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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1376493
審判番号 不服2020-12668  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-10 
確定日 2021-07-26 
事件の表示 特願2016-225222「UV照明を用いるコンタクトレンズの欠陥の検査」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月15日出願公開、特開2017-106909〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年11月18日(パリ条約による優先権主張 2015年11月18日、シンガポール)の外国語書面出願であって、令和元年10月4日付けで拒絶理由が通知され、令和2年3月4日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月30日付けで拒絶査定されたところ、同年9月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和2年9月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和2年9月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「 【請求項1】
コンタクトレンズ材料における欠陥を検出するためのシステムであって、
食塩水に浮かべた前記コンタクトレンズを検査するためのレンズおよびデジタル画像出力を有するカメラであって、前記デジタル画像出力は、光のスペクトルのうちの前記コンタクトレンズ材料の蛍光発光の放出によって生み出される部分に対応する色スペクトルの光によって生み出される画像のみを含むカメラと、
UV発光ダイオードのアレイを備え、前記コンタクトレンズを照明して、該コンタクトレンズにおける蛍光発光の放出を励起するため、前記コンタクトレンズの上方から光を提供する第1の紫外光源と、
迷光または光の他のスペクトルがカメラに取得されることがないようにするため、前記カメラと前記コンタクトレンズの間に配置される第1の光学フィルタと、
関連メモリと、前記カメラから出力されるデジタル画像を受け付けるための入力と、分析したデジタル画像を表す出力とを有するコンピュータであって、前記分析されたデジタル画像は、前記レンズ材料において検出された不良の可視表示を含んでいるコンピュータとを備え、
前記第1の紫外光源と前記カメラが同一直線上に配置されるシステム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年3月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「 【請求項1】
コンタクトレンズ材料における欠陥を検出するためのシステムであって、
食塩水に浮かべた前記コンタクトレンズを検査するためのレンズおよびデジタル画像出力を有するカメラであって、前記デジタル画像出力は、光のスペクトルのうちの前記コンタクトレンズ材料の蛍光発光の放出によって生み出される部分に対応する色スペクトルの光によって生み出される画像のみを含むカメラと、
UV発光ダイオードのアレイを備え、前記コンタクトレンズを照明して、該コンタクトレンズにおける蛍光発光の放出を励起するための第1の紫外光源と、
迷光または光の他のスペクトルがカメラに取得されることがないようにするため、前記カメラと前記コンタクトレンズの間に配置される第1の光学フィルタと、
関連メモリと、前記カメラから出力されるデジタル画像を受け付けるための入力と、分析したデジタル画像を表す出力とを有するコンピュータであって、前記分析されたデジタル画像は、前記レンズ材料において検出された不良の可視表示を含んでいるコンピュータと
を備えるシステム。」

2 本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の紫外光源」、「カメラ」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献等

ア 引用文献1について

(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1:特表平11-503232号公報には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている(下線は当審で付与したものである。以下、同様。)。

(引1ア)特許請求の範囲
「1.光学部品を検査するシステムであって、
(A)光学部品又は光学部品を支持、保持若しくは含む物体を照射し、そのなかに検出しうる蛍光を生成する照射手段、及び、
(B)該光学部品のイメージを検出するイメージ検知手段、
を含むシステム。」

(引1イ)第5頁第23行?第8頁第3行
「 図1について言及すると、現在好ましい本発明の自動化検査の態様におけるサンプルホルダー-イルミネーター(10)が示され、イルミネーター(12)は光を検査容器(18)に供給する。容器(16)は光学部品、ここではコンタクトレンズ(20)を水和する塩類溶液(18)を含んでいる。更に、溶液(18)及びレンズ(20)を含むことに加えて、容器は、光をレンズ(20)に透過させるために作成されている。蛍光は光学部品のイメージを検知するための手段に到達する。好ましい態様においては、イメージ検知手段は、カメラ(22)、好ましくはビデオカメラを含む。適当なビデオカメラの例としては、SONY XC -77RR 電荷結合素子(CCD)ビデオカメラが挙げられる。カメラは、エントランスピューピル(entrance pupil)(図示せず)を有するカメラレンズ(24)に接続されている。
容器(16)はイルミネーター(12)より高い位置に示されているけれども、本発明の多くの態様では容器はイルミネーターの直上に位置するだろう。
1つの態様においては、システムに供給される照射光(illumination light)のみが、イメージ検知手段によっては検出されないが、レンズ中で蛍光を誘導し、それゆえ蛍光を発するレンズを暗いフィールドに対する明るい領域として現わす波長を有する光である。エッジの不規則さ(edge irregularity)を含むレンズ中の欠陥は、暗い(darker)又は黒い領域として現われ、レンズとレンズの欠陥との間には非常に高いコントラストが得られる。ある例においては、照射波長はイメージ検知手段により検出され、低下したコントラストイメージを与えるものであってもよい。
別の態様においては、レンズを保持する容器又は担体(support)の少なくとも一部は、好ましくは使用する検出システム(ビデオカメラ、眼等)により検出されるがレンズの蛍光は誘導しない範囲の外の波長を有する照射光にさらすことにより蛍光を発するように作製される。レンズは明るい部分により囲まれた、暗いボディ(dark body)として現れ、欠陥はレンズ内の明るい領域として現れるだろう。
あらゆる波長の光を使用して所望の蛍光を作り出すことができるが、異なる蛍光を発する物質(fluorescing entity)は励起エネルギーに対する異なる要求を有することに留意すべきである。紫外光がこの目的には便利であると考えられるのが一般的な場合である。なぜならば、多くの物質は紫外波長にさらされたとき可視できる蛍光を発する(exhibit)からである。更に、存在するイメージング装置の多くは可視光に反応するが、紫外波長には反応しない。しかしながら、興味の対象となる物質の多くは、低波長の可視光にさらされたとき、可視範囲中で蛍光を発するので、その様な条件下での本発明に使用することができる。イメージング装置(imaging equipment)により容易に検出することができる波長を有する励起光を使用したときには、適当なフィルターを使用するか又は蛍光の光軸に対して適当な角度で励起光束(excitation beam)を導入し、イメージング装置の検出器に到達する望ましくない照射波長の強度を制限し、コントラストを改善することが一般的に有益であろう。
本発明における使用に対して現在好ましいビデオカメラ(22)は、個々のセンサーからなる2/3インチCCDアレイを含み(図には示さず)、個々のセンサーはそれぞれ光エネルギーを電気エネルギーに伝達することができる。CCDアレイは個々のセンサーからなる水平方向の493本の列を有する。各列は768の独立したセンサーを有する。したがって、アレイ全体では378,264の個々のセンサーを有している。カメラは一秒間当たり30のフレーム又はイメージを作り出す。カメラを、光学部品のイメージを見るために、ビデオモニターに接続してもよく、又はカメラ(22)から受け取ったイメージの電気シグナル(image electrical signal)を自動的に解析することができる電子イメージングシステムに接続してもよい。その他の多くのカメラが本発明の実施に適している。
本発明の好ましい態様は、更に、カメラ(22)から受け取ったイメージシグナルを解析するための電子イメージングシステム(図には示さず)を含む。ここで電子イメージングシステムは、光学部品中に現れる与えられた特徴に対応する「イメージプロパティ(image property)」をイメージシグナル中で検出する手段を含む。例えば、8ビット電子イメージングシステムを使用した場合(EPIX Model 10 Imaging Boardを含む実施例1に関して)、本明細書で使用される「イージプロパティ」という用語は、イメージ中の各グレーレベル(gray level)に割り当てられる0?255の範囲の値を構成する。
もちろん、本発明を使用した拡張された検査のために、あらゆる高価なかつ複雑な自動化システムを使用する必要はない。検出しうる強度において励起光を除外又は減少させる、あらゆる蛍光システム(fluorescent system)は、光学部品とバックグラウンドとの間の高コントラストを提供し、肉眼、例えば顕微鏡等の拡大装置のあらゆるタイプ、例えば拡大されたイメージをスクリーンに投影する装置等を用いた検査を促進する。」

(引1ウ)第9頁第10行?第21行
「 本発明のシステムの好ましい配列に関して、イメージ検知手段は、透明な容器(16)及び検出される光学部品(20)対して、それぞれの光軸が同軸になるように適宜配置(align)されている。
前記システムを用いて検査される光学部品は、適当な光源を用いて照射したときに蛍光を発するものであるか、又は蛍光を発するホルダー、担体又は容器内若しくはその上に含まれる蛍光を発しないものである。典型的には、照射光は紫外光であり、蛍光は可視領域の波長であり、そのような条件はしばしば好まれる。なぜなら、イメージ検知手段は紫外光に反応しないように選択され、光学部品のイメージは黒のバックグラウンド上の明るい領域として示されるからである。しかしながら、高い照射波長及び光学部品とイメージ検知手段との間に干渉フィルター(interpose filter)を使用して、光源エネルギーの望ましくない量が光検出器に入ることを防ぐことができる。」

(引1エ)第10頁第15行?第21行
「 前記の考察は、光学部品用の完全又は一部自動化された検査システムを強調している。経済的な理由により、部品が高速で製造され、十分な検査が自動化された装置で行われるとき、そのようなシステムは好ましい。しかしながら、多くの例においては、製造ライン上の光学部品の各パーセント又は一定のパーセントを、肉眼又はある種の拡大装置に補助された肉眼を用いて手動で検査することも有用であり、本発明はバックグラウンドに対する部品の高コントラストのイメージの存在を提供することにより、手動による検査を促進するあろう。」

(引1オ)図1


(イ)引用文献1に記載された発明
(引1オ)図1から、ビデオカメラ(22)は、容器(16)の直上に位置していることが見て取れる。
また、(引1イ)の「電子イメージングシステムは、光学部品中に現れる与えられた特徴に対応する「イメージプロパティ(image property)」をイメージシグナル中で検出する手段を含む」という記載における「光学部品中に現れる与えられた特徴」は、「エッジの不規則さ(edge irregularity)を含むレンズ中の欠陥は、暗い(darker)又は黒い領域として現われ、レンズとレンズの欠陥との間には非常に高いコントラストが得られる」との記載を踏まえると、コンタクトレンズ(20)中に現れる欠陥であることが分かる。
これらの点を含め上記(ア)の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 コンタクトレンズ(20)の検査システムであって、
前記システムを用いて検査されるコンタクトレンズ(20)は、イルミネーター(12)を用いて照射したときに蛍光を発するもので、照射光は紫外光、蛍光は可視領域の波長であり、
イルミネーター(12)は、照射光を容器(16)に供給し、
容器(16)は、コンタクトレンズ(20)を水和する塩類溶液(18)を含み、照射光をコンタクトレンズ(20)に透過させるために作成され、
蛍光は、コンタクトレンズ(20)のイメージを検知するためのビデオカメラ(22)に到達し、
ビデオカメラ(22)は、個々のセンサーからなるCCDアレイを含み、カメラレンズ(24)に接続され、
容器(16)は、イルミネーター(12)の直上に位置し、
ビデオカメラ(22)は、容器(16)の直上に位置し、
ビデオカメラ(22)は、透明な容器(16)及び検出されるコンタクトレンズ(20)に対して、それぞれの光軸が同軸になるように配置され、
照明光は、ビデオカメラ(22)によって検出されないが、コンタクトレンズ(20)に蛍光を誘導する波長を有する励起光であり、それゆえ、蛍光を発するコンタクトレンズ(20)は、暗いフィールドに対する明るい領域として現れ、エッジの不規則さを含むコンタクトレンズ(20)の欠陥は、暗い又は黒い領域として現れ、コンタクトレンズ(20)とその欠陥の間には非常に高いコントラストが得られ、
ビデオカメラ(22)は、ビデオカメラ(22)から受け取ったイメージの電気シグナルを自動的に解析することができる8ビット電子イメージングシステムに接続され、8ビット電子イメージングシステムは、コンタクトレンズ(20)中に現れる欠陥をイメージ中の各グレーレベルに割り当てられる0?255の範囲の値で検出する、
検査システム。」

イ 引用文献2について

(ア)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2:特表2007-528490号公報には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。

(引2ア)
「【0043】
図4は図1のシステムおよび機能において採用された蛍光画像を取得するための光学ヘッド400を簡単化して示した図である。光学ヘッド400は、光学検査対象電気回路上の欠陥位置412の画像を取得するように配置された照射体402、画像および拡大光学系404、およびカメラ406を備えている。本発明の実施の形態によれば、照射体402は、照射制御器410によって駆動され、画像取得の間に、短時間照射パルスを生成するように構成されており、短時間(約10-300m秒の範囲内の)パルス照射によって位置412に照射する。
【0044】
本発明の実施の形態では、照射体402は、少なくとも1つの同心リング上に配列された複数のLED414を備えるリング状光照射体を有し、これは、検査対象電気回路415(図1における電気回路に対応する)上で位置412を照射する。LED414は、主として青、紫、または紫外スペクトルの発光源であり、好ましくは410nm未満の波長の光を出射する。好適なLEDは、カリフォルニアのエイグ社のモデルEIG-3UV400-30LEDである。
【0045】
図4からわかるように、LED414の光は、ローパスフィルタ416を通過する。このローパスフィルタは、例えば420nm未満の選定された波長よりも短い光を通過させ、その波長を超えるスペクトルの光を阻止する作用がある。これは、LED414からの410nmの波長の光を確実に通過させるためである。ローパスフィルタ416は開口部418を有し、ローパスフィルタ416のフィルタ作用を受けることなく、カメラ406から位置412を視野に入れることができるようになっている。
【0046】
LED414の光は位置412にある検査対象電気回路上に照射され、電気回路の基板部分から蛍光を発生させる。電気回路の基板部分からは、基板の材料に応じた波長の長い光が出射する。この光は、通常は480-600nmの範囲にある。
【0047】
基板から発生した蛍光は、開口418を通過し、撮像および拡大光学系404によって、カメラ406のセンサー上に画像化される。ハイパスフィルタ420は、例えば、475nmを超えるような選定された波長以上の光を通過させ、この値よりも下の波長の光の通過を阻止する。ハイパスフィルタ420は、カメラ406の上流側に配設される。ハイパスフィルタ420を設けることにより、カメラ406で取得した画像が、迷光、またはLED414が照射し電気回路415で反射した光の影響を受けないようにしている。
・・・
【0050】
本発明の実施の形態では、照射の構成は、認証されるべき欠陥候補のタイプに応答して、照射制御器410によって自動的に選択される。例えば、検査ステーション110(図1)によって、この情報を提供することができ、それによって、さらなる画像処理および自動認証における使用のため、または、人間の評価のために、ビデオカメラ406により取得された画像を最適化する。従って、例えば、自動的に酸化または浅いショートを認証するには、蛍光画像を紫または紫外光で照射する必要がある。ショートと認証するための自動認証には、反射光が仰角で提供されるような照射が必要となる。ディッシュダウン欠陥、すなわち、導体の頂部表面がその周囲に比べて窪んでいる欠陥を認証する自動認証を行うには、高品質反射画像が必要となる。」

(引2イ)図4


(イ)引用文献2に記載された技術事項
上記(ア)の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 光学検査対象電気回路上の欠陥位置412の画像を取得するように配置された照射体402、画像および拡大光学系404、およびカメラ406を備えている光学ヘッド400であって、
照射体402は、少なくとも1つの同心リング上に配列された複数のLED414を備えるリング状光照射体を有し、これは、検査対象電気回路415上で位置412を照射し、LED414は、紫外スペクトルの発光源であり、410nm未満の波長の光を出射し、
LED414の光は位置412にある検査対象電気回路上に照射され、電気回路の基板部分から蛍光を発生させ、この光は、通常は480-600nmの範囲にあり、
基板から発生した蛍光は、リング状光照射体の開口418を通過し、撮像および拡大光学系404によって、カメラ406のセンサー上に画像化され、ハイパスフィルタ420は、475nmを超えるような選定された波長以上の光を通過させ、この値よりも下の波長の光の通過を阻止し、ハイパスフィルタ420は、カメラ406の上流側に配設され、ハイパスフィルタ420を設けることにより、カメラ406で取得した画像が、迷光、またはLED414が照射し電気回路415で反射した光の影響を受けないようにしている、光学ヘッド400。」

ウ 引用文献3について

(ア)引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献3:特開2002-213925号公報には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。

(引3ア)
「【0015】先ず、図1には、本発明の一実施例に係る眼用レンズの厚み測定装置を機能的に示す説明図が、概略的に示されている。そこにおいて、10は、電磁放射線供給装置であって、従来から公知のポリマー材質からなる被検体眼用レンズ(コンタクトレンズ12)に対して、所定の励起光を照射するように、特に、眼用レンズの材質自体が励起されて、自家蛍光を発することが出来るような波長の光(励起光)を照射し得る電磁放射線源を有して、構成されている。そして、そのような電磁放射線源としては、所望とする励起光を照射し得る、従来から公知の各種の光照射装置、例えば、キセノンランプや、水銀ランプ、重水素ランプ、タングステン-ヨウ素ランプ、レーザー光照射装置等が、適宜に選択されて用いられることとなるのである。なお、一般に、励起光の照射によって発生する蛍光は、励起光源の強度に比例して強くなるところから、光の強度が大きな電磁放射線源(光源)を使用すれば、検出する自家蛍光の輝度がより高くなる利点がある。また、レーザー光を採用する場合にあっては、眼用レンズの変質が惹起されない程度の使用が必要となることは言うまでもないところである。
【0016】また、本発明において、コンタクトレンズ12や眼内レンズ等の眼用レンズに照射される励起光としては、眼用レンズの材質に応じて適宜に選択されることとなるのであるが、好適には、200?400nmの波長のUV光が用いられる。なお、かかるUV光は、狭い帯域幅の線スペクトルであっても、或いは、比較的広い帯域幅の連続スペクトルであっても、更には、複数の線スペクトルからなるUV光であってもよい。また一方、そのようなUV光を照射することによって発生せしめられるレンズの自家蛍光は、眼用レンズの材質によって多少異なるものの、一般に、340?470nmの範囲内の波長の光である。
【0017】ところで、本実施形態における電磁放射線供給装置10には、所望とする波長帯域の光をレンズに照射するために、電磁放射線源とコンタクトレンズ12との間に、眼用レンズの材質に応じた励起波長の光を透過せしめ得る光学フィルタが配設されていてもよく、これによって、電磁放射線源から放射される励起波長以外の余分な光が遮断せしめられて、所望とする励起光が専らコンタクトレンズ12に照射せしめられることとなる。
【0018】そして、かくの如くして電磁放射線供給装置10から発せられる励起光は、コンタクトレンズ12全体に照射され、そして、その励起光にて、該コンタクトレンズ12を構成する材料自体が励起せしめられ、更に、この励起によって生じる自家蛍光にて形成される2次元イメージであるレンズ蛍光像が、検出器14によって検知されるようになっているのである。特に、このような検出器14としては、コンタクトレンズ12の自家蛍光を感知し、その光信号を電気信号に変換することが出来る適当な撮像装置、具体的には、CCDカメラやフォトダイオード等の公知の撮像装置(光検出装置)が好適に用いられ得、これによって、自家蛍光の輝度の大きさが求められると共に、自家蛍光によって形成されるレンズ蛍光像が得られるのである。また、そのような撮像装置には、より微細なレンズ蛍光像を得るために、顕微鏡やカメラ等の拡大レンズ(マクロレンズ)が配設されていてもよいのである。
【0019】なお、上述せる如き検出器14にあっては、それが、上述せるような所望とする波長の光を専ら感知するものでない限り、かかる波長の光を専ら透過せしめ得る光学フィルタが装備せしめられていることが望ましく、これによって、自家蛍光に比して強度が格段に大きな励起光等の余分な光を遮断して、コンタクトレンズ12から放出される自家蛍光のみを、選択的に検知することが可能となり、以て、得られるレンズ蛍光像のコントラストがより一層明瞭となる。
【0020】そして、上記の検出器14にてコンタクトレンズ12の自家蛍光が検出されることによって、レンズ蛍光像が得られるのであるが、この検知されたレンズ蛍光像は、各種データの演算処理を行なう演算装置16に送られるようになっている。なお、かかる演算装置16は、厚み測定部位の輝度を数値化して求める輝度算出部18、及び、そのようにして求められた輝度に基づいて厚みを決定する厚み決定部20、更に、レンズ蛍光像を疑似カラー画像化せしめる疑似カラー変換部22を有しており、パソコン等の公知の各種コンピュータにて実現するものである。
・・・
【0025】このように、上例の眼用レンズの厚み測定装置を用いた厚み測定手法にあっては、眼用レンズ全体に亘って均等に所定の励起光を照射し、そして、かかる励起光によって生じるレンズの自家蛍光がレンズ蛍光像として検知され、その輝度によって所望とする測定部位の厚みが決定されるようになっているところから、レンズ厚みの測定が非接触方式において容易に実現され得、以て、レンズ表面に損傷が発生する等の問題が効果的に回避され得ているのである。しかも、レンズ中心が最も薄く設計される単焦点レンズのみならず、トーリックレンズやバイフォーカルレンズ等の、レンズ上部又はレンズ下部が薄肉とされたレンズや、光学的中心が幾何的中心から偏心せしめられたレンズ等の、光学的中心等の厚み測定時においても、正確にその厚みを測定することが可能となっているのである。また、超音波等を用いるものでもないところから、測定時間も極めて短縮化され得るといった利点をも享受し得るのである。」

(引3イ)
「【0049】また、バンドパスフィルタやカットフィルタ等の光学フィルタの配設形態も、例示のものに限定されるものではなく、光源や撮像装置と眼用レンズとの間に設置されておれば、電磁放射線供給装置10や検出器14の外部にそれが設置されているようにした構造も採用することが出来るのである。更にまた、そのような光学フィルタも、光源や撮像装置等に応じて、得られるレンズ蛍光像が有利に検知され得るように用いられるものであって、必ずしも必須とされるものではないのであり、例えば、光源が、所望とする波長領域の光を専ら照射せしめ得るようなものであれば、光学フィルタは不必要となる。
・・・
【0052】また、上例では、電磁放射線供給装置10と検出器14が、共に、眼用レンズ(12)の上方に位置せしめられるように配置されていたが、本発明手法においては、励起光の照射によって生じた自家蛍光が検知され得る構成であれば、電磁放射線供給装置10と検出器14を対向配置せしめて、その間に、眼用レンズ(12)を配置する構成も好適に採用され得るのである。」

(引3ウ)図1


(イ)引用文献3に記載された技術事項
上記(ア)の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献3には、次の2つの技術事項(以下「引用文献3の技術事項1」、「引用文献3の技術事項2」という。)が記載されていると認められる。

(引用文献3の技術事項1)
「 電磁放射線供給装置10と検出器14が、共に、コンタクトレンズ12の上方に位置せしめられるように配置され、電磁放射線供給装置10から発せられる励起光は、コンタクトレンズ12全体に均等に照射され、そして、その励起光にて、該コンタクトレンズ12を構成する材料自体が励起せしめられ、更に、この励起によって生じる自家蛍光にて形成される2次元イメージであるレンズ蛍光像が、検出器14によって検知されるようになっている、眼用レンズの厚み測定装置であって、
コンタクトレンズ12に照射される励起光としては、200?400nmの波長のUV光が用いられ、そのようなUV光を照射することによって発生せしめられるコンタクトレンズ12の自家蛍光は、340?470nmの範囲内の波長の光であり、
検出器14にあっては、それが、所望とする波長の光を専ら感知するものでない限り、かかる波長の光を専ら透過せしめ得る光学フィルタが装備せしめられていることが望ましく、これによって、自家蛍光に比して強度が格段に大きな励起光等の余分な光を遮断して、コンタクトレンズ12から放出される自家蛍光のみを、選択的に検知することが可能となり、以て、得られるレンズ蛍光像のコントラストがより一層明瞭となる、コンタクトレンズ12の厚み測定装置。」

(引用文献3の技術事項2)
「 引用文献3の技術事項1において、電磁放射線供給装置10と検出器14が、共に、コンタクトレンズ12の上方に位置せしめられるように配置されていたが、励起光の照射によって生じた自家蛍光が検知され得る構成であれば、電磁放射線供給装置10と検出器14を対向配置せしめて、その間に、コンタクトレンズ12を配置する構成も好適に採用され得ること。」

エ 引用文献4について

(ア)引用文献4の記載
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2002-243581号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。

(引4ア)
「【0020】先ず、図1には、本発明の一実施例に係るコンタクトレンズのレンズ姿勢検査装置を機能的に示す説明図が、概略的に示されている。そこにおいて、10は、電磁放射線供給装置であって、従来から公知のポリマー材質からなる被検体コンタクトレンズ12に対して、所定の励起光を照射するように、つまり、コンタクトレンズ12の材質自体が励起されて、自家蛍光を発することが出来るような波長の光(励起光)を照射し得る電磁放射線源を有して、構成されている。そして、そのような電磁放射線源としては、所望とする励起光を照射し得る、従来から公知の各種の光照射装置、例えば、キセノンランプや、水銀ランプ、重水素ランプ、タングステン-ヨウ素ランプ、レーザー光照射装置等が、適宜に選択されて用いられることとなる。なお、一般に、励起光の照射によって発生する蛍光は、励起光の強度が大きくなるに従って、強くなるところから、強度の大きな励起光を発生せしめ得る電磁放射線源(光源)を使用すれば、検出する自家蛍光の輝度がより高くなる利点があるものの、逆に、電磁放射線(励起光)の強度が過大であると、コンタクトレンズ12の変質が惹起せしめられる恐れがあることは、言うまでもないところである。
【0021】また、本発明において、コンタクトレンズ12に照射される励起光としては、上述したように、コンタクトレンズ12の材質自体が励起されて、自家蛍光を発することが出来る光であれば、その波長は特に限定されるものではなく、コンタクトレンズ12の材質に応じて適宜に選択されることとなるのであるが、好適には、200?400nmの波長のUV光が用いられる。なお、かかるUV光は、狭い帯域幅の線スペクトルであっても、或いは、比較的広い帯域幅の連続スペクトルであっても、更には、複数の線スペクトルからなるUV光であってもよい。また一方、そのようなUV光を照射することによって発生せしめられる自家蛍光は、コンタクトレンズの材質によって多少異なるものの、一般に、340?470nmの領域内の波長の光である。
【0022】ところで、所望とする波長帯域の光を照射するために、電磁放射線供給装置10には、電磁放射線源とコンタクトレンズ12との間に、コンタクトレンズの材質に応じた励起波長の光を透過せしめ得る光学フィルタが配設されていてもよく、これによって、電磁放射線源から放射される励起波長以外の余分な光が遮断せしめられて、所望とする波長帯域の励起光が専らコンタクトレンズ12に照射せしめられるようになる。
【0023】そして、かくの如くして電磁放射線供給装置10から発せられる励起光は、コンタクトレンズ12全体に照射され、そして、その励起光にて、該コンタクトレンズ12を構成する材料自体が励起せしめられ、この励起によって生じる自家蛍光にて形成される2次元イメージであるレンズ蛍光像が、検出器14によって検知されるようになっているのである。特に、このような検出器14としては、コンタクトレンズ12の自家蛍光を感知し、その光信号を電気信号に変換することが出来る撮像装置、具体的には、CCDカメラやフォトダイオード等の従来から公知の撮像装置(光検出装置)が好適に用いられ得、これによって、自家蛍光より形成されるレンズ蛍光像が得られるのである。また、そのような撮像装置には、より微細なレンズ蛍光像を得るために、顕微鏡やカメラ等のレンズが配設されていてもよい。
【0024】なお、上述せる如き検出器14にあっては、それが、所望とする波長の光を専ら感知するものでない限り、かかる波長の光を専ら透過せしめ得る光学フィルタが装備せしめられていることが望ましく、これによって、自家蛍光に比して強度が格段に大きな励起光等の余分な光を遮断して、コンタクトレンズ12から放出される自家蛍光のみを、選択的に検知することが可能となると共に、得られるレンズ蛍光像のコントラストがより一層明瞭となるのである。
・・・
【0027】そして、かくの如くして検知されたレンズ蛍光像は、そのまま出力されても構わないのであるが、本実施形態においては、図1に示されるように、各種データの演算処理を行なう画像解析装置28に送られるようになっている。なお、ここにおいて、該画像解析装置28は、平滑化処理部30と方向判定処理部32とから構成される基底方向決定部34、及び、軸角度算出部36を有しており、パソコン等の公知の各種コンピュータにて実現するものである。
・・・
【0033】以上のように、上例のコンタクトレンズのレンズ姿勢検査装置を用いたレンズ姿勢検査手法にあっては、コンタクトレンズ全体に亘って均等に所定の励起光を照射し、そして、かかる励起光によって生じるレンズの自家蛍光がレンズ蛍光像として検知されて、そのレンズ蛍光像の輝度パターンによって、目的とするレンズ姿勢(基底方向とその角度)が判定されるようになっているところから、従来に比べ、正確にレンズ姿勢の検査を実施することが可能となっているのである。
・・・
【0035】しかも、かくの如きレンズ姿勢検査手法によれば、コンタクトレンズ自体から生じる自家蛍光を検知するものであるところから、例えば、コンタクトレンズに対して可視光等の光を照射して得られる、吸収光や反射光等を検知してレンズ像を得る場合に比して、極めて明瞭なレンズ像を検知することが可能となり、以て、それら吸収光や反射光によって形成されるレンズ像からでは求めることが困難であったレンズ姿勢(基底方向)を、正確に求めることが可能となるのである。」

(引4イ)
「【0041】また、バンドパスフィルタやカットフィルタ等の光学フィルタの配設形態も、例示のものに限定されるものではなく、光源や撮像装置とコンタクトレンズとの間に設置されておれば、電磁放射線供給装置10や検出器14の外部にそれが設置されているようにした構造も採用することが出来るのである。更にまた、そのような光学フィルタも、光源や撮像装置等に応じて、得られるレンズ蛍光像が有利に検知され得るように用いられるものであって、必ずしも必要とされるものではないのである。
・・・
【0044】加えて、上例では、励起光の照射と自家蛍光の検知が、コンタクトレンズ12の上方側から行なわれるように、言い換えれば、電磁放射線供給装置10と検出器14が、共に、コンタクトレンズ12の上方に位置せしめられるように配置されていたが、本発明手法においては、励起光の照射によって生じた自家蛍光が検知され得る構成であれば、図4に示されるように、コンタクトレンズ12の上方から、電磁放射線供給装置10にて励起光を照射すると共に、コンタクトレンズ12の下方に配置された検出器14にて、コンタクトレンズ12の自家蛍光を検知するような配置形態も好適に採用され得るのであり、また、電磁放射線供給装置10をコンタクトレンズ12の下方に、検出器14を上方に配置する配置形態も、適用可能である。」

(引4ウ)図1


(引4エ)図4


(イ)引用文献4に記載された技術事項
上記(ア)の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献4には、次の2つの技術事項(以下「引用文献4の技術事項1」、「引用文献4の技術事項2」という。)が記載されていると認められる。

(引用文献4の技術事項1)
「 電磁放射線供給装置10と検出器14が、共に、コンタクトレンズ12の上方に位置せしめられるように配置され、電磁放射線供給装置10から発せられる励起光は、コンタクトレンズ12全体に均等に照射され、そして、その励起光にて、該コンタクトレンズ12を構成する材料自体が励起せしめられ、この励起によって生じる自家蛍光にて形成される2次元イメージであるレンズ蛍光像が、検出器14によって検知されるようになっている、コンタクトレンズのレンズ姿勢検査装置であって、
コンタクトレンズ12に照射される励起光としては、200?400nmの波長のUV光が用いられ、そのようなUV光を照射することによって発生せしめられる自家蛍光は、340?470nmの領域内の波長の光であり、
検出器14にあっては、それが、所望とする波長の光を専ら感知するものでない限り、かかる波長の光を専ら透過せしめ得る光学フィルタが装備せしめられていることが望ましく、これによって、自家蛍光に比して強度が格段に大きな励起光等の余分な光を遮断して、コンタクトレンズ12から放出される自家蛍光のみを、選択的に検知することが可能となると共に、得られるレンズ蛍光像のコントラストがより一層明瞭となる、コンタクトレンズのレンズ姿勢検査装置。」

(引用文献4の技術事項2)
「 引用文献4の技術事項1において、電磁放射線供給装置10と検出器14が、共に、コンタクトレンズ12の上方に位置せしめられるように配置されていたが、励起光の照射によって生じた自家蛍光が検知され得る構成であれば、コンタクトレンズ12の上方から、電磁放射線供給装置10にて励起光を照射すると共に、コンタクトレンズ12の下方に配置された検出器14にて、コンタクトレンズ12の自家蛍光を検知するような配置形態も好適に採用され得るのであり、また、電磁放射線供給装置10をコンタクトレンズ12の下方に、検出器14を上方に配置する配置形態も、適用可能であること。」

オ 引用文献5について

(ア)引用文献5の記載
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2002-244085号公報(以下「引用文献5」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。

(引5ア)
「【0017】先ず、図1には、本発明の一実施例に係るマーク付眼用レンズのマーク読出装置を機能的に示す説明図が、概略的に示されている。そこにおいて、10は、電磁放射線供給装置であって、従来から公知のポリマー材質からなる被検体マーク付眼用レンズ(マーク付コンタクトレンズ12)に対して、所定の励起光を照射するように、つまり、眼用レンズの材質自体が励起されて、自家蛍光を発することが出来るような波長の光(励起光)を照射し得る電磁放射線源を有して、構成されている。そして、そのような電磁放射線源としては、所望とする励起光を照射し得る、従来から公知の各種の光照射装置、例えば、キセノンランプや、水銀ランプ、重水素ランプ、タングステン-ヨウ素ランプ、レーザー光照射装置等が、適宜に選択されて用いられることとなる。なお、一般に、励起光の照射によって発生する蛍光は、励起光の強度が大きくなるに従って、強くなるところから、強度の大きな励起光を発生せしめ得る電磁放射線源(光源)を使用すれば、検出する自家蛍光の輝度がより高くなる利点があるものの、逆に、電磁放射線(励起光)の強度が過大であると、眼用レンズの変質が惹起せしめられる恐れがあることは、言うまでもないところである。
【0018】また、本発明において、マーク付コンタクトレンズ12やマーク付眼内レンズ等のマーク付眼用レンズに照射される励起光としては、上述したように、マーク付眼用レンズの材質自体が励起されて、自家蛍光を発することが出来る光であれば、その波長は特に限定されるものではなく、眼用レンズの材質に応じて適宜に選択されることとなるのであるが、好適には、200?400nmの波長のUV光が用いられる。なお、かかるUV光は、狭い帯域幅の線スペクトルであっても、或いは、比較的広い帯域幅の連続スペクトルであっても、更には、複数の線スペクトルからなるUV光であってもよい。また一方、そのようなUV光を照射することによって発生せしめられる自家蛍光は、マーク付眼用レンズの材質によって多少異なるものの、一般に、340?470nmの領域内の波長の光である。
【0019】ところで、所望とする波長帯域の光を照射するために、電磁放射線供給装置10には、電磁放射線源とマーク付コンタクトレンズ12(マーク付眼用レンズ)との間に、マーク付コンタクトレンズ12の材質に応じた励起波長の光を透過せしめ得る光学フィルタが配設されていてもよく、これによって、電磁放射線源から放射される励起波長以外の余分な光が遮断せしめられて、所望とする波長帯域の励起光が専らマーク付コンタクトレンズ12に照射せしめられるようになる。
【0020】そして、かくの如くして電磁放射線供給装置10から発せられる励起光は、マーク付コンタクトレンズ12全体に照射され、そして、その励起光にて、該マーク付コンタクトレンズ12を構成する材料自体が励起せしめられ、この励起によって生じる自家蛍光にて形成される2次元イメージであるレンズ蛍光像が、検出器14によって検知されるようになっているのである。特に、このような検出器14としては、マーク付コンタクトレンズ12の自家蛍光を感知し、その光信号を電気信号に変換することが出来る撮像装置、具体的には、CCDカメラやフォトダイオード等の従来から公知の撮像装置(光検出装置)が好適に用いられ得、これによって、自家蛍光より形成されるレンズ蛍光像が得られるのである。また、そのような撮像装置には、より鮮明なレンズ蛍光像を得るために、顕微鏡やカメラ等のレンズが配設されていてもよい。
【0021】なお、上述せる如き検出器14にあっては、それが、所望とする波長の光を専ら感知するものでない限り、かかる波長の光を専ら透過せしめ得る光学フィルタが装備せしめられていることが望ましく、これによって、自家蛍光に比して強度が格段に大きな励起光等の余分な光を遮断して、マーク付コンタクトレンズ12から放出される自家蛍光のみを、選択的に検知することが可能となると共に、得られるレンズ蛍光像のコントラストがより一層高くなるのである。
・・・
【0024】そして、かくの如くして検知されたレンズ蛍光像は、本実施形態においては、図1に示されるように、各種データの解析処理を行なう画像解析装置28に送られるようになっている。なお、ここにおいて、該画像解析装置28は、OCR(Optical Character Recognition )機能部30としての文字読取部32、照合用データとの照合処理を行なう照合部34、及び、判定部36を有して構成され、パソコン等の公知の各種コンピュータにて実現するものである。
・・・
【0029】以上のように、上例のマーク付眼用レンズのマーク読出装置を用いたマーク読出方法にあっては、マーク付眼用レンズ(マーク付コンタクトレンズ12)全体に亘って均等に所定の励起光を照射し、そして、かかる励起光によって生じるレンズの自家蛍光がレンズ蛍光像として検知されるようになっているところから、マーク付眼用レンズを直に撮影して得られるレンズ像に比して、得られるレンズ像のコントラストが高いものとなって、マークが極めて鮮明に映し出されることとなり、そのため、マークの認識が格別に容易となって、該マーク付眼用レンズについてのレンズ情報を有利に得ることが可能となったのである。」

(引5イ)
「【0036】また、バンドパスフィルタやカットフィルタ等の光学フィルタの配設形態も、例示のものに限定されるものでは決してなく、光源や撮像装置とマーク付コンタクトレンズとの間に設置されておれば、電磁放射線供給装置10や検出器14の外部にそれが設置されているようにした構造も採用することが出来るのである。更にまた、そのような光学フィルタも、光源や撮像装置等に応じて、適宜に採用されるものであって、必ずしも必要とされるものではないのである。
・・・
【0039】加えて、上例では、励起光の照射と自家蛍光の検知が、マーク付コンタクトレンズ12の上方側から行なわれるように、言い換えれば、電磁放射線供給装置10と検出器14が、共に、マーク付コンタクトレンズ12の上方に位置せしめられるように配置されていたが、本発明手法においては、励起光の照射によって生じた自家蛍光が検知され得る構成であれば、図4に示されるように、マーク付コンタクトレンズ12の上方から、電磁放射線供給装置10にて励起光を照射すると共に、マーク付コンタクトレンズ12の下方に配置された検出器14にて、マーク付コンタクトレンズ12の自家蛍光を検知するような配置形態も好適に採用され得るのである。更には、図5に示されているように、電磁放射線供給装置10と検出器14とを、マーク付コンタクトレンズ12の上方に、容器40を介して、配置するような配置形態も、適用可能である。」

(引5ウ)図1


(引5エ)図4


(引5オ)図5


(イ)引用文献5に記載された技術事項
上記(ア)の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献5には、次の2つの技術事項(以下「引用文献5の技術事項1」、「引用文献5の技術事項2」という。)が記載されていると認められる。

(引用文献5の技術事項1)
「 電磁放射線供給装置10から発せられる励起光は、マーク付コンタクトレンズ12全体に均等に照射され、そして、その励起光にて、該マーク付コンタクトレンズ12を構成する材料自体が励起せしめられ、この励起によって生じる自家蛍光にて形成される2次元イメージであるレンズ蛍光像が、検出器14によって検知されるようになっている、マーク付眼用レンズのマーク読出装置であって、
マーク付コンタクトレンズ12に照射される励起光としては、200?400nmの波長のUV光が用いられ、そのようなUV光を照射することによって発生せしめられる自家蛍光は、340?470nmの領域内の波長の光であり、
検出器14にあっては、それが、所望とする波長の光を専ら感知するものでない限り、かかる波長の光を専ら透過せしめ得る光学フィルタが装備せしめられていることが望ましく、これによって、自家蛍光に比して強度が格段に大きな励起光等の余分な光を遮断して、マーク付コンタクトレンズ12から放出される自家蛍光のみを、選択的に検知することが可能となると共に、得られるレンズ蛍光像のコントラストがより一層高くなる、マーク付眼用レンズのマーク読出装置。」

(引用文献5の技術事項2)
「 引用文献5の技術事項1において、電磁放射線供給装置10と検出器14が、共に、マーク付コンタクトレンズ12の上方に位置せしめられるように配置されていたが、励起光の照射によって生じた自家蛍光が検知され得る構成であれば、マーク付コンタクトレンズ12の上方から、電磁放射線供給装置10にて励起光を照射すると共に、マーク付コンタクトレンズ12の下方に配置された検出器14にて、マーク付コンタクトレンズ12の自家蛍光を検知するような配置形態も好適に採用され得るのであり、更には、電磁放射線供給装置10と検出器14とを、マーク付コンタクトレンズ12の上方に、容器40を介して、配置するような配置形態も、適用可能であること。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「コンタクトレンズ(20)中に現れる欠陥を」「検出する」「検査システム」は、本件補正発明の「コンタクトレンズ材料における欠陥を検出するためのシステム」に相当する。


(ア)引用発明の「塩類溶液(18)」に「水和」された「コンタクトレンズ(20)のイメージを検知するためのビデオカメラ(22)」は、本件補正発明の「食塩水に浮かべた前記コンタクトレンズを検査するための」「カメラ」に相当する。

(イ)引用発明の「カメラレンズ(24)に接続され」た「ビデオカメラ(22)は、本件補正発明の「レンズ」「を有するカメラ」に相当する。

(ウ)引用発明の「個々のセンサーからなるCCDアレイを含み、」「イメージの電気シグナル」を「8ビット電子イメージングシステム」に「受け」渡す「ビデオカメラ(22)」は、本件補正発明の「デジタル画像出力を有するカメラ」に相当する。

(エ)引用発明の「イメージの電気シグナル」が、「可視領域の波長」の「蛍光を発するコンタクトレンズ(20)」の、「暗いフィールドに対する明るい領域」であることは、暗視野における可視蛍光を発する部分のコンタクトレンズ(20)の画像のみを含むものであるから、本件補正発明の「前記デジタル画像出力は、光のスペクトルのうちの前記コンタクトレンズ材料の蛍光発光の放出によって生み出される部分に対応する色スペクトルの光によって生み出される画像のみを含む」ことに相当する。

(オ)上記(ア)?(エ)を踏まえると、引用発明の「塩類溶液(18)」に「水和」された「コンタクトレンズ(20)のイメージを検知するための」、「カメラレンズ(24)に接続され」、かつ、「個々のセンサーからなるCCDアレイを含み、」「イメージの電気シグナル」を「8ビット電子イメージングシステム」に「受け」渡す、「ビデオカメラ(22)」であって、「イメージの電気シグナル」が、「可視領域の波長」の「蛍光を発するコンタクトレンズ(20)」の、「暗いフィールドに対する明るい領域」である、「ビデオカメラ(22)」は、本件補正発明の「食塩水に浮かべた前記コンタクトレンズを検査するためのレンズおよびデジタル画像出力を有するカメラであって、前記デジタル画像出力は、光のスペクトルのうちの前記コンタクトレンズ材料の蛍光発光の放出によって生み出される部分に対応する色スペクトルの光によって生み出される画像のみを含むカメラ」に相当する。

ウ 引用発明の「容器(16)は、イルミネーター(12)の直上に位置」するから、「容器(16)」に「含」まれる「コンタクトレンズ(20)」に「供給」される「照明光」は、「コンタクトレンズ(20)」の「真」下から「供給」される。このことを踏まえると、引用発明の「コンタクトレンズ(20)に蛍光を誘導する波長を有する励起光」として「紫外光」の「照射光」を、「コンタクトレンズ(20)」の「真」下から「供給」する「イルミネーター(12)」と、本件補正発明の「UV発光ダイオードのアレイを備え、前記コンタクトレンズを照明して、該コンタクトレンズにおける蛍光発光の放出を励起するため、前記コンタクトレンズの上方から光を提供する第1の紫外光源」とは、「前記コンタクトレンズを照明して、該コンタクトレンズにおける蛍光発光の放出を励起するため、前記コンタクトレンズの一方側から光を提供する第1の紫外光源」の点で共通する。

エ 引用発明の「ビデオカメラ(22)から受け取ったイメージの電気シグナルを自動的に解析」し、「コンタクトレンズ(20)中に現れる欠陥をイメージ中の各グレーレベルに割り当てられる0?255の範囲の値で検出する」「8ビット電子イメージングシステム」は、CPUがメモリに置かれたプログラムを実行させることにより、「イメージの電気シグナルを自動的に解析」するコンピュータであるといえ、解析の結果、「コンタクトレンズ(20)中に現れる欠陥をイメージシグナル中で」256階調グレースケールとして現したものであるから、本件補正発明の「関連メモリと、前記カメラから出力されるデジタル画像を受け付けるための入力と、分析したデジタル画像を表す出力とを有するコンピュータであって、前記分析されたデジタル画像は、前記レンズ材料において検出された不良の可視表示を含んでいるコンピュータ」に相当する。

オ 引用発明の「容器(16)は、イルミネーター(12)の直上に位置し、ビデオカメラ(22)は、容器(16)の直上に位置」することは、本件補正発明の「前記第1の紫外光源と前記カメラが同一直線上に配置される」ことに相当する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致し、次の各点で相違する。

(一致点)
「 コンタクトレンズ材料における欠陥を検出するためのシステムであって、
食塩水に浮かべた前記コンタクトレンズを検査するためのレンズおよびデジタル画像出力を有するカメラであって、前記デジタル画像出力は、光のスペクトルのうちの前記コンタクトレンズ材料の蛍光発光の放出によって生み出される部分に対応する色スペクトルの光によって生み出される画像のみを含むカメラと、
前記コンタクトレンズを照明して、該コンタクトレンズにおける蛍光発光の放出を励起するため、前記コンタクトレンズの一方側から光を提供する第1の紫外光源と、
関連メモリと、前記カメラから出力されるデジタル画像を受け付けるための入力と、分析したデジタル画像を表す出力とを有するコンピュータであって、前記分析されたデジタル画像は、前記レンズ材料において検出された不良の可視表示を含んでいるコンピュータとを備え、
前記第1の紫外光源と前記カメラが同一直線上に配置されるシステム。」

(相違点1)
本件補正発明では、「迷光または光の他のスペクトルがカメラに取得されることがないようにするため、前記カメラと前記コンタクトレンズの間に配置される第1の光学フィルタ」を備えるのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

(相違点2)
第1の紫外光源が、本件補正発明では、「UV発光ダイオードのアレイ」を備え、コンタクトレンズの「上方」から光を提供するのに対し、引用発明では、その具体的な特定がなく、上記(3)対比ウで説明したとおり、「コンタクトレンズ(20)」の「真」下から「照射光」を「供給」する点。

(4)判断
上記各相違点について検討する。

ア 相違点1について

(ア)光源からの紫外光を検査対象物に励起光として照射し、検査対象物から発生する蛍光を検出器によって画像として検出する装置において、励起光や迷光等の余分な光を、検出器で検出されないように遮断する光学フィルタを、検出器と検査対象物の間に配置することは、引用文献2の技術事項、引用文献3?5の技術事項1にあるように周知技術である。

(イ)また、引用文献3?5の技術事項1には、得られる蛍光像のコントラストをより一層明瞭とするために、光学フィルタは、検出器が所望とする波長の光を専ら感知するものでない限り、かかる波長の光を専ら透過せしめ得るために装備することが望ましことが開示されている。

(ウ)そして、引用文献1には、(引1イ)に「あらゆる波長の光を使用して所望の蛍光を作り出すことができるが、異なる蛍光を発する物質(fluorescing entity)は励起エネルギーに対する異なる要求を有することに留意すべきである。紫外光がこの目的には便利であると考えられるのが一般的な場合である。なぜならば、多くの物質は紫外波長にさらされたとき可視できる蛍光を発する(exhibit)からである。更に、存在するイメージング装置の多くは可視光に反応するが、紫外波長には反応しない。しかしながら、興味の対象となる物質の多くは、低波長の可視光にさらされたとき、可視範囲中で蛍光を発するので、その様な条件下での本発明に使用することができる。イメージング装置(imaging equipment)により容易に検出することができる波長を有する励起光を使用したときには、適当なフィルターを使用するか・・・、イメージング装置の検出器に到達する望ましくない照射波長の強度を制限し、コントラストを改善することが一般的に有益であろう。」と記載されている。

(エ)よって、上記(イ)、(ウ)を踏まえると、引用発明のビデオカメラ(22)は、紫外線である照明光には反応しないが、一方で、コンタクトレンズ(20)が発する可視領域の一部の波長の蛍光のみに反応するものでもないといえることから、引用発明においてコントラストの向上のため上記周知技術を適用する動機があるといえる。

(オ)してみると、引用発明において、上記周知技術を適用し、ビデオカメラ(22)で検出可能な可視領域の波長の迷光等の余分な光を遮断する光学フィルタを、ビデオカメラ(22)とコンタクトレンズ(20)の間に配置することで、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点2について

(ア)引用文献2の技術事項には、光学検査対象電気回路上の欠陥位置412の画像を取得する光学ヘッド400において、少なくとも1つの同心リング上に配列された複数のLED414を備えるリング状光照射体は、検査対象電気回路415上で位置412を照射し、LED414は、紫外スペクトルの発光源であり、電気回路の基板部分から蛍光を発生させ、基板から発生した蛍光は、リング状光照射体の開口418を通過し、カメラ406のセンサー上に画像化されることが開示されている。

(イ)また、引用文献3?5の技術事項2には、光源からの紫外光をコンタクトレンズに励起光として照射し、コンタクトレンズから発生する蛍光を検出器によってレンズ蛍光像として検出する装置において、コンタクトレンズの上方に光源及び検出器を配置することも、また、コンタクトレンズの上方に光源/検出器、コンタクトレンズの下方に検出器/光源を配置することもできることが開示されていることから、引用文献3?5の技術事項2によれば、コンタクトレンズの蛍光検査において、コンタクトレンズの下から照明する透過照明にするか、コンタクトレンズの上から照明する落射照明にするかは、当業者が適宜選択し得ることであるといえる。

(ウ)そして、引用文献1には、(引1イ)に「1つの態様においては、システムに供給される照射光(illumination light)のみが、イメージ検知手段によっては検出されないが、レンズ中で蛍光を誘導し、それゆえ蛍光を発するレンズを暗いフィールドに対する明るい領域として現わす波長を有する光である。エッジの不規則さ(edge irregularity)を含むレンズ中の欠陥は、暗い(darker)又は黒い領域として現われ、レンズとレンズの欠陥との間には非常に高いコントラストが得られる。・・・別の態様においては、レンズを保持する容器又は担体(support)の少なくとも一部は、好ましくは使用する検出システム(ビデオカメラ、眼等)により検出されるがレンズの蛍光は誘導しない範囲の外の波長を有する照射光にさらすことにより蛍光を発するように作製される。レンズは明るい部分により囲まれた、暗いボディ(dark body)として現れ、欠陥はレンズ内の明るい領域として現れるだろう。」と記載され、要するに、上記「1つの態様」には、暗視野における明るいコンタクトレンズの暗い領域を欠陥として検出する技術(引用発明)、上記「別の態様」には、明視野における暗いコンタクトレンズの明るい領域を欠陥として検出する技術が開示されている。
そして、上記のいずれの態様も、ビデオカメラ(22)は、紫外線は検出せず、蛍光を検出するものであるから、コンタクトレンズ(20)の上下どちら側から照射しても、つまり、上からの落射照明でも、下からの透過照明でも、コンタクトレンズ(20)を含む容器(16)ごと照射さえすれば、コンタクトレンズ(20)の欠陥を検出できることは明らかである。このことは、引用文献1の請求項1(引1ア)において、光学部品(コンタクトレンズ)の上方から照射するか下方から照射するか、特定されていないことからも伺い知ることができる。
さらに、引用発明では、「紫外線」に対して「透明な容器(16)」を介してコンタクトレンズ(20)を照明する透過照明であるところ、引用文献1には、(引1イ)に「もちろん、本発明を使用した拡張された検査のために、あらゆる高価なかつ複雑な自動化システムを使用する必要はない。」と記載されていることを踏まえると、引用発明において、安価な容器を選択する観点により、容器(16)が紫外線に対して透明であることを問わない落射照明を選択する動機があるといえる。

(エ)してみると、上記(イ)及び(ウ)を踏まえると、引用発明において、引用発明と同様の蛍光による欠陥検出技術の分野に属する引用文献2に接した当業者が引用文献2の技術事項に鑑みて、イルミネーター(12)を、複数のUV-LEDを備えるリング状光照射体とし、コンタクトレンズ(20)の上方に配置することで、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、容易に想到し得ることである。

ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2の技術事項、及び上記周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(5)請求人の主張
請求人は、審判請求書において、「(イ)進歩性について
・・・光をレンズの上方から提供するようにカメラと光源を同一直線上に配置することに関して、引用文献1と引用文献2は開示をしておりません。すなわち、新請求項1は、引用文献1及び2に対して進歩性を有します。」と主張している。
上記主張について検討する。
確かに、請求人の主張のとおり「光をレンズの上方から提供するようにカメラと光源を同一直線上に配置すること」に関して、引用文献1と引用文献2は開示していない。
ここで、本件補正発明において追加された事項である「前記第1の紫外光源と前記カメラが同一直線上に配置される」について、審判請求書ではその補正根拠として図1を挙げている。そして、「前記第1の紫外光源と前記カメラが同一直線上に配置される」ことには、図1を説明する【0021】の「本発明は、複数の入射角での検査対象の包括的なUV光照明をもたらすために、紫外(UV)光源130または複数の紫外光源を、カメラ220のレンズ210の周囲のアレイに配置」する態様を含むものと理解できる。この理解は、本件補正発明を引用する請求項2の記載からも裏付けられる。
そして、上記(4)イで検討したとおり、引用文献3?5の技術事項2によれば、コンタクトレンズの蛍光検査において、透過照明にするか、落射照明にするかは、当業者が適宜選択し得ることであって、「ビデオカメラ(22)は、容器(16)の直上に位置」する透過照明方式の引用発明において、安価な容器を選択する観点により落射照明を採用する動機があることから、「少なくとも一つの同心リング上に配列された複数のLED414を備えるリング状光照射体を有」する落射照明方式の引用文献2の技術事項を適用することにより、「光をレンズの上方から提供するようにカメラと光源を同一直線上に配置する」ことは、当業者が容易に想到し得ることである。
してみると、引用発明において引用文献2の技術事項を適用することで、「光をレンズの上方から提供するようにカメラと光源を同一直線上に配置すること」は、当業者が容易に想到し得ることであるから、上記主張は採用できない。

(6)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2の技術事項、及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明
令和2年9月10日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和2年3月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
請求項1に係る原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特表平11-503232号公報
引用文献2:特表2007-528490号公報
引用文献3:特開2002-213925号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし3及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「第1の紫外光源」、「カメラ」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)、(6)に記載したとおり、引用発明、引用文献2の技術事項、及び引用文献2、3などに例示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献2の技術事項、及び引用文献2、3などに例示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2021-02-24 
結審通知日 2021-02-25 
審決日 2021-03-10 
出願番号 特願2016-225222(P2016-225222)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蔵田 真彦  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 渡戸 正義
▲高▼見 重雄
発明の名称 UV照明を用いるコンタクトレンズの欠陥の検査  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

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