• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1376567
審判番号 不服2021-85  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-05 
確定日 2021-08-17 
事件の表示 特願2020- 31210「監視装置及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和元年12月26日に出願された特願2019-236812号の一部を令和2年2月27日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 5月22日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 7月22日 :意見書の提出
令和 2年10月 5日付け:拒絶査定
令和 3年 1月 5日 :審判請求書の提出
令和 3年 3月11日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 5月12日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定(令和2年10月5日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

この出願の請求項1?7に係る発明は、以下の引用文献A、Bに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A:特開2007-272409号公報
引用文献B:特開2013-168190号公報

第3 当審で通知した拒絶理由の概要
当審で通知した拒絶理由(令和3年3月11日付けの拒絶理由)の概要は次のとおりである。

1.(新規性)請求項1、3、7に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
2.(進歩性)請求項1-7に係る発明は,以下の引用文献1、2に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:琉球銀行,「りゅうぎんBizネットご利用マニュアル」(平成29年4月),[online],2017年4月,[検索日:令和3年3月8日],URL,https://www.ryugin.co.jp/common/uploads-archives/2017/04/BizNetManual201704.pdf
引用文献2:商工中金,「商工中金からのお知らせ『口座確認サービス』のご案内」,[online],2013年11月11日,[検索日:令和3年3月8日],URL,https://www.shokochukin.co.jp/faq/pdf/dn_20131111_01.pdf

第4 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、令和3年5月12日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される発明であって、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
識別子と関連付けされた口座照会要求に対して、照会対象の他行口座の口座名義人を通知する照会処理部と、
前記識別子と関連付けされた前記他行口座への振込依頼が所定の期間内に受け付けられたか否かをもって、当該口座照会要求が不正照会であったか否かを判定する不正照会判定部と、を有する監視装置。」

なお、本願発明2?3は本願発明1を減縮した発明であり、本願発明4は本願発明1をプログラムの発明としたものである。


第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
当審で通知した拒絶理由で引用した引用文献1(琉球銀行,「りゅうぎんBizネットご利用マニュアル」(平成29年4月),[online],2017年4月,[検索日:令和3年3月8日],URL,https://www.ryugin.co.jp/common/uploads-archives/2017/04/BizNetManual201704.pdf)には、次の事項が記載されている。

ア 表紙
「「りゅうぎんBizネット」はインターネットに接続可能なパソコンにより簡単な操作で,残高照会やお振込ができる法人・個人事業主向けのサービスです。」

イ 第4頁


ウ 第5頁


エ 第9頁


オ 第10頁


(2)引用発明
上記(1)のア?オから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「インターネットに接続可能なパソコンにより振込ができる法人・個人事業主向けのサービスであって(ア)、
前記サービスは、
契約者番号,管理者(利用者)コード及びログオンパスワードの入力を受け付けるとメインメニューを表示し(イ、ウ)、
メインメニューから「振込・振替」が選択されると,依頼人名及びご依頼人付加情報の入力を受け付け(エ)、
振込先の金融機関,支店名,科目及び口座番号を受け付けると,受取人口座名義確認機能が受取人の口座名義を自動的に入力し(エ、オ)、
振込内容が確認され「実行」のクリックを受け付けることにより振込データを作成する(オ)、
サービスであって、
前記ご依頼人付加情報として依頼人番号等を依頼人名に付加することができ(エ)、
前記受取人口座名義確認機能には,自行宛及び他行宛のそれぞれについてサービス時間帯が設定されており(オ)、
前記受取人口座名義確認機能による受取人の口座名義の確認後に振込を中断する作業が一定回数以上続いた場合は同機能を停止する(オ)、
サービス。」


(2)引用文献2
当審で通知した拒絶理由で示した引用文献2(商工中金,「商工中金からのお知らせ『口座確認サービス』のご案内」,[online],2013年11月11日,[検索日:令和3年3月8日],URL,https://www.shokochukin.co.jp/faq/pdf/dn_20131111_01.pdf)には、次の事項が記載されている。(下線は、当審が付与した。)。

「『口座確認サービス』のご案内
平成25年11月11日(月)より、商工中金ダイレクト(インターネットバンキング、モバイルバンキング)によるお振込につきまして、お客さまが入力された振込先口座情報を確認して、振込先の「口座名義人名」を、確認画面に自動表示する(入力を省略する)サービスを開始いたしました。」

「2 操作方法
2.1 上記のサービス時間帯に、対象銀行あてに振込む場合
(1) [振込・振替]口座情報入力画面において、ご指定の銀行名、支店名、預金種目、口座番号をご入力ください。
別紙(A)

(2) [振込・振替]確認画面において、振込先の口座名義人名が表示されますので、ご希望のお振込先であることを、ご確認ください。
別紙(B)(C)(D)

※登録済の振込先情報を利用して、振込される場合も、口座確認を行います。
確認画面には、口座確認後の口座名義人名を表示しますので、ご希望のお振込先であることを、ご確認ください。(登録済の名称に誤りがあった場合は、再登録してください)。
※振込先の銀行の都合等により、確認できない場合もございます。

【ご注意ください】
振込・振替を完了させずに、口座確認のみ(確認画面まで)を所定の回数以上行うと、口座確認サービスを停止(ロック)させていただきます。」






第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 「照会処理部」について
引用発明における「管理者(利用者)コード」、「依頼人名」、「依頼人番号」及び「振込先の金融機関、支店名、科目及び口座番号」は、いずれも本願発明1における「識別子」に相当する。
引用発明の「受取人口座名義確認機能」は「他行宛」も対象としている。そのような「他行宛」の振込依頼において、「管理者(利用者)コード」、「依頼人名」、「依頼人番号」及び「振込先の金融機関、支店名、科目及び口座番号」を受け付けると「受取人口座名義確認機能が受取人の口座名義を自動的に入力」することは、「識別子」の受け付けに応じて受取人口座名義確認機能に対して口座確認(照会)の要求がなされ、当該要求に対し、受取人口座名義確認機能が、確認(照会)対象の他行口座の口座名義人を自動的に入力することによってサービスを利用する管理者(利用者)に知らせる(通知する)ものであって、当該要求は先に受け付けた「識別子」と関連性を有しているといえるから、本願発明1の「識別子に関連付けされた口座照会要求に対して、照会対象の他行口座の口座名義人を通知する」ことに相当する。
よって、引用発明は「受取人口座名義確認機能」を実行する機能部を当然備えていると認められ、当該機能部は、本願発明1の「識別子と関連付けされた口座照会要求に対して、照会対象の他行口座の口座名義人を通知する照会処理部」に相当する。

イ 「不正照会判定部」について
引用発明は、「識別子」の受け付けに基づいて受取人の口座名義を自動的に入力し、振込データを作成するものであるから、引用発明における「他行宛」の「振込」は、受取人口座名義確認のために受け付け済の「識別子」と関連性を有しているといえる。
また、引用発明は、「受取人口座名義確認機能による受取人の口座名義の確認後に振込を中断する作業が一定回数以上続いた場合は同機能を停止する」ものであるから、引用発明は、「受取人口座名義確認機能による受取人の口座名義の確認後に振込を中断する作業が一定回数以上続いた場合は同機能を停止」する処理を実行する処理部を備えていると認められる。そして、当該処理部は、振込を中断する作業の回数が一定回数以上続いたか否かを判定することによって望ましくない受取人口座名義確認機能の利用(不正照会)を停止するものであるから、引用発明の「受取人口座名義確認機能による受取人の口座名義の確認後に振込を中断する作業が一定回数以上続いた場合は同機能を停止する処理を実行する処理部」と本願発明1の「前記識別子と関連付けされた前記他行口座への振込依頼が所定の期間内に受け付けられたか否かをもって、当該口座照会要求が不正照会であったか否かを判定する不正照会判定部」とは、いずれも、「識別子と関連付けされた他行口座への振込について、不正照会であったか否かを判定する不正照会判定部」である点で共通する。

ウ 「監視装置」について
上記ア、イのとおり、引用発明の「サービス」を提供する装置は、「照会処理部」及び「不正照会判定部」を備えており、「不正照会判定部」によって監視を行うものであるから、本願発明1と同様の「監視装置」といえる。

上記ア?ウより、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致及び相違する。

<一致点>
「識別子と関連付けされた口座照会要求に対して、照会対象の他行口座の口座名義人を通知する照会処理部と、
識別子と関連付けされた他行口座への振込について、不正照会であったか否かを判定する不正照会判定部と、を有する、監視装置。」

<相違点>
「不正照会判定部」が、本願発明1では「振込依頼が所定の期間内に受け付けられたか否かをもって、当該口座照会要求が不正照会であったか否かを判定する」のに対し、引用発明では、受取人口座名義確認機能による受取人の口座名義の確認後に振込を中断する作業が一定回数以上続いたか否かにより判定する点。

そうすると、本願発明1と引用発明とは上記相違点を有するから、本願発明1は引用発明と同一ではない。

(2) 相違点の判断
上記相違点について検討する。
引用発明は、受取人口座名義確認機能による受取人の口座名義の確認後に振込を中断する作業が一定回数以上続いたか否かにより判定するものであり、引用文献1には、「振込依頼が所定の期間内に受け付けられたか否かをもって、当該口座照会要求が不正照会であったか否かを判定する」ことが記載も示唆もされておらず、技術常識でもない。したがって、引用発明の判定処理において、「振込依頼が所定の期間内に受け付けられたか否かをもって、当該口座照会要求が不正照会であったか否かを判定する」構成とする動機はない。
引用文献2は、上記第4、1(2)のとおり、入力された振込先口座情報を確認して、振込先の「口座名義人名」を、確認画面に自動表示する口座確認サービスにおいて、振込・振替を完了させずに、口座確認のみ(確認画面まで)を所定の回数以上行うと、口座確認サービスを停止(ロック)することが記載されている文献であって、引用文献2には、上記相違点に係る技術事項、すなわち、「振込依頼が所定の期間内に受け付けられたか否かをもって、当該口座照会要求が不正照会であったか否かを判定する」ことは記載も示唆もされていない。
このため、引用文献2の記載を参酌しても、引用発明から相違点に係る事項を当業者が容易に想到し得るとは認められない。
そして、当該事項を記載する他の引用文献も発見されない。

そして、本願発明1は、上記相違点の構成とすることで、1つの他行口座への照会が不正照会であったか否かを判定できるという特有の効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2の記載に基づいて容易に発明できたものではない。

2 本願発明2?3について
本願発明2?3は、本願発明1を減縮した発明であり、少なくとも、上記(1)で検討した相違点に係る本願発明1の技術事項を備えるものであるから、本願発明1と同様な理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。

3 本願発明4について
本願発明4は本願発明1をプログラムの発明としたものであり、本願発明4は、少なくとも、上記(1)で検討した相違点に係る本願発明1の技術事項を備えるものであるから、本願発明1と同様な理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。

第7 原査定について
原査定の拒絶の理由の概要は、先記第2のとおりである。
引用文献Aには、振込記録DB16に、顧客の口座毎に、振込日時と振込情報とが記録され、振込情報は振込先の銀行名、支店名、口座種別、口座番号、及び振込金額を含むこと、振込記録DB16に格納された振込記録の中に、顧客が指定した振込先情報と同一の振込先があるかどうか判断すること、が記載されているが、引用文献Aに記載の発明は、振込要求に係る振込の前に、同一の振込先口座に振込をしたことがあり、長時間が経過していれば、その振込要求に係る振込は振り込め詐欺によるものである可能性は高くないとの発明者の洞察に基づくものであり、令和3年5月12日付けの補正による付加された「振込依頼が所定の期間内に受け付けられたか否かをもって、当該口座照会要求が不正照会であったか否かを判定する」構成について記載も示唆も無い。
また、引用文献Bには、振込先の口座番号とその口座の名義人名の組合せが、送金履歴格納部204が格納している振込先口座番号と受取人名との組合せと異なるかどうか、すなわち、振込先となる他社口座(照会対象)の口座番号に対して口座名義人が予め登録されている口座名義人と一致するか否かを判定し、組合せと異なれば振込処理を行わないという技術事項が記載されているのみであり、本願発明1の「振込依頼が所定の期間内に受け付けられたか否かをもって、当該口座照会要求が不正照会であったか否かを判定する」処理を開示するものでない。
よって、本願発明1は、引用文献Aに記載された発明、引用文献Bに記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
本願発明2?4についても同様である。
よって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明1?4は、当業者が引用発明及び引用文献2の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、本願発明1?4は、引用文献Aに記載された発明及び引用文献Bの記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由及び当審の拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-07-29 
出願番号 特願2020-31210(P2020-31210)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 池田 聡史  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 中野 浩昌
吉田 誠
発明の名称 監視装置及びプログラム  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ