• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 D06F
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 D06F
管理番号 1375585
審判番号 不服2020-9607  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-08 
確定日 2021-07-01 
事件の表示 特願2015-164790「衣類乾燥機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月 2日出願公開、特開2017- 42211〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年8月24日の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

平成31年 4月15日付け 拒絶理由通知書(最初)
令和 元年 6月10日 意見書、手続補正書の提出
平成 元年11月12付け 拒絶理由通知書(最後)
令和 2年 1月16日 意見書、手続補正書の提出
令和 2年 4月27日付け 令和2年1月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定
令和 2年 7月 8日 審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和2年7月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年7月8日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。)
「 【請求項1】
外箱と、
この外箱内に設けられ、衣類が収容される乾燥室と、
この乾燥室の外側において両端部が当該乾燥室内と連通するように設けられた循環風路と、
前記乾燥室内の空気を前記循環風路を通して循環させる送風手段と、
冷媒を圧縮機、凝縮器、減圧手段、及び蒸発器を通して循環させる冷凍サイクルであって、前記凝縮器及び前記蒸発器を前記循環風路中に配設した構成のヒートポンプと、
を備え、
前記凝縮器及び前記蒸発器は前記外箱内の上部に位置させて夫々個別に配置され、そのうち少なくとも蒸発器は、マルチフロータイプの熱交換器であって、当該熱交換器の第1ヘッダ部と第2ヘッダ部との間に、当該両ヘッダ部を連通するとともに相互に平行な冷媒通路を形成するように隣り合ったプレートと、当該隣り合ったプレート間に両プレートと交互に接するように設けられ通気方向が前記冷媒通路に対して交差するコルゲートフィンと、が交互に併設された熱交換器で構成し、
前記外箱内の上部における前記循環風路中に当該熱交換器を前記通気方向が傾く傾斜配置で設けた衣類乾燥機。
【請求項2】
前記凝縮器及び前記蒸発器は、何れも前記プレートと前記コルゲートフィンとを有する前記マルチフロータイプの熱交換器で構成し、前記循環風路中において、その一方の熱交換器と他方の熱交換器とを、相互に下方が拡開するように離間させてハ字状をなす傾斜配置で設けた請求項1記載の衣類乾燥機。
【請求項3】
外箱と、
この外箱内に設けられ、衣類が収容される乾燥室と、
この乾燥室の外側において両端部が当該乾燥室内と連通するように設けられた循環風路と、
前記乾燥室内の空気を前記循環風路を通して循環させる送風手段と、
冷媒を圧縮機、凝縮器、減圧手段、及び蒸発器を通して循環させる冷凍サイクルであって、前記凝縮器及び前記蒸発器を前記循環風路中に配設した構成のヒートポンプと、
を備え、
前記凝縮器及び前記蒸発器は前記外箱内の上部に位置させて夫々個別に配置され、そのうち少なくとも蒸発器は、マルチフロータイプの熱交換器であって、当該熱交換器の第1ヘッダ部と第2ヘッダ部との間に、当該両ヘッダ部を連通するとともに相互に平行な冷媒通路を形成するように隣り合ったプレートと、当該隣り合ったプレート間に両プレートと交互に接するように設けられ通気方向が前記冷媒通路に対して交差するコルゲートフィンと、が交互に併設された熱交換器で構成し、
前記外箱内の上部における前記循環風路中に当該熱交換器を前記通気方向が上下方向を指向する横置き配置で設けた衣類乾燥機。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和元年6月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
衣類が収容される乾燥室と、
この乾燥室の外側において両端部が当該乾燥室内と連通するように設けられた循環風路と、
前記乾燥室内の空気を前記循環風路を通して循環させる送風手段と、
冷媒を圧縮機、凝縮器、減圧手段、及び蒸発器を通して循環させる冷凍サイクルであって、前記凝縮器及び前記蒸発器を前記循環風路中に配設した構成のヒートポンプと、
を備え、
前記凝縮器及び前記蒸発器のうち少なくとも蒸発器は、マルチフロータイプの熱交換器であって、当該熱交換器の第1ヘッダ部と第2ヘッダ部との間に、当該両ヘッダ部を連通するとともに相互に平行な冷媒通路を形成するように隣り合ったプレートと、当該隣り合ったプレート間に両プレートと交互に接するように設けられ通気方向が前記冷媒通路に対して交差するコルゲートフィンと、が交互に併設された熱交換器で構成し、
前記循環風路中に当該熱交換器を前記通気方向が傾く傾斜配置で設けた衣類乾燥機。
【請求項2】
前記凝縮器及び前記蒸発器は、何れも前記プレートと前記コルゲートフィンとを有する前記マルチフロータイプの熱交換器で構成し、前記循環風路中において、その一方の熱交換器と他方の熱交換器とを、相互に下方が拡開するように離間させてハ字状をなす傾斜配置で設けた請求項1記載の衣類乾燥機。
【請求項3】
衣類が収容される乾燥室と、
この乾燥室の外側において両端部が当該乾燥室内と連通するように設けられた循環風路と、
前記乾燥室内の空気を前記循環風路を通して循環させる送風手段と、
冷媒を圧縮機、凝縮器、減圧手段、及び蒸発器を通して循環させる冷凍サイクルであって、前記凝縮器及び前記蒸発器を前記循環風路中に配設した構成のヒートポンプと、
を備え、
前記凝縮器及び前記蒸発器のうち少なくとも蒸発器は、マルチフロータイプの熱交換器であって、当該熱交換器の第1ヘッダ部と第2ヘッダ部との間に、当該両ヘッダ部を連通するとともに相互に平行な冷媒通路を形成するように隣り合ったプレートと、当該隣り合ったプレート間に両プレートと交互に接するように設けられ通気方向が前記冷媒通路に対して交差するコルゲートフィンと、が交互に併設された熱交換器で構成し、前記循環風路中に当該熱交換器を前記通気方向が上下方向を指向する横置き配置で設けた衣類乾燥機。
【請求項4】
前記凝縮器及び蒸発器を、衣類乾燥機本体の上部に配置した請求項1から3の何れか一項記載の衣類乾燥機。」

2.補正の適否
(1)本件補正の目的について
本件補正のうち、請求項1及び請求項3の「外箱と、この外箱内に設けられ」「前記凝縮器及び前記蒸発器は前記外箱内の上部に位置させて夫々個別に配置され」及び「前記外箱内の上部における」前記循環風路中との事項は、外箱を備える点を特定するとともに、当該外箱に対する、乾燥室、凝縮器、蒸発器及び循環風路の配置について限定を付加するものであるところ、かかる「外箱」は、本件補正前の請求項1-4に記載がないから、当該補正事項は、本件補正前の請求項1-4に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。
そうすると、当該補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、また、同項第1号、第3号、第4号のいずれを目的とするものでないことも明らかである。

(2)独立特許要件について
上記(1)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでないが、仮に、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものとして、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(3)引用文献の記載事項
ア.引用文献1
(ア)原査定(令和2年4月27日付けの拒絶査定)の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である国際公開第2013/167378号(2013年(平成25年)11月14日国際公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(日本語は当審仮訳。下線は注目箇所を示すために当審で付したものである。)
a 「According to an embodiment, the second plane defined by the channels layer is parallel to the horizontal direction and also to the air flow direction. In this case, the air pressure drop in the process air circuit is minimized because this configuration minimizes the resistance to flow of the process air. However, in the evaporator, during the functioning of the dryer, water condenses on the surfaces of the module. The water flows down, for example to a canister, by its own weight. However, the velocity of the process air is not fast enough to avoid a temporary coverage of the channels layer outer surface by the condensed water. The fins can be covered by this water as well. The fact that the fins and/or the surfaces of the module is/are covered by water, reduces the heat exchange surface available for the heat exchange between the refrigerant and the process air, reducing the efficiency of the heat pump. For this reason, preferably the evaporator of the dryer of the invention includes a heat exchanger module having a layer defining a plane which is tilted with respect to the horizontal plane, in particular more preferably the angle a formed between the channels layer plane and the horizontal plane is comprised between 3°≦ a ≦ 20°. 」(8頁21行?9頁8行)
(一実施形態によれば、チャネル層により規定される第2の平面が、水平方向に加え空気の流れ方向にも平行である。この場合、この構成によって処理空気の流れに対する抵抗が最小化されるため、空気処理循環路内の空気の圧力降下が最小化される。しかしながら、蒸発器においては、乾燥機の作動中、水はモジュールの表面上に凝縮する。水はそれ自身の重量によって、例えばキャニスタに向けて、下方に流れる。しかしながら、処理空気の速度は、凝縮水によってチャネル層外表面が一時的に覆われるのを避けるのに十分な速さではない。フィンも、この水によって覆われ得る。フィンおよび/またはモジュールの表面が水によって覆われるということは、冷媒と処理空気との間で熱交換可能な熱交換面を減少させ、ヒートポンプの効率を低下させる。この理由のために、好ましくは本発明の乾燥機の蒸発器は、水平面に対して傾斜した平面を規定する層を有する熱交換器モジュールを含み、とりわけより好ましくは、チャネル層平面と水平面とが成す角αが3°≦α≦20°間に含まれる。)

b 「- Fig. 14 is perspective view of a portion of a further embodiment of the dryer of the invention of fig. la or lb with the casing removed;
- Figs. 15a, 15b and 15c are a schematic front view, top view and lateral view, respectively, of the embodiment of fig. 14; 」(15頁11行?14行)
(図14は、ケーシングを取り外した図1aまたは1bの本発明のドライヤの別の実施形態の一部分の斜視図である。
図15a、図15bおよび図15cは、図14の実施形態のそれぞれ、模式的正面図、上面図および側面図である。)

c 「Laundry dryer 1 comprises an outer box casing 2, preferably but not necessarily parallelepiped-shaped, and a drying chamber, such as a drum 3, for example having the shape of a hollow cylinder, for housing the laundry and in general the clothes and garments to be dried. The drum 3 is preferably rotatably fixed to the casing, so that it can rotates around a preferably horizontal axis (in alternative embodiments, rotation axis may be vertical or tilted). Access to the drum 3 is achieved for example via a door, preferably hinged to casing, which can open and close an opening realized on the casing itself. .

More in detail, casing 2 generally includes a front panel 20, a rear wall panel 21 and two sidewall panel all mounted on a basement 24. Panels 20, 21 and basement 24 can be of any suitable material. Preferably, the basement 24 is realized in plastic material. Preferably, basement 24 is molded.

Preferably, basement 24 includes an upper and a lower shell 24a,24b (visible in the figures 13a and 13b detailed below).

The dryer defines an horizontal plane (X,Y) which is substantially the plane of the ground on which the dryer is situated, and a vertical direction Z perpendicular to the plane (X,Y).

Laundry dryer 1 also comprises an electrical motor assembly for rotating, on command, revolving drum 3 along its axis inside casing. Casing 2, revolving drum 3, door and motor are common parts in the technical field and are considered to be known; therefore they will not be described in details.

Dryer 1 additionally includes a process air circuit 4 which comprises the drum 3 and an air process conduit 11, schematically depicted in figs, la and lb as a plurality of arrows showing the path flow of a process air stream through the dryer 1. In the basement 24, air process conduit 11 is formed by the connection of the two upper and lower shells 24a,24b. Air process conduit 11 is preferably connected with its opposite ends to two opposite sides of drum 3. Process air circuit 4 may also include a fan or blower 12 (shown only in fig. la) and an electrical heater (not shown in the figures).

The dryer 1 of the invention additionally comprises a heat pump 30 including a first heat exchanger called also condenser 31 and a second heat exchanger called also evaporator 32. Heat pump 30 also includes a refrigerant closed circuit (schematically depicted in the picture with lines connecting the first to the second heat exchanger and vice versa, see in detail fig. 2) in which a refrigerant fluid flows, when the dryer 1 is in operation, cools off and may condense in correspondence of the condenser 31, releasing heat, and warms up, potentially even evaporating, in correspondence of the second heat exchanger (evaporator) 32, absorbing heat. Alternatively, no phase transition takes place in the condenser and/or evaporator, which indicates in this case respectively a gas heater and gas cooler, the refrigerant cools off or it warms up, respectively, without condensation or evaporation. In the following the heat exchangers are named either condenser and evaporator or first and second heat exchanger, respectively.

More in detail, the heat pump circuit connects via piping 35 (see figs. 3 and 4 for example) the second heat exchanger 32 where the refrigerant warms up and may undergo a phase transition from the liquid to the vapour via a compressor 33 to the condenser 31, in which the refrigerant cools off and may condense again. The cooled or condensed refrigerant arrives via an expansion device 34, such as a choke, a valve or a capillary tube, back at the evaporator 32.

Preferably, in correspondence of evaporator 32, the dryer 1 of the invention may include a condensed- water canister 40 (shown only in fig. lb) which collects the condensed water produced, when the dryer is in operation, inside evaporator 32 by condensation of the surplus moisture in the process air stream arriving from the drying chamber 3. The canister 40 is located at the bottom of the evaporator 32. Preferably, through a connecting pipe and a pump (not shown in the drawings), the collected demineralized water is sent in a reservoir located in correspondence of the highest portion of the dryer 1 so as to facilitate manual discharge of the water by the user. The condenser 31 and the evaporator 32 of the heat pump 30 are located in correspondence of the process air conduit 11.

In case of a condense dryer - as depicted in fig. la - where the air process circuit 4 is a closed loop circuit, the condenser 31 is located downstream of the evaporator 32. The air exiting the drum 3 enters the conduit 11 and reaches the evaporator 32 which cools down and dehumidifies the process air. The dry cool process air continues to flow through the conduit 11 till it enters the condenser 31, where it is warmed up by the heat pump 30 before re-entering the drum 3. 」(16頁4行?18頁7行)
(洗濯乾燥機1は、必須ではないが好ましくは平行六面体状である外箱ケーシング2と、洗濯物を収容するための例えば中空円筒の形状を備えるドラム3のような乾燥チャンバと、乾燥することを目的とした一般的に衣服および衣料品と、を備えている。ドラム3は、好ましくは、ケーシングに固定されて回転可能であり、好ましくは水平軸(代替の実施形態では、回転軸が垂直または傾斜していてもよい)の周りを回転することができるようになっている。例えば、ケーシング自体の開口を開閉することができる、好ましくはケーシングにヒンジ結合されたドアを介してドラム3にアクセスされる。

より詳細には、ケーシング2は、一般的には、前パネル20、後壁パネル21、及び、基台24上に搭載された2個の側壁パネルを含む。パネル20、21及び基台24は、任意の適切な材料とすることができる。好ましくは、基台24は、プラスチック材料で実現される。好ましくは、基台24はモールドされる。

好ましくは、基台24は、上下シェル24a,24b(図13Aおよび図13Bに示され以下で詳述される)を含む。

乾燥機は、乾燥機が配置される地面に対して実質的な平面である水平平面(X,Y)、及び、平面(X,Y)に垂直な垂直方向Zを定義する。

洗濯乾燥機1は、指令に応じてケーシング内でその軸線に沿って回転ドラム3を回転させるための、電気モータ組立体を備える。ケーシング2と、回転ドラム3と、ドアとモータとは、当該技術分野において一般的であり既知であると考えられている;従って、それらは詳細には説明されない。

乾燥機1は、さらにドラム3及び空気処理導管11を含む空気処理回路4を含んでおり、乾燥機1を通過する処理空気流の経路を示す複数の矢印が図1a及び1bに模式的に示されている。基台24において、空気処理導管11は、2個の上下シェル24a,24bを接続することにより形成されている。空気処理導管11は、好ましくは、ドラム3の対向する2辺に両端が接続されている。空気処理回路4は又、ファン又はブロワ12(図1にのみ図示)と、電気ヒータ(図示せず)を含むことができる。

本発明の乾燥機1は、凝縮器31とも呼ばれる第1の熱交換器と、蒸発器32とも呼ばれる第2の熱交換器と、を含むヒートポンプ30をさらに備えている。ヒートポンプ30は、冷媒流体が流れる閉回路(第1の熱交換器から第2の熱交換器へ接続する線として概略的に図示され、又はその逆の接続でも良い。詳細は図2を参照)を含み、乾燥機1の運転中、冷却中に冷媒が流れ、凝縮器31で凝縮し、熱を放出し、温められ、また、蒸発熱を吸収する第2熱交換器(蒸発器)32に対応して潜在的に蒸発さえもされる。代替的には、ガスヒータとガス冷却器とを意味する、凝縮器および/または蒸発器では、凝縮または蒸発することなしには、相転移は行われず、冷媒が冷却されたり、温められることもない。以下では、熱交換器は、凝縮器や蒸発器、又は、第1および第2の熱交換器のいずれかで命名している。

より詳細には、ヒートポンプ回路は、配管35(例えば図3及び図4参照)を介して第2の熱交換器32を接続しており、当該第2の熱交換器32では、圧縮機33から凝縮器31を介して、冷媒が温められて液体から気相への相転移を受け、冷媒は冷却して再び凝縮され得る。冷却されたまたは凝縮された冷媒は、絞り、弁又は毛細管のような、膨張装置34を介して、蒸発器32に戻る。

好ましくは、蒸発器32に対応して、本発明の乾燥機1は、凝縮水キャニスター40(図1b)を含んでも良く、当該凝縮水キャニスター40は、乾燥室3から来る処理空気流において、乾燥機の運転時に蒸発器32内で発生した余剰の水分の凝縮により凝縮された水を収集する。キャニスター40は蒸発器32の底部に配置されている。好ましくは、連結管及びポンプ(図示せず)を介して、利用者による水の手動排出を容易にするために、収集された脱塩水は乾燥機1の最上部に対応して配置されたリザーバに送られる。

ヒートポンプ30の凝縮器31及び蒸発器32は、空気処理導管11と連通するように配置される。

図1aに示すように、空気処理回路4が閉ループ回路である凝縮式乾燥機の場合、凝縮器31は、蒸発器32の下流側に配置されている。ドラム3を出た空気は、導管11に入り、冷却されて処理空気を除湿する蒸発器32に到達する。乾燥した低温の処理空気は、それが凝縮器31に入るまで、導管11を通って継続的に流れ、そこではそれはドラム3に再び入る前に、ヒートポンプ30によって温められている。)

d 「With now reference to figs. 3 and 4, the basement 24 of a dryer 1 showing a plurality of modules 10 included in the evaporator 32 and in the condenser 31 of the heat pump 30 according to the invention is depicted. In the mentioned figures, the casing 2 and the drum 3 of the dryer 1 have been removed in order to show the heat exchangers located along the process air conduit 11. As stated above, although in the appended drawings both evaporator 32 and condenser 31 of the dryer 1 includes heat exchanger modules10 realized according to the invention, it is to be understood that the evaporator 32 only or the condenser 31 only might include such module(s) 10. In addition, a single module 10 can be included in either evaporator 32 or condenser 31. Moreover, in case both evaporator and condenser include more than one module 10 according to the invention, the evaporator can include a different number of modules from the condenser (as per the appended figures 3 and 4 where the evaporator 32 includes two modules 10 and the condenser four modules 10).

Preferably, modules 10 are located in correspondence of the basement 24 of dryer 1.

The structure of a single module 10 will be now be described, with reference to the different embodiments depicted in figs. From 7a-7b to 12a-12b, 15a-15b-15c and 19.

A heat exchanger module 10 includes an inlet header 5 and an outlet header 6. Inlet and outlet headers 5,6 have preferably the structure of a pipe and more preferably with a circular cross section. The headers have a longitudinal extension along an axis, which corresponds to the main direction of flow of the refrigerant within the headers. The refrigerant is flowing into the module 10 via the inlet header 5 and exiting the same via the outlet header 6. A plurality of channels, each indicated with 7, is connecting the inlet to the outlet header and vice versa, so that the refrigerant can flow between the two headers, the plurality of channels being subject to the flow of process air, i.e. channels 7 are located within the air process conduit11 of the dryer 1. The channels 7, due to their configuration, allow a better heat exchange between the refrigerant and the process air than known dryers. Channel 7 defines a longitudinal direction X along which it extends. Preferably, the channels 7 are mounted in the module 10 so that their longitudinal extension X is substantially perpendicular to a process air flow direction Y and substantially parallel to the horizontal plane.

Preferably, the refrigerant flow within channels 7 is substantially perpendicular to the process air flow. According to a preferred embodiment, the channels 7 are grouped in channels layers 8: each channels layer includes a plurality of channels 7 which are adjacent and parallel to each other. More preferably, each module 10 includes a plurality of channels layers 8, more preferably all layers 8 are stacked one on top of the other in a stackwise direction and even more preferably parallel to each other, substantially forming a plurality of parallel rows. Preferably the stackwise direction is the vertical direction. According to an embodiment of the invention, channels layer 8 includes a single tube, having for example an elongated cross section, including two substantially parallel flat surfaces 9a,9b. Within the tube, separators 8a are realized in order to longitudinally divide the interior of the tube in the plurality of channels 7. Such a structure is schematically depicted in the cross section of a channels layer 8 of fig. 6. The cross section of the single channels 7 can be arbitrary. Each channels layer 8 has a width which depends on the number of channels which are located one adjacent to the other.

Preferably, each couple of adjacent stacked channels layers 8 is connected via fins 50. Preferably the upper surface 9a of a channels layer 8 is connected via the plurality of fins 50 to the lower surface 9b of the adjacent channels layer 8.」(19頁3行?20頁18行)
(図3及び図4を参照すると、本発明におけるヒートポンプ30の蒸発器32及び凝縮器31に含まれる複数のモジュール10を示す乾燥機1の基台24が示されている。これらの図では、空気処理導管11に沿って配置された熱交換器を示すために、ケーシング2と乾燥機1のドラム3は、除かれている。上述したように、添付の図面において乾燥機1の蒸発器32および凝縮器31の両方は、本発明によって実現される熱交換器モジュール10を備えているが、蒸発器32自体、又は、凝縮器31自体が、そのような(1つまたは複数の)モジュール10を含むことができることが理解されよう。さらに、単一のモジュール10は、蒸発器32または凝縮器31のいずれかに含まれることができる。また、蒸発器および凝縮器の両方が、本発明のように1つより多いモジュール10を含む場合には、蒸発器は凝縮器と異なる数のモジュールを含むことができる。(図3および4では、蒸発器32は2個のモジュール10を含み凝縮器は4個のモジュール10を含んでいる)。

好ましくは、モジュール10は、乾燥機1の基台24に対応して配置されている。

単一のモジュール10の構造は、以下に説明するとおり、図7a-7bから12a-12bまでと15a-15b-15c及び19に示されている種々の実施形態を参照して説明する。

熱交換器モジュール10は、入口ヘッダ5と出口ヘッダ6を有する。入口及び出口ヘッダー5,6は、管構造で、より好ましくは円形断面の構造を有していることが好ましい。ヘッダは、ヘッダ内の冷媒の流れの主方向に相当する方向に沿った長手延長軸を有している。冷媒は、入口ヘッダー5を介してモジュール10に流入し、出口ヘッダ6を介して流出する。それぞれ7で示されているように、複数のチャネルは、入口を出口ヘッダに接続、またはその逆に接続して、冷媒は、2つのヘッダとの間や、処理空気の流れに影響を与える複数のチャネル、すなわち、乾燥機1の空気処理導管11内に配置されているチャネル7、を流れることができる。チャネル7は、その構成に起因して、公知の乾燥機よりも、冷媒と処理空気との間のより良好な熱交換を可能にする。チャネル7は、それに沿って延びている長手方向Xを規定している。好ましくは、チャネル7は、その長手方向延長Xが処理空気流れ方向Yに実質的に直交し且つ水平面に実質的に平行となるようにモジュール10に取り付けられている。

好ましくは、チャネル7内の冷媒流が処理空気流に対して実質的に垂直である。好ましい実施形態によれば、チャネル7は、チャネル層8に分類される:各チャネル層は隣接し、互いに平行な複数のチャネル7を含む。より好ましくは、各モジュール10は、チャネル層8を複数備え、より好ましくは、全ての層8は、積み重ね方向に、そしてさらにより好ましくは互いに平行に上下に積層されて、実質的に平行な複数の列を形成する。好ましくは積み重ね方向は上下方向である。本発明の一実施形態によれば、チャネル層8は、単一の管、例えば細長い断面を含む、2個の実質的に平行な平坦面9a,9bを有している。チューブ内には、チューブの内部を複数の流路7に分離するためにセパレータ8aが実現され、そのような構造は、図6のチャネル層8の断面で概略的に示されている。単一のチャネル7の断面は、任意とすることができる。チャネル層8は、互いに隣接する位置に配置されるチャネルの数に依存する幅を有している。

好ましくは、隣接する積層されたチャネル層8の各対は、フィン50を介して接続されている。好ましくは、チャネル層8の上面9aは、複数のフィン50を介して隣接するチャネル層8の下面9bに接続される。)

e 「According to a seventh embodiment of the invention depicted in figs. 13a, 13b 13c and 13d, the module 10 has substantially the same configuration of the module of the first or the second embodiment, with the following differences. As mentioned, channels layer 8 defines a plane formed by the longitudinal direction of channel X and the width direction of the layer. In the first and second embodiment, said plane is parallel to the longitudinal direction Z of headers 5,6 and it is parallel to the horizontal plane (X,Y). In the seventh embodiment, such a plane forms an angle with the horizontal plane, and correspondingly with the longitudinal extension of the headers. Preferably said angle is comprised between 3° and 20°. Preferably, the module of the seventh embodiment is part of an evaporator 32.」(25頁12行?19行)
(図13a,13b,13c,13dに示されている本発明の第7の実施形態によれば、モジュール10は第1又は第2の実施の形態の同様と実質的に同一の構成であるが、以下の違いがある。上述したように、チャネル層8はチャネルXの長手方向および幅方向によって形成される平面を規定する。第1及び第2の実施形態では、平面が、ヘッダ5,6の長手方向Zと平行である水平面(X,Y)に平行である。第7の実施形態では、このような面は水平面に角度を形成しており、ヘッダの長手方向延長に対応している。好ましくはこの角度は3°と20°との間に含まれる。好ましくは、第7の実施形態のモジュールは、蒸発器32の一部である。)

(イ)図面からは次の事項が看取される。
a 図1aからは、空気処理回路4がドラム3の外側に配置されていること、空気回路4内の空気をドラム3に向けて送風するファン又はブロワ12が設けられていること、凝縮器31と蒸発器32はケーシング2内に設けられていることが看取される。

b 図3、図13c及び図14からは、凝縮器31及び蒸発器32が基台24上に設けられるとともに、凝縮器31と蒸発器32はそれぞれ別々に設けられていることが看取される。

c 図14及び図15a?cからは、チャネル7内の冷媒流の流れ方向(X軸方向)と空気流れ方向(Y軸方向)がクロスしており、チャネル層8間の空気流れ方向がY軸に対して角度アルファだけ傾斜するように設けられていることが看取される。

(ウ)引用発明
上記(ア)(イ)から、引用文献1には第7の実施形態として次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ケーシング2と、
前記ケーシング2に固定されて回転可能であり、洗濯物が収容されるドラム3と、
前記ドラム3の外側において両端が前記ドラム3に接続されている空気処理回路4と、
前記空気処理回路4内の空気を前記ドラム3に向けて送風するファン又はブロワ12と、
冷媒が蒸発器32、圧縮機33、凝縮器31、膨張装置34を介して前記蒸発器32に戻るヒートポンプ回路であって、閉ループ回路である前記空気処理回路4において前記凝縮器31は前記蒸発器32の下流側に配置されているヒートポンプ30と、
を備え、
前記凝縮器31及び前記蒸発器32は前記ケーシング2内の基台24上に設けられるとともに、前記凝縮器31と前記蒸発器32がそれぞれ別々に設けられ、前記蒸発器32は前記熱交換器モジュール10であって、前記熱交換器モジュール10の入口ヘッダ5と出口ヘッダ6との間に、これら2つのヘッダ間に冷媒が流れる複数のチャネル7に分離され2個の実質的に平行な平坦面9a、9bを有するチャネル層8と、隣接する積層された前記チャネル層8の各対を接続し、前記チャネル7内の冷媒流の流れ方向(X軸方向)と空気流れ方向(Y軸方向)がクロスするフィン50と、を有している前記熱交換器モジュール10で構成し、
前記ケーシング2内の前記空気処理回路4に前記蒸発器32を、前記蒸発器32の前記チャネル層8間の空気流れ方向がY軸に対して角度アルファだけ傾斜するように設けた洗濯乾燥機1。」


(4)引用文献との対比
ア.本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ケーシング2」は本件補正発明の「外箱」に相当し、以下同様に、
「前記ケーシング2に固定されて回転可能であり」は「この外箱内に設けられ」に、
「洗濯物」は「衣類」に、
「ドラム3」は「乾燥室」に、
「両端がドラム3に接続されている空気処理回路4」は「両端部が当該乾燥室内と連通するように設けられた循環風路」に、
「前記空気処理回路4内の空気を前記ドラム3に向けて送風するファン又はブロワ12」は「前記乾燥室内の空気を前記循環風路を通して循環させる送風手段」に、
「冷媒が蒸発器32、圧縮機33、凝縮器31、膨張装置34を介して蒸発器32に戻るヒートポンプ回路」は「冷媒を圧縮機、凝縮器、減圧手段、及び蒸発器を通して循環させる冷凍サイクル」に、
「閉ループ回路である前記空気処理回路4において前記凝縮器31は前記蒸発器32の下流側に配置されている」という事項は「前記凝縮器及び前記蒸発器を前記循環風路中に配設した構成の」という事項に、
「前記凝縮機31と前記蒸発器32がそれぞれ別々に設けられ」という事項は「前記凝縮器及び前記蒸発器は」「夫々個別に配置され」という事項に、
「熱交換器モジュール10」は「熱交換器」に、
「入口ヘッダ5」は「第1ヘッダ部」に、
「出口ヘッダ6」は「第2ヘッダ部」に、
「チャネル7」は「冷媒通路」に、
「これら2つのヘッダ間に冷媒が流れる複数のチャネル7に分離され2個の実質的に平行な平坦面9a、9bを有するチャネル層8」は「当該両ヘッダ部を連通するとともに相互に平行な冷媒通路を形成するように隣り合ったプレート」に、
「隣接する積層された前記チャネル層8の各対を接続し、前記チャネル7内の冷媒流の流れ方向(X軸方向)と空気流れ方向(Y軸方向)がクロスするフィン50を有している」という事項は「プレートと、当該隣り合ったプレート間に両プレートと交互に接するように設けられ通気方向が前記冷媒通路に対して交差するコルゲートフィンと、が交互に併設された」という事項に、それぞれ相当する。

本件補正発明における「マルチフロータイプの熱交換器」とは、「当該熱交換器の第1ヘッダ部と第2ヘッダ部との間に、当該両ヘッダ部を連通するとともに相互に平行な冷媒通路を形成するように隣り合ったプレートと、当該隣り合ったプレート間に両プレートと交互に接するように設けられ通気方向が前記冷媒通路に対して交差するコルゲートフィンと、が交互に併設された熱交換器」のことであると解され、上述した相当関係を踏まえれば引用発明の熱交換器モジュール10(熱交換器)も同様の構成を備えているから、引用発明の熱交換器モジュール10(熱交換器)も「マルチフロータイプの熱交換器」であるといえる。

引用発明の「前記ケーシング2内の前記空気処理回路4に前記蒸発器32を、前記蒸発器32のチャネル層8間の空気流れ方向がY軸に対して角度アルファだけ傾斜するように設けた」という事項と、本件補正発明の「前記外箱内の上部における前記循環風路中に当該熱交換器を前記通気方向が傾く傾斜配置で設けた」という事項とは、「前記外箱内の前記循環風路中に当該熱交換器を前記通気方向が傾く傾斜配置で設けた」という点で共通する。

引用発明の「洗濯乾燥機1」は本件補正発明の「衣類乾燥機」に相当する。

イ.一致点及び相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「外箱と、
この外箱内に設けられ、衣類が収容される乾燥室と、
この乾燥室の外側において両端部が当該乾燥室内と連通するように設けられた循環風路と、
前記乾燥室内の空気を前記循環風路を通して循環させる送風手段と、
冷媒を圧縮機、凝縮器、減圧手段、及び蒸発器を通して循環させる冷凍サイクルであって、前記凝縮器及び前記蒸発器を前記循環風路中に配設した構成のヒートポンプと、
を備え、
前記凝縮器及び前記蒸発器は夫々個別に配置され、そのうち少なくとも蒸発器は、マルチフロータイプの熱交換器であって、当該熱交換器の第1ヘッダ部と第2ヘッダ部との間に、当該両ヘッダ部を連通するとともに相互に平行な冷媒通路を形成するように隣り合ったプレートと、当該隣り合ったプレート間に両プレートと交互に接するように設けられ通気方向が前記冷媒通路に対して交差するコルゲートフィンと、が交互に併設された熱交換器で構成し、
前記外箱内の前記循環風路中に当該熱交換器を前記通気方向が傾く傾斜配置で設けた衣類乾燥機。」

<相違点>
本件補正発明では、凝縮器及び蒸発器は「外箱内の上部に位置させて」配置され、循環風路も「外箱内の上部に」設けられているのに対し、引用発明では「基台24上」に設けられている点。

(5)判断
以下、相違点について検討する。
衣類乾燥機において、ヒートポンプの凝縮器及び蒸発器や、これらが内部に配設される循環風路をコンパクトに配置したり、メンテナンス性を向上させるために、衣類乾燥機の外箱内の上部に位置させることは、本願の出願前に周知の技術であり、例えば原査定で引用された特開2011-142号公報(平成23年1月6日出願公開、特に段落[0026][0051][0052]、図1、図2参照)等にも開示されている。
衣類乾燥機内にヒートポンプの凝縮器及び蒸発器をコンパクトに配置したり、メンテナンス性を向上させることは、衣類乾燥機全般において有する課題であることは当業者にとって明らかであって、引用発明においても内在する課題であるといえる。また、引用文献1には上記(3)ア(ア)dに摘記したとおり、「好ましくは、モジュール10は、乾燥機1の基台24に対応して配置され」と記載されており、凝縮器及び蒸発器等を基台24に配置することは必須の条件ではなく、好ましい例として挙げているに過ぎないから、引用発明におけるヒートポンプの凝縮器及び蒸発器や、これらが内部に配設される循環風路を、上記課題に鑑み、上記周知の技術に倣って外箱内の上部に位置させて、相違点に係る本件補正発明の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、上記相違点を勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知の技術が奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)審判請求人は、審判請求書において、「引用文献…4(審決注:上記(5)において周知の技術の例として挙げた文献)の洗濯乾燥機等における、凝縮器や蒸発器は、何れもフィンチューブタイプの熱交換器で構成されており、本願発明のマルチフロータイプの熱交換器と全く構成が異なるものである。」「マルチフロータイプの熱交換器を、引用文献4の如く外箱上部に配置すれば、寧ろ除湿水が乾燥用空気によりドラム内へ入り込み易くなる虞があり、又、別途の排水路の設置に伴う大型化を招き本願発明の目的に反することとなるから、引用文献1,4を組み合わせることに阻害要因がある。」と主張している。
確かに上記(5)において周知の技術の例として挙げた文献に示されている凝縮器や蒸発器は、図面を参酌するとフィンチューブタイプであるとも解されるが、上記文献は凝縮器や蒸発器等の配置位置に関する周知の技術の例として挙げたものであり、上記(5)で説示した衣類乾燥機内にヒートポンプの凝縮器及び蒸発器をコンパクトに配置したり、メンテナンス性を向上させるという課題は、熱交換器や蒸発器等のタイプによらず、衣類乾燥機全般において有する課題であるから、当該課題解決のためフィンチューブタイプにおいて採用されている上記周知の技術を、マルチフロータイプにおいて試みることも当業者にとって格別困難ではない。
また、外箱内の上部に配置する熱交換器が、フィンチューブタイプであれば除湿水が乾燥用空気によりドラム内へ入り込み易くなる虞がなく、マルチフロータイプではその虞があり、別途排水路の設置に伴う大型化を招くとの主張に関し、マルチフロータイプの熱交換器を外箱内の上部に配置することによりそのような不具合が生じるとするならば、本件補正発明も同様の不具合を生じることになるが、本件補正発明では当該不具合について特段の考慮はされておらず、本件補正発明はそのような不具合を許容するものであるといえるから、引用発明に上記周知技術を適用する際に、請求人が主張するような不具合な事項が生じるとしても、当該事項は阻害要因になり得ない。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。

3.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、仮に本件補正が特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1.本願発明
令和2年7月8日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和元年6月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、日本国内又は外国において、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないか、引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用文献及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1およびその記載事項は、前記第2[理由]2(3)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、外箱を備える点を削除するとともに、凝縮器、蒸発器及び循環風路の外箱に対する配置に係る限定事項、すなわち、前記第2[理由]2(4)イにおける相違点に相当する発明特定事項を削除したものである。
本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(3)(4)(5)に記載したとおり、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記第2[理由]2(4)イにおける相違点に相当する発明特定事項が削除された本願発明は、引用発明であるか、又は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は、特許法第29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-04-21 
結審通知日 2021-04-27 
審決日 2021-05-12 
出願番号 特願2015-164790(P2015-164790)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (D06F)
P 1 8・ 113- Z (D06F)
P 1 8・ 121- Z (D06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柿沼 善一  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 小川 恭司
鶴江 陽介
発明の名称 衣類乾燥機  
代理人 特許業務法人 サトー国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ