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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23F
管理番号 1376749
異議申立番号 異議2021-700380  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-26 
確定日 2021-07-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第6777990号発明「コーヒー飲料の製造方法およびコーヒー飲料の品質改善方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6777990号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6777990号の請求項1?11に係る特許についての出願は、平成27年12月24日に出願され、令和2年10月13日にその特許権の設定登録がなされ、同年10月28日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和3年4月26日に特許異議申立人中辻史郎(なお、「辻」の字は十の字に二点しんにょう)(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1?11に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
コーヒー抽出液を作製する第1の容器と、
前記コーヒー抽出液を貯留する第2の容器と、
前記第1の容器の内部、または前記第1の容器と前記第2の容器との間の領域に配され、かつ前記コーヒー抽出液を濾過する濾過フィルターと、
前記第1の容器と前記第2の容器との間の領域に配されるとともに、前記第1の容器側の空間と前記第2の容器側の空間とを区切り、かつ流路開閉機能を有したバルブと、を備えた抽出装置を用いるコーヒー飲料の製造方法であって、
大気圧下で、前記第1の容器にコーヒー豆および熱水を上方から導入し、前記コーヒー豆を前記熱水で浸漬することにより前記コーヒー抽出液を調製する、第1の浸漬工程と、
大気圧下で、前記コーヒー抽出液を前記第2の容器に払い出しながら、前記第1の容器内の前記コーヒー豆を、前記第1の容器内に残存する前記コーヒー抽出液で蒸らす、蒸らし工程と、
前記第1の容器内の前記コーヒー豆を、前記熱水とは別に準備した他の熱水で浸漬する、第2の浸漬工程と、
を含み、
前記第1の浸漬工程における前記バルブの開閉状態は、閉状態であり、
前記蒸らし工程における前記バルブの開閉状態は、開状態であり、
前記第2の浸漬工程における前記バルブの開閉状態は、閉状態または開状態であり、
前記第2の浸漬工程において、前記第1の容器に導入する前記熱水の温度が60℃以上100℃以下である、コーヒー飲料の製造方法。
【請求項2】
前記第2の浸漬工程が、
前記第1の容器に前記他の熱水を導入し、前記第1の容器内の前記コーヒー豆を前記他の熱水で浸漬させる工程と、
前記第1の容器内の前記コーヒー豆を前記他の熱水で浸漬させた状態を保持するように、前記バルブの開閉状態を調整する払出し流量制御工程と、
を含む、請求項1に記載のコーヒー飲料の製造方法。
【請求項3】
前記バルブの開閉状態を全開にした際における、前記第1の容器から前記第2の容器への最大払出し流量を1.0とした時、
前記払出し流量制御工程において、前記第1の容器から前記第2の容器への払出し流量が1.0以下となるように前記バルブの開閉状態を制御する、請求項2に記載のコーヒー飲料の製造方法。
【請求項4】
前記払出し流量制御工程における前記第1の容器への前記熱水の導入速度をXとし、前記払出し流量制御工程における前記第1の容器から前記第2の容器への払い出し速度をYとした時、Y/Xが1.0以下である、請求項2または3に記載のコーヒー飲料の製造方法。
【請求項5】
前記第1の浸漬工程において、前記第1の容器に導入する前記熱水の温度が70℃以上100℃以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコーヒー飲料の製造方法。
【請求項6】
前記第2の浸漬工程において、前記第1の容器に導入する前記熱水の温度が30℃以上100℃以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコーヒー飲料の製造方法。
【請求項7】
前記濾過フィルターの濾過粒度が0.1mm以上0.5mm以下である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコーヒー飲料の製造方法。
【請求項8】
前記第1の浸漬工程において、前記コーヒー豆を前記熱水に浸漬させる浸漬時間が、5分以上30分以下である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のコーヒー飲料の製造方法。
【請求項9】
前記蒸らし工程における、前記コーヒー豆の蒸らし時間が、5分以上15分以下である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のコーヒー飲料の製造方法。
【請求項10】
前記第1の浸漬工程において前記第1の容器内に導入する熱水量は、コーヒー豆の3倍量以上10倍量以下である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のコーヒー飲料の製造方法。
【請求項11】
コーヒー抽出液を作製する第1の容器と、
前記コーヒー抽出液を貯留する第2の容器と、
前記第1の容器の内部、または前記第1の容器と前記第2の容器との間の領域に配され、かつ前記コーヒー抽出液を濾過する濾過フィルターと、
前記第1の容器と前記第2の容器との間の領域に配されるとともに、前記第1の容器側の空間と前記第2の容器側の空間とを区切り、かつ流路開閉機能を有したバルブと、を備えた抽出装置を用いて作製したコーヒー飲料の品質改善方法であって、
大気圧下で、前記第1の容器にコーヒー豆および熱水を導入し、前記コーヒー豆を前記熱水で浸漬することにより前記コーヒー抽出液を調製する、第1の浸漬工程と、
大気圧下で、前記コーヒー抽出液を前記第2の容器に払い出しながら、前記第1の容器内の前記コーヒー豆を、前記第1の容器内に残存する前記コーヒー抽出液で蒸らす、蒸らし工程と、
前記第1の容器内の前記コーヒー豆を、前記熱水とは別に準備した他の熱水で浸漬する、第2の浸漬工程と、
を含み、
前記第1の浸漬工程における前記バルブの開閉状態を閉状態とし、前記蒸らし工程における前記バルブの開閉状態を開状態とし、前記第2の浸漬工程における前記バルブの開閉状態を閉状態または開状態とし、
前記第2の浸漬工程において、前記第1の容器に導入する前記熱水の温度を60℃以上100℃以下とする、コーヒー飲料の品質改善方法。」
(以下、それぞれ、「本件特許発明1」?「本件特許発明11」といい、まとめて「本件特許発明」ともいう。)

第3 申立理由の概要
(1)申立人の主張の概要
申立人は、異議申立書において、証拠として次の甲第1号証?甲第4号証を提出し、次の申立ての理由を主張している。

甲第1号証:特開昭62-183726号公報
甲第2号証:特開2009-291088号公報
甲第3号証:特開2013-42709号公報
甲第4号証:特開2005-40068号公報

ア 請求項1?11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、請求項1?11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

イ 請求項1?11に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、請求項1?11に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

ウ 請求項1?11に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

エ 本件特許発明の全ての範囲にわたって、本件特許発明の課題である「雑味による影響を低減させることができる程度に香味感を向上させたコーヒー抽出液を効率良く作製する」ことができるか当業者であっても理解できないため、請求項1?11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでないから、その特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

オ 本件特許発明の製造方法により雑味による影響を低減させることができる程度に香味感を向上させたコーヒー抽出液を効率良く得ようとすれば、各条件の無限の組み合わせを実施しなければならず、過度の負担を強いるものであるため、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?11に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、その特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

カ 本件特許発明の「大気圧下で、前記コーヒー抽出液を前記第2の容器に払い出しながら、前記第1の容器内の前記コーヒー豆を、前記第1の容器内に残存する前記コーヒー抽出液で蒸らす、蒸らし工程」の意味が不明確であるため、請求項1?11に係る発明は、明確でないから、その特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(2)甲号証及びその記載

甲第1号証:特開昭62-183726号公報(以下、「引用例1」という。)

記載(1a)
「1.フィルタが内設され該フィルタ上にコーヒー粉が貯えられる抽出容器と、この抽出容器の出口部に設けられ低温時に該出口部を閉塞するとともに該抽出容器に湯が供給されて該出口部近傍の温度が所定温度に達すると該出口部を開放する感熱弁とを具備してなるコーヒー抽出器。」(特許請求の範囲)

記載(1b)
「[背景技術の問題点]
しかしながら、上記構成のコーヒー抽出器では、コーヒー粉に注がれた湯が、コーヒー粉に充分湿潤することなくボトルに滴下されるため、コーヒー粉よりコーヒーの良好な成分が充分抽出されることがなく風味が劣るという欠点と、一部のコーヒー粉にしか湯が湿潤しないのでコーヒー抽出の効率が悪いという欠点があった。」(1頁左下欄最終行?右下欄7行)

記載(1c)
「[発明の目的]
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、コーヒー粉に充分湯が湿潤して、コーヒーの良好な成分を充分抽出することができるとともにコーヒー粉の使用効率の向上を図ることができるコーヒー抽出器を提供するにある。」(1頁右下欄8?13行)

記載(1d)
「[発明の実施例]
以下、本発明をコーヒー製造機に適用した一実施例につき図面を参照して説明する。1はコーヒー製造機の本体、2は本体1の下部に設けた加熱台で、この加熱台2には加熱管3とヒータ4から成る給湯機構5が設けられており、本体1に設けた図示しない貯水タンク内の水が加熱管3内に供給されて熱湯化される。6は加熱台2に載置したコーヒー液貯留用のボトルで、これの上面にはボトル蓋7が披せられている。8は本体1の上部に設けられたミルケースで、これの上面には蓋9が装着されており、また側壁部にはコーヒー粉の通過を許容するミルフィルタ10が設けられ、更に、このミルフィルタ10を外側方から覆うようにフード11が一体に設けられている。12はミルケース8内の下部に配設された粉砕体で、これはミルケース8の下方部に設けられたモータ13により回転駆動されるようになっている。14はボトル6の上方に配置したカップ状の抽出容器で、上面には抽出容器蓋15が着脱可能に装着されており、該抽出容器蓋15をミルケース8のフード部11の下端に嵌合させることにより、全体としてフード部11に装着され、この装着状態で該抽出容器14の内部がフード部11及びミルフィルタ10を介してミルケース8内と連通している。一方、前記加熱管3には水タンクと接続される一端と対向する他端に上方に指向する注湯管が接続され、前記抽出容器蓋15に設けられた湯受器16に連通している。17はこの湯受器16の側面に抽出容器14内を臨むように形成された流通口である。」(2頁左上欄2行?右上欄12行)

記載(1e)
「而して、抽出容器14の内面14aに紙フィルタ18が内設され、また、抽出容器14の底面14bには出口部19が穿設されている。20は例えばバイメタルで形成された感熱弁で、一端が底面14bの内面に突設された凸部21にかしめによって固定され、他端には出口部19を開閉するパッキン22が固定されている。この感熱弁20はバイメタルの作用によって低温時に出口部19をパッキン22で閉塞し、所定温度に達するとバイメタルが湾曲することにより出口部19を開放するようになっている。また、23は中央部が底面14bの外面に回動自在に枢支された弁レバーで、これの一端に圧接する圧縮ばね24によって他端に開管されたパッキン25が出口部19を下方から閉塞するようになっている。」(2頁右上欄13行?左下欄7行)

記載(1f)
「次に上記構成の作用について説明する。加熱台2にボトル6が載置されるとボトル蓋7の上面が弁レバー23の一端に当接し、圧縮ばね24に抗して弁レバー23が回動されるので、それまで出口部19の下部を閉塞していたパッキン25が離間する。この状態においてミルケース8内にコーヒー豆を投入してモータ13に通電すると粉砕体12が回転して、コーヒー豆が粉砕されてコーヒー粉が生成され、そのコーヒー粉が回転遠心力によってミルフィルタ10を通過して、抽出容器14内の紙フィルタ18上に堆積される。その後給湯機構5が働いて水が水タンクから加熱管3内に流入され、ヒータ4の発熱によって沸騰後、注湯管を介して湯受器16に供給される。そしてこの湯は流出口17を介して抽出容器14内に滴下されるが、出口部19が感熱弁20のパッキン22によって閉塞されて供給された湯が抽出容器14内に貯留されるようになっているので、徐々に液面が上昇し紙フィルタ18の底面まで達すると紙フイルタ18上のコーヒー粉に浸透してコーヒー粉全体が湿潤される。」(2頁左下欄8行?右下欄8行)

記載(1g)
「一方、感熱弁20の温度は抽出容器14内に貯留された湯によってやがて所定温度に達するから、バイメタルの作用でパッキン22が出口部19を開放するが、この時点でフィルタ18上のコーヒー粉は充分に湿潤されて良好な成分を抽出し易い状態になされているから、湯受器16の流出口17から連続的に供給される湯が充分にコーヒー粉に行き渡ってコーヒー液を抽出するようになり、抽出されたコーヒー液が出口部19を介してボトル6内に貯留される。」(2頁右下欄9?18行)

記載(1h)
「上記構成によればコーヒー抽出の初期に出口部19が閉塞されて抽出容器14内に供給された湯がフィルタ18上のコーヒー粉全体に湿潤するから、コーヒー粉の良好な成分を抽出し易い状態になって風味のよいコーヒー液を抽出でき、また、湯によってコーヒー粉全体が充分湿潤されるのでコーヒー粉の使用効率が高くなる。」(2頁右下欄19行?3頁左上欄5行)

記載(1i)
「[発明の効果]
本発明は上記説明から明らかなように、感熱弁の作用によって、コーヒー粉全体に湯が湿潤した後、コーヒー液の抽出が行なわれるようにしたので、コーヒーの良好な成分を充分抽出することができるとともにコーヒー粉の使用効率の、向上を図ることができるという優れた効果を奏する。」(3頁左上欄10?16行)

記載(1j)


」(第1図)

甲第2号証:特開2009-291088号公報(以下、「引用例2」という。)

記載(2a)
「【請求項1】
第一の温水を用いてコーヒー豆からコーヒー成分を抽出する第一抽出工程と、
前記第一抽出工程終了後、第二の温水を用いて前記コーヒー豆からコーヒー成分を抽出する第二抽出工程と、
前記第一抽出工程及び前記第二抽出工程を経ることにより得られた抽出液の成分を調整してコーヒー含有飲料を得る調整工程と、
前記調整工程で得られた前記コーヒー含有飲料を密閉容器に封入するパッケージ工程と、
を含み、
前記第二の温水は35℃以上の温水であり、
前記調整工程において、
前記抽出液に対し、水による希釈を行わない、または、
前記抽出液に対する水の添加量の上限を、前記コーヒー豆の重量を基準として300重量%とすることを特徴とするコーヒー含有飲料の製造方法。」(請求項1)

記載(2b)
「本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、2段階抽出工程を含むコーヒー含有飲料の製造方法において、調整工程で使用していた調整用の水をできるだけ少なくし、減らした調整用水と同量の温水をコーヒー豆に供給してコーヒー成分の抽出を行う方法を見出した。この方法によれば、従来と異質な香りを備える芳醇なコーヒー含有飲料を製造することができる。
そのメカニズムは明らかではないが、本発明がもたらす特有な香り成分は他のコーヒー成分より溶出速度が遅いことが原因の一つと考えられる。そのため、コーヒーの主要な成分を取りきった後もこの香り成分はコーヒー豆に残存しているものと考えられる。したがって、大量の温水を用いて、当該香り成分を十分に抽出させることにより、抽出液中に含まれる香り成分の濃度を高めることができるものと考えられる。」(段落0007?0008)

記載(2c)
「本発明において、第二の温水の温度が第一の温水の温度よりも低い構成を採用することができる。これにより、余分な雑味成分の溶出を抑えつつ、抽出液に含まれるコーヒーの香り成分の濃度を相対的に高めることができる。
本発明において、第一の温水及び第二の温水は、いずれも35℃以上100℃以下の温水である構成を採用することができる。これにより、コーヒーの香り成分を効率よく抽出しつつ、雑味成分の溶出を抑えることが可能となる。
本発明において、第一の温水は60℃以上100℃以下の温水であり、第二の温水は35℃以上55℃以下の温水である構成を採用することができる。これにより、第一の温水にはコーヒー成分を効率よく抽出させる一方、第二の温水には、コーヒーの香り成分のうちスモーキー感、やわらかなロースト感を与える成分を選択的に抽出させることができる。したがって、より芳醇なコーヒー含有飲料を提供することが可能となる。」(段落0012?0014)

記載(2d)
「このように粉砕されたコーヒー豆は、通常は、図2(A)に示されるように、抽出桶10内のメッシュ12上にチャージする。
第一抽出工程では、シャワー14から温水15aを粉砕コーヒー豆13に供給する。抽出桶10の下部に設置されているバルブ11を開くことにより、コーヒー抽出液17が得られる。」(段落0031?0032)

記載(2e)
「温水15aは、粉砕コーヒー豆13の重量に対して2?4倍とする。温水15aが、粉砕コーヒー豆13の重量に対して少なすぎると、コーヒーの基本的な味(うまみ成分、有機酸)が抽出されないという点で好ましくない。一方、温水15aが、粉砕コーヒー豆13の重量に対して多すぎると、雑味成分が多くなるという点で好ましくない。」(段落0033)

記載(2f)
「第一抽出工程で抽出されたコーヒー抽出液17を溜めずに、第二抽出工程の温水15bを流してもよく、第一抽出工程で抽出されるコーヒー抽出液17は、抽出桶10に溜めておいて、第二抽出工程の際に一緒に流してもよい。」(段落0035)

記載(2g)
「図2(B)で示すように、第一抽出工程の終了後、放置し、3分?15分経過した時点で第二抽出工程を開始する(図2(C))。3分以上経過後に第二抽出工程を行うことで、第一抽出工程で使用した温水15aをお湯切りすることができる。したがって、第一抽出工程と第二抽出工程との温度差の効果をより効果的に得ることができる。よって、良好なコーヒー成分を余すことなく抽出できるため好ましい。また、15分以内で第二抽出工程を行うことで、香気成分の希散を抑えるため好ましい。この方法は、スモーキーな香り成分を効果的に抽出できるため、ブラックコーヒーの製法としてより好適である。」(段落0036)

記載(2h)
「第二抽出工程では、シャワー14から温水15bを粉砕コーヒー豆13に供給する。抽出桶10の下部に設置されているバルブ11を開くことにより、コーヒー抽出液17が得られる。」(段落0037)

記載(2i)
「本実施形態において、コーヒー成分の抽出方法は特に限定されないが、抽出方法として例えば、ドリップ式抽出法、浸漬抽出法、カラム抽出法、エスプレッソ式抽出法等が挙げられる。」(段落0049)

記載(2j)
「[抽出液の調整]
(実施例1)
図1および図2に示す工程に沿って、第一抽出工程及び第二抽出工程を行った。 200gの焙煎したコーヒー豆を粉砕機で粉砕し、粒度1.0mm以上、50%の粉砕コーヒー豆を用意した。この粉砕コーヒー豆200gを抽出桶10に投入してシャワー14から給水した。第一抽出工程では、65℃の温水を粉砕コーヒー豆の重量に対して3倍用いた。第一抽出工程後、5分放置し、第二抽出工程を行った。第二抽出工程では、40℃の温水を供給した。第二抽出工程では、第一抽出工程及び第二抽出工程の抽出液の合計重量が粉砕コーヒー豆の重量に対して23.3倍となるように抽出液を回収した。第一抽出工程及び第二抽出工程の間は、バルブ11は開放状態とし、自然な抽出が行われるようにした。」(段落0060)

記載(2k)


」(図2)

記載(2l)
「温水15bは温水15aの温度よりも低くする。これにより、余分な雑味成分の溶出を抑えつつ、抽出液に含まれるコーヒーの香り成分の濃度を相対的に高めることができる。具体的には、35℃以上100℃以下の温水とすることができ、35℃以上55℃以下とするとより好ましい。温水15bの温度が低すぎると香り成分の抽出率が低下するため好ましくない。温水15bの温度が高温すぎると、雑味成分の溶出が増加してしまうという点で好ましくない。35℃以上50℃以下とすると効果的に香り成分を抽出でき、かつ、雑味成分の抽出を抑制することができる。したがって、香り成分をバランスよく抽出することができる。」(段落0039)

甲第3号証:特開2013-42709号公報(以下、「引用例3」という。)

記載(3a)
「本発明において、コーヒー顆粒を静置状態にする方法は限定されない。コーヒー保持板5,6でコーヒー顆粒Mを保持する方法(図1(1)参照)や、コーヒー顆粒Mの堆積層全体をコーヒー保持袋7で覆う方法(図1(2)参照)が例示できる。コーヒー保持板やコーヒー保持袋は、コーヒー顆粒を略密封に収容するために、抽出部に対して内接する形状や材質を選択する必要はあるが、抽出溶媒を通液でき、コーヒー顆粒と抽出液とを分離できるものであれば特に限定されない。具体的には、金属メッシュ、不織布(ネル布、リント布など)、紙フィルターなどの網目部材を例示でき、フラット、円錐状、角錐状等の形状のものを用いることができる。網目部材のメッシュを小さくし過ぎると目詰まりが発生しやすく、抽出に時間を要して過抽出を引き起こす可能性があることから、メッシュサイズは金属メッシュの場合、アメリカ式メッシュ20?200番程度のものを用いるのが好ましい。また、コーヒー抽出液に含まれる油分を吸着除去できる観点からは、不織布を用いることが好ましい。」(段落0016)

甲第4号証:特開2005-40068号公報(以下、「引用例4」という。)

記載(4a)
「浸漬抽出は、温度約60?98℃の熱水をコーヒー豆に対して質量比で5?15倍量用いて行うが、ドリップ抽出との大きな違いは、抽出と同時に行われる引き抜き工程がないことである。従って、一度に熱水がコーヒー豆に加えられて3?30分間浸漬され、必要に応じてコーヒー豆は攪拌され、一度に抽出(引き抜き)される。その際、使用する熱水の量が少ないと、抽出温度が低下し、攪拌操作ができなくなるばかりか抽出効率が低下する。」(段落0013)

記載(4b)
「(浸漬抽出)
200gの粉砕した焙煎コーヒー豆を10Lステンレスビーカーに投入し、ビーカー上部からコーヒー豆1に対して表1の加水倍率になるように98℃の熱水を加え、コーヒー豆が熱水に十分浸かるように攪拌棒でなじませた。その後、試料番号5M,10M,15M及び20Mについては前記攪拌棒を用いて攪拌操作(20rpm)を行いながら、試料番号5N,10N,15N及び20Nについては攪拌せずに、各々、15分間浸漬抽出した。その後、抽出液を150メッシュの網で粗濾過し、更にネル布を用いてネル濾過してコーヒー豆と分離することにより、浸漬抽出液を得た。なお、熱水の添加から浸漬抽出液を得るまでに要した時間は30分だった。」(段落0021)

第4 引用例に記載された発明
1 引用例1に記載された発明
引用例1には、記載(1b)、(1c)、(1h)、及び(1i)より、コーヒー粉に注がれた湯が、コーヒー粉に充分湿潤することなくボトルに滴下されると、コーヒー粉よりコーヒーの良好な成分が充分抽出されることがなく風味が劣り、コーヒー抽出の効率が悪いため、コーヒー粉に充分湯が湿潤して、コーヒーの良好な成分を充分抽出し、コーヒー豆の使用効率の向上を図るためのコーヒー抽出器を提供することが記載されており、記載(1a)、(1d)、(1e)、(1f)、(1g)、及び(1j)より、そのコーヒー抽出器を適用した例として、抽出容器14と、コーヒー液貯留用のボトル6と、抽出容器14の内部に配され、コーヒー抽出液を濾過するフィルタ18と、抽出容器14の底面に穿設された出口部に設けられた感熱弁20と、を備えたコーヒー製造機を用いるコーヒー飲料の製造方法であって、抽出容器14に、コーヒー粉を上方のミルフィルタ10から導入し、加熱管3内でヒータ4の発熱によって沸騰した湯を、注湯管及び湯受器を介して上方の流出口17から導入し、抽出容器14の出口部19が感熱弁20により閉塞されて、湯が貯留され、液面が上昇してコーヒー粉に浸透してコーヒー粉全体が湿潤され、貯留された湯によって、感熱弁の温度が所定温度に達して感熱弁による閉塞が解放され、流出口17から導入開始より連続的に供給される湯がコーヒー粉に行き渡ってコーヒー液を抽出するようになり、抽出されたコーヒー液が出口部19を介してボトル6内に貯留される、コーヒー飲料の製造方法が記載されている。
また、記載(1j)の図に記載された装置の構造から、コーヒー飲料の製造方法の全工程が大気圧下で行われていることが分かる。
さらに、コーヒー粉全体を湿潤させることは、湿潤工程といえ、コーヒー液を抽出することは、抽出工程といえる。
よって、引用例1には、
「コーヒー抽出液を作製する抽出容器と、
前記コーヒー抽出液を貯留するボトルと、
前記抽出容器の内部に配され、かつ前記コーヒー抽出液を濾過するフィルタと、
前記抽出容器の底面に穿設された出口部に設けられた感熱弁と、を備えたコーヒー製造機を用いるコーヒー飲料の製造方法であって、
大気圧下で、前記抽出容器にコーヒー粉および湯を上方から導入し、前記コーヒー粉を前記湯で浸漬する湿潤工程と、
大気圧下で、前記コーヒー抽出液を前記ボトルに払い出しつつ、湿潤工程と連続して湯をコーヒー粉に導入して、コーヒー液を抽出する抽出工程と、を含み、
前記湿潤工程における前記感熱弁の開閉状態は閉であり、
前記抽出工程における前記感熱弁の開閉状態は開状態である、
コーヒー飲料の製造方法。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

2 引用例2に記載された発明
引用例2には、記載(2a)より、第一の温水を用いてコーヒー豆からコーヒー成分を抽出する第一抽出工程と、前記第一抽出工程終了後、第二の温水を用いて前記コーヒー豆からコーヒー成分を抽出する第二抽出工程と、前記第一抽出工程及び前記第二抽出工程を経ることにより得られた抽出液の成分を調整してコーヒー含有飲料を密閉容器に封入するパッケージ工程とを含む、コーヒー含有飲料の製造方法が記載されており、記載(2b)より、当該製造方法は、2段階抽出を含むコーヒー含有飲料の製造方法において、調整工程で使用していた調整用の水をできるだけ少なくし、減らした調整用の水と同量の温水をコーヒー豆に供給してコーヒー成分の抽出を行うことにより、従来と異質な香りを備える芳醇なコーヒー含有飲料を製造することができることが記載されている。また、引用例2には、記載(2d)及び記載(2k)より、粉砕されたコーヒー豆を、上端が開放された抽出桶10内のメッシュ12上にチャージし、第一抽出工程では、抽出桶10の上部にあるシャワー14から温水を粉砕コーヒー豆に供給すること、抽出桶10の下部に設置されているバルブ11を開くことにより、コーヒー抽出液17が得られることが記載されており、記載(2f)より、第一抽出工程で抽出されたコーヒー抽出液17を溜めずに、第二抽出工程の温水15bを流してもよく、第一抽出工程で抽出されるコーヒー抽出液17は、抽出桶10に溜めておいて、第二抽出工程の際に一緒に流してもよいこと、記載(2g)より、第一抽出工程の終了後、放置し、3分?15分経過した時点で第二抽出工程を開始すること、記載(2h)より、第二抽出工程では、シャワー14から温水15bを粉砕コーヒー豆13に供給し、抽出桶10の下部に設置されているバルブ11を開くことにより、コーヒー抽出液17が得られることが記載されている。また、引用例2には、記載(2c)より、第一の温水及び第二の温水は、いずれも35℃以上100℃以下の温水である構成を採用することができることも記載されている。さらに、引用例2には、記載(2j)より、実施例として、第一抽出工程では、65℃の温水を給水し、第一抽出工程後、5分放置し、40℃の温水を供給する第二の抽出工程を行い、コーヒー抽出液を回収したこと、当該第一抽出工程及び第二抽出工程の間は、バルブは開放状態とし、自然な抽出が行われるようにしたことが記載されている。さらに、引用例2には、記(2e)より、温水を粉砕コーヒー豆の重量に対して2?4倍用いることが記載されており記載(2i)より、コーヒー成分の抽出方法は特に限定されないが、例えば、ドリップ式抽出法、浸漬抽出法が挙げられることが記載されている。
してみると、引用例2には、記載(2f)の前半部分の「第一抽出工程で抽出されたコーヒー抽出液17を溜めずに、第二抽出工程の温水15bを流してもよく」及び記載(2j)の「第一抽出工程及び第二抽出工程の間は、バルブは開放状態とし、自然な抽出が行われるようにした」との、第一抽出工程及び第二抽出工程において、コーヒー抽出液を溜めない態様と、記載(2f)の後半部分の「第一抽出工程で抽出されるコーヒー抽出液17は、抽出桶10に溜めておいて、第二抽出工程の際に一緒に流してもよい」との、第一抽出工程のコーヒー抽出液を溜めておいて第二抽出工程の際に一緒に流す態様が記載されている。
また、記載(2k)の図から、コーヒー抽出液を得る工程が、大気圧下で行われていることが理解される。
よって、引用例2には、
「コーヒー抽出液を作製する抽出桶と、
前記抽出桶の内部に配され、かつ前記コーヒー抽出液を濾過するメッシュと、
前記抽出桶の下部に設置されている流路開閉機能を有したバルブと、を備えた装置を用いるコーヒー飲料の製造方法であって、
大気圧下で、前記抽出桶にコーヒー豆および温水を上方から導入する第一抽出工程と、
第一抽出工程後と第二抽出工程の間の放置を行う工程と、
前記抽出桶内の前記コーヒー豆に、前記熱水とは別に準備した他の温水を導入する第二抽出工程と、
を含み、
第一抽出工程における前記バルブの開閉状態は、開状態であり、
第二抽出工程における前記バルブの開閉状態は、開状態であり、
第二抽出工程において、前記第1の容器に導入する前記温水の温度が35℃以上100℃以下である、
コーヒー飲料の製造方法。」の発明(以下、「引用発明2-1」という。)、及び
「コーヒー抽出液を作製する抽出桶と、
前記抽出桶の内部に配され、かつ前記コーヒー抽出液を濾過するメッシュと、
前記抽出桶の下部に設置されている流路開閉機能を有したバルブと、を備えた装置を用いるコーヒー飲料の製造方法であって、
大気圧下で、前記抽出桶にコーヒー豆および温水を上方から導入し、得られたコーヒー抽出液を抽出桶に溜める第一抽出工程と、
前記抽出桶内の前記コーヒー豆に、前記温水とは別に準備した他の温水を導入し、払い出しを行う第二抽出工程と、
を含み、
第二抽出工程における前記バルブの開閉状態は、開状態であり、
第二抽出工程において、前記第1の容器に導入する前記温水の温度が35℃以上100℃以下である、
コーヒー飲料の製造方法。」の発明(以下、「引用発明2-2」という。)が記載されているといえる。

第5 当審の判断
1 理由ア(新規性)について
(1)本件特許発明1について
引用発明1の「抽出容器」は、本件特許発明の「コーヒー抽出液を作製する第1の容器」に相当し、引用発明1の「ボトル」は、本件特許発明の「コーヒー抽出液を貯留する第2の容器」に相当し、引用発明1の「フィルタ」は、本件特許発明の「濾過フィルター」に相当し、引用発明1の「感熱弁」は、本件特許発明の「流路開閉機能を有したバルブ」に相当し、引用発明1の「コーヒー製造機」は、本件特許発明の「抽出装置」に相当し、引用発明1の「湯」は、本件特許発明の「熱水」に相当し、引用発明1の「湿潤工程」は、本件特許発明の「第1の浸漬工程」に相当する。また、引用発明1の「コーヒー粉」は、技術常識に照らして、コーヒー豆を挽いて粉状にしたものであると認められる一方、本件特許明細書の段落0024には、コーヒー豆を挽いて平均粒子径d50が0.2mm以上2.0mm以下にしたものを用いることが好ましいことが記載されており、この挽いたコーヒー豆は粉状といえるから、引用発明1の「コーヒー粉」は本件特許発明の「コーヒー豆」に相当する。
本件特許発明1と引用発明1を対比すると、両者は、
「コーヒー抽出液を作製する第1の容器と、
前記コーヒー抽出液を貯留する第2の容器と、
前記第1の容器の内部に配され、かつ前記コーヒー抽出液を濾過する濾過フィルターと、
流路開閉機能を有したバルブと、を備えた抽出装置を用いるコーヒー飲料の製造方法であって、
大気圧下で、前記第1の容器にコーヒー豆および熱水を上方から導入し、前記コーヒー豆を前記熱水で浸漬することにより前記コーヒー抽出液を調製する、第1の浸漬工程と、
熱水をコーヒー豆に導入して、コーヒー液を抽出する第2の工程と、を含み、
前記第1の浸漬工程における前記バルブの開閉状態は閉であり、
前記第2の工程における前記バルブの開閉状態は開状態である、
コーヒー飲料の製造方法。」である点で一致し、
前者は、バルブが第1の容器と第2の容器の間の領域に配されるのに対して、後者は、感熱弁が抽出容器の底面に穿設された出口部に設けられている点(以下、「相違点1」という。)、
前者は、大気圧下でコーヒー抽出液を第2の容器に払い出しながら、第1の容器内のコーヒー豆を第1の容器内に残存するコーヒー抽出液で蒸らす、バルブの開閉状態が開状態である蒸らし工程と、第1の容器内のコーヒー豆を熱水とは別に準備した他の熱水で浸漬する、第2の浸漬工程を有しているのに対して、後者は、大気圧下で、コーヒー抽出液をボトルに払い出しつつ、浸漬工程と連続して湯をコーヒー豆に導入して、コーヒー液を抽出する抽出工程を有している点(以下、「相違点2」という。)、並びに、
前者は、第2の工程において第1の容器に導入する熱水の温度が60℃以上100℃以下であるのに対して、後者は、第2の工程において加熱管3内でヒータ4の発熱によって沸騰した熱水を、注湯管及び湯受器を介して上方の流出口17から抽出容器に導入しているものの、抽出容器に導入する湯の温度が不明である点(以下、「相違点3」という。)で相違する。
上記相違点1について検討すると、本件特許発明1の第1の容器と第2の容器の間の領域とは、第1の容器にも第2の容器にも属さない領域である一方、引用発明1の第1の容器の底面に穿設された出口部は第1の容器に属する領域であるといえるから、両者は異なる領域であると当業者に理解されるものであり、相違点1は、実質的な相違点である。
相違点1は実質的な相違点であるので、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用例1に記載された発明ではない。

(2)本件特許発明2?10について
請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?10に係る、本件特許発明2?10も、上記(1)で検討した本件特許発明1と同様に、引用発明1とは、少なくとも、実質的な相違点である相違点1で相違するから、本件特許発明2?10は、引用例1に記載された発明ではない。

(3)本件特許発明11について
本件特許発明1が「コーヒー飲料の製造方法」であるのに対して、実質的に「コーヒー飲料の品質改善方法」である点でのみ本件特許発明1と異なる本件特許発明11も、上記(1)で検討した本件特許発明1と同様に、引用発明1とは、少なくとも、実質的な相違点である相違点1で相違するから、本件特許発明11は、引用例1に記載された発明ではない。

(4)申立人の主張について
申立人は、異議申立書において、「感熱弁20は、本件特許発明の「第1の容器と前記第2の容器との間の領域に配されるとともに 前記第1の容器側の空間と前記第2の容器側の空間とを区切り、かつ流路開閉機能を有したバルブ」に、相当する。」(28頁20?22行)と述べ、本件特許発明1?1と引用例1に記載された発明の間に実質的な相違点はなく、本件特許発明1?11に新規性はない旨主張する。
しかしながら、引用発明1の感熱弁が本件特許発明1の「第1の容器と前記第2の容器との間の領域に配されるとともに 前記第1の容器側の空間と前記第2の容器側の空間とを区切り、かつ流路開閉機能を有したバルブ」に相当する物でないことは上で述べたとおりである。
そして、上記のとおり、本件特許発明1?11は引用例1に記載された発明ではないから、理由ア(新規性)についての上記主張には理由がない。

2 理由ア(進歩性)について
(1)本件特許発明1について
上記相違点1について検討すると、引用例1の記載からは、引用発明1において、感熱弁の位置を、抽出容器の底面に穿設された出口部から、抽出容器とボトルの間の領域に変更する動機付けが見出せない。
また、引用例3の記載(3a)、並びに、引用例4の記載(4a)及び(4b)の記載を見ても、引用発明1において、感熱弁の位置を変更する動機付けは見出せない。
したがって、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2?10について
本件特許発明2?10は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件発明1と同様に、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明11について
本件特許発明11は、本件特許発明1が「コーヒー飲料の製造方法」であるのに対して、実質的に「コーヒー飲料の品質改善方法」である点でのみ本件特許発明1と異なるものであるから、本件特許発明1と同様に、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)申立人の主張について
申立人は、異議申立書において、本件特許発明1?11と引用例1に記載された発明との間に相違点があったとしても微差に過ぎないから、本件特許発明1?11は、引用例1に記載された発明から当業者が容易に想到できた発明であり進歩性がない旨主張する。
しかしながら、上記のとおり、本件特許発明1?11は引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、理由ア(進歩性)についての上記主張には理由がない。

3 理由イ(新規性)について
(1)本件特許発明1について
引用発明2-1及び引用発明2-2の「抽出桶」は、本件特許発明の「コーヒー抽出液を作製する第1の容器」に相当し、引用発明2-1及び引用発明2-2の、「メッシュ」は、本件特許発明の「濾過フィルター」に相当し、引用発明2-1及び引用発明2-2の抽出桶を含む装置は、本件特許発明の「抽出装置」に相当し、引用発明2-1及び引用発明2-2の「第一抽出工程」は、本件特許発明の「第1の浸漬工程」に相当し、引用発明2-1及び引用発明2-2の「第二抽出工程」は、本件特許発明の「第2の浸漬工程」に相当し、引用発明2-1及び引用発明2-2の「温水」は、本件特許発明の「熱水」に相当する。
本件特許発明1と引用発明2-1を対比すると、両者は、
「コーヒー抽出液を作製する第1の容器と、
前記第1の容器の内部に配され、かつ前記コーヒー抽出液を濾過する濾過フィルターと、
前記第1の容器の下方に設置されている流路開閉機能を有したバルブと、を備えた抽出装置を用いるコーヒー飲料の製造方法であって、
大気圧下で、前記第1の容器にコーヒー豆および熱水を上方から導入する第1の浸漬工程と、
前記第1の容器内の前記コーヒー豆に、前記熱水とは別に準備した他の熱水を導入する第2の浸漬工程と、
を含み、
第2の浸漬工程における前記バルブの開閉状態は、開状態である、
コーヒー飲料の製造方法。」である点で一致し、
前者は、第1の浸漬工程におけるバルブの開閉状態は閉状態であり、大気圧下で、第1の浸漬工程で得られたコーヒー抽出液を払い出しながら、第1の容器内のコーヒー豆を第1の容器内に残存する前記コーヒー抽出液で蒸らす、バルブの開閉状態が開状態である蒸らし工程を含むのに対して、後者は、第一抽出工程におけるバルブの開閉状態は開状態であり、第一抽出工程後と第二抽出工程の間の放置を行う工程を有する点(以下、「相違点4」という。)、
前者は、コーヒー抽出液を貯留する第2の容器を有する抽出装置を用いるのに対して、後者は、コーヒー抽出液を貯留する容器を有することが特定されていない点(以下、「相違点5」という。)、並びに、
前者は、第2の浸漬工程において第1の容器に導入する熱水の温度が60℃以上100℃以下であるのに対して、後者は、第二抽出工程において抽出桶に導入する温水の温度が35℃以上100℃以下である点(以下、「相違点6」という。)で相違する。
上記相違点4について検討すると、本件特許発明1のバルブ閉状態で行う第1の浸漬工程と、引用発明2-1のバルブ開状態で行う第一抽出工程は、異なる工程として当業者に理解されるものであり、相違点4は実質的な相違点である。
してみると、相違点4は実質的な相違点であるので、相違点5及び6について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明2-1ではない。

本件特許発明1と引用発明2-2を対比すると、両者は、
「コーヒー抽出液を作製する第1の容器と、
前記第1の容器の内部に配され、かつ前記コーヒー抽出液を濾過する濾過フィルターと、
前記第1の容器の下方に設置されている流路開閉機能を有したバルブと、を備えた抽出装置を用いるコーヒー飲料の製造方法であって、
大気圧下で、前記第1の容器にコーヒー豆および熱水を上方から導入する第1の浸漬工程と、
前記第1の容器内の前記コーヒー豆に、前記熱水とは別に準備した他の熱水を導入する第2の浸漬工程と、
を含む、
コーヒー飲料の製造方法。」である点で一致し、
前者は、第1の浸漬工程におけるバルブの開閉状態は閉状態であり、大気圧下で、第1の浸漬工程で得られたコーヒー抽出液を払い出しながら、第1の容器内のコーヒー豆を第1の容器内に残存する前記コーヒー抽出液で蒸らす、バルブの開閉状態が開状態である蒸らし工程を含むのに対して、後者は、大気圧下で、抽出桶にコーヒー豆および温水を上方から導入し、得られたコーヒー抽出液を抽出桶に溜める第一抽出工程と、前記抽出桶内の前記コーヒー豆に、前記温水とは別に準備した他の温水を導入し、払い出しを行う第二抽出工程を有するものの、大気圧下で、コーヒー抽出液を払い出しながら、抽出桶内のコーヒー豆を抽出桶内に残存するコーヒー抽出液で蒸らす、蒸らし工程を有しない点(以下、「相違点7」という。)、
前者は、コーヒー抽出液を貯留する第2の容器を有する抽出装置を用いるのに対して、後者は、コーヒー抽出液を貯留する容器を有することが特定されていない点(以下、「相違点8」という。)、並びに、
前者は、第2の浸漬工程において第1の容器に導入する熱水の温度が60℃以上100℃以下であるのに対して、後者は、第二抽出工程において導入する温水の温度が35℃以上100℃以下である点(以下、「相違点9」という。)で相違する。
上記相違点7について検討すると、引用発明2-2では、第一抽出工程で抽出されるコーヒー抽出液を第1の容器に溜めることから、第一抽出工程でのバルブの開閉状態は閉状態であると認められ、本件特許発明1とは異なり、第一抽出工程と、第二抽出工程で他の熱水を導入するまでの間に、バルブの開閉状態が開状態であって、第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液の払い出しがなされ、残存する前記コーヒー抽出液によりコーヒー豆が蒸らされる「蒸らし工程」が存在しないことから、相違点7は実質的な相違点である。
してみると、相違点7は実質的な相違点であるので、相違点8及び9について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明2-2ではない。

したがって、本件特許発明1は、引用例2に記載された発明ではない。

(2)本件特許発明2?10について
請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?10に係る、本件特許発明2?10も、上記(1)で検討した本件特許発明1と同様に、引用発明2-1とは、少なくとも、実質的な相違点である相違点4で相違し、引用発明2-2とは、少なくとも実質的な相違点である相違点7で相違するから、本件特許発明2?10は、引用例2に記載された発明ではない。

(3)本件特許発明11について
本件特許発明1が「コーヒー飲料の製造方法」であるのに対して、実質的に「コーヒー飲料の品質改善方法」である点でのみ本件特許発明1と異なる本件特許発明11も、上記(1)で検討した本件特許発明1と同様に、引用発明2-1とは、少なくとも、実質的な相違点である相違点4で相違し、引用発明2-2とは、少なくとも実質的な相違点である相違点7で相違するから、本件特許発明11は、引用例2に記載された発明ではない。

(4)申立人の主張について
申立人は、異議申立書において、引用例2には本件特許発明1?11のすべての構成要件が開示されており新規性がない旨主張する。
しかしながら、上記のとおり、引用例2には本件特許発明1?11のすべての構成要件が開示されているとはいえないため、本件特許発明1?11は引用例2に記載された発明ではないから、理由イ(新規性)についての上記主張には理由がない。

4 理由イ(進歩性)について
(1)本件特許発明1について
上記相違点4について検討すると、引用発明2-1の第一抽出工程後と第二抽出工程の間の放置を行う工程は、記載(2g)に、第一抽出工程の終了後、3分以上経過後に第二抽出工程を行うことで、第一抽出工程で使用した温水をお湯切りすることができることが記載されていることから、本件特許発明1の、バルブの開閉状態が開状態であって、コーヒー抽出液を払い出しながら、残存するコーヒー抽出液で蒸らす「蒸らし工程」に相当する。そして、引用例2には、記載(2f)に、「第一抽出工程で抽出されるコーヒー抽出液17は、抽出桶10に溜めておいて、第二抽出工程の際に一緒に流してもよい。」との、第一抽出工程で抽出されるコーヒー抽出液を抽出桶に溜めておく態様、すなわち、第一抽出工程においてバルブの開閉状態を閉状態としていると認められる態様が記載されている。しかしながら、当該記載は、第一抽出工程においてバルブの開閉状態を閉状態とする態様では、第一抽出工程で抽出されるコーヒー抽出液を抽出桶に溜めておいて、第二抽出工程の際に一緒に流すことを示しており、引用発明2-1において、当該記載に基づき、第一抽出工程のバルブの開閉状態を閉状態とし、第二抽出工程までコーヒー抽出液を溜めることとすると、第一抽出工程と第二抽出工程の間に、バルブの開閉状態を開状態とした3分以上の放置が行われなくなることから、「蒸らし工程」が存在しなくなる。よって、引用発明2-1において、第一抽出工程でのバルブの開閉状態を閉状態とし、かつ、「蒸らし工程」を有するものとする動機付けは見出せない。
してみると、相違点5及び6について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明2-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

上記相違点7について検討すると、引用例2の記載からは、引用発明2-2において、第一抽出工程と第二抽出工程の間にバルブの開閉状態を開状態として払い出しを行い、残存する前記コーヒー抽出液によりコーヒー豆が蒸らされる「蒸らし工程」を設ける動機付けが見出せない。
また、引用例3の記載(3a)、並びに、引用例4の記載(4a)及び(4b)の記載を見ても、引用発明2-2において第一抽出工程と第二抽出工程の間にバルブの開閉状態を開状態として払い出しを行い、残存する前記コーヒー抽出液によりコーヒー豆が蒸らされる「蒸らし工程」を設ける動機付けは見出せない。
してみると、相違点8及び9について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明2-2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、本件特許発明1は、引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2?10について
本件特許発明2?10は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件発明1と同様に、引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明11について
本件特許発明11は、本件特許発明1が「コーヒー飲料の製造方法」であるのに対して、実質的に「コーヒー飲料の品質改善方法」である点でのみ本件特許発明1と異なるものであるから、本件特許発明1と同様に、引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)申立人の主張について
申立人は、異議申立書において、引用例2には本件特許発明1?11のすべての構成要件が開示されており、相違点があっても微差に過ぎないから、本件特許発明1?11は、引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に想到できた発明であり進歩性がない旨主張する。
しかしながら、上記のとおり、本件特許発明1?11は引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、理由イ(進歩性)についての上記主張には理由がない。

5 理由ウについて
(1)本件特許発明1について
引用例1には、記載(1e)及び(1j)より、コーヒーを抽出する装置において、低温で閉塞し、所定温度に達すると開放する感熱弁を用いることが記載されている。

本件特許発明1と引用発明2-1の相違点である上記相違点4について検討するにあたり、引用発明2-1において、バルブとして引用例1に記載の感熱弁を採用することが容易かについて検討する。
引用発明2-1は、第1の浸漬工程及び第二抽出工程において、バルブの開閉状態を開状態とするものである。感熱弁は、温度により開閉状態が変化するものであるから、第1の浸漬工程及び第二抽出工程でバルブの開閉状態を開状態に保つコーヒー抽出液の製造方法において、感熱弁を採用する動機付けが見出せない。
また、引用例3の記載(3a)、並びに、引用例4の記載(4a)及び(4b)の記載を見ても、引用発明2-1において、感熱弁を採用する動機付けは見出せない。
してみると、本件特許発明1は、引用発明2-1及び引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

次に、本件特許発明1と引用発明2-2の相違点である上記相違点7について検討するにあたり、引用発明2-2において、引用例1を組み合わせることで、第1の容器内のコーヒー豆を第1の容器内に残存する前記コーヒー抽出液で蒸らす、バルブの開閉状態が開状態である蒸らし工程を設けることが容易といえるかについて検討する。
引用発明2-2は、第一抽出工程で熱水を導入して得られたコーヒー抽出液を、第1の容器に溜めておいて、第二抽出工程で他の熱水を導入してからコーヒー抽出液を払い出すものである。この操作を行う場合に、引用例1に記載の、低温で閉塞し、所定温度に達すると開放する感熱弁を用いるとすると、第一抽出工程で比較的低温の熱水を導入し、第二抽出工程で、感熱弁を開放させる温度よりも高い温度の熱水を導入する必要があるが、引用例2には、記載(2d)、(2f)、(2l)より、第一抽出工程で導入する熱水の温度よりも、第二抽出工程で導入する熱水の温度を低くすることが記載されていることから、引用発明2-2において、第一抽出工程の熱水温度よりも第二抽出工程の熱水温度を高くする必要がある、引用例1に記載の感熱弁を採用する動機付けが見出せない。
また、引用発明2-2において、バルブを閉状態として温水を導入する第一抽出工程が終了した後、再び温水を導入する第二抽出工程開始前に感熱弁の開閉状態を開状態として払い出しを行い、残存する前記コーヒー抽出液によりコーヒー豆が蒸らされる「蒸らし工程」を設ける動機付けが見出せない。
さらに、引用例3の記載(3a)、並びに、引用例4の記載(4a)及び(4b)の記載を見ても、引用発明2-2において、引用例1に記載の感熱弁を採用する動機付け及び「蒸らし工程」を設ける動機付けは見出せない。
してみると、相違点8及び9について検討するまでもなく、本件特許発明は、引用発明2-2及び引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、本件特許発明1は、引用例2及び引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2?10について
本件特許発明2?10は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件発明1と同様に、引用例2及び引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明11について
本件特許発明11は、本件特許発明1が「コーヒー飲料の製造方法」であるのに対して、実質的に「コーヒー飲料の品質改善方法」である点でのみ本件特許発明1と異なるものであるから、本件特許発明1と同様に、引用例2及び引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)申立人の主張について
申立人は、異議申立書49頁1?4行において、「本件特許発明1は、甲第2号証に甲第1号証の感熱弁を組み合わせることにより当業者が容易に想到できた発明であり進歩性が無い。本件特許発明2?11についても、同様に進歩性がない。」と主張する。
しかしながら、上記のとおり、甲第2号証に記載された発明に甲第1号証に記載の感熱弁を組み合わせることは当業者が容易になし得た事項であるとはいえないため、本件特許発明1?11は引用例2及び引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、理由ウについての上記主張には理由がない。

6 理由エについて
(1)本件特許発明の解決しようとする課題
本件特許発明は、特許請求の範囲、明細書の全体の記載事項(特に、段落0007)からみて、「雑味による影響を低減させることができる程度に香味感を向上させたコーヒー抽出液を効率良く作製するコーヒー飲料の製造技術」の提供を解決しようとする課題とするものであると認められる。

(2)当審の判断
ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、段落0015に、「本製造方法は、上述したように、コーヒー豆を熱水に浸漬させるタイミングと、コーヒー豆を蒸らすタイミングにくわえ、コーヒー豆を熱水に浸漬させる手法について創意工夫したものである。いわば、本製造方法は、熱水に対するコーヒー豆の接触状態と、上記コーヒー豆の蒸らし状態とのバランスを制御したものである。これにより、本製造方法によれば、従来の製造プロセスと比べて、コーヒー豆中に含まれている香味成分を存分に引き出すことが可能となる。」との記載があることから、本件特許発明は、熱水に対するコーヒー豆の接触状態と、コーヒー豆の蒸らし状態のバランスを制御することにより、コーヒーの香味成分を引き出すことが理解される。
そして、段落0021には、
「(第1の浸漬工程)
まず、上述したバルブ30を閉状態に設定し、第1の容器10内にコーヒー豆および熱水を導入する。このとき、導入したコーヒー豆全量が熱水に浸漬するように、上記熱水を第1の容器10内に導入することが好ましい。こうすることで、第1の容器10内に導入した全てのコーヒー豆に対して、熱水を効果的に接触させることができる。そのため、本製造方法によれば、第1の容器10内に導入したコーヒー豆全体からムラなく、当該コーヒー豆に由来する香味成分を抽出することが可能となる。具体的には、第1の容器10内に導入したコーヒー豆全体からムラなく、当該コーヒー豆に含まれている香味成分の内、少なくとも水に溶けやすい成分の大半を熱水中に抽出することが可能となる。 ここで、コーヒー飲料における雑味(渋みやエグみ等)は、たとえば、コーヒー豆中に含まれているタンニン等の成分に由来する呈味であるとされている。また、タンニンや繊維質等の雑味成分は、一般的に、水に対して溶けにくい成分として知られている。くわえて、コーヒー豆中に含まれている香味成分は、一般に、酸味成分、旨味・甘味成分、苦味成分、雑味成分の順に抽出されやすいとされている。」との、第1の浸漬工程において、香味成分の内、水に溶けやすい成分を抽出することができることや、雑味成分は香味成分の中で比較的抽出されにくい成分であることが説明されていることから、第1の浸漬工程により、雑味成分よりも水に溶けやすい他の香味成分を優先的に抽出できることが理解できる。
また、段落0028には、
「(蒸らし工程)
次に、図2(c)に示すように、上述したバルブ30を開状態に設定し、コーヒー抽出液を第2の容器20に払い出しながら、第1の容器10内のコーヒー豆を、第1の容器10内に残存するコーヒー抽出液で蒸らす。こうすることで、上述した第1の浸漬工程において調製したコーヒー抽出液を回収すると同時に、コーヒー豆中に含まれている炭酸ガスを放出することができる。これにより、後述する第2の浸漬工程において作製したコーヒー抽出液を第2の容器20に払い出す際に、コーヒー豆中に含まれている炭酸ガスに起因したフィルター目詰まりが生じることを抑制することができる。また、この工程においてコーヒー豆中に含まれている炭酸ガスを十分に放出しておくことにより、後述する第2の浸漬工程におけるコーヒー豆中に残存している香味成分の抽出効率が低減することを抑制できる。」との記載があり、段落0032には、
「本製造方法における第2の浸漬工程において使用する熱水の温度は、好ましくは、30℃以上100℃以下であり、さらに好ましくは、60℃以上80℃以下である。こうすることで、コーヒー本来の香味感(フレーバー感)を損なうことなく短時間でコーヒー豆に由来する香味成分を効率よく抽出することが可能となる。」との記載があることから、蒸らし工程を経て第2の浸漬工程を行うことや、第2の浸漬工程における熱水の温度を60℃以上100℃以下とすることにより、効率良く香味成分を抽出できることが理解できる。
さらに、段落0061?0062には、第1の浸漬工程を12分、蒸らし工程を10分とし、第2の浸漬工程で導入する熱水の温度を68℃とした実施例のコーヒー飲料は、雑味が強調されることなく、香りと呈味がバランス良く強調されたものであったことが記載されている。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明から、第1の浸漬工程、蒸らし工程、及び60℃以上100℃以下の熱水を用いた第2の浸漬工程を有することで、熱水に対するコーヒー豆の接触状態と、コーヒー豆の蒸らし状態のバランスが制御された本件特許発明が、「雑味による影響を低減させることができる程度に香味感を向上させたコーヒー抽出液を効率良く作製するコーヒー飲料の製造技術」の提供という課題を解決できることを当業者が認識できる。
よって、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

イ 申立人は、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、実施例が1例、比較例が2例記載されているのみであるから、本件特許発明の全ての範囲にわたって、本件特許発明の課題である「雑味による影響を低減させることができる程度に香味感を向上させたコーヒー抽出液を効率良く作製する」ことができるかどうか当業者であっても理解できないと主張する。
しかしながら、上記のとおり、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、理由エについての申立人の上記主張には理由がない。

7 理由オについて
(1)本件特許発明1?10について
本件特許発明1は、「コーヒー抽出液を作製する第1の容器と、前記コーヒー抽出液を貯留する第2の容器と、前記第1の容器の内部、または前記第1の容器と前記第2の容器との間の領域に配され、かつ前記コーヒー抽出液を濾過する濾過フィルターと、前記第1の容器と前記第2の容器との間の領域に配されるとともに、前記第1の容器側の空間と前記第2の容器側の空間とを区切り、かつ流路開閉機能を有したバルブと、を備えた抽出装置」との、当業者がその構成を明確に把握できる装置を用いたコーヒー飲料の製造方法であって、「大気圧下で、前記第1の容器にコーヒー豆および熱水を上方から導入し、前記コーヒー豆を前記熱水で浸漬することにより前記コーヒー抽出液を調製する、第1の浸漬工程」、「大気圧下で、前記コーヒー抽出液を前記第2の容器に払い出しながら、前記第1の容器内の前記コーヒー豆を、前記第1の容器内に残存する前記コーヒー抽出液で蒸らす、蒸らし工程」、「前記第1の容器内の前記コーヒー豆を、前記熱水とは別に準備した他の熱水で浸漬する、第2の浸漬工程」という包含される三つの工程のすべてが、当業者であれば、いかなる処理を行う工程であるか理解できるものである。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、段落0022に、第1の浸漬工程における好ましい浸漬時間が記載されており、段落0026に、第1の浸漬工程における好ましい熱水の温度が記載されており、実施例として具体的な実施態様も記載されているのであるから、本件特許発明1は、当業者が、当業者が期待し得る程度を超える過度の試行錯誤無しに実施できるものである。また、本件特許発明2?10に記載のその他の構成も、いずれも当業者が明確に把握して実施できるものである。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1?10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。

(2)本件特許発明11について
本件特許発明11は、コーヒー飲料の品質改善方法の発明である。
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、段落0015に、「本製造方法は、上述したように、コーヒー豆を熱水に浸漬させるタイミングと、コーヒー豆を蒸らすタイミングにくわえ、コーヒー豆を熱水に浸漬させる手法について創意工夫したものである。いわば、本製造方法は、熱水に対するコーヒー豆の接触状態と、上記コーヒー豆の蒸らし状態とのバランスを制御したものである。これにより、本製造方法によれば、従来の製造プロセスと比べて、コーヒー豆中に含まれている香味成分を存分に引き出すことが可能となる。」との記載があることから、本件特許発明は、熱水に対するコーヒー豆の接触状態と、コーヒー豆の蒸らし状態のバランスを制御することにより、コーヒーの香味成分を引き出すことが理解される。
そして、段落0021には、
「(第1の浸漬工程)
まず、上述したバルブ30を閉状態に設定し、第1の容器10内にコーヒー豆および熱水を導入する。このとき、導入したコーヒー豆全量が熱水に浸漬するように、上記熱水を第1の容器10内に導入することが好ましい。こうすることで、第1の容器10内に導入した全てのコーヒー豆に対して、熱水を効果的に接触させることができる。そのため、本製造方法によれば、第1の容器10内に導入したコーヒー豆全体からムラなく、当該コーヒー豆に由来する香味成分を抽出することが可能となる。具体的には、第1の容器10内に導入したコーヒー豆全体からムラなく、当該コーヒー豆に含まれている香味成分の内、少なくとも水に溶けやすい成分の大半を熱水中に抽出することが可能となる。 ここで、コーヒー飲料における雑味(渋みやエグみ等)は、たとえば、コーヒー豆中に含まれているタンニン等の成分に由来する呈味であるとされている。また、タンニンや繊維質等の雑味成分は、一般的に、水に対して溶けにくい成分として知られている。くわえて、コーヒー豆中に含まれている香味成分は、一般に、酸味成分、旨味・甘味成分、苦味成分、雑味成分の順に抽出されやすいとされている。」との、第1の浸漬工程において、香味成分の内、水に溶けやすい成分を抽出することができることや、雑味成分は香味成分の中で比較的抽出されにくい成分であることが説明されていることから、第1の浸漬工程により、雑味成分よりも水に溶けやすい他の香味成分を優先的に抽出できることが理解できる。
また、段落0028には、
「(蒸らし工程)
次に、図2(c)に示すように、上述したバルブ30を開状態に設定し、コーヒー抽出液を第2の容器20に払い出しながら、第1の容器10内のコーヒー豆を、第1の容器10内に残存するコーヒー抽出液で蒸らす。こうすることで、上述した第1の浸漬工程において調製したコーヒー抽出液を回収すると同時に、コーヒー豆中に含まれている炭酸ガスを放出することができる。これにより、後述する第2の浸漬工程において作製したコーヒー抽出液を第2の容器20に払い出す際に、コーヒー豆中に含まれている炭酸ガスに起因したフィルター目詰まりが生じることを抑制することができる。また、この工程においてコーヒー豆中に含まれている炭酸ガスを十分に放出しておくことにより、後述する第2の浸漬工程におけるコーヒー豆中に残存している香味成分の抽出効率が低減することを抑制できる。」との記載があり、段落0032には、
「本製造方法における第2の浸漬工程において使用する熱水の温度は、好ましくは、30℃以上100℃以下であり、さらに好ましくは、60℃以上80℃以下である。こうすることで、コーヒー本来の香味感(フレーバー感)を損なうことなく短時間でコーヒー豆に由来する香味成分を効率よく抽出することが可能となる。」との記載があることから、蒸らし工程を経て第2の浸漬工程を行うことや、第2の浸漬工程における熱水の温度を60℃以上100℃以下とすることにより、効率良く香味成分を抽出できることが理解できる。
さらに、段落0061?0062には、第1の浸漬工程を12分、蒸らし工程を10分とし、第2の浸漬工程で導入する熱水の温度を68℃とした実施例のコーヒー飲料は、雑味が強調されることなく、香りと呈味がバランス良く強調されたものであったことが記載されている。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明から、第1の浸漬工程、蒸らし工程、及び60℃以上100℃以下の熱水を用いた第2の浸漬工程を有することで、熱水に対するコーヒー豆の接触状態と、コーヒー豆の蒸らし状態のバランスが制御された本件特許発明11の方法により、コーヒー抽出液に対して、雑味による影響を低減させて香味感が向上するという品質の改善ができることが、理解できる。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明11を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。

(3)申立人の主張について
申立人は、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、実施例が1例、比較例が2例記載されているのみであるから、本件特許発明の製造方法により雑味による影響を低減させることができる程度に香味感を向上させたコーヒー抽出液を効率良く得ようとすれば、浸漬時間、導入時間、熱水の温度、払い出し速度等の各条件の組み合わせを実施しなければならず、当業者が期待し得る程度を超える過度の負担を強いるものであると主張する。
しかしながら、上記のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1?11を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、理由オについての申立人の上記主張には理由がない。

8 理由カについて
本件特許発明の「大気圧下で、前記コーヒー抽出液を前記第2の容器に払い出しながら、前記第1の容器内の前記コーヒー豆を、前記第1の容器内に残存する前記コーヒー抽出液で蒸らす」とされる「蒸らし工程」が明確であるかについて検討する。
本件特許明細書の段落0028に
「(蒸らし工程)
次に、図2(c)に示すように、上述したバルブ30を開状態に設定し、コーヒー抽出液を第2の容器20に払い出しながら、第1の容器10内のコーヒー豆を、第1の容器10内に残存するコーヒー抽出液で蒸らす。」との記載があり、本件特許発明1及び11の記載にもあるように、本件特許発明の「蒸らし工程」は、「払い出し」及び「蒸らし」を行う工程であることが理解できる。
「払い出し」は、蒸らし工程におけるバルブの開閉状態が開状態であることから、第1の浸漬工程で得られたコーヒー抽出液を、第1の容器から、開状態のバルブを介して、第2の容器に導出することを示すものであることが、明確に理解できる。
「蒸らし」は、コーヒー抽出の技術分野において、抽出の前に行う、コーヒー豆の粉に対して、粉が湿る程度の少量の湯を添加して粉全体に染みこませて膨張させる工程を示す用語であるから(要すれば、参考文献1‘ペーパードリップの極意’,「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」, [online], 27-11-2015 uploaded,[Retrieved on 29-06-2021], Retrieved from the internet: <URL: https://web.archive.org/web/20151127013821/http://www.refined-coffee.net:80/drip.html>, 特に、‘蒸らしがコクのポイント’の項;参考文献2‘「蒸らし」にこだわるSteam’,「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」, [online], 23-11-2015 uploaded,[Retrieved on 29-06-2021], Retrieved from the internet: <URL: https://web.archive.org/web/20151123075612/https://www.nishiyama-coffee.com/category/fresh_the_coffee/steam.html>,特に、‘1.「蒸らし」ってナニ?’の項;参考文献3‘秋の夜長の珈琲時間-本当においしい淹れ方-’,男の食彩,2002年11月1日発行,12巻,8号,4?12頁,特に、8頁参照。)、本件特許発明の場合、コーヒー抽出液を得る第2の浸漬工程の前の処理であって、第1の浸漬工程で得られたコーヒー抽出液である湯が、コーヒー豆に、コーヒー豆が湿る程度の少量存在する状態とする処理であることが、当業者であれば理解できる。
本件特許明細書の発明の詳細な説明における実施例では、段落0046?0047に
「バルブ30を全開状態とすることで、第1の容器10から第2の容器20へ得られた抽出液を排出するとともに、第1の容器10に格納したコーヒー豆を蒸らした。上記の工程に要した時間は10分である。次いで、バルブ30の開閉状態を閉状態に設定し、第1の容器10内に68℃の熱水240Lを導入した。このとき、第1の容器10内のコーヒー豆は、約100Lの熱水を第1の容器10内に導入した時点で、熱水に浸漬した状態となった。そのため、第1の容器10内のコーヒー豆が熱水に浸漬したことを確認できた後、バルブ30の開閉状態を全開ではない開状態に設定した。」との蒸らし工程についての記載があるが、当該記載から、実施例では、蒸らし工程10分の間に、払い出しと、コーヒー抽出液がコーヒー豆が湿る程度の少量となった状態で行われる蒸らしの処理が実施され、次いで、バルブ30の開閉状態を閉状態に設定し、熱水を導入することにより第2の浸漬工程を行っているものと考えられる。一方、比較例2では、段落0049に「バルブ30を閉めた状態でコーヒー豆を熱水で浸漬した後、浸漬状態をバルブ30を閉めた状態で10分間保持することにより上記コーヒー豆を蒸らした点以外は、実施例と同様の方法で、比較例2のコーヒー飲料を作製した。」との記載があることから、第2浸漬工程で、熱水が導入された後にバルブが開状態となるまでは、バルブが閉状態であって払い出しが行われておらず、コーヒー豆は熱水で浸漬されていて、コーヒー抽出液がコーヒー豆が湿る程度の少量存在する状態とはなっていない。そして、第2の浸漬工程でバルブが開状態となった後は、コーヒー抽出液が払い出され、コーヒー豆が湿る程度の少量存在する状態となる時点が存在すると考えられるものの、その後に抽出を行う工程がないことから、「蒸らし」処理を行ったことにはならない。
してみると、「大気圧下で、前記コーヒー抽出液を前記第2の容器に払い出しながら、前記第1の容器内の前記コーヒー豆を、前記第1の容器内に残存する前記コーヒー抽出液で蒸らす」とされる「蒸らし工程」は、明確である。
よって、本件特許発明は明確である。

申立人は、異議申立書の51頁12?23行において、「本件特許発明の蒸らし工程は、コーヒーを「払い出しながら」行われていると規定されていることから、「払い出し」と「蒸らし」の関係がよくわからず、発明として不明確である。例えば、バルブを全開にして払い出しを行う場合は、通常の概念では「蒸らす」とは言えないが、わずかであっても払い出す時間がかかることから(例えば、5分程度)、その5分程度の時間は「蒸らす」ことになるのか、また、バルブを少しだけ開けて少量ずつ時間(5分以上)をかけて払い出すようなことを「払い出しながら蒸らす」と規定しようとしているのか、バルブの状態について単に「開状態である」という規定のみでは、本発明の「蒸らし工程」の意味が不明確である。そして、「蒸らし工程」の意味が不明であるがゆえに、浸漬抽出において、蒸らし工程を意図せずに必然的に行っている「払い出し工程」までもが本件特許発明の「蒸らし工程」に含まれて解釈されるおそれがある。したがって、本件特許発明は不明確である。」と主張している。
しかしながら、上記のとおり、本件特許発明は明確であるので、理由カについての申立人の上記主張には理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立理由によっては、本件請求項1?11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-07-16 
出願番号 特願2015-251831(P2015-251831)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A23F)
P 1 651・ 536- Y (A23F)
P 1 651・ 121- Y (A23F)
P 1 651・ 113- Y (A23F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松原 寛子  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 冨永 保
吉岡 沙織
登録日 2020-10-13 
登録番号 特許第6777990号(P6777990)
権利者 アサヒ飲料株式会社
発明の名称 コーヒー飲料の製造方法およびコーヒー飲料の品質改善方法  
代理人 速水 進治  

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