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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L |
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管理番号 | 1375792 |
審判番号 | 不服2021-642 |
総通号数 | 260 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-01-15 |
確定日 | 2021-07-27 |
事件の表示 | 特願2016-176119「気相成長装置用部品の洗浄方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月15日出願公開、特開2018- 41883、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成28年9月9日の出願であって,令和2年3月24日付けで拒絶理由通知がされ,同年5月14日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,同年10月22日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和3年1月15日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の理由の概要 原査定(令和2年10月22日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。 本願の請求項1?4に係る発明は,以下の引用文献1,2,4に記載された発明及び周知技術(引用文献3)に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.福田 靖,外8名,“塩素ガスを用いたGaN-MOCVD装置反応炉部品の洗浄装置(CLEANDEX-100)の開発”,大陽日酸技報,2006年,No.25,p.7-11 2.特開2015-117420号公報 3.特開2013-203604号公報 4.特開2007-109928号公報 第3 本願発明 本願請求項1?4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明4」といい,まとめて「本願発明」ともいう。)は,令和2年5月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 洗浄炉内に収納した気相成長装置用部品を加熱手段で加熱しながら,前記洗浄炉内に洗浄ガス導入経路から洗浄ガスを導入するとともに,前記洗浄炉内の洗浄排ガスを洗浄排ガス排気経路から排気することによって前記気相成長装置用部品を洗浄する気相成長装置用部品の洗浄方法において,前記気相成長装置用部品が炭化珪素で形成された部品,又は,基材表面に炭化珪素を被覆した部品であって,気相成長装置用部品に付着した窒化ガリウム又は窒化アルミニウムガリウムを除去する洗浄操作を行う際には,前記洗浄ガスとして窒素中に塩素を含む洗浄ガスを使用し,前記加熱手段による気相成長装置用部品の加熱温度を,700?800℃の範囲内の温度を設定温度として設定するとともに,前記設定温度に対する気相成長装置用部品の加熱温度変動幅を±10℃の範囲内にすることを特徴とする気相成長装置用部品の洗浄方法。」 なお,本願発明2?4は,本願発明1を減縮した発明である。 第4 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について (1)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(福田 靖,外8名,“塩素ガスを用いたGaN-MOCVD装置反応炉部品の洗浄装置(CLEANDEX-100)の開発”,大陽日酸技報,2006年,No.25,p.7-11)には,次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下,同様である。)。 「 」 以上の記載によれば,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「洗浄部品を収納して加熱,洗浄を行う反応炉,反応炉に洗浄ガスを供給するガス供給制御系,反応生成物を補修するトラップや反応炉内を真空引きするロータリーポンプで構成される排気系,ガスの漏洩検知機器等で構成されるドライ洗浄装置CLEANDEX-100を用いて,GaN-MOCVD装置の反応炉部品を洗浄する反応炉部品の洗浄方法において,反応炉部品が石英ガラス製反応炉部品であって,反応炉部品に堆積したGaN又はAl_(0.1)Ga_(0.9)Nを除去する際には,洗浄ガスは,N_(2)と5%(volume)Cl_(2)であり,反応温度750℃,処理空間の温度差は10℃以内であるGaN-MOCVD装置の反応炉部品の洗浄方法。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2015-117420号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【請求項4】 III 族窒化物半導体製造装置の少なくとも一部の部品を洗浄室の内部で洗浄するIII 族窒化物半導体製造装置の洗浄方法において, 前記洗浄室の内部にHClガスとH_(2) ガスとを含むとともにHClガスの濃度が体積比で0.5%以上5%以下の範囲内の混合ガスを第1の洗浄ガスとして供給する第1の洗浄工程を有し, 前記第1の洗浄工程では, 前記III 族窒化物半導体製造装置の少なくとも一部の部品を1010℃以上1200℃以下の範囲内の第1の洗浄温度に加熱すること を特徴とするIII 族窒化物半導体製造装置の洗浄方法。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は,III 族窒化物半導体製造装置の洗浄装置および洗浄方法に関する。さらに詳細には,好適に部品の洗浄を実施することのできるIII 族窒化物半導体製造装置の洗浄装置および洗浄方法に関するものである。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかし,水素系のガスを用いた場合には,洗浄対象部品に堆積した堆積物を除去するのみならず,洗浄対象部品そのものもエッチングしてしまうおそれがある。また,特許文献1に記載の塩素系ガスを主成分とする洗浄ガスを用いた場合であっても,洗浄対象部品にダメージが蓄積する。そのため,洗浄対象部品の交換を頻繁に行う必要があった。 【0006】 本発明は,本発明者らにより発見された新規な技術的課題を解決するためになされたものである。その課題は,洗浄の対象である部品に与える損傷を軽減するとともに好適に部品の洗浄を実施することのできるIII 族窒化物半導体製造装置の洗浄装置および洗浄方法を提供することである。」 「【課題を解決するための手段】 ・・・ 【0011】 第4の態様におけるIII 族窒化物半導体製造装置の洗浄方法は,III 族窒化物半導体製造装置の少なくとも一部の部品を洗浄室の内部で洗浄する。この洗浄方法は,洗浄室の内部にHClガスとH_(2) ガスとを含むとともにHClガスの濃度が体積比で0.5%以上5%以下の範囲内の混合ガスを第1の洗浄ガスとして供給する第1の洗浄工程を有する。第1の洗浄工程では,III 族窒化物半導体製造装置の少なくとも一部の部品を1010℃以上1200℃以下の範囲内の第1の洗浄温度に加熱する。」 「【0051】 5-4.洗浄対象部品 本実施形態では,サセプターS1を洗浄することとした。しかし,それ以外の部品を洗浄することとしてももちろん構わない。本実施形態では,MOCVD炉10の部品を洗浄することとしたが,その他の気相エピタキシー法,例えば,HVPE炉の部品等を洗浄することとしてもよい。 【0052】 5-5.部品の材質 サセプターS1として,炭素素材にSiCをコーティングしたものを用いることとした。しかし,SiCバルクであってもよい。または,アルミナを有していてもよい。ここで,洗浄対象部品は,その表面にSiCを有しているものが一般的に使われている。」 以上の記載によれば,引用文献2には,以下の発明(以下,引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「III 族窒化物半導体製造装置の少なくとも一部の部品を洗浄室の内部で洗浄するIII 族窒化物半導体製造装置の洗浄方法において, 前記洗浄室の内部にHClガスとH_(2) ガスとを含むとともにHClガスの濃度が体積比で0.5%以上5%以下の範囲内の混合ガスを第1の洗浄ガスとして供給する第1の洗浄工程を有し, 前記第1の洗浄工程では, 前記III 族窒化物半導体製造装置の少なくとも一部の部品を1010℃以上1200℃以下の範囲内の第1の洗浄温度に加熱し, 前記部品は,サセプターであり,炭素素材にSiCをコーティングしたもの又はSiCバルクであるIII 族窒化物半導体製造装置の洗浄方法。」 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に周知技術として引用された引用文献3(特開2013-203604号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0023】 トラップの排気配管との接合部内を加熱又は断熱するための加熱機構又は断熱機構を備えることが好ましいことを前述したが,本発明に係る成長工程におけるかかる接合部内の温度条件は,特に限定されない。但し,通常200℃以上,好ましくは250℃以上,より好ましくは350℃以上であり,通常500℃以下,好ましくは450℃以下,さらに好ましくは400℃以下である。上記範囲であると,トラップの排気配管との接合部における閉塞を防止することができる。」 4 引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2007-109928号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0018】 次に,この洗浄装置を用いて汚染された部品を洗浄する方法について説明する。本発明の洗浄方法には,バッチ処理方式と通気処理方式とがあり,初めにバッチ処理方式によるものを説明する。 バッチ処理方式とは,後述のように,第1の洗浄ガスを反応室1内に封入状態として所定時間処理し,ついで反応室1内の気体をパージしたのち,第2の洗浄ガスを所定時間封入状態として反応を行うものである。 まず,半導体製造装置から汚染された部品7を取り外して反応室1の台8の上に載置した後,反応室1を密閉する。 【0019】 次いで,ヒーター4を作動させて反応室1内の汚染部品を500?1000℃の温度に加熱した後,真空ポンプ17を作動させ,反応室1内を減圧状態にしたのち,排出弁17を閉じ,ガス導入弁16,16を開いて第1洗浄ガス導入管2から第1の洗浄ガスを反応室1内に導入する。その後,ガス導入弁16,16を閉じ,第1の洗浄ガスを反応室1内に封入した状態とする。 ・・・ 【0024】 第1の洗浄ガスの封入を所定時間継続すると,汚染部品に付着した汚染物は第1の洗浄ガスに含まれる塩素系ガスと反応し,反応物が生成されるが,この反応物は直ちに蒸発して揮発性の排ガスとなり,反応室1内を漂う。 【0025】 その後,排出弁17を開けて第1の洗浄ガスおよび排ガスを排ガス排出管4から排出した後,再び真空ポンプ15を作動させて,反応室1内を減圧状態とし,排出弁17を閉じる。ついで,ガス導入弁16,16を開けて,第2の洗浄ガスを第2洗浄ガス導入管3から反応室1内に導入し,封入する。」 以上の記載によれば,引用文献4には,以下の発明(以下,引用発明4」という。)が記載されていると認められる。 「反応室1内の汚染部品を加熱した後,反応室1内を減圧状態にしたのち,第1の洗浄ガスを反応室1内に導入し,汚染部品に付着した汚染物が第1の洗浄ガスに含まれる塩素系ガスと反応して生成された反応物が蒸発して揮発性の排ガスとなり,その後,第1の洗浄ガスおよび排ガスを排ガス排出管から排出した後,再び真空ポンプ15を作動させて,反応室1内を減圧状態とする,洗浄装置を用いて汚染された部品を洗浄する方法。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 ア 本願発明1と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1の「洗浄部品を収納して加熱,洗浄を行う反応炉」「GaN-MOCVD装置の反応炉部品」は,それぞれ,本願発明1の「洗浄炉」,「気相成長装置用部品」に相当する。 そして,引用発明1の「洗浄部品を収納して加熱,洗浄を行う反応炉」は,洗浄部品を加熱する加熱手段を有し,「反応炉に洗浄ガスを供給するガス供給制御系」は,反応炉内に洗浄ガスを導入する洗浄ガス導入経路を有し,「反応生成物を補修するトラップや反応炉内を真空引きするロータリーポンプで構成される排気系」は,反応炉内の洗浄排ガスを排気する洗浄排ガス排気経路を有することは明らかであるから,引用発明1の「洗浄部品を収納して加熱,洗浄を行う反応炉,反応炉に洗浄ガスを供給するガス供給制御系,反応生成物を補修するトラップや反応炉内を真空引きするロータリーポンプで構成される排気系,ガスの漏洩検知機器等で構成されるドライ洗浄装置CLEANDEX-100を用いて,GaN-MOCVD装置の反応炉部品を洗浄する反応炉部品の洗浄方法」は,本願発明1の「洗浄炉内に収納した気相成長装置用部品を加熱手段で加熱しながら,前記洗浄炉内に洗浄ガス導入経路から洗浄ガスを導入するとともに,前記洗浄炉内の洗浄排ガスを洗浄排ガス排気経路から排気することによって前記気相成長装置用部品を洗浄する気相成長装置用部品の洗浄方法」に相当する。 (イ)引用発明1の「GaN」,「Al_(0.1)Ga_(0.9)N」は,それぞれ,本願発明1の「窒化ガリウム」,「窒化アルミニウムガリウム」に相当する。 そして,引用発明1の「反応炉部品に堆積したGaN又はAl_(0.1)Ga_(0.9)Nを除去する」ことは,反応炉部品に付着したGaN又はAl_(0.1)Ga_(0.9)Nを除去する洗浄操作を行っていることといえるから,本願発明1の「気相成長装置用部品に付着した窒化ガリウム又は窒化アルミニウムガリウムを除去する洗浄操作を行う」ことに相当する。 (ウ)引用発明1の「洗浄ガス」である「N_(2)と5%(volume)Cl_(2)」は,N_(2)中に5%(volume)Cl_(2)を含んでいるといえるから,引用発明1の「洗浄ガスは,N_(2)と5%(volume)Cl_(2)であ」ることは,本願発明1の「前記洗浄ガスとして窒素中に塩素を含む洗浄ガスを使用」することに相当する。 (エ)引用発明1おける「反応温度750℃」は,加熱手段によるものであり,ことのきの加熱手段による「GaN-MOCVD装置の反応炉部品」の加熱温度の設定温度は,750℃に設定されているといえる。 また,引用発明1において,「処理空間の温度差は10℃以内である」ことは,上記設定温度に対する「GaN-MOCVD装置の反応炉部品」の加熱温度変動幅が±10℃の範囲内になっているといえる。 したがって,引用発明1の「反応温度750℃,処理空間の温度差は10℃以内である」ことは,本願発明1の「前記加熱手段による気相成長装置用部品の加熱温度を,700?800℃の範囲内の温度を設定温度として設定するとともに,前記設定温度に対する気相成長装置用部品の加熱温度変動幅を±10℃の範囲内にする」ことに相当する。 (オ)以上から,本願発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 <一致点> 「洗浄炉内に収納した気相成長装置用部品を加熱手段で加熱しながら,前記洗浄炉内に洗浄ガス導入経路から洗浄ガスを導入するとともに,前記洗浄炉内の洗浄排ガスを洗浄排ガス排気経路から排気することによって前記気相成長装置用部品を洗浄する気相成長装置用部品の洗浄方法において,気相成長装置用部品に付着した窒化ガリウム又は窒化アルミニウムガリウムを除去する洗浄操作を行う際には,前記洗浄ガスとして窒素中に塩素を含む洗浄ガスを使用し,前記加熱手段による気相成長装置用部品の加熱温度を,700?800℃の範囲内の温度を設定温度として設定するとともに,前記設定温度に対する気相成長装置用部品の加熱温度変動幅を±10℃の範囲内にする気相成長装置用部品の洗浄方法。」 <相違点> 相違点1:「気相成長装置用部品」が,本願発明1は,「炭化珪素で形成された部品,又は,基材表面に炭化珪素を被覆した部品」であるのに対して,引用発明1は,「石英ガラス製反応炉部品」である点。 (2)相違点についての判断 ア 本願明細書【0005】?【0008】の記載によれば,本願発明が解決しようとする課題は,「炭化珪素がエッチングされることを抑えながら気相成長装置用部品の洗浄操作を確実に行うことができる気相成長装置用部品の洗浄方法を提供すること」であり,請求項1?4に記載された気相成長装置用部品の洗浄方法とすることで,「炭化珪素がエッチングされることを極力回避しながら,気相成長用部品の表面に付着した反応生成物を塩素との反応によって除去することができる。したがって,炭化珪素製あるいは炭化珪素被覆を施した部品の長寿命化を図ることができる。また,塩素を使用することによって反応生成物の除去を短時間で行うことが可能となるので,気相成長装置のスループットを低下させることがなくなる。」という効果を奏するものである。 イ 一方,引用発明1における「反応炉部品」は,「石英ガラス製反応炉部品」であり,引用文献1には,反応炉部品として,「炭化珪素で形成された部品,又は,基材表面に炭化珪素を被覆した部品」については,何ら記載も示唆もされていない。また,引用文献1には,「炭化珪素がエッチングされることを抑えながら気相成長装置用部品の洗浄操作を確実に行うことができる気相成長装置用部品の洗浄方法を提供すること」という本願発明の課題は記載も示唆もされていない。 ウ 引用文献2の前記第4の2の【0006】,【0011】の記載によれば,引用発明2が解決しようとする課題は,「洗浄の対象である部品に与える損傷を軽減するとともに好適に部品の洗浄を実施することのできるIII 族窒化物半導体製造装置の」「洗浄方法を提供すること」であり,「洗浄室の内部にHClガスとH_(2) ガスとを含むとともにHClガスの濃度が体積比で0.5%以上5%以下の範囲内の混合ガスを第1の洗浄ガスとして供給する第1の洗浄工程を有」し,「第1の洗浄工程では,III 族窒化物半導体製造装置の少なくとも一部の部品を1010℃以上1200℃以下の範囲内の第1の洗浄温度に加熱する」ことで,上記課題を解決するものであり,引用文献2には,「炭化珪素がエッチングされることを抑えながら気相成長装置用部品の洗浄操作を確実に行うことができる気相成長装置用部品の洗浄方法を提供すること」という本願発明の課題は記載も示唆もされていない。 エ 引用発明1は,「反応炉部品に堆積したGaN又はAl_(0.1)Ga_(0.9)Nを除去する」方法であるのに対し,引用発明2は,「III 族窒化物半導体製造装置の少なくとも一部の部品を洗浄室の内部で洗浄する」方法であるから,両者は,反応炉内部品に堆積したIII 族窒化物半導体を洗浄する方法である点で共通している。 しかし,洗浄の際に使用するガスについては,引用発明1は「N_(2)と5%(volume)Cl_(2)」であるのに対し,引用発明2は「HClガスとH_(2) ガス」であり,また,洗浄の際の温度については,引用発明1は「750℃」であるのに対し,引用発明2は「1010℃以上1200℃以下」であり,両者の洗浄ガス及び温度は全く異なっている。 また,引用発明2では,洗浄室の内部で洗浄する部品であるサセプターは,炭素素材にSiCをコーティングしたもの又はSiCバルクであるものの,引用発明2の上記課題及び解決手段からすると,上記部品の材質は必須のものであるとはいえない。 オ 引用文献3?4にも,「炭化珪素がエッチングされることを抑えながら気相成長装置用部品の洗浄操作を確実に行うことができる気相成長装置用部品の洗浄方法を提供すること」という本願発明の課題は記載も示唆もされていない。 カ 以上によれば,引用発明1に引用発明2を適用する動機付けがあるとはいえない。 したがって,引用発明1において,相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易になし得るものではない。 よって,本願発明1は,引用文献1,2,4に記載された発明及び周知技術(引用文献3)に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2?4について 本願発明2?4は,本願発明1を減縮した発明であり,いずれも本願発明1の全ての発明特定事項を有しているから,本願発明1と同様の理由により,引用文献1,2,4に記載された発明及び周知技術(引用文献3)に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり,本願発明1?4は,当業者が引用文献1,2,4及び周知技術(引用文献3)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-06-29 |
出願番号 | 特願2016-176119(P2016-176119) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 聡一郎 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
河本 充雄 ▲吉▼澤 雅博 |
発明の名称 | 気相成長装置用部品の洗浄方法 |
代理人 | 木戸 一彦 |
代理人 | 木戸 良彦 |