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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E02D
管理番号 1375903
異議申立番号 異議2020-700878  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-16 
確定日 2021-07-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第6716124号発明「管状杭」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6716124号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6716124号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、令和元年7月31日に出願され、令和2年6月12日にその特許権の設定登録がされ、令和2年7月1日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1ないし6に係る特許に対し、令和2年11月16日に特許異議申立人 後藤 亮一(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

2 本件発明
特許第6716124号の請求項1?6の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明6」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
円筒状に延びる本体部と、
前記本体部の先端側において、該本体部をその円筒の中心線で二等分してなる円弧それぞれの外周面から、前記本体部の延びる方向と交差する平面に沿って扇状に拡がる板材として設けられた一対の羽根部と、を備える管状杭であり、
一対の前記羽根部は、前記本体部の延びる方向および該本体部をなす円筒の中心線が延びる方向で形成される第1平面に投影した場合に、前記本体部の延びる方向と直交する第2平面に対してそれぞれ反対方向に10°?20°の角度をなして傾斜し、前記本体部において該本体部をなす円筒の中心軸を挟むいずれか一方の領域側、かつ、当該円筒の外周上ではない位置で交差する位置関係となるように配置され、
前記本体部は、前記羽根部それぞれに対応する領域を外内に貫通する貫通溝を有しており、
前記管状杭は、
前記本体部の先端側において、該本体部をなす円筒に囲まれた内部空間を該円筒の中心線に沿って仕切る板状の仕切部を更に備え、
一対の前記羽根部は、それぞれ前記貫通溝から前記本体部の内部に到達し、前記仕切部を挟んだ状態で前記仕切部および前記本体部に固定され、
前記管状杭は、
前記第2平面に投影した場合に本体部をなす円筒の中心軸を中心として点対称となる位置関係で、前記仕切部の表裏面それぞれに沿って本体部の先端から突出するように設けられた一対の掘削刃と、を更に備える
管状杭。
【請求項2】
一対の前記羽根部は、前記第1平面に投影した場合に、前記第2平面に対してそれぞれ反対方向に同一角度をなして傾斜しており、前記本体部をなす円筒の中心軸に挟まれた一方の領域側から他方の領域側へと傾斜する前記羽根部が、他方の領域側から一方の領域側へと傾斜する前記羽根部よりも、前記本体部の先端側へと相対的に変位することで、一方の領域側で交差する位置関係となっている、
請求項1に記載の管状杭。
【請求項3】
一対の前記羽根部は、前記本体部をなす円筒の中心軸に挟まれたいずれか一方の領域のうち、該中心軸から前記第2平面に沿って前記本体部の外周面に至る距離を100%とした場合に傾斜角に応じた30%以上となる位置で交差する位置関係となっている、
請求項1または請求項2に記載の管状杭。
【請求項4】
一対の前記羽根部は、前記第1平面に投影した場合に、前記第2平面に対してそれぞれ反対方向に15°の角度をなして傾斜し、前記本体部をなす円筒の中心軸に挟まれたいずれか一方の領域のうち、該中心軸から前記第2平面に沿って前記本体部の外周面に至る距離を100%とした場合に傾斜角に応じた50%以上100%未満となる位置で交差する位置関係となっている、
請求項3に記載の管状杭。
【請求項5】
一対の前記羽根部は、前記第1平面に投影した場合に、前記第2平面に対してそれぞれ反対方向に10°の角度をなして傾斜し、前記本体部をなす円筒の中心軸に挟まれたいずれか一方の領域のうち、該中心軸から前記第2平面に沿って前記本体部の外周面に至る距離を100%とした場合に傾斜角に応じた30%以上70%以下となる位置で交差する位置関係となっている、
請求項3に記載の管状杭。
【請求項6】
前記羽根部は、それぞれ前記本体部をなす円筒よりも外径の大きな半円形の板材であり、該半円における中心軸周辺を前記貫通溝から前記本体部の内部に到達させた状態で該本体部に固定されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の管状杭。」

3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として下記の甲第1号証を、従たる証拠として下記の甲第2?7号証を提出し、請求項1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?6に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

甲第1号証:特開2006-177125号公報
甲第2号証:国際公開第2015/118665号
甲第3号証:特開2018-168552号公報
甲第4号証:意匠登録第1492049号公報
甲第5号証:意匠登録第1492050号公報
甲第6号証:意匠登録第1571388号公報
甲第7号証:特開2008-045338号公報

4 各甲号証の記載
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証の記載
甲第1号証には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
(ア)「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明を具体化した一実施形態を図1?図6に従って説明する。
図1及び図2に示すように、鋼管杭10は、鋼管からなる杭本体11に、この杭本体11の下端から下方に突出する1つのビット12と、杭本体11の下端部に設けられた一対の羽根13a,13bとを備えている。
【0011】
ビット12は、鉛直面に対して面対称に形成された五角形の鋼板からなり、杭本体11の下端部内側に嵌入された状態でその左右両端面の適宜箇所で杭本体11の内周面に溶接されている。また、ビット12は、その回転中心となる鉛直方向の仮想軸心上に下端の尖鋭部が位置している。なお、ビット12の厚さは例えば9mmである。
【0012】
前記各羽根13a,13bは共に同じ形状であって、長軸の位置で2分割されたほぼ楕円形の鋼板からなる。各羽根13a,13bは、各羽根13a,13bに対応して杭本体11の下端部に設けられた長孔14a,14bからそれぞれ杭本体11の外側から内側に嵌入された状態で杭本体11に溶接固定されている。各長孔14a,14bは、それぞれ杭本体11の軸心に対して傾斜する平面上を延びるように形成されている。また、両長孔14a,14bは、杭本体11の仮想軸心を対称軸とする回転対称の関係にある。また、両長孔14a,14bは、杭本体11の下端まで達しないように設けられている。前記各羽根13a,13bは、その直線状の周縁側がそれぞれ長孔14a,14bから杭本体11の内側に嵌入されている。各羽根13a,13bの直線状の周縁は、前記ビット12の両面に当接されている。これにより、杭本体11の下端開口部が塞がれている。
【0013】
図3に示すように、杭本体11の軸心Sに直交する平面Pに対する各羽根13a,13bの傾斜角θは、15°に設定されている。この傾斜角θは、5°以上かつ25°以下の範囲内に設定されていればよく、10°以上かつ20°以下であればより好ましい。また、図2に示す各羽根13a,13bの長軸及び短軸方向の各長さM,Nと、各羽根13a,13bの傾斜角θとは、図5及び図6に示すように、鋼管杭10を杭本体11の軸心方向に見たときに、各羽根13a,13bの円弧状の周縁が同一円周上に位置するように設定されている。この円の直径は、杭本体11の外径を1.5?3.5倍した大きさの範囲内となるように設定され、例えば外径165mmの杭本体11に対しては450mmとされている。」

(イ)「【0015】
次に、前述した鋼管杭の作用について説明する。
鋼管杭10を地盤に埋設する際には、地上に設置した施工装置(図示略)により鋼管杭10を埋設しようとする地面に起立させ、この状態で鋼管杭10を回転させながら下方に押す。すると、ビット12により杭本体11下方の地盤が掘削され、鋼管杭10が地盤中に圧入されていく。このとき、杭本体11の下端が両羽根13a,13b及びビット12によって塞がれているので、杭本体11の下方から土砂が外周側に押し退けられる。それとともに両羽根13a,13bの刃部15a,15bによって杭本体11の外側の地盤が掘削され、両羽根13a,13bが地盤中に入り込んでいく。この結果、鋼管杭10が地盤中に回転圧入されていく。」

(ウ)「【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態の鋼管杭を示す斜視図。
【図2】同じく鋼管杭を示す分解斜視図。
【図3】鋼管杭の下端部を示す正面図。
【図4】同じ下端部を示す側面図。
【図5】鋼管杭を示す平面図。
【図6】鋼管杭を示す底面図。
【図7】他の実施形態を示す斜視図。
【図8】(a)は他の実施形態を示す正面図、(b)は同じく平面図。
【図9】従来の鋼管杭を示す正面図。
【図10】(a)は従来の鋼管杭を示す正面図、(b)は同じく側面図。」

(エ)図3及び図5は、次のものである。




(オ)上記(ウ)のとおり、上記(エ)の図3は、鋼管杭の下端部を示す正面図である。また、上記(ア)の段落[0013]及び上記(ウ)のとおり、上記(エ)の図5は、鋼管杭を示す平面図であり、鋼管杭10を杭本体11の軸心方向に見たものである。
この点及び上記(ア)の記載を踏まえると、上記(エ)の図3及び図5からは、以下の点が看取される。
a 杭本体11は、円筒状である点。

b 鋼管杭10を杭本体11の軸心方向に見たときに、ビット12は、杭本体11の中心を通る直線を構成する点。

c 傾斜角θは、杭本体11の軸心S及び上記杭本体11の中心を通る直線に垂直な方向に鋼管杭10を見たときの角度である点。

d 杭本体11の軸心S及び上記杭本体11の中心を通る直線に垂直な方向に鋼管杭10を見たときに、各羽根13a,13bは、平面Pに対して互いに反対方向に傾斜し、互いに杭本体11の軸心S上で交差する点。

イ 甲第1号証に記載された発明
上記アから見て、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「鋼管杭10であって、
鋼管からなる杭本体11に、この杭本体11の下端から下方に突出する1つのビット12と、杭本体11の下端部に設けられた一対の羽根13a,13bとを備え、
ビット12は、鉛直面に対して面対称に形成された五角形の鋼板からなり、杭本体11の下端部内側に嵌入された状態でその左右両端面の適宜箇所で杭本体11の内周面に溶接され、また、その回転中心となる鉛直方向の仮想軸心上に下端の尖鋭部が位置しており、
前記各羽根13a,13bは共に同じ形状であって、長軸の位置で2分割されたほぼ楕円形の鋼板からなり、各羽根13a,13bは、各羽根13a,13bに対応して杭本体11の下端部に設けられた長孔14a,14bからそれぞれ杭本体11の外側から内側に嵌入された状態で杭本体11に溶接固定されており、
各長孔14a,14bは、それぞれ杭本体11の軸心に対して傾斜する平面上を延びるように形成されており、
前記各羽根13a,13bは、その直線状の周縁側がそれぞれ長孔14a,14bから杭本体11の内側に嵌入され、各羽根13a,13bの直線状の周縁は、前記ビット12の両面に当接されており、
杭本体11の軸心Sに直交する平面Pに対する各羽根13a,13bの傾斜角θは、10°以上かつ20°以下であり、
杭本体11は、円筒状であり、
鋼管杭10を杭本体11の軸心方向に見たときに、ビット12は、杭本体11の中心を通る直線を構成し、各羽根13a,13bの円弧状の周縁が同一円周上に位置するように設定されており、
傾斜角θは、杭本体11の軸心S及び上記杭本体11の中心を通る直線に垂直な方向に鋼管杭10を見たときの角度であり、
杭本体11の軸心S及び上記杭本体11の中心を通る直線に垂直な方向に鋼管杭10を見たときに、各羽根13a,13bは、平面Pに対して互いに反対方向に傾斜し、互いに杭本体11の軸心S上で交差しており、
鋼管杭10を地盤に埋設する際には、地上に設置した施工装置により鋼管杭10を埋設しようとする地面に起立させ、この状態で鋼管杭10を回転させながら下方に押すと、ビット12により杭本体11下方の地盤が掘削され、鋼管杭10が地盤中に圧入されていく、
鋼管杭10。」

(2)甲第2号証
ア 甲第2号証の記載
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)「[0044] <実施の形態2>
図5-1は、本発明の実施の形態2であるねじ込み式鋼管杭の一例を示すものである。図5-1の(a)は、ねじ込み式鋼管杭の要部の正面図であり、図5-1の(b)は、ねじ込み式鋼管杭の平面図である。尚、この図5-1に示すねじ込み式鋼管杭においては、先端側を下方、杭頭側を上方として説明する。
[0045] ここに例示するねじ込み式鋼管杭は、鋼管30と、複数(図示の例では2つ)の鋼製板40a,40bとを備えて構成されている。
[0046] 鋼管30は、内部に中空部31を有した円筒状の形態を成すものである。この鋼管30の先端部には、複数(図示の例では2つ)の取付部32a,32bが形成されている。これら取付部32a,32bは、鋼管30の先端部を円周方向に2等分することにより、該先端部の円周方向に沿って形成されている。
[0047] より詳細に説明すると、取付部32aは、上記円周方向の一方側の一端部から該円周方向の他方側の他端部に向けて先端面32a1が漸次上方に向けて傾斜する態様で形成されている。また、取付部32bは、上記円周方向の一方側の一端部から該円周方向の他方側の他端部に向けて図示せぬ先端面が漸次上方に向けて傾斜する態様で形成されている。これら取付部32aと取付部32bとでは、取付部32aの他端部と取付部32bの一端部とが連続し、かつ取付部32aの一端部と取付部32bの他端部とが段部33aを介して連続している。つまり、取付部32aと取付部32bとは見かけ上は一体のものであり、取付部32aの先端面32a1が段部33aの下端から取付部32bの一端部に連続するよう傾斜して形成されており、取付部32bの先端面が取付部32aの他端部から段部33aの上端に連続するよう傾斜して形成されている。尚、本実施の形態2においては、取付部32aの先端面32a1の傾斜角と、取付部32bの先端面の傾斜角とは略等しいものであるが、本発明においては、傾斜角が異なっていてもよい。
[0048] 鋼製板40a,40bは、それぞれが鋼管30よりも外径が大きい円形状鋼板を分割して形成されるもので、半円状を成している。ここで円形状鋼板の外径(以下、翼径ともいう)は、ねじ込み式鋼管杭を埋設する地盤の状態、鋼管30の外径(以下、杭径ともいう)、鋼製板40a,40bの数等によって適宜決められる。また、円形状鋼板の材質は、SM490材やSM570材相当の強度を有するものが用いられており、その厚み(板厚)は、10?100mm程度とされる。
[0049] 一方の鋼製板40aは、一方の取付部32aの先端面32a1に沿って溶接等により取り付けられることで、鋼管30の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられている。この鋼製板40aの外周部は、図5-1の(b)にも示すように、鋼管30の径方向外部に向けて突出している。また、この鋼製板40aにおいては、鋼管30の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられていることにより、傾斜下端部41aと傾斜上端部42aとが形成されている。
[0050] 他方の鋼製板40bは、他方の取付部32bの先端面に沿って溶接等により取り付けられることで、鋼管30の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられている。この鋼製板40bの外周部は、図5-1の(b)にも示すように、鋼管30の径方向外部に向けて突出している。また、この鋼製板40bにおいては、鋼管30の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられていることにより、傾斜下端部41bと傾斜上端部42bとが形成されている。
[0051] そして、上述したように取付部32aの他端部と取付部32bの一端部とが連続し、かつ取付部32aの一端部と取付部32bの他端部とが段部33aを介して連続していることから、鋼管30の外周部の一部の下方、すなわち取付部32aの他端部と取付部32bの一端部とが連続する部分で2つの鋼製板40a,40bが互いに交差して配設されている。また、このように鋼管30の外周部の一部の下方で2つの鋼製板40a,40bが互いに交差していることで、この交差部分から傾斜下端部41bまでの離間距離よりも該交差部分から傾斜下端部41aまでの離間距離の方が長くなり、これにより、鋼製板40aの傾斜下端部41aが傾斜下端部41bよりも下方に位置し、2つの鋼製板40a,40bにおいて鋼製板40aの傾斜下端部41aが最も下方に位置する部分となる。」

(イ)図5-1は、次のものである。




イ 甲第2号証に記載された技術的事項
上記アから見て、甲第2号証には、次の技術的事項(以下「甲2技術的事項」という。)が記載されている。
「ねじ込み式鋼管杭であって、
鋼管30と、複数の鋼製板40a,40bとを備えて構成され、
鋼管30は、内部に中空部31を有した円筒状の形態を成すものであり、この鋼管30の先端部には、複数の取付部32a,32bが形成され、これら取付部32a,32bは、鋼管30の先端部を円周方向に2等分することにより、該先端部の円周方向に沿って形成されており、
鋼製板40a,40bは、それぞれが鋼管30よりも外径が大きい円形状鋼板を分割して形成されるもので、半円状を成しており、
一方の鋼製板40aは、一方の取付部32aの先端面32a1に沿って溶接等により取り付けられることで、鋼管30の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられ、この鋼製板40aの外周部は、鋼管30の径方向外部に向けて突出しており、
他方の鋼製板40bは、他方の取付部32bの先端面に沿って溶接等により取り付けられることで、鋼管30の軸方向に直交する方向に対して傾斜して取り付けられ、この鋼製板40bの外周部は、鋼管30の径方向外部に向けて突出しており、
鋼管30の外周部の一部の下方で2つの鋼製板40a,40bが互いに交差して配設されている、
ねじ込み式鋼管杭。」

(3)甲第3号証
ア 甲第3号証の記載
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態)
以下、本発明に係る実施形態の鋼管杭装置1、鋼管杭10及び鋼管杭10の設置方法について、図面を用いて説明する。なお、以下の説明においては、掘削方向を「下」とし、掘削方向と反対方向を「上」として説明する。
【0022】
図1?図9を参照しながら、本実施形態の鋼管杭10を地中に設置するための装置である鋼管杭装置1及び鋼管杭10等について説明する。
図1は本発明に係る実施形態の鋼管杭装置1を斜め上方から見た斜視図であり、図2は鋼管杭装置1を図1中II方向から見た正面図であり、図3は鋼管杭装置1を斜め下方から見た斜視図である。
【0023】
また、図4は鋼管杭装置1におけるヘッド部30を斜め下方から見た斜視図であり、図5はヘッド部30を斜め上方から見た斜視図であり、図6は図4中VI方向から見たヘッド部30の正面図であり、図7はヘッド部30の平面図である。
【0024】
さらに、図8はフィン20を斜め上方から見た斜視図であり、図9は図8中IX-IX位置の断面図である。
【0025】
本発明に係る実施形態の鋼管杭装置1は、地面を掘削して鋼管杭10(図8及び図9参照)を地中の所定位置に設置するための装置であり、図1に示すように、設置後は支持部材となる鋼管杭本体11の先端に取り付けられるフィン20と、掘削時にフィン20の外側を覆ってフィン20を保護して掘削するヘッド部30を有する。
【0026】
ヘッド部30は、直接土を掘削するものであり、図4?図6に示すように、ヘッド本体31(ヘッド)を有する。
そして、ヘッド本体31は高剛性の部材であり、例えば、32mm厚の鋼製とすることができる。
なお、このヘッド本体31の板厚及び材料は一例であり、現場の状況や支持する建築物の状況に応じて、適宜変更することができる。
【0027】
ヘッド本体31は、矩形板状のヘッド平面部31aと、ヘッド平面部31aから下方へ折り曲げ形成されているヘッドリブ31bを有する。
なお、ヘッドリブ31bは、折り曲げ加工ではなく、別部材をリブとして溶接等で接合することもできる。」

(イ)「【0030】
また、図5及び図6に示すように、ヘッド平面部31aの上面中央には、ケーシング33がヘッド平面部31aに対して垂直に取り付けられている。
具体的には、ケーシング33は、例えば溶接により、ヘッド本体31に対して強力に接合されている。
【0031】
このケーシング33は、掘削時及び引き抜き時にヘッド部30を回転させながら押圧したり引き抜いたりするための部材であり、建設機械(図示省略)がケーシング33を掴んで回転させる。
【0032】
ケーシング33は、内部に中空部33a(図1参照)を有する管状部材であり、ここでは円管部材を示しているが、断面形状は特に限定するものではない。
そして、ケーシング33の中空部33aは、ヘッド平面部31aの貫通孔32の位置に配置されており、中空部33aと貫通孔32は、連続している。」

(ウ)「【0038】
図4?図6に示すように、ケーシング33の外周面33bには、一対の羽根37、38がケーシング33に対して対称位置において上下方向にずれて設けられている。
【0039】
各羽根37、38は、ヘッド部30の外側に突出する長さを有するのが望ましく(図7参照)、本実施形態では、各羽根37、38が各々支点37a、38aを中心として上下方向に回動できるようにケーシング33に回動可能に取り付けられている。
【0040】
そして、ケーシング33を掘削方向(例えば、時針方向、図1において矢印A参照)に回転させ、掘削を行うときには、各羽根37、38に対してヘッド平面部31aと平行になるように力がかかる。
このため、各羽根37、38は、各々支点37a、38aを中心としてヘッド平面部31aと平行となるように回動し、各羽根37、38がヘッド平面部31aと平行となる。
【0041】
逆に、掘削方向とは反対方向の引き抜き方向(例えば、半時針方向、図1において矢印B参照)に回転させ、引き抜きを行うときには、各羽根37、38に対して図4に示す傾斜状態となるように力がかかる。
このため、各羽根37、38は、各々支点37a、38aを中心として図4に示す傾斜状態となるように回動し、各羽根37、38が図4に示すように傾斜する。
【0042】
これにより、各羽根37、38は、掘削方向へ回転した際には抵抗にならず、引き抜き方向に回転したときには、ヘッド部30の上方の土を下方へ向けて押し下げるように作用する。
ただし、各羽根37、38は上述のように回動することが好ましいが、必ずしも、各羽根37、38が回動する必要はなく、各羽根37、38が動かないようにケーシング33に固定されていてもよい。」

(エ)図1?7は、次のものである。










イ 甲第3号証に記載された技術的事項
上記アから見て、甲第3号証には、次の技術的事項(以下「甲3技術的事項」という。)が記載されている。
「鋼管杭装置1であって、
鋼管杭装置1は、地面を掘削して鋼管杭10を地中の所定位置に設置するための装置であり、
設置後は支持部材となる鋼管杭本体11の先端に取り付けられるフィン20と、掘削時にフィン20の外側を覆ってフィン20を保護して掘削するヘッド部30を有し、
ヘッド部30は、直接土を掘削するものであり、ヘッド本体31(ヘッド)を有し、
ヘッド本体31は、矩形板状のヘッド平面部31aと、ヘッド平面部31aから下方へ折り曲げ形成されているヘッドリブ31bを有し、
ヘッド平面部31aの上面中央には、ケーシング33がヘッド平面部31aに対して垂直に取り付けられており、
ケーシング33は、内部に中空部33aを有する円管部材であり、
ケーシング33の外周面33bには、一対の羽根37、38がケーシング33に対して対称位置において上下方向にずれて設けられている、
鋼管杭装置1。」

(4)甲第4号証
ア 甲第4号証の記載
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【意匠に係る物品】簡易工作物用基礎杭」

(イ)「【意匠に係る物品の説明】本物品は、主に、太陽光パネルが設置される架台等の簡易工作物を支持するために回転圧入等によって地盤等に圧入されるものである。本物品は、使用状態を示す参考正面図に示すように、簡易工作物となる架台の梁材等にアタッチメント等で連結させて用いられる。本物品は、地盤に圧入される杭本体と、杭本体に取り付けられた杭頭プレートとを備える。杭本体は、断面略円形状の鋼管杭等が用いられて、回転力等が付与される頭部の外周面に一対の角形部材が溶接等で取り付けられる。杭本体は、地盤に圧入されるときの先端部で、鋼管杭等の内側に管内ビットが設けられるとともに、鋼管杭等の外側に外周羽根が設けられる。管内ビットは、略矩形状の鋼板等が一対で用いられて、杭本体の先端部から突出させた状態で、杭本体の内周面で互いに対向させて溶接等で取り付けられる。外周羽根は、切欠部が形成されて地盤の下方に配置される略半円形状の鋼板等と地盤の上方に配置される略半円形状の鋼板等とが一対で用いられて、互いの傾斜方向が異なるものとなるように傾斜させた状態で、杭本体の外周面に溶接等で取り付けられる。杭頭プレートは、杭本体の外径よりも大きい外径の略円形状の鋼板等が用いられて、杭本体の頭部に溶接等で取り付けられる。杭頭プレートは、略中央で上面から下面まで貫通するボルト孔が形成されて、ボルト孔と重ね合わせて下面にナットが溶接等で取り付けられる。本物品は、杭本体と杭頭プレートとによって簡易工作物を一体的に支持するもので、杭本体と杭頭プレートとが一体的に創作される関係にある。本物品は、杭本体が回転圧入等によって圧入されるときに、外周羽根で推進力を得ることができるだけでなく、管内ビットで杭本体の先端部の土砂を分断することができ、杭本体の円滑な回転圧入が可能となるものである。」

(ウ)正面図は、次のものである。




(エ)背面図は、次のものである。




(オ)上記(ウ)の正面図におけるA-A部分拡大図は、次のものである。




(カ)上記(イ)の「外周羽根は、切欠部が形成されて地盤の下方に配置される略半円形状の鋼板等と地盤の上方に配置される略半円形状の鋼板等とが一対で用いられて、互いの傾斜方向が異なるものとなるように傾斜させた状態で、杭本体の外周面に溶接等で取り付けられる。」との記載及び基礎杭の分野における技術常識を踏まえると、上記(ウ)?(オ)の各図において中央に描かれている縦長の矩形状の部材は、杭本体であり、この杭本体の下端部付近でこの杭本体に対して斜め方向に重なっている2本の線状の部材は、一対の外周羽根であると解される。
この点を踏まえると、上記(ウ)?(オ)の各図からは、以下の点が看取される。
a 一方の外周羽根側から見た正面視において、一対の外周羽根は、杭本体の外側で交差する点。

(キ)左側面図は、次のものである。




(ク)上記(キ)の左側面図におけるD-D断面図は、次のものである。




(ケ)上記(ク)のD-D断面図におけるG-G部分拡大図は、次のものである。




(コ)拡大底面図は、次のものである。




(サ)上記(イ)の「管内ビットは、略矩形状の鋼板等が一対で用いられて、杭本体の先端部から突出させた状態で、杭本体の内周面で互いに対向させて溶接等で取り付けられる。」との記載及び基礎杭の分野における技術常識を踏まえると、上記(ク)?(ケ)の各図において中央に描かれている縦長の矩形状の部材は、杭本体であり、この杭本体の下端部から真下に延びる2本の線状の部材は、一対の管内ビットであると解される。また、上記(コ)の図において、斜線でハッチングされた円形状の部材は杭本体であり、この杭本体の内面の左右の箇所に描かれた2つの線状の部材は一対の管内ビットであると解される。
以上の点を踏まえると、上記(ク)?(コ)の各図からは、以下の点が看取される。
a 一対の管内ビットは、杭本体の中心軸に対して対称となる位置に配置されている点。

b 一対の管内ビットは、杭本体の内面のみに取り付けられている点。

イ 甲第4号証に記載された技術的事項
上記アから見て、甲第4号証には、次の技術的事項(以下「甲4技術的事項」という。)が記載されている。
「簡易工作物用基礎杭であって、
地盤に圧入される杭本体と、杭本体に取り付けられた杭頭プレートとを備え、
杭本体は、断面略円形状の鋼管杭等が用いられて、地盤に圧入されるときの先端部で、鋼管杭等の内側に管内ビットが設けられるとともに、鋼管杭等の外側に外周羽根が設けられ、
管内ビットは、略矩形状の鋼板等が一対で用いられて、杭本体の先端部から突出させた状態で、杭本体の内周面で互いに対向させて溶接等で取り付けられ、
外周羽根は、切欠部が形成されて地盤の下方に配置される略半円形状の鋼板等と地盤の上方に配置される略半円形状の鋼板等とが一対で用いられて、互いの傾斜方向が異なるものとなるように傾斜させた状態で、杭本体の外周面に溶接等で取り付けられており、
一方の外周羽根側から見た正面視において、一対の外周羽根は、杭本体の外側で交差し、
一対の管内ビットは、杭本体の中心軸に対して対称となる位置に配置されるとともに、杭本体の内面のみに取り付けられる、
簡易工作物用基礎杭。」

(5)甲第5号証
ア 甲第5号証の記載
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【意匠に係る物品】簡易工作物用基礎杭」

(イ)「【意匠に係る物品の説明】本物品は、主に、太陽光パネルが設置される架台等の簡易工作物を支持するために回転圧入等によって地盤等に圧入されるものである。本物品は、使用状態を示す参考正面図に示すように、簡易工作物となる架台の梁材等にアタッチメント等で連結させて用いられる。本物品は、地盤に圧入される杭本体と、杭本体に取り付けられた杭頭プレートとを備える。杭本体は、断面略円形状の鋼管杭等が用いられて、回転力等が付与される頭部の外周面に一対の角形部材が溶接等で取り付けられる。杭本体は、地盤に圧入されるときの先端部で、鋼管杭等の内側に管内ビットが設けられるとともに、鋼管杭等の外側に外周羽根が設けられる。管内ビットは、略矩形状の鋼板等が一対で用いられて、杭本体の先端部から突出させた状態で、杭本体の内周面で互いに対向させて溶接等で取り付けられる。外周羽根は、切欠部が形成されて地盤の下方に配置される略半円形状の鋼板等と地盤の上方に配置される略半円形状の鋼板等とが一対で用いられて、互いの傾斜方向が異なるものとなるように傾斜させた状態で、杭本体の外周面に溶接等で取り付けられる。杭頭プレートは、杭本体の外径よりも大きい外径の略円形状の鋼板等が用いられて、杭本体の頭部に溶接等で取り付けられる。杭頭プレートは、略中央で上面から下面まで貫通するボルト孔が形成されて、ボルト孔と重ね合わせて下面にナットが溶接等で取り付けられる。本物品は、杭本体と杭頭プレートとによって簡易工作物を一体的に支持するもので、杭本体と杭頭プレートとが一体的に創作される関係にある。本物品は、杭本体が回転圧入等によって圧入されるときに、外周羽根で推進力を得ることができるだけでなく、管内ビットで杭本体の先端部の土砂を分断することができ、杭本体の円滑な回転圧入が可能となるものである。」

(ウ)正面図は、次のものである。




(エ)背面図は、次のものである。




(オ)上記(ウ)の正面図におけるA-A部分拡大図は、次のものである。




(カ)上記(イ)の「外周羽根は、切欠部が形成されて地盤の下方に配置される略半円形状の鋼板等と地盤の上方に配置される略半円形状の鋼板等とが一対で用いられて、互いの傾斜方向が異なるものとなるように傾斜させた状態で、杭本体の外周面に溶接等で取り付けられる。」との記載及び基礎杭の分野における技術常識を踏まえると、上記(ウ)?(エ)の各図において中央に実線及び破線で描かれている縦長の矩形状の部材、及び上記(オ)の図において、中央に実線で描かれている縦長の矩形状の部材は、杭本体であると解される。また、これらの図において上記杭本体の下端部付近で上記杭本体に対して斜め方向に重なっている2本の線状の部材は、一対の外周羽根であると解される。
この点を踏まえると、上記(ウ)?(オ)の各図からは、以下の点が看取される。
a 一方の外周羽根側から見た正面視において、一対の外周羽根は、杭本体の外側で交差する点。

(キ)左側面図は、次のものである。




(ク)上記(キ)の左側面図におけるD-D断面図は、次のものである。




(ケ)上記(ク)のD-D断面図におけるF-F部分拡大図は、次のものである。




(コ)拡大底面図は、次のものである。




(サ)上記(イ)の「管内ビットは、略矩形状の鋼板等が一対で用いられて、杭本体の先端部から突出させた状態で、杭本体の内周面で互いに対向させて溶接等で取り付けられる。」との記載及び基礎杭の分野における技術常識を踏まえると、上記(ク)の図において中央に実線及び破線で描かれている縦長の矩形状の部材、及び上記(ケ)の図において中央に実線で描かれている縦長の矩形状の部材は、杭本体であると解される。また、これらの図において上記杭本体の下端部から真下に延びる2本の線状の部材は、一対の管内ビットであると解される。さらに、上記(コ)の図において、中央に実線で描かれた円形状の部材は、杭本体であり、この杭本体の内面の左右の箇所に実線で描かれた2つの線状の部材は、一対の管内ビットであると解される。
以上の点を踏まえると、上記(ク)?(コ)の各図からは、以下の点が看取される。
a 一対の管内ビットは、杭本体の中心軸に対して対称となる位置に配置されている点。

b 一対の管内ビットは、杭本体の内面のみに取り付けられている点。

イ 甲第5号証に記載された技術的事項
上記アから見て、甲第5号証には、次の技術的事項(以下「甲5技術的事項」という。)が記載されている。
「簡易工作物用基礎杭であって、
地盤に圧入される杭本体と、杭本体に取り付けられた杭頭プレートとを備え、
杭本体は、断面略円形状の鋼管杭等が用いられて、地盤に圧入されるときの先端部で、鋼管杭等の内側に管内ビットが設けられるとともに、鋼管杭等の外側に外周羽根が設けられ、
管内ビットは、略矩形状の鋼板等が一対で用いられて、杭本体の先端部から突出させた状態で、杭本体の内周面で互いに対向させて溶接等で取り付けられ、
外周羽根は、切欠部が形成されて地盤の下方に配置される略半円形状の鋼板等と地盤の上方に配置される略半円形状の鋼板等とが一対で用いられて、互いの傾斜方向が異なるものとなるように傾斜させた状態で、杭本体の外周面に溶接等で取り付けられており、
一方の外周羽根側から見た正面視において、一対の外周羽根は、杭本体の外側で交差し、
一対の管内ビットは、杭本体の中心軸に対して対称となる位置に配置されるとともに、杭本体の内面のみに取り付けられる、
簡易工作物用基礎杭。」

(6)甲第6号証
ア 甲第6号証の記載
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【意匠に係る物品】基礎杭」

(イ)「【意匠に係る物品の説明】本物品は、主に、住宅等の建築物の基礎杭として、回転圧入等によって地盤等に貫入されるものである。本物品は、断面略円形状の鋼管等が用いられる杭本体と、杭本体の先端部に取り付けられた一対の外面翼と、杭本体の直径方向に架設された先端リブとを備える。杭本体は、先行させて貫入される先端部の端面に、一対の外面翼が溶接等で取り付けられて、一対の外面翼によって先端部が閉塞されるものとなる。一対の外面翼は、各々の外面翼として略半円形状の鋼板等が傾斜させて用いられて、各々の外面翼が互いに傾斜させた方向を異ならせて配置される。先端リブは、外面翼の下面から下方に向けて略三角形状に突出させた鋼板等が用いられて、外面翼の下面に溶接等で取り付けられる当接面が傾斜させて形成される。本物品は、杭本体を回転圧入等によって地盤等に貫入するときに、一対の外面翼で推進力を得ることができるだけでなく、杭本体の先端側の土砂を先端リブで分断することができるため、杭本体の円滑な回転圧入等が可能となる。本物品は、杭本体の先端部を到達させる支持地盤等までの深度に応じて、1又は複数の別途の補強鋼管等が、杭本体の頭頂部に継ぎ足される。」

(ウ)正面図は、次のものである。




(エ)背面図は、次のものである。




(オ)上記(ウ)の正面図におけるa-a’部分の拡大図は、次のものである。




(カ)上記(イ)の「杭本体は、先行させて貫入される先端部の端面に、一対の外面翼が溶接等で取り付けられて、一対の外面翼によって先端部が閉塞されるものとなる。一対の外面翼は、各々の外面翼として略半円形状の鋼板等が傾斜させて用いられて、各々の外面翼が互いに傾斜させた方向を異ならせて配置される。先端リブは、外面翼の下面から下方に向けて略三角形状に突出させた鋼板等が用いられて・・・形成される。」との記載及び基礎杭の分野における技術常識を踏まえると、上記(ウ)?(エ)の各図において中央に実線及び破線で描かれている縦長の矩形状の部材、及び上記(オ)の図において中央に実線で描かれている縦長の矩形状の部材は、杭本体であると解される。また、これらの図において上記杭本体の下端部に実線で描かれている略三角形状の部材は、先端リブであると解される。さらに、これらの図において上記杭本体の下端部付近でこの杭本体に対して斜め方向に重なっている2本の線状の部材は、一対の外面翼であると解される。
この点を踏まえると、上記(ウ)?(オ)の各図からは、以下の点が看取される。
a 一方の外面翼から見た正面視において、一対の外面翼は、杭本体の外側で交差する点。

イ 甲第6号証に記載された技術的事項
上記アから見て、甲第6号証には、次の技術的事項(以下「甲6技術的事項」という。)が記載されている。
「基礎杭であって、
断面略円形状の鋼管等が用いられる杭本体と、杭本体の先端部に取り付けられた一対の外面翼とを備え、
杭本体は、先行させて貫入される先端部の端面に、一対の外面翼が溶接等で取り付けられ、
一対の外面翼は、各々の外面翼として略半円形状の鋼板等が傾斜させて用いられて、各々の外面翼が互いに傾斜させた方向を異ならせて配置されており、
一方の外面翼から見た正面視において、一対の外面翼は、杭本体の外側で交差する、
基礎杭。」

(7)甲第7号証
ア 甲第7号証の記載
甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0017】
図1は、本実施の形態の鋼管杭1の先端部12付近の構成を示した斜視図である。
【0018】
この鋼管杭1は、円筒状の鋼管によって形成される軸部11と、地盤にねじ込む際にその軸部11の下方に位置する先端部12と、その先端部12に設けられる軸部11よりも外形が大きな羽根部2と、その羽根部2の下方に形成される先端凸部14とから主に構成される。
【0019】
この先端部12は、本実施の形態では、軸部11と同じ鋼管の一方の端部に形成されるので、鋼管自体が円筒状外殻になる。
【0020】
この先端部12の円筒状外殻には、図2に示すように、先端面12aから斜めに溝状の切り込みを入れて切込み部13を形成する。ここで、切込み部13の溝幅は、後述する羽根板21の厚さに合わせて設定する。
【0021】
この切込み部13は、先端面12aに対して5?25度程度の角度で傾けて形成されるもので、この傾斜角は10?20度程度が好ましく、本実施の形態では傾傾斜角を15度に設定した場合について説明する。
【0022】
また、本実施の形態では、切込み部13は先端部12の周方向に間隔を置いて同じ角度で2箇所に設けられる。
【0023】
この切込み部13、13は、図2に示すように、先端部12の半周毎に形成されるもので、一方の切込み部13の上方に切れ上がった上端の下あたりから他方の切込み部13が切り込まれる。
【0024】
また、羽根部2は、これらの切込み部13,13に差し込む2枚の羽根板21,21によって形成される。
【0025】
この羽根部2は、軸部11の直径の1.5?3.5倍程度の直径の円形板状に形成されるもので、羽根部2を二等分した半円形の2枚の羽根板21,21によって構成される。
(中略)
【0029】
そして、この羽根板21,21は、切込み部13,13にそれぞれ差し込まれ、軸部11の平面視円形の開口は2枚の羽根板21,21によって半円ずつ塞がれる(図4参照)。
【0030】
また、この羽根板21は、切込み部13に差し込まれると、切込み部13の上縁に沿って溶接部22が形成されて鋼管に固着される。
【0031】
このように周方向の同じ向きに半周毎に形成された切込み部13,13に差し込まれた羽根板21,21は、図3の鋼管杭1の側面図に示すように、側面視では反対方向に傾いているように見える。」

(イ)「【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の最良の実施の形態の鋼管杭の構成を説明する斜視図である。
【図2】本発明の最良の実施の形態の鋼管杭の製作方法を説明する説明図である。
【図3】本発明の最良の実施の形態の鋼管杭の構成を説明する側面図である。
【図4】本発明の最良の実施の形態の鋼管杭の構成を説明する底面図である。
【図5】実施例1の鋼管杭の構成を説明する側面図である。
【図6】実施例2の鋼管杭の構成を説明する底面図である。」

(ウ)図3及び図4は、次のものである。




(エ)上記(ア)の段落[0031]及び上記(イ)のとおり、上記(ウ)の図3は、鋼管杭の側面視を示す側面図である。また、上記(イ)のとおり、上記(ウ)の図4は、鋼管杭の底面図である。
そして、上記(ア)の記載及び上記(ウ)の図4の記載を踏まえると、図3からは、以下の点が看取される。
a 鋼管杭の側面視は、一方の羽根板21側から見たものである点。
b 一方の羽根板21側から鋼管杭1を見た側面視において、羽根板21,21は、互いに軸部11の中心軸上で交差する点。

イ 甲第7号証に記載された技術的事項
上記アから見て、甲第7号証には、次の技術的事項(以下「甲7技術的事項」という。)が記載されている。
「鋼管杭1であって、
円筒状の鋼管によって形成される軸部11と、地盤にねじ込む際にその軸部11の下方に位置する先端部12と、その先端部12に設けられる軸部11よりも外形が大きな羽根部2と、その羽根部2の下方に形成される先端凸部14とから主に構成され、
この先端部12の円筒状外殻には、先端面12aから斜めに溝状の切り込みを入れて切込み部13を形成し、
この切込み部13は、先端面12aに対して5?25度程度の角度で傾けて形成されるもので、この傾斜角は10?20度程度が好ましく、
切込み部13は先端部12の周方向に間隔を置いて同じ角度で2箇所に設けられ、この切込み部13、13は、先端部12の半周毎に形成されるものであり、
羽根部2は、これらの切込み部13,13に差し込む2枚の羽根板21,21によって形成され、
この羽根部2は、軸部11の直径の1.5?3.5倍程度の直径の円形板状に形成されるもので、羽根部2を二等分した半円形の2枚の羽根板21,21によって構成され、
この羽根板21,21は、切込み部13,13にそれぞれ差し込まれ、軸部11の平面視円形の開口は2枚の羽根板21,21によって半円ずつ塞がれており、
羽根板21,21は、一方の羽根板21側から鋼管杭1を見た側面視では反対方向に傾いているように見え、互いに軸部11の中心軸上で交差する、
鋼管杭1。」

5 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「杭本体11」は、「円筒状であ」るから、本件発明1の「円筒状に延びる本体部」に相当する。

(イ)甲1発明の「杭本体11の下端部」は、本件発明1の「前記本体部の先端側」に相当する。
また、甲1発明の「一対の羽根13a,13b」は、「鋼板からなり」、「杭本体11の下端部に設けられた長孔14a,14bからそれぞれ杭本体11の外側から内側に嵌入され」ている。ここで、この「各長孔14a,14b」は、「それぞれ杭本体11の軸心に対して傾斜する平面上を延びるように形成されて」いるところ、この「杭本体11の軸心」の方向は、「杭本体11」が延びる方向と一致し、「杭本体11の軸心に対して傾斜する平面」は、「杭本体11」が延びる方向と交差する平面であることは明らかであるから、甲1発明の上記「一対の羽根13a,13b」は、本件発明1の「前記本体部の先端側において」、「前記本体部の延びる方向と交差する平面に沿っ」て「板材として設けられた一対の羽根部」に相当する。
また、甲1発明の上記「一対の羽根13a,13b」が、「鋼管杭10を杭本体11の軸心方向に見たときに」、「各羽根13a,13bの円弧状の周縁が同一円周上に位置するように設定されて」いる点は、本件発明1の「一対の羽根部」が「扇状に拡がる」点に相当する。
さらに、甲1発明の「鋼管杭10を杭本体11の軸心方向に見たときに」、「杭本体11の中心を通る直線」は、本件発明1の「該本体部」の「円筒の中心線」に相当し、甲1発明の「ビット12」は、この「杭本体11の中心を通る直線を構成」するから、甲1発明の「ビット12」は、「鋼管杭10を杭本体11の軸心方向に見たときに」、「杭本体11」を2つの円弧に二等分するものである。そして、甲1発明の上記「各羽根13a,13b」は、「それぞれ杭本体11の外側から内側に嵌入され」るものであり、「その直線状の周縁側がそれぞれ長孔14a,14bから杭本体11の内側に嵌入され、各羽根13a,13bの直線状の周縁は、前記ビット12の両面に当接されて」いるから、甲1発明の上記「各羽根13a,13b」は、それぞれ、上記「ビット12」によって二等分された2つの円弧の一方及び他方の内周側から外周側にかけて延在するものである。
甲1発明のこの点は、本件発明1の「一対の羽根部」が「該本体部をその円筒の中心線で二等分してなる円弧それぞれの外周面か」ら「拡がる」点に相当する。
したがって、甲1発明の上記「一対の羽根13a,13b」は、本件発明1の「前記本体部の先端側において、該本体部をその円筒の中心線で二等分してなる円弧それぞれの外周面から、前記本体部の延びる方向と交差する平面に沿って扇状に拡がる板材として設けられた一対の羽根部」に相当する。

(ウ)甲1発明の「鋼管杭10」は、上記「杭本体11」と上記「一対の羽根13a,13b」とを備えるものであるから、本件発明1の「・・・本体部と、・・・一対の羽根部と、を備える管状杭」に相当する。

(エ)甲1発明の「杭本体11の軸心S」の方向は「杭本体11」が延びる方向と一致するものであり、甲1発明の「杭本体11の軸心S及び上記杭本体11の中心を通る直線に垂直な方向」に「見たとき」は、「杭本体11の軸心S及び杭本体11の中心を通る直線」により特定される「平面」に、該平面と垂直な方向にある部材を投影して見ることを表しているといえるから、本件発明1の「前記本体部の延びる方向および該本体部をなす円筒の中心線が延びる方向で形成される第1平面に投影した場合」に相当する。
また、甲1発明の「杭本体11の軸心Sに直交する平面P」は、本件発明1の「前記本体部の延びる方向と直交する第2平面」に相当する。
そして、甲1発明において、「杭本体11の軸心S及び上記杭本体11の中心を通る直線に垂直な方向に鋼管杭10を見たときに、各羽根13a,13bは、平面Pに対して互いに反対方向に傾斜し」、「杭本体11の軸心Sに直交する平面Pに対する各羽根13a,13bの傾斜角θは、10°以上かつ20°以下であ」る点は、本件発明1の「一対の前記羽根部は、前記本体部の延びる方向および該本体部をなす円筒の中心線が延びる方向で形成される第1平面に投影した場合に、前記本体部の延びる方向と直交する第2平面に対してそれぞれ反対方向に10°?20°の角度をなして傾斜」する点に相当する。

(オ)本件発明1において、「一対の前記羽根部は、前記本体部の延びる方向および該本体部をなす円筒の中心線が延びる方向で形成される第1平面に投影した場合に」、「前記本体部において該本体部をなす円筒の中心軸を挟むいずれか一方の領域側、かつ、当該円筒の外周上ではない位置で交差する位置関係となるように配置され」る点と、甲1発明において、「杭本体11の軸心S及び上記杭本体11の中心を通る直線に垂直な方向に鋼管杭10を見たときに、各羽根13a,13bは」、「互いに杭本体11の軸心S上で交差する」点とは、「一対の前記羽根部は、前記本体部の延びる方向および該本体部をなす円筒の中心線が延びる方向で形成される第1平面に投影した場合に、前記本体部において交差する位置関係となるように配置され」る点で共通する。

(カ)甲1発明の「長孔14a,14b」は、「各羽根13a,13bに対応して杭本体11の下端部に設けられ」、「それぞれ杭本体11の外側から内側に嵌入され」るから、本件発明1の「本体部」が「有して」いる「前記羽根部それぞれに対応する領域を外内に貫通する貫通溝」に相当する。

(キ)甲1発明の「鋼管杭10」が「ビット12」を備え、この「ビット12」が「鋼板からなり、杭本体11の下端部内側に嵌入された状態でその左右両端面の適宜箇所で杭本体11の内周面に溶接され」る点は、本件発明1の「前記管状杭は、前記本体部の先端側において、該本体部をなす円筒に囲まれた内部空間」を「仕切る板状の仕切部を更に備え」る点に相当する。
また、甲1発明の上記「ビット12」は、「杭本体11の中心を通る直線を構成し」ているから、「杭本体11の中心を通る直線」に沿って配置されている。甲1発明のこの点は、本件発明1の「仕切部」が「該円筒の中心線に沿って仕切る」点に相当する。

(ク)本件発明1の「一対の前記羽根部」が、「仕切部」に「固定され」るにあたり、当該「仕切部」に当接していることは明らかであるから、本件発明1において、「一対の前記羽根部は、それぞれ前記貫通溝から前記本体部の内部に到達し、前記仕切部を挟んだ状態で前記仕切部および前記本体部に固定され」ている点と、甲1発明において、「前記各羽根13a,13bは、その直線状の周縁側がそれぞれ長孔14a,14bから杭本体11の内側に嵌入され、各羽根13a,13bの直線状の周縁は、前記ビット12の両面に当接されて」いる点とは、「一対の前記羽根部は、それぞれ前記貫通溝から前記本体部の内部に到達し、前記仕切部を挟んだ状態で前記仕切部に当接され、かつ前記本体部に固定され」ている点で共通する。

(ケ)甲1発明の「鋼管杭10」は、「ビット12」を備え、この「ビット12」は、「鉛直面に対して面対称に形成された五角形の鋼板からなり」、「その回転中心となる鉛直方向の仮想軸心上に下端の尖鋭部が位置」するものであって、「杭本体11の下端から下方に突出」している。そして、この「ビット12」は、「鋼管杭10を地盤に埋設する際に」、「杭本体11下方の地盤」を「掘削」するものである。甲1発明のこれらの点と、本件発明1の「前記管状杭は、前記第2平面に投影した場合に本体部をなす円筒の中心軸を中心として点対称となる位置関係で、前記仕切部の表裏面それぞれに沿って本体部の先端から突出するように設けられた一対の掘削刃と、を更に備える」点とは、「前記管状杭は、前記仕切部に本体部の先端から突出するように設けられた掘削刃と、を更に備える」点で共通する。

(コ)以上を総合すると、本件発明1と甲1発明とは、
「円筒状に延びる本体部と、
前記本体部の先端側において、該本体部をその円筒の中心線で二等分してなる円弧それぞれの外周面から、前記本体部の延びる方向と交差する平面に沿って扇状に拡がる板材として設けられた一対の羽根部と、を備える管状杭であり、
一対の前記羽根部は、前記本体部の延びる方向および該本体部をなす円筒の中心線が延びる方向で形成される第1平面に投影した場合に、前記本体部の延びる方向と直交する第2平面に対してそれぞれ反対方向に10°?20°の角度をなして傾斜し、前記本体部において交差する位置関係となるように配置され、
前記本体部は、前記羽根部それぞれに対応する領域を外内に貫通する貫通溝を有しており、
前記管状杭は、
前記本体部の先端側において、該本体部をなす円筒に囲まれた内部空間を該円筒の中心線に沿って仕切る板状の仕切部を更に備え、
一対の前記羽根部は、それぞれ前記貫通溝から前記本体部の内部に到達し、前記仕切部を挟んだ状態で前記仕切部に当接され、かつ前記本体部に固定され、
前記管状杭は、
前記仕切部に本体部の先端から突出するように設けられた掘削刃と、を更に備える
管状杭。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)「前記本体部の延びる方向および該本体部をなす円筒の中心線が延びる方向で形成される第1平面に投影した場合に」、「一対の前記羽根部」が「交差する」位置が、本件発明1では「前記本体部において該本体部をなす円筒の中心軸を挟むいずれか一方の領域側、かつ、当該円筒の外周上ではない位置」であるのに対し、甲1発明では「杭本体11の軸心S上」である点。

(相違点2)「一対の前記羽根部」が、本件発明1では「前記仕切部」に「固定され」るのに対し、甲1発明では「前記ビット12」(仕切部)に「当接され」る点。

(相違点3)「掘削刃」が、本件発明1では「前記第2平面に投影した場合に本体部をなす円筒の中心軸を中心として点対称となる位置関係で」、「前記仕切部の表裏面それぞれに沿っ」て「一対」、「設けられ」るのに対し、甲1発明では「ビット12」(仕切部)の「回転中心となる鉛直方向の仮想軸心上」に「位置して」いる点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
(ア)甲2技術的事項の「鋼管30」、「鋼製板40a,40b」、「ねじ込み式鋼管杭」は、それぞれ、本件発明1の「本体部」、「一対の羽根部」、「管状杭」に相当する。
しかしながら、甲2技術的事項の「鋼製板40a,40b」が「互いに交差」する位置は、「鋼管30の外周部(の一部の下方)」であるから、本件発明1の相違点1に係る構成である、「前記本体部の延びる方向および該本体部をなす円筒の中心線が延びる方向で形成される第1平面に投影した場合に」、「一対の前記羽根部」が「交差する」位置が、「前記本体部において該本体部をなす円筒の中心軸を挟むいずれか一方の領域側、かつ、当該円筒の外周上ではない位置」(下線は当審で付した。以下同様。)である構成を備えるものではない。

(イ)甲3技術的事項の「一対の羽根37、38」は、「円管部材であ」る「ケーシング33の外周面33bに」、「ケーシング33に対して対称位置において上下方向にずれて設けられている」から、この点で、甲3技術的事項の「ケーシング33」、「一対の羽根37、38」は、それぞれ、本件発明1の「本体部」、「一対の羽根部」と共通する。
しかしながら、甲第3号証の明細書には、本件発明1の「前記本体部の延びる方向および該本体部をなす円筒の中心線が延びる方向で形成される第1平面」に相当する平面に投影した場合に、「一対の羽根37、38」がどこで「交差する」のか記載されておらず、また、甲第3号証の図面にも、上記の平面に投影した場合の図は記載されていないから、上記の平面に投影した場合に、「一対の羽根37、38」がどこで「交差する」のか特定することができない。
したがって、甲3技術的事項も、本件発明1の相違点1に係る構成を備えるものではない。

(ウ)甲4?5技術的事項の「杭本体」、「一対の外周羽」、「簡易工作物用基礎杭」は、それぞれ、本件発明1の「本体部」、「一対の羽根部」、「管状杭」に相当する。
また、甲6技術的事項の「杭本体」、「一対の外面翼」、「基礎杭」は、それぞれ、本件発明1の「本体部」、「一対の羽根部」、「管状杭」に相当する。
しかしながら、甲4?5技術的事項の「一対の外周羽根」及び甲6技術的事項の「一対の外面翼」は、いずれも、本件発明1の「前記本体部の延びる方向および該本体部をなす円筒の中心線が延びる方向で形成される第1平面」に相当する平面に投影した場合に、「杭本体の外側で交差」するものである。
したがって、甲4?6技術的事項も、本件発明1の相違点1に係る構成である、「前記本体部の延びる方向および該本体部をなす円筒の中心線が延びる方向で形成される第1平面に投影した場合に」、「一対の前記羽根部」が「交差する」位置が、「前記本体部において該本体部をなす円筒の中心軸を挟むいずれか一方の領域側、かつ、当該円筒の外周上ではない位置」である構成を備えるものではない。

(エ)甲7技術的事項の「軸部11」、「2枚の羽根板21,21」、「鋼管杭1」は、それぞれ、本件発明1の「本体部」、「一対の羽根部」、「管状杭」に相当する。
しかしながら、甲7技術的事項の「2枚の羽根板21,21」は、本件発明1の「前記本体部の延びる方向および該本体部をなす円筒の中心線が延びる方向で形成される第1平面」に相当する平面に投影した場合に、「軸部11(本体部)の中心軸上で交差する」ものである。
したがって、甲7技術的事項も、本件発明1の相違点1に係る構成である、「前記本体部の延びる方向および該本体部をなす円筒の中心線が延びる方向で形成される第1平面に投影した場合に」、「一対の前記羽根部」が「交差する」位置が、「前記本体部において該本体部をなす円筒の中心軸を挟むいずれか一方の領域側、かつ、当該円筒の外周上ではない位置」である構成を備えるものではない。

(オ)以上のとおり、本件発明1の相違点1に係る構成である、「前記本体部の延びる方向および該本体部をなす円筒の中心線が延びる方向で形成される第1平面に投影した場合に」、「一対の前記羽根部」が「交差する」位置が、「前記本体部において該本体部をなす円筒の中心軸を挟むいずれか一方の領域側、かつ、当該円筒の外周上ではない位置」である構成は、申立人が提出した甲第1?7号証には記載も示唆もされていないし、本件特許出願前において周知技術であったとはいえず、当業者が適宜なし得た設計的事項であるとすることもできない。

(カ)申立人は、令和2年11月16日に提出した特許異議申立書において、上記相違点1に関し、「<相違点1>における一対の羽根部材の交差位置の関係は、一対の羽根部の高さ配置をずらし、本体部の円筒の外周上ではない位置(側面視して円筒の外側)で交差するような位置を特定するものである。しかしながら、例えば、甲第2?6号証に示されるように、一対の羽根部を本体部の伸びる方向に(上下に)ずらして配置することは従来周知の事項であり、円筒の外周上ではない位置で交差する位置関係となるように一対の羽根部が配置されることは周知であり(特に、甲第2号証の段落「0044」?「0065」及び図5-1,甲第3号証の段落「0038」、甲第4,5号証ともに「正面図」、「背面図」及び「A-A’部分拡大図」、甲第6号証の「正面図」、「背面図」及び「a-a’部分の拡大図」等)、設計事項にすぎない。」と主張している。
しかしながら、相違点1は、一対の羽根部が交差する位置について「前記本体部において該本体部をなす円筒の中心軸を挟むいずれか一方の領域側、かつ、当該円筒の外周上ではない位置」とするものであり、「一対の羽根部を本体部の伸びる方向に(上下に)ずらして配置すること」及び「円筒の外周上ではない位置で交差する位置関係となるように一対の羽根部が配置されること」が周知技術であるか否かによって判断が左右されるものではない。
そして、本件発明1の相違点1に係る構成が甲第2?6号証に記載も示唆もされていないことは、上記(ア)?(オ)に示したとおりである。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。

ウ 小括
以上のとおり、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲第1?7号証に記載も示唆もされていないとともに、本件特許出願前において周知技術であったとはいえず、当業者が適宜なし得た設計的事項であるということもできない。
そうすると、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2?7技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1にさらに限定事項を追加したものである。よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2?6は、甲1発明及び甲2?7技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-07-01 
出願番号 特願2019-140408(P2019-140408)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E02D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 石川 信也  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 土屋 真理子
浦口 幸宏
登録日 2020-06-12 
登録番号 特許第6716124号(P6716124)
権利者 株式会社Edge
発明の名称 管状杭  
代理人 香坂 薫  

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