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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B63H
管理番号 1376762
異議申立番号 異議2021-700387  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-27 
確定日 2021-08-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6775670号発明「船舶用脱硫装置の排水システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6775670号の請求項1?8、11?13、16に係る特許を維持する。 
理由 第1 出願の経緯
特許第6775670号の請求項1?16に係る特許についての出願は、2018年3月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年3月24日、日本国)を国際出願日とする出願であって、令和2年10月8日に特許権の設定登録がされ、同年10月28に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1?8、11?13、16に係る特許に対し、令和3年4月27日に特許異議申立人青木なお子(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第6775670号の請求項1?16に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」?「本件発明16」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを脱硫するための船舶用脱硫装置の排水システムであって、
内部に導入される前記排ガスに洗浄液を噴霧することで、前記排ガスと前記洗浄液とを気液接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
前記船舶の喫水線よりも上方に位置し、且つ、液だまり部に貯留される前記排ガスに噴霧された前記洗浄液を含む液体が排水として流入する流入口、及び、前記喫水線よりも下方に位置し、且つ、前記流入口から流入した前記液体を前記船舶の外部に排出する排出口、を有する排水ラインと、を備え、
前記液だまり部に貯留される前記液体の内、前記喫水線よりも上方に位置する堰部の高さを上回った前記液体が、前記堰部をオーバーフローすることで、前記流入口に流入するように構成され、
前記液だまり部に貯留されている液体と前記排水ラインの内部に溜まっている液体とが空間的に分離されており、
前記排水ラインに溜まった排水の液面位置と前記喫水線の高さ位置との高低差及び重力を利用して、前記排水ラインに溜まった排水の水頭圧によって排水を前記排出口に供給するように構成された、
船舶用脱硫装置の排水システム。
【請求項2】
前記排水ラインは、鉛直方向に沿って延在し上端部および下端部の間に落差を有する落差管を含む、請求項1に記載の船舶用脱硫装置の排水システム。
【請求項3】
前記脱硫塔は、前記気液接触部よりも下方に位置する前記液だまり部をさらに内部に画定する、請求項1又は2に記載の船舶用脱硫装置の排水システム。
【請求項4】
前記脱硫塔は、前記排水ラインに接続される接続空間部であって、前記堰部が設けられる接続空間部をさらに内部に画定するとともに、前記接続空間部と前記気液接触部とを仕切る仕切部材を含み、
前記仕切部材の下端は、前記堰部の上端よりも下方に位置する、請求項3に記載の船舶用脱硫装置の排水システム。
【請求項5】
前記脱硫塔には、前記接続空間部と大気とを連通する大気開放口が形成される、請求項4に記載の船舶用脱硫装置の排水システム。
【請求項6】
前記脱硫塔は、前記脱硫塔の対向する一対の壁面を接続するとともに、前記液だまり部を横断する横断部材を有する、請求項4又は5に記載の船舶用脱硫装置の排水システム。
【請求項7】
前記横断部材は、前記仕切部材が延在する方向に沿って延在する、請求項6に記載の船舶用脱硫装置の排水システム。
【請求項8】
前記横断部材の上端は、前記堰部の上端よりも上方に位置し、
前記横断部材の下端は、前記堰部の上端よりも下方に位置し、
前記横断部材の下端と前記脱硫塔の底面との間に隙間が設けられた、請求項7に記載の船舶用脱硫装置の排水システム。
【請求項9】
船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを脱硫するための船舶用脱硫装置の排水システムであって、
内部に導入される前記排ガスに洗浄液を噴霧することで、前記排ガスと前記洗浄液とを気液接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
前記船舶の喫水線よりも上方に位置し、且つ、液だまり部に貯留される前記排ガスに噴霧された前記洗浄液を含む液体が排水として流入する流入口、及び、前記喫水線よりも下方に位置し、且つ、前記流入口から流入した前記液体を前記船舶の外部に排出する排出口、を有する排水ラインと、を備え、
前記液だまり部に貯留される前記液体の内、前記喫水線よりも上方に位置する堰部の高さを上回った前記液体が、前記堰部をオーバーフローすることで、前記流入口に流入するように構成され、
前記脱硫塔は、前記気液接触部よりも下方に位置する前記液だまり部をさらに内部に画定し、
前記脱硫塔は、前記排水ラインに接続される接続空間部であって、前記堰部が設けられる接続空間部をさらに内部に画定するとともに、前記接続空間部と前記気液接触部とを仕切る仕切部材を含み、
前記仕切部材の下端は、前記堰部の上端よりも下方に位置し、
前記気液接触部と前記接続空間部とが隣接する方向を第1方向、
前記第1方向における前記気液接触部側を一方側、及び
前記第1方向における前記接続空間部側を他方側、と定義し、且つ、
前記液だまり部の前記第1方向に沿った長さをL、
前記液だまり部における前記第1方向の一方側から前記仕切部材までの長さをL1、
前記液だまり部における前記仕切部材から前記堰部までの長さをL2、
前記堰部の高さと前記仕切部材の下端の高さとの差をD、と定義した場合に、下記式(
A)を満たす、船舶用脱硫装置の排水システム。
D>max{L1、L2}×tanθ・・・式(A)
(ただし、上記式(A)において、第1方向が船舶の幅方向に沿う場合はθ=22.5度とし、第1方向が船舶の前後方向に沿う場合はθ=15度とする。)
【請求項10】
船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを脱硫するための船舶用脱硫装置の排水システムであって、
内部に導入される前記排ガスに洗浄液を噴霧することで、前記排ガスと前記洗浄液とを気液接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
前記船舶の喫水線よりも上方に位置し、且つ、液だまり部に貯留される前記排ガスに噴霧された前記洗浄液を含む液体が排水として流入する流入口、及び、前記喫水線よりも下方に位置し、且つ、前記流入口から流入した前記液体を前記船舶の外部に排出する排出口、を有する排水ラインと、を備え、
前記液だまり部に貯留される前記液体の内、前記喫水線よりも上方に位置する堰部の高さを上回った前記液体が、前記堰部をオーバーフローすることで、前記流入口に流入するように構成され、
前記排水ラインにおける前記喫水線よりも上方の所定の位置と、前記船舶の外部とを接続する溢流管をさらに備える、
船舶用脱硫装置の排水システム。
【請求項11】
前記脱硫塔の外部に位置するとともに前記液だまり部を内部に画定する中継タンクをさらに備える、請求項1、2、9、10の何れか1項に記載の船舶用脱硫装置の排水システム。
【請求項12】
前記中継タンクは、前記排水ラインに接続される接続空間部であって、前記堰部が設けられる接続空間部をさらに内部に画定する、請求項11に記載の船舶用脱硫装置の排水システム。
【請求項13】
前記中継タンクは、前記接続空間部と大気とを連通する大気開放口が形成される、請求項12に記載の船舶用脱硫装置の排水システム。
【請求項14】
前記排水ラインの内部における前記排水の液面位置を測定するための液面計と、
前記喫水線よりも下方において前記排水ラインに設けられた液面位置調整バルブと、
前記液面計で測定された前記液面位置に基づいて、前記液面位置調整バルブの開度を制御するバルブコントローラと、をさらに備える、請求項1乃至13の何れか1項に記載の船舶用脱硫装置の排水システム。
【請求項15】
前記排出口から排出される前記洗浄液を含む前記液体と前記船舶の周囲の水とを混合するためのノズルをさらに備える、請求項1乃至14の何れか1項に記載の船舶用脱硫装置の排水システム。
【請求項16】
前記排水ラインに流体を注入するための流体注入装置をさらに備える、請求項1乃至15の何れか1項に記載の船舶用脱硫装置の排水システム。」

第3 申立理由の概要
申立人は、以下の甲第1?9号証(以下、それぞれ「甲1」?「甲9」ということがある。)を提出して、以下の申立理由により請求項1?8、11?13、16に係る特許を取り消すべきである旨主張する。

1 証拠方法
甲1:特開2017-19415号公報
甲2:中国実用新案第201058282号明細書
甲3:特開2008-174154号公報
甲4:特開平9-239233号公報
甲5:特開2012-245972号公報
甲6:特表2015-536822号公報
甲7:国際公開第2012/127689号
甲8:特開2008-200621号公報
甲9:特許第5223753号公報

2 申立理由
本件発明1、2は、主引用発明である甲1に記載された発明及び甲2、3、7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
本件発明3は、主引用発明である甲1に記載された発明及び甲2?4、7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
本件発明4は、主引用発明である甲1に記載された発明及び甲2?4、7?9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
本件発明5?8は、主引用発明である甲1に記載された発明及び甲2?4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
本件発明11?13は、主引用発明である甲1に記載された発明及び甲2、3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
本件発明16は、主引用発明である甲1に記載された発明及び甲2、3、5?7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、
請求項1?8、11?13、16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである。

第4 証拠の記載事項等
1 甲1について
甲1には、図面とともに以下の記載がある(下線は、当審が付与した。以下同様)。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス洗浄装置へ洗浄水を供給する洗浄水供給システムに関する。」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
海水を排ガス洗浄装置の洗浄水に用いる場合には、従来専用ポンプで海水を汲み上げて機関室内に配置される排ガス洗浄装置まで海水を送出する。このようなポンプは、海水を汲み上げるために常に喫水下となる船底付近に配置する必要があり、その容量および吐出圧も大きい。しかし、船底付近のデッキスペースは狭い上、バラスト水や冷却水に用いる海水をハンドリングするためのポンプやその予備ポンプが多数設置されるため、新たに排ガス洗浄装置のためのポンプを設置するには設計上大きな制約がある。
【0005】
本発明は、船舶用の排ガス洗浄装置へ洗浄水を供給する設計上の自由度の高い洗浄水供給システムを提供することを目的としている。」

(3)「【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態である排ガス洗浄装置へ洗浄水を供給する洗浄水供給システムの構成を示すブロック図である。
【0014】
第1実施形態の洗浄水供給システム10は、例えば船舶の機関室に配置される排ガス洗浄装置12へ洗浄水を供給するシステムである。排ガス洗浄装置12は、エンジン等における化石燃料の燃焼により排出される排気ガスから例えば硫黄酸化物等を取り除く湿式のスクラバである。本実施形態には、船体外から取り込んだ洗浄水(海水または清水)を排ガス洗浄装置12へ供給し、使用の後船体外へ排出するオープンモードの洗浄水供給系列14と、船体内で洗浄水(海水または清水)を循環させ、冷却して使用するクローズドモードの洗浄水供給系列16が設けられる。オープンモードとクローズドモードは、運航海域により適宜択一的に選択され、切り換えられる。
【0015】
オープンモードの洗浄水供給系列14は、軽荷喫水線WLよりも下に配置される第1ポンプP1を用いて、シーチェスト17を通して船体内に取り込まれた洗浄水を汲み上げる。汲み上げられた洗浄水は、軽荷喫水線WLよりも上に配置される第2ポンプP2に送出され、第2ポンプP2で加圧されて排ガス洗浄装置12へと供給される。排ガス洗浄装置12で洗浄に使用された洗浄水は、その後船体外へと排出される。なお、本実施形態では第2ポンプP2および排ガス洗浄装置12は、機関室に配置される。」
・・・
【0018】
以上のように、第1実施形態によれば、オープンモードで使用される洗浄水をハンドリングするポンプを軽荷喫水線の上下に分割することで、船底付近のデッキに設置されるポンプ吐出圧を低くすることができ、小型なポンプを採用できるので、設計の自由度を向上することができる。」
(4)図1
図1には、SO_(x)スクラバ12が軽荷喫水線WLよりも上にある点が記載されている。

(5)上記(3)の【0014】によれば、エンジン等は、船舶に設置されると認められ、排ガス洗浄装置12は、湿式のスクラバであり、エンジン等から排出される排気ガスから硫黄酸化物等を取り除くものであると認められ、洗浄水供給システム10は、排ガス洗浄装置12へ洗浄水を供給するシステムであり、排ガス洗浄装置12、すなわち、湿式のスクラバと、オープンモードの洗浄水供給系列14を備えると認められる。

(6)上記(3)の【0015】によれば、オープンモードの洗浄水供給系列14は、軽荷喫水線WLよりも下に配置される第1ポンプP1を用いて、船体内に取り込まれた洗浄水を汲み上げ、汲み上げられた洗浄水を、軽荷喫水線WLよりも上に配置される第2ポンプP2に送出し、第2ポンプP2で加圧して排ガス洗浄装置12へと供給し、排ガス洗浄装置12で洗浄に使用された洗浄水を、その後船体外へと排出すると認められ、図1も参酌すると、湿式のスクラバは、軽荷喫水線WLよりも上の機関室に配置されると認められる。

(7)上記(1)?(6)を総合すると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「船舶に設置されるエンジン等から排出される排気ガスから硫黄酸化物等を取り除く排ガス洗浄装置12へ洗浄水を供給する洗浄水供給システム10において、
軽荷喫水線WLよりも上の機関室に配置される湿式のスクラバと、
軽荷喫水線WLよりも下に配置される第1ポンプP1を用いて、船体内に取り込まれた洗浄水を汲み上げ、汲み上げられた洗浄水を、軽荷喫水線WLよりも上に配置される第2ポンプP2に送出し、第2ポンプP2で加圧して排ガス洗浄装置12へと供給し、排ガス洗浄装置12で洗浄に使用された洗浄水を、その後船体外へと排出するオープンモードの洗浄水供給系列14と、を備える、
排ガス洗浄装置12へ洗浄水を供給する洗浄水供給システム10。」

2 甲2について
甲2には、図面とともに以下の記載がある。(日本語訳は、申立人が作成した抄訳をもとに当審が作成したものである。)

(1)(4頁2?8行)

(日本語訳:技術分野
本実用新案は海水脱硫システムに関して、特に海水で煙道ガス中二酸化硫黄を除去するシステムに関する。
背景技術
現在、石炭燃焼工業ボイラあるいは発電所ボイラは、生ずる燃焼の煙道ガスに大量のSO_(2)などの酸性汚染物を含み、空気汚染と酸性雨を引き起こす主要原因である。間近な海辺の工業燃焼システムに対して、特に大型石炭燃焼発電所ボイラの煙浄化であり、海水を用いることは脱硫が経済、高効率、環境保護の選択である。)

(2)(4頁14?16行)

(日本語訳:発明の開示
本実用新案目的は提案した海水配分および曝気量の対応の調整能力の海水脱硫システムを備えることを提供することにあり、これによってより良く脱硫反応を制御して電力消費の目的を低下させることに達する。)

(3)(5頁27?29行)

(日本語訳:詳細な方法
図1に示すように、本発明の海水脱硫システムは、煙突1、ブースターファン20、熱交換器4、吸収塔5、エアレーター10、曝気槽11、フロントプール17およびブースターポンプ15を含む。・・・)

(4)(6頁13?19行)

(日本語訳:吸収塔5は、デミスター21、配水器22、および充填層23を上から下に順次備えている。充填層23は、吸収塔5の液面24の上に設置されている。温度計6は、吸収塔5の液面24と充填層23との間の吸収塔5に設置されている。吸収塔5の液体入口は、配水器22の吸収塔5上で開かれている。吸収塔5の下端にある排気ガス入口は、液面24の下端にある吸収塔5上で開かれている。吸収塔5の上端の排気口は、デミスター21の上端の吸収塔5上で開かれている。
曝気槽11は、配水領域12、曝気領域9および排水領域8を含む。配水領域12、曝気領域9、排水領域8の水位は順番に低下する。それらはパーティションで区切られている。曝気槽11の海水入口は、配水領域12に開放されている。曝気槽11の液体入口は、曝気領域12に通じている。エアレーター10は曝気領域9に設置されている。曝気槽11の液体出口は、排水領域8に開放されている。)

(5)(6頁22?27行)

(日本語訳:動作原理:
海水脱硫プロセスの基本的な流れは次のとおり。工業用燃焼システムからの煙道ガスが海水脱硫システムに入る。パワーは、システムのブースターファン20によって供給され、熱交換器4による熱交換後、ガスは浄化処理のために吸収塔5に入る。処理された清浄な煙道ガスは、熱交換器4による熱交換および温度上昇の後、煙突1を通って排出される。脱硫に必要な海水は、産業用燃焼システムの復水器(図示せず)から取り出される。海水はフロントプール17に送られる。そのごく一部(総水量の1/4未満)は、ブースターポンプ15を介して吸収塔5に送られる。その他の部分は、曝気槽11に直接送られる。)

(6)(7頁9?12行)

(日本語訳:脱硫された海水は、吸収塔5の底部から曝気槽11に排出される。酸性海水のこの部分は、曝気槽11内で、曝気槽11内の吸収塔5に入っていない燃焼システムの復水器からの海水の大部分と完全に混合され、曝気が再開される。曝気槽11のエアレーター10は、混合海水に大量の空気を吹き込む。海水に溶解したSO_(3)^(2-)は酸化されてSO_(4)^(2-)になる。同時に、反応により発生するCO_(2)も吹き込み空気から排出される。)

図1

(7)上記(1)によれば、海水脱硫システムは、海辺の工業燃焼システムのためのものであると認められ、上記(3)によれば、海水脱硫システムは、吸収塔5と曝気槽11を含むと認められ、上記(4)、(6)及び図1によれば、吸収塔5は、液面24の下に排気ガスを導入することで脱硫をすると認められる。

(8)上記(5)、(6)によれば、海水は吸収塔5に送られ、脱硫された海水は、吸収塔5の底部から曝気槽11に排出されると認められ、上記(3)及び図1も参照すると、脱硫された海水は、曝気槽11に排出された後、曝気槽11の曝気領域9からオーバーフローすることで曝気槽11の排出領域8に流入し、排出領域8から外に排出されると認められる。

(9)上記(7)、(8)を総合すると、甲2には以下の事項(以下、「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「海辺の工業燃焼システムのための海水脱硫システムにおいて、
液面24の下に排気ガスを導入することで脱硫をする吸収塔5と、
曝気槽11を含み、
海水は吸収塔5に送られ、脱硫された海水は、吸収塔5の底部から曝気槽11に排出され、その後、曝気槽11の曝気領域9からオーバーフローすることで曝気槽11の排出領域8に流入し、排出領域8から外に排出される、
海水脱硫システム。」

3 甲3について
甲3には、図面とともに以下の記載がある。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の居住区等から排出される一般生活排水又は汚水の処理水の少なくとも一方を含む排水を貯留するための排水用貯留タンクを配置した船舶に関する。」

「【0019】
図3に示すように、この排水用貯留タンク8に、居住区の洗面器11、シンク12、ユニットラバトリー内の床面排水13、エアコンのユニット14、冷水飲器15、洗濯機16等や汚水処理水装置(図示しない)からの一般生活排水や汚水処理水を導く配管9aを設け、更に、排水用貯留タンク8内の排水を舷側から船外に排出する配管9bを設ける。この船外排出用の配管9bには船級協会等の認定機関に認められた船外排出弁10を設ける。また、通常、この船外排出用の配管系統に排出用ポンプ(図示しない)を設けるが、排水用貯留タンク8を満載喫水線(L.W.L.)よりも十分上方に配設する場合には重力排水も可能となるので、この場合は排出用ポンプを省くことができる。」

図3

4 甲4について
甲4には、図面とともに以下の記載がある。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は海洋上または臨海地域において船舶または海洋構造物などから排出される排煙中の亜硫酸ガスを吸収除去する排煙脱硫技術に関する。」

(2)「【0009】そこで、本発明は海洋上または臨海地域において、簡素な装置構成で、保管が必要な副生物を発生させることなく、また工業用水などを使用することなく、排煙中の亜硫酸ガスを吸収除去できる排煙脱硫方法及び装置並びに該装置を搭載した船舶を提供することを目的とするものである。」

(3)「【0017】この例の排煙脱硫装置30は図2に示すように、未処理排煙Aを海洋中から取込んだ海水と気液接触させる吸収塔31と、未処理排煙Aを吸収塔31の下部に導く導入管32(導入部)と、吸収塔31の上部に海水を吸上げるポンプ33と、吸収塔31において排煙と気液接触して流下した海水を受止める吸収塔タンク34(酸化手段)と、この吸収塔タンク34内の海水中に空気(酸化含有ガス)を吹込んで気液接触させるアーム回転式のエアスパージャ35(酸化手段)と、吸収塔タンク34内の海水中にアルカリ剤を投入するための中和剤サイロ36(アルカリ剤添加手段)と、吸収塔タンク34内の海水を導出して海中に放流するための放出管37(放流手段)と、この放出管37の途上に接続された排水フィルタ38(図3では省略)と、未処理排煙Aから回収した熱で処理済排煙Bを加熱するガスガスヒータ39(図3では一部省略)とを備える。
【0018】ここで吸収塔31は、この場合いわゆる充填塔であり、上部には海水を噴出させる複数のノズルが形成されたヘッダパイプ40が略水平かつ平行に複数配設され、これらヘッダパイプ40の下方には気液接触面積を多く確保するための充填材41が装填されている。また、吸収塔31の上端には、処理済排煙Bを高所に放出するための煙突部42が設けられ、この煙突部42の途上にガスガスヒータ39の再加熱部39aが配設されている。そして各ヘッダパイプ40は海水供給配管43を介してポンプ33の吐出側に接続され、ポンプ33の吹込み側に接続された海水吹込み配管44を経由して、この場合バージ船20の外側壁の下端部から取込まれた海水が供給される構成となっている。
【0019】導入管32は管端に継手32a(図3では省略)が設けられており、この継手32aにより他の船舶または海洋構造物の排煙導出部と容易に接離可能となっている。また、この導入管32の途上には、ガスガスヒータ39の熱回収部39bが配設され未処理排煙Aから熱回収されるようになっている。吸収塔タンク34は、この場合バージ船20の床面下に形成されており、吸収塔31の下方位置から横方向(図2では右側)に大きく張出すように形成され、この張出した側の側壁の上部に放出管37が接続されている。」

図2


5 甲5について
甲5には、以下の記載がある。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は船舶のトイレに関するものである。」

(2)「【0052】
図10、図11の実施例参考図に見られるような海水流入口2を複数個の21に分け、それぞれ角度を有してタンク内への海水流入方向に渦巻き状の流れを形成するとタンク内での海水流れ抵抗を減ずると共にタンク内の洗浄に有効である。」

6 甲6について
甲6には、図面とともに以下の記載がある。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼機関からの排ガスの洗浄のためのシステム及び多重システムに関し、また、そのようなシステムの使用に関する。」

(2)「【0043】 スクラバ水循環タンク15の第2出口33に端を発して、予備処理プロセスループ16は、第1バルブ27を備える第1入口26及び第2バルブ30を備える第2入口29を有する導管を備えている。第1バルブは、NaOH(水酸化ナトリウム)又はNa_(2)CO_(3)(炭酸ナトリウム)のようなアルカリ性の薬剤の供給部28に接続されて、予備処理プロセスループ16へのアルカリ性の薬剤の制御された供給を可能にしている。第2バルブは、H_(2)O_(2)(過酸化水素)の供給部31に接続されて、予備処理プロセスループ16へのH_(2)O_(2)の制御された供給を可能にしている。特許請求の範囲では、第1入口26及び第2入口29、第1バルブ27及び第2バルブ30、並びに供給部28、31は、化学薬品供給のための手段と記載されている。化学薬品供給のための手段の位置は変更できることが理解できる。第2入口29の下流には水洗浄ユニット32がある。
【0044】
水洗浄ユニット32の目的は、スクラバ水循環タンク15に戻されるか、又は海に排出される粒状物質の量を最小化することである。このような水洗浄ユニット32はこの技術分野ではよく知られている。例として、水洗浄ユニットは高速分離機の形の分離器、フィルタ、水力サイクロン、又はその種のものとすることができる。水洗浄ユニットによって集められた粒状物質は、好適な受け取り施設における後の送出のために(図示されていな
い)タンクの中に貯蔵することができるが、洗浄されたスクラバ水は、出口34を介して水洗浄ユニット32から直接的に船外へ排出されてもよい。水洗浄ユニット32によって洗浄された水は、代替的に、スクラバ水循環タンク15の第2入口18を介してスクラバ水循環タンク15中に戻すことができる。」

図2a


7 甲7について
甲7には、図面とともに以下の記載がある。

(1)「[0001] 本発明は、排煙脱硫装置に関し、より詳細には、たとえば発電設備の燃焼排ガスから排出される排ガスと海水を吸収塔内で接触させて、排ガス中の硫黄酸化物を海水に吸収させて除去する排煙脱硫装置に関する。」

(2)「[0004] 前記モレタナ式吸収塔としては、例えば下記特許文献1がある。すなわち、たとえば発電設備から排出された燃焼排ガスは、吸収塔内に設けた多孔板上で吸収液としての海水と接触し、排ガス中の硫黄酸化物が除去される。硫黄酸化物が除去された排ガスは、吸収塔の排気口を通過して大気中に排気される。
一方、硫黄酸化物を吸収した吸収液は吸収塔内下方へ降下し、海水路で新鮮な海水と混合および、曝気処理が行われた後に海へ排出される。」

(3)「[0007] ・・・本発明者らは、モレタナ上または充填物表面で海水と効率よく接触させるためには、吸収塔内の圧力を所定の圧力にほぼ一定に保持することが必要であることを知見した。また、海水路の水位変動が生じた場合には、吸収塔内の圧力変動が生じ、とりわけ脱硫効率に直接影響するモレタナ上または充填物表面での排ガスと海水との接触状態が変動し、脱硫効率の変動及び低下をきたすことが知見された。
[0008] 従って、本発明の主たる課題は、海水路の水位変動などによる吸収塔内の圧力変動を抑制し、脱硫効率の変動及び低下を防止することにある。」

(4)「[0009] 上記課題を解決するための請求項1に係る本発明として、排ガスと吸収液としての海水を吸収塔内において接触させて排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する排煙脱硫装置において、
前記吸収塔内下部に設けた吸収液貯留部と、
前記吸収液貯留部の壁部に設けた吸収液を越流させる堰と、
前記吸収塔の下方または前記吸収塔近傍の下方に設けた海水路と、
前記堰を越流した海水が前記海水路の水面上への自由空間中を流下するように案内する吸収液誘導部とを備え、
前記吸収液誘導部は、その排水口が前記海水路内の海水中に連絡しており、前記自由空間は外気と隔離している、
ことを特徴とする排煙脱硫装置が提供される。
[0010] (作用効果)
吸収液である海水は、吸収液貯留部の壁部に設けた堰から越流する。次にその海水は、海水路の水面上への自由空間中を流下するように吸収液誘導部により案内される。この吸収液誘導部は、その排水口が海水路内の海水中に連絡しており、前記自由空間は外気と隔離している。このように、吸収液貯留部は堰を介して自由空間との間で縁切りしているので、海水路の水位変動などが生じても吸収塔内の圧力変動は抑制される。その結果、吸収塔内での排ガスと海水との接触状態の変動が少なくなり、脱硫効率の変動及び低下を抑制できる。
他方、吸収液誘導部は、その排水口が海水路内の海水中に連絡しているため、内部の自由空間は外気と隔離される。その結果、処理済み排ガスが所定の位置(塔上部)以外から排気されることはないものとなる。」

(5)「[0021] まず、吸収塔1がモレタナ式吸収塔である場合について説明する。吸収塔1の下部側面には、排ガス(たとえば発電設備における廃熱ボイラーからの燃焼排ガス)FGを供給する供給口2が設けられている。また、吸収塔1の上面には、吸収塔1内での処理を経た処理排ガスTGを排気する排気口6が設けられている。
また、吸収塔1の上部には、吸収液である新鮮な海水SWを吸収塔1内へ導くための給水管3と、当該給水管3から吸収塔1内下方へ噴射させるためのノズル4が設けられている。なお、本明細書において「新鮮な海水」SWとは、代表例は海から導いた海水のことであり、後述する吸収塔1内の多孔板5上で行われる吸収処理後の硫黄酸化物を含む海水と区別される。新鮮な海水は、前記のように海から直接取水したもの以外にも、ボイラ設備の復水器(コンデンサ)から出る使用済み冷却水や、海水脱塩設備から出るブラインを用いてもよい。
・・・
[0023] 吸収塔1下部側面に設置された前記供給口2から供給された排ガスFGは、吸収塔1内を上方へ向かって移動する。当該排ガスFGと、吸収塔1上部に設けられたノズル4から下方へ噴射された新鮮な海水SWは、吸収塔1内中部に設けられた多孔板5上で向流接触する。当該向流接触によって、排ガス中に含まれる硫黄酸化物は新鮮な海水SWに吸収され、排ガス中から除去される。
硫黄酸化物が除去された処理排ガスTGは、吸収塔1上部に設けられた排気口6から排気される。また、硫黄酸化物を吸収した海水は、吸収塔1内下方へ降下する。
[0024] 吸収塔1内下部には吸収液貯留部7が設けられており、前記降下した吸収液は、当該吸収液貯留部7に一時的に貯められる。
当該吸収液貯留部7の壁部には堰8が設けられ、吸収液貯留部7に貯められた吸収液は、堰8を乗り越えて外方へ流れ出す。」

(6)「[0028] そして、海水路10は上流から下流に向かって常時新鮮な海水SWを流すようにしておき、その流れの中に吸収液誘導部9からの吸収液を流入させるようにする。そして、海水路10中での処理を経て処理水として海へ放流する。この海水路10中での処理としては、代表的には、(1)吸収液誘導部9から排出された吸収液と新鮮な海水SWを前記海水路10で撹拌・混合し、吸収液のPH値を回復させる工程、(2)PH値が回復した吸収液に前記海水路10で空気又は酸素による曝気処理を行い、更にPH値を回復させる工程を含む。前記(1)および(2)の処理が行われた後のPH値が回復した海水は、海へと放流される。
前記の例では、(1)の処理を行った後に(2)の処理を行う例を示したが、海水路10で、(1)の処理と(2)の処理を連続的又は同時的に行うようにしてもよい。」

(7)「[0032] なお、設備配置設計上の関係で、海水路10の近傍に吸収塔1を設けることができない場合がある。この場合は、図5および図6に示すように、吸収塔1内の吸収液貯留部7から堰8を乗り越えてオーバーフローした吸収液を案内路9Cを通じて少し離れた場所に設けた海水路10へ流し込むようにしてもよい。
図5は、案内路9Cを、海水路10と直接繋げた例を示している。・・・」

図5


(8)上記(5)の[0021]及び[0023]によれば、吸収塔1の上部にはノズル4が設けられ、排ガスFGとノズル4から下方へ噴射された吸収液は、吸収塔1内中部に設けられた多孔板5上で向流接触すると認められる。

(9)上記(5)の[0024]及び図5によれば、吸収液誘導部9は案内路9Cを有し、案内路9Cは、堰8を越流した吸収液が海水路10の海水中に流入するように案内すると認められ、上記(2)も参酌すると、案内路9Cは、その排水口13が海水路10内の海水中に連絡していると認められる。
(10)上記(2)、(6)によれば、吸収液は、海水路10で新鮮な海水と混合及び曝気処理が行われた後に海へ排出されると認められる。

(11)上記(4)?(10)を総合すると、甲7には以下の事項(以下、「甲7記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「排ガスFGと吸収液としての海水を吸収塔1内において接触させて排ガスFG中の硫黄酸化物を吸収除去する排煙脱硫装置において、
吸収塔1上部に設けられたノズル4と、
吸収塔1内下部に設けた吸収液貯留部7と、
吸収液貯留部7の壁部に設けた吸収液を越流させる堰8と、
吸収塔1近傍の下方に設けた海水路10と、
堰8を越流した吸収液が海水路10の海水中に流入するように案内する案内路9Cを有する吸収液誘導部9とを備え、
排ガスFGとノズル4から下方へ噴射された吸収液は、吸収塔1内中部に設けられた多孔板5上で向流接触し、
案内路9Cは、その排水口13が海水路10内の海水中に連絡しており、
吸収液は、海水路10で新鮮な海水と混合及び曝気処理が行われた後に海へ排出される、
排煙脱硫装置。」

8 甲8について
甲8には、図面とともに以下の記載がある。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭焚き、原油焚き及び重油焚き等の発電プラントに適用される排煙脱硫装置に係り、特に、海水法を用いて脱硫する排煙脱硫装置に関する。」

(2)「【0013】
上述した脱硫塔2は、希釈用海水を導入して流す水路9の上部開口に使用済海水出口6を連通させて配置される。この水路9は、希釈用海水を導入して流すとともに、脱硫塔2の使用済海水出口6から落下して合流する使用済海水を希釈し、さらに、希釈後の使用済希釈海水に脱炭酸処理を施して排水する流路であり、通常は暗渠が採用される。希釈用海水と使用済海水とが合流して混合された使用済希釈海水は、水路9に導かれて周辺海域に排水されるが、水路9を流れる途中でエアレーションによる脱炭酸処理が施される。
また、水路9に脱硫塔2を設置する開口部の下方には、希釈用海水等が流れる水面より低い位置まで、すなわち、海水の水中に入り込む位置まで、ガス封印用の仕切壁10が設けられている。この仕切壁10は、使用済海水出口6の開口部外周を取り囲むようにして形成されているので、ボイラ排ガス供給口7から脱硫塔2に供給されるボイラ排ガスは、仕切壁10と水面とにより封印されて水路9の水面上に形成される空間に流入することが防止されている。」

図1


9 甲9について
甲9には、図面とともに以下の記載がある。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に水を貯留して内部のガスのシールを行う有水式ガスホルダで発生する余剰水を排出する、余剰水排出装置及び余剰水排出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば製鉄所においては、高炉や転炉から発生する可燃性の副生ガスをエネルギー源として有効利用するために、当該副生ガスを一旦貯蔵する有水式ガスホルダが設置されている。・・・」

第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明(上記第4 1(5))とを対比すると、後者における「設置される」ことは前者における「搭載される」ことに相当し、以下同様に、「エンジン等」は「排ガス発生装置」に、「排気ガス」は「排ガス」に、「硫黄酸化物等を取り除く」ことは「脱硫する」ことに、「湿式のスクラバ」は「脱硫塔」に、「設けられる」ことは「備える」ことに、それぞれ相当する。
後者における「排ガス洗浄装置12」は、船舶に設置されるエンジン等から排出される排気ガスから硫黄酸化物等を取り除くものであるから、前者の「船舶用脱硫装置」に相当する。
後者における「洗浄水供給システム10」の「オープンモードの洗浄水供給系列14」が、洗浄に使用された洗浄水を船外に排出するから、後者における「洗浄水供給システム10」、「オープンモードの洗浄水供給系列14」は、それぞれ、前者における「排水システム」、「排水ライン」に相当する。
そして、後者における「硫黄酸化物等を取り除く排ガス洗浄装置12」は、前者における「脱硫するための船舶用脱硫装置」に相当し、後者における「排ガス洗浄装置12へ洗浄水を供給する洗浄水供給システム10」は、前者における「船舶用脱硫装置の排水システム」に相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりとなる。

<一致点>
「船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを脱硫するための船舶用脱硫装置の排水システムであって、
脱硫塔と、
排水ラインと、を備える
船舶用脱硫装置の排水システム。」

<相違点1>
脱硫塔について、本件発明1では、「内部に導入される前記排ガスに洗浄液を噴霧することで、前記排ガスと前記洗浄液とを気液接触させる気液接触部を内部に画定する」のに対し、甲1発明では、そのように特定されていない点。

<相違点2>
排水ラインについて、本件発明1では、「前記船舶の喫水線よりも上方に位置し、且つ、液だまり部に貯留される前記排ガスに噴霧された前記洗浄液を含む液体が排水として流入する流入口、及び、前記喫水線よりも下方に位置し、且つ、前記流入口から流入した前記液体を前記船舶の外部に排出する排出口を、有する」とともに、「前記液だまり部に貯留される前記液体の内、前記喫水線よりも上方に位置する堰部の高さを上回った前記液体が、前記堰部をオーバーフローすることで、前記流入口に流入するように構成され、前記液だまり部に貯留されている液体と前記排水ラインの内部に溜まっている液体とが空間的に分離されており、前記排水ラインに溜まった排水の液面位置と前記喫水線の高さ位置との高低差及び重力を利用して、前記排水ラインに溜まった排水の水頭圧によって排水を前記排出口に供給する」のに対し、甲1発明では、そのような構成を有しない点。

(2)判断
事情に鑑み、まず相違点2について検討する。

甲1発明と甲2記載事項は、海水を用いた排ガスの脱硫装置という同一の技術分野に属するものであり、排水を最終的には海に廃棄するという機能も共通する。
しかしながら、甲2には、船舶に関する記載はないから、喫水線に関する記載も示唆もなく、排出領域8から外に排水する構成について具体的な記載もないので、甲2記載事項(上記第4 2(9))は、相違点2に係る本件発明1の構成のうち、「前記船舶の喫水線よりも上方に位置」する「流入口」、「前記喫水線よりも下方に位置」する「排出口」及び「前記排水ラインに溜まった排水の液面位置と前記喫水線の高さ位置との高低差及び重力を利用して、前記排水ラインに溜まった排水の水頭圧によって排水を前記排出口に供給する」に相当する構成を有しない。そうすると、仮に、甲1発明に甲2記載事項を適用できたとしても、相違点2に係る本件発明1の構成とはならない。
また、甲3には、相違点2に係る本件発明1の構成のうち、少なくとも、「前記排ガスに噴霧された前記洗浄液を含む液体」が「貯留される」「液だまり部」に相当する構成について記載も示唆もないところ、そもそも、甲3には、生活排水や汚水に関する事項が記載されており、排ガス洗浄装置に関する甲1発明とは、処理する液体の種類が異なることから、甲1発明に甲3に記載された事項を適用する動機付けがあるとは認められない。
さらに、甲1発明と甲7記載事項とは、海水を用いた排ガスの脱硫装置という同一の技術分野に属するものであり、排水を最終的には海に廃棄するという機能を有するという点で共通する。そして、甲7記載事項(上記第4 7(9))における「吸収液貯留部7」、「案内路9C」は、それぞれ、本件発明1における「液たまり部」、「排水ライン」に一応相当するといえる。
しかしながら、甲7には、船舶に関する記載はなく、喫水線に関する記載も示唆もなく、また、案内路9Cが大気に連通する開口部を有しておらず貯まった排水を水頭圧によって排水を排出口に供給することについて記載も示唆もないことから、甲7記載事項は、相違点2に係る本件発明1の構成のうち、「前記船舶の喫水線よりも上方に位置」する「流入口」、「前記喫水線よりも下方に位置」する「排出口」及び「前記排水ラインに溜まった排水の液面位置と前記喫水線の高さ位置との高低差及び重力を利用して、前記排水ラインに溜まった排水の水頭圧によって排水を前記排出口に供給する」に相当する構成を有しない。さらに、甲7記載事項における「案内路9C」の「排水口13」は、陸上設備である海水路10内の海水中に連絡しており、「排水口13」から排出された吸収液は、当該海水路10を介して海へと排出されるものである。そして、当該海水路10は、吸収液に新鮮な海水と混合及び曝気処理をして、含有する硫黄酸化物等の濃度を下げた上で、吸収液を海に排出するものであることからもわかるとおり、甲7記載事項の排ガス処理装置において吸収液を海に排出できる程度に排ガス処理するには必要不可欠な構成であって、当該排ガス処理装置の構成として削除できないものであるといえる。そうすると、仮に、当業者が甲1発明及び甲7記載事項に触れる機会があったとしても、甲1発明の排ガス発生装置は船舶に搭載されるものであるのに対して、甲7記載事項の海水路は陸上設備であるところ、甲1発明の排ガス発生装置に甲7記載事項の海水路を適用することを当業者が想起するとは思えないし、また、仮に、適用できたとしても、甲1発明の「排水口13」を本件発明1における「前記液体を前記船舶の外部に排出する排出口」に相当するものといえるためには、甲7記載事項から海水路10を削除しなければならないが、上述のとおり、甲7記載事項から海水路10を削除することはできないものである。そうすると、甲1発明に甲7記載事項を適用することには、むしろ阻害要因があると認められる。以上のとおりであるから、甲1発明に甲7記載事項を適用することはできないし、仮に、適用できたとしても、相違点2に係る本件発明1の構成とはならない。
そして、本件発明1は、上記相違点1及び2に係る構成を有することにより、脱硫塔の排水を船舶の外部に排出する排水ラインの配管損傷を抑制できるという格別な作用効果を奏するものであるといえる。
以上によれば、甲1発明に、甲2、3、7に記載された事項を適用して、相違点2に係る本件発明1の構成とすることはできないから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2、3、7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

また、甲4?6、8、9に記載された事項についてもさらに検討する。
甲4には、船舶などから排出される排煙中の亜硫酸ガスを吸収除去する排煙脱硫技術が記載されているが、相違点2に係る本件発明1の構成のうち、少なくとも、「前記船舶の喫水線よりも上方に位置」する「流入口」については、記載も示唆もなく、甲5には、船舶のトイレに関することが記載され、甲6には、燃焼機関からの排ガスの洗浄のためのシステムにおいて、スクラバからの排水に対する化学薬品供給のための手段を設けること等が記載され、甲8には、発電プラントに適用される排煙脱硫装置において、脱硫塔の下方に設けられた、希釈用海水を導入する水路に、希釈用海水等が流れる水面より低い位置まで延びるガス封印用の仕切壁10を設けること等が記載され、甲9には、高炉や転炉から発生する可燃性の副生ガスをエネルギー源として有効利用するために、当該副生ガスを一旦貯蔵する有水式ガスホルダについて記載されているところ、甲4?6、8、9には、相違点2に係る本件発明1の構成に相当する事項については、記載も示唆もない。
そうすると、本件発明1は、甲1発明及び甲2?9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本件発明2?8、11?13、16について
本件発明2?8、11?13、16は、本件発明1の全ての構成に請求項2?8、11?13、16による特定をさらに付加することで限定したものであるから、上記1(2)で説示したのと同じ理由により、本件発明2は、甲1発明及び甲2、3、7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、本件発明3は、甲1発明及び甲2?4、7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、本件発明4は、甲1発明及び甲2?4、7?9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、本件発明5?8は、甲1発明及び甲2?4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、本件発明11?13は、甲1発明及び甲2、3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、本件発明16は、甲1発明及び甲2、3、5?7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?8、11?13、16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?8、11?13、16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-07-27 
出願番号 特願2019-507048(P2019-507048)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (B63H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 福田 信成  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 畔津 圭介
八木 誠
登録日 2020-10-08 
登録番号 特許第6775670号(P6775670)
権利者 三菱造船株式会社 三菱パワー株式会社
発明の名称 船舶用脱硫装置の排水システム  
代理人 誠真IP特許業務法人  
代理人 誠真IP特許業務法人  
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