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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1376185
審判番号 不服2020-16450  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-30 
確定日 2021-08-10 
事件の表示 特願2015-194330「結晶性半導体膜および半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月 6日出願公開,特開2017- 69424,請求項の数(6)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年9月30日の出願であって,平成30年9月28日付けで上申書が提出されるとともに手続補正がされ,令和元年9月18日付けで拒絶理由通知がされ,同年11月19日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,令和2年1月31日付けで拒絶理由通知がされ,同年3月27日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,同年8月18日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年11月30日に拒絶査定不服審判の請求がされ,令和3年4月28日付けで最後の拒絶理由が通知され,同年6月8日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1?6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。)は,令和3年6月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
コランダム構造を有する酸化物半導体を主成分として含む結晶性半導体膜であって,膜厚が1μm以上であり,前記結晶性半導体膜中の金属元素中のガリウムの原子比が0.5以上であり,さらにc面を基準面とするオフ角を有しており,n型ドーパントを含むことを特徴とする結晶性半導体膜。」

なお,本願発明2?6は,本願発明1の全ての発明特定事項を有している発明である。

第3 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(米国特許出願公開第2012/0045661号明細書)には,次の事項が記載されている。なお,引用文献1の記載事項は,当審の訳文で示す(下線は当審が付した。以下,同様である。)。
「発明が属する技術分野
[0002] 本発明は,一般的には,希土類元素をドープした材料,より具体的には,導波路レーザの活性媒体として有用なネオジムがドープされたサファイアとα-Ga_(2)O_(3)の合金およびそれに関連する方法に関する。」

「[0007] 一実施形態において,本発明は,希土類ドープα-(Al_(1-x)Ga_(x))_(2)O_(3)に関し,ここで,α-(Al_(1-x)Ga_(x))_(2)O_(3)は,Ga/Al比とは無関係に同じ単結晶構造を保持するコランダム相酸化物α-Al_(2)O_(3)(サファイア)とα-Ga_(2)O_(3)との合金である。希土類ドープα-(Al_(1-x)Ga_(x))_(2)O_(3)は,0より大きく1以下のガリウム含有量xを有する。希土類ドープα-(Al_(1-x)Ga_(x))_(2)O_(3)は,平面導波管レーザのコア層として適した高屈折率を有する透明な光学材料である。」

「[0056] 半導体用に設計されたVG-V80H MBE装置内でサファイア基板上に膜を成長させたが,酸化物用に高スループットターボ分子ポンプ及びSiC基板ヒータを追加して修正した。・・・
[0058] 本発明者らの新規な方法を用いて,R,A及びM面サファイア基板上にNd-Ga_(2)O_(3)を成長することができた。・・・
[0059] 膜は単相のため,本発明者らが測定した光学特性は,α相Nd-Ga_(2)O_(3)に特有である。波長1μmでの屈折率は,広帯域反射分光法で測定して1.91(サファイアの1.75と比較)である。この屈折率コントラストでは,クラッドを有する1μm厚のコアは,基本TEモードの92%を閉じ込めるのに十分である。・・・」





以上によれば,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「R,A及びM面サファイア基板上に成長された,導波路レーザの活性媒体としてネオジウムがドープされたα相Nd-Ga_(2)O_(3)膜。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(国際公開第2013/035843号)には,次の事項が記載されている。
「[0004] しかしながら,単斜晶系のβ-Ga_(2)O_(3)結晶膜をコランダム構造のα-Al_(2)O_(3)基板上に成長させることは困難であり,高品質なβ-Ga_(2)O_(3)結晶膜を得ることはできない。このため,α-Al_(2)O_(3)基板上のβ-Ga_(2)O_(3)結晶膜を用いて高品質のGa_(2)O_(3)系半導体素子を形成することは困難である。」

「[0014]〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態では,Ga_(2)O_(3)系半導体素子としてのプレーナゲート構造を有するGa_(2)O_(3)系MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)について説明する。
[0015](Ga_(2)O_(3)系半導体素子の構成)
図1は,第1の実施の形態に係るGa_(2)O_(3)系MISFETの断面図である。Ga_(2)O_(3)系MISFET10は,α-Al_(2)O_(3)基板2上に形成されたn型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3と,n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3上に形成されたソース電極12及びドレイン電極13と,n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3中にソース電極12及びドレイン電極13の下にそれぞれ形成されたコンタクト領域14,15と,n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3のコンタクト領域14とコンタクト領域15の間の領域上にゲート絶縁膜16を介して形成されたゲート電極11と,コンタクト領域14を囲むボディ領域17とを含む。
[0016] ゲート電極11は,ボディ領域17のソース電極12とドレイン電極13との間の領域の上方に位置する。
[0017] Ga_(2)O_(3)系MISFET10は,ノーマリーオフ型のトランジスタとして機能する。ゲート電極11に閾値以上の電圧を印加すると,ボディ領域17のゲート電極11下の領域にチャネルが形成され,ソース電極12からドレイン電極13へ電流が流れるようになる。
[0018] n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3は,α-Al_(2)O_(3)基板2上に形成されたα-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)(0≦x<1)の単結晶膜である。n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3は,Sn,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Ru,Rh,Ir,C,Si,Ge,Pb,Mn,As,Sb,Bi,F,Cl,Br,I等のn型ドーパントを含む。n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3は,例えば,1×10^(15)/cm^(3)以上,1×10^(19)/cm^(3)以下の濃度のn型ドーパントを含む。また,n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3の厚さは,例えば,0.01?10μmである。
・・・
[0025](Ga_(2)O_(3)系MISFETの製造方法)
α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜の製造方法の一例として,分子線エピタキシー(MBE;Molecular Beam Epitaxy)法による方法を以下に説明する。MBE法は,単体あるいは化合物の固体をセルと呼ばれる蒸発源で加熱し,加熱により生成された蒸気を分子線として基板表面に供給する結晶成長方法である。
[0026] 図2は,α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜の形成に用いられるMBE装置の一例の構成図である。このMBE装置100は,真空槽107と,この真空槽107内に支持され,α-Al_(2)O_(3)基板2を保持する基板ホルダ101と,基板ホルダ101に保持されたα-Al_(2)O_(3)基板2を加熱するための加熱装置102と,薄膜を構成する原子又は分子ごとに設けられた複数のセル103(103a,103b,103c)と,複数のセル103を加熱するためのヒータ104(104a,104b,104c)と,真空槽107内に酸素系ガスを供給するガス供給パイプ105と,真空槽107内の空気を排出するための真空ポンプ106とを備えている。基板ホルダ101は,シャフト110を介して図示しないモータにより回転可能に構成されている。
[0027] 第1のセル103aには,Ga粉末等のα-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜のGa原料が充填されている。この粉末のGaの純度は,6N以上であることが望ましい。第2のセル103bには,ドナーとしてドーピングされるn型ドーパントの原料の粉末が充填されている。第3のセル103cには,Al粉末等のα-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜のAl原料が充填されている。第1のセル103a,第2のセル103b,及び第3のセル103cの開口部にはシャッターが設けられている。
[0028] まず,α-Al_(2)O_(3)基板2をMBE装置100の基板ホルダ101に取り付ける。次に,真空ポンプ106を作動させ,真空槽107内の気圧を10-10Torr程度まで減圧する。そして,加熱装置102によってα-Al_(2)O_(3)基板2を加熱する。なお,α-Al_(2)O_(3)基板2の加熱は,加熱装置102の黒鉛ヒータ等の発熱源の輻射熱が基板ホルダ101を介してα-Al_(2)O_(3)基板2に熱伝導することにより行われる。
[0029] α-Al_(2)O_(3)基板2が所定の温度に加熱された後,ガス供給パイプ105から真空槽107内に,酸素系ガスを供給する。
[0030] 真空槽107内に酸素系ガスを供給した後,真空槽107内のガス圧が安定するのに必要な時間(例えば5分間)経過後,基板ホルダ101を回転させながら第1のヒータ104a,第2のヒータ104b,及び第3のヒータ104cにより第1のセル103a,第2のセル103b,及び第2のセル103cを加熱し,Ga,Al,n型ドーパントを蒸発させて分子線としてα-Al_(2)O_(3)基板2の表面に照射する。
[0031] これにより,α-Al_(2)O_(3)基板2の主面上にα-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶がSn等のn型ドーパントを添加されながらエピタキシャル成長し,n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3が形成される。なお,Sn以外のn型ドーパントとして,Ga又はAlサイトを置換する場合は,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Ru,Rh,Ir,C,Si,Ge,Pb,Mn,As,Sb,Bi等を用いることができ,酸素サイトを置換する場合は,F,Cl,Br,I等を用いることができる。n型ドーパントの添加濃度は,第2のセル103bの温度により制御することができる。
[0032] なお,n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3は,PLD(Pulsed Laser Deposition)法,CVD(Chemical Vapor Deposition)法等により形成されてもよい。」

「[図1]

[図2]



以上によれば,引用文献2には,以下の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「α-Al_(2)O_(3)基板2の主面上に形成された,厚さ0.01?10μmのn型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)(0≦x<1)単結晶半導体膜3。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に周知技術として引用された引用文献3(田村 英雄,米山 宏,酸化物半導体の電気化学特性,電気化学および工業物理化学,1980年,Vol. 48, No. 6,pp. 335-343)には,次の事項が記載されている。
「しかし,酸化物の導電性は,組成の非化学量論性や存在する不純物の種類と量により大きく変る場合が多く,このことを利用して,特定の不純物元素を酸化物に固溶させ酸化物の抵抗を下げること(これをドーピングという)が行なわれている.たとえば,化学量論性のNiOは緑色を呈し,ρ=10^(15)Ωcmで絶縁体であるが,Liを2.5?5atm%ドープすると,ρ<10Ωcmになる.それゆえ,絶縁性,半導性の区別にはあまり厳密性を期待できない.表1に代表的な金属酸化物の導電性を示すが,NiOのようにドーピングにより半導性となして利用されているものは半導体として分類してある.」(336ページ左欄1?12行)



」(336ページ)

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に周知技術として引用された引用文献4(奥村 次徳,半導体への不純物ドーピング,応用物理,1999年,Vol. 68, No. 9,pp. 1054-1059)には,次の事項が記載されている。
「1.まえがき
一般的な辞書,例えば「広辞苑・第五版」をみると,半導体について次のような説明がなされている.
はん-どうたい【半導体】導体と絶縁体との中間の電気伝導率をもつ物質.低温ではほとんど電流を流さないが,高温になるに従い電気伝導率が増す.珪素・ゲルマニウム・セレンや重金属の酸化物の類.ダイオード・トランジスター・集積回路・光電池などに応用(岩波書店:広辞苑第五版).
・・・半導体の電子エネルギー構造は,絶縁体と何ら変わることがなく,理想状態では絶縁体であること,そしてこの絶縁体に,母体原子とは異なる元素を「不純物」として意図的に添加(doping:ドーピング)し,これによって電気伝導特性を広い範囲にわたってコントロールできるようになった物質が半導体である,・・・」(1054ページ左欄1?18行)

第4 対比・判断
1 引用発明1を主引用発明とする新規性及び容易想到性について
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「導波路レーザの活性媒体としてネオジウムがドープされたα相Nd-Ga_(2)O_(3)膜」は,引用文献1の前記第3 1の[0007]の「α-(Al_(1-x)Ga_(x))_(2)O_(3)は,Ga/Al比とは無関係に同じ単結晶構造を保持するコランダム相酸化物α-Al_(2)O_(3)(サファイア)とα-Ga_(2)O_(3)との合金である。」との記載からすると,単結晶構造を保持するコランダム相酸化物であるといえるから,本願発明1の「コランダム構造を有する酸化物半導体を主成分として含む結晶性半導体膜」とは,「コランダム構造を有する酸化物半導体を主成分として含む結晶性膜」である点で共通する。
そして,引用発明1の「Nd-Ga_(2)O_(3)膜」中の金属元素中のガリウムの原子比が0.5以上であることは明らかである。
以上から,本願発明1と引用発明1の一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「コランダム構造を有する酸化物半導体を主成分として含む結晶性膜であって,前記結晶性膜中の金属元素中のガリウムの原子比が0.5以上である結晶性膜。」

<相違点>
相違点1-1:本願発明1は,「結晶性半導体膜」であるのに対し,引用発明1は,「導波路レーザの活性媒体としてネオジウムがドープされたα相Nd-Ga_(2)O_(3)膜」である点。

相違点1-2:本願発明1は,「膜厚が1μm以上であ」るのに対して,引用発明1は,そのような事項を備えているか不明である点。

相違点1-3:本願発明1は,「c面を基準面とするオフ角を有して」いるのに対し,引用発明1は,そのような事項を備えているか不明である点。

相違点1-4:本願発明1は「n型ドーパントを含む」のに対し,引用発明1は,そのような事項を備えているか不明である点。

イ 判断
相違点1-1について検討すると,引用発明1の「ネオジウムがドープされたα相Nd-Ga_(2)O_(3)膜」は「導波路レーザの活性媒体として」用いられるものであって,半導体膜として用いられるものではないから,相違点1-1は実質的な相違点である。
したがって,本願発明1は,引用発明1であるとはいえない。
また,引用文献1には,「導波路レーザの活性媒体としてネオジウムがドープされたα相Nd-Ga_(2)O_(3)膜」を半導体膜として用いることの記載も示唆もされていないから,引用発明1において,相違点1-1に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
そして,本願発明1の「膜厚1μm以上の厚膜であり,電気特性,特に移動度に優れている」(本願明細書【0010】)との効果は,引用文献1の記載からは予測し得ない顕著な効果である。
したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明1であるとはいえないし,引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明できたものともいえない。

(2)本願発明2?6について
本願発明2?6は,いずれも本願発明1の全ての発明特定事項を有しているから,前記(1)で検討したのと同様の理由により,引用発明1であるとはいえないし,また,引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明できたものともいえない。

2 引用発明2を主引用発明とする容易想到性について
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明2とを対比する。
引用文献1の前記第3 1の[0007]の「α-(Al_(1-x)Ga_(x))_(2)O_(3)は,Ga/Al比とは無関係に同じ単結晶構造を保持するコランダム相酸化物α-Al_(2)O_(3)(サファイア)とα-Ga_(2)O_(3)との合金である」との記載及び引用文献2の前記第3 2の[0004]の「コランダム構造のα-Al_(2)O_(3)」との記載を参酌すると,引用発明2の「α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)(0≦x<1)単結晶半導体膜3」は,コランダム構造を有しているといえるから,本願発明1の「コランダム構造を有する酸化物半導体を主成分として含む結晶性半導体膜」に相当する。
また,引用発明2の「厚さ0.01?10μmのn型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶半導体膜3」は,n型ドーパントを含んでおり,厚さが1μm以上であり,単結晶半導体膜中の金属元素中のガリウムの原子比が0.5以上のものを含んでいる。
以上から,本願発明1と引用発明2の一致点と相違点は以下のとおりとなる。

<一致点>
「コランダム構造を有する酸化物半導体を主成分として含む結晶性半導体膜であって,膜厚が1μm以上であり,前記結晶性半導体膜中の金属元素中のガリウムの原子比が0.5以上である,n型ドーパントを含む結晶性半導体膜。」

<相違点>
相違点2-1:本願発明1は,「c面を基準面とするオフ角を有して」いるのに対し,引用発明2はそのような事項を備えているか不明な点。

イ 判断
相違点2-1について検討すると,引用発明2は,「n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶半導体膜」であるのに対して,引用発明1の「単結晶構造を保持するコランダム相Ndドープα-Ga_(2)O_(3)膜」は「導波路レーザの活性媒体として」用いられるものであるから,引用発明2と引用発明1とは技術分野が異なっている。
そうすると,引用発明2に引用発明1を適用する動機付けがあるとはいえない。そして,このことは,引用文献3,4の記載に左右されるものではない。
そして,本願発明1の「膜厚1μm以上の厚膜であり,電気特性,特に移動度に優れている」(本願明細書【0010】)との効果は,引用文献2及び引用文献1の記載からは予測し得ない顕著な効果である。
したがって,本願発明1は,引用発明2及び引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明できたものともいえない。

(2)本願発明2?6について
本願発明2?6は,いずれも本願発明1の全ての発明特定事項を有しているから,前記(1)で検討したのと同様の理由により,引用発明2及び引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1 原査定(令和2年8月18日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。

(1)理由1(新規性),理由2(進歩性)
本願の請求項1,3?5に係る発明は,引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3項に該当し,特許を受けることができないか,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)理由2(進歩性)
本願の請求項2?5に係る発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,また,請求項1?7に記載された発明は,引用文献2に記載された発明及び引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 しかしながら,令和2年3月27日付け手続補正により補正された請求項1に係る発明は,前記相違点1-1及び前記相違点2-1に係る本願発明1の構成を有するものであるから,前記第4 1及び2で検討したのと同様の理由により,引用発明1であるとはいえないし,また,引用発明1に基づいて,若しくは,引用発明2及び引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明できたものともいえない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第1号について
当審では,請求項1を引用する請求項3には,「ドーパントを含んでいる請求項1または2に記載の結晶性半導体膜」と記載されているところ,請求項1には,既に「n型ドーパントを含む」と記載されているから,上記「ドーパントを含んでいる」とは具体的に何を特定する記載なのか不明であるとの拒絶の理由を通知したが,令和3年6月8日にした手続補正において,請求項3は削除されたから,この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおりであるから,原査定の理由及び当審拒絶理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-07-21 
出願番号 特願2015-194330(P2015-194330)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 113- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長谷川 直也  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 河本 充雄
小川 将之
発明の名称 結晶性半導体膜および半導体装置  
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