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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F21V
管理番号 1376611
審判番号 不服2021-270  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-08 
確定日 2021-08-24 
事件の表示 特願2018-508874号「照明器具」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日国際公開,WO2017/169549,請求項の数(6)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2017年(平成29年)3月7日(国内優先権主張 2016年3月29日,2016年10月14日)を国際出願日とする出願であって,平成30年6月14日に条約19条補正の写し提出書が提出され,令和2年4月24日付けで拒絶理由が通知され,同年6月18日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが,同年10月7日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ,これに対し,令和3年1月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2.原査定の概要
原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1-7
・引用文献等 1-3

<引用文献等一覧>
1.特開2008-104022号公報
2.特開2015-139086号公報
3.国際公開第2010/071102号

第3.本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は,令和3年1月8日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
照明器具であって,
光源と,
前記光源の光出射方向とは反対側に配置されたスピーカユニットと,
前記光源及び前記スピーカユニットを収納する器具本体とを備え,
前記照明器具は,天井埋込み型照明器具であり,
前記器具本体は,
前記光源を内部に支持する有底筒状の第1筐体部と,
前記第1筐体部を内部に収納する筒状の第2筐体部と,
前記スピーカユニットを収納し,前記スピーカユニットからの後方側の音を封じ込める空間を形成するエンクロージャー部と,
前記スピーカユニットの光出射側の端部から前記第2筐体部の内面にかけて傾斜した傾斜部とを有し,
前記エンクロージャー部は,前記第2筐体部の軸方向に見た場合に,前記第2筐体部の側方に張り出しており,
前記第1筐体部の底部は,前記スピーカユニットに向かって凸であり,
前記傾斜部は,前記第1筐体部より後方に位置している
照明器具。
【請求項2】
前記底部の前記スピーカユニット側の面である底面は,前記スピーカユニットの軸に対して対称な形状を有する
請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記底面は,球体,楕円球体又は凸多面体の側面形状を有する
請求項2に記載の照明器具。
【請求項4】
前記底部は,高さが幅より短い扁平な凸である
請求項1に記載の照明器具。
【請求項5】
前記光源の光出射方向,前記スピーカユニットの出音方向,前記第1筐体部の軸方向,及び,前記第2筐体部の軸方向は,略一致している
請求項1に記載の照明器具。
【請求項6】
前記傾斜部は,前記スピーカユニットに向かって凸に湾曲した曲面を有する
請求項1に記載の照明器具。」

第4.引用文献,引用発明等
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は天井等の上部位置に取り付け可能なスピーカ装置に関するものである。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,特許文献1に開示されている従来のスピーカ装置では,アレイスピーカの指向性を制御するための制御装置が別途必要であったり,或いは通常の音響装置では直接再生したりすることができないという問題点があった。また帯域がかなり狭い範囲に限られるため,音質的には音楽を鑑賞するようなレベルの音質が得られないという問題点もあった。さらに従来の専用の制御装置等が必要になるためコスト的にも高価なものであった。
そこで,本発明は上記した問題点を鑑みたものであり,安価で,通常の音響装置により直接再生でき,しかも再生帯域が広いスピーカ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため,本発明のスピーカ装置は,入力される音声信号の信号レベルを増幅する増幅手段と,スピーカ及び該スピーカの前方周囲に設けられ前記スピーカの再生音を反射する反射壁を備え,前記増幅手段により増幅された音声信号をそれぞれ再生する複数個のスピーカユニットと,前記各スピーカユニットの指向性を可変する指向性可変手段と,を備えるようにした。」
・「【0017】
図4はスピーカユニットの他の構造を模式的に示した図である。 この図4に示すスピーカユニット2は,キャビネット3内に照明手段である照明器具7と照明用ソケット31を取り付けるようにしている。この場合,照明用ソケット31はキャビネット3の反射壁17として機能する部分に取り付けた支持部材32により固定するようにしている。これにより,スピーカ装置1を構成するスピーカユニット2においてスピーカ6と照明器具7とを一体化することができる。 また,このとき照明用ソケット31の形状をスピーカ6からの音を拡散させるような形状,所謂ディフューザとなるような形状にすれば,スピーカ6により再生する再生音の音質を改善することができる。なお,ディフューザ形状としては,図示するような半球状の他にコーン状(円錐状)等がある。」
・図4には,以下の内容が示されている。



・段落【0017】の「スピーカ装置1を構成するスピーカユニット2においてスピーカ6と照明器具7とを一体化する」ことから、スピーカ装置1を構成し、スピーカ6と照明器具7を一体化するスピーカユニット2であることは明らかである。
・段落【0017】の記載事項と図4の図示内容からみて,照明器具7の上方に配置されたスピーカ6と,照明器具7とスピーカ6を収納するキャビネット3とを備えること,及び,照明器具7を支持する半球状の他にコーン状(円錐状)等のディフューザ形状の照明用ソケット31と,照明用ソケット31を内部に収納する筒状のキャビネット3と,照明用ソケット31の形状は,半球状の他にコーン状(円錐状)等のスピーカ6に向かって凸であることが,理解できる。

これらの事項からみて,引用文献1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「天井等の上部位置に取り付け可能なスピーカ装置1に関し,
スピーカ装置1を構成し、スピーカ6と照明器具7とを一体化するスピーカユニット2であって,
照明器具7の上方に配置されたスピーカ6と,照明器具7とスピーカ6を収納するキャビネット3とを備え,
照明器具7を支持する半球状の他にコーン状(円錐状)等のディフューザ形状の照明用ソケット31と,照明用ソケット31はキャビネット3の反射壁17として機能する部分に取り付けた支持部材32により固定し,照明用ソケット31を内部に収納する筒状のキャビネット3と,
照明用ソケット31の形状は,半球状の他にコーン状(円錐状)等のスピーカ6に向かって凸である,
スピーカ6と照明器具7とを一体化するスピーカユニット2。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は,音声信号出力装置に関し,より詳細には,天井に設置されている電源コンセントに接続する音声信号出力装置に関する。」
・「【0013】
(第1の実施の形態) 以下,本発明の実施形態について,図面を参照しながら詳細に説明する。 図1は,本発明の実施形態に係る音声信号出力装置の構成例を示す図で,図1(A)は音声信号出力装置を天井に取り付けた状態を示す側面図,図1(B)は音声信号出力装置の上面図,図1(C)は音声信号出力装置の底面図である。 本実施の形態に係る音声信号出力装置10は,スピーカユニット12および制御基板13を内部に格納した筐体からなる音声信号出力部11と,音声信号出力装置10の動作状態を通知するために音声信号出力部11の筐体に取り付けられる状態通知部14と,天井17に設置されたコンセントに音声信号出力部11を固定して電源供給を受ける天井接続部15と,シーリングライトなど天井設置型の照明器具(図示せず)を音声信号出力部11に取り付ける照明取付部16とを有する。」
・「【0015】
音声信号出力部11を構成する筐体は,図1の構成では水平方向に細長い矩形形状を備え,スピーカユニット12の放音方向が下方に向いているが,本例の図2の構成では,音声信号出力部11を構成する筐体は,水平方向の大きさが小さくなるとともに高さ方向の大きさが大きくなって,スピーカユニット12の放音方向が水平方向側方を向くように構成されている。
【0016】
図3は,図1に示した音声信号出力装置10に対するシーリングライトの接続例を示す図である。シーリングライト21は,直接に,もしくは接続アダプター22を介して音声信号出力装置10の照明取付部16に接続される。」
・図1,図3には,以下の内容が示されている。



・図3から,音声信号出力部11を構成する筐体は,シーリングライト21の鉛直(軸) 方向に見た場合にシーリングライト21の側方に張り出していることが看てとれる。
これらの記載事項及び図示内容からみて,引用文献2には,以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。) が記載されていると認められる。
「天井に設置されている電源コンセントに接続する音声信号出力装置10に関し,音声信号出力装置10は,スピーカユニット12および制御基板13を内部に格納した筐体からなる音声信号出力部11と,天井17に設置されたコンセントに音声信号出力部11を固定して電源供給を受ける天井接続部15と,シーリングライトなど天井設置型の照明器具を音声信号出力部11に取り付ける照明取付部16とを有し,音声信号出力部11を構成する筐体は,水平方向に細長い矩形形状を備え,スピーカユニット12の放音方向が下方に向いており,シーリングライト21は,直接に,もしくは接続アダプター22を介して音声信号出力装置10の照明取付部16に接続され,音声信号出力部11を構成する筐体は,シーリングライト21の鉛直(軸) 方向に見た場合にシーリングライト21の側方に張り出している,音声信号出力装置10。」

(3)引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「技術分野
[0001] 本発明は,スピーカに関し,特に照明器具を備えたものに関する。」
・「[0019] 本発明の第1実施形態の照明器具付きスピーカは,例えば商業施設において,複数のダウンライトが取り付けられているような場所に使用されるもので,図1に示すように,収容部2を有している。収容部2は,筒状体,例えば円筒状の周壁部4を有し,その一方の端部が開口部6とされ,他方の端部が内奥壁8によって閉じられている。開口部6の周縁には環状フランジ10が形成されている。この収容部2は,例えば天井12に形成された孔内に,開口部6が天井12の表面側に位置し,フランジ10が天井12の表面に接するように,孔内に取り付けられている。この取り付けられた状態において,収容部2が,同じ天井12に取り付けられているダウンライトと同じに見えるように,開口部6の形状や寸法は,選択されている。
[0020] この収容部2内の中心軸線上の内奥壁8側によった位置に,コーンスピーカユニット14が配置されている。コーンスピーカユニット14は,本発明のスピーカユニットの一例である。コーンスピーカユニット14は,その放音部,例えばコーンスピーカユニット14のコーンの先端にある放音開口16が,開口部6側を向くように収容部2内に取り付けられている。
[0021] 収容部2の周壁部4の内面及び内奥壁8の内面には,反射手段,例えば反射膜18a,18bが取り付けられている。この周壁部4の反射膜18a上に,コーンスピーカユニット14を包囲するように,複数の光源,例えばLED20が取り付けられている。これらLED20は,反射膜18a上に取り付けた環状の帯状体19上に,その周方向に所定の間隔をそれぞれあけて配置されている。各LED20は,発光面21を有し,この発光面21と反対側の面が帯状体19に取り付けられている。実際には,帯状体19上に各LED20を取り付けた後,帯状体19を環状にして,反射膜18a上に取り付ける。これによって,発光面21が,コーンスピーカユニット14側を向いている。各LED20は,取り付けられた状態において,発光面21から開口部6側に向かう光,コーンスピーカユニット14側及び内奥壁8側に向かう光を放射するように構成されている。このコーンスピーカユニット14方向及び内奥壁8側に放射された光は,図に示すように反射膜18a,18bによって反射されて,開口部6に向かう。このように,直接に開口部6側に放射される光以外の光も反射させて,開口部6から放射するので,開口部6から均一に光を放射することができる。
[0022] これらLED20よりも開口部6側によった位置に,通過部,例えば光透過部22が設けられている。具体的には,光透過部22は,コーンスピーカユニット14の放音開口16の周縁に,放音開口16の周縁にほぼ一致する開口23を有し,この開口23から,開口部6の周縁まで伸延し,開口部6側の面がパラボラ反射鏡状に湾曲させて形成されている。この構成により,光透過部22が,コーンスピーカユニット14の放音開口16から発せられる音の伝搬を助ける音道としても機能し,コーンスピーカユニット14からの音は良好に開口部6から外部に伝搬する。光透過部22は,例えば半透明材料によって構成されている。従って,LED20からの直接の光や,反射膜18a,18bによって反射された光は,この半透明の光透過部22を透過して,柔らかい光となって,開口部6から放射される。また,光透過部22を透過した光には,直接に開口部6から放射されるものの他に,図に符号Aで示すように光透過部22を透過した後に,この透過した位置とは別の位置の光透過部22の表面で一部が反射されて,開口部6から放射されるものがある。一般のダウンライトにおいても,反射部を設けて光を反射させているので,開口部6からの光は,通常のダウンライトからの光と同様になる。」
・図1には,以下の内容が示されている。


図1から,光透過部22は,各LED20を支持する環状の帯状体19よりも前方に位置していることが看てとれる。

これらの記載事項及び図示内容からみて,引用文献3には,以下の事項(以下「引用文献3にに記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「照明器具付きスピーカであって,収容部2は,円筒状の周壁部4を有し,その一方の端部が開口部6とされ,他方の端部が内奥壁8によって閉じられ,開口部6の周縁には環状フランジ10が形成され,収容部2は,天井12に形成された孔内に,開口部6が天井12の表面側に位置し,フランジ10が天井12の表面に接するように,孔内に取り付けられ,
収容部2内の中心軸線上の内奥壁8側によった位置に,コーンスピーカユニット14が配置され,コーンスピーカユニット14のコーンの先端にある放音開口16が,開口部6側を向くように収容部2内に取り付けられており,収容部2の周壁部4の内面及び内奥壁8の内面には,反射膜18a,18bが取り付けられ,周壁部4の反射膜18a上に,コーンスピーカユニット14を包囲するように,複数の光源であるLED20が取り付けられ,LED20は,反射膜18a上に取り付けた環状の帯状体19上に,その周方向に所定の間隔をそれぞれあけて配置され,各LED20は,発光面21を有し,この発光面21と反対側の面が帯状体19に取り付けられ,発光面21が,コーンスピーカユニット14側を向いており,直接に開口部6側に放射される光以外の光も反射させて,開口部6から放射するので,開口部6から均一に光を放射することができ,
LED20よりも開口部6側によった位置に,光透過部22が設けられ,光透過部22は,コーンスピーカユニット14の放音開口16の周縁に,放音開口16の周縁にほぼ一致する開口23を有し,この開口23から,開口部6の周縁まで伸延し,開口部6側の面がパラボラ反射鏡状に湾曲させて形成され,
光透過部22は,各LED20を支持する環状の帯状体19よりも前方に位置している,
照明器具付きスピーカ。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
ア.本願発明1と引用発明とを対比すると,後者の「スピーカ6」は前者の「スピーカユニット」に,以下同様に,「キャビネット3」は「器具本体」に,「スピーカ6と照明器具7を一体化するスピーカユニット2」はスピーカ6と照明器具7を有するから「照明器具」に,それぞれ相当する。
イ.後者の「照明器具7」は前者の「光源」を有すること及び後者の「照明器具7」は下方に照射しているのは明らかであるから,後者の「照明器具7の上方に配置されたスピーカ6と,照明器具7とスピーカ6を収納するキャビネット3」と,前者の「前記光源の光出射方向とは反対側に配置されたスピーカユニットと,前記光源及び前記スピーカユニットを収納する器具本体」とは,「前記照明器具の照射方向とは反対側に配置されたスピーカユニットと,前記光源及び前記スピーカユニットを収納する器具本体」において共通する。
ウ.後者の「スピーカユニット2」は「天井等の上部位置に取り付け可能なスピーカ装置1」に備えられているから,前者の「前記照明器具は,天井埋込み型照明器具」とは,「前記照明器具は,天井に備えられた照明器具」において共通する。
エ.後者の「照明器具7を支持する半球状の他にコーン状(円錐状)等のディフューザ形状の照明用ソケット31」と,前者の「前記光源を内部に支持する有底筒状の第1筐体部」とは,「前記光源を支持する有底の部材」において共通する。
オ.後者の「キャビネット3」は筐体部としての機能を有するものであるから、「照明用ソケット31を内部に収納する筒状のキャビネット3」と,前者の「前記第1筐体部を内部に収納する筒状の第2筐体部」とは,「前記有底の部材を内部に収納する筒状の筐体部」において共通する。
カ.後者の「照明器具7とスピーカ6を収納するキャビネット3」と,前者の「前記スピーカユニットを収納し,前記スピーカユニットからの後方側の音を封じ込める空間を形成するエンクロージャー部」とは,「前記スピーカユニットを収納し,前記スピーカユニットの後方側の空間を形成する部分」において共通する。
キ.後者の「照明用ソケット31の形状は,半球状の他にコーン状(円錐状)等のスピーカ6に向かって凸である」ことと,前者の「前記第1筐体部の底部は,前記スピーカユニットに向かって凸であ」ることとは「前記有底の部材の底部は,前記スピーカユニットに向かって凸である」ことにおいて共通する。
そうすると,両者は,
「照明器具であって,
光源と,
前記照明器具の照射方向とは反対側に配置されたスピーカユニットと,
前記光源及び前記スピーカユニットを収納する器具本体とを備え,
前記照明器具は,天井に備えられた照明器具であり,
前記器具本体は,
前記光源を支持する有底の部材と,
前記有底の部材を内部に収納する筒状の筐体部と,
前記スピーカユニットを収納し,前記スピーカユニットの後方側の空間を形成する部分と,
を有し,
前記有底の部材の底部は,前記スピーカユニットに向かって凸である,
照明器具。」
において一致し,以下の各点において相違する。
<相違点1>
前記照明器具の照射方向が,本願発明1では,「前記光源の光出射方向」であるのに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。
<相違点2>
天井に備えられた照明器具が,本願発明1では,「天井埋込み型照明器具」であるのに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。
<相違点3>
前記光源を支持する有底の部材が,本願発明1では,前記光源を「内部に」支持する有底「筒状」の「第1筐体部」であって,前記部材を内部に収納する筐体部が,本願発明1では,前記「第1筐体部」を内部に収納する筒状の「第2」筐体部であり,前記スピーカユニットに向かって凸である前記部材の底部が,本願発明1では,前記「第1筐体部」の底部であるのに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。
<相違点4>
前記器具本体の前記スピーカユニットを収納し,前記スピーカユニットの後方側の空間を形成する部分が,本願発明1では,「前記スピーカユニットからの後方側の音を封じ込める空間を形成するエンクロージャー部」であり,「前記エンクロージャー部は,前記第2筐体部の軸方向に見た場合に,前記第2筐体部の側方に張り出して」いるのに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。
<相違点5>
本願発明1では,「前記スピーカユニットの光出射側の端部から前記第2筐体部の内面にかけて傾斜した傾斜部とを有し,」「前記傾斜部は,前記第1筐体部より後方に位置している」のに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。

(2)相違点の判断
事案に鑑み,まず,相違点5について検討する。
ア.本願発明1と引用文献3に記載された事項とを対比すると,後者の「LED20」は前者の「光源」に相当し,以下同様に,「コーンスピーカユニット14」は「スピーカユニット」に,「収容部2」は「器具本体」に,「照明器具」は天井に埋め込まれているから「天井埋込み型照明器具」又は「照明器具」に,「環状の帯状体19」は「第1筐体部」に,「周壁部4」及び「反射膜18a」は「第2筐体部」に,「コーンの先端」は「端部」に,「光透過部22」は「傾斜部」に,それぞれ相当する。
イ.後者の「収容部2内の中心軸線上の内奥壁8側によった位置に,コーンスピーカユニット14が配置され,コーンスピーカユニット14のコーンの先端にある放音開口16が,開口部6側を向くように収容部2内に取り付けられており,収容部2の周壁部4の内面及び内奥壁8の内面には,反射膜18a,18bが取り付けられ,周壁部4の反射膜18a上に,コーンスピーカユニット14を包囲するように,複数の光源であるLED20が取り付けられ,LED20は,反射膜18a上に取り付けた環状の帯状体19上に,その周方向に所定の間隔をそれぞれあけて配置され」ていることは,上記ア.の相当関係を踏まえると,前者の「前記光源と前記スピーカユニットを収納する器具本体」「を備え」ることに相当し,前者の「前記器具本体は,前記光源を内部に支持する有底筒状の第1筐体部と,前記第1筐体部を内部に収納する筒状の第2筐体部と,前記スピーカユニットを収納し,前記スピーカユニットからの後方側の音を封じ込める空間を形成するエンクロージャー部と,」「を有し」ていることとは,「前記器具本体は,前記光源を支持する筒状の第1筐体部と,前記第1筐体部を内部に収納する筒状の第2筐体部と,前記スピーカユニットを収納し,前記スピーカユニットから後方側の空間を形成する部分と,」「を有し」ていることにおいて共通する。
ウ.後者の「LED20よりも開口部6側によった位置に,光透過部22が設けられ,光透過部22は,コーンスピーカユニット14の放音開口16の周縁に,放音開口16の周縁にほぼ一致する開口23を有し,この開口23から,開口部6の周縁まで伸延し,開口部6側の面がパラボラ反射鏡状に湾曲させて形成され」ていることと,前者の「前記スピーカユニットの光出射側の端部から前記第2筐体部の内面にかけて傾斜した傾斜部とを有し」ていることとは,上記ア.の相当関係を踏まえると,「前記スピーカユニットの端部から前記第2筐体部の内面にかけて傾斜した傾斜部とを有し」ていることにおいて共通する。
エ.そうすると,本願発明1に倣って整理すると,引用文献3には,以下の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されているといえる。
「照明器具と
光源と,
スピーカユニットと,
前記光源と前記スピーカユニットを収納する器具本体とを備え,
前記照明器具は,天井埋込み型照明器具であり,
前記器具本体は,
前記光源を支持する筒状の第1筐体部と,
前記第1筐体部を内部に収納する筒状の第2筐体部と,
前記スピーカユニットを収納し,前記スピーカユニットから後方側の空間を形成する部分と
前記スピーカユニットの端部から前記第2筐体部の内面にかけて傾斜した傾斜部とを有し
前記傾斜部は,前記第1筐体部よりも前方に位置している
照明器具。」
オ.そして,引用発明と引用文献3記載事項は,いずれも,天井に備えた照明器具であって,光源とスピーカユニットを収納する器具本体を備えた照明器具である点において共通しているものの引用文献3記載事項は,「前記傾斜部は,前記第1筐体部よりも前方に位置している」ものであって,「前記傾斜部は,前記第1筐体部よりも後方に位置している」という構成は,備えていないから,引用発明に引用文献3記載事項を適用しても,相違点5に係る本願発明1の構成には至らない。
また,引用文献3の傾斜部を構成する光透過部22は,光を透過することを前提としているものであるので,光源を支持する帯状体19(第1筐体部)より光透過部22(傾斜部)を後方に位置させると,照射方向(前方)に光を透過させる必要がなくなるため,光源を支持する帯状体19(第1筐体部)より光透過部22(傾斜部)を後方に位置させようとはしない。
カ.また,引用文献2にも,「前記傾斜部は,前記第1筐体部よりも後方に位置している」という構成は記載されていない。
キ.そして,上記相違点5に係る本願発明1の構成により,本願発明1は,第1筐体部より後方(すなわち,スピーカユニット側)に傾斜部を設けることによって,出力音圧レベルの低下(ディップ)が解消され,照明器具の音質を高めることができるという格別な作用効果を奏するといえる。
ク.したがって,その他の相違点を検討するまでもなく,本願発明1は,引用発明に,引用文献2記載事項,及び,引用文献3記載事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2-6について
本願発明2-6は,本願発明1の発明特定事項を全て含み,さらに請求項2-6で特定された事項でさらに限定するものであるから,本願発明2-6は,上記1で本願発明1について示したのと同じ理由により,引用発明,引用文献2記載事項,及び,引用文献3記載事項に基いて当業者が容易に発明をできたものであるとはいえない。

第6.むすび
以上のとおり,本願発明1-6は,引用発明,引用文献2記載事項,及び,引用文献3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-03 
出願番号 特願2018-508874(P2018-508874)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F21V)
最終処分 成立  
前審関与審査官 野木 新治  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
藤井 昇
発明の名称 照明器具  
代理人 新居 広守  
代理人 道坂 伸一  
代理人 寺谷 英作  

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