動機構とを有し、
前記弁移動機構は、前記弁シャフトが変位自在に貫通するボンネットと、該ボンネットに前記弁シャフトを挟んで互いに平行に取り付けられた左右一対のエアシリンダと、該一対のエアシリンダに対してエアを給排するヘッド側ポート及びロッド側ポートとを有し、
前記エアシリンダは、前記ボンネットに固定されたシリンダハウジングと、該シリンダハウジングの内部に前進、後退自在なるように収容されたピストンと、該ピストンに基端を連結されて先端が前記シリンダハウジングの外部に突出する駆動ロッドと、前記駆動ピストンの一面側及び他面側に形成されたヘッド側圧力室及びロッド側圧力室とを有し、
前記ヘッド側圧力室は、前記シリンダハウジングに形成されたヘッド側主流路を通じて前記ヘッド側ポートに連通し、前記ロッド側圧力室は、前記シリンダハウジングに形成されたロッド側主流路を通じて前記ロッド側ポートに連通しており、
前記一対のエアシリンダの駆動ロッドには、前記弁シャフトの基端部がシャフト支持機構を介して支持されていて、前記ピストン及び駆動ロッドの前進ストロークにより、前記弁板は、前記ゲート開口を密閉する密閉位置から、前記ゲート開口に対向するが該ゲート開口を閉鎖しない中間位置を経て、前記ゲート開口を全開にする全開位置に移動し、前記ピストン及び駆動ロッドの後退ストロークにより、前記弁板は、前記全開位置から、前記中間位置を経て、前記密閉位置に移動する、
ゲートバルブ。」

(相違点1)
本願発明1においては、「前記ヘッド側圧力室は、前記シリンダハウジングに形成されたヘッド側主流路を通じて前記ヘッド側ポートに連通し、前記ロッド側圧力室は、前記シリンダハウジングに形成されたロッド側主流路を通じて前記ロッド側ポートに連通して」いることに関して、前記ヘッド側圧力室は前記シリンダハウジング「及びボンネット」に形成されたヘッド側主流路を通じて前記ヘッド側ポートに連通し、前記ロッド側圧力室は前記シリンダハウジング「及びボンネット」に形成されたロッド側主流路を通じて前記ロッド側ポートに連通しており、また、「前記エアシリンダはまた、前記弁板でゲート開口を開閉するときの衝撃を緩和するヘッド側エアクッション機構及びロッド側エアクッション機構を有し、前記ヘッド側エアクッション機構は、前記ヘッド側圧力室とヘッド側主流路とを並列に結ぶヘッド側連通路及びヘッド側絞り流路と、後退する前記ピストンが後退ストローク端に近づいたとき前記ヘッド側連通路を遮断する遮断機構とを有し、該遮断機構は、前記ピストンの後退ストロークにおいて、前記弁板が前記中間位置に到達する前に前記ヘッド側連通路を遮断し、前記ロッド側エアクッション機構は、前記ロッド側圧力室とロッド側主流路とを並列に結ぶロッド側連通路及びロッド側絞り流路と、前進する前記ピストンが前進ストローク端に近づいたとき前記ロッド側連通路を遮断する遮断機構とを有し、該遮断機構は、前記ピストンの前記前進ストロークにおいて、前記弁板が前記中間位置を通り過ぎた後に前記ロッド側連通路を遮断」しているのに対して、
引用発明においては、「前記ヘッド側圧力室は、前記シリンダハウジングに形成されたヘッド側主流路を通じて前記ヘッド側ポートに連通し、前記ロッド側圧力室は、前記シリンダハウジングに形成されたロッド側主流路を通じて前記ロッド側ポートに連通して」いることに関して、当該「ヘッド側主流路」及び「ロッド側主流路」が「ボンネット」にまで形成されているか否か不明であり、また、エアシリンダに、「前記弁板でゲート開口を開閉するときの衝撃を緩和するヘッド側エアクッション機構及びロッド側エアクッション機構」を有していない点。
(相違点2)
本願発明1においては、「前記ボンネットには、前記弁板が全開位置から中間位置に到達した際に前記シャフト支持機構が緩衝的に当接するダンパが設けられている」のに対して、
引用発明においては、ボンネット10に、弁板4が全開位置P1から中間位置P2に到達した際にレバー部材41の停止ローラ71が当接する停止部72が設けられているものの、当該停止部72は前記レバー部材41の停止ローラ71を「緩衝的に当接させるダンパ」といえるか否か明らかではない点。
(相違点3)
本願発明1は、「低騒音」ゲートバルブであるのに対して、引用発明は「低騒音」ゲートバルブではない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
引用発明は、エアシリンダ20に、「前記弁板でゲート開口を開閉するときの衝撃を緩和するヘッド側エアクッション機構及びロッド側エアクッション機構」を有するものではない。一方で、引用文献1には、軸方向穴d、d’と絞り通路iを有するクツシヨン機構を備えて、ピストンbのストロークにより当該軸方向穴d、d’を介してのピストン室fからの排気をクツシヨンカラーc、c’が阻止することにより、エアシリンダの速度制御を行うといった技術事項は開示されているところ、引用文献2において、エアシリンダの速度の制御を行う旨の示唆はなく、また、引用発明において自明のことともいえないことから、引用発明のエアシリンダ20に、引用文献1に記載された当該技術事項を積極的に採用する動機付けは見当たらない。
また、「該遮断機構は、前記ピストンの後退ストロークにおいて、前記弁板が前記中間位置に到達する前に前記ヘッド側連通路を遮断」すること、及び、「該遮断機構は、前記ピストンの前記前進ストロークにおいて、前記弁板が前記中間位置を通り過ぎた後に前記ロッド側連通路を遮断」することは、引用文献2及び引用文献1のいずれにも記載されておらず、仮に、引用発明のエアシリンダ20に、引用文献1に記載された当該技術事項を適用したとしても、引用発明において、「ヘッド側エアクッション機構」に対して、ピストン20の後退ストロークにおいて「前記弁板が前記中間位置に到達する前に前記ヘッド側連通路を遮断」させるとともに、「ロッド側エアクッション機構」に対して、ピストン20の前進ストロークにおいて「前記弁板が前記中間位置を通り過ぎた後に前記ロッド側連通路を遮断」させるようにすることは、当業者が容易になし得たことということはできない。
そして、本願発明1は、上記相違点1に係る構成を備えることにより、「弁板によるゲート開口の開閉時に、一対のエアシリンダのピストンが、前進ストローク及び後退ストロークの両方で、エアクッション機構により減速されてストローク端にゆっくりした動作で緩衝的に当接して停止するため、衝突音の発生が低減される」(本願明細書【0014】)といった、顕著な効果を奏するものである。特に、本願発明1は、弁板が「前記全開位置から、前記中間位置を経て、前記密閉位置に移動」するピストンの後退ストロークにおいて、弁板が「ゲート開口に対向するが該ゲート開口を閉鎖しない中間位置」「に到達する前に前記ヘッド側連通路を遮断」することで、「前記中間位置P2の近傍で、…発生する…騒音dについても、…著しく低減されている…」(本願明細書【0079】)といった、引用発明、引用文献1に記載された技術事項から予測しえない、顕著な効果を奏するものである。
したがって、上記相違点2?3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2?7について
本願発明2?7は、本願発明1を特定するための事項のすべてを備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
原査定は、請求項1について上記引用文献1及び引用文献2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、上記のとおり、本願発明1?7は、上記引用発明及び引用文献1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1?7は、当業者が引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-06-22 
出願番号 特願2018-247496(P2018-247496)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 角田 貴章谿花 正由輝  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 鶴江 陽介
長馬 望
発明の名称 低騒音ゲートバルブ  
代理人 林 直生樹  

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