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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01F
管理番号 1376653
審判番号 不服2020-8595  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-22 
確定日 2021-08-04 
事件の表示 特願2018-531434「コンパクトな流量計及び関連する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月22日国際公開、WO2017/105493、平成30年12月20日国内公表、特表2018-537687〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)12月18日を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 7月26日 :翻訳文の提出
令和 元年 5月 7日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 8月 8日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 2月27日付け:拒絶査定(同年3月3日送達、以下「原査定」という。)
令和 2年 6月22日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 令和2年6月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年6月22日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和2年6月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正であり、この補正により、本件補正前の請求項3が削除されるとともに、以下に示すとおり、本件補正前の特許請求の範囲の請求項8が、補正後請求項7に補正された。

<補正前請求項8>
「 【請求項8】
流量計を形成する方法であって、
導管と少なくとも1つのドライバと導管に取り付けられる少なくとも1つのピックオフを備えるセンサアセンブリを付与するステップを備え、
導管はその中にプロセス流体を受け入れるように構成された第1の断面D字形状の導管と、その中にプロセス流体を受け入れるように構成された第2の断面D字形状の導管を備える、方法。」

<補正後請求項7>
「 【請求項7】
流量計を形成する方法であって、
導管と少なくとも1つのドライバと導管に取り付けられる少なくとも1つのピックオフを備えるセンサアセンブリを付与するステップを備え、
導管はその中にプロセス流体を受け入れるように構成された第1の断面D字形状の導管と、その中にプロセス流体を受け入れるように構成された第2の断面D字形状の導管を備え、
導管(400)は、第1及び第2の断面D字形状の導管(400A、400B)の合計幅に両導管の間の空間(S_(2))を加えた幅を有するように構成され、該幅は、流体が行き来可能に構成された入口パイプ(120)の幅以下である、方法。」(下線は、補正箇所を示す。)

本件補正は、本件補正前の「その中にプロセス流体を受け入れるように構成された第1の断面D字形状の導管と、その中にプロセス流体を受け入れるように構成された第2の断面D字形状の導管を備え」た「導管」について、「導管(400)は、第1及び第2の断面D字形状の導管(400A、400B)の合計幅に両導管の間の空間(S2)を加えた幅を有するように構成され、該幅は、流体が行き来可能に構成された入口パイプ(120)の幅以下である」との限定を付加する補正を含むものであり、かつ本件補正前の請求項8に記載された発明と本件補正後の請求項7に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。

そこで、本件補正後の請求項7に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。


2 本件補正後の本願発明
本件補正後の請求項7に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。


3 引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前の平成11年8月27日に頒布された刊行物である特開平11-230804号公報(以下「引用刊行物」という。)には、「コリオリ流量計」(発明の名称)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。下線は当審が付した。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コリオリ流量計に関し、特に、並列2本の直管フローチューブを用いるコリオリ流量計に関する。」

「【0009】図6は、並列2本の直管状フローチューブを用いる従来技術のコリオリ流量計を示している。図において、支持部材20と23は、左右対称に、それぞれ測定流体の流入口21と流出口24、及び該流入口21及び流出口24に連通した分岐管22と25を有している。分岐管22と25の間には、同寸の直管からなるフローチューブ4a、4bが互いに平行に連通して固着支持されている。フローチューブ4a、4bの中央部には、コイルとコアとからなる駆動装置7が設けられ、さらに、駆動装置の両側で、フローチューブ4a、4bには、コイルとマグネットからなる一対のセンサ8が設けられている。このようなコリオリ流量計は、図示しない配管フランジ間にフランジ2a、2bを接合して配管と同軸に装着されて使用される。
【0010】駆動装置7は、センサ8の電圧をフィードバックすることにより、一定振幅に制御しつつ、フローチューブ4aと4bを反対位相で加振している。流体が流通するフローチューブ4aと4bには、この加振に基づきコリオリの力が作用し、一対のセンサ8が、このコリオリの力に比例する位相差信号を検出する。
【0011】流体密度或いは温度に変動があっても、その影響は2本の並列フローチューブ4a、4bに等しく及ぶので、同軸或いは平行のカウンタチューブを、フローチューブとは別に備える前述の例と比較して、密度影響或いは温度影響を受けにくく、チューニングフォーク状の安定した振動を得ることが可能である。しかし、2本の並列フローチューブに分流、或いは合流させるための分岐管22、25を有しているために、流入口21から流出口24を見通すことができず、それ故、洗浄が困難であるという問題を生じている。また、直管形は、変形し難く、原理的に感度が悪いという欠点を持っていることに加えて、従来の構成は、配管径に対してフローチューブ通過面積が小さく、それ故、圧力損失が大きいという問題を生じている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、流入口から流出口を見通すことを可能にして洗浄を容易にすると共に、配管口径面積に対してフローチューブ面積比を大きく取って圧力損失を小さくした並列2本の直管偏平チューブを用いるコリオリ流量計を提供することを目的としている。
【0013】また、本発明は、密度影響或いは温度影響を受けにくく、チューニングフォーク状の安定した振動を得ることを目的としている。さらに、本発明は、フローチューブが加振方向に変形し易く、感度を上げることを可能にすることを目的としている。」

「【0014】
【課題を解決するための手段】本発明のコリオリ流量計は、被測定流体の流入口21を有する流入側フランジ2a及び流出口24を有する流出側フランジ2bを備え、これらの流入側フランジ2aと流出側フランジ2bの間に並列2本のフローチューブ4aと4bが結合されて、測定流体が流入口21及び流出口24と連通して直管状の並列2本のフローチューブに流れるように構成されている。そして、並列2本のフローチューブを逆位相で共振振動させる駆動装置と、該振動により該フローチューブに作用するコリオリの力に比例した位相差を検知することにより質量流量を測定する一対のセンサが備えられている。」

「【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、その実施の形態に基づき、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明を適用する並列2本の直管偏平チューブを用いるコリオリ流量計の一例の縦断面図を、また図2はその直管扁平チューブの横断面図を示している。図において、1は外筐、2a及び2bは配管と接続するためのフランジ、4a、4bは測定流体が流れる並列2本のフローチューブ、7はフローチューブを共振振動させる駆動装置、8は駆動装置7の両側に対称に設けられた一対のセンサである。
【0019】この並列2本の直管偏平チューブを有するコリオリ流量計は、両端で接続フランジ2a、2bに結合された中空円筒状の外筐1を有し、外筐1内には、被測定流体が流れる直管かつ偏平の、例えばステンレス、ハステロイ、チタン合金等から構成される2本のフローチューブ4a、4bが加振方向(図1及び図2の上下方向)に平行かつ対称に配設されている。この接続フランジ2a、2bと、並列2本のフローチューブ4a、4b及び外筐1との結合は、ロー付け、溶接等の適宜の手段を用いて行うことができる。
【0020】コイルとマグネット等からなる駆動装置7は、フローチューブ4aと4bを逆位相で共振振動させるために、一方にコイル、他方にマグネットを取り付けている。このようにして、フローチューブ4aと4bをその固有振動の一次モードで振動させる。さらに、一般的に、この種のコリオリ流量計は、センサにより検出される振幅値が一定になるように、駆動装置を制御している。
【0021】流体が流れたとき、振動のスピードが最大となる中央部を境に、流入側と流出側ではコリオリ力が反対方向となりフローチューブ4a、4bはうねるようにたわむことになる。これを二次モード成分と称しているが、フローチューブ4a、4bは、駆動装置による加振に基づく一次モードの振動と、コリオリ力に基づく二次モードの振動が重畳される形で変位する。コイルとマグネット等から構成することのできる一対のセンサ8が、駆動装置7の両側で二次モード成分が最大となる位置で、フローチューブ4a、4bに設置されて、コリオリの力によるフローチューブ4a、4bの位相差を検知し、これによって質量流量を知ることができる。
【0022】本発明を適用するコリオリ流量計のフローチューブの横断面図である図2に見られるように、フローチューブ4a、4bはそれぞれ、断面形状において、加振方向に偏平した楕円形状を有している。コリオリの力は、流速と密度の積算値である質量流量と駆動周波数とのベクトル積に比例して生じ、コリオリの力はフローチューブの曲げ変位による位相差として検出するものであるから、フローチューブを変形し易くすることにより、SN比の高い高感度なコリオリの力を検出することができる。このように、フローチューブを加振方向に偏平させることにより、フローチューブは変形し易くなり、感度を上げることができる。
【0023】図2の外周側に点線で示す円形は、配管口径を示しているが、この配管口径は、フランジ2a及び2bの流入口21及び流出口24の径とも通常一致している。図示した例において、フローチューブ4a、4bの断面の略全体が、この流入口21或いは流出口24の径内にあるように構成されている。これによって、流入口21から、流出口24を見通すことができ、洗浄が容易となる。しかも、前述のように、フローチューブを扁平させたために、配管口径面積に対してチューブ面積比を大きくすることができる。図2において各フローチューブ4a、4b内に点線で示す円形は、楕円形状のフローチューブとの断面積比較のために示すものである。円管を楕円形状に扁平させることにより、図示の楕円フローチューブ内の点線ハッチング部分だけ、配管口径内に位置するチューブ断面積を増加させることが可能になる。
【0024】図3は、偏平フローチューブの別の例を示している。この図示の例において、偏平形状は、半月形状、或いは蒲鉾(かまぼこ)形状である。このような形状によって、配管口径面積に対して、そこに占めるフローチューブの面積をさらに大きくすることが可能となる。同時に、前述の楕円形状と同様に、フローチューブ4a、4bは偏平方向に変形し易く、感度を上げることができると共に、フローチューブ4a、4bの断面の大部分が、流入口21或いは流出口24の径内にあって、洗浄容易な構成となっている。
【0025】なお、洗浄容易な構成とするために、図示の構成のように、フローチューブ断面の大部分が流入口21或いは流出口24の径内にあることが望ましいが、フローチューブの断面の少なくともその一部が、流入口21及び流出口24と一直線になっているならば、フローチューブを洗浄することが可能である。」

「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する並列2本の直管偏平チューブを用いるコリオリ流量計の一例の縦断面図である。
【図2】図1に示した本発明のコリオリ流量計の直管扁平チューブの横断面図を示している。
【図3】直管偏平フローチューブの別の例を示す横断面図である。
(中略)
【図6】並列2本の直管状フローチューブを用いる従来技術のコリオリ流量計を示している。」

【図1】


【図2】


【図3】


【図6】


本願明細書の【0025】、【図2】の記載からみて、本願発明における「第1及び第2の断面D字形状の導管(400A、400B)の合計幅」とは、並列した2本の導管の断面を見たとき、当該2本の導管が並ぶ方向に沿って各導管の内径を足した長さの最大値を意味するものと理解される。これを踏まえて、引用刊行物の【0018】、【0024】及び直管偏平フローチューブの横断面図を示す【図3】をみると、横断面が半月形状、或いは蒲鉾(かまぼこ)形状である2本のフローチューブ4a、4bが並ぶ方向に沿って各フローチューブの内径を足した長さの最大値(すなわちフローチューブ4a、4bの合計幅)と、当該フローチューブ4a、4bの間隔を合計した長さは、流入側フランジ2a及び流出側フランジ2bに接続される配管の口径(図3において、フローチューブ4a、4bの外周側に点線で示されている)と同じであることが読み取れる。

以上を総合すると、上記記載事項及び図面からみて、引用刊行物には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「コリオリ流量計であって、
コリオリ流量計は、並列2本のフローチューブを逆位相で共振振動させる駆動装置と、該振動により該フローチューブに作用するコリオリの力に比例した位相差を検知することにより質量流量を測定する一対のセンサを備えるとともに(【0014】)、前記駆動装置は前記センサにより検出される振幅値が一定になるように制御されており(【0020】)、
さらに、被測定流体の流入口21を有する流入側フランジ2a及び流出口24を有する流出側フランジ2bを備え、当該流入側フランジ2a及び流出側フランジ2bは配管と接続するためのフランジであり、これらの流入側フランジ2aと流出側フランジ2bの間に並列2本のフローチューブ4aと4bが結合されて、測定流体が流入口21及び流出口24と連通して直管状の並列2本のフローチューブに流れるように構成され(【0014】、【0018】)、前記並列2本のフローチューブ4a及び4bは、その横断面が半月形状、或いは蒲鉾(かまぼこ)形状であり(【0024】、【図3】)、
前記横断面が半月形状、或いは蒲鉾(かまぼこ)形状であるフローチューブ4a、4bの合計幅と、当該フローチューブ4a、4bの間隔を合計した長さが、前記流入側フランジ2aに接続される配管の口径と同じである(【0018】、【0024】、【図3】)、
コリオリ流量計。」


4 対比

(1)本願補正発明と引用発明の対比
本願補正発明と引用発明を対比する。

ア 引用発明の「並列2本のフローチューブ」、「駆動装置」、「一対のセンサ」は、それぞれ本願補正発明の「導管」、「少なくとも1つのドライバ」、「少なくとも1つのピックオフ」に相当する。
そして、引用発明の「コリオリ流量計」は、本願補正発明の「センサアセンブリ」に相当する。
また、引用発明において「前記駆動装置は前記センサにより検出される振幅値が一定になるように制御されて」おり、「コリオリ流量計」が駆動装置を制御する装置を有することは明らかであるから、引用発明の、このような駆動装置を制御する装置を有する「コリオリ流量計」は、本願補正発明の「流量計」に相当する。

イ 引用発明の「測定流体が」「流れるように構成され」、「その横断面が半月形状、或いは蒲鉾(かまぼこ)形状であ」る「並列2本のフローチューブ4a及び4b」は、本願補正発明の「その中にプロセス流体を受け入れるように構成された第1の断面D字形状の導管」及び「その中にプロセス流体を受け入れるように構成された第2の断面D字形状の導管」に相当する。

ウ 引用発明の「前記横断面が半月形状、或いは蒲鉾(かまぼこ)形状であるフローチューブ4a、4bの合計幅」は、本願補正発明の「第1及び第2の断面D字形状の導管(400A、400B)の合計幅」に相当し、引用発明の「当該フローチューブ4a、4bの間隔」は、本願補正発明の「両導管の間の空間(S2)」の長さに相当するから、引用発明の「前記横断面が半月形状、或いは蒲鉾(かまぼこ)形状であるフローチューブ4a、4bの合計幅と、当該フローチューブ4a、4bの間隔を合計した長さ」は、本願補正発明の「第1及び第2の断面D字形状の導管(400A、400B)の合計幅に両導管の間の空間(S2)を加えた幅」に相当する。
引用発明の「流入側フランジ2aに接続される配管の口径」は、本願補正発明の「流体が行き来可能に構成された入口パイプ(120)の幅」に相当する。

よって、引用発明の「前記横断面が半月形状、或いは蒲鉾(かまぼこ)形状であるフローチューブ4a、4bの合計幅と、当該フローチューブ4a、4bの間隔を合計した長さが、前記流入側フランジ2aに接続される配管の口径と同じである」ことは、本願補正発明の「導管(400)は、第1及び第2の断面D字形状の導管(400A、400B)の合計幅に両導管の間の空間(S2)を加えた幅を有するように構成され、該幅は、流体が行き来可能に構成された入口パイプ(120)の幅以下である」ことに相当する。


(2)一致点及び相違点
上記(1)の検討を総合すると、本願補正発明と引用発明の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

<一致点>
導管と少なくとも1つのドライバと導管に取り付けられる少なくとも1つのピックオフを備えるセンサアセンブリを備え、
前記導管はその中にプロセス流体を受け入れるように構成された第1の断面D字形状の導管と、その中にプロセス流体を受け入れるように構成された第2の断面D字形状の導管を備え、
さらに、前記導管は、第1及び第2の断面D字形状の導管の合計幅に両導管の間の空間を加えた幅を有するように構成され、該幅は、流体が行き来可能に構成された入口パイプの幅以下である
流量計に関する発明である点。

<相違点>
本願補正発明は「導管と少なくとも1つのドライバと導管に取り付けられる少なくとも1つのピックオフを備えるセンサアセンブリを付与するステップを備え」る、「流量計を形成する方法」であるのに対して、引用発明は、並列2本のフローチューブと駆動装置と一対のセンサを備えるコリオリ流量計であるが、当該コリオリ流量計を形成する方法として特定されたものではなく、センサアセンブリに相当する構成を付与するステップも特定されていない点。


5 当審の判断
上記相違点について、検討する。

引用刊行物には、引用発明であるコリオリ流量計の具体的形成方法は記載されていないが、引用発明は、前記<一致点>において認定したとおり、「導管と少なくとも1つのドライバと導管に取り付けられる少なくとも1つのピックオフを備えるセンサアセンブリ」を備えるということができるから、引用発明のコリオリ流量計を形成するに際して、コリオリ流量計として完成する前には、「導管と少なくとも1つのドライバと導管に取り付けられる少なくとも1つのピックオフを備えるセンサアセンブリを付与するステップを備え」るべきことは当業者には自明であり、当該ステップを備える「流量計を形成する方法」についての着想を得ることに格別困難性は認められない。

したがって、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項は、物の発明である引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得る方法の発明である。

そして、本願補正発明によって奏される効果が、当業者の予測を超える格別顕著な効果であると認めることはできない。

よって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。


6 まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明8」という。)は、令和元年8月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、8に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「 【請求項1】
メータ電子機器(20)に接続されたセンサアセンブリ(10)を有する流量計(5)であって、
センサアセンブリ(10)は、少なくとも1つのドライバ(104)と少なくとも1つのピックオフ(105)を備え、
その中にプロセス流体を受け入れるように構成された第1の断面D字形状の導管(400A)と、
その中にプロセス流体を受け入れるように構成された第2の断面D字形状の導管(400B)を備え、
第1及び第2の断面D字形状の導管(400A、400B)の合計幅に両導管の間の空間(S2)を加えた幅は、入口パイプ(120)の幅未満である、流量計(5)。」

「 【請求項8】
流量計を形成する方法であって、
導管と少なくとも1つのドライバと導管に取り付けられる少なくとも1つのピックオフを備えるセンサアセンブリを付与するステップを備え、
導管はその中にプロセス流体を受け入れるように構成された第1の断面D字形状の導管と、その中にプロセス流体を受け入れるように構成された第2の断面D字形状の導管を備える、方法。」


第4 原査定における拒絶の理由

原査定の拒絶の理由2は、この出願の請求項1-10に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用刊行物.特開平11-230804号公報


第5 引用刊行物に記載された発明
引用刊行物に記載された発明は、前記「第2」の「3 引用刊行物に記載された発明」において、引用発明として示したとおりである。


第6 対比・判断

1 本願発明1について

(1)本願発明1と引用発明の対比
本願発明1と引用発明を対比する。

ア 引用発明の「駆動装置」、「一対のセンサ」は、それぞれ本願発明1の「少なくとも1つのドライバ」、「少なくとも1つのピックオフ」に相当する。
引用発明の「コリオリ流量計」は、本願発明1の「センサアセンブリ(10)」に相当する。
また、引用発明において「前記駆動装置は前記センサにより検出される振幅値が一定になるように制御されて」おり、「コリオリ流量計」が駆動装置を制御する装置を有することは明らかであるから、引用発明の、このような「駆動装置を制御する装置」、当該駆動装置を制御する装置を有する「コリオリ流量計」は、それぞれ本願発明1の「メータ電子機器(20)」、「流量計(5)」に相当する。
したがって、引用発明の「コリオリ流量計は、並列2本のフローチューブを逆位相で共振振動させる駆動装置と、該振動により該フローチューブに作用するコリオリの力に比例した位相差を検知することにより質量流量を測定する一対のセンサを備えるとともに、前記駆動装置は前記センサにより検出される振幅値が一定になるように制御されて」いることは、本願発明1の「メータ電子機器(20)に接続されたセンサアセンブリ(10)を有する流量計(5)であって、センサアセンブリ(10)は、少なくとも1つのドライバ(104)と少なくとも1つのピックオフ(105)を備え」ることに相当する。

イ 引用発明の「測定流体が」「流れるように構成され」、「その横断面が半月形状、或いは蒲鉾(かまぼこ)形状であ」る「並列2本のフローチューブ4a及び4b」は、本願発明1の「その中にプロセス流体を受け入れるように構成された第1の断面D字形状の導管」及び「その中にプロセス流体を受け入れるように構成された第2の断面D字形状の導管」に相当する。
したがって、引用発明の「測定流体が流入口21及び流出口24と連通して直管状の並列2本のフローチューブに流れるように構成され、前記並列2本のフローチューブ4a及び4bは、その横断面が半月形状、或いは蒲鉾(かまぼこ)形状」であることは、本願発明1の「その中にプロセス流体を受け入れるように構成された第1の断面D字形状の導管(400A)と、その中にプロセス流体を受け入れるように構成された第2の断面D字形状の導管(400B)を備え」ることに相当する。

ウ 引用発明の「前記横断面が半月形状、或いは蒲鉾(かまぼこ)形状であるフローチューブ4a、4bの合計幅と、当該フローチューブ4a、4bの間隔を合計した長さ」は、本願発明1の「第1及び第2の断面D字形状の導管(400A、400B)の合計幅に両導管の間の空間(S2)を加えた幅」に相当する。
引用発明の「流入側フランジ2aに接続される配管の口径」は、本願発明1の「入口パイプ(120)の幅」に相当する。
よって、引用発明の「前記横断面が半月形状、或いは蒲鉾(かまぼこ)形状であるフローチューブ4a、4bの合計幅と、当該フローチューブ4a、4bの間隔を合計した長さが、前記流入側フランジ2aに接続される配管の口径と同じである」ことと本願発明1の「第1及び第2の断面D字形状の導管(400A、400B)の合計幅に両導管の間の空間(S2)を加えた幅は、入口パイプ(120)の幅未満である」ことは、「第1及び第2の断面D字形状の導管の合計幅に両導管の間の空間を加えた幅は、入口パイプの幅と所定の関係にある」という点で共通する。


(2)一致点及び相違点
上記(1)の検討を総合すると、本願発明1と引用発明の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

<一致点>
メータ電子機器に接続されたセンサアセンブリを有する流量計であって、
センサアセンブリは、少なくとも1つのドライバと少なくとも1つのピックオフを備え、
その中にプロセス流体を受け入れるように構成された第1の断面D字形状の導管と、
その中にプロセス流体を受け入れるように構成された第2の断面D字形状の導管を備え、
第1及び第2の断面D字形状の導管の合計幅に両導管の間の空間を加えた幅は、入口パイプの幅と所定の関係にある、流量計。

<相違点>
本願発明1では「第1及び第2の断面D字形状の導管(400A、400B)の合計幅に両導管の間の空間(S2)を加えた幅は、入口パイプ(120)の幅未満である」であるのに対して、引用発明では、横断面が半月形状、或いは蒲鉾(かまぼこ)形状であるフローチューブ4a、4bの各幅と、当該フローチューブ4a、4b間の空間を合計した幅が、前記流入側フランジ2aに接続される配管の口径と同じである点。


(3)判断
上記相違点について検討する。

引用文献1の【0009】?【0013】、図6からみて、従来の並列2本の直管状フローチューブにおいては、流入口21及び流出口24に連通した分岐管22、25を有しており、当該分岐管により並列2本のフローチューブが流入口21の径外に存在することになるため、流入口21から流出口24をみた場合、フローチューブを介して見通すことができず、洗浄が困難であるという課題を解決するために、引用発明においては、【0023】に記載のように、フローチューブの断面の略全体が流入口21の径内にあるように構成したものと理解される。
そうしてみれば、当該課題を解決しているのは、フローチューブの断面の略全体が流入口21の径外でなく径内にあるように構成したことによるものであるから、引用発明において、上記相違点に係る「第1及び第2の断面D字形状の導管(400A、400B)の合計幅に両導管の間の空間(S2)を加えた幅は、入口パイプ(120)の幅未満である」構成を採用したとしても、当該課題を達成することができることは当業者には自明である。

そして、流入口21からフローチューブを介して流出口24を見通すことを可能にするという観点からみて、「第1及び第2の断面D字形状の導管(400A、400B)の合計幅に両導管の間の空間(S2)を加えた幅」を、「入口パイプ(120)の幅」と同じであるものから、未満であるものとしたことによって、予測し得ない格別顕著な効果を奏するものとは認められない。

以上のことから、引用発明において、上記相違点に係る構成を採用することは、単なる設計事項の範囲内のものであって、当業者が適宜なし得る程度のものであるといえる。

したがって、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。


(4)請求人の主張について
請求人は、審判請求の理由において、以下の主張をしている。

引用文献1に係る発明では、2本のフローチューブ4a、4bは断面円形である従来のフローチューブに比して加振方向に変形しやすい必要がある。また、拒絶査定では「洗浄をより一層容易にするためには、フローチューブ4a、4bの断面の全体を流入口21及び流出口24の口径内に収めるようにすべきことは、自明である。」と指摘された。しかし、フローチューブ4a、4bの断面の全体を流入口21及び流出口24の口径内に収めた結果、2本のフローチューブ4a、4bが加振方向に変形しにくくなると、引用文献1に係る発明の効果を奏し得ない。また、引用文献1には、流量計をコンパクト化する技術的思想は開示されていない。
本願発明では、導管(400A、400B)は加振方向に変形し易くする必要はなく、ベータ値を一定値に保てればよい。換言すれば、本願発明に係る導管(400A、400B)の構成は、引用文献1の図2と図3に示されているように見えるが、2本の断面D字形状の導管を配置する技術的思想が異なる。従って、引用文献1には当業者が本願発明に想到する動機付けが無く、本願発明は引用文献1に開示された発明に対して、新規性及び進歩性を有すると思料します。

上記主張について、以下検討する。

本願明細書の【0006】?【0007】、図1及び図4の記載を鑑みるに、本願発明においては、2本の導管がそのまま流量計の外形となるような場合には、断面D字形状の導管を採用することにより、流量計の外形を小さくするものであると理解されるものの、例えば、引用刊行物の図1に示されるような、中空円筒状の外筐1内に並列2本のフローチューブが配設されているような場合は、断面D字形状の導管を採用しても流量計の外形は小さくならないものと理解される。

すなわち、流量計をコンパクト化できる旨の主張は、「導管(400A)」及び「導管(400B)」を含む「センサアセンブリ(10)」の外形がどのようなものであるかについて、構成として具体的に特定した上で初めて意味をもつのであって、そのような構成を何ら特定していない本願発明について、コンパクト化できる旨主張しても、かかる主張は請求項の記載から離れたところのものであって採用することはできない。


2 本願発明8について
本願発明8は、前記「第2」の「5 当審の判断」で検討した本願補正発明について、「導管(400)は、第1及び第2の断面D字形状の導管(400A、400B)の合計幅に両導管の間の空間(S2)を加えた幅を有するように構成され、該幅は、流体が行き来可能に構成された入口パイプ(120)の幅以下である」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明8の発明特定事項を全て含み、さらに当該発明特定事項の一部を限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」の「5 当審の判断」において記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明8も同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明1、8は、いずれも引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。




 
別掲
 
審理終結日 2021-02-25 
結審通知日 2021-03-02 
審決日 2021-03-18 
出願番号 特願2018-531434(P2018-531434)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01F)
P 1 8・ 121- Z (G01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 羽飼 知佳  
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱本 禎広
濱野 隆
発明の名称 コンパクトな流量計及び関連する方法  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  
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