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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 C25D 審判 査定不服 特29条の2 取り消して特許、登録 C25D 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C25D |
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管理番号 | 1375800 |
審判番号 | 不服2020-6497 |
総通号数 | 260 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-05-13 |
確定日 | 2021-07-27 |
事件の表示 | 特願2019- 3185「異種金属接合材およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年11月14日出願公開、特開2019-196543、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成31年1月11日(優先日主張 平成30年5月2日)の出願であって、令和1年10月23日付けで拒絶理由が通知され、同年12月20日に意見書、手続補正書が提出され、令和2年2月14日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月13日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和2年2月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1?2に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願1(以下「先願1」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 また、原査定においては、拒絶理由を通知していないため原査定の理由とはならないが、下記の理由も拒絶の理由として存在していることを付記している。 本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1?3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 <引用文献等一覧> 1.特願2017-25079号(特開2018-133171号) 2.特開平2-40986号公報(周知技術を示す文献) 3.特公平3-57438号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明3」といい、これらを総称して「本願発明」という。)は、令和1年12月20日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。なお、下線は補正箇所を示している。 「【請求項1】 Mnを含む合金から構成される高熱膨張層と、Niを含む合金から構成される低熱膨張層が、直接もしくは中間層を介して接合されているクラッド材から構成される異種金属接合材であって、 少なくとも前記高熱膨張層の表面に厚み10nm以上120nm以下のNiめっき層を有し、かつ、前記Niめっき層を有さないクラッド材部分の全厚みは50μm以上1mm以下であり、 前記Niめっき層を有さないときの体積抵抗率に対する前記Niめっき層を有するときの体積抵抗率の変動がプラスマイナス5%以内、かつ、前記Niめっき層を有さないときのわん曲係数に対する前記Niめっき層を有するときのわん曲係数の変動がプラスマイナス5%以内である、異種金属接合材。 【請求項2】 識別用マークが、表面に設けられている、請求項1に記載の異種金属接合材。 【請求項3】 Mnを含む合金から構成される高熱膨張層と、Niを含む合金から構成される低熱膨張層とが、直接または中間層を介して接合されているクラッド材の表面を脱脂する脱脂処理と、 前記クラッド材の少なくとも前記高熱膨張層の表面を洗浄する表面洗浄処理と、 前記クラッド材の少なくとも前記高熱膨張層の表面に、pHが4.5以上6.0以下のめっき液を用いてNiめっき層を設けるNiめっき処理を行い、 前記高熱膨張層の表面からめっき液を除去する脱めっき液処理と、 前記クラッド材を乾燥させる乾燥処理と、 をこの順に行って、少なくとも前記高熱膨張層の表面に厚さ10nm以上120nm以下の前記Niめっき層を有し、かつ、前記Niめっき層を有さないクラッド材部分の全厚みは50μm以上1mm以下であり、 前記Niめっき層を有さないときの体積抵抗率に対する前記Niめっき層を有するときの体積抵抗率の変動がプラスマイナス5%以内、かつ、前記Niめっき層を有さないときのわん曲係数に対する前記Niめっき層を有するときのわん曲係数の変動がプラスマイナス5%以内である異種金属接合材を形成する、異種金属接合材の製造方法。」 第4 引用文献、引用発明等 1.先願1について 1-1.先願1の当初明細書等の記載 原査定において引用された先願1は、本願の優先権主張の日前である平成29年2月14日に出願され、本願の出願後である平成30年8月23日に出願公開された特願2017-25079号(特開2018-133171号)であって、その当初明細書等には、「感熱作動素子」(発明の名称)に関して、次の記載がある(なお、「…」は記載の省略を表し、下線は当審が付したものである。以下同様。)。 「【請求項1】 含マンガン表面を有する感熱作動要素と 前記含マンガン表面を覆うめっき層と を有して成る感熱作動素子。 【請求項2】 感熱作動要素が、異なる熱膨張係数を有する2以上の金属層から形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の感熱作動素子。 【請求項3】 感熱作動要素が、バイメタル要素であることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の感熱作動素子。 【請求項4】 少なくとも1つの層が、マンガンを含む合金層であることを特徴とする、請求項2または3に記載の感熱作動素子。 … 【請求項7】 めっき層がニッケルめっき層であることを特徴とする、請求項1?6のいずれか1項に記載の感熱作動素子。」 「【0007】 本発明の目的は、マンガンを含む合金が用いられた感熱作動素子であって、含まれるマンガンが腐食を受けにくい感熱作動素子を提供することにある。」 「【0030】 好ましい態様において、上記の感熱作動要素は、低熱膨張係数を有する層として、Ni-Fe合金の層を有し、高熱膨張係数を有する層として、Ni-Mn-Fe合金またはMn-Ni-Cu合金の層を有するバイメタル要素である。」 「【0035】 上記めっき層の厚み(複数層の場合はその合計)は、感熱作動要素の機能に対する影響を小さくするという観点からは可能な限り薄いことが好ましく、一方、マンガンを腐食性物質から保護するという観点からは、十分に厚いことが好ましい。上記めっき層の厚み(複数層の場合はその合計)は、好ましくは0.001μm以上10μm以下、より好ましくは0.01μm?1.0μm、さらに好ましくは0.05μm?0.8μmであり得る。」 「【0053】 本発明の感熱作動素子は、高い湾曲係数を有しつつ、かつ、高い耐環境性を有する。従って、電子部品の保護デバイスにおいて、好適に利用することができる。本発明は、本発明の感熱作動素子を有して成る保護デバイスをも提供する。」 「【実施例】 【0059】 実施例1:本発明の感熱作動素子の製造 感熱作動要素として、下記のバイメタル要素を準備した。 ・BR-1(Neomax社製) 高熱膨張係数側:含Mn合金(厚さ:約30μm) 低熱膨張係数側:非Mn合金(厚さ:約30μm) 【0060】 上記のバイメタル要素を、縦2.9mm、横2.9mmに打ち抜いて、バイメタル片を得た。得られたバイメタル片を脱脂した。 【0061】 次いで、バイメタル片を、塩酸と硫酸の混合液(温度20℃)で洗浄し、バイメタル片の表面の錆などを洗い流した。 【0062】 次いで、下記の条件で、ニッケルストライクめっき処理を行った。 ニッケルストライク用ウッド浴 主成分:塩化ニッケル 240g/l 添加剤:塩酸 125g/l 浴温:20?25℃ 電流密度:2?5A/dm^(2) 【0063】 次いで、下記の条件で、本めっき処理を行った。 ニッケルメッキ用スルファミン酸浴 主成分:塩化ニッケル 30g/l スルファミン酸 400g/l 臭化ニッケル 40g/l ホウ酸 30g/l 浴温:40?60℃ 電流密度:2?5A/dm^(2) 【0064】 上記の処理により、バイメタル片の全体にわたってニッケルめっき層を有する本発明の感熱作動素子を得た。」 1-2.先願1の当初明細書等に記載された発明 上記1-1の【0059】?【0064】の記載によれば、先願1の当初明細書等には、次の発明が記載されていると認められる(以下「先願発明」という。)。 「高熱膨張係数側:含Mn合金(厚さ:約30μm)、低熱膨張係数側:非Mn合金(厚さ:約30μm)のバイメタル要素を打ち抜いて得たバイメタル片の全体にわたってニッケルめっき層を有する感熱作動素子。」 2.引用文献2について 原査定において引用文献2として引用された特開平2-40986号公報には、「電子材料用積層板」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 2ア「【特許請求の範囲】 1 少なくとも一方表面に、Rmax10μm以下の深さで形成され、かつ2種類以上の異なる平坦部面積率の領域で構成される識別用模様を有した積層板からなることを特徴とする電子材料用積層板。」 3.引用文献3について 原査定において引用文献3として引用された特公平3-57438号公報には、「バイメタルの製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 3ア「【特許請求の範囲】 1 Ni17.5wt%?26wt%にCr3.1wt%?12wt%、Mn5wt%?6wt%、Mo4wt%?6wt% の1種を含有するFe合金からなる高膨脹側合金板を一面に有し、 Ni35wt%?50wt%またはCr13wt%?18wt%含有のFe合金からなる低膨脹側合金板を他面に有する2枚重ねまたは3枚重ねのバイメタル板を圧接して仕上げたのち、 該バイメタル板のいずれか一方面に識別用エッチングマークを施す前または後に、 不動態被膜形成液中に浸漬することを特徴とするバイメタルの製造方法。」 第5 発明者及び出願人について 先願1に表示された発明者は「田中 新」であり、本願発明の発明者である「西村 絢子」とは完全に一致していないから同一でなく、また、本願の出願時において、先願1の出願人である「Littelfuseジャパン合同会社」と本願の出願人である「日立金属株式会社」とは完全に一致していないから同一でない。 第6 対比・判断 1.本願発明1について 1-1.本願発明1と先願発明との対比 ア 先願発明の「高熱膨張係数側:含Mn合金(厚さ:約30μm)」、「低熱膨張係数側:非Mn合金(厚さ:約30μm)」、「バイメタル片」、「感熱作動素子」、「バイメタル片の全体にわたって」「ニッケルめっき層を有する」ことは、それぞれ本願発明1の「Mnを含む合金から構成される高熱膨張層」、「合金から構成される低熱膨張層」、「クラッド材」、「異種金属接合材」、「少なくとも前記高熱膨張層の表面に」「Niめっき層を有」することに相当する。 イ そして、先願発明の「バイメタル片」の厚みは、「高熱膨張係数側:含Mn合金(厚さ:約30μm)」及び「低熱膨張係数側:非Mn合金(厚さ:約30μm)」の厚さを合計して約60μmと認められるから、本願発明1の「Niめっき層を有さないクラッド材部分の全厚みは50μm以上1mm以下であ」ることに相当する。 ウ したがって、本願発明1と先願発明は、次の点で一致し、相違する。 〈一致点〉 「Mnを含む合金から構成される高熱膨張層と、合金から構成される低熱膨張層が、直接もしくは中間層を介して接合されているクラッド材から構成される異種金属接合材であって、 少なくとも前記高熱膨張層の表面にNiめっき層を有し、かつ、前記Niめっき層を有さないクラッド材部分の全厚みは約60μmである、 異種金属接合材。」 〈相違点1〉 低熱膨張層を構成する合金が、本願発明1はNiを含むのに対して、先願発明はNiを含むか否かが不明である点。 〈相違点2〉 本願発明1は、Niめっき層の厚みが「10nm以上120nm以下」であるのに対し、先願発明は、Niめっき層の厚みが不明である点。 〈相違点3〉 本願発明1の異種金属接合材は、Niめっき層を有さないときの体積抵抗率に対するNiめっき層を有するときの体積抵抗率の変動がプラスマイナス5%以内、かつ、Niめっき層を有さないときのわん曲係数に対するNiめっき層を有するときのわん曲係数の変動がプラスマイナス5%以内であるのに対し、先願発明の異種金属接合材は、そのような特性を有するか否かが不明である点。 1-2.相違点についての判断 事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。 ア 上記相違点2に係るNiめっき層の厚みに関して、上記第4の1.の1-1.で摘記した先願1の当初明細書等の【0035】、【0053】によると、先願発明のニッケルめっき層は、異種金属接合材の機能(わん曲係数等)に対する影響を小さくするという観点からは可能な限り薄いことが好ましく、一方、マンガンを腐食性物質から保護するという観点からは十分に厚いことが好ましく、ニッケルめっき層の厚みを、0.001μm(すなわち10nm)以上とすることや「0.05μm?0.8μm(すなわち50nm?800nm)」とすることが記載されているから、先願1の当初明細書等には、先願発明のニッケルめっき層の厚みを10nm以上800nm以下とすることが実質的に記載されていると認められる。なお、当該数値範囲は、本願発明1のNiめっき層の「厚み10nm以上120nm以下」と重複する数値範囲が存在するものの、上限値が異なる。 イ 本願の明細書の【0051】?【0057】の記載及び図5?7によると、本願発明1は、異種金属接合材の特性として体積抵抗率とわん曲係数に着目し、耐食性付与を目的として設けたNiめっき層の厚みと上記両特性の関係から、Niめっき層を設けたことによる両特性(特に体積抵抗率)の変動をプラスマイナス5%以内に収めるために、Niめっき層の厚みの上限を「120nm以下」と特定し、それにより十分な耐食性を有し、かつ、本来特性との差異が小さい異種金属接合材が提供できるという本願発明に特有の効果を奏するものと認められる。 そうすると、両者にNiめっき層の厚みに重複する数値範囲が存在するとしても、本願発明1のNiめっき層の厚みの上限が「120nm以下」であることと、先願発明のニッケルめっき層の厚みの上限が800nm以下であることとは、課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。 したがって、上記相違点2は実質的な相違点であるから、上記相違点1及び相違点3について検討するまでもなく、本願発明1は先願発明と同一であるとはいえない。 1-3.小括 したがって、本願発明1は、先願発明と実質的に同一であるということはできない。よって、本願発明1が先願1の当初明細書等に記載された発明と同一であることを根拠として、本願を拒絶することはできない。 2.本願発明2について 本願発明2は、本願発明1を引用することによって、本願発明1の特定事項の全てを備えるから、バイメタルに識別用マークを設けることが引用文献2?3から周知技術だとしても、本願発明1について上記1.で検討したのと同様の理由により、先願発明と実質的に同一であるということはできない。よって、本願発明2が先願1の当初明細書等に記載された発明と同一であることを根拠として、本願を拒絶することはできない。 3.本願発明3について 本願発明3は、原査定によって拒絶されていない。なお、本願発明3は、異種接合材の製造方法において、製造される異種接合材として本願発明1の特定事項の全てを備えるから、バイメタルに識別用マークを設けることが引用文献2?3から周知技術だとしても、本願発明1について上記1.で検討したのと同様の理由により、先願発明と実質的に同一であるということはできない。よって、本願発明3が先願1の当初明細書等に記載された発明と同一であることを根拠として、本願を拒絶することはできない。 4.原査定に付記された拒絶理由(特許法第36条第4項第1号)について 4-1.原査定に付記された拒絶理由(特許法第36条第4項第1号)の概要 「発明の詳細な説明には、「耐食性めっき層の厚みが10nm以上120nm以下」であることにより、めっき層を有さないバイメタルのわん曲係数と近いわん曲係数を有する条件として示されているのは、「Cu-Mn-Ni系の金属(Cu-72Mn-10Ni)」からなる「高熱膨張層」と、「Fe-Ni系の金属(Fe-36Ni)」からなる「低熱膨張層」とを有するバイメタルに、Niめっき層を高熱膨張層の表面に形成した場合のみであって、上記以外の条件の場合にも「耐食性めっき層の厚みが10nm以上120nm以下」であることを満足することで、上記特定を満たすことは、何らの言及もなされていない。」こと、「当該変位量(D_(1)、D_(2))が、この記載のように積層体を形成する各層の弾性係数および線膨張係数及び厚みにより決定されるという技術常識を考慮すれば、「試験片を構成する高熱膨張層の厚み、弾性係数および線膨張係数と、低熱膨張層の厚み、弾性係数および線膨張係数」だけでなく、「Niめっき層」を含めた積層体の全体構造により決定されるといえる。そうすると、請求項1-3に係る発明のような、厚み10nm以上120nm以下のNiめっき層が形成され、Mnを含むあらゆる合金から構成される高熱膨張層と、Niを含むあらゆる合金から構成される低熱膨張層が、直接もしくは中間層を介して接合されているクラッド材から構成される異種金属接合材が、前記「Niめっき層を有さないときの体積抵抗率に対する前記Niめっき層を有するときの体積抵抗率の変動がプラスマイナス5%以内、かつ、前記Niめっき層を有さないときのわん曲係数に対する前記Niめっき層を有するときのわん曲係数の変動がプラスマイナス5%以内」を満たすためには、高熱膨張層と低熱膨張層の材料や厚みの組み合わせにつき、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)にとって過度の試行錯誤が必要となる。 したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1?3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 4-2.判断 本願発明は、請求項1及び3で特定するように、Niめっき層無しの異種金属接合材の特性(体積抵抗率及びわん曲係数)に対するNiめっき層有りの異種金属接合材の特性(体積抵抗率及びわん曲係数)の変動の比率がプラスマイナス5%以内である異種金属接合材に関する発明である。 ここで、Niめっき層無しの異種金属接合材の特性やNiめっき層有りの異種金属接合材の特性のそれぞれを知りたい場合には高熱膨張層と低熱膨張層の材料や厚みが必要になるものの、Niめっき層無しの異種金属接合材の特性に対するNiめっき層有りの異種金属接合材の特性の比率を算出する際に用いる式には、高熱膨張層と低熱膨張層の材料や厚みがキャンセルされて現れないため、高熱膨張層と低熱膨張層の材料や厚みを特定する必要はなく、当業者であれば、Niめっき層の厚みの異なるバイメタルを複数試験するだけで本願発明を検証することができ、過度な試行錯誤を必要とするものではない。 したがって、「本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1?3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない」ことを根拠として、本願を拒絶することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-07-05 |
出願番号 | 特願2019-3185(P2019-3185) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WY
(C25D)
P 1 8・ 537- WY (C25D) P 1 8・ 16- WY (C25D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大塚 美咲、萩原 周治 |
特許庁審判長 |
平塚 政宏 |
特許庁審判官 |
土屋 知久 磯部 香 |
発明の名称 | 異種金属接合材およびその製造方法 |
代理人 | 特許業務法人 信栄特許事務所 |