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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23G
管理番号 1376721
異議申立番号 異議2019-700670  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-08-26 
確定日 2021-07-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6480430号発明「濃赤色および濃褐色の天然カカオの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6480430号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-18〕、〔19-26〕について」)訂正することを認める。 特許第6480430号の請求項1ないし9、11ないし26に係る特許を維持する。 特許第6480430号の請求項10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯
特許第6480430号の請求項1?26に係る特許についての出願は、2014年6月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年6月25日 米国(US))を国際出願日として特許出願され、平成31年2月15日にその特許権の設定登録がされ、同年3月13日にその特許公報が発行され、その後令和1年8月26日に渡邉 彰(以下「特許異議申立人A」という。)により、令和1年9月12日に藤江 桂子(以下「特許異議申立人B」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯の概要は次のとおりである。

令和1年10月31日 手続補正書の提出(特許異議申立人B)
令和2年 1月14日付け 取消理由通知
同年 4月14日 意見書・訂正請求書の提出
同年 6月 2日付け 訂正請求があった旨の通知(特許異議申立人A及びBに対して)
同年 7月 7日 意見書の提出(特許異議申立人A)
同年 同月 8日 意見書の提出(特許異議申立人B)
同年 9月 8日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年12月10日 意見書・訂正請求書の提出
令和3年 2月 4日付け 審尋
同年 4月 9日 回答書

なお、令和2年4月14日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、令和2年12月10日に訂正の請求がされているが、すでに異議申立人に意見書の提出の機会が与えられており、下記第2のとおり、令和2年12月10日にされた訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第5のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したことから、異議申立人に再度の意見書の提出の機会は与えない。

第2 訂正の適否
令和2年12月10日付け訂正請求(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?26について訂正することを請求するものである。

1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「濃い天然カカオの製造方法であって、」、「カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品と水とを混合する工程」、「前記カカオ製品および前記水を少なくとも85℃の温度に加熱する工程」、「前記カカオ製品を乾燥させる工程」、「前記カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程」及び「前記カカオ製品が前記方法中にアルカリ化されない、方法。」と記載されているのを、それぞれ、「濃いカカオ製品の製造方法であって、以下の工程(a)?(e):」、「(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程;(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程」、「(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含み、反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である、工程」、「(d)前記工程(c) で得た反応カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程」、「(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品から濃いカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、」及び「前記カカオ製品が前記方法中にアルカリ化されず、前記濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する、方法。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「前記カカオリカーを」と記載されているのを、「前記工程(e)が、前記カカオリカーを」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「前記カカオケーキを」と記載されているのを、「前記工程(e)が、前記カカオケーキを」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「前記カカオ製品および前記水に」と記載されているのを、「前記工程(c)が、工程(b)で得た前記混合カカオ製品に」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5及び6に、「前記カカオ製品および前記水に」と記載されているのを、「前記混合カカオ製品に」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8及び9に、「前記カカオ製品および前記水を」及び「加熱する」と記載されているのを、「前記工程(c)が、前記混合カカオ製品を」及び「加熱する工程を含む」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項10を削除する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項11に、「前記滅菌工程が加圧下で起こる、請求項10に記載の方法」と記載されているのを、「前記滅菌工程(a)が加圧下で起こる、請求項1に記載の方法」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項12に、「前記カカオ製品を乾燥させる工程が、前記カカオ製品を」と記載されているのを、「前記工程(d)が、前記工程(c)で得た反応カカオ製品を」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項13に、「少なくとも85℃に加熱した前記カカオ製品および前記水の」と記載されているのを、「前記工程(c)が、少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項14に、「2回目の、前記カカオ製品および前記水を」と記載されているのを、「前記工程(c)が、2回目の、前記混合カカオ製品を」に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項15に、「2回目の、少なくとも85℃に加熱した前記カカオ製品および前記水の」と記載されているのを、「前記工程(c)が、2回目の、少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の」に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項16に、「前記少なくとも0.5barの圧力を」と記載されているのを、「前記工程(c)が、前記少なくとも0.5barの圧力を」に訂正する。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項17に、「2回目の、前記カカオ製品および前記水に」と記載されているのを、「前記工程(c)が、2回目の、前記混合カカオ製品に」に訂正する。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項18に、「2回目の、前記少なくとも0.5barの」と記載されているのを、「前記工程(c)が、2回目の、前記少なくとも0.5barの」に訂正する。

(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項19に「9?26のL値、14?29のC値、および40?57のH値からなる色値、ならびに6未満のpHを含み、アルカリ化されていない、濃い天然カカオ製品。」と記載されているのを、「9?21のL値、14?25のC値、および40?54のH値からなる色値、ならびに6未満のpHを有する、アルカリ化されていない、濃いカカオ製品であって、以下の工程(a)?(e):(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程;(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含み、反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である、工程、(d)前記工程(c)で得た反応カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品から濃いカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、をこの順で含む方法で得られる、濃いカカオ製品。」に訂正する。

(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項20?26に「天然カカオ製品。」と記載されているのを、「濃いカカオ製品。」に訂正する。

(18)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項21に「前記カカオ製品がカカオ粉末である」と記載されているのを、「前記工程(e)が、前記カカオリカーを圧搾してカカオケーキおよびカカオバターを製造する工程及び前記カカオケーキを粉末に磨り潰してカカオ粉末を得る工程を更に含み、前記濃いカカオ製品がカカオ粉末である」に訂正する。

(19)訂正事項19
特許請求の範囲の請求項23に「カカオリカーである」と記載されているのを、「前記濃いカカオ製品がカカオリカーである」に訂正する。

(20)訂正事項20
特許請求の範囲の請求項24に「前記カカオリカーが15?28のC値および40?55のH値を有する、」と記載されているのを、「前記カカオリカーが15?25のC値および40?54のH値を有する、」に訂正する。

(21)訂正事項21
特許請求の範囲の請求項25に「前記天然カカオ製品が40?45のH値を有する、」と記載されているのを、「前記工程(c)が、少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程、2回目の、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃に加熱する工程、2回目の、少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程、を更に含み、前記濃いカカオ製品が40?45のH値を有する、」に訂正する。

(22)訂正事項22
特許請求の範囲の請求項26に「前記天然カカオ製品が45?55のH値を有する、」と記載されているのを、「前記工程(c)が、少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程、2回目の、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃に加熱する工程、2回目の、少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程、を更に含み、前記濃いカカオ製品が45?54のH値を有する、」に訂正する。

2 本件訂正の適否
(1)一群の請求項について
本件訂正は、請求項1?26についてのものであるところ、請求項2?18は請求項1を、請求項20?26は請求項19を、それぞれ引用するものであり、請求項1?18、請求項19?26は、それぞれ、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
そして、本件訂正の請求は、全ての請求項である請求項1?26についてされているから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

(2)訂正事項1について
ア 訂正の目的
(ア)訂正事項1の「濃い天然カカオの製造方法であって」を「濃いカカオ製品の製造方法であって、以下の工程(a)?(e):」とする訂正は、「濃い天然カカオ」なるものが、不明確であったものを天然の用語を削除し、製品であるとすることで、明確にするものであり、また、製造方法に含まれる工程が、以下の工程(a)?(e)であることを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。

(イ)訂正事項1の「カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品と水とを混合する工程」を「(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程;(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程」とする訂正は、カカオ製品と水とを混合する工程の前の工程として所定のカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程を限定し、得られた滅菌カカオ製品と水とを混合して得られる製品が混合カカオ製品であることを明確にし、各工程に符号を付して工程を明確にするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。

(ウ)訂正事項1の「前記カカオ製品および前記水を少なくとも85℃の温度に加熱する工程」を「(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含み、反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である、工程」とする訂正は、加熱の対象が工程(b)で得た混合カカオ製品であることを明確にし、加熱する工程が混合カカオ製品を反応させて反応カカオ製品を得る工程であることを明確にし、反応時間を限定し、加熱する工程を含む工程であることを明確にし、反応工程後の反応カカオ製品の含水率を限定し、工程に符号を付して明確にするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。

(エ)訂正事項1の「前記カカオ製品を乾燥させる工程」を「(d)前記工程(c) で得た反応カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程」とする訂正は、乾燥の対象が工程(c)で得た反応カカオ製品であることを明確にし、乾燥により乾燥カカオ製品が得られることを明確にし、工程に符号を付して明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。

(オ)訂正事項1の「前記カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程」を「(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品から濃いカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、」とする訂正は、磨り潰す対象が工程(d)で得た乾燥カカオ製品であることを明確にし、当該工程により濃いカカオ製品が得られることを明確にし、カカオリカーを製造する工程を含むことを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。

(カ)訂正事項1の「前記カカオ製品が前記方法中にアルカリ化されない、方法。」を「前記カカオ製品が前記方法中にアルカリ化されず、前記濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する、方法。」とする訂正は、製造される濃いカカオ製品の色値を限定するものであり、さらに、それによって、当該製品を明確にするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。

以上のとおりであるから、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。

新規事項の追加の有無
(ア)願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」といい、特許時の願書に添付した特許請求の範囲と合わせて「本件特許明細書等」という。)には、「【0009】・・・本発明は・・・アルカリ化カカオ製品の色を有する「天然」カカオ製品の製造方法を開示する。」との記載があり、製造される物がカカオ製品であることが記載されている。また、訂正前の「天然カカオ」は、本件請求項1に記載の所定の製造方法により製造されるものであるから、天然のものではないことは明らかである。
また、本件訂正後の請求項1には、「濃いカカオ製品の製造方法であって」の後に(a)?(e)の工程が記載されている。
したがって、「濃い天然カカオの製造方法であって」を「濃いカカオ製品の製造方法であって、以下の工程(a)?(e):」とする訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

(イ)本件特許明細書等には、「前記カカオ製品を滅菌する工程を更に含む請求項1または2に記載の方法。」(請求項10)、「【実施例】
【0032】
実施例
試験1?8。
Ivory Coast豆から製造した25kgの量のカカオニブを、1Barの圧力で直接水蒸気により15?20分にわたりDrais反応器中で滅菌した。滅菌後、反応器を開いて通気した。
【0033】
5kg(カカオニブの20重量パーセント)の温かい水道水(65?70℃)を反応器中のカカオニブに添加し、反応器を閉じた。直接水蒸気を反応器中に注入し、カカオニブを所望の反応温度の約100℃まで加熱した。カカオニブを、そのような条件下で100℃において30分にわたり反応させた。30分後、反応器を通して空気をブローすることにより、カカオニブの温度を90℃まで低下させた。水蒸気により、カカオニブを100℃の反応温度まで再加熱した。さらに30分の反応後、反応器を通して空気をブローすることにより、カカオニブの温度を90℃まで低下させた。反応器中のカカオニブの全反応時間が240分になるまで、100℃までの加熱および90℃までの低下のプロセスを繰り返した。表1に列挙した時間間隔または反応時間で、即ち0?240分で、カカオニブの試料を反応容器から取り出した。この反応は、大気圧で、出口弁が開いている状態で行った。反応器のジャケットの温度および水蒸気注入を使用して、反応中の温度を制御した。
【0034】
表1で規定した時間にわたり反応させた後、カカオニブの試料を反応器から取り出した。Retsch実験室用流動床乾燥器(ジェット焙煎)中でカカオニブを乾燥させた。乾燥中、カカオニブの含水率を約35?40%から2.5%未満まで低下させた。
【0035】
乾燥させたカカオニブを磨り潰してカカオリカーにし、このカカオリカーを圧搾してカカオケーキおよびカカオバターにした。このカカオケーキをより小さな断片に砕き、直径が0.5mmの孔を有する篩を使用するRetsch切断ミルで微粉砕してカカオ粉末にした。
」との記載があり、カカオ製品と水との混合の前にカカオ製品を滅菌することが記載されているといえる。
また、カカオ製品の滅菌により滅菌カカオ製品が得られること、カカオ製品を水と混合すると混合カカオ製品が得られることは自明である。
したがって、「カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品と水とを混合する工程」を「(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程;(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程」とする訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

(ウ)本件特許明細書には、「【0013】
更なる実施形態では、濃い天然カカオの製造方法は、カカオニブ、カカオ豆またはこれらの組み合わせと水とを混合する工程、およびこの混合物を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含む。・・・水とカカオニブ、カカオ豆またはこれらの組み合わせとを、約90℃?130℃の温度または約90℃?約120℃の温度に加熱することもできる。」との記載があり、上記(イ)で示したとおり、【0033】・・・温かい水道水(65?70℃)を反応器中のカカオニブに添加し、反応器を閉じた。直接水蒸気を反応器中に注入し、カカオニブを所望の反応温度の約100℃まで加熱した。カカオニブを、そのような条件下で100℃において30分にわたり反応させた。・・・カカオニブを100℃の反応温度まで再加熱した。さらに30分の反応後、反応器を通して空気をブローすることにより、・・・反応器中のカカオニブの全反応時間が240分になるまで、100℃までの加熱および90℃までの低下のプロセスを繰り返した。」との記載があり、カカオニブ等と水との混合物を加熱することにより反応させること、30分以上であるといえる30分?240分反応させることが記載されているといえる。また、本件特許明細書等には、加熱時間の上限を限定する旨の特段の記載はないから、加熱によるものである反応の時間についてもその上限は限定されない記載があるといえ、反応により反応カカオ製品が得られることは自明である。したがって、本件特許明細書等には、混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得ることが記載されているといえる。
さらに、上記(イ)で示したとおり、本件特許明細書には、実施例として、【0032】?【0034】に試験1?8について記載されており、カカオニブ及び水道水を100℃まで加熱し反応させること、その後乾燥すること、乾燥中、カカオニブの含水率を約35?40%から2.5%未満まで低下させること、表1には、試験4の反応後のニブの水分%が31.25であることが、【0039】?【0043】には、試験9?19について記載されており、カカオニブ及び水道水を120?140℃に加熱し、反応させること、その後乾燥すること、乾燥中、カカオニブの含水率を約35?40%から2.5%未満まで低下させること、表4の試験19の反応後のニブの水分%が40.4であることが記載されている。したがって、本件特許明細書等には、反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間であることが記載されているといえる。
そして、本件特許明細書等には、「・・・製造方法であって、・・・工程をこの順で含み」(請求項1)と記載されているから、請求項1に記載の各工程が各種の工程を含むことは自明である。
よって、「前記カカオ製品および前記水を少なくとも85℃の温度に加熱する工程」を「(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含み、反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である、工程」とする訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

(エ)上記(イ)で示したとおり、本件特許明細書には、「【0034】
表1で規定した時間にわたり反応させた後、カカオニブの試料を反応器から取り出した。Retsch実験室用流動床乾燥器(ジェット焙煎)中でカカオニブを乾燥させた。乾燥中、カカオニブの含水率を約35?40%から2.5%未満まで低下させた。」との記載があり、反応後に乾燥させることが記載されており、乾燥により乾燥カカオ製品が得られることは自明であるから、「前記カカオ製品を乾燥させる工程」を「(d)前記工程(c) で得た反応カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程」とする訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

(オ)上記(イ)で示したとおり、本件特許明細書には、「【0035】
乾燥させたカカオニブを磨り潰してカカオリカーにし」との記載があり、乾燥後に磨り潰してカカオリカーにすることが記載されているといえ、また、本件特許明細書には、「【0018】
更なる実施形態では、カカオ製品を焙煎することができる。焙煎したカカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造することができる。このカカオリカーをカカオバターおよびカカオ圧搾ケーキに分離することができ、またはこのカカオリカーを脱脂することができる。このカカオ圧搾ケーキを更に磨り潰してカカオ粉末にすることができる。この方法により、濃い色を有する天然カカオ製品が得られ、そのようなカカオ製品は通常、赤色、褐色および赤褐色であることができる。」との記載があり、乾燥させたカカオニブからカカオリカー、カカオバター等のカカオ製品が得られることが記載されている。
また、本件特許明細書等には、「・・・製造方法であって、・・・工程をこの順で含み」(請求項1)と記載されているから、請求項1に記載の各工程が各種の工程を含むことは自明である。
したがって、「前記カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程」を「(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品から濃いカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、」とする訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

(カ)本件特許明細書には、「【0024】
本発明のカカオ製品のC値は、・・・約25未満・・・であることができ、これらの値の中間値も含む。C値は、約14?約29の範囲であることもでき、約15?約28の範囲であることもでき、または数字・・・25・・・および14により囲まれるあらゆる範囲であることもできる。
【0025】
本発明のカカオ製品のL値は、約9?約26の範囲であることができ、・・・または数字・・・21・・・および9により囲まれるあらゆる範囲であることができる。
【0026】
本発明のカカオ製品のH値は、約40?約57の範囲であることができ、・・・または数字40・・・54・・・で囲まれるあらゆる範囲であることができる。」との記載、「【0028】
CIE 1976表色系は、L座標、「a*」座標および「b*」座標という観点で色を説明する。」との記載、「【0030】・・・本明細書に記載する色パラメータは、CIE 1976系に従うL、aおよびbの読み取り値から算出され得るLパラメータ、Cパラメータ、Hパラメータを意味する。」との記載がある。
したがって、「前記カカオ製品が前記方法中にアルカリ化されない、方法。」を「前記カカオ製品が前記方法中にアルカリ化されず、前記濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する、方法。」とする訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

以上のとおりであるから、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるところ、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正事項1に連動して、訂正前の請求項2に記載されたカカオリカーを圧搾してカカオケーキおよびカカオバターを製造する工程が、乾燥カカオ製品から濃いカカオ製品を得る工程(工程(e))に更に含まれるものであることを明確にするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。

新規事項の追加の有無
本件特許明細書等には、「前記カカオリカーを圧搾してカカオケーキおよびカカオバターを製造する工程を更に含む請求項1に記載の方法。」(請求項2)、「【0015】
カカオ製品を乾燥させ、任意選択的に磨り潰してカカオリカーにすることができる。このカカオリカーを圧搾してカカオバターおよびカカオケーキにすることができる。」、「【0018】
更なる実施形態では、カカオ製品を焙煎することができる。焙煎したカカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造することができる。このカカオリカーをカカオバターおよびカカオ圧搾ケーキに分離することができ、・・・。この方法により、濃い色を有する天然カカオ製品が得られ、・・・。」との記載があり、乾燥したカカオ製品を磨り潰して得たカカオリカーから、カカオケーキ、カカオバターを製造することが記載されている。
したがって、訂正事項2による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項2による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものあるところ、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正事項1に連動して、訂正前の請求項3に記載されたカカオケーキを粉末に磨り潰す工程が、乾燥カカオ製品から濃いカカオ製品を得る工程(工程(e))に更に含まれるものであることを明確にするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。

新規事項の追加の有無
本件特許明細書等には、「前記カカオケーキを粉末に磨り潰す工程を更に含む請求項2に記載の方法。」(請求項3)、「【0015】
カカオ製品を乾燥させ、任意選択的に磨り潰してカカオリカーにすることができる。このカカオリカーを圧搾してカカオバターおよびカカオケーキにすることができる。このカカオケーキを磨り潰してカカオ粉末にすることもでき、・・・。」「【0018】
更なる実施形態では、カカオ製品を焙煎することができる。焙煎したカカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造することができる。このカカオリカーをカカオバターおよびカカオ圧搾ケーキに分離することができ、またはこのカカオリカーを脱脂することができる。このカカオ圧搾ケーキを更に磨り潰してカカオ粉末にすることができる。この方法により、濃い色を有する天然カカオ製品が得られ、そのようなカカオ製品は通常、赤色、褐色および赤褐色であることができる。」との記載があり、乾燥したカカオ製品を磨り潰して得たカカオリカーから、カカオケーキ、カカオバターとし、さらに磨り潰してカカオ粉末とすることが記載されている。
したがって、訂正事項3による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項3による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものあるところ、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、訂正事項1に連動して、訂正前の請求項4に記載の「前記カカオ製品および前記水」を「前記混合カカオ製品」と明確にし、訂正前の請求項4に記載の「前記カカオ製品および前記水」に圧力をかける工程が、カカオ製品と水とを混合して得られた「混合カカオ製品」に対する反応工程に含まれることを明確にするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。

新規事項の追加の有無
本件特許明細書等には、「前記カカオ製品および前記水に少なくとも0.5barの高圧をかける工程を更に含む請求項1または2に記載の方法。」(請求項4)、「【0014】
別の実施形態では、カカオニブ、カカオ豆またはこれらの組み合わせと水とに、少なくとも0.5Barそして約4Barまでの圧力をかけることができる。カカオニブ、カカオ豆またはこれらの組み合わせを、約0分?300分の時間にわたりまたは約30分?約240分の時間にわたり反応させることができる。」、「【0040】
5kg(カカオニブの20重量パーセント)の温かい水道水(65?70℃)を反応器中のカカオニブに添加し、反応器を閉じた。直接水蒸気を反応器中に注入し、カカオニブを所望の反応温度まで加熱した。水蒸気入り口弁を閉じて空気入り口弁を開き、約3Barの圧力に達するように反応器中に更なる空気を注入した。カカオニブを、そのような条件下で、表3および表4で規定した温度(120?140℃の範囲)および時間(0?240分の範囲)において反応させた。」との記載があり、カカオニブ等のカカオ製品と水の混合物を反応させる際に圧力をかけることが記載されている。また、カカオ製品を水と混合すると混合カカオ製品が得られることは自明である。
したがって、訂正事項4による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項4による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものあるところ、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(6)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、訂正事項1に連動して、訂正前の請求項5及び6の「前記カカオ製品および前記水」との記載を、明確にするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。

新規事項の追加の有無及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
上記(2)イ(イ)及び(2)ウで述べたのと同様に、「前記カカオ製品および前記水」を「前記混合カカオ製品」とする訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(7)訂正事項6について
ア 訂正の目的
訂正事項6は、訂正事項1に連動して、訂正前の請求項8及び9に記載の「前記カカオ製品および前記水」を「前記混合カカオ製品」と明確にし、訂正前の請求項8及び9に記載の「前記カカオ製品および前記水」を加熱することが、カカオ製品と水とを混合して得られた「混合カカオ製品」に対する反応工程に含まれることを明確にし、工程(c)が加熱する工程を含むことを明確にするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。

新規事項の追加の有無
本件特許明細書等には、「前記カカオ製品および前記水を90℃?130℃の温度に加熱する、請求項1または2に記載の方法。」(請求項8)、「前記カカオ製品および前記水を90℃?120℃の温度に加熱する、請求項1または2に記載の方法。」(請求項9)、「【0013】
更なる実施形態では、濃い天然カカオの製造方法は、カカオニブ、カカオ豆またはこれらの組み合わせと水とを混合する工程、およびこの混合物を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含む。・・・水とカカオニブ、カカオ豆またはこれらの組み合わせとを、約90℃?130℃の温度または約90℃?約120℃の温度に加熱することもできる。」、「【0033】
5kg(カカオニブの20重量パーセント)の温かい水道水(65?70℃)を反応器中のカカオニブに添加し・・・カカオニブを所望の反応温度の約100℃まで加熱した。カカオニブを、そのような条件下で100℃において30分にわたり反応させた。」、「【0040】
5kg(カカオニブの20重量パーセント)の温かい水道水(65?70℃)を反応器中のカカオニブに添加し、反応器を閉じた。直接水蒸気を反応器中に注入し、カカオニブを所望の反応温度まで加熱した。・・・カカオニブを、そのような条件下で、・・・反応させた。」との記載があり、カカオニブ等と水との混合物を加熱することにより反応させることが記載されており、また、本件特許明細書等には、「・・・製造方法であって、・・・工程をこの順で含み」(請求項1)と記載されているから、請求項1を引用する請求項に記載の方法が各種の工程を含むことは自明である。さらに、カカオ製品を水と混合すると混合カカオ製品が得られることは自明である。

したがって、訂正事項6による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項6による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものあるところ、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(8)訂正事項7について
ア 訂正の目的
訂正事項7による訂正は、請求項10を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加の有無及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項7による訂正は、請求項10を削除するに過ぎないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項7による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(9)訂正事項8について
ア 訂正の目的
訂正事項8は、訂正事項1に連動して、訂正前の請求項11に記載の「滅菌工程」を、「滅菌工程(a)」として記載を明確にする訂正であり、また、訂正事項7による訂正よって、訂正前の請求項11が引用していた請求項10が存在しないものとなったところ、訂正前の請求項10が引用していた請求項1及び2のうち、請求項1のみを引用するものとするものとすることで、記載を明確にするとともに、実質的に引用する請求項を減縮する訂正である。
したがって、訂正事項8による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項8による訂正は、滅菌工程について符号(a)を付すに過ぎず、また、実質的に引用する請求項を減縮するに過ぎないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項8による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(10)訂正事項9について
ア 訂正の目的
訂正事項9は、訂正事項1に連動して、訂正前の請求項12に記載の「カカオ製品を乾燥させる工程」を工程(d)とし、また、この工程(d)では、その直前の工程(c)で得た反応物である反応カカオ製品が用いられることを明確にするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件特許明細書等には、「前記カカオ製品を乾燥させる工程が、前記カカオ製品をジェット焙煎する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。」(請求項12)、「【0034】
表1で規定した時間にわたり反応させた後、カカオニブの試料を反応器から取り出した。Retsch実験室用流動床乾燥器(ジェット焙煎)中でカカオニブを乾燥させた。乾燥中、カカオニブの含水率を約35?40%から2.5%未満まで低下させた。」との記載があり、反応後にジェット焙煎することが記載されている。
したがって、訂正事項9による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項9による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものあるところ、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項9による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(11)訂正事項10について
ア 訂正の目的
訂正事項10は、訂正事項1に連動して、訂正前の請求項13に記載の「前記カカオ製品および前記水」を「前記混合カカオ製品」と明確にし、訂正前の請求項13に記載の「少なくとも85℃ に加熱した前記カカオ製品および前記水」の温度を低下させる工程が、混合カカオ製品を所定時間反応させて反応カカオ製品を得る工程(工程(c))に含まれることを明確にするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件特許明細書等には、「少なくとも85℃に加熱した前記カカオ製品および前記水の温度を少なくとも10℃低下させる工程を更に含む請求項1に記載の方法。」(請求項13)、「【0033】
5kg(カカオニブの20重量パーセント)の温かい水道水(65?70℃)を反応器中のカカオニブに添加し、反応器を閉じた。直接水蒸気を反応器中に注入し、カカオニブを所望の反応温度の約100℃まで加熱した。・・・30分後、反応器を通して空気をブローすることにより、カカオニブの温度を90℃まで低下させた。水蒸気により、カカオニブを100℃の反応温度まで再加熱した。さらに30分の反応後、反応器を通して空気をブローすることにより、カカオニブの温度を90℃まで低下させた。反応器中のカカオニブの全反応時間が240分になるまで、100℃までの加熱および90℃までの低下のプロセスを繰り返した。表1に列挙した時間間隔または反応時間で、即ち0?240分で、カカオニブの試料を反応容器から取り出した。この反応は、・・・。」との記載があり、反応カカオ製品を得る反応器内で加熱と温度の低下を繰り返すことが記載されている。また、カカオ製品を水と混合すると混合カカオ製品が得られることは自明である。
したがって、訂正事項10による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項10による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものあるところ、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項10による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(12)訂正事項11について
ア 訂正の目的
訂正事項11は、訂正事項1に連動して、訂正前の請求項14に記載の「前記カカオ製品および前記水」を「前記混合カカオ製品」と明確にし、訂正前の請求項14に記載の「2回目の、前記カカオ製品および前記水」を加熱する工程が、混合カカオ製品を所定時間反応させて反応カカオ製品を得る工程(工程(c))に含まれることを明確にするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件特許明細書等には、「2回目の、前記カカオ製品および前記水を少なくとも85℃に加熱する工程を更に含む請求項13に記載の方法。」(請求項14)、「【0033】
5kg(カカオニブの20重量パーセント)の温かい水道水(65?70℃)を反応器中のカカオニブに添加し、反応器を閉じた。直接水蒸気を反応器中に注入し、カカオニブを所望の反応温度の約100℃まで加熱した。・・・30分後、反応器を通して空気をブローすることにより、カカオニブの温度を90℃まで低下させた。水蒸気により、カカオニブを100℃の反応温度まで再加熱した。さらに30分の反応後、反応器を通して空気をブローすることにより、カカオニブの温度を90℃まで低下させた。反応器中のカカオニブの全反応時間が240分になるまで、100℃までの加熱および90℃までの低下のプロセスを繰り返した。表1に列挙した時間間隔または反応時間で、即ち0?240分で、カカオニブの試料を反応容器から取り出した。この反応は、・・・。」との記載があり、反応カカオ製品を得る反応器内で加熱と温度の低下を繰り返すことが記載されている。また、カカオ製品を水と混合すると混合カカオ製品が得られることは自明である。
したがって、訂正事項11による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項11による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものあるところ、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項11による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(13)訂正事項12について
ア 訂正の目的
訂正事項12は、訂正事項1に連動して、訂正前の請求項15に記載の「前記カカオ製品および前記水」を「前記混合カカオ製品」と明確にし、訂正前の請求項15に記載の「2回目の、少なくとも85℃ に加熱した前記カカオ製品および前記水」の温度を低下させる工程が、混合カカオ製品を所定時間反応させて反応カカオ製品を得る工程(工程(c))に含まれることを明確にするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件特許明細書等には、「2回目の、少なくとも85℃に加熱した前記カカオ製品および前記水の温度を少なくとも10℃低下させる工程を更に含む請求項13に記載の方法。」(請求項15)、「【0033】
5kg(カカオニブの20重量パーセント)の温かい水道水(65?70℃)を反応器中のカカオニブに添加し、反応器を閉じた。直接水蒸気を反応器中に注入し、カカオニブを所望の反応温度の約100℃まで加熱した。・・・30分後、反応器を通して空気をブローすることにより、カカオニブの温度を90℃まで低下させた。水蒸気により、カカオニブを100℃の反応温度まで再加熱した。さらに30分の反応後、反応器を通して空気をブローすることにより、カカオニブの温度を90℃まで低下させた。反応器中のカカオニブの全反応時間が240分になるまで、100℃までの加熱および90℃までの低下のプロセスを繰り返した。表1に列挙した時間間隔または反応時間で、即ち0?240分で、カカオニブの試料を反応容器から取り出した。この反応は、・・・。」との記載があり、反応カカオ製品を得る反応器内で加熱と温度の低下を繰り返すことが記載されている。また、カカオ製品を水と混合すると混合カカオ製品が得られることは自明である。
したがって、訂正事項12による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項12による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものあるところ、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項12による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(14)訂正事項13について
ア 訂正の目的
訂正事項13は、訂正事項1及び4に連動して、訂正前の請求項16に記載の圧力を低下させる工程が、混合カカオ製品を所定時間反応させて反応カカオ製品を得る工程(工程(c))に含まれることを明確にするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件特許明細書等には、「前記少なくとも0.5barの圧力を大気圧まで低下させる工程を更に含む請求項4に記載の方法。」(請求項16)、「【0040】
5kg(カカオニブの20重量パーセント)の温かい水道水(65?70℃)を反応器中のカカオニブに添加し、反応器を閉じた。・・・約3Barの圧力に達するように反応器中に更なる空気を注入した。カカオニブを、そのような条件下で、表3および表4で規定した温度(120?140℃の範囲)および時間(0?240分の範囲)において反応させた。・・・反応後、空気入り口弁を閉じて出口弁を開くことより反応器を通気し、カカオニブへの圧力を解放した。・・・
【0041】
試験の内のいくつかに関して、出口弁を閉じて所望の反応温度まで水蒸気を導入し、反応器を通気する手順を数回繰り返した。・・・表3および表4に列挙した時間間隔または反応時間で、即ち0?240分で、カカオニブの試料を反応器から取り出した。
【0042】
反応後、反応器を通気してカカオニブの試料(試験9?19)を反応器から取り出した。」との記載があり、反応カカオ製品を得る反応器内で圧力をかけること及び圧力を解放することを繰り返すことが記載されている。
したがって、訂正事項13による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項13による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものあるところ、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項13による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(15)訂正事項14について
ア 訂正の目的
訂正事項14は、訂正事項1に連動して、訂正前の請求項17に記載の「前記カカオ製品および前記水」を「前記混合カカオ製品」と明確にし、訂正前の請求項17に記載の圧力をかける工程が、混合カカオ製品を所定時間反応させて反応カカオ製品を得る工程(工程(c))に含まれることを明確にするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件特許明細書等には、「2回目の、前記カカオ製品および前記水に少なくとも0.5barの圧力をかける工程を更に含む請求項16に記載の方法。」(請求項17)、「【0040】
5kg(カカオニブの20重量パーセント)の温かい水道水(65?70℃)を反応器中のカカオニブに添加し、反応器を閉じた。・・・約3Barの圧力に達するように反応器中に更なる空気を注入した。カカオニブを、そのような条件下で、表3および表4で規定した温度(120?140℃の範囲)および時間(0?240分の範囲)において反応させた。・・・反応後、空気入り口弁を閉じて出口弁を開くことより反応器を通気し、カカオニブへの圧力を解放した。・・・
【0041】
試験の内のいくつかに関して、出口弁を閉じて所望の反応温度まで水蒸気を導入し、反応器を通気する手順を数回繰り返した。・・・表3および表4に列挙した時間間隔または反応時間で、即ち0?240分で、カカオニブの試料を反応器から取り出した。
【0042】
反応後、反応器を通気してカカオニブの試料(試験9?19)を反応器から取り出した。」との記載があり、反応カカオ製品を得る反応器内で加圧と圧力解放を繰り返すことが記載されている。また、カカオ製品を水と混合すると混合カカオ製品が得られることは自明である。
したがって、訂正事項14による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項14による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものあるところ、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項14による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(16)訂正事項15について
ア 訂正の目的
訂正事項15は、訂正事項1に連動して、訂正前の請求項17に記載の2回目の圧力を低下させる工程が、混合カカオ製品を所定時間反応させて反応カカオ製品を得る工程(工程(c))に含まれることを明確にするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件特許明細書等には、「2回目の、前記少なくとも0.5barの圧力を大気圧まで低下させる工程を更に含む請求項17に記載の方法。」(請求項18)、「【0040】
5kg(カカオニブの20重量パーセント)の温かい水道水(65?70℃)を反応器中のカカオニブに添加し、反応器を閉じた。・・・約3Barの圧力に達するように反応器中に更なる空気を注入した。カカオニブを、そのような条件下で、表3および表4で規定した温度(120?140℃の範囲)および時間(0?240分の範囲)において反応させた。・・・反応後、空気入り口弁を閉じて出口弁を開くことより反応器を通気し、カカオニブへの圧力を解放した。・・・
【0041】
試験の内のいくつかに関して、出口弁を閉じて所望の反応温度まで水蒸気を導入し、反応器を通気する手順を数回繰り返した。・・・表3および表4に列挙した時間間隔または反応時間で、即ち0?240分で、カカオニブの試料を反応器から取り出した。
【0042】
反応後、反応器を通気してカカオニブの試料(試験9?19)を反応器から取り出した。」との記載があり、反応カカオ製品を得る反応器内で圧力をかけること及び圧力を解放することを繰り返すことが記載されている。
したがって、訂正事項15による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項15による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものあるところ、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項15による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(17)訂正事項16について
ア 訂正の目的
(ア)訂正事項16の「9?26のL値、14?29のC値、および40?57のH値からなる色値」を「9?21のL値、14?25のC値、および40?54のH値からなる色値」とする訂正は、色値を狭い範囲に限定するものであり、特許請求の範囲を減縮するものである。

(イ)訂正事項16の「含み」を「有する」とする訂正は、カカオ製品が所定の色値及びpHを「有する」ことを明確にするものである。

(ウ)訂正事項16の「濃い天然カカオ製品」を「濃いカカオ製品」とする訂正は、訂正前の請求項19に記載の「濃い天然カカオ」なるものが、不明確であったものを「天然」の用語を削除して明確にするものである。

(エ)訂正事項16の「であって、以下の工程(a)?(e):(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程;(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含み、反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である、工程、(d)前記工程(c)で得た反応カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品から濃いカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、をこの順で含む方法で得られる、濃いカカオ製品」を追加する訂正は、カカオ製品を特定することで、特許請求の範囲を減縮するものである。

したがって、訂正事項16による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
上記ア(ア)及び(ウ)の訂正は、訂正事項1と同様の訂正である。
上記ア(イ)の「含み」を「有する」とする訂正は何ら新たな技術的事項を導入するものではない。
上記ア(エ)の訂正により追加される方法は、訂正事項1による訂正における方法と同様の方法である。
したがって、上記(2)イで述べたのと同様に、訂正事項16による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項16による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものあるところ、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項16による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(18)訂正事項17について
ア 訂正の目的
訂正事項17は、訂正事項16と同様に、訂正前の請求項20?26に記載の「天然カカオ」なるものが不明確であったものを「天然」の用語を削除して明確にし、さらに、これら請求項が直接的・間接的に引用する請求項19の本件訂正後の記載である「濃いカカオ製品」に整合させて明確にする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
上記アで述べたとおり、訂正事項17による訂正は、「天然」の用語を削除する点において訂正事項16と同様のものであり、また、本件訂正後の請求項19の記載と整合させるものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、上記17のイで述べたのと同様に、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項17による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものあるところ、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項17による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(19)訂正事項18について
ア 訂正の目的
訂正事項18は、カカオ粉末である訂正前の請求項21のカカオ製品を得る工程を限定することにより特許請求の範囲を減縮し、カカオ粉末が「濃いカカオ製品」であることを明確にする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件特許明細書等には、「前記カカオリカーを圧搾してカカオケーキおよびカカオバターを製造する工程を更に含む請求項1に記載の方法。」(請求項2)、「【0015】
前記カカオケーキを粉末に磨り潰す工程を更に含む請求項2に記載の方法。」(請求項3)、「前記カカオ製品がカカオ粉末である、請求項19または20に記載の天然カカオ製品。」(請求項21)、「【0015】
カカオ製品を乾燥させ、任意選択的に磨り潰してカカオリカーにすることができる。このカカオリカーを圧搾してカカオバターおよびカカオケーキにすることができる。このカカオケーキを磨り潰してカカオ粉末にすることもでき、このカカオ粉末は、最小でも98%が200メッシュスクリーンを通る粉末度を有することができる。」、「【0018】
更なる実施形態では、カカオ製品を焙煎することができる。焙煎したカカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造することができる。このカカオリカーをカカオバターおよびカカオ圧搾ケーキに分離することができ、またはこのカカオリカーを脱脂することができる。このカカオ圧搾ケーキを更に磨り潰してカカオ粉末にすることができる。この方法により、濃い色を有する天然カカオ製品が得られ、そのようなカカオ製品は通常、赤色、褐色および赤褐色であることができる。」との記載があり、乾燥したカカオ製品を磨り潰してカカオリカーとし、カカオリカーを圧搾してカカオバターおよびカカオケーキにすること、カカオケーキを磨り潰してカカオ粉末にすること、カカオ粉末が濃い色を有するカカオ製品であることが記載されている。
したがって、訂正事項18による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項18による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるところ、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項18による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(20)訂正事項19について
ア 訂正の目的
訂正事項19は、訂正前の請求項23のカカオリカーが濃いカカオ製品であることを明確にする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件特許明細書等には、「カカオリカーである、請求項19または20に記載の天然カカオ製品。」(請求項23)、「【0018】
更なる実施形態では、カカオ製品を焙煎することができる。焙煎したカカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造することができる。このカカオリカーをカカオバターおよびカカオ圧搾ケーキに分離することができ、またはこのカカオリカーを脱脂することができる。このカカオ圧搾ケーキを更に磨り潰してカカオ粉末にすることができる。この方法により、濃い色を有する天然カカオ製品が得られ、そのようなカカオ製品は通常、赤色、褐色および赤褐色であることができる。」との記載があり、カカオリカーが濃い色を有するカカオ製品であることが記載されている。
したがって、訂正事項19による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項19による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるところ、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項19による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(21)訂正事項20について
ア 訂正の目的
訂正事項20は、カカオリカーのC値及びH値の上限を下げ、それら値の範囲を狭くする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加の有無・実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項20による訂正によって、特定されるC値及びH値の上限は、訂正事項16による訂正の各値の上限と同じであるから、この訂正については、上記(17)イ及びウで述べたのと同様の理由により、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(22)訂正事項21について
ア 訂正の目的
訂正事項21は、訂正事項16と同様に、訂正前の請求項25に記載の「天然カカオ」なるものが不明確であったものを「天然」の用語を削除して明確にし、さらに、請求項25が直接的・間接的に引用する請求項19の本件訂正後の記載である「濃いカカオ製品」に整合させて明確にし、かつ、訂正前の請求項25に記載のカカオ製品を得るための方法を限定する訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無・実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
「濃いカカオ製品」と訂正する点については、上記(17)及び(18)のそれぞれイ及びウで述べたのと同様に、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、本件特許明細書等には、「少なくとも85℃に加熱した前記カカオ製品および前記水の温度を少なくとも10℃低下させる工程を更に含む請求項1に記載の方法。」(請求項13)、「2回目の、前記カカオ製品および前記水を少なくとも85℃に加熱する工程を更に含む請求項13に記載の方法。」(請求項14)、「2回目の、少なくとも85℃に加熱した前記カカオ製品および前記水の温度を少なくとも10℃低下させる工程を更に含む請求項13に記載の方法。」(請求項15)との記載があるところ、訂正事項21による訂正は、これらの記載についての訂正(訂正事項10?12)と同様の訂正を合わせて行うものであるから、上記(11)?(13)のそれぞれイ及びウにおいて述べたのと同様に、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(23)訂正事項22について
ア 訂正の目的
訂正事項22は、訂正事項16と同様に、訂正前の請求項26に記載の「天然カカオ」なるものが不明確であったものを「天然」の用語を削除して明確にし、さらに、請求項26が直接的・間接的に引用する請求項19の本件訂正後の記載である「濃いカカオ製品」に整合させて明確にし、かつ、訂正前の請求項26に記載のカカオ製品を得るための方法を限定する訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無・実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
「濃いカカオ製品」と訂正する点については、上記(17)及び(18)のそれぞれイ及びウで述べたのと同様に、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、 本件特許明細書等には、「少なくとも85℃に加熱した前記カカオ製品および前記水の温度を少なくとも10℃低下させる工程を更に含む請求項1に記載の方法。」(請求項13)、「2回目の、前記カカオ製品および前記水を少なくとも85℃に加熱する工程を更に含む請求項13に記載の方法。」(請求項14)、「2回目の、少なくとも85℃に加熱した前記カカオ製品および前記水の温度を少なくとも10℃低下させる工程を更に含む請求項13に記載の方法。」(請求項15)との記載があるところ、訂正事項22による訂正は、これらの記載についての訂正(訂正事項10?12)と同様の訂正を合わせて行うものであるから、上記(11)?(13)のそれぞれイ及びウにおいて述べたのと同様に、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-18〕、〔19-26〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項〔1-18〕、〔19-26〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1?9、11?26に係る発明は、令和2年12月10日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?9、11?26に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件発明1」などと、また、これらを合わせて「本件発明」ということがある。)である。

「【請求項1】
濃いカカオ製品の製造方法であって、以下の工程(a)?(e):
(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程;
(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、
(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含み、反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である、工程、
(d)前記工程(c)で得た反応カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品から濃いカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含み、
前記カカオ製品が前記方法中にアルカリ化されず、
前記濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する、方法。
【請求項2】
前記工程(e)が、前記カカオリカーを圧搾してカカオケーキおよびカカオバターを製造する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(e)が、前記カカオケーキを粉末に磨り潰す工程を更に含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(c)が、工程(b)で得た前記混合カカオ製品に少なくとも0.5barの高圧をかける工程を更に含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記混合カカオ製品に300分までの時間にわたり前記高圧をかける、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記混合カカオ製品に30分?240分の時間にわたり前記高圧をかける、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記高圧が0.5bar?4barである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(c)が、前記混合カカオ製品を90℃?130℃の温度に加熱する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(c)が、前記混合カカオ製品90℃?120℃の温度に加熱する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
前記滅菌工程(a)が加圧下で起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(d)が、前記工程(c)で得た反応カカオ製品をジェット焙煎する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(c)が、少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(c)が、2回目の、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃に加熱する工程を更に含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記工程(c)が、2回目の、少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程を更に含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記工程(c)が、前記少なくとも0.5barの圧力を大気圧まで低下させる工程を更に含む請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記工程(c)が、2回目の、前記混合カカオ製品に少なくとも0.5barの圧力をかける工程を更に含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記工程(c)が、2回目の、前記少なくとも0.5barの圧力を大気圧まで低下させる工程を更に含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
9?21のL値、14?25のC値、および40?54のH値からなる色値、ならびに6未満のpH
を有する、アルカリ化されていない、濃いカカオ製品であって、以下の工程(a)?(e):
(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程;
(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、
(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含み、反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である、工程、
(d)前記工程(c)で得た反応カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品から濃いカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含む方法で得られる、濃いカカオ製品。
【請求項20】
前記pHが5.0?6.0である、請求項19に記載の濃いカカオ製品。
【請求項21】
前記工程(e)が、前記カカオリカーを圧搾してカカオケーキおよびカカオバターを製造する工程及び前記カカオケーキを粉末に磨り潰してカカオ粉末を得る工程を更に含み、前記濃いカカオ製品がカカオ粉末である、請求項19または20に記載の濃いカカオ製品。
【請求項22】
前記カカオ粉末が、少なくとも98%が200メッシュスクリーンを通過する粉末度を有する、請求項21に記載の濃いカカオ製品。
【請求項23】
前記濃いカカオ製品がカカオリカーである、請求項19または20に記載の濃いカカオ製品。
【請求項24】
前記カカオリカーが15?25のC値および40?54のH値を有する、請求項23に記載の濃いカカオ製品。
【請求項25】
前記工程(c)が、
少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程、
2回目の、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃に加熱する工程、
2回目の、少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程、
を更に含み、
前記濃いカカオ製品が40?45のH値を有する、請求項19または20に記載の濃いカカオ製品。
【請求項26】
前記工程(c)が、
少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程、
2回目の、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃に加熱する工程、
2回目の、少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程、
を更に含み、
前記濃いカカオ製品が45?54のH値を有する、請求項19または20に記載の濃いカカオ製品。」

第4 当審が通知した、令和2年1月14日付け取消理由及び令和2年9月8日付け取消理由(決定の予告)並びに特許異議申立人A及びBが申し立てた理由の概要

1 当審が通知した令和2年1月14日付け取消理由の概要
[理由1]本件の請求項1?26に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しない。
よって、本件特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

理由1の具体的な理由の概要は次のとおりである。
(ア)請求項1に「濃い天然カカオの製造方法」との記載があるところ、「天然カカオ」とは、天然の植物であるから、出願時の技術常識からみて、カカオリカーを製造する工程等を含む製造方法により製造できるとはいえない。
また、「濃い天然カカオ」の「濃い」とは何がどのような状態であるのか明確でないため、「濃い天然カカオ」がどのような物であるか明確でない。
したがって、請求項1に記載された製造方法は明確でなく、請求項1に係る発明は明確でない。
請求項2?18についても同様である。

(イ)請求項19に「濃い天然カカオ製品」との記載があるところ、「濃い」とは何がどのような状態であるのか明確でない。
また、「天然カカオ」は天然の植物である一方、通常「製品」とは加工することにより製造される物品を意味すると認められるから、「天然カカオ製品」がどのような物であり、どのような範囲の物が含まれるか明確でない。
したがって、「濃い天然カカオ製品」がどのような物か明確でなく、請求項19に係る発明は明確でない。
請求項20?26についても同様である。

(ウ)請求項19に「9?26のL値、14?29のC値、および40?57のH値からなる色値、ならびに 6未満のpHを含み、アルカリ化されていない、濃い天然カカオ製品。」との記載があるが、色値、pHを「含む」の意味が明確でない。
したがって、請求項19に係る発明は明確でない。
請求項19を引用する請求項20?26についても同様である。

(エ)請求項19に係る発明は、「濃い天然カカオ製品」という物の発明であるところ、「アルカリ化されていない」との記載は、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえる。
しかしながら、本件明細書等には不可能・非実際的事情について何ら記載がなく、当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるとも言えない。
したがって、請求項19に係る発明は明確でない。
請求項19を引用する請求項20?26についても同様である。

[理由2]本件の請求項1?5、7?21、23?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1?5、7?21、23?26に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
[理由3]本件の請求項1?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?26に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

引用例:
甲1:特開昭58-851号公報(特許異議申立人Aが提示した甲第3号証、特許異議申立人Bが提示した甲第1号証)
甲3:米国特許第2278471号明細書(特許異議申立人Aが提示した甲第1号証、特許異議申立人Bが提示した甲第3号証)
甲5:国際公開第2012/139096号(特許異議申立人Bが提示した甲第5号証)
甲6:国際公開第99/65322号(特許異議申立人Bが提示した甲第6号証)
甲7:特表2013-500031号公報(特許異議申立人Bが提示した甲第7号証)
甲8:特開2010-246539号公報(特許異議申立人Bが提示した甲第8号証)
甲9:Stephen T.Beckett著、古谷野哲夫訳、チョコレートの科学、株式会社 光琳、平成19年6月30日発行、50頁(特許異議申立人Bが提示した甲第9号証)
甲10:Ralph E.Timms著、佐藤清隆監修、蜂屋巖翻訳、製菓用油脂ハンドブック、株式会社 幸書房、2010年2月14日初版第1刷発行、148頁(特許異議申立人Bが提示した甲第10号証)
(甲2、4は欠番)

上記理由2については、
請求項1、8、9、13、23、24、25に対し甲1、3、5、6を根拠とした、
請求項2に対し甲3、5、6を根拠とした、
請求項3、21に対し甲5、6を根拠とした、
請求項4、7、14?18に対し甲3を根拠とした、
請求項5に対し甲3を根拠とした、
請求項10?12に対し甲5を根拠とした、
請求項19、20、26に対し甲1、3、5?7を根拠とした理由が通知されている。

上記理由3については、
請求項1に対し甲1、3、5、8?10及び周知の技術的事項を根拠とした、
請求項2?13、16に対し甲1、3、5、6、8?10及び周知の技術的事項を根拠とした、
請求項14、15、17、18に対し甲3、8?10及び周知の技術的事項を根拠とした、
請求項19?26に対し甲1、3、5?10及び周知の技術的事項を根拠とした理由が通知されている。

2 当審が通知した令和2年9月8日付け取消理由の概要
[理由2]本件の請求項1?5、7?21、23?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
[理由3]本件の請求項1?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
[理由A]本件の請求項1?26に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しない。
よって、本件特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

理由Aは、令和2年4月14日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の記載に基づいて通知された理由であるところ(なお、当該訂正請求書による訂正請求は取り下げたものとみなされる。)、その具体的な理由の概要は次のとおりである。
(ア)請求項1に各種の「カカオ製品」との記載があるところ、各記載における「カカオ製品」がどのような物を意味しているか、また、各「カカオ製品」の相互関係が明確でない。
さらに、各工程で得られる物と最終的な目的物である「濃いカカオ製品」との関係も明確でない。
加えて、「前記カカオ製品がCIE」として、カカオ製品の色値が特定されているところ、当該「カカオ製品」と「濃いカカオ製品の製造方法であって」との記載における、「カカオ製品」との関係も明確でない。
したがって、請求項1の製造方法がどのような製造方法であり、また、どのような「カカオ製品」を製造するのかが明らかでない。
「カカオ製品」について同様の記載がある請求項19についても同様である。
また、請求項1又は19を直接的又は間接的に引用する請求項2?18、20?26についても同様である。

(イ)請求項1に「前記カカオ製品および前記水を少なくとも85℃の温度に加熱する工程であって、加熱後のカカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である、工程」との記載がある一方で、請求項13に「少なくとも85℃に加熱した前記カカオ製品および前記水の温度を少なくとも10℃低下させる工程を更に含む請求項1に記載の方法。」、請求項14に「2回目の、前記カカオ製品および前記水を少なくとも85℃に加熱する工程を更に含む請求項13に記載の方法。」、請求項15に「2回目の、少なくとも85℃に加熱した前記カカオ製品および前記水の温度を少なくとも10℃低下させる工程を更に含む請求項13に記載の方法。」との記載があるところ、加熱後に温度を低下させる場合及び複数回加熱、温度低下を繰り返す場合に、請求項1の「加熱後の」がどの時点を特定しているか明確でない。
同様の記載がある請求項19についても同様である。
また、請求項1又は19を直接的又は間接的に引用する請求項2?18、20?26についても同様である。

[理由B]本件の請求項1?14、16?26に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しない。
よって、本件特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

理由Bの具体的な理由の概要は次のとおりである。
本件明細書等の一般的な記載のみでは、本件発明1の課題を解決できることを認識できるとはいえないところ、実施例の記載をみると、本件発明1の各工程を備えた試験3?8、10?13、16?19について、得られたカカオ製品の色値が本件発明1の要件を満たすことが確認できる一方、加熱を行わないため、本件発明1に相当しないと認められる試験1、9、15のカカオ製品は、色値が本件発明1の特定事項を満たさない。
しかし、試験2の製品は、反応条件としては、本件発明1の特定事項を満たすにもかかわらず、色値(L値)が本件発明1の特定事項を満たさないから、課題を解決できると認識できず、試験14の製品は、反応条件としては、本件発明1の特定事項を満たさないにもかかわらず(反応後のニブの水分%)、色値が本件発明1の特定事項を満たし、課題を解決できていると認識できる。
以上のことから、本件発明1の製造方法は、その条件によっては上記課題が解決できる場合と解決できない場合があり、また、本件発明1の製造方法に該当しない場合であっても、上記課題が解決できる場合があり、本件発明1で特定される工程が上記課題とどのように関係しているか理解し難いことも考慮すれば、当業者が、本件発明1が上記課題を解決できると認識できるとはいえない。
本件発明2?14、16?26についても同様である。

引用例:
引用例は、上記甲1、3、5、7?10と同じである。

上記理由2については、
請求項1、2、8、9、13に対し甲3、5を根拠とした、
請求項3、10?12、21に対し甲5を根拠とした、
請求項4、5、7、14?18に対し甲3を根拠とした、
請求項19、20、23?26に対し甲1、3、5を根拠とした理由が通知されている。
なお、請求項8、9、13に係る発明が甲1に記載された発明であると指摘した点は誤記であった。

上記理由3については、
請求項1?13、16、19?26に対し甲1、3、5、7?10及び周知の技術的事項を根拠とした、
請求項14、15、17、18に対し甲3、7?10及び周知の技術的事項を根拠とした理由が通知されている。

3 特許異議申立人Aが申し立てた理由の概要
[申立理由A1]本件の請求項1?5、7?11、13?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1?5、7?11、13?26に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
[申立理由A2]本件の請求項1?11、13?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明及び一般的技術常識に基いて、本件の請求項12に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1?2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?26に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

また、特許異議申立人Aは、請求項1について、加熱後のカカオ製品の含水率を特定する訂正がなされる場合を想定して、請求項1に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証及び甲第4号証を組み合わせて容易に発明をすることができたものであることも主張している。

引用例:
甲第1号証は上記甲3と、甲第3号証は上記甲1と同じである。
甲第2号証:米国特許第6810794号明細書(以下「甲2A」という。)
甲第4号証:佐藤信監修、「食品の熟成」、昭和59年1月31日発行、株式会社光琳、466頁、下から第7行?第467頁、下から第11行(以下「甲4A」という。)

4 特許異議申立人Bが申し立てた理由の概要
[申立理由B1]本件の請求項1?18に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1?6号証に記載された発明であり、請求項19?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1?7号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
[申立理由B2]本件の請求項1?18に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1?6号証に記載された発明及び甲第1?6、8?10号証に記載された技術的事項並びに周知技術に基いて、請求項19?26に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1?7号証に記載された発明及び甲第1?10号証に記載された技術的事項並びに周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
[申立理由B3]本件の請求項1?26に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合しない。
よって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

具体的な主張の概要は次のとおりである。
(B31)請求項1に係る発明では、「加熱する工程」として、温度条件の下限値しか規定されていない。また、天然カカオ製品は色が薄いため、色を濃くするためには、アルカリ化、温度、含水量、処理継続時間、及びpH等の処理を要することが出願時の技術常識であった(【0003】?【0007】)。
本件特許明細書には、特定の条件以外によって濃い天然カカオ製品が得られることについて具体的に記載されておらず、しかもそれらが出願時の技術常識に基づいても当業者に理解できないため、当業者は請求項1に係る発明に係る濃い天然カカオ製品の製造方法を実施することはできない。請求項2?18に係る発明についても同様である。

(B32)請求項19に係る発明に係るカカオ製品は、「9?26のL値、14?29のC値、40?57のH値からなる色値、6末満のpH」という特性を有する、あらゆるアルカリ化されていないカカオ製品を包含する一方で、本件特許明細書には、上記特性を有するカカオ製品としては、所定条件下における特定の工程を経た、かつ、アルカリ化されていないカカオ製品のみが開示されている。本件特許明細書には、請求項19に係る発明に規定される特性を有するカカオ製品について、上記の特定の工程以外の手段によって得られることが具体的に記載されておらず、しかもそれらが出願時の技術常識に基づいても当業者に理解できないため、当業者は請求項19に係る濃い天然カカオ製品を作製することはできない。
請求項20?26に係る発明についても同様である。

[申立理由B4]本件の請求項1?26に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しない。
よって、本件特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

具体的な主張の概要は次のとおりである。
(B41)請求項1に係る発明では、「加熱する工程」として、温度条件の下限値しか規定されていない。また、天然カカオ製品は色が薄いため、色を濃くするためには、アルカリ化、温度、含水量、処理継続時間、及びpH等の処理を要することが出願時の技術常識であった(【0003】?【0007】)。
そうすると、温度条件の上限値、含水量、処理継続時間等が規定されていない請求項1に係る発明は、 本件特許明細書において発明の課題が解決できることを当業者が認識できる範囲を超えるものであるといえる。
請求項2?18に係る発明についても同様である。

(B42)請求項19に係る発明に係るカカオ製品は、「9?26のL値、14?29のC値、40?57のH値からなる色値、6末満のpH」という特性を有する、あらゆるアルカリ化されていないカカオ製品を包含する一方で、本件特許明細書には、上記特性を有するカカオ製品としては、所定条件下における特定の工程を経た、かつ、アルカリ化されていないカカオ製品のみが開示されている。本件特許明細書には、上記の特定の工程以外の手段によって請求項19に係る発明に規定される特性を有するカカオ製品を得られることの具体的記載はなく、また、アルカリ化をしない点以外は任意の工程によって上記特性を有するカカオ製品を得ることができるという技術常識も見出せない。よって、上記の特定の工程以外の手段によっては、課題が解決できると当業者は認識することはできない。
そうすると、 工程についてアルカリ化をしない点以外の規定がない請求項19に係る発明は、本件特許明細書において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものと認められる。
請求項20?26に係る発明についても同様である。

[申立理由B5]本件の請求項1?26に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しない。
よって、本件特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

具体的には以下の主張をしている。
(B51)請求項19に係る発明は、「濃い天然カカオ製品」という物の発明であるが、該発明は「アルカリ化されていない」ことが記載されている。
ここで、アルカリ化されていないカカオ製品については、単に状態を示すことにより構造又は特性を特定しているにすぎないとはいえず、製造に関して、技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当し、その物の製造方法が記載されている場合に該当するものと認められる。
しかしながら、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書等に記載がなく、その存在を認める理由は見いだせない。
したがって、請求項19に係る発明は明確でない。
請求項20?26に係る発明についても同様である。

(B52)請求項1ないし26に係る発明は、「濃い」カカオ製品と規定されているところ、 その濃淡の基準は規定されていない。
請求項1ないし26に係る発明は、「天然」カカオ製品と規定されているところ、請求項1に係る発明等は、 請求項1に係る発明等で規定されるように所定の人為的な処理を経て得られるものである。
そうすると、このような処理を経て得られる製品を、自然のままの状態を意味する「天然」と称することは技術的な矛盾がある。
したがって、請求項1ないし26に係る発明は発明特定事項に技術的な不備があり、請求項1ないし26に係る発明の範囲は不明確である。

(B53)請求項16及び18に係る発明は、「少なくとも0.5barの圧力を大気圧まで低下させる工程」と規定されている。
しかし、「少なくとも0.5barの圧力」を、より高い圧力である「大気圧」(すなわち約1.0bar)まで「低下」させることには技術的な矛盾がある。
したがって、請求項16及び18に係る発明は発明特定事項に技術的な不備があり、請求項16及び18に係る発明の範囲は不明確である。

引用例:
甲第1、3、5?10号証は、それぞれ、上記甲1、3、5?10と同じである。
甲第2号証:特開昭62-224240号公報(以下「甲2B」という。)
甲第4号証:特開平4-311352号公報(以下「甲4B」という。)

なお、上記理由B2について、特許異議申立人Bは、特許異議申立書において、請求項毎に主引用例と副引用例とを詳細に区別して記載しているが、
請求項1?18に対しては主引用例が甲1?6であり、これに各甲号証及び周知技術を組み合わせることを根拠とした、
請求項19?26に対しては主引用例が甲1?7であり、これに各甲号証及び周知技術を組み合わせることを根拠とした理由を申し立てている。

上記1と2の理由2及び理由3は同趣旨である。
申立理由A1、A2は当審が通知した上記理由2、3に包含されている理由であると認める(ただし、申立理由A1が、請求項1?5、7?11、13?26について、申立理由A2が、請求項1?26について、いずれも甲3を主引例とする理由である点、請求項12について、甲2Aも理由の根拠としている点で異なる。)。
申立理由B1、B2のうち、甲1、3、5?7を主引用例とする理由は、当審が通知した上記理由2、3に包含されている理由であると認める(ただし、申立理由B1、B2は、請求項1?18について甲1、3、5、6の全て、請求項19?26について甲1、3、5?7の全てを主引用例とする点、申立理由B2は、甲1、3、6を主引用例とする請求項10、11については、甲4Bも理由の根拠としている点で異なる。)。
申立理由B5のうち、(B51)は当審が通知した上記理由1(エ)と、(B52)は上記理由1(ア)及び(イ)と、それぞれ同様の理由であると認める。

第5 当審の判断
当審は、本件発明1?9、11?26に係る特許は、当審が通知した取消理由及び特許異議申立人A及びBが申し立てた理由により取り消すべきものではないと判断する。
理由は以下のとおりである。

1 当審が通知した取消理由について
(1)理由1について
ア 判断
(ア)について
上記第2で述べたとおり、本件訂正により請求項1の「天然カカオ」との記載は、「濃いカカオ製品」と訂正され、上記第3に示したとおり、請求項1に「天然カカオ」との記載は存在しない。
また、本件訂正により、「前記濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」との事項が特定され、「濃い」とはカカオ製品が所定の色を有することであることは明らかである。
したがって、この点で本件発明1が明確でないということはできない。
本件発明2?18についても同様である。

(イ)について
上記第2で述べたとおり、本件訂正により請求項19の「濃い天然カカオ製品」との記載は、「濃いカカオ製品」と訂正され、上記第3に示したとおり、請求項1に「天然カカオ製品」との記載は存在しない。
また、本件訂正により、請求項19の記載は「9?21のL値、14?25のC値、および40?54のH値からなる色値、ならびに6未満のpH
を有する、アルカリ化されていない、濃いカカオ製品であって」とされたところ、「濃い」とはカカオ製品が所定の色を有することであることは明らかである。
したがって、この点で本件発明19が明確でないということはできない。
本件発明20?26についても同様である。

(ウ)について
上記第2で述べたとおり、本件訂正により、指摘した請求項19の「含み」との記載は、「有する」と訂正され、上記第3に示したとおり、請求項19に、指摘した「含み」との記載は存在しない。
したがって、この点で本件発明19が明確でないということはできない。
本件発明20?26についても同様である。

(エ)について
請求項19に係る発明は、「アルカリ化されていない」点も含めて、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえる。
特許権者が提出した乙第3号証(「deZaan_(TM) Cocoa & Chocolate Manual」、40^(TH) ANNIVERSARY EDITION、2009年、訳文で示す。)には、「しかし、最近になって収集された新たな追加情報のすべてをもってしても、カカオの風味を構成するものが何であるかは、まだ正確には分かっていない。現在までに、焙煎したカカオには、約20種の異なる化学的分類に分けられた480種以上の揮発性成分が確認されており、人類が知る限り最も複雑な風味の一つとなっている。」(53頁左欄6?14行)、「チョコレートやココアパウダーのベースとなる風味成分であるカカオリカーについて、焙煎条件を適用することで様々な風味プロファイルを得ることができる。」(55頁右欄23?27行)、「焙煎条件の違いは、風味の生成に明確な影響を与える。」(57頁右欄18?19行)との記載、アルカリ化の違いに応じたココアパウダーの各種成分量についての記載(75頁の表)があり、これらの記載から、カカオ製品は多種多様な化学物質を含んでおり、その風味は非常に複雑であること、焙煎条件に応じて風味が変化すること、アルカリ化の条件に応じてココアパウダーの各種成分量が変化することが知られているといえる。
また、甲5には、「[0003] 現在の商業的需要に従い、ココア製造業者には、幅広い色調、フレーバーまたはその両方を有するカカオ製品を製造することが求められている。各製造業者は、温度、水分含有率、処理時間およびpH等の処理条件を操作することによって製造されるココアパウダーの色調およびフレーバーが変化するであろうことを理解しているが、どのようにすればばらつきなく所望の色調、フレーバーまたはその両方を備えたカカオ製品を製造できるかということに関する見解は全体で一致していない。」との記載があり、温度、水分含有率、処理時間およびpH等の処理条件によって製造されるココアパウダーの色調およびフレーバーが変化することが知られているといえる。
一方、本件発明19は、混合カカオ製品を所定時間、所定温度で加熱して反応させ、かつカカオ製品の含水率を所定の範囲とする工程、反応カカオ製品を乾燥させる工程を含み、アルカリ化されていない、濃いカカオ製品に関するものであるところ、それらの製造条件によって、化学物質の組成、風味が変化するといえるが、含有する化学物質の多種多様性、風味が複雑なことに鑑みれば、それらを構造又は特性によって特定することは不可能であり、およそ実際的であるともいえない。
そして、本件発明19の「濃いカカオ製品」は、本件発明19で特定される色値、pHを有し、アルカリ化されていないものであって、さらに、本件発明19で特定される方法で得られる物に特定されているといえる。
したがって、この点で本件発明19が明確でないということはできない。
本件発明20?26についても同様である。

特許異議申立人Bは、意見書(2頁2行?5頁下から3行)において、本件特許明細書には、(課題1)アルカリ処理を行わずにカカオ製品を得ること、及び、(課題2)色が濃いカカオ製品を得ること、という2点が課題として記載されているところ、アルカリ化処理を行って製造したカカオ製品は、一般的にはpHが高くなるから、上記(課題1)に対応した要件として、訂正発明19はpH値で直接特定することが可能であること、また、上記(課題2)に対応した要件として、訂正発明19に規定されるように色値で直接特定することが可能であるから、物の発明である「カカオ製品」に係る訂正発明19は、pH値及び色値で直接特定することが可能であり、本件発明の課題に照らしてみた場合、「訂正発明19の濃いカカオ製品」を特定するに際し、特許権者が主張するような「風味や色合い、溶解性等に寄与する成分の種類を明確に特定する」ことは要さず、溶解性は容易に測定できるものであり、さらに風味に寄与する成分も機器分析で測定可能であるから、「不可能・非実際的事情」に該当しないことは明らかであること、
特許権者は、「このような多種多様の化学物質の組成が変化して、カカオ粉末の風味、色合い、溶解性等が変化する」、「訂正発明19の濃いカカオ製品について、風味や色合い、溶解性等に寄与する成分の種類を明確に特定する等して、本件特許出願時にその構造又は特性により直接特定することは、およそ実際的でない」等と主張するが、本件特許明細書には、実施例においてカカオ製品の風味、溶解性の変化の評価結果が記載されていないため、本件特許によって奏されるカカオ製品の風味や溶解性の変化はそもそも不明である。このような本件特許明細書に基づかない特許権者の主張は、36条の「不可能・非実際的事情」の判断について採用されるべきでないこと、
また、このように訂正発明19においては、どのような風味や溶解性を有するものかが不明であるから、生産物の特徴(構造、性質等)を当業者が理解できないものであり、「物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、生産物の特徴(構造、性質等)を当業者が理解できない結果、的確に新規性進歩性等の特許要件の判断ができない場合には、一の請求項から発明が明確に把握されるとはいえないことから、『不可能・非実際的事情』の存否によらず、発明は不明確となる」
という場合に該当すること、を主張する。
そこで、検討する。
本件発明の課題は、アルカリ化カカオ製品の有する濃い色を持つが、アルカリで処理されておらず、当業界において「天然」と表示できるカカオ製品及びその製造方法を提供することであると認められる(詳細については、後記の(4)ア(イ)で示す。)ところ、本件発明1において、当該課題に対応するといえる色値、pH値及びアルカリ化されていないことが特定されている。そして、特許法第36条第5項には、「特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない」と規定されているから、特許請求の範囲には、特許を受けようとする発明を特定するために必要と出願人自らが認める事項の全てを記載すればよいといえ、溶解性、風味に寄与する成分を特許請求の範囲において特定しなければならないという理由もない。
そして、本件発明19の「濃いカカオ製品」は、本件発明19で特定される色値、pHを有し、アルカリ化されていないという物の観点からの特定に加え、本件発明19で特定される製造方法で得られる物に特定されており、特許権者が令和3年4月9日付けの回答書(2頁9行?3頁2行)において、「(2)カカオ製品の製法と得られる製品についての技術常識
カカオ製品は天然物に由来する多種多様な化学物質を含んでいるため、その処理方法に応じて、このような多種多様の化学物質の組成が変化し、また、その風味、色合い、溶解性、栄養価等、様々な特性も変化します。
特に、風味及びそれに関連する化学物質の組成について、乙第3号証を用いて説明します。乙第3号証は、「Cocoa & Chocolate Manual(ココアとチョコレートのマニュアル)」と題する2004年の文献です。「第4章 風味及び風味開発」に記載のとおり、カカオの風味を構成する揮発成分は480種類以上存在することが確認されており、その風味は非常に複雑です(乙3,53頁左欄)。また、焙煎条件の違いは、味の展開に明確な影響を与えることが知られ,チョコレートやココアパウダーのベースとなる風味成分であるカカオリカーは、焙煎条件によって様々な風味のものを得られることが知られています(乙3,55頁右欄,57頁右欄)。
このように、焙煎条件( 例えば温度条件) の違い等によってカカオ製品の製法が異なれば、カカオ製品の風味等各種特性やカカオ製品に含まれる化学物質の組成も異なることは本願優先日における技術常識でした。
なお、本願発明19のカカオ製品は、従来技術と異なり、アルカリ化されていませんが、このアルカリ化の有無及びアルカリ化の程度によって、カカオ製品の成分に大きな影薯があり、異なるカカオ製品が得られることも、乙第3号証には明示されています(乙3,75頁表)。」等を示して主張するように、カカオ製品の製造方法が異なれば、カカオ製品に含まれる化学物質の組成が異なることは技術常識であると認められ、カカオ製品に含まれる多種多様な化学物質の組成を特定することは不可能・非実際的であるといえる。
したがって、本件発明19については、不可能・非実際的事情が存在し、また、生産物の性質を当業者が理解でき、新規性進歩性等の特許要件の判断ができるといえる。
本件発明20?26についても同様である。
よって、上記主張は採用することはできない。

イ まとめ
以上のとおりであるから、理由1には理由がない。

(2)理由2、3について
ア 引用例の記載事項及び引用発明
(ア)引用例の記載事項
甲1:
1a)「(1) 剥皮処理前のカカオ豆に水もしくは蒸気またはこれらと共に糖類もしくは乳固形分を施与し、カカオ豆のニブ水分を8?30重量%に加水調整した後、水分を除去してニブ水分を1?5重量%に調整し、引続いて加熱焙炒することを特徴とするカカオマスの調整方法。
・・・
(3) 40℃以上の水または糖類もしくは乳固形分水溶液中にカカオ豆を浸漬して加水調整する特許請求の範囲第1項記載のカカオマスの調整方法。
・・・
(6) カカオ豆のニブ部水分を温度60?100℃で熱風乾燥して除去する特許請求第1項記載のカカマスの調整方法。」(1頁特許請求の範囲、請求項1、3及び6)

1b)「加水調整は、温度40?100℃で5?60分間行うのが好適である。これら加水の条件が上記範囲内であると、カカオ豆中への水分の吸収が短時間で充分に行われ、ニブ中の有機酸及び不揮発性成分が充分に滲出し乾燥によって殆んど除去し得、酸性臭および不快臭が無く、高品質の力カオ豆のニブが得られるからである。カカオ豆に対する加水方法としては、噴霧、浸漬、蒸煮等が用いられる。」(2頁右下欄下から4行?3頁左上欄5行)

1c)「ニブ中の水分を除去調整する条件としては、温度60?100℃で30分?6時間程度乾燥することが好ましい。加熱条件が上記範囲内であると、カカオ豆の乾燥が適度に行われ酸性臭や不快臭等の有害成分を水分の蒸発と同伴して除去することが出来、次いで芳香成分の前駆体の発現を促進し芳香を付与せしめることが出来るうえ、カカオ豆を過度に加熱する必要がなく焦げ付かすことなく高品質のカカオ豆を得ることが出来る。
カカオ豆から水分を除去調整する方法としては、例えば熱風乾燥、電磁波乾燥、赤外線乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。」(3頁右上欄4?15行)

1d)「上記方法により得られたカカオ豆は、その後、破砕機で均一な粒度に破砕し、続いてハスキングマシンで皮を剥離してニブと皮、胚芽とを分離した後、ニブを焙炒して芳香を付与し、更に磨砕する等通常の方法によりカカオマスを得ることができる。」(3頁右上欄16行?左下欄1行)

1e)「また本発明方法に係るカカオマスを原料として用いることにより芳香、風味、色調の優れたチョコレート、ココアが得られる。」(3頁左下欄10?13行)

1f)「実施例1
○1(当審注:原文は○の中に1。以下同様。) カカオマスの作製
ブラジル産カカオ豆を蔗糖0.05%、乳糖0.05%、全脂粉乳0.1%を含む98℃の水溶液に60分間浸漬し、カカオ豆のニブ部分を水分含有率13.1%に調整した後、熱風乾燥機を用い100℃で2時間予備加熱乾燥を行いカカオ豆のニブ部分を水分含有率3.9%に調整した。このカカオ豆を熱風式縦型カカオ豆ローセターに投入して130℃で40分間加熱焙炒した後、通常の方法で破砕して皮と胚芽とを除去し、ローターミルで磨砕してカカオマスを得た。
○2 チョコレートの作製
上記、調整方法によって得られたカカオマス35%と、あらかじめ加温し液状にしておいた、カカオバター15%と全脂粉乳5%と、粉糖45%とを混合機に入れ38?43℃で30?45分間充分に混合した後、リファイナーに移して35?36℃においてその粒子が40μ以下になるように均一に微細化した。次いでコンチングマシンに移し約60℃に加温しながら40時間撹拌混和し、コンチング終了直前に乳化剤としてレシチン0.5%と若干の香料とを添加して均質化したのち27?32℃でテンパリングを行った。この液状チョコレートを所定のモールドに充填し、モールドを震動せしめ脱気し冷却トンネルを通過させチョコレートを冷却固化した。この結果を本発明例(試料1)として第1表に示す。
次に第1表に記載のカカオ豆を用い、これに所定の操作を施しカカオマスを得、該カカオマスを用いて実施例1と同様に配合してチョコレートを得た結果を本発明例(試料2、3)及び比較例として併せて第1表に示した。これら本発明例(試料1?3)及び比較例のチョコレートについて前記試験し、その結果を第2表に示した。」(4頁右上欄10行?右下欄4行)

1g)「

」(4頁右下欄?5頁左上欄、第1表、第2表)

1h)「又、この欠点を改良する為に、カカオ豆を軽く焙炒し、剥皮、破砕した後、カカオ豆のニブに重炭酸カリウム溶液等のアルカリ性溶液を施与して、ニブ中に存在する酢酸、タンニン酸等の酸性成分を中和処理した後、強く焙炒し挽潰してカカオマスを得る方法も試みられている。しかしこの方法では、酸性臭や不快臭などを除去することが出来るもののチョコレートやココア独特の芳香をも損ない、且つ中和処理による塩類が生成し、かゝるカカオマスを原料とするチョコレート、ココアは風味や色調を損なう欠点があった。
本発明者等は、上述の欠点を解消する為に鋭意研究した結果、チョコレート、ココア等独特の芳香、色調を十分に発現し得るカカオマスの調整方法を見出し、本発明を完成したものである。
本発明の目的は、焙炒前のカカオ豆のニブ中から酸性臭、不快臭および嫌味、えぐ味等の原因となる有害成分を充分に除去する方法を提供するにある。他の目的は芳香、風味、色調等に優れたチョコレート、ココア等の原料となるカカオマスを簡単な操作で得る為のカカオマスの調整方法を提供するにある。」(2頁左上欄2行?右上欄3行)

1i)「本発明の特長の一つは、上記カカオ豆を剥皮処理する前に加水処理としてニブ部分の水分含有率を8?30重量%にすることである。カカオ豆を加水処理する目的は、カカオ豆のニブ中に充分な水分を吸収させニブ中の有害成分を水分中に滲出させる事にある。その加水処理は、カカオ豆に水もしくは飽和蒸気またはこれらと共に糖類もしくは乳固形分を好ましくは40?100℃で施与する事によって達成される。」(2頁右上欄下から3行?左下欄6行)

甲2A(訳文で示す。):
2Aa):「ロースターの動作を、特にカカオ豆の焙煎に関連して以下に説明する。焙煎すべきカカオ豆を、振動フィーダーに取り付けられたホッパーに供給する。カカオ豆を、デッキとフードと共に振動する有孔篩に50-60kg/hの範囲の送り速度で供給する。空気速度は、340?350℃の範囲の気温において1.9?2.1m/sに設定されている。カカオ豆の焙煎の滞留時間を25秒に設定した。焙煎したカカオ豆は、連続振動流動床ロースターのアウトシュートから排出され、トレイに集められた。焙煎した製品の温度は110℃であり、最終的な水分は約5?0.5%であった。焙煎した豆は均一な形状とテクスチャーであった。
焙煎した製品には砂、灰などの汚染物質が含まれておらず、焙煎作業は衛生的な条件で行われる。焙煎後に得られた製品は、色、テクスチャーが均一であり、区分け前の原料でさえ焙煎に使用できる。」(7欄7?26行)

甲2B:
2Ba)「1. カカオ子からテオブロミンおよびカフェインを除去する方法であって、カカオ豆を約45℃?約55℃の温度における低温水抽出に付す工程に続く約90℃?約105℃の温度における一連の高温水抽出工程、抽出濾液を除去する工程および次いで、このようにして得られたカカオマスからテオブロミンおよびカフェインを実質的に含まないカカオ液を回収する工程を含んでなる方法。」(1頁左下欄、特許請求の範囲)

2Bb)「例 1
均一の集団の袋から得られた各450gの生の選別され脱胚芽されたカカオ豆の4セットを準備した。各セットについて、豆を100メッシュステンレス鋼円筒濾管内に入れ、次いでこれを外部循環水浴によって恒温に維持されたジャケット付ステンレス鋼抽出溜め内に入れた。抽出溜めに1400mlの水を加え、1分間当り約500mlの速度で運転する再循環ポンプを20分間使用して抽出器の底部から上部へ再循環することによって水を連続的にカカオ豆中に撹拌した。最初の抽出の後さらに7回抽出を行ない、これらの抽出において毎回1100mlの水を添加して液体の初期容量に戻した。4つのセットの各々は以下の記載からわかるように特定の目的を有していた。
4つの抽出セットを次のように実施した:
1-a 第1のセットにおいては、8回の抽出すべてを55℃で実施した。
1-b 第2のセットにおいては、8回の抽出すべてを95℃で実施した。
1-c 第3のセットにおいては、3回の抽出を55℃で行ないその後5回の抽出を95℃で実施した。
1-d 第4のセットにおいては、3回の抽出を55℃で行ないその後5回の抽出を105℃で実施した。(105℃の温度を達成するために、抽出器を適当な正圧に保った。)これら4つの抽出法の結果を第1表に示す。」(3頁左下欄1行?右下欄9行)

2Bc)「発明を実施するための好ましい条件
本発明の方法を実施するための便利な出発点(10)(第1図)は、よく知られている標準的手順を用いて、カカオ子から得られる多量の生のカカオ豆を用意することからなる。実際的に言えば、本発明の方法は、最初の生のカカオ豆からカフェインおよびテオブロミンを含む実質的にすべての水溶性材料を分離しそのことによってカカオ豆の水抽出物および多量の湿潤カカオ豆を生成する連続の水抽出工程からなる。この水抽出は2つの全く異なる温度での連続工程によって実施される:(1) 豆は最初に約45℃?約55℃の水で抽出される。(2) これに続いて約90℃?約105℃の水で約4?5回抽出される。各抽出の後、実質的にすべての液体を抽出容器から排出し、次いで水を添加する。
実質的にすべてのメチルキサンチンおよび大部分の水溶性材料を除去された、水抽出工程後に残った湿ったカカオ豆(27)を徐々に乾燥させる(28)。豆中の水分が約4%より下のポイントに達した後、豆を保存し最終的には磨砕して(29)生カカオマス(30)として知られる生成物を得る。ポンプ輸送可能な液体を得るために、このマスを再磨砕する。この再磨砕した生カカオマス(31)は、最初に豆から抽出された水溶性材料(26)の固形分とブレンドされるのにすぐ使用できる。」(5頁左上欄12行?右上欄下から3行)

2Bd)「

」(6頁右下欄)

甲3(訳文で示す。):
3a)「1.改良されたカカオニブの製造方法であって、カカオニブを高温および高ガス圧に哂し、その後ニブをより低い温度および低い圧力に突然解放し、次いでニブを焙煎することを含む方法。
2.実質的に改善されたカカオの製造方法であって、カカオニブを高温および高ガス圧に晒し、その後ニブをより低い温度および圧力に突然解放し、次いでニブを焙煎し、次に爆発したカカオニブを磨り潰すことを含む方法。
3.実質的に改善された品質のカカオバターを製造する方法であって、カカオニブを高温および高ガス圧に晒し、その後ニブをより低い温度および圧力に突然解放し、その後そこから脂肪を除去することを含む方法。
4.改善されたカカオニブの製造方法であって、カカオニブを高温および高ガス圧に晒し、その後、ニブをより低い温度および圧力に突然解放し、次いでニブを焙煎し、次いで再びカカオニブを高温および高ガス圧に晒し、その後ニブをより低い温度および圧力に突然解放する方法。」(7?8頁、特許請求の範囲)

3b)「上記目的は、カカオニブを焙煎の前、後、または前後の両方で、膨張又は爆発させる工程にさらすことで達成されることが見出された。それによって、カカオニブの細胞又はボディ構造が破裂又は破壊され、拡張したあるいは比較的多孔質なニブを提供することができ、又は開口、隙間又は通路を提供することができ、それによって、空気、水分、蒸気又は多様な溶媒材料を容易にニブの構造内に浸透させることができるような、あるいは、そこから材料をより容易に抽出できる。」(1頁右欄32?44行)

3c)「本発明の実施において、カカオニブは、一般に10%?15%未満の水分含有量を有しており、比較的高い温度および圧力で処理される。最良の結果を得るには、圧力は1平方インチあたり20または25ポンドを超えるべきであり、一般的には1平方インチあたり40から50ポンドを超えるべきであり、場合によっては1平方インチあたり350ポンド、450ポンド、またはそれ以上になることがある。
通常、温度は200°F?250°Fを超えるべきであり、必要に応じて、700°F?750°Fを超える温度で動作する揚合がある。ただし、一般的な範囲は通常400°F?600°Fである。」(2頁左欄53?65行)

3d)「これらの温度及び圧力への曝露に必要な時間は、例えば、18?20分又はそれ以上であり得、あるいは、10分以下であり得、あるいは、数分未満であり得、多くのケースでは、1分未満であり、多くのケースでは、数秒又は15?45秒で、処置及び最適な結果を与えるのに十分であり得る。」(2頁右欄3?10行)

3e)「爆発させるべきカカオニブが必要な爆発に対して少し乾燥しすぎている場合、例えば水または他の水性物質の形態で、または水蒸気の形態もしくは過熱水蒸気の形態で、カカオニブまたは爆発室に追加の水分を添加してもよい。同様に、必要に応じて、カカオニブを大気圧下で、または真空もしくは圧力下で蒸しまたは調理して、ニブに追加の水分を入れるか、または必要に応じてこれらを軟化させてもよい。
ただし、この膨張または爆発の手順では、ニブは一般に20%または25%未満の水分含有量を有するべきであり、一般的には10%から15%未満である。
前処理などによりニブ中の水分が多すぎて必要な爆発ができない場合、この追加の水分は、爆発の前に、たとえば空気乾燥、乾熱、オイル焙煎、ドライ焙煎、油中での煮沸、または他のさまざまな乾燥または脱水方法で除去すべきである。」(2頁右欄11?33行)

3f)「高温高圧でのこの処理の後、カカオニブは、例えばカカオニブが入っている特定の容器を開けることにより、突然、瞬時に大気圧と大気温度、または実質的に低い温度と圧力に解放される。当該容器は圧力銃ないしはチャンバー、または他の適切な装置の形をとっていてもよい。」(2頁右欄48?56行)

3g)「カカオニブは、ここで説明した爆発または膨張処理に続いて、焙煎オーブンに入れられ、焙煎される。」(2頁右欄70?72行)

3h)「カカオニブの通常の焙煎温度は、約212°F?284°Fであり、焙煎時間は約30分?2時間である。」(3頁左欄13?16行)

3i)「本発明を実施する際に、カカオニブを、焙煎した後、本明細書に記載の別の爆発処理にかけることが望ましい場合がある。これは、カカオニブの構造をさらに開く目的で、または細胞またはその本体構造をさらに分裂または破壊する目的で行うことができる。」(3頁右欄62?68行)

3j)「必要に応じて、溶媒媒体と爆発したニブ材料を一緒に磨り潰してもよいし、溶媒との混合前にニブ材料を磨り潰してもよい。その後、カカオバターを製造するために、脂肪を圧搾するか、そうでなければそこから抽出または圧搾してもよい。」(6頁左欄4?10行)

3k)「このカカオニブは、そこから脂肪を抽出した後、得られたカカオを生成するために焙煎および磨り潰されてもよいが、その脂肪の大部分はそこから除去されている。」(6頁左欄43?47行)

3l)「実施例 I
本発明の実施例として、水分量が約6%?8%であるカカオニブを圧力チャンパーに入れ、超高温蒸気下で、80ポンド/平方インチの圧力、500°Fの温度に30秒さらした。そのすぐ後に、チャンバーを開けることにより、大気温及び大気圧に戻した。・・・
カカオニブをローストオーブンに入れ、約240゜Fで1^(1)/_(4)時間焙煎した。・・・
焙煎直後、カカオニブをエアブラストにさらして冷却した。
次いで、カカオニブを細かく磨り潰し、脂肪を除去し、カカオパウダーからカカオバターを分けた。
本実施例において、カカオニブを、同じ圧力、時間及び温度の条件で2?3回の爆発にさらすことが好ましい。」(6頁右欄32?60行)

3m)「本発明の更なる目的は、カカオニブが実質的に、より均一な焙煎処理を受けることができ、また、焙煎の熱がニブの内部を実質的に素早く通過することができ、これにより、ニブの内部をニブの外側と比較的同等の焙煎条件とする方法を提供することである。
本発明の更なる目的は、より容易かつより均一に冷却され得る状態のカカオニブを提供することであり、これにより、焙煎後のこれらのニブの冷却がこれまでよりも実質的に速く起こることができる。
別の目的は、粉末カカオからココアやチョコレートドリンクを製造した際に、向上した懸濁化品質を示し、より容易な吸収品質及び改善された強さ及び品質の風味を示す、新しい物理的特性を有する粉末カカオを提供することである。
本発明の更なる目的は、実質的に良好な保存品質及び他の実質的に改善された特性を有し得るカカオバターを提供することである。」(1頁左欄51行?右欄19行)

3n)「本発明のこの破裂工程は、カカオニブ上に存在する外皮及び殻を緩め、除去しやすくするのにも大いに役立つ。事実、多くの破裂工程及び特に高温高圧かつ特にニブが比較的乾燥した状態のもとでは、これらの外皮及び殻は、実際破裂によって完全に除去される。
本発明をカカオニブに用いることで、カカオニブから得られるカカオバターの品質が実質的に向上し、また、この脂質を製造するコストを大幅に削減することができ、より多くの脂質部分を抽出することができる。この、カカオニブからの脂質抽出の向上の大部分は、カカオニブに含まれる脂質細胞の破壊又は崩壊による。」(5頁右欄30?48行)

甲4A:
4Aa)「アルカリ処理の方法のうち最も多用されるのは,ニブアルカリ処理法である。処理条件はアルカリ量がニブに対し炭酸カリウムで3%以内,添加する水は10%?50%,加温温度は60%?82℃,色の変化は徐々に起こり,

反応時間は数時間が必要である。ラゴス豆のニブに対し炭酸カリウム1.5%,水30%を添加してアルカリ処理し,120℃,2時間乾燥後粉砕,搾油したプレスケーキの色を表2.9に示す。ニブアルカリ処理では,炭酸カリウムの量が多いほど色は褐色を濃くし,添加水量の多いほど濃色化かつ赤色を増す。」(466頁下から4行?467頁表2.9の下1?4行)

4Ab)「ニブアルカリ処理ではニブが水を十分に吸収し,アルカリも必要時間反応させることができる。
カカオ豆のアルカリ処理は,外皮が障壁となり胚乳部へのアルカリの浸透が不十分であり,製品のバラツキも多いので,ほとんど適用されない。ココア粉の色は薄褐色を呈す製品となる。」(467頁表2.9の下10?14行)

甲4Ba)「【請求項1】 カカオ豆を蒸気で加熱、殺菌後、直ちに30?150 ℃の温風乃至熱風で急速に乾燥させることを特徴とするカカオ豆の殺菌処理法。
【請求項2】 蒸気が、温度130 ?400 ℃、圧力3?10kg/cm^(2) の過熱蒸気である請求項1の処理法。」

甲4B:
4Bb)「【0007】○3(原文は○中に3。以下同様) 蒸気殺菌
カカオ豆を殺菌するための蒸気は、普通の生蒸気でも差し支えないが、カカオ豆への水の凝集を少なくするため、過熱蒸気の使用が好ましい。過熱蒸気は、温度130 ?400 ℃、圧力3?10kg/cm^(2) の範囲が好適である。圧力が10kg/cm^(2) を超えればそれだけ頑丈な耐圧容器が必要となり、また温度が400 ℃を超えても容器の材質として特別の材質を選択する必要を生じることになる。
【0008】蒸気殺菌により、殻の水分は当初10%程度であったものが、30?50%程度まで上昇する。胚乳中の水分は、当初の約5%から約6%にまで上昇するに過ぎないが、焙煎機のホッパー内で滞留する間に10%程度にまで上昇し、この上昇が焙煎後の風味に対し好ましくない影響を及ぼすことは前出○1項中述べた通りである。従って、殺菌直後のカカオ豆の殻の水分を胚乳への移行の暇を与えず急速に除去することが発明の要諦である。
【0009】○4 乾燥
そこで、殺菌直後のカカオ豆を直ちに乾燥工程に移す。」

4Bc)「【0010】
【作用】蒸気殺菌後のカカオ豆を急速に送風乾燥すると、液化した殻の水分が胚乳へ移行するのが阻止される結果、水分(恐らく残存酵素との作用)による胚乳の変質や殻中の水溶性異味成分の胚乳への移行等の悪影響が回避され、このため、被処理カカオ豆を焙煎すると、良好な風味のカカオマスを収得することができる。」

4Bd)「【0012】実施例1?5及び比較例1?4
各10kgのカカオ豆を図2記載の耐圧容器1内に容れ、200 ℃,5kg/cm^(2) の過熱蒸気で10秒吹き込み後、排気し、再び20秒間吹き込んで計30秒間殺菌した後、容器を逆転して下方の振動式送風乾燥機10内へ落とし、熱風炉20からの気流により下表1記載の条件で乾燥し、乾燥後の殻及び胚乳の水分並びに150 ℃の熱風を用いて20分間焙煎後、常法通り調製したチョコレートの風味を調べた。」

甲5(訳文で示す。):
5a)「1. フルーティフレーバーを有するカカオ製品であって、増加した量のフルーティアロマ化合物を含有する、カカオ製品。
・・・
5. カカオ製品がココアパウダーである、請求項1?4のいずれか一項に記載のカカオ製品。
6. カカオ製品がカカオリカーである、請求項1?4のいずれか一項に記載のカカオ製品。
7. カカオ製品が、約22?約29のL値、約23?約30のC値、約35?約55のH値およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される色値を有する、請求項1?6のいずれか一項に記載のカカオ製品。
8. カカオ製品が、約18?約29のL値、約23?約30のC値、約35?約55のH値およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される色値を有する、請求項1?6のいずれか一項に記載のカカオ製品。
9. カカオ製品が、約4.5?約6のpHを有する、請求項1?8のいずれか一項に記載のカカオ製品。
・・・
16. 請求項1?14のいずれか一項に記載のフルーティフレーバーを有するカカオ製品を製造するための方法であって、
カカオニブ、剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを酸および水と混合する工程と、
酸性化ニブ、酸性化剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを焙炒する工程とを含む方法。
・・・
21. カカオニブ、剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを殺菌する工程をさらに含む、請求項16?20のいずれか一項に記載の方法。
22. ニブ、剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを、酸および水と約0.5?約4時間接触させる、請求項16?21のいずれか一項に記載の方法。
23. ニブ、剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを、酸および水と約15℃?約90℃の温度で接触させる、請求項16?22のいずれか一項に記載の方法。
24. 焙炒ニブ、焙炒剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを磨砕する工程であって、それによってカカオリカーを製造する工程をさらに含む、請求項16?23のいずれか一項に記載の方法。
25. カカオリカーをカカオ脂とカカオプレスケーキに分離する工程をさらに含む、請求項24に記載の方法。
26. カカオプレスケーキをココアパウダーに磨砕する工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
27. カカオリカーを脱脂する工程をさらに含む、請求項24に記載の方法。
28. 酸性化ニブ、酸性化剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを、水分含有率が約2%未満になるまで焙炒する、請求項16?27のいずれか一項に記載の方法。」(35?38頁、特許請求の範囲、請求項1、5?9、16、21?28)

5b)「[00109] 表2.実施例1-9のカカオリカー及びカカオパウダーの色

」(16頁、表2)

5c)「[00112] 表3.実施例1-8及び対照、実施例9のカカオ製品の色値

」(17頁、表3)

5d)「[00126] 実施例10.良好に発酵したカカオ豆を用いたフルーティカカオ製品の製造。良好に発酵したカカオ豆として、Ghanaを50%およびIvory Coast-1を50%を使用し、基準試料としてArriba豆を100%を使用した。
[00127] カカオ豆から得られたカカオニブ2.50kgを開放された箱に装入して温度101℃(±0.1℃)の水蒸気で30分間殺菌した。水蒸気の流量を2.4kg/時とし、注入する水蒸気の圧力を約0.1バールとした。殺菌された温度101℃のニブを、加熱ジャケットを備えた反応器に装入すると、温度は75?78℃に低下した。反応器内のニブをジャケットを用いて加熱することにより、温度を90?95℃にした。
[00128] 酸性化プロセスを行うために、温度20℃および40℃の酸溶液を反応器内のニブに加えた。ニブの平均反応温度は55?95℃であった。所望の酸性化(反応)時間が経過した後、ニブの試料を採取した。
[00129] ニブ試料10?15は、実験室用ジェットロースターであるRetch流動床乾燥機で焙炒した。ニブ試料16?21は、直接焙炒(direct roast)装置であるMiag Spitで焙炒した。焙炒中にニブの水分含有率は20?30%から1?2%に低下した。焙炒されたニブをまず家庭用コーヒーミルで磨砕して粗砕リカーとし、次いで、Retsch実験室用モルターミルで磨砕して所望の粒度を有するカカオリカーにした。
[00130] 微細に磨砕されたリカーの一部を抽出することにより脱脂ココアパウダーを得、微細に磨砕されたリカーの別の一部を油圧プレスすることにより小片状のケーキおよび濾過されたカカオ脂を得た。このケーキを細かく砕き、この細片を目開き0.5mmの篩を備えたRetschカッティングミルで粉末化してココアパウダーとした。」(20頁)

5e)「[00149] 実施例12.良好に発酵したカカオ豆および様々な酸を用いたカカオ製品の製造。良好に発酵したカカオ豆として、Ghanaを50%およびIvory Coast-1を50%を使用した。
[00150] この実施例では、表11に列挙した量の酸を使用したことを除いて、実施例10に記載したプロセスと実質的に同じ方法でカカオ製品を製造した。
[00151] 表11.酸及びパウダーの色値

[00152] 実施例13.良好に発酵したカカオ豆およびグルコン酸を用いたフルーティカカオ製品の製造。良好に発酵したカカオ豆として、Ghanaを50%およびIvory Coast-1を50%を使用した。
[00153] カカオ豆から得られたカカオニブ10,000kgを装入物とし、0.5バールの開放蒸気圧で(open steam pressure of 0.5 bar)、温度100?105℃で3?5分間予備加熱した。予備加熱したカカオニブ装入物10,000kgを5個の異なるブレンダーに装入し、温度100?105℃の水蒸気で、水蒸気圧を0.5バールとし、開放状態で30分間殺菌した。殺菌後、温度27?30℃のグルコン酸デルタラクトンの50重量%溶液を10重量%をブレンダーのカカオニブに加えて、酸性化プロセスを開始した。グルコン酸デルタラクトン溶液を加えるとカカオニブの温度が除々に95℃から88℃に低下した。酸性化プロセスの最中は水蒸気を加えなかった。
[00154] 酸性化プロセスの間、ブレンダー1?4には空気を注入せず、ブレンダー5には空気を注入した。酸性化時間は90分間とし、酸性化プロセス中のニブの平均反応温度は、ブレンダー1?4の場合は75?90℃とした。ブレンダー5には、次のスケジュールに従い空気を45分間注入した:0?15分、空気注入停止;15?30分、空気注入;30?45分間、空気注入停止;45?60分、空気注入;60?75分、空気注入停止;75?90分、空気注入。
[00155] 酸性化されたニブを4500kg/時の一定処理量で焙炒した。焙炒したニブをBuhlerミルおよびボールミルで磨砕することにより、所望の粒度を有するカカオリカーを製造した。このカカオリカーについて、pH、水分含有率、脱脂後のリカーの水中における本来の色およびフルーティフレーバー化合物の存在に関し測定を行った。また、このカカオリカーを圧搾することにより脂肪分約11%の乾燥ケーキとし、乾燥ケーキをさらに加工してココアパウダーとした。このココアパウダーについて、pH、水分含有率、水中における本来の色およびフルーティフレーバー化合物の存在に関し測定を行った。このプロセスを行う間、毎時間試料を採取した。
[00156] 表12に、プロセス条件;カカオリカーのpH、水分含有率および脂肪分含有率;ならびに製造されたカカオ脂の遊離脂肪酸およびヨウ素価をまとめたものを示す。
[00157] 表12.プロセス条件及び測定結果

[00158] 表13は、ニブおよびリカーの水分、リカーの脂肪分、リカーのpHならびにリカーの水中における本来の色をまとめたものである。
[00159] 表13.プロセスの様々な時点で得られたカカオリカーの分析

」(25?27頁)

5e)「[00162] 表13.プロセスの様々な時点で得られたココアパウダーの分析 ”ffd”は脱脂された乾燥物又は脱脂ココアパウダーを意味する。

」(28頁)

5f)「[00165] 表14.生成したココアパウダーの比較

」(29頁)

5g)「[0003] 現在の商業的需要に従い、ココア製造業者には、幅広い色調、フレーバーまたはその両方を有するカカオ製品を製造することが求められている。各製造業者は、温度、水分含有率、処理時間およびpH等の処理条件を操作することによって製造されるココアパウダーの色調およびフレーバーが変化するであろうことを理解しているが、どのようにすればばらつきなく所望の色調、フレーバーまたはその両方を備えたカカオ製品を製造できるかということに関する見解は全体で一致していない。」(1頁)

甲6:
6a)「実施例 1
エクアドル産カカオ豆から常法により得られたカカオニブに対し、炭酸力リウム 0.9 重量%を 1.35 重量%の水に溶解させたものを添加して pH を 6.8 に調整し、ジャケット温度 100℃ の反応槽内で、スター卜時の品温 50℃ で攪拌し始め、15 分間混合してアルカリ処理を行った。この時の反応終了時の品温は 80℃ であり、 アルカリ処理後のカカオニブの水分含有量は 6.1 重量%であった。このアルカリ処理後のカカオニブに対して 3.8 重量%の水を加え、間接加熱式焙煎機を用いて、ローストを開始し、約 40 分で最終品温を 123℃ まで到達させるようにしてロース卜処理を行った。このロース卜処理したカカオニブを磨砕した後に油分 12 重量%まで搾油し、これを粉砕することによって HPC を製造した。
・・・
比較例 2
エクアドル産カカオ豆由来のカカオニブに対し、10.0重量%の水を添加して pH を 6.0 に調整し、ジャケット温度 120°C の反応槽内で、蒸気加圧により 120℃ で 20分間攪拌混合する処理をアルカリ処理に代えて行い、加熱・加圧後の水分含有量が 23.0 重量%であるカカオニブに対してロースト処理を行った以外は、実施例 1 に記載されている方法に準じて処理することによりココアパウダーを製造した。」(5頁24行?7頁12行)

6b)「カカオ豆に含まれているポリフェノールの一種であるカカオポリフェノール(以下、「CMP」と称することもある)」(1頁22?23行)

6c)「CMP 含有量の高いココアパウダー(以下、この「CMP含有量の高いココアパウダー」を「HPC」と称することもある)」(2頁20?22行)

甲7:
7a)「【0017】
別の側面において、本発明は、ココア生成物の調製のための、本発明による発酵したココア豆の使用に関する。前記ココア生成物は、ココアニブ、ココアパウダー、ココアエキス、ココアリカー、ココアマス、ココアフレーク、ココアバター、およびココアケークを含むかまたはこれらからなる群から選択される。本発明はまた、ココア生成物に関する。前記ココア生成物は、本発明による発酵したココア豆を1つ以上用いて調製された、ココアニブ、ココアパウダー、ココアエキス、ココアリカー、ココアマス、ココアバターおよびココアケークを含むかまたはこれらからなる群から選択される。」

7b)「【0055】
本明細書中用いられる「ココア」および「カカオ」という用語は、類義語として用いられる点に留意されたい。」

7c)「【0193】

例1:ココア豆の発酵のための、本発明による微生物組成の使用
本例は、本発明による微生物組成を用いたココア豆を発酵させる方法を天然発酵方法と比較して示す。本実験において用いられる、本発明による微生物組成は、以下の菌株を含む:ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ファーメンタム、アセトバクター属酢酸菌、ラクトバチルス・パラファラギニス、およびイーストサッカロマイセス・セレヴィシエ。
【0194】
本発明による微生物組成によって発酵された豆に対し、未発酵のアイボリーコースト豆(例えば、100kg)を100mlの微生物組成と混合した。その2日後、この混合物を回転させ、さらに2日間発酵させた。本実験において用いた他の実験条件を表3に示す。」

7d)「【0228】
例5:本発明による微生物組成を用いて発酵されたココア豆の外観 例1において説明したような条件と同様の条件下において、ココア豆を発酵させた。その結果得られた発酵豆は、光中断効果を示した。驚くべきことに、この光中断効果は、従来的に発酵した豆においては観察されなかった。表6は、本発明に従って発酵されたココア豆サンプルと、本明細書中に定義されるような微生物組成を用いずに従来的に発酵したココア豆サンプルとについて、ハンターカラー方式座標を比較した結果である。
【0229】
【表6】



甲8:
8a)「【0003】
カカオの製造には、蒸気処理ステップおよびアルカリ化ステップを含んでもよい。蒸気処理ステップは、発酵後に受け取ったままカカオ豆を殺菌する(debacterizing)ために、焙煎の前およびアルカリ化の前に含んでもよい。あるいは、蒸気処理ステップまたは湿潤ステップは、水をカカオ豆またはニブに導入し、機械的に損傷することなく焙煎に耐えるように、それらをより柔軟にする。」

8b)「【0026】
本発明の一態様により、焙煎前に、液体の水または蒸気を供給し、場合により圧力下である期間加熱することにより、カカオ豆またはニブを前処理に付す。この前処理が、カカオ豆またはニブにアルカリの浸透および組込に備えさせ、アルカリの浸透および組込を改善することを見出した。結果的に、アルカリ化ステップにおける過アルカリ化なしに、長い焙煎時間が原因となる不快なノートの発生なしに所望の色調および色強度を得るために、より少ないアルカリおよび低減したアルカリ化時間が必要とされるであろう。」

甲9:
9a)「ココアバター製造に用いられるカカオリカーのほとんどはアルカリ化されるが,チョコレート用ではこの処理をされることはあまりない。」(50頁5?6行)

9b)「アルカリを多く使用しすぎないように注意することが必要である。それはココアバターがグリセリン骨格へ三分子の脂肪酸が結合しているためで(第6章),これらの脂肪酸はアルカリ剤と反応し,石鹸臭を生じる可能性があるためである。」(50頁12?15行)

甲10:
10a)「ココアパウダーはアルカリ処理と非アルカリ処理のタイプになる.」
(128頁5?6行)

(イ)引用発明
i 甲1発明
甲1には、カカオマスの調整方法についての記載がある(摘示1a?1i。特に請求項1)。また、甲1には、水分を除去調整した後に、破砕し、皮を剥離してニブと皮、胚芽とを分離し、ニブを焙炒し、更に、磨砕する等することでカカオマスを得ることができること、実施例として、カカオ豆のニブ部分を水分含有率3.9%に調整し、このカカオ豆を熱風式縦型カカオ豆ローセターに投入して130℃で40分間加熱焙炒した後、通常の方法で破砕して皮と胚芽とを除去し、ローターミルで磨砕してカカオマスを得たことが記載されている(摘示1c、1d、1f)。
したがって、甲1には、
「剥皮処理前のカカオ豆に水もしくは蒸気またはこれらと共に糖類もしくは乳固形分を施与し、カカオ豆のニブ水分を8?30重量%に加水調整した後、水分を除去してニブ水分を1?5重量%に調整し、引続いて加熱焙炒し、さらに破砕して皮と胚芽とを除去し、磨砕することを特徴とするカカオマスの調整方法」の発明(以下「甲1発明1」という。)及び
「剥皮処理前のカカオ豆に水もしくは蒸気またはこれらと共に糖類もしくは乳固形分を施与し、カカオ豆のニブ水分を8?30重量%に加水調整した後、水分を除去してニブ水分を1?5重量%に調整し、引続いて加熱焙炒し、さらに破砕して皮と胚芽とを除去し、磨砕することを特徴とするカカオマスの調整方法により調整されたカカオマス」(以下「甲1発明2」という。)が記載されていると認める。

ii 甲2B発明
甲2Bには、カカオ子からテオブロミンおよびカフェインを除去する方法についての記載があるところ(摘示2Ba?2Bd)、当該方法において生カカオマスを生成物として得ることが記載されている(摘示2Bc)。
したがって、甲2Bには、
「生カカオマスを生成物として得る方法であって、生のカカオ豆からカフェインおよびテオブロミンを含む実質的にすべての水溶性材料を分離しそのことによってカカオ豆の水抽出物および多量の湿潤カカオ豆を生成する連続の水抽出工程であって、水抽出は、(1) 豆は最初に約45℃?約55℃の水で抽出され、(2) これに続いて約90℃?約105℃の水で約4?5回抽出される、2つの全く異なる温度での連続工程によって実施され、各抽出の後、実質的にすべての液体を抽出容器から排出し、次いで水を添加する工程、実質的にすべてのメチルキサンチンおよび大部分の水溶性材料を除去された、水抽出工程後に残った湿ったカカオ豆を徐々に乾燥させ、豆中の水分が約4%より下のポイントに達した後、豆を保存し最終的には磨砕して生カカオマスとして知られる生成物を得る工程、を含んでなる方法。」の発明(以下「甲2B発明1」という。)及び
「生カカオマスを生成物として得る方法であって、生のカカオ豆からカフェインおよびテオブロミンを含む実質的にすべての水溶性材料を分離しそのことによってカカオ豆の水抽出物および多量の湿潤カカオ豆を生成する連続の水抽出工程であって、水抽出は、(1) 豆は最初に約45℃?約55℃の水で抽出され、(2) これに続いて約90℃?約105℃の水で約4?5回抽出される、2つの全く異なる温度での連続工程によって実施され、各抽出の後、実質的にすべての液体を抽出容器から排出し、次いで水を添加する工程、実質的にすべてのメチルキサンチンおよび大部分の水溶性材料を除去された、水抽出工程後に残った湿ったカカオ豆を徐々に乾燥させ、豆中の水分が約4%より下のポイントに達した後、豆を保存し最終的には磨砕して生カカオマスとして知られる生成物を得る工程、を含んでなる方法により製造された生カカオマス」の発明(以下「甲2B発明2」という。)が記載されていると認める。

iii 甲3発明
甲3には、カカオニブの製造方法についての記載があるところ(摘示3a?3n、特に請求項2、実施例 I)、カカオニブを磨り潰したものがカカオリカーであることは本件優先日における技術常識である。
したがって、甲3には、
「実質的に改善されたカカオの製造方法であって、カカオニブを高温および高ガス圧に晒し、その後ニブをより低い温度および圧力に突然解放し、次いでニブを焙煎し、次に爆発したカカオニブを磨り潰すことを含む、カカオリカーの製造方法」の発明(以下「甲3発明1」という。)及び
「実質的に改善されたカカオの製造方法であって、カカオニブを高温および高ガス圧に晒し、その後ニブをより低い温度および圧力に突然解放し、次いでニブを焙煎し、次に爆発したカカオニブを磨り潰すことを含む、カカオリカーの製造方法により製造されたカカオリカー」の発明(以下「甲3発明2」という。)が記載されていると認める。

iv 甲4B発明
甲4Bには、カカオ豆の殺菌処理方法についての記載があるところ(摘示4Ba?4Bd)、蒸気で加熱、殺菌すること、殺菌後のカカオ豆を乾燥し、焙煎することでカカオマスを収得することができることが記載されている。
したがって、甲4Bには、
「カカオマスを収得する方法であって、カカオ豆を温度130 ?400 ℃、圧力3?10kg/cm^(2) の過熱蒸気で加熱、殺菌後、直ちに30?150 ℃の温風乃至熱風で急速に乾燥させ、焙煎してカカオマスを収得する方法。」の発明(以下「甲4B発明1」という。)及び
「カカオマスを収得する方法であって、カカオ豆を温度130 ?400 ℃、圧力3?10kg/cm^(2) の過熱蒸気で加熱、殺菌後、直ちに30?150 ℃の温風乃至熱風で急速に乾燥させ、焙煎してカカオマスを収得する方法により得られたカカオマス」の発明(以下「甲4B発明2」という。)が記載されていると認める。

v 甲5発明
甲5には、フルーティフレーバーを有するカカオ製品及びそれを製造するための方法が記載されているところ(摘示5a?5g)、請求項1、8、9、16、21、23、24及び実施例の記載からみて、甲5には、
「フルーティフレーバーを有するカカオ製品であって、増加した量のフルーティアロマ化合物を含有する、カカオ製品を製造するための方法であって、カカオニブ、剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを殺菌する工程と、殺菌したカカオニブ、剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを酸および水と混合する工程と、酸性化ニブ、酸性化剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを焙炒する工程とを含む方法において、該混合する工程が、ニブ、剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを、酸および水と約15℃?約90℃の温度で接触させるものであり、さらに、焙炒ニブ、焙炒剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを磨砕する工程であって、それによってカカオリカーを製造する工程をさらに含む方法」の発明(以下「甲5発明1」
という。)、
「フルーティフレーバーを有するカカオ製品であって、増加した量のフルーティアロマ化合物を含有する、カカオ製品を製造するための方法であって、カカオニブ、剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを殺菌する工程と、殺菌したカカオニブ、剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを酸および水と混合する工程と、酸性化ニブ、酸性化剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを焙炒する工程とを含む方法において、該混合する工程が、ニブ、剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを、酸および水と約15℃?約90℃の温度で接触させるものであり、さらに、焙炒ニブ、焙炒剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを磨砕する工程であって、それによってカカオリカーを製造する工程をさらに含む方法により製造された、カカオ製品」の発明(以下「甲5発明2」という。)及び
「カカオ製品が、約18?約29のL値、約23?約30のC値、約35?約55のH値およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される色値、約4.5?約6のpHを有する、フルーティフレーバーを有するカカオ製品であって、増加した量のフルーティアロマ化合物を含有する、カカオ製品」の発明(以下「甲5発明3」という。)が記載されていると認める。

vi 甲6発明
甲6には、カカオニブからココアパウダーを製造することが記載されているところ(摘示6a?6c)、比較例2の記載からみて、甲6には、
「エクアドル産カカオ豆由来のカカオニブに対し、10.0重量%の水を添加して pH を 6.0 に調整し、ジャケット温度 120°C の反応槽内で、蒸気加圧により 120℃ で 20分間攪拌混合する処理を行い、加熱・加圧後 の水分含有量が 23.0 重量%であるカカオニブに対してロースト処理を行い、このロース卜処理したカカオニブを磨砕した後に油分 12 重量%まで搾油し、これを粉砕することによってココアパウダーを製造する方法」の発明(以下「甲6発明1」という。)及び
「エクアドル産カカオ豆由来のカカオニブに対し、10.0重量%の水を添加して pH を 6.0 に調整し、ジャケット温度 120°C の反応槽内で、蒸気加圧により 120℃ で 20分間攪拌混合する処理を行い、加熱・加圧後 の水分含有量が 23.0 重量%であるカカオニブに対してロースト処理を行い、このロース卜処理したカカオニブを磨砕した後に油分 12 重量%まで搾油し、これを粉砕することによって製造されたココアパウダー」の発明(以下「甲6発明2」という。)が記載されていると認める。

vii 甲7発明
甲7には、微生物組成を用いて発酵されたココア豆について記載されているところ(摘示7a?7d)、例5として、L値が19.97、C値が19.29、H値が45.42、pHが5.34であるココア豆(摘示7d、表6上段)、L値が14.63、C値が18.96、H値が46.58、pHが5.84であるココア豆(摘示7d、表6下段)が記載されている。
したがって、甲7には、
「L値が19.97、C値が19.29、H値が45.42、pHが5.34である又はL値が14.63、C値が18.96、H値が46.58、pHが5.84であるココア豆」の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されていると認める。

イ 判断
(ア)本件発明1について
i 甲1発明1について
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「カカオマスの調整方法」は本件発明1の「カカオ製品の製造方法」に相当する。
甲1発明1は「剥皮処理前のカカオ豆に水もしくは蒸気またはこれらと共に糖類もしくは乳固形分を施与し、カカオ豆のニブ水分を8?30重置%に加水調整」するものであるところ、この工程は、本件発明1の工程(b)と、「(b)カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程」である点で共通する。
甲1発明1は「加水調整」するものであるところ、具体的には、「温度40?100℃で5?60分間行うのが好適」であり(摘示1b)、実施例として「ブラジル産カカオ豆を蔗糖0.05%、乳糖0.05%、全脂粉乳0.1%を含む98℃の水溶液に60分間浸漬し、カカオ豆のニブ部分を水分含有率13.1%に調整」することが記載されているから(摘示1f)、この工程は、本件発明1の工程(c)と、「(c)前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含」む、工程である点で共通する。
甲1発明1は水分調整されたカカオ豆を「水分を除去してニブ水分を1?5重量%に調整し、引続いて加熱焙炒」するものであるところ、具体的には、「ニブ中の水分を除去調整する条件としては、温度60?100℃で30分?6時間程度乾燥することが好ましい」とされ(摘示1c)、実施例として「熱風乾燥機を用い100℃で2時間予備加熱乾燥を行いカカオ豆のニブ部分を水分含有率3.9%に調整した。このカカオ豆を熱風式縦型カカオ豆ローセターに投入して130℃で40分間加熱焙炒した」ことが記載されているから(摘示1f)、この工程は、本件発明1の工程(d)と、「(d)カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程」である点で共通する。
甲1発明1は「磨砕する」ものであるところ、皮と胚芽を除去したカカオ豆を磨り潰した際にカカオリカーが生成すること、カカオリカーが固化したものをカカオマスということは本件優先日における技術常識であるから、この工程は、本件発明1の工程(e)と「(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程」である点で共通する。
甲1発明1は以上の工程を順に含むものである。
甲1発明1はアルカリ化する工程を含まないところ、アルカリ化を行わずにカカオ製品を製造することは甲8?甲10に記載されるとおり(摘示8a、8b、9a、10a)周知であるから、甲1発明1がアルカリ化するものではないとすることに技術的に何ら不合理な点はない。したがって、甲1発明1は本件発明1と、カカオ製品が方法中にアルカリ化されない点で一致する。

したがって、本件発明1と甲1発明1とは、
「カカオ製品の製造方法であって、以下の工程(b)?(e):
(b)カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、
(c)前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含む、工程、
(d)カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含み、
前記カカオ製品が前記方法中にアルカリ化されない、方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1-1-1:最終的な製造対象の「カカオ製品」について、本件発明1は「濃い」と特定しているのに対し、甲1発明1は「濃い」と特定していない点

相違点1-1-2:本件発明1は「(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程」を含むと特定し、工程(b)の原料のカカオ製品を「前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品」と特定しているのに対し、甲1発明1はそのような特定をしていない点

相違点1-1-3:工程(c)について、本件発明1は「前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって」、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」と特定し、工程(d)の原料のカカオ製品を「前記工程(c)で得た反応カカオ製品」と特定しているのに対し、甲1発明1はそのような特定をしていない点

相違点1-1-4:工程(e)で得られるカカオ製品について、本件発明1は「濃い」と特定しているのに対して、甲1発明1はそのような特定をしていない点

相違点1-1-5:本件発明1は「前記濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」と特定しているのに対し、甲1発明1はそのような特定をしていない点

上記相違点について検討する。
相違点1-1-2について
相違点1-1-2は滅菌カカオ製品に関するものであるところ、甲1には、カカオ豆を滅菌することについての記載はない。
したがって、相違点1-1-2は実質的な相違点である。

相違点1-1-3について
甲1発明1は、加水調整するものであるところ、「加水調整は、温度40?100℃で5?60分間行うのが好適である。」(摘示1b)とされており、本件発明1及び甲1発明1はいずれも混合カカオ製品を一定の温度に加熱している点で共通するから、甲1発明1は本件発明1と同様に、反応カカオ製品を得ているといえる。また、反応時間も重複しているといえる。しかし、甲1発明1は加水調整後の水分が8?30重量%であるのに対し、本件発明1は反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間であり、含水率に重複する範囲はなく、相違する。
したがって、相違点1-1-3は実質的な相違点である。

また、甲3、甲5、甲7?10には、「前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、」、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」とすることは記載も示唆もされておらず、それらが周知の技術的事項であるともいえない。
したがって、甲1発明1において、相違点1-1-3に係る本件発明1の技術的事項を採用することが、当業者が容易になし得た事項であるとすることはできない。

相違点1-1-1、1-1-4、1-1-5について
相違点1-1-1、1-1-4の「濃い」とはカカオ製品の色についての特定であり、相違点1-1-5におけるL値、C値、H値の特定と関連するから、これらの相違点について合わせて検討する。
これらの相違点はいずれも色に関するものであるところ、甲1には、「濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」ことについて記載も示唆もない。
当該色は本件発明1で特定される工程を有する製造方法によって得られたカカオ製品が有する色であるといえるが、本件発明1と甲1発明1とで、上記「相違点1-1-2について」、「相違点1-1-3について」で述べた点において製造方法における工程の差異がある。
上記相違点1-1-3の水分に関する点について、甲1発明1の加水調整後の水分の上限は30重量%であって、当該割合は、本件発明1で特定される含水率の下限である31.25%のごく近傍で、同程度の量であるとはいるものの、そもそも本件発明1と甲1発明1とは、加熱対象が、本件発明1が滅菌する工程を経て得られた混合カカオ製品であるのに対し、甲1発明1は「剥皮処理前のカカオ豆に水もしくは蒸気またはこれらと共に糖類もしくは乳固形分を施与し」た「カカオ豆」であるから、それらを加熱した後の含水率が同程度であったとしても、そのことによって本件発明1と甲1発明1とが同様の色を有するとはいえない。
したがって、相違点1-1-1、1-1-4、1-1-5は実質的な相違点である。

また、甲3、甲7?10には、「濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」ことについての記載も示唆もされておらず、それらが周知の技術的事項であるともいえない。
甲5には、「カカオ製品が、約18?約29のL値、約23?約30のC値、約35?約55のH値およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される色値を有する」(摘示5a、請求項8)こと、具体的な脱脂カカオパウダーとして、L、C、Hがそれぞれ、19.82、22.41、52.72及び21.39、22.99、53.42である脱脂ココアパウダーが記載されており(摘示5e、表13、処理開始時、1時間後)、甲7には、「L値が19.97、C値が19.29、H値が45.42、pHが5.34である又はL値が14.63、C値が18.96、H値が46.58、pHが5.84であるココア豆」が記載されており(摘示7d、【0118】には、CIE 1976によるとの記載もある。)、これらの値は、相違点1-1-5に係る本件発明1の技術的事項と重複又は相当するものであるものの、単に特定の製造方法によるカカオ製品又はココア豆の色値について記載されているに過ぎず、甲5に記載された酸を用いる特定の方法により得られる色値を甲1発明1に適用することが当業者が容易になし得た事項であるとすることはできない。

そして、本件発明1は、アルカリ化処理することなく、すなわち「天然」と表示できるカカオ製品であって、アルカリ化カカオ製品のような濃い色を持つカカオ製品が得られるという効果を奏するといえる(【0008】?【0009】)。

したがって、本件発明1は甲1に記載された発明であるということはできず、また、相違点1-1-2について検討するまでもなく、甲1、3、5、7?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

ii 甲3発明1について
本件発明1と甲3発明1とを対比する。
甲3発明1の「カカオリカーの製造方法」は、本件発明1の「カカオ製品の製造方法」に相当する。
甲3発明1はカカオニブを原料とするものであるところ、甲3には、爆発させるべきカカオニブが乾燥しすぎている場合には、水等の形態で、追加の水分を添加してもよいことが記載されており(摘示3e)、水分を添加した場合の甲3発明1は、本件発明1の工程(b)と、「(b)カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程」である点で共通する。
甲3発明1は「カカオニブを高温および高ガス圧に哂」すものであるところ、通常、温度は200°F?250°F(約93℃?121℃)を超えるべきであることが記載されており(摘示3c)、実施例としても500°F(260℃)とすることが記載されているから(摘示3l)、この工程は、本件発明1の工程(c)と、「(c)前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含」む、工程である点で共通する。
甲3発明1は「ニブを焙煎」するものであるところ、この工程は、本件発明1の工程(d)と、「(d)カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程」である点で共通する。
甲3発明1は「爆発したカカオニブを磨り潰」し「カカオリカー」を製造するものであるところ、この工程は、本件発明1の工程(e)と、「(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程」である点で共通する。
甲3発明1は以上の工程を順に含むものである。
甲3発明1はアルカリ化する工程を含まないところ、アルカリ化を行わずにカカオ製品を製造することは甲8?甲10に記載されるとおり(摘示8a、8b、9a、10a)周知であるから、甲3発明1がアルカリ化するものではないとすることに技術的に何ら不合理な点はない。したがって、甲3発明1は本件発明1と、カカオ製品が方法中にアルカリ化されない点で一致する。

したがって、本件発明1と甲3発明1とは、
「カカオ製品の製造方法であって、以下の工程(b)?(e):
(b)カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、
(c)前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含む、工程
(d)カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含み、
前記カカオ製品が前記方法中にアルカリ化されない、方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1-3-1:最終的な製造対象の「カカオ製品」について、本件発明1は「濃い」と特定しているのに対し、甲3発明1は「濃い」と特定していない点

相違点1-3-2:本件発明1は「(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程」を含むと特定し、工程(b)の原料のカカオ製品を「前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品」と特定しているのに対し、甲3発明1はそのような特定をしていない点

相違点1-3-3:工程(c)について、本件発明1は「前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって」、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」と特定し、工程(d)の原料のカカオ製品を「前記工程(c)で得た反応カカオ製品」と特定しているのに対し、甲3発明1はそのような特定をしていない点

相違点1-3-4:工程(e)で得られるカカオ製品について、本件発明1は「濃い」と特定しているのに対して、甲3発明1はそのような特定をしていない点

相違点1-3-5:本件発明1は「前記濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」と特定しているのに対し、甲3発明1はそのような特定をしていない点

上記相違点について検討する。
相違点1-3-2について
相違点1-3-2は滅菌カカオ製品に関するものであるところ、甲3には、カカオニブを滅菌することについての記載はない。
したがって、相違点1-3-2は実質的な相違点である。

相違点1-3-3について
甲3発明1は、カカオニブを高温および高ガス圧に晒すものであり、本件発明1及び甲3発明1はいずれも混合カカオ製品を一定の温度に加熱している点で共通するから、甲3発明1は本件発明1と同様に、反応カカオ製品を得ているといえる。
しかし、甲3には、爆発させるカカオニブの水分について、「少し乾燥しすぎている場合、例えば水または他の水性物質の形態で、または水蒸気の形態もしくは過熱水蒸気の形態で、カカオニブまたは爆発室に追加の水分を添加してもよい」こと、「この膨張または爆発の手順では、ニブは一般に20%または25%未満の水分含有量を有するべきであり、一般的には10%から15%未満である。」こと、「前処理などによりニブ中の水分が多すぎて必要な爆発ができない場合」ことが記載され(摘示3e)、実施例においても約6%?8%であることが記載されており(摘示3l)、これらの水分含有量は、含水率が31.25%?40.4%の間であることとは異なるといえる。
したがって、相違点1-3-3は実質的な相違点である。

甲3には、さらに、「前処理などによりニブ中の水分が多すぎて必要な爆発ができない場合、この追加の水分は、爆発の前に、たとえば空気乾燥、乾熱、オイル焙煎、ドライ焙煎、油中での煮沸、または他のさまざまな乾燥または脱水方法で除去すべきである。」との記載があるところ(摘示3e)、甲3発明1はカカオニブを爆発させるものであるから、カカオニブの含水率を、甲3記載された上記水分含有量の範囲を逸脱する、31.25%?40.4%の間とすることは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
また、甲1には、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」とすること、甲5、甲7?10には、「前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、」、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」とすることは記載も示唆もされておらず、それらが周知の技術的事項であるともいえない。
したがって、甲3発明1において、相違点1-3-3に係る本件発明1の技術的事項を採用することが、当業者が容易になし得た事項であるとすることはできない。

相違点1-3-1、1-3-4、1-3-5について
相違点1-3-1、1-3-4の「濃い」とはカカオ製品の色についての特定であり、相違点1-3-5におけるL値、C値、H値の特定と関連するから、これらの相違点について合わせて検討する。
これらの相違点はいずれも色に関するものであるところ、甲3には、「濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」ことについて記載も示唆もない。
当該色は本件発明1で特定される工程を有する製造方法によって得られたカカオ製品が有する色であるといえるが、本件発明1と甲3発明1とで、上記「相違点1-3-2について」、「相違点1-3-3について」で述べた点において製造方法における工程の差異がある。
したがって、相違点1-3-1、1-3-4、1-3-5は実質的な相違点である。

また、甲1、甲7?10には、「濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」ことについての記載も示唆もされておらず、それらが周知の技術的事項であるともいえない。
甲5には、「カカオ製品が、約18?約29のL値、約23?約30のC値、約35?約55のH値およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される色値を有する」(摘示5a、請求項8)こと、具体的な脱脂カカオパウダーとして、L、C、Hがそれぞれ、19.82、22.41、52.72及び21.39、22.99、53.42である脱脂ココアパウダーが記載されており(摘示5e、表13、処理開始時、1時間後)、甲7には、「L値が19.97、C値が19.29、H値が45.42、pHが5.34である又はL値が14.63、C値が18.96、H値が46.58、pHが5.84であるココア豆」が記載されており(摘示7d、【0118】には、CIE 1976によるとの記載もある。)、これらの値は、相違点1-3-5に係る本件発明1の技術的事項と重複又は相当するものであるものの、単に特定の製造方法によるカカオ製品又はココア豆の色値について記載されているに過ぎず、甲5に記載された酸を用いる特定の方法により得られる色値を甲3発明1に適用することが当業者が容易になし得た事項であるとすることはできない。

そして、本件発明1は、アルカリ化処理することなく、すなわち「天然」と表示できるカカオ製品であって、アルカリ化カカオ製品のような濃い色を持つカカオ製品が得られるという効果を奏するといえる(【0008】?【0009】)。

したがって、本件発明1は甲3に記載された発明であるということはできず、また、相違点1-3-2について検討するまでもなく、甲1、3、5、7?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

iii 甲5発明1について
本件発明1と甲5発明1とを対比する。
甲5発明1の「フルーティフレーバーを有するカカオ製品であって、増加した量のフルーティアロマ化合物を含有する、カカオ製品を製造するための方法」は、本件発明1の「カカオ製品の製造方法」に相当する。
甲5発明1の「カカオニブ、剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを殺菌する工程」は、本件発明1の「(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程」に相当する。
甲5発明1の「殺菌したカカオニブ、剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを酸および水と混合する工程」は、本件発明1の工程(b)と、「(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程」である点で共通する。
甲5発明1は「該混合する工程が、ニブ、剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを、酸および水と約15℃?約90℃の温度で接触させるもの」であるところ、当該温度は、本件発明1の工程(b)の「少なくとも85℃の温度」と重複し、甲5には、実施例に「温度20℃および40℃の酸溶液を反応器内のニブに加えた。ニブの平均反応温度は55?95℃であった。」、「グルコン酸デルタラクトン溶液を加えるとカカオニブの温度が除々に95℃から88℃に低下した」、「酸性化プロセス中のニブの平均反応温度は、ブレンダー1?4の場合は75?90℃とした」と記載され(摘示5d、5e)、当該実施例の温度も本件発明1の「少なくとも85℃の温度」と重複し、また、反応器内のニブに加える酸溶液が20℃および40℃であるのに対し、ニブの平均反応温度は55?95℃であるから、加熱されており、反応しているといえる。したがって、甲5発明1の当該工程は、本件発明1の工程(c)と「(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含む、工程」である点で共通する。
甲5発明1の「酸性化ニブ、酸性化剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを焙炒する工程」は、本件発明1の「(d)前記工程(c)で得た反応カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程」に相当する。
甲5発明1の「焙炒ニブ、焙炒剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを磨砕する工程であって、それによってカカオリカーを製造する工程」は、本件発明1の工程(e)と「(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程」である点で共通する。
甲5発明1は以上の工程を順に含むものである。
甲5発明1はアルカリ化する工程を含まないところ、アルカリ化を行わずにカカオ製品を製造することは甲8?甲10に記載されるとおり(摘示8a、8b、9a、10a)周知であるから、甲5発明1がアルカリ化するものではないとすることに技術的に何ら不合理な点はない。したがって、甲5発明1は本件発明1と、カカオ製品が方法中にアルカリ化されない点で一致する。

したがって、本件発明1と甲5発明1とは、
「カカオ製品の製造方法であって、以下の工程(a)?(e):
(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程;
(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、
(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含む、工程、
(d)前記工程(c)で得た反応カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含み、
前記カカオ製品が前記方法中にアルカリ化されない、方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1-5-1:最終的な製造対象の「カカオ製品」について、本件発明1は「濃い」と特定しているのに対し、甲5発明1は「濃い」と特定していない点

相違点1-5-2:工程(b)について、本件発明1は滅菌カカオ製品と水とを混合することを特定しているのに対し、甲5発明1はさらに、酸を混合することを特定している点

相違点1-5-3:工程(c)について、本件発明1は「混合カカオ製品を30分以上反応させ」ること、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」ことが特定されているのに対し、甲5発明1は、そのような特定をしていない点

相違点1-5-4:工程(e)で得られるカカオ製品について、本件発明1は「濃い」と特定しているのに対して、甲5発明1はそのような特定をしていない点

相違点1-5-5:本件発明1は「前記濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」と特定しているのに対し、甲5発明1はそのような特定をしていない点

上記相違点について検討する。
相違点1-5-1、1-5-4、1-5-5について
相違点1-5-1、1-5-4の「濃い」とはカカオ製品の色についての特定であり、相違点1-5-5におけるL値、C値、H値の特定と関連するから、これらの相違点について合わせて検討する。
これらの相違点はいずれも色に関するものであるところ、甲5には、「カカオ製品が、約18?約29のL値、約23?約30のC値、約35?約55のH値およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される色値を有する」(摘示5a、請求項8)こと、具体的な脱脂カカオパウダーとして、L、C、Hがそれぞれ、19.82、22.41、52.72及び21.39、22.99、53.42である脱脂ココアパウダーが記載されており(摘示5e、表13、処理開始時、1時間後)、これらの値は、相違点1-1-5に係る本件発明1の技術的事項と重複又は相当するものである。
したがって、これらの相違点は実質的な相違点ではない。

相違点1-5-2について
本件発明1の工程(b)は、滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程であって、本件明細書の記載をみても、混合の際に酸を併せて混合するとはいえない。
したがって、相違点1-5-2は実質的な相違点である。

そして、甲5には、甲5に記載のカカオ製品の製造方法としては、実施例も含めて、専ら、カカオニブ、剥皮カカオ豆またはこれらの組合せを酸および水と混合することが記載されており、それによって、フルーティフレーバーを有するカカオ製品とすることが記載されているから(摘示5a、請求項1、16、摘示5b?5f。)、甲5に記載された発明においてカカオ製品と水を混合する際に酸は必須の材料であるといえるから、たとえ、甲1、3、7?10の記載及び周知の技術常識を考慮しても、酸を用いないとすることは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
なお、この相違点について、上記相違点1-5-1、1-5-4、1-5-5は実質的な相違点としたが、酸を用いないものとした場合は、ココア製品の色が同様のものとなるか明らかではないため、相違点1-5-1、1-5-4、1-5-5が実質的な相違点ではないといえないこととなる。

相違点1-5-3について
甲5には、「焙炒中にニブの水分含有率は20?30%から1?2%に低下した」との記載があり(摘示5d)、当該焙炒前の「水分含有率」は、相違点1-5-3に係る「加熱後のカカオ製品の含水率」に相当する。ところ、「20?30%」の上限である30%は、本件発明1の含水率の下限である31.25%のごく近傍であり、同程度の量であるとはいえる。
また、甲5には、他の実施例として、乾燥前の水分含有率として、44?50%等のものも記載されている(実施例1?8、実施例9?13)ことからみて、甲5に記載された発明における水分含有率としては、上記「20?30%」と「44?50%」程度のものが包含されるといえ、甲5にはそれらの範囲に限定されると解される記載もない。
しかし、甲5には、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」とすることについての記載はない。
してみると、相違点1-5-3は実質的な相違点である。

また、甲5に記載の水分含有率は「31.25%?40.4%の間」とは異なるものであり、そのような範囲の水分含有率とすることについて甲5には示唆もされていない。
さらに、甲1には、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」とすること、甲3、甲7?10には、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」とすることは記載も示唆もされておらず、それらが周知の技術的事項であるともいえない。
したがって、甲5発明1において、相違点1-5-3に係る本件発明1の技術的事項を採用することが、当業者が容易になし得た事項であるとすることはできない。

そして、本件発明1は、アルカリ化処理することなく、すなわち「天然」と表示できるカカオ製品であって、アルカリ化カカオ製品のような濃い色を持つカカオ製品が得られるという効果を奏するといえる(【0008】?【0009】)。

したがって、本件発明1は甲5に記載された発明であるということはできず、また、甲1、3、5、7?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

iv 甲6発明1について
本件発明1と甲6発明1とを対比する。
甲6発明1の「ココアパウダーを製造する方法」は、本件発明1の「カカオ製品の製造方法」に相当する。
甲6発明1の「エクアドル産カカオ豆由来のカカオニブに対し、10.0重量%の水を添加」する工程は、本件発明1の工程(b)と、「(b)カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程」である点で共通する。
甲6発明1の「ジャケット温度 120°C の反応槽内で、蒸気加圧により 120℃ で 20分間攪拌混合する処理を行い、加熱・加圧後 の水分含有量が 23.0 重量%であるカカオニブ」とする工程は、本件発明1の工程(c)と、「(c)前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含」む、工程である点で共通する。
甲6発明1の「カカオニブに対してロースト処理」する工程は、本件発明1の工程(d)と「(d)前記工程(c)で得たカカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程」である点で共通する。
甲6発明1の「このロース卜処理したカカオニブを磨砕」する工程について、カカオニブを磨砕することによりカカオリカーが生成することは本件優先日における技術常識である。したがって、甲6発明1のこの工程は、本件発明1の工程(e)と「(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、」である点で共通する。
甲6発明1は以上の工程を順に含むものである。
甲6発明1はアルカリ化する工程を含まない。
したがって、本件発明1と甲6発明1とは、
「カカオ製品の製造方法であって、以下の工程(b)?(e):
(b)カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、
(c)前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含む、工程、
(d)前記工程(c)で得たカカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含み、
前記カカオ製品が前記方法中にアルカリ化されない、方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1-6-1:最終的な製造対象の「カカオ製品」について、本件発明1は「濃い」と特定しているのに対し、甲6発明1は「濃い」と特定していない点

相違点1-6-2:本件発明1は「(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程」を含むと特定し、工程(b)の原料のカカオ製品を「前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品」と特定しているのに対し、甲6発明1はそのような特定をしていない点

相違点1-6-3:工程(c)について、本件発明1は「前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって」、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」と特定し、工程(d)の原料のカカオ製品を「前記工程(c)で得た反応カカオ製品」と特定しているのに対し、甲6発明1はそのような特定をしていない点

相違点1-6-4:工程(e)で得られるカカオ製品について、本件発明1は「濃い」と特定しているのに対して、甲6発明1はそのような特定をしていない点

相違点1-6-5:本件発明1は「前記濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」と特定しているのに対し、甲6発明1はそのような特定をしていない点

上記相違点について検討する。
相違点1-6-2について
相違点1-6-2は滅菌カカオ製品に関するものであるところ、甲3には、カカオニブを滅菌することについての記載はない。
したがって、相違点1-6-2は実質的な相違点である。

相違点1-6-3について
甲6発明1は「10.0重量%の水を添加して pH を 6.0 に調整し、ジャケット温度 120°C の反応槽内で、蒸気加圧により 120℃ で 20分間攪拌混合する処理を行」うものであり、本件発明1及び甲6発明1はいずれも混合カカオ製品を一定の温度に加熱している点で共通するから、甲6発明1は本件発明1と同様に、反応カカオ製品を得ているといえる。
しかし、甲6発明1では「120℃ で 20分間」撹拌混合する処理を行うものであり、「加熱・加圧後 の水分含有量が 23.0 重量%である」とされており、甲6には、30分以上反応させること、含水率を31.25%?40.4%の間のものとすることは記載も示唆もない。
したがって、相違点1-6-3は実質的な相違点である。

相違点1-6-1、1-6-4、1-6-5について
相違点1-6-1、1-6-4の「濃い」とはカカオ製品の色についての特定であり、相違点1-6-5におけるL値、C値、H値の特定と関連するから、これらの相違点について合わせて検討する。
これらの相違点はいずれも色に関するものであるところ、甲6には、「濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有することについて記載も示唆もない。
当該色は本件発明1で特定される工程を有する製造方法によって得られたカカオ製品が有する色であるといえるが、本件発明1と甲6発明1とで、上記「相違点1-6-2について」、「相違点1-6-3について」で述べた点において製造方法における工程の差異がある。
したがって、相違点1-6-1、1-6-4、1-6-5は実質的な相違点である。

よって、本件発明1は甲6に記載された発明であるということはできない。

(イ)本件発明2?9、11?18について
本件発明2?9、11?18はいずれも本件発明1を直接的・間接的に引用し、さらに技術的事項を限定した発明であり、また、甲6には、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間」とすること、「濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」ことについては記載も示唆もされておらず、甲6発明1にかかる技術的事項を採用する動機付けもないないから、本件発明1と同様に、甲1、3、5、6に記載された発明であるということはできず、甲1、3、5?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(ウ)本件発明19について
本件発明19は、物の発明に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合に該当するものであり、本件発明19の「濃いカカオ製品」は、本件発明19で特定される色値、pHを有し、アルカリ化されていないものであって、さらに、本件発明19で特定される方法で得られるものに特定されているといえるところ、上記(1)イ「(エ)について」で述べたとおりであるから、カカオ製品の製造方法が異なれば、カカオ製品に含まれる化学物質の組成が異なるといえ、その製造方法について当業者が容易に想到することができるといえなければ、当該製造方法によりカカオ製品も当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。以上を前提に以下検討する。

i 甲1発明2について
本件発明19と甲1発明2を対比する。
上記(ア)iで述べたのと同様に対比すると、両者は、
「アルカリ化されていない、カカオ製品であって、以下の工程(b)?(e):
(b)カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、
(c)前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含む、工程、
(d)カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含む方法で得られる、カカオ製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点19-1-1:最終的な「カカオ製品」について、本件発明19は「濃い」と特定しているのに対し、甲1発明2は「濃い」と特定していない点

相違点19-1-2:本件発明19は「(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程」を含むと特定し、工程(b)の原料のカカオ製品を「前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品」と特定しているのに対し、甲1発明2はそのような特定をしていない点

相違点19-1-3:工程(c)について、本件発明19は「前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって」、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」と特定し、工程(d)の原料のカカオ製品を「前記工程(c)で得た反応カカオ製品」と特定しているのに対し、甲1発明2はそのような特定をしていない点

相違点19-1-4:工程(e)で得られるカカオ製品について、本件発明19は「濃い」と特定しているのに対して、甲1発明2はそのような特定をしていない点

相違点19-1-5:最終的な「カカオ製品」について、本件発明19は「9?21のL値、14?25のC値、および40?54のH値からなる色値、ならびに6未満のpHを有する」と特定しているのに対し、甲1発明1はそのような特定をしていない点

上記相違点について検討する。
相違点19-1-1、19-1-4、19-1-5は、カカオ製品の特性に関するものである一方、相違点19-1-2、19-1-3は製造方法に関するものであるといえる。
そして、相違点19-1-1?19-1-5は上記(ア)iで示した相違点1-1-1?1-1-5と同様の相違点であるから(なお、相違点19-1-5ではさらにpHの点が存在すると認める。)、その判断についても上記(ア)iで述べたのと同様である(色値に関して、相違点1-1-5とは異なり相違点19-1-5では、CIE 1976表色系に基づく色座標であることが特定されていないが、判断に変わりはない。)。さらに、甲6には、含水率を31.25%?40.4%の間のものとすること、濃いカカオ製品が9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有することについて記載も示唆もないから、甲6を参酌してもこれらの点についての判断に変わりはない。
また、本件発明19は、アルカリ化処理することなく、すなわち「天然」と表示できるカカオ製品であって、アルカリ化カカオ製品のような濃い色を持つカカオ製品が得られるという効果を奏するといえる(【0008】?【0009】)。

したがって、本件発明19は、甲1発明2と実質的に相違し、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。

よって、本件発明19は甲1に記載された発明であるということはできず、甲1、3、5?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

ii 甲3発明2について
本件発明19と甲3発明2を対比する。
上記(ア)iiで述べたのと同様に対比すると、両者は、
「アルカリ化されていない、カカオ製品であって、以下の工程(b)?(e):
(b)カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、
(c)前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含む、工程
(d)カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含む方法で得られる、カカオ製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点19-3-1:最終的な「カカオ製品」について、本件発明19は「濃い」と特定しているのに対し、甲3発明2は「濃い」と特定していない点

相違点19-3-2:本件発明19は「(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程」を含むと特定し、工程(b)の原料のカカオ製品を「前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品」と特定しているのに対し、甲3発明2はそのような特定をしていない点

相違点19-3-3:工程(c)について、本件発明19は「前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって」、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」と特定し、工程(d)の原料のカカオ製品を「前記工程(c)で得た反応カカオ製品」と特定しているのに対し、甲3発明2はそのような特定をしていない点

相違点19-3-4:工程(e)で得られるカカオ製品について、本件発明19は「濃い」と特定しているのに対して、甲3発明2はそのような特定をしていない点

相違点19-3-5:本件発明19は「9?21のL値、14?25のC値、および40?54のH値からなる色値、ならびに6未満のpHを有する」と特定しているのに対し、甲3発明2はそのような特定をしていない点

上記相違点について検討する。
相違点19-3-1、19-3-4、19-3-5は、カカオ製品の特性に関するものである一方、相違点19-3-2、19-3-3は製造方法に関するものであるといえる。
そして、相違点19-3-1?19-3-5は上記(ア)iiで示した相違点1-3-1?1-3-5と同様の相違点であるから(なお、相違点19-3-5ではさらにpHの点が存在すると認める。)、その判断についても上記(ア)iiで述べたのと同様である(色値に関して、相違点1-3-5とは異なり相違点19-3-5では、CIE 1976表色系に基づく色座標であることが特定されていないが、判断に変わりはない。)。さらに、甲6には、30分以上反応させること、含水率を31.25%?40.4%の間のものとすること、濃いカカオ製品が9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有することについて記載も示唆もないから、甲6を参酌してもこれらの点についての判断に変わりはない。
また、本件発明19は、アルカリ化処理することなく、すなわち「天然」と表示できるカカオ製品であって、アルカリ化カカオ製品のような濃い色を持つカカオ製品が得られるという効果を奏するといえる(【0008】?【0009】)。

したがって、本件発明19は、甲3発明2と実質的に相違し、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。

よって、本件発明19は甲3に記載された発明であるということはできず、甲1、3、5?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

iii 甲5発明2について
本件発明19と甲5発明2を対比する。
上記(ア)iiiで述べたのと同様に対比すると、両者は、
「アルカリ化されていない、カカオ製品であって、以下の工程(a)?(e):
(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程;
(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、
(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含む、工程、
(d)前記工程(c)で得た反応カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含む方法で得られる、カカオ製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点19-5-1:最終的な製造対象の「カカオ製品」について、本件発明19は「濃い」と特定しているのに対し、甲5発明2は「濃い」と特定していない点

相違点19-5-2:工程(b)について、本件発明19は滅菌カカオ製品と水とを混合することを特定しているのに対し、甲5発明2はさらに、酸を混合することを特定している点

相違点19-5-3:工程(c)について、本件発明19は「混合カカオ製品を30分以上反応させ」ること、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」ことが特定されているのに対し、甲5発明2は、そのような特定をしていない点

相違点19-5-4:工程(e)で得られるカカオ製品について、本件発明19は「濃い」と特定しているのに対して、甲5発明2はそのような特定をしていない点

相違点19-5-5:本件発明19は「9?21のL値、14?25のC値、および40?54のH値からなる色値、ならびに6未満のpHを有する」と特定しているのに対し、甲5発明2はそのような特定をしていない点

上記相違点について検討する。
相違点19-5-1、19-5-4、19-5-5は、カカオ製品の特性に関するものである一方、相違点19-5-2、19-5-3は製造方法に関するものであるといえる。
そして、相違点19-5-1?19-5-5は上記(ア)iiiで示した相違点1-5-1?1-5-5と同様の相違点であるから(なお、相違点19-5-5ではさらにpHの点が存在すると認める。)、その判断についても上記(ア)iiiで述べたのと同様である(色値に関して、相違点1-5-5とは異なり相違点19-5-5では、CIE 1976表色系に基づく色座標であることが特定されていないが、判断に変わりはない。)。さらに、甲6には、30分以上反応させること、含水率を31.25%?40.4%の間のものとすることについて記載も示唆もないから、甲6を参酌してもこの点についての判断に変わりはない。
また、本件発明19は、アルカリ化処理することなく、すなわち「天然」と表示できるカカオ製品であって、アルカリ化カカオ製品のような濃い色を持つカカオ製品が得られるという効果を奏するといえる(【0008】?【0009】)。

したがって、本件発明19は、甲5発明2と実質的に相違し、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。

よって、本件発明19は甲5に記載された発明であるということはできず、甲1、3、5?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

iv 甲5発明3について
本件発明19と甲5発明3とを対比する。
甲5発明3の「カカオ製品」は、本件発明19の「カカオ製品」に相当する。
甲5発明3は「約18?約29のL値、約23?約30のC値、約35?約55のH値およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される色値、約4.5?約6のpHを有する」ものであるところ、L値、C値、H値、pHの値はいずれも、本件発明19の値と重複・一致するものであるから、本件発明19の「9?21のL値、14?25のC値、および40?54のH値からなる色値、ならびに6未満のpHを有する」ことに相当する。
なお、甲5には、具体的にもL値、C値、H値、pHの値が本件発明19で特定される範囲に該当する物が記載されている(摘示5e、表13)。
甲5発明3は、アルカリ化されていない。
したがって、本件発明19と甲5発明3とは、
「9?21のL値、14?25のC値、および40?54のH値からなる色値、ならびに6未満のpH
を有する、アルカリ化されていない、カカオ製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点19-5-1’:最終的な「カカオ製品」について、本件発明19は「濃い」と特定しているのに対し、甲5発明3は「濃い」と特定していない点

相違点19-5-2’:「カカオ製品」について、本件発明19は「以下の工程(a)?(e):
(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程;
(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、
(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含み、反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である、工程、
(d)前記工程(c)で得た反応カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品から濃いカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含む方法で得られる」と特定しているのに対し、甲5発明3はそのような特定をしていない点

上記相違点について検討する。
相違点19-5-1’について
「濃い」とは、ココア製品の色に関するものといえるところ、本件発明19と甲5発明3とは色に関する指標であるL値、C値、H値が相違するものではないから、この点で両発明が相違するとはいえない。

相違点19-5-2’について
この相違点は、カカオ製品の製造方法の特定に関するものであるが、甲5発明3のカカオ製品は、甲5発明3ではその製造方法は特定されていない。しかし、甲5発明1の方法により製造されたものであるといえ、甲5発明1については、上記(ア)iiiで述べたとおり、相違点19-5-2’と共通する相違点である相違点1-5-2(酸を混合する点)、相違点1-5-3(反応時間、含水率の点)について、実質的な相違点であり、当業者が容易になし得た事項であるとすることはできないから、これらと同様な相違点を含むといえる相違点19-5-2’についても、実質的な相違点であり、また、当業者が容易になし得た事項であるとすることはできない。さらに、甲6には、30分以上反応させること、含水率を31.25%?40.4%の間のものとすることについて記載も示唆もないから、甲6を参酌してもこの点についての判断に変わりはない。
そして、本件発明19は、アルカリ化処理することなく、すなわち「天然」と表示できるカカオ製品であって、アルカリ化カカオ製品のような濃い色を持つカカオ製品が得られるという効果を奏するといえる(【0008】?【0009】)。

したがって、本件発明19は、甲5発明3と実質的に相違し、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。

よって、本件発明19は甲5に記載された発明であるということはできず、甲1、3、5?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

v 甲6発明2について
本件発明19と甲6発明2とを対比する。
上記(ア)ivで述べたのと同様に対比すると、両者は、
「アルカリ化されていない、カカオ製品であって、以下の工程(b)?(e):
(b)カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、
(c)前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含む、工程
(d)カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含む方法で得られる、カカオ製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点19-6-1:最終的な「カカオ製品」について、本件発明19は「濃い」と特定しているのに対し、甲6発明2は「濃い」と特定していない点

相違点19-6-2:本件発明19は「(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程」を含むと特定し、工程(b)の原料のカカオ製品を「前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品」と特定しているのに対し、甲6発明2はそのような特定をしていない点

相違点19-6-3:工程(c)について、本件発明19は「前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって」、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」と特定し、工程(d)の原料のカカオ製品を「前記工程(c)で得た反応カカオ製品」と特定しているのに対し、甲6発明2はそのような特定をしていない点

相違点19-6-4:工程(e)で得られるカカオ製品について、本件発明19は「濃い」と特定しているのに対して、甲6発明2はそのような特定をしていない点

相違点19-6-5:本件発明19は「9?21のL値、14?25のC値、および40?54のH値からなる色値、ならびに6未満のpHを有する」と特定しているのに対し、甲6発明2はそのような特定をしていない点

上記相違点について検討する。
相違点19-6-1、19-6-4、19-6-5は、カカオ製品の特性に関するものである一方、相違点19-6-2、19-6-3は製造方法に関するものであるといえる。
そして、相違点19-6-1?19-6-5は上記(ア)ivで示した相違点1-6-1?1-6-5と同様の相違点であるから(なお、相違点19-6-5ではさらにpHの点が存在する。)、その判断についても上記(ア)ivで述べたのと同様である(色値に関して、相違点1-6-5とは異なり相違点19-6-5では、CIE 1976表色系に基づく色座標であることが特定されていないが、判断に変わりはない。)。
さらに、甲6には、30分以上反応させること、含水率を31.25%?40.4%の間のものとすること、濃いカカオ製品が9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有することについて記載も示唆はない。
また、甲1には、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」とすること、甲3、甲5、甲7?10には、「前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、」、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」とすることは記載も示唆もされておらず、それらが周知の技術的事項であるともいえない。
さらに、甲1、甲3、甲7?10には、「濃いカカオ製品」が「9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」ことについての記載も示唆もされておらず、それらが周知の技術的事項であるともいえない。
甲5には、「カカオ製品が、約18?約29のL値、約23?約30のC値、約35?約55のH値およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される色値を有する」(摘示5a、請求項8)こと、具体的な脱脂カカオパウダーとして、L、C、Hがそれぞれ、19.82、22.41、52.72及び21.39、22.99、53.42である脱脂ココアパウダーが記載されており(摘示5e、表13、処理開始時、1時間後)、甲7には、「L値が19.97、C値が19.29、H値が45.42、pHが5.34である又はL値が14.63、C値が18.96、H値が46.58、pHが5.84であるココア豆」が記載されており(摘示7d、【0118】には、CIE 1976によるとの記載もある。)、これらの値は、相違点1-6-5に係る本件発明1の技術的事項と重複又は相当するものであるものの、単に特定の製造方法によるカカオ製品又はココア豆の色値について記載されているに過ぎず、甲5に記載された酸を用いる特定の方法により得られる色値又はココア豆の色値を甲6発明2に適用することが当業者が容易になし得た事項であるとすることはできない。
そして、本件発明19は、アルカリ化処理することなく、すなわち「天然」と表示できるカカオ製品であって、アルカリ化カカオ製品のような濃い色を持つカカオ製品が得られるという効果を奏するといえる(【0008】?【0009】)。

したがって、本件発明19は、甲6発明2と実質的に相違し、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。

よって、本件発明19は甲6に記載された発明であるということはできず、甲1、3、5?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

vi 甲7発明について
本件発明19と甲7発明とを対比する。
甲7発明の「ココア豆」は、本件発明19の「カカオ製品」に相当する。
甲7発明は「L値が19.97、C値が19.29、H値が45.42、pHが5.34である又はL値が14.63、C値が18.96、H値が46.58、pHが5.84である」ものであるところ、L値、C値、H値、pHの値はいずれも、本件発明19の値と重複・一致するものであるから、本件発明19の「9?21のL値、14?25のC値、および40?54のH値からなる色値、ならびに6未満のpHを有する」ことに相当する。
甲7発明は、アルカリ化されていない。
したがって、本件発明19と甲7発明とは、
「9?21のL値、14?25のC値、および40?54のH値からなる色値、ならびに6未満のpH
を有する、アルカリ化されていない、カカオ製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点19-7-1:最終的な「カカオ製品」について、本件発明19は「濃い」と特定しているのに対し、甲7発明3は「濃い」と特定していない点

相違点19-7-2:「カカオ製品」について、本件発明19は「以下の工程(a)?(e):
(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程;
(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、
(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含み、反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である、工程、
(d)前記工程(c)で得た反応カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品から濃いカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含む方法で得られる」と特定しているのに対し、甲7発明はそのような特定をしていない点

上記相違点について検討する。
相違点19-7-1について
「濃い」とは、ココア製品の色に関するものといえるところ、本件発明19と甲7発明とは色に関する指標であるL値、C値、H値が相違するものではないから、この点で両発明が相違するとはいえない。

相違点19-7-2について
甲7発明ではその製造方法は特定されていないものの、具体的には摘示7dに示されるとおり、ココア豆を発酵させて得られるものであり、相違点19-7-2に係る本件発明1において特定される各種の工程を経て得られるものではない。そして、甲1、3、5?10の記載及び周知の技術的事項を参酌しても甲7発明のココア豆に相違点19-7-1に係る本件発明1の技術的事項を採用してココア製品とすることが当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
そして、本件発明19は、アルカリ化処理することなく、すなわち「天然」と表示できるカカオ製品であって、アルカリ化カカオ製品のような濃い色を持つカカオ製品が得られるという効果を奏するといえる(【0008】?【0009】)。

したがって、本件発明19は、甲7発明と実質的に相違し、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。

よって、本件発明19は甲7に記載された発明であるということはできず、甲1、3、5?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(エ)本件発明20?26について
本件発明20?26はいずれも本件発明19を直接的・間接的に引用し、さらに技術的事項を限定した発明であるから、本件発明1と同様に、甲1、3、5?7に記載された発明であるということはできず、甲1、3、5?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(オ)特許異議申立人の主張について
i 特許異議申立人Aの主張について
特許異議申立人Aは、意見書(5頁1行?9頁21行)において、訂正(決定注:令和2年4月14日付けの訂正請求書による訂正。以下この項目及びiiの項目において同様。)後の請求項1に係る発明と甲3(特許異議申立人Aが提示した甲1)に記載された発明とは、訂正後の請求項1には、加熱後のカカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である点が規定されているが、甲第1号証にはこの点は記載されていない点(相違点1)、前記磨り潰す工程の後の前記カカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値、および40?54のH値を有する点が規定されている点で両者は相違する(相違点2)とした上で、相違点1については、訂正後の請求項1は含水率が臨界的異議を有することを一切示していないこと、甲1(特許異議申立人Aが提示した甲3)にニブ部分の水分含有率を8?30%とすることが、甲4Aに水分を10?50重量%添加することが記載されているから、当業者が容易に想到できるものであり、相違点2については、訂正後の請求項1に係るカカオ製品の製造方法は、本質的に、4つの工程を含むもので、規定される上記色値は製造されたカカオ製品の物理的特性の1つであるが、請求項1の製造方法は、甲第1号証の製造方法と実質上同じであるか重複するものであるといえ、甲第1号証記載の方法で製造されたカカオ製品は訂正後の請求項1に規定される色値を有し、相違点2は実質的な相違点ではなく、また、温度などの製造条件を適宜変えることによって色値が異なるカカオ製品を製造するは当業者が容易になし得ることであることを主張する。
しかしながら、上記(ア)iiにおいて検討したとおり、本件発明1と甲3発明1との相違点は上記相違点1及び2に対応する相違点(相違点1-3-1、1-3-3、1?3-4及び1-3-5)のみではなく、また、相違点1及び2に相当する本件発明1の技術的事項を当業者が容易になし得たものであるということはできず、さらに、甲4の上記記載事項はアルカリ処理に際しての水分量に関するものであるから、かかる記載事項を根拠にアルカリ化されないものである本件発明1の進歩性を否定することはできない。
また、温度などの製造条件を適宜変えることによって色値が異なるカカオ製品を製造するは当業者が容易になし得ることであったとしても、そのことだけで、本件発明1の製造方法とすることが当業者が容易になし得た事項であるともいえない。
したがって、上記主張を採用することはできない。
本件発明2?9、11?26についても同様の主張をしているが、同様に採用することはできない。

ii 特許異議申立人Bの主張について
特許異議申立人Bは、意見書(5頁下から2行?18頁16行)において、
(i)訂正発明19と甲1発明2とは、(相違点1)前者の製造工程において「加熱後のカカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」と規定されているのに対し、後者の製造工程において「カカオ豆のニブ水分を8?30重量%に加水調整した後」と規定されている点、(相違点2)前者のカカオ製品について色値及びpHが規定されているのに対し、後者にそのような規定がない点で相違するが、訂正発明19はいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームによって規定される発明であるから、訂正発明19に係るカカオ製品と、甲1発明2に係るカカオマスとが物として同一であれば、訂正発明19の新規性は甲1発明2によって否定されるが、カカオ製品の含水率について、両者の差は、例えば、訂正発明19が31.25%であり甲1発明2が30%である場合には、1.25%であり、微差に過ぎず、両発明から得られるカカオ製品は、物としては同一である蓋然性が高いこと、仮に、訂正発明19と、甲1発明2とが相違するとしても、カカオ製品の製造工程において、原料中の水分量等を適宜調整することで、色値やpHが異なるカカオ製品を製造することは当業者が容易になし得ることであること、
(ii)訂正発明19と甲5発明2とは、(相違点1’)前者の製造工程において「加熱後のカカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」と規定されているのに対し、後者にそのような規定がない点、(相違点2’)前者のカカオ製品について色値及びpHが規定されているのに対し、後者にそのような規定がない点で相違するが、訂正発明19はいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームによって規定される発明であるから、訂正発明19に係るカカオ製品と甲5発明2に係るカカオマスとが物として同一であれば、訂正発明19の新規性は甲5発明2によって否定されるが、甲5には、加熱後のカカオニブの含水率が20?30%であることが記載されており、カカオ製品の含水率について、両者の差は、例えば、訂正発明19が31.25%であり甲1発明2が30%である場合には、1.25%であり、微差に過ぎず、両発明から得られるカカオ製品は、物としては同一である蓋然性が高いこと、仮に、訂正発明19と、甲5発明2とが相違するとしても、カカオ製品の製造工程において、原料中の水分量等を適宜調整することで、色値やpHが異なるカカオ製品を製造することは当業者が容易になし得ることであること、
(iii)訂正発明19と甲5発明3とは、(相違点1’’)前者はカカオ製品の製造工程が規定されているのに対し、後者にそのような規定がない点で相違するが、両発明から得られるカカオ製品のL値、C値、H値、pHの値が重複・一致するため、訂正発明19と甲5発明3とは、依然として物としては同一であり、仮に、訂正発明19と、甲5発明3とが相違するとしても、カカオ製品の製造工程において、原料中の水分量等を適宜調整することで、色値やpHが異なるカカオ製品を製造することは当業者が容易になし得ることであること、
(iv)訂正発明19と甲6発明2とは、(相違点1’’’)前者の製造工程において「加熱後のカカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」と規定されているのに対し、後者の製造工程において「加熱後のカカオ製品の含水率が23.0重量%である」点、(相違点2’’’)前者のカカオ製品について色値及びpHが規定されているのに対し、後者にそのような規定がない点で相違するが、カカオ製品の含水率について、両者の差は、例えば、訂正発明19が31.25%であり甲6発明2が23.0%である場合には、8.25%であり、微差に過ぎず、そうすると、訂正発明19と甲6発明2とは、カカオ製品の含水率のみが、わずかに8.25%異なるだけであるから、両発明から得られるカカオ製品は、物としては同一である蓋然性が高いこと、仮に、訂正発明19と、甲6発明2とが相違するとしても、カカオ製品の製造工程において、原料中の水分量等を適宜調整することで、色値やpHが異なるカカオ製品を製造することは当業者が容易になし得ることを主張する。
しかし、
(i)上記(ウ)i(なお、(ウ)の冒頭に記載した前提の点にも留意されたい。以下iiの項目において同様。)において検討したとおり、本件発明19と甲1発明2との相違点は上記相違点1及び2に対応する相違点(相違点19-1-1、19-1-3、19-1-4及び19-1-5)のみではなく、また、相違点1及び2に対応する相違点は実質的な相違点であり(たとえ水分含量の差が小さくても上記前提からみて実質的な相違点でないとはいえない。)、相違点1及び2に対応する技術的事項を含む本件発明19が当業者が容易になし得たものであるということはできず、また、カカオ製品の製造工程において、原料中の水分量等を適宜調整することで、色値やpHが異なるカカオ製品を製造することがあったとしても、そのことだけで、本件発明19のカカオ製品とすることが当業者が容易になし得た事項であるともいえず、
(ii)上記(ウ)iiiにおいて検討したとおり、本件発明19と甲5発明2との相違点は、相違点1’及び2’に対応する相違点(相違点19-5-1、19-5-3、19-5-4及び19-5-5)のみではなく、また、相違点1’に対応する相違点は実質的な相違点であり、相違点1’に対応する技術的事項及び相違点19-5-2に係る技術的事項を含む本件発明19が当業者が容易になし得たものであるということはできず、また、カカオ製品の製造工程において、原料中の水分量等を適宜調整することで、色値やpHが異なるカカオ製品を製造することがあったとしても、そのことだけで、本件発明19のカカオ製品とすることが当業者が容易になし得た事項であるともいえず、
iii)上記(ウ)ivにおいて検討したとおり、相違点1’’に対応する本件発明19と甲5発明3との相違点(相違点19-5-2’)については、実質的な相違点であり、相違点1’’に対応する技術的事項を含む本件発明19が当業者が容易になし得たものであるということはできず、また、カカオ製品の製造工程において、原料中の水分量等を適宜調整することで、色値やpHが異なるカカオ製品を製造することがあったとしても、そのことだけで、本件発明19のカカオ製品とすることが当業者が容易になし得た事項であるともいえず、
iv)上記(ウ)vにおいて検討したとおり、本件発明19と甲6発明2との相違点は、相違点1’’’及び2’’’に対応する相違点(相違点19-6-1、19-6-3、19-6-4、19-6-5)のみではなく、また、相違点1’’’及び2’’’に対応する相違点は実質的な相違点であり、相違点1’’’及び2’’’に対応する技術的事項を含む本件発明19が当業者が容易になし得たものであるということはできず、また、カカオ製品の製造工程において、原料中の水分量等を適宜調整することで、色値やpHが異なるカカオ製品を製造することがあったとしても、そのことだけで、本件発明19のカカオ製品とすることが当業者が容易になし得た事項であるともいえない、
から、上記主張はいずれも採用できない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、理由2、3には理由がない。

(3)理由Aについて
ア 判断
(ア)について
本件訂正により、請求項1において、工程(a)?(e)をこの順で含むことが特定され、各工程において得られるカカオ製品が「滅菌カカオ製品」、「混合カカオ製品」、「反応カカオ製品」、「濃いカカオ製品」と特定され、「濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」と特定されたから、各「カカオ製品」がどのようなものであるか、各「カカオ製品」の相互関係は明確であり、(e)工程で「濃いカカオ製品」が得られるから、それが最終的な目的物である「濃いカカオ製品」であることは明確であり、カカオ製品の色値が濃いカカオ製品のものであることも明確である。
したがって、請求項1の製造方法がどのような製造方法であり、また、どのような「カカオ製品」を製造するのかが明らかである。
請求項19においても同様の訂正がなされているから、請求項19についても同様であり、請求項1又は19を直接的又は間接的に引用する請求項2?9、11?18、20?26についても同様である。

(イ)について
本件訂正により、請求項1において「加熱後の」との記載は存在しないものとなった。
そして、請求項1において「(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含み、反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」と、請求項13において「前記工程(c)が、少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程を更に含む」と、請求項14において「前記工程(c)が、2回目の、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃に加熱する工程を更に含む」と、請求項15において「前記工程(c)が、2回目の、少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程を更に含む」と、それぞれ特定されたから、加熱後に温度を低下させる場合及び複数回加熱、温度低下を繰り返す場合であっても、工程(c)で得られる反応カカオ製品の含水率が特定されていることは明確である。
請求項19においても同様の訂正がなされているから、請求項19についても同様であり、請求項1又は19を直接的又は間接的に引用する請求項2?9、11?18、20?26についても同様である。

イ まとめ
以上のとおりであるから、理由Aには理由がない。

(4)理由Bについて
ア 判断
(ア)本件明細書の記載
本件明細書には以下の記載がある。
「【0007】
アルカリ化処理を使用して、より濃いおよび/またはより赤みがかったカカオ製品を製造することができるが、アルカリ化剤の存在は、そのようなカカオ製品の表示にも影響を及ぼす。そのようなアルカリ化カカオ製品は、「アルカリで処理されている」と表示されることが多い。そのため、アルカリ化剤の存在は、そのようなカカオ製品を「天然」と見なすことができないことを意味しており、消費者は「全てが天然の」製品を求めている。いくつかの天然カカオ製品が存在しているが、これら天然カカオ製品のほとんどは色が薄い褐色である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、アルカリ化カカオ製品の色を持つが、それにもかかわらず「天然」と見なされるカカオ製品へのニーズが高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要約
様々な実施形態それぞれにおいて、本発明はこのニーズを満たすのに役立ち、アルカリ化カカオ製品の色を有する「天然」カカオ製品の製造方法を開示する。そのような方法で製造されている天然カカオ製品も開示される。
【0010】
一実施形態では、濃い天然カカオの製造方法は、カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品と水とを混合する工程、カカオ製品および水を少なくとも85℃の温度に加熱する工程、カカオ製品を乾燥させる工程、ならびにカカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む。カカオ製品は、この方法中にアルカリ化されない。
【0011】
更なる実施形態では、天然カカオ製品は、約9?約26のL値、約14?約29のC値、約40?約57のH値およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される色値を有する。天然カカオ製品は約6未満のpHも有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
一実施形形態では、濃い天然カカオが製造される。このカカオは濃赤色または濃褐色であることができる。このカカオは、カカオニブ、殻が剥かれたカカオ豆、カカオリカー、カカオケーキまたはカカオ粉末であることができる。
【0013】
更なる実施形態では、濃い天然カカオの製造方法は、カカオニブ、カカオ豆またはこれらの組み合わせと水とを混合する工程、およびこの混合物を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含む。この方法は、カカオニブ、カカオ豆またはこれらの組み合わせを乾燥させること、およびカカオニブ、カカオ豆またはこれらの組み合わせを磨り潰してカカオリカーを製造することを更に含む。カカオ製品はアルカリ化されない。水中におけるカカオケーキの水分は約35%?約40%であることができる。水とカカオニブ、カカオ豆またはこれらの組み合わせとを、約90℃?130℃の温度または約90℃?約120℃の温度に加熱することもできる。
【0014】
別の実施形態では、カカオニブ、カカオ豆またはこれらの組み合わせと水とに、少なくとも0.5Barそして約4Barまでの圧力をかけることができる。カカオニブ、カカオ豆またはこれらの組み合わせを、約0分?300分の時間にわたりまたは約30分?約240分の時間にわたり反応させることができる。
【0015】
カカオ製品を乾燥させ、任意選択的に磨り潰してカカオリカーにすることができる。このカカオリカーを圧搾してカカオバターおよびカカオケーキにすることができる。このカカオケーキを磨り潰してカカオ粉末にすることもでき、このカカオ粉末は、最小でも98%が200メッシュスクリーンを通る粉末度を有することができる。
【0016】
ある実施形態では、カカオ製品はCameroon起源、Ivory Coast起源であることができ、その他の実施形態ではその他の起源であることができる。
【0017】
更に追加の実施形態では、ニブ、殻が剥かれた豆またはこれらの組み合わせを滅菌する。
【0018】
更なる実施形態では、カカオ製品を焙煎することができる。焙煎したカカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造することができる。このカカオリカーをカカオバターおよびカカオ圧搾ケーキに分離することができ、またはこのカカオリカーを脱脂することができる。このカカオ圧搾ケーキを更に磨り潰してカカオ粉末にすることができる。この方法により、濃い色を有する天然カカオ製品が得られ、そのようなカカオ製品は通常、赤色、褐色および赤褐色であることができる。
【0019】
別の実施形態では、本発明の天然カカオ製品は、約26.0未満のL値を有するカカオ製品を意味する濃い色を有することができる。その他の実施形態では、天然カカオ製品は、約9?約25(これらの値の中間値も含む)のL値を有することができる。天然カカオ製品は、約15?約28(これらの値の中間値も含む)のC値を有することもできる。天然カカオ製品は、約40?55(これらの値の中間値も含む)のH値を有することもできる。天然カカオ製品は、約7未満の、約6未満のまたは約5?約6のpHを有することもできる。カカオ製品はカカオリカーまたはカカオ粉末であることができる。
【0020】
一実施形態では、本明細書に記載する方法の出発物質は、殻が実質的に除去されている、破壊されているおよび/または吹き飛ばされている任意の適切なカカオ豆の断片/製品を意味する、殻が剥かれたカカオ豆であることができる。殻が剥かれたカカオ豆の非限定的な例として、ニブ、仁(kernel)および子葉が挙げられるがこれらに限定されない。殻が剥かれたカカオ豆は典型的には、商業的に許容される誤差内であるほんのわずかな混入殻を含む。なぜならば、殻を剥く処理は100%完全ではないからである。
【0021】
追加の実施形態では、本発明の天然カカオ製品を製造するのに使用するカカオ豆は十分に発酵されている。更なる実施形態では、本発明の天然カカオ製品を製造するのに使用するカカオ豆は不十分な発酵または未発酵である。」
「【0023】
カカオ製品の色を測定するための多くの客観的方法が知られている。Hunter表色系またはCIE 1976(CIELAB)および同様の系である一つの方法では、下記の3つのパラメータの観点で色を説明することができる:明度(L)-色の明るい外観または暗い外観、L値が低い程、カカオ粉末はより濃く見えるようになる;彩度(C)-鮮やかな色またはくすんだ色を識別するための色の強度、C値が高い程、粉末はより鮮やかになる;および色相(H)、赤色、黄色または青色等の日常の言葉での色を意味する。カカオ製品の場合、低いH値は赤色を示し、高いH値は褐色を示す。
【0024】
本発明のカカオ製品のC値は、約29未満、約28未満、約27未満、約26未満、約25未満、約24未満、約23未満、約22未満、約21未満、約20未満、約19未満、約18未満、約17未満、約16未満、約15未満および約14未満またはそれ以下であることができ、これらの値の中間値も含む。C値は、約14?約29の範囲であることもでき、約15?約28の範囲であることもでき、または数字29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15および14により囲まれるあらゆる範囲であることもできる。
【0025】
本発明のカカオ製品のL値は、約9?約26の範囲であることができ、約10?約25の範囲であることができ、または数字26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10および9により囲まれるあらゆる範囲であることができる。
【0026】
本発明のカカオ製品のH値は、約40?約57の範囲であることができ、約50?55の範囲であることができ、または数字40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56および57で囲まれるあらゆる範囲であることができる。
【0027】
用語「赤色(red)」または「より強い赤色(redder)」および「より強い赤色(more red)」は相対的な用語であり、他の参照カカオ製品よりも低いH値を有する、H値がおよそ約40?約45(CIE 1976)の範囲内であるカカオ製品を意味する。用語「褐色(brown)」および「より強い褐色(browner)」および「より強い褐色(more brown)」は相対的な用語であり、他の参照カカオ製品よりも高いH値を有する、およそ約45?約55(CIE 1976)の範囲内のH値を有するカカオ製品を意味する。
【0028】
CIE 1976表色系は、L座標、「a^(*)」座標および「b^(*)」座標という観点で色を説明する。L座標は明度の値と一致しており、a^(*)座標およびb^(*)座標から、彩度および色相を下記のように算出することができる:C^(*)={(a^(*2)+b^(*2))の平方根}、H=逆タンジェント(b^(*)/a^(*))。」
「【0031】
下記の実施例は、本開示内の組成物の様々な非限定的実施形態を例示しており、本明細書に記載されているかまたは特許請求されていない限り、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0032】
実施例
試験1?8。
Ivory Coast豆から製造した25kgの量のカカオニブを、1Barの圧力で直接水蒸気により15?20分にわたりDrais反応器中で滅菌した。滅菌後、反応器を開いて通気した。
【0033】
5kg(カカオニブの20重量パーセント)の温かい水道水(65?70℃)を反応器中のカカオニブに添加し、反応器を閉じた。直接水蒸気を反応器中に注入し、カカオニブを所望の反応温度の約100℃まで加熱した。カカオニブを、そのような条件下で100℃において30分にわたり反応させた。30分後、反応器を通して空気をブローすることにより、カカオニブの温度を90℃まで低下させた。水蒸気により、カカオニブを100℃の反応温度まで再加熱した。さらに30分の反応後、反応器を通して空気をブローすることにより、カカオニブの温度を90℃まで低下させた。反応器中のカカオニブの全反応時間が240分になるまで、100℃までの加熱および90℃までの低下のプロセスを繰り返した。表1に列挙した時間間隔または反応時間で、即ち0?240分で、カカオニブの試料を反応容器から取り出した。この反応は、大気圧で、出口弁が開いている状態で行った。反応器のジャケットの温度および水蒸気注入を使用して、反応中の温度を制御した。
【0034】
表1で規定した時間にわたり反応させた後、カカオニブの試料を反応器から取り出した。Retsch実験室用流動床乾燥器(ジェット焙煎)中でカカオニブを乾燥させた。乾燥中、カカオニブの含水率を約35?40%から2.5%未満まで低下させた。
【0035】
乾燥させたカカオニブを磨り潰してカカオリカーにし、このカカオリカーを圧搾してカカオケーキおよびカカオバターにした。このカカオケーキをより小さな断片に砕き、直径が0.5mmの孔を有する篩を使用するRetsch切断ミルで微粉砕してカカオ粉末にした。
【0036】
カカオリカーの色(脱脂したリカー)、pHおよび水分を測定した。pH、含水率、脂肪含有量および水中での固有の色に関してカカオ粉末を分析した。圧搾したカカオバターをろ過し、遊離脂肪酸およびヨウ素価に関して分析した。分析の結果および具体的な処理条件を下記の表に示す。
【0037】
【表1】


【0038】
【表2】


【0039】
試験9?19。
25kgの量のカカオニブを、1Barの圧力で直接水蒸気により15?20分にわたりDrais反応器中で滅菌した。滅菌後、反応器を開いて通気した。
【0040】
5kg(カカオニブの20重量パーセント)の温かい水道水(65?70℃)を反応器中のカカオニブに添加し、反応器を閉じた。直接水蒸気を反応器中に注入し、カカオニブを所望の反応温度まで加熱した。水蒸気入り口弁を閉じて空気入り口弁を開き、約3Barの圧力に達するように反応器中に更なる空気を注入した。カカオニブを、そのような条件下で、表3および表4で規定した温度(120?140℃の範囲)および時間(0?240分の範囲)において反応させた。反応器のジャケットの温度を使用して反応中の温度を制御した。反応後、空気入り口弁を閉じて出口弁を開くことより反応器を通気し、カカオニブへの圧力を解放した。開口した出口弁を介して空気を反応器中に注入し、反応器中のカカオニブの温度を約80℃まで低下させた。
【0041】
試験の内のいくつかに関して、出口弁を閉じて所望の反応温度まで水蒸気を導入し、反応器を通気する手順を数回繰り返した。120?140℃の範囲であるジャケットの温度により、反応中のカカオニブの温度を制御した。反応器中のカカオニブの平均反応温度は、0?240分の反応時間中に120℃であった。表3および表4に列挙した時間間隔または反応時間で、即ち0?240分で、カカオニブの試料を反応器から取り出した。
【0042】
反応後、反応器を通気してカカオニブの試料(試験9?19)を反応器から取り出した。
【0043】
カカオニブをRetsch実験室用流動床乾燥器(ジェット焙煎)中で乾燥させた。乾燥中、カカオニブの含水率を約35?40%から2.5%未満まで低下させた。
【0044】
乾燥させたカカオニブを磨り潰しカカオリカーにし、このカカオリカーを圧搾してカカオケーキおよびカカオバターにした。このカカオケーキをより小さな断片に砕き、直径が0.5mmの孔を有する篩を使用するRetsch切断ミルで微粉砕してカカオ粉末にした。
【0045】
カカオリカーおよびカカオ粉末の色、pHおよびその他のパラメータを測定した。分析の結果および実施した具体的な処理条件を表3?5に示す。
【0046】
【表3】


【0047】
【表4】


【0048】
【表5】



(イ)本件発明の課題
本件明細書等の全ての記載事項、特に【0007】、【0008】及び出願時の技術常識からみて、本件発明1?26の解決しようとする課題は、アルカリ化カカオ製品の有する濃い色を持つが、アルカリで処理されておらず、当業界において「天然」と表示できるカカオ製品及びその製造方法を提供することと認める。そして、濃い色とは、請求項1に特定されるL値、C値及びH値からなる色値を満足するものと認める。

(ウ)判断
本件明細書等には、一般的な記載として、【課題を解決するための手段】として、【0009】?【0011】に本件発明1で特定される一部の工程が記載されているが、それらの工程が本件発明1の課題と技術的にどのような関係を有しているかは必ずしも明らかではない。また、【0012】?【0022】、【0023】?【0028】には、発明を実施するための形態として製造方法、色等に関する一般的な記載があるが、これらの記載についても、製造方法が本件発明1の課題と技術的にどのような関係を有しているかは必ずしも明らかではない。
そこで、実施例の記載をみると、本件発明1の各工程を備えた試験3?8、10?13、16?19について、得られたカカオ製品の色値が本件発明1の要件を満たすこと、すなわち、濃い色を有することが確認でき、上記課題を解決できるといえる。
一方、加熱による反応を行わないため、本件発明1に相当しないと認められる試験1、9、15のカカオ製品は、色値が本件発明1の特定事項を満たさない、すなわち、濃い色を有するとはいえないから、上記課題を解決することができるとはいえない。
したがって、上記した一般的な記載とそれを具体化した上記実施例の記載を参酌すれば、当業者は、本件発明1が上記課題を解決できると認識できる範囲内のものであると認識するといえる。

試験2の製品は、反応条件としては、本件発明1の特定事項を満たすにもかかわらず、色値(L値)が22.09(リカー)であり、本件発明1の9?21の範囲になく、上記課題を解決できると認識できないことについて検討する。
ここで、試験2のL値の本件発明1とのずれは約1である。本件明細書に記載の試験10?13と16?19は試験に供したカカオニブの種類が相違する一方、滅菌処理、反応の条件はほぼ同様である(表3、4)ところ、製造されたカカオリカーのL値は最大で約0.9異なる。また、試験1と試験15とはいずれも加熱を行わないものであるところ、試験に供したカカオニブが同じ「100%Ivory Coast-1カカオニブ」であるにもかかわらず、その処理前の水分、遊離脂肪酸%は異なり、得られたカカオリカーのL値は約1異なる。
してみると、試験2においてL値が本件発明1の範囲から1程度ずれてはいるが、その程度の差異は、原料であるカカオニブ、カカオ豆等の有する特性により通常見られる程度のものといえるから、試験2と同様な試験においても、原料であるカカオニブとして適当なもの(例えば試験15のもの)を用いれば、L値が本件発明1の範囲内となり、上記課題を解決できると認識できるといえる。

また、試験14の製品は、反応条件としては、本件発明1の特定事項を満たさないにもかかわらず(反応後のニブの水分%)、色値が本件発明1の特定事項を満たすことについては、試験14の試験は、本件発明1で特定されていない真空乾燥を行うものであるところ、本件発明1の発明特定事項にない製造条件を経て製造されたカカオ製品が、本件発明1で特定される色を有していたとしても、製造条件が異なる以上、サポート要件の判断について本件発明1とは無関係であるといえるから、試験14の存在によって、本件発明1が上記課題を解決できると認識できる範囲内のものであることを否定することはできない。

したがって、本件発明1は発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
本件発明2?9、11?14、16?26についても同様である。

イ まとめ
以上のとおりであるから、理由Bには理由がない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由A1、A2(申立理由A1が、請求項1?5、7?9、11、13?26について、申立理由A2が、請求項1?9、11?26について、いずれも甲3を主引例とする理由である点、請求項12について、甲2Aも理由の根拠としている点)について
特許異議申立人Aは、申立理由A1について、請求項1?5、7?9、11、13?26について、申立理由A2について、請求項1?9、11?26について、いずれも甲3を主引例とする理由を主張しているが、これらの理由については、上記1(2)イで述べたことから、理由がない。
また、請求項12について、甲2Aに流動床ロースター(ジェット焙焼)についての記載があることを理由に進歩性がない旨主張しているが、上記1(2)イ(ア)ii及び(イ)で述べたとおりであるから、流動床ロースター(ジェット焙焼)の点にかかわらず、本件発明12の進歩性を否定することはできない。
さらに、請求項1について、加熱後のカカオ製品の含水率を特定する訂正がなされる場合を想定して、請求項1に係る発明は、甲1、3及び4Aを組み合わせて容易に発明をすることができたものであることも主張しているが、想定された請求項1のとおりの訂正はされていないので、かかる主張は採用することができない。なお、甲4Aにはアルカリ処理であるニブアルカリ処理法に関して記載されているに過ぎない一方、本件発明はアルカリ化されていないものに関するから、甲4Aを本件発明の進歩性否定の根拠とすることはできない。
したがって、申立理由A1、A2には理由がない。

(2)申立理由B1、B2(主引用例が甲2B、甲4Bである場合、申立理由B1、B2が、請求項1?9、11?18について甲1、3、5、6の全て、請求項19?26について甲1、3、5?7の全てを主引用例とする点、申立理由B2が、甲1、3、6を主引用例とする請求項10、11については、甲4Bも理由の根拠としている点)について
ア 本件発明1について
(ア)甲2B発明1について
本件発明1と甲2B発明1とを対比する。
甲2B発明1の「生カカオマスを生成物として得る方法」は本件発明1の「カカオ製品の製造方法」に相当する。
甲2B発明1は「生のカカオ豆からカフェインおよびテオブロミンを含む実質的にすべての水溶性材料を分離しそのことによってカカオ豆の水抽出物および多量の湿潤カカオ豆を生成する連続の水抽出工程」を含むところ、「水抽出は、(1) 豆は最初に約45℃?約55℃の水で抽出され、(2) これに続いて約90℃?約105℃の水で約4?5回抽出される、2つの全く異なる温度での連続工程によって実施され」るから、この工程は、本件発明1の工程(b)及び(c)と、「(b)カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程」及び「(c)前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含む、工程」である点で共通する。
甲2B発明1は「水抽出工程後に残った湿ったカカオ豆を徐々に乾燥させ」るところ、この工程は、本件発明1の工程(d)と、「(d)カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程」である点で共通する。
甲2B発明1は「磨砕して生カカオマスとして知られる生成物を得る」ものであるところ、カカオ豆を磨り潰した際にカカオリカーが生成すること、カカオリカーが固化したものをカカオマスということは本件優先日における技術常識であるから、この工程は、本件発明1の工程(e)と「(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程」である点で共通する。
甲2B発明1は以上の工程を順に含むものである。
甲2B発明1はアルカリ化する工程を含まないところ、アルカリ化を行わずにカカオ製品を製造することは甲8?甲10に記載されるとおり(摘示8a、8b、9a、10a)周知であるから、甲2B発明1がアルカリ化するものではないとすることに技術的に何ら不合理な点はない。したがって、甲2B発明1は本件発明1と、カカオ製品が方法中にアルカリ化されない点で一致する。

したがって、本件発明1と甲2B発明1とは、
「カカオ製品の製造方法であって、以下の工程(b)?(e):
(b)カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、
(c)前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含む、工程、
(d)カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含み、
前記カカオ製品が前記方法中にアルカリ化されない、方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1-2B-1:最終的な製造対象の「カカオ製品」について、本件発明1は「濃い」と特定しているのに対し、甲2B発明1は「濃い」と特定していない点

相違点1-2B-2:本件発明1は「(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程」を含むと特定し、工程(b)の原料のカカオ製品を「前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品」と特定しているのに対し、甲2B発明1はそのような特定をしていない点

相違点1-2B-3:工程(c)について、本件発明1は「前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって」、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」と特定し、工程(d)の原料のカカオ製品を「前記工程(c)で得た反応カカオ製品」と特定しているのに対し、甲2B発明1はそのような特定をしていない点

相違点1-2B-4:工程(e)で得られるカカオ製品について、本件発明1は「濃い」と特定しているのに対して、甲2B発明1はそのような特定をしていない点

相違点1-2B-5:本件発明1は「前記濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」と特定しているのに対し、甲2B発明1はそのような特定をしていない点

上記相違点について検討する。
相違点1-2B-2について
相違点1-2B-2は滅菌カカオ製品に関するものであるところ、甲1には、カカオ豆を滅菌することについての記載はない。
したがって、相違点1-2B-2は実質的な相違点である。

相違点1-2B-3について
甲2B発明1における、水抽出工程は、「(1) 豆は最初に約45℃?約55℃の水で抽出され、(2) これに続いて約90℃?約105℃の水で約4?5回抽出される、2つの全く異なる温度での連続工程によって実施され」るとされており、本件発明1及び甲2B発明1はいずれも混合カカオ製品を一定の温度に加熱している点で共通するから、甲2B発明1は本件発明1と同様に、反応カカオ製品を得ているといえる。また、反応時間について、20分間の抽出を繰り返し行うことが具体的に記載されているから(摘示2Bb、2Bc)、30分以上反応させているといえる。しかし、甲2Bには、水抽出工程後の含水率についての記載はなく、水抽出後の含水率が31.25%?40.4%の間であるという本件優先日における技術常識もない。
したがって、相違点1-2B-3は実質的な相違点である。

また、甲8?10には、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」とすることは記載も示唆もされておらず、それらが周知の技術的事項であるともいえない。
したがって、甲2B発明1において、相違点1-2B-3に係る本件発明1の技術的事項を採用することが、当業者が容易になし得た事項であるとすることはできない。

相違点1-2B-1、1-2B-4、1-2B-5について
相違点1-2B-1、1-2B-4の「濃い」とはカカオ製品の色についての特定であり、相違点1-2B-5におけるL値、C値、H値の特定と関連するから、これらの相違点について合わせて検討する。
これらの相違点はいずれも色に関するものであるところ、甲2Bには、「濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」ことについて記載も示唆もない。
当該色は本件発明1で特定される工程を有する製造方法によって得られたカカオ製品が有する色であるといえるが、本件発明1と甲2B発明1とで、上記「相違点1-2B-2について」、「相違点1-2B-3について」で述べた点において製造方法における工程の差異がある。
したがって、相違点1-2B-1、1-2B-4、1-2B-5は実質的な相違点である。

また、甲8?10には、「濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」ことについての記載も示唆もされておらず、それらが周知の技術的事項であるともいえない。

そして、本件発明1は、アルカリ化処理することなく、すなわち「天然」と表示できるカカオ製品であって、アルカリ化カカオ製品のような濃い色を持つカカオ製品が得られるという効果を奏するといえる(【0008】?【0009】)。

したがって、本件発明1は甲2Bに記載された発明であるということはできず、また、相違点1-2B-2について検討するまでもなく、甲2B、8?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

なお、本件訂正により、本件特許時の請求項10に係る特定事項が本件発明1の発明特定事項となっているところ(滅菌する点)、特許異議申立人Bは本件特許時の請求項10に対し、甲4B、5に滅菌に関する記載があることを理由に新規性進歩性が否定される旨主張しているが、上述のとおりであるから、滅菌する点(相違点1-2B-2)に関わらず、本件発明1の新規性進歩性を否定することはできない。

(イ)甲4B発明1について
本件発明1と甲4B発明1とを対比する。
甲4B発明1の「カカオマスを収得する方法」は本件発明1の「カカオ製品の製造方法」に相当する。
甲4B発明1の「カカオ豆を温度130 ?400 ℃、圧力3?10kg/cm^(2) の過熱蒸気で加熱、殺菌」する工程は、本件発明1の「(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程」に相当する。
甲4B発明1の「30?150 ℃の温風乃至熱風で急速に乾燥させ」る工程は、本件発明1の工程(d)と「(d)カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程」である点で共通する。
甲4B発明1は「カカオマスを収得する方法」であるところ、カカオ豆を磨り潰した際にカカオリカーが生成すること、カカオリカーが固化したものをカカオマスということは本件優先日における技術常識であるから、この工程は、本件発明1の工程(e)と「(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程」である点で共通する。
甲4B発明1は以上の工程を順に含むものである。
甲4B発明1はアルカリ化する工程を含まないところ、アルカリ化を行わずにカカオ製品を製造することは甲8?甲10に記載されるとおり(摘示8a、8b、9a、10a)周知であるから、甲4B発明1がアルカリ化するものではないとすることに技術的に何ら不合理な点はない。したがって、甲4B発明1は本件発明1と、カカオ製品が方法中にアルカリ化されない点で一致する。

したがって、本件発明1と甲4B発明1とは、
「カカオ製品の製造方法であって、以下の工程(a)、(d)、(e):
(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程;
(d)カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含む、方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1-4B-1:最終的な製造対象の「カカオ製品」について、本件発明1は「濃い」と特定しているのに対し、甲4B発明1は「濃い」と特定していない点

相違点1-4B-2:本件発明1は「(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程」、「(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含み、反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である、工程」を含むと特定し、工程(d)の原料のカカオ製品を「前記工程(c)で得た反応カカオ製品」と特定しているのに対し、甲4B発明1はそのような特定をしていない点

相違点1-4B-3:工程(e)で得られるカカオ製品について、本件発明1は「濃い」と特定しているのに対して、甲4B発明1はそのような特定をしていない点

相違点1-4B-4:本件発明1は「前記濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」と特定しているのに対し、甲4B発明1はそのような特定をしていない点

上記相違点について検討する。
相違点1-4B-2について
甲4Bには、殺菌後にカカオ製品を水と混合して混合カカオ製品とすることについて記載も示唆もない。
したがって、相違点1-4B-2は実質的な相違点である。
甲4Bには、「蒸気殺菌により、殻の水分は当初10%程度であったものが、30?50%程度まで上昇する。」との殺菌における水分に関する記載があるが(摘示4Bc)、胚乳中の水分の上昇が好ましくない旨の記載と共に、「そこで、殺菌直後のカカオ豆を直ちに乾燥工程に移す。」との記載がある(摘示4Bc)から、当業者は殺菌後、直ちに乾燥すべきであると理解するのであり、甲4B発明1の殺菌後に、(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程」、「(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含み、反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である、工程」を行うことが当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
また、甲8?10には、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」とすることは記載も示唆もされておらず、それらが周知の技術的事項であるともいえない。
したがって、甲4B発明1において、相違点1-4B-2に係る本件発明1の技術的事項を採用することが、当業者が容易になし得た事項であるとすることはできない。

相違点1-4B-1、1-4B-3、1-4B-4について
相違点1-4B-1、1-4B-3の「濃い」とはカカオ製品の色についての特定であり、相違点1-4B-4におけるL値、C値、H値の特定と関連するから、これらの相違点について合わせて検討する。
これらの相違点はいずれも色に関するものであるところ、甲4Bには、「濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」ことについて記載も示唆もない。
当該色は本件発明1で特定される工程を有する製造方法によって得られたカカオ製品が有する色であるといえるが、本件発明1と甲2B発明1とで、上記「相違点1-4B-2について」で述べた点において製造方法における工程の差異がある。
したがって、相違点1-4B-1、1-4B-3、1-4B-4は実質的な相違点である。

また、甲8?10には、「濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する」ことについて記載も示唆もされておらず、それらが周知の技術的事項であるともいえない。

そして、本件発明1は、アルカリ化処理することなく、すなわち「天然」と表示できるカカオ製品であって、アルカリ化カカオ製品のような濃い色を持つカカオ製品が得られるという効果を奏するといえる(【0008】?【0009】)。

したがって、本件発明1は甲4Bに記載された発明であるということはできず、また、甲4B、8?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

なお、本件訂正により、本件特許時の請求項10に係る特定事項が本件発明1の発明特定事項となっているところ(滅菌する点)、特許異議申立人Bは本件特許時の請求項10に対し、甲4B、5に滅菌に関する記載があることを理由に新規性進歩性が否定される旨主張しているので、念のため検討するに、上述のとおりであるから、滅菌する点に関わらず、本件発明1の新規性進歩性を否定することはできない。
同様に、特許異議申立人Bは、甲1、3、6を主引用例とする本件特許時の請求項10に対する特許異議申立理由について、甲4B、5に滅菌に関する記載があることを理由に、新規性進歩性が否定される旨主張するが、上記1(2)イ(ア)i、ii、iv及び1(2)イ(イ)で述べたとおりであるから、滅菌の点に関わらず、本件発明1の新規性進歩性を否定することはできない。

(ウ)甲6について
特許異議申立人Bは、本件発明1(?26)について、甲6に基づく進歩性否定の主張をしているが、上記1(2)イ(ア)ivで述べたとおり、相違点1-6-1、1-6-3?1-6-5に係る技術的事項は甲6に記載も示唆もされていないから、かかる主張は採用することができない。

イ 本件発明2?9、11?18について
本件発明2?9、13?18はいずれも本件発明1を直接的・間接的に引用し、さらに技術的事項を限定した発明であるから、本件発明1と同様に、甲2B、4Bに記載された発明であるということはできず、甲2B、4B、8?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
特許異議申立人Bは、甲2Bを主引用例とした理由について、本件特許時の請求項11に対し甲4B、5に滅菌に関する記載があることを理由に、同請求項12に対し甲5にジェット焙煎に関する記載があることを理由に、甲4Bを主引用例とした理由について、本件特許時の請求項12に対し甲5にジェット焙煎に関する記載があることを理由に、新規性進歩性が否定される旨主張しているが、上記(ア)で述べたとおりであるから、滅菌の点、ジェット焙煎の点に関わらず、上記各請求項に対応する本件発明11、12について、本件発明1と同様に、甲2B、4Bに記載された発明であるということはできず、甲2B、4B、5、8?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
また、特許異議申立人Bは、甲1、3、6を主引用例とする本件特許時の請求項11に対する特許異議申立理由について、甲4B、5に滅菌に関する記載があることを理由に、新規性進歩性が否定される旨主張するが、上記1(2)イ(ア)i、ii、iv及び1(2)イ(イ)で述べたとおりであるから、滅菌の点に関わらず、上記請求項11に対応する本件発明11について、本件発明1と同様に、新規性進歩性を否定することはできない。

ウ 本件発明19について
上記1(2)イ(ウ)で述べたのと同様の前提の下に判断する。

(ア)甲2B発明2について
本件発明19と甲2B発明2を対比する。
上記ア(ア)で述べたのと同様に対比すると、両者は、
「アルカリ化されていない、カカオ製品であって、以下の工程(b)?(e):
(b)カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、
(c)前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含む、工程、
(d)カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含む方法で得られる、カカオ製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点19-2B-1:最終的な「カカオ製品」について、本件発明19は「濃い」と特定しているのに対し、甲2B発明2は「濃い」と特定していない点

相違点19-2B-2:本件発明19は「(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程」を含むと特定し、工程(b)の原料のカカオ製品を「前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品」と特定しているのに対し、甲2B発明2はそのような特定をしていない点

相違点19-2B-3:工程(c)について、本件発明19は「前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって」、「反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である」と特定し、工程(d)の原料のカカオ製品を「前記工程(c)で得た反応カカオ製品」と特定しているのに対し、甲2B発明2はそのような特定をしていない点

相違点19-2B-4:工程(e)で得られるカカオ製品について、本件発明19は「濃い」と特定しているのに対して、甲2B発明2はそのような特定をしていない点

相違点19-2B-5:最終的な「カカオ製品」について、本件発明19は「9?21のL値、14?25のC値、および40?54のH値からなる色値、ならびに6未満のpHを有する」と特定しているのに対し、甲2B発明2はそのような特定をしていない点

上記相違点について検討する。
相違点19-2B-1、19-2B-4、19-2B-5は、カカオ製品の特性に関するものである一方、相違点19-2B-2、19-2B-3は製造方法に関するものであるといえる。
そして、相違点19-2B-1?19-2B-5は上記ア(ア)で示した相違点1-2B-1?1-2B-5と同様の相違点であるから(なお、相違点19-2B-5ではさらにpHの点が存在すると認める。)、その判断についても上記ア(ア)で述べたのと同様である(色値に関して、相違点1-2B-5とは異なり相違点19-2B-5では、CIE 1976表色系に基づく色座標であることが特定されていないが、判断に変わりはない。)。
また、本件発明19は、アルカリ化処理することなく、すなわち「天然」と表示できるカカオ製品であって、アルカリ化カカオ製品のような濃い色を持つカカオ製品が得られるという効果を奏するといえる(【0008】?【0009】)。

したがって、本件発明19は、甲2B発明2と実質的に相違し、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。

よって、本件発明19は甲2Bに記載された発明であるということはできず、甲2B、8?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(イ)甲4B発明2について
上記ア(イ)で述べたのと同様に対比すると、両者は、
「アルカリ化されていない、カカオ製品であって、以下の工程(a)、(d)、(e):
(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程;
(d)カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品からカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含む方法で得られる、カカオ製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点19-4B-1:最終的な「カカオ製品」について、本件発明19は「濃い」と特定しているのに対し、甲4B発明2は「濃い」と特定していない点

相違点19-4B-2:本件発明1は「(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程」、「(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含み、反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である、工程」を含むと特定し、工程(d)の原料のカカオ製品を「前記工程(c)で得た反応カカオ製品」と特定しているのに対し、甲4B発明2はそのような特定をしていない点

相違点19-4B-3:工程(e)で得られるカカオ製品について、本件発明1は「濃い」と特定しているのに対して、甲4B発明2はそのような特定をしていない点

相違点19-4B-4:最終的な「カカオ製品」について、本件発明19は「9?21のL値、14?25のC値、および40?54のH値からなる色値、ならびに6未満のpHを有する」と特定しているのに対し、甲4B発明2はそのような特定をしていない点

上記相違点について検討する。
相違点19-4B-1、19-4B-3、19-4B-4は、カカオ製品の特性に関するものである一方、相違点19-4B-2は製造方法に関するものであるといえる。
そして、相違点19-4B-1?19-4B-4は上記ア(イ)で示した相違点1-4B-1?1-4B-4と同様の相違点であるから(なお、相違点19-4B-4ではさらにpHの点が存在すると認める。)、その判断についても上記ア(イ)で述べたのと同様である(色値に関して、相違点1-4B-4とは異なり相違点19-4B-4では、CIE 1976表色系に基づく色座標であることが特定されていないが、判断に変わりはない。)。
また、本件発明19は、アルカリ化処理することなく、すなわち「天然」と表示できるカカオ製品であって、アルカリ化カカオ製品のような濃い色を持つカカオ製品が得られるという効果を奏するといえる(【0008】?【0009】)。

したがって、本件発明19は、甲4B発明2と実質的に相違し、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。

よって、本件発明19は甲4Bに記載された発明であるということはできず、甲4B、8?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

エ 本件発明20?26について
本件発明20?26はいずれも本件発明19を直接的・間接的に引用し、さらに技術的事項を限定した発明であるから、本件発明1と同様に、甲2B、4Bに記載された発明であるということはできず、甲2B、4B、8?10に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

オ 特許異議申立人Bは、申立理由B1、B2について、請求項1?9、11?18について甲1、3、5、6の全て、請求項19?26について甲1、3、5?7の全てを主引用例とする理由を主張しているが、この理由については、上記1(2)イで述べたことから、理由がない。

カ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由B1、B2には理由がない。

(3)申立理由B3について
ア (B31)の理由について
(B31)に関する主張は、本件特許時の請求項の記載に基づいてされたものであるところ、本件訂正により、本件発明1について、反応時間、反応工程後の反応カカオ製品の含水率、カカオ製品のL、C、H値、滅菌工程等が特定された。
本件明細書には、上記1(4)ア(ア)に示した記載があるところ、製造方法に関して、【0010】、【0012】?【0021】には、滅菌、混合、反応、加熱、水分量、加熱温度、乾燥、磨り潰し、色値に関して、本件発明1に対応する一般的な記載があり、本件発明1の製造方法に相当する具体的な方法が、実施例の試験3?8、10?13、16?19として記載されている。そして、当該実施例の試験間では、使用するカカオニブの種類、反応時間、水分量、反応時の圧力、反応温度が異なるところ、生成するカカオ製品の色(L、C、H値)が異なるものが生成していることが理解できるから、そのような製造条件を変えることで、カカオ製品の色を一定程度変化させることができることを当業者が理解できるといえる。
本件発明1においては、加熱する工程の温度の上限が特定されていないが、本件明細書の「約90℃?130℃の温度または約90℃?約120℃の温度に加熱することもできる」(【0013】)との記載を参酌すれば、その程度の温度に加熱することが理解できる。
してみれば、当業者は本件明細書の記載に基づいて、本件発明1を実施することができるといえるから、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。
本件発明2?9、11?18についても同様である。

イ (B32)の理由について
(B32)に関する主張は、本件特許時の請求項の記載に基づいてされたものであるところ、本件訂正により、本件発明19のカカオ製品が、本件発明1と同様の製造方法によって特定された。
そして、本件発明19において特定される色値は本件発明1で特定される色値と同様の色値である。
したがって、上記アで述べたのと同様の理由により、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明19を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。
本件発明20?26についても同様である。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由B3には理由がない。

(4)申立理由B4について
上記1(4)ア(イ)で示したとおり、本件発明の課題は、アルカリ化カカオ製品の有する濃い色を持つが、アルカリで処理されておらず、当業界において「天然」と表示できるカカオ製品及びその製造方法を提供することである。
また、本件明細書には、上記1(4)ア(ア)に示した記載がある。

ア (B41)の理由について
(B41)に関する主張は、本件特許時の請求項の記載に基づいてされたものであるところ、本件訂正により、本件発明1について、反応時間、反応工程後の反応カカオ製品の含水率、カカオ製品のL、C、H値、滅菌工程等が特定された。
本件明細書には、製造方法に関して、【0010】、【0012】?【0021】には、滅菌、混合、反応、加熱、水分量、加熱温度、乾燥、磨り潰し、色値に関して、本件発明1に対応する一般的な記載があり、本件発明1の製造方法に相当する具体的な方法が、実施例の試験3?8、10?13、16?19として記載されている。そして、当該実施例の試験間では、使用するカカオニブの種類、反応時間、水分量、反応時の圧力、反応温度が異なるところ、生成するカカオ製品の色(L、C、H値)が異なるものが生成していることが理解できるから、そのような製造条件を変えることで、カカオ製品の色を一定程度変化させることができることを当業者が理解できるといえる。
本件発明1においては、加熱する工程の温度の上限が特定されていないが、本件明細書の「約90℃?130℃の温度または約90℃?約120℃の温度に加熱することもできる」(【0013】)との記載を参酌すれば、その程度の温度に加熱することが理解できるところ、加熱温度が製造されるカカオ製品の色に影響することが出願時の技術常識であるといえること(【0006】)を考慮すれば、上記【0013】に記載された範囲を大きく逸脱する温度に加熱すると、上記課題を解決できなくなるであろうことは当業者が容易に理解するといえ、加熱温度に一定の上限があることも当業者が容易に理解するといえる。
してみれば、本件発明1は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲内のものであるといえる。
本件発明2?9、11?18についても同様である。

イ (B42)の理由について
(B42)に関する主張は、本件特許時の請求項の記載に基づいてされたものであるところ、本件訂正により、本件発明19のカカオ製品が、本件発明1と同様の製造方法によって特定された。
そして、本件発明19において特定される色値は本件発明1で特定される色値と同様の色値である。
したがって、上記アで述べたのと同様の理由により、本件発明19は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲内のものであるといえる。
本件発明20?26についても同様である。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由B4には理由がない。

(4)申立理由B5について
(B53)について、請求項16には、「前記工程(c)が、前記少なくとも0.5barの圧力を大気圧まで低下させる工程を更に含む請求項4に記載の方法。」と、請求項18には、「前記工程(c)が、2回目の、前記少なくとも0.5barの圧力を大気圧まで低下させる工程を更に含む請求項17に記載の方法。」と記載されているところ、これら各請求項が直接的・間接的に引用する請求項4には、「前記工程(c)が、工程(b)で得た前記混合カカオ製品に少なくとも0.5barの高圧をかける工程を更に含む請求項1または2に記載の方法。」と記載され、さらに、請求項4が引用する請求項1、2には、圧力に関する記載はない。
また、本件発明の実施態様を含むといえる実施例の各試験の手順を参酌すると、試験3?8では、反応時に特段の圧力操作は行っておらず、「この反応は、大気圧で、出口弁が開いている状態で行った。」と記載されており(【0033】?【0034】)、試験10?13、16?19では、「水蒸気入り口弁を閉じて空気入り口弁を開き、約3Barの圧力に達するように反応器中に更なる空気を注入した。・・・反応後、空気入り口弁を閉じて出口弁を開くことより反応器を通気し、カカオニブへの圧力を解放した。」と記載されている(【0040】?【0042】)ことから、これらの実施例では、大気圧下及び加圧下で反応を行っているといえる。
そして、本件明細書等には、減圧する等の記載は一切ない。
してみると、請求項4に記載の「高圧をかける」とは、大気圧に対して、それよりも高い圧力をかけることを意味すると解され、したがって、請求項16及び請求項18の「少なくとも0.5barの圧力を大気圧まで低下させる」とは、大気圧よりも少なくとも0.5bar高い圧力から大気圧まで圧力を低下させることを意味していることが理解できる。
してみると、本件発明16及び18は明確である。
したがって、申立理由B5には理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1?9、11?26に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1?9、11?26に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
特許異議申立ての対象であった請求項10は、訂正請求により削除されたので、請求項10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃いカカオ製品の製造方法であって、以下の工程(a)?(e):
(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程;
(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、
(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含み、反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である、工程、
(d)前記工程(c)で得た反応カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品から濃いカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含み、
前記カカオ製品が前記方法中にアルカリ化されず、
前記濃いカカオ製品がCIE 1976表色系に基づく色座標で9?21のL値、14?25のC値および40?54のH値を有する、方法。
【請求項2】
前記工程(e)が、前記カカオリカーを圧搾してカカオケーキおよびカカオバターを製造する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(e)が、前記カカオケーキを粉末に磨り潰す工程を更に含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(c)が、工程(b)で得た前記混合カカオ製品に少なくとも0.5barの高圧をかける工程を更に含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記混合カカオ製品に300分までの時間にわたり前記高圧をかける、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記混合カカオ製品に30分?240分の時間にわたり前記高圧をかける、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記高圧が0.5bar?4barである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(c)が、前記混合カカオ製品を90℃?130℃の温度に加熱する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(c)が、前記混合カカオ製品を90℃?120℃の温度に加熱する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
前記滅菌工程(a)が加圧下で起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(d)が、前記工程(c)で得た反応カカオ製品をジェット焙煎する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(c)が、少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(c)が、2回目の、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃に加熱する工程を更に含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記工程(c)が、2回目の、少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程を更に含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記工程(c)が、前記少なくとも0.5barの圧力を大気圧まで低下させる工程を更に含む請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記工程(c)が、2回目の、前記混合カカオ製品に少なくとも0.5barの圧力をかける工程を更に含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記工程(c)が、2回目の、前記少なくとも0.5barの圧力を大気圧まで低下させる工程を更に含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
9?21のL値、14?25のC値、および40?54のH値からなる色値、ならびに
6未満のpH
を有する、アルカリ化されていない、濃いカカオ製品であって、以下の工程(a)?(e):
(a)カカオニブ、カカオ豆およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカカオ製品を滅菌して滅菌カカオ製品を得る工程;
(b)前記工程(a)で得た滅菌カカオ製品と水とを混合して混合カカオ製品を得る工程、
(c)前記工程(b)で得た混合カカオ製品を30分以上反応させて反応カカオ製品を得る工程であって、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃の温度に加熱する工程を含み、反応工程後の反応カカオ製品の含水率が31.25%?40.4%の間である、工程、
(d)前記工程(c)で得た反応カカオ製品を乾燥させて乾燥カカオ製品を得る工程、ならびに
(e)前記工程(d)で得た乾燥カカオ製品から濃いカカオ製品を得る工程であって、前記乾燥カカオ製品を磨り潰してカカオリカーを製造する工程を含む、工程、
をこの順で含む方法で得られる、濃いカカオ製品。
【請求項20】
前記pHが5.0?6.0である、請求項19に記載の濃いカカオ製品。
【請求項21】
前記工程(e)が、前記カカオリカーを圧搾してカカオケーキおよびカカオバターを製造する工程及び前記カカオケーキを粉末に磨り潰してカカオ粉末を得る工程を更に含み、前記濃いカカオ製品がカカオ粉末である、請求項19または20に記載の濃いカカオ製品。
【請求項22】
前記カカオ粉末が、少なくとも98%が200メッシュスクリーンを通過する粉末度を有する、請求項21に記載の濃いカカオ製品。
【請求項23】
前記濃いカカオ製品がカカオリカーである、請求項19または20に記載の濃いカカオ製品。
【請求項24】
前記カカオリカーが15?25のC値および40?54のH値を有する、請求項23に記載の濃いカカオ製品。
【請求項25】
前記工程(c)が、
少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程、
2回目の、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃に加熱する工程、
2回目の、少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程、
を更に含み、
前記濃いカカオ製品が40?45のH値を有する、請求項19または20に記載の濃いカカオ製品。
【請求項26】
前記工程(c)が、
少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程、
2回目の、前記混合カカオ製品を少なくとも85℃に加熱する工程、
2回目の、少なくとも85℃に加熱した前記混合カカオ製品の温度を少なくとも10℃低下させる工程、
を更に含み、
前記濃いカカオ製品が45?54のH値を有する、請求項19または20に記載の濃いカカオ製品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-06-15 
出願番号 特願2016-521424(P2016-521424)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A23G)
P 1 651・ 113- YAA (A23G)
P 1 651・ 121- YAA (A23G)
P 1 651・ 537- YAA (A23G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 戸来 幸男  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 冨永 保
佐々木 秀次
登録日 2019-02-15 
登録番号 特許第6480430号(P6480430)
権利者 オラム インターナショナル リミテッド
発明の名称 濃赤色および濃褐色の天然カカオの製造方法  
代理人 大貫 敏史  
代理人 内藤 和彦  
代理人 内藤 和彦  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 江口 昭彦  
代理人 江口 昭彦  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  
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