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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
管理番号 1376673
異議申立番号 異議2020-700642  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-26 
確定日 2021-05-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6653949号発明「ポリウレタン樹脂形成性組成物およびポリウレタン樹脂」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6653949号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6653949号の請求項1に係る特許に対する申立を却下する。 特許第6653949号の請求項2-6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6653949号(請求項の数6。以下、「本件特許」という。)は、平成27年9月30日を出願日とする特許出願(特願2015-192360号)に係るものであって、令和2年1月31日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和2年2月26日である。)。
その後、令和2年8月26日に、本件特許の請求項1?6に係る特許に対して、特許異議申立人である藤本一男(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。

(1)特許異議申立以降の手続きの経緯
令和2年 8月26日 特許異議申立書
同年10月30日付け 取消理由通知書
同年12月23日 意見書・訂正請求書(特許権者)
令和3年 1月14日付け 通知書(申立人あて)
同年 2月18日 意見書(申立人)

(2)証拠方法
ア 申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
(ア)特許異議申立書に添付した証拠
・甲第1号証:特開2017-014426号公報
・甲第2号証:特開2003-165903号公報
・甲第3号証:特開2000-226425号公報
・甲第4号証:特開2014-084330号公報
・甲第5号証:特開2003-155321号公報
・甲第6号証:特開2008-189834号公報
・甲第7号証:田中修吉ら、「モノカルボジイミドと芳香族ポリカルボジイミドの併用によるポリ乳酸の耐加水分解性の向上」、高分子論文集、Vol.67、No.9、pp.537-540、2010年9月
・甲第8号証:大槻勝一、「リン系縮合型難燃剤の進歩」、マテリアルライフ学会誌、Vol.14、No.4、pp.181-183、2002年10月
・甲第9号証:特開2012-072246号公報
・甲第10号証:特開平11-349803号公報
・甲第11号証:特開2000-038397号公報
・甲第12号証:垣谷晴昭、「可塑剤」、高分子、第19巻、第11号、pp.984-991、1970年
・甲第13号証:大木道則ら編、「化学辞典」第1版第3刷、株式会社東京化学同人、第68頁、1996年10月1日

(イ)令和3年2月18日に提出した意見書に添付した証拠
・参考文献1:大木道則ら編、化学辞典第1版第3刷、株式会社東京化学同人、第266-267頁、1996年10月1日
・参考文献2:新村出編、広辞苑、第7版第1刷、株式会社岩波書店、第1617頁、2018年1月12日
・参考文献3:大木道則ら編、化学辞典第1版第3刷、株式会社東京化学同人、第856頁、1996年10月1日
・参考文献4:特開2017-014426号公報(甲第1号証と同じ)
・参考文献5:特開2009-067818号公報
・参考文献6:「安全データシート(SDS) モレキュラーシーブ 5A POWDER」、ユニオン昭和株式会社、2018年9月19日改訂
・参考文献7:大木道則ら編、「化学辞典」第1版第3刷、株式会社東京化学同人、第68頁、1996年10月1日(甲第13号証と同じ)

第2 訂正の適否についての判断
令和2年12月23日にした訂正請求は、以下の訂正事項を含むものである。
(以下、訂正事項をまとめて「本件訂正」という。また、特許査定時の本件願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件特許明細書等」という。)

1 訂正の内容
(1)各訂正事項について
ア 訂正事項1
訂正前の請求項1を削除する。

イ 訂正事項2
訂正前の請求項2に「前記イオン性化合物捕捉剤(D)が、アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上である請求項1記載のポリウレタン樹脂形成性組成物」と記載されているのを
「水酸基含有化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、含リン化合物(C)およびイオン性化合物捕捉剤(D)を含有するポリウレタン樹脂組成物(X)であって、
前記水酸基含有化合物が、ひまし油系ポリオール(A1)を含有し、
前記含リン化合物(C)が、下記一般式(1)
【化1】


(式中、R_(1)は炭素数6?30の芳香環を有する炭化水素基、R_(2)は同一または異なる炭素数6?15のアリール基、nは1?3である。)で表される化合物(C1)を含有し、
前記イオン性化合物捕捉剤(D)が、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上であり、
前記ひまし油ポリオール(A1)の配合量がポリウレタン樹脂形成性組成物に対して20?70質量%であり、
前記含リン化合物(C)の配合量がポリウレタン樹脂形成性組成物に対して10?60質量%であり、
前記イオン性化合物捕捉剤(D)がアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)を含む場合、前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1であり、前記イオン性化合物捕捉剤(D)がポリカルボジイミド(D2)を含む場合、前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1であり、
ポリウレタン樹脂形成性組成物におけるイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCO/OH)が0.5?1.5であり、
発泡剤の含有量がポリウレタン樹脂形成性組成物中に0.3質量%以下である、
ポリウレタン樹脂形成性組成物」に訂正する。

ウ 訂正事項3
訂正前の請求項3に「前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、酸化物及び炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1である請求項2記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。」と記載されているのを
「前記イオン性化合物捕捉剤(D)がアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)を含み、前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1である請求項2記載のポリウレタン樹脂形成性組成物」に訂正する。

エ 訂正事項4
訂正前の請求項4に「前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1である請求項2記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。」と記載されているのを
「前記イオン性化合物捕捉剤(D)がポリカルボジイミド(D2)を含み、前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1である請求項2記載のポリウレタン樹脂形成性組成物」に訂正する。

オ 訂正事項5
訂正前の請求項5に「電気電子部品用であることを特徴とする請求項1?4いずれか記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。」と記載されているのを
「電気電子部品用であることを特徴とする請求項2?4いずれか記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。」に訂正する。

カ 訂正事項6
訂正前の請求項6に「請求項1?5いずれか記載のポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られるポリウレタン樹脂。」と記載されているのを
「請求項2?5いずれか記載のポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られるポリウレタン樹脂。」に訂正する。

(2)一群の請求項
本件訂正前の請求項2?6はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件訂正前の請求項1?6は一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。

2 判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項1は、請求項の削除するものであるから、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正は、本件訂正前の請求項2において、本件訂正前の請求項1を引用していたものを、これを書き下して独立形式に改め、さらに、「ひまし油ポリオール(A1)」の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対する配合量、「含リン化合物(C)」の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対する配合量、「含リン化合物(C)」と「イオン性化合物捕捉剤(D)」の質量比、「ポリウレタン樹脂形成性組成物」における「イソシアネート基」と「水酸基」とのモル比を特定するとともに、本件訂正前の請求項1に記載の「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩」について「酸化物、炭酸塩」も「アルカリ土類金属」の「酸化物、炭酸塩」であることを明確にするために「アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩」と書き下すものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
本件訂正前の請求項2における「ひまし油ポリオール(A1)」の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対する配合量に関して「ひまし油ポリオール(A1)の配合量がポリウレタン樹脂形成性組成物に対して20?70質量%」と特定する訂正については、本件特許明細書等の段落【0014】に「ひまし油系ポリオール(A1)の配合量は、ポリウレタン樹脂形成性組成物に対して20?70質量%であることが好ましく」と記載されていることから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
本件訂正前の請求項2における「含リン化合物(C)」の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対する配合量に関して「含リン化合物(C)の配合量がポリウレタン樹脂形成性組成物に対して10?60質量%」と特定する訂正については、本件特許明細書等の段落【0031】に「含リン化合物(C)の配合量は、ポリウレタン樹脂形成性組成物に対して10?60質量%であることが好ましく」と記載されていることから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
本件訂正前の請求項2における「含リン化合物(C)」と「イオン性化合物捕捉剤(D)」の質量比」に関して「イオン性化合物捕捉剤(D)がアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)を含む場合、前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1であり、前記イオン性化合物捕捉剤(D)がポリカルボジイミド(D2)を含む場合、前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1であり」とする訂正については、本件特許明細書等の【請求項3】に「含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、酸化物及び炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1である」と記載され、【請求項4】に「リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1である」と記載されていることから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
また、本件訂正前の請求項2における「ポリウレタン樹脂形成性組成物」における「イソシアネート基」と「水酸基」とのモル比に関して「ポリウレタン樹脂形成性組成物におけるイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCO/OH)が0.5?1.5」については、本件特許明細書等の段落【0037】の「本発明のポリウレタン樹脂形成性組成物は、イソシアネート基と水酸基とのモル比(NCO/OH)が、0.5?1.5であることが好ましく」と記載されていることから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
また、本件訂正前の請求項2における「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩」の記載について「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩」とする訂正は、本件特許明細等の段落【0032】の「本発明に用いるイオン性化合物捕捉剤(D)は、耐湿熱性の観点から、アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩および・・・であることが好ましい。・・・より好ましくは水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム・・・であり、・・・」との記載からみて、「・・・酸化物、炭酸塩」の記載を「アルカリ土類金属」の「酸化物、炭酸塩」であることを明確にするためにと書き下したものにすぎないといえるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であることは明らかである。
さらに、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、明りょうでない記載をその記載内容を変えずに明らかにする訂正であるから、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことも明らかである。

(3)訂正事項3、4について
ア 訂正の目的
訂正事項3による訂正は、本件訂正前の請求項3の「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩」について「酸化物、炭酸塩」も「アルカリ土類金属」の「酸化物、炭酸塩」であることを明確にするために「アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩」と書き下すとともに、「前記イオン性化合物捕捉剤(D)がアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)を含み」と「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)」を必須成分として含むことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項4による訂正も、「前記イオン性化合物捕捉剤(D)がポリカルボジイミド(D2)を含み」と「ポリカルボジイミド(D2)」を必須成分として含むことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項3の「前記イオン性化合物捕捉剤(D)がアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)を含み」と「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)」を必須成分として含むことを特定する訂正、訂正事項4の「前記イオン性化合物捕捉剤(D)がポリカルボジイミド(D2)を含み」と「ポリカルボジイミド(D2)」を必須成分として含むことを特定する訂正は、本件訂正前の請求項3及び請求項4の記載からみて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であることは明らかである。
訂正事項3の、本件訂正前の請求項3における「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩」の記載について「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩」とする訂正も、上記(2)イで述べたとおり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であることは明らかである。
さらに、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、さらに、明りょうでない記載をその記載内容を変えずに明らかにする訂正であるから、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことも明らかである。

(4)訂正事項5、6について
ア 訂正の目的
訂正事項5、6は、上記の訂正事項1による請求項1の削除に合わせて,引用請求項の一部を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項5、6は,本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかである。

(4)まとめ
以上のとおり、訂正事項1?6による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。


第3 特許請求の範囲の記載
上記「第2 訂正の適否についての判断」のとおり、本件訂正は適法であるので、特許第6653949号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?6のとおりの以下のものである(以下、請求項1?6に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」?「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件訂正後の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件訂正後の特許明細書等」という。本件の願書に添付した明細書については、訂正の対象ではなく、本件訂正により訂正されていないので、本件訂正の前後にかかわらず「本件明細書」という。)。

「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
水酸基含有化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、含リン化合物(C)およびイオン性化合物捕捉剤(D)を含有するポリウレタン樹脂組成物(X)であって、
前記水酸基含有化合物が、ひまし油系ポリオール(A1)を含有し、
前記含リン化合物(C)が、下記一般式(1)
【化1】


(式中、R_(1)は炭素数6?30の芳香環を有する炭化水素基、R_(2)は同一または異なる炭素数6?15のアリール基、nは1?3である。)で表される化合物(C1)を含有し、
前記イオン性化合物捕捉剤(D)が、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上であり、
前記ひまし油ポリオール(A1)の配合量がポリウレタン樹脂形成性組成物に対して20?70質量%であり、
前記含リン化合物(C)の配合量がポリウレタン樹脂形成性組成物に対して10?60質量%であり、
前記イオン性化合物捕捉剤(D)がアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)を含む場合、前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1であり、前記イオン性化合物捕捉剤(D)がポリカルボジイミド(D2)を含む場合、前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1であり、
ポリウレタン樹脂形成性組成物におけるイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCO/OH)が0.5?1.5であり、
発泡剤の含有量がポリウレタン樹脂形成性組成物中に0.3質量%以下である、
ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項3】
前記イオン性化合物捕捉剤(D)がアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)を含み、前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1である請求項2記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項4】
前記イオン性化合物捕捉剤(D)がポリカルボジイミド(D2)を含み、前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1である請求項2記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項5】
電気電子部品用であることを特徴とする請求項2?4いずれか記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項6】
請求項2?5いずれか記載のポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られるポリウレタン樹脂。」


第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 取消理由通知の概要
当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)取消理由1(明確性)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?6の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。
よって、本件訂正前の請求項1?6に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

本件訂正前の請求項1の「イオン性化合物捕捉剤(D)」とはどのようなものか、本件発明1にも本件明細書にも定義がなく、発明の詳細な説明の記載や技術常識を勘案しても明らかではない。また、「イオン性化合物捕捉剤(D)」の「捕捉」の対象の「イオン性化合物」とはどのようなものか、その「イオン性化合物」は本件明細書の発明の詳細な説明の「【背景技術】」や「【発明が解決しようとする課題】」とどのような関係にあるのか、「イオン性化合物捕捉剤(D)」はどのような原理で「イオン性化合物」を捕捉するのか等が明らかでない。
本件訂正前の請求項2には、「イオン性化合物捕捉剤(D)」について、「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上である」と特定しているものの、「イオン性化合物捕捉剤(D)」とは、どのような機能を有するものか、本件発明の課題とどのように関係するのか等、発明の詳細な説明を参酌しても、明確でない。また、「イオン性化合物捕捉剤(D)」が「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物」である場合には、本件明細書の段落【0032】の記載からみて、「水酸化マグネシウム」、「酸化マグネシウム」が具体例となるといえるが、「水酸化マグネシウム」、「酸化マグネシウム」は下記の参考文献1(甲第1号証)の段落【0066】?【0067】からみて「無機充填剤」となり得るものであり、本件訂正前の請求項2の「イオン性化合物捕捉剤(D)」の機能は、「無機充填剤」の機能とは区別し得るものか、さらに、「イオン性化合物捕捉剤(D)」と「無機充填剤」とは実施態様において配合量等により区別し得るものか等も明らかでない。
本件訂正前の請求項1?2を直接的又は間接的に引用する請求項3?6についても同様である。
よって、訂正前の請求項1?2に記載された発明及び請求項1?2を直接的又は間接的に引用する請求項3?6に記載された発明は明確でない。

(2)取消理由2(サポート要件)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?6の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で、本件訂正前の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項1?6に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。


本件発明の課題は、上記摘記(本a)の記載からみて、「難燃性、作業性に優れ、かつ樹脂ケースにケミカルストレスクラックが生じにくく、さらに耐湿熱性についても良好なポリウレタン樹脂形成性組成物を提供すること」であるところ、本件発明1は、「水酸基含有化合物(A)」及びこのうちの「ひまし油系ポリオール(A1)」、「イソシアネート基含有化合物(B)」、「含リン化合物(C)」、「イオン性化合物捕捉剤(D)」の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」の成分を発明特定事項としているが、それぞれの成分の配合量について特定されていない。
一方、本件明細書の発明の詳細な説明には、「水酸基含有化合物(A)」及びこのうちの「ひまし油系ポリオール(A1)」、「イソシアネート基含有化合物(B)」、「含リン化合物(C)」、「イオン性化合物捕捉剤(D)」の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」の成分について、これらの成分の配合量を特定しないと本件発明の上記課題を解決できないことがあり得ることも記載されており、各成分の配合量を特定せず、さらに、「イオン性化合物捕捉剤(D)」について特定しない本件発明1は、本件明細書の上記摘記の記載や技術常識からみて、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるとはいえない範囲も含むものといえる。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
また、本件発明1を引用する本件発明2?6も同様である。
よって、本件訂正前の請求項1?6に係る発明はサポートされているとはいえない。

2 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書でした申立理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)申立理由1(進歩性)
本件訂正前の請求項1?6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び甲第2?12号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1?6に係る発明の特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)申立理由2(実施可能要件)
発明の詳細な説明は、下記の点で、当業者が本件訂正前の請求項1?6に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、本件訂正前の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項1?6に係る発明の特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(ア)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「前記水酸基含有化合物が、ひまし油系ポリオール(A1)を含有し」と記載しており、「ひまし油系ポリオール(A1)」を必ず含むものである。本件明細書の段落【0012】には「ひまし油系ポリオール(A1)」の種類、「ひまし油系ポリオール(A1)」について「二種以上を使用することができる」ことが記載されているが、本件明細書の実施例1?17で開示されているのは、2種の「ひまし油系ポリオール(A1)」を単独で特定の量で用いた例、及び、実施例6の1組の特定の「ひまし油系ポリオール(A1)」と特定の「ひまし油系ポリオール(A1)以外のポリオール」を組み合わせた例のみであり、その他の「ひまし油系ポリオール(A1)」を単独又は併用して用いた場合や、実施例6の「ひまし油系ポリオール(A1)」と「ひまし油系ポリオール(A1)以外のポリオール」の組み合わせ以外の組み合わせを用いた場合にも、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(イ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「ひまし油系ポリオール(A1)」含有する「ポリウレタン樹脂形成性組成物」が記載されており、本件明細書の【0014】には「ひまし油系ポリオール(A1)の配合量は、ポリウレタン樹脂形成性組成物に対して20?70質量%であることが好ましく、40?60質量%であることがより好ましい」ことが記載されているが、本件明細書の実施例1?17で開示されているのは、「ひまし油系ポリオール(A1)」の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対して「40.3?64.6質量%」を用いた態様のみであり、「40.3?64.6質量%」以外の配合量の場合に、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(ウ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「イソシアネート基含有化合物(B)」と記載されており、本件明細書の段落【0017】には、「本発明に用いるイソシアネート基含有化合物(B)は、分子中にイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物および芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる」と記載されているが、本件明細書の実施例1?17では特定の4種の「イソシアネート基含有化合物(B)」を用いた例しか開示されておらず、また、2種以上を使用した例は示されていない。実施例1?17で使用された4種の「イソシアネート基含有化合物(B)」以外の「イソシアネート基含有化合物(B)」を用いた場合や、2種以上の「イソシアネート基含有化合物(B)」を組み合わせて用いた場合に、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(エ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「イソシアネート基含有化合物(B)」を含有するポリウレタン樹脂組成物が記載されているが、発明の詳細な説明には、「イソシアネート基含有化合物(B)」の含有量に関する記載がない。実施例1?17では「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対して「15.4?26.8質量%」を用いた態様のみであり、「15.4?26.8質量%」以外の配合量の場合に、実施例1?17と同様の効果を得ることができるのか不明である。
(オ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「含リン化合物(C)」及び「前記含リン化合物(C)が、下記一般式(1)・・・で表される化合物(C1)を含有し」と記載されているが、本件明細書の段落【0025】?【0027】には「含リン化合物(C)」について説明がされているところ具体的な化合物が記載されていない。本件明細書の実施例1?17では、特定の4種の「含リン化合物(C)」を用いた例しか開示されておらず、他の「含リン化合物(C)」を用いた場合に、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。また、本件明細書の段落【0028】には、「一般式(1)・・・で表される化合物(C1)」と「他の含リン化合物(C2)」を併用することが記載されているが、本件明細書の実施例では、実施例17に特定の1種の「一般式(1)・・・で表される化合物(C1)」及び特定の1種の「他の含リン化合物(C2)」の組み合わせの例しか記載されておらず、他の組み合わせを用いた場合に、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(カ)本件訂正前の請求項1には、「イオン性化合物捕捉剤(D)」と記載されており、本件明細書の段落【0032】には、「本発明に用いるイオン性化合物捕捉剤(D)は、耐湿熱性の観点から、アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい」、「ポリカルボジイミドとしては、多価イソシアネート化合物から選択される少なくとも一種を用いた(共)重合体が挙げられる」と記載されているが、本件明細書の実施例1?17では、特定の6種の「イオン性化合物捕捉剤(D)」を用いた例が記載されているのみである。実施例1?17の結果からは「イオン性化合物捕捉剤(D)」が「イオン性化合物」が捕捉したのか明らかでない。「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩」として実施例には「水酸化マグネシウム」を用いた例が記載されているが、甲第13号証からみてマグネシウムは「水酸化マグネシウム」に該当しないので、「イオン性化合物捕捉剤(D)」にどのような化合物が含まれるのか明らかでない。また、実施例1?17には、特定の6種の「イオン性化合物捕捉剤(D)」を単独で用いた例が記載されているのみであり、2種以上組み合わせた場合に,実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。「ポリカルボジイミド」として、実施例に記載の特定の2種以外にどのようなポリマーが含まれるのか明らかでないし、これら2種以外のポリマーを用いた場合にこれらのポリマーと同様の効果を奏するのか不明である。
(キ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「発泡剤の含有量がポリウレタン樹脂形成性組成物中に0.3質量%以下である」ことが記載されており、本件明細書の段落【0039】には、「発泡剤」の種類や含有量について記載されているが、本件明細書の実施例1?17には、発泡剤について0.3質量%以下で含む例は記載されておらず、また、比較例として「発泡剤」を0.3質量%を超えて含む「ポリウレタン樹脂形成性組成物」が開示されていないから、「発泡剤の含有量が・・・・0.3質量%以下である」場合に、「難燃性、作業性に優れ、かつ樹脂ケースにケミカルストレスクラックが生じにくく、さらに耐熱性についても良好である」という本願発明の効果が得られるのかどうか理解できない。
(ク)本件訂正前の請求項3には「前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、酸化物及び炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1である」と記載されているが、本件明細書の実施例では、「(C):(D1)」が「49?126:1」の例が記載されているのみであり、「(C):(D1)=30?230:1」の質量比の全範囲に渡って実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(ケ)本件訂正前の請求項4(当審注:異議申立書においては、「請求項3」と記載されているが「請求項4」の誤りであると認められる)には「前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1である」と記載されているが、本件明細書の実施例では「(C):(D2)」が「38:1」の例が記載されているのみであり、「(C):(D2)=15?115:1である」の質量比の全範囲に渡って実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
したがって、訂正前の請求項1に記載された発明及び請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?6に記載された発明について、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。

(3)申立理由3(サポート要件)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?6の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で、本件訂正前の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項1?6に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(ア)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「前記水酸基含有化合物が、ひまし油系ポリオール(A1)を含有し」と記載しており、「ひまし油系ポリオール(A1)」を必ず含むものである。本件明細書の段落【0012】には「ひまし油系ポリオール(A1)」の種類、「ひまし油系ポリオール(A1)」について「二種以上を使用することができる」ことが記載されているが、本件明細書の実施例1?17で開示されているのは、2種の「ひまし油系ポリオール(A1)」を単独で特定の量で用いた例、及び、実施例6の1組の特定の「ひまし油系ポリオール(A1)」と特定の「ひまし油系ポリオール(A1)以外のポリオール」を組み合わせた例のみであり、その他の「ひまし油系ポリオール(A1)」を単独又は併用して用いた場合や、実施例6の「ひまし油系ポリオール(A1)」と「ひまし油系ポリオール(A1)以外のポリオール」の組み合わせ以外の組み合わせを用いた場合にも、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(イ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「ひまし油系ポリオール(A1)」含有する「ポリウレタン樹脂形成性組成物」が記載されており、本件明細書の【0014】には「ひまし油系ポリオール(A1)の配合量は、ポリウレタン樹脂形成性組成物に対して20?70質量%であることが好ましく、40?60質量%であることがより好ましい」ことが記載されているが、本件明細書の実施例1?17で開示されているのは、「ひまし油系ポリオール(A1)」の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対して「40.3?64.6質量%」を用いた態様のみであり、「40.3?64.6質量%」以外の配合量の場合に、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(ウ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「イソシアネート基含有化合物(B)」と記載されており、本件明細書の段落【0017】には、「本発明に用いるイソシアネート基含有化合物(B)は、分子中にイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物および芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる」と記載されているが、本件明細書の実施例1?17では特定の4種の「イソシアネート基含有化合物(B)」を用いた例しか開示されておらず、また、2種以上を使用した例は示されていない。実施例1?17で使用された4種の「イソシアネート基含有化合物(B)」以外の「イソシアネート基含有化合物(B)」を用いた場合や、2種以上の「イソシアネート基含有化合物(B)」を組み合わせて用いた場合に、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(エ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「イソシアネート基含有化合物(B)」を含有するポリウレタン樹脂組成物が記載されているが、発明の詳細な説明には、「イソシアネート基含有化合物(B)」の含有量に関する記載がない。実施例1?17では「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対して「15.4?26.8質量%」を用いた態様のみであり、「15.4?26.8質量%」以外の配合量の場合に、実施例1?17と同様の効果を得ることができるのか不明である。
(オ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「含リン化合物(C)」及び「前記含リン化合物(C)が、下記一般式(1)・・・で表される化合物(C1)を含有し」と記載されているが、本件明細書の段落【0025】?【0027】には「含リン化合物(C)」について説明がされているところ具体的な化合物が記載されていない。本件明細書の実施例1?17では、特定の4種の「含リン化合物(C)」を用いた例しか開示されておらず、他の「含リン化合物(C)」を用いた場合に、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。また、本件明細書の段落【0028】には、「一般式(1)・・・で表される化合物(C1)」と「他の含リン化合物(C2)」を併用することが記載されているが、本件明細書の実施例では、実施例17に特定の1種の「一般式(1)・・・で表される化合物(C1)」及び特定の1種の「他の含リン化合物(C2)」の組み合わせの例しか記載されておらず、他の組み合わせを用いた場合に、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(カ)本件訂正前の請求項1には、「イオン性化合物捕捉剤(D)」と記載されており、本件明細書の段落【0032】には、「本発明に用いるイオン性化合物捕捉剤(D)は、耐湿熱性の観点から、アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい」、「ポリカルボジイミドとしては、多価イソシアネート化合物から選択される少なくとも一種を用いた(共)重合体が挙げられる」と記載されているが、本件明細書の実施例1?17では、特定の6種の「イオン性化合物捕捉剤(D)」を用いた例が記載されているのみである。実施例1?17の結果からは「イオン性化合物捕捉剤(D)」が「イオン性化合物」が捕捉したのか明らかでない。「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩」として実施例には「水酸化マグネシウム」を用いた例が記載されているが、甲第13号証からみてマグネシウムは「水酸化マグネシウム」に該当しないので、「イオン性化合物捕捉剤(D)」にどのような化合物が含まれるのか明らかでない。また、実施例1?17には、特定の6種の「イオン性化合物捕捉剤(D)」を単独で用いた例が記載されているのみであり、2種以上組み合わせた場合に,実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。「ポリカルボジイミド」として、実施例に記載の特定の2種以外にどのようなポリマーが含まれるのか明らかでないし、これら2種以外のポリマーを用いた場合にこれらのポリマーと同様の効果を奏するのか不明である。
(キ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「発泡剤の含有量がポリウレタン樹脂形成性組成物中に0.3質量%以下である」ことが記載されており、本件明細書の段落【0039】には、「発泡剤」の種類や含有量について記載されているが、本件明細書の実施例1?17には、発泡剤について0.3質量%以下で含む例は記載されておらず、また、比較例として「発泡剤」を0.3質量%を超えて含む「ポリウレタン樹脂形成性組成物」が開示されていないから、「発泡剤の含有量が・・・・0.3質量%以下である」場合に、「難燃性、作業性に優れ、かつ樹脂ケースにケミカルストレスクラックが生じにくく、さらに耐熱性についても良好である」という本願発明の効果が得られるのかどうか理解できない。
(ク)本件訂正前の請求項3には「前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、酸化物及び炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1である」と記載されているが、本件明細書の実施例では、「(C):(D1)」が「49?126:1」の例が記載されているのみであり、「(C):(D1)=30?230:1」の質量比の全範囲に渡って実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(ケ)本件訂正前の請求項4(当審注:異議申立書においては、「請求項3」と記載されているが「請求項4」の誤りであると認められる)には「前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1である」と記載されているが、本件明細書の実施例では「(C):(D2)」が「38:1」の例が記載されているのみであり、「(C):(D2)=15?115:1である」の質量比の全範囲に渡って実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
したがって、訂正前の請求項1に記載された発明及び請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?4に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。

(4)申立理由4(明確性)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?6の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。
よって、本件訂正前の請求項1?6に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。


(ア)本件訂正前の請求項1に係る発明の「水酸基含有化合物(A)」について、「水酸基含有化合物(A)」とは、水酸基、つまり、OH基を含有する化合物を意味することから、例えば、水酸基を1つ含有する化合物も含められると考えられる。そのような化合物を用いた場合、どのようにすれば、ポリウレタン樹脂組成物を製造できるのかが不明であるため、当該「水酸基含有化合物(A)」に含まれる化合物の外延は不明である。
(イ)本件訂正前の請求項1に係る発明の「イソシアネート基含有化合物(B)」について、「イソシアネート基含有化合物(B)」は、イソシアネート基、つまり、NCO基を含有する化合物を意味するところ、例えば、NCO基を1つ含有する化合物も含まれると考えられる。そのような化合物を用いた場合、どのようにすれば、ポリウレタン樹脂組成物を製造できるのかが不明であるため、当該「イソシアネート基含有化合物(B)」に含まれる化合物の外延は不明である。
(ウ)本件訂正前の請求項1に係る発明の「R_(2)」として「炭素数6?15のアリール基」と記載されているが、通常、「アリール」としては、フェニル、ナフチル、アントラニル等が挙げられ、その炭素数は6、10、14等であるところ、請求項1でいう、「炭素数15のアリール基」としてどのような基が該当するのか不明である。
(エ)本件訂正前の請求項1に係る発明の「イオン性化合物捕捉剤(D)」について、本件明細書中には定義について何ら記載されておらず、「イオン性化合物捕捉剤(D)」に、どのような化合物までが含まれるのか不明である。
(オ)本件明細書の段落【0032】には「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩」と記載されているが、アルカリ土類金属は、甲第13号証に「周期表2族のうち、カルシウムCa、ストロンチウムSr、バリウムBa、ラジウムRaの4元素を指す」と記載されていることからわかるように、ベリリウム及びマグネシウムはアルカリ土類金属に含まれない。本件訂正前の請求項2?3に係る発明の「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩」に、どのような化合物が含まれるか不明である。
したがって、訂正前の請求項1に記載された発明及び請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?6に記載された発明は明確でない。


第5 本件明細書及び各甲号証に記載された事項
1 本件明細書に記載された事項
本件明細書には、以下の事項が記載されている。

(本a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂形成性組成物およびポリウレタン樹脂に関する。
・・・
【0003】
一方、封止材の周辺部品には樹脂ケースが使用される場合がある。この場合に、電子基板等の筐体(きょうたい)やケース材に対して、ケミカルストレスクラックが発生しないことが求められるが、これまでに開示されていたポリウレタン樹脂組成物ではケミカルストレスクラックの生じにくさが、十分でない場合があった。ケミカルストレスクラックとは、樹脂ケースの引張強度以下の引張応力で発生する、典型的な脆性破壊をいい、成形品において、引張応力発生箇所(荷重がかかっている箇所)に薬品が付着・接触した場合等に、時間経過を伴って薬品と応力との相乗作用にて割れ(クレーズ、クラック)が起る現象である。特許文献1のポリウレタン樹脂組成物のケミカルストレスクラック性は、必ずしも良好ではなかった。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みて為されたものであり、難燃性、作業性に優れ、かつ樹脂ケースにケミカルストレスクラックが生じにくく、さらに耐湿熱性についても良好なポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリウレタン樹脂形成性組成物として特定の構造の水酸基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、特定の構造の含リン化合物およびイオン性化合物捕捉剤を用いることにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
・・・
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られるポリウレタン樹脂は、難燃性、作業性に優れ、かつ樹脂ケースにケミカルストレスクラックが生じにくく、さらに耐湿熱性についても良好である。」

(本b)「【0011】
本発明に用いる水酸基含有化合物は、ひまし油系ポリオール(A1)を含有する。ひまし油系ポリオール(A1)を含有することにより、耐湿熱性が優れる。
【0012】
ひまし油系ポリオール(A1)としては、ひまし油、ひまし油脂肪酸、及びこれらに水素付加した水添ひまし油や水添ひまし油脂肪酸を用いて製造されたポリオールを使用することができる。このようなポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ひまし油、ひまし油とその他の天然油脂とのエステル交換物、ひまし油と多価アルコールとの反応物、ひまし油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物及びこれらにアルキレンオキサイドを付加重合したポリオールなどが挙げられる。これらは一種又は二種以上を使用することができる。
【0013】
ひまし油系ポリオール(A1)の25℃における粘度は、800mPa・s以下であることが好ましく、700mPa・s以下であることがより好ましい。仕込み量から算出される平均水酸基数は、1.0?3.0であることが好ましく、1.0?2.7であることがより好ましい。これらの範囲であれば、ポリウレタン樹脂形成性組成物の製造時の混合粘度が好適なものとなり、作業性が良好なものとなる。
【0014】
ひまし油系ポリオール(A1)の配合量は、ポリウレタン樹脂形成性組成物に対して20?70質量%であることが好ましく、40?60質量%であることがより好ましい。ひまし油系ポリオール(A1)の配合量が上記範囲より少ないと、耐湿熱性が低下する傾向があり、上記範囲より多いとポリウレタン樹脂形成性組成物の製造時の混合粘度が高くなり、作業性が低下する傾向がある。
【0015】
なお、本発明に用いるポリオール成分には、本発明の効果を損なわない程度に、ひまし油系ポリオール(A1)以外のポリオールを配合することができる。このようなポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオールの水素化物およびポリイソプレンポリオールの水素化物などが挙げられる。これらの中でも、耐湿熱性の観点からポリブタジエンポリオール(A2)が好ましい。これらは一種又は二種以上を使用することができる。
【0016】
ひまし油系ポリオール(A1)は、イソシアネート基含有化合物(B)と反応させて得られる水酸基末端ウレタンプレポリマーであってもよい。」

(本c)「【0017】
本発明に用いるイソシアネート基含有化合物(B)は、分子中にイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物および芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
【0018】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0019】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0020】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0021】
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0022】
ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基含有化合物と水酸基含有化合物とを反応させてなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー変性体、カルボジイミド変性体、イソシアヌレート変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体等の変性体を使用することもできる。これらは一種又は二種以上を使用することができる。
【0023】
ポリイソシアネート化合物としては、反応性、耐湿熱性、粘度および作業性の観点から、MDI、TDI、HDI、およびこれらの前記変性体が好ましい。」

(本d)「【0024】
本発明に用いる含リン化合物(C)は、前記含リン化合物(C)が、下記一般式(1)で表される化合物(C1)を含有する。
【化2】
・・・
【0025】
一般式(1)中、R_(1)は炭素数6?30の芳香環を有する炭化水素基であり、難燃性、耐湿熱性、作業性およびケミカルストレスクラック抑制の観点から好ましくは炭素数6?25であり、より好ましくは、炭素数6?15であり、芳香環および/またはビスフェノール構造がさらに好ましい。
【0026】
一般式(1)中、R_(2)は同一または異なる炭素数6?15のアリール基であり、難燃性、耐湿熱性、作業性およびケミカルストレスクラック抑制の観点から好ましくは炭素数6?10であり、より好ましくは、炭素数6?8であり、フェニルおよび/またはキシレニルがさらに好ましい。
【0027】
一般式(1)中、nは1?3であり、作業性の観点から好ましくは1?2であり、より好ましくは、1である。
【0028】
含リン化合物(C)としては、少なくとも化合物(C1)を含有するものであれば、他の含リン化合物(C2)を併用してもよい。(C1)と(C2)を併用することにより、難燃性が向上することから、好ましい態様の一つである。難燃性が向上する理由については明らかではないが、(C2)が存在することにより、(C1)とポリウレタン樹脂形成性組成物中の他の成分との相溶性が向上することが理由であることが推察される。
【0029】
本発明に用いる他の含リン化合物(C2)は、化合物(C1)を除く含リン化合物であれば、特に限定されないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどのリン酸エステルが挙げられる。
【0030】
リン化合物(C)として、化合物(C1)と化合物(C2)を併用する場合の、(C)中の(C1)の含有量は、15質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。これらの範囲であれば、難燃性、ケミカルストレスクラック、耐湿熱性の観点から好ましい。
【0031】
含リン化合物(C)の配合量は、ポリウレタン樹脂形成性組成物に対して10?60質量%であることが好ましく、10?30質量%であることがより好ましい。含リン化合物(C)の配合量がこれらの範囲であれば、難燃性、耐湿熱性、作業性およびケミカルストレスクラック抑制の観点から好ましい。」

(本e)「【0032】
本発明に用いるイオン性化合物捕捉剤(D)は、耐湿熱性の観点から、アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。ポリカルボジイミドとしては、多価イソシアネート化合物から選択される少なくとも一種を用いた(共)重合体が挙げられる。より好ましくは水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カルボジイミド等量100?500であるポリカルボジイミドであり、さらに好ましくは水酸化カルシウム、カルボジイミド等量200?400である。これらは一種又は二種以上を使用することができる。ここでカルボジイミド等量とは1当量のカルボジイミド基を含有する重合体のグラム数を表す。
【0033】
イオン性化合物捕捉剤(D)の配合量は、アルカリ土類金属水酸化物、酸化物及び炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)では、ポリウレタン樹脂形成性組成物に対して0.1?1.0質量%であることが好ましく、0.05?0.5質量%であることがより好ましい。ポリカルボジイミド(D2)では、ポリウレタン樹脂形成性組成物に対して0.05?2質量%であることが好ましく、0.1?1.0質量%であることがより好ましい。イオン性化合物捕捉剤(D)の配合量がこれらの範囲であれば、耐湿熱性の観点から好ましい。
【0034】
ポリウレタン樹脂形成性組成物中の前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、酸化物及び炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比は(C):(D1)=30?230:1であることが好ましく、40?200:1であることがより好ましく、45?170:1であることがさらに好ましい。これらの範囲であれば、難燃性、耐湿熱性、粘度および作業性が両立できる。なお、化合物(C)として、化合物(C1)を含有することなく、化合物(C2)のみを含有する場合は、本願の化合物(C)としての要件を満たさないことから、これらの範囲内に含まれることはない。
【0035】
ポリウレタン樹脂形成性組成物中の前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比は(C):(D2)=15?115:1であることが好ましく、20?100:1であることがより好ましく、25?85:1であることがさらに好ましい。これらの範囲であれば、難燃性、耐湿熱性、粘度および作業性が両立できる。なお、化合物(C)として、化合物(C1)を含有することなく、化合物(C2)のみを含有する場合は、本願の化合物(C)としての要件を満たさないことから、これらの範囲内に含まれることはない。」

(本f)「【0036】
本発明のポリウレタン樹脂形成性組成物を用いて、ポリウレタン樹脂を得る方法としては、特に限定されないが、ワンショット、2液反応いずれも用いることができるが、2液反応が好ましい。2液反応の場合、水酸基含有化合物を含有する硬化剤と、イソシアネート基含有化合物を含有する主剤を混合、硬化することでポリウレタン樹脂を得る。含リン化合物およびイオン性化合物捕捉剤については、主剤および硬化剤いずれに含有させても好適に使用できるが、作業性等の観点から、イオン性化合物捕捉剤は硬化剤、含リン化合物は主剤中に含有させることが好ましい。混合に際しては、均一混合できる混合装置であれば特に限定されない。
【0037】
本発明のポリウレタン樹脂形成性組成物は、イソシアネート基と水酸基とのモル比(NCO/OH)が、0.5?1.5であることが好ましく、0.6?1.3であることがより好ましい。イソシアネート基と水酸基のモル比がこの範囲より小さいと硬化不良が生じる場合や得られる樹脂の耐湿熱性が低くなる場合があり、この範囲より大きいと硬化不良が起こる場合があるからである。」

(本g)「【0039】
本発明のポリウレタン樹脂形成性組成物には、難燃性、作業性、ケミカルストレスクラック抑制の観点から、水、トリクロロモノモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、モノクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、メチレンクロライド、トリクロロエタン、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン(HCFC-141b)、クロロジフルオロメタン(HCFC-22)、1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)、ノルマルペンタン、シクロペンタンおよびヘキサン等の発泡剤を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、実質的に含有しないとは、ポリウレタン樹脂形成性組成物中に0.3質量%以下であることをいう。」

(本h)「【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明のポリウレタン樹脂形成性組成物について詳細に説明する。なお、本明細書中に於ける「部」、「%」は、特に明示した場合を除き、「質量部」、「質量%」をそれぞれ表している。
【0046】
実施例及び比較例において使用する原料を以下に示す。
(ひまし油系ポリオール(A1))
A1-1:ひまし油
(商品名:ひまし油マルトクA、伊藤製油社製)
A1-2: ひまし油脂肪酸-多価アルコールエステル
(商品名:URIC Y-403、伊藤製油社製)
(ポリブタジエンポリオール(A2))
A2-1:平均水酸基価46.6mgKOH/gのポリブタジエンポリオール
(商品名:Poly bd R-45HT、出光興産社製)
(イソシアネート基含有化合物(B))
B1:ポリメリックMDI
(商品名:フォームライト500B、BASFイノアックポリウレタン社製)
B2:カルボジイミド変性MDI
(商品名:ルプラネートMM-103、BASFイノアックポリウレタン社製)
B3:TDI
(商品名:コロネートT-80、東ソー社製)
B4:イソシアヌレート変性HDI
(商品名:デュラネートTLA-100、旭化成ケミカルズ社製)
(含リン化合物(C))
C1-1:ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)
(商品名:アデカスタブFP600、ADEKA社製)
C1-2:1,3-フェニレンビス(2,6-ジメチルフェニル=ホスフェート)
(商品名:PX-200、大八化学工業社製)
C1-3:レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)
(商品名:アデカスタブPFR、ADEKA社製)
C1-4:ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)
(商品名:CR-741、大八化学工業社製)
C2-1:クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート
(商品名:PX-110、大八化学工業社製)
C2-2:トリキシレニルホスフェート
(商品名:TXP、大八化学工業社製)
(イオン性化合物捕捉剤(D))
D1-1:水酸化カルシウム
(商品名:水酸化カルシウム 特級、ナカライテスク社製)
D1-2:水酸化マグネシウム
(商品名:水酸化マグネシウム、和光純薬工業社製)
D1-3:酸化カルシウム
(商品名:酸化カルシウムEP、ナカライテスク社製)
D1-4:炭酸カルシウム
(商品名:炭酸カルシウム、和光純薬工業社製)
D2-1:カルボジイミド基含有ポリマー(カルボジイミド等量:385)
(商品名:カルボジライトV02L2、日清紡ケミカルズ社製)
D2-2:カルボジイミド基含有ポリマー(カルボジイミド等量:360)
(商品名:スタバクゾールP、ラインケミージャパン(株))
【0047】
<実施例1?17及び比較例1?3>
表1および表2に示す配合により、各実施例及び各比較例のポリウレタン樹脂形成性組成物の主剤および硬化剤を調製した。調製した硬化剤および主剤を、混合比100/70(重量比。NCO/OH=0.8)で合計量100gとなる量を25℃にて混合機(商品名:あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて2000rpmで1分間混合することにより、各実施例のポリウレタン樹脂形成性組成物を得た。
【0048】
【表1】


【0049】
【表2】


【0050】
<評価方法>
(混合粘度)
得られたポリウレタン樹脂形成性組成物を25℃に調整し、混合開始から3分後の粘度をBM型粘度計により測定した。
【0051】
(耐湿熱性)
1.試験片の作成
上記ポリウレタン形成性樹脂組成物を5cm×5cm、厚み1cmの金型に流し込み、80℃で16時間養生した後、これを脱型することにより、耐湿熱性評価用の試験片を作成した。
2.耐湿熱性の評価
試験片を85℃×85%RH×600時間処理後、硬度(タイプA)をJIS K6253で測定し、下記の通り評価した。
○:硬度typeA10以上
×:硬度typeA10未満
【0052】
(難燃性)
難燃性は、UL規格のUL94(プラスチック材料の難燃性)に従って測定し、下記の通り評価した。
○:UL94規格において、V-1またはV-0
×:UL94規格において、V-2
【0053】
(ケミカルストレスクラック性評価)
ABS試験片(商品名:コウベポリシートABS、新神戸電機社製)を長軸100mm、短軸40mmの図1に示す1/4楕円治具に取り付け、実施例の樹脂シートを試験片表面に貼り付けしたあと、 25℃×60%RHの環境下に48時間放置し、亀裂が発生する位置Xを測定し、式1を用いて臨界ひずみ値を求めた。当該臨界ひずみ値に基づき、ケミカルストレスクラック性を下記のようにランク分けして評価した。
【数1】
ε:臨界ひずみ値
a:楕円長軸 100mm
b:楕円短軸 40mm
X:亀裂発生点 試験片の長軸に対する固定端から亀裂発生点までの距離 mm
t:試験片厚み 2.0mm
<評価>
○(十分に実用可能):臨界ひずみ値(ε)0.7%以上
×(実用不可):臨界ひずみ値(ε)0.7%未満
【0054】
<評価結果>
実施例1?17から分かるように、本発明のポリウレタン樹脂形成性組成物は、混合粘度が使用可能な範囲であり、また、難燃性、耐湿熱性、作業性に優れ、かつ樹脂ケースにケミカルストレスクラックが生じにくいことが分かる。
【0055】
一方、比較例1のように含リン化合物(C)が、前記一般式(1)で表される化合物(C1)を含有しない場合、ケミカルストレスクラック性が生じやすい。比較例2のようにイオン性化合物捕捉剤(D)を含有しない系では、耐湿熱性が劣ることが分かる。比較例3のようにヒマシ油系ポリオール(A1)を含有しない系では、混合粘度が高く作業性に劣り、難燃性にも劣ることが分かる。」

2 各甲号証に記載された事項
下記「3 特許異議申立人がした申立理由について」「(1)申立理由1(進歩性)について」で述べるとおり、主引用例とされた甲第1号証は、本件特許に係る出願の日前の特許出願であってその出願後に出願公開がされたものであり、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物ではなく、申立理由1(進歩性)の特許法第29条第2項についての理由の根拠とならないことが明らかである。従って、以下では、「申立理由1(進歩性)」の理由の副引用例とされた甲第2?12号証、及び、令和3年2月18日に申立人により提出された意見書に特許法第29条の2(拡大先願)の新たな証拠として添付された参考文献5?6については摘記しない。

(1)甲第1号証(参考文献4)に記載された事項
甲第1号証(参考文献4)には、以下の事項が記載されている。

(甲1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、ポリイソシアネート、リン酸エステル、及びシリル基含有化合物を含むポリウレタン樹脂組成物であって、
該リン酸エステルが、分子量350以上の化合物であるポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記リン酸エステルの含有量が、ポリウレタン樹脂組成物中に10?30重量%である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオールが、ヒマシ油系ポリオールである、請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記シリル基含有化合物が、エポキシ基を含むシリル基含有化合物である、請求項1?3の何れか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記シリル基含有化合物が、アミノ基を含むシリル基含有化合物である、請求項1?3の何れか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記シリル基含有化合物が、硫黄原子を含むシリル基含有化合物である、請求項1?3の何れか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記シリル基含有化合物が、ポリウレタン樹脂組成物中に、0.01?5重量%含有する、請求項1?3の何れか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1?7の何れか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物からなる封止材。
【請求項9】
請求項8に記載の封止材を用いて樹脂封止された電気電子部品。」

(甲1b)「【0018】
1-1.ポリオール(A)
本発明に用いるポリオールとしては、特に限定はなく、例えば、ヒマシ油系ポリオール(A1);ポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリイソプレンポリオールの水素付加物等のヒマシ油系ポリオール以外のポリオール(A2);などが挙げられる。
【0019】
該ポリオール(A)は、1種単独で用いることができ、又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0020】
本発明のポリウレタン樹脂組成物において、ポリオール(A)の含有量としては、ポリウレタン樹脂組成物に対して、10?80重量%が好ましく、30?70重量%がより好ましい。」

(甲1c)「【0021】
1-1-1.ヒマシ油系ポリオール(A1)
ヒマシ油系ポリオールとしては、特に限定はなく、例えば、ヒマシ油、ヒマシ油誘導体等が挙げられる。
【0022】
上記ヒマシ油誘導体としては、ヒマシ油脂肪酸;ヒマシ油又はヒマシ油脂肪酸に水素付加した水添ヒマシ油;ヒマシ油とその他の油脂のエステル交換物;ヒマシ油と多価アルコールとの反応物;ヒマシ油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物;これらにアルキレンオキサイドを付加重合したもの等が挙げられる。上記ヒマシ油系ポリオールの中でも、ヒマシ油を用いることが好ましい。
【0023】
ヒマシ油系ポリオール(A1)の数平均分子量は、通常100?4,000の範囲であり、好ましくは300?2,500の範囲である。
・・・
【0025】
また、ヒマシ油系ポリオールにおいて水酸基の含有量としては、平均水酸基価として、通常30?500mgKOH/gの範囲内であり、好ましくは100?200mgKOH/gの範囲内である。水酸基価は、JISK1557-1に規定された方法に準拠して測定することができる。
【0026】
ヒマシ油系ポリオールを含むポリオールの市販品としては、Y-403(商品名 伊藤製油社製)、ヒマシ油(商品名 伊藤製油社製)等が挙げられる。
【0027】
上記ヒマシ油系ポリオールは、1種単独で用いることができ、又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0028】
ヒマシ油系ポリオールの含有量としては、ポリウレタン樹脂組成物に対して10?80重量%であることが好ましく、30?70重量%であることがより好ましく、35?65重量%であることがさらに好ましい。」

(甲1d)「【0029】
1-1-2.その他のポリオール(A2)
他のポリオールとしては、特に限定はなく、例えば、ポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリイソプレンポリオール、及びポリイソプレンポリオールの水素付加物等が挙げられる。
【0030】
例えば、本発明のポリウレタン樹脂組成物中に、他のポリオールとしてポリブタジエンポリオールを含有させることにより、本発明のポリウレタン樹脂組成物は、該ポリウレタン樹脂組成物の混合時の相溶性が優れ、かつ、該ポリウレタン樹脂組成物から得られたポリウレタン樹脂成形体は、優れた耐熱性を賦与できる。
【0031】
上記その他のポリオール(A2)は、1種単独で用いることができ、又は2種以上を混合して用いることできる。
【0032】
その他のポリオール(A2)の含有量としては、ポリウレタン樹脂組成物100重量%に対して、10?80重量%が好ましく、30?70量%がより好ましい。
【0033】
本発明のポリウレタン樹脂組成物において、ポリオール(A)としては、ヒマシ油系ポリオール(A1)を用いることが好ましい。さらに、該ヒマシ油系ポリオールに対して、その他のポリオール成分を加えることができる。
【0034】
本発明のポリウレタン樹脂組成物において、その他のポリオール(A2)を配合する場合、ヒマシ油系ポリオール(A1)とその他のポリオール(A2)との配合比率は、重量比で、100:1?100:100であり、好ましくは、100:1?100:50がより好ましい。」

(甲1e)「【0035】
1-2.ポリイソシアネート(B)
本発明に用いるポリイソシアネート(B)としては、特に限定はなく、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物、これらポリイソシアネート化合物をイソシアヌレート変性した化合物等が挙げられる。
【0036】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0037】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0038】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0039】
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0040】
上記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、又は芳香族ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体が好ましく、中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、又はジフェニルメタンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体がより好ましい。
【0041】
上記ポリイソシアネートは、1種単独で用いることができ、又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0042】
ポリイソシアネートには、上記ポリイソシアネート化合物の他に、他のイシソアネート基含有化合物を含有することができる。他のポリイソシアネートの例としては、上述の脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物等のアロファネート変性体等が挙げられる。
【0043】
本発明のポリウレタン樹脂組成物において、用いられるポリイソシアネートの含有量としては、特に限定はなく、中でもポリウレタン樹脂組成物100重量%に対して、1?50重量%が好ましく、5?40重量%がより好ましい。
【0044】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、上記ポリイソシアネートと、上記ポリオールとのNCO/OH比は、0.6?2.0であることが好ましく、0.7?1.5であることがより好ましく、さらに0.8?1.1であることが好ましい。」

(甲1f)「【0045】
1-3.リン酸エステル(C)
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、リン酸エステルを含有し、該リン酸化合物は、分子量350以上の化合物である。該リン酸エステルとしては、特に限定はなく、例えば、分子量350以上のリン酸エステル、分子量350以上の縮合リン酸エステル等が挙げられる。中でも、分子量350以上の縮合リン酸エステルが好ましい。
【0046】
分子量350以上のリン酸エステルとしては、特に限定はなく、例えば、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート等が挙げられる。
【0047】
分子量350以上の縮合リン酸エステルとしては、特に限定はなく、例えば、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジ-2,6-キシレニルホスフェート等が挙げられる。
【0048】
これらの中でも、分子量350以上のリン酸エステルとしては、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、及びレゾルシノールビスジ-2,6-キシレニルホスフェートが好ましく、特に、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジ-2,6-キシレニルホスフェート等の非ハロゲン縮合リン酸エステルがより好ましい。
【0049】
上記リン酸エステルは、1種単独で用いることができ、又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0050】
リン酸エステルの分子量は、特に限定はなく、通常、分子量350以上であり、好ましくは350?2000であり、より好ましくは350?1000である。
【0051】
リン酸エステルの含有量としては、特に限定はなく、例えば、ポリウレタン樹脂組成物中[ポリイソシアネートを含む液(A剤)とポリオールを含む液(B剤)の合計100重量%(ポリウレタン樹脂組成物100重量%)中]に対して通常、5?50重量%であり、10?40重量%が好ましく、10?30重量%がより好ましい。
【0052】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、分子量350以上のリン酸エステルを配合することにより、ポリウレタン樹脂組成物の耐湿性(耐加水分解性)及び難燃性を向上させることができる。」

(甲1g)「【0066】
1-5.無機充填剤(E)
さらに、本発明のポリウレタン樹脂組成物は、必要に応じて、無機充填剤(E)を配合することができる。
【0067】
無機充填剤(E)としては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0068】
これらの中でも、ポリウレタン樹脂組成物の放熱性に優れ、かつ充填時の粘度上昇も少ないことから、アルミナ、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムが好ましい。
【0069】
上記無機充填剤(E)は、1種単独で用いることができ、又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0070】
無機充填剤を配合する場合、その含有量としては、特に限定はなく、中でもポリウレタン樹脂組成物100重量%に対して、10?95重量%が好ましく、50?80重量%がより好ましい。
【0071】
無機充填剤(E)の形状は、球状、不定形状のいずれでもよい。」

(甲1h)「【0080】
1-8.その他の成分
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、さらに必要に応じて、粘着付与剤、着色剤、鎖延長剤、架橋剤、フィラー、顔料、充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、水分吸湿剤、消泡剤、防黴剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0081】
これらの成分の使用量は、その使用目的に応じて、最終的に得られるポリウレタン樹脂組成物の所望の特性を阻害することのないように、通常の添加量と同定の範囲から適宜決めればよい。」

(甲1i)「【0087】
ポリウレタン樹脂組成物においては、ポリオール及びポリイソシアネートが一部又は全部反応して、ポリウレタン樹脂を形成していてもよい。すなわち、ポリウレタン樹脂組成物は、硬化前の液状であってもよいし、硬化していてもよい。ポリウレタン樹脂組成物を硬化させる方法としては、上記A剤及びB剤を混合することにより、ポリオールとポリイソシアネートとが反応し、ポリウレタン樹脂となることにより、ポリウレタン樹脂組成物を経時的に硬化させる方法が挙げられるが、加熱により硬化させてもよい。この場合、加熱温度は40?120℃程度が好ましく、加熱時間は、0.5時間?24時間程度が好ましい。」

(甲1j)「【実施例】
【0089】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明のポリウレタン樹脂組成物について具体的に説明する。ただし、実施例はあくまで一例であって、本発明は、実施例に限定されない。
【0090】
実施例及び比較例において使用する原料を以下に示す。
【0091】
ポリオール(A)
A1:平均水酸基価160mgKOH/gのヒマシ油系ポリオール
(商品名:Y-403、伊藤製油株式会社製)
ポリイソシアネート(B)
B1:ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI系イソシアネート)
(商品名:MTL、東ソー株式会社製)
リン酸エステル(C)
C1:トリクレジルホスフェート(分子量:368)
(商品名:TCP、大八化学株式会社製)
C2:トリキシレニルホスフェート(分子量:410)
(商品名:TXP、大八化学株式会社製)
C3:1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)(分子量:687)
(商品名:PX-200、大八化学株式会社製)
C4:トリフェニルホスフェート(分子量:262、比較品)
(商品名:TPP、大八化学株式会社製)
シリル基含有化合物(D)
D1:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン
(商品名:S-810、JNC株式会社製)
・・・
消泡剤(E)
E1:消泡剤
(商品名:SC-5570、株式会社東レ・ダウコーニング製)
重合触媒(F)
F1:ジオクチル錫ジラウレート
(商品名:ネオスタンU-810、日東化成株式会社製)
・・・」

(甲1k)「【0092】
<実施例1?7及び比較例1?3>
表1に示す配合量で、ポリオール、シリル基含有化合物、重合触媒及び消泡剤を、加熱、冷却及び減圧装置を備えた反応釜に投入し、100℃、及び10mmHg以下の圧力下で2時間かけて脱水攪拌して、B剤を調製した。B剤に対して、NCO/OHが表1に示す値となるよう調整してポリイソシアネート及びリン酸エステルを含むA剤を加え、混合、及び脱泡してポリウレタン樹脂組成物を調製した。」

(甲1l)「【0093】
【表1】




(2)甲第13号証(参考文献7)に記載された事項
甲第13号証(参考文献7)には、以下の事項が記載されている。

(甲13a)「アルカリ土類金属[・・・] アルカリ土金属ともいい、周期表2族のうち、カルシウムCa、ストロンチウムSr、バリウムBa、ラジウムRaの4元素を指す。・・・ベリリウムBeおよびマグネシウムMgも2族に属し、性質も似ている点が多いので、これら2元素も含めてアルカリ土類とすることもある。・・・」(第68頁右欄第16?25行)

(3)参考文献1に記載された事項
参考文献1には、以下の事項が記載されている。

(参1a)「化合物[・・・] 2種類以上の元素からできている純物質を化合物という。・・・」(第206頁右欄下から第16?15行)

(4)参考文献2に記載された事項
参考文献2には、以下の事項が記載されている。

(参2a)「せい・ぶん【成分】・・・[化]化合物や混合物を構成している元素・物質」(第1617頁最下欄左から第17?15行)

(5)参考文献3に記載された事項
参考文献3には、以下の事項が記載されている。

(参3a)「中和[・・・] 酸と塩基がその性質を相互に打ち消し合う化学過程のことである。・・・」(第856頁右欄下から第5?4行)


第6 当審の判断
当審は、当審が通知した取消理由1?2及び申立人がした申立理由1?4のいずれによっても、本件発明2?6に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。

1 申立ての却下
上記「第2 訂正の適否についての判断」及び「第3 特許請求の範囲の記載」で示したとおり、請求項1は、本件訂正により削除されているので、請求項1についての申立てを却下する。

2 取消理由について
(1)取消理由1(明確性)について
取消理由1ア及びイの概要は、上記「第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「1 取消理由通知の概要」「(1)取消理由1(明確性)」で示したとおりであるところ、以下アに再掲する。

ア 取消理由1
本件訂正前の請求項1の「イオン性化合物捕捉剤(D)」とはどのようなものか、本件発明1にも本件明細書にも定義がなく、発明の詳細な説明の記載や技術常識を勘案しても明らかではない。また、「イオン性化合物捕捉剤(D)」の「捕捉」の対象の「イオン性化合物」とはどのようなものか、その「イオン性化合物」は本件明細書の発明の詳細な説明の「【背景技術】」や「【発明が解決しようとする課題】」とどのような関係にあるのか、「イオン性化合物捕捉剤(D)」はどのような原理で「イオン性化合物」を捕捉するのか等が明らかでない。
本件訂正前の請求項2には、「イオン性化合物捕捉剤(D)」について、「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上である」と特定しているものの、「イオン性化合物捕捉剤(D)」とは、どのような機能を有するものか、本件発明の課題とどのように関係するのか等、発明の詳細な説明を参酌しても、明確でない。また、「イオン性化合物捕捉剤(D)」が「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物」である場合には、本件明細書の段落【0032】の記載からみて、「水酸化マグネシウム」、「酸化マグネシウム」が具体例となるといえるが、「水酸化マグネシウム」、「酸化マグネシウム」は下記の参考文献1(甲第1号証)の段落【0066】?【0067】からみて「無機充填剤」となり得るものであり、本件訂正前の請求項2の「イオン性化合物捕捉剤(D)」の機能は、「無機充填剤」の機能とは区別し得るものか、さらに、「イオン性化合物捕捉剤(D)」と「無機充填剤」とは実施態様において配合量等により区別し得るものか等も明らかでない。
本件訂正前の請求項1?2を直接的又は間接的に引用する請求項3?6についても同様である。
よって、訂正前の請求項1?6に記載された発明は明確でない。

イ 判断
この点について、判断する。

本件訂正により、本件発明2の「イオン性化合物捕捉剤(D)」について、「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上」と特定され、その配合量についても「イオン性化合物捕捉剤(D)がアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)を含む場合、前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1であり、前記イオン性化合物捕捉剤(D)がポリカルボジイミド(D2)を含む場合、前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1」と特定され、「イオン性化合物捕捉剤(D)」の種類及び配合量が明確になった。
さらに、令和2年12月23日付け意見書において、「イオン性化合物捕捉剤(D)」の「捕捉」の対象の「イオン性化合物」について、「ひまし油系ポリオール(A1)や含リン化合物(C)に残留し酸価として検出される微量の酸成分や、ひまし油系ポリオール(A1)や含リン化合物(C)の加水分解により生じるカルボン酸成分やリン酸成分等が挙げられます」と、「ひまし油系ポリオール(A1)」や「含リン化合物(C)」由来の「酸成分」であることと説明し、さらに、「本件明細書の記載、特に段落【0032】、【0055】等の記載からイオン性化合物捕捉剤(D)が耐湿熱性の向上」するために添加されている」と説明しており、イオン性化合物捕捉剤(D)」の「捕捉」の対象の「イオン性化合物」も理解できるといえる。
また、同意見書において、「イオン性化合物」と本件明細書の「【発明が解決しようとする課題】」及び「イオン性化合物捕捉剤(D)」と「耐湿熱性」との関係については、「本件明細書の段落【0005】には・・・耐湿熱性の向上することが課題として記載されています。一方、イオン性化合物である上記の酸成分は酸触媒として作用し、ひまし油系ポリオール(A1)(イソシアネート基含有化合物(B)との反応によって生成されたポリウレタン樹脂中でのひまし油ポリール部分も含む。)や含リン化合物(C)の加水分解を促進します。一般に湿熱条件下ではより加水分解が進行し、耐湿熱性が悪化することに鑑みると、上記の酸成分を捕捉することができれば耐湿熱性が向上して、上記課題を解決できることは、当業者において理解できることであると考えます」と、本件発明の課題の1つが「耐湿熱性の向上」の向上であり、上記の「ひまし油系ポリオール(A1)」や「含リン化合物(C)」由来の「酸成分」が、「湿熱条件」下における「ひまし油系ポリオール(A1)」や「含リン化合物(C)」の加水分解をより進行させるため、上記「酸成分」を「イオン性化合物捕捉剤(D)」により捕捉することで、加水分解を抑制できることが説明している。さらに、「イオン性化合物捕捉剤(D)」が「イオン性化合物」を捕捉する原理について、「イオン性化合物捕捉剤(D)のうち「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩」については、・・・酸性物質を中和することができますので、「イオン性化合物」である上記酸成分を中和することにより捕捉します。一方、「ポリカルボジイミド」については、そのカルボジイミド基が例えばカルボキシル基と反応してアミド結合を形成しますので、これにより加水分解反応の触媒となる上記酸成分を捕捉します」と、「イオン性化合物捕捉剤(D)」が「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩」の場合は中和により、「ポリカルボジイミド」の場合は「酸成分」が「カルボン酸成分」の場合に反応して捕捉することを説明している。
さらに、同意見書において、「イオン性化合物捕捉剤(D)」が「水酸化マグネシウム」、「酸化マグネシウム」である場合の、甲第1号証の(甲1g)の段落【0066】?【0067】の「無機充填剤」との区別について、甲第1号証の「「無機充填剤」は、放熱性を付与するために配合されており(段落【0068】)、配合量についても「ポリウレタン樹脂組成物100重量%に対して、10?95重量%が好ましく、50?80重量%が好ましい」(段落【0070】)と一般的な充填剤と同様に比較的多量に配合されており、上記の酸成分を捕捉するために少量配合される本件発明の「イオン性化合物捕捉剤(D)」とは配合量により区別され得るものです」と説明されたが、これにより、本件発明の「イオン性化合物捕捉剤(D)」と甲第1号証の(甲1g)の段落【0066】?【0070】の「無機充填剤」とは、機能としても配合量としても明確に区別できることが理解できるものとなった。
以上のとおり、本件発明1の「イオン性化合物捕捉剤(D)」について、「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上」と特定された上に、同意見書において、「イオン性化合物捕捉剤(D)」の「捕捉」の対象の「イオン性化合物」、「イオン性化合物」と本件明細書の発明が解決しようとする課題及びイオン性化合物捕捉剤(D)と耐湿熱性」との関係、「イオン性化合物捕捉剤(D)」が「イオン性化合物」を捕捉する原理、甲第1号証の「無機充填剤」との機能及び配合量の違いについて説明されたので、取消理由1は解消されたといえる。

ウ 申立人の主張について
申立人は、令和3年2月18日に提出した意見書において、令和2年12月23日付け意見書における特許権者による説明に対して、概略、以下の点について主張している。

主張1:「イオン性化合物」について、本件明細書には、定義が何ら記載されておらず、参考文献1の(参1a)「化合物」の意味、参考文献2の(参2a)の「成分」の意味を考慮すれば、本願出願時の技術常識を参酌したとしても、「イオン性化合物」が、一義的に「カルボン酸成分、リン酸成分、および酸価として検出される成分」であるということはできない。「カルボン酸成分」、「リン酸成分」の外延が不明である。「酸価として検出される成分」及び「酸成分」が、具体的に何を意味しているのか、本件明細書の記載及び本願の技術常識を参酌しても不明である。「ひまし油系ポリオール(A1)や含リン化合物(C)の加水分解により生じるカルボン酸成分やリン酸成分」が、具体的に、どのような構造の成分を意味しているのか不明である。(同意見書の3(1)ア(ウ)(i)(ii))
主張2:令和2年12月23日付け意見書における特許権者による「イオン性化合物である上記の酸成分は酸触媒として作用し、ひまし油系ポリオール(A1)(イソシアネート基含有化合物(B)との反応によって生成されたポリウレタン樹脂中でのひまし油ポリール部分も含む。)や含リン化合物(C)の加水分解を促進します」との説明中の「酸触媒」の用語の意味も不明であるし、ひまし油系ポリオールと含リン化合物(C)の加水分解だけが促進されるのかも不明である。(同意見書の3(1)ア(ウ)(i)(ii))
主張3:令和2年12月23日付け意見書における特許権者による「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩」については、・・・酸性物質を中和することができますので、「イオン性化合物」である上記酸成分を中和することにより捕捉します」との説明について、「中和」とは参考文献3の(3a)の記載のとおり「酸と塩基がその性質を相互に打ち消し合う化学過程のこと」であるところ、「酸成分」の内容は不明であるから、「酸成分を中和することにより捕捉します」との記載の意味するところが不明である。(同意見書の3(1)ア(ウ)(i)(ii)(iii))
主張4:「イオン性化合物捕捉剤(D)」について、「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩および・・・からなる群より選ばれる1種以上」と特定されたが、「アルカリ土類金属」について、一般には、「周期律表第2族のうち、カルシウムCa、ストロンチウムSr、バリウムBa、ラジウムRaを指す(参考文献7の68頁)。広義ではマグネシウム等も含まれるかもしれませんが、その定義は定まっているわけでは」ないし、甲第1号証の「無機充填剤」としての「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩」と区別することができない。(同意見書の3(1)ア(ウ)(i)(iv))
主張5:「イオン性化合物捕捉剤(D)」について、「・・・ポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上」と特定されたが、「ポリカルボジイミド」としては、本件明細書の段落【0032】には「カルボジイミド等量100?500であるポリカルボジイミドであり、さらに好ましくは・・・、カルボジイミド等量200?400である」と記載されているが、「例えば、分子量1万以上のポリカルボジイミドが存在するのか、また、そのような分子量1万以上のポリカルボジイミドが、実施例に記載の特定の(低分子量)のカルボジイミド基含有ポリマーと同様の効果が得られるのかが不明である。(同意見書の3(1)ア(ウ)(i)(iv))

上記主張1?5について、以下に検討する。

a 上記主張1?3について
本件訂正により、本件発明2の「イオン性化合物捕捉剤(D)」は「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上」と特定された。さらに、令和2年12月23日付け意見書において、「イオン性化合物捕捉剤(D)」の捕捉の対象となる「イオン性化合物」については、「ひまし油系ポリオール(A1)」や「含リン化合物(C)」由来の「酸成分」であることと説明し、「イオン性化合物」と本件明細書の発明が解決しようとする課題及びイオン性化合物捕捉剤(D)と耐湿熱性」との関係、「イオン性化合物捕捉剤(D)」が「イオン性化合物」を捕捉する原理についても説明している。
これにより、当業者であれば、「ひまし油系ポリオール(A1)」や「含リン化合物(C)」中に「酸成分」を含む不純物が存在すること、「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩およびポリカルボジイミド」によりその「酸成分」について、イオン性の物質間の作用や反応により捕捉できることは当業者であれば理解できるといえるし、また、本件明細書の(本h)の段落【0048】?【0049】の実施例1?17と比較例2の結果からみて、「イオン性化合物捕捉剤(D)」を含まない比較例2に比べて、「イオン性化合物捕捉剤(D)」を含む実施例1?17は、耐湿熱性の評価が高くなることを確認しているから、上記主張1?3を採用することはできない。

b 上記主張4について
上記主張4の「アルカリ土類金属」にマグネシウムが含まれる点に関して、本件明細書の(本e)の段落【0032】には「本発明に用いるイオン性化合物捕捉剤(D)は、耐湿熱性の観点から、アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩および・・・からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。・・・より好ましくは水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、・・・であり、さらに好ましくは水酸化カルシウム、・・・である」の記載からみて、本件発明においては、「アルカリ土類金属」に「マグネシウム」を含むことは明らかであるといえる。
また、上記主張4の「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩」と「無機充填剤」との区別についても、上記イで検討したとおり、令和2年12月23日付け意見書における説明により、両者の機能の点で明確に区別できるようになったとえいる。また、その配合量についても、甲第1号証の(甲1g)の「無機充填剤」は「ポリウレタン樹脂組成物100重量%に対して、10?95重量%が好ましく、50?80重量%が好ましい」(段落【0070】)とされているのに対し、本件発明2の「イオン性化合物捕捉剤(D)」である「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩」については、本件発明2において「前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1」と特定され、「含リン化合物(C)」は「配合量がポリウレタン樹脂形成性組成物に対して10?60質量%であ」ると特定されていることから、「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩」の配合量は「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対して最大で、60(質量%)×1/30=2(質量%)であり、甲第1号証において配合される「無機充填剤」の配合量と区別することができるといえる。
したがって、上記主張4も採用することはできない。

c 上記主張5について
本件発明2の「イオン性化合物捕捉剤(D)」である「ポリカルボジイミド」について、本件明細書の(本e)の段落【0032】には、「本発明に用いるイオン性化合物捕捉剤(D)は、耐湿熱性の観点から、・・・ポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。ポリカルボジイミドとしては、多価イソシアネート化合物から選択される少なくとも一種を用いた(共)重合体が挙げられる。より好ましくは・・・、カルボジイミド等量100?500であるポリカルボジイミドであり、さらに好ましくは・・・、カルボジイミド等量200?400である。これらは一種又は二種以上を使用することができる。ここでカルボジイミド等量とは1当量のカルボジイミド基を含有する重合体のグラム数を表す」と、「耐湿熱性」の観点から添加されるものであり、「カルボジイミド等量100?500である」ものが好ましいことが記載され、令和2年12月23日付け意見書において、「ひまし油系ポリオール(A1)」や「含リン化合物(C)」中に「酸成分」を捕捉することにより耐湿熱性を向上させるものであることが説明されている。
そうすると、仮に、「分子量1万以上のポリカルボジイミド」が存在した場合であってこれを用いた場合には、「ポリカルボジイミド」を含まない場合に比べて、「ひまし油系ポリオール(A1)」や「含リン化合物(C)」中に「酸成分」を捕捉することにより耐湿熱性を向上できることは当業者であれば理解できるといえる。
これに対して、申立人は、具体的な反証を示して、本件発明の課題を解決できないことを主張しているわけではない。
したがって、上記主張5についても採用することはできない。

エ 小括
以上のとおり、取消理由1は、解消されたため、理由がない。

(2)取消理由2について
取消理由2の概要は、上記「第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「1 取消理由通知の概要」「(1)取消理由2(サポート要件)」で示したとおりであるところ、以下アに再掲する。

ア 取消理由2
本件発明の課題は、上記摘記(本a)の記載からみて、「難燃性、作業性に優れ、かつ樹脂ケースにケミカルストレスクラックが生じにくく、さらに耐湿熱性についても良好なポリウレタン樹脂形成性組成物を提供すること」であるところ、本件発明1は、「水酸基含有化合物(A)」及びこのうちの「ひまし油系ポリオール(A1)」、「イソシアネート基含有化合物(B)」、「含リン化合物(C)」、「イオン性化合物捕捉剤(D)」の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」の成分を発明特定事項としているが、それぞれの成分の配合量について特定されていない。
一方、本件明細書の発明の詳細な説明には、「水酸基含有化合物(A)」及びこのうちの「ひまし油系ポリオール(A1)」、「イソシアネート基含有化合物(B)」、「含リン化合物(C)」、「イオン性化合物捕捉剤(D)」の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」の成分について、これらの成分の配合量を特定しないと本件発明の上記課題を解決できないことがあり得ることも記載されており、各成分の配合量を特定せず、さらに、「イオン性化合物捕捉剤(D)」について特定しない本件発明1は、本件明細書の上記摘記の記載や技術常識からみて、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるとはいえない範囲も含むものといえる。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
また、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2?6も同様である。
よって、本件訂正前の請求項1?6に係る発明はサポートされているとはいえない。

イ 判断
(ア)特許法第36条第6項第1号の考え方について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って検討する。

(イ)本件発明の課題
本件発明の課題は、本件明細書の(本a)の段落【0005】の「本発明は、前記問題点に鑑みて為されたものであり、難燃性、作業性に優れ、かつ樹脂ケースにケミカルストレスクラックが生じにくく、さらに耐湿熱性についても良好なポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することを課題とする」との記載からみて、「難燃性、作業性に優れ、かつ樹脂ケースにケミカルストレスクラックが生じにくく、さらに耐湿熱性についても良好なポリウレタン樹脂形成性組成物を提供すること」であるといえる。

(ウ)判断
本件訂正により、本件発明2において、「ひまし油ポリオール(A1)」の配合量について、本件明細書の(本b)の段落【0017】に基づき「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対して「20?70質量%」と特定され、「含リン化合物(C)」の配合量について本件明細書の(本d)の段落【0031】の記載に基づき「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対して「10?60質量%」と特定され、「イオン性化合物捕捉剤(D)」について、本件明細書の(本e)の段落【0032】の記載に基づき「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)」と特定され、さらに「イオン性化合物捕捉剤(D)」の配合量について、(本e)の段落【0034】?【0035】の記載に基づき「含リン化合物(C)」と「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上(D1)」の質量比が「(C):(D1)=30?230:1」、「含リン化合物(C)」と「ポリカルボジイミド(D2)」の質量比が「(C):(D2)=15?115:1」であると特定され、「ポリウレタン樹脂形成性組成物」における「イソシアネート基」と「水酸基」とのモル比(NCO/OH)について本件明細書の(本f)の段落【0037】の記載に基づき「0.5?1.5」と特定され、本件発明2の各成分について、本件明細書の一般的記載に基づいて本件発明の課題を解決できると認識できる範囲に限定されたから、取消理由2は解消されたといえる。

ウ 申立人の主張について
申立人は、令和3年2月18日に提出した意見書において、以下の点について主張している。

主張6:本件発明1の「ひまし油ポリオール(A1)の配合量がポリウレタン樹脂形成性組成物」に対して20?70質量%」のうち、「49.25を越えて70質量%」の場合は、発明の詳細な説明には実質的に記載されていない。

主張7:本件発明1の「イソシアネート基含有化合物(B)」のうち、本件明細書の(本h)の実施例の段落【0046】のB1?B4で示すイソシアネート基含有化合物以外の化合物は、発明の詳細な説明には実質的に記載されていない。

主張8:本件発明1の「含リン化合物(C)」のうち、本件明細書の(本h)の実施例の段落【0046】のC1-1?C1-4で示す化合物以外の化合物は、発明の詳細な説明には実質的に記載されていない。

主張9:本件発明1の「前記イオン性化合物捕捉剤(D)がアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)を含む場合、前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1」のうち、「126を越えて230:1」の場合は、発明の詳細な説明には実質的に記載されていません。

主張10:本件発明1の「前記イオン性化合物捕捉剤(D)がポリカルボジイミド(D2)を含む場合、前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1」のうち、本件明細書の(本h)の実施例には「38」しか記載されておらず、また、D1とD2とは、化学構造も、物性(性質)も全く異なるグループであることは秋甍であるところ、「38未満、38を越えて115未満」の場合は、発明の詳細な説明に実質的に記載されていない。

主張11:本件発明1の「ポリウレタン樹脂形成性組成物におけるイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCO/OH)が0.5?1.5」のうち、本件明細書の(本h)の実施例には「0.8」しか記載されておらず、また。イソシアネート基と水酸基とが反応してウレタン構造が得られるものであるところ、0.8以外の「0.5から0.8未満、0.8を越えて1.5未満」の場合は、発明の詳細な説明には実質的に記載されていない。

これらの主張6?10は、申立理由3の(イ)、(ウ)、(オ)、(ク)、(ケ)と概略同旨であるため、下記「3 特許異議申立人がした申立理由について」「(4)申立理由3(サポート要件)について」で検討し、ここでは、主張11のみ検討する。

a 上記主張11について
本件発明2の「ポリウレタン樹脂形成性組成物におけるイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCO/OH)が0.5?1.5」であることについて、本件明細書の(本f)の段落【0037】には、「本発明のポリウレタン樹脂形成性組成物は、イソシアネート基と水酸基とのモル比(NCO/OH)が、0.5?1.5であることが好ましく、・・・。イソシアネート基と水酸基のモル比がこの範囲より小さいと硬化不良が生じる場合や得られる樹脂の耐湿熱性が低くなる場合があり、この範囲より大きいと硬化不良が起こる場合があるからである」と記載されており、本件明細書の(本h)の実施例では、段落【0047】に「・・・調製した硬化剤および主剤を、混合比100/70(重量比。NCO/OH=0.8)で合計量100gとなる量を・・・混合することにより、各実施例のポリウレタン樹脂形成性組成物を得た」と「NCO/OH=0.8」で実施した例が記載されている。「ポリウレタン樹脂」は、複数のイソシアネート基を有する化合物と複数の水酸基を有する化合物を重合することにより得られるものであるところ、これらの化合物について「(NCO/OH)が0.5?1.5」程度の範囲内のものを重合させれば、「硬化不良」を生じることのない「ポリウレタン樹脂」を得ることができると当業者であれば理解できるといえる。
これに対して、申立人は、具体的な反証を示して、本件発明の課題を解決できないことを主張しているわけではない。
したがって、上記主張11を採用することはできない。

エ 小括
以上のとおり、取消理由2は、下記「特許異議申立人がした申立理由について」「(4)申立理由3(サポート要件)について」での検討を踏まえると、解消されたため、理由がない。

3 特許異議申立人が主張する申立理由について
以下、事案に鑑みて、申立理由1(進歩性)を判断した後、申立理由4(明確性)を判断し、その後、申立理由2(実施可能要件)、申立理由3(サポート要件)を判断する。

(1)申立理由1(進歩性)について
申立理由1(進歩性)については、主引用例とされた甲第1号証は、本件特許に係る出願の日(本件特許に係る出願の出願日:平成27年9月30日)の後に出願公開(甲第1号証の出願公開日:平成29年1月19日)がされたものであり、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物ではなく、申立理由1(進歩性)の特許法第29条第2項の根拠とならないことが明らかであるため、この理由により、本件発明2?6に係る特許を取り消すことはできない。

なお、申立人が特許異議申立書に記載した「申立の理由」ではないが、申立人は、令和3年2月18日提出された意見書において、甲第1号証を先願とすると、本件発明2?6は、先願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも,本件特許の出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので,特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものである旨主張する。
しかしながら、甲第1号証には、本件発明2の「イオン性化合物捕捉剤(D)」である「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)」を「含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1」となるように配合すること、あるいは、「イオン性化合物捕捉剤(D)」である「ポリカルボジイミド(D2)」を「含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1」となるように配合することは記載されていないから、甲第1号証には、本件発明2が記載されているとはいえない。また、甲第2?11号証にも、本件発明2の「含リン化合物(C)」と「イオン性化合物捕捉剤(D)」を特定の質量比で含む「ポリウレタン樹脂形成性組成物」が記載されていないし、甲第1号証に記載された発明に対して、上記特定の「イオン性化合物捕捉剤(D)」を上記特定の量で配合することについて、課題解決のための具体的手段における微差」と判断できる記載があるとはいえないので、この申立人の主張を採用することはできない。

(2)申立理由4(明確性)について
申立理由4の概要は、上記「第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「2 特許異議申立理由の概要」「(4)申立理由4(明確性)」で示したとおりであるところ、以下アに再掲する。

ア 申立理由4
(ア)本件訂正前の請求項1に係る発明の「水酸基含有化合物(A)」について、「水酸基含有化合物(A)」とは、水酸基、つまり、OH基を含有する化合物を意味することから、例えば、水酸基を1つ含有する化合物も含められると考えられる。そのような化合物を用いた場合、どのようにすれば、ポリウレタン樹脂組成物を製造できるのかが不明であるため、当該「水酸基含有化合物(A)」に含まれる化合物の外延は不明である。
(イ)本件訂正前の請求項1に係る発明の「イソシアネート基含有化合物(B)」について、「イソシアネート基含有化合物(B)」は、イソシアネート基、つまり、NCO基を含有する化合物を意味するところ、例えば、NCO基を1つ含有する化合物も含まれると考えられる。そのような化合物を用いた場合、どのようにすれば、ポリウレタン樹脂組成物を製造できるのかが不明であるため、当該「イソシアネート基含有化合物(B)」に含まれる化合物の外延は不明である。
(ウ)本件訂正前の請求項1に係る発明の「R_(2)」として「炭素数6?15のアリール基」と記載されているが、通常、「アリール」としては、フェニル、ナフチル、アントラニル等が挙げられ、その炭素数は6、10、14等であるところ、請求項1でいう、「炭素数15のアリール基」としてどのような基が該当するのか不明である。
(エ)本件訂正前の請求項1に係る発明の「イオン性化合物捕捉剤(D)」について、本件明細書中には定義について何ら記載されておらず、「イオン性化合物捕捉剤(D)」に、どのような化合物までが含まれるのか不明である。
(オ)本件明細書の段落【0032】には「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩」と記載されているが、アルカリ土類金属は、甲第13号証に「周期表2族のうち、カルシウムCa、ストロンチウムSr、バリウムBa、ラジウムRaの4元素を指す」と記載されていることからわかるように、ベリリウム及びマグネシウムはアルカリ土類金属に含まれない。本件訂正前の請求項2?3に係る発明の「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩」に、どのような化合物が含まれるか不明である。
したがって、訂正前の請求項1に記載された発明及び請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?6に記載された発明は明確でない。

イ 判断
上記理由ア(ア)?(オ)について、以下に検討する。

a 上記理由ア(ア)及び(イ)について
本件発明2は、「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に係る発明であるが、「ポリウレタン樹脂」は、2以上の水酸基を有するポリオール化合物と、2以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を重合させて製造することは、技術常識であるといえる。
上記ア(ア)について、本件発明2は、「水酸基含有化合物(A)」について「ひまし油系ポリオール(A1)を含有」することを発明特定事項としている。本件明細書の(本b)の段落【0012】には「ひまし油系ポリオール(A1)」について、2以上の水酸基を有する「ひまし油系ポリオール(A1)」が例示され、段落【0015】には「ひまし油系ポリオール(A1)以外のポリオール」について2以上の水酸基を有する「ポリオール」が例示されている。
したがって、本件発明2の「水酸基含有化合物(A)」には、2以上の水酸基を有する「ひまし油系ポリオール(A1)」や「ひまし油系ポリオール(A1)以外のポリオール」を含むことが明らかであるから、本件発明1の「水酸基含有化合物(A)」の記載が不明確であるとはいえない。
上記ア(イ)について、本件発明2の「イソシアネート基含有化合物(B)」とのみしか記載されていないものの、本件明細書の(本c)の段落【0017】には「本発明に用いるイソシアネート基含有化合物(B)は、分子中にイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物および芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物が挙げられる」と、2以上のイソシアネート基を有する「ポリイソシアネート化合物」が例示され、さらに、段落【0018】?【0022】には「ポリイソシアネート化合物」の具体例が記載されている。
したがって、本件発明2の「イソシアネート基含有化合物(B)」は、2以上のイソシアネート基を有する「ポリイソシアネート化合物」を含むことが明らかであるから、本件発明1の「イソシアネート基含有化合物(B)」の記載が不明確であるとはいえない。
よって、上記理由ア(ア)及び(イ)は、理由がない。

b 上記理由ア(ウ)について
本件発明2の「含リン化合物(C)」の「一般式(1)」中の「R_(2)は同一または異なる炭素数6?15のアリール基」との記載について、一般に「アリール基」とは、フェニル、ナフチル、アントラニル等のほか、芳香族炭化水素基であるフェニル基にメチル基やエチル基等のアルキル基等の炭素を有する置換基が結合した化合物も含むものといえるから、「炭素数6?15のアリール基」がどのようなものかは当業者であれば理解できるといえる。
したがって、上記理由ア(ウ)も、理由がない。

c 上記理由ア(エ)について
本件発明2は、「イオン性化合物捕捉剤(D)」について、本件訂正により「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上」と特定されたので、上記「2 取消理由について」「(1)取消理由1(明確性)について」で検討したとおり、「イオン性化合物捕捉剤(D)」は明確になったといえる。
したがって、上記理由ア(エ)も理由がない。

d 上記理由ア(オ)について
本件発明2の「イオン性化合物捕捉剤(D)」の「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩」のアルカリ土類金属」について、上記「2 取消理由について」「(1)取消理由1(明確性)について」「ウ 申立人の主張について」「b 上記主張4」において検討したとおり、本件明細書の(本e)の段落【0032】の記載からみて、本件発明においては、「アルカリ土類金属」に「マグネシウム」を含むことは明らかであるといえる。
したがって、上記理由ア(オ)も、理由がない。

ウ 小括
以上のとおり、申立理由4は、理由がない。

(3)申立理由2(実施可能要件)について
申立理由2の概要は、上記「第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「2 特許異議申立理由の概要」「(2)申立理由2(実施可能要件)」で示したとおりであるところ、以下アに再掲する。

ア 申立理由2
(ア)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「前記水酸基含有化合物が、ひまし油系ポリオール(A1)を含有し」と記載しており、「ひまし油系ポリオール(A1)」を必ず含むものである。本件明細書の段落【0012】には「ひまし油系ポリオール(A1)」の種類、「ひまし油系ポリオール(A1)」について「二種以上を使用することができる」ことが記載されているが、本件明細書の実施例1?17で開示されているのは、2種の「ひまし油系ポリオール(A1)」を単独で特定の量で用いた例、及び、実施例6の1組の特定の「ひまし油系ポリオール(A1)」と特定の「ひまし油系ポリオール(A1)以外のポリオール」を組み合わせた例のみであり、その他の「ひまし油系ポリオール(A1)」を単独又は併用して用いた場合や、実施例6の「ひまし油系ポリオール(A1)」と「ひまし油系ポリオール(A1)以外のポリオール」の組み合わせ以外の組み合わせを用いた場合にも、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(イ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「ひまし油系ポリオール(A1)」含有する「ポリウレタン樹脂形成性組成物」が記載されており、本件明細書の【0014】には「ひまし油系ポリオール(A1)の配合量は、ポリウレタン樹脂形成性組成物に対して20?70質量%であることが好ましく、40?60質量%であることがより好ましい」ことが記載されているが、本件明細書の実施例1?17で開示されているのは、「ひまし油系ポリオール(A1)」の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対して「40.3?64.6質量%」を用いた態様のみであり、「40.3?64.6質量%」以外の配合量の場合に、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(ウ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「イソシアネート基含有化合物(B)」と記載されており、本件明細書の段落【0017】には、「本発明に用いるイソシアネート基含有化合物(B)は、分子中にイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物および芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる」と記載されているが、本件明細書の実施例1?17では特定の4種の「イソシアネート基含有化合物(B)」を用いた例しか開示されておらず、また、2種以上を使用した例は示されていない。実施例1?17で使用された4種の「イソシアネート基含有化合物(B)」以外の「イソシアネート基含有化合物(B)」を用いた場合や、2種以上の「イソシアネート基含有化合物(B)」を組み合わせて用いた場合に、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(エ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「イソシアネート基含有化合物(B)」を含有するポリウレタン樹脂組成物が記載されているが、発明の詳細な説明には、「イソシアネート基含有化合物(B)」の含有量に関する記載がない。実施例1?17では「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対して「15.4?26.8質量%」を用いた態様のみであり、「15.4?26.8質量%」以外の配合量の場合に、実施例1?17と同様の効果を得ることができるのか不明である。
(オ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「含リン化合物(C)」及び「前記含リン化合物(C)が、下記一般式(1)・・・で表される化合物(C1)を含有し」と記載されているが、本件明細書の段落【0025】?【0027】には「含リン化合物(C)」について説明がされているところ具体的な化合物が記載されていない。本件明細書の実施例1?17では、特定の4種の「含リン化合物(C)」を用いた例しか開示されておらず、他の「含リン化合物(C)」を用いた場合に、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。また、本件明細書の段落【0028】には、「一般式(1)・・・で表される化合物(C1)」と「他の含リン化合物(C2)」を併用することが記載されているが、本件明細書の実施例では、実施例17に特定の1種の「一般式(1)・・・で表される化合物(C1)」及び特定の1種の「他の含リン化合物(C2)」の組み合わせの例しか記載されておらず、他の組み合わせを用いた場合に、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(カ)本件訂正前の請求項1には、「イオン性化合物捕捉剤(D)」と記載されており、本件明細書の段落【0032】には、「本発明に用いるイオン性化合物捕捉剤(D)は、耐湿熱性の観点から、アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい」、「ポリカルボジイミドとしては、多価イソシアネート化合物から選択される少なくとも一種を用いた(共)重合体が挙げられる」と記載されているが、本件明細書の実施例1?17では、特定の6種の「イオン性化合物捕捉剤(D)」を用いた例が記載されているのみである。実施例1?17の結果からは「イオン性化合物捕捉剤(D)」が「イオン性化合物」が捕捉したのか明らかでない。「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩」として実施例には「水酸化マグネシウム」を用いた例が記載されているが、甲第13号証からみてマグネシウムは「水酸化マグネシウム」に該当しないので、「イオン性化合物捕捉剤(D)」にどのような化合物が含まれるのか明らかでない。また、実施例1?17には、特定の6種の「イオン性化合物捕捉剤(D)」を単独で用いた例が記載されているのみであり、2種以上組み合わせた場合に,実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。「ポリカルボジイミド」として、実施例に記載の特定の2種以外にどのようなポリマーが含まれるのか明らかでないし、これら2種以外のポリマーを用いた場合にこれらのポリマーと同様の効果を奏するのか不明である。
(キ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「発泡剤の含有量がポリウレタン樹脂形成性組成物中に0.3質量%以下である」ことが記載されており、本件明細書の段落【0039】には、「発泡剤」の種類や含有量について記載されているが、本件明細書の実施例1?17には、発泡剤について0.3質量%以下で含む例は記載されておらず、また、比較例として「発泡剤」を0.3質量%を超えて含む「ポリウレタン樹脂形成性組成物」が開示されていないから、「発泡剤の含有量が・・・・0.3質量%以下である」場合に、「難燃性、作業性に優れ、かつ樹脂ケースにケミカルストレスクラックが生じにくく、さらに耐熱性についても良好である」という本願発明の効果が得られるのかどうか理解できない。
(ク)本件訂正前の請求項3には「前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、酸化物及び炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1である」と記載されているが、本件明細書の実施例では、「(C):(D1)」が「49?126:1」の例が記載されているのみであり、「(C):(D1)=30?230:1」の質量比の全範囲に渡って実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(ケ)本件訂正前の請求項4(当審注:異議申立書においては、「請求項3」と記載されているが「請求項4」の誤りであると認められる)には「前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1である」と記載されているが、本件明細書の実施例では「(C):(D2)」が「38:1」の例が記載されているのみであり、「(C):(D2)=15?115:1である」の質量比の全範囲に渡って実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
したがって、訂正前の請求項1に記載された発明及び請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?6に記載された発明について、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。

イ 判断
a 特許法第36条第4項第1号の考え方について
特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。
以下、この観点に立って検討する。

b 判断
上記理由ア(ア)?(ケ)について、以下に検討する。

本件発明2は、上記「第3 特許請求の範囲の記載」の【請求項2】の記載のとおりの発明特定事項を有するものである。

上記理由ア(ア)?(イ)に関して、「水酸基含有化合物(A)」、「水酸基含有化合物が、ひまし油系ポリオール(A1)を含有」することについて、本件明細書の(本b)の段落【0012】には、「ひまし油系ポリオール(A1)」の種類について具体的に例示され、また、「一種又は二種以上を使用することができる」ことが記載されており、段落【0013】には、「ひまし油系ポリオール(A1)」の25℃における粘度や平均水酸基数について記載され、段落【0015】には、「ひまし油系ポリオール(A1)」と併用できる「ポリオール」について具体的に例示されている。
また、本件発明2には、「ひまし油系ポリオール(A1)」の配合量について「ひまし油ポリオール(A1)の配合量がポリウレタン樹脂形成性組成物に対して20?70質量%」であることが特定され、段落【0014】には、同様の配合量について記載され、「ひまし油系ポリオール(A1)の配合量が上記範囲より少ないと、耐湿熱性が低下する傾向があり、上記範囲より多いとポリウレタン樹脂形成性組成物の製造時の混合粘度が高くなり、作業性が低下する傾向がある」ことが記載されている。

上記理由ア(ウ)?(エ)に関して、「イソシアネート基含有化合物(B)」については、本件明細書の(本c)の段落【0017】?【0022】に具体的な化合物が例示され、また、段落【0023】に、「反応性、耐湿熱性、粘度および作業性の観点」から望ましい化合物が具体的に記載されている。
さらに、本件発明2には、「イソシアネート基含有化合物(B)」の配合量について「ポリウレタン樹脂形成性組成物におけるイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCO/OH)が0.5?1.5」であることが特定され、(本f)の段落【0037】には、同様の配合量について記載され、「イソシアネート基と水酸基のモル比がこの範囲より小さいと硬化不良が生じる場合や得られる樹脂の耐湿熱性が低くなる場合があり、この範囲より大きいと硬化不良が起こる場合があるからである」ことが記載されている。

上記理由(オ)に関して、「下記一般式(1)・・・で表される化合物(C1)」について、本件発明1の「一般式(1)」中の「R_(1)」は「炭素数6?30の芳香環を有する炭化水素基」、「R_(2)」は「同一または異なる炭素数6?15のアリール基」、「n」は「1?3」と具体的に特定されているし、本件明細書の(本d)の段落【0024】?【0027】には、「R_(1)」、「R_(2)」、「n」の好ましい態様についても記載されている。

上記理由(カ)に関して、本件発明2は、本件訂正により「イオン性化合物捕捉剤(D)」について、本件訂正により「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上」と特定され、本件明細書の(本e)の段落【0032】には、「より好ましくは水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カルボジイミド等量100?500であるポリカルボジイミド・・・」と好ましい具体的な例が示され、「これらは一種又は二種以上を使用することができる」こと、「カルボジイミド等量とは1当量のカルボジイミド基を含有する重合体のグラム数を表す」ことも記載されている。
また、上記理由ア(カ)のうち、「実施例1?17の結果からは「イオン性化合物捕捉剤(D)」が「イオン性化合物」が捕捉したのか明らかでない」「甲第13号証からみてマグネシウムは「水酸化マグネシウム」に該当しないので、「イオン性化合物捕捉剤(D)」にどのような化合物が含まれるのか明らかでない」との主張については、「2 取消理由について」「(1)取消理由1(明確性)について」において検討したとおり、「イオン性化合物捕捉剤(D)」が「イオン性化合物」を捕捉する原理について令和2年12月23日付け意見書において説明されたといえるし、本件発明においては「アルカリ土類金属」に「マグネシウム」を含むことは明らかであるといえる。

上記理由(キ)に関して、本件発明2の「発泡剤の含有量がポリウレタン樹脂形成性組成物中に0.3質量%以下である」について、本件明細書の(本g)の段落【0039】には、「発泡剤」の具体例が記載され、また、「実質的に含有しないことが好ましい」こと、「実質的に含有しないとは、ポリウレタン樹脂形成性組成物中に0.3質量%以下であること」が記載されている。

上記理由(ク)及び(ケ)に関して、本件発明2には、「前記イオン性化合物捕捉剤(D)がアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)を含む場合、前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1であり、前記イオン性化合物捕捉剤(D)がポリカルボジイミド(D2)を含む場合、前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1であり」と特定され、本件明細書の(本e)の段落【0033】?【0035】には、「イオン性化合物捕捉剤(D)」の具体的な配合量について記載されている。

そして、本件明細書の(本h)の実施例1?17では、本件明細書の記載に従った本件発明2の具体的な実施例が記載されており、比較例1?3に比べて、「混合粘度」、「耐湿熱性」、「難燃性」、「ケミカルストレスクラック性評価」の点で優れた「ポリウレタン樹脂形成性組成物」が得られたことが示されている。

そうすると、本件発明2の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」の各成分について、種類や配合量等が具体的に記載され、本件明細書の実施例1?17には、その具体例が示されていることから、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明2の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」を、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、製造できるように記載されているといえる。
したがって、本件訂正後の本件発明2について、上記ア(ア)?(ケ)の理由により、本件明細書の発明の詳細な説明に、当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されていないと判断することはできない。

エ 小括
以上のとおり、申立理由2は、理由がない。

(4)申立理由3(サポート要件)について
申立理由3の概要は、上記「第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「2 特許異議申立理由の概要」「(3)申立理由3(サポート要件)」で示したとおりであるところ、以下アに再掲する。
ア 申立理由3
(ア)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「前記水酸基含有化合物が、ひまし油系ポリオール(A1)を含有し」と記載しており、「ひまし油系ポリオール(A1)」を必ず含むものである。本件明細書の段落【0012】には「ひまし油系ポリオール(A1)」の種類、「ひまし油系ポリオール(A1)」について「二種以上を使用することができる」ことが記載されているが、本件明細書の実施例1?17で開示されているのは、2種の「ひまし油系ポリオール(A1)」を単独で特定の量で用いた例、及び、実施例6の1組の特定の「ひまし油系ポリオール(A1)」と特定の「ひまし油系ポリオール(A1)以外のポリオール」を組み合わせた例のみであり、その他の「ひまし油系ポリオール(A1)」を単独又は併用して用いた場合や、実施例6の「ひまし油系ポリオール(A1)」と「ひまし油系ポリオール(A1)以外のポリオール」の組み合わせ以外の組み合わせを用いた場合にも、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(イ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「ひまし油系ポリオール(A1)」含有する「ポリウレタン樹脂形成性組成物」が記載されており、本件明細書の【0014】には「ひまし油系ポリオール(A1)の配合量は、ポリウレタン樹脂形成性組成物に対して20?70質量%であることが好ましく、40?60質量%であることがより好ましい」ことが記載されているが、本件明細書の実施例1?17で開示されているのは、「ひまし油系ポリオール(A1)」の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対して「40.3?64.6質量%」を用いた態様のみであり、「40.3?64.6質量%」以外の配合量の場合に、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(ウ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「イソシアネート基含有化合物(B)」と記載されており、本件明細書の段落【0017】には、「本発明に用いるイソシアネート基含有化合物(B)は、分子中にイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物および芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる」と記載されているが、本件明細書の実施例1?17では特定の4種の「イソシアネート基含有化合物(B)」を用いた例しか開示されておらず、また、2種以上を使用した例は示されていない。実施例1?17で使用された4種の「イソシアネート基含有化合物(B)」以外の「イソシアネート基含有化合物(B)」を用いた場合や、2種以上の「イソシアネート基含有化合物(B)」を組み合わせて用いた場合に、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(エ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「イソシアネート基含有化合物(B)」を含有するポリウレタン樹脂組成物が記載されているが、発明の詳細な説明には、「イソシアネート基含有化合物(B)」の含有量に関する記載がない。実施例1?17では「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対して「15.4?26.8質量%」を用いた態様のみであり、「15.4?26.8質量%」以外の配合量の場合に、実施例1?17と同様の効果を得ることができるのか不明である。
(オ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「含リン化合物(C)」及び「前記含リン化合物(C)が、下記一般式(1)・・・で表される化合物(C1)を含有し」と記載されているが、本件明細書の段落【0025】?【0027】には「含リン化合物(C)」について説明がされているところ具体的な化合物が記載されていない。、本件明細書の実施例1?17では、特定の4種の「含リン化合物(C)」を用いた例しか開示されておらず、他の「含リン化合物(C)」を用いた場合に、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。また、本件明細書の段落【0028】には、「一般式(1)・・・で表される化合物(C1)」と「他の含リン化合物(C2)」を併用することが記載されているが、本件明細書の実施例では、実施例17に特定の1種の「一般式(1)・・・で表される化合物(C1)」及び特定の1種の「他の含リン化合物(C2)」の組み合わせの例しか記載されておらず、他の組み合わせを用いた場合に、実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(カ)本件訂正前の請求項1には、「イオン性化合物捕捉剤(D)」と記載されており、本件明細書の段落【0032】には、「本発明に用いるイオン性化合物捕捉剤(D)は、耐湿熱性の観点から、アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい」、「ポリカルボジイミドとしては、多価イソシアネート化合物から選択される少なくとも一種を用いた(共)重合体が挙げられる」と記載されているが、本件明細書の実施例1?17では、特定の6種の「イオン性化合物捕捉剤(D)」を用いた例が記載されているのみである。実施例1?17の結果からは「イオン性化合物捕捉剤(D)」が「イオン性化合物」が捕捉したのか明らかでない。「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物、炭酸塩」として実施例には「水酸化マグネシウム」を用いた例が記載されているが、甲第13号証からみてマグネシウムは「水酸化マグネシウム」に該当しないので、「イオン性化合物捕捉剤(D)」にどのような化合物が含まれるのか明らかでない。また、実施例1?17には、特定の6種の「イオン性化合物捕捉剤(D)」を単独で用いた例が記載されているのみであり、2種以上組み合わせた場合に,実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。「ポリカルボジイミド」として、実施例に記載の特定の2種以外にどのようなポリマーが含まれるのか明らかでないし、これら2種以外のポリマーを用いた場合にこれらのポリマーと同様の効果を奏するのか不明である。
(キ)本件訂正前の請求項1に係る発明は、「発泡剤の含有量がポリウレタン樹脂形成性組成物中に0.3質量%以下である」ことが記載されており、本件明細書の段落【0039】には、「発泡剤」の種類や含有量について記載されているが、本件明細書の実施例1?17には、発泡剤について0.3質量%以下で含む例は記載されておらず、また、比較例として「発泡剤」を0.3質量%を超えて含む「ポリウレタン樹脂形成性組成物」が開示されていないから、「発泡剤の含有量が・・・・0.3質量%以下である」場合に、「難燃性、作業性に優れ、かつ樹脂ケースにケミカルストレスクラックが生じにくく、さらに耐熱性についても良好である」という本願発明の効果が得られるのかどうか理解できない。
(ク)本件訂正前の請求項3には「前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、酸化物及び炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1である」と記載されているが、本件明細書の実施例では、「(C):(D1)」が「49?126:1」の例が記載されているのみであり、「(C):(D1)=30?230:1」の質量比の全範囲に渡って実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
(ケ)本件訂正前の請求項4(当審注:異議申立書においては、「請求項3」と記載されているが「請求項4」の誤りであると認められる)には「前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1である」と記載されているが、本件明細書の実施例では「(C):(D2)」が「38:1」の例が記載されているのみであり、「(C):(D2)=15?115:1である」の質量比の全範囲に渡って実施例1?17と同様の効果を奏するのか不明である。
したがって、訂正前の請求項1に記載された発明及び請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?4に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。

イ 判断
a 特許法第36条第6項第1号の考え方について
上記2(2)イ(ア)で示したとおりである。
以下、この観点に立って検討する。

b 本件発明の課題
上記2(2)イ(イ)で検討したとおり、本件発明の課題は、「難燃性、作業性に優れ、かつ樹脂ケースにケミカルストレスクラックが生じにくく、さらに耐湿熱性についても良好なポリウレタン樹脂形成性組成物を提供すること」であるといえる。

c 判断
以下、上記理由ア(ア)?(ケ)について検討する。また、上記「2 取消理由について」「(2)取消理由2について」「ウ 申立人の主張について」で述べたとおり、上記主張6?10は、申立理由3の(イ)、(ウ)、(オ)、(ク)、(ケ)と概略同旨であるため、併せて検討する。

(a)本件明細書の記載について
本件発明2は、上記「第3 特許請求の範囲の記載」の【請求項2】の記載のとおりの発明特定事項を有するものである。
本件明細書の詳細な説明には、上記「(2)申立理由2(実施可能要件)」「イ.判断」「b 判断」で述べたとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」の「水酸基含有化合物(A)」、「イソシアネート基含有化合物(B)」、「含リン化合物(C)」、「イオン性化合物捕捉剤(D)」、「発泡剤」について種類や配合量等が具体的に記載されているといえる。
そして、本件明細書の(本h)の実施例1?17には、「水酸基含有化合物(A)」、「イソシアネート基含有化合物(B)」、「含リン化合物(C)」、「イオン性化合物捕捉剤(D)」を含む具体的な「ポリウレタン樹脂形成性組成物」が開示され、本件発明の上記課題を解決できたことが示されている。
一方、「含リン化合物(C)」のうち「一般式(1)・・・で表される化合物(C1)」を含まず他の「含リン化合物(C)」を含む比較例1の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」は「ケミカルストレスクラック」の評価が劣り、「イオン性化合物捕捉剤(D)」を含まない比較例2の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」は「耐湿熱性」が劣り、「水酸基含有化合物(A)」のうち「ひまし油系ポリオール(A1)」を含まない比較例3の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」は「混合粘度」が高く「作業性」に劣り、「難燃性」にも劣ることが示されている。

(b)上記理由ア(ア)、(イ)及び上記主張6について
本件明細書の(本b)の段落【0011】には「ひまし油系ポリオール(A1)を含有することにより、耐湿熱性が優れる」ことが記載され、段落【0014】には「ひまし油系ポリオール(A1)の配合量は、ポリウレタン樹脂形成性組成物に対して20?70質量%であることが好ましく、40?60質量%であることがより好ましい。ひまし油系ポリオール(A1)の配合量が上記範囲より少ないと、耐湿熱性が低下する傾向があり、上記範囲より多いとポリウレタン樹脂形成性組成物の製造時の混合粘度が高くなり、作業性が低下する傾向がある」ことが記載され、段落【0015】には「本発明に用いるポリオール成分には、本発明の効果を損なわない程度に、ひまし油系ポリオール(A1)以外のポリオールを配合することができる」と記載されており、「ひまし油系ポリオール(A1)」を含めば、実施例1?17と異なる「ひまし油系ポリオール(A1)」を用いた場合や、実施例6の「ひまし油系ポリオール(A1)」と「ひまし油系ポリオール(A1)以外のポリオール」である「ブタジエンポリオール」の組み合わせ以外の組み合わせを用いた場合、「ひまし油系ポリオール(A1)」の「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対する配合量が「40.3?64.6質量%」以外の場合、特に「49.25を越えて70質量%」の場合であっても、比較例3の「ひまし油系ポリオール(A1)」を含まない場合に比べて、「作業性」が優れたものになることが当業者であれば理解できるといえる。
これに対して、申立人は、具体的な反証を示して、本件発明の課題を解決できないことを主張しているわけではない。

(c)上記理由(ウ)、(エ)及び上記主張7について
本件明細書の(本c)の段落【0017】には「本発明に用いるイソシアネート基含有化合物(B)は、分子中にイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されない」と記載されており、「イソシアネート基含有化合物(B)」は「水酸基含有化合物(A)」とともに「ポリウレタン樹脂」を形成するためのものであると理解できるから、実施例で使用されたB1?B4の4種の以外の「イソシアネート基含有化合物(B)」を用いた場合や2種以上の「イソシアネート基含有化合物(B)」を組み合わせて用いた場合であっても、本件発明の課題が解決できることは、当業者であれば理解できるといえる。
また、「イソシアネート基含有化合物(B)」の配合量について、実施例で開示された「ポリウレタン樹脂形成性組成物」に対して「15.4?26.8質量%」以外の配合の態様であっても、本件明細書の(本f)の段落【0037】の「イソシアネート基と水酸基とのモル比(NCO/OH)が、0.5?1.5」程度の範囲は通常の「ポリウレタン樹脂」を重合するための範囲であり、この程度の範囲であれば本件発明の上記課題を解決できる「ポリウレタン樹脂形成性組成物」を得ることができることは当業者であれば理解できるといえる。
これに対して、申立人は、具体的な反証を示して、本件発明の課題を解決できないことを主張しているわけではない。

(d)上記理由(オ)及び上記主張8について
本件明細書の(本h)の実施例1?17で用いたC1-1?C1-4の4種の「一般式(1)・・・で表される化合物(C1)」についてこれらを配合した「ポリウレタン樹脂形成性組成物」は本件発明の上記課題を解決できたことが示され、実施例6には、「一般式(1)・・・で表される化合物(C1)」と「ポリブタジエンポリール(A2)」を併用した例が本件発明の上記課題を解決できたことが示されているから、実施例で用いたC1-1?C1-4以外の化合物を用いた場合であっても、本件発明2で特定される「一般式(1)・・・で表される化合物(C1)」中の「R_(1)」、「R_(2)」、「n」の範囲内のもの、あるいは、や実施例6とは異なる組み合わせの場合であっても、比較例1の「一般式(1)・・・で表される化合物(C1)」を含まない場合に比べて、「難燃性」が優れたものになることが当業者であれば理解できるといえる。
これに対して、申立人は、具体的な反証を示して、本件発明の課題を解決できないことを主張しているわけではない。

(e)上記理由(カ)について
本件発明2は、本件訂正により「イオン性化合物捕捉剤(D)」について、本件訂正により「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上」と特定され、本件明細書の(本e)の段落【0032】には、「耐湿熱性の観点」からこれらの化合物が好ましいことも記載されている。さらに、本件明細書の(本h)の実施例1?17には、D1-1?D1-4の「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩」の例及びD2-1?D2-2の「ポリカルボジイミド」を用いた例が示され、「イオン性化合物捕捉剤(D)」を含まない比較例2に比べて「耐湿熱性」が優れることが示されているから、D1-1?D1-4の「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩」の例及びD2-1?D2-2の「ポリカルボジイミド」以外の「アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上」を用いた場合や、「イオン性化合物捕捉剤(D)」を2種以上組み合わせた場合であっても、「イオン性化合物捕捉剤(D)」を含まない比較例2に比べて、「耐湿熱性」が優れることは当業者であれば理解できる。
これに対して、申立人は、具体的な反証を示して、本件発明の課題を解決できないことを主張しているわけではない。

上記理由ア(カ)のうち、「実施例1?17の結果からは「イオン性化合物捕捉剤(D)」が「イオン性化合物」を捕捉したのか明らかでない」「甲第13号証からみてマグネシウムは「水酸化マグネシウム」に該当しないので、「イオン性化合物捕捉剤(D)」にどのような化合物が含まれるのか明らかでない」との主張については、「2 取消理由について」「(1)取消理由1(明確性)について」において検討したとおり、「イオン性化合物捕捉剤(D)」が「イオン性化合物」を捕捉する原理について令和2年12月23日付け意見書において説明されたといえるし、本件発明においては「アルカリ土類金属」に「マグネシウム」を含むことは明らかであるといえる。

(f)上記理由(キ)について
本件明細書(本g)の段落【0039】には、「本発明のポリウレタン樹脂形成性組成物には、難燃性、作業性、ケミカルストレスクラック抑制の観点から、・・・等の発泡剤を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、実質的に含有しないとは、ポリウレタン樹脂形成性組成物中に0.3質量%以下であることをいう」と記載されており、実施例1?17には「発泡剤」を含む例は記載されていないものの、「ポリウレタン樹脂形成性組成物」中に「0.3質量%以下」であれば、「難燃性」、「作業性」、特に「ケミカルストレスクラック抑制」の観点から有利になることは当業者であれば理解できる。
これに対して、申立人は、具体的な反証を示して、本件発明の課題を解決できないことを主張しているわけではない。

(g)上記理由(ク)、(ケ)及び上記主張9?10について
本件明細書の(本e)の段落【0034】には「ポリウレタン樹脂形成性組成物中の前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、酸化物及び炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比は(C):(D1)=30?230:1であることが好ましく、・・・。これらの範囲であれば、難燃性、耐湿熱性、粘度および作業性が両立できる」、段落【0035】には「ポリウレタン樹脂形成性組成物中の前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比は(C):(D2)=15?115:1であることが好ましく、・・・。これらの範囲であれば、難燃性、耐湿熱性、粘度および作業性が両立できる」ことが記載されており、実施例1?17には、「(C):(D1)」及び「(C):(D2)」が特定の範囲の例しか記載されていないものの、「アルカリ土類金属水酸化物、酸化物及び炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)」又は「ポリカルボジイミド(D2)」の範囲がそれぞれ「30?230:1」、「15?115:1」の程度の範囲であれば、「イオン性化合物捕捉剤(D)」を含まない比較例2に比べて、「耐湿熱性」が優れることは当業者であれば理解できる。
これに対して、申立人は、具体的な反証を示して、本件発明の課題を解決できないことを主張しているわけではない。

以上のとおり、本件発明2は、当業者が出願時の技術常識に照らし本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえるから、本件明細書に記載されているといえる。
したがって、上記ア(ア)?(ケ)の申立理由を採用することはできない。

ウ 小括
以上のとおり、申立理由3は、理由がない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、申立人がした申立理由1?4によっては、本件発明2?6を取り消すことはできない。

第7 むすび
特許第6653949号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-6]について訂正することを認める。
本件発明1に係る特許に対する申立は、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により却下する。
当審が通知した取消理由および申立人がした申立理由によっては、本件発明2?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件発明2-6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
水酸基含有化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、含リン化合物(C)およびイオン性化合物捕捉剤(D)を含有するポリウレタン樹脂組成物(X)であって、
前記水酸基含有化合物が、ひまし油系ポリオール(A1)を含有し、
前記含リン化合物(C)が、下記一般式(1)
【化1】

(式中、R_(1)は炭素数6?30の芳香環を有する炭化水素基、R_(2)は同一または異なる炭素数6?15のアリール基、nは1?3である。)で表される化合物(C1)を含有し、
前記イオン性化合物捕捉剤(D)が、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩およびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる1種以上であり、
前記ひまし油系ポリオール(A1)の配合量がポリウレタン樹脂形成性組成物に対して20?70質量%であり、
前記含リン化合物(C)の配合量がポリウレタン樹脂形成性組成物に対して10?60質量%であり、
前記イオン性化合物捕捉剤(D)がアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)を含む場合、前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1であり、前記イオン性化合物捕捉剤(D)がポリカルボジイミド(D2)を含む場合、前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1であり、
ポリウレタン樹脂形成性組成物におけるイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCO/OH)が0.5?1.5であり、
発泡剤の含有量がポリウレタン樹脂形成性組成物中に0.3質量%以下である、
ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項3】
前記イオン性化合物捕捉剤(D)がアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)を含み、前記含リン化合物(C)とアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上(D1)の質量比が(C):(D1)=30?230:1である請求項2記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項4】
前記イオン性化合物捕捉剤(D)がポリカルボジイミド(D2)を含み、前記含リン化合物(C)とポリカルボジイミド(D2)の質量比が(C):(D2)=15?115:1である請求項2記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項5】
電気電子部品用であることを特徴とする請求項2?4いずれか記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項6】
請求項2?5いずれか記載のポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られるポリウレタン樹脂。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-04-26 
出願番号 特願2015-192360(P2015-192360)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C08L)
P 1 651・ 537- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小森 勇  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 杉江 渉
橋本 栄和
登録日 2020-01-31 
登録番号 特許第6653949号(P6653949)
権利者 第一工業製薬株式会社
発明の名称 ポリウレタン樹脂形成性組成物およびポリウレタン樹脂  
代理人 有近 康臣  
代理人 蔦田 正人  
代理人 水鳥 正裕  
代理人 富田 克幸  
代理人 中村 哲士  
代理人 富田 克幸  
代理人 蔦田 正人  
代理人 有近 康臣  
代理人 前澤 龍  
代理人 中村 哲士  
代理人 水鳥 正裕  
代理人 前澤 龍  
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