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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) F15B
管理番号 1376789
判定請求番号 判定2021-600002  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 判定 
判定請求日 2021-01-27 
確定日 2021-07-26 
事件の表示 上記当事者間の特許第5992196号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号図面に示す油圧回路は,特許第5992196号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は,イ号図面に示す油圧回路(以下「イ号油圧回路」という。)は,特許第5992196号の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する,との判定を求めるものである。

2 本件特許発明
本件特許発明は,特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり,構成要件毎に分説すると次のとおりである。
(本件特許発明)
A 倒伏ゲート,洪水吐ゲート等の被駆動装置を駆動するラムシリンダと,
B1 油圧源の吐出側に接続し前記油圧源が吐出する作動油の供給を制御する供給制御弁と
B2 前記ラムシリンダヘの供給油量を制限する供給絞り弁と
B3 を備えた供給制御回路と,
C1 油タンクに接続し前記ラムシリンダから帰還する作動油の排出を制御する排出制御弁と
C2 ラムシリンダから帰還する作動油を制限する排出絞り弁
C3 を備えた排出制御回路と,
D を備えた制御弁油圧ユニットと,
E 前記ラムシリンダの油圧室と前記油圧ユニットの供給制御回路を接続する第1給排回路と,
F 前記ラムシリンダの前記油圧室と前記油圧ユニットの排出制御回路を接続する第2給排回路と,
を備え,
G1 前記供給制御回路の供給制御弁と供給絞り弁の下流側と
G2 排出制御回路の排出制御弁と排出絞り弁の下流側を,
G3 開閉機能を有する止弁を備えたバイパス回路
G4 で接続した
H ことを特徴とするラムシリンダの油圧回路。

3 当事者の主張
(1) 請求人
ア イ号油圧回路
請求人は,判定請求書において,添付イ号図面,図B1?B4(10?13頁)に基づき,イ号油圧回路を次のとおり特定している(14頁)。
a 倒伏ゲート,洪水吐ゲート等の被駆動装置を駆動するラムシリンダ(10)と,
b1 油圧源(31)の吐出側に接続し前記油圧源(31)が吐出する作動油の供給を制御する供給制御弁(21a)と
b2 前記ラムシリンダ(10)ヘの供給油量を制限する供給絞り弁(47a)と
b3 を備えた供給制御回路(22a)と,
c1 油タンク(30)に接続し前記ラムシリンダ(10)から帰還する作動油の排出を制御する排出制御弁(21b)と
c2 ラムシリンダ(10)から帰還する作動油を制限する排出絞り弁(47b)
c3 を備えた排出制御回路(22b)と,
d を備えた制御弁油圧ユニット(20)と,
e 前記ラムシリンダ(10)の油圧室(13)と前記油圧ユニット(20)の供給制御回路(22a)を接続する第1給排回路(40a)と,
f 前記ラムシリンダ(10)の前記油圧室(13)と前記油圧ユニット(20)の排出制御回路(22b)を接続する第2給排回路(40b)と,
を備え,
g1 前記供給制御回路(22a)の供給制御弁(21a)と供給絞り弁(47a)の下流側(23a)と
g2 排出制御回路(22b)の排出制御弁(21b)と排出絞り弁(47b)の下流側(23b)を,
g3 開閉機能を有する止弁(25)を備えたバイパス回路(24)
g4 で接続した
h ことを特徴とするラムシリンダの油圧回路。
イ 充足性
イ号油圧回路の構成a?hは,本件特許発明の構成要件A?Hを充足する。

(2) 被請求人
ア 本件特許発明
被請求人は,答弁書において,本件特許発明について次のとおり,分節している。
A 倒伏ゲート,洪水吐ゲート等の被駆動装置を駆動するラムシリンダと,
B 油圧源の吐出側に接続し前記油圧源が吐出する作動油の供給を制御する供給制御弁と前記ラムシリンダヘの供給油量を制限する供給絞り弁とを備えた供給制御回路と,油タンクに接続し前記ラムシリンダから帰還する作動油の排出を制御する排出制御弁とラムシリンダから帰還する作動油を制限する排出絞り弁を備えた排出制御回路と,を備えた制御弁油圧ユニットと,
C 前記ラムシリンダの油圧室と前記油圧ユニットの供給制御回路を接続する第1給排回路と,前記ラムシリンダの前記油圧室と前記油圧ユニットの排出制御回路を接続する第2給排回路と,
を備え,
D 前記供給制御回路の供給制御弁と供給絞り弁の下流側と排出制御回路の排出制御弁と排出絞り弁の下流側を,開閉機能を有する止弁を備えたバイパス回路で接続した
E ことを特徴とするラムシリンダの油圧回路。
イ イ号油圧回路
被請求人は,答弁書において,添付イ号図面,図α1?α4(6?9頁)に基づき,イ号油圧回路を次のとおり特定している(15頁)。
a 被駆動装置を駆動するラムシリンダと,
b 油圧源の吐出側に接続し前記油圧源が吐出する作動油の供給を制御する供給制御弁と前記ラムシリンダヘの供給油量を制限する供給絞り弁とを備えた供給と排出を制御する制御回路と,油タンクに接続し前記ラムシリンダから帰還する作動油の排出を制御する排出制御弁とラムシリンダから帰還する作動油を制限する排出絞り弁を備えた供給と排出を制御する制御回路は,を備えた制御弁油圧ユニットと,
c 前記ラムシリンダの油圧室と前記油圧ユニットの供給制御回路を接続する第1給排回路と,前記ラムシリンダの前記油圧室と前記油圧ユニットの排出制御回路を接続する第2給排回路のうち,少なくとも何れか一方は備えず,
d 前記制御弁油圧ユニット内では,前記供給と排出を制御する制御回路の供給制御弁と供給絞り弁の下流側と,供給と排出を制御する制御回路の排出制御弁と排出絞り弁の下流側を,開閉機能を有する止弁を備えたバイパス回路で接続していない
e ことを特徴とするラムシリンダの油圧回路。
ウ 充足性
イ号油圧回路の構成b?dは,本件特許発明の構成要件B?Dを充足しない。

4 当審の判断
(1) 本件特許発明の用語について
ア 構成要件E,Fについて
(ア) 請求項1の記載において,構成要件E,Fとして,本件特許発明の「ラムシリンダの油圧回路」は,「前記ラムシリンダの油圧室と前記油圧ユニットの供給制御回路を接続する第1給排回路」と,「前記ラムシリンダの前記油圧室と前記油圧ユニットの排出制御回路を接続する第2給排回路」とを備えることが特定されている(下線は当審にて付与した。)。
ここで,「前記油圧ユニット」とは,「制御弁油圧ユニット」(構成要件D)を意味することは明らかであるから,「第1給排回路」が,「ラムシリンダ」(構成要件A)の「油圧室」と「制御弁油圧ユニット」(構成要件D)の「供給制御回路」(構成要件B3)を接続するものであり,「第2給排回路」が,「前記ラムシリンダ」(構成要件A)の「前記油圧室」(「第1給排回路」が接続された「油圧室」)と「制御弁油圧ユニット」(構成要件D)の「排出制御回路」(構成要件C3)を接続するものであること,すなわち,「第1給排回路」の一端が「ラムシリンダ」(構成要件A)の「油圧室」に接続され,「第1給排回路」の他端が「供給制御回路」(構成要件B3)に接続され,「第2給排回路」の一端が,同じ「油圧室」に接続され,「第2給排回路」の他端が「排出制御回路」(構成要件C3)に接続されるものであることは,請求項1の記載から文言上明らかである。
(イ) 発明の詳細な説明には,本件特許発明は,
・ラムシリンダに供給用のポートと排出用ポートを設け,この供給用ポートを油圧ポンプの吐出口に第1ポペット弁(供給側制御弁)を介して接続する供給回路と,排出側ポートを油タンクに第2ポペット弁(排出側制御弁)を介して接続する排出回路を備え,供給側制御弁と排出側制御弁の双方を開くことで,油圧ポンプが吐出する作動油を供給側制御弁からラムシリンダの圧力室を介して排出側制御弁よりタンクに循環させることでフラッシングを行うことができる(【0003】,【0004】)といった従来の技術を前提になされたものであること,
・ラムシリンダに重複した給排回路を接続しラムシリンダの上昇,下降,フラッシング作動には,前記重複した給排回路を共同して働かせるようにして給排回路に複数の機能を発揮させることを目的とするものであること(【0007】),
・請求項1に記載された構成を有することにより,バイパス回路の止弁を開くと第1供給回路と第2供給回路が接続され,ラムシリンダへの作動油の給排を第1給排回路と第2給排回路に共同して行なわせることができるため,災害時などにおいて,その一方の給排回路が破損した場合には他の給排回路を利用して,ラムシリンダの作動を行なわせることができ,災害に際しても安全である,バイパス回路の止弁を閉じるとラムシリンダへの作動油の給排を第1給排回路と第2給排回路によって行なうフラッシング動作を行なうことができる,重複した給排回路を共同して働かせるので配管の径が細くできるから,配管のコストを下げる,といった効果を奏すること(【0009】),
が記載されている。
また,発明の詳細な説明,図面には実施の形態に関し,
・ラムシリンダ10は,シリンダ本体11に,第1給排ポート14aと第2給排ポート14bを備えた油圧室13を有する構成であること(【0021】,図1),
・油圧ユニット20は,ラムシリンダ10に接続した第1給排回路40aに接続する供給回路部分28aを有する供給制御回路22aと,ラムシリンダ10に接続した第2給排回路40bに接続する排出回路部分28bを有する排出制御回路22bとを有すること(【0023】),
・第1給排回路40aが,ラムシリンダ10の第1給排ポート14aと供給制御回路22aを接続し,第2給排回路20bが,ラムシリンダ10の第2給排ポート14bと排出制御回路22bを接続すること(図1,3?5),
が記載されている。
そして,実施の形態のフラッシング動作について,
・バイパス回路24の止弁25を閉鎖し,供給制御弁21a,排出制御弁21bを連通位置42a,42bに操作すると,第1給排回路40aを経て油圧室13通過し第2給排回路40bから油圧ポンプ31に帰還されることでフラッシングが行われ,バイパス回路24以外は油圧ポンプ31が吐出する作動油の全量が通過するのでフラッシング効果が大きいこと(【0043】,図5),
・供給制御弁21a,排出制御弁21bを連通位置42a,42bに操作して,バイパス回路24の止弁25を開いてバイパス回路24を連通すると,油圧ポンプ31が吐出する作動油が供給回路22aからバイパス回路24を介して排出回路22bを経て排出制御弁21bより油タンク30に還流し,第1給排回路40a,から油圧室13を介して第2給排回路40bへ流入する作動油は,少なくなるが,全油圧回路と油圧室13を同時にフラッシングが出来ること(【0044】,図5),
が記載されている。このフラッシングの動作は,「第1給排回路」が,「ラムシリンダ」(構成要件A)の「油圧室」と「制御弁油圧ユニット」(構成要件D)の「供給制御回路」(構成要件B3)を接続し,「第2給排回路」が,「ラムシリンダ」(構成要件A)の「前記油圧室」と「制御弁油圧ユニット」(構成要件D)の「排出制御回路」(構成要件C3)を接続すること(「供給制御回路」(構成要件B3)と「排出制御回路」(構成要件C3)が,それぞれ,異なるポート(第1給排ポート14a,第2給排ポート14b)を介して「ラムシリンダ」(構成要件A)の「油圧室」に接続すること)により可能となるものである。
このように,構成要件E,Fについて,「第1給排回路」の一端が「ラムシリンダ」(構成要件A)の「油圧室」に接続され,「第1給排回路」の他端が「供給制御回路」(構成要件B3)に接続され,「第2給排回路」の一端が,同じ「油圧室」に接続され,「第2給排回路」の他端が「排出制御回路」(構成要件C3)に接続されるものであると解することは,発明の詳細な説明の記載とも整合している。
(ウ) この点に関し,請求人は,発明の詳細な説明の下記のような記載(【0022】)を根拠に,第1給排回路と第2給排回路とが合流した回路がラムシリンダに接続されているものは本件特許発明の技術的範囲に含まれると主張している(判定請求書8頁)。
・「なお,ラムシリンダ10は,図1に示すように,そのシリンダ本体11に第1給排ポート14aと第2給排ポート14bの2つの給排ポートを設けた構成を示したが,図1破線で示すように一つの第3給排ポート14cにチー継手7を連結してこのチー継手7の2つのポート7aと7bに,第1給排回路40aと第1給排回路40bを接続する構成でも良い。」(【0022】)
しかしながら,「第1給排回路」が,「ラムシリンダ」(構成要件A)の「油圧室」と「制御弁油圧ユニット」(構成要件D)の「供給制御回路」(構成要件B3)を接続するものであり,「第2給排回路」が,「ラムシリンダ」(構成要件A)の「油圧室」と「制御弁油圧ユニット」(構成要件D)の「排出制御回路」(構成要件C3)を接続するものであることは,その文言から明らかであって,当該第1給排回路と第2給排回路とが合流した回路がラムシリンダに接続されている構成では上記のような油圧室を介したフラッシング動作を行うことができないことからすると,請求人の主張のように解することは妥当でない(当該記載は,当該構成であっても,ラムシリンダにより被駆動装置の上昇,下降駆動は可能であることを示したものと解される。)。
イ 構成要件G1?G4について
請求項1において,構成要件G1?G4として,「前記供給制御回路の供給制御弁と供給絞り弁の下流側」と「排出制御回路の排出制御弁と排出絞り弁の下流側」を,「開閉機能を有する止弁を備えたバイパス回路」で接続したことが特定されている(なお,「下流側」とは「ラムシリンダ側」である(【0024】)。)。
この点に関し,被請求人は,発明の詳細な説明の記載(【0026】,【0031】,【0047】)を根拠に,当該「止弁」(構成要件G3)は「制御弁油圧ユニット」(構成要件D)の内部に設置されるものであると主張しているが(判定請求答弁書14,15,20頁),「前記供給制御回路の供給制御弁と供給絞り弁」の「下流側」と「排出制御回路の排出制御弁と排出絞り弁」の「下流側」を,「開閉機能を有する止弁を備えたバイパス回路」で接続したものであれば足りることは,請求項1の記載から文言上明らかであって,被請求人の主張のように解することは妥当でない。
(2) イ号油圧回路
ア 判定請求書添付イ号図面の記載から理解することができる事項は,次のとおりである。
(ア) 右岸洪水調整兼土砂吐ゲート,洪水吐ゲート3等を駆動する複数のラムシリンダが,ギヤポンプ及びタンクに並列に接続されていることがわかる。
(イ) 右岸洪水調整兼土砂吐ゲート,洪水吐ゲート3が,それぞれ,二つのラムシリンダにより駆動され,各2つのラムシリンダが,4ポート3位置方向制御弁,2ポート2位置方向制御弁,2つのチェック弁付き可変絞り弁を介して,ギヤポンプ及びオイルタンクに接続されていることがわかる。
また,図面上,4ポート3位置方向制御弁,2ポート2位置方向制御弁,2つのチェック弁付き可変絞り弁等が枠内に記載されていることからすると,これら4ポート3位置方向制御弁,2ポート2位置方向制御弁,2つのチェック弁付き可変絞り弁等がユニット内に設けられていることがわかり,これらによりラムシリンダへの作動油の供給,ラムシリンダから帰還する作動油の排出を制御することがわかる(以下,各2つのラムシリンダが,4ポート3位置方向制御弁,2ポート2位置方向制御弁,2つのチェック弁付き可変絞り弁を介して,ギヤポンプ及びオイルタンクに接続されている回路のうち,ユニット内の部分を「供給及び排出回路」という。)。
(ウ) 右岸洪水調整兼土砂吐ゲートを駆動するための図面上左側のラムシリンダ(以下「左側ラムシリンダ」という。)の油圧室が,右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係る供給及び排出回路に,接続点1,2(下記参考図)を介して接続されている(以下,この回路を「回路1」という。)
(エ) 洪水吐ゲート3を駆動するための左側ラムシリンダの油圧室が,洪水吐ゲート3に係る供給及び排出回路に,接続点3,4(下記参考図)を介して接続されており(以下,この回路を「回路2」という。),回路1と回路2が,接続点2,4,5(下記参考図),2つの止弁を介して接続されている(以下,この回路を「回路3」という。)。
(オ) 回路1と回路3とが,接続点1,5,6(下記参考図),止弁を介して接続されている(以下,この回路を「回路4」という。)。

(参考図)


イ 以上によれば,イ号油圧回路は,以下のとおり特定される。
a 右岸洪水調整兼土砂吐ゲートを駆動する二つのラムシリンダと,洪水吐ゲート3を駆動する二つのラムシリンダと,
b1 ギヤポンプの吐出側及びオイルタンクに4ポート3位置方向制御弁を介して接続し前記ギヤポンプが吐出する作動油の供給及び前記右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係るラムシリンダから帰還する作動油の排出を制御する2ポート2位置方向制御弁と
b2 前記右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係るラムシリンダヘの供給油量を制限するチェック弁付き可変絞り弁と,前記右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係るラムシリンダから帰還する作動油の排出を制御するチェック弁付き可変絞り弁と
b3 を備えた右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係る供給及び排出回路と,
c1 ギヤポンプの吐出側及びオイルタンクに4ポート3位置方向制御弁を介して接続し前記ギヤポンプが吐出する作動油の供給及び前記洪水吐ゲート3に係るラムシリンダから帰還する作動油の排出を制御する2ポート2位置方向制御弁と
c2 前記洪水吐ゲート3に係るラムシリンダへの供給油量を制限するチェック弁付き可変絞り弁と,前記洪水吐ゲート3に係るラムシリンダから帰還する作動油を制限するチェック弁付き可変絞り弁と,
c3 を備えた洪水吐ゲート3に係る供給及び排出回路と,
d を備えたユニットと,
e 前記右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係る左側ラムシリンダの油圧室と前記ユニットの右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係る供給及び排出回路を接続する回路1と,
f 前記洪水吐ゲート3に係る左側ラムシリンダの油圧室と前記ユニットの洪水吐ゲート3に係る供給及び排出回路を接続する回路2と,開閉機能を有する二つの止弁を備え前記回路1と前記回路2を接続する回路3と,
を備え,
g1 前記回路1と
g2 前記回路3を,
g3 開閉機能を有する止弁を備えた回路4
g4 で接続した
h ラムシリンダの油圧回路。

(3) イ号油圧回路の充足性
ア 一般的に,油圧回路図のみでは,当該油圧回路によりどのような制御を行うものであるかを判断することは困難である。イ号油圧回路に関しては,判定請求書添付イ号図面が示されているのみで,右岸洪水調整兼土砂吐ゲート,洪水吐ゲート3を駆動する二つのラムシリンダがどのように制御されるものであるか,添付イ号図面から正確に判断することができない。
右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係るラムシリンダ,洪水吐ゲート3に係るラムシリンダのそれぞれが,4ポート3位置方向制御弁,二つのチェック弁付き可変絞り弁を介してギヤポンプ及びオイルタンクに接続されていることなど,添付イ号図面に記載の回路構成から,右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係るラムシリンダ,洪水吐ゲート3に係るラムシリンダについて,それぞれに係る供給及び排出回路(構成b1?3,c1?3)により,作動油の供給又は作動油の排出を制御し,該当するラムシリンダを作動させること(二つの制御回路の系統があること)が理解できる。
しかしながら,右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係るラムシリンダについて,洪水吐ゲート3に係る供給及び排出回路(構成c1?3)を利用して,作動油の排出を行うものであるかは不明である(洪水吐ゲート3に係るラムシリンダについても同様である。)。
そうすると,イ号油圧回路において,少なくとも,本件特許発明の排出制御回路(構成要件C1?3)及び第2給排回路(構成要件F)に相当する事項が備えられているとは認められない上,排出制御回路(構成要件C1?3)に相当する事項が備えられているとは認められないことに伴って,バイパス回路(構成要件G1?4)に相当する事項が備えられているものとも認められない。
よって,イ号油圧回路は,少なくとも本件特許発明の構成要件C1?3,構成要件F,構成要件G1?4を充足しないから,イ号油圧回路は本件特許発明の技術的範囲に属しない。
イ このように,イ号油圧回路は,右岸洪水調整兼土砂吐ゲートを駆動するラムシリンダについて,洪水吐ゲート3に係る供給及び排出回路を利用して,作動油の排出を行うものであるか不明である。
この点に関し,イ号図面をみると,回路3(構成f)の2つの止弁を開いた場合,右岸洪水調整兼土砂吐ゲートを駆動する左側ラムシリンダから,回路3(構成f),回路2(構成f),洪水吐ゲート3に係る供給及び排出回路(構成c1?3)を経由して,作動油をオイルタンクに排出し得ると解する余地が油圧回路上あることから,イ号油圧回路がそのように構成されたものであるとして,次に検討する。
(ア) 構成要件Aについて
イ号油圧回路の構成aの「右岸洪水調整兼土砂吐ゲート」,「洪水吐ゲート3」は,本件特許発明の構成要件Aの「倒伏ゲート,洪水吐ゲート等の被駆動装置」に相当し,「ラムシリンダ」は,本件特許発明の構成要件Aの「ラムシリンダ」に相当するから,イ号油圧回路の構成aは,本件特許発明の構成要件Aを充足する。
(イ) 構成要件B1?B3について
a イ号油圧回路の構成b1の「ギヤポンプ」は,本件特許発明の「油圧源」に相当する。
そして,イ号油圧回路の構成b1の「2ポート2位置方向制御弁」は,「ギヤポンプの吐出側…に4ポート3位置方向制御弁を介して接続し前記ギヤポンプが吐出する作動油の供給…を制御する」もので,4ポート3位置方向制御弁の切換位置により,ギヤポンプ(油圧源)の吐出側に接続し,ギヤポンプ(油圧源)が吐出する作動油の供給を制御する機能を有するから,本件特許発明の構成要件B1の「供給制御弁」に相当する。
よって,イ号油圧回路の構成b1は,本件特許発明の構成要件B1を充足する。
b イ号油圧回路の構成b2の「前記右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係るラムシリンダヘの供給油量を制限するチェック弁付き可変絞り弁」は,右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係るラムシリンダ(ラムシリンダ)ヘの供給油量を制限する機能を有するから,本件特許発明の構成要件B2の「供給絞り弁」に相当する。
よって,イ号油圧回路の構成b2は,本件特許発明の構成要件B2を充足する。
c イ号油圧回路の構成b3の「右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係る供給及び排出回路」は,右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係るラムシリンダ(ラムシリンダ)ヘの供給油量を制御する機能を有するから,本件特許発明の構成要件B3の「供給制御回路」に相当する。
よって,イ号油圧回路の構成b3は,本件特許発明の構成要件B3を充足する。
(ウ) 構成要件C1?C3について
a イ号油圧回路の構成c1の「オイルタンク」は,本件特許発明の「油タンク」に相当する。
そして,イ号油圧回路の構成c1の「2ポート2位置方向制御弁」は,「オイルタンクに4ポート3位置方向制御弁を介して接続し…前記ラムシリンダから帰還する作動油の排出を制御する」もので,4ポート3位置方向制御弁の切換位置により,オイルタンク(油タンク)に接続し,右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係る左側ラムシリンダから,回路3,回路2(の一部)を経由して帰還する作動油の排出を制御する機能を有するから,本件特許発明の構成要件C1の「排出制御弁」に相当する。
よって,イ号油圧回路の構成c1は,本件特許発明の構成要件C1を充足する。
b イ号油圧回路の構成c2の「前記洪水吐ゲート3に係るラムシリンダから帰還する作動油を制限するチェック弁付き可変絞り弁」は,右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係る左側ラムシリンダから,回路3,回路2(の一部)を経由して帰還する作動油の排出を絞る機能を有するから,本件特許発明の構成要件C2の「排出絞り弁」に相当する。
よって,イ号油圧回路の構成c2は,本件特許発明の構成要件C2を充足する。
c イ号油圧回路の構成c3の「洪水吐ゲート3に係る供給及び排出回路」は,右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係る左側ラムシリンダから,回路3,回路2(の一部)を経由して帰還する作動油の排出制御機能を有するから,本件特許発明の構成要件C3の「排出制御回路」に相当する。
よって,イ号油圧回路の構成c3は,本件特許発明の構成要件C3を充足する。
(エ) 構成要件Dについて
イ号油圧回路の構成dの「ユニット」は,本件特許発明の構成要件Dの「制御弁油圧ユニット」に相当するから,イ号油圧回路の構成dは,本件特許発明の構成要件Dを充足する。
(オ) 構成要件Eについて
イ号油圧回路の構成eの「回路1」は,右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係る左側ラムシリンダ(ラムシリンダ)の油圧室とユニット(油圧ユニット)の右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係る供給及び排出回路(供給制御回路)を接続するものであるから,本件特許発明の構成要件Eの「第1給排回路」に相当する。
よって,イ号油圧回路の構成eは,本件特許発明の構成要件Eを充足する。
(カ) 構成要件Fについて
既に述べたとおり((1)ア),本件特許発明において,構成要件Fの「第2給排回路」は,「ラムシリンダ」(構成要件A)の「前記油圧室」(「第1給排回路」(構成要件E)が接続された「油圧室」)と「制御弁油圧ユニット」(構成要件D)の「排出制御回路」(構成要件C3)を接続するものである
他方,イ号油圧回路の構成fの「回路2」(の一部)と「回路3」により,回路1(第1給排回路)とユニット(油圧ユニット)の洪水吐ゲート3に係る供給及び排出回路(排出制御回路)が接続されるといえる。
しかしながら,「回路3」は,回路1(第1給排回路)に接続され,右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係る左側ラムシリンダ(ラムシリンダ)の油圧室に接続されるものではない,すなわち,「回路2」及び「回路3」は,右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係る左側ラムシリンダ(ラムシリンダ)の油圧室と,ユニットの洪水吐ゲート3に係る供給及び排出回路(排出制御回路)を接続するものではない。
であるから,「回路2」及び「回路3」は,本件特許発明の構成要件Fの「第2給排回路」に相当するとは認められない。
よって,イ号油圧回路の構成fは,本件特許発明の構成要件Fを充足しない。
(キ) 構成要件G1?G3
a イ号油圧回路の構成g1の「回路1」は,右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係る左側ラムシリンダ(ラムシリンダ)の油圧室と右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係る供給及び排出回路(供給制御回路)を接続するものであるところ,右岸洪水調整兼土砂吐ゲートに係る供給及び排出回路(供給制御回路)の2ポート2位置方向制御弁(供給制御弁)とチェック弁付き可変絞り弁(供給絞り弁)の下流側に存するといえるから,本件特許発明の構成要件g1の「前記供給制御回路の供給制御弁と供給絞り弁の下流側」に相当する。
よって,イ号油圧回路の構成g1は,本件特許発明の構成要件G1を充足する。
b イ号油圧回路の構成g2の「回路3」は,回路1(第1給排回路)と回路2とを接続し,回路2は,洪水吐ゲート3に係る供給及び排出回路(排出制御回路)に接続されているものであるところ,「回路3」は洪水吐ゲート3に係る供給及び排出回路(排出制御回路)の2ポート2位置方向制御弁(排出制御弁)とチェック弁付き可変絞り弁(排出絞り弁)の下流側に存するといえるから,本件特許発明の構成要件G2の「前記排出制御回路の排出制御弁と排出絞り弁の下流側」に相当する。
c イ号油圧回路の構成g3の「回路4」は,開閉機能を有する止め弁を備え,構成g1の回路1(前記供給制御回路の供給制御弁と供給絞り弁の下流側)と構成g2の回路3(排出制御回路の排出制御弁と排出絞り弁の下流側)との間をバイパスする機能を有することより,本件特許発明の構成要件G3の「バイパス回路」に相当する。
よって,イ号油圧回路の構成g3は,本件特許発明の構成要件G3を充足する。
d イ号油圧回路の構成g4は,「前記回路1(前記供給制御回路の供給制御弁と供給絞り弁の下流側)」と「前記回路3(排出制御回路の排出制御弁と排出絞り弁の下流側)」を,「開閉機能を有する止弁を備えた回路4(バイパス回路)」で接続するものであるから,本件特許発明の構成要件G4に相当する。
よって,イ号油圧回路の構成g4は,本件特許発明の構成要件G4を充足する。
(ク) 構成要件Hについて
イ号油圧回路の構成hの「ラムシリンダの油圧回路」は,本件特許発明の「ラムシリンダの油圧回路」に相当するから,イ号油圧回路は,本件特許発明の構成要件Hを充足する。
(ケ) そうすると,イ号油圧回路は,構成要件Fを充足しないから,イ号油圧回路は本件特許発明の技術的範囲に属しない。

5 むすび
以上のとおり,イ号油圧回路は本件特許発明の構成要件C1?3,構成要件F,構成要件G1?4を充足しない,又は構成要件Fを充足しないから,イ号油圧回路は,本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。

 
判定日 2021-07-14 
出願番号 特願2012-87235(P2012-87235)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (F15B)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 窪田 治彦
小川 恭司
登録日 2016-08-26 
登録番号 特許第5992196号(P5992196)
発明の名称 ラムシリンダの油圧回路  
代理人 千葉 茂雄  
代理人 堀家 和博  
代理人 特許業務法人梶・須原特許事務所  
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