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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1375776
審判番号 不服2020-14756  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-22 
確定日 2021-07-27 
事件の表示 特願2019-510630「EDTによってデータを送信する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月1日国際公開、WO2018/199673、令和元年9月5日国内公表、特表2019-525674、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)4月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年4月28日 米国、2017年11月3日 米国、2018年4月5日 韓国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年12月25日付け:拒絶理由通知書
令和2年 4月 9日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 6月15日付け:拒絶査定
令和2年10月22日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年6月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
2.(委任省令要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
3.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


理由2(委任省令要件)について
本願明細書の段落[0227]-[0244]には、「本明細書の開示を介して解決しようとする問題点」が記載されている。
しかし、本願の請求項1に記載された構成は、上記の段落に記載された第1-3の問題点のいずれの問題点も解決していない。
また本願の明細書には、請求項1に記載された構成に対応する発明の作用効果も記載されていない。
したがって本願の発明の詳細な説明には、当業者が請求項1に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていない。
請求項7、及びこれらの請求項を引用する請求項2ないし6,8ないし12も、同様である。

理由3(明確性)について
請求項1で「基地局」が「決定」した『前記第1のNASメッセージ内の前記ダウンリンクデータの他に追加的なダウンリンクデータはないこと』は、その後、「基地局」で何に用いるのかが特定されておらず、発明を特定するための事項どうしの関係が整合していないから、不明確である。
請求項7、及びこれらの請求項を引用する請求項2ないし6,8ないし12も、同様である。

第3 本願発明
本願請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、令和2年10月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
EDT(Early Data Transmission)をサポートする方法であって、
基地局が、ランダムアクセス手順のための第3のメッセージ(MSG3)をUE(user equipment)から受信するステップであって、前記MSG3は、前記EDTに基づくアップリンクデータを含む、ステップと、
前記基地局が、前記EDTに基づく前記アップリンクデータを含む初期UEメッセージを、MME(Mobility Management Entity)に送信するステップと、
前記基地局が、第1のNAS(Non-Access Stratum)メッセージを前記MMEから受信するステップであって、
前記第1のNASメッセージは、(i)前記基地局による前記UEへの送信のためのダウンリンクデータと、(ii)前記EDTに関連したインディケーションとを含み、
前記MMEが前記第1のNASメッセージ内の前記ダウンリンクデータの他に追加的なダウンリンクデータがないことを決定したとき、前記EDTに関連した前記インディケーションは、前記第1のNASメッセージに含まれる、ステップと、
前記基地局が、前記第1のNASメッセージに基づく前記ダウンリンクデータを含むRRC(Radio Resource Control)メッセージを前記UEに送信するステップであって、前記RRCメッセージは、前記ランダムアクセス手順が拒絶されたことを前記UEに通知する、ステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のNASメッセージは、ダウンリンクNASトランスポートメッセージを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基地局がUEコンテキスト再開要求メッセージを前記MMEに送信するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のNASメッセージ内の前記ダウンリンクデータは、NAS PDU(protocol data unit)を含む、請求項1に記載の方法。」

第4 原査定についての判断
1 理由2(委任省令要件)について
原査定の拒絶の理由は、「本願明細書の段落[0227]-[0244]には、「本明細書の開示を介して解決しようとする問題点」が記載されている。しかし、本願の請求項1に記載された構成は、上記の段落に記載された第1-3の問題点のいずれの問題点も解決していない。また本願の明細書には、請求項1に記載された構成に対応する発明の作用効果も記載されていない。」というものである。
しかしながら、本願明細書の段落[0263]-[0340]に以下(1)から(7)の事項が記載されている。
(1)「基地局が前記ULデータを含むMSG3を受信すると、該当ULデータがCPデータ・・・を確認する」、「そして、前記基地局は、・・・MMEにS1-APメッセージを送信する」(段落[0283])
(2)「基地局が送信したS1-APメッセージを受信したMMEは、・・・該当S1-APメッセージに含まれているCPデータ・・・を確認して、該当CPデータ・・・の送信可否を決定する。」(段落[0306])
(3)「MMEがCPデータ・・・送信を決定した時または送信に成功した時、これを知らせるために、S1-APメッセージを基地局に送信したり、・・・することができる。前記S1-APメッセージは、一般的なS1-APメッセージ(例えば、Downlink NAS Transportメッセージ・・・)を再使用したものであり、または修正したものであり、新しく定義されたメッセージである。」(段落[0311])
(4)「従来のS1-APメッセージを再使用または修正する場合、・・・使われたS1-APメッセージによってどのようなS1-APメッセージを使用するかが決定される。例えば、・・・Downlink NAS Transportメッセージ・・・が使われた場合、UEコンテキスト再開失敗メッセージが使われる。前記メッセージは、CPデータ・・・の送信が成功したことを知らせるインディケーションを含むことができる。」(段落[0312])
(5)「具体的に、前記MMEがCIoT機器に送信するDLデータを有しており、前記DLデータ以外にそれ以上待機中である・・・DLデータがない場合、これを前記基地局に知らせることができる。より具体的に、前記MMEは、NAS PDU(前記DLデータを含む)を含むDownlink NAS Transportメッセージを送信するとき、追加的に送信するデータがないということを示すインディケーションを前記Downlink NAS Transportメッセージ内に含ませて送信できる。」、「DLデータがCPデータ・・・である場合、MMEがDLデータに対するEDT適用の有無を判断する。DLデータに対してEDTを適用する場合、MMEは、CPデータ・・・をNASメッセージ・・・内に含ませて下位層(即ち、S1-AP層)に伝達して、併せて、下位層にEDTであることを知らせる'EDT'インディケーションを伝達する。これを受信した下位層は、前記CPデータ・・・が含まれているNASメッセージとEDTインディケーションをS1-APメッセージ(例えば、downlink NAS transportメッセージ)に含ませて基地局に送信する。」(段落[0314]-[0315])
(6)「基地局は、・・・DLデータを含むS1-APメッセージを受信して、追加的に送信するデータがないということを認知した場合、該当DLデータをMSG4に含んでCIoT機器に送信を試みる。DLデータがCPデータである場合、MSG4のRRCメッセージに含まれて、・・・送信されることができる。」、「前記でDLデータを送信する場合、該当DLデータは、既存RRCメッセージ(例えば、MSG4(即ち、・・・RRC接続拒絶メッセージ、・・・)に含んで送信されることができる。」(段落[0337]-[0338])
(7)「前記メッセージを介してCIoT機器はULデータ送信の成功または失敗を認知する。」(段落[0340])
そして、上記(1)ないし(7)の記載からは、「CIoT機器がULデータをMSG3を介して送信する場合、前記CIoT機器がULデータの送信が成功したかどうかを確認することができる方法がないという問題点」を解決していると認められる。
一方、令和2年10月22日にされた手続補正書において補正された請求項1及び請求項1を引用する請求項2ないし4は、少なくとも、上記(1)?(7)に記載される事項に対応するものが記載されているといえるから、請求項1ないし4に係る発明は、少なくとも「CIoT機器がULデータをMSG3を介して送信する場合、前記CIoT機器がULデータの送信が成功したかどうかを確認することができる方法がないという問題点」を解決する方法が記載されているものといえる。
したがって、この拒絶の理由は解消した。

2 理由3(明確性)について
原査定の拒絶の理由は、「請求項1で「基地局」が「決定」した『前記第1のNASメッセージ内の前記ダウンリンクデータの他に追加的なダウンリンクデータはないこと』は、その後、「基地局」で何に用いるのかが特定されておらず、発明を特定するための事項どうしの関係が整合していないから、不明確である。請求項7、及びこれらの請求項を引用する請求項2-6,8-12も、同様である。」というものである。
しかしながら、令和2年10月22日にされた手続補正書において、「基地局」が「決定」した『前記第1のNASメッセージ内の前記ダウンリンクデータの他に追加的なダウンリンクデータはないこと』との記載は削除され、「MMEが第1のNASメッセージ内のダウンリンクデータの他に追加的なダウンリンクデータがないことを決定したとき、EDTに関連したインディケーションは、第1のNASメッセージに含まれる、」との記載に補正されることによって、請求項1ないし4に係る発明は、MMEが決定を行うこと、MMEの決定によりEDTに関連したインディケーションは、第1のNASメッセージに含まれるという、MMEの決定とその決定により発生する事象の関係が明確になったため、この拒絶の理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-07-07 
出願番号 特願2019-510630(P2019-510630)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (H04W)
P 1 8・ 537- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 廣川 浩
本郷 彰
発明の名称 EDTによってデータを送信する方法  
代理人 胡田 尚則  
代理人 河合 章  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 南山 知広  
代理人 鶴田 準一  
代理人 青木 篤  
代理人 三橋 真二  

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