ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C09K |
---|---|
管理番号 | 1376734 |
異議申立番号 | 異議2020-700704 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-09-16 |
確定日 | 2021-07-01 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6668903号発明「シーリング材用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6668903号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。 特許第6668903号の請求項1、3、5?8に係る特許を維持する。 特許第6668903号の請求項2、4に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6668903号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成28年4月12日の出願であって、令和2年3月2日にその特許権の設定登録がされ、同年3月18日に特許掲載公報が発行され、本件特許に対して、令和2年9月16日に特許異議申立人である山本真弓により特許異議の申立てがなされ、その後の手続の経緯は次のとおりである。 令和2年11月10日付け 取消理由通知 令和3年 1月15日 特許権者からの意見書及び訂正の請求 同年 2月10日付け 訂正の請求があった旨の通知 なお、令和3年2月10日付けの通知に対し、特許異議申立人は、意見書を提出しなかった。 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 令和3年1月15日付けの訂正の請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は『特許第6668903号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1?8について訂正することを求める。』というものであり、その内容は、以下の訂正事項1?8からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1の「少なくとも1個の架橋性シリル基を有し、前記架橋性シリル基が末端に結合する変性重合体と、 炭素数20以上のアルキル基及びアミノ基1を有するアミン化合物と、 アミノ基2を有するシランカップリング剤と、 充填剤と、 硬化触媒とを含有する、シーリング材用組成物。」との記載を、 「少なくとも1個の架橋性シリル基を有し、前記架橋性シリル基が末端に結合する変性重合体と、 炭素数22?30のアルキル基及びアミノ基1を有するアミン化合物と、 アミノ基2を有するシランカップリング剤と、 充填剤と、 硬化触媒とを含有し、 前記アミン化合物は、前記アミノ基1を1分子中に1個有し、イミノ基を有さない、シーリング材用組成物。」との記載に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 訂正前の請求項3の「請求項1又は2に記載のシーリング材用組成物。」との記載を、 「請求項1に記載のシーリング材用組成物。」との記載に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (5)訂正事項5 訂正前の請求項5の「請求項1?4のいずれか1項に記載のシーリング材用組成物。」との記載を、 「請求項1又は3に記載のシーリング材用組成物。」との記載に訂正する。 (6)訂正事項6 訂正前の請求項6の「請求項1?5のいずれか1項に記載のシーリング材用組成物。」との記載を、 訂正後の請求項6の「請求項1、3、及び、5のいずれか1項に記載のシーリング材用組成物。」との記載に訂正する。 (7)訂正事項7 訂正前の請求項7の「請求項1?6のいずれか1項に記載のシーリング材用組成物。」との記載を、 訂正後の請求項7の「請求項1、3、5、及び、6のいずれか1項に記載のシーリング材用組成物。」との記載に訂正する。 (8)訂正事項8 訂正前の請求項8の「請求項1?7のいずれか1項に記載のシーリング材用組成物。」との記載を、 訂正後の請求項8の「請求項1、3、5、及び、5?7のいずれか1項に記載のシーリング材用組成物。」との記載に訂正する。 2.訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本願明細書の【0032】の「アルキル基の炭素数は、本発明の効果(耐汚染性)がより優れる点で、22?30が好ましい。」との記載、同【0034】の「(アミノ基1) アミン化合物はアミノ基1(-NH_(2))を1分子中1個以上有することができ、本発明の効果がより優れ、タック切れに優れる(本発明の組成物を(例えば24時間)硬化させた後、組成物表面のタック(残留タック)が小さいことを意味する。以下同様)点で、1個であることが好ましい。」との記載、同【0036】の「アミン化合物は本発明の効果がより優れ、タック切れに優れる点で、イミノ基を有さないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。」との記載、同【0068】の「【表1】 」との記載、及び同【0070】の「・アミン化合物1(モノアミン):商品名ニッサンアミンVB-S(下記構造)、日油社製。凝固点55?65℃ 【化5】 」との記載に基づき、訂正前の「アミン化合物」の範囲を限定するものである。 したがって、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更することなく、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2?8について 訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであり、訂正事項3は、訂正前の請求項3が引用する請求項のうち請求項2を引用するものを削除するものであり、訂正事項4は、訂正前の請求項4を削除するものであり、訂正事項5は、訂正前の請求項5が引用する請求項のうち請求項2、4を引用するものを削除するものであり、訂正事項6は、訂正前の請求項6が引用する請求項のうち請求項2、4を引用するものを削除するものであり、訂正事項7は、訂正前の請求項7が引用する請求項のうち請求項2、4を引用するものを削除するものであり、訂正事項8は、訂正前の請求項8が引用する請求項のうち請求項2、4を引用するものを削除するものである。 したがって、訂正事項2?8は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更することなく、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであって、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)一群の請求項、及び明細書の訂正と関連する請求項について 訂正事項1?8に係る訂正前の請求項1?8について、その請求項2?8は請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1?8に対応する訂正後の請求項1?8は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 したがって、訂正事項1?8による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。 3.まとめ 以上総括するに、訂正事項1?8による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?8〕について訂正を認める。 第3 本件発明 上記「第2」のとおり本件訂正は認められるから、本件訂正による訂正後の請求項1?8に係る発明(以下、請求項の番号にしたがい「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】少なくとも1個の架橋性シリル基を有し、前記架橋性シリル基が末端に結合する変性重合体と、 炭素数22?30のアルキル基及びアミノ基1を有するアミン化合物と、 アミノ基2を有するシランカップリング剤と、 充填剤と、 硬化触媒とを含有し、 前記アミン化合物は、前記アミノ基1を1分子中に1個有し、イミノ基を有さない、シーリング材用組成物。 【請求項2】(削除) 【請求項3】前記アミン化合物の融点が50℃以上である、請求項1に記載のシーリング材用組成物。 【請求項4】(削除) 【請求項5】前記アミン化合物の含有量が、前記変性重合体100質量部に対して、0.5?10質量部である、請求項1又は3に記載のシーリング材用組成物。 【請求項6】前記シランカップリング剤が前記アミノ基2を1分子中に1個有し、イミノ基を有さない、請求項1、3、及び、5のいずれか1項に記載のシーリング材用組成物。 【請求項7】前記シランカップリング剤の含有量が、前記変性重合体100質量部に対して、0.5?3.0質量部である、請求項1、3、5、及び、6のいずれか1項に記載のシーリング材用組成物。 【請求項8】前記硬化触媒が錫触媒を含む、請求項1、3、5、及び、5?7のいずれか1項に記載のシーリング材用組成物。」 第4 取消理由通知の概要 令和2年11月10日付けの取消理由通知で通知された取消理由の概要は、次の理由1及び2からなるものである。 〔理由1〕(新規性)本件発明1、3、4、7、8は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、本件発明1、3、4、7、8は、特許法第29条第1項第3号の発明であるから、特許を受けることができない発明である。 〔理由2〕(進歩性)本件発明1?8は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1?8は、特許法第29条の規定に違反してされたものである (1) 主たる証拠とした刊行物 ・刊行物1:特開2005-336401号公報(特許異議申立人が甲第3号証として提出した証拠。) ・刊行物2:特開2004-59870号公報(特許異議申立人が甲第1号証として提出した証拠。) ・刊行物3:特開平5-125271号公報(特許異議申立人が甲第2号証として提出した証拠。) (2) 従たる証拠とした刊行物 ・刊行物4:花王株式会社「花王の脂肪アミンファーミン」のカタログ 第3頁?第4頁(特許異議申立人が甲第5号証として提出した証拠。) ・刊行物5:信越化学工業株式会社「シランカップリング剤」のカタログ 第10頁)(特許異議申立人が甲第6号証として提出した証拠。) ・刊行物6:特開2005?75983号公報 第5 第4に対する当審の判断 1.刊行物1?6の記載事項 (1) 刊行物1の記載 刊行物1には、「硬化性組成物」(発明の名称)について、次の記載がある。 摘記1a:【請求項1】 「【請求項1】 (A)数平均分子量15,000以上の架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体及び数平均分子量10,000以上の架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体からなる群から選択される少なくとも1種の重合体、 (B)下記式(1)で示されるエトキシシラン化合物、及び (C)硬化触媒を含有する硬化性組成物。 R_(n)-Si(OCH_(2)CH_(3))_(4-n)・・・(1) (式1中、Rは水素原子又は炭素数1?20の1価の有機基であり、Rが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、nは0?3の整数である。)」 摘記1b:【0014】 「【0014】 本発明によれば、良好な物性を有し、製造直後と貯蔵後で可使時間や硬化特性等の性能が変わらない貯蔵安定性に優れ、接着剤やシーリング材等として好適に用いられる硬化性組成物を提供することができる。」 摘記1c:【0049】?【0057】 「【0049】 また、本発明の硬化性組成物には、非汚染性を向上させるために、(E1)アミン化合物及び(E2)カルボニル化合物をさらに添加することが好適である。 【0050】 上記アミン化合物(E1)としては、特に限定されないが、例えば、第1級及び/又は第2級アミン、並びに1分子中に少なくとも一個のアルコキシシリル基を有するアミン化合物等が挙げられる。 【0051】 第1級アミンとしては、例えば、モノアミンとして、ブチルアミン、ヘキシルアミン、へプチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、トリメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、アニリン等を挙げることができ、ジアミンとして、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノへプタン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、1,20-ジアミノエイコサン、1,21-ジアミノヘンティコサン、1,22-ジアミノドコサン、1,23-ジアミノトリコサン、1,24-ジアミノテトラコサン、イソホロンジアミン、ジアミノジシクロへキシルメタン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、キシレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミンなどを挙げることができ、ポリアミンとして、トリ(メチルアミノ)へキサンなどを挙げることができる。第2級アミンとしては、例えば、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、メチルラウリルアミンなどのモノアミン、N,N’-ジラウリルプロピルアミン、N,N’-ジステアリルブチルアミン、N-ブチル-N’-ラウリルエチルアミン、N-ブチル-N’-ラウリルプロピルアミン、N-ラウリル-N’-ステアリルブチルアミン等のジアミンを挙げることができる。第1級、第2級混合アミンとしては、N-ラウリルプロピレンジアミン、N-ステアリルプロピレンジアミンなどを挙げることができる。第1級、第2級混合ポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メチルアミノプロピルアミンなどを挙げることができる。 【0052】 上記一分子中に少なくとも一個のアルコキシシリル基を有するアミン化合物としては、例えば、下記一般式(3)で示されるものを挙げることができる。 【0053】 【化2】 【0054】 〔式(9)中、m=0,1又は2、R^(2)及びR^(3)は同一又は異なって、それぞれ炭素数1?4個の炭化水素基、R^(4)は炭素数1?10個の炭化水素基、Yは水素原子又は炭素数1?4個のアミノアルキル基を意味する。〕 【0055】 ここで、R^(2)及びR^(3)としては、メチル、エチル、プルピル、ブチルといったアルキル基、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニルといったアルケニル基などが挙げられ、特にアルキル基が好ましい。R^(4)としてはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのアルキレン基、フェニレンなどのアリーレン基やアルキレンアリーレン基等が挙げられるが、特にアルキレン基が好ましい。mは好ましくは0又は1である。 【0056】 具体例としては、下記式(4)?(11)で示される化合物や、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等に代表されるアミノシラン類等を挙げることができる。これらの中では、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等が、接着性がより良好になり特に好ましい。 【0057】 【化3】 」 摘記1d:【0070】?【0075】、【0084】?【0087】、【0093】 「【実施例】… 【0070】 (合成例1)末端に架橋性シリル基を有するアクリル系重合体A1の合成 500mLフラスコに臭化銅1.80g(12.6mmol)、アセトニトリル21mLを仕込み、窒素気流下70℃で20分間加熱撹拌した。これに2,5-ジブロモアジピン酸ジエチル5.05g(14.0mmol)、アクリル酸ブチル60mL(0.418mol)、アクリル酸エチル84mL(0.775mol)、アクリル酸2-メトキシエチル63mL(0.489mol)を加え、さらに80℃で20分間加熱撹拌した。これにペンタメチルジエチレントリアミン(以後トリアミンと称す)0.262mL(1.26mmol)を加えて反応を開始した。さらにトリアミンを0.087mL(0.42mmol)追加した。反応開始から240分後、アセトニトリル62mL、1,7-オクタジエン62mL(0.42mol)、トリアミン0.87mL(4.18mmol)添加し、引き続き80℃で加熱撹拌を続け、反応開始から620分後加熱を停止した。反応溶液を減圧加熱して揮発分を除去した後、トルエンで希釈して濾過し、ろ液を濃縮することで重合体を得た。 【0071】 得られた重合体とキョーワード500SH(協和化学製:重合体100重量部に対して2重量部)、キョーワード700SL(協和化学製:重合体100重量部に対して2重量部)をキシレン(重合体100重量部に対して100重量部)に混合し、130℃で撹拌した。3時間後、珪酸アルミを濾過し、濾液の揮発分を減圧下加熱して留去した。重合体を180℃で12時間加熱脱揮(減圧度10torr以下)することにより共重合体中からBr基を脱離させた。 【0072】 得られた重合体とキョーワード500SH(協和化学製:重合体100重量部に対して3重量部)、キョーワード700SL(協和化学製:重合体100重量部に対して3重量部)をキシレン(重合体100重量部に対して100重量部)に混合し、130℃で撹拌した。5時間後、珪酸アルミを濾過し、濾液の揮発分を減圧下加熱して留去しアルケニル末端重合体[1]を得た。 【0073】 得られた重合体[1]の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により19000、分子量分布は1.1であった。また、オリゴマー1分子あたりに導入されたアルケニル基は、^(1)H NMR分析より平均1.9個であった。 【0074】 次に、200mLの耐圧ガラス反応容器に、上記重合体[1](23.3g)、ジメトキシメチルヒドロシラン(2.55mL、20.7mmol)、オルト蟻酸ジメチル(0.38mL、3.45mmol)、および白金触媒を仕込んだ。ただし、白金触媒の使用量は、重合体[1]のアルケニル基に対して、モル比で2×10^(-4)当量とした。反応混合物を100℃で3時間加熱した。混合物の揮発分を減圧留去することにより、末端にメチルジメトキシシリル基を有するポリ(アクリル酸-n-ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸2-メトキシエチル)の重合体A1を得た。 【0075】 得られた重合体A1の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により20000、分子量分布は1.2であった。重合体1分子あたりに導入された平均のシリル基の数を^(1)HNMR分析により求めたところ、1.9個であった。 【0084】 (実施例1) 表1に示すように、成分(A)架橋性シリル基含有重合体として合成例1で得られた重合体A1、成分(D)としてポリオキシプロピレングリコール、炭酸カルシウムをそれぞれ所定量ずつ仕込み、加熱減圧混合撹拌を110℃にて2時間行い、配合物質の脱水を行った。さらに、成分(B)としてビニルトリエトキシシラン、成分(C)硬化触媒としてジブチル錫ジアセチルアセトナート、及びシランカップリング剤としてアミノシラン化合物を所定量ずつ添加し、撹拌配合して硬化性組成物を調製した。 【0085】 (実施例2?11及び比較例1?3) 表1に示すように配合物質及び配合割合を変更した以外は実施例1と同様の方法により硬化性組成物を調製した。 【0086】 【表1】 【0087】 表1における配合量は(g)で示され、(*1?*20)は次の通りである。 *1:合成例1で得られた重合体A1 *2:合成例2で得られた重合体A2 *3:合成例3で得られた重合体A3 *4:合成例5で得られた重合体A5 *5:合成例6で得られた重合体A6 *6:合成例4で得られた重合体4 *7:合成例7で得られた重合体7 *8:ビニルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBE1003) *9:テトラエトキシシラン(コルコー(株)製、商品名:エチルシリケート28) *10:ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM1003) *11:ジブチル錫ジアセチルアセトナート(日東化成(株)製、商品名:U-220) *12:旭硝子(株)製、商品名:PML3012 *13東亞合成(株)製、商品名:UP-1000 *14:合成例8で得た重合体D1(架橋性シリル基数0.4) *15:合成例9で得られたケチミン化合物 *16:ステアリルアミン(花王(株)製、商品名:ファーミン80) *17:メチルイソブチルケトン *18:白石カルシウム工業(株)製、商品名:ホワイトンSB *19:丸尾カルシウム(株)製、商品名:カルファイン200M *20:アミノシラン化合物(信越化学工業(株)製、商品名:KBM603) 【0093】 【表2】 」 (2) 刊行物2の記載 刊行物2には、「硬化性樹脂組成物」(発明の名称)について、以下の記載がある。 摘記2a:【請求項3】 「【請求項3】 架橋性シリル基含有有機重合体(A)100重量部と、炭素数8以上の炭化水素基を有し1級アミノ基を少なくとも1個有するアミン化合物(C)0. 1?10重量部と、下記式(2)で表されるジアミン化合物とエポキシシランまたはアクリルシランとの反応物(D)0. 1?10重量部とを含有する硬化性樹脂組成物。 【化2】 (式中、R^(3)は水素原子、炭素数1?21の分岐していてもよい1価の脂肪族または脂環式炭化水素基である。R^(4)は炭素数2?18の分岐していてもよい2価の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい。)」 摘記2b:【0001】 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、シーリング材等として用いることができる硬化性樹脂組成物に関し、特に、架橋性シリル基含有有機重合体を含有する硬化性樹脂組成物に関する。」 摘記2c:【0030】 「【0030】 ここで、架橋性シリル基含有有機重合体(A)は、本発明の第1の態様に係るものと同様である。 以下に、炭素数8以上の炭化水素基を有し1級アミノ基を少なくとも1個有するアミン化合物(C)、および上記式(2)で表されるジアミン化合物とエポキシシランまたはアクリルシランとの反応物(D)(以下、単に「化合物(D)」ともいう)について詳細に説明する。 上記アミン化合物(C)は、炭素数8以上、好ましくは12?18の炭化水素基を有し、1級アミノ基を少なくとも1個有するアミン化合物であれば特に限定されない。ここで、炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキレン基、ビニレン基等の脂肪族炭化水素基;シクロオクチル基、1,5-シクロオクチレン基、1,3-シクロヘキシレンビス(メチレン)基等の脂環式炭化水素基;2-ナフチル基、9-アントリル基、2-フェナントリル基、ナフタレン-1,8-ジイル、1,3-フェニレンビス(メチレン)基等の芳香族炭化水素基;およびこれらを組合せた基等が例示され、これらのうち、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキル基、アルケニル基、アルキレン基であることがより好ましい。より具体的には、アルキル基として、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)が、アルケニル基として、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基が、アルキレン基として、1,8-オクチレン基、1,10-デシレン基、1,12-ドデシレン基が好適に例示される。 上記アミン化合物(C)としては、具体的には、例えば、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、セチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、1,20-ジアミノエイコサン、1,21-ジアミノヘンティコサン、1,22-ジアミノドコサン、1,23-ジアミノトリコサン、1,24-ジアミノテトラコサン、Nラウリルプロピレンジアミン、Nステアリルプロピレンジアミン等が挙げられ、第1の態様に係るジアミン化合物(B)で例示した硬化牛脂プロピレンジアミン(商品名:アスファゾール#10、日本油脂社製)、牛脂プロピレンジアミン(商品名:アスファゾール#20、日本油脂社製)、オレイルプロピレンジアミン(商品名:アミンDOB、日本油脂社製)を用いることが好ましい。」 摘記2d:【0034】?【0035】 「【0034】 上記化合物(D)は、上記式(2)で表されるジアミン化合物と、上記エポキシシランまたはアクリルシランとを反応させて得られる反応物であって、具体的には、例えば、ステアリルプロピレンジアミンの1級アミノ基とγ?グリシドキシプロピルトリエトキシシランのエポキシ基とを反応させて得られる下記式(8)で表される化合物、4,4’?メチレンビスシクロヘキシルアミンの1級アミノ基とγ?グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエポキシ基とを反応させて得られる下記式(9)で表される化合物、およびステアリルプロピレンジアミンの1級アミノ基とγ?アクリロキシプロピルトリメトキシシランのアクリル基とを反応させて得られる下記式(10)で表される化合物等が挙げられ、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。また、上記式(2)で表されるジアミン化合物と、上記エポキシシランまたはアクリルシランとの反応における反応比は特に限定されないが、上記式(2)で表される化合物のNHに対し、エポキシ基またはアクリル基を0.1?0.9当量反応させることが好ましい。【0035】 【化11】 」 摘記2e:【0040】 「【0040】脱水剤としては、…γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルエチルジエトキシシラン、ビストリメトキシシリルプロピルアミン、ビストリエトキシシリルプロピルアミン、ビスメトキシジメトキシシリルプロピルアミン、ビスエトキシジエトキシシリルプロピルアミン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルエチルジエトキシシラン等のアミノシラン…これらのうち、脱水効果の点から、アミノシラン、ビニルシランを用いることが好ましい。」 摘記2f:【0046】?【0048】、【0054】 「【0046】 【実施例】 以下実施例を用いて、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。 (実施例1?7、比較例1?4) 架橋性シリル基含有有機重合体(A)である変成シリコーン100重量部に対して、下記表1に示す組成成分(重量部)で、炭酸カルシウム1、炭酸カルシウム2、酸化チタン、アクリルオリゴマー、ポリプロピレングリコール、ビニルシラン、アミノシラン、錫触媒、ステアリルアミン、1,12-ドデカンジアミン、ジステアリルアミン、アスファゾール#10、アスファゾール#20、付加体1、付加体2を添加し、高粘度用混合ミキサーで均一に分散させて実施例1?7、比較例1?4の硬化性樹脂組成物とした。該硬化性樹脂組成物の硬化24時間後の表面タック、汚染性、耐候性および接着性を以下に示す条件で調べた。その結果を下記の表1に示す。 【0047】 上記各組成成分として、以下に示す化合物を用いた。 変成シリコーンとして鐘淵化学工業社製のMSX911を用い、アミノ基を含有する化合物として、ステアリルアミン(東京化成社製)、1,12-ドデカンジアミン(東京化成社製)、ジステアリルアミン(東京化成社製)、硬化牛脂プロピレンジアミン(商品名:アスファゾール#10、日本油脂社製)、牛脂プロピレンジアミン(商品名:アスファゾール#20、日本油脂社製)を用いた。 また、付加体1としてはアスファゾール#10とγ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE402、信越化学工業社製)とを、等モル混合させ、50℃、12時間反応させて得られる反応物(上記式(8)で表される化合物)を用い、付加体2としては脂肪族アミン(商品名:ワンダミンMH、新日本理化社製)とγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:A187、日本ユニカー社製)とを、等モル混合させ、50℃、12時間反応させて得られる反応物(上記式(9)で表される化合物)にメタノール(安定剤)を5%添加した状態で用いた。 【0048】 充填剤としては炭酸カルシウム1(商品名:カルファイン200M、丸尾カルシウム社製)および炭酸カルシウム2(商品名:ライトンA-4、備北粉加工社製)を用い、顔料として酸化チタン(商品名:R-820、石原産業社製)を用い、可塑剤としてアクリルオリゴマー(商品名:UP-1000、東亞合成社製)およびポリプロピレングリコール(商品名:プレミノール4002、旭ガラス社製)を用いた。また、脱水剤としては、ビニルシラン(商品名:A-171、日本ユニカ社製)とアミノシラン(商品名:A-1120、日本ユニカ社製)を用い、錫触媒としてジブチル錫ジアセチルアセトナート(商品名:ネオスタンU-220、日東化成社製)を用いた。 【0054】 【表2】 」 (3)刊行物3の記載 刊行物3には、「非汚染性シーリング材組成物」(発明の名称)について、次の記載がある。 摘記3a:【請求項1】 「【請求項1】変成シリコーンポリマーをベースとし、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルの共重合体を溶剤に溶解させた成分と、固形状で融点が40℃から100℃の範囲にある長鎖型第1級又は第2級の飽和モノ又はジアミンを溶剤に溶解させた成分とをバリア膜層の構成成分として含有した一液性の非汚染性シーリング材組成物。」 摘記3b:【0012】 「【0012】バリア膜層の構成成分の他の1つであるアミン系成分の固形状長鎖アルキルアミンとしては第1級アミン又は第2級アミンを用いることができる。一般式で表現すると、NH_(2)(CH_(2))_(n)CH_(3)、NH_(2)(CH_(2))_(n)NH_(2)、R-NH-(CH_(2))_(n)CH_(3)、R-NH-(CH_(2))_(n)NHR’、R-NH(CH_(2))_(n)NH_(2)である。ただし、R,R’はアルキル基で、RとR’は同じであってもよく、異なっていてもよい。第1級アミンとしてはモノアミンとジアミンがあり、モノアミンとしてはトリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミンなど、ジアミンとしては1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、1,20-ジアミノエイコサン、1,21-ジアミノヘンティコサン、1,22-ジアミノドコサン、1,23-ジアミノトリコサン、1,24-ジアミノテトラコサンなどを用いることができる。第2級アミンとしてはジブチルアミン、ジアミルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、メチルラウリルアミンなどのモノアミン、N,N'ジブチルエチルアミン、N,N'ジラウリルプロピルアミン、N,N'ジステアリルブチルアミン、NブチルN'ラウリルエチルアミン、NブチルN'ラウリルプロピルアミン、NラウリルN'ステアリルブチルアミンなどのジアミンを用いることができる。その他のアミンとして、Nブチルエチレンジアミン、Nラウリルプロピレンジアミン、Nステアリルプロピレンジアミンなどを用いることができる。これらのうちで、特に1,12-ジアミノドデカンが好ましい。固形状長鎖アルキルアミンは融点40?100℃の範囲のものがシーリング材表面の汚染防止の点で有効であり、融点が40℃未満のものは、耐熱性、特に夏期の高温で軟化する問題点があり、一方、融点が100℃を越えるものはシーリング材表面のバリア膜層が固く、脆くなりやすく、シーリング材の基本特性である弾性を損ねる。」 摘記3c:【0016】 「【0016】 【実施例】 (実施例1)変成シリコーンポリマーとしてポリプロピレンオキシド主鎖の末端にメチルジメトキシシリル官能基を有し、分子量が約7500のものを用い、その100重量部に対して可塑剤としてジオクチルフタレートを50重量部、充填剤として炭酸カルシウムを200重量部、接着付与剤としてN-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルメトキシシランとN-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシランを合計で2重量部、バリヤ膜層構成成分としてアクリル酸ブチルエステルとメタクリル酸メチルエステルとのモル比1/1共重合体溶液を1重量部及び固形状長鎖アルキルアミンとして第1級ジアミンの1,12-ジアミノドデカン(融点が60?70℃)の溶液を0.5重量部、硬化触媒としてジ-n-ブチル錫オキサイドを1重量部配合してシーリング材組成物を得た。これを実施例1とする。 (実施例2)実施例1で長鎖アルキルアミンの1,12-ジアミノドデカンの配合量を1重量部に増量したシーリング材組成物を実施例2とする。」 (4) 刊行物4の記載 刊行物4には、次の記載がある。 摘記4a: 「 」 (5) 刊行物5の記載 刊行物5には、次の記載がある。 摘記5a: 「 」 (6) 刊行物6の記載 刊行物6には以下の記載がある。 摘記6a: 「【0021】 使用可能なシランカップリング剤を例示すると、アミノシランカップリング剤としては、例えば、 (1)H_(2)NC_(3)H_(6)Si(OC_(2)H_(5))_(3):日本ユニカー社製、商品名A1100 (2)H_(2)NC_(3)H_(6)Si(OCH_(3))_(3):日本ユニカー社製、商品名A1110 (3)H_(2)NC_(2)H_(4)NHC_(3)H_(6)Si(OCH_(3))_(3):日本ユニカー社製、商品名A1120 【化1】 (5)H_(2)NCONHC_(3)H_(6)Si(OC_(2)H_(5))_(3):日本ユニカー社製、商品名A1160 (6)H_(2)NC_(2)H_(4)NHC_(2)H_(4)NHC_(3)H_(6)Si(OCH_(3))_(3):日本ユニカー社製、商品名A1130等である。」 2 引用刊行物に記載された発明 (1) 刊行物1に記載された発明(引用発明1) 刊行物1の摘記1a(【請求項1】)には、 「(A)数平均分子量15,000以上の架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体及び数平均分子量10,000以上の架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体からなる群から選択される少なくとも1種の重合体、 (B)下記式(1)で示されるエトキシシラン化合物、及び (C)硬化触媒を含有する硬化性組成物。 」が記載され、摘記1b(【0014】)には、当該硬化性組成物がシーリング材として好適に用いられることが記載されている。 また、摘記1d(【0086】)には、当該硬化性組成物の具体例として、末端に架橋性シリル基を有するアクリル系重合体A1(【0070】?【0075】)を100g、ビニルトリエトキシシランを4g、ジブチル錫ジアセチルアセトナートを1g、ポリオキシプロピレングリコールを70g、ステアリルアミン(ファーミン80)を2.4g、MIBKを1.6g、重質炭酸カルシウムを100g、脂肪酸処理炭酸カルシウムを50g、KBM603を2g含むもの(実施例6)が記載されている。 そこで、上記記載を総合すると、刊行物1には「末端に架橋性シリル基を有するアクリル系重合体A1を100g、ビニルトリエトキシシランを4g、ジブチル錫ジアセチルアセトナートを1g、ポリオキシプロピレングリコールを70g、ステアリルアミン(ファーミン80)を2.4g、MIBKを1.6g、重質炭酸カルシウムを100g、脂肪酸処理炭酸カルシウムを50g、KBM603を2g含む、シーリング材用硬化性組成物。」(以下、引用発明1とする)が記載されているといえる。 (2) 刊行物2に記載された発明(引用発明2) 刊行物2の摘記2a(【請求項3】)には、「架橋性シリル基含有有機重合体(A)100重量部と、炭素数8以上の炭化水素基を有し1級アミノ基を少なくとも1個有するアミン化合物(C)0.1?10重量部と、下記式(2)で表されるジアミン化合物とエポキシシランまたはアクリルシランとの反応物(D)0.1?10重量部とを含有する硬化性樹脂組成物。 【化2】 (式中、R^(3)は水素原子、炭素数1?21の分岐していてもよい1価の脂肪族または脂環式炭化水素基である。R^(4)は炭素数2?18の分岐していてもよい2価の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい。)」が記載され、摘記2b(【0001】)には、当該硬化性樹脂組成物がシーリング材等として用いることができるものであることが記載されている。 また、摘記2e(【0054】)には、当該硬化性組成物の具体例として、変性シリコーン100重量部、炭酸カルシウム合計140重量部、酸化チタン8重量部、アミノシラン1重量部、錫触媒2重量部、ステアリルアミン2重量部、付加物1を2重量部含むもの(実施例3)が記載されている。 そこで、上記記載を総合すると、刊行物2には「変性シリコーン100重量部、炭酸カルシウム合計140重量部、酸化チタン8重量部、アミノシラン1重量部、錫触媒2重量部、ステアリルアミン2重量部、付加物1を2重量部含む、シーリング材用硬化性樹脂組成物。」(以下、引用発明2とする)が記載されているといえる。 (3) 刊行物3に記載された発明(引用発明3) 刊行物3の摘記3a(【請求項1】)には、「変成シリコーンポリマーをベースとし、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルの共重合体を溶剤に溶解させた成分と、固形状で融点が40℃から100℃の範囲にある長鎖型第1級又は第2級の飽和モノ又はジアミンを溶剤に溶解させた成分とをバリア膜層の構成成分として含有した一液性の非汚染性シーリング材組成物。」が記載されている。 また、摘記3c(【0016】)には、当該非汚染性シーリング材組成物の具体例として、ポリプロピレンオキシド主鎖の末端にメチルジメトキシシリル官能基を有する変性シリコーンポリマー100重量部に充填材として炭酸カルシウムを200重量部、接着付与剤として、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルメトキシシランとN-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシランを合計で2重量部、固形状長鎖アルキルアミンとして第1級ジアミンの1,12-ジアミノドデカン(融点が60?70℃)の溶液を0.5重量部、硬化触媒としてジ-n-ブチル錫オキサイドを1重量部配合したシーリング材組成物が記載されている。 そこで、上記記載を総合すると、刊行物3には「ポリプロピレンオキシド主鎖の末端にメチルジメトキシシリル官能基を有する変性シリコーンポリマー100重量部に充填材として炭酸カルシウムを200重量部、接着付与剤として、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルメトキシシランとN-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシランを合計で2重量部、固形状長鎖アルキルアミンとして第1級ジアミンの1,12-ジアミノドデカン(融点が60?70℃)の溶液を0.5重量部、硬化触媒としてジ-n-ブチル錫オキサイドを1重量部配合した非汚染性シーリング材組成物」(以下、引用発明3とする)が記載されているといえる。 4 対比・判断 (1) 引用発明1を主引用例とした場合の検討 ア 本件発明1の新規性・進歩性について (ア) 対比 本件発明1と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「末端に架橋性シリル基を有するアクリル系重合体A1」は本件発明1の「少なくとも1個の架橋性シリル基を有し、前記架橋性シリル基が末端に結合する変性重合体」に、引用発明1の「ジブチル錫ジアセチルアセトナート」は本件発明1の「硬化触媒」に、引用発明1の「シーリング材用硬化性組成物」は「シーリング材用組成物」に、引用発明1の「重質炭酸カルシウム」と「脂肪酸処理炭酸カルシウム」は、いずれも本件発明1の「充填剤」にそれぞれ相当する。 また、引用発明1の「KBM-603」は、N-2-(アミノエチル)?3-アミノプロピルトリメトキシシランである(刊行物5摘記5a)から、本件発明1の「アミノ基2を有するシランカップリング剤」に相当する。 そして、刊行物4の摘記4aには、ファーミン80には、C_(20)のアルキル基を有するRNH_(2)が1%含まれていることが記載されているところ、RとしてC_(20)のアルキル基を有するRNH_(2)は本件発明1の「アルキル基及びアミノ基1を有するアミン化合物」に相当する。 そこで本件発明1と引用発明1とを対比すると、両者は 「少なくとも1個の架橋性シリル基を有し、前記架橋性シリル基が末端に結合する変性重合体と、 アルキル基及びアミノ基1を有するアミン化合物と、 アミノ基2を有するシランカップリング剤と、 充填剤と、 硬化触媒とを含有する、シーリング材用組成物。」 である点で一致し、以下の(相違点1-1)、(相違点1-2)及び(相違点1-3)の3つの点において相違する。 (相違点1-1)本件発明1は炭素数22?30のアルキル基及びアミノ基1を有するアミン化合物を用いるものであるのに対して、引用発明2は炭素数20以上のアルキル基及びアミノ基を有するアミン化合物を用いるものである点 (相違点1-2)本件発明1は、アミン化合物が、アミノ基を1分子中に「1個」有しているのに対して、引用発明1は、アミン化合物が1分子中に有するアミノ基の数が明らかでない点 (相違点1-3)本件発明1はアミン化合物は「イミノ基を有さない」のに対して、引用発明1はアミン化合物がイミノ基を有するか否かが明らかでない点 (イ) 判断 上記相違点1-1、相違点1-2は実質的な相違点であるから、本件発明1は引用発明1ではない。 以下、上記相違点1-1、相違点1-2について検討する。 刊行物1の摘記1c(【0051】)には、アミノ化合物の具体例として「第1級アミンとしては、例えば、・・・ステアリルアミン・・・ジアミンとして、・・・1,22-ジアミノドコサン、1,23-ジアミノトリコサン、1,24-ジアミノテトラコサン・・・などを挙げることができ…」と記載されている。 しかしながら、アルキル基の炭素数が22?30であって、かつ、1分子中に有するアミノ基の数が1個であるアミン化合物は開示されていない。 してみると、刊行物1に記載の技術事項を精査しても、上記相違点1-1、相違点1-2に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえない。 そして、本件発明1は、アルキル基の炭素数が22?30であって、かつ、1分子中に有するアミノ基の数が1個であるアミン化合物を用いることによって、格別の効果を奏するものといえる。 以上総括するに、本件発明1と引用発明1は、上記相違点1-1、相違点1-2を有し、この相違点は、刊行物1に記載の技術事項をどのように組み合わせても導きだし得るものではないから、上記相違点1-3について検討するまでもなく、上記相違点1-1、相違点1-2に係る構成を想到し、その効果を予測することが、当業者にとって容易であるとはいえない。 したがって、本件発明1は、引用発明1とはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものとはいえず、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。 イ 本件発明3、及び、5?8について 本件発明3及び、5?8は、本件発明1を引用し、さらに限定したものである。 してみると、本件発明1の新規性及び進歩性が刊行物1によって否定できない以上、本件発明3、及び、5?8は、引用発明1とはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものとはいえず、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。 (2) 引用発明2を主引用例とした場合の検討 ア 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と引用発明2とを対比する。 引用発明2の「変性シリコーン」は架橋性シリル基含有有機重合体であるから、本件発明1の「少なくとも1個の架橋性シリル基を有し、前記架橋性シリル基が末端に結合する変性重合体」に相当し、引用発明2の「錫触媒」は本件発明1の「硬化触媒」に、引用発明2の「シーリング材用硬化性樹脂組成物」は本件発明1の「シーリング材用組成物」に、引用発明2の「炭酸カルシウム」と「酸化チタン」は、いずれも本件発明1の「充填剤」にそれぞれ相当する。 また、引用発明2の「ステアリルアミン」はアミノ基を1分子中に1個有しており、イミノ基を有さないから、本件発明1の「アルキル基及びアミノ基1を有するアミン化合物」、「前記アミノ基1を1分子中に1個有し、イミノ基を有さない」に相当する。 また、「アミノシラン」は日本ユニカ社製のA-1120であると記載されるところ(摘記2f【0048】)、当該化合物は刊行物6の摘記6aに記載されるとおり、「H_(2)NC_(2)H_(4)NHC_(3)H_(6)Si(OCH_(3))_(3)」で表される化合物であるから、本件発明1の「アミノ基2を有するシランカップリング剤」に相当する。 同様に、「付加物1」は、摘記2d(【0035】)に式(8)で示される化合物であるから、本件発明1の「アミノ基2を有するシランカップリング剤」に相当する。 してみると、本件発明1と引用発明2とは、 「少なくとも1個の架橋性シリル基を有し、前記架橋性シリル基が末端に結合する変性重合体と、 アルキル基及びアミノ基1を有するアミン化合物と、 アミノ基2を有するシランカップリング剤と、 充填剤と、 硬化触媒とを含有し、 前記アミン化合物は、前記アミノ基1を1分子中に1個有し、イミノ基を有さない、シーリング材用組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点2-1)本件発明1は炭素数22?30のアルキル基及びアミノ基1を有するアミノ化合物を用いるものであるのに対して、引用発明2はステアリルアミン(炭素数18)を用いるものである点 (イ) 判断 上記相違点2-1は実質的な相違点であるから、本件発明1は引用発明2ではない。 以下、上記相違点2-1について検討する。 刊行物2の摘記2c(【0030】)には、アミノ化合物の具体例として「上記アミン化合物(C)としては、…ステアリルアミン、…1,22-ジアミノドコサン、1,23-ジアミノトリコサン、1,24-ジアミノテトラコサン、Nラウリルプロピレンジアミン、Nステアリルプロピレンジアミン等が挙げられ…」と記載されている。 しかしながら、アルキル基の炭素数が22?30であって、かつ、1分子中に有するアミノ基の数が1個有し、イミノ基を有さないアミン化合物は開示されていない。 してみると、刊行物2に記載の技術事項を精査しても、上記相違点2-1に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえない。 そして、本件発明1は、アルキル基の炭素数が22?30であって、かつ、1分子中に有するアミノ基の数が1個有し、イミノ基を有さないアミン化合物を用いることによって、格別の効果を奏するものといえる。 以上総括するに、本件発明1と引用発明2は、上記相違点2-1を有し、この相違点は、刊行物2に記載の技術事項をどのように組み合わせても導きだし得るものではないから、上記相違点2-1に係る構成を想到し、その効果を予測することが、当業者にとって容易であるとはいえない。 したがって、本件発明1は、引用発明2とはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものとはいえず、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。 イ 本件発明3、及び、5?8について 本件発明3、及び、5?8は、本件発明1を引用し、さらに限定したものである。 してみると、本件発明1の新規性及び進歩性が刊行物2によって否定できない以上、本件発明3、及び、5?8は、引用発明2とはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものとはいえず、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。 (3) 引用発明3を主引用例とした場合の検討 ア 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と引用発明3とを対比する。 引用発明3の「ポリプロピレンオキシド主査の末端にメチルジメトキシシリル官能基を有する変性シリコーンポリマー」は本件発明1の「少なくとも1個の架橋性シリル基を有し、前記架橋性シリル基が末端に結合する変性重合体」に、引用発明3の「炭酸カルシウム」は本件発明1の「充填材」に、引用発明3「N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルメトキシシランとN-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン」は本件発明1の「アミノ基2を有するシランカップリング剤」に、引用発明3の「ジ-n-ブチル錫オキサイド」は本件発明1の「硬化触媒」に、引用発明3の「非汚染性シーリング材組成物」は本件発明1の「シーリング材用組成物」にそれぞれ相当する。 また、引用発明3の「1,12-ジアミノドデカン」はイミノ基を有さないから、本件発明1の「アルキル基及びアミノ基1を有するアミン化合物」、「イミノ基を有さない」に相当する。 そこで、本件発明1と引用発明3とを対比すると、両者は「少なくとも1個の架橋性シリル基を有し、前記架橋性シリル基が末端に結合する変性重合体と、 アルキル基及びアミノ基1を有するアミン化合物と、 アミノ基2を有するシランカップリング剤と、 充填剤と、 硬化触媒とを含有すし、 前記アミン化合物は、イミノ基を有さない、シーリング材用組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点3-1)本件発明1は「炭素数20以上のアルキル基及びアミノ基1を有するアミノ化合物」を含有するものであるのに対して、引用発明3が「1,12-ジアミノドデカン」を用いるものである点 (相違点3-2)本件発明1は、アミン化合物が、アミノ基を1分子中に「1個」有しているのに対して、引用発明3は、「2個」有している点 (イ) 判断 上記相違点3-1、相違点3-2は実質的な相違点であるから、本件発明1は引用発明3ではない。 以下、上記相違点3-1、相違点3-2について検討する。 刊行物3の摘記3c(【0016】)には、固形状長鎖アルキルアミンとして「バリア膜層の構成成分の他の1つであるアミン系成分の固形状長鎖アルキルアミンとしては第1級アミン又は第2級アミンを用いることができる。…ジアミンとしては…1,22-ジアミノドコサン、1,23-ジアミノトリコサン、1,24-ジアミノテトラコサンなどを用いることができる。」と記載されている。 しかしながら、アルキル基の炭素数が22?30であって、かつ、1分子中に有するアミノ基の数が1個であるアミン化合物は開示されていない。 してみると、刊行物3に記載の技術事項を精査しても、上記相違点3-1、相違点3-2に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえない。 そして、本件発明1は、アルキル基の炭素数が22?30であって、かつ、1分子中に有するアミノ基の数が1個であるアミン化合物を用いることによって、格別の効果を奏するものといえる。 以上総括するに、本件発明1と引用発明3は、上記相違点3-1、相違点3-2を有し、この相違点は、刊行物3に記載の技術事項をどのように組み合わせても導きだし得るものではないから、上記相違点3-1、相違点3-2に係る構成を想到し、その効果を予測することが、当業者にとって容易であるとはいえない。 したがって、本件発明1は、引用発明3とはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものとはいえず、引用発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。 イ 本件発明3、及び、5?8について 本件発明3、及び、5?8は、本件発明1を引用し、さらに限定したものである。 してみると、本件発明1の新規性及び進歩性が刊行物3によって否定できない以上、本件発明3、及び、5?8は、引用発明3とはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものとはいえず、引用発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由1(サポート要件) 特許異議申立人が主張する申立理由1は、令和2年9月16日の特許異議申立書の第2頁にて『請求項1及びそれを引用する請求項2?8は、本件明細書に記載された発明といえないので、本件は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない。』とするものである。 (1)本件特許発明の解決しようとする課題について 本願明細書の【0005】を含む発明の詳細な説明の全ての記載からみて、本件発明1、3、及び、5?8の解決しようとする課題は『耐汚染性に優れるシーリング材用組成物を提供すること』にあるものと認められる。 (2)アミン化合物及びシランカップリング剤について 本願明細書の【0070】、【0071】の記載から、【0068】の表1には、シーリング材用組成物に用いるアミン化合物として「商品名ニッサンアミンVB-S」を、変性重合体100質量部に対して、2質量部使用され、また、3-アミノプロピルトリエトキシシランまたはN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランを、変性重合体100質量部に対して、0.2?4重量部使用した実施例1?4の具体例が記載されており、これらの初期または屋外暴露後耐汚染性の試験結果は「◎」(耐汚染性に非常に優れる)、または、「○」(耐汚染性に優れる)であることが示されている。 そして、同【0012】の「これに対して、本発明の組成物において、アミン化合物が有するアルキル基は炭素数20以上と長いため、変性重合体と絡みやすく、ブリードアウトしにくい。上記アミン化合物の融点は比較的高く、冬場だけでなく夏場のような高温条件下においてもブリードアウトしにくい。また、シランカップリング剤は変性重合体が有する架橋性シリル基と縮合反応によって反応可能であるため、ブリードアウトしにくい。 このように、本発明の組成物はアミン化合物及びシランカップリング剤がシーリング材からブリードアウトしにくいことによって、長期にわたってアミン化合物及びシランカップリング剤をブリードアウトさせることができ、耐汚染性に優れると考えられる。」との記載にある「作用機序」の説明からみて、上記『耐汚染性に優れるシーリング材用組成物を提供すること』という課題は、専ら「シーリング材用組成物」中に「少なくとも1個の架橋性シリル基を有し、前記架橋性シリル基が末端に結合する変性重合体と、炭素数22?30のアルキル基及びアミノ基1を有するアミン化合物と、アミノ基2を有するシランカップリング剤」されることで解決できる(アミン化合物が有するアルキル基が、変性重合体と絡み、また、シランカップリング剤は変性重合体が有する架橋性シリル基と縮合反応することで、ブリードアウトを抑制し、耐汚染性が向上する)と認識できるので、当該「炭素数22?30のアルキル基及びアミノ基1を有するアミン化合物」及び「シランカップリング剤」の種類、含有量によって、上記課題解決の可否が大きく左右されるとは認識できない。 してみると、本件発明1は、「炭素数22?30のアルキル基及びアミノ基1を有するアミン化合物」及び「シランカップリング剤」を含有するものに限定されているところ、上記実施例1?4の具体例で使用された化合物と重量条件に基づき、「炭素数22?30のアルキル基及びアミノ基1を有するアミン化合物」及び「シランカップリング剤」の範囲まで、拡張ないし一般化することが、不当であるとまではいえない。 (3)サポート要件のまとめ 以上総括するに、本件特許の請求項1及びその従属項に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであることは明らかなので、本件特許の請求項1及びその従属項の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合する。 2 申立理由2(実施可能要件) (1)特許異議申立人が主張する申立理由2は、令和2年9月16日の特許異議申立書の第2頁にて『試験方法が不明であるから、本件発明の耐汚染性が不明であり、当業者は、本件明細書に基づいて、耐汚染性試験を実施することができないので、本件明細書は当業者が実施可能なように記載されていないので、本件明細書は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない。』とするものである。 (2)試験方法について 本願明細書には「【0065】(耐汚染性) ・初期 上記のとおり製造された組成物を基材上に10mmの厚さで塗布し、50℃、50%RHの条件で24時間硬化させた、次いで23℃、50%RHの条件で3時間硬化させた後、得られたシーリング材の表面の耐汚染性を日本シーリング材工業会規格JSIA 003:2011に準じて調べた。 ・・・ 【0066】・屋外暴露後 上記のとおり製造された組成物を基材上に10mmの厚さで塗布し、50℃、50%RHの条件で24時間硬化させ、次いで23℃、50%RHの条件で3時間硬化させ、更に、屋外に3か月間置いた後、得られたシーリング材の表面の耐汚染性を日本シーリング材工業会規格JSIA 003:2011に準じて調べた。 上記評価の結果、シーリング材の表面に汚れがなかった場合、屋外暴露後の耐汚染性に非常に優れると評価してこれを「◎」と表示した。 シーリング材の表面の10%未満に珪砂が付着した場合、屋外暴露後の耐汚染性に優れると評価してこれを「〇」と表示した。 シーリング材の表面の10%以上20%未満に珪砂が付着した場合、屋外暴露後の耐汚染性に劣ると評価してこれを「△」と表示した。 シーリング材の表面の20%以上に珪砂が付着した場合、屋外暴露後の耐汚染性に非常に劣ると評価してこれを「×」と表示した。」と記載されている。 一方、日本シーリング材工業会規格JSIA 003:2011については、甲第4号証(第2頁 「4 試験器具」、「e)汚染材 桜島火山灰をJIS Z 880-1 に規定する公称目開き75μm (200メッシュ相当)の金属製網ふるいを用いてふるった粉。」と記載されている。 (3)以上の記載を考慮すると、本願明細書の【0065】、【0066】において行われた試験は、日本シーリング材工業会規格JSIA 003:2011では、汚染材として「桜島火山灰」を使用するところ、かわりに「珪砂」を用いた試験であると認められる。そして、当該試験が、「日本シーリング材工業会規格JSIA 003:2011に準じて」いる旨記載することに技術的に矛盾があるともいえない。従って、本願明細書の【0065】、【0066】の試験方法は不明であるとはいえず、当業者が、本願明細書に基づいて、耐汚染性試験を実施することができないともいえない。 (3)実施可能要件のまとめ 以上総括するに、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1、3、5?8を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていることは明らかである。したがって、本件特許に係る明細書の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合するものである。 第7 まとめ 以上総括するに、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本件発明1、3、及び、5?8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1、3、及び、5?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、訂正前の請求項2及び4は削除されているので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、請求項2及び4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも1個の架橋性シリル基を有し、前記架橋性シリル基が末端に結合する変性重合体と、 炭素数22?30のアルキル基及びアミノ基1を有するアミン化合物と、 アミノ基2を有するシランカップリング剤と、 充填剤と、 硬化触媒とを含有し、 前記アミン化合物は、前記アミノ基1を1分子中に1個有し、イミノ基を有さない、シーリング材用組成物。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 前記アミン化合物の融点が50℃以上である、請求項1に記載のシーリング材用組成物。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 前記アミン化合物の含有量が、前記変性重合体100質量部に対して、0.5?10質量部である、請求項1又は3に記載のシーリング材用組成物。 【請求項6】 前記シランカップリング剤が前記アミノ基2を1分子中に1個有し、イミノ基を有さない、請求項1、3、及び、5のいずれか1項に記載のシーリング材用組成物。 【請求項7】 前記シランカップリング剤の含有量が、前記変性重合体100質量部に対して、0.5?3.0質量部である、請求項1、3、5、及び、6のいずれか1項に記載のシーリング材用組成物。 【請求項8】 前記硬化触媒が錫触媒を含む、請求項1、3、及び、5?7のいずれか1項に記載のシーリング材用組成物。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-06-23 |
出願番号 | 特願2016-79599(P2016-79599) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(C09K)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中野 孝一 |
特許庁審判長 |
門前 浩一 |
特許庁審判官 |
瀬下 浩一 小出 輝 |
登録日 | 2020-03-02 |
登録番号 | 特許第6668903号(P6668903) |
権利者 | 横浜ゴム株式会社 |
発明の名称 | シーリング材用組成物 |
代理人 | 町田 洋一郎 |
代理人 | 町田 洋一郎 |
代理人 | 三橋 史生 |
代理人 | 武藤 三千代 |
代理人 | 武藤 三千代 |
代理人 | 伊東 秀明 |
代理人 | 三橋 史生 |
代理人 | 三和 晴子 |
代理人 | 三和 晴子 |
代理人 | 伊東 秀明 |