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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1376496 |
審判番号 | 不服2020-14612 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-10-20 |
確定日 | 2021-07-26 |
事件の表示 | 特願2016-109968「熱電材料、熱電素子、光センサおよび熱電材料の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月 7日出願公開、特開2017-216388〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年6月1日の出願であって、平成29年9月29日に手続補正がされるとともに上申書が提出され、令和2年1月30日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年3月12日に手続補正がされるとともに意見書が提出され、令和2年8月31日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和2年10月20日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 令和2年10月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年10月20日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) 本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?12を補正して、補正後の特許請求の範囲の請求項1?16とするものであり、補正後の特許請求の範囲の請求項1と補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、各々次のとおりである。 (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「【請求項1】 SiおよびGeを含む第1の材料と、前記第1の材料とは異なる第2の材料とを含み、前記第1の材料および前記第2の材料の混合体中に分散された複数のナノ粒子を備えた熱電材料であって、前記第2の材料はAuであり、 前記熱電材料の結晶化率は16%以上であり、 前記熱電材料において、前記第2の材料の原子濃度(単位は原子%)をcとし、Geに対するSiの組成比をrとした場合に、前記第2の材料の原子濃度および前記組成比は、下記式(1)および(2)で表される関係式を満足し、 r≦0.62c-0.25 ・・・(1) r≧0.05c-0.06 ・・・(2) 前記組成比は0.56以上である、熱電材料。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和2年3月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 SiおよびGeを含む第1の材料と、前記第1の材料とは異なる第2の材料とを含み、前記第1の材料および前記第2の材料の混合体中に分散された複数のナノ粒子を備えた熱電材料であって、前記第2の材料はAuであり、 前記熱電材料において、前記第2の材料の原子濃度(単位は原子%)をcとし、Geに対するSiの組成比をrとした場合に、前記第2の材料の原子濃度および前記組成比は、下記式(1)および(2)で表される関係式を満足する、熱電材料。 r≦0.62c-0.25 ・・・(1) r≧0.05c-0.06 ・・・(2)」 2 補正の適否 本件補正のうち、請求項1に係る補正事項は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「熱電材料」の結晶化率、及び「Geに対するSiの組成比」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2015/093207号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「技術分野 [0001] この発明は、ナノ構造体からなる熱電材料およびこれを用いた熱電モジュールおよび光センサ、ならびにナノ構造体からなる熱電材料の製造方法に関する。」 「発明が解決しようとする課題 ・・・ [0015] この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、ナノ構造体からなる熱電材料において、より優れた熱電特性を実現することである。 ・・・ 発明の効果 [0017] 上記によれば、優れた熱電特性を発揮する、ナノ構造体からなる熱電材料を実現できる。」 「[0019] [本願発明の実施形態の説明] 最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。 [0020](1)本発明の一態様に係る熱電材料は、第1のバンドギャップエネルギーを有する複数の第1の半導体部材と、第1のバンドギャップエネルギーより大きい第2のバンドギャップエネルギーを有する第2の半導体部材とを備える。第1の半導体部材および第2の半導体部材は、キャリアの輸送方向に交互に並んで配置される。第1の半導体部材は、キャリアの輸送方向での幅が5nm以下であり、かつ、隣接する2つの第1の半導体部材の間のキャリアの輸送方向での距離が3nm以下である。 [0021] このようにすれば、ナノ構造体からなる熱電材料において、量子化方向を熱電材料のキャリアの輸送方向に一致させることができるため、導電率およびゼーベック係数の制御に量子効果を取り入れることができる。本発明者は、この知見に基づいて量子効果を発揮し得る最適な構造を検討した結果、量子化の結晶サイズを5nm以下とし、かつ隣接する結晶間のキャリア輸送方向での距離を3nm以下とする構造において、効果的に量子効果が発揮され、優れた熱電特性を実現できることを見出した。 [0022] (2)上記(1)に係る熱電材料において好ましくは、第1の半導体部材は5nm以下の粒径を有する量子ドットを構成し、第2の半導体部材は量子ドットが内部に分散配置された母材を構成する。これによれば、熱電材料は、母材中に量子ドット(ナノ粒子)が分散配置された量子網(ネット)の構造を有している。当該構造において、量子ドットの粒径はキャリア輸送方向における量子ドットの幅に相当する。量子ドットの粒径を5nm以下とすることにより量子効果が顕著となるため、良好な熱電特性が実現される。 [0023] (3)上記(2)に係る熱電材料において好ましくは、量子ドットの粒間隔は3nm以下である。これによれば、熱電材料は、母材中に5nm以下の粒径を有する量子ドットが3nm以下の粒間隔で分散配置された量子網の構造を有している。当該構造において、量子ドットの粒間隔はキャリア輸送方向における量子ドット間の距離に相当する。量子ドットの粒間隔を3μm以下とすることにより、隣接する2つの量子ドットの間で波動関数同士を結合できるため、量子効果が有効となり、良好な熱電特性が実現される。 [0024] (4)上記(2)または(3)に係る熱電材料において好ましくは、量子ドットは、母材元素および母材元素とは異なる異種元素とを含むナノ粒子である。母材元素はSiおよびGeであり、異種元素はAu、Cu、BまたはAlである。このようにすれば、SiおよびGeからなる母材(アモルファスSiGe、アモルファスGeまたはアモルファスSi)中に、Au、Cu、BまたはAlを含むSiGeのナノ粒子が形成される。 [0025] (5)上記(1)?(4)のいずれかに係る熱電材料において好ましくは、熱電材料の結晶化率は45%以上である。これによれば、熱電材料は、母材中にナノ粒子を多く含んだ量子網構造となっているため、量子効果が発揮されて良好な熱電特性を実現できる。 ・・・ [0034] (14)本発明の一態様に係る熱電材料の製造方法は、母材元素で構成される母材と、母材元素および母材元素とは異なる異種元素が関与して作製される量子ドットとを含む熱電材料を製造する製造方法であって、異種元素を含む第1層と、異種元素を含まない第2層とを交互に積層する工程と、第1層と第2層とが積層された積層体をアニール処理することにより、母材中に量子ドットを形成する工程とを備える。アニール処理において形成される量子ドットは、平均粒径が5nm以下であり、平均粒間隔が3nm以下である。上記製造方法により製造されたナノ構造体の熱電材料は、十分な量子効果を発揮することができるため、優れた熱電特性を実現する。 ・・・ [0043] [本願発明の実施形態の詳細] 以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。 [0044] <実施の形態1> 1.熱電材料の構成 最初に、この発明の第1の実施の形態に係る熱電材料の基本的構成を説明する。図1は、量子井戸構造を有する熱電材料を模式的に示す斜視図である。図2は、量子細線構造を有する熱電材料を模式的に示す斜視図である。 [0045] 図1を参照して、量子井戸構造は、基板1の主表面上に、バンドギャップエネルギーが互いに異なる2つの半導体層2,3を交互に積層して形成される。半導体層2は、相対的にバンドギャップエネルギーが小さいため、量子井戸層を形成する。半導体層3は、相対的にバンドギャップエネルギーが大きいため、エネルギー障壁層を形成する。 [0046] 量子井戸構造は、価電子帯、伝導帯付近の電子状態が1次元方向(たとえば厚さ方向(図中のz方向))に量子化されてエネルギー準位が離散化した状態を得ることができる構造である。量子井戸層2内の電子のエネルギーは離散化され、サブバンドと呼ばれるエネルギー状態に分かれている。 [0047] 図2を参照して、量子細線構造は、バンドギャップエネルギーが互いに異なる2つの半導体部材6,7を同心円状に並べて形成された線材5を備える。線材5は、長手方向(図中のx方向)に垂直な方向(たとえば厚さ方向(図中のz方向))に複数並べて配置される。各線材5において、第1の半導体部材6は、相対的にバンドギャップエネルギーが小さいため、量子細線を形成する。第2の半導体部材7は、相対的にバンドギャップエネルギーが大きいため、エネルギー障壁層を形成する。 [0048] 量子細線構造は、価電子帯、伝導帯付近の電子状態が2次元方向に量子化されてエネルギー準位が離散化した状態を得ることができる構造である。量子細線構造は、離散化したサブバンド構造をz方向以外に、y方向にも有することができ、エネルギー変換を効果的に行なうことができる。 [0049] この実施の形態では、量子井戸構造および量子細線構造における量子化方向を、熱電材料におけるキャリアの輸送方向(図中のz方向)に一致させる。キャリアの輸送方向とは、熱電材料に生じる温度差によってキャリアが移動する方向を示す。これにより、熱電材料の導電率σおよびゼーベック係数Sの制御に対して、状態密度の量子的変化を取り入れることができる。 [0050] 図3に、量子効果による状態密度の変化を示す。図3に示すように、電子のエネルギレベルが高くなると、状態密度が増加する。量子井戸構造がキャリア輸送方向に対して量子化されていれば、この状態密度の量子的増加、すなわち量子効果を導電率σおよびゼーベック係数Sの制御に積極的に取り入れることができる。 ・・・ [0054] 上記式(4),(5)に対して図3に示す量子化状態における状態密度を取り入れて計算する。図4に導電率σおよびゼーベック係数Sの計算結果を示す。計算はバルク構造、量子井戸構造および量子細線構造の各々について行なった。 [0055] さらに比較のために、量子効果による状態密度の変化を取り入れない場合の導電率σおよびゼーベック係数Sを計算した。つまりこれは、キャリアの量子化方向に対して垂直な方向、すなわち、図1のx,y方向または図2のx方向に、キャリアを輸送することに相当する。この計算は、非特許文献1に記載される導電率σおよびゼーベック係数Sの算出式を用いることにより、バルク構造、量子井戸構造および量子細線構造の各々について行なった。図5に計算結果を示す。なお、計算は移動度を変数としている。 [0056] 図4において、縦軸はゼーベック係数Sを示し、横軸は導電率σを示す。図4において、k1はバルク構造におけるゼーベック係数Sおよび導電率σの関係を示し、k2は量子井戸構造におけるゼーベック係数Sおよび導電率σの関係を示し、k3は量子細線構造におけるゼーベック係数Sおよび導電率σの関係を示す。 [0057] 図5において、縦軸はゼーベック係数Sを示し、横軸は導電率σを示す。図5は、バルク構造、量子井戸構造および量子細線構造におけるゼーベック係数Sおよび導電率σの関係を示す。 [0058] まず、図5の比較例を参照して、同一の移動度において、ゼーベック係数Sおよび導電率σの関係は、量子井戸構造および量子細線構造のいずれも、バルク構造とほとんど同じものとなっている。この結果から十分な量子効果が生じていないことが分かる。一方、図4を参照して、量子効果による状態密度の変化を取り入れた場合、量子細線構造のゼーベック係数Sは、バルク構造および量子井戸構造のゼーベック係数Sに比べて向上していることが分かる。 [0059] なお、図4では、量子井戸構造のゼーベック係数Sはバルク構造のゼーベック係数Sとほとんど変わらない結果となっているが、量子井戸層2(図1)の厚みを薄くすることで、ゼーベック係数Sが向上することが確認された。図6に、量子井戸構造における量子井戸層の厚みと出力因子(power factor)との関係を計算した結果を示す。出力因子とは、無次元性能指数ZTの分子S2σに相当し、熱電性能のうちの電気的な寄与を表わす。図6において、縦軸は出力因子の最大値S2σ_maxを示し、横軸は量子井戸層の厚みaを示す。k4はバルク構造における出力因子の最大値S2σ_maxを示し、k5は量子井戸構造における出力因子の最大値S2σ_maxを示す。図6を参照して、量子井戸層の厚みが5nm以上のとき、量子井戸構造の出力因子は、バルク構造の出力因子と略同じ値をとる。これに対して、量子井戸層の厚みを5nmよりも狭くすると、量子井戸構造の出力因子は増大し、バルク構造の出力因子よりも高い値を示している。このように量子井戸構造においては、量子井戸層の厚みを5nm以下にすることで、量子効果が有効となることが確認された。 ・・・ [0062] 以上に述べたように、本発明者は、熱電材料におけるキャリア輸送方向を、量子井戸構造および量子細線構造における量子化方向に一致させることにより、量子効果、つまり状態密度の量子的増加を生じさせることができるため、ゼーベック係数Sを向上できることを見出した。そして、本発明者は、量子井戸構造および量子細線構造のそれぞれについて、十分な量子効果を生じさせるために最適な構造を見出し本発明に至った。詳細には、量子井戸構造においては、量子井戸層の厚みを5nm以下にすることが好ましいことを見出した。また量子細線構造においては、量子細線の線径を5nm以下にすることが好ましいことを見出した。 [0063] 図8は、この発明の第1の実施の形態に係る熱電材料の構成を示す斜視図である。この実施の形態に係る熱電材料は、上記の知見に基づいて形成された量子細線構造を有している。 [0064] 図8を参照して、熱電材料10は、複数の線材5を長手方向(x方向)に垂直な方向(z方向およびx方向)に並べて配置して形成される。複数の線材5の各々は、図2に示した量子細線構造を有している。 [0065] 線材5において、量子細線6の線径rは5nm以下とすることが好ましい。これにより量子効果を発揮させることができる。 [0066] なお、エネルギー障壁層7の径方向における厚みwは1.5nm以下とすることが好ましい。このエネルギー障壁層7の厚みwは、量子細線6の側面からのキャリアの存在確率を基に導出したものである。本発明者は、隣り合う量子細線6の間のキャリアの輸送方向での距離2wを3nm以下とすることで、隣り合う量子細線6の間でキャリアの波動関数を結合できることを見出した。エネルギー障壁層7の厚みの詳細については後述する。」 「[0075] <実施の形態2> 1.熱電材料の構成 量子ドットとは、粒径が数ナノメートル程度と小さい半導体のナノ粒子のことである。ナノ粒子が、十分に厚くて高いエネルギー障壁層で3次元的に囲まれている場合、量子ドットとなる。理想的な量子ドットの場合、上記式(4)中のキャリア速度v=0となるため導電率σ=0となってしまい、熱電材料に不向きである。 [0076] この実施の形態では、量子ドット(ナノ粒子)の間隔を狭めることにより、量子ドット間でキャリアの波動関数を結合させる。量子ドット構造は、価電子帯、伝導帯付近の電子状態が3次元方向に量子化されてエネルギー準位が離散化した状態を得ることができる構造である。量子ドット構造は、離散化したサブバンド構造をz方向以外に、x方向にもy方向にも有することができ、エネルギー変換を効果的に行なうことができる。この量子ドットの量子効果に従い、量子ドット間におけるキャリアの輸送が可能となる。図10は、この発明の第2の実施の形態に係る熱電材料20の構成を示す模式図である。以下の説明では、図10に示す量子ドット構造を「量子網(ネット)構造」とも称する。 [0077] 図10を参照して、量子ネット構造において、量子ドット(ナノ粒子)30は本発明における「第1の半導体部材」を構成する。また、量子ドット30が内部に分散配置された母材は、エネルギー障壁層を形成し、本発明における「第2の半導体部材」を構成する。熱電材料20において、量子ドット30と母材とはキャリアの輸送方向に交互に並んで配置される。これにより、量子化方向を熱電材料20のキャリアの輸送方向に一致させることができるため、量子効果を発揮させることができる。 [0078] 量子ドット(ナノ粒子)30においては、価電子帯、伝導帯の電子状態が3次元方向に量子化されてエネルギー準位が離散化した状態を得ることができる。量子ドット30の粒径Xは、十分な量子効果を生じさせるのに適切な粒径とすることが好ましい。また、量子ドット30の粒間隔G(隣接する量子ドット30一方の端面から他方の端面までの最短距離に相当)は、キャリアの波動関数32が結合するのに適切な間隔とすることが好ましい。本発明者は、3次元有限ポテンシャル量子ドットのシュレディンガー方程式を解くことで、量子化に適切な量子ドット30の粒径Xおよび粒間隔Gを検討した。図11および図12にその検討結果を示す。 [0079] 図11は、量子ドットの粒径と量子準位との関係を示す図である。図11の縦軸は量子ドットの量子準位(第一準位および第二準位)を示し、横軸は量子ドットの粒径を示す。図11を参照して、量子ドットの粒径が20nmより小さいときに量子準位が形成されていることが分かる。これにより、量子ドットの粒径が20nmより小さくなると、量子効果が得られると考えられる。特に量子ドットの粒径が5nm以下であれば、量子効果が顕著となるため好ましい。 [0080] 図12は、量子ドットの端面からの距離とキャリアの存在確率との関係を示す図である。図12の縦軸はキャリアの存在確率を示し、横軸は量子ドットの端面からの距離を示す。図12では、粒径が異なる4種類の量子ドット(s軌道で粒径が2nm,3nm,4nm、p軌道で粒径が4nm)の各々についてシュレディンガー方程式を解くことにより、量子ドットの端面からのキャリアの存在確率を算出した。 [0081] 図12を参照して、キャリアの存在確率は、量子ドットの端面が最も高く、端面から離れるにつれて低下する。4種類の量子ドットはいずれも端面からの距離が2nmに達したときに存在確率が略0となっている。これによれば、量子ドットの端面からの距離が1.5nm以下となる範囲内であればキャリアが存在することが分かる。したがって、近接する2つの量子ドット間において、一方の量子ドットの端面と他方の量子ドットの端面との間隔を3nm(=1.5nm×2)以下とすれば、これら2つの量子ドット間で波動関数同士を結合できるものと考えられる。 [0082] 以上に述べたように、第2の実施の形態に係る量子ネット構造は、量子ドットの粒径が5nm以下であり、かつ量子ドットの粒間隔が3nm以下であることが好ましい。このような量子ネット構造からなる熱電材料において、量子ドットの粒径はキャリアの輸送方向における量子ドットの幅に相当し、量子ドットの間隔はキャリア輸送方向における量子ドット間の距離に相当する。なお、第1の実施の形態に係る熱電材料において、図8に示した量子細線構造におけるエネルギー障壁層7の厚みwを1.5nm以下とすることは、この量子ドットの粒間隔に依拠している。 [0083] 2.熱電材料の製造方法 次に、この発明の第2の実施の形態に係る熱電材料の製造方法を説明する。 [0084] 量子ネット構造を有する熱電材料は、母材元素で構成される半導体材料からなる母材中に、母材元素と母材元素とは異なる異種元素とを含むナノ粒子を形成することにより製造される。ナノ粒子の製造方法は、異種元素を含む第1層と、異種元素を含まない第2層とを交互に積層する積層工程と、第1層および第2層が積層された積層体をアニール処理して、母材中にナノ粒子を形成するアニール工程とを備える。 [0085] 母材となる半導体材料としては、シリコンゲルマニウム(例えばSiGe)、ビスマス・テルル系(例えばBi_(2)Te_(3),Bi_(2)Sb_(3),Pb_(2)Te_(3))、マグネシウム・シリサイド系(例えばMgSi_(2))、チタン酸ストロンチウム系(例えばSrTiO_(3),LaSrTiO_(3),LaSrTiO_(3):NiMO,LaSrCuO_(4),NdCeCuO_(4))、鉄シリサイド系(例えばFeSi_(2),FeMnSi_(2),FeCoSi_(2))、・・・、窒化物半導体(例えばGaN,InGaN,AlN,InAlN,InAlGaN)等が例示される。 [0086] 母材がシリコンゲルマニウムである場合、母材元素はSiおよびGeであり、異種元素としては、金(Au),銅(Cu),ボロン(B),アルミニウム(Al),リン(P)等が例示される。母材がビスマス・テルル系である場合、母材元素はBiおよびTeまたはPbであり、異種元素としてはAu,Cu,B,Al等が例示される。母材がマグネシウム・シリサイド系である場合、母材元素はMgおよびSiであり、異種元素としてはAu,Cu,B,Al,P等が例示される。母材が窒化物半導体である場合、母材元素はGaおよびNが少なくとも含まれており、異種元素としてはIn(インジウム),Al等が例示される。 [0087] 積層工程は、分子線エピタキシー法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)、電子ビーム法(EB:Electron Beam)、スパッタ法、有機金属気相成長法(MOVPE:Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy)、蒸着法等によって各層を積層することができる。第1層における異種元素の原子濃度は、好ましくは0.5?50原子%である。第1層は単層であっても、多層であってもよい。積層工程において、母材元素の全ては、第1層または第2層の少なくとも一方に含まれる。たとえば、母材がシリコンゲルマニウムである場合、第1層に母材元素としてGeが含まれ、第2層に母材元素としてSiが含まれるように形成することができる。積層工程において、第1層と第2層とを交互に積層し、たとえば第1層と第2層とがそれぞれ1?1000回積層されるようにすることができる。第1層の積層回数が、形成させるナノ粒子の厚み方向の個数とほぼ一致する。 [0088] アニール工程においては、第1層および第2層が積層された積層体をアニール処理して、母材中にナノ粒子を形成する。ここでいうアニール処理とは、第1層の原子が拡散するまで加熱した後に冷却する処理をいう。したがって、アニール処理の温度および時間は、第1層の材料によって異なる。また、アニール処理の温度、時間および昇温速度を制御することにより、ナノ粒子の形成の有無、および形成されるナノ粒子の粒径を調整することができる。 [0089] 積層工程とアニール工程とは独立して行なってもよいし、同時に行なってもよい。独立して行なう場合は、第1層と第2層とを交互に積層する積層工程が完了した後に、アニール工程を行なう。同時に行なう場合は、アニール処理の条件下で積層工程を行ない、積層工程において同時にアニール処理がなされるようにする。 [0090] 図13は、積層工程が1回終了した状態であって、アニール処理をまだ行なっていない状態の積層体を模式的に示す断面図である。この実施の形態では、母材はシリコンゲルマニウムであり、異種元素がAuであるものとする。 [0091] 積層工程においては、まずサファイア基板40を用意し、MBE法により、Ge、Au、Geの順に堆積させてアモルファスGe(a-Ge)層43/Au層44/アモルファスGe(a-Ge)層45からなる第1層42を形成する。その後Siを堆積させてアモルファスSi(a-Si)層からなる第2層46を形成する。Ge,Au,Siの各原料は、セル内において電子ビーム法で加熱し、分子線を作り出す。このような第1層42と第2層46との積層を60回繰り返して行ない、積層体を形成する。積層体の厚みは約300nmである。この実施の形態においては、堆積が容易であることから、第1層において、a-Ge層とAu層とを別の層としているが、第1層中にGeおよびAuが含まれるように形成される方法であれば、この堆積方法に限定されない。 [0092] その後、積層体にアニール処理を施すことにより、量子ドット(ナノ粒子)を形成する。アニール処理により、SiおよびGeからなる母材中に、Auを含むSiGeのナノ粒子が形成される。この実施の形態においてこのようにナノ粒子が形成される機構としては、まず第1層42中でAuSiよりも共晶点が低いAuGeが活性化し、その後第2層46に含まれるSiを取り込んでAuを含むSiGeのナノ粒子が形成されるものと解される。なお、SiGeのナノ粒子の周囲のSiおよびGeからなる母材は、アモルファスSiGe、アモルファスGe、またはアモルファスSiである。 [0093] アニール処理の温度は、200?800℃の範囲内から適宜選択することができるが、粒径が5nm以下のナノ粒子を得るためにはアニール処理の温度は、300℃?700℃であることが好ましい。また、アニール工程におけるアニール処理の時間は、たとえば1?120分とすることができる。アニール処理の温度を700℃とした場合、アニール処理の時間を15分とすることが好ましい。 [0094] ここで、形成されるナノ粒子の粒径Xは、第1層42の厚みT1、第2層46の厚みT2、第1層42に含まれる異種元素の原子濃度、積層体のアニール処理の条件等によって調整することができる。この実施の形態では、ナノ粒子の粒径Xを第1層42の厚みT1によって調整するものとする。 [0095] 図14は、積層工程における第1層の設計膜厚と、製造された試料中のナノ粒子の粒径との関係を示す図である。ナノ粒子の粒径XはX線解析(XRD)の測定結果に基づきシェラーの式により算出した。図14には、本実施の形態による製造方法により製造された複数の試料について、第1層42の設計膜厚T1と粒径Xのデータとを示す。なお、複数の試料のうちの一部の試料は第1層42および第2層46を分子線エピタキシー法(MBE法)で堆積し、残りの試料は第1層42および第2層46を電子ビーム法(EB法)により堆積した。図14に示す結果から最小二乗法により、式(6)に示す関係が導かれた。 [0096] [数4] X=(15±3)T_(1)-(33±11) (6) [0097] したがって、ナノ粒子の所望の粒径をX_(d)とした場合、積層工程において第1層42の厚さT_(1)は、上記式(6)を満たすように決定することが好ましい。このように決定した第1層42の厚さT_(1)を採用することにより、アニール工程を経て、ナノ粒子の平均粒径X_(m)が上記式(6)を満たすナノ粒子を形成することができる。なお、本明細書において、ナノ粒子の粒径とは、電子顕微鏡で得られた像(2次元平面投影像)から計測した粒子の長径をいう。なお、平均粒径とは、十分な数の粒子の粒径の算術平均をいう。本願においては、22個の粒子の粒径の算術平均を平均粒径として算出した。 [0098] また、形成されるナノ粒子の粒間隔Gは、第2層46の厚みT_(2)によって調整することができる。図15は、積層工程における第2層46の膜厚T_(2)と、試料中のナノ粒子の粒間隔Gとの関係を示す図である。ナノ粒子の粒間隔Gとして、電子顕微鏡(装置名:JEM-2100F、日本電子社製)を用いて、積層方向にFIB(Focused Ion Beam)で約100nmに薄片化した後に得た高分解TEM(Transmission Electron Microscopy)像および、FFT(Fast Fourier Transform)変換してナノ結晶の周期構造を際立たせる処理を行なったFFT像から実測して、平均の粒間隔Gを算出した。図15は、本実施の形態に係る製造方法により製造された複数の試料について、第2層46の膜厚T_(2)と粒間隔Gのデータとを示す図である。図15に示す結果から最小二乗法により式(7)に示す関係が導かれた。 [0099][数5] G=(2.3±0.9)T_(2)±(0.0±3) (7) [0100] したがって、ナノ粒子の所望の粒間隔をG_(d)とした場合、積層工程において第2層46の厚さT_(2)は、上記式(7)を満たすように決定することが好ましい。このように決定した第2層46の厚さT_(2)を採用することにより、アニール工程を経て、ナノ粒子の平均粒間隔G_(m)が上記式(7)を満たすナノ粒子を形成することができる。なお、本明細書において、ナノ粒子の粒間隔とは、電子顕微鏡で得られた像(2次元平面投影像)から計測した粒子の端から端までの最短距離をいう。なお、平均粒間隔とは、十分な数の粒子の粒間隔の算術平均をいう。本願においては、22個の粒子の粒間隔の算術平均を平均粒間隔として算出した。 [0101] 上述したように、第2の実施の形態に係る量子ネット構造において、量子ドット(ナノ粒子)の平均粒径X_(m)は好ましくは5nm以下であり、平均粒間隔G_(m)は好ましくは3nm以下である。このような粒径および粒間隔のナノ粒子を得るためには、第1層42の厚みT_(1)は好ましくは2.5nm以下であり、第2層46の厚みT_(2)は好ましくは1.4nm以下である。 [0102] 3.熱電材料の評価 複数の試料について、ゼーベック係数Sおよび導電率σを測定し、熱電材料として用いた場合の熱電特性を評価した。なお、複数の試料のうちの一部の試料は第1層および第2層を分子線エピタキシー法(MBE法)で堆積し、残りの試料は第1層および第2層を電子ビーム法(EB法)により堆積した。 [0103](ゼーベック係数および導電率の測定) 複数の試料について、熱電特性評価装置(装置名:ZEM3、アルバック理工社製)でゼーベック係数Sを測定した。また複数の試料について、導電率測定装置(装置名:ZEM3、アルバック理工社製)で導電率σを測定した。 [0104] 図16は、複数の試料の導電率σおよびゼーベック係数Sの計測結果を示す図である。図16の縦軸はゼーベック係数Sを示し、横軸は導電率σを示す。図16には比較のため、図5に示したバルク構造、量子井戸構造および量子細線構造における熱電特性の理論線を併せて示す。図中のk1はバルク構造におけるゼーベック係数Sおよび導電率σの関係を示し、k2は量子井戸構造におけるゼーベック係数Sおよび導電率σの関係を示し、k3は量子細線構造におけるゼーベック係数Sおよび導電率σの関係を示す。 [0105] 図16を参照して、複数の試料のうちの大部分がバルク構造と同等の熱電特性を示している中で、一部の試料は量子細線構造と同等の高い熱電特性を示している。 [0106] そこで、複数の試料の中からバルク構造と同等の熱電特性を示す試料S1と、良好な熱電特性を示す試料S2とを抽出し、これら2つの試料S1,S2の断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)で観察した。TEM観察は、アニール工程後の積層体を積層方向にFIBで薄片化した後に行なった。 [0107] 図17は、試料S1の高分解TEM像を示す。図18は、試料S2の高分解TEM像を示す。図17および図18において、実線で囲んだ領域は、結晶化していると推測される領域である。図17に示す試料S1の高分解TEM像において、結晶粒の粒径を実測すると、結晶粒の粒径は2?5nmであった。また、結晶粒の間隔を実測すると、結晶粒の間隔は5?8nmであった。 [0108] 一方、図18に示す試料S2の高分解TEM像において、結晶粒の粒径を実測すると、結晶粒の粒径は2?5nmであった。また、結晶粒の間隔を実測すると、結晶粒の間隔は1?3nmであった。この試料S2の結晶構造は、ナノ粒子が量子効果を発揮するのに理想的な結晶構造に近いものである。すなわち、試料S2では、この発明の第2の実施の形態による量子ネット構造が実現されているものと考えられる。 [0109] (結晶化率の算出) 第2の実施の形態による製造方法により製造された複数の試料について、ラマン散乱測定から結晶化率を算出した。結晶化率とは、ラマン分光測定スペクトルから求めた、アモルファスSiGe、アモルファスGeおよびアモルファスSiのピーク強度(Ia)に対する単結晶SiGeのピーク強度(Ic)の比(Ic/Ia)をいう。 [0110] 図19は、5つの試料についてラマン散乱測定から算出した結晶化率を示す図である。図19に示す結晶化率は、5つの試料S1?S5の各々について、複数の測定個所での結晶化率を算出し、その平均値を求めたものである。図中の黒四角は試料ごとの平均結晶化率を示す。 [0111] 図19を参照して、試料S1は図16および図17に示した試料S1に対応し、試料S2は図16および図18に示した試料S2に対応する。残りの試料S3?S5は、試料S1,S2に比較して熱電特性が劣るものである。バルク構造と同等の熱電特性を示す試料S1は結晶化率が41%であるのに対し、良好な熱電特性を示す試料S2は結晶化率が49%となっている。この評価結果によれば、良好な熱電特性を実現するためには、結晶化率が45%以上である必要があると考えられる。 ・・・ [0114] 以上のように、この発明の第2の実施の形態によれば、量子ネット構造を有する熱電材料において、量子ドット(ナノ粒子)の粒間隔を狭めて量子ドット間でキャリアの波動関数を結合させることにより、量子効果を発現させて熱電特性を向上させることができる。 [0115] さらに、上記熱電材料におけるナノ粒子の粒径を5nm以下とし、粒間隔を3nm以下とすれば、量子効果を有効に生じさせることができ、良好な熱電特性を実現することができる。 [0116] <実施の形態3> 1.熱電材料の構成 この発明の第3の実施の形態に係る熱電材料は、量子ネット構造(図10)を有しており、母材元素で構成される半導体材料からなる母材中に、母材元素と母材元素とは異なる異種元素とを含むナノ粒子を形成することにより製造される。第3の実施の形態に係る熱電材料は、第2の実施の形態に係る熱電材料とは、ナノ粒子を含む材料を支持する支持部をさらに備える点が異なる。第3の実施の形態に係る熱電材料は、支持部中に異種元素が拡散された構成を有している。このような構成は、以下に詳述するように、熱電材料の製造方法において、少なくとも最上部が異種元素を固溶可能な材料によって形成された基板体を用いることによって実現される。 [0117] 2.熱電材料の製造方法 この発明の第3の実施の形態に係る熱電材料の製造方法は、異種元素を含む第1層と、異種元素を含まない第2層とを交互に積層する積層工程と、第1層および第2層が積層された積層体をアニール処理して、母材中にナノ粒子を形成するアニール工程とを備える。 [0118] 第3の実施の形態において、積層工程は、基板体上に第1層と第2層とを交互に積層する工程である。かかる基板体は、第1層または第2層と接する最上部が、異種元素を固溶可能な材料によって形成されていることが好ましい。このような構成とすることにより、アニール処理により異種元素が拡散する際に、異種元素が基板体内にも拡散することが可能となり、特定の部分、特に第1層の基板体と接する部分に集中して異種元素が析出することを防ぐことができる。異種元素が特定の部分に集中して析出すると、かかる特定部分がリークパスを構成する場合がある。そのため、本発明の実施の形態に係る製造方法により製造したナノ粒子を含む積層体を熱電材料として用いる場合に、熱電特性を低下させる原因となり得る。なお、かかるリークパスによる熱電特性の低下は、熱電材料に生じさせる温度差が大きい場合、たとえば温度差が1Kより大きい場合に顕在化しやすい。したがって、上記最上部を有しない基板体によっても十分な熱電特性を得ることができる。特に熱電材料に生じさせる温度差が小さい場合、たとえば1K以下の場合には、上記最上部を有しない基板体によっても十分な熱電特性を得ることができる。 [0119] 上記した最上部を形成する材料は、アニール工程での処理条件下で、第1層に含まれる異種元素を固溶可能な材料であれば限定されることはなく、このような材料として、たとえば、Si、半導体、ガラス、セラミックス、PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))等の有機物を挙げることができる。ガラスとしては、たとえば、アモルファスのガラス、ポーラスのガラス等を挙げることができる。 ・・・ [0122] 以下、第3の実施の形態に係る製造方法の一例として、母材がシリコンゲルマニウムであり、異種元素がAuである場合の製造方法を説明する。第3の実施の形態に係る製造方法は、第2の実施の形態に係る製造方法とは、サファイア基板40の代わりに、基板体48を用いる点のみが異なる。 [0123] 図21は、積層工程が1回終了した状態であって、アニール処理をまだ行なっていない状態の積層体を模式的に示す断面図である。図21を参照して、基板体48は、サファイア基板40と、アモルファスSi(a-Si)層である最上層(最上部)41とからなる。基板体48は、まずサファイア基板40を用意し、その上にMBE法またはEB法によりSiを堆積させて最上層41を形成する。その他の工程は、第2の実施の形態と同様であるので説明を省略する。この実施の形態により製造されたナノ粒子を含む積層体は、最上層41にAuが拡散している構成である。 [0124] 3.実施例 [基板体における最上層の有無による効果を対比する実験] (試料S6?S8) 第1の実施形態または第3の実施形態に係る製造方法によりナノ粒子を形成した。具体的には、まず基板体を用意した。基板体は、サファイア基板のみからなる基板体と、サファイア基板上にアモルファスシリコン(a-Si)からなる最上層を設けた基板体とを準備した。そして、基板体上に、積層工程により、a-Ge層/Au層/a-Ge層からなる第1層を、各層の厚みが1.1nm/0.2nm/1.1nmで堆積し、その後Siを堆積させてa-Si層からなる第2層を1.0nmの厚みで堆積した。第1層中のAuの濃度は、3.3?4.7原子%とした。そして、第1層および第2層を積層する工程を40回繰り返して行なった。その後、積層体を窒素雰囲気のRTA炉(Rapid Thermal Anneal:高速アニール炉)で500℃の環境下に15分間放置してアニール処理を施しアニール工程を行ない、ナノ粒子を形成した。 [0125] 以下の表1に示すように、試料S6はサファイア基板のみからなる基板体を用い、試料S7はサファイア基板上に厚さ15nmの最上層を設けた基板体を用い、試料S8はサファイア基板上に厚さ30nmの最上層を設けた基板体を用いたものである。 [0126][表1] [0127] 以上のようにして作成した試料S6?S8の積層体について、電子顕微鏡(装置名:JEM-2100F、日本電子社製)を用いて明視野STEM(Scanning Transmission Electron Microscopy)像を取得した。図22(a)、(b)、(c)は、それぞれ試料S6,S7,S8について、サファイア基板40を含む部分の明視野STEM像を示す。図22(a)において、サファイア基板40の上の層中に黒く写っている部分がAuである。なお、STEM像において黒く写っている部分がAuであることは、STEM像のEDX(エネルギー分散型X線分光法)を取得することにより確認された。図22(a)に示されるように、サファイア基板40上に最上層を設けない場合は、第1層のサファイア基板40と接する部分にAuが集中して析出することが観察された。図22(b)、(c)においては、サファイア基板40上の最上層41中に、Auが拡散していることが確認され、最上層41との境界付近にAuが集中して析出する部分は見当たらなかった。なお、最上層41の厚さが15nmである試料S7においても、図22(b)に示すように最上層41中にAuが拡散し、Auが特定の部分に集中して析出することを防ぐことができることが確認された。したがって、最上層41の厚さが、試料S4における15nmの1/3である5nmである場合であっても、最上層41にAuを拡散させ、Auが特定の部分に集中して析出することを防ぐことができるものと予想することができた。 [0128] (熱起電力の測定) 試料S6および試料S8について、表面に二つの電極を設けて、二つの電極間に温度差をかけ熱電特性測定装置(装置名:RZ2001i、オザワ科学製)を用いて熱起電力を測定した。図23は試料S6の測定結果を示し、図24は、試料S8の測定結果を示す。図23および図24に示す熱起電力のグラフの傾きがゼーベット係数を表す。試料S6を用いた場合は、図23に示すように、温度差が1K以下の場合に、2mV/Kのゼーベック係数が得られて高性能の熱電材料を構成できることがわかった。試料S8を用いた場合は、図24に示すように、4Kを超える温度差が生じた場合であっても、1.3mV/Kのゼーベック係数が得られて高性能の熱電材料を構成できることがわかった。 ・・・ [0130] [実施例1] 第3の実施形態に係る製造方法によりナノ粒子を形成した。具体的には、サファイア基板上にアモルファスシリコン(a-Si)からなる厚さ30nmの最上層を形成した。その上に積層工程において、a-Ge層/Au層/a-Ge層からなる第1層を、各層の厚みが1.1nm/0.2nm/1.1nmであり合計2.4nmとなるように堆積し、その後Siを堆積させてa-Si層からなる第2層を、厚みが1.0nmとなるように堆積した。そして、第1層および第2層を積層する工程を40回繰り返して行なった。なお、第1層中のAuの原子濃度は4.7原子%とした。その後、積層体を窒素雰囲気のRTA炉で500℃の環境下に15分間放置してアニール処理を施しアニール工程を行なった。なお、ナノ粒子の所望の粒径X_(d)を5nm、ナノ粒子の所望の粒間隔G_(d)を3nmとしたので、本実施例における第1層の厚さT_(1)の2.4mmは、式(6)を満たすように決定されており、第2層の厚さT_(2)の1.0nmは、式(7)を満たすように決定されている。 [0131] 積層工程後であってアニール工程前の積層体と、アニール工程後の積層体について、電子顕微鏡(装置名:JEM-2100F、日本電子社製)を用いて明視野STEM像を取得した。図26(a)は、アニール工程前の積層体のサファイア基板40と、最上層41とを含む積層部分の拡大像を示す。図26(b)は、アニール工程後の積層体のサファイア基板40と、最上層41とを含む部分の積層部分の拡大像を示す。図26(a),(b)からわかるように、アニール工程を行なっても、Auは最上層41の境界付近に集中的に析出することはなく、最上層41に拡散しているのが確認された。本実施例により製造された積層体は、上記試料S8と同じものであり、したがって、図24に示す熱電特性を示した。 [0132] 以上のように、この発明の第3の実施の形態によれば、熱電材料は、基板体の最上層(最上部)に異種元素が拡散している構成を有している。この最上層は、ナノ粒子を含む材料を支持する支持部を構成する。基板体が最上層および基板(たとえばサファイア基板)からなる積層体である場合、支持部である最上層は、基板とナノ粒子含む材料との間に設けられている。一方、基板体が単体(たとえばSi基板)である場合、支持部は、ナノ粒子含む材料が形成される主面を含む最上部に少なくとも設けられる。いずれの場合においても、支持部は、異種元素を固溶可能な材料によって形成されている。すなわち、異種元素は支持部中に拡散することが可能である。このような構成においては、特定の部位に異種元素が集中して析出することがないため、リークパスの形成を防止することができる。これにより、熱電材料に生じさせる温度差を大きくした場合であっても、高いゼーベック係数を得ることができる。」 「 請求の範囲 [請求項1] 第1のバンドギャップエネルギーを有する複数の第1の半導体部材と、 前記第1のバンドギャップエネルギーより大きい第2のバンドギャップエネルギーを有する第2の半導体部材とを備え、 前記第1の半導体部材および前記第2の半導体部材は、キャリアの輸送方向に交互に並んで配置され、 前記第1の半導体部材は、前記キャリアの輸送方向での幅が5nm以下であり、かつ、隣接する2つの前記第1の半導体部材の間の前記キャリアの輸送方向での距離が3nm以下である、熱電材料。 [請求項2] 前記第1の半導体部材は、5nm以下の粒径を有する量子ドットを構成し、 前記第2の半導体部材は、前記量子ドットが内部に分散配置された母材を構成する、請求項1に記載の熱電材料。 [請求項3] 前記量子ドットの粒間隔は3nm以下である、請求項2に記載の熱電材料。 [請求項4] 前記量子ドットは、母材元素および前記母材元素とは異なる異種元素とを含むナノ粒子であり、 前記母材元素はSiおよびGeであり、 前記異種元素はAu、Cu、BまたはAlである、請求項2または請求項3に記載の熱電材料。 [請求項5] 前記熱電材料の結晶化率は45%以上である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の熱電材料。」 (イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 引用文献1に記載された技術は、ナノ構造体からなる熱電材料に関するものであり、より優れた熱電特性を実現することを課題としたものであること([0001]、[0015])。 b また、複数の第1の半導体部材と第2の半導体部材とを備える熱電材料に関するものであり、前記第1の半導体部材は、5nm以下の粒径を有する量子ドットを構成し、前記第2の半導体部材は、前記量子ドットが内部に分散配置された母材を構成し、前記量子ドットの粒間隔は3nm以下であり、前記量子ドットは、母材元素および前記母材元素とは異なる異種元素とを含むナノ粒子であり、前記母材元素はSiおよびGeであり、前記異種元素はAu、Cu、BまたはAlであり、前記熱電材料の結晶化率は45%以上であること([0022]、[0023]、請求項1?5)。 c 試料S6?S8は、第1の実施形態または第3の実施形態に係る製造方法によりナノ粒子を形成するものであり、a-Ge層/Au層/a-Ge層からなる第1層を、各層の厚みが1.1nm/0.2nm/1.1nmで堆積し、その後Siを堆積させてa-Si層からなる第2層を1.0nmの厚みで堆積し、そして、第1層および第2層を積層する工程を繰り返して行なう積層工程と、その後、第1層および第2層が積層された積層体をアニール処理して、母材中にナノ粒子を形成するアニール工程とを備えるものであり、第1層中のAuの濃度は、3.3?4.7原子%としたものであること。 [実施例1]は、第3の実施形態に係る製造方法により、ナノ粒子を形成するものであり、a-Ge層/Au層/a-Ge層からなる第1層を、各層の厚みが1.1nm/0.2nm/1.1nmであり合計2.4nmとなるように堆積し、その後Siを堆積させてa-Si層からなる第2層を、厚みが1.0nmとなるように堆積し、そして、第1層および第2層を積層する工程を繰り返して行なう積層工程と、第1層および第2層が積層された積層体をアニール処理して、母材中にナノ粒子を形成するアニール工程とを備えるものであり、第1層中のAuの原子濃度は4.7原子%としたものであること([0117]、[0124]、[0130])。 (ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「複数の第1の半導体部材と第2の半導体部材とを備える熱電材料であって、 前記第1の半導体部材は、5nm以下の粒径を有する量子ドットを構成し、 前記第2の半導体部材は、前記量子ドットが内部に分散配置された母材を構成し、 前記量子ドットの粒間隔は3nm以下であり、 前記量子ドットは、母材元素および前記母材元素とは異なる異種元素とを含むナノ粒子であり、前記母材元素はSiおよびGeであり、前記異種元素はAuであり、 前記熱電材料の結晶化率は45%以上であり、 当該熱電材料の製造方法は、 a-Ge層/Au層/a-Ge層からなる第1層を、各層の厚みが1.1nm/0.2nm/1.1nmであり合計2.4nmとなるように堆積し、その後Siを堆積させてa-Si層からなる第2層を、厚みが1.0nmとなるように堆積し、そして、第1層および第2層を積層する工程を繰り返して行なう積層工程と、 第1層および第2層が積層された積層体をアニール処理して、母材中にナノ粒子を形成するアニール工程とを備えるものであり、 第1層中のAuの原子濃度は3.3?4.7原子%とした、 熱電材料。」 イ 引用文献2 (ア)同じく原査定で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、TAKIGUCHI, Hiroaki et al.,“Nano Structral and Thermoelectric Properties of SiGeAu Thin Films”,Japanese Journal of Applied Physics,The Japan Society of Applied Physics,2011年,Vol. 50,pp. 041301-1-041301-5(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。(翻訳文は合議体による。) 「SiGeAu thin films exhibit large thermoelectric power. Recently, the formation of SiGe nano crystal has been confirmed after annealing. In this study, we investigated the relationship between the size of the nano crystal and thermoelectric power. SiGe nano crystals were fabricated by the crystallization of amorphous SiGeAu thin films. The grain size of SiGe was around 6 nm when Au composition was 2.2 at.%. The grain size decreased with increasing Au composition up to 2.2 at.% due to metal-induced crystallization, and increased depending on Au composition over 2.2 at.% due to liquid phase crystallization. When the grain size was around 6 nm, the thin films exhibited large thermoelectric power (4.8mVK^(-1)) and power factor (2.4×10^(-2)W^(-1)K^(-2)). Therefore, the grain size of SiGe around 6 nm is important for obtaining the large thermoelectric power and power factor. These results indicate that the quantum size effect enhances the thermoelectric power and power factor of SiGeAu thin films.」(pp. 041301-1上欄1?7行) (「SiGeAu薄膜は大きな熱電出力を示す。最近、SiGeナノ結晶の形成がアニーリング後に確認された。本研究では、ナノ結晶のサイズと熱電電力の関係を調査した。SiGeナノ結晶は、アモルファスSiGeAu薄膜の結晶化によって製造された。Au組成が2.2at.%のとき、SiGeの粒径は約6nmであった。粒径は、金属誘起結晶化によって、2.2at.%まではAu組成が大きくなるにつれて減少し、液相結晶化によって、2.2at.%以上では、Au組成に応じて増加した。粒径が約6nmのとき、薄膜は大きな熱電電力(4.8mVK^(-1))と力率(2.4×10^(-2)Wm^(-1)K^(-2))を示した。したがって、6nm付近のSiGeの粒径が、大きな熱電電力と力率を得るためには、重要である。これらの結果は、量子サイズ効果がSiGeAu薄膜の熱電電力と力率を高めることを示す。」) 「2. Experimental Procedure The samples were prepared in an ultrahigh-vacuum evaporation system, as same as previous papers.^(5,9)) The sample preparation system had two evaporation sources, that employed two electron beam guns: Au dissolved Ge and Si. Artificial superlattice Si/(Ge+Au) thin film samples were prepared by an independent shutter operation with the simultaneous evaporation of two components. The Si and (Ge+Au) layer thicknesses were 0.6 and 2.0 nm, respectively. ・・・ The composition was measured with a X-ray fluorescent analyzer (Rigaku RIX2100). The composition ratio of Si to Si+Ge was kept almost constant (40-50 at. %). The thin films were annealed in inert gas using an infraredimage furnace. The annealing temperature was 800 K. ・・・」(pp. 041301-1右欄11?40行) (「2.実験手順. 試料は、以前の論文^(5,9))と同じように、超高真空蒸着システムに準備された。試料準備システムには、2つの蒸着源があり、それは、Au溶解GeとSiの2つの電子ビーム銃を使用するものである。人工超格子Si/(Ge+Au)薄膜試料は、2つの成分を同時に蒸着させる独立したシャッター操作によって準備された。Si及び(Ge+Au)層の厚さは、それぞれ0.6及び2.0nmであった。・・・組成は、蛍光X線分析装置(Rigaku RIX2100)で測定された。Si+Geに対するSi組成比は、ほぼ一定(40-50at.%)であった。 薄膜は、赤外線画像炉を使用して不活性ガス中でアニールされた。アニール温度は800Kであった。」) 「4. Conclusions We have investigated the Au composition dependence of the structural and thermoelectric properties of SiGeAu thin films. The grain size changed with Au composition. The grain size decreased with increasing Au composition up to 2.2 at.% due to metal-induced crystallization, and increased depending on Au composition over 2.2 at.% due to liquid phase crystallization. The minimum grain size of nc-SiGe was around 6 nm at 2.2 at.% of Au composition. The enhancement of thermoelectric power was found when the grain size of nc-SiGe was around 6 nm. The maximum thermoelectric power and power factor were 4.8mVK^(-1 )and 2:4×10^(2) Wm^(-1) K^(-2 )at 700 K. The power factor is one order larger than the value reported for bulk SiGe. The thermoelectric power and power factor decreased with increasing grain size of SiGe. Therefore, the nc-SiGe grain size around 6 nm is important for attaining the high thermoelectric power and power factor. The enhancement of the thermoelectric power and power factor might be due to the quantum size effect.」(pp. 041301-5左欄13?32行) (「4.結論 SiGeAu薄膜の構造及び熱電特性のAu組成依存性を調査した。粒径はAu組成によって変化した。粒径は、金属誘起結晶化によって、2.2at.%まではAu組成が大きくなるにつれて減少し、液相結晶化によって、2.2at.%以上では、Au組成に応じて増加した。nc-SiGeの最小粒径は、Au組成の2.2at.%で約6nmであった。nc-SiGeの粒径が約6nmのときに、熱電電力が高められることが見られた。最大熱電電力と力率は、700Kで4.8mVK^(-1)と2.4×10^(-2)Wm^(-1)K^(-2)であった。力率は、バルクSiGeで報告された値よりも1桁大きくなった。熱電電力と力率は、SiGeの粒径が大きくなるにつれて減少した。したがって、6nm付近のnc-SiGe粒径は、高い熱電出力と力率を達成するために重要である。熱電電力と力率が高められることは、量子サイズ効果による可能性がある。」) (イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。 「アモルファスSiGeAu薄膜の結晶化によって製造されたSiGeナノ結晶を含むSiGeAu薄膜であって、Si+Geに対するSiの組成比が40-50at.%、すなわちGeに対するSiの組成比が0.67?1.0であるSiGeAu薄膜において、大きな熱電出力が示されたこと。」 ウ(ア)本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2011-527517号公報(以下「周知例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 シリサイド及び/又はゲルマニドのナノ介在物が内部に分散しているSiGeマトリックスを含むナノコンポジット物質。 【請求項2】 前記ナノ介在物が、下記の式(I): Si_(n)Ge_(m)A_(p) (I) に対応する物質から作製され、ここで、Aは、遷移金属、ランタニド、アクチニドから選択される化合物、n、m、pは整数であり、n≧0、m≧0、p>0で、n及びmはともに0となることができない 請求項1に記載のナノコンポジット物質。 【請求項3】 前記マトリックスが、下記の式: Si_(x)Ge_((1-x)) で表すことができるSiGe合金ベースであり、ここで、xは、0?1の間に含まれる数であり、0<x<1である 請求項1又は請求項2に記載のナノコンポジット物質。 【請求項4】 0.3≦x≦0.8であり、好ましくは0.4≦x≦0.7である 請求項3に記載のナノコンポジット物質。 【請求項5】 前記ナノ介在物が、ナノ粒子である 請求項1?4のいずれか一項に記載のナノコンポジット物質。 【請求項6】 ナノ粒子が、100nm以下、好ましくは、1nm?100nmの大きさを有する 請求項1?5のいずれか一項に記載のナノコンポジット物質。」 「【0017】 本発明の第1の目的が、SiGeマトリックスと、該マトリックス内に分布する多数のナノサイズの介在物とを含むナノコンポジット物質である。 【0018】 マトリックスは、下記の式によって記述することができるSiGe合金ベースであり: Si_(x)Ge_((1-x)) 式中、xは、厳密に0?1の間に含まれる数であり、すなわち、0<x<1である。好ましくは、0.3≦x≦0.8であり、より好ましくは0.4≦x≦0.7である。」 (イ)上記記載から、周知例1には、次の技術が記載されていると認められる。 「SiGeマトリックスと、該マトリックス内に分布する多数のナノ粒子とを含むナノコンポジット物質であり、マトリックスは、式Si_(x)Ge_((1-x))によって記述することができるSiGe合金ベースであり、式中、xは、0.4≦x≦0.7、すなわち、Geに対するSiの組成比rは、0.67≦r≦2.3であること。」 エ(ア)本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2015-526895号公報(以下「周知例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【0018】 さまざまな実施形態において、熱電材料脚部105A,105Bは、さまざまなバルク材料および/またはナノ構造で形成することができる。該熱電材料は、限定するものではないが、ハーフホイスラー、Bi_(2)Te_(3),Bi_(2)Te_(3-x)Se_(x)(n型)/Bi_(x)Se_(2-x)Te_(3)(p型),SiGe(例えば、Si_(80)Ge_(20)),PbTe,スクッテルド鉱、Zn_(3)Sb_(4),AgPb_(m)SbTe_(2+m),Bi_(2)Te_(3)/Sb_(2)Te_(3)量子ドット超格子(quantum dot superlattices:QDSLs)、PbTe/PbSeTe QDSLs,PbAgTeおよびこれらの組合せのうちの1つを含むことができる。該材料は、圧縮されたナノ粒子またはバルクマトリクス材料中に埋め込まれたナノ粒子を含むことができる。」 (イ)上記記載から、周知例2には、次の技術が記載されていると認められる。 「バルクマトリクス材料中に埋め込まれたナノ粒子を含む熱電材料であり、該熱電材料は、SiGe(例えば、Si_(80)Ge_(20))、すなわち、Geに対するSiの組成比rが4.0であること。」 オ(ア)本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2014-165260号公報(以下「周知例3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【0036】 〔実施例2〕 本発明により、下記の手順および条件で、Mg_(2)(Si_(0.6)Ge_(0.4))/MgOナノコンポジット熱電変換材料を作製した。作製過程を図3に示す。 ・・・ 【0042】 これにより、(Si_(0.5)Ge_(0.5))コアおよび(Si_(0.5)Ge_(0.5))O_(2)シェルがMg蒸気と反応し、図示したようにMg_(2)(Si_(0.6)Ge_(0.4))ナノ粒子およびMgOナノ粒子(粒径40nm)が複合した複合ナノ粒子が生成した。 【0043】 <焼結> 複合ナノ粒子(粉末)をカーボンダイス中にセットし850℃で焼結した。 これにより、図3(3A)、(3B)に示すように、Mg_(2)(Si_(0.6)Ge_(0.4))マトリクス中にMgOナノ粒子が10vol%分散したナノコンポジット熱電変換材料が得られた。なお、焼結は700?1000℃で行うことができる。・・・」 (イ)上記記載から、周知例3には、次の技術が記載されていると認められる。 「Mg_(2)(Si_(0.6)Ge_(0.4))マトリクス中にMgOナノ粒子が分散したナノコンポジット熱電変換材料であり、該熱電変換材料は、Geに対するSiの組成比rが1.5であること。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明は、ナノ構造体からなる熱電材料において、より優れた熱電特性を実現することを課題とした、熱電材料に係る技術であり、本件補正発明と、技術分野及び課題が共通する。 (イ)a 本件補正発明の「SiおよびGeを含む第1の材料と、前記第1の材料とは異なる第2の材料とを含み、前記第1の材料および前記第2の材料の混合体中に分散された複数のナノ粒子を備えた熱電材料であって、前記第2の材料はAuであり」と、引用発明の「複数の第1の半導体部材と第2の半導体部材とを備える熱電材料であって、前記第1の半導体部材は、5nm以下の粒径を有する量子ドットを構成し、前記第2の半導体部材は、前記量子ドットが内部に分散配置された母材を構成し、前記量子ドットの粒間隔は3nm以下であり、前記量子ドットは、母材元素および前記母材元素とは異なる異種元素とを含むナノ粒子であり、前記母材元素はSiおよびGeであり、前記異種元素はAuであり」とを対比する。 b 本願の明細書には、次のように記載されている。(下線は、当審で付した。) 「【0062】 2.熱電材料の製造方法 次に、第1の実施形態に係る熱電材料の製造方法を説明する。 【0063】 以下の説明において、母材元素は「第1の材料」の一実施例に対応し、異種元素は「第2の材料」の一実施例に対応し、母材は「第1の材料および第2の材料の混合体」の一実施例に対応する。 【0064】 量子ネット構造を有する熱電材料10(図1参照)は、バンドギャップを有する母材元素と、母材元素とは異なる異種元素とを含んでいる。熱電材料10は、母材元素および異種元素の混合体である母材20中に、ナノ粒子30を形成することにより製造される。ナノ粒子30は少なくとも母材元素を含んでいる。 【0065】 ナノ粒子の製造方法は、異種元素(第2の材料)を含む第1層と、異種元素を含まない第2層とを交互に積層する積層工程と、第1層および第2層が積層された積層体をアニール処理して、母材中にナノ粒子を形成するアニール工程とを備える。 ・・・ 【0067】 母材がシリコンゲルマニウムである場合、母材元素はSiおよびGeであり、異種元素としては、金(Au),銅(Cu),ボロン(B),アルミニウム(Al),リン(P)等が例示される。 ・・・ 【0074】 図4は、積層工程が1回終了した状態であって、アニール処理をまだ行なっていない状態の積層体を模式的に示す断面図である。本実施形態では、母材はシリコンゲルマニウムであり、異種元素がAuであるものとする。 ・・・ 【0091】 したがって、母材がシリコンゲルマニウムであり、異種元素がAuである場合、異種元素の組成はAuの組成(原子濃度)に相当し、母材元素の組成比はGeに対するSiの組成比(Si/Ge)に相当する。 【0142】 <第2の実施形態> 5.キャリアの閉じ込め効果の制御 SiおよびGeからなる母材中に、Auを含むSiGeのナノ粒子が分散した熱電材料において、熱電材料におけるAuの組成、および組成比Si/Geの制御について更なる検討を進めた結果、本発明者は、量子ドットにおけるキャリアの閉じ込め効果が、組成比Si/Geによって変化することを見出した。第2の実施形態では、上記知見に基づいてキャリアの閉じ込め効果を発揮し得る最適な組成比Si/Geを検討した結果について説明する。」 したがって、本願の明細書の発明の詳細な説明には、<第1の実施の形態>及び<第2の実施の形態>として、母材がシリコンゲルマニウムであり、母材元素はSiおよびGeであり、異種元素がAuである場合、SiおよびGeからなる母材中に、Auを含むSiGeのナノ粒子が分散した熱電材料が記載されている。 c 一方、引用発明において、「複数の第1の半導体部材と第2の半導体部材とを備える熱電材料であって」、「前記第1の半導体部材は」、「量子ドットを構成し」、「前記第2の半導体部材は、前記量子ドットが内部に分散配置された母材を構成し」、「前記量子ドットは、母材元素および前記母材元素とは異なる異種元素とを含むナノ粒子であり、前記母材元素はSiおよびGeであり、前記異種元素はAuであ」るから、該熱電材料は、異種元素であるAuを含む、複数の第1の半導体部材と、SiおよびGeを母材元素とする第2の半導体部材である母材とを備え、前記第1の半導体部材は、ナノ粒子である量子ドットを構成し、前記量子ドットは、前記母材元素およびAuとを含み、前記母材は、前記量子ドットが内部に分散配置された母材を構成する、熱電材料であるといえる。 したがって、引用発明における「母材元素」、「Au」は、それぞれ本件補正発明の「第1の材料」、「第2の材料」に相当するといえるから、本件補正発明と引用発明とは、「SiおよびGeを含む第1の材料と、前記第1の材料とは異なる第2の材料とを含み、前記第1の材料および前記第2の材料の混合体中に分散された複数のナノ粒子を備えた熱電材料であって、前記第2の材料はAuであ」る点で共通するといえる。 (ウ)引用発明では、「前記熱電材料の結晶化率は45%以上」あるから、本件補正発明と引用発明とは、「前記熱電材料の結晶化率は16%以上」である点で共通する。 (エ)a 本件補正発明の「前記熱電材料において、前記第2の材料の原子濃度(単位は原子%)をcとし、Geに対するSiの組成比をrとした場合に、前記第2の材料の原子濃度および前記組成比は、下記式(1)および(2)で表される関係式を満足し、 r≦0.62c-0.25 ・・・(1) r≧0.05c-0.06 ・・・(2)」と、 引用発明の「当該熱電材料の製造方法は、 a-Ge層/Au層/a-Ge層からなる第1層を、各層の厚みが1.1nm/0.2nm/1.1nmであり合計2.4nmとなるように堆積し、その後Siを堆積させてa-Si層からなる第2層を、厚みが1.0nmとなるように堆積し、そして、第1層および第2層を積層する工程を繰り返して行なう積層工程と、第1層および第2層が積層された積層体をアニール処理して、母材中にナノ粒子を形成するアニール工程とを備えるものであり、第1層中のAuの原子濃度は3.3?4.7原子%とした」とを対比する。 b 引用発明において、「当該熱電材料の製造方法は、a-Ge層/Au層/a-Ge層からなる第1層を、各層の厚みが1.1nm/0.2nm/1.1nmであり合計2.4nmとなるように堆積し、その後Siを堆積させてa-Si層からなる第2層を、厚みが1.0nmとなるように堆積し、そして、第1層および第2層を積層する工程を繰り返して行なう積層工程と、第1層および第2層が積層された積層体をアニール処理して、母材中にナノ粒子を形成するアニール工程とを備えるものであり」、「第1層中のAuの原子濃度は3.3?4.7原子%とした」ものであるところ、熱電材料における、「Au(「第2の材料」)の原子濃度(単位は原子%)c=(3.3?4.7原子%)×2.4/(2.4+1.0)=2.3?3.3原子%であり、Geに対するSiの組成比r=1.0/2.2=0.45であると見積もられる。 したがって、式(1)の右辺=1.18?1.80となり、r以上であり、式(2)の右辺=0.055?0.105となり、r以下であるといえるから、引用発明は、本件補正発明における、「式(1)および(2)で表される関係式を満足」する。 よって、本件補正発明と引用発明は、「前記熱電材料において、前記第2の材料の原子濃度(単位は原子%)をcとし、Geに対するSiの組成比をrとした場合に、前記第2の材料の原子濃度および前記組成比は、下記式(1)および(2)で表される関係式を満足し、 r≦0.62c-0.25 ・・・(1) r≧0.05c-0.06 ・・・(2)」である点で一致するといえる。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「SiおよびGeを含む第1の材料と、前記第1の材料とは異なる第2の材料とを含み、前記第1の材料および前記第2の材料の混合体中に分散された複数のナノ粒子を備えた熱電材料であって、前記第2の材料はAuであり、 前記熱電材料の結晶化率は16%以上であり、 前記熱電材料において、前記第2の材料の原子濃度(単位は原子%)をcとし、Geに対するSiの組成比をrとした場合に、前記第2の材料の原子濃度および前記組成比は、下記式(1)および(2)で表される関係式を満足する、熱電材料。 r≦0.62c-0.25 ・・・(1) r≧0.05c-0.06 ・・・(2)」 <相違点> <相違点1> 「Geに対するSiの組成比」について、本件補正発明は、「前記組成比は0.56以上である」のに対し、引用発明では、Geに対するSiの組成比r=1.0/2.2=0.45であると見積もられ、本件補正発明の当該構成について特定されていない点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点1について (ア)上記(2)ア(ア)に摘記のとおり、引用文献1の段落[0096]には、ナノ粒子の粒径Xの式(6)が、同段落[0099]には、ナノ粒子の平均の粒間隔の式(7)が示されており、同段落[0101]には、「上述したように、第2の実施の形態に係る量子ネット構造において、量子ドット(ナノ粒子)の平均粒径X_(m)は好ましくは5nm以下であり、平均粒間隔G_(m)は好ましくは3nm以下である。このような粒径および粒間隔のナノ粒子を得るためには、第1層42の厚みT_(1)は好ましくは2.5nm以下であり、第2層46の厚みT_(2)は好ましくは1.4nm以下である。」と記載されている。 また、同段落[0130]には、「本実施例における第1層の厚さT_(1)の2.4mmは、式(6)を満たすように決定されており、第2層の厚さT_(2)の1.0nmは、式(7)を満たすように決定されている。」と記載されている。 そうすると、引用発明において、「a-Ge層/Au層/a-Ge層からなる第1層」、「a-Si層からなる第2層」であることころ、第1層の厚みT_(1)は「2.4nm」、第2層の厚みT_(2)は「1.0nm」であるものの、例えば、厚みT_(1)2.4nmを維持し、厚みT_(2)を1.4nmとすることも、引用文献1には示唆されているといえる。この場合、Geに対するSiの組成比rは、r=1.4/2.2=0.63と見積もられる。 更に、引用発明において、「5nm以下の粒径を有する量子ドット」であるところ、「量子ドット」(ナノ粒子)の粒径Xを5nm以下とする場合、上記式(6)を満たすための第1層の厚みT_(1)の上限値の最小値は、(5+(33-11))/(15+3)=1.5nmであり、第1層の厚みT_(1)を2.4nmより薄くすること、すなわちa-Ge層の厚みを1.1nmより薄くすることも、引用文献1には示唆されているといえる。 また、引用発明において、「前記量子ドットの粒間隔は3nm以下」であるところ、平均の粒間隔を3nm以下とする場合、上記式(7)を満たすための第2層の厚みT_(2)の上限値の最大値は、(3+(0.0+3))/(2.3-0.9))=4.3nmであり、a-Si層からなる第2層の厚みT_(2)を上記「1.4nm」より更に厚くすることも、引用文献1には示唆されているといえる。 (イ)一方、SiおよびGeを含む材料を含み、複数のナノ粒子を備えた熱電材料における、Geに対するSiの組成比rの数値範囲として、「0.56以上」は、上記(2)イ?オに摘記の引用文献2及び周知例1?3に記載されているように、きわめて普通に用いられる数値範囲であり、また、引用発明と、上記の引用文献2、周知例1?3に記載されている熱電材料とは、いずれも、SiおよびGeを含む材料を含み、複数のナノ粒子を備えた熱電材料である点で共通するものである。 (ウ)したがって、引用発明において、Geに対するSiの組成比の数値範囲として、「0.56以上」を選択することは、当業者であれば適宜なし得たことである。 ウ そして、相違点1を勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明並びに引用文献2及び周知例1?3に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ したがって、本件補正発明は、引用発明並びに引用文献2及び周知例1?3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和2年10月20日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年3月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?5、10?12に係る発明は、その出願前に頒布された下記の引用例1に記載された発明であり、この出願の請求項1、3?4、6?12に係る発明は、その出願前に頒布された下記の引用例2に記載された発明であるから、いずれも特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない、というもの、また、この出願の請求項2?9に係る発明は、その出願前に頒布された下記の引用例1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用例1:TAKIGUCHI, Hiroaki et al.,“Nano Structral and Thermoelectric Properties of SiGeAu Thin Films”,Japanese Journal of Applied Physics,The Japan Society of Applied Physics,2011年,Vol. 50,pp. 041301-1-041301-5(上記「引用文献2」) 引用例2:国際公開第2015/093207号(上記「引用文献1」) 3 引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例1(引用文献2)ないし引用例2(引用文献1)及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)イ、アに記載したとおりである。 4 対比・判断 (1)本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記熱電材料の結晶化率」に係る限定事項、及び「前記組成比」に係る限定事項を削除したものである。 (2)本願発明と引用例2(引用文献1)に記載された発明とを対比すると、前記第2の[理由]2(3)(ア)、(イ)、(エ)に記載したとおりであるから、本願発明の構成は全て引用例2に示されているものであって、本願発明と引用例2に記載された発明とは同一ということとなる。 したがって、本願発明は、引用例2に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-05-10 |
結審通知日 | 2021-05-18 |
審決日 | 2021-06-02 |
出願番号 | 特願2016-109968(P2016-109968) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田邊 顕人 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
小川 将之 恩田 春香 |
発明の名称 | 熱電材料、熱電素子、光センサおよび熱電材料の製造方法 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |