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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
管理番号 1376748
異議申立番号 異議2021-700386  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-27 
確定日 2021-07-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第6774810号発明「小麦ふすま含有麺類の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6774810号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6774810号は平成28年8月4日(優先権主張 平成27年8月5日)に出願され、令和2年10月7日に特許権の設定登録がなされ、同年10月28日にその特許公報が発行され、その後、請求項1?4に係る特許に対して、令和3年4月27日に特許異議申立人 松田晴行(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件請求項1?4に係る発明
本件請求項1?4に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
薄力粉、中力粉及び強力粉から選ばれる少なくとも1種の小麦粉と、蒸煮処理小麦ふすまとを含有してなる麺生地を麺線状に押出して麺線とし、この麺線を切断することを含む小麦ふすま含有麺類の製造方法であって、前記麺生地中の蒸煮処理小麦ふすまの含有量が、乾燥質量換算で4?55質量%である、製造方法。
【請求項2】
前記蒸煮処理小麦ふすまが、小麦ふすまと、該小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対して13?135質量部の水とを共存させ、該小麦ふすまと該水とを混練しながら60?150℃で1?60分間処理し、乾燥して得られたものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記混練を、ニーダー又は二軸エクストルーダーを用いて行う、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記麺生地中の蒸煮処理小麦ふすまの含有量が、乾燥質量換算で35質量%以下である、請求項1?3のいずれか1項に記載の製造方法。」

第3 異議申立ての理由についての検討
1 申立人の異議申立ての理由について
申立人の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。
甲第1号証:特開2013-243984号公報
甲第2号証:特許第2784505号公報
甲第3号証:佐子田嘉明 外2名、畜産の研究、65巻3号(2011)、
369?375頁
甲第4号証:小原哲二郎 外1名監、簡明 食辞林、株式会社樹村房、
平成9年4月25日第二版第1刷、500頁
甲第5号証:特開平3-53863号公報
甲第6号証:特開平10-150939号公報
甲第7号証:特許技術用語委員会編、特許技術用語集第2版、
日刊工業新聞社、2003年8月20日第2版3刷、60頁
甲第8号証:特許・実用新案 審査基準、第II部第2章第3節 明確性
要件(特許法第36条第6項第2号)、特許庁、1?2頁
甲第9号証:小麦粉 ?その原料と加工品? 改訂第4版、
日本麦類研究会、平成19年2月28日、604?606頁
甲第10号証:長尾精一編、シリーズ≪食品の科学≫ 小麦の科学、
朝倉書店、2006年4月10日第6刷、152頁
甲第11号証:「おうちで簡単に手作り麺 Noodle Makerヌードルメーカー
使い方とアイデアレシピ」、
株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパン、
2014年
甲第12号証;特開2011-152087号公報
甲第13号証:特開平7-132号公報
甲第14号証:特開2013-226080号公報
甲第15号証:特開2014-212713号公報
(以下、甲第1?15号証を「甲1」?「甲15」という。)

・申立ての理由1
本件発明1?4は、甲2?15の記載を参酌すれば、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件発明1?4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・申立ての理由2
本件請求項1、4に記載された「蒸煮処理小麦ふすま」との用語の「蒸煮処理」の意味が不明である結果、本件発明1、4は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものである。
よって、本件発明1、4に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

2 申立ての理由1について
(1)甲1の記載事項
ア 「【請求項1】
下記工程(1)?(5)を含むことを特徴とする小麦ふすまの製造方法。
(1)原料小麦を粗粉砕する工程
(2)工程(1)で得られた粗粉砕物から小麦ふすまを採取する工程
(3)工程(2)で得られた小麦ふすまを加熱処理する工程
(4)工程(3)で加熱処理した小麦ふすまを微粉砕する工程
(5)工程(4)で得られた微粉砕物から平均粒径が150μm未満?200μm未満の微ふすま画分を分取する工程

【請求項4】
工程(3)の加熱処理が、湿熱処理であり、この湿熱処理は、飽和水蒸気を導入した密閉系容器内において、品温80?110℃で1?60秒間の条件下で行われる、請求項1?3のいずれかに記載の小麦ふすまの製造方法。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、二次加工性に優れ、しかも二次加工品における外観、風味および食感の良好な小麦ふすまを効率良く製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、小麦粒を粗粉砕した後、小麦ふすまを採り分け、加熱処理した後に微粉砕して得られる小麦ふすまが、二次加工性に優れ、さらにこれを用いて製造した二次加工品が良好な外観、風味および食感を有することを見出し、発明を完成するに至った。」

ウ 「【0017】
本発明の方法で製造される小麦ふすまは、原料小麦を適宜選択することによってパン用粉、麺用粉、菓子用粉などとして好適に使用することができる。全穀粉に対する本発明の小麦ふすまの使用比率は、使用目的により異なるが、一般的には10?80質量%、好ましくは10?50質量%の範囲である。」

エ 「【実施例】
【0018】
次に本発明をさらに具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。

【0021】
[実施例3]
軟質小麦を精選して、ロール機にて粉砕した後、小麦ふすまを採り分けした。
得られた小麦ふすまを、特許第2784505号明細書に記載される粉粒体加熱装置を用いて飽和水蒸気を導入しながら、品温90℃で約5秒間の条件で湿熱処理を行った。次いで、湿熱処理した画分を衝撃式微粉砕機(ACMパルベライザー,ホソカワミクロン製)を用いて微粉砕し、目開き150μmの篩を用いて分級し、篩を通過する粒径150μm未満の微ふすま画分と、篩上に残留する粒径150μm以上の粗ふすま画分とに分離し、篩を通過する微ふすま画分を分取した。また、ここで得られた粗ふすま画分を再度、ACMパルベライザーで衝撃式微粉砕した後、同様に分級して粒径150μm未満の微ふすま画分を、先に分離した平均粒径約90μmの微ふすま画分と混合し、小麦ふすまを得た。得られた小麦ふすまの平均粒径は約90μmであった。
【0022】
[実施例4]
原料小麦として硬質小麦を用いた以外は、実施例3と同様にして、小麦ふすまを得た。この小麦ふすまの平均粒径は約90μmであった。
【0023】
試験例(中華麺)
軟質小麦を原料とした実施例3で得られた小麦ふすま、硬質小麦を原料とした実施例4で得られた小麦ふすま、および一般的な未処理の小麦ふすまと、一般的な強力粉である「ミリオン」(日清製粉(株)製)とを表1に示す割合で均一に混合した小麦粉組成物をそれぞれ100質量部用い、これに乾燥グルテン5質量部および水45質量部を10?15分間混捏して生地を得た。
得られた生地を常法により圧延し最終麺帯厚を1.3mmとした後、切刃(#22角)で麺線に切り出し、一晩熟成後、生中華麺を得た。
得られた生中華麺を1分30秒茹でて茹で中華麺を得た。製麺時の作業性および得られた茹で中華麺の食感および食味について、表2に示す評価基準に基づいて10人のパネラーにより評価した。その結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】



(3)甲1に記載された発明
甲1の実施例3又は4を用いた試験例からみて、甲1には以下の「甲1発明」が記載されていると認められる。
「強力粉と、品温90℃で約5秒間の条件で湿熱処理を行った後微粉砕して得られた小麦ふすまとを、それぞれ50質量部含有してなる麺生地を、圧延した後切刃で麺線に切り出して得る小麦ふすま含有麺類の製造方法。」

(4)本件発明1
ア 本件発明1と甲1発明の対比
両発明は
「強力粉と、小麦ふすまとを含有してなる麺生地から麺線を得る小麦ふすま含有麺類の製造方法。」で一致する。

そして、両者は以下の点で相違する。
相違点1:
使用される小麦ふすまの処理に関し、本件発明1は「蒸煮処理」であるのに対し、甲1発明は「品温90℃で約5秒間の条件で湿熱処理」とする点。
相違点2:
麺線を得るに際し、本件発明1は「麺生地を麺線状に押出して麺線とし、この麺線を切断する」のに対し、甲1発明は「麺生地を、圧延した後切刃で麺線に切り出して得る」点。
相違点3:
麺生地中の小麦ふすまの含有量において、本件発明1は「乾燥質量換算で4?55質量%である」のに対し、甲1発明は、強力粉と蒸煮処理小麦ふすまとをそれぞれ「50質量部」含有する点。

イ 判断
相違点2について検討する。

(ア)本件明細書【0005】【0006】からみて、本件発明の解決課題および解決手段は「押出し法を適用して製麺する」「小麦ふすまを含有する麺生地」を前提として、「小麦ふすまを特定条件で蒸煮処理したもの(蒸煮処理小麦ふすま)を特定量用いる」ことで、「伸ばしても切れにくく」「生地のつながりが良好な麺生地を調製することができ」、「麺線状に押出した際に生地が破断しにくく、麺線調製の作業性が大きく向上する」もので、「かかる麺線を所望の長さに切断する際には、より小さなせん断力で容易に切断でき」、「かかる麺線が弾力にも優れる」麺類を提供することにある。
更に、本件発明は「麺生地を調製してしばらく放置しても麺生地の性状に大きな変化は生じず、安定した品質の麺が得られる」(【0044】)という効果を奏するものでもある。

(イ)これに対し、甲1発明は、「二次加工適性に優れ、しかも二次加工品における外観、風味および食感の良好な小麦ふすまを効率良く製造」(【0004】)するものであり、甲1発明に係る小麦ふすま含有麺類は、製麺時の作業性および得られた茹で中華麺の食感および食味において優れたものであることが、その「試験例(中華麺)」(【0023】?【0025】)から確認できる。この「製麺時の作業性」や「得られた茹で中華麺の食感および食味」は、本件発明の「生地のつながりが良好な麺生地を調製することができ」、「麺線状に押出した際に生地が破断しにくく、麺線調製の作業性が大きく向上する」もので、「かかる麺線を所望の長さに切断する際には、より小さなせん断力で容易に切断でき」、「かかる麺線が弾力にも優れる」ものに相当すると見なせる余地がある。

(ウ)しかし、本件発明は「麺生地を麺線状に押出して麺線とし、この麺線を切断する」いわゆる「押出し法」で得られた麺線において上記課題を解決したのに対し、甲1発明は「麺生地を、圧延した後切刃で麺線に切り出して得る」いわゆる「圧延法」において得られた麺線に関するものであり、甲1発明の圧延法を押出し法に変更する示唆はない。
そして、本件明細書【0005】では「押出し法は、麺生地を押し出すだけで所望の形状の麺線が得られることから、圧延法に比べて麺類製造の工程を簡略化できる。しかし薄力粉、中力粉及び強力粉等の小麦粉を用いた場合、押出し法によって十分なコシ(弾力)を発現させることは難しい。」と認識であることや、甲9のめん類の成形、甲10の小麦の加工に関する記載から、押出し法や圧延法が成形法自体として知られていたとはいえるものの、中華麺を「圧延法」によって製造する記載から認定した甲1発明において、甲9の604頁下から8?2行にあるように、ほとんどのめんが圧延法で成形されている状況において、これを敢えて「押出し法」に変更して、本件発明の上記課題がすべて解決することを認識しうるとは、甲1のみならず他の甲各号証を参照しても当業者が容易に想起できるとはいえない。

(エ)このため、相違点1や3について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(5)本件発明2?4
本件発明2?4は、本件発明1を更に限定するものである。したがって、本件発明1が甲1発明及び他の甲各号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえないことに鑑みると、本件発明2?4も甲1発明及び他の甲各号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(6)まとめ
よって、申立ての理由1には、理由がない。

3 申立ての理由2について
(1)本件発明の「蒸煮処理」との文言について、特許請求の範囲の記載を技術常識を加味して判断すれば、「蒸煮」又は「蒸煮処理」との用語自体は、甲4のように一般に蒸気で加熱すること、甲5のように穀物類の「蒸煮」として、「蒸したり、煮たりすること」、甲6のように、麺類に関して、「蒸煮処理」とは、「茹でること、又は蒸すこと」と説明されており、蒸気で加熱したり、蒸したり、煮たり(茹で)たりすることを意味するといえるものの、処理対象や場面によって一義的に明確に決まらないので、本件明細書の記載を参照することとする。
そして、本件明細書には、「蒸煮処理」に関する記載として、【0012】には以下の記載がある。
「本発明に用いる蒸煮処理小麦ふすまを得るために、小麦ふすまと、当該小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対し、13?135質量部の水を共存させ、小麦ふすまと水とを混練しながら加熱処理する(本発明においては、この混練加熱処理を「蒸煮処理」という)。この蒸煮処理は、60?150℃で1?60分間の処理とすることが好ましい。」
この記載からみて、本件発明でいう「蒸煮処理小麦ふすま」との用語の「蒸煮処理」とは「小麦ふすまと、当該小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対し、13?135質量部の水を共存させ、小麦ふすまと水とを混練しながら加熱処理する」ことを意味することは明らかである。
したがって、「蒸煮処理小麦ふすま」との用語は、第三者に不測の不利益を生じるほどに不明確な点は存在せず、明確であるといえる。

(2)申立人は、この【0012】の記載を受け、「この定義又は説明は、「蒸煮処理」という用語の通常の意味とは明らかに異なる意味であるため、請求項の記載に基づくことを基本としつつ発明の詳細な説明等の記載をも考慮する、という請求項に係る発明の認定の運用からみて、いずれと解すべきかが不明となり、特許を受けようとする発明が不明確になっている。」と主張する。
また、申立人は「甲第3号証(食辞林)に記載されているように、一般に「蒸煮」(じょうしゃ)とは「蒸気で加熱すること」を意味するが、調理の分野では、その文字通りの意味(「蒸す」と「煮る」)から、甲第3号証に記載された肉だけではなく、穀物類の加熱処理においても、「蒸す」や「煮る」(又は「茹でる」)のような「湿熱状態で加熱すること」全般を指すものとして、広く使用されている一般的な用語である」とも述べる(ただし、上記「甲第3号証」は「甲第4号証」の誤記と解した。)。
(そして、甲第4号証の「蒸煮」の項目には、「○1(注:本文は○の中に1。一般には蒸気で加熱すること。」と記載されている。)

(3)しかしながら、上記(1)に示したとおり、特許請求の範囲の「蒸煮処理」との用語は、甲4?6の記載のとおり、技術常識を参酌しても、一義的に決まるとはいえないものの、本件明細書を参照すれば、本件発明における「蒸煮処理」は、「本発明に用いる蒸煮処理小麦ふすまを得るために、小麦ふすまと、当該小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対し、13?135質量部の水を共存させ、小麦ふすまと水とを混練しながら加熱処理する(本発明においては、この混練加熱処理を「蒸煮処理」という)。」と明確に規定されている。

(4)したがって、「蒸煮処理小麦ふすま」との用語の「蒸煮処理」との記載に関して本件発明は明確であり、申立ての理由2には、理由がない。

4 まとめ
以上のことから、申立人が主張する申立ての理由にはいずれも理由がなく、これらの申立の理由によっては本件発明に係る特許を取り消すことはできない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、異議申立ての理由によっては、本件請求項1?4に係る発明の特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-07-16 
出願番号 特願2016-153368(P2016-153368)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A23L)
P 1 651・ 121- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 戸来 幸男  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 大熊 幸治
冨永 みどり
登録日 2020-10-07 
登録番号 特許第6774810号(P6774810)
権利者 花王株式会社
発明の名称 小麦ふすま含有麺類の製造方法  
代理人 特許業務法人イイダアンドパートナーズ  
代理人 赤羽 修一  
代理人 飯田 敏三  
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