ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H04N 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H04N |
---|---|
管理番号 | 1375905 |
異議申立番号 | 異議2020-700971 |
総通号数 | 260 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-08-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-12-11 |
確定日 | 2021-04-02 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6711944号発明「AMVPモードにおいて画像を符号化する装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6711944号の請求項に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6711944号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?5に係る特許についての出願は、2012年(平成24年)11月7日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2011年11月7日、韓国)を国際出願日とする特願2014-539239号(以下、出願1という)の一部を平成27年10月27日に出願した特願2015-210845号(以下、出願2という)の一部を平成29年1月18日に出願した特願2017-006641号(以下、出願3という)の一部を平成29年12月21日に出願した特願2017-245009号(以下、出願4という)の一部を令和1年6月6日に特願2019-105942号として出願したものであって、令和2年6月1日にその特許権の設定登録(特許公報発行日 令和2年6月17日)がされ、令和2年12月14日に特許異議申立人古川達也により請求項1?5に対して特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明5」という。また、本件発明1?本件発明5を総称して「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 (本件発明1) 【請求項1】 アドバンスト・モーション・ベクトル・プレディクション(AMVP)モードにおいて画像を符号化する装置であって、前記装置は、 現在のブロックの動き情報を決定し、前記動き情報を用いて前記現在のブロックの予測ブロックを生成するインター予測部と、 残差ブロックを変換することにより、変換されたブロックを生成する変換部と、 量子化パラメータおよび量子化マトリクスを用いて前記変換されたブロックを量子化することにより、量子化されたブロックを生成する量子化部と、 前記量子化されたブロックの量子化された係数成分をスキャンするスキャンニング部と、 前記量子化されたブロックの前記スキャンされた係数成分をエントロピー符号化するエントロピー符号化部と を備え、 前記動き情報は、 左側動きベクトル候補、上側動きベクトル候補、時間動きベクトル候補のうち、利用可能な動きベクトル候補を用いてAMVP候補リストを構築するサブステップと、 前記AMVP候補リストの動きベクトル候補の中から動きベクトル予測子を選択するサブステップと、 前記現在のブロックの動きベクトルから前記動きベクトル予測子を減算することによって、差分動きベクトルを生成するサブステップと、 参照ピクチャインデックスと、前記差分動きベクトルと、前記動きベクトル予測子を特定するAMVPインデックスとを符号化するサブステップと を実行することによって符号化され、 前記量子化パラメータは、量子化ユニットごとに決定され、前記量子化パラメータは、量子化パラメータ予測子を用いて符号化され、前記量子化パラメータ予測子は、左側量子化パラメータ、上側量子化パラメータ、以前の量子化パラメータのうちから2以上の量子化パラメータが利用可能である場合には、前記左側量子化パラメータ、前記上側量子化パラメータ、前記以前の量子化パラメータのうちの利用可能な2つの量子化パラメータを平均化することによって生成され、 前記左側量子化パラメータが利用可能でない場合には、前記上側量子化パラメータおよび前記以前の量子化パラメータの平均が前記量子化パラメータ予測子として設定され、 前記変換されたブロックのサイズが所定のサイズよりも大きい場合には、前記量子化されたブロックが複数のサブセットに分割され、 各サブセットの係数成分は、それぞれ、前記スキャンニング部により対角線スキャンに従って逆方向にスキャンされ、 前記複数のサブセットをスキャンするためのスキャンパターンは、前記係数成分をスキャンするために用いられるスキャンパターンと同一であり、 前記時間動きベクトル候補は、時間候補ピクチャ内の時間動きベクトル候補ブロックの動きベクトルであり、前記時間動きベクトル候補は、最大コーディングユニット(LCU)内の前記現在のブロックの位置に応じて決定される、装置。 (本件発明2) 【請求項2】 前記現在のブロックが下側LCUに隣接する場合には、右下側コーナーブロックが利用可能でないと設定される、請求項1に記載の装置。 (本件発明3) 【請求項3】 前記動きベクトル候補は、動きベクトル格納ユニット内の前記動きベクトル候補ブロックの位置に基づいて決定される、請求項1に記載の装置。 (本件発明4) 【請求項4】 前記上側量子化パラメータが利用可能でない場合には、前記左側量子化パラメータおよび前記以前の量子化パラメータの平均が前記量子化パラメータ予測子として設定される、請求項1に記載の装置。 (本件発明5) 【請求項5】 前記上側量子化パラメータおよび前記左側量子化パラメータが利用可能でない場合には、前記以前の量子化パラメータが前記量子化パラメータ予測子として設定される、請求項1に記載の装置。 第3 特許異議申立理由 特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。 1.申立理由 出願4の請求項1は、平成31年4月17日手続補正書に示されるとおりのものである。 しかしながら、出願4の平成31年4月17日付手続補正書により補正された請求項1に示される「変換ユニット」に関する以下の事項は、出願3の明細書等には記載されていない。 (1)「残差ブロックを変換することにより、変換されたブロックを生成する」「変換ユニット」であり、 かつ (2)「前記変換ユニットのサイズが所定のサイズよりも大きい場合には、前記量子化されたブロックが複数のサブセットに分割され」る という条件を満たす「変換ユニット」。 したがって、出願4の出願日は遡及せず、出願4の出願日は、その実際の提出日の平成29年12月21日である。 そのため、本件の出願日の遡及日は、出願4の出願日である平成29年12月21日である。 そして、本件発明は、出願3の公開公報(甲第1号証)の明細書に記載されたものである。 甲第1号証の公開日は、平成29年6月15日であり、本件の出願日(遡及日)の平成29年12月21日よりも前である。すなわち、本件発明は、甲第1号証に記載された発明である。 よって、本件発明1?本件発明5に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 2.証拠方法 甲第1号証:特開2017-108418号公報 第4 当審の判断 (1)出願4の出願の分割にかかる出願日の遡及について 特許出願の分割は、二以上の発明を包含する特許出願の一部を新たな特許出願とするものであり、また、分割出願が原出願の時にしたものとみなされる、すなわち出願日が遡及するという特許出願の分割の効果を生じさせるものであるためには、以下の分割の実体的要件が満たされる必要がある。 (要件1)原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が分割出願の請求項に係る発明とされたものでないこと。 (要件2)分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること。 (要件3)分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であること。 そこで、出願4の上記分割の実体的要件について検討する。 出願3は、平成29年1月18日付けで出願され、平成29年11月15日付けで特許査定がなされたものであって、出願当初の特許請求の範囲、明細書及び図面の記載と、特許査定時における特許請求の範囲、明細書及び図面は同一のものである。 一方、出願4は、平成29年12月21日に出願され、平成31年1月8日付けで拒絶理由が通知され、それに応答して平成31年4月17日に意見書の提出及び手続補正がなされ、その後、平成31年4月24日付けで出願日の遡及を認めて特許査定され、本件出願後の令和1年6月13日に出願取下げされた。 そして、出願4の出願時における特許請求の範囲、明細書及び図面の記載は、出願3の特許査定時における特許請求の範囲、明細書及び図面と同一のものである。 出願4の特許請求の範囲の請求項に係る発明は、原出願である出願3の明細書等に記載された発明の全部を請求するものではないことは明らかであり、要件1を充足する。 また、出願4の特許請求の範囲の請求項2ないし請求項5、明細書及び図面の記載と、出願3の特許請求の範囲の請求項2ないし請求項5、明細書及び図面の記載とを比較すると、両者は同一であるから、出願4の特許請求の範囲の請求項2ないし請求項5、明細書及び図面の記載は、要件2及び要件3を充足する。 そこで、出願4の特許請求の範囲の請求項1について、要件2及び要件3を充足しているかどうかを検討する。 出願4の平成31年4月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1には以下の記載がある。(符号A?Jは合議体が付した。以下、構成A?Jという。) 「【請求項1】 A アドバンスト・モーション・ベクトル・プレディクション(AMVP)モードにおいて画像を符号化する装置であって、前記装置は、 B 現在のブロックの動き情報を決定し、前記動き情報を用いて前記現在のブロックの予測ブロックを生成するインター予測ユニットと、 C 残差ブロックを変換することにより、変換されたブロックを生成する変換ユニットと、 D 量子化パラメータおよび量子化マトリクスを用いて前記変換されたブロックを量子化することにより、量子化されたブロックを生成する量子化ユニットと、 E 前記量子化されたブロックの量子化された係数成分をスキャンするスキャンニングユニットと、 F 前記量子化されたブロックの前記スキャンされた係数成分をエントロピー符号化するエントロピー符号化ユニットと を備え、 G 前記動き情報は、 G1 左側動きベクトル候補、上側動きベクトル候補、時間動きベクトル候補のうち、利用可能な動きベクトル候補を用いてAMVP候補リストを構築するサブステップと、 G2 前記AMVP候補リストの動きベクトル候補の中から動きベクトル予測子を選択するサブステップと、 G3 前記動きベクトルから前記動きベクトル予測子を減算することによって、差分動きベクトルを生成するサブステップと、 G4 参照ピクチャインデックスと、前記差分動きベクトルと、前記動きベクトル予測子を特定するAMVPインデックスとを符号化するサブステップと G を実行することによって符号化され、 H 前記量子化パラメータは、量子化ユニットごとに決定され、前記量子化パラメータは、量子化パラメータ予測子を用いて符号化され、 H1 前記量子化パラメータ予測子は、 H2 2以上の量子化パラメータが利用可能である場合には、左側量子化パラメータ、上側量子化パラメータ、以前の量子化パラメータのうちの2つの量子化パラメータを平均化することによって生成され、 H3 前記左側量子化パラメータが利用可能でない場合には、前記上側量子化パラメータおよび前記以前の量子化パラメータの平均が前記量子化パラメータ予測子として設定され、 I 前記変換ユニットのサイズが所定のサイズよりも大きい場合には、前記量子化されたブロックが複数のサブセットに分割され、 I1 各サブセットの係数成分は、それぞれ、対角線スキャンに従って逆方向にスキャンされ、 I2 前記複数のサブセットをスキャンするためのスキャンパターンは、前記係数成分をスキャンするために用いられるスキャンパターンと同一であり、 J 前記時間動きベクトル候補は、時間動きベクトル候補ピクチャ内の時間動きベクトル候補ブロックの動きベクトルであり、前記時間動きベクトル候補は、最大コーディングユニット(LCU)内の前記時間動きベクトル候補ブロックの位置に応じて決定される、 A 装置。」 (1-1)一方、出願3の明細書と同一の出願4の明細書には以下の記載がある。 「【0013】 図1は、本発明による映像符号化装置100を示すブロック図である。 【0014】 図1を参照すると、本発明による映像符号化装置100は、ピクチャ分割部110、イントラ予測部120、インター予測部130、変換部140、量子化部150、スキャニング部160、エントロピー符号化部170、逆量子化部155、逆変換部145、後処理部180、ピクチャ格納部190、減算部192及び加算部194を含む。」 「【0020】 インター予測部130は、ピクチャ格納部190に格納されている一つ以上の参照ピクチャを利用して現在予測ユニットの動き情報を決定し、前記予測ユニットの予測ブロックを生成する。前記動き情報は、参照ピクチャを示す一つ以上の参照ピクチャインデックスと一つ以上の動きベクトルを含む。 【0021】 変換部140は、現在ブロックと予測ブロックを使用して生成される残差信号を変換して変換ブロックを生成する。前記残差信号は、変換ユニット単位に変換される。変換マトリクスは、予測モード及び変換ユニットのサイズにより決定される。前記変換マトリクスは、DCTベースの整数変換マトリクス又はDSTベースの整数変換マトリクスである。インター予測では、DCTベースの整数変換マトリクスが使われる。 【0022】 量子化部150は、前記変換ブロックを量子化するための量子化パラメータを決定する。量子化パラメータは、量子化ステップサイズを意味する。量子化パラメータは、量子化ユニット毎に決定される。量子化ユニットのサイズは、変更されることができ、コーディングユニットの許容可能なサイズのうち一つである。コーディングユニットのサイズが量子化ユニットの最小サイズより大きい又は同じ場合、前記コーディングユニットは、量子化 ユニットになる。複数個のコーディングユニットが最小サイズの量子化ユニットに含まれることができる。量子化ユニットの最小サイズは、ピクチャ毎に決定され、量子化ユニットの最小サイズを特定するパラメータは、ピクチャパラメータセット(picture parameter set)に含まれる。 【0023】 量子化部150は、量子化パラメータ予測子を生成し、量子化パラメータから量子化パラメータ予測子を減算して差分量子化パラメータを生成する。前記差分量子化パラメータは、符号化される。 【0024】 前記量子化パラメータ予測子は、隣接コーディングユニットの量子化パラメータ及び以前コーディングユニットの量子化パラメータを利用して下記のように生成される。 【0025】 左側量子化パラメータ、上側量子化パラメータ及び以前量子化パラメータは、前記順序通りに検索される。少なくとも2個の量子化パラメータが利用可能な場合、前記順序に検索される最初の2個の利用可能な量子化パラメータの平均値を量子化パラメータ予測子に設定し、一つの量子化パラメータのみが利用可能な場合は、前記利用可能な量子化パラメータが量子化パラメータ予測子に設定される。即ち、前記上側及び左側量子化パラメータが 利用可能な場合、前記上側及び左側量子化パラメータの平均値が前記量子化パラメータ予測子に設定される。前記上側及び左側量子化パラメータのうち一つのみが利用可能な場合、前記利用可能な量子化パラメータと前記以前パラメータの平均値が前記量子化パラメータ予測子に設定される。前記上側及び左側量子化パラメータが両方とも利用可能でない場合、前記以前量子化パラメータが前記量子化パラメータ予測子に設定される。前記平均値 は、四捨五入した値である。 ・・・ 【0027】 量子化部150は、量子化マトリクス及び量子化パラメータを利用して変換ブロックを量子化して量子化ブロックを生成する。量子化ブロックは、逆量子化/逆変換部180に提供される。 【0028】 スキャニング部160は、量子化ブロックにスキャンパターンを適用する。 【0029】 インター予測では、エントロピー符号化のためにCABACが使われると、対角線スキャンがスキャンパターンとして使われる。量子化ブロックの係数は、量子化係数成分に分離される。前記量子化係数成分は、重要係数(significant coefficients)、係数符号(coefficient flags)及び係数レベル(coefficient levels)である。対角線スキャンが前記係数成分の各々に適用される。重要係数は、対応する量子化係数が0であるか否かを示す。係数符号は、0でない量子化係数の符号を示す。係数レベルは、0でない量子化係数の絶対値を示す。 【0030】 変換ユニットのサイズが予め決められたサイズより大きい場合、前記量子化ブロックは、複数個のサブセットに分割され、対角線スキャンが各サブセットに適用される。各サブセットの重要フラグ、係数符号及び係数レベルが前記対角線スキャンによって各々スキャンされる。前記予め決められたサイズは、4×4である。前記サブセットは、16個の変換係数を含む4×4ブロックである。 【0031】 サブセットをスキャンするためのスキャンパターンは、前記各サブセットの量子化された変換係数をスキャンするためのスキャンパターンと同じである。各サブセットの重要フラグ、係数符号及び係数レベルは、逆方向にスキャンされる。前記サブセットも逆方向にスキャンされる。 ・・・ 【0036】 エントロピー符号化部170は、スキャニング部160から受信されるスキャンされた係数成分、イントラ予測部120から受信されるイントラ予測情報、インター予測部130から受信される動き情報などをエントロピー符号化する。」 「【0037】 図2は、本発明によるインター予測モードにおける映像データを符号化する方法を説明するフローチャートである。 【0038】 現在ブロックの動き情報が決定される(S110)。現在ブロックは、予測ユニットである。現在ブロックのサイズは、コーディングユニットのサイズ及び分割モードにより決定される。 【0039】 動き情報は、予測タイプによって変わる。予測タイプが単方向予測の場合、前記動き情報は、参照リスト0のピクチャを特定する参照インデックスと、一つの動きベクトルとを含む。予測タイプが両方向予測の場合、前記動き情報は、参照リスト0のピクチャ及び参照リスト1のピクチャを特定する2個の参照インデックスと、リスト0動きベクトル及びリスト1動きベクトルとを含む。 【0040】 前記動き情報を利用して現在ブロックの予測ブロックが生成される(S120)。動きベクトルが画素位置を示す場合、前記動きベクトルにより特定される参照ピクチャのブロックを複写して予測ブロックを生成する。前記動きベクトルがサブ画素位置を示す場合、予測ブロックは、参照ピクチャの画素を補間して生成される。 【0041】 前記現在ブロックと予測ブロックを利用して残差ブロックが生成される(S130)。 【0042】 前記残差ブロックが符号化される(S140)。残差ブロックは、変換ユニットと同じサイズを有する。予測ユニットが変換ユニットより大きい場合、現在ブロックと予測ブロックとの間の残差信号は、複数個の残差ブロックに分けられる。一つ以上の残差ブロックが図1の変換部140、量子化部150、スキャニング部160及びエントロピー符号化部170により符号化される。 【0043】 前記動き情報が符号化される(S150)。動き情報は、現在ブロックの空間候補と時間候補を利用して予測符号化されることができる。動き情報は、スキップモード、マージモード又はAMVPモードに符号化される。スキップモードでは、予測ユニットがコーディングユニットのサイズを有し、動き情報は、マージモードと同様の方法により符号化される。」 「【0044】 図3は、本発明によるAMVPモードにおける動き情報を符号化する方法を説明するフローチャートである。図4は、本発明による空間動きベクトル候補ブロックの位置を説明する概念図である。 【0045】 左側動きベクトル候補は、現在ブロックの左側ブロック(ブロックA)又は左下側ブロック(ブロックD)の動きベクトルである。上側動きベクトル候補は、現在ブロックの上側ブロック(ブロックB)、右上側ブロック(ブロックC)又は左上側ブロック(ブロックE)である。隣接ブロックは、現在ブロックと比較して4個のタイプのうち一つに属する。隣接ブロックが現在ブロックと同じ参照ピクチャ及び同じ参照ピクチャリストを有する場合、前記隣接ブロックは、第1のタイプに属する。隣接ブロックが現在ブロックと同じ参照ピクチャ及び異なる参照ピクチャリストを有する場合、前記隣接ブロックは、第2のタイプに属する。隣接ブロックが現在ブロックと異なる参照ピクチャ及び同じ参照ピクチャリストを有する場合、前記隣接ブロックは、第3のタイプに属する。隣接ブロックが現在ブロックと異なる参照ピクチャ及び異なる参照ピクチャリストを有する場合、前記隣接ブロックは、第4のタイプに属する。 【0046】 左側動きベクトル候補が誘導される(S210)。ブロックDが第1のタイプ又は第2のタイプに属するかどうかを決定する。ブロックDが第1のタイプ又は第2のタイプに属する場合、ブロックDの動きベクトルが左側動きベクトル候補に設定される。ブロックDが第1のタイプ又は第2のタイプに属しない場合、ブロックAが第1のタイプ又は第2のタイプに属するかどうかを決定する。ブロックAが第1のタイプ又は第2のタイプに属する場合、ブロックAの動きベクトルが左側動きベクトル候補に設定される。ブロックAが第1のタイプ又は第2のタイプに属しない場合、ブロックDが第3のタイプ又は第4のタイプに属するかどうかを決定する。ブロックDが第3のタイプ又は第4のタイプに属する場合、ブロックDのスケーリングされた動きベクトルが左側動きベクトル候補に設定される。ブロックDが第3のタイプ又は第4のタイプに属しない場合、ブロックAが第3のタイプ又は第4のタイプに属するかどうかを決定する。ブロックAが第3のタイプ又は第4のタイプに属する場合、ブロックAのスケーリングされた動きベクトルが左側動きベクトル候補に設定される。ブロックAが第3のタイプ又は第4のタイプに属しない場合、左側動きベクトル候補は、利用可能でないと設定される。 【0047】 上側動きベクトル候補が誘導される(S220)。上側動きベクトル候補は、左側動きベクトル候補に依存して決定される。ブロックC、B及びEのいずれか一つが前記第1のタイプ又は第2のタイプに属する場合、ブロックC、B、Eの順に検索する時、接する最初のブロックの動きベクトルが上側動きベクトルに設定される。しかし、ブロックC、B及びEの全てが第1のタイプ及び第2のタイプに属しない場合、上側動きベクトルは、下記のように決定される。 【0048】 左側動きベクトルが第1又は第2のタイプに属する場合、第3又は第4のタイプに属する最初のブロックの動きベクトルが上側動きベクトル候補に設定される。ブロックC、B及びEの全てが第3のタイプ又は第4のタイプに属しない場合、上側動きベクトルは、利用可能でないと設定される。前記最初のブロックは、ブロックC、B及びEの順序に検索される時、接する最初のブロックである。 【0049】 左側動きベクトルが第3又は第4のタイプに属する場合、前記動きベクトル候補は、利用可能でないと設定される。 【0050】 時間動きベクトル候補が誘導される(S230)。時間動きベクトル候補は、下記のように誘導される。左側動きベクトル及び上側動きベクトルが両方とも利用可能であり、且つ互いに異なる場合、時間動きベクトル候補は、誘導されない。 【0051】 まず、時間動きベクトル候補ピクチャが決定される。時間動きベクトル候補ピクチャは、時間動きベクトル候補ブロックを含む。スライス内で一つの時間動きベクトル候補ピクチャが使われる。時間動きベクトル候補ピクチャの参照ピクチャインデックスは、0に設定されることもできる。 【0052】 現在スライスがPスライスの場合、参照ピクチャリスト0の参照ピクチャのうち一つが時間動きベクトル候補ピクチャとして設定される。現在スライスがBスライスの場合、参照ピクチャリスト0と1の参照ピクチャのうち一つが時間動きベクトル候補ピクチャとして設定される。現在スライスがBスライスの場合、時間動きベクトル候補ピクチャが参照ピクチャリスト0に属するか、又は1に属するかを示すリスト指示子がスライスヘッダに含まれる。時間動きベクトル候補ピクチャを特定する参照ピクチャインデックスがスライスヘッダに含まれることができる。 【0053】 次に、時間動きベクトル候補ブロックが決定される。図5は、本発明による時間動きベクトル候補ブロックの位置を説明する概念図である。図5に示すように、第1の候補ブロックは、ブロックCの右下側コーナーブロック(ブロックH)である。ブロックCは、現在ブロックと同じサイズを有して同じ位置に存在し、前記時間候補ピクチャに位置する。第2の候補ブロックは、ブロックCのセンターの右下側画素を含むブロックである。 【0054】 時間動きベクトル候補ブロックは、第1の候補ブロック及び第2の候補ブロックのうち一つである。第1の候補ブロックが利用可能な場合、第1の候補ブロックが時間動きベクトル候補ブロックとして設定される。第1の候補ブロックが利用可能でない場合、第2の候補ブロックが時間動きベクトル候補ブロックとして設定される。第2の候補ブロックが利用可能でない場合、時間動きベクトル候補ブロックは、利用可能でないと設定される。 【0055】 時間動きベクトル候補ブロックは、現在ブロックの位置に基づいて決定される。例えば、現在ブロックが下側LCUに接する場合(即ち、第1の候補ブロックが下側LCUに属する場合)、第1の候補ブロックは、現在LCU内のブロックに変更され、又は利用可能でないと設定される。 【0056】 また、第1及び第2の候補ブロックは、動き格納ユニット内での前記候補ブロックの位置に基づいて他のブロックに変更されることができる。前記動きベクトル格納ユニットは、参照ピクチャの動き情報を格納する基本単位である。」 「【0057】 図6は、本発明による動き情報を格納する方法を説明する概念図である。図6に示すように、動きベクトル格納ユニットは、16×16ブロックである。動きベクトル格納ユニットを16個の4×4ブロックに分けることができる。動きベクトル格納ユニットが16×16ブロックの場合、動き情報は、前記動きベクトル格納ユニット毎に格納される。前記動きベクトル格納ユニットが参照ピクチャの複数個の予測ユニットを含む場合、メモリに格納される動き情報の量を減らすために、複数個の予測ユニットのうち、予め決められた予測ユニットの動き情報がメモリに格納される。前記予め決められた予測ユニットは、前記16個の4×4ブロックのうち一つをカバーすることができる。前記予め決められた予測ユニットは、ブロックC3又はブロックBRをカバーするブロックである。または、前記予め決められた予測ユニットは、ブロックULをカバーするブロックである。 【0058】 したがって、候補ブロックが前記予め決められたブロックを含まない場合、前記候補ブロックは、前記予め決められたブロックを含むブロックに変更される。 【0059】 時間動きベクトル候補ブロックが決定されると、時間動きベクトル候補ブロックの動きベクトルが前記時間動きベクトル候補に設定される。 【0060】 動きベクトル候補リストが構成される(S240)。動きベクトル候補は、左側、上側及び時間動きベクトル候補の順序に整列される。左側及び上側動きベクトル候補が同じ場合、上側動きベクトルが前記動きベクトル候補リストから削除される。 【0061】 動きベクトル候補の数が予め決められた数より小さい場合、一つ以上の動きベクトルが前記動きベクトルリストに追加される(S250)。前記予め決められた数は、2である。 【0062】 動きベクトル候補が動きベクトル予測子に選択され、現在ブロックの動きベクトルから前記動きベクトル候補を減算して差分動きベクトルが生成される(S260)。 【0063】 参照ピクチャインデックス、差分動きベクトル及びAMVPインデックスが符号化される(S270)。AMVPインデックスは、動きベクトル予測子を特定する。」 (1-2)構成A?Jの明細書中の裏付けについて (a) 【0014】の「本発明による映像符号化装置100は、」「インター予測部130、変換部140、量子化部150、スキャニング部160、エントロピー符号化部170」「を含む。」という記載、【0020】の「インター予測部130は、・・・動き情報を決定し、前記予測ユニットの予測ブロックを生成する。」という記載、及び【0043】の「動き情報は、・・・AMVPモードに符号化される」という記載から、「動き情報を決定し」、当該「動き情報は、」「AMVPモードに符号化される」ような「インター予測部130を含む」「映像符号化装置」は、構成Aの「アドバンスト・モーション・ベクトル・プレディクション(AMVP)モードにおいて画像を符号化する装置」を裏付けるといえる。 (b) 【0014】の「本発明による映像符号化装置100は、」「インター予測部130、変換部140、量子化部150、スキャニング部160、エントロピー符号化部170」「を含む。」という記載、【0020】の「インター予測部130は、」「現在予測ユニットの動き情報を決定し、前記予測ユニットの予測ブロックを生成する」という記載から、「現在予測ユニットの動き情報を決定し、前記予測ユニットの予測ブロックを生成する」「インター予測部130」は、構成Bの「符号化する装置」に含まれる「現在のブロックの動き情報を決定し、前記動き情報を用いて前記現在のブロックの予測ブロックを生成するインター予測ユニット」を裏付けるといえる。 (c) 【0014】の「本発明による映像符号化装置100は、」「インター予測部130、変換部140、量子化部150、スキャニング部160、エントロピー符号化部170」「を含む。」という記載、【0021】の「現在ブロックと予測ブロックを使用して生成される残差信号」という記載、及び【0021】の「残差信号を変換して変換ブロックを生成する」「変換部140」という記載から、「現在ブロックと予測ブロックを使用して生成される」「残差信号を変換して変換ブロックを生成する」「変換部140」は符号化装置に含まれるといえる。 さらに、「変換部140」にについて、【0038】?【0042】から、「現在ブロックの動き情報が決定され」「前記動き情報を利用して現在ブロックの予測ブロックが生成され」「前記現在ブロックと予測ブロックを利用して残差ブロックが生成され」「残差ブロックが」「変換部140」「により符号化される」ものである。 そうすると、【0021】の「残差信号」は実質的に【0042】の「残差ブロック」であり、当該「変換部140」が構成Cの「残差ブロックを変換することにより、変換されたブロックを生成する」「変換ユニット」を裏付けるといえる。 (d) 【0014】の「本発明による映像符号化装置100は、」「インター予測部130、変換部140、量子化部150、スキャニング部160、エントロピー符号化部170」「を含む。」、【0027】の「量子化部150は、量子化マトリクス及び量子化パラメータを利用して変換ブロックを量子化して量子化ブロックを生成する」という記載から、「映像符号化装置100」に含まれ、「量子化マトリクス及び量子化パラメータを利用して変換ブロックを量子化して量子化ブロックを生成する」「量子化部150」は、構成Dの「量子化パラメータおよび量子化マトリクスを用いて前記変換されたブロックを量子化することにより、量子化されたブロックを生成する量子化ユニット」を裏付けるといえる。 (e) 【0014】の「本発明における映像符号化装置100は、」「インター予測部130、変換部140、量子化部150、スキャニング部160、エントロピー符号化部170」「を含む。」という記載、【0028】の「スキャニング部160は、量子化ブロックにスキャンパターンを適用する。」及び【0029】の「対角線スキャンがスキャンパターンとして使われる」「量子化ブロックは、量子化ブロックの係数は、量子化係数成分に分離される。前記量子化係数成分は、重要係数・・・係数符号・・・及び係数レベルである。対角線スキャンが前記係数成分の各々に適用される」という記載から、重要係数、係数符号、及び係数レベルを含む、「量子化係数成分」は「量子化ブロックの係数」であり、「対角線スキャンが」「スキャンパターンとして」「適用される」ものであって、「量子化ブロックにスキャンパターンを適用する」「スキャニング部160」は、「映像符号化装置100」に含まれ、量子化ブロックの量子化係数成分をスキャンするものであるといえる。 そうすると、当該「スキャニング部160」は構成Eの「前記量子化されたブロックの量子化された係数成分をスキャンするスキャンニングユニット」を裏付けるといえる。 (f) 【0014】の「本発明による映像符号化装置100は、」「インター予測部130、変換部140、量子化部150、スキャニング部160、エントロピー符号化部170」「を含む。」という記載、【0036】の「エントロピー符号化部170は、スキャニング部160から受信されるスキャンされた係数成分」「をエントロピー符号化する」という記載から、「映像符号化装置100」に含まれ「スキャニング部160から受信されるスキャンされた係数成分」「をエントロピー符号化する」「エントロピー符号化部170」は、構成Fの「前記量子化されたブロックの前記スキャンされた係数成分をエントロピー符号化するエントロピー符号化ユニット」を裏付けるといえる。 (g) 構成Gの「動き情報」について検討する。 (g-1) 【0044】の「AMVPモードにおける動き情報」という記載から、動き情報は「AMVPモード」に関連するといえる。 また、【0046】の「ブロックDの動きベクトルが左側動きベクトル候補に設定され」「ブロックAの動きベクトルが左側動きベクトル候補に設定され」「ブロックDのスケーリングされた動きベクトルが左側動きベクトル候補に設定され」「ブロックAのスケーリングされた動きベクトルが左側動きベクトル候補に設定され」「左側動きベクトル候補は、利用可能でないと設定され」という記載から、左側動きベクトル候補が利用可能である場合はブロックDまたはAの動きベクトル、またはブロックDまたはAのスケーリングされた動きベクトルが左側動きベクトル候補として設定されることがいえる。 次に、【0047】の「上側動きベクトル候補は、左側動きベクトル候補に依存して決定され」という記載、【0049】の「左側動きベクトルが第3又は第4のタイプに属する場合、前記動きベクトル候補は、利用可能でないと設定され」という記載から、上側動きベクトル候補は、左側動きベクトル候補に依存して決定されるものであり、左側動きベクトルが第3又は第4のタイプに属する場合、上側動きベクトル候補は、利用可能でないと設定されることがいえる。 さらに、【0055】の「時間動きベクトル候補ブロックは、現在ブロックの位置に基づいて決定され」「現在ブロックが下側LCUに接する場合」「第1の候補ブロックは、」「利用可能でないと設定され」という記載から、時間動きベクトル候補ブロックは、現在ブロックの位置に基づいて決定されるものであり、現在ブロックが下側LCUに接する場合、第1の候補ブロックは、利用可能でないと設定されることがいえる。 最後に、【0060】の「動きベクトル候補リストが構成され」「動きベクトル候補は、左側、上側及び時間動きベクトル候補の順序に整列され」という記載から、左側、上側及び時間動きベクトル候補の順序に整列された動きベクトル候補により、動きベクトル候補リストが構成されるといえる。 これらを総合すると、明細書には、左側動きベクトル候補、上側動きベクトル候補、時間動きベクトル候補のうち、利用可能な動きベクトル候補を用いて動きベクトル候補リストが構成され、AMVPモードにおける動き情報が構築されることが記載されているといえ、ここで、上記動きベクトル候補リストはAMVPモードにおける動き情報ということができるから、明細書の上記記載事項は、構成G1の「左側動きベクトル候補、上側動きベクトル候補、時間動きベクトル候補のうち、利用可能な動きベクトル候補を用いてAMVP候補リストを構築するサブステップ」を裏付けるといえる。 (g-2) 【0062】の「動きベクトル候補が動きベクトル予測子に選択され、」「現在ブロックの動きベクトルから前記動きベクトル候補を減算して差分動きベクトルが生成され」るという記載は、構成G2の「前記AMVP候補リストの動きベクトル候補の中から動きベクトル予測子を選択するサブステップ」、構成G3の「前記動きベクトルから前記動きベクトル予測子を減算することによって、差分動きベクトルを生成するサブステップ」を裏付けるといえる。 (g-3) 【0063】の「参照ピクチャインデックス、差分動きベクトル及びAMVPインデックスが符号化される」「AMVPインデックスは、動きベクトル予測子を特定する」という記載から、参照ピクチャインデックス、差分動きベクトル及び動きベクトル予測子を特定するAMVPインデックスが符号化されるといえるから、上記記載は構成G4の「参照ピクチャインデックスと、前記差分動きベクトルと、前記動きベクトル予測子を特定するAMVPインデックスとを符号化するサブステップ」を裏付けるといえる。 (h) 【0025】の「左側量子化パラメータ、上側量子化パラメータ及び以前量子化パラメータは、前記順序通りに検索される。少なくとも2個の量子化パラメータが利用可能な場合、前記順序に検索される最初の2個の利用可能な量子化パラメータの平均値を量子化パラメータ予測子に設定し、一つの量子化パラメータのみが利用可能な場合は、前記利用可能な量子化パラメータが量子化パラメータ予測子に設定される」という記載から、以下のことが言える。 ・量子化パラメータは左側量子化パラメータ、上側量子化パラメータ、以前量子化パラメータの順序で検索される。 ・2以上の量子化パラメータが利用可能であり、かつ左側量子化パラメータが利用可能であれば、左側量子化パラメータと、残りの2つの量子化パラメータのうち、利用可能であって、かつ先に検索された量子化パラメータの平均が量子化パラメータ予測子として設定され、 ・2つ以上の量子化パラメータが利用可能であり、かつ左側量子化パラメータが利用可能でなければ、上側量子化パラメータ及び以前量子化パラメータの平均が量子化パラメータ予測子として設定される、 といえる。 これは、構成H1、H2、H3の「前記量子化パラメータ予測子は、2以上の量子化パラメータが利用可能である場合には、左側量子化パラメータ、上側量子化パラメータ、以前の量子化パラメータのうちの2つの量子化パラメータを平均化することによって生成され、前記左側量子化パラメータが利用可能でない場合には、前記上側量子化パラメータおよび前記以前の量子化パラメータの平均が前記量子化パラメータ予測子として設定され」ることを裏付けるといえる。 (i) 【0021】の「前記残差信号は、変換ユニット単位に変換される。」について、当該「残差信号」は【0042】の「残差ブロック」であること、及び【0042】の「残差ブロックは、変換ユニットと同じサイズを有する」という記載があることから、「残差ブロック」は「変換ユニットと同じサイズを有」し、「変換ユニット単位に変換される」といえる。 一方、【0030】の「変換ユニット」とは、【0021】の「前記残差信号は、変換ユニット単位に変換される。」という記載における「変換ユニット」を指すものであって、【0030】の「変換ユニットのサイズが予め定められたサイズより大きい場合、前記量子化ブロックは、複数個のサブセットに分割され」ることは、構成Iの「変換ユニットのサイズが所定のサイズよりも大きい場合には、前記量子化されたブロックが複数のサブセットに分割され」ることを裏付けるといえる。 ここで、【0029】の「重要係数は、対応する量子化係数が0であるか否かを示す」という記載から、重要係数は対応する量子化係数が0である否かを示すフラグとして働くものということができるから、【0029】の「量子化ブロックの係数は、量子化係数成分に分離される。前記量子化係数成分は、重要係数・・・、係数符号・・・及び係数レベル・・・である」、【0030】の「前記量子化ブロックは、複数個のサブセットに分割され、対角線スキャンが各サブセットに適用される」、【0031】の「各サブセットの重要フラグ、係数符号及び係数レベルは、逆方向にスキャンされる」という記載と合わせると、量子化ブロックは複数個のサブセットに分割され、対角線スキャンが各サブセットに適用されるものであり、各サブセットの重要係数である重要フラグ、係数符号及び係数レベルからなる量子化係数成分は、逆方向にスキャンされるということができる。 そうすると、明細書の上記記載事項は、構成I1の「各サブセットの係数成分は、それぞれ、対角線スキャンに従って逆方向にスキャンされ」ることを裏付けるといえる。 また、明細書の上記記載事項と【0031】の「前記サブセットも逆方向にスキャンされる。」という記載とあわせると、各サブセットの係数成分は、対角線スキャンに従って逆方向にスキャンされるのと同様に、前記サブセットも逆方向にスキャンされるといえ、構成I2の「前記複数のサブセットをスキャンするためのスキャンパターンは、前記係数成分をスキャンするために用いられるスキャンパターンと同一であり」という事項を裏付けるといえる、 (j)【0051】の「時間動きベクトル候補ピクチャは、時間動きベクトル候補ブロックを含む」という記載から、時間動きベクトル候補ピクチャ内に時間動きベクトル候補ブロックがあるといえる。 次に、【0059】の「時間動きベクトル候補ブロックの動きベクトルが前記時間動きベクトル候補に設定される」という記載から、時間動きベクトル候補ブロックの動きベクトルが時間動きベクトル候補であるといえる。 そうすると、構成Jのうち、「前記時間動きベクトル候補は、時間動きベクトル候補ピクチャ内の時間動きベクトル候補ブロックの動きベクトルであ」ることは明細書中に裏付けられているといえる。 また、【0053】の「時間動きベクトル候補ブロックが決定される。」「第1の候補ブロックは、ブロックCの右下側コーナーブロック(ブロックH)である。ブロックCは、現在ブロックと同じサイズを有して同じ位置に存在し、前記時間候補ピクチャに位置する。」、【0055】の「時間動きベクトル候補ブロックは、」「現在ブロックが下側LCUに接する場合(即ち、第1の候補ブロックが下側LCUに属する場合)、第1の候補ブロックは、・・・利用可能でないと設定される」、【0059】の「時間動きベクトル候補ブロックの動きベクトルが前記時間動きベクトル候補に設定される」、及び図5の ![]() という記載から、 ・ブロックHは、ブロックC0を含む矩形であるブロックCの右下側の頂点を左上側の頂点とするブロックであること、 ・現在ブロックはブロックCと同じサイズを有して同じ位置に存在すること、 ・時間動きベクトル候補ブロックの動きベクトルが時間動きベクトル候補に設定されるものであること、 ・時間動きベクトル候補ブロックとして、第1の候補ブロックが下側LCUに属する場合、第1の候補ブロックは利用可能でないと設定されること、 がいえる。 ここで、時間動きベクトル候補ブロックである第1の候補ブロックが、ブロックCの右下側コーナーブロック(ブロックH)であり、現在ブロックが下側LCUに接する(即ち、第1の候補ブロックであるブロックHが下側LCUに属する)ということは、ブロックCも下側LCUに接するということであり、LCUに関する技術的前提を考慮すると、ブロックHは、下側LCUの左上端に位置するものということができる。 そして、この場合、すなわち、第1の候補ブロックであるブロックHが下側LCUの左上端に位置する場合は、候補ブロックとして利用可能出ないと設定されることがいえる。 そうすると、構成Jのうち、「前記時間動きベクトル候補は、最大コーディングユニット(LCU)内の前記時間動きベクトル候補ブロックの位置に応じて決定される」の一例は、上記記載により裏付けられているということができる。 (1-3)構成Cと構成Iの関連性について 構成Iの「前記変換ユニット」について、請求項1において前記される「変換ユニット」は、構成Cの「変換ユニット」以外には存在しないことから、文言上は構成Iの「前記変換ユニット」は、構成Cの「変換ユニット」を指すことになる。 ところで、上記(1-2)(c)のとおり、構成Cの「変換ユニット」は「変換されたブロックを生成する」「変換部140」によって裏付けられるものであるが、明細書中には、変換部が「量子化されたブロックが分割されるかどうか」に関連する「サイズ」を有する旨の記載は無く、また変換ブロックを生成する変換部のサイズが量子化されたブロックと関係することは技術常識から導けるものではない。 一方、構成Iは「前記変換ユニットのサイズが所定のサイズよりも大きい場合には、前記量子化されたブロックが複数のサブセットに分割され」ることから、構成Iの「前記変換ユニット」は「サイズ」を有し、「サイズ」の大きさによって量子化されたブロックが分割されるかどうかが決定されるといえる。 そうすると、構成Iの「前記変換ユニット」は、上記(1-2)(i)のとおり、「量子化されたブロック」が「複数個のサブセットに分割され」るかどうかを、「予め定められたサイズより大きい」「サイズ」を有するかどうかにより決定する、「変換ユニット」によって裏付けられており、構成Cの「変換ユニット」を明細書中において裏付ける「変換部140」によって裏付けられるものではないといえる。 以上から、当業者であれば、構成Cにおいて特定される「変換ユニット」は、明細書中の「変換部140」に裏付けられること、構成Iの「変換ユニット」は、明細書中の「変換ユニット」に裏付けられることが、請求項及び明細書の記載から総合的に理解できるといえる。 そうすると、請求項の構成Cにおいて特定される「変換ユニット」を指す、構成Iの「前記変換ユニット」という記載には誤記があることも、当業者にとっては十分に理解できることであるといえる。 (1-4)小括 これらの記載を総合すると、構成Cの「変換ユニット」は、正しくは「変換部」と記載されるべきものであったといえる。 また、構成Iの「前記変換ユニット」は、「前記量子化されたブロック」が「複数個のサブセットに分割され」るかどうかを、「予め定められたサイズより大きい」「サイズ」を有するかどうかにより決定する、という事項により特定される「変換ユニット」と記載されるべきものであったところ、誤って「前記変換ユニット」と記載されたものといえる。 そうすると、本件出願日における、出願4の特許請求の範囲の請求項1の記載には、誤記といえる不備が存在するものの、その技術事項は明細書中に十分な裏付けが存在するものといえ、出願4の明細書および図面と同一の内容の出願3の明細書および図面に対して、新規な事項を追加して記載したものとまでいうことはできず、本件出願日における、出願4の特許請求の範囲は、出願3の出願日の明細書および図面の範囲内において記載されたものであるといえる。 (1-5)出願2、出願3の出願遡及日について 次に、出願3の明細書および図面の記載と、出願2の明細書の図面の記載とを比較すると、両者は同一である。 また、出願3の特許請求の範囲は、出願3の明細書および図面の範囲内においてなされてものであるから、出願2の明細書および図面の範囲内において記載されたものであるともいえる。 さらに、出願2の明細書および図面の記載と、出願1の明細書の図面の記載とを比較すると、両者は実質的に同一である。 また、出願2の特許請求の範囲は、出願2の出願日の明細書および図面の範囲内においてなされたものであるから、出願1における明細書および図面の範囲内において記載されたものであるともいえる。 (1-6)そうすると、出願4の出願遡及日は、出願1の出願日である、2012年11月7日(優先日2011年11月7日)ということができる。 (2)本件出願の出願遡及日について 本件出願日における本件明細書および図面の記載と、出願4の明細書および図面の記載とを比較すると、両者は同一である。 また、本件特許請求の範囲は、本件の明細書および図面の範囲内においてなされたものであるから、出願4の明細書および図面の範囲内において記載されたものであるといえる。 したがって、本件出願の出願遡及日は、出願4の出願遡及日と同じ、2012年11月7日(優先日2011年11月7日)であるということができる。 (3)甲第1号証について 甲第1号証の公開日は、平成29年6月15日であり、本件の出願日(遡及日)の2012年11月7日(優先日2011年11月7日)よりも後であり、本件発明1?本件発明5に係る特許は、甲第1号証記載の発明であるということはできず、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1?5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2021-03-24 |
出願番号 | 特願2019-105942(P2019-105942) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H04N)
P 1 651・ 113- Y (H04N) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 岩井 健二 |
特許庁審判長 |
清水 正一 |
特許庁審判官 |
川崎 優 五十嵐 努 |
登録日 | 2020-06-01 |
登録番号 | 特許第6711944号(P6711944) |
権利者 | イノティヴ リミテッド |
発明の名称 | AMVPモードにおいて画像を符号化する装置 |
代理人 | グローバル・アイピー東京特許業務法人 |