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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1376179
審判番号 不服2020-13426  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-25 
確定日 2021-07-15 
事件の表示 特願2016- 4551「多層基板」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月21日出願公開、特開2016-131246〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成28年1月13日(優先権主張 平成27年1月13日 日本国(JP))に特許出願したものであって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

平成29年 7月12日 :手続補正書の提出
平成31年 1月 8日 :手続補正書の提出
令和 1年 9月26日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 1月29日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 6月23日付け:拒絶査定
令和 2年 9月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年10月30日 :手続補正書(方式)の提出

第2 令和2年9月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年9月25日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の概要
令和2年9月25日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、令和2年1月29日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明特定事項により特定される、
「内表面にメッキ膜が形成された貫通孔(以下、スルーホールという)を有する半導体基板が積層されている多層基板であって、
多層基板の平面視において、導電粒子が規則的に配置されており且つスルーホールが対向する位置に少なくとも導電粒子が存在し、
対向するスルーホールが導電粒子により接続され、該スルーホールが形成されている半導体基板同士が絶縁接着剤により接着している接続構造を有する多層基板。」
との発明(以下、「本願発明」という。)を、

「内表面にメッキ膜が形成された貫通孔(以下、スルーホールという)を有する配線基板もしくは半導体基板上に、スルーホールを有する半導体基板が積層されている多層基板であって、
多層基板の平面視において、導電粒子が規則的に配置されており且つスルーホールが対向する位置に少なくとも導電粒子が存在し、
多層基板を構成する基板の間で、対向する貫通電極に捕捉されていない導電粒子の数が導電粒子の総数の5%以下であり、
対向するスルーホールが導電粒子により接続され、該スルーホールが形成されている半導体基板同士が絶縁接着剤により接着している接続構造を有する多層基板。」
との発明(以下、「本件補正発明」という。)とする補正を含むものである。なお、下線部は、補正箇所を示す。

2 補正の適否
上記補正は、「内表面にメッキ膜が形成された貫通孔(以下、スルーホールという)を有する半導体基板」が積層される場所が、「内表面にメッキ膜が形成された貫通孔(以下、スルーホールという)を有する配線基板もしくは半導体基板上」であることを限定し、さらに、「導電粒子」の数について「多層基板を構成する基板の間で、対向する貫通電極に捕捉されていない導電粒子の数が導電粒子の総数の5%以下」とすることを限定する補正であり、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正による請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
ア 本件補正後の請求項1に「多層基板を構成する基板の間で、対向する貫通電極に捕捉されていない導電粒子の数が導電粒子の総数の5%以下であり」と記載されている。
そして、本願明細書段落【0004】の「この場合、図14に示したように、貫通電極6は、一般に(a)半導体基板3に(b)貫通孔4hを形成し、(c)無電解メッキによりメッキ膜4aを形成し、それをパターニングして貫通孔4hの内部にメッキ膜4aを残すことでスルーホールを形成し、(d)さらに所定のパターンにマスクを設けて電解メッキを行うことでスルーホール内に金属5を充填することにより形成される。」との記載からすれば、「貫通電極」とはスルーホール内に金属が充填されたものであって、「貫通電極」と「スルーホール」とは異なる構成である。

イ また、「導電粒子の総数の5%以下」について、本願明細書には、「第1半導体基板3Aと第2半導体基板3Bの間には、対向するスルーホール4A、4Bに捕捉されていない導電粒子11が存在するとしても、そのような導電粒子11の数は、第1半導体基板と第2半導体基板の間に存在する導電粒子の総数の好ましくは5%以下、より好ましくは0.5%以下、特に導電粒子11の略すべてがスルーホール4A、4Bで捕捉されているようにする。」(段落【0026】を参照)と、「この異方導電性フィルム10を半導体基板3A、3Bの接続に使用した後において、対向する半導体基板3A、3Bの間で、スルーホール4A、4Bに捕捉されていない導電粒子11の数は、対向する半導体基板3A、3Bの間に存在する導電粒子11の総数の好ましくは5%以下となる。」(段落【0057】を参照)と記載されているのみであり、基板の間に存在する導電粒子の総数の5%以下とする対象を、「対向する貫通電極に捕捉されていない導電粒子の数」とする記載又は示唆は見当たらない。

ウ さらに、本願明細書段落【0017】の「また、半導体基板に、スルーホール内に金属を充填して貫通電極を形成することなく、スルーホール同士を導電粒子で接続し、かつ、接続に寄与しない導電粒子が半導体基板間で低減しているので多層基板の製造コストが顕著に抑制される。また、同様の理由で、計装工数の削減にも効果がある。」との記載からすれば、本願明細書に記載された多層基板では「貫通電極」を形成することは排除されている。

エ したがって、「多層基板を構成する基板の間で、対向する貫通電極に捕捉されていない導電粒子の数が導電粒子の総数の5%以下であ」る本件補正後の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
よって、本件補正発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に既定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2)予備的見解(特許法第29条第2項について)
上記(1)で述べた「貫通電極」は「スルーホール」の誤記であると解釈して、進歩性についても検討しておく。

ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記「1」に記載したとおりのものである。

イ 引用文献の記載事項
(ア)引用文献1
a 原査定の拒絶の理由で引用された、特開2005-277112号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

(a)「【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。 図1(a)?(f)は、本発明の実施の形態で、4層の配線パターンを有するフレキシブル多層配線基板を製造する工程を示す断面図である。図1(a)に示すように、シート状の絶縁性基材2の両面に金属箔3を積層させた両面配線基板用基材1を用意する。
(中略)
【0019】
次いで、図1(b)に示すように、両面配線基板用基材1の所定の部位に例えばNCドリリングによって円形のスルーホール(開口部)4を形成する。
(中略)
【0021】
そして、図1(c)に示すように、スルーホール4の内壁に例えば無電解銅めっきを施した後、その表面に例えば電解銅めっきによって接続端子層(接続端子部)5を形成する。
(中略)
【0023】
さらに、図1(d)に示すように、公知のリソグラフィ法によってパターニングを行い、スルーホール4の周囲に例えばランド部(配線パターン)30を形成し、これにより両面配線基板10を得る。
【0024】
そして、このような方法によって作成した複数(本実施の形態の場合は2枚)の両面配線基板10a、10bのうち、図1(e)に示すように、第1の両面配線基板10aのスルーホール4aの縁部(接続端子層5a)上に1つの導電性粒子11を載置する。
(中略)
【0027】
そして、図1(e)に示すように、第2の両面配線基板10bの一方の面上に絶縁性接着剤層12を例えば塗布によって形成する。
(中略)
【0031】
そして、第1の両面配線基板10a上の導電性粒子11と第2の両面配線基板10b上の絶縁性接着剤層12を対向させた状態で双方のスルーホール4a、4bの位置合わせを行い、例えばホットプレス(図示せず)を用い、第1及び第2の両面配線基板10a、10bを加熱しつつ圧接を行う。
【0032】
これにより、図1(f)に示すように、第1及び第2の両面配線基板10a、10bのスルーホール4a、4bの縁部、即ち接続端子層5a、5bによって導電性粒子11が挟持され、これにより導電性粒子11を介して第1及び第2の両面配線基板10a、10bのランド部30a、30bが電気的に接続されるとともに第1及び第2の配線基板10a、10bが接着され、目的とする4層の多層配線基板20を得る。
(中略)
【0035】
図2(a)?(b)は、本発明の他の実施の形態で、6層の配線パターンを有するフレキシブル多層配線基板を製造する工程を示す断面図である。以下、上記実施の形態と対応する部分については同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0036】
図2(a)に示すように、本実施の形態においては、上記図1(a)?(f)に示す工程によって得られた多層配線基板20と、上記図1(a)?(d)に示す工程によって得られた第3の両面配線基板10cを用意する。
【0037】
そして、第3の両面配線基板10cのスルーホール4cの縁部(接続端子層5c)上に1つの導電性粒子11を載置する。
【0038】
さらに、上述の実施の形態と同様に、第1の両面配線基板10aの外側面上に絶縁性接着剤層12を例えば塗布によって形成する。
【0039】
そして、第3の両面配線基板10c上の導電性粒子11と第1の両面配線基板10a上の絶縁性接着剤層12を対向させた状態で双方のスルーホール4c、4aの位置合わせを行い、上記実施の形態と同様これらを加熱しつつ圧接する。
【0040】
これにより、図2(b)に示すように、第1及び第3の両面配線基板10a、10cのスルーホール4a、4cの縁部、即ち接続端子層5a、5cによって導電性粒子11が挟持され、これにより導電性粒子11を介して第1及び第3の両面配線基板10a、10cのランド部30a、30cが電気的に接続されるとともに第1及び第3の配線基板10a、10cが接着される。
(中略)
【0060】
さらにまた、本発明は、フレキシブル基板のみで多層配線基板を形成することができるものであるが、リジッド基板や、リジッド基板及びフレキシブル基板を混在させた多層配線基板にも適用することができる。」

(b)図1




(c)図2




b 引用文献1の上記記載及び図面によれば、次の事項が記載されている。
(a)「a(a)」の段落【0016】によれば、引用文献1には、多層配線基板が記載されている。
そして、「a(a)」の段落【0019】、【0021】、【0023】【0024】によれば、多層配線基板は、スルーホールの内壁に無電解銅めっきを施し、その表面に電解銅めっきによって形成された接続端子層(接続端子部)を有する複数の配線基板を備え、「a(b)」の図1(f)によれば、複数の配線基板が積層されていることが見て取れる。
よって、引用文献1には、スルーホールの内壁に無電解銅めっきを施し、その表面に電解銅めっきによって形成された接続端子層(接続端子部)を有する複数の配線基板が積層された多層配線基板が記載されているといえる。

(b)「a(a)」の段落【0024】、【0027】、【0031】、【0032】及び「a(b)」の図1によれば、配線基板10aのスルーホール4aの縁部(接続端子層5a)上に1つの導電性粒子11を載置し、スルーホール4bが形成された配線基板10bの一方の面上に絶縁性接着剤層12を形成し、配線基板10a上の導電性粒子11と配線基板10b上の絶縁性接着剤層12を対向させた状態で双方のスルーホール4a、4bの位置合わせを行い、配線基板10a、10bを加熱しつつ圧接を行うことにより、配線基板10a、10bのスルーホール4a、4bの縁部、即ち接続端子層5a、5bによって導電性粒子11が挟持され、導電性粒子11を介して配線基板10a、10bが電気的に接続されるとともに配線基板10a、10bが接着されることが記載されている。

(c)「a(a)」の【0037】ないし【0040】、及び、「a(c)」の図2によれば、配線基板10cのスルーホール4cの縁部(接続端子層5c)上に1つの導電性粒子11を載置し、配線基板10aの外側面上に絶縁性接着剤層12が形成され、配線基板10c上の導電性粒子11と配線基板10a上の絶縁性接着剤層12を対向させた状態で双方のスルーホール4c、4aの位置合わせを行い、加熱しつつ圧接することにより、配線基板10a、10cのスルーホール4a、4cの縁部、即ち接続端子層5a、5cによって導電性粒子11が挟持され、導電性粒子11を介して配線基板10a、10cが電気的に接続されるとともに配線基板10a、10cが接着されることが記載されている。

(d)「a(a)」の段落【0060】によれば、多層配線基板は、リジッド基板又は、リジッド基板及びフレキシブル基板を混在させて形成することができる。

c 以上(a)ないし(d)によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「スルーホールの内壁に無電解銅めっきを施し、その表面に電解銅めっきによって形成された接続端子層(接続端子部)を有する複数の配線基板が積層された多層配線基板において、
配線基板10aのスルーホール4aの縁部(接続端子層5a)上に1つの導電性粒子11を載置し、スルーホール4bが形成された配線基板10bの一方の面上に絶縁性接着剤層12を形成し、配線基板10a上の導電性粒子11と配線基板10b上の絶縁性接着剤層12を対向させた状態で双方のスルーホール4a、4bの位置合わせを行い、配線基板10a、10bを加熱しつつ圧接を行うことにより、配線基板10a、10bのスルーホール4a、4bの縁部、即ち接続端子層5a、5bによって導電性粒子11が挟持され、導電性粒子11を介して配線基板10a、10bが電気的に接続されるとともに配線基板10a、10bが接着され、
配線基板10cのスルーホール4cの縁部(接続端子層5c)上に1つの導電性粒子11を載置し、配線基板10aの外側面上に絶縁性接着剤層12が形成され、配線基板10c上の導電性粒子11と配線基板10a上の絶縁性接着剤層12を対向させた状態で双方のスルーホール4c、4aの位置合わせを行い、加熱しつつ圧接することにより、配線基板10a、10cのスルーホール4a、4cの縁部、即ち接続端子層5a、5cによって導電性粒子11が挟持され、導電性粒子11を介して配線基板10a、10cが電気的に接続されるとともに配線基板10a、10cが接着され、
リジッド基板又は、リジッド基板及びフレキシブル基板を混在させて形成することができる、
多層配線基板。」

(イ)引用文献2
a 原査定の拒絶の理由に引用された、特開2002-110897号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。

「【0020】(第1の実施形態)図1は、本発明の第1の実施形態に係るマルチチップ半導体装置を示す断面図である。図1において、配線基板1上に、複数の半導体チップ2a、2bが、間に異方性導電膜3a、3bを介して積層させている。半導体チップ2a、2bは、貫通孔に埋め込まれた、CuまたはAlからなるプラグ4a、4bおよびその上に一体的に設けられたバンプ5a、5bにより、相互に電気的に接続されている。
(中略)
【0024】図2(a)に示すように、半導体素子6aが形成されたシリコン基板10の上面にレジストパターン11を形成し、このレジストパターン11をマスクとしてシリコン基板10をエッチングし、シリコン基板10にチップコンタクト孔12を形成する。
(中略)
【0030】このようにして得た半導体チップ2aを、異方性導電膜3aを介して配線基板1上に配設し、更にその上に、同様にして作製した半導体チップ2bを異方性導電膜3bを介して配設して、図1に示す構造のマルチチップ半導体装置が得られる。この場合、積層する半導体チップの数は、3?4層が可能である。」

b したがって、引用文献2には、次の技術が記載されている。
「配線基板上に、半導体素子が形成された複数のシリコン基板を積層させること。」

(ウ)引用文献3
a 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平3-62411号公報(以下、「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。

(a)「このようにして得られた異方性導電フィルムは所望の位置(すなわち、通常は、異方性導電フィルムによって接続されるべき端子部分に対応する位置)に導電粒子が選択的に配置されており、高い接続分解能、即ち低抵抗・高絶縁性の高密度異方性導電フィルムとして、IC部品の実装等の高密度の接続に供される。」(2頁右下欄9ないし15行)

(b)「第3図は、上述のようにして作製した異方性導電フィルムの一例を示す平面図であり、導電性粒子6が接着剤4または絶縁性フィルム9の所望の位置に選択的に散布されている。
作製した異方性導電フィルムは、例えば、IC実装基板に位置合せして搭載し、更にICチップをその上に搭載してから加圧しながら加熱して接着剤としても作用させることによりICチップの実装用として用いることができる。」(3頁右上欄17行ないし左下欄5行)

(c)第3図




b したがって、引用文献3には、次の技術が記載されている。
「IC実装基板にICチップを実装するための異方性導電フィルムにおいて、所望の位置(すなわち、通常は、異方性導電フィルムによって接続されるべき端子部分に対応する位置)に導電粒子が選択的に配置されること。」

ウ 引用発明との対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。

(ア)引用発明の「多層配線基板」は、本件補正発明の「多層基板」に相当する。
また、引用発明の「スルーホール」は、「内壁に無電解銅めっきを施し、その表面に電解銅めっきによって形成された接続端子層(接続端子部)」を有するのであるから、本件補正発明の「内表面にメッキ膜が形成された貫通孔(以下、「スルーホール」という)」に相当する。
してみると、引用発明の「スルーホールの内壁に無電解銅めっきを施し、その表面に電解銅めっきによって形成された接続端子層(接続端子部)を有する複数の配線基板が積層された多層配線基板」と、本件補正発明とは、「内表面にメッキ膜が形成された貫通孔(以下、スルーホールという)を有する配線基板上に、スルーホールを有する基板が積層されている多層基板」である点で共通する。
ただし、本件補正発明は、配線基板上に「半導体基板」が積層されているのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。

(イ)引用発明では、「配線基板10a、10bのスルーホール4a、4bの縁部、即ち接続端子層5a、5bによって導電性粒子11が挟持され」、「配線基板10a、10cのスルーホール4a、4cの縁部、即ち接続端子層5a、5cによって導電性粒子11が挟持され」るから、対向する「スルーホール4a、4b」及び「スルーホール4a、4c」の各位置に「導電性粒子11」が存在することは当然のことである。
してみると、引用発明における、対向する「スルーホール4a、4b」及び「スルーホール4a、4c」の各位置に「導電性粒子11」が存在することと本件補正発明とは、「多層基板の平面視において、スルーホールが対向する位置に少なくとも導電粒子が存在」する点で共通する。
ただし、導電粒子に関し、本件補正発明は、「導電粒子が規則的に配置」され、「多層基板を構成する基板の間で、対向する貫通電極に捕捉されていない導電粒子の数が導電粒子の総数の5%以下であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。

(ウ)引用発明では、「配線基板10a上の導電性粒子11と配線基板10b上の絶縁性接着剤層12を対向させた状態で双方のスルーホール4a、4bの位置合わせを行い、配線基板10a、10bを加熱しつつ圧接を行うことにより、配線基板10a、10bのスルーホール4a、4bの縁部、即ち接続端子層5a、5bによって導電性粒子11が挟持され、導電性粒子11を介して配線基板10a、10bが電気的に接続されるとともに配線基板10a、10bが接着され」、「配線基板10c上の導電性粒子11と配線基板10a上の絶縁性接着剤層12を対向させた状態で双方のスルーホール4c、4aの位置合わせを行い、加熱しつつ圧接することにより、配線基板10a、10cのスルーホール4a、4cの縁部、即ち接続端子層5a、5cによって導電性粒子11が挟持され、導電性粒子11を介して配線基板10a、10cが電気的に接続されるとともに配線基板10a、10cが接着され」るから、対向する「スルーホール4a、4b」及び「スルーホール4a、4c」はそれぞれ「導電性粒子11」により接続され、「スルーホール4a、4b」が形成されている「配線基板10a、10b」同士及び「スルーホール4a、4c」が形成されている「配線基板10a、10c」同士がそれぞれ「絶縁性接着材層12」により接着している接続構造を有しているといえる。
してみると、引用発明における上記接続構造と本件補正発明とは、「対向するスルーホールが導電粒子により接続され、該スルーホールが形成されている基板同士が絶縁接着剤により接着している接続構造」である点で共通する。
ただし、接続構造に関し、本件補正発明は「半導体基板」同士が接着しているのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。

よって、上記(ア)ないし(ウ)によれば、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「内表面にメッキ膜が形成された貫通孔(以下、スルーホールという)を有する配線基板上に、スルーホールを有する基板が積層されている多層基板であって、
多層基板の平面視において、スルーホールが対向する位置に少なくとも導電粒子が存在し、
対向するスルーホールが導電粒子により接続され、該スルーホールが形成されている基板同士が絶縁接着剤により接着している接続構造を有する多層基板。」

(相違点1)
本件補正発明は、配線基板上に「半導体基板」が積層されているのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。

(相違点2)
導電粒子に関し、本件補正発明は「導電粒子が規則的に配置」され、「多層基板を構成する基板の間で、対向する貫通電極に捕捉されていない導電粒子の数が導電粒子の総数の5%以下であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。

(相違点3)
接続構造に関し、本件補正発明は「半導体基板」同士が接着しているのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。

エ 相違点に対する判断
(ア)相違点1及び相違点3について
a 引用発明の「多層配線基板」は、「リジッド基板又は、リジッド基板及びフレキシブル基板を混在させて形成することができる」ところ、リジット基板としてシリコン基板を使用することは技術常識であることからすれば(必要であれば、国際公開第2006/082817号の段落[0004]、特開2006-324611号公報の段落【0004】、特開2010-109137号公報の段落【0021】、特開2012-94734号公報の段落【0077】を参照)、引用発明において「多層配線基板」を構成する「配線基板」に替えて半導体基板を採用する動機付けが存在する。

b そして、上記「イ(イ)」で述べたように、引用文献2には「配線基板上に、半導体素子が形成された複数のシリコン基板を積層させること」が記載されているところ、このような配線基板上に複数の半導体基板を積層させることは周知技術にすぎない(その他必要とあれば、特開2004-179504号公報の段落【0033】ないし【0039】、【0045】、図8,図12、特開2004-335948号公報の段落【0017】ないし【0019】、図4、特開2005-340389号公報の段落【0018】ないし【0021】、図1を参照)。
してみれば、引用発明の「多層配線基板」に引用文献2に記載された周知技術を採用し、「配線基板」に替えて半導体基板を採用し、相違点1及び相違点3に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

(イ)相違点2について
a 上記「イ(ウ)」で述べたように、引用文献3には「IC実装基板にICチップを実装するための異方性導電フィルムにおいて、所望の位置(すなわち、通常は、異方性導電フィルムによって接続されるべき端子部分に対応する位置)に導電粒子が選択的に配置されること」が記載されている。
そして、このような半導体チップ部品又は基板と他の基板とを導電粒子を用いて電気的に接続する際、電極に対応する位置に導電粒子を選択的に配置させる技術は、慣用的に行われている技術にすぎず(必要とあれば、特開平3-30446号公報の2頁左上欄3ないし15行、同右上欄13行ないし左下欄9行、3頁左上欄8ないし12行、第2図、特開平7-37933号公報の段落【0007】、【0016】ないし【0018】、図1、図2、特開平7-115260号公報の段落【0007】、【0010】ないし【0012】、【0017】、図1、図5、特開平8-148492号公報の段落【0007】、【0024】ないし【0030】、図1ないし図4、特開2001-77534号公報の段落【0064】ないし【0069】、図1ないし図3を参照)、このような導電粒子の配置は、接続される電極に対応する位置に選択的に配置するという規則に基づいて行われていることは明らかである。

b 引用発明では、「配線基板10aのスルーホール4aの縁部(接続端子層5a)上に1つの導電性粒子11を載置し、配線基板10bの一方の面上に絶縁性接着剤層12を形成し、配線基板10a上の導電性粒子11と配線基板10b上の絶縁性接着剤層12を対向させた状態で双方のスルーホール4a、4bの位置合わせを行い、配線基板10a、10bを加熱しつつ圧接を行うことにより、配線基板10a、10bのスルーホール4a、4bの縁部、即ち接続端子層5a、5bによって導電性粒子11が挟持され、導電性粒子11を介して配線基板10a、10bが電気的に接続される」ことからすれば、対向する「スルーホール4a、4b」の位置に「導電性粒子11」が配置されることは明らかである。
してみると、引用発明において「導電性粒子11」を配置する際、上記aで述べた引用文献3に記載された慣用技術のように、「導電性粒子11」を「スルーホール4a、4b」に対応する位置に選択的に配置することは当業者にとって格別の技術的困難性を伴うことではない。
よって、相違点2に係る「導電粒子が規則的に配置」されるようにすることは、当業者が引用発明及び引用文献3に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。

c 次に、本件補正発明でいう導電粒子が「捕捉されていない」について検討すると、本願明細書段落【0023】に「スルーホール4A、4Bの対向する間に導電粒子11が選択的に配置されたとは、導電粒子11が平面視にてもっぱらスルーホール4A、4Bの対向面又はその近傍に存在し、スルーホール4A、4Bに1個以上の導電粒子11が捕捉されるように配置されていることをいう。」との記載からすれば、スルーホールが対向していない部位には導電粒子が配置されていないことも含むと解釈するのが自然である。
そして、本件補正発明の「多層基板を構成する基板の間で、対向する貫通電極に捕捉されていない導電粒子の数が導電粒子の総数の5%以下」に関し(前述したように、上記「貫通電極」は、「スルーホール」の誤記として判断する。)、本願明細書には「第1半導体基板3Aと第2半導体基板3Bの間には、対向するスルーホール4A、4Bに捕捉されていない導電粒子11が存在するとしても、そのような導電粒子11の数は、第1半導体基板と第2半導体基板の間に存在する導電粒子の総数の好ましくは5%以下、より好ましくは0.5%以下、特に導電粒子11の略すべてがスルーホール4A、4Bで捕捉されているようにする。」(段落【0026】)、「この異方導電性フィルム10を半導体基板3A、3Bの接続に使用した後において、対向する半導体基板3A、3Bの間で、スルーホール4A、4Bに捕捉されていない導電粒子11の数は、対向する半導体基板3A、3Bの間に存在する導電粒子11の総数の好ましくは5%以下となる。」(段落【0057】)と記載されているのみで、スルーホール4A、4Bに捕捉されていない導電粒子11の数が導電粒子11の総数の5%以下の場合の効果と、5%を超えた場合の効果との差異が顕著なものであるか否か不明であり、上限値「5%」を上回ると不都合な具体例(比較例)は示されていない。
してみると、「多層基板を構成する基板の間で、対向する貫通電極に捕捉されていない導電粒子の数が導電粒子の総数の5%以下」との数値範囲に格別の技術的意義を見出すことはできない。

d さらに、上記aで述べた引用文献3に記載された技術は、電極に対応する位置に導電粒子を選択的に配置させる技術であって、電極以外の位置に導電粒子を配置することは特段想定していないことから、引用発明の「導電粒子」に引用文献3に記載された技術を含む慣用技術を採用した際に、「スルーホール4a」と「スルーホール4b」との間の位置以外の導電粒子の数が導電粒子の総数の5%以下とすることは当業者が適宜なし得たことである。

e 以上から、相違点2に係る構成は、引用発明に引用文献3に記載された技術を適用し、当業者が容易になし得たことである。

(ウ)そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載された周知技術、及び引用文献3に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(エ)審判請求人の主張について
a 請求人は、令和2年10月30日付けの手続補正書において、「引用文献4の第3図は、単なる概念図であり、引用文献4の異方性導電フィルムの導電粒子の配置を適正に表したものとはいえません。なぜならば、第3図の異方性導電フィルムは、第1図あるいは第2図に示すように製造されるものであり(第2頁右下19行?3頁左下5行)、結局のところ、導電粒子が接着剤4または絶縁性フィルム9の所望の位置に選択的に散布されているにすぎません。つまり、導電粒子は所望の位置の領域に存在しているものの、その領域内で規則的に配置されるようには製造されておらず、むしろその領域内では導電粒子はランダムに配置されていると解されます。」(2頁14ないし20行を参照)と主張する。なお、ここでいう引用文献4とは、上記「(イ)」で述べた引用文献3(特開平3-62411号公報)である。
しかしながら、本件補正発明の「導電粒子」に関し、「多層基板の平面視において、導電粒子が規則的に配置されており且つ貫通電極が対向する位置に少なくとも導電粒子が存在し」(すなわち、多層基板の平面視全体において、規則的に配置)と記載されているものの、「所望の位置の領域内で規則的に配置」することは何等規定されていないから、請求人の上記主張は特許請求の範囲に基づくものとはいえず採用できない。

b また、請求人は、上記手続補正書において、「本願請求項1に係る発明は、引用文献1、2及び4のいずれにも記載も示唆もされていない新たな特徴、即ち『多層基板を構成する基板の間で、対向する貫通電極に捕捉されていない導電粒子の数が導電粒子の総数の5%以下である』ことを有しています。しかも、この特徴により得られる『性能をシミュレーション解析し易くなり、改善工数を削減できる』という発明の効果について、引用文献1、2、4にはそのような効果を予期させるような記載はありません。」(2頁24ないし29行を参照)と主張する。
しかし、「性能をシミュレーション解析し易くなり、改善工数を削減できる」との効果に関し、本願明細書の段落【0026】に「その場合、第1半導体基板3Aと第2半導体基板3Bの間には、対向するスルーホール4A、4Bに捕捉されていない導電粒子11が存在するとしても、そのような導電粒子11の数は、第1半導体基板と第2半導体基板の間に存在する導電粒子の総数の好ましくは5%以下、より好ましくは0.5%以下、特に導電粒子11の略すべてがスルーホール4A、4Bで捕捉されているようにする。多層基板1Aを構成するその他の半導体基板間においても同様である。このようにスルーホール4A、4B、4Cの接続に寄与しない導電粒子11を低減させることにより、性能をシミュレーション解析しやすくなり、改善工数を削減することができる。」と記載されているのみであり、「対向する貫通電極に捕捉されていない導電粒子の数が導電粒子の総数の5%以下」とするこで、このような効果が得られる理由が不明である。
また、本願明細書の上記段落の記載以外を参酌しても、「スルーホール4A、4Bに捕捉されていない導電粒子11」の「数」を「第1半導体基板と第2半導体基板の間に存在する導電粒子の総数」の「5%以下」とすることで、「性能をシミュレーション解析し易くなり、改善工数を削減できる」という効果が得られる根拠は見当たらない。
してみれば、請求人の主張は採用できない。

オ したがって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術、及び引用文献3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年9月25日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし19に係る発明は、令和2年1月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(本願発明)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2[理由]1」に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2005-277112号公報に記載された発明、特開2002-110897号公報に記載された周知技術、特開平3-62411号公報に記載された技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

3 引用文献、引用発明
引用文献1に記載された発明(引用発明)、引用文献2に記載された周知技術、及び引用文献3に記載された技術は、上記「第2[理由]2(2)」に記載したとおりである。

4 引用発明との対比
本願発明は、前記「第2[理由]2」で検討した本件補正発明から、「内表面にメッキ膜が形成された貫通孔(以下、「スルーホール」という)を有する半導体基板」が積層される場所を、「配線基板もしくは半導体基板上」とする限定、及び「導電粒子」の数について「多層基板を構成する基板の間で、対向する貫通電極に捕捉されていない導電粒子の数が導電粒子の総数の5%以下」とする限定を削除したものに相当する。
そうすると、上記「第2[理由]2(2)ウ」で述べた点を踏まえれば、上記本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「内表面にメッキ膜が形成された貫通孔(以下、スルーホールという)を有する基板が積層されている多層基板であって、
多層基板の平面視において、スルーホールが対向する位置に少なくとも導電粒子が存在し、
対向するスルーホールが導電粒子により接続され、該スルーホールが形成されている基板同士が絶縁接着剤により接着している接続構造を有する多層基板。」

(相違点1’)
基板に本願発明は、「半導体基板」が積層されているのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。

(相違点2’)
導電粒子に関し、本願発明は「導電粒子が規則的に配置」されるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。

(相違点3’)
接続構造に関し、本願発明は「半導体基板」同士が接着しているのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。

5 相違点に対する判断
(1)相違点1’及び相違点3’について
上記「第2[理由]2(2)エ(ア)」で述べたように、引用発明の「多層配線基板」に引用文献2に記載された周知技術を採用し、「配線基板10a」、「配線基板10b」に替えて半導体基板を採用し、相違点1’及び相違点3’に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2’について
上記「第2[理由](2)エ(イ)」で述べたように、引用発明において「導電性粒子11」を配置する際、引用文献3に記載された技術のように、「導電性粒子11」を「スルーホール4a、4b」に対応する位置に選択的に配置することは当業者にとって格別の技術的困難性を伴うことではない。
よって、相違点2’に係る「導電粒子が規則的に配置」されるようにすることは、当業者が引用発明及び引用文献3に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

 
審理終結日 2021-05-11 
結審通知日 2021-05-18 
審決日 2021-05-31 
出願番号 特願2016-4551(P2016-4551)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 洋介  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 須原 宏光
畑中 博幸
発明の名称 多層基板  
代理人 特許業務法人田治米国際特許事務所  
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