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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1376530
審判番号 不服2020-13825  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-02 
確定日 2021-08-17 
事件の表示 特願2019- 88749「端子およびそれを伴う電気コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月12日出願公開、特開2019-153593、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)7月18日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2011年7月19日、米国)を国際出願日とする出願である特願2014-519104号の一部を、平成28年5月19日に新たな特許出願とした特願2016-100457号の一部を、平成30年10月1日に新たな特許出願とした特願2018-186639号の一部を、令和1年5月9日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和1年 5月10日 :上申書の提出
令和2年 6月19日付け:拒絶理由通知書(特許法第50条の2の通知)
令和2年 7月 9日 :手続補正書及び意見書の提出
令和2年 8月31日付け:拒絶査定(原査定)
令和2年10月 2日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年8月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願請求項2ないし4に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2007-524194号公報
2.特開2001-230012号公報
3.特開2009-104863号公報

第3 本願発明
本願請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、令和2年7月9日に提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
金属薄板材料から形成された雌型端子であって、
雄型端子を受容する嵌合端部と、電線に接続される回路接続端部と、前記嵌合端部と回路接続端部との間の中間部分とを伴う端子本体と、
前記嵌合端部に画定される通路であって、該通路に沿って長手方向に延在し、互いに対向する2つの側壁と、前記通路に沿って長手方向に延在し、互いに対向する上壁及び下壁とを含む、通路と、
前記側壁の各々に沿って配置される主接点であって、基底部分、接点領域、及び、自由端を含み、前記側壁の各々から前方に延在する片持ち梁の形状で、前記基底部分から接点領域までは前記通路の内方に向いて延在し、前記接点領域から自由端までは前記通路の外方に向いて延在する、主接点と、
前記上壁及び下壁の少なくとも1つに沿って配置されるアーク放電接点であって、前記通路の内方に向いて延在し、前記通路の長手方向に関して、前記主接点の接点領域と自由端との間に位置する、アーク放電接点と、
前記中間部分に配置される1対のロックアームであって、前記側壁の各々と平行な各側面から外側へ突出するように後方に延在する片持ち梁の形状のロックアームと、
を備える、雌型端子。
【請求項2】
前記中間部分に配置される突出部であって、前記ロックアームよりも後方で、下側面から下方に延在する突出部を更に備える、請求項1に記載の雌型端子。
【請求項3】
前記アーク放電接点を分離して該アーク放電接点の右部分及び左部分を画定する少なくとも1つの長手方向に延在するスリットを更に備える、請求項1又は2に記載の雌型端子。
【請求項4】
コネクタであって、
請求項1?3のいずれか1項に記載の雌型端子と、
該雌型端子の少なくとも一部分を全体的に取り囲む、絶縁ハウジングと、
を備える、コネクタ。」

第4 引用文献に記載の事項及び発明
1 引用文献1に記載の事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電気コネクタの技術に関し、より詳細には、電気コネクタ用の雌型端子又はソケット端子に関する。」
「【背景技術】
【0002】
嵌(かん)合式電気コネクタは、一般に、嵌合されたコネクタによって複数の回路又は配線を相互接続するために対になった相互係合するピン端子及びソケット端子を使用する。ピン端子及びソケット端子は、しばしば雄型端子と雌型端子と呼ばれる。
【0003】
あるタイプの雌型端子は、ほぼ長方形のピン又は雄型端子を収容するためにその嵌合端にほぼ長方形のソケット又は差込口を有する。嵌合端は、上壁と下壁及び離間した対向する側壁を画定し、それにより、雄型端子を収容する通路を画定する細長い本体によって構成されている。そのような端子は、従来、シート材料から打抜き形成され、上壁及び下壁は、開いた継目又はスリットを有し、それにより、対向する壁は、雄型端子が挿入されると端子の長手方向の軸に対して横方向に撓(たわ)んで通路を広げる。
【0004】
多くのアプリケーションでは、端子に電力がある状態でこれらのタイプの端子を備えたコネクタを差込む、すなわち、嵌合させることが必要とされる。そのようなコネクタは、ホットプラグコネクタとして知られている。そのようなホットプラグコネクタでは、端子を嵌(はめ)る際、及び、特に、外す際に、端子が抜差しされるときに端子を流れる電流によって電気アークが生じる。端子は、そのようなアーク発生によって破損する場合がある。さらに、アーク発生によって、炭素等の非導電性又は低導電性残留物が端子の電気接点に堆(たい)積することがある。そのような残留物は、その後の接続における端子間の電気接触の品質を低下させる。
【0005】
従来技術におけるアーク放電を防ぐいくつかの試みには、個別の順次係合端子を設けることや、端子を順次的に係合させるために端子に前方又は横方向の拡張部分を設けることがある。そのような端子は、アーク発生のマイナス効果を減少させるのに有効であるが、そのような前方又は横方向の拡張部分によって必要とされる余分な空間のために必要以上に大きかった。また、場合によっては、そのような改良された端子は、製造がより複雑であった。
【0006】
本発明は、前述の問題を解決し、アーク放電に対処する改良された細長い雌型電気端子の必要性を満たすものである。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図面をより詳しく参照して説明する。最初に、図1を参照すると、本発明は、全体を20で示したほぼ細長い雌型電気端子において実施される。該雌型端子は、全体を22で示した嵌合部又は嵌合端と、全体を24で示した終端接続部又は終端接続端と、全体を26で示した中間固定部又は中間固定部分とを含む。
【0020】
雌型端子20は、シートメタル材料から打抜き形成され、終端接続端24は、全体を33で示した電線に圧着されるように構成されている。より詳細には、雌型端子の終端接続端は、電線33の外側絶縁体35に圧着される後方の1対の圧着アーム36を、電線33のストリップ端又は露出端37又は導電性コアに圧着される前方の1対の圧着アーム38とともに含む。
【0021】
雌型端子20の中間部26は、端子の両側から外方に突出する1対の打抜き形成されたロックアーム又はタブ40を含む。これらのロックアームは後方に向って片持ち支持されており、図4において、全体を28で示したコネクタハウジングの内側のロック肩部41の後方に弾性的にパチンと嵌(はま)り、端子が挿入された後で端子がハウジング28から抜けるのを防ぐ。中間部26は、また、1対の上方に突出するタブ42を含む。該タブ42は、コネクタハウジング28内の停止肩部(図示せず)と係合して、ハウジング内における雌型端子の完全に挿入する位置を画定し、また、端子の長手方向の軸の周りの捩(ねじ)れ又は回転運動に対してハウジング内の端子を安定させる。
【0022】
図1を参照すると、雌型端子20の嵌合端又は嵌合部22は、後で図6?9を参照してより詳細に示すように、雄型端子又は雄型ピン50を収容するように適応された端子収容通路44を有する。雄型ピン50は、正方形又は長方形の断面を有するピンによって提供されるような、少なくとも2つの離間しほぼ平行な平坦な側面51及び52を有することが好ましい。雄型ピン50は、また、雄型ピンを通路44内に容易に挿入することができるように、先細又は楔(くさび)形の端50aを備えてもよい。
【0023】
本実施形態では、雌型端子の嵌合端22は1対のチャネル45及び46から成り、該チャネル45及び46は、ほぼU字形断面であり、また、U字形チャネルの脚部の端は互いに隣接しているが離間されるように、開いた継目又はスリット47及び48によって分離されている。それにより、チャネル45?46は、雄型端子50を収容するために、ほぼ長方形又は正方形の通路44を間に画定する。図6?9で最もよく分かるように、U字形チャネル45?46の底はほぼ平坦であり、通路44内の対向する側壁53及び54を画定する。」
「【0028】
嵌合ピン50と雌型端子20との間で係合し主電気接点を提供するために、通路44内に拡大主接点57及び58が提供される。これらの拡大接点57?58は、例えば、当該技術分野で既知の金属打抜き形成技術によって、各側壁53?54に形成することができる。図1に示されるように、拡大主接点57?58は、雄型ピンと雌型端子の主接点57?58によって提供される拡大接触領域との間の接触領域を大きくして電気接触特性を高めるために、雌型端子の長手方向と通路44の長手方向に延長されることが好ましい。」
「【0041】
図11?13は、本発明の第3の実施形態を示し、本実施形態においては、全体を90で示した雌型端子は、全体を92で示した嵌合端の一部分が、図2?4における雌型端子70の中間部26と幾分似た構成を有する。拡大主接点87?88の近くの雌型端子90の嵌合端92は、湾曲部85によって一体的に接続された1対のほぼ平行に離間した側壁83及び84を有する。側壁83?84の縁は、2対の脚部を構成するようにほぼ直角に曲げられている。図2?4の端子のように、第1対の脚部は、スリット93を画定するように互いに接する手前で終端し、スリット93は端子の本体に沿って長手方向に延在している。しかしながら、図2?4に示される端子と異なり、第2対の脚部は、第1対の脚部よりも長く、互いに重なっている。もう1つの違いは、この第3の実施形態のアーク放電接点は側壁に設けられていないことである。この第3の実施形態では、側壁から曲げられた第1対の脚部の各脚部は、通路44内に延在するアーク放電接点94を有する。また、通路44側の重なり合った脚部は、アーク放電接点94とほぼ対向して通路44内に延在する、片持ちビームの形の1つのアーク放電接点95を有する。
【0042】
図2?4の雌型端子70と同様に雌型端子90の傾斜接点87?88は、側壁に対して横方向に傾けられている。雄型ピン50が端子90の通路44に挿入されると、側壁83?84は湾曲部85を中心として撓んで互いに離れる。側壁83及び84が回転して離れると、あらかじめ傾斜した主接点87及び88は、雄型ピンの平坦へ側面と実質的に共面になり、該側面との電気接触を改善する。片持ちされたアーク放電ビーム95は、側壁83?84が回転して離れるので、通路44にピンを最初に挿入し、さらに、挿入した後で雄型ピン50をアーク放電接点94と強制的に係合させる。この構成において、犠牲アーク放電接点94、95は、ピン50の2つの側面と係合し、主接点87、88は、ピン50の他の2つの側面と係合する。したがって、雄型ピンの2つの側面と係合する犠牲アーク放電接点94、95によって作成された非導電性残留物は、他の2つの側面と係合する主接点87、88と接触せず、その結果、雄型端子と雌型端子との間により良好な電気的係合が得られる。」
「【図11】


「【図12】


「【図13】



2 引用文献1に記載の技術的事項
上記1の記載より、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているといえる。
・雌型端子20は、シートメタル材料から打抜き形成されており、雌型端子90も同様である(段落【0020】及び【0041】)。
・雌型端子20は、雄型ピン50を収容する嵌合端20と、電線33に圧着される終端接続端24と、嵌合端20と終端接続端24との間に位置する中間固定部26とを含むものであって、同様に雌型端子90も嵌合端92、終端接続端及び中間固定部を有する(段落【0019】ないし【0022】及び【0041】)。
・雌型端子の嵌合端22は、雄型ピン50を収容するほぼ長方形又は正方形の通路44を画定するものであり、嵌合端92も同様である(段落【0023】及び【0041】)。
・雌型端子90の嵌合端92は、通路44に沿って前後方向に延在する1対の側壁83及び84を有し、該側壁83及び84の縁は直角に曲げられることで2対の脚部を構成する(段落【0041】及び【図12】)。
・互いに対向する1対の側壁83及び84には、それぞれ主接点87及び88が設けられている(段落【0041】及び【図12】)。
・側壁83及び84の2対の脚部のうち、第1対の脚部は、通路44内に延在するアーク放電接点94を有し、第2対の脚部は、アーク放電接点94とほぼ対向して通路44内に延在するアーク放電接点95を有する(段落【0041】及び【図13】)。
・雌型端子90は、アーク放電接点95が片持ちビームの形である(段落【0041】及び【0042】)。
・雌型端子20の主接点57及び58は、金属打抜き形成技術によって側壁53に端子内部の通路44に向けて凸形状となるように形成され、少なくとも雄型ピン50挿入方向の両側で、主接点57及び58は側壁53に接続されて形成されており、雌型端子90の主接点87及び88についても同様である(段落【0028】、【0042】、【図6】及び【図11】)。
・雌型端子90の傾斜した主接点87及び88は、側壁に対して横方向に傾けられ、雄型ピン50が端子90の通路44に挿入されることで、側壁83及び84が湾曲部85を中心として回転して互いに離れ、傾斜した主接点87及び88は、雄型ピンの側面と実質的に共面となり、該側面との電気接触を改善する(段落【0042】及び【図12】)。
・【図13】より、雌型端子90のアーク放電接点94及び95は、主接点87及び88よりも雄型ピン50挿入方向の手前に位置していることが看取される。
・【図11】より、中間固定部の側壁83及び84に形成された1対のロックアームは、側壁83及び84から外側に突出するように後方に延在する片持ち梁形状に形成されていることが看取される。

3 引用文献1に記載の発明
上記2の引用文献1に記載の技術的事項より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
[引用発明]
「シートメタル材料から打抜き形成された雌型端子90であって、
雄型ピン50を収容する嵌合端92と、電線に圧着される終端接続端と、嵌合端20と終端接続端との間の中間固定部とを含み、
前記嵌合端92に画定される通路44と、該通路44に沿って前後方向に延在し、互いに対向する1対の側壁83及び84を有し、該側壁83及び84の縁は直角に曲げられることで2対の脚部を構成し、
前記側壁83及び84には、それぞれ主接点87及び88が設けられ、主接点87及び88は、少なくとも雄型ピン50挿入方向の両側で、側壁83及び84に接続されて設けられており、
前記側壁83及び84の2対の脚部のうち、第1対の脚部は、通路44内に延在するアーク放電接点94を有し、第2対の脚部は、アーク放電接点94とほぼ対向して通路44内に延在するアーク放電接点95を有し、
前記アーク放電接点94及び95は、主接点87及び88よりも雄型ピン50挿入方向の手前に位置しており、
中間固定部の側壁83及び84に形成された1対のロックアームは、側壁83及び84から外側に突出するように後方に延在する片持ち梁形状に形成されている、
雌型端子90。」

4 引用文献2に記載の事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。

「【0019】図1は、本発明の一実施例としての雌型の活線挿抜用端子と、この活線挿抜用端子と組み合う相手端子とを対峙させて示す概略斜視図である。図1によく示されるように、この活線挿抜用端子10は、例えば、導電性があり且つバネ性のある金属シート材料から打ち抜き折り曲げ加工によって形成されている。相手端子20もまた、同様に、例えば、導電性があり且つバネ性のある金属シート材料から打ち抜き折り曲げ加工によって形成されている。
【0020】活線挿抜用端子10は、後端部にU字状の結線部11および12を有している。結線部11は、電源または電気機器との電気接続ケーブルの接続端末処理した被覆部に圧着接続するためのものであり、結線部12は、その電気接続ケーブルの接続端末処理した心線に圧着接続するためのものである。また、活線挿抜用端子10は、中間部にチャンネル状部13を有しており、このチャンネル状部の底部の中心部から前方且つ上方に延びるようにして弾性舌片14が切り起こし形成されている。さらにまた、活線挿抜用端子10は、前端部に箱状部15を有しており、この箱状部15の前端上下中心部に突出させてアーク用接点部16が設けられている。箱状部15の上辺の後端中心部から後方且つ上方へと延びるようにして係止舌片17が形成されている。この係止舌片17は、この活線挿抜用端子10を、電気コネクタの絶縁ハウジング内の対応個所に係止固定するためのものである。更に、箱状部の上辺の内側には、内側に向け突部18が設けられており、弾性舌片14が相手端子に接触する際に支えとなる。図1には明確に示されていないが、弾性舌片14の自由端には、通常接点部が設けられており、この通常接点部の詳細構成について後述する。」
「【0024】先ず、弾性舌片14の詳細構造について説明するに、図3および図4に最もよく示されているように、この実施例では、弾性舌片14は、端子基材底部の中心部から切り起こし形成されており、中心部にそって溝14Bが形成されていて、2つのバネ性部分14Cおよび14Dに分離されている。弾性舌片14の自由端は、若干下方へと曲げられて、その湾曲部の頂部に通常接点部14Aを与えている。図4の底面図によく示されるように、弾性舌片14の中心部にそって形成された溝14Bは、前記弾性舌片14の先端近傍で終わっており、したがって、通常接点部14Aは、両側辺部の接点部分14A_(1)および14A_(2)は互いに分離独立されたものとされており、通常接点部14Aの更に先端側は、2つのバネ性部分14Cおよび14Dが互いに連結部19により連結されている。また、図5の断面図によく示されるように、弾性舌片14の溝14Bによって分離されたバネ性部分14Cおよび14D並びに通常接点部14Aの両側辺部の接点部分14A_(1)および14A_(2)の上表面には、外側より内側の方が低くなるような傾斜部がバネ性部分14Cおよび14Dにもわたるようにして設けられている。この傾斜部が設けられていることにより、バネ性部分14Cおよび14Dの幅を狭くすることなく、両側辺部の接点部分14A_(1)および14A_(2)を付与することができる。
【0025】次に、アーク用接点16の詳細構造について説明するに、図3の縦断面図によく示されるように、この実施例では、アーク用接点部16は、箱状部15の前端の上下辺の中心部から前方へ突き出すようにシート材料片を折り曲げ加工することにより形成されている。図3および図4から分かるように、通常接点部14Aは、アーク用接点部16から相手端子の挿抜方向において後方の位置において且つアーク用接点部16の両側辺部に位置する個所に配置されている。」
「【図3】



5 引用文献2に記載の技術的事項
上記4の記載より、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているといえる。
・活線挿抜用端子10は、導電性があり且つバネ性のある金属シート材料から打ち抜き折り曲げ加工によって形成されている(段落【0019】)。
・活線挿抜用端子10は、チャンネル状部13の底部の中心部から前方且つ上方に延びるようにして弾性舌片14が切り起こし形成されており、該弾性舌片14の基底部分から通常接点部14Aまでは、箱状部15の内方に向いて延在し、前記通常接点部14Aから前記弾性舌片14の自由端までは、箱状部15の外方に向いて延在している(段落【0020】、【0024】及び【図3】)。
・活線挿抜用端子10は、前端部に箱状部15を有しており、該箱状部15の前端上下中心部に突出させてアーク用接点部16が設けられ、端子基材底部の中心部から切り起こし形成された弾性舌片14の全体が、アーク用接点部16よりも後方に位置している(段落【0020】、【0024】及び【図3】)。

6 引用文献3に記載の事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。

「【0019】
メス端子4のボックス部41の上面には、ランスホール44と、係止爪45を備えている。ランスホール44は、上面で重なった2枚の銅板のうち上側の銅板46を打ち抜くことによって形成され、下側の銅板47の上面がランスホールの底面44aとなっている。上側の銅板46は、ランスホール44によって前後に分かれ、前方部46aの後端にランスホール44と隣接する係止爪45をプレスによって張り出し成形し、前方部46aと後方部46bの間は、ブリッジ状の補強部46cによって繋がれている。さらに、ボックス部41の前端には、図示しないオス端子を固定する舌片48を備えている。」
「【0022】
さらにメス端子4を挿入すると、係止爪45は収容部33に収容され、係止突起32はランスホール44に収容され、ランス3の変形は回復する。これによりメスコネクタハウジング1へのメス端子4の挿入は完了する。挿入完了後は、係止爪45が第2の係止面33aに当接し、ランスホール44の前方側の側面44bが第1の係止面32aに当接する。これによって、メス端子4をメスコネクタハウジング1の後方に引張っても、メス端子4が抜けることが防止される。」
「【図4】



7 引用文献3に記載の技術的事項
上記6の記載より、引用文献3には、次の技術的事項が記載されているといえる。
・メス端子4のボックス部41は、上面から突出するように係止爪45を備え、メスコネクタハウジング1へのメス端子4の挿入完了後は、係止爪45がランス3の第2の係止面33aに当接することで、メス端子4が抜けることが防止される(段落【0019】、【0022】及び【図4】)。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「シートメタル材料」は、本願発明1の「金属薄板材料」に相当し、同様に、引用発明の「打抜き形成」すること及び「雌型端子90」は、それぞれ本願発明1の「形成」すること及び「雌型端子」に相当する。したがって、引用発明の「シートメタル材料から打抜き形成された雌型端子90」は、本願発明1の「金属薄板材料から形成された雌型端子」に相当する。
引用発明の「雄型ピン50」は、本願発明1の「雄型端子」に相当する。同様に、引用発明の「収容する」こと及び「嵌合端92」は、それぞれ本願発明1の「受容する」こと及び「嵌合端部」に相当する。したがって、引用発明の「雄型ピン50を収容する嵌合端92」は、本願発明1の「雄型端子を受容する嵌合端部」に相当する。
引用発明の「電線」は、本願発明1の「電線」に相当する。同様に、引用発明の「圧着される」こと及び「終端接続端」は、それぞれ本願発明1の「接続される」こと及び「回路接続端部」に相当する。したがって、引用発明の「電線に圧着される終端接続端」は、本願発明1の「電線に接続される回路接続端部」に相当する。
引用発明の「嵌合端20と終端接続端との間」は、本願発明1の「前記嵌合端部と回路接続端部との間」に相当し、引用発明の「中間固定部」は、本願発明1の「中間部分」に相当する。したがって、引用発明の「嵌合端20と終端接続端との間の中間固定部」は、本願発明1の「前記嵌合端部と回路接続端部との間の中間部分」に相当する。
引用発明の「雌型端子90」が、「嵌合端92」と、「終端接続端」と、「中間接続部」とを含むことは、本願発明1の「端子本体」が、「嵌合端部」と、「回路接続端部」と、「中間部分」とを伴うことに相当する。
引用発明の「前記嵌合端92に画定される」ことは、本願発明1の「前記嵌合端部に画定される」ことに相当する。また、引用発明の「通路44」は、本願発明1の「通路」に相当する。したがって、引用発明の「前記嵌合端92に画定される通路44」は、本願発明1の「前記嵌合端部に画定される通路」に相当する。
引用発明の「前後方向」は、本願発明1の「長手方向」に相当する。引用発明の「該通路44に沿って前後方向に延在」することは、本願発明1の「該通路に沿って長手方向に延在」することに相当する。引用発明の「互いに対向する」ことは、本願発明1の「互いに対向する」ことに相当する。引用発明の「1対の側壁83及び84」は、本願発明1の「2つの側壁」に相当する。
引用発明の「該側壁83及び84の縁は直角に曲げられることで2対の脚部を構成」することは、側壁83と84のそれぞれの1対の脚部が、互いに対向する上壁と下壁を形成するといえるから、本願発明1の「互いに対向する上壁及び下壁とを含む」ことに相当する。また、引用発明の「1対の側壁83及び84」が「該通路44に沿って前後方向に延在」するから、引用発明の「2対の脚部」も同様に「該通路44に沿って前後方向に延在」するといえる。
そうすると、引用発明の「該通路44に沿って前後方向に延在し、互いに対向する1対の側壁83及び84を有し、該側壁83及び84の縁は直角に曲げられることで2対の脚部を構成」する「通路44」は、本願発明1の「該通路に沿って長手方向に延在し、互いに対向する2つの側壁と、前記通路に沿って長手方向に延在し、互いに対向する上壁及び下壁とを含む」、「通路」に相当する。
引用発明の「主接点87及び88」は、「前記側壁83及び84」に「設けられ」るものであるから、本願発明1の「前記側壁の各々に沿って配置される」「主接点」に相当する。引用発明の「前記側壁83及び84の2対の脚部」は、本願発明1の「上壁及び下壁の少なくとも1つ」に相当する。また、引用発明の「通路44内に延在する」ことは、本願発明1の「前記通路の内方に向いて延在」することに相当する。引用発明の「アーク放電接点94」及び「アーク放電接点95」は、いずれも本願発明1の「アーク放電接点」に相当する。
引用発明の「中間固定部の側壁83及び84に形成され」ることは、本願発明1の「前記中間部分に配置される」ことに相当する。引用発明の「1対のロックアーム」は、本願発明1の「1対のロックアーム」に相当する。引用発明の「側壁83及び84から外側に突出するように後方に延在する片持ち梁形状に形成されている」ことは、本願発明1の「前記側壁の各々と平行な各側面から外側へ突出するように後方に延在する片持ち梁の形状」であることに相当する。したがって、引用発明の「中間固定部の側壁83及び84に形成された1対のロックアームは、側壁83及び84から外側に突出するように後方に延在する片持ち梁形状に形成されている」ことは、本願発明1の「前記中間部分に配置される1対のロックアームであって、前記側壁の各々と平行な各側面から外側へ突出するように後方に延在する片持ち梁の形状のロックアーム」に相当する。

以上のとおりであるから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
[一致点]
「金属薄板材料から形成された雌型端子であって、
雄型端子を受容する嵌合端部と、電線に接続される回路接続端部と、前記嵌合端部と回路接続端部との間の中間部分とを伴う端子本体と、
前記嵌合端部に画定される通路であって、該通路に沿って長手方向に延在し、互いに対向する2つの側壁と、前記通路に沿って長手方向に延在し、互いに対向する上壁及び下壁とを含む、通路と、
前記側壁の各々に沿って配置される主接点と、
前記上壁及び下壁の少なくとも1つに沿って配置されるアーク放電接点であって、前記通路の内方に向いて延在する、アーク放電接点と、
前記中間部分に配置される1対のロックアームであって、前記側壁の各々と平行な各側面から外側へ突出するように後方に延在する片持ち梁の形状のロックアームと、
を備える、雌型端子。」
[相違点]
本願発明1の主接点は、「基底部分、接点領域、及び、自由端を含み、前記側壁の各々から前方に延在する片持ち梁の形状で、前記基底部分から接点領域までは前記通路の内方に向いて延在し、前記接点領域から自由端までは前記通路の外方に向いて延在する」構成であって、本願発明1のアーク放電接点は、「前記通路の長手方向に関して、前記主接点の接点領域と自由端との間に位置する」構成であるのに対し、引用発明の主接点87及び88は、少なくとも雄型ピン50挿入方向の両側で、側壁83及び84に接続されて設けられているものであり、アーク放電接点94及び95は主接点87及び88よりも雄型ピン50挿入方向の手前に位置している点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
引用発明の主接点87及び88は、少なくとも雄型ピン50挿入方向の両側で、側壁83及び84に接続されて設けられているものであるから、いわゆる両持ち形状であって、片持ち梁の形状ではない。
また、引用文献1には、上記第4の2のとおり、「雌型端子90の傾斜した主接点87及び88は、側壁に対して横方向に傾けられ、雄型ピン50が端子90の通路44に挿入されることで、側壁83及び84が湾曲部85を中心として回転して互いに離れ、傾斜した主接点87及び88は、雄型ピンの側面と実質的に共面となり、該側面との電気接触を改善する」という技術的事項(以下、「引用文献1記載の技術的事項1」という。)が記載されている。
ここで、引用文献2には、上記第4の5のとおり、「活線挿抜用端子10は、チャンネル状部13の底部の中心部から前方且つ上方に延びるようにして弾性舌片14が切り起こし形成されており、該弾性舌片14の基底部分から通常接点部14Aまでは、箱状部15の内方に向いて延在し、前記通常接点部14Aから前記弾性舌片14の自由端までは、箱状部15の外方に向いて延在している」という技術的事項(以下、「引用文献2記載の技術的事項1」という。)が記載されている。
そうすると、引用文献1記載の技術的事項1を考慮すると、引用発明の主接点87及び88を片持ち梁の形状とした場合、「側壁83及び84が湾曲部85を中心として回転して互いに離れ」る作用が、片持ち梁の形状とした主接点87及び88の撓みとなってしまうことで減殺されるから、引用発明は、主接点87及び88を片持ち梁の形状とすることに、阻害要因を有しているといえる。
したがって、引用発明において、引用文献2記載の技術的事項1における弾性舌片14の片持ち梁の形状のものを適用することは、当業者にとって容易に想到し得たことということはできない。

以下、仮に引用発明において、主接点87及び88を片持ち梁の形状とすることは当業者が容易に想到し得たことであるとして検討する。
引用文献2には、上記第4の5のとおり、「活線挿抜用端子10は、前端部に箱状部15を有しており、該箱状部15の前端上下中心部に突出させてアーク用接点部16が設けられ、端子基材底部の中心部から切り起こし形成された弾性舌片14の全体が、アーク用接点部16よりも後方に位置している」こと(以下、「引用文献2記載の技術的事項2」)が記載されている。
引用発明及び引用文献2記載の技術的事項2は、いずれも主接点あるいは通常接点よりも、アーク放電接点を相手方部材である雄型端子の方向に離れて形成するものである。そして、引用文献1又は引用文献2には、アーク放電接点を「前記通路の長手方向に関して、前記主接点の接点領域と自由端との間に位置する」ことに関して記載も示唆もされていない。
このため、引用発明において、引用文献2記載の技術的事項2を適用しても、相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことということはできない。
ここで、引用発明において、「弾性舌片14の全体が、アーク用接点部16よりも後方に位置している」との引用文献2記載の技術的事項2を適用しても、アーク放電接点94及び95は、主接点87及び88の接点領域と自由端との間に位置する構成とならないから、更にこれらの位置関係を変更しなければならない。そうすると、このような論理付けは、いわゆる「容易の容易」にあたるものであるから、これを当業者が容易に想到し得たことということはできない。
なお、引用文献3には、上記第4の7のとおり、メス端子4の抜け防止のために係止爪45を備えることが記載されているものの、上記相違点に係る事項が記載されているものではない。

したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献1記載の技術的事項1、ならびに、引用文献2記載の技術的事項1及び2に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は、いずれも本願発明1の発明特定事項を全て含むものであり、上記相違点1及び2に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献1記載の技術的事項1及び2、ならびに、引用文献2記載の技術的事項1及び2に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし4は、当業者が引用文献1に記載された発明、引用文献1記載の技術的事項1及び2、ならびに、引用文献2記載の技術的事項1及び2に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-07-28 
出願番号 特願2019-88749(P2019-88749)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 重幸  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 尾崎 和寛
杉山 健一
発明の名称 端子およびそれを伴う電気コネクタ  
代理人 川合 誠  
代理人 青木 俊明  
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