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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
管理番号 1376741
異議申立番号 異議2020-700607  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-17 
確定日 2021-07-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6651066号発明「ヘモグロビン類測定用試薬及びヘモグロビン類の測定方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6651066号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6651066号の請求項1、5及び6に係る特許を維持する。 特許第6651066号の請求項2?4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6651066号の請求項1?6に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)9月5日(優先権主張 2018年9月12日 日本)を国際出願日とする出願であって、令和2年1月23日にその特許権の設定登録がされ、令和2年2月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和2年8月17日に特許異議申立人鈴木 敏明(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年10月28日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年12月24日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、令和3年2月9日に意見書を提出した。そして、当審は、同年3月17日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年5月20日に意見書の提出及び訂正の請求(以下当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)を行った。
なお、上記のとおり、特許権者は本件訂正請求を行ったが、下記に記載のとおり、本件訂正請求によって特許請求の範囲の「非イオン性界面活性剤」は「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」のみに減縮され、「非イオン性界面活性剤」が「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」については申立人は既に意見を述べており、事件において提出された全ての証拠や意見を踏まえてさらに審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したため、申立人に意見書の提出を求めなかった。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容(下線は、訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記非イオン性界面活性剤が、下記成分A1、下記成分A2、下記成分A3、下記成分A4、下記成分A5又は下記成分A6である、ヘモグロビン類測定用試薬。
成分A1:オキシエチレン基の平均付加モル数が10以上20以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル
成分A2:オキシエチレン基の平均付加モル数が40以上60以下であるポリオキシエチレンステアリルエーテル
成分A3:オキシエチレン基の平均付加モル数が9以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテル
成分A4:オキシエチレン基の平均付加モル数が6以上10以下であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下であるポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテル
成分A5:オキシエチレン基の平均付加モル数が15であるポリオキシエチレントリデシルエーテル
成分A6:HLB値が11以上15以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル」
とあるのを、
「前記非イオン性界面活性剤が、オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテルである、ヘモグロビン類測定用試薬。」 に訂正する。
そして、請求項1の記載を引用する、請求項5,6も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、「請求項1?4のいずれか1項」とあるのを、「請求項1」に訂正する。
そして、請求項5に係る発明を引用する請求項6も同様に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1?5のいずれか1項」とあるのを、「請求項1又は5」に訂正する。

(7)訂正事項7
明細書の段落【0186】において、「実施例2?23、参考例24?30」とあるのを、 「実施例2,3、参考例4?30」に訂正する。
明細書の段落【0194】、【0195】、【0197】、【0201】、【0206】、【0207】、【0214】において、「実施例2?23、参考例1,24?30」とあるのを、「実施例2,3、参考例1,4?30」に訂正する。
明細書の段落【0209】の【表2】において、「実施例4」、「実施例5」、「実施例6」、「実施例7」及び「実施例8」とあるのをそれぞれ、「参考例4」、「参考例5」、「参考例6」、「参考例7」及び「参考例8」に訂正する。
明細書の段落【0210】の【表3】において、「実施例9」、「実施例10」、「実施例11」、 「実施例12」、「実施例13」、「実施例14」、「実施例15」、「実施例16」及び「実施例17」とあるのをそれぞれ、「参考例9」、「参考例10」、「参考例11」、「参考例12」、「参考例13」、「参考例14」、「参考例15」、「参考例16」及び「参考例17」に訂正する。
明細書の段落【0212】の【表5】において、「実施例18」、「実施例19」、「実施例20」、「実施例21」、「実施例22」及び「実施例23」とあるのをそれぞれ、「参考例18」、「参考例19」、「参考例20」、「参考例21」、「参考例22」及び「参考例23」に訂正する。
明細書の段落【0215】において、「実施例31?38」とあるのを、「実施例31,32、参考例33?38」に訂正する。
明細書の段落【0216】において、「実施例32,34,36?38」とあるのを、「実施例32、参考例34,36?38」に訂正する。
明細書の段落【0219】及び【0224】において、「実施例31?36」とあるのを、「実施例31,32、参考例33?36」に訂正する。
明細書の段落【0231】の【表7】において、「実施例33」、「実施例34」、「実施例35」、「実施例36」、「実施例37」及び「実施例38」とあるのをそれぞれ、「参考例33」、 「参考例34」、「参考例35」、「参考例36」、「参考例37」及び「参考例38」に訂正する。
明細書の段落【0232】において、「実施例31?36」、「実施例37,38」、「実施例31?36」及び「実施例31?36」とあるのをそれぞれ、「実施例31,32、参考例33?38」、「参考例37,38」、「実施例31,32、参考例33?38」及び「実施例31,32、参考例33?38」に 訂正する。

なお、訂正前の請求項1?6は、請求項2?6が訂正の対象である請求項1を引用するものであるから、訂正前において一群の請求項に該当し、上記訂正は一群の請求項に対してされたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1は、請求項1に規定されている非イオン性界面活性剤を、訂正前の請求項1に規定されていた成分A1の下位概念である「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0073】に、「界面活性剤の溶解性を高める観点、良好に溶血させ、高い精度でヘモグロビン類を測定する観点から、成分A1におけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは11以上、好ましくは19以下である。」と記載され、段落【0208】及び【0209】に実施例2及び3として、「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」が記載されているから、これらの訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2?4について
訂正事項2?4は、特許請求の範囲の請求項2?4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、この訂正が、新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかである。

(3)訂正事項5及び6について
訂正事項5に係る請求項5についての訂正及び訂正事項6に係る請求項6についての訂正は、訂正事項2?4により請求項2?4が削除されたことに伴い、訂正前の請求項5及び6が引用する請求項2?4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、この訂正が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(4)訂正事項7について
訂正事項7は、上記訂正事項1?6に伴って、訂正後の請求項1に記載の特許発明及び該請求項1に従属する訂正後の請求項5、6に記載の特許発明に、実施例4?23、33?38が含まれなくなったことに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、この訂正が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?6に係る発明(以下「本件発明1?6」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「 【請求項1】
陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬であって、
非イオン性界面活性剤を含み、
前記非イオン性界面活性剤が、オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテルである、ヘモグロビン類測定用試薬。
【請求項2】 削除
【請求項3】 削除
【請求項4】 削除
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤の含有量が、0.01重量%以上1.0重量%以下である、請求項1に記載のヘモグロビン類測定用試薬。
【請求項6】
赤血球含有検体と、請求項1又は5に記載のヘモグロビン類測定用試薬とを混合して混合液を得る工程と、
前記混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する工程とを備える、ヘモグロビン類の測定方法。」

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由(決定の予告)の概要
請求項1?6に係る特許に対して、当審が令和3年3月17日に特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。

(1)請求項1、3?6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2)請求項1?6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1?5に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

引用文献1:特開2001-021555号公報(甲1号証)
引用文献2:特開2007-163182号公報(甲4号証)
引用文献3:特開2013-036959号公報(甲5号証)
引用文献4:特開2014-025918号公報(甲6号証)
引用文献5:Masahiro FUKUDA, Misao KOIDE, Kazuo OHBU, "Effects of Hydrophile-Lipophile Balance of Alkyl Poly (oxyethylene) Ethers on Hemolysis", Journal of Japan Oil Chemists' Society, JP, Japan Oil Chemists' Society, 1987年8月20日, Volume 36 Issue 8 Pages 576-580(甲7号証)

2 引用文献の記載
(1)引用文献1について
ア 引用文献1(特開2001-021555号公報、甲1号証)に記載された事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。

(引1a)「【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬であって、カオトロピックイオンを含有することを特徴とする溶血試薬を提供する。また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載の溶血試薬であって、さらに緩衝剤を含有し、pHが5.0?10.0であることを特徴とする溶血試薬を提供する。また、請求項3記載の本発明は、請求項1または2記載の溶血試薬を用いることを特徴とするヘモグロビン類の測定方法を提供する。以下に本発明を詳細に説明する。」

(引1b)「【0019】上記溶血試薬には、以下の物質を添加してもよい。
(1)無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの塩類の濃度は、特に限定されないが、好ましくは1?1500mMである。
(2)pH調節剤として、公知の酸、塩基を添加してもよい。酸としては、例えば、塩酸、リン酸、硝酸、硫酸等が挙げられ、また、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化ストロンチウム、水酸化セシウム、水酸化ニッケル、水酸化アルミニウム、水酸化カドミウム等が挙げられる。 これらの酸、塩基の濃度は、特に限定されないが、好ましくは、0.001?500mMである。
(3)メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトンなどの水溶性有機溶媒と混合してもよい。これらの有機溶媒の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0?80体積%であり、カオトロピックイオン、無機酸、有機酸、これらの塩などが析出しない程度で用いるのが好ましい。
【0020】(4)界面活性剤として、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等を添加してもよい。界面活性剤を用いることにより、溶血を効率よく行うだけでなく、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等で測定を行う場合、溶血試薬の通過する流路等を洗浄する効果がある。上記界面活性剤は、好ましくはノニオン性界面活性剤が使用され、例えば、ポリオキシエチレン類(以下、ポリオキシエチレンをPOE、エチレンオキシド付加モル数を(n)で表す。)、POE(7)デシルエーテル、POE(n)ドデシルエーテル、POE(10)トリデシルエーテル、POE(11)テトラデシルエーテル、POE(n)セチルエーテル、POE(n)ステアリルエーテル、POE(n)オレイルエーテル、POE(17)セチルーステアリルエーテル、POE(n)オクチルフェニルエーテル、POE(n)ノニルフェニルエーテル、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、POE(n)モノラウリン酸ソルビタン、POE(n)モノパルミチン酸ソルビタン、POE(n)モノステアリン酸ソルビタン、POE(n)モノオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独でもまた複数混合して用いてもよい。
【0021】これらの界面活性剤の添加量は、好ましくは0.01?10重量%である。」

(引1c)「【0041】
【実施例】次に、実施例、比較例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0042】(実施例1)
〔充填剤1の調製:カルボキシル基〕テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)400g及びメタクリル酸(和光純薬社製)150gの混合物に過酸化ベンゾイル(和光純薬社製)1.5gを溶解した。これを4重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液2500mlに分散させ、撹拌しながら窒素雰囲気下で75℃に昇温し、8時間重合した。重合後、洗浄し乾燥した後、分級して平均粒径6μmの粒子を得た。
【0043】〔カラムの充填〕得られた充填剤1をカラムに以下のようにして充填した。粒子0.7gを、50mMリン酸緩衝液(pH5.8)30mlに分散し、5分間超音波処理した後、よく撹拌した。全量をステンレス製の空カラム(4.6φ×30mm)を接続したパッカー(梅谷精機社製)に注入した。パッカーに送液ポンプ(サヌキ工業社製)を接続し、圧力300kg/cm2 で定圧充填した。
【0044】〔ヘモグロビン類の測定〕得られたカラムを用いて、以下の測定条件でヘモグロビン類の測定を行った。
(測定条件)
システム:送液ポンプ:LC-9A(島津製作所社製)
オートサンプラ:ASU-420(積水化学社製)
検出器:SPD-6AV(島津製作所社製)
溶離液:溶離液A:70mMのリン酸緩衝液(和光純薬社製;pH5.7)
溶離液B:70mMのリン酸緩衝液(pH8.5)、250mM硝酸ナトリウム
測定開始より0?2分の間は溶離液Aを流し、2?2.1分の間は溶離液Bを流し、2.1?3分の間は溶離液Aを流した。
流速:2.0ml/分
検出波長:415nm
試料注入量:10μl
【0045】(測定試料:A)健常人血を採血し、抗血液凝固剤としてフッ化ナトリウムを10mg/mlとなるよう添加した。これに、150倍量の溶血試薬(界面活性剤として0.1重量%ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(トリトンX-100、東京化成社製)とカオトロピックイオンを生成する化合物として100mMグアニジン及び10mMリン酸緩衝溶液からなる溶血試薬(pH7.5))を添加して溶血し、測定試料とした。
(測定試料B;AHb)健常人血10mlにフッ化ナトリウムを添加し(10mg/ml)、さらに0.3重量%アセトアルデヒドの生理食塩水溶液1mlを添加し、37℃で3時間反応させた。これに、150倍量の溶血試薬(0.1重量%トリトンX-100と100mMグアニジン及び10mMリン酸緩衝溶液からなる溶血試薬(pH7.5))を添加して溶血し、測定試料とした。
【0046】(測定結果)上記測定条件により、試料を測定して得られたクロマトグラムを図1、2に示す。図1は、試料Aを測定した結果、図2は、試料Bを測定した結果を示す。ピーク1はHbA1a及びb、ピーク2はHbF、ピーク3は不安定型HbA1c、ピーク4は安定型HbA1c、ピーク5はHbA0、ピーク6はAHbを示す。図2では、ピーク4と6とが良好に分離されている。また、上記測定試料A、Bを5検体測定し安定型HbA1cの測定精度(SD;標準偏差、CV;変動係数値)を求めた結果を表1に示す。」

イ 引用文献1に記載された発明
(ア)上記(引1a)及び(引1b)より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬であって、
界面活性剤として、ノニオン性界面活性剤である、POE(10)トリデシルエーテル、POE(11)テトラデシルエーテルを、単独でもまた複数混合して用いる溶血試薬。」

(イ)上記(引1c)より、引用文献1には、実施例として以下の「測定試料:A」が記載されている。

「測定試料:Aとして、健常人血を採血し、抗血液凝固剤としてフッ化ナトリウムを10mg/mlとなるよう添加し、これに、150倍量の溶血試薬(界面活性剤として0.1重量%ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(トリトンX-100、東京化成社製)とカオトロピックイオンを生成する化合物として100mMグアニジン及び10mMリン酸緩衝溶液からなる溶血試薬(pH7.5))を添加して溶血した測定試料:A。」

(ウ)上記(イ)の「測定試料:A」に使用される溶血試薬は、上記(引1a)より「カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬」であるから、上記bより引用文献1には、実施例としては以下の発明(以下「引用発明’」という。)が記載されている。

「カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬であって、
界面活性剤として0.1重量%ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(トリトンX-100、東京化成社製)とカオトロピックイオンを生成する化合物として100mMグアニジン及び10mMリン酸緩衝溶液からなる溶血試薬(pH7.5)」

(2)引用文献2について
ア 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。

(引2a)「【0015】
本発明に係る溶血試薬は、HLB値が11?13の範囲のノニオン性界面活性剤であって、該界面活性剤を含有し、糖化タンパク質を検出するための酵素が有する活性を阻害しないことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る溶血方法および溶血試薬によれば、迅速に赤血球を完全溶血することができ、且つ酵素への活性阻害もない。
また、本発明に係る溶血方法および溶血試薬は、糖尿病用のHbA1c測定マイクロチップに使用するのに特に好適である。」

(引2b)「【0022】
本発明者らは、前記特定の成分を検出するための酵素の活性を低下させることがなく、同時に迅速に完全溶血の能力を持つ溶血試薬を探索するために、数多くのノニオン性界面活性剤について検討した結果、HLB値が11?13の範囲のノニオン性界面活性剤が迅速に完全溶血でき、且つ酵素の活性に阻害がないことを見出すに至った。
また、上記特性値を満たすノニオン性界面活性剤は、さらにエーテル型ノニオン性界面活性剤であることにより、完全溶血するまでの時間をさらに短くすることができた。
HLB値とは界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値であり、Hydrophile-Lipophile Balanceの頭文字を取ったものである。親水親油バランスともいう。この概念は1949年にAtlasPowderCompanyのウィリアム・グリフィンによって提唱された。計算によって決定する方法がいくつか提案されている。
(1)アトラス法: エステル系の界面活性剤について、鹸化価をS、界面活性剤を構成する脂肪酸の酸価をAとし、HLB値を20(1-S/A)で定義する。
(2)グリフィン法: HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量で定義する。
(3)デイビス法: 官能基によって決まる基数を定め(例えばメチル基やメチレン鎖は親油基で0.475、水酸基は親水基で1.9など)、HLB値=7+親水基の基数の総和-親油基の基数の総和で定義する。界面活性剤の混合物のHLB値は各成分のHLB値の加重平均となる。
(4)標準試料にHLB値を決定したい界面活性剤を添加して乳化し、実験的に決定する方法もあるが煩雑であるためあまり行われない。
(5)高速液体クロマトグラフィーでの保持時間から決定する方法もある。
本発明には、有機概念図(甲田善生,「有機概念図 -基礎と応用-」,p.227(1984)三共出版)に基づくIOB方法で求めたHLB値を用いた。IOB値は界面活性剤の無機性値と有機性値の比で、HLB値はIOB値×10の値である。
【0023】
本発明においては、下記一般式(1)で表わされるポリオキシエチレン系ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
一般式(1)
R-(OCH_(2)CH_(2))_(n)OH
上記一般式(1)中、Rは、炭素数8?20の直鎖でも分岐していてもよい脂肪族炭化水素基、炭素数8?20の直鎖でも分岐していてもよいアルキル基を置換基として有していてもよい脂環式炭化水素基、または、炭素数8?20の直鎖でも分岐していてもよいアルキル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基であり、nは5?20の整数である。
上記脂環式炭化水素基としては、1つの環の炭素数が5?6であり、脂環式炭化水素環の数が1?4であるものが好ましく挙げられる。
上記芳香属炭化水素基としては、1つの環の炭素数が5?6であり、芳香属炭化水素環の数が1?4であるものが好ましく挙げられる。
【0024】
ポリオキシエチレン系ノニオン性界面活性剤として好ましくは、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル及び、炭素数8?20の直鎖でも分岐していてもよいアルキル基を置換基として有していてもよいポリオキシエチレンフェニルエーテルが挙げられる。
【0025】
本発明においてさらに好ましく使用されるノニオン性界面活性剤としては、
ポリオキシエチレンセチルエーテル(オキシエチレン単位10?17のもの)、
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(オキシエチレン単位12?20のもの)、
ポリオキシエチレンステアリルエーテル(オキシエチレン単位11?20のもの)、
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン単位7?12のもの)、
ポリオキシエチレンイソセチルエーテル(オキシエチレン単位10?15のもの)、
ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル(オキシエチレン単位10?20のもの)、
ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、
ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル(オキシエチレン単位16?20のもの)及び
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(該アルキル基は、炭素数が8?20であり、直鎖でも分岐していてもよい。例えば、オキシエチレン単位平均9?10含有 Triton X-100)が挙げられる。
【0026】
本発明において溶血剤に用いられる上記界面活性剤の使用濃度は、0.05%?5%(質量濃度)が好ましく、好ましくは0.05%?1%、より好ましくは0.1%?1%、さらに好ましくは0.1%?0.2%である。この濃度範囲であれば、迅速な溶血能力を持つと同時に、エンザイムイムノアッセイで通常用いられる多くの標識酵素の酵素活性に悪影響を与えることもない。」


(引2c)「【0044】
表1に、使用濃度0.1%における各化合物の特性と迅速溶血評価結果、酵素阻害評価結果をまとめて示す。完全溶血を○とし、それ以外を×とした。また、0.05%、0.2%、0.5%および1%の各濃度においても同様の結果を得た。
【0045】
上記のノニオン性界面活性剤の溶血性能と酵素への阻害評価の結果から、本願発明のノニオン性界面活性剤(化合物1?化合物6)、すなわち、11?13という特定のHLB値範囲内のポリオキシエチレンエーテルが優れた溶血能力を有し、且つ酵素活性の阻害性も無いことがわかった。比較化合物1?比較化合物3はイオン性界面活性剤であり、強力な溶血力を有するが、酵素活性を阻害性した。比較化合物4はノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレンラウリルエーテルであるが、HLB値が10であり、酵素活性を阻害し、弱い溶血力が確認された。また、比較化合物5、6はエステル系のノニオン性界面活性剤であり、酵素活性の阻害を示さなかったが、強力な溶血力を持っていなかった。
【0046】
【表1】



イ 引用文献2に記載された技術事項
(ア)上記(引2a)より、引用文献2には、「HLB値が11?13の範囲のノニオン性界面活性剤を含有」する「溶血試薬は」、「糖化タンパク質を検出するための酵素が有する活性を阻害しない」ものであって、「迅速に赤血球を完全溶血することができ」、「糖尿病用のHbA1c測定マイクロチップに使用するのに特に好適である」旨記載されている。

(イ)上記(引2b)より、引用文献2には、「迅速に完全溶血でき」る「HLB値が11?13の範囲のノニオン性界面活性剤が」、「エーテル型ノニオン性界面活性剤であることにより、完全溶血するまでの時間をさらに短くすることができ」る旨、「ノニオン性界面活性剤として」、「ポリオキシエチレンセチルエーテル(オキシエチレン単位10?17のもの)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(オキシエチレン単位12?20のもの)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン単位7?12のもの)」「が挙げられる」旨記載されている。

(ウ)上記(引2c)より、引用文献2には、「11?13という特定のHLB値範囲内のポリオキシエチレンエーテル」である「ノニオン性界面活性剤(化合物1?化合物6)」は、「優れた溶血能力を有」する旨記載され、「迅速溶血評価結果」が示された「表1」より、ポリオキシエチレンラウリルエーテルである化合物1?3と、ポリオキシエチレンセチルエーテルである化合物5が、Triton X-100である化合物6と同様に「迅速溶血評価結果」が良好である旨記載されている。

(エ)上記(ア)?(ウ)より引用文献2には、以下の技術事項(以下「技術事項2」という。)が記載されている。

「HLB値が11?13の範囲のノニオン性界面活性剤を含有する溶血試薬は、糖化タンパク質を検出するための酵素が有する活性を阻害しないものであって、迅速に赤血球を完全溶血することができ、糖尿病用のHbA1c測定マイクロチップに使用するのに特に好適であり、
迅速に完全溶血できるHLB値が11?13の範囲のノニオン性界面活性剤は、エーテル型ノニオン性界面活性剤であることにより、完全溶血するまでの時間をさらに短くすることができ、
ノニオン性界面活性剤として、
ポリオキシエチレンセチルエーテル(オキシエチレン単位10?17のもの)、
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(オキシエチレン単位12?20のもの)、
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン単位7?12のもの)
が挙げられ、
実際に、ポリオキシエチレンラウリルエーテルである化合物1?3と、ポリオキシエチレンセチルエーテルである化合物5が、Triton X-100である化合物6と同様に迅速溶血評価結果が良好である。」

(3)引用文献3について
ア 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、以下の事項が記載されている。

(引3a)「【0015】
本発明の測定方法の特徴的な構成
本発明の全血検体の成分測定方法は、以下の工程を含むことを特徴とする。
(1)全血検体を、酸化剤および界面活性剤を含む溶液と希釈する工程。
(2)希釈した検体の目的成分を測定する工程。
(3)希釈した検体のヘモグロビン(Hb)量を定量する工程。
(4)(2)における測定結果を、(3)における定量値に基づいてヘマトクリット(Ht)補正を行うことにより、血清または血漿を測定した際の測定結果に換算する工程。」

(引3b)「【0018】
「目的成分の測定」
本発明の成分測定方法が対象とする目的成分およびその測定方法は、特に限定されない。
目的成分としては、総タンパク質(TP)、アルブミン(Alb)、コリンエステラーゼ、乳酸脱水素酵素(LDH)、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、アルカリホスファターゼ、総ビリルビン(T.B)、直接ビリルビン(D.B) 、アミラーゼ(AMY)、クレアチニン(CRE)、クレアチンキナーゼ(CK)、総コレステロール(T-CHO)、中性脂肪(トリグリセリド)、HDLコレステロール(HDL-C)、LDLコレステロール(LDL-C)、尿素窒素(BUN)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、クロール(Cl)、カルシウム(CA)、無機リン(IP)、鉄(血清鉄:FE)、不飽和鉄結合能(UIBC)、グルコース(GLU)、HbA1c、グリコアルブミン、インスリン、C反応性蛋白(CRP)、CEA、AFP、PSA、BNP、NT-proBNPなどが挙げられる。
目的成分の測定方法としては、検体と目的成分に反応する試薬とを接触させることにより生じる物理化学的変化を測定する方法など、種々の公知の測定原理を用いた方法が挙げられる。物理化学的変化としては、色素の化学変化や凝集による光学的・電気化学的変化などが例示され、その手段として、酵素などを介してもよい。
波長は、適宜設定すればよく300nmから850nmの間であれば、特に限定されない。ヘモグロビン量の定量と同じ波長を用いることもできる。」

(引3c)「【0025】
「界面活性剤」
本発明の成分測定方法で用いる界面活性剤としては、特に限定されないが、以下の(a)?(g)のうちいずれかが例示できる。
(a)下記式(I)で示される化合物
R-O-X ・・・(I)
(Rは、炭素数が9?18のアルキル基または置換アルキル基であり、Xは、ポリオキシエチレン残基である。)
このような化合物としては、エマルゲン130K、エマルゲン150、エマルゲン147、エマルゲン120が例示できる。」

(引3d)「【0032】
後述の実施例でも示すように、全血検体を、本発明の方法で用いる酸化剤および界面活性剤を含む溶液で希釈することによって、迅速にHbの吸光度が一定になる。
このような現象がおこる理由は、本発明の界面活性剤を用いることでHbの溶血および試料の均一化が迅速に行われ、同時に、本発明の酸化剤によってHbがメト化されるため、迅速にヘモグロビンの酸化還元状態を一定にすることができるからであると考察される。
これにより、好ましくは希釈後60秒、50秒、40秒、30秒、20秒、10秒以下でHbの吸光度が一定になり、迅速なHb定量が可能となることから、トータルでの測定時間が、好ましくは10分、5分、3分、2分、60秒以下と大幅に短縮されるため、迅速な測定が可能となる。」

イ 引用文献3に記載された技術事項
上記(引3a)?(引3c)より、引用文献3には、以下の技術事項(以下「技術事項3」という。)が記載されている。

「全血検体の成分測定方法は、
全血検体を、界面活性剤を含む溶液と希釈する工程と、
希釈した検体の目的成分を測定する工程とを含み、
成分測定方法が対象とする目的成分は、HbA1cであり、
成分測定方法で用いる界面活性剤としては、エマルゲン147、エマルゲン120が例示され、
これらの界面活性剤を用いることでHbの溶血および試料の均一化が迅速に行われる技術。」

(4)引用文献4について
ア 引用文献4に記載された事項
引用文献4には、以下の事項が記載されている。

(引4a)「【0030】
界面活性剤AとBとの組み合わせによって血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除が可能となるメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように考えられる。界面活性剤Aに、血球への溶解性の高い界面活性剤Bが組み合わされることにより、界面活性剤A及びBが混合ミセルを形成し、この混合ミセルが、その割合によって界面活性剤Aの血球への選択性を邪魔することなく血球に選択的に作用し、界面活性剤Bの高い溶解性により接触した血球を迅速に溶解する。すなわち、血球のすばやく排除を可能とすることで、がん細胞へのダメージがより抑制されると考えられる。ただし、本開示はこれらのメカニズムに限定されて解釈されなくてもよい。」

(引4b)「【0045】
[界面活性剤B]
本開示の処理方法に使用する界面活性剤Bは、赤血球を溶解する能力が前記界面活性剤Aのそれよりも高い非イオン性界面活性剤である。本明細書において、「赤血球の溶解」とは、赤血球を含む試料と混合した場合の溶血が生じる現象をいい、例えば、同じ濃度及び/又は混合比で処理した場合に溶血させるまでの時間が速いほど赤血球を溶解する能力が高いと判断できる。溶血とは赤血球の細胞膜が、物理的又は化学的、生物学的など様々な要因によって損傷や溶解し、ヘモグロビン等が細胞外に漏出し赤血球が死に至る現象のことを言う。本開示の処理方法に使用する界面活性剤Bは、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、その白血球の成育阻害の能力が前記界面活性剤Aのそれよりも高いことが好ましい。
【0046】
界面活性剤Bは、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、非イオン性界面活性剤であって、一又は複数の実施形態において、ポリオキシエチレンポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(EO=13?22)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0047】
ポリオキシエチレンポリオキシアルキレンアルキルエーテル型の界面活性剤Bは、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、好ましくは下記式(III)で表わされる非イオン性界面活性剤である。
R^(3)-O-(AO)m/(EO)n-R^(4) (III)
[前記式(III)中、R^(3)は炭素数1?24のアルキル基であり、R^(4)は水素原子又は炭素数1?3のアルキル基を示し、AOは炭素数3?6のオキシアルキレン基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、m及びnはそれぞれAO及びEOの平均付加モル数である。mは1?100の数であり、nは0?50の数であり、"/"はAO基及びEO基が、順序に関係なく、ランダム又はブロックのいずれに付加したものであってもよいことを示す。]
【0048】
前記式(III)のR^(3)は、一又は複数の実施形態において、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル(ラウリル)、トリデシル、テトラデシル(ミリスチル)、ペンタデシル、ヘキサデシル(セチル)、ヘプタデシル、オクタデシル(ステアリル)、ノナデシル、イコシル、ヘネイコシル、ドコシル(ベヘニル)、トリコシル、テトラコシル等が挙げられる。前記式(III)のR^(4)は、水素原子又は炭素数1?3の炭化水素基であって、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、水素原子又は炭素数1?3のアルキル基であり、前記アルキル基は、一又は複数の実施形態において、メチル基、エチル基、プロピル基、又はイソプロピル基である。前記式(III)中、AOとしては、一又は複数の実施形態において、ポリオキシポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等が挙げられる。前記式(III)中、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、mは、1?60が好ましく、1?30がより好ましい。同様に、nは、1?50が好ましく、1?25がより好ましい。
【0049】
前記式(III)の界面活性剤Bは、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが好ましい。前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、HLB値(親水性-親油性バランス値)が、10.0?18.0のものが好ましく、より好ましくは12.0?15.0、さらに好ましくは12.5?13.5である。さらに、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、同様の観点から、曇点(℃/2%水溶液)が、34℃?88℃のものが好ましく、より好ましくは40℃?75℃、さらに好ましくは50℃?60℃である。
【0050】
前記式(III)の界面活性剤Bは、一又は複数の実施形態において、市販品として、EMALEX DAPE-207、EMALEX DAPE-210、EMALEX DAPE-212、EMALEX DAPE-215、EMALEX DAPE-220、EMALEX DAPE-230(以上、日本エマルジョン社製)、プルラファックLF300、プルラファックLF400、プルラファックLF431、プルラファックLF711、プルラファックLF900、プルラファックLF901、プルラファックLF1300〔BASFジャパン(株)製〕及びエマルゲンLS-106、エマルゲンLS-110、エマルゲンLS114、エマルゲンMS110〔花王(株)製〕として市販され、ワンダーサーフRL-80、ワンダーサーフRL-100、ワンダーサーフRL-140、ワン
ダーサーフS-800、ワンダーサーフS-1000、ワンダーサーフS-1400(以上、青木油脂社製)、ユニセーフPKA-5015、ユニセーフPKA-5016、ユニセーフPKA-5017、ユニセーフLM-2(以上、日本油脂社製)等が挙げられる。
【0051】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(EO=13?22)型の界面活性剤Bは、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、好ましくは下記式(IV)で表わされる非イオン性界面活性剤である。
R^(5)-O-(EO)n-R^(6) (IV)
[前記式(IV)中、R^(5)は炭素数12?40の炭化水素基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、nはEOの平均付加モル数であって8?22であり、R^(6)は水素原子又は炭素数1?3の炭化水素基である。]
【0052】
前記式(IV)のR^(5)は、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、分岐鎖を有する炭素数12?40の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは分岐鎖を有する炭素数12?30のアルキル基である。前記炭化水素基及びアルキル基の炭素数は、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、12?28が好ましく、より好ましくは14?26、さらに好ましくは16?24、さらにより好ましくは18?22、さらにより好ましくは20である。前記式(IV)のR^(5)の好ましい実施形態として、イソヘキシル基、イソノニル基、イソデシル基、イソドデシル基、イソヘキサデシル基、ヘキシルデシル基、ヘキシルドデシル基、ヘキシルヘキサデシル基、オクチルデシル基、オクチルドデシル基、オクチルヘキサデシル基、ノニルデシル基、ノニルドデシル基、ノニルヘキサデシル基が挙げられ、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、オクチルドデシル基が好ましい。前記式(IV)のR^(6)は、水素原子又は炭素数1?3の炭化水素基であって、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、水素原子又は炭素数1?3のアルキル基であり、前記アルキル基は、一又は複数の実施形態において、メチル基、エチル基、プロピル基、又はイソプロピル基である。前記式(IV)として、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、下記式(V)がより好ましい。
【0053】
【化3】

【0054】
式(IV)及び(V)におけるEOの平均付加モル数nは、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、10?22が好ましく、より好ましくは13?22、さらに好ましくは15?21、さらにより好ましくは18?21、さらにより好ましくは20である。」

イ 引用文献4に記載された技術事項
上記(引4a)及び(引4b)より、引用文献4には、以下の技術事項(以下「技術事項4」という。)が記載されている。

「高い溶解性により接触した血球を迅速に溶解する界面活性剤Bは、赤血球を溶解する能力が高い非イオン性界面活性剤であって、
下記式(IV)で表わされるポリオキシエチレンアルキルエーテル(EO=13?22)型の非イオン性界面活性剤である界面活性剤B。
R^(5)-O-(EO)n-R^(6) (IV)
[前記式(IV)中、R^(5)は炭素数12?40の炭化水素基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、nはEOの平均付加モル数であって8?22であり、R^(6)は水素原子又は炭素数1?3の炭化水素基である。]」

(5)引用文献5について
引用文献5には、以下の事項が記載されている。

(引5a)「Zaslavsky et al^(3)). reported that the hemolytic activity of nonionic surfactants does not depend on the hydrophile-lipophile balance (HLB) of the compounds. However, they claimed that when the alkyl chain length is 12, the hemolytic activity becomes the greatest in nonionic surfactant with an oxyethylene number of 9 to 15.」(578頁右欄4-11行、当審訳:「Zaslavskyら^(3))は、非イオン性界面活性剤の溶血活性は、化合物の親水性-親油性バランス(HLB)に依存しないことを報告した。 しかし、彼らは、アルキル鎖の長さが12の場合、溶血活性は、オキシエチレン数が9?15の非イオン性界面活性剤で最大になると主張した。」)

(6)甲2号証に記載の事項
甲2号証(特開2002-82105号公報)には、以下の事項が記載されている。

(甲2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ヘモグロビン類の測定方法に用いられる、カチオン交換液体クロマトグラフィー用充填剤であって、
安定型HbA1c保持力試験法により、80mMリン酸緩衝液(pH5.60)を使用して測定した保持力パラメータが2.5?60、
及び/または、45mM過塩素酸含有30mMリン酸緩衝液(pH5.50)を使用して測定した保持力パラメータが1.5?60であることを特徴とする液体クロマトグラフィー用充填剤。
【請求項2】 請求項1記載の液体クロマトグラフィー用充填剤が、カラム筐体に充填されてなる液体クロマトグラフィー用カラム。
【請求項3】 請求項1記載の充填剤または請求項2記載のカラムを使用した、液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法。」

(甲2b)「【0052】(6)界面活性剤として、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等を添加してもよい。界面活性剤を用いることにより、溶血を効率よく行うだけでなく、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等で測定を行う場合、溶血試薬の通過する流路等を洗浄する効果がある。上記界面活性剤は、好ましくはノニオン性界面活性剤が使用され、例えば、ポリオキシエチレン類(以下、ポリオキシエチレンをPOE、エチレンオキシド付加モル数を(n)で表す。)、POE(7)デシルエーテル、POE(n)ドデシルエーテル、POE(10)トリデシルエーテル、POE(11)テトラデシルエーテル、POE(n)セチルエーテル、POE(n)ステアリルエーテル、POE(n)オレイルエーテル、POE(17)セチルーステアリルエーテル、POE(n)オクチルフェニルエーテル、POE(n)ノニルフェニルエーテル、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、POE(n)モノラウリン酸ソルビタン、POE(n)モノパルミチン酸ソルビタン、POE(n)モノステアリン酸ソルビタン、POE(n)モノオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独でもまた複数混合して用いてもよい。また、これらの界面活性剤の添加量は、好ましくは0.01?10重量%である。」

(7)甲3号証に記載の事項
甲3号証(特開2003-344372号公報)には、以下の事項が記載されている。

(甲3a)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】キャリブレータ及びコントロール液は、溶液として調製した後、HbA1c値が経時的に小さくなる現象が認められる。これは、キャリブレータ及びコントロール液を冷蔵保存すると、HbA1c値が経時的に小さくなる現象が抑制されることから、前記現象はキャリブレータ及びコントロール液中のHbA1cが温度の影響を受けて、何らかの変性きたし、結果としてHbA1cの測定値が誤差を受けていると推定される。
【0005】特に高速液体クロマトグラフィー法(以下HPLC法と記す。)による測定において顕著に認められるため、HbA1cの3次元構造が変化している可能性がある。ただし、検体中に存在するHbA1c値は経時的な変化が認められず、キャリブレータ及びコントロール液に限ってHbA1c値は経時的な変化が認めらることから、一度乾燥されたHbA1cが、温度による影響を受けることにより、3次元構造が経時的に変化していると推測される。しかし、本発明者らが調べる限り原因は未だ解明されていない。」

(甲3b)「【0020】本発明において、好ましくは添加される上記非イオン性界面活性剤とは特に限定されるわけではないが、例えば、ポリオキシエチレン類(以下、ポリオキシエチレンをPOE、エチレンオキシド付加モル数を(n)で表わす。)、POE(7)デシルエーテル、POE(n)ドデシルエーテル、POE(10)トリデシルエーテル、POE(11)テトラデシルエーテル、POE(n)セチルエーテル、POE(n)ステアリルエーテル、POE(n)オレイルエーテル、POE(17)セチル-ステアリルエーテル、POE(n)オクチルフェニルエーテル、POE(n)ノニルフェニルエーテル、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、POE(n)モノラウリン酸ソルビタン、POE(n)モノパルミチン酸ソルビタン、POE(n)モノステアリン酸ソルビタン、POE(n)モノオレイン酸ソルビタン、POE(9)ラウリルエーテル等が挙げられる。また、オキシエチレン-オキシプロピレンブロック共重合体等の高分子化合物も用いることができる。上記界面活性剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上併用されて用いられてもよい。また、1種あるいは2種以上の界面活性剤の含有量は、好ましくは0.01?10重量%である。」

3 当審の判断
(1)特許法36条6項1号について
当審は、

本件の発明の詳細な説明において開示された有効な実施例として記載されている非イオン性界面活性剤は、成分A1はオキシエチレン基の平均付加モル数及びアルキル基の炭素数が、成分A2?成分A4は、オキシエチレン基の平均付加モル数が、そして、成分A6はHLB値が、それぞれ特定のものであって、各成分はそれぞれ単独で使用された実施例のみであるから、訂正前の請求項1、3及び4に係る発明の非イオン界面活性剤の成分は、有効な実施例として記載された成分以外のものを含んでおり、また、複数の成分を混合することも排除していない。
そうすると、ヘモグロビン類測定用試薬において、成分中のオキシエチレン基の平均付加モル数、アルキル基の炭素数又はHLB値が相違した場合にどの程度の効果を有するか、実際に実施してみないと予測することができないという、出願時の技術常識に照らしても発明の詳細な説明において開示された内容を、訂正前の請求項1、3及び4に係る発明の範囲まで、拡張ないし一般化できるとはいえないから、訂正前の請求項1、3及び4に係る発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

旨通知したが、本件訂正請求により、請求項1に係る発明の非イオン性界面活性剤が、「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」に訂正され、請求項3及び4は削除されたので、上記理由は解消した。

(2)特許法29条2項について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明’とを対比する。

a 引用発明’の「カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬」は、本件発明1の「陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬」に相当する。

b 引用発明’が含む「界面活性剤」である「ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(トリトンX-100、東京化成社製)」は、オキシエチレン基の平均付加モル数が10のPOEオクチルフェニルエーテルであって、上記(引1b)より「ノニオン性界面活性剤」であるから、本件発明1の「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテルである」「前記非イオン性界面活性剤」とは、「前記非イオン性界面活性剤」である点で共通する。

c そうすると、a及びbより本件発明1と引用発明’とは、以下の一致点と相違点がある。

(一致点)「陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬であって、
非イオン性界面活性剤を含む、ヘモグロビン類測定用試薬。」

(相違点)ヘモグロビン類測定用試薬に含まれる非イオン性界面活性剤が、本件発明1は、「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」であるのに対し、引用発明’が、「ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(トリトンX-100、東京化成社製)」である点。

(イ)判断
上記相違点について検討する。

a 上記(引1b)より、引用文献1には、「カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬」に含まれる「ノニオン性界面活性剤」として、「POE(n)ドデシルエーテル」、「POE(n)セチルエーテル」、「POE(n)ステアリルエーテル」、「POE(n)オレイルエーテル」が、「ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(トリトンX-100、東京化成社製)」である「POE(n)オクチルフェニルエーテル」とともに、「単独でもまた複数混合して用い」ることができる旨記載されているが、「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」は記載されていない。

b 技術事項2には、「ノニオン性界面活性剤を含有する溶血試薬」の「ノニオン性界面活性剤」として「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」を含む「ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン単位7?12のもの)」が挙げられており、技術事項2の「溶血試薬」は、「糖化タンパク質を検出するための酵素が有する活性を阻害しないもの」であるが、「糖化タンパク質を検出するための酵素が有する活性を阻害しない」「ノニオン性界面活性剤」の内の「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」が、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬に含まれる場合においてどの程度の効果を有するか、実際に実施してみないと予測することができないという、出願時の技術常識を考慮すると、引用発明’のヘモグロビン類測定用試薬に含まれる非イオン性界面活性剤として、技術事項2の「ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン単位7?12のもの)」の内のオキシエチレン基の平均付加モル数が12であるものを適用することは、当業者が容易に想到できたことであるとはいえないし、仮に、適用できたとしても、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定する際に格別顕著な効果を得られることを、当業者が予測し得たとは到底認められない。

c 技術事項3の「成分測定方法が対象とする目的成分」である「HbA1c」を「測定する」ために「全血検体」を「希釈する」ための「溶液」に含まれる「界面活性剤」として例示されている「エマルゲン120」は、「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」であり、技術事項4の「赤血球を溶解する能力が高い非イオン性界面活性剤であ」るポリオキシエチレンアルキルエーテル(EO=13?22)型の非イオン性界面活性剤である界面活性剤B」には、「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」が含まれ、引用文献5には、「アルキル鎖の長さが12の場合、溶血活性は、オキシエチレン数が9?15の非イオン性界面活性剤で最大」となる旨記載されており、「オキシエチレン数が9?15の非イオン性界面活性剤」は、「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」が含まれているが、引用文献3?5に記載された非イオン性界面活性剤を含む溶液は、溶血性能が良い旨記載されているものの、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬において使用する場合の記載はないから、上記bと同様に、引用発明’のヘモグロビン類測定用試薬に含まれる非イオン性界面活性剤として、技術事項3、4及び引用文献5に記載された非イオン性界面活性剤を適用することは、当業者が容易に想到できたことであるとはいえないし、仮に、適用できたとしても、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定する際に格別顕著な効果を得られることを、当業者が予測し得たとは到底認められない。

d したがって、本件発明1は、引用発明’、引用文献1及び5に記載された技術事項、技術事項2?4に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。

イ 本件発明5及び6について
本件発明5は、本件発明1の「ヘモグロビン類測定用試薬」において、「前記非イオン性界面活性剤の含有量が、0.01重量%以上1.0重量%以下である」旨の限定を加えたものであって、本件発明6は、「赤血球含有検体と」、本件発明1又は5の「ヘモグロビン類測定用試薬とを混合して混合液を得る工程と、前記混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する工程とを備える、ヘモグロビン類の測定方法」としたものであり、何れの発明も上記相違点を有しているから、上記アと同様の理由により、本件発明5及び6は、引用発明’、引用文献1及び5に記載された技術事項、技術事項2?4に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。

(3)特許異議申立人の意見について
申立人は、令和3年2月9日に提出した意見書において、ヘモグロビン類の測定を高精度で行う場合に、赤血球中のヘモグロビンを可溶化する必要があることは技術常識であるから、良好な溶血性能を示す非イオン性界面活性剤であれば、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定する際においても効果があることは、当業者であれば容易に予測できるものであるから、本件発明は、引用文献1?5から容易に想到できるものである旨主張している。
しかしながら、上記(2)において検討したとおり、特定の非イオン性界面活性剤が、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬に含まれる場合においてどの程度の効果を有するか、実際に実施してみないと予測することができないという、出願時の技術常識を考慮すると、引用文献2?5に記載された非イオン性界面活性剤が良好な溶血性能を示すとしても、この非イオン性界面活性剤が陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬に含まれる場合において、格別顕著な効果を得られることを、当業者が予測し得たとは到底認められないから、本件発明は、引用文献1?5から容易に想到できるものであるとはいえない。

第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1、3及び6に係る発明は、甲1?3号証に記載の発明であって特許法29条1号3号に該当し、特許法29条1項に規定に違反してされたものであり、請求項1?6に係る発明は、甲2?7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである旨も主張している。
しかしながら、上記第4の3(2)で検討したとおり、本件発明1及び6と甲1号証である上記引用文献1に記載された発明である引用発明’とを対比すると上記相違点で相違し、該相違点に係る構成は引用文献1にも、甲2及び3号証にも記載されていないから、本件発明1及び6は、甲1?3号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲2及び3号証に記載された発明と本件発明1、5及び6とは、上記相違点で相違するから、甲2及び3号証に記載された発明からも、当業者が容易に想到できたものであるともいえない。
したがって、申立人のかかる主張は、採用することができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、5及び6に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項1、5及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2?4に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項2?4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ヘモグロビン類測定用試薬及びヘモグロビン類の測定方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤を含むヘモグロビン類測定用試薬に関する。また、本発明は、上記ヘモグロビン類測定用試薬を用いたヘモグロビン類の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、糖尿病及び異常ヘモグロビン病等の診断のために、ヘモグロビン類の濃度が測定されている。例えば、ヘモグロビンA1a、ヘモグロビンA1b、ヘモグロビンF、ヘモグロビンA1c、ヘモグロビンA0及びヘモグロビンA2等のヘモグロビン、アセチル化ヘモグロビン及びカルバミル化ヘモグロビン等の修飾ヘモグロビン、並びにヘモグロビンS及びヘモグロビンC等の異常ヘモグロビン等のヘモグロビン類の濃度が測定されている。これらのヘモグロビン類の中でも、特に、ヘモグロビンA1c値が測定されている。ヘモグロビン類の濃度を測定する方法としては、主に液体クロマトグラフィー法が挙げられる。
【0003】
液体クロマトグラフィー法では、血液等の検体に溶血試薬を添加し、溶血後の試料を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定し、得られたクロマトグラムのピークを演算処理することによりヘモグロビンA1c値等のヘモグロビン類の濃度を求める。従来、溶血試薬として、オキシエチレン基の平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(例えば商品名「トリトンX-100」)を含む組成物が用いられている。
【0004】
下記の特許文献1には、ヒトの血液のサンプル中のヘモグロビンA1cを他のグリコシル化及び非グリコシル化ヘモグロビン並びにヘモグロビンA1cの前駆体のシッフ塩基から分離するヘモグロビンA1cの分離方法が開示されている。また、特許文献1の実施例では、0.33重量%のトリトンX-100を含む溶血試薬が用いられている。
【0005】
下記の特許文献2には、カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬が開示されている。上記溶血試薬は、カオトロピックイオンを含有する。また、特許文献2の実施例では、0.1重量%のトリトンX-100を含む溶血試薬が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58-191968号公報
【特許文献2】特開2001-021555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に記載のようなオキシエチレン基の平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルを含む溶血試薬(ヘモグロビン類測定用試薬)は、溶血性能に優れる。そのため、全血等の検体を該溶血試薬で処理して、陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定すると、ヘモグロビン類のピークが良好に得られる。また、得られる全てのピークにおいてショルダーピーク及びピーク割れ等が生じにくい。そのため、高い精度でヘモグロビン類を測定することができる。
【0008】
また、オキシエチレン基の平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルを含む溶血試薬は、陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定したときに、キャリーオーバーが少ない。そのため、多数の検体を連続測定した場合でも、高い精度でヘモグロビン類を測定することができる。
【0009】
一方、欧州において、REACH規制(Registration,Evaluation,Authorisation and Restriction of Chemicals)が2007年に発効し、特定の化学品の使用が制限されることとなった。また、2017年には、オキシエチレン基の平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルを0.1重量%以上含む製品がREACH規制の対象とされた。また、欧州以外の国でもオキシエチレン基の平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルの使用量を削減することは、環境負荷の軽減と人体の安全性の向上に寄与する。
【0010】
本発明の目的は、良好に溶血させることができ、かつ高い精度でヘモグロビン類を測定することができるヘモグロビン類測定用試薬を提供することである。より具体的には、本発明の目的は、オキシエチレン基の平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルを含まなくても、該成分が配合されたヘモグロビン類測定用試薬と同等のレベルで溶血させることができ、かつ同等の精度でヘモグロビン類を測定することができるヘモグロビン類測定用試薬を提供することである。
【0011】
また、本発明の目的は、上記ヘモグロビン類測定用試薬を用いたヘモグロビン類の測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬であって、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤が、下記成分A1、下記成分A2、下記成分A3、下記成分A4、下記成分A5、下記成分A6、下記成分A7、下記成分A8又は下記成分A9であり、前記両性界面活性剤が、下記成分B1、下記成分B2又は下記成分B3である、ヘモグロビン類測定用試薬が提供される。
【0013】
成分A1:オキシエチレン基の平均付加モル数が8以上20以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル
【0014】
成分A2:オキシエチレン基の平均付加モル数が40以上60以下であるポリオキシエチレンステアリルエーテル
【0015】
成分A3:オキシエチレン基の平均付加モル数が9以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテル
【0016】
成分A4:オキシエチレン基の平均付加モル数が6以上10以下であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下であるポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテル
【0017】
成分A5:オキシエチレン基の平均付加モル数が15であるポリオキシエチレントリデシルエーテル
【0018】
成分A6:HLB値が11以上15以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル
【0019】
成分A7:n-ノナノイル-N-メチル-D-グルカミン
【0020】
成分A8:n-オクチル-β-D-グルコピラノシド
【0021】
成分A9:サポニン
【0022】
成分B1:3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホネート
【0023】
成分B2:3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシプロパンスルホネート
【0024】
成分B3:ラウリルジメチルアミンオキサイド
【0025】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬のある特定の局面では、前記非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤が、前記成分A1、前記成分A2、前記成分A3、前記成分A4、前記成分A5又は前記成分A6を含み、前記成分A1が、オキシエチレン基の平均付加モル数が9、12若しくは19であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、又はオキシエチレン基の平均付加モル数が13若しくは20であるポリオキシエチレンセチルエーテルであり、前記成分A2が、オキシエチレン基の平均付加モル数が50であるポリオキシエチレンステアリルエーテルであり、前記成分A3が、オキシエチレン基の平均付加モル数が9又は13であるポリオキシエチレンオレイルエーテルであり、前記成分A4が、オキシエチレン基の平均付加モル数が7又は9であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下のポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテルであり、前記成分A6が、HLB値が12.5、12.7又は14.0であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルである。
【0026】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬のある特定の局面では、前記非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤が、前記成分A1又は前記成分A3を含み、前記成分A1が、オキシエチレン基の平均付加モル数が10以上15以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルであり、前記成分A3が、オキシエチレン基の平均付加モル数が10以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテルである。
【0027】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬のある特定の局面では、前記成分A1が、オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、又はオキシエチレン基の平均付加モル数が13であるポリオキシエチレンセチルエーテルであり、前記成分A3が、オキシエチレン基の平均付加モル数が13であるポリオキシエチレンオレイルエーテルである。
【0028】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬のある特定の局面では、前記非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤の含有量が、0.01重量%以上1.0重量%以下である。
【0029】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬のある特定の局面では、前記両性界面活性剤を含み、前記両性界面活性剤の含有量が、0.01重量%以上1.0重量%以下である。
【0030】
本発明の広い局面によれば、赤血球含有検体と、上述したヘモグロビン類測定用試薬とを混合して混合液を得る工程と、前記混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する工程とを備える、ヘモグロビン類の測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬は、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられる。本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬は、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含む。本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、上記非イオン性界面活性剤が、以下の成分A1?A9のいずれかの成分であるか、上記両性界面活性剤が、以下の成分B1?B3のいずれかの成分である。成分A1:オキシエチレン基の平均付加モル数が8以上20以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル。成分A2:オキシエチレン基の平均付加モル数が40以上60以下であるポリオキシエチレンステアリルエーテル。成分A3:オキシエチレン基の平均付加モル数が9以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテル。成分A4:オキシエチレン基の平均付加モル数が6以上10以下であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下であるポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテル。成分A5:オキシエチレン基の平均付加モル数が15であるポリオキシエチレントリデシルエーテル。成分A6:HLB値が11以上15以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル。成分A7:n-ノナノイル-N-メチル-D-グルカミン。成分A8:n-オクチル-β-D-グルコピラノシド。成分A9:サポニン。成分B1:3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホネート。成分B2:3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシプロパンスルホネート。成分B3:ラウリルジメチルアミンオキサイド。本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、上記の構成が備えられているので、良好に溶血させることができ、かつ高い精度でヘモグロビン類を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るヘモグロビン類測定用試薬を用いて陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する際に得られるクロマトグラムの例である。
【図2】図2は、従来のヘモグロビン類測定用試薬を用いて陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する際に得られるクロマトグラムの例である。
【図3】図3(a)及び(b)は、ヘモグロビンA0ピークの形状を評価したクロマトグラムの例である。
【図4】図4(a)及び(b)は、ファーストフラクションのピーク形状を評価したクロマトグラムの例である。
【図5】図5(a)?(c)は、ヘモグロビンA0ピーク高さを評価したクロマトグラムの例である。
【図6】図6(a)及び(b)は、ヘモグロビン類測定用試薬と全血との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値及びヘモグロビンA1c値の変化量との関係を示す図である。
【図7】図7(a)及び(b)は、ヘモグロビン類測定用試薬と測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値及びヘモグロビンA1c値の変化量との関係を示す図である。
【図8】図8(a)及び(b)は、ヘモグロビン類測定用試薬と測定管理用ヘモグロビンA1c物質(高濃度)(IRC-H)との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値及びヘモグロビンA1c値の変化量との関係を示す図である。
【図9】図9(a)及び(b)は、ヘモグロビン類測定用試薬と測定管理用ヘモグロビンA1c物質(高濃度)(IRC-H)との混合液におけるカラム耐久性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0034】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬は、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられる。本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬は、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含む。
【0035】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、上記非イオン性界面活性剤が、オキシエチレン基の平均付加モル数が8以上20以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が40以上60以下であるポリオキシエチレンステアリルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が9以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が6以上10以下であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下であるポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が15であるポリオキシエチレントリデシルエーテル、HLB値が11以上15以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、n-ノナノイル-N-メチル-D-グルカミン、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、又はサポニンである。
【0036】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、上記両性界面活性剤が、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホネート、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシプロパンスルホネート、又はラウリルジメチルアミンオキサイドである。
【0037】
本明細書において、「オキシエチレン基の平均付加モル数が8以上20以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル」を「成分A1」と記載することがある。
【0038】
成分A1のうち、「オキシエチレン基の平均付加モル数が10以上15以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル」を、本明細書において、「成分A1’」と記載することがある。
【0039】
本明細書において、「オキシエチレン基の平均付加モル数が40以上60以下であるポリオキシエチレンステアリルエーテル」を「成分A2」と記載することがある。
【0040】
本明細書において、「オキシエチレン基の平均付加モル数が9以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテル」を「成分A3」と記載することがある。
【0041】
成分A3のうち、「オキシエチレン基の平均付加モル数が10以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテル」を、本明細書において、「成分A3’」と記載することがある。
【0042】
本明細書において、「オキシエチレン基の平均付加モル数が6以上10以下であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下であるポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテル」を「成分A4」と記載することがある。
【0043】
本明細書において、「オキシエチレン基の平均付加モル数が15であるポリオキシエチレントリデシルエーテル」を「成分A5」と記載することがある。
【0044】
本明細書において、「HLB値が11以上15以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル」を「成分A6」と記載することがある。
【0045】
本明細書において、「n-ノナノイル-N-メチル-D-グルカミン」を「成分A7」と記載することがある。
【0046】
本明細書において、「n-オクチル-β-D-グルコピラノシド」を「成分A8」と記載することがある。
【0047】
本明細書において、「サポニン」を「成分A9」と記載することがある。
【0048】
本明細書において、「3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホネート」を「成分B1」と記載することがある。
【0049】
本明細書において、「3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシプロパンスルホネート」を「成分B2」と記載することがある。
【0050】
本明細書において、「ラウリルジメチルアミンオキサイド」を「成分B3」と記載することがある。
【0051】
本明細書において、「オキシエチレン基の平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル」を「成分X」と記載することがある。
【0052】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬は、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含み、上記非イオン性界面活性剤が、成分A1、成分A2、成分A3、成分A4、成分A5、成分A6、成分A7、成分A8又は成分A9であるか、上記両性界面活性剤が、成分B1、成分B2又は成分B3である。
【0053】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、上記の構成が備えられているので、良好に溶血させることができ、かつ高い精度でヘモグロビン類を測定することができる。
【0054】
成分Xを含む従来のヘモグロビン類測定用試薬では、良好に溶血させることができ、かつ高い精度でヘモグロビン類を測定することができる。一方、成分Xを含まないヘモグロビン類測定用試薬では、良好に溶血させ、かつ高い精度でヘモグロビン類を測定することは困難である。
【0055】
これに対して、本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、上記の構成が備えられているので、成分Xを含まない場合にも、成分Xが配合されたヘモグロビン類測定用試薬と同等のレベルで溶血させることができ、かつ同等の精度でヘモグロビン類を測定することができる。
【0056】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、良好に溶血させることができるので、陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定したときに、ヘモグロビン類のピークを良好に得ることができる。また、得られる全てのピークにおいてショルダーピーク及びピーク割れ等が生じにくい。そのため、高い精度でヘモグロビン類を測定することができる。また、本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、キャリーオーバーを少なくすることができる。そのため、多数の検体を連続測定した場合でも、高い精度でヘモグロビン類を測定することができる。
【0057】
また、検査センターでは、溶血試薬(ヘモグロビン類測定用試薬)と、被検査物質とを混合したあと、混合液が陽イオン交換クロマトグラフィーで測定されるまでに、一定期間(例えば数日程度)保存されることがある。本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、該試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性を高めることができる。なお、上記被検査物質には、血液等の赤血球含有検体(例えば、被検者の血液)だけではなく、赤血球を含まないヘモグロビン類含有検体(例えば、ヘモグロビン類標準物質及び測定管理用ヘモグロビン類物質等)も含まれる。本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、上記混合液が一定期間保存されても、保存前後でヘモグロビン類のピーク形状が変化しにくく、測定値が変動しにくい。
【0058】
特に、本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬が、成分A1’又は成分A3’を含む場合には、ヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性をより一層高めることができ、また、ヘモグロビン類測定用試薬の保存安定性も高めることができる。
【0059】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬は、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられる。上記ヘモグロビン類測定用試薬は、陽イオン交換高速液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられることが好ましい。
【0060】
上記ヘモグロビン類としては、ヘモグロビンA1a、ヘモグロビンA1b、ヘモグロビンF、ヘモグロビンA1c、ヘモグロビンA0及びヘモグロビンA2等のヘモグロビン、アセチル化ヘモグロビン及びカルバミル化ヘモグロビン等の修飾ヘモグロビン、並びにヘモグロビンS及びヘモグロビンC等の異常ヘモグロビン等が挙げられる。
【0061】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬は、上記ヘモグロビンA1c値(ヘモグロビンA1cの濃度)を測定するために好適に用いられる。
【0062】
図1は、本発明の一実施形態に係るヘモグロビン類測定用試薬を用いて陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する際に得られるクロマトグラムの例である。
【0063】
図2は、従来のヘモグロビン類測定用試薬(成分Xを含む従来のヘモグロビン類測定用試薬)を用いて陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する際に得られるクロマトグラムの例である。
【0064】
図1及び図2において、約19秒に検出されたピークがヘモグロビンA1cのピークであり、約40秒に検出されたピークがヘモグロビンA0のピークである。図1及び図2は、例えば、後述する実施例で測定された測定条件で測定した際のクロマトグラムの例である。
【0065】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、成分Xを含む従来のヘモグロビン類測定用試薬と同等のピーク形状を得ることができる。
【0066】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬では、REACH規制の対象となっている成分を含まなくすることができるので、成分Xを含む従来のヘモグロビン類測定用試薬と比べて、環境への影響を小さくすることができ、安全性を高めることができる。
【0067】
本発明に係るヘモグロビン類測定用試薬は、上記非イオン性界面活性剤を含んでいてもよく、上記両性界面活性剤を含んでいてもよく、上記非イオン性界面活性剤と上記両性界面活性剤との双方を含んでいてもよい。
【0068】
(非イオン性界面活性剤)
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、非イオン性界面活性剤を含むことが好ましい。上記非イオン性界面活性剤は、成分A1?A9のいずれかの成分である。上記非イオン性界面活性剤は、成分A1?A9のうちの1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
<成分A1>
成分A1は、オキシエチレン基の平均付加モル数が8以上20以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルである。成分A1は、下記式(1)で表される成分である。成分A1は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
R-O(CH_(2)CH_(2)O)_(n)H ・・・(1)
【0071】
上記式(1)中、Rは炭素数12以上17以下のアルキル基を表し、nは8以上20以下の数を表す。
【0072】
オキシエチレン基の平均付加モル数が8未満であり、かつアルキル基の炭素数が12未満であるポリオキシエチレンアルキルエーテルでは、該界面活性剤が溶解しにくく、ヘモグロビン類測定用試薬を調製できないことがある。また、オキシエチレン基の平均付加モル数が8未満であり、かつアルキル基の炭素数が12未満であるポリオキシエチレンアルキルエーテルでは、良好なピークが得られないことがある。また、オキシエチレン基の平均付加モル数が20を超え、かつアルキル基の炭素数が17を超えるポリオキシエチレンアルキルエーテルでは、良好なピークが得られなかったり、キャリーオーバーが生じたりすることがある。
【0073】
界面活性剤の溶解性を高める観点、良好に溶血させ、高い精度でヘモグロビン類を測定する観点から、成分A1におけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは11以上、好ましくは19以下である。
【0074】
本発明の効果を効果的に発揮する観点及びヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性を高める観点からは、成分A1のアルキル基の炭素数は、好ましくは17以下、より好ましくは16以下であり、特に好ましくは12又は16である。なお、上記アルキル基の炭素数が12である場合、成分A1はポリオキシエチレンラウリルエーテルであり、上記アルキル基の炭素数が16である場合、成分A1はポリオキシエチレンセチルエーテルである。
【0075】
したがって、成分A1は、オキシエチレン基の平均付加モル数が8以上20以下であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、又はオキシエチレン基の平均付加モル数が8以上20以下であるポリオキシエチレンセチルエーテルであることが特に好ましい。
【0076】
成分A1がポリオキシエチレンラウリルエーテルである場合に、該ポリオキシエチレンラウリルエーテルにおけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは11以上、好ましくは19以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは13以下である。また、該ポリオキシエチレンラウリルエーテルにおけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、9、12又は19であることも好ましく、12であることが最も好ましい。上記オキシエチレン基の平均付加モル数が上述の好ましい範囲又は値であると、界面活性剤の溶解性をより一層高めることができ、良好に溶血させ、より一層高い精度でヘモグロビン類を測定することができ、また、ヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性をより一層高めることができる。
【0077】
成分A1がポリオキシエチレンセチルエーテルである場合に、該ポリオキシエチレンセチルエーテルにおけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、好ましくは19以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。また、該ポリオキシエチレンセチルエーテルにおけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、13又は20であることも好ましく、13であることが最も好ましい。上記オキシエチレン基の平均付加モル数が上述の好ましい範囲又は値であると、界面活性剤の溶解性をより一層高めることができ、良好に溶血させ、より一層高い精度でヘモグロビン類を測定することができ、また、ヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性をより一層高めることができる。
【0078】
したがって、成分A1は、オキシエチレン基の平均付加モル数が9、12若しくは19であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、又はオキシエチレン基の平均付加モル数が13若しくは20であるポリオキシエチレンセチルエーテルであることが好ましい。また、成分A1は、オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、又はオキシエチレン基の平均付加モル数が13であるポリオキシエチレンセチルエーテルであることが最も好ましい。
【0079】
本発明の効果を効果的に発揮する観点、ヘモグロビン類測定用試薬の保存安定性及び該試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性を高める観点からは、成分A1は、オキシエチレン基の平均付加モル数が10以上15以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルであることが好ましい。すなわち、成分A1は、成分A1’であることが好ましい。
【0080】
成分A1のHLB(Hydrophilc Lipophilc Balance)値は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。上記HLB値が上記下限以上であると、ミセルの発生を抑えることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。上記HLB値が上記上限以下であると、血球成分の細胞膜を十分に溶解させることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。
【0081】
成分A1のHLB値、及び後述する各成分のHLB値は、グリフィン法によるHLB値を表す。HLB値は、0以上20以下の値をとり、HLB値が小さいほど疎水性(親油性)が強く、HLB値が大きいほど親水性が強い。グリフィン法によるHLB値は、下記式により算出される。
【0082】
HLB値=20×(親水基の分子量/分子量)
【0083】
成分A1の曇点は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下である。上記曇点が上記下限以上及び上記上限以下であると、界面活性剤の溶解性を高めることができ、ヘモグロビン類測定用試薬を良好に調製することができる。
【0084】
なお、曇点とは、透明又は半透明な液体で温度変化によって相分離が起き、その結果、液体が不透明になる温度のことである。曇点は、一般に、下限臨界溶解温度と呼ばれることもある。
【0085】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A1の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A1の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A1の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができ、また、ヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性をより一層高めることができる。
【0086】
成分A1の市販品としては、花王社製「エマルゲン109P」(オキシエチレン基の平均付加モル数9のポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル)、花王社製「エマルゲン120」(オキシエチレン基の平均付加モル数12のポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(12)ラウリルエーテル)、花王社製「エマルゲン147」(オキシエチレン基の平均付加モル数19のポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(19)ラウリルエーテル)、花王社製「エマルゲン220」(オキシエチレン基の平均付加モル数13のポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン(13)セチルエーテル)、及びSigma-Aldrich社製「Brij(登録商標)58」(オキシエチレン基の平均付加モル数20のポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル)等が挙げられる。
【0087】
<成分A2>
成分A2は、オキシエチレン基の平均付加モル数が40以上60以下であるポリオキシエチレンステアリルエーテルである。成分A2は、下記式(2)で表される成分である。成分A2は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0088】
C_(18)H_(37)O(CH_(2)CH_(2)O)_(n)H ・・・(2)
【0089】
上記式(2)中、nは40以上60以下の数を表す。
【0090】
オキシエチレン基の平均付加モル数が40未満であるポリオキシエチレンステアリルエーテルでは、該界面活性剤が溶解しにくく、ヘモグロビン類測定用試薬を調製できないことがある。また、オキシエチレン基の平均付加モル数が40未満であるポリオキシエチレンステアリルエーテルでは、良好なピークが得られないことがある。また、オキシエチレン基の平均付加モル数が60を超えるポリオキシエチレンステアリルエーテルでは、良好なピークが得られなかったり、キャリーオーバーが生じたりすることがある。
【0091】
界面活性剤の溶解性を高める観点、良好に溶血させ、高い精度でヘモグロビン類を測定する観点から、成分A2におけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは45以上、好ましくは55以下である。界面活性剤の溶解性をより一層高める観点、より一層良好に溶血させ、より一層高い精度でヘモグロビン類を測定する観点から、成分A2におけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、50であることが最も好ましい。
【0092】
成分A2のHLB値は、好ましくは13以上、より好ましくは15以上、好ましくは19以下、より好ましくは18以下である。上記HLB値が上記下限以上であると、ミセルの発生を抑えることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。上記HLB値が上記上限以下であると、血球成分の細胞膜を十分に溶解させることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。
【0093】
成分A2のHLB値は、上述した方法で求めることができる。
【0094】
成分A2の曇点は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上である。上記曇点が上記下限以上であると、界面活性剤の溶解性を高めることができ、ヘモグロビン類測定用試薬を良好に調製することができる。
【0095】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A2の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A2の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A2の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0096】
成分A2の市販品としては、花王社製「エマルゲン350」(オキシエチレン基の平均付加モル数50のポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(50)ステアリルエーテル)等が挙げられる。
【0097】
<成分A3>
成分A3は、オキシエチレン基の平均付加モル数が9以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテルである。成分A3は、下記式(3)で表される成分である。成分A3は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0098】
C_(18)H_(35)O(CH_(2)CH_(2)O)_(n)H ・・・(3)
【0099】
上記式(3)中、nは9以上15以下の数を表す。
【0100】
オキシエチレン基の平均付加モル数が9未満であるポリオキシエチレンオレイルエーテルでは、該界面活性剤が溶解しにくく、ヘモグロビン類測定用試薬を調製できないことがある。また、オキシエチレン基の平均付加モル数が9未満であるポリオキシエチレンオレイルエーテルでは、良好なピークが得られないことがある。また、オキシエチレン基の平均付加モル数が15を超えるポリオキシエチレンオレイルエーテルでは、良好なピークが得られなかったり、キャリーオーバーが生じたりすることがある。
【0101】
界面活性剤の溶解性を高める観点、良好に溶血させ、高い精度でヘモグロビン類を測定する観点から、成分A3におけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは14以下である。界面活性剤の溶解性をより一層高める観点、より一層良好に溶血させ、より一層高い精度でヘモグロビン類を測定する観点から、成分A3におけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、9又は13であることが特に好ましく、13であることが最も好ましい。
【0102】
本発明の効果を効果的に発揮する観点、ヘモグロビン類測定用試薬の保存安定性及び該試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性を高める観点からは、成分A3は、オキシエチレン基の平均付加モル数が10以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテルであることが好ましい。すなわち、成分A3は、成分A3’であることが好ましい。
【0103】
成分A3のHLB値は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、好ましくは17以下、より好ましくは15以下である。上記HLB値が上記下限以上であると、ミセルの発生を抑えることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。上記HLB値が上記上限以下であると、血球成分の細胞膜を十分に溶解させることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。
【0104】
成分A3のHLB値は、上述した方法で求めることができる。
【0105】
成分A3の曇点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは85℃以上、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下である。上記曇点が上記下限以上及び上記上限以下であると、界面活性剤の溶解性を高めることができ、ヘモグロビン類測定用試薬を良好に調製することができる。
【0106】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A3の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A3の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A3の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0107】
成分A3の市販品としては、花王社製「エマルゲン409PV」(オキシエチレン基の平均付加モル数9のポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル)、及び花王社製「エマルゲン420」(オキシエチレン基の平均付加モル数13のポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン(13)オレイルエーテル)等が挙げられる。
【0108】
<成分A4>
成分A4は、オキシエチレン基の平均付加モル数が6以上10以下であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下であるポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテルである。成分A4は、下記式(4)で表される成分である。成分A4は、炭素数が11以上15以下である第2級アルコールのエチレンオキシドの付加物である。成分A4は、成分A1とは異なる。成分A4は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0109】
C_(m)H_(2m+1)O(CH_(2)CH_(2)O)_(n)H ・・・(4)
【0110】
上記式(4)中、mは11以上15以下の数を表し、nは6以上10以下の数を表す。
【0111】
オキシエチレン基の平均付加モル数が6未満であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下であるポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテルでは、該界面活性剤が溶解しにくく、ヘモグロビン類測定用試薬を調製できないことがある。また、オキシエチレン基の平均付加モル数が6未満であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下であるポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテルでは、良好なピークが得られないことがある。
【0112】
界面活性剤の溶解性を高める観点、良好に溶血させ、高い精度でヘモグロビン類を測定する観点から、成分A4におけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは7以上、好ましくは9以下であり、7又は9であることがより好ましい。
【0113】
成分A4のHLB値は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、好ましくは17以下、より好ましくは15以下である。上記HLB値が上記下限以上であると、ミセルの発生を抑えることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。上記HLB値が上記上限以下であると、血球成分の細胞膜を十分に溶解させることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。
【0114】
成分A4のHLB値は、上述した方法で求めることができる。
【0115】
成分A4の曇点は、好ましくは30℃以上、好ましくは60℃以下である。上記曇点が上記下限以上及び上記上限以下であると、界面活性剤の溶解性を高めることができ、ヘモグロビン類測定用試薬を良好に調製することができる。
【0116】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A4の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A4の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A4の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0117】
成分A4の市販品としては、花王社製「エマルゲン707」(オキシエチレン基の平均付加モル数7、かつアルキル基の炭素数11以上15以下のポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテル)、及び花王社製「エマルゲン709」(オキシエチレン基の平均付加モル数9、かつアルキル基の炭素数11以上15以下のポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテル)等が挙げられる。
【0118】
<成分A5>
成分A5は、オキシエチレン基の平均付加モル数が15であるポリオキシエチレントリデシルエーテルである。成分A5は、下記式(5)で表される成分である。成分A5は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0119】
C_(13)H_(27)O(CH_(2)CH_(2)O)_(15)H ・・・(5)
【0120】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A5の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A5の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A5の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0121】
成分A5の市販品としては、ライオン社製「レオコールTD-150」等が挙げられる。
【0122】
<成分A6>
成分A6は、HLB値が11以上15以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルである。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、オキシプロピレン基とオキシエチレン基とを有する。成分A6は、下記式(6)で表される成分である。成分A6は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0123】
R-(CH_(2)CH(CH_(3))O)_(m)(CH_(2)CH_(2)O)_(n)H ・・・(6)
【0124】
上記式(6)中、Rはアルキル基を表し、mは1以上の数を表し、nは1以上の数を表す。
【0125】
成分A6のHLB値は、好ましくは11.5以上、より好ましくは12以上、好ましくは14.5以下である。上記HLB値が上記下限以上であると、ミセルの発生を抑えることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。上記HLB値が上記上限以下であると、血球成分の細胞膜を十分に溶解させることができ、カラムの目詰まりを効果的に抑えることができる。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点及びカラムの目詰まりをより一層効果的に抑える観点からは、成分A6のHLB値は、12.5、12.7又は14.0であることが好ましい。
【0126】
成分A6のHLB値は、上述した方法で求めることができる。
【0127】
成分A6の曇点は、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下である。上記曇点が上記下限以上及び上記上限以下であると、界面活性剤の溶解性を高めることができ、ヘモグロビン類測定用試薬を良好に調製することができる。
【0128】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A6の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A6の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A6の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0129】
成分A6の市販品としては、花王社製「エマルゲンLS-106」(HLB値12.5のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル)、花王社製「エマルゲンLS-114」(HLB値14.0のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキル(C12-14)エーテル)、及び花王社製「エマルゲンMS-110」(HLB値12.7のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル)等が挙げられる。
【0130】
<成分A7>
成分A7は、n-ノナノイル-N-メチル-D-グルカミンである。
【0131】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A7の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A7の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A7の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0132】
成分A7の市販品としては、同仁化学社製「MEGA-9」等が挙げられる。
【0133】
<成分A8>
成分A8は、n-オクチル-β-D-グルコピラノシドである。
【0134】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A8の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A8の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A8の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0135】
成分A8の市販品としては、同仁化学社製「n-オクチル-β-D-グルコピラノシド」等が挙げられる。
【0136】
<成分A9>
成分A9は、サポニンである。成分A9は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0137】
成分A9は、大豆サポニンであることが好ましく、下記式(9)で表される大豆サポニンであることがより好ましい。
【0138】
【化1】

【0139】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A9の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分A9の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分A9の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0140】
成分A9の市販品としては、ナカライテスク社製「サポニン」等が挙げられる。
【0141】
(両性界面活性剤)
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、両性界面活性剤を含むことが好ましい。上記界面活性剤は、成分B1?B3のいずれかの成分である。上記両性界面活性剤は、成分B1?B3のうちの1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0142】
<成分B1>
成分B1は、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホネート(CHAPS)である。
【0143】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分B1の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分B1の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分B1の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0144】
成分B1の市販品としては、同仁化学社製「CHAPS」等が挙げられる。
【0145】
<成分B2>
成分B2は、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシプロパンスルホネート(CHAPSO)である。
【0146】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分B2の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分B2の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分B2の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0147】
成分B2の市販品としては、同仁化学社製「CHAPSO」等が挙げられる。
【0148】
<成分B3>
成分B3は、ラウリルジメチルアミンオキサイドである。
【0149】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分B3の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分B3の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。成分B3の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0150】
成分B3の市販品としては、花王社製「アンヒトール20N」等が挙げられる。
【0151】
(緩衝剤)
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、緩衝剤を含むことが好ましい。上記緩衝剤を含むことにより、pHの変動を抑えることができる。上記緩衝剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0152】
上記緩衝剤としては、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム及びリン酸二水素カリウム等のリン酸塩、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、カルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸誘導体、ヒドロキシカルボン酸、アニリン、アニリン誘導体、アミノ酸、アミン化合物、イミダゾール化合物、アルコール化合物、エチレンジアミン四酢酸、ピロリン酸、ピリジン、カコジル酸、グリセロールリン酸、2,4,6-コリジン、N-エチルモルホリン、モルホリン、4-アミノピリジン、アンモニア、エフェドリン、ヒドロキシプロリン、ピペリジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、並びにグリシルグリシン等が挙げられる。
【0153】
上記ヘモグロビン類測定用試薬のpHを後述する好ましい範囲に維持する観点からは、上記緩衝剤は、リン酸塩であることが好ましい。
【0154】
上記ヘモグロビン類測定用試薬中の上記緩衝剤の含有量は、緩衝作用を発揮できる含有量であれば特に限定されない。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、上記緩衝剤の含有量は、0.01重量%以上であってもよく、0.02重量%以上であってもよく、0.2重量%以下であってもよく、0.1重量%以下であってもよい。
【0155】
(無機塩類)
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、無機塩類を含むことが好ましい。上記無機塩類を含むことにより、浸透圧を良好に調整することができる。上記無機塩類は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0156】
上記無機塩類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、及び硫酸カリウム等が挙げられる。
【0157】
上記ヘモグロビン類測定用試薬の浸透圧を後述する好ましい範囲に維持する観点からは、上記無機塩類は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、又は硫酸カリウムであることが好ましく、塩化ナトリウムであることがより好ましい。
【0158】
上記ヘモグロビン類測定用試薬中の上記無機塩類の含有量は、特に限定されない。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、上記無機塩類の含有量は、0.1重量%以上であってもよく、1.0重量%以下であってもよい。
【0159】
(水)
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、水を含むことが好ましい。
【0160】
上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、上記水の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上である。
【0161】
(その他の成分)
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、上述した成分以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、防腐剤、ヘモグロビン安定剤、及びpH調整剤等が挙げられる。上記他の成分はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0162】
上記防腐剤としては、アジ化ナトリウム、チモール、及びプロピオン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0163】
上記ヘモグロビン安定剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤、及びグルタチオン等が挙げられる。
【0164】
上記pH調整剤としては、塩酸、リン酸、硝酸、及び硫酸等の酸、並びに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、及び水酸化カルシウム等の塩基が挙げられる。
【0165】
(ヘモグロビン類測定用試薬の他の詳細)
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、上記非イオン性界面活性剤を含むことが好ましく、上記非イオン性界面活性剤として成分A1、成分A2、成分A3、成分A4、成分A5又は成分A6を含むことがより好ましく、成分A1、又は成分A3を含むことが更に好ましく、成分A1’、又は成分A3’を含むことが特に好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、ヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性をより一層高めることができる。
【0166】
上記ヘモグロビン類測定用試薬が、上記非イオン性界面活性剤を含む場合に、上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、上記非イオン性界面活性剤の含有量(成分A1?A9の合計の含有量)は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、上記非イオン性界面活性剤の含有量(成分A1?A9の合計の含有量)は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。上記非イオン性界面活性剤の含有量(成分A1?A9の合計の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、ヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性をより一層高めることができる。
【0167】
上記ヘモグロビン類測定用試薬が、上記両性界面活性剤を含む場合に、上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、上記両性界面活性剤の含有量(成分B1?B3の合計の含有量)は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、上記両性界面活性剤の含有量(成分B1?B3の合計の含有量)は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。上記両性界面活性剤の含有量(成分B1?B3の合計の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0168】
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、成分Xを含まないことが好ましい。本発明では、成分Xを含まなくても、本発明の効果を発揮させることができる。また、本発明では、成分Xを含まなくても、ヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性を高めることができる。ただし、上記ヘモグロビン類測定用試薬は、成分Xを含んでいてもよい。例えば、上記ヘモグロビン類測定用試薬は、成分Xを、REACH規制の対象とならない濃度(ヘモグロビン類測定用試薬100重量%中、成分Xの含有量が0.1重量%未満)で含んでいてもよい。
【0169】
上記ヘモグロビン類測定用試薬のpHは、好ましくは6.0以上、より好ましくは7.0以上、好ましくは8.5以下、より好ましくは8.0以下である。上記pHが上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好に溶血させることができる。
【0170】
上記ヘモグロビン類測定用試薬の浸透圧は、好ましくは50mOsm以上、より好ましくは75mOsm以上、好ましくは200mOsm以下、より好ましくは150mOsm以下である。上記浸透圧が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好に溶血させることができる。
【0171】
上記浸透圧は、浸透圧計(例えば、Advanced Instruments社製「オズモメーター3250」)を用いて測定することができる。
【0172】
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、赤血球を溶血させるために好適に用いられる。上記ヘモグロビン類測定用試薬は、溶血試薬であることが好ましい。
【0173】
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、被検査物質と混合されて好適に用いられる。上記被検査物質としては、血液等の赤血球含有検体、ヘモグロビン類標準物質、及び測定管理用ヘモグロビン類物質等が挙げられる。
【0174】
上記ヘモグロビン類測定用試薬は、赤血球を含まず、かつヘモグロビンの濃度が既知である検体(ヘモグロビン類標準物質、及び測定管理用ヘモグロビン類物質等)を溶解又は希釈する希釈液として好適に用いられる。さらに、上記ヘモグロビン類測定用試薬は、液体クロマトグラフの洗浄液及びカラムの洗浄液としても好適に用いられる。
【0175】
(ヘモグロビン類の測定方法)
本発明に係るヘモグロビン類の測定方法は、赤血球含有検体と、上述したヘモグロビン類測定用試薬とを混合して混合液を得る工程と、上記混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する工程とを備える。
【0176】
上記陽イオン交換液体クロマトグラフィーは、陽イオン交換高速液体クロマトグラフィーであることが好ましい。
【0177】
上記赤血球含有検体としては、血液等が挙げられる。
【0178】
一般に、上記陽イオン交換液体クロマトグラフィーにおいては、患者等から採取した血液(赤血球含有検体)から調製された混合液に加えて、赤血球を含まず、かつ測定対象のヘモグロビン類の濃度が既知である検体から調製された混合液も測定される。上記赤血球を含まず、かつ測定対象のヘモグロビン類の濃度が既知である検体としては、測定対象のヘモグロビン類標準物質(測定対象の既知濃度のヘモグロビン類)、測定対象の測定管理用ヘモグロビン類物質(測定対象の既知濃度のヘモグロビン類、好ましくは低濃度、中濃度、高濃度等の複数濃度を測定)等が挙げられる。上記ヘモグロビン類標準物質及び上記測定管理用ヘモグロビン類物質は、好ましくは用時調製検体、凍結乾燥検体又は凍結検体である。また、上記ヘモグロビン類標準物質及び上記測定管理用ヘモグロビン類物質は、凍結乾燥品又は凍結品として市販されている。
【0179】
上記ヘモグロビン類の測定方法では、例えば、以下のようにしてヘモグロビン類の濃度を求めることが好ましい。(1)上記赤血球含有検体と、上記ヘモグロビン類測定用試薬とを混合して混合液を得る。(2)上記混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する。(3)測定対象のヘモグロビン類のピーク面積の、ヘモグロビンのピーク面積の合計に対する比(測定対象のヘモグロビン類のピーク面積/ヘモグロビンのピーク面積の合計)を測定対象のヘモグロビン値(ヘモグロビン類の濃度)とする。例えば、ヘモグロビンA1c値を求める場合には、上記(3)において、ヘモグロビンA1cのピーク面積の、ヘモグロビンのピーク面積の合計に対する比(ヘモグロビンA1cのピーク面積/ヘモグロビンのピーク面積の合計)をヘモグロビンA1c値とする。
【0180】
上記ヘモグロビン類の測定方法では、例えば、以下のようにしてヘモグロビン類の濃度を求めることもできる。(1)上記赤血球含有検体と、上記ヘモグロビン類測定用試薬とを混合して第1の混合液を得る。(2)測定対象のヘモグロビン類の濃度が既知であるヘモグロビン類含有検体と、上記ヘモグロビン類測定用試薬とを混合して第2の混合液を得る。(3)上記第1の混合液及び上記第2の混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する。(4)測定対象のヘモグロビン類の濃度が既知である上記ヘモグロビン類含有検体を含む上記混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定して得られた測定値と、上記赤血球含有検体を含む上記混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定して得られた測定値とを比較することで、上記赤血球含有検体中のヘモグロビン類の濃度を決定する。
【0181】
より一層良好に溶血させる観点からは、上記赤血球含有検体1mLに対して、上記ヘモグロビン類測定用試薬を、好ましくは25mL以上、より好ましくは50mL以上、好ましくは400mL以下、より好ましくは200mL以下で混合することが好ましい。
【0182】
上記陽イオン交換液体クロマトグラフィーは、塩濃度のグラジエント又はpHのグラジエントで測定されることが好ましい。上記グラジエントは、リニアグラジエントであってもよく、ステップグラジエントであってもよい。
【0183】
上記グラジエントの測定では、2種以上の溶離液が用いられることが好ましい。上記塩濃度のグラジエントで測定する場合には、上記溶離液として、低塩濃度の溶離液及び高塩濃度の溶離液(例えば、NaCl濃度が50mMである溶離液及びNaCl濃度が200mMである溶離液)を用いることができる。上記pHグラジエントで測定する場合には、pHの異なる2種の溶離液(例えば、pH5.4の溶離液とpH8.0の溶離液)を用いることができる。また、上記溶離液として、市販品を用いることもできる。上記溶離液の市販品としては、アークレイ社製「溶離液80A」、「溶離液80B」、「溶離液60A-VP/TP」、「溶離液60B-VP/TP」、及び「溶離液60C-VP」等が挙げられる。
【0184】
上記陽イオン交換液体クロマトグラフィーで用いられる陽イオン交換カラムとして、従来公知の陽イオン交換カラムを用いることができる。上記陽イオン交換カラムは、カルボキシル基、スルホン酸基、又はリン酸基等のカチオン交換基を有する充填剤が充填されたカラムであることが好ましい。陽イオン交換カラムの市販品としては、例えば、アークレイ社製「カラムユニット80」及び「カラムユニットHSVI-VP」等が挙げられる。
【0185】
以下、実施例、参考例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0186】
(参考例1、実施例2,3、参考例4?30、参考例A及び比較例1?69)
ヘモグロビン類測定用試薬の調製:
リン酸二水素カリウムと、リン酸水素二カリウムと、塩化ナトリウムと、アジ化ナトリウムと、水とを混合し第1の組成物を得た。得られた第1の組成物に、表2?6に示す界面活性剤を添加して混合し、ヘモグロビン類測定用試薬を調製した。得られたヘモグロビン類測定用試薬の組成を以下の表1に示す。表1中の界面活性剤の種類、含有量、HLB値及び曇点は、表2?6に示した。なお、界面活性剤のHLB値は、上述した方法で測定された値である。
【0187】
【表1】

【0188】
(評価)
(1)界面活性剤の溶解性
上記第1の組成物に界面活性剤を添加して混合した際の界面活性剤の溶解性を目視にて確認した。界面活性剤の溶解性を以下の基準で判定した。
【0189】
[界面活性剤の溶解性の判定基準]
○○:界面活性剤が15分未満で完全に溶解する
○:界面活性剤が15分以上30分未満で完全に溶解する
△:界面活性剤が30分以上1時間未満で完全に溶解する
×:界面活性剤が1時間以上で完全に溶解する、又は溶解しない
【0190】
(2)陽イオン交換液体クロマトグラフィーによる測定
採血管(積水メディカル社製)に収容された全血(赤血球含有検体)を用意した。全血1mLに対して、得られたヘモグロビン類測定用試薬100mLを混合し、混合液を得た。得られた混合液を以下の条件で測定した。なお、「(1)界面活性剤の溶解性」の判定結果が×であるヘモグロビン類測定用試薬では、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによる測定を行わなかった。
【0191】
陽イオン交換クロマトグラフィー条件:
HPLC装置:グリコヘモグロビン分析装置(アークレイ社製「HA-8180」)
陽イオン交換カラム:カラムユニット80(アークレイ社製)
溶離液A:溶離液80A(アークレイ社製)
溶離液B:溶離液80B(アークレイ社製)
【0192】
HPLC装置に搭載されている測定メソッドを用いて、測定を行った。
【0193】
(2-1)ピーク分離パターン
混合液を測定して得られたクロマトグラムについて、以下のi)?iii)を確認した。なお、参考例Aでは、図2に示すクロマトグラムのピークパターンが得られた。得られるクロマトグラムにおいて、約19秒に検出されたピークがヘモグロビンA1cのピークであり、約40秒に検出されたピークがヘモグロビンA0のピークである。
【0194】
i)ヘモグロビンA1cピークの分離
参考例Aで得られたヘモグロビンA1cのピーク高さと、実施例2,3、参考例1,4?30及び比較例で得られたヘモグロビンA1cのピーク高さとを比較した。参考例Aで得られたヘモグロビンA1cのピーク高さに対して、得られたヘモグロビンA1cのピーク高さが吸光度基準で50以上低下していない場合に、ヘモグロビンA1cピークの分離が良好と判定し、50を超えて低下している場合に不良と判定した。
【0195】
ii)ヘモグロビンA0ピークの形状
参考例Aでは、ヘモグロビンA0ピークのピークテール部分において、ピークは検出されない。実施例2,3、参考例1,4?30及び比較例で得られたヘモグロビンA0ピークのピークテールの形状を確認した。このピークテール部分において、ピークが検出されてない場合に、ヘモグロビンA0ピークの形状が良好と判定し、ピークが検出された場合に不良と判定した。
【0196】
なお、良好と判定されるクロマトグラムの例を図3(a)に示し、不良と判定されるクロマトグラムの例を図3(b)に示した。
【0197】
iii)ファーストフラクションのピーク形状
参考例Aでは、ファーストフラクションのピークにおいて、ショルダーピークは検出されない。実施例2,3、参考例1,4?30及び比較例で得られたファーストフラクションのピーク形状を確認した。このファーストフラクションのピークにおいて、ショルダーピークが検出されてない場合に、ファーストフラクションのピーク形状が良好と判定し、ショルダーピークが検出された場合に不良と判定した。
【0198】
なお、良好と判定されるクロマトグラムの例を図4(a)に示し、不良と判定されるクロマトグラムの例を図4(b)に示した。図4(b)において矢印で示したピークがショルダーピークである。
【0199】
[ピーク分離パターンの判定基準]
○:i)?iii)の判定が全て良好
×:i)?iii)の判定のいずれかが不良
【0200】
(2-2)キャリーオーバー
全血とヘモグロビン類測定用試薬とを混合した混合液を測定した後に続けて、ヘモグロビン類測定用試薬のみを5回連続して測定した。得られたクロマトグラムについて、以下のi)?iii)を確認した。
【0201】
i)ヘモグロビンA0ピーク高さ
1回目のヘモグロビン類測定用試薬の測定において、参考例Aで得られたヘモグロビンA0のピーク高さと、実施例2,3、参考例1,4?30及び比較例で得られたヘモグロビンA0のピーク高さとを比較した。参考例Aで得られたヘモグロビンA0のピーク高さに対して、得られたヘモグロビンA0のピーク高さが吸光度基準で100以上増加していない場合に良好と判定し、100を超えて増加している場合に不良と判定した。
【0202】
なお、参考例Aで得られたクロマトグラムの例を図5(a)に示し、良好と判定されるクロマトグラムの例を図5(b)に示し、不良と判定されるクロマトグラムの例を図5(c)に示した。
【0203】
ii)ヘモグロビンA1cピークの有無
1回目のヘモグロビン類測定用試薬の測定において、ヘモグロビンA1cピークの有無を確認した。ヘモグロビンA1cピークが観察されない場合に良好と判定し、ヘモグロビンA1cピークが観察される場合に不良と判定した。
【0204】
iii)ドリフトの発生の有無
1回目のヘモグロビン類測定用試薬の測定において、ヘモグロビンA0ピークのドリフトの有無を確認した。ドリフトが観察されない場合に良好と判定し、ドリフトが観察される場合に不良と判定した。
【0205】
[キャリーオーバーの判定基準]
○:i)?iii)の判定が全て良好
×:i)?iii)の判定のいずれかが不良
【0206】
(3)pH
参考例A、実施例2,3及び参考例1,4?30で得られたヘモグロビン類測定用試薬のpHを、pH計(堀場製作所社製「F-52」)を用いて測定した。
【0207】
(4)浸透圧
参考例A、実施例2,3及び参考例1,4?30で得られたヘモグロビン類測定用試薬の浸透圧を、浸透圧計(Advanced Instruments社製「オズモメーター3250」)を用いて測定した。
【0208】
組成及び結果を下記の表2?6に示す。なお、表2,3,5中、「E.O.」で表される値は、オキシエチレン基の平均付加モル数を意味する。
【0209】
【表2】

【0210】
【表3】

【0211】
【表4】

【0212】
【表5】

【0213】
【表6】

【0214】
実施例2,3及び参考例1,4?30で得られたヘモグロビン類測定用試薬では、良好に溶血させることができ、かつ高い精度でヘモグロビン類を測定することができていることが理解できる。
【0215】
(参考例A及び実施例31,32、参考例33?38)
表7に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてヘモグロビン類測定用試薬を調製した。
【0216】
(5)ヘモグロビン類測定用試薬の保存安定性
参考例A及び界面活性剤の濃度が0.5重量%である実施例32、参考例34,36?38で得られたヘモグロビン類測定用試薬をそれぞれ、ガラス製バイアル瓶に密封し、60℃で7日間保存した。保存後、目視にて、ヘモグロビン類測定用試薬の性状を確認した。
【0217】
一般に、ヘモグロビン類測定用試薬は室温で保存されるものである。本評価項目では、通常の保存条件よりも苛酷な温度条件でヘモグロビン類測定用試薬を保存し評価している。
【0218】
[ヘモグロビン類測定用試薬の保存安定性(60℃、7日間)の判定基準]
A:相分離が生じない
B:相分離が生じる
【0219】
(6)混合液の保存安定性
(6-1)全血との混合液の保存安定性
全血(赤血球含有検体)を用意した。また、参考例A及び実施例31,32、参考例33?36で得られたヘモグロビン類測定用試薬を用意した。全血を、ヘモグロビン類測定用試薬で101倍希釈し、混合液を得た。得られた混合液を、ガラス製バイアル瓶に収容し、4℃で保存した。保存前、保存後1日目,2日目,5日目,7日目,9日目に、「(2)陽イオン交換液体クロマトグラフィーによる測定」に記載の測定条件で混合液を繰り返し3回測定し、その平均値からヘモグロビンA1c値及びヘモグロビンA1c値の変化量を求めた。
【0220】
ヘモグロビンA1c値(%)=ヘモグロビンA1cのピーク面積/ヘモグロビンのピーク面積の合計
【0221】
ヘモグロビンA1c値の変化量(%)=保存前のヘモグロビンA1c値-保存後のヘモグロビンA1c値
【0222】
図6(a)は全血との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値との関係を示す図である。図6(b)は、全血との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値の変化量との関係を示す図である。
【0223】
[全血との混合液の判定基準]
○:5日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.2%以下である
△:5日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.2%を超え0.4%以下である
△△:5日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.4%を超え0.7%以下である
×:5日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.7%を超える
【0224】
(6-2)測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)との混合液の保存安定性
ヘモグロビンA1c値が5.8%である測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)を用意した。また、参考例A及び実施例31,32、参考例33?36で得られたヘモグロビン類測定用試薬を用意した。測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)を、ヘモグロビン類測定用試薬で101倍希釈し、混合液を得た。得られた混合液を、ガラス製バイアル瓶に収容し、4℃で保存した。保存前、保存後1日目,2日目,3日目,9日目,14日目に、「(2)陽イオン交換液体クロマトグラフィーによる測定」での測定条件で混合液を繰り返し3回測定し、その平均値から上記と同様にしてヘモグロビンA1c値及びヘモグロビンA1c値の変化量を求めた。
【0225】
図7(a)は測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値との関係を示す図である。図7(b)は、測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値の変化量との関係を示す図である。
【0226】
[測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)との混合液の保存安定性の判定基準]
○:14日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.2%以下である
△:14日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.2%を超え0.4%以下である
△△:14日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.4%を超え0.7%以下である
×:14日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.7%を超える
【0227】
(6-3)測定管理用ヘモグロビンA1c物質(高濃度)(IRC-H)との混合液の保存安定性
測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)を、ヘモグロビンA1c値が10.4%である測定管理用ヘモグロビンA1c物質(高濃度)(IRC-H)に変更したこと以外は、「(6-2)測定管理用ヘモグロビンA1c物質(低濃度)(IRC-L)との混合液の保存安定性」と同様にして、ヘモグロビンA1c値及びヘモグロビンA1c値の変化量を求めた。
【0228】
図8(a)は測定管理用ヘモグロビンA1c物質(高濃度)(IRC-H)との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値との関係を示す図である。図8(b)は、測定管理用ヘモグロビンA1c物質(高濃度)(IRC-H)との混合液における、保存日数とヘモグロビンA1c値の変化量との関係を示す図である。
【0229】
[測定管理用ヘモグロビンA1c物質(高濃度)(IRC-H)との混合液の保存安定性の判定基準]
○:14日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.25%以下である
△:14日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.25%を超え0.45%以下である
△△:14日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.45%を超え0.75%以下である
×:14日目のヘモグロビンA1c値の変化量において、参考例Aとの差の絶対値が0.75%を超える
【0230】
組成及び結果を下記の表7に示す。
【0231】
【表7】

【0232】
実施例31,32、参考例33?36で得られたヘモグロビン類測定用試薬では、参考例37,38で得られたヘモグロビン類測定用試薬と比べて、該試薬の保存安定性を高めることができた。また、実施例31,32、参考例33?36で得られたヘモグロビン類測定用試薬では、該試薬と被検査物質とが混合された混合液の保存安定性も高めることができた。実施例31,32、参考例33?36で得られたヘモグロビン類測定用試薬では、ヘモグロビン類測定用試薬と被検査物質とが混合された混合液を長期間保存した後であっても、高い精度でヘモグロビン類を測定することができる。
【0233】
(7)カラム耐久性
全血(赤血球含有検体)と、ヘモグロビンA1c値が10.4%である測定管理用ヘモグロビンA1c物質(高濃度)(IRC-H)と、参考例A及び実施例32で得られたヘモグロビン類測定用試薬とを用意した。全血を、ヘモグロビン類測定用試薬で101倍希釈し、液(1)を得た。また、測定管理用ヘモグロビンA1c物質を、ヘモグロビン類測定用試薬で101倍希釈し、液(2)を得た。液(1)は、カラムに負荷を与えるための測定試料であり、液(2)は、ヘモグロビンA1c値の変化量及び理論段数の変化量を確認するための測定試料である。得られた液(1)及び液(2)を以下の手順及び条件で測定した。
【0234】
先ず、得られた液(2)を3回測定した。その後、得られた液(1)を複数回(数十回?200回)カラムに通すごとに液(2)を3回測定した。カラムへの負荷検体数が約3000検体となるまで、上記の手順に従って液(1)及び液(2)を繰り返し測定した。
【0235】
陽イオン交換クロマトグラフィー条件:
HPLC装置:グリコヘモグロビン分析装置(アークレイ社製「HA-8160VP」)
陽イオン交換カラム:カラムユニットHSVI-VP(アークレイ社製)
溶離液A:溶離液60A-VP/TP(アークレイ社製)
溶離液B:溶離液60B-VP/TP(アークレイ社製)
溶離液C:溶離液60C-VP(アークレイ社製)
【0236】
HPLC装置に搭載されている測定メソッドを用いて、測定を行った。
【0237】
図9(a)はカラムへの負荷検体数と、ヘモグロビンA1c値の変化量との関係を示す図である。図9(b)はカラムへの負荷検体数と、理論段数の変化量との関係を示す図である。
【0238】
図9(a)において、縦軸は、最初に測定した液(2)におけるヘモグロビンA1c値と、各負荷検体数で測定した液(2)におけるヘモグロビンA1c値との差(最初に測定した液(2)におけるヘモグロビンA1c値-各負荷検体数で測定した液(2)におけるヘモグロビンA1c値)である。図9(b)において、縦軸は、最初に測定した液(2)における理論段数と、各負荷検体数で測定した液(2)における理論段数との差(最初に測定した液(2)における理論段数-各負荷検体数で測定した液(2)における理論段数)である。
【0239】
実施例32で得られたヘモグロビン類測定用試薬は、参考例Aで得られたヘモグロビン類測定用試薬よりもカラム耐久性に優れていた。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬であって、
非イオン性界面活性剤を含み、
前記非イオン性界面活性剤が、オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテルである、ヘモグロビン類測定用試薬。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤の含有量が、0.01重量%以上1.0重量%以下である、請求項1に記載のヘモグロビン類測定用試薬。
【請求項6】
赤血球含有検体と、請求項1又は5に記載のヘモグロビン類測定用試薬とを混合して混合液を得る工程と、
前記混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する工程とを備える、ヘモグロビン類の測定方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-06-21 
出願番号 特願2019-566860(P2019-566860)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (G01N)
P 1 651・ 113- YAA (G01N)
P 1 651・ 121- YAA (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 倉持 俊輔  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 福島 浩司
伊藤 幸仙
登録日 2020-01-23 
登録番号 特許第6651066号(P6651066)
権利者 徳山積水工業株式会社 積水メディカル株式会社
発明の名称 ヘモグロビン類測定用試薬及びヘモグロビン類の測定方法  
代理人 特許業務法人宮▲崎▼・目次特許事務所  
代理人 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所  
代理人 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所  
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