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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04W |
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管理番号 | 1376490 |
審判番号 | 不服2020-9119 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-06-30 |
確定日 | 2021-07-26 |
事件の表示 | 特願2016-102845「通信システム及び通信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月30日出願公開、特開2017-212503〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成28年5月23日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 令和元年10月 3日付け :拒絶理由通知書 令和2年 2月 7日 :意見書の提出 令和2年 3月23日付け :拒絶査定 令和2年 6月30日 :拒絶査定不服審判の請求,手続補正 書の提出 第2 令和2年6月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年6月30日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。) 「 双方向に通信可能な第1通信装置と第2通信装置とを備え, 前記第1通信装置は, 間欠的に設定されている第1待受期間に受信動作を行い,前記第1待受期間に前記第2通信装置からの第1要求信号を受信した場合,前記第1要求信号の受信時点から第1待機時間経過後の第1受信期間に前記第2通信装置からの上りデータの受信を行うように構成され, 前記第2通信装置は, 間欠的に設定されている第2待受期間に受信動作を行い,前記第2待受期間に前記第1通信装置からの第2要求信号を受信した場合,前記第2要求信号の受信時点から第2待機時間経過後の第2受信期間に前記第1通信装置からの下りデータの受信を行うように構成され, 前記第1通信装置は, 前記第2通信装置に対して前記下りデータを送信する場合,前記下りデータの送信前に前記第2要求信号を送信するように構成され, 前記第2通信装置は, 前記第1通信装置に対して前記上りデータを送信する場合,前記上りデータの送信前に前記第1要求信号を送信するように構成されている ことを特徴とする通信システム。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「 双方向に通信可能な第1通信装置と第2通信装置とを備え, 前記第1通信装置は, 間欠的に設定されている第1待受期間に受信動作を行い,前記第1待受期間に前記第2通信装置からの第1要求信号を受信した場合,前記第1要求信号の受信時点から第1待機時間経過後の第1受信期間に前記第2通信装置からの上りデータの受信を行うように構成され, 前記第2通信装置は, 間欠的に設定されている第2待受期間に受信動作を行い,前記第2待受期間に前記第1通信装置からの第2要求信号を受信した場合,前記第2要求信号の受信時点から第2待機時間経過後の第2受信期間に前記第1通信装置からの下りデータの受信を行うように構成されている ことを特徴とする通信システム。」 2 補正の適否 本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1通信装置」について,「前記第2通信装置に対して前記下りデータを送信する場合,前記下りデータの送信前に前記第2要求信号を送信するように構成され」という限定を付加し,同じく本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第2通信装置」について,「前記第1通信装置に対して前記上りデータを送信する場合,前記上りデータの送信前に前記第1要求信号を送信するように構成されている」という限定を付加するものであって,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第2013/002310号(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。なお,下線は当審で付与した。 ア 「[0031] 本発明は、火災警報器及び火災警報システムに関する。特に、本発明は、他の火災警報器との間で無線信号を送受信することで他の火災警報器と火災警報を連動する火災警報器、及びこの火災警報器を複数台備える火災警報システムに関する。」 イ 「[0033] (実施形態1) 本実施形態の火災警報システムは、複数の火災警報器TRを備える。換言すれば、本実施形態の火災警報器TRは、複数台で火災警報システムを構成する。 [0034] 火災警報器TRは、図2に示すように制御部(制御手段)1、無線送受信部2、アンテナ3、火災感知部(火災感知手段)4、警報部(警報手段)5、電池電源部6などを備える。換言すれば、火災警報システムは、複数の火災警報器TRを備える。」 ウ 「[0035] 無線送受信部2は、電波法施行規則第6条第4項第3号に規定される「小電力セキュリティシステムの無線局」に準拠して電波を媒体とする無線信号をアンテナ3を介して送受信するものである。 [0036] 無線送受信部2は、無線信号を受信するための受信手段(受信部)21と、無線信号を送信するための送信手段(送信部)22とを備える。無線送受信部2は、受信部21が動作し且つ送信部22の動作が停止している受信状態と、送信部22が動作し且つ受信部21の動作が停止している送信状態との2つの動作状態を有する。」 エ 「[0038] 制御部1は、マイクロコンピュータやメモリ、タイマなどのハードウェアとマイクロコンピュータで実行されるプログラムなどのソフトウェアとで構成され、無線送受信部2や火災感知部4、警報部5などを制御する。」 オ 「[0041] 火災感知部4は、火災発生確率が第1の確率または第2の確率以上になったか否かを所定の物理量(例えば煙濃度)に基づいて判断するように構成される。火災感知部4は、火災発生確率が第1の確率以上になったと判断すると火災予備信号S2を制御部1に出力するように構成される。火災感知部4は、火災発生確率が第2の確率以上になったと判断すると火災確定信号S4を制御部1に出力するように構成される。 [0042] 火災感知部4は、火災に伴って発生する観測量のうちの煙濃度を検出することによって火災を感知するものである。この火災感知部4は、図3に示すように発光部40、受光部41、センサ制御部42を有している。 (中略) [0045] センサ制御部42は、受光光量に応じた受光部41の出力信号レベル(電圧レベル)、すなわち、前記空間内における煙濃度に基づいて火災発生の確率(火災発生確率)を段階的に判断する。そして、センサ制御部42は、当該確率が第1の確率以上になったと判断したときに火災予備信号S2を制御部1に出力し、当該確率が第1の確率よりも高い第2の確率以上になったと判断したときに火災確定信号S4を制御部1に出力する。」 カ 「[0051] 制御部1は、火災感知部4から火災確定信号S4が出力されると、警報部5から警報音を鳴動させることで火災警報を報知し、さらに他の火災警報器TRにおいても火災警報を報知させるため、火災警報メッセージを含む無線信号(警報信号)S5を無線送受信部2より送信させる。したがって、警報信号S5は、火災発生確率が第1の確率より高い第2の確率以上になったと所定の物理量(例えば煙濃度)に基づいて判断されたときに送信される無線信号である。 [0052] また、他の火災警報器TRから送信された無線信号を無線送受信部2で受信することにより火災警報メッセージを受け取ったときも、制御部1が警報部5を制御して警報音を鳴動させる。 [0053] また、制御部1ではマイコンに内蔵するタイマで所定の間欠受信間隔を繰り返しカウントし、間欠受信間隔のカウントが完了する毎に無線送受信部2を起動して所望の電波(他の火災警報器TRが送信した無線信号)が受信できるか否かをチェックする。 [0054] そして、当該電波が捉えられなければ、制御部1は直ちに無線送受信部2を停止して待機状態に移行させることで平均消費電力を大幅に低減している。」 キ 「[0056] さらに本実施形態では、文献3記載の従来例と同様に、火災感知部4から火災予備信号S2が出力されたとき、制御部1が火災警報メッセージではなく起動メッセージを含む無線信号(予告信号)S3を無線送受信部2より送信させる。すなわち、予告信号S3は、災発生確率が第1の確率以上になったと所定の物理量(例えば煙濃度)に基づいて判断されたときに送信される無線信号である。 [0057] 当該起動メッセージを受け取った他の火災警報器TRの制御部1は、警報部5から警報音を鳴動させずに、火災警報メッセージを含む無線信号S5が送信されるタイミングを含む連動待機期間W内で無線送受信部2を起動させる。 [0058] そして、起動メッセージの送信元(火元)の火災警報器TRにおいて、火災感知部4から火災確定信号S4が出力されると制御部1が警報部5から警報音を鳴動させて火災警報を報知し、さらに火災警報メッセージを含む無線信号S5を無線送受信部2より送信させる。 [0059] このとき、後述するように他の(火元でない)火災警報器TRでは連動待機期間W内にあるため、後から送信された無線信号(火災警報メッセージを含む無線信号)S5が直ちに受信できる。そして、火災警報メッセージを受け取った他の火災警報器TRの制御部1が警報部5から警報音を鳴動させて火災警報を報知することで火災連動までの時間を短縮することができる。」 ク 「[0064] 火元の火災警報器TR(TR11)の制御部1は、図1に示すようにタイマによる間欠受信間隔Txのカウント完了前に無線送受信部2を起動し、当該カウント完了時点(時刻T13)を含む送信期間Ts内に起動メッセージを含む無線信号(予告信号)S3を送信させる。 [0065] 一方、火元でない火災警報器TR(TR12)では、タイマによる間欠受信間隔Txのカウントが完了して制御部1が無線送受信部2を起動すると(時刻T13)、直ちに起動メッセージを含む無線信号S3を受信することができる(図1参照)。 [0066] すなわち、複数台の火災警報器TR(TR11,TR12)において間欠受信間隔Txのカウントが完了するタイミング(例えば時刻T13)が揃っており、1回の送信期間Tsで起動メッセージを含む無線信号S3を受信できるので、電池消耗の低減と起動メッセージを受信するまでの遅延時間の短縮を図ることができる。」 ケ 「[0067] 一方、起動メッセージを受け取った制御部1(火元でない火災警報器TR(TR12)の制御部1)は、火災警報メッセージを含む無線信号(警報信号)S5が送信されるタイミング(時刻T15)を含む連動待機期間W内で無線送受信部(受信手段)2を起動させる。 [0068] この連動待機期間Wは、例えば、起動メッセージを含む無線信号S3の受信終了時点(時刻T13)から開始されてもよいし、火災警報メッセージを含む無線信号S5が送信されるタイミング(時刻T15)よりも所定時間だけ早いタイミング(時刻T14)で開始されてもよい。 (中略) [0072] したがって、火元でない火災警報器TR(TR12)の制御部1は、起動メッセージを含む無線信号S3の受信終了時点(時刻T13)から連動待機期間Wを開始する必要は無く、火災警報メッセージを含む無線信号S5が送信されるタイミング(時刻T15)に合わせて連動待機期間Wを開始すればよい(図1参照)。 [0073] ただし、火元の火災警報器TR(TR11)から火災警報メッセージを含む無線信号S5が送信されない場合、火元でない火災警報器TR(TR12)の制御部1は、火災警報メッセージを含む無線信号S4が送信されるタイミング(時刻T15)を過ぎた後に連動待機期間を終了して通常の間欠受信状態に戻る。 コ 「[0074] 制御部1は、通常、間欠受信処理を行う。制御部1は、間欠受信処理では、間欠受信間隔Txで受信部21を起動することで受信部21を間欠的に動作させる。 [0075] 制御部1は、予告信号S3を受け取ると間欠受信処理を終了して連動待機処理を開始する。制御部1は、連動待機処理では、警報信号S5が送信される送信時刻(T15)を含む連動待機期間Wを求め、連動待機期間Wが始まるまでは無線送受信部(受信部21および送信部22)2を停止させ、連動待機期間Wの間は受信部21を動作させる。 [0076] 制御部1は、連動待機処理において、連動待機期間内に警報信号S5を受信できなければ、動待機処理を終了して間欠受信処理を開始する。 [0077] あるいは、元の火災警報器TR(TR11)から火災警報メッセージを含む無線信号S5が送信されない場合、火元でない火災警報器TR(TR11)の制御部1は、火災警報メッセージを含む無線信号S5の再送時間を考慮した一定時間待機してからタイムアウトして通常の間欠受信状態に戻ってもよい。 [0078] そして、火元でない火災警報器TR(TR12)の制御部1は、火災警報メッセージを受け取ると直ちに警報部5より警報音を鳴動させ、無線送受信部2より火災警報メッセージの受信を確認する応答メッセージ(ACK)S6を無線信号によって返信する。」 サ 「 」 上記アないしサの記載から,引用文献1には以下の事項が記載されているといえる。 (ア)上記アの「本発明は、・・・火災警報器を複数台備える火災警報システムに関する。」という記載,及び,上記イの[0033]の「本実施形態の火災警報システムは、複数の火災警報器TRを備える。」という記載によれば,引用文献1には,複数の火災警報器TRを備える火災警報システムについて記載されている。 (イ)上記イの[0034]の「火災警報器TRは、・・・無線送受信部2、・・・を備える。」という記載,上記ウの[0036]の「無線送受信部2は、無線信号を受信するための受信手段(受信部)21と、無線信号を送信するための送信手段(送信部)22とを備える。」という記載,及び,上記アの「他の火災警報器との間で無線信号を送受信することで他の火災警報器と火災警報を連動する火災警報器」という記載によれば,火災警報器TRは無線送受信部2を備え,他の火災警報器TRと間で無線信号を送受信するものであり,前記無線送受信部2は,無線信号を受信するための受信手段(受信部)21と,無線信号を送信するための送信手段(送信部)22とを備えるものである。 (ウ)上記イの[0034]の「火災警報器TRは、・・・制御部(制御手段)1、・・・を備える。」という記載,及び,上記エの「制御部1は、・・・無線送受信部2や火災感知部4・・・を制御する。」という記載によれば,火災警報器TRは,無線送受信部2及び火災感知部4を制御する制御部1を備えるものである。 (エ)上記イの[0034]の「火災警報器TRは、・・・火災感知部(火災感知手段)4、・・・を備える。」という記載,上記オの[0041]の「火災感知部4は、火災発生確率が第1の確率以上になったと判断すると火災予備信号S2を制御部1に出力するように構成される。火災感知部4は、火災発生確率が第2の確率以上になったと判断すると火災確定信号S4を制御部1に出力するように構成される。」という記載によれば,火災警報器TRは,火災感知部4を備えるものであり,当該火災感知部4は,火災発生確率が第1の確率以上になったと判断すると火災予備信号S2を制御部1に出力し,火災発生確率が第2の確率以上になったと判断すると火災確定信号S4を制御部1に出力するものである。 ここで,上記オの[0042]の「この火災感知部4は、・・・センサ制御部42を有している。」という記載,及び,[0045]の「センサ制御部42は、当該確率が第1の確率以上になったと判断したときに火災予備信号S2を制御部1に出力し、当該確率が第1の確率よりも高い第2の確率以上になったと判断したときに火災確定信号S4を制御部1に出力する。」という記載によれば,前記第2の確率は,前記第1の確率よりも高いものである。 また,上記オの[0041]の「火災感知部4は、火災発生確率が第1の確率または第2の確率以上になったか否かを所定の物理量(例えば煙濃度)に基づいて判断する」という記載,[0042]の「火災感知部4は、火災に伴って発生する観測量のうちの煙濃度を検出することによって火災を感知するものである。」という記載,及び,[0045]の「センサ制御部42は、・・・前記空間内における煙濃度に基づいて火災発生の確率(火災発生確率)を段階的に判断する。」という記載によれば,前記火災発生確率は,煙濃度に基づいて判断されるものである。 (オ)上記キの[0056]の「火災感知部4から火災予備信号S2が出力されたとき、制御部1が火災警報メッセージではなく起動メッセージを含む無線信号(予告信号)S3を無線送受信部2より送信させる。」という記載,並びに,上記カの[0051]の「制御部1は、火災感知部4から火災確定信号S4が出力されると、・・・他の火災警報器TRにおいても火災警報を報知させるため、火災警報メッセージを含む無線信号(警報信号)S5を無線送受信部2より送信させる。」及び,上記キの[0058]の「起動メッセージの送信元(火元)の火災警報器TRにおいて、火災感知部4から火災確定信号S4が出力されると制御部1が・・・、火災警報メッセージを含む無線信号S5を無線送受信部2より送信させる。」という記載によれば,制御部1は,火災感知部4から火災予備信号S2が出力されると,起動メッセージを含む無線信号(予告信号)S3を無線送受信部2より送信させ,火災感知部4から火災確定信号S4が出力されると火災警報メッセージを含む無線信号(警報信号)S5を無線送受信部2より送信させるものである。 (カ)上記コの[0074]の「制御部1は、通常、間欠受信処理を行う。制御部1は、間欠受信処理では、間欠受信間隔Txで受信部21を起動することで受信部21を間欠的に動作させる。」という記載によれば,制御部1は,通常,間欠受信間隔Txで受信部21を起動することで受信部21を間欠的に動作させる間欠受信処理を行うものである。 また,上記カの[0053]の「制御部1ではマイコンに内蔵するタイマで所定の間欠受信間隔を繰り返しカウントし、間欠受信間隔のカウントが完了する毎に無線送受信部2を起動して所望の電波(他の火災警報器TRが送信した無線信号)が受信できるか否かをチェックする。」という記載,上記クの[0065]の「火元でない火災警報器TR(TR12)では、タイマによる間欠受信間隔Txのカウントが完了して制御部1が無線送受信部2を起動すると(時刻T13)、直ちに起動メッセージを含む無線信号S3を受信することができる(図1参照)。」という記載,及び,上記カの[0054]の「当該電波が捉えられなければ、制御部1は直ちに無線送受信部2を停止して待機状態に移行させる」という記載によれば,前記間欠受信処理は,間欠受信間隔Txを繰り返しカウントし,間欠受信間隔Txのカウントが完了する毎に無線送受信部2を起動して所望の電波(他の火災警報器TRが送信した起動メッセージを含む無線信号S3)が受信できるか否かをチェックし,当該電波が捉えられなければ,すなわち,所望の電波(他の火災警報器TRが送信した起動メッセージを含む無線信号S3)が受信できなければ,直ちに無線送受信部2を停止して待機状態に移行させるものである。ここで,上記所望の電波(他の火災警報器TRが送信した起動メッセージを含む無線信号S3)は,上記キの[0056]の「起動メッセージを含む無線信号(予告信号)S3」という記載からみて予告信号S3であることは明らかである。 (キ)上記キの[0057]の「当該起動メッセージを受け取った他の火災警報器TRの制御部1は、・・・火災警報メッセージを含む無線信号S5が送信されるタイミングを含む連動待機期間W内で無線送受信部2を起動させる。」という記載,上記ケの[0067]の「起動メッセージを受け取った制御部1(火元でない火災警報器TR(TR12)の制御部1)は、火災警報メッセージを含む無線信号(警報信号)S5が送信されるタイミング(時刻T15)を含む連動待機期間W内で無線送受信部(受信手段)2を起動させる。」という記載,及び,上記コの[0075]の「制御部1は、予告信号S3を受け取ると間欠受信処理を終了して連動待機処理を開始する。制御部1は、連動待機処理では、・・・連動待機期間Wが始まるまでは無線送受信部(受信部21および送信部22)2を停止させ、連動待機期間Wの間は受信部21を動作させる。」という記載によれば,制御部1は,予告信号S3を受け取ると間欠受信処理を終了して連動待機処理を開始し,連動待機処理では,連動待機期間Wが始まるまでは受信部21を停止させ,連動待機期間Wの間は受信部21を動作させるものである。ここで,予告信号S3を受け取ると間欠受信処理を終了することからみて,間欠受信処理において,予告信号S3を受け取ることは明らかである。 そして,上記キの[0059]の「このとき、後述するように他の(火元でない)火災警報器TRでは連動待機期間W内にあるため、後から送信された無線信号(火災警報メッセージを含む無線信号)S5が直ちに受信できる。」という記載によれば,上述のように連動待機期間Wの間は受信部21を動作させることにより,連動待機期間W内に無線信号(火災警報メッセージを含む無線信号)S5が直ちに受信できるようになるものであり,この無線信号(火災警報メッセージを含む無線信号)S5は,上記カの[0051]及び上記ケの[0067]の「火災警報メッセージを含む無線信号(警報信号)S5」という記載からみて警報信号S5であることは明らかである。 ここで,上記ケの[0068]の「この連動待機期間Wは、例えば,・・・火災警報メッセージを含む無線信号S5が送信されるタイミング(時刻T15)よりも所定時間だけ早いタイミング(時刻T14)で開始されてもよい。」という記載,及び,[0072]の「火元でない火災警報器TR(TR12)の制御部1は、起動メッセージを含む無線信号S3の受信終了時点(時刻T13)から連動待機期間Wを開始する必要は無く、火災警報メッセージを含む無線信号S5が送信されるタイミング(時刻T15)に合わせて連動待機期間Wを開始すればよい」という記載によれば,連動待機期間Wは,警報信号S5が送信されるタイミングT15よりも所定時間だけ早いタイミングT14で開始されてもよいものであり,上記サの図1の記載からは,予告信号S3を受信するタイミングT13と連動待機期間Wが開始するタイミングT14の間にはT14-T13の期間だけ時間が経過していることが見て取れる。 また,上記ケの[0073]の「火元の火災警報器TR(TR11)から火災警報メッセージを含む無線信号S5が送信されない場合、火元でない火災警報器TR(TR12)の制御部1は、火災警報メッセージを含む無線信号S4が送信されるタイミング(時刻T15)を過ぎた後に連動待機期間を終了して通常の間欠受信状態に戻る。」という記載,及び,上記コの[0076]の「制御部1は、連動待機処理において、連動待機期間内に警報信号S5を受信できなければ、連動待機処理を終了して間欠受信処理を開始する。」という記載によれば,制御部1は,連動待機処理において,連動待機期間内に警報信号S5を受信できなければ,連動待機処理を終了して間欠受信処理を開始するものである。 一方,上記カの[0052]の「他の火災警報器TRから送信された無線信号を無線送受信部2で受信することにより火災警報メッセージを受け取ったときも、制御部1が警報部5を制御して警報音を鳴動させる。」という記載,及び,上記コの[0078]の「火元でない火災警報器TR(TR12)の制御部1は、火災警報メッセージを受け取ると直ちに警報部5より警報音を鳴動させ」という記載によれば,制御部1は,火災警報メッセージを受け取ると,すなわち,警報信号S5を受信すると,直ちに警報音を鳴動させるものである。 (ク)上記(ア)で説示したとおり,引用文献1に記載の火災警報システムは複数の火災警報器TRを備えるものであり,それらは火災発生時には「火元の火災警報器TR」([0064]等参照。)又は「火元でない火災警報器TR」([0065]等参照。)として動作するものであるから,上記(イ)ないし(キ)で説示した火災警報器TRについて,火元の火災警報器TRの火災発生時の動作(上記(エ)及び(オ)参照。)と火元でない火災警報器TRの火災発生時の動作(上記(カ)及び(キ)参照。)に別けて整理すると以下のとおりである。 火元の火災警報器TRは,火災発生確率が第1の確率以上になると起動メッセージを含む予告信号S3を無線送受信部2より送信し,火災発生確率が前記第1の確率よりも高い第2の確率以上になると火災警報メッセージを含む警報信号S5を無線送受信部2より送信する。 一方,火元でない火災警報器TRは,間欠受信処理において,予告信号S3を受信すると間欠受信処理を終了して連動待機処理を開始し,連動待機処理において,連動待機期間W内に前記警報信号S5を受信すると直ちに警報音を鳴動させる。 以上を総合すると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「複数の火災警報器TRを備え, 前記火災警報器TRは,無線送受信部2,火災感知部4,前記無線送受信部2及び前記火災感知部4を制御する制御部1を備え,他の火災警報器TRと間で無線信号を送受信するものであり, 前記無線送受信部2は,無線信号を受信するための受信部21と,無線信号を送信するための送信部22を備え, 前記火災感知部4は,煙濃度に基づいて判断される火災発生確率が第1の確率以上になったと判断すると火災予備信号S2を制御部1に出力し,火災発生確率が前記第1の確率よりも高い第2の確率以上になったと判断すると火災確定信号S4を前記制御部1に出力するものであり, 前記制御部1は,前記火災感知部4から前記火災予備信号S2が出力されると,起動メッセージを含む予告信号S3を前記無線送受信部2より送信させ,前記火災感知部4から前記火災確定信号S4が出力されると火災警報メッセージを含む警報信号S5を前記無線送受信部2より送信させ, 前記制御部1は,通常,間欠受信間隔Txで前記受信部21を起動することで前記受信部21を間欠的に動作させる間欠受信処理を行うものであり,ここで,前記間欠受信処理は,前記間欠受信間隔Txを繰り返しカウントし,前記間欠受信間隔Txのカウントが完了する毎に無線送受信部2を起動して前記予告信号S3が受信できるか否かをチェックし,受信できなければ,直ちに前記無線送受信部2を停止して待機状態に移行させる処理であり, 前記制御部1は,前記間欠受信処理において,前記予告信号S3を受信すると前記間欠受信処理を終了して連動待機処理を開始し,前記連動待機処理では,連動待機期間Wが始まるまでは受信部21を停止させ,前記連動待機期間Wの間は受信部21を動作させることにより,連動待機期間W内に前記警報信号S5が直ちに受信できるようになり,ここで,前記連動待機期間Wは,前記警報信号S5が送信されるタイミングよりも所定時間だけ早いタイミングで開始されるものであって,前記予告信号S3を受信するタイミングT13と前記連動待機期間Wが開始するタイミングT14の間にはT14-T13の期間だけ時間が経過しており, 前記制御部1は,前記連動待機処理において,前記連動待機期間W内に前記警報信号S5を受信できなければ,前記連動待機処理を終了して前記間欠受信処理を開始し,前記警報信号S5を受信すると直ちに警報音を鳴動させる,火災警報システムであって, 火元の火災警報器TRは,前記火災発生確率が前記第1の確率以上になると前記予告信号S3を前記無線送受信部2より送信し,前記火災発生確率が前記第1の確率よりも高い前記第2の確率以上になると前記警報信号S5を前記無線送受信部2より送信し, 火元でない火災警報器TRは,前記間欠受信処理において,前記予告信号S3を受信すると前記間欠受信処理を終了して前記連動待機処理を開始し,前記連動待機処理において,前記連動待機期間W内に前記警報信号S5を受信すると直ちに警報音を鳴動させる, 火災警報システム。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の火災警報システムは,「複数の火災警報器TRを備え」るものであるから,少なくとも2つの火災警報器TRを備えている。ここで,対比の際に区別するための便宜上,それらの火災警報器TRに順番を付けて言い換えると,引用発明の火災警報システムは,少なくとも第1の火災警報器TRと第2の火災警報器TRとを備えているといえる。 また,引用発明の火災警報器TRは,「無線送受信部2・・・を備え,他の火災警報器TRと間で無線信号を送受信するものであ」るから,双方向に通信可能な通信装置であるといえる。そうすると,前記第1の火災警報器TRは,双方向に通信可能な第1通信装置ということができ,また,前記第2の火災警報器TRは,双方向に通信可能な第2通信装置ということができるものである。 したがって,本件補正発明と引用発明は,双方向に通信可能な第1通信装置と第2通信装置とを備えている点で共通する。 また,引用発明の火災警報システムは,双方向に通信可能な通信装置である複数の火災警報器TRを備え,それらの間で予告信号S3や警報信号S5を送受信するものであるから,通信システムということができるものである。 イ 引用発明の火災警報器TRは,上記アで述べた無線送受信部2に加えて,「火災感知部4,前記無線送受信部2及び前記火災感知部4を制御する制御部1」を備えている。 そして,前記火災感知部4は,「火災発生確率が第1の確率以上になったと判断すると火災予備信号S2を制御部1に出力し,火災発生確率が前記第1の確率よりも高い第2の確率以上になったと判断すると火災確定信号S4を前記制御部1に出力する」ものであり,前記制御部1は,「前記火災感知部4から前記火災予備信号S2が出力されると,起動メッセージを含む予告信号S3を前記無線送受信部2より送信させ,前記火災感知部4から前記火災確定信号S4が出力されると火災警報メッセージを含む警報信号S5を前記無線送受信部2より送信させ」るものである。 したがって,複数の火災警報器TRのいずれもが火元の火災警報器TRとして,前記火災発生確率が前記第1の確率以上になると前記予告信号S3を前記無線送受信部2より送信し,前記火災発生確率が前記第1の確率よりも高い前記第2の確率以上になると前記警報信号S5を前記無線送受信部2より送信することができるものである。 ウ さらに,引用発明の火災警報器TRの前記制御部1は,「通常,間欠受信間隔Txで前記受信部21を起動することで前記受信部21を間欠的に動作させる間欠受信処理を行うものであり,ここで,前記間欠受信処理は,前記間欠受信間隔Txを繰り返しカウントし,前記間欠受信間隔Txのカウントが完了する毎に無線送受信部2を起動して前記予告信号S3が受信できるか否かをチェックし,受信できなければ,直ちに前記無線送受信部2を停止して待機状態に移行させる処理であり」,「前記間欠受信処理において,前記予告信号S3を受信すると前記間欠受信処理を終了して連動待機処理を開始し,前記連動待機処理では,連動待機期間Wが始まるまでは受信部21を停止させ,前記連動待機期間Wの間は受信部21を動作させることにより,連動待機期間W内に前記警報信号S5が直ちに受信できるようになり,ここで,前記連動待機期間Wは,前記警報信号S5が送信されるタイミングよりも所定時間だけ早いタイミングで開始されるものであって,前記予告信号S3を受信するタイミングT13と前記連動待機期間Wが開始するタイミングT14の間にはT14-T13の期間だけ時間が経過しており」,「前記連動待機処理において,前記連動待機期間W内に前記警報信号S5を受信できなければ,前記連動待機処理を終了して前記間欠受信処理を開始し,前記警報信号S5を受信すると直ちに警報音を鳴動させる」ものである。 したがって,複数の火災警報器TRのいずれも,火元でない火災警報器TRとして,前記間欠受信処理において,前記予告信号S3を受信すると前記間欠受信処理を終了して前記連動待機処理を開始し,前記連動待機処理において,前記連動待機期間W内に前記警報信号S5を受信すると直ちに警報音を鳴動させることができるものである。 エ 上記イ及びウで説示したとおり,引用発明の複数の火災警報器TRは,いずれも火元の火災警報器TRとしても火元でない火災警報器TRとしても動作しうるものである。 そこで,まず,複数の火災警報器TRのうち,上記アで述べた第2の火災警報器TRが火元の火災警報器TRとなり,第1の火災警報器TRが火元でない火災警報器TRとなる場合について検討する。 (ア)引用発明の火元の火災警報器TRは,「前記火災発生確率が前記第1の確率以上になると前記予告信号S3を前記無線送受信部2より送信し,前記火災発生確率が前記第1の確率よりも高い前記第2の確率以上になると前記警報信号S5を前記無線送受信部2より送信」するが,前記警報信号S5は,「火災警報メッセージを含む」ものであるからデータであるということができる。また,火災発生確率は煙濃度に基づいて判断されるものであり,煙濃度は火災発生から時間の経過とともに高くなるのが普通であることを勘案すると,火災発生時には,火災発生確率が前記第1の確率以上になったと判断されるのが先で,火災発生確率が前記第1の確率よりも高い前記第2の確率以上になったと判断されるのが後になると解される。そうすると,前記警報信号S5よりも前に前記予告信号S3が送信されることは明らかである。 さらに,引用発明においては,「火元でない火災警報器TRは,前記間欠受信処理において,前記予告信号S3を受信すると前記間欠受信処理を終了して前記連動待機処理を開始」するものであるから,前記予告信号S3は火元でない火災警報器TRに対して,連動待機処理の開始を要求しているということができる。 そうすると,引用発明の警報信号S5と本件補正発明の上りデータは,データである点で共通し,また,引用発明の予告信号S3は本件補正発明の第1要求信号に相当する。 したがって,本件補正発明と引用発明は,前記第2通信装置は,前記第1通信装置に対して前記データを送信する場合,前記データの送信前に前記第1要求信号を送信するように構成されている点で共通する。ただし,上記データが,本件補正発明においては,上りデータであるのに対して,引用発明においては上りであることが特定されていない点で一応相違する。 (イ)引用発明の火元でない火災警報器TRは,上記ウで説示したとおり前記間欠受信処理において,前記予告信号S3を受信すると前記間欠受信処理を終了して前記連動待機処理を開始し,前記連動待機処理において,前記連動待機期間W内に前記警報信号S5を受信すると直ちに警報音を鳴動させるものである。 a ここで,前記間欠受信処理については,「前記制御部1は,通常,間欠受信間隔Txで前記受信部21を起動することで前記受信部21を間欠的に動作させる間欠受信処理を行うものであり,ここで,前記間欠受信処理は,前記間欠受信間隔Txを繰り返しカウントし,前記間欠受信間隔Txのカウントが完了する毎に無線送受信部2を起動して前記予告信号S3が受信できるか否かをチェックし,受信できなければ,直ちに前記無線送受信部2を停止して待機状態に移行させる処理であ」るから,前記予告信号S3を受信するための期間(制御部1が受信部21を起動してから停止させるまでの期間)が間欠的に設定されているということができる。そうすると,引用発明における当該期間は本件補正発明の間欠的に設定されている第1待受期間に相当する。 b また,前記連動待機処理については,「前記制御部1は,前記間欠受信処理において,前記予告信号S3を受信すると前記間欠受信処理を終了して連動待機処理を開始し,前記連動待機処理では,連動待機期間Wが始まるまでは受信部21を停止させ,前記連動待機期間Wの間は受信部21を動作させることにより,連動待機期間W内に前記警報信号S5が直ちに受信できるようになり,ここで,前記連動待機期間Wは,前記警報信号S5が送信されるタイミングよりも所定時間だけ早いタイミングで開始されるものであって,前記予告信号S3を受信するタイミングT13と前記連動待機期間Wが開始するタイミングT14の間にはT14-T13の期間だけ時間が経過しており」というのであるから,前記連動待機期間Wは,前記予告信号S3を受信してからT14-T13の期間だけ時間が経過した後に開始するものであり,当該連動待機期間Wに前記警報信号S5を受信するものである。 そうすると,引用発明の連動待機期間W及びT14-T13の期間は,本件補正発明の第1受信期間及び第1待機時間にそれぞれ相当する。 c したがって,本件補正発明と引用発明は,前記第1通信装置は,間欠的に設定されている第1待受期間に受信動作を行い,前記第1待受期間に前記第2通信装置からの第1要求信号を受信した場合,前記第1要求信号の受信時点から第1待機時間経過後の第1受信期間に前記第2通信装置からのデータの受信を行うように構成されている点で共通する。ただし,上記(ア)と同様に,上記データが,本件補正発明においては,上りデータであるのに対して,引用発明においては上りである点が特定されていない点で一応相違する。 次に,複数の火災警報器TRのうち,上記アで述べた第1の火災警報器TRが火元の火災警報器TRとなり,第2の火災警報器TRが火元でない火災警報器TRとなる場合について検討すると,火元であるか火元でないかが入れ替わっただけであるから, (ウ)本件補正発明と引用発明は,前記第1通信装置は,前記第2通信装置に対して前記データを送信する場合,前記データの送信前に前記第2要求信号を送信するように構成されている点で共通する。ただし,上記データが,本件補正発明においては,下りデータであるのに対して,引用発明においては下りであることが特定されていない点で一応相違し, (エ)また,本件補正発明と引用発明は,前記第2通信装置は,間欠的に設定されている第2待受期間に受信動作を行い,前記第2待受期間に前記第1通信装置からの第2要求信号を受信した場合,前記第2要求信号の受信時点から第2待機時間経過後の第2受信期間に前記第1通信装置からのデータの受信を行うように構成されている点で共通する。ただし,上記(ウ)と同様に,上記データが,本件補正発明においては,下りデータであるのに対して,引用発明においては下りである点が特定されていない点で一応相違する。 以上を総合すると,本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。 <一致点> 「双方向に通信可能な第1通信装置と第2通信装置とを備え, 前記第1通信装置は, 間欠的に設定されている第1待受期間に受信動作を行い,前記第1待受期間に前記第2通信装置からの第1要求信号を受信した場合,前記第1要求信号の受信時点から第1待機時間経過後の第1受信期間に前記第2通信装置からのデータの受信を行うように構成され, 前記第2通信装置は, 間欠的に設定されている第2待受期間に受信動作を行い,前記第2待受期間に前記第1通信装置からの第2要求信号を受信した場合,前記第2要求信号の受信時点から第2待機時間経過後の第2受信期間に前記第1通信装置からのデータの受信を行うように構成され, 前記第1通信装置は, 前記第2通信装置に対して前記データを送信する場合,前記データの送信前に前記第2要求信号を送信するように構成され, 前記第2通信装置は, 前記第1通信装置に対して前記データを送信する場合,前記データの送信前に前記第1要求信号を送信するように構成されている ことを特徴とする通信システム。」 <相違点> 第1の通信装置が送信し第2の通信装置が受信するデータが,本件補正発明においては「下りデータ」であるのに対して,引用発明においては下りであることが特定されておらず,また,第2の通信装置が送信し第1の通信装置が受信するデータが,本件補正発明においては「上りデータ」であるのに対して,引用発明においては上りであることが特定されていない点。 (4)判断 上記相違点について検討すると,通信分野において,2つの装置間で双方向に通信を行う場合に,一方から他方へのデータを「上りデータ」と称し,他方から一方へのデータを「下りデータ」と称して便宜上区別することは普通に行われていることにすぎないから,上記相違点に係る事項は表現上差異にすぎず,実質的な相違点であるとはいえない。 したがって,本件補正発明は,引用発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお,仮に,実質的な相違点ではないとまではいうことができないとしても,引用発明において,1つの火災警報器TRから他の火災警報器TRへのデータを上りデータと称し,前記他の火災警報器TRから前記1つの火災警報器TRへのデータを下りデータと称することは,当業者が適宜なし得ることであって,格別の技術的困難性を有することではない。 したがって,本件補正発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するものであるから,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり,決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和2年6月30日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶理由の概要は,次のとおりである。 1.(新規性)この出願の下記請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ●理由1,理由2について 請求項1及び6に対して,引用文献1 <引用文献等一覧> 1.国際公開第2013/002310号 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から, 「 前記第1通信装置は, 前記第2通信装置に対して前記下りデータを送信する場合,前記下りデータの送信前に前記第2要求信号を送信するように構成され, 前記第2通信装置は, 前記第1通信装置に対して前記上りデータを送信する場合,前記上りデータの送信前に前記第1要求信号を送信するように構成されている」 という限定事項を削除したものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由](3),(4)に記載したとおり,引用文献1に記載された発明(引用発明)であるから,本願発明も,引用文献1に記載された発明である。 なお,仮に,前記第2の[理由](3)で挙げた相違点が実質的な相違点ではないとまではいうことができないとしても,本件補正発明について,前記第2の[理由](4)になお書きしたのと同様の理由で,本願発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない,あるいは,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-03-31 |
結審通知日 | 2021-04-06 |
審決日 | 2021-06-02 |
出願番号 | 特願2016-102845(P2016-102845) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮田 繁仁、本橋 史帆 |
特許庁審判長 |
國分 直樹 |
特許庁審判官 |
望月 章俊 廣川 浩 |
発明の名称 | 通信システム及び通信装置 |
代理人 | 特許業務法人北斗特許事務所 |