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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E02D
審判 全部無効 特29条の2  E02D
管理番号 1377024
審判番号 無効2019-800111  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-12-18 
確定日 2021-05-27 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第6288895号発明「パイプ打ち込み方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6288895号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1 本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第6288895号(以下「本件特許」という。平成29年9月5日出願、平成30年2月16日登録、請求項の数は3である。)の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る特許を無効とすることを求める事案であって、その手続の経緯(無効理由に係る主張に関するもの。)は、以下のとおりである。

令和 1年12月18日受付:審判請求書
令和 2年 3月 3日提出:審判事件答弁書、訂正請求書
令和 2年 4月14日提出:審判事件弁駁書
令和 2年 6月11日付け:審尋
令和 2年 7月16日提出:回答書(請求人)
令和 2年 9月25日付け:補正許否の決定
令和 2年11月26日付け:審理事項通知
令和 2年12月 4日提出:口頭審理陳述要領書(請求人)
令和 2年12月25日提出:口頭審理陳述要領書(被請求人)
令和 3年 1月 8日付け:口頭審理中止通知書(起案日)
令和 3年 1月15日 :口頭審尋


2 上記1の令和2年9月25日付け補正許否の決定は、以下のとおりのものである。
「上記特許無効審判事件について、審判請求人が令和2年7月16日付けで提出した回答書による請求の理由の補正については、特許法第131条の2第2項の規定に基づき、下記のとおり決定します。



1.上記回答書の以下(1)?(3)に記載された事項による無効理由の補正は、特許法第131条の2第1項に規定される請求の理由の要旨を変更するものであって、同法第134条の2第1項の訂正の請求により請求の理由を補正する必要が生じたものではなく、当該補正に係る請求の理由を審判請求時の請求書に記載しなかったことにつき合理的な理由があるものでもないから、許可しない。

(1)14頁12行、18頁26行、19頁1行、7行、12行の「及び甲第21号証」、15頁6行?16頁11行、18頁17行?21行の「また、甲第21号証には、・・・[0018]、[0032])。」、18頁22行?25行の「さらに、この・・・段落[0027])。」(本件特許の請求項1に係る発明に対して、甲第21号証を副引用例とした主張部分。)
(2)19頁15行?23頁下から4行(本件特許の請求項2に係る発明に対して、甲第21号証を主引用例とした主張全般。)
(3)23頁下から3行?28頁6行(本件特許の請求項3に係る発明に対して、甲第8号証と主引用例、甲第21号証を副引用例とする主張全般。)

〔理由〕
(ア)甲第21号証は、訂正後の本件特許の請求項2に係る発明に対して周知慣用技術を示す証拠として、令和2年4月14日付け審判事件弁駁書に添付されたものであるから、審判事件弁駁書提出後の回答書において、本件特許の請求項1?3に係る発明に対し、甲第21号証を主引用例や副引用例とする新たな無効理由を主張することは、審判請求の要旨を変更するものである。
なお、当審より通知した審尋において、「審判請求書には、甲第3号証?甲第10号証のうち、どの証拠が主引用例となり、どの証拠が副引用例となるのか、記載されていません。」(2.(1)イ(ア))、「まず、甲第3?10号証から、主引用例を定めてください。(主引用例以外は副引用例とします。)」(2.(2)イ(a))と説明していたが、回答書では、主引用例または副引用例として、甲第21号証を採用している。
また、本件特許の請求項1及び2に係る訂正の請求の内容を検討しても、新たな無効理由を主張すべき理由は見当たらない。

(イ)甲第8号証は、審判請求時に、本件特許の請求項3に係る発明に対する無効理由の証拠として用いられていないから、回答書において、訂正されていない本件特許の請求項3に対して、甲第8号証を主引用例とする新たな無効理由を主張することは、審判請求の要旨を変更するものである。」


第2 訂正請求
1 訂正事項
被請求人が提出した令和2年3月3日付け訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを求めるものであって、次の事項を訂正内容(以下「本件訂正」という。)とするものである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に、
「壁面に貫通した孔が多数形成されたパイプを排水用として地中に打ち込む方法であって、」と記載されているのを、
「壁面に貫通した孔が多数形成されたパイプを排水用として地中に打ち込んで埋設する方法であって、」に訂正する。

(2)訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に、
「先端部に先端ビットを備えたパイプの内側に打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドを前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの内面を打撃することによりパイプを地中に打ち込む方法であり、先端ビットはパイプとは別体の構成であって、先端ビットの外径はパイプの外径よりも大きい」と記載されているのを、
「中実先細り形状の先部を有する先端ビットが先端部に螺着又は固着された先端ビット付きのパイプの内側に、少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドの全体を前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの先部の内面を打撃することによりパイプを地中に打ち込む方法であり、先端ビットの外径はパイプの外径よりも大きい」に訂正する。

(3)訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項2に、
「パイプを地中に打ち込む方法であって、」と記載されているのを、
「パイプを地中に打ち込んで埋設する方法であって、」に訂正する。

(4)訂正事項2-2
特許請求の範囲の請求項2に、
「先端部に先端ビットを備えたパイプの内側に打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドを前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの内面を打撃することによりパイプを地中に打ち込む方法であり、」と記載されているのを、
「先端ビットにより先端部が閉じられたパイプの内側に、少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドの全体を前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの内面を打撃することによりパイプを地中に打ち込む方法であり、」に訂正する。

(5)訂正事項2-3
特許請求の範囲の請求項2に、
「送り込んだ空気を打ち込みロッドの先端部から排出させてパイプの内周面と打ち込みロッドの外周面との間の隙間に通す」と記載されているのを、
「送り込んだ空気を打ち込みロッドの先端部から排出させてパイプの内周面と打ち込みロッドの外周面との間の隙間に通してパイプの後端部から出す」に訂正する。

2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1-1
ア 訂正の目的
訂正事項1-1は、本件訂正前の「パイプを排水用として地中に打ち込む方法」について、さらに「埋設」することを付加して、「パイプを排水用として地中に打ち込んで埋設する方法」に限定する訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項1-1は、訂正前の「パイプを排水用として地中に打ち込む方法」に、「埋設」することを付加して限定したものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。したがって、訂正事項1-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

なお、上記ア、イについて、請求人は、単なる「打ち込む方法」と「打ち込んで埋設する方法」とでは概念的に異なるものであり、上位概念から下位概念への変更でもなく、特許請求の範囲を減縮するものではなく、実質上特許請求の範囲を変更するものと主張するが(審判事件弁駁書4頁1?16行)、「打ち込」む「方法」であることを前提に「埋設」することを付加して限定したものであるから、上位概念から下位概念へとするもので特許請求の範囲を減縮するものであることは明らかであるから、請求人の主張には理由がない。

ウ 新規事項
パイプを地中に埋設するという点は、例えば、図8ないし図12に示されているし、明細書の段落0016に「パイプ打ち込み方法は、各種のパイプを種々の用途に用いるために地中に打ち込む方法であるが、一例として、地中の水を外部に排出するための排水用のパイプ1を山の斜面100に打ち込む場合について説明する。」と記載され、また、同段落0039には、「このようにパイプ1を支柱や補強材等に使用する用途においては、先端ビット2をパイプ1と同径かそれよりも小径としてパイプ1と地中との間に大きな摩擦力を発生させてパイプ1を強固に固定するようにしてもよい。」と記載されており、パイプが地中に埋設される点が記載されている。
以上のように、訂正事項1-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項1-2
ア 訂正の目的
訂正事項1-2は、「パイプ」について、本件訂正前の「先端部に先端ビットを備えた」ものを、その先端ビットの構成を具体的に特定するに際して、削除した「先端ビットはパイプとは別体の構成であ」ることの意味を含んだ、「中実先細り形状の先部を有する先端ビットが先端部に螺着又は固着された先端ビット付きの」ものに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「打ち込みロッド」について、「少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの」ものに限定し、また、本件訂正前の「前後に加振」することを、「打ち込みロッドの全体」で行うものに限定し、さらに、その「打ち込みロッドの先端部で打撃する先端ビット」の箇所について、「先端ビットの内面」を、「先端ビットの先部の内面」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項1-2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。

イ 特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項1-2は、「パイプ」、「打ち込みロッド」、「先端ビット」についてより具体的に特定したものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。したがって、訂正事項1-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

なお、上記ア、イについて、請求人は、「・・・先端ビットはパイプと別体の構成であって、・・・」の文言を削除し、「・・・先端部に螺着又は固着された先端ビット付き・・・」の文言を追加している点は、「螺着」の場合は先端ビットとパイプとが別体であるとしても、本件明細書の段落[0045]記載の「溶接等により固着」の文言から明らかなように、「固着」の概念は先端ビットとパイプとは「別体」ではなく、「一体」を意味するのが当業者の技術常識であるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるのは明らかであると主張するが(審判事件弁駁書4頁17行?5頁8行)、「固着」は「螺着」と同列に記載されており、先端ビットとパイプとが別体として形成されていることを前提に、その接続態様を特定したものであるから、訂正前に記載の「・・・先端ビットはパイプと別体の構成であって、・・・」との文言が形式上削除されたとしても、「固着」はそのことを含意していることが当然に理解できるから、請求人の主張には理由がない。
加えて、請求人は、訂正事項1-2は、明細書の記載全体を基準にして訂正請求しており、特許請求の範囲を基準としたものではないことから実質上特許請求の範囲を拡張し、 又は変更するものでもあるとも主張しているが(審判事件弁駁書5頁9?12行)、上述したところからすると、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかであるから、請求人の当該主張にも理由がない。

ウ 新規事項
(ア)先端ビットがパイプに螺着されている点は、例えば、明細書の段落0008に「パイプとは別体構成の先端ビットがパイプの先端部に右ネジ構成で螺着されていて、」と記載されている。また、先端ビットがパイプに固着されている点は、例えば、同段落0045に「パイプ1の先端部に別途形成した先端ビット2を溶接等によって固着しておいてもよい。」と記載されている。

(イ)先端ビットが中実先細り形状の先部を有する点は、例えば、明細書の段落0021に「先端ビット2は、前側の先部20とその後側の円筒部21とから構成される。先部20の形状は地中に進入しやすい形状とされ、種々のタイプであってよいが、本実施形態では先細り形状であって詳細には円錐形状となっている。」と記載され、同段落0022には「先端ビット2の先部20は中実状である。」と記載されている。

(ウ)打ち込みロッドが「少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さ」を有する点は、例えば、明細書の段落0026には「該先頭のパイプ1には後側の開口部から打ち込みロッド3が挿入される。」と記載され、同段落0027には「図6のように打ち込みロッド3の後端部には空気供給機5と打設機6とが連結される。」と記載され、図6を見ると、先端ビット付きのパイプの内側に、少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さを有する打ち込みロッドが挿入されている点が明記されており、パイプに挿入された打ち込みロッドの先端部は先端ビットまで達していると共にパイプの後端部から更に後方に打ち込みロッドが延びていてその後端部には打設機が接続されていることから、明細書等には、少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの打ち込みロッドが記載されていることは明らかである。

(エ)打ち込みロッドの全体を加振する点は、例えば、明細書の段落0027には「図6のように打ち込みロッド3の後端部には空気供給機5と打設機6とが連結される。」と記載されており、打ち込みロットの全体が加振される点が記載されていることは明らかである。

(オ)打ち込みロッドが先端ビットの先部の内面を打撃する点は、例えば、明細書の段落0022に「先端ビット2の内面であって雄ネジ部10よりも前側の位置には、被打撃面24が形成されている。」と記載され、同段落0023には「打ち込みロッド3はパイプ1の内側に挿入されて、その先端部で先端ビット2の被打撃面24を叩く。」と記載され、図3(b)及び図7(a)をみると、先端ビットの被打撃面が先端ビットの先部の内面であることが明記されており、明細書等には、打ち込みロットが先端ビットの先部の内面を打撃する点が記載されていることは明らかである。

(カ)以上のように、訂正事項1-2は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(3)訂正事項2-1
ア 訂正の目的
訂正事項2-1は、本件訂正前の「パイプを地中に打ち込む方法」について、さらに「埋設」することを付加して、「パイプを地中に埋設して打ち込む方法」に限定する訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項2-1は、訂正前の「パイプを地中に打ち込み方法」に、「埋設」することを付加して限定したものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。したがって、訂正事項2-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

なお、上記ア、イについて、請求人は、訂正事項2-1に対して訂正事項1-1におけるのと同様の主張をしているが(審判事件弁駁書5頁13?18行)、上述したのと同様の理由により、請求人の主張には理由がない。

ウ 新規事項
パイプを地中に埋設する点は、例えば、明細書の段落0016に「パイプ打ち込み方法は、各種のパイプを種々の用途に用いるために地中に打ち込む方法であるが、一例として、地中の水を外部に排出するための排水用のパイプ1を山の斜面100に打ち込む場合について説明する。」と記載され、また、同段落0039には、「このようにパイプ1を支柱や補強材等に使用する用途においては、先端ビット2をパイプ1と同径かそれよりも小径としてパイプ1と地中との間に大きな摩擦力を発生させてパイプ1を強固に固定するようにしてもよい。」と記載されており、明細書等には、パイプが地中に埋設される点が記載されている。
以上のように、訂正事項2-1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(4)訂正事項2-2
ア 訂正の目的
訂正事項2-2は、訂正前の「パイプ」について、「先端部に先端ビットを備えた」ものであったところ、その先端部が閉じられたことを特定して、「先端ビットにより先端部が閉じられた」ものに限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「打ち込みロッド」について、「少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの」ものに限定し、また、本件訂正前の「前後に加振」することを、「打ち込みロッドの全体」で行うものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項2-2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。

イ 特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項2-2は、パイプの構成、打ち込みロッドの構成をより具体的に特定したものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。したがって、訂正事項2-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

なお、請求人は、「先端ビットにより先端部が閉じられた・・・少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの・・・」等への訂正は、設定登録時の特許請求の範囲の記載から一義的に把握されるものではなく、明細書全体の記載に接しなければ把握することができないものであり、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものであり、到底認められるものではないと主張するが(審判事件弁駁書5頁19?24行)、上記ア、イで述べたところからすると、上記訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、請求人の当該主張には理由がない。

ウ 新規事項
(ア)パイプの先端部が先端ビットによって閉じられた点は、例えば、明細書の段落0022に「先端ビット2の先部20は中実状である。」と記載され、図4をみると、パイプの先端部が先端ビットによって閉じられている点が明記されており、明細書等には、先端ビットによって先端部が閉じられたパイプが記載されていることは明らかである。

(イ)打ち込みロッドについて、「少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さ」を有することについては、上記(2)ウ(ウ)で説示したとおり、また、「打ち込みロッドの全体を前後に加振」することについては、上記(2)ウ(エ)で説示したとおり、明細書等に記載されていることは明らかである。

(ウ)以上のように、訂正事項2-2は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(5)訂正事項2-3
ア 訂正の目的
訂正事項2-3は、訂正前の「パイプの内周面と打ち込みロッドの外周面との間の隙間を通」した「空気」を、「パイプの後端部から出す」ものに限定する訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項2-3は、パイプ内の空気の流れをより具体的に特定したものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。したがって、訂正事項2-3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

なお、請求人は、「・・・外周面との間の隙間を通す」とあるのを「・・・外周面との間の隙間を通してパイプの後端部から出す」に訂正することは、明細書全体の記載から発明を特定するための要素を請求項に追加したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としたものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであり、到底認められるものではないと主張するが(審判事件弁駁書5頁下から2行?6頁5行)、上記ア、イで述べたところからすると、上記訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、請求人の当該主張には理由がない。

ウ 新規事項
打ち込みロッドの先端部から排出させた空気がパイプの内周面と打ち込みロッドの外周面との間の隙間に通してパイプの後端部から出す点は、例えば、明細書の段落0011に「打ち込みロッドに送り込んだ空気は打ち込みロッドの先端部から排出されてパイプと打ち込みロッドとの間の隙間を通過することになる。即ち、パイプに空気が供給されることでパイプ内の空気圧が高まる。パイプの壁面には孔が形成されているので、パイプの打設時に孔から土砂がパイプの内側に進入する可能性があるが、パイプと打ち込みロッドとの間の隙間を空気が後側に向けて通っているので、その空気の流れがエアーカーテンとなるうえに、パイプ内の空気圧が上昇し、しかも、パイプの孔から空気が外側に排出されることにもなる。そのため、パイプの孔から土砂がパイプ内に進入することを防止できる。」と記載され、段落0028に「排出された空気は、図9のようにパイプ1の内周面と打ち込みアダプタ4の外周面との間の隙間Sを通って後側に流れていき、パイプ1の内周面と打ち込みロッド3の外周面との間の隙間Sを通ってパイプ1の内側を後側に向けて流れていく。そして、パイプ1の多数の孔14からパイプ1の外側に排出され、また、パイプ1の後端部からも外部に排出される。」と記載され、図9をみると、パイプの後端部から空気が外部に排出される点が矢印によって明記されており、明細書等には、空気がパイプと打ち込みロッドの間の隙間を通してパイプの後端部から出す点が記載されているのは明らかである。
以上のように、訂正事項2-3は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

3 訂正請求のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであって、同法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。


第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項(請求項3は、訂正されていない。)により特定される次のとおりのものである。
なお、A?Jの分節は、審決で付した。

「【請求項1】
A:壁面に貫通した孔が多数形成されたパイプを排水用として地中に打ち込んで埋設する方法であって、
B:中実先細り形状の先部を有する先端ビットが先端部に螺着又は固着された先端ビット付きのパイプの内側に、少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドの全体を前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの先部の内面を打撃することによりパイプを地中に打ち込む方法であり、
C:先端ビットの外径はパイプの外径よりも大きいことを特徴とするパイプ打ち込み方法。
【請求項2】
D:パイプを地中に打ち込んで埋設する方法であって、
E:先端ビットにより先端部が閉じられたパイプの内側に、少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドの全体を前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの内面を打撃することによりパイプを地中に打ち込む方法であり、
F:パイプの壁面には貫通した孔が形成されており、
G:中空状の打ち込みロッドを使用し、該打ち込みロッドで先端ビットを打撃する際に、打ち込みロッドの内側に後側から空気を送り込み、送り込んだ空気を打ち込みロッドの先端部から排出させてパイプの内周面と打ち込みロッドの外周面との間の隙間に通してパイプの後端部から出すことを特徴とするパイプ打ち込み方法。
【請求項3】
H:パイプを地中に打ち込む方法であって、
I:先端部に先端ビットを備えたパイプの内側に打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドを前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの内面を打撃することによりパイプを地中に打ち込む方法であり、
J:パイプの一端部側にはプレス加工によって雄ネジ部が形成されていて他端部側には一端部の雄ネジ部に対応した雌ネジ部がプレス加工によって形成されており、パイプとは別体構成の先端ビットがパイプの雄ネジ部に螺着されていて、その先端ビット付きのパイプを地中に打ち込み、その先端ビット付きのパイプの雌ネジ部に別途のパイプの雄ネジ部を螺着することにより、先端ビット付きのパイプの後側に別途のパイプを継ぎ足すことを特徴とするパイプ打ち込み方法。」


第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人は、特許第6288895号発明の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(審判請求書、審判事件弁駁書、回答書、口頭審理陳述要領書参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第21号証を提出している。

〔無効理由〕
【無効理由1】本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願の日前の他の特許出願であって当該特許出願後に出願公開されたものの願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面である甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
【無効理由2】本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第3号証ないし甲第10号証に記載された発明または周知慣用技術に基いて、同じく、請求項2及び請求項3に係る発明は、甲第3号証ないし甲第6号証、甲第9号証、甲第10号証に記載された発明または周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(審理事項通知書の2、参照。)

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。

甲第1号証:特開2018-66181号公報
甲第2号証:本件特許の特許登録原簿
甲第3号証:特開2007-32169号公報
甲第4号証:特開2005-213879号公報
甲第5号証:特開2004-52437号公報
甲第6号証:特開2012-140821号公報
甲第7号証:特開平6-280244号公報
甲第8号証:特開2015-166519号公報
甲第9号証:特許第3789127号公報
甲第10号証:特許第4727718号公報
甲第11号証:特願2017-170213号の拒絶理由通知書
甲第12号証:特開2019-44513号公報
甲第13号証:特願2017-170213号の意見書
甲第14号証:最高裁判所昭和41年(行ツ)第1号判決文
甲第15号証:最高裁判所昭和41年(行ツ)第46号判決文
甲第16号証:最高裁判所昭和62年(行ツ)第3号判決文
甲第17号証:「テレスコドレーンパイプ」カタログ、日鉄建材株式会社、平成31年1月22日
甲第18号証:特開平10-220153号公報
甲第19号証:特許第5149448号公報
甲第20号証:特願2016-205203号の拒絶理由通知書
甲第21号証:特開2014-77286号公報

3 請求人の具体的な主張
(1)無効理由1
ア 本件発明1と甲1発明とは、発明特定事項Bについて、甲1発明は、パイプの後端部を打設しているのに対し、本件発明1は、パイプの内側に、少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドの全体を前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で中実状の先端ビットの先部の内面を打撃している点で相違している。
しかしながら、斯かる相違点は、課題解決のための具体化手段として寄与するものではなく、設計上の微差に過ぎないものである。
(回答書5頁下から3行?6頁8行)

イ 甲1発明の後端部3aを打撃してもパイプ3が斜めに打ち込まれることはなく、真っ直ぐに進むことができる。
この種のパイプ3において、後端部3aを打撃して地中に打ち込む場合、コンクリートブレーカー等の打設装置で後端部3aが打設されるが、パイプ3の後端部3aと打設装置とはアダプタを介して堅固に固定されるから、パイプ3の後端部3aを打撃しても斜めに打ち込まれることはなく直進性を有する。
(回答書8頁9?19行)

ウ 甲1発明についての排水パイプの施工手順の一例として、アダプタ30を介して接続されたコンクリートブレーカ20と排水パイプ10とを打ち込み架台40の単管パイプ40e、40f上に載置し、コンクリートブレーカ20を駆動させて排水パイプ10を打撃し、これにより排水パイプを容易に真っ直ぐに打ち込むことができる。
(口頭審理陳述要領書8頁下から2行、11頁1?4行)

エ 本件発明1の課題解決のためには発明特定事項Cを具備するのが肝要であり、ロッド2で先端ビット1を打撃するか、パイプ3の後端部を打撃するかは当業者が適宜選択し得る設計事項に過ぎず、発明特定事項Bは、課題解決に寄与するものではない。
(回答書10頁11?16行)

オ 先端ビットを打撃する工法は、当業者にとっては従来から広く知られ用いられている周知慣用技術であり、本件発明1は、斯かる周知慣用技術を転用したに過ぎないものである。
甲第3?第6、18、19号証は、周知慣用技術を例示的に列挙したものである。
先端ビットを打撃しようがパイプ後端を打撃しようが、これは当業者の技術常識乃至周知技術の転換等によって適宜選択される設計的事項であって、根本的な課題解決に寄与するものではない。
(口頭審理陳述要領書7頁1?5行、11頁16?18行)

(2)無効理由2
ア 本件発明1
(ア)甲第3?第6号証には、本件発明1の発明特定事項Bに相当する事項が記載され、発明特定事項Cは、甲第7号証及び甲第8号証に記載され、発明特定事項Aは、甲第9号証及び甲第10号証に記載されている。
本件発明1は、単なる公知技術乃至周知・慣用技術の寄せ集めであって組合せにより格別の効果が生じるものではない。
(審判請求書16頁4?5行、14?18行、22?23行)

(イ)甲第7号証と甲第8号証とは、パイプの打ち込み容易性を向上させる点で、課題に共通性を有しており、甲8発明の蓋45及び押圧棒60に代えて甲第7号証記載の打ち込み素子4及び打設棒14をそれぞれ採用し、甲8発明の第3の管体30の内部に打設棒14を挿入し、打ち込み素子4に打撃力を負荷することにより、排水パイプが地中に打ち込まれる。
甲第19号証及び甲第21号証には、本件発明1の構成Bに相当する事項が開示されている。
甲第7号証と甲第8号証との課題の共通性に鑑みれば、甲第7号証を甲8発明と組み合わせるには十分な動機付けがあり、また、甲第19号証や甲第21号証には構成Bに相当する周知慣用技術が記載されている。したがって、甲8発明に甲第7号証、更には甲第19号証及び甲第21号証で示された周知慣用技術を組み合わせれば本件発明1を容易に想到することができる。
(口頭審理陳述要領書12頁5?末行)

イ 本件発明2
(ア)甲第4号証には本件発明2の発明特定事項Gに相当する記載があり、本件発明2の特定事項D、E、及びFは、甲第3?6更には甲第9、10号証に記載されている。
本件発明2も、単なる公知技術乃至周知・慣用技術の寄せ集めに過ぎず、発明の進歩性を欠くものである。
(審判請求書17頁5?11行)

(イ)本件発明2(請求項2)については、訂正請求の容認により権利範囲が減縮されることから最早争わない。
(口頭審理陳述要領書8頁15?17行)

ウ 本件発明3
(ア)甲第9号証及び甲第10号証には、本件発明3の発明特定事項Jと同一視できるパイプの連結構造及び継手部材の構造がその作用・効果と共に記載され、発明特定事項H、Iは、甲第3?6号証、及び甲第9、10号証に記載されている。
本件発明3も、単なる公知技術乃至周知・慣用技術の寄せ集めに過ぎず、発明の進歩性を欠くものである。
(審判請求書17頁14?22行)

(イ)本件発明3は、甲9発明に甲第5号証、及び甲第19号証や甲第21号証等の周知慣用技術を寄せ集めたに過ぎず、かつパイプ同士の接合方法については甲第9号証に記載された公知技術をそのまま流用しており、パイプ同士を継手部材を介して螺合させるか直接螺合させるかは単なる設計的事項であって格別に創作の困難性を伴うものではない。すなわち、本件発明3は、甲第5号証、周知慣用技術である甲第19号証、甲第21号証、甲第9号証に記載された公知技術に鑑みれば甲9発明に対し創作の困難性を有するものではない。
(口頭審理陳述要領書14頁18?24行)

(ウ)本件発明3は、継手部材を設けていない点で甲9発明を単純化しているが、甲第9号証の段落[0020]、[0035]より、パイプ同士をプレス加工により形成された雄ネジ部と雌ネジ部とで螺合させる技術は、本件特許の特許出願前には公知であったことが示唆されており、継手部材を介して螺合させるか、直接螺合させるかは単なる設計的事項であると考えられる。
(口頭審理陳述要領書14頁13行、13頁18?21行)


第5 被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張する無効理由にはいずれも理由がない旨主張し(審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書参照。)、証拠方法として乙第1号証を提出している。

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。
乙第1号証:特許第6348158号公報

3 被請求人の具体的な主張
(1)無効理由1
ア 請求人は、本件発明1の課題を解決するためには構成Cを備えることで必要十分であって構成Bは課題解決には不要であるとも主張する。しかしながら、本件発明1は、構成Bを備えることによって「パイプを地中にスムーズ且つ真っ直ぐに打ち込んでいくことができる。」という主たる作用効果を奏し、そのうえで更に構成Cを備えることによって「先端ビットがパイプよりも先に地中に進んでいくことで、地中にはパイプよりも大径の孔が開けられていくことになり、パイプをスムーズ且つ速い速度で打ち込んでいくことができる。」という付加的な効果をも奏するのである。
また更に、本件発明1の中実先細り形状の先部を有する先端ビットについても、甲1には記載されていない。そして、先端ビットが中実先細り形状の先部を有することで、打ち込みロッドが先端ビットの先部を強力に打撃することができて、その打撃力が先端ビットの中実先細り形状の先部を介して地中に伝達されることになる。更に、パイプの内側に少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドの全体を前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの先部の内面を打撃する、という点についても、当然ながら甲1には記載されていない。本件発明1の構成Bは、甲3?6には全く記載されていないものである。
(審判事件答弁書6頁15?17行、6頁25行?7頁3行、7頁8?17行)

イ 甲3?6記載の削孔工法や地盤流動化工法は、本件発明1のパイプ打ち込み方法とは全く別異の工法であり、本件発明1の構成Bが甲3?6に記載されていないことは明白である。
(審判事件答弁書17頁下から4?2行)

ウ 甲19では、ロッド単体3aの先端に設けられたコーン4(以下「ロッドコーン」と称する。)と、ケーシング単体2aの先端に設けられたコーン4(以下「ケーシングコーン」と称する。)が登場する。
ケーシングコーンは、中実先細り形状ではなく、構成Bの「中実先細り形状の先端ビット」に相当しない。しかも、ロッド単体2aはケーシングコーンの開口部を前側に突き抜けており、ロッド単体はケーシング単体を打撃せず、ケーシングコーンも打撃しない。
ロッドコーンであれば、ロッド単体2aがそれ自身の先端に設けられたロッドコーンを打撃することはありえないから、やはり本件発明1の構成Bとは全く異なる。
何れにしても、甲19には本件発明1の構成Bに相当するものは全く記載されていない。
(口頭審理陳述要領書3頁17?20行、4頁3?7行、14?16行、19?20行)

(2)無効理由2
ア 本件発明1
(ア)請求人は、本件発明1の構成Cは甲7,8に記載されていると主張するが、甲7では通気材に打設棒を挿入し、打ち込み素子に打設棒が接した状態で打設棒の後端部を打ち込むものであり、これは部材の後端部を打撃するという点で従来の方法と何ら変わないものであり、金槌で釘を打つのと同様に真っ直ぐに打ち込むことができないものである。また、甲8においても管体の後端部を打撃するものであって、これもまた従来の方法と何ら変わりがない。
(審判事件答弁書17頁最下行?18頁6行)

(イ)請求人は、甲19に構成Bが記載されていると主張するが、上述(上記(1)ウ)したとおり、甲19には構成Bは記載されていないし、構成Bは周知慣用技術でもない。
(口頭審理陳述要領書8頁9?11行)

(ウ)甲21では、先行先削した掘削穴に排水パイプを押し込む際においても、インナーロッドの先端に先端コーンを取り付けて、排水パイプには打撃を与えることなく掘削穴に押し込むとされており、本件発明1の構成Bとは異なるものである。
(口頭審理陳述要領書8頁14?17行)


イ 本件発明3
(ア)請求人は、甲9,10には、本件発明3の構成Jと同一視できるパイプの連結構造及び継手部材の構造がその作用・効果と共に記載されていると主張するが、かかる請求人の主張は明らかに失当である。
甲9、10においては、複数のパイプ同士が継手部材を介して連結される構成であって、パイプ同士が直接連結される構成ではない。
先頭のパイプの先端部は尖鋭状に押し潰されて閉塞された閉塞部となっており、パイプとは別体構成の先端ビットを備える構成ではないし、先端ビットが先端部に螺着されているものでもない。
(審判事件答弁書28頁下から4行?29頁5行)

(イ)甲3?6工法は、削孔工法や地盤流動化工法であって、パイプを直接地中に打ち込んでいくパイプ打ち込み方法である本件発明3とは全く異なる工法である。
そして、甲3?6の工法と甲9,10の工法とは、工法として全く別物であって、甲3?6の工法と甲9,10の工法を組み合わせることはあり得ない。
(審判事件答弁書30頁3?8行)

(ウ)甲9の工法と甲5の工法は、全く別物であって、組み合わせることは不可能である。
(口頭審理陳述要領書9頁1?2行)


第6 当審の判断
1 証拠の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は排水パイプに関し、より詳しくは地盤に打設して地下水を集水し、排水すると共に地盤を補強する排水パイプに関する。」

イ 「【背景技術】
【0002】
鉄道、道路、堤防、宅地、擁壁等の盛土や切土の斜面では、大地震や集中豪雨などにより地下水が上昇し、これら盛土や切土に地下水が浸透して地盤強度の低下を招き、地すべりが生じるおそれがある。
・・・
【0005】
すなわち、特許文献1の排水パイプは、図6に示すように、管状部材1010の長手方向に多数の孔102が形成され、そして一端が開放端とされると共に、他端が扁平状に圧潰された閉塞部103を有している。
【0006】
そして、排水パイプを地盤に対しコンクリートブレーカー等で開放端から打設して地中に固着し、これにより地下水が地盤中を上昇してきた場合であっても、地下水を孔102に流入させて集水し、集水された地下水から開放端から外部に排水し、これにより地盤を補強しようとしている。」

ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1では、管状部材101の外周の土と管状部材101との間の摩擦力でもって地盤を締め固め、補強しているものの、管状部材101が土と密着した状態で排水パイプを地盤中に打設されることから、打設時の摩擦抵抗力が大きく、このため長尺の管状部材101を使用するのが困難であった。
【0011】
また、特許文献2も、特許文献1と同様、パイプ本体105が土と密着した状態で排水パイプを地盤中に打設することから、打設時の摩擦抵抗力が大きくなり、このため長尺のパイプ本体105を使用するのが困難であった。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、施工時には長尺であっても円滑に地盤に打設することができ、かつ地盤補強も確保することができる排水パイプを提供することを目的とする。」

エ 「【発明の効果】
【0019】
本発明の排水パイプによれば、両端が開放端とされ長手方向に多数の孔が形成されたパイプ本体と、前記パイプ本体の一方の開放端に連接される先端が閉塞された先端部材とからなり、前記パイプ本体の外径寸法が、前記先端部材の前記パイプ本体との連接部における外形寸法よりも小さく形成されているので、地盤への打設時にパイプ本体の外周と土との間の摩擦抵抗力を軽減することができ、従来に比べ長尺の排水パイプを使用して施工することが可能となる。また、打設後にはパイプ本体の外周に存在する土と土の間の空隙が収縮しながら前記外周周辺に広がってパイプ本体の外周に密着し、これによりパイプ本体と土との間の摩擦抵抗力を確保することができ、地盤を補強することができる。
【0020】
さらに、パイプ本体と先端部材とが挿脱自在とされているので、施工の自由度が広がり、先端部材側の開放端とは反対側の開放端に継手部材を介して前記パイプ本体と同一寸法・形状の別のパイプ本体を接続することにより、長尺の排水パイプを得ることができる。また、寸法や形状の異なる複数の排水パイプを準備する必要もなく、在庫点数の削減を図ることができると共に施工性を向上させることができ、コストダウンを図ることができる。」

オ 「【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づき詳説する。
【0026】
図1は、本発明に係る排水パイプの一実施の形態を示す正面図である。
【0027】
この排水パイプは、所定外径(例えば、40?80mm)を有するパイプ本体1と、該パイプ本体1の一端に連接された先端部材2とから構成されている。
【0028】
具体的には、パイプ本体1は、両端が開放端3a、3bとされた所定長さ(例えば、1.5?2m)の管状に形成されると共に、長手方向に多数の孔4が貫設されている。本実施の形態では、孔4は長穴形状に形成され且つ周方向に千鳥状に列設されている。また、このパイプ本体1は、開放端3a、3bの近傍外周には所定間隔毎に螺旋状に刻設された凹状螺旋部5a、5bが形成されている。
【0029】
図2は、パイプ本体1と先端部材2との連接部近傍を示す拡大断面図である。
【0030】
すなわち、先端部材2は先端が円錐状に形成されたコーン部6と、該コーン部6と一体的に形成されて前記パイプ本体1に内嵌される円筒部7とを有している。
【0031】
そして、パイプ本体1の外径寸法D1が、先端部材2のコーン部6の前記パイプ本体1との連接部における外形寸法D2よりも所定径(例えば、4?5mm)だけ小さく形成されている。
【0032】
また、円筒部7は、図3に示すように、櫛状に形成されてパイプ本体1に内嵌されている。そして、本実施の形態ではパイプ本体1と先端部材2とが挿脱自在に構成されている。
【0033】
このように形成された排水パイプは、地盤への打設時にパイプ本体1の外周と土との間の摩擦抵抗力を軽減することができ、従来に比べ長尺の排水パイプを使用して施工することが可能となる。
【0034】
すなわち、[発明が解決しようとする課題]の項でも記載したように、特許文献1や特許文献2では、排水パイプは土と密着した状態で打設されるため、即時に地盤を締固めて補強するには効果的であるが、排水パイプの外周と土との間には大きな摩擦抵抗力が作用するため、長尺の排水パイプを使用して施工するのが困難であった。
【0035】
しかるに、本発明者の研究結果により、排水パイプは、地盤中への打設時には地盤中の土と外周で点接触している。そして、点接触していた土は、時間の経過と共に土間の空隙が収縮し、変形して外周面全域に広がり、これにより打設後に排水パイプと土との密着性を強化できることが分かった。すなわち、排水パイプの施工後に密着性を強化できることから、施工時には排水パイプの打設性を優先し、密着性を若干弱めて摩擦抵抗力を低減するのが好ましいと考えられる。
【0036】
そこで、本実施の形態では、排水パイプを管状のパイプ本体1と先端部材2とに分割し、パイプ本体1の外径寸法D1を、先端部材2のコーン部6の前記パイプ本体1との連接部における外形寸法D2よりも所定径だけ小さくし、先端部材2の円筒部7をパイプ本体1に内嵌させ、これにより排水パイプの施工時にはパイプ本体1の外周と土と間に空隙を存在させて密着性を弱め、摩擦抵抗力を低減した状態で排水パイプを地盤中に打設できるようにしている。そしてその結果、排水パイプが長尺であっても円滑に打設することができ、かつ、施工後は上述したようにパイプ本体1の外周と土との密着性が強化されることから、土は締め固められ、これにより地盤を補強することができる。
【0037】
尚、排水パイプと地盤との密着性は、上述したように時間の経過と共に強化されるが、パイプ本体1の開放端3aから水を流入させ、孔4から排水させることにより、パイプ本体外周の土が水と馴染んで収縮し、これにより早期に所望の密着性を得ることが可能である。
【0038】
このように本実施の形態によれば、両端が開放端3a、3bとされ長手方向に多数の孔4が形成されたパイプ本体1と、前記パイプ本体1の一端に連接される先端が閉塞された先端部材2とからなり、パイプ本体1の外径寸法D1は、先端部材2のパイプ本体1との連接部における外形寸法D2よりも小さく形成されているので、地盤への打設時にパイプ本体1の外周と土との間の摩擦抵抗力を軽減することができ、従来に比べ長尺の排水パイプを使用して施工することが可能となる。また、打設後はパイプ本体1の外周と土との密着性が強化されることから、土は締め固められ、これにより地盤を補強することができる。
【0039】
また、パイプ本体1と先端部材2とが挿脱自在とされているので、施工の自由度が広がり、先端部材2側の開放端3aとは反対側の開放端3bに継手部材を介して前記パイプ本体と同一寸法・形状の別のパイプ本体を接続することにより、長尺の排水パイプを得ることができる。また、寸法や形状の異なる複数の排水パイプを準備する必要もなく、在庫点数の削減を図ることができると共に施工性を向上させることができ、コストダウンを図ることができる。」

カ 「【0046】
また、本発明の排水パイプの適用範囲も特に限定されることはなく、鉄道、道路、堤防、宅地、擁壁等で造成される盛土や切土の斜面に広く適用することができ、大地震や集中豪雨時の液状化対策としても有用であり、斜面の安定化に寄与するものである。また、挿入・打設方向も上傾斜、下傾斜、水平方向、鉛直方法のいずれにも好適に使用することができる。」

キ 【図1】、【図2】、【図4】は以下のとおり。
【図1】


【図2】


【図4】



ク 上記キの図2をみると、先端部材2は、中空であることが看取できる。

ケ 上記アないしクからみて、甲第1号証には次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認める。
「地盤に打設して地下水を集水し、排水すると共に地盤を補強する排水パイプを地盤に打設する施工方法であって、
排水パイプは、パイプ本体1と、該パイプ本体1の一端に連接された先端部材2とから構成されており、
パイプ本体1は、両端が開放端3a、3bとされた所定長さの管状に形成されると共に、長手方向に多数の孔4が貫設され、開放端3a、3bの近傍外周には所定間隔毎に螺旋状に刻設された凹状螺旋部5a、5bが形成されており、
先端部材2は中空であって、先端が円錐状に形成されたコーン部6と、該コーン部6と一体的に形成されて前記パイプ本体1に内嵌される円筒部7とを有しており、
パイプ本体1の外径寸法D1が、先端部材2のコーン部6の前記パイプ本体1との連接部における外形寸法D2よりも所定径だけ小さく形成され、
円筒部7は、パイプ本体1に内嵌され、パイプ本体1と先端部材2とが挿脱自在に構成されることにより、
地盤への打設時にパイプ本体1の外周と土との間の摩擦抵抗力を軽減することができ、従来に比べ長尺の排水パイプを使用して施工することが可能となる、
排水パイプを地盤に打設する施工方法。」

(2)甲第4号証
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0056】
・・・
〔ドレーンパイプ工法〕
<ガイドパイプの施工>
図1に示すように、ドレーンパイプ工法を施工する際には、予め、地表から地盤Eに、ガイドパイプ58を埋め込む。ガイドパイプ58は、鋼管などからなり、ドレーンパイプ10が挿入可能な内径を有している。ガイドパイプ58の長さは、ドレーンパイプ10よりも短い。
【0057】
・・・
ガイドパイプ58を設置しておくことで、ドレーンパイプ10の埋設作業が行い易くなる。ドレーンパイプ10の方向性が正確になり、ドレーンパイプ10を安定させた状態で能率的に埋設していくことができる。
<ドレーンパイプおよび地盤穿孔装置の貫入>
図1に示すように、先に設置されたガイドパイプ58の内側にドレーンパイプ10および地盤穿孔装置20を挿入配置する。ドレーンパイプ10および地盤穿孔装置20の先端には穿孔ビット30を取り付けておく。・・・
【0058】
ドレーンパイプ10および地盤穿孔装置20あるいは穿孔ビット30の先端が、ガイドパイプ58の下端から地盤Eに押し込まれた状態で、地盤穿孔装置20を作動させる。
加振部70の高周波バイブレータ74が強制振動を発生する。例えば、周波数240Hzの高周波振動を発生させる。高周波バイブレータ74の振動は、加振部70の外周面からドレーンパイプ10に伝わり、ドレーンパイプ10の外周面に当接している地盤Eにも伝わる。加振部70の先端から先端部60および穿孔ビット30にも振動が伝わり、穿孔ビット30の外面から地盤Eにも振動が伝達される。
地盤Eが強制振動をさせられることで、地震による液状化と同様の現象が、穿孔ビット30とドレーンパイプ10の周囲で局部的に発生する。流動化した地盤Eは、ドレーンパイプ10および穿孔ビット30を含む地盤穿孔装置20の自重だけでも容易に動くようになり、穿孔ビット30を先頭にドレーンパイプ10および地盤穿孔装置20が地盤E内に沈下していく。自重による沈下が生じるほどには地盤Eが流動化しなくても、ドレーンパイプ10および地盤穿孔装置20にある程度の押し込み力や打撃力を加えれば、容易に地盤E内に貫入していく。
【0059】
加振部70の作動に加えて、地盤穿孔装置20の噴出口62から地盤E内に空気混合水を噴出させると、地盤Eの流動化がさらに促進される。空気混合水として、例えば、圧力0.7MPaの空気を0.2m^(3)/minと、圧力0.7MPaの水を40kg/minとを混合したものを噴出させる。噴出口62から噴射された空気混合水は、穿孔ビット30の中央空間を通って地盤Eに浸透する。空気混合水は、地盤Eを構成する土砂の粒同士の間に入って流動抵抗を無くしたり大幅に低減したりする。この状態で加振部70による強制振動が加われば、地盤Eは容易に流動化することになる。
ドレーンパイプ10および地盤穿孔装置20に、地表から押し込み力や打撃力を加える代わりに、地盤穿孔装置20の衝撃発生部80で衝撃力を発生させて、ドレーンパイプ10および地盤穿孔装置20の地盤E内への貫入を促進させることができる。」

イ 【図1】及び【図3】は以下のとおり。
【図1】


【図3】


(3)甲第5号証
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、二重管削孔装置に関し、さらに詳細には、被圧水下で使用される削孔装置に関する。」

イ 「【0010】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、この発明による削孔装置をグラウンドアンカー造成のための削孔に適用した形態を示す断面図である。グラウンドアンカー造成工においては土留壁50に止水ボックス51が設置され、この止水ボックス51から削孔装置1により削孔(アンカー孔)が形成される。
【0011】
図2は削孔装置1の詳細を示す軸方向断面図であり、図3は図2のA-A線矢視図である。削孔装置1は、先端にリングビット2を有するケーシング3(ドリルパイプ)と、ケーシング3内に挿入されて掘削水を供給するインナロッド4とを備えている。インナロッド4の先端にはインナビット5が装着されている。このインナビット5は、後述するように、それ自体が直接削孔作用をするものではなく、打撃子(ハンマ)として機能するものである。
【0012】
ケーシング3の先端部内周には可動ビット6が嵌合され、また可動ビット6の後方に環状のストッパ7が設けられている。可動ビット6はストッパ7の前方において軸方向に移動自在である。可動ビット6は、図3に示すように、ケーシング3の内径よりもわずかに小さい円を外接円とする断面六角形のものであり、したがって可動ビット6の外周とケーシング3の内周との間には複数(6つ)のスライム流路8が形成されている。これらのスライム流路8は、図4に示すように、可動ビット6が前進してストッパ7から離間したとき開き(同図(a))、可動ビット6が後退してストッパ7に当接したとき閉じるようになっている(同図(b))。
【0013】
次に上記削孔装置の作用について説明する。ケーシング3の先端部に可動ビット6を装着し、ケーシング3及びインナロッド4の後端を図示しないボーリング機械に連結して、リングビット2の回転及び可動ビット6の打撃により削孔する。すなわち、ケーシング3を介してリングビット2を回転させるとともに、インナロッド4を介してインナビット5に打撃力を与え、可動ビット6を打撃する。また、スライムを排出するための掘削水はインナロッド4を通ってインナビット5から注出され、ケーシング3とインナロッド4との間を通って孔外に排出される。」

ウ 図4は以下のとおり。
【図4】


エ 上記アないしウからみて、甲第5号証には次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているものと認める。
「グラウンドアンカー造成のための削孔(アンカー孔)を形成する、二重管削孔装置である削孔装置1であって、
先端にリングビット2を有するケーシング3(ドリルパイプ)と、ケーシング3内に挿入されて掘削水を供給するインナロッド4とを備え、
インナロッド4の先端には、それ自体が直接削孔作用をするものではなく、打撃子(ハンマ)として機能するインナビット5が装着され、
ケーシング3の先端部内周には可動ビット6が嵌合され、
可動ビット6の後方に環状のストッパ7が設けられ、可動ビット6はストッパ7の前方において軸方向に移動自在であり、
可動ビット6は、ケーシング3の内径よりもわずかに小さい円を外接円とする断面六角形のものであるので、可動ビット6の外周とケーシング3の内周との間には複数(6つ)のスライム流路8が形成され、
これらのスライム流路8は、可動ビット6が前進してストッパ7から離間したとき開き、可動ビット6が後退してストッパ7に当接したとき閉じるようになっており、
ケーシング3の先端部に可動ビット6を装着し、ケーシング3及びインナロッド4の後端をボーリング機械に連結して、リングビット2の回転及び可動ビット6の打撃により削孔するもので、すなわち、ケーシング3を介してリングビット2を回転させるとともに、インナロッド4を介してインナビット5に打撃力を与え、可動ビット6を打撃しており、また、スライムを排出するための掘削水はインナロッド4を通ってインナビット5から注出され、ケーシング3とインナロッド4との間を通って孔外に排出される、
削孔装置1。」

(4)甲第7号証
甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】 本発明は、地下透水通気材およびその施工方法に関する。さらに詳しくは折損、曲がることがなく、手により挿入でき、また打設機、カケヤなどでも折損、曲がることなく土中に打ち込みのできる地下透水通気材、該地下透水通気材を容易にできる施工方法、草木を活性化する、土壌、湿地を活性化し、養分液、肥料液、消毒液、殺虫液、除草液などを給液、通気する地下透水通気材およびその施工方法に関する。」

イ 「【0002】
【従来の技術】 従来から、湖沼や海岸埋め立て地、のり面、等の排水促進を目的とし、パワ-ショベル等の重機を使用し、各種透水材を土中に設置する事が行われている。この透水材材として、合成樹脂や金属等の多孔パイプ等が使用されている。又、ニ-ドルパンチ不織布、或は該多孔パイプや溝切りされた板等に不織布を巻き付けた物等も知られている(特公昭48-35775、特公昭48-78720号公報)。また鑑賞用植物や家庭菜園に使用する繊維を熱融着した園芸用吸水棒も知られている。(特公昭58-15030号)
【0003】 しかし上記多孔パイプ等に不織布を巻き付けた物は、その先端が鋭角な打ち込み素子が装着されていない。従って、ハンマ-型打設機や人間がカケヤ等を使用し土中に打設した場合、土中への打ち込み性が悪く、透水材が折損したり、不織布が剥離するという課題がある。不織布等を使用しない上記合成樹脂製多孔パイプは軟弱地盤への打設が可能であるが、ゴルフ場や遊園地、樹木の根部近傍等、硬い地盤中には、打ち込み性が悪く、透水材の折損、曲げ等が起こるので土中深く打ち込むことができないという課題がある。また園芸用吸水棒にあっては、中空形状でなく、給排水量などが少なく、土中への打ち込み性が悪く、透水材が折損するという課題がある。」

ウ 「【0006】 以下本発明を添付した図面に従って更に詳細に説明する。本発明の地下透水通気材(1)は、多孔性筒状成型体(2)の中空部(16)の一端に打ち込み素子(3)が装着されている(図1)。打ち込み素子(3)の突起(6)と多孔性筒状成型体(2)の中空部(16)とが嵌合したものでもよく、該透水材は土中に打ち込み後、その中空部(16)上部から砕石や土砂等が侵入するのを阻止したり、薬剤投入後該薬剤が蒸発するのを阻止するためのキャツプ(11)を装着していてもよい(図2(a)、図5)。
【0007】 多孔性筒状成型体(2)は、多孔性材料からなる筒状の成型体であり、繊維成型体が好ましく、合成繊維や天然繊維をバインダ-で接着し筒状に成型したもの、熱融着性繊維を加熱し繊維の交点を融着し筒状に成型したもの等、多孔性で種々の形状のものが使用できる。該成型体は、円筒状、中空四角柱状、中空六角柱状であるもの、あるいは中空部が種々の形状である筒状成型体等が使用できる。該多孔性繊維成型体に使用できる繊維は、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の熱可塑性繊維、あるいは、ポリエチレン-ポリプロピレン系複合繊維、ポリエチレン-ポリエステル系複合繊維、ポリアミド-ポリエステル系複合繊維、低融点共重合ポリエステル-ポリエステル系複合繊維等、融点差のある組合せによる熱融着性複合繊維等が例示できる。とりわけ熱融着性複合繊維を使用し、加熱融着し、筒状に成型したものは、硬度が大で且つ透水性がよいので特に好ましい。該繊維は、繊度が約1?3000d/fのものが使用出来る、より好ましくは約4?2000d/fのものである。又該多孔性筒成型体は透水性が要求されるので、空隙率が約60?98%のものが好ましい。
【0008】 本発明の地下透水通気材は、その先端部に、鋭角な打ち込み素子(3)を取付けてある。この打ち込み素子は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属、木材等、硬質な素材からできておりその先端部(4)が鋭角になつている。該先端部の角度(v)は約20?60度の範囲が一般的である。又該打ち込み素子には、上記成型体の中空部(16)に嵌合するための突起(6)があってもよい。突起(6)に数個の溝(9)が削設されているものは、該突起がバネ様の弾性となり、この場合該素子を中空部に強く固着することができる。又該打ち込み素子には後記の打設棒を受け入るための凹部(7)があってもよい。該凹部の底には透水孔(8)が数個穿孔されてもよい(図1(a)、図2(a)、図3(a))。該打ち込み素子の底面側に、打設棒が接し、該打ち込み素子の底面側とは、円錐底面(5)(図3(c))、凹部(7)のある円錐底面(図3(a)、図3(b))であってもよい。又、該突起は凹部が無くてもよい図3(c)。又、該打ち込み素子(3)は、突起の下部に三段状の凹部(7)及び突起の補強部(13)があるもの(図3(e))、四角形で且つ先端がくさび型になっているもの(図3(d))、打ち込み素子に多孔性筒成型体を嵌合することができる嵌入口(10)があるもの(図4(a,b))等、いずれも使用できる。又該打ち込み素子には、突起(6)、透水孔(8)、溝(9)、凹部(7)等のいずれか又はすべてがなくてもよいし、前記突起(6)の凹部が打設棒を受け入るための凹部を形成していてもよい。該打ち込み素子は上記成型体に、嵌合、ねじ止め、融着、突起のねじ込み等の固着手段で強く固着する。とりわけ着脱容易な嵌合、ねじ込み等ができるものが好ましい。
【0009】 本発明の地下透水通気材において、上記打ち込み素子の円錐底面(5)の径(p)が多孔性筒成型体の外径(q)よりも大きい素子(3)を装着したものは、土中へ打設時、成型体の下部が砕石や土に引っかかることがなくスム-ズに打ち込むことができるので特に好ましい。径(p)は径(q)より約0.1mm?100mm大きいものが特に好ましい(図2(a,b))。該素子の上部に小口径部の嵌入口(10)がある場合、該嵌入口の径(s)は径(q)と略同じであれば良い(図4)。
【0010】 本発明の地下透水通気材は、多孔性筒状成型体(2)の一方の端部の中空部(16)に打ち込み素子(3)を装着しているので、直接、土中に垂直に、斜めに、あるいは水平に打ち込むことができる。本発明の地下透水通気材は、その中空部(16)へ打設棒(14)を挿入してもよく、挿入しないで直接土中に施工できる。打設棒(14)を挿入した地下透水通気材は、該打設棒の頭部の打設板(15)を打ち込むことにより、該打設板(15)が多孔性筒成型体の端部を押し込みながらより硬い土中に垂直に、斜めに、あるいは水平に打ち込むことができる。打設棒(14)は、金属、プラスチックパイプ等の硬い素材からできている。該打設棒は、打ち込み時にその衝撃が上記打ち込み素子(3)にかかるような十分な長さがありかつ打設板(15)があるものを用いると上記成型体に直接衝撃が加わることなく挿入できる。打ち込み素子に打設棒を挿入するための凹部(7)があると、地下透水通気材を打ち込む場合、打設棒の長さ(l)がすくなくとも成型体の上端から凹部(7)の底までの長さ(i)があるものを、図3(c)のような突起がある素子の場合、すくなくとも多孔性筒状繊維成型体の長さ(h)があるものを使用する。又、打設板(15)の径は該成型体の外径(q)より大きいものが好ましい。(図1(b))打ち込み後、その上部にキャツプ(11)を装着してもよい。該キャツプは合成樹脂や金属あるいは多孔性筒成型体等の素材が使用され、嵌合するための突起(12)のあるものが好ましい。(図2(a)、図5)
本発明の地下透水通気材は、地下土壌の排水、給水、通気し、農林用、土木工事用に広く用いることができる。農林としては、樹木、野菜などの作物、草花などの土壌、湿地へ、養分液、肥料液、消毒液、殺虫液、除草液などを給液、通気し、活性化することができた。土木工事用としては、えん堤、排水路、道路、崖、建設地盤改良、埋め立て地、のり面、軟弱地盤の排水に広く用いることができた。以下実施例で本発明を説明する。」

エ 「【0014】
【発明の効果】 本発明の地下透水通気材は、多孔性筒状成型体の中空部の一端に打ち込み素子を装着しているので、該多孔性筒状成型体を、曲げ、折損することなく土中に深く打ち込むことができた。また多孔性筒状成型体の中空部の一端に打ち込み素子、他端にキャツプを取付けた地下透水通気材は、さらに中空部上部より砕石や土砂等が侵入するのを阻止でき、薬剤投入したものは該薬剤が蒸発するのを阻止することができた。多孔性筒状成型体の径よりも底面直径の大きい打ち込み素子を装着したものは、土中へ打設時、成型体の下部が砕石や土に引っかかることがなくスム-ズに打ち込むことができた。多孔性筒状成型体の中空部に、打ち込み素子の突起で嵌合したものは、打設中に離れることなく作業性良く行うことができた。透水孔のある打ち込み素子を用いたものは、多孔性筒状成型体の中空部に排水、給水など残ることがなかった。本発明の地下透水通気材を打設棒を用い挿入する施工方法は、打設機、カケヤよる打ち込をしても、打ち込み時その力が直接多孔性筒状成型体にかからず、硬い土中へも、より透水性のよい多孔性筒成型体であっても、曲げ、折損することなく深く土中に施工できた。本発明の地下透水通気材は、多孔性筒状成型体の粗密に関係なく硬い地盤であつても容易に打込み施工することができた。また本発明の透水材は、軟弱地盤での排水など土木工事用として、また排水、給水、施肥、消毒、通気等の農林用として広く用いることができた。また草木の根部近傍に地下透水通気材を打ち込む施工方法は、樹木、草花、野菜などを活性化することができた。」

オ 【図1】、【図4】は以下のとおり。
【図1】


【図4】


カ 上記オの図1及び図4をみると、打ち込み素子(3)が中実であることが看取できる。

キ 上記アないしカからみて、甲第7号証には次の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されているものと認める。
「多孔性筒状成型体(2)の中空部(16)の一端に中実の打ち込み素子(3)が装着されている地下透水通気材(1)の施工方法であって、
多孔性筒状成型体(2)は、合成繊維や天然繊維をバインダ-で接着し筒状に成型したもの、熱融着性繊維を加熱し繊維の交点を融着し筒状に成型したもの等の繊維成形体である、多孔性材料からなる筒状の成型体であり、
打ち込み素子(3)は、硬質な素材からできており、その先端部(4)が鋭角になつており、打設棒を受け入るための凹部(7)があり、
打ち込み素子(3)には、上記成型体(2)の中空部(16)に嵌合するための突起(6)があり、突起(6)に数個の溝(9)が削設され、該突起(6)がバネ様の弾性となり、該素子(3)を中空部に強く固着することができるものであって、また、嵌合、ねじ止め、融着、突起のねじ込み等の固着手段でもよく、
地下透水通気材は、その中空部(16)へ打設棒(14)を挿入してもよく、挿入しないで直接土中に施工でき、
打設棒(14)を挿入した地下透水通気材は、打設棒の頭部の打設板(15)を打ち込むことにより、打設板(15)が多孔性筒成型体の端部を押し込みながらより固い土中に打ち込むことができ、
打設棒(14)を挿入した地下透水通気材は、該打設棒の頭部の打設板(15)を打ち込むことにより、該打設板(15)が多孔性筒成型体の端部を押し込みながらより硬い土中に垂直に、斜めに、あるいは水平に打ち込むことができ、
打設棒は、打ち込み時にその衝撃が打ち込み素子(3)にかかるような十分な長さがありかつ打設板(15)があるものを用いると成型体に直接衝撃が加わることなく挿入でき、
折損、曲がることがなく、手により挿入でき、また打設機、カケヤなどでも折損、曲がることなく土中に打ち込みのできる、
地下透水通気材(1)の施工方法。」

(5)甲第8号証
甲第8号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、自然斜面や盛土、切土、宅地造成地等の土砂部の斜面に打ち込まれ、土中の地下水や浸透水等を排水する上で好適な排水パイプ及びその打ち込み方法に関するものである。

イ 「【0019】
以下、本発明を適用した排水パイプ及びその打ち込み方法の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
本発明を適用した排水パイプ1は、例えば図1に示すように、土砂部5の斜面51に打ち込まれる。土砂部5は、鉄道や道路の施工に伴う盛土や切土、宅地造成地等であるが、このような人工的に形成されるものに限定されること無く、自然に形成された丘陵地、高台等であってもよい。この排水パイプ1は、雨水等の浸透水や上昇した地下水により土砂部5の浸透能力を超えた結果、土砂部5に蓄積された水分を排水するために設けられる。
【0021】
図2は、本発明を適用した排水パイプ1の斜視図であり、図3(a)はその側面図を、更に図3(b)は、その側断面図を示している。
【0022】
排水パイプ1は、第1の管体10と、第2の管体20と、第3の管体30とを備えている。第2の管体20は、第1の管体10内に挿入されて図中突出方向Aに向けて突出自在に構成されている。第3の管体30は、第2の管体20内に挿入されて図中突出方向Aに向けて突出自在に構成されている。
【0023】
第1の管体10は、均一径からなる本管部11と、本管部11からA方向に向けて延長された先端部12とを有している。先端部12は、本管部11からA方向に進むにつれて縮径されている縮径管12aと、縮径管12aを介して縮径された最小径のままA方向に向けて延長された均一径からなる延長管12bとを有している。第1の管体10は、その本管部11の周壁において適宜間隔で水抜き孔9が形成されている。
【0024】
第2の管体20は、均一径からなる本管部21と、本管部21からA方向に向けて延長された先端部22と、本管部21からA方向の反対方向Bに向けて設けられた根本部24とを有している。先端部22は、本管部21からA方向に進むにつれて縮径されている縮径管22aと、縮径管22aを介して縮径された最小径のままA方向に向けて延長された均一径からなる延長管22bとを有している。根本部24は、本管部21からB方向に進むにつれて拡径されている拡径管24aと、拡径管24aを介して拡径された最大径のままB方向に向けて延長された均一径からなる延長管24bとを有している。本管部21の外径は、第1の管体10における先端部12(12a、12b)の内径よりも小径とされている。根本部24の外径は、第1の管体10における先端部12(12a、12b)の内径よりも拡径化されている。第2の管体20は、その本管部21の周壁において適宜間隔で水抜き孔9が形成されている。
【0025】
図4は、この根本部24並びに先端部12の嵌合状態の詳細を示しているが、本実施の形態では、拡径管24aと延長管24bとの連続点Cにおいて、その外径が、既に先端部12を構成する延長管12bの内径、及び縮径管12aの一部よりも大きくなっている。一方、拡径管24aと本管部21との連続点Dでは、その外径が、先端部12を構成する延長管12bの内径よりも小さくなっている。また、延長管24bは、その外径が、既に先端部12を構成する延長管12bの内径並びに及び縮径管12aの一部よりも大きくなっている。因みに延長管24bの外径は、本管部11の内径よりも小さく構成されている。
【0026】
このように、根本部24の外径は、第1の管体10における先端部12(12a、12b)の内径よりも拡径化させる上では、少なくとも根本部24の一部の外径が、先端部12の一部の内径よりも拡径化されていればよい。
【0027】
また、縮径管12aの内壁と、拡径管24aの外壁とは互いに平行とされている。このため、縮径管12aの内壁と、拡径管24aの外壁とをほぼ隙間無く当接することが可能となる。しかしながら、これら縮径管12aの内壁と、拡径管24aの外壁とが互いに非平行とされていてもよい。
【0028】
第3の管体30は、均一径からなる本管部31と、本管部31から方向Bに向けて設けられた根本部34とを有している。根本部34は、本管部31からB方向に進むにつれて拡径されている拡径管34aと、拡径管34aを介して拡径された最大径のままB方向に向けて延長された均一径からなる延長管34bとを有している。本管部31の外径は、第2の管体20における先端部22(22a、22b)の内径よりも小径とされている。根本部34の外径は、第2の管体20における先端部22(22a、22b)の内径よりも拡径化されている。第3の管体30は、その本管部31の周壁において適宜間隔で水抜き孔9が形成されている。なお、根本部34並びに先端部22の嵌合状態の詳細は、上述した図4に示す根本部24並びに先端部12の嵌合状態の詳細と同様であるため、以下での説明は省略する。
【0029】
各管体10、20、30の板厚は、それぞれ1.5?1.8mm程度とされている。特に強度面においてそれほど大きな支持力の負担が求められていないため、かかる板厚程度構成されていればよいが、これに限定されるものではなく、いかなる板厚で構成されていてもよい。
【0030】
ちなみに、第3の管体30の突出方向Aにおける先端には、蓋45を介して閉蓋されている。即ち、第3の管体30の突出方向Aにおける先端は、排水パイプ1としての最先端を構成するものであるから、蓋45を介して閉蓋されることで、当該先端を介して管内部に土砂が流入してしまうのを防止できる。この蓋45は、本管部31の中に挿入することで固定されるようにしてもよい。かかる場合には、図5に示すように、蓋45は、第3の管体30に対して嵌合させるようにしてもよい。蓋45は、管体内部に土砂が流入するのを防止するために設けられるものであることから、管体の打ち込み時において外れてしまうのを防止できる程度に嵌合されていればよい。このため、蓋45は、第3の管体30に対して強固に固定される必要はなく、第3の管体10に対して差し込ませるのみでよい。また、この蓋45は、図5に示すような先端に進むにつれて縮径化された形状とされている場合に限定されるものではなく、先端部を丸め形状や平面で構成したもの等、他のいかなる形状とされていてもよい。
【0031】
またこれ以外には図5(b)に示すように蓋45により第3の管体30先端の開口を外側から被覆するようにして固定するようにしてもよい。また蓋45自体を設ける代替として、第3の管体30の先端を潰す等の処理を施すことで閉塞するようにしてもよい。更に、この蓋45を設ける場合においても、或いは第3の管体30の先端を潰す場合においても、突出方向Aに向けて先鋭化させた形状としてもよいことは勿論である。これにより、先鋭化された先端形状を介して土砂への打ち込み容易性を向上させることができる。
【0032】
上述した構成からなる排水パイプ1によれば、図6に示すように第1の管体10の内部に第2の管体20を収納することができ、また第2の管体20の内部に第3の管体30を収納することができる。これは、第1の管体10の本管部11が第2の管体20の本管部21よりも大きく、また第2の管体20の本管部21が第3の管体30の本管部31よりも大きく構成されているため実現し得るものである。なお、図6に示す例では、このような収納時において、第2の管体20が第1の管体10から突出された状態とされているが、互いに長さ調整を行うことで、第2の管体20が第1の管体10に完全に収納された状態とされていてもよい。
【0033】
このような収納状態とされている排水パイプ1において、第3の管体30、第2の管体20を突出方向Aに向けて押し出すことで、図3に示すような延長状態を構成することが可能となる。第2の管体20が押し出されることで、図4に示すように、第2の管体20における根本部24を構成する拡径管24aが、第1の管体10における先端部12を構成する縮径管12aに当接され、これ以上A方向に向けて押し出せなくなる。つまり、第2の管体20は、挿入される第1の管体10内の先端部12に根本部24を係止させつつ本管部21を第1の管体10から突出自在とされている。
【0034】
同様に第3の管体30が押し出されることで、第3の管体30における根本部34を構成する拡径管34aが、第2の管体20における先端部22を構成する縮径管22aに当接され、これ以上A方向に向けて押し出せなくなる。つまり、第3の管体30は、挿入される第2の管体20内の先端部22に根本部34を係止させつつ本管部31を第2の管体20から突出自在とされている。
【0035】
次に、上述した構成からなる排水パイプ1の打ち込み方法の詳細について説明をする。
【0036】
先ず図7(a)に示すように、第1の管体10の内部に第2の管体20を収納し、第2の管体20の内部に第3の管体30を収納した状態とした上で、これを土砂部5の斜面51に打ち込む。斜面51への打ち込み角度は、水平方向又は当該水平方向よりも上向きとなるように設定されるが、これに限定されるものではなく、水平方向よりも下向きとなるように打ち込まれていてもよい。この段階において土砂と接するのは、第1の管体10の周壁のみであり、打ち込み時においてその土砂と接触している第1の管体10の周壁のみおいて発生する周面摩擦が負荷されることとなる。第2の管体20、第3の管体30は、第1の管体10の内部に収納されており、周壁が土砂と接触していないため、この段階において、周面摩擦は特段負荷されない。
【0037】
この押し込み時において、第1の管体10のB方向に向けた後端10a、第2の管体20のB方向に向けた後端20a、第3の管体30のB方向に向けた後端30aがほぼ同一端を構成するように位置している。かかる状態の下で第1の管体10?第3の管体30の打ち込みは、例えば単管パイプ60を用いて行うようにしてもよい。このとき単管パイプ60の先端に押圧体61を取り付けておくことで、第1の管体10のみならず、第2の管体20、第3の管体30をも同時に押し出すことが可能となる。
【0038】
次に図7(b)に示すように、単管パイプ60を用いて、第2の管体20、第3の管体30を同時に押し出す。このとき、単管パイプ60の先端に取り付ける押圧体61は、第1の管体10の内径よりも狭小化されていることで、第2の管体20、第3の管体30のみを選択的に押し出すことが可能となる。
【0039】
第2の管体20、第3の管体30が単管パイプ60を介して押し出された結果、図8(a)に示すように第2の管体20における根本部24を構成する拡径管24aが、第1の管体10における先端部12を構成する縮径管12aに当接され、これ以上A方向に向けて押し出せなくなる。即ち、第2の管体20は、第1の管体10内の先端部12に根本部24を係止された状態で固定されることとなる。
【0040】
このとき、第2の管体20、第3の管体30を押し出す過程で土砂との間で周面摩擦が負荷されるのは、第2の管体20の周壁のみである。第1の管体10は、この過程において特に押し込み動作が行われないため、第1の管体10の周面において土砂との間で摩擦が生じることは無い。
【0041】
次に図8(b)に示すように、単管パイプ60を用いて、第3の管体30を押し出す。このとき、単管パイプ60の先端に取り付ける押圧体61は、第2の管体20の内径よりも狭小化されていることで、第3の管体30のみを選択的に押し出すことが可能となる。
【0042】
第3の管体30が単管パイプ60を介して押し出された結果、図8(b)に示すように第3の管体30における根本部34を構成する拡径管34aが、第2の管体20における先端部22を構成する縮径管22aに当接され、これ以上A方向に向けて押し出せなくなる。即ち、第3の管体30は、第2の管体20内の先端部22に根本部34を係止された状態で固定されることとなる。
【0043】
このとき、第3の管体30を押し出す過程で土砂との間で周面摩擦が負荷されるのは、この第3の管体30の周壁のみである。第1の管体10及び第2の管体20は、この過程において特に押し込み動作が行われないため、第1の管体10及び第2の管体20の周面において土砂との間で摩擦が生じることは無い。
【0044】
仮に図3に示すように第1の管体10から第2の管体20を突出させ、第2の管体20から第3の管体30を突出させた状態で、第3の管体30から斜面51に打ち込んだ場合、土砂と接触する全ての管体10、20、30について周面摩擦が発生してしまう。これに対して、上述したように本発明を適用した排水パイプ1の打ち込み方法では、第2の管体20及び第3の管体30を収納した第1の管体10を押し出す際には、当該第1の管体10のみに周面摩擦を生じさせる。また、第3の管体30を収納した第2の管体20を押し出す際には、当該第2の管体10のみに周面摩擦を生じさせる。最後に第3の管体30を押し出す際には、当該第3の管体30のみに周面摩擦を生じさせる。
【0045】
即ち本発明によれば、押し出される管体10、20、30のうち最外周に位置する管体10、20、30の何れかのみに周面摩擦を生じさせ、それ以外の管体10、20、30については周面摩擦の発生を防止することができる。これにより、特に管体10、20、30を連結することにより、排水パイプ1の全長を長く構成した場合において、斜面51への打ち込み時において周面摩擦を減少させることができ、ひいては排水パイプの打ち込み容易性を向上させることが可能となる。また、打ち込み時における排水パイプ1に加わる周面摩擦を減少可能な本発明によれば、プレボーリングと呼ばれる、予め打ち込み箇所に削孔機を用いた削孔を行う必要が無くなる。このため、プレボーリングに伴う作業工程の増大による施工が遅れることなく、削孔労力を低減でき、更には施工コストを抑制することが可能となる。
【0046】
また、上述した構成からなる本発明によれば、複数本の管体10、20、30を連結することで排水パイプ1の全長を長く構成できることから、土砂部5から多くの水分を集水することができ、降水量が土砂部の浸透能力を超えてしまう場合においても土砂部5に大量の水分が蓄積されるのを防止でき、ひいては斜面の崩落を防ぐことができる。
【0047】
ちなみに、この管体10、20、30の押圧に使用する単管パイプ60は、その先端に設ける押圧体61を例えば図9に示すように交換自在に構成するようにしてもよい。例えば、径の大きい第1の管体10を押圧する場合には、図9(a)に示すように径の大きい押圧体61を単管パイプ60の先端に設ける。この押圧体61は、単管パイプ60に内接可能な挿入部61aが設けられ、この挿入部61a並びに単管パイプ60に穿設された図示しない孔部に挿通棒62を挿通させることで取り付けられる。径の小さい第3の管体30を押圧する場合には、図9(b)に示すように径の小さい押圧体61を単管パイプ60の先端に設ける。係る場合において、上述した挿通棒62を取り外すことで、押圧体61は自在に交換できる。」

ウ 【図2】、【図5】、【図7】、【図8】は以下のとおり。
【図2】


【図5】


【図7】


【図8】


エ 上記ウの図5をみると、蓋45は中空であることが看取できる。

オ 上記アないしエからみて、甲第8号証には、次の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されているものと認める。
「土砂部5の斜面51に打ち込まれ、雨水等の浸透水や上昇した地下水により土砂部5の浸透能力を超えた結果、土砂部5に蓄積された水分を排水するために設けられる、排水パイプ1の打ち込み方法であって、
排水パイプ1は、第1の管体10と、第1の管体10内に挿入されて突出方向Aに向けて突出自在に構成されている第2の管体20と、第2の管体20内に挿入されて突出方向Aに向けて突出自在に構成されている第3の管体30とを備え、
第1の管体10、第2の管体20、第3の管体30は、その本管部11,21,31の周壁において適宜間隔で水抜き孔9が形成され、
第3の管体30の突出方向Aにおける先端には、中空の蓋45を介して閉鎖されており、
蓋45は、第3の管体30先端の開口を外側から被覆するように管体の打ち込み時において外れてしまうのを防止できる程度に嵌合され、先端に進むにつれて縮径化され突出方向Aに向けて先鋭化させた形状とされており、
排水パイプ1の打ち込みは、
先ず、第1の管体10の内部に第2の管体20を収納し、第2の管体20の内部に第3の管体30を収納した状態とした上で、これを土砂部5の斜面51に打ち込むものであって、先端に押圧体61を取り付けた単管パイプ60を用いて、第1の管体10、第2の管体20、第3の管体30を同時に押し出しており、
次に、単管パイプを用いて、第2のパイプ20、第3のパイプ30を同時に押し出し、
次に、単管パイプを用いて、第3のパイプ30を押し出す、
排水パイプ1の打ち込み方法。」

(6)甲第9号証
甲第9号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は耐震構造に関する。」

イ「【0017】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、宅地等の地盤の液状化現象や斜面・法面の崩落を確実に防止することができ、かつ既存の盛土や自然地盤に対しても大型の施工装置が不要で施工が容易な耐震構造を提供することを目的とする。」

ウ 「【発明の効果】
【0020】
上記耐震構造によれば、長手方向に多数の孔が形成され且つ一端が略尖鋭状に閉塞されてなる閉塞部を有し、他端が開放端とされた中空状の一体形成されてなる管状部材を設け、前記管状部材の開放端近傍であって該管状部材の外周には所定間隔毎に複数の凹状螺旋部が形成されると共に、複数の前記管状部材が、外周に凸状螺旋部が形成された継手部材を介して互いに連結されて長尺管状部材を形成しているので、管状部材や継手部材にネジ切り加工を施すことなく、管状部材の凹状螺旋部を継手部材の凸状螺旋部に螺合させるだけで、複数の前記管状部材同士を簡便かつ容易に接合することができ、したがって管状部材の開放端近傍における肉厚が極端に薄くなることもなく、管状部材の強度が劣化するのを防止することができる。
【0021】
そして、多数の前記長尺管状部材が、所定間隔毎に縦横に地盤中に打設され、前記地盤を形成する砂粒子が締め固められるので、地層自体の嵩密度を高めることができ、したがって地盤を強化することができる。また、前記砂粒子の間隙に存在する間隙水の水圧が急激に上昇した場合は、前記間隙水が前記多数の孔及び前記開放端を介して外部に排水されるので、間隙水圧の上昇により砂粒子の間隙に存在する間隙水が浮き上がってきても、該間隙水は管状部材の孔を介して開放端に案内され、外部に排水される。
【0022】
すなわち、本発明の耐震構造によれば、管状部材の開放端近傍における肉厚が極端に薄くなって管状部材の強度が劣化することもなく、長尺管状部材の地盤への打設による締め固め効果と排水機能により、間隙水圧の上昇に起因する液状化現象を容易且つ効果的に防止することができ、地盤が沈下したり斜面や法面が崩落するのを未然に防止することができる。
【0023】
また、前記管状部材は、剛体からなる管状部材本体の表面に亜鉛-アルミニウム-マグネシウム系めっき皮膜が形成されているので、管状部材には所望の防錆処理が施されており、管状部材が地中に長期間に亙って埋設されていても該管状部材が腐食するのを防止することができ、上述した所期の作用効果を維持することができる。また、管状部材や継手部材にはねじ切り加工が行なわれていないので、凹状螺旋部及び凸状螺旋部にも万遍なくめっき処理を施すことができ、したがって管状部材と継手部材との接合部の防錆性を損なうこともなく、開放端近傍についても耐食性を確保することができる。しかも、管状部材本体が剛体からなるので、土の変形やすべり力に直接抵抗する機能を有し、また、比較的硬い地盤に対しても施工することが可能である。」

エ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳説する。
【0025】
図1は本発明に係る耐震構造の一実施の形態(第1の実施の形態)を示す概略斜視図であって、盛土又は自然地盤(以下、単に「地盤」という。)1中に多数の排水パイプ(長尺管状部材)2…が所定間隔毎に埋設され、かつ地盤1上には家屋3が建造されている。
【0026】
図2は排水パイプ2の外観を示した図であって、図2(a)は正面図、図2(b)は図2(a)のX-X矢視図である。
【0027】
排水パイプ2は、この図2に示すように、長手方向に多数の孔4が貫設されている。本実施の形態では、前記孔4は長穴形状に形成され且つ周方向に対しては略千鳥状に列設されている。さらに、該長尺排水パイプ2は、一端が平面状に圧潰されて略尖鋭状に閉塞されてなる閉塞部5を有している。
【0028】
また、該排水パイプ2は、図3に示すように、鉄等の剛体からなるパイプ本体(管状部材本体)2aの表面に亜鉛-アルミニウム-マグネシウム(以下、「Zn-Al-Mg」と記す。)からなるめっき皮膜2bが形成され、これにより防錆処理が施されている。すなわち、排水パイプ2は強力な揺れやすべり力に抗することが可能な鉄等の剛体で形成する必要があるが、鉄等は防錆性に劣るため、表面にめっき皮膜を形成して防錆処理を施すのが望ましい。そして、この種の防錆処理としては、パイプ本体2aの表面に亜鉛めっきを施すことが考えられるが、前記パイプ本体2aに亜鉛めっきを施すと、地盤1への圧入時における排水パイプ2と地盤1との摩擦によってめっき皮膜が剥離し、このため排水パイプ2は防錆機能を奏さなくなってしまう。
【0029】
そこで、本実施の形態では、緻密なめっき皮膜を形成することが可能なZn-Al-Mgからなるめっき皮膜2bをパイプ本体2aの表面に形成し、これにより防錆性を確保し、耐食性の向上を図っている。すなわち、鉄等の剛体からなるパイプ本体2aをZn-Al-Mg系めっき液で覆うと、MgとAlの作用によって緻密で付着性の強い二層構造のZn-Al-Mg系めっき皮膜が素材表面に形成され、さらに孔4の内部その他のパイプ本体2aの露出面を被覆する。そして、Zn-Al-Mg系のめっき皮膜2bは緻密で付着性が強いことから、排水パイプ2を地盤1中に圧入しても該めっき皮膜2bはパイプ本体2aから剥離し難く、耐食性や耐疵付性が向上し、これにより防錆性を確保することができる。
【0030】
さらに、本実施の形態では、排水パイプ2は、一体形成された排水パイプ同士が継手部材を介して連結されてなる。
【0031】
図4(a)は、排水パイプ10の連結部近傍の正面図を示し、図4(b)は図4(a)のZ-Z矢視図である。
【0032】
すなわち、排水パイプ10は、この図4に示すように、開放端11の近傍であって外周に所定間隔毎に複数の凹状螺旋部12がプレス加工により刻設されている。
【0033】
また、図5は継手部材の正面図であって、該継手部材13は排水パイプ10に嵌合可能となるように管状に形成されると共に、その外周には凸状螺旋部14がプレス加工により形成されている。
【0034】
そして、このように構成された排水パイプ10及び継手部材13においては、継手部材13の凸状螺旋部14を一方の排水パイプ10の凹状螺旋部12に螺合させて前記一方の排水パイプ10を継手部材13に外嵌させた後、他方の排水パイプ2の凹状螺旋部12と継手部材13の凸状螺旋部14とを螺合させて前記他方の排水パイプ10を継手部材13に外嵌させ、これにより長尺の排水パイプ(2(当審注:「(2」は「2」の誤記と認める。)を得ることができる。
【0035】
このように上記実施の形態では、排水パイプ10や継手部材13にネジ切り加工を施すことなく、プレス加工により凹状螺旋部12及び凸状螺旋部14を形成し、該凹状螺旋部12及び凸状螺旋部14を介して排水パイプ10同士を接続しているので、排水パイプ10は開放端11近傍で肉厚が極端に薄くなることもなく、排水パイプ2の強度が劣化するのを防止することができる。
【0036】
また、ねじ切り加工を行っていないので凹状螺旋部12及び凸状螺旋部14にも万遍なくめっき処理を施すことができ、したがって排水パイプ2と継手部材13との接合部の防錆性を損なうこともなく、開放端11近傍についても耐食性を確保することができる。
【0037】
図6は本発明の耐震工法の概略断面図である。尚、図6では説明の簡略化のために、一体形成された一本の排水パイプ10を使用した場合を示しているが、排水パイプ10同士を継手部材13を介して接続し、長尺の排水パイプ2を使用した場合も同様である。
【0038】
まず、図6(a)に示すように、排水パイプ10の閉塞部5を地盤1の表面に当接させた後、排水パイプ10の開放端6にコンクリートブレーカー等の打設装置7を当接させ、該打設装置7を加振しながら排水パイプ2を矢印A方向に押圧する。すると、排水パイプ10は地盤1中に圧入され、図6(b)に示すように、土砂が矢印B方向に圧搾されると共に地盤1の表面に対し鉛直方向に埋設されることとなり、これにより排水パイプ10の周辺の地盤1は締め固められて地盤強化がなされる。
【0039】
このように排水パイプ10が地盤1中に打設された耐震構造では、排水パイプ2によって地盤1が締め固められているため、排水パイプ10周辺の地盤1は嵩密度が高められ、その結果地盤1が補強され耐震性が向上する。そして、このように地盤1が強化され且つ排水パイプ10には多数の孔4が貫設されているので、地震時や豪雨等で地下水位が急激に上昇し、過剰間隙水圧が発生しても、地中から浮き上がってきた水は、図7に示すように、孔4を介して排水パイプ10の開放端6から矢印C方向に効率よく排水され、これにより地盤1上の家屋3が沈下したり、傾倒するのを防止することができる。」

オ 【図2】、【図4】?【図6】は、以下のとおり。
【図2】


【図4】


【図5】


【図6】


カ 上記アないしオからみて、甲第9号証には次の発明(以下「甲9発明」という。)が記載されているものと認める。
「排水パイプ10同士を継手部材13を介して接続した、長尺の排水パイプ2を使用し、盛土又は自然地盤1中に多数の該排水パイプ2を所定間隔毎に埋設する、耐震工法であって、
排水パイプ2は、鉄等の剛体からなり、一端が平面状に圧潰されて略尖鋭状に閉塞されてなる閉塞部5を有し、長手方向に多数の孔4が貫設され、前記孔4は長穴形状に形成され且つ周方向に対しては略千鳥状に列設されており、
排水パイプ10は、開放端11の近傍であって外周に所定間隔毎に複数の凹状螺旋部12がプレス加工により刻設され、該継手部材13は排水パイプ10に嵌合可能となるように管状に形成されると共に、その外周には凸状螺旋部14がプレス加工により形成されており、
継手部材13の凸状螺旋部14を一方の排水パイプ10の凹状螺旋部12に螺合させて前記一方の排水パイプ10を継手部材13に外嵌させた後、他方の排水パイプ2の凹状螺旋部12と継手部材13の凸状螺旋部14とを螺合させて前記他方の排水パイプ10を継手部材13に外嵌させて、長尺の排水パイプ2を得ており、
排水パイプ10の閉塞部5を地盤1の表面に当接させた後、排水パイプ10の開放端6にコンクリートブレーカー等の打設装置7を当接させ、該打設装置7を加振しながら排水パイプ2を押圧すると、排水パイプ10は地盤1中に圧入され、地盤1の表面に対し鉛直方向に埋設されることで、
地盤を形成する砂粒子が締め固められるので、地層自体の嵩密度を高めることができ、また、前記砂粒子の間隙に存在する間隙水の水圧が急激に上昇した場合は、前記間隙水が前記多数の孔及び前記開放端を介して外部に排水される、
耐震工法。」

(7)甲第19号証
甲第19号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
実施形態の工法は、図1(a)のように、地震等により発生する水(過剰間隙水圧)を消散帯1に排出させるためのドレーンパイプ6を地盤に埋設する工法である。
図1(b)のように、地盤にドレーンパイプ6を埋設していない場合には、地盤が地震等により発生した水で液状化し、マンホールMの浮き上がり、自動車Cが通行する道路Rの路面の陥没、家屋Hの沈下などを招いてしまうため、実施形態の工法が必要となる。
【0023】
図2(a)?(j)のように、実施形態の埋設方法は複数の工程を経る。
まず図2(a)のように、地盤内の地表近くに、地震等により発生した水(過剰間隙水圧)を消散させるための消散帯1を設置する。
この消散帯1は、従来と同様に砕石を敷き詰める等の方法により作製される。
【0024】
ついで図2(b)のように、地盤内に、消散帯1を貫通するようにして管状のケーシング単体2aと、ケーシング単体2a内に挿入されるロッド単体3aを進入させる。
またケーシング単体2aおよびロッド単体3aの先端には、図3(a)のように、コーン4が取り付けられている。
このコーン4は、地盤に圧入することが可能なものであるが、ビットのように掘進することはできないものである。
【0025】
ロッド単体3aには、図示省略の振動機構が付属しており、強制振動を付与することが可能となっている。
またロッド単体3aには、図示省略の打撃機構も付属しており、後端から先端へと向う軸方向への衝撃力を付与することが可能となっている。
【0026】
ケーシング単体2aおよびロッド単体3aは、それぞれ鋼等の比較的強度の高い素材からなり、その長さ寸法がほぼ等しく形成されている。
ケーシング単体2aおよびロッド単体3aは、他のケーシング単体2aおよびロッド単体3aと軸方向に連結したり、その連結した状態から取り外したりすることが、公知の機構により自在にできるようになっている。
図3(a)では、そのような機構の一例として、ロッド単体3aの端部に形成されたねじ部3bによるねじ結合を示している。
このようにして、ケーシング単体2aおよびロッド単体3aが軸方向に順次連結されたものが、それぞれケーシング2およびロッド3を構成する。
また、ケーシング2、ロッド3、ロッド3に付属する振動機構および打撃機構、ならびにコーン4が地盤埋設機を構成する。
【0027】
ケーシング単体2aおよびロッド単体3aを地盤内に進入させる際には、まずコーン4を地盤に接触させた状態でロッド単体3aを振動機構により強制振動させる。
この振動は、コーン4やケーシング単体2aを介して地盤に伝達し、コーン4やケーシング単体2aの周囲の地盤はその振動により強度を失って流動化する。
これと同時に、ロッド単体3aに打撃機構により先端へと向う衝撃力を繰り返し与える。これにより流動化された地盤をコーン4が押し広げてゆき、コーン4に後続するロッド単体3aおよびケーシング単体2aも随伴して地盤内に進入してゆく。
【0028】
ここでコーン4は単に地盤を押し広げるに過ぎず、地盤を掘削等するものではないため、この進入作業時に排土はほとんど生じないようになっている。
また、ケーシング単体2aの内部にはロッド単体3aが挿入されているため、ケーシング単体2a内に土砂等はほとんど流入しないようになっている。
【0029】
ケーシング単体2aおよびロッド単体3aがほぼその長さ分だけ地盤に侵入すると、その後部に別のケーシング単体2aおよびロッド単体3aをそれぞれ連結する。
そして先ほどと同様に、振動と衝撃力を随時付与することでコーン4が地盤のさらに深い箇所を押し広げて、後続の連結されたケーシング単体2aおよび連結されたロッド単体3aが地盤内へと進入してゆく。
図2(c)のように、地盤内への進入深さに応じて、ケーシング単体2aおよびロッド単体3aを順次連結してゆき、振動と衝撃力の付与を繰り返すことで、ケーシング2およびロッド3の地盤内への進入にともなう埋設作業が完了する。
【0030】
図2(d)のように、ケーシング2およびロッド3の地盤内への進入作業が完了すると、つぎにケーシング2の内部に、ホース5等の公知の手段を適宜用いて水を投入する。
この注水作業は、ケーシング2内の空間が、地表近くまで水で満たされるようにおこなわれる。
こうしてケーシング2内の空間全体を水で満たすことにより、ケーシング2の底部(先端)から被圧水や土砂が流入することが防止されるようになっている。
【0031】
注水作業が完了すると、つぎに図2(e)のように、ケーシング2内からロッド3を引き抜いて地盤の外へと取り出す。ロッド3の先端に取り付けられたコーン4も、ロッド3に随伴して同時に取り出される。
この引き抜き作業の際には、ロッド3全体から地表に現れたロッド単体3aを順次取り外してゆくことで、作業の円滑化が図られる。
【0032】
ロッド3の引き抜き作業が完了すると、つぎに図2(f)のように、水が満たされたケーシング2内の空間にドレーンパイプ6を挿入してゆく。
ここで、ドレーンパイプ6としては、その周面(フィルタ)が合成樹脂発泡体や不織布などで構成されている公知のものが用いられており、その後端は図示省略のキャップが取り付けられて栓がなされている。
またドレーンパイプ6の先端には、図3(b)のように、掘進可能なビット7が取り付けられている。
そのため、ケーシング2内に土砂等がわずかに流入している場合でも、ビット7の掘進によりドレーンパイプ6の挿入がスムーズにおこなわれるようになっている。
このドレーンパイプ6の挿入作業時には、ドレーンパイプ6の周面と地盤との間がケーシング2により隔てられていることになる。
そのため、ドレーンパイプ6の周面に土砂が付着して目詰まりを起こしたり、その周面が地盤に接触することで、摩擦抵抗により埋設深さが制限されたり、また同じく摩擦抵抗により作業に大きな力を要したりすることが防止されている。
【0033】
図2(g)のように、ドレーンパイプ6の挿入作業が完了すると、ビット7が取り付けられたその先端がケーシング2の先端と合致し、キャップが取り付けられたその後端が消散帯1の内部に位置することになる。
【0034】
つぎに図2(h)および(i)のように、ドレーンパイプ6を残してケーシング2のみを地盤から引き抜く。
この引き抜き作業の際には、図2(i)のように、ケーシング2全体から地表に現れたケーシング単体2aを順次取り外してゆくことで、作業の円滑化が図られる。
ケーシング2を引き抜いてゆくと、ドレーンパイプ6が地盤内において露出するが、ドレーンパイプ6と地盤は直接接触することはない。その間に、ケーシング2内に満たされていた水により形成される水の層が介在しているからである。
したがって、ケーシング2を引き抜いた場合でも、ドレーンパイプ6の周面に土砂が入り込むなどして目詰まりが発生することが防止される。
【0035】
ケーシング2をすべて地盤から引き抜くことで作業が終了し、図2(j)のようにドレーンパイプ6が地盤に埋設される。同図のように、消散帯1より上方にケーシング2等の進入時に微少な孔が形成されている場合には、その孔を埋め戻しておく。
ドレーンパイプ6は以上のようにして地盤に埋設され、地震等により地盤内に水(過剰間隙水圧)が発生した場合には、その水はドレーンパイプ6を通じて地表近くの消散帯1にまで導かれ、消散されるため、地盤の液状化が防止される。」

イ 【図2】及び【図3】は以下のとおり。
【図2】


【図3】



(8)甲第21号証
甲第21号証には、次の事項が記載されている。
ア 「【発明の効果】
【0014】
本発明に係るパイプ打ち込み装置によれば、掘削穴を穿設する掘削ロッドに回転及び打撃を伝達するための第一のシャンクロッドと排水パイプに打撃のみを伝達する第二のシャンクロッドとを掘削ヘッドに対して付け替え可能に構成し、第二のシャンクロッドを用いて排水パイプの押し込みを行うようにしたので、排水パイプの押し込みを同一の掘削ヘッドによって施工することができ、作業効率が上るという効果がある。
【0015】
また、本発明に係るパイプ打ち込み方法によれば、全工程を先行先掘りと排水パイプの押し込みとに分けたことにより、対象地盤が硬質であったり礫等を含んだ地盤であったりした場合でも排水パイプの押し込みが確実に行えるという効果がある。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るパイプ打ち込み装置及びパイプ打ち込み方法の好ましい一実施形態について図面を参照しつつ説明する。はじめにパイプ打ち込み装置の概要について説明する。
【0018】
[先堀り時のパイプ打ち込み装置の構成]
図1は本発明に係るパイプ打ち込み装置の先堀り時の構成を示す一実施形態の側面図である。図1に示されたパイプ打ち込み装置1は、概略として、モータや内燃機関を動力源にして圧縮空気を作り出すエアコンプレッサ(以下、単に「コンプレッサ」という)10と、コンプレッサ10からの圧縮空気を用いて前後方向の往復動及び回転動を発生させる箱型の掘削ヘッド11と、この掘削ヘッド11の駆動端に一端が取り付けられて掘削ヘッド11の柄部となる第一のシャンクロッド12と、この第一のシャンクロッド12の他端に設けられたエアスイベル部13と、このエアスイベル部13の端部に取り付けられた円筒形状の掘削ロッド14と、掘削ロッド14の先端に取り付けられて掘削を行う掘削ビット15を備えて構成されている。尚、掘削ヘッド11には、後述するスライドブラケット47の両側に取り付けるために用いられる固定板110,110が設けられている。」

ウ 「【0023】
第一のシャンクロッド12は、掘削ヘッド11において発生させた打撃力及び回転力を掘削ロッド14を介して掘削ビット15に伝達する部材である。図3(a)に示すように、第一のシャンクロッド12は連結部19を介してエアスイベル部13が連設されている。そして、掘削ロッド14が取り付けられる第一のシャンクロッド12は多角柱(本実施形態では六角柱)形状に形成されており、これによって掘削ヘッド11で発生させた回転力及び打撃力が第一のシャンクロッドから掘削ロッド14を介して掘削ビット15へ伝達され、排水パイプ21を挿入するための掘削穴(=排水パイプ挿入穴)32を盛土又は地山(以下、単に「地山30」という。)に穿設することができる。さらに、掘削ロッド14の内部は空気が流通できるようになっており、エアスイベル部13を介して導入された空気が掘削ロッド14の先端側から噴射できるようになっている。
【0024】
また、コンプレッサ10と掘削ヘッド11とはエアホース16によって接続されており、このエアホース16を介して圧縮空気がコンプレッサ10から掘削ヘッド11へ供給されることによって掘削ヘッド11が動作するようになっている。この掘削ヘッド11の動作は第一のシャンクロッド12から掘削ロッド14を介して回転及び打撃が掘削ビット15へ伝達されて排水パイプ21を挿入するための掘削穴32が地山30に穿設される。そして、掘削ヘッド11へ供給された圧縮空気を排気する排気口とエアスイベル13とはエアホース18が接続されており、掘削ヘッド11を動作させた後の排気エアをエアスイベル部13へ供給するように構成されている。
【0025】
掘削ロッド14の内部にはエアスイベル部13へ供給された排気エアを掘削ビット15まで案内する中空状の気道が設けられており、掘削ヘッド11の排気エアは掘削ビット15の先端から噴射するように形成されている。掘削ビット15の先端側から噴射された排気エアは掘削ロッド14の押し込みによって発生した掘削スライムを掘削穴32と掘削ロッド14の外側面との隙間から排出させる。これにより、排水パイプ22の挿入を容易に行うことが可能となる。尚、エアスイベル部13とコンプレッサ10との間にもエアホース17を接続することにより排気エアの圧力が小さい場合等に掘削ヘッド11からの排気エアとコンプレッサ10からの圧縮空気とをエアスイベル部13で混合することにより掘削ビット15の先端側から噴出させるエアの圧力を高めて掘削穴32の内部に存在する掘削スライムをより排出させ易くすることもできる。」

エ 「【0026】
[排水パイプ打ち込み時のパイプ打ち込み装置1の構成]
次に、図2を参照しながらパイプ打ち込み装置1の排水パイプ打ち込み時の構成について説明する。図2は本発明に係るパイプ打ち込み装置の排水パイプ打ち込み時の一実施形態の側面図である。この状態におけるパイプ打ち込み装置1は、図3(a)に示す第一のシャンクロッド12に代えて図3(b)に示すような第二のシャンクロッド20が掘削ヘッド11に取り付けられていると共に、図1に示されたエアホース17及び排気エアホース18を取り外されて構成されている。そして、第二のシャンクロッド20には内部にインナーロッド21を収容した状態の排水パイプ22が取り付けられ、排水パイプ22の先端には円錐形状の先端コーン23が取り付けられている。この場合、排気エアホース18の取付口11aが掘削ヘッド11の排気口となる。尚、排水パイプ22は金属製又は塩化ビニールやポリエチレン等の合成樹脂製のものが用いられる。
【0027】
インナーロッド21の断面は、図2に示すように、排水パイプ22の内径より小さな外径を有しており、排水パイプ22は第二のシャンクロッド20を介してインナーロッド21に付与される打撃力および推進力の影響を直接受けることなく地中へ押し込むことができる。尚、多角形状とされた第一のシャンクロッド12と異なり第二のシャンクロッド20の断面は円形状とされているので掘削ヘッド11からは打撃力のみが付与され、回転力は付与されない。また、先端コーン23の外径は排水パイプ22の外径よりも大きく形成されており、排水パイプ22の掘削穴32への挿入を容易にしている。」

オ 「【0028】
[先行先掘り工程]
次に、パイプ打ち込み装置1を用いたパイプ打ち込み方法について説明する。図4は本発明に係るパイプ打ち込み方法の一実施形態を示すフローチャートである。このパイプ打ち込み方法は、先行先掘り工程と、排水パイプの押し込み工程の二工程からなる。まず、作業者は図5(a),(b)に示すように掘削ヘッド11を掘削ヘッド駆動装置2に取り付ける。尚、作業スペース等を確保できない場合には掘削ヘッド駆動装置2を用いない。さらに、図1に示すように掘削ヘッド11に第一のシャンクロッド12を取り付け、さらに第一のシャンクロッド12に先端部に掘削ビット15を取り付けた掘削ロッド14を取り付ける。また、排気エアホース18をエアスイベル部13と掘削ヘッド11の取付口11aとの間に取り付ける。さらにコンプレッサ10と掘削ヘッド11との間にエアホース16を取り付ける(S1)。
【0029】
次に、作業者はコンプレッサ10を稼動させる。すると、コンプレッサ10からエアホース16を介して圧縮空気が掘削ヘッド11へ送られて掘削ヘッド11の動作が開始される。掘削ヘッド11の動作によって発生させた回転力及び打撃力は第一のシャンクロッドから掘削ロッド14を介して掘削ビット15へ伝達されると共に、排気エアホース18を介して掘削ヘッド11の排気エアがエアスイベル部13に送られ、掘削ロッド14内部を介して掘削ビット15の先端から噴射される。
【0030】
そして、作業者は掘削ヘッド11或いは(及び)掘削ヘッド11に取り付けられた掘削ヘッド駆動装置2及び掘削ヘッド11を掘削場所へ移動(掘削ヘッド駆動装置2を取り付けない場合は掘削ヘッド11を移動)させた後、さらに地山30の掘削穴32を形成したい部位に掘削ビット15を押し当て、掘削ヘッド駆動装置2を稼動させ、ギヤ装置52及び掘削ヘッド11を前進(図5(a)のB方向)させる。尚、掘削ヘッド駆動装置2を取り付けない場合は作業員の人力で掘削ヘッド11を前進させて穿設(掘削)を開始(即ち、「先行先掘り」の開始)する(S2)。また、掘削ヘッド駆動装置2を取り付けていない場合には、掘削ヘッド11を持って地山30の掘削穴32を形成したい部位に掘削ビット15を押し当てて穿設(掘削)を開始する。
【0031】
この穿設は掘削ヘッド11から回転運動及び往復運動が第一のシャンクロッド12から掘削ロッド14を介して掘削ビット15に伝達されることにより進行する。また、掘削ビット15の先端から噴射された排気エアは掘削ロッド14外側面と掘削穴32のない壁面との間に形成された隙間31から矢印Aの方向へ排気され、最終的には地山30の外(大気中)へ排出される。このとき、掘削ビット15による穿設によって発生した掘削スライム(slime:掘屑)33は掘削ビット15から噴射された排気エアによって隙間31へ押し出され、排気エアと一緒に掘削穴32の外へ排出される。そして、作業者はパイプ打ち込み装置1による穿設が所望の深さまで進んだ段階で「先行先掘り」を終了(S3)し、コンプレッサ10を停止させて掘削ロッド14及び掘削ビット15を掘削穴32から抜きとる。この操作は掘削ヘッド駆動装置2を稼動させてギヤ装置52及び掘削ヘッド11を後退(図5(a)のC方向)させ、また、掘削ヘッド駆動装置2を取り付けていない場合には掘削ヘッド11を作業者の人力によって後退させることにより実施する。尚、排気エアの圧力が弱く或いは掘削スライム33の量が多い等の場合にはコンプレッサ10とエアスイベル部13との間にさらにエアホース17を取り付け、掘削ヘッド11の排気エアとコンプレッサ10からの圧縮空気とを混合して掘削ロッド14へ導入するようにすることもできる。」

カ 「【0032】
[排水パイプの押し込み工程]
次に、排水パイプの押し込み工程を実施する。まず、図1の状態にあるパイプ打ち込み装置1の掘削ヘッド11から第一のシャンクロッド12及びエアホース18を取り外す。そして、第一のシャンクロッド12に代えて第二のシャンクロッド20を掘削ヘッド11に取り付け、さらに第二のシャンクロッド20にインナーロッド21を内装した状態の排水パイプ22を取り付ける(S4)。そして、インナーロッド21の先端に先端コーン23を取り付ける。
【0033】
そして、作業者は掘削ヘッド駆動装置2または掘削ヘッド11を地山30の掘削穴32へ移動し、さらにコンプレッサ10を稼動させることにより、コンプレッサ10からエアホース16を介して圧縮空気が掘削ヘッド11に送られて掘削ヘッド11が第二のシャンクロッド20を介して打撃力がインナーロッド21へ伝達される(S5)。これにより、排水パイプ22には直接打撃力が伝わることなく排水パイプ22は掘削穴32に挿入される。排水パイプ22が図2に示すように掘削穴32に押し込まれた時点で排水パイプの押し込み作業が終了する(S6)。」

キ 「【0034】
[実施形態の効果]
本実施形態に係るパイプ打ち込み装置によれば、穿設のための回転および打撃を伝達するための第一のシャンクロッド12と打撃のみを伝達する第二のシャンクロッド20とを掘削ヘッド11に対して付け替えができるような構成とし、第一のシャンクロッド12、エアスイベル部13、掘削ロッド14及び掘削ビット15によって先行先掘りを行い、その後に第二のシャンクロッド20、インナーロッド21及び先端コーン23によって排水パイプ22の押し込みを行うようにしたので、排水パイプ22の押し込みを同一の掘削ヘッド11によって確実に施工できるという効果がある。
【0035】
・・・
【0036】
また、本実施形態に係るパイプ打ち込み装置によれば、排水パイプ22の外径よりも大径の先端コーン23を設けたことにより、排水パイプ22に加わる力(地山30の土圧による周辺摩擦)はかなり軽減された状態となるため、鋼管に比べて強度に劣る塩化ビニール管やポリエチレン管等の合成樹脂管を排水パイプ22に用いた場合でも、押し込みが可能になるという効果がある。
【0037】
・・・
【0039】
また、本実施形態に係るパイプ打ち込み方法によれば、第二のシャンクロッド20からの打撃力をインナーロッド21に付与することで排水パイプ22には打撃力を与えることなく掘削穴32に挿入することができるので排水パイプ22の押し込みを確実に行えるという効果がある。」

ク 【図1】及び【図2】は以下のとおり。
【図1】


【図2】


2 無効理由1について
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と先願発明を対比する。
(ア)先願発明の、「貫設され」た「孔4」、「排水パイプ」、「先端部材2」は、その構成及び機能からみて、それぞれ本件発明1の「壁面に貫通した孔」、「パイプ」、「先端ビット」に相当する。

(イ)先願発明の「所定長さに管状に形成されると共に、長手方向に多数の孔4が貫設され」た「パイプ本体1」から構成された「排水パイプ」は、本件発明1の「壁面に貫通した孔が多数形成されたパイプ」に相当する。

(ウ)先願発明の「排水パイプを地盤に打設する施工方法」は、本件発明1の「パイプを地中に打ち込む方法」、「パイプ打ち込み方法」に相当する。
また、先願発明の排水パイプは、「地盤に打設して地下水を集水し、排水すると共に地盤を補強する」ものであるから、打設されて、そのまま埋設されるものであることは自明である。
よって、先願発明の「地盤に打設地下水を集水し、排水すると共に地盤を補強する」ものである「排水パイプを地盤に打設する施工方法」は、本件発明1の「パイプを排水用として地中に打ち込んで埋設する方法」に相当する。

(エ)先願発明の「中空であって、先端が円錐状に形成されたコーン部6」を有する「先端部材2」と、本件発明1の「中実先細り形状の先部を有する先端ビット」とは、「先細り形状の先部を有する先端ビット」で共通する。
先願発明の「該パイプ本体1の一端に連接された先端部材2とから構成され」た「排水パイプ」と、本件発明1の「先端ビットが先端部に螺着又は固着された先端ビット付きのパイプ」とは、「先端ビットが先端部に連接された先端ビット付きのパイプ」で共通する。
なお、先願発明において、「パイプ本体1」の「開放端3a、3bの近傍外周には所定間隔毎に螺旋状に刻設された凹状螺旋部5a、5bが形成されて」いるが、先端部材2には、該凹状螺旋部5a、5bに対応する構造が特定されていないことから、パイプ本体1と先端部材2とは、螺着されると解することはできない。また、「パイプ本体1と先端部材2とが挿脱自在に構成されている」ことからみて、パイプ本体1と先端部材2とが固く固定されてる(固着される)と解することもできない。よって、先願発明と本件発明1との共通点は、上記のとおりとなる。

(オ)先願発明の「パイプ本体1の外径寸法D1が、先端部材2のコーン部6の前記パイプ本体1との連接部における外形寸法D2よりも所定径だけ小さく形成され」ることは、本件発明1の「先端ビットの外径はパイプの外径よりも大きいこと」に相当する。

(カ)上記(ア)ないし(オ)からみて、本件発明1と先願発明とは、以下の点で一致している。
〔一致点〕
壁面に貫通した孔が多数形成されたパイプを排水用として地中に打ち込んで埋設する方法であって、
先細り形状の先部を有する先端ビットが先端部に連接された先端ビット付きのパイプを地中に打ち込む方法であり、
先端ビットの外径はパイプの外径よりも大きい、
パイプ打ち込み方法。

また、本件発明1と先願発明とは、以下の点で相違している。
〔相違点1〕
先細り形状の先部を有する先端ビットについて、本件発明1は、中実であって、パイプの先端部に螺着又は固着されているのに対し、先願発明は、中空であって、パイプの先端部に挿脱可能であって、螺着又は固着されたとの特定がない点。
〔相違点2〕
本件発明1は、パイプの内側に、少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドの全体を前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの先部の内面を打撃するのに対し、先願発明は、そのような特定がない点。

イ 判断
以下、上記相違点1及び2について検討する。
(ア)相違点1
先細り形状の先部を有する先端ビットについて、中実とした先端ビットを、パイプの先端部に螺着又は固着することは、本件特許の出願前に周知・慣用の技術であったとする証拠は提出されていないし、仮に周知・慣用の技術であったとしても先願発明における先端部材2をあえて中実とする必要に乏しく、上記相違点1は、課題解決のための具体化手段における微差程度のものとは認められないから、実質的な相違点である。

(イ)相違点2
先端ビット付きのパイプの内側に、少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドの全体を前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの先部の内面を打撃する構成は、請求人が提示する証拠をみても、本件特許の出願前に周知技術であるとは認められない。
仮に、上記構成が周知・慣用の技術であったとしても、その技術を採用することにより、「パイプ1が斜めに逸れにくく、パイプ1を真っ直ぐに打ち込んでいくことができる」(本件特許明細書の段落【0032】)との新たな効果を奏することとなるから、上記相違点2は、課題解決のための具体化手段における微差程度のものとは認められず、実質的な相違点である。

ウ 請求人の主張について
(ア)請求人は、上記相違点2に関して、先端ビットを打撃する工法は、甲第3号証?甲第6号証、甲第18号証、甲第19号証に記載されているように、本件特許の出願前に周知の技術であって、先端ビットを打撃しようがパイプ後端を打撃しようが、これは当業者の技術常識乃至周知技術の転換等によって適宜選択される設計的事項である旨(第4の3(1)オ)、主張している。
ここで、甲第3号証ないし甲第6号証、甲第18号証、甲第19号証の記載を確認すると、そのうち、甲第5号証以外のものは、いずれも、先端の部材と振動する部分とが、直接またはロッド等を介して接続された構成が記載されており、先端の部材に振動が伝わるものの、ロッドの先端部で先端の部材を打撃するものではないから、上記証拠から、ロッドの先端部で先端ビットを打撃する工法が本件特許の出願前に周知・慣用の技術であったとは認められない。甲第5号証に記載のものも、先願発明とは前提とする構成が大きく異なり、先願発明において採用が検討され得る技術を開示するものではない。

(イ)また、請求人は、発明特定事項B(上記相違点2に係る構成)は、課題解決のための具体化手段として寄与するものではなく、設計上の微差に過ぎない旨(第4の3(1)ア)、本件発明1の課題を解決するためには発明特定事項Cを具備するのが肝要であり、ロッド2で先端ビット1を打撃するか、パイプ3の後端部を打撃するかは当業者が適宜選択し得る設計事項に過ぎず、課題解決に寄与しない旨(第4の3(1)エ)、さらに、甲1発明の後端部3aを打撃しても、パイプ3が斜めに打ち込まれることはない旨(第4の3(1)イ)、主張している。
しかしながら、本件発明1は、発明特定事項Bと発明特定事項Cをいずれも発明特定事項として有しており、両者が一体となって本件発明1の効果を奏するものであるから、両者はいずれも先願発明との実質的な相違点として検討されなければならないものであり、そもそも請求人の主張は失当である。
すなわち、本件特許の明細書及び図面(特に、段落【0006】及び【0009】)をみると、本件発明のパイプを地中にスムーズに打ち込んでいくことができるとの課題は、発明特定事項Cの寄与により達成されるものであって、真っ直ぐ打ち込んでいくことができるとの課題は、発明特定事項Bの寄与により達成されることは明らかである。
また、請求人が主張するように、甲1発明が、パイプ3の後端部3aと打設装置間にアダプタを介して強固に固定されており、施工手順の一例として、打ち込み架台の単管パイプ状に載置しているものであって(第4の3(1)イ及びウ)、甲1発明のパイプ3が真っ直ぐ打ち込まれるとしても、それはあくまでアダプタや打ち込み架台を採用したことによる効果であるから、パイプの後端部を打撃すること自体が、パイプの先端側を打撃することと比較して、同様の直進性を有するとは認められない。
以上のことから、請求人の主張は採用することができない。

エ まとめ
以上のとおり、本件発明1と先願発明との間には実質的な相違点1及び2が存在するから、本件発明1は先願発明と同一ではない。

3 無効理由2について
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲8発明を対比する。
(ア)甲8発明の「周壁において適宜間隔で」「形成され」た「水抜き孔9」、「排水パイプ1」、「中空の蓋45」、「単管パイプ60」は、その構成及び機能からみて、それぞれ本件発明1の「壁面を貫通した孔」、「パイプ」、「先端ビット」、「打ち込みロッド」に相当する。

(イ)甲8発明の排水パイプ1は、「土砂部5の斜面51に打ち込まれ、雨水等の浸透水や上昇した地下水により土砂部5の浸透能力を超えた結果、土砂部5に蓄積された水分を排水するために設けられる」ものであるから、斜面51に打ち込まれ、埋設されることは自明である。
よって、甲8発明の「土砂部5の斜面51に打ち込まれ、雨水等の浸透水や上昇した地下水により土砂部5の浸透能力を超えた結果、土砂部5に蓄積された水分を排水するために設けられ」、その「第1の管体10、第2の管体20、第3の管体30は、その本管部11,21,31の周壁において適宜間隔で水抜き孔9が形成され」ている「排水パイプ1の打ち込み方法」は、本件発明1の「壁面に貫通した孔が多数形成されたパイプを排水用として地中に打ち込んで埋設する方法」、「パイプ打ち込み方法」に相当する。

(ウ)甲8発明の「先端に進むにつれて縮径化され突出方向Aに向けて先鋭化させた形状とされて」いる「中空の蓋45」と、本件発明1の「中実先細り形状の先部を有する先端ビット」とは、「先細り形状の先部を有する先端ビット」で共通する。
甲8発明の「蓋45は、第3の管体30先端の開口を外側から被覆するように管体の打ち込み時において外れてしまうのを防止できる程度に嵌合され、先端に進むにつれて縮径化され突出方向に先鋭化させた形状とされて」いる「排水パイプ1」と、本件発明1の「先端ビットが先端部に螺着又は固着された先端ビット付きのパイプ」とは、「先端ビットが先端部に設けられた先端ビット付きのパイプ」で共通する。
甲8発明の「排水パイプ1」の「第1の管体10」、「第2の管体20」又は「第3の管体30」を「単管パイプ60」が押し出すことで、「土砂部5の斜面51に打ち込まれ」る「排水パイプ1の打ち込み方法」と、本件発明1の「先端ビット付きのパイプの内側に、少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドの全体を前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの先部の内面を打撃することによりパイプを地中に打ち込む方法」とは、「先端ビット付きのパイプに、打ち込みロッドの先端部で押し出すことによりパイプを地中に打ち込む方法」で共通する。

(エ)甲8発明において、「蓋45は、第3の管体30先端の開口を外側から被覆する」ことから、蓋45の外径は、第3の管体30の外径よりも大きいことが理解できる。よって、甲8発明の「蓋45は、第3の管体30先端の開口を外側から被覆する」ことは、本件発明1の「先端ビットの外径はパイプの外径よりも大きい」ことに相当する。

(オ)上記(ア)ないし(エ)からみて、本件発明1と甲8発明とは、次の一致点を有している。
〔一致点〕
壁面に貫通した孔が多数形成されたパイプを排水用として地中に打ち込んで埋設する方法であって、
先細り形状の先部を有する先端ビットが先端部に設けられた先端ビット付きのパイプに、打ち込みロッドの先端部で押し出すことによりパイプを地中に打ち込む方法であり、
先端ビットの外径はパイプの外径よりも大きい、
パイプ打ち込み方法。

また、本件発明1と甲8発明とは、次の相違点を有している。
〔相違点A〕
先端ビットについて、本件発明1は、中実であって、パイプに螺着又は固着されているのに対し、甲8発明は、中空であって、管体の打ち込み時において外れてしまうのを防止できる程度に嵌合されている点。
〔相違点B〕
本件発明1は、先端ビット付きのパイプの内側に、少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドの全体を前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの先部の内面を打撃するのに対し、甲8発明では、単管パイプ60は、その長さの特定がされておらず、排水パイプ1の第1の管体10、第2の管体20又は第3の管体30を押し出しているものの、押し出す該管体10、20、30の内側に挿入されるものではなく、さらに、全体を前後に加振して、先端部で蓋45の先部の内面を打撃するものでもない点。

イ 判断
上記相違点A及びBについて以下検討するところ、事案に鑑み、まず、上記相違点Bから検討する。
(ア)相違点B
a 甲8発明は、「排水パイプ1の打ち込みは、まず、第1の管体10の内部に第2の管体20を収納し、第2の管体20の内部に第3の管体30を収納した状態とした上で、これを土砂部5の斜面51に打ち込むものであって、先端に押圧体61を取り付けた単管パイプ60を用いて、第1の管体10、第2の管体20、第3の管体30を同時に押し出しており、次に、単管パイプを用いて、第2のパイプ20、第3のパイプ30を同時に押し出し、次に、単管パイプを用いて、第3のパイプ30を押し出す」工程を備えるものであるから、第1の管体10、第2の管体20及び第3の管体30を同時に押し出すには、第1の管体10、第2の管体20及び第3の管体30の後端部を押し出すことが必要である。
よって、仮に、先端部に先端ビットを取り付けた排水用のパイプを打ち込む際に、全体を前後に加振した打ち込みロッドで先端ビットを打撃することが、本件特許の出願前に周知または公知の技術であったとしても、上記の押し出す工程を勘案すると、甲8発明の第1の管体10、第2の管体20及び第3の管体30のうち、一番先頭に存在する第3の管体30の突出方向Aにおける先端に嵌合された蓋45を打撃するものに代えることは、甲8発明の押し出す(打ち込み)工程が奏していた機序を発揮できないこととなるから、甲8発明に、先端部に先端ビットを取り付けた排水用のパイプを打ち込む際に、全体を前後に加振した打ち込みロッドで先端ビットを打撃する手法を適用することは、阻害要因が存在する。

b したがって、以上のとおりの阻害要因が存在するから、甲第7号証、甲第19号証及甲第21号証の記載に関わらず、相違点Bに係る本件発明1の構成は、甲8発明に、甲第7号証、甲第19号証、甲第21号証、その他の証拠に記載された公知技術または周知技術を適用して、当業者が容易になし得たものではない。

(イ)相違点A
先細り形状の先部を有する先端ビットについて、甲第7号証には、打ち込み素子(3)を中実とすること、及び、成型体(2)の一端にねじ止め等の固着手段により打ち込み素子(3)を固着することが記載されているものの、それらの構成を、甲8発明の蓋45に適用する動機付けは存在しない。
甲8発明は、上記(ア)aで検討したとおり、第1の管体10、第2の管体20及び第3の管体30の後端部を押し出すことが必要であるから、中空の蓋45を、打撃を受けるために中実に変える必要はなく、さらに、あえて管体の打ち込み時において外れてしまうのを防止できる程度に嵌合したものに、ねじ止め等の固着手段を適用することは自然でなく、当業者が容易になし得たことではない。
よって、甲8発明の蓋45の構成を、相違点Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

(ウ)まとめ
以上のことから、本件発明1は、甲8発明、甲7発明、甲第19号証及び甲第21号証に記載された周知技術、並びにその他の請求人が提示した証拠に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2
ア 主張の経緯
請求人は、本件発明2について、訂正請求が認められるのであれば、争わない旨(第1回口頭審尋調書参照。)、主張している(上記第4の3(2)イ(イ)も参照。)。
また、審判請求時の請求人の主張は、その証拠の組合せ(主副の関係)が不明であった(令和2年6月11日付け審尋参照。)。
以上の経緯を考慮し、一応、簡単に検討する。

イ 請求人の提出した証拠には、少なくとも、本件発明2の「送り込んだ空気を打ち込みロッドの先端部から排出させてパイプの内周面と打ち込みロッドの外周面との間の隙間に通してパイプの後端部から出すこと」との構成は記載されていない。

ウ 審判請求時に、請求人は、上記構成を含む発明特定事項Gは甲第4号証に記載されている旨(上記第4の3(2)イ(ア))、主張している。
しかしながら、甲第4号証において、「噴出口62から噴射された空気混合水は、穿孔ビット30の中央空間を通って地盤Eに浸透する。空気混合水は、地盤Eを構成する土砂の粒同士の間に入って流動抵抗を無くしたり大幅に低減したり」(上記1(2)ア【0059】)するものであるから、空気混合水は、パイプの内側を通って後端部から出るものではない。

エ 以上のことから、本件発明2は、甲第3号証ないし甲第6号証、甲第9号証、甲第10号証に記載された発明または周知慣用技術、さらには請求人が提示するその他の証拠に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲9発明を対比する。
(ア)甲9発明の「周方向に対しては略千鳥状に列設されて」いる「長手方向に」「貫設され」た「多数の孔4」、「排水パイプ10」及び「排水パイプ2」、「排水パイプ2」の「一端が平面状に圧潰されて略尖鋭状に閉塞されてなる閉塞部5」は、その構成及び機能からみて、それぞれ本件発明3の「壁面を貫通した孔」、「パイプ」、「先端ビット」に相当する。

(イ)甲9発明の「排水パイプ2」は、「地盤1中に圧入され、地盤1の表面に対し鉛直方向に埋設されることとなる」ものであるから、地盤1に打ち込まれ、埋設されるものといえる。
甲9発明において、「砂粒子の間隙に存在する間隙水の水圧が急激に上昇した場合は、前記間隙水が前記多数の孔及び前記開放端を介して外部に排水される」こととなるので、甲9発明の排水パイプ2は、排水用として用いられているといえる。
よって、甲9発明の「耐震工法」において、「長手方向に多数の孔4が貫設され」た「長尺の排水パイプ2を使用し、盛土又は自然地盤1中に多数の排水パイプ2を所定間隔毎に埋設する」ことで、「排水パイプ2」が「地盤1中に圧入され、地盤1の表面に対し鉛直方向に埋設される」ことにより、「砂粒子の間隙に存在する間隙水の水圧が急激に上昇した場合は、前記間隙水が前記多数の孔及び前記開放端を介して外部に排水される」ことは、本件発明3の「壁面に貫通した孔が多数形成されたパイプを排水用として地中に打ち込んで埋設する方法」、「パイプ打ち込み方法」に相当する。

(ウ)甲9発明の「排水パイプ2」の「一端が平面状に圧潰されて略尖鋭状に閉塞されてなる閉塞部5」と、本件発明3の「中実先細り形状の先部を有する先端ビット」とは、「先細り形状の先部を有する先端ビット」で共通する。
また、甲9発明の「一端が平面状に圧潰されて略尖鋭状に閉塞されてなる閉塞部5を有す」る「排水パイプ2」と、本件発明3の「先端ビットが先端部に螺着又は固着された先端ビット付きのパイプ」とは、「先端ビットが先端部に設けられた先端ビット付きのパイプ」で共通する。

(エ)甲9発明の「排水パイプ10の開放端6にコンクリートブレーカー等の打設装置7を当接させ、該打設装置7を加振しながら排水パイプ2を押圧すると、排水パイプ10は地盤1中に圧入され、地盤1の表面に対し鉛直方向に埋設されることとな」ることと、本件発明3の「先端ビット付きのパイプの内側に、少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドの全体を前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの先部の内面を打撃することによりパイプを地中に打ち込む方法」とは、「先端ビット付きのパイプに、前後に加振して打撃することによりパイプを地中に打ち込む方法」で共通する。

(オ)甲9発明の「凸状螺旋部14がプレス加工により形成され」たこと、「凹状螺旋部12がプレス加工により刻設され」たことは、それぞれ、本件発明3の「プレス加工によって雄ネジが形成され」たこと、「雌ネジがプレス加工によって形成され」たことに相当する。
してみると、甲9発明の「排水パイプ10は、開放端11の近傍であって外周に所定間隔毎に複数の凹状螺旋部12がプレス加工により刻設され、該継手部材13は排水パイプ10に嵌合可能となるように管状に形成されると共に、その外周には凸状螺旋部14がプレス加工により形成され」たことと、本件発明3の「パイプの一端部側にはプレス加工によって雄ネジ部が形成されていて他端部側には一端部の雄ネジ部に対応した雌ネジ部がプレス加工によって形成され」たこととは、「パイプに雌ネジ部がプレス加工によって形成され」たことで共通する。

(カ)甲9発明の「一端が平面状に圧潰されて略尖鋭状に閉塞されてなる閉塞部5を有し、」「継手部材13の凸状螺旋部14を一方の排水パイプ10の凹状螺旋部12に螺合させて前記一方の排水パイプ10を継手部材13に外嵌させた後、他方の排水パイプ2の凹状螺旋部12と継手部材13の凸状螺旋部14とを螺合させて前記他方の排水パイプ10を継手部材13に外嵌させて、長尺の排水パイプ2を得て」いることと、本件発明3の「その先端ビット付きのパイプを地中に打ち込み、その先端ビット付きのパイプの雌ネジ部に別途のパイプの雄ネジ部を螺着することにより、先端ビット付きのパイプの後側に別途のパイプを継ぎ足すこと」とは、「その先端ビット付きのパイプに別途のパイプを連結することにより、先端ビット付きのパイプの後側に別途のパイプを継ぎ足すこと」で共通する。

(キ)上記(ア)ないし(カ)からみて、本件発明3と甲9発明とは、次の一致点を有する。
〔一致点〕
パイプを地中に打ち込む方法であって、
先端部に先端ビットを備えたパイプに、前後に加振して打撃することによりパイプを地中に打ち込む方法であり、
パイプに雌ネジ部がプレス加工によって形成されており、その先端ビット付きのパイプを地中に打ち込み、その先端ビット付きのパイプに別途のパイプを連結することにより、先端ビット付きのパイプの後側に別途のパイプを継ぎ足すパイプ打ち込み方法。

また、本件発明3と甲9発明とは、次の相違点を有している。
〔相違点ア〕
パイプを地中に打ち込む際のパイプの打撃について、本件発明3が、パイプの内側に打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドを前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの内面を打撃するのに対し、甲9発明は、排水パイプ10の開放端6にコンクリートブレーカー等の打設装置7を当接させ、該打設装置7を加振しながら排水パイプ2を押圧する点。
〔相違点イ〕
パイプの後端に別途のパイプを継ぎ足すに際して、本件発明3は、パイプの一端部側にはプレス加工によって雄ネジ部が形成されていて他端部側には一端部の雄ネジ部に対応した雌ネジ部がプレス加工によって形成されており、パイプとは別体構成の先端ビットがパイプの雄ネジ部に螺着されていて、その先端ビット付きのパイプを地中に打ち込み、その先端ビット付きのパイプの雌ネジ部に別途のパイプの雄ネジ部を螺着するのに対し、甲9発明では、排水パイプ10は、開放端11の近傍であって外周に所定間隔毎に複数の凹状螺旋部12がプレス加工により刻設され、該継手部材13は排水パイプ10に嵌合可能となるように管状に形成されると共に、その外周には凸状螺旋部14がプレス加工により形成されており、継手部材13の凸状螺旋部14を一方の排水パイプ10の凹状螺旋部12に螺合させて前記一方の排水パイプ10を継手部材13に外嵌させた後、他方の排水パイプ2の凹状螺旋部12と継手部材13の凸状螺旋部14とを螺合させて前記他方の排水パイプ10を継手部材13に外嵌させている点。

相違点の判断
以下、上記相違点ア及びイについて検討する。
(ア)相違点ア
甲第5号証には、上記1(3)エで示した甲5発明が記載されている。
甲5発明は、インナロッド4を介してインナビット5に打撃力を与え、ケーシング3の先端部内周に嵌合された可動ビット6を打撃するものであるところ、該可動ビット6は、軸方向に移動自在なものであって、前進と後退によりスライム流路8が開閉するという機能を奏するものである。
これに対し、甲9発明の先端部は、排水パイプ2の一端が平面状に圧潰されて略尖鋭状に閉塞されてなる閉塞部5でしかないから、甲9発明の閉塞部5と、甲5発明の可動ビット6及びその周辺の構造とは、その構成・機能が全く相違するものである。
してみると、甲5発明における、上記スライム流路8の開閉の機能に係る可動ビット6等の構成を省いた上で、インナロッドを介してインナビット5に与えた打撃力を、可動ビット6に打撃する構成のみを甲9発明に適用する動機付けは存在しない。
また、請求人が提示するその他の証拠をみても、相違点アに係る構成は、記載も示唆もされていない。
よって、甲9発明において、甲5発明やその他の証拠に記載された事項を適用したとしても、相違点アに係る本件発明3の構成に至るとは認められない。

(イ)相違点イ
相違点イに係る構成について、請求人が提示するその他の証拠には記載も示唆もされておらず、該構成が本件特許の出願前に公知または周知技術とは認められない。
また、請求人は、本件発明3は、継手部材を設けていない点で甲9発明を単純化しているが、甲第9号証により、パイプ同士をプレス加工により形成された雄ネジ部と雌ネジ部とで螺合させる技術は、本件特許の特許出願前には公知であったことが示唆されており、継手部材を介して螺合させるか、直接螺合させるかは単なる設計的事項であると考えられる旨(上記第4の3(2)ウ(ウ))、主張している。
しかしながら、上記設計的事項とする理由は説明されておらず、その証拠も提示されていないから、請求人が主張するように、継手部材を介して螺合させるか、直接螺合させるかは単なる設計的事項とは認められない。
したがって、甲9発明において、相違点イに係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととは認められない。

(ウ)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明3は、甲9発明、甲5発明、甲第19号証及び甲第21号証に記載された周知技術、さらには請求人が提示するその他の証拠に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第7 むすび
以上のとおり、本件発明1に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではなく、また、本件発明1ないし3に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、審判請求人の主張する無効理由によって、本件発明1ないし3に係る特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。







 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に貫通した孔が多数形成されたパイプを排水用として地中に打ち込んで埋設する方法であって、
中実先細り形状の先部を有する先端ビットが先端部に螺着又は固着された先端ビット付きのパイプの内側に、少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドの全体を前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの先部の内面を打撃することによりパイプを地中に打ち込む方法であり、
先端ビットの外径はパイプの外径よりも大きいことを特徴とするパイプ打ち込み方法。
【請求項2】
パイプを地中に打ち込んで埋設する方法であって、
先端ビットにより先端部が閉じられたパイプの内側に、少なくともパイプの後端部から先端ビットまで達する長さの打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドの全体を前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの内面を打撃することによりパイプを地中に打ち込む方法であり、
パイプの壁面には貫通した孔が形成されており、
中空状の打ち込みロッドを使用し、該打ち込みロッドで先端ビットを打撃する際に、打ち込みロッドの内側に後側から空気を送り込み、送り込んだ空気を打ち込みロッドの先端部から排出させてパイプの内周面と打ち込みロッドの外周面との間の隙間に通してパイプの後端部から出すことを特徴とするパイプ打ち込み方法。
【請求項3】
パイプを地中に打ち込む方法であって、
先端部に先端ビットを備えたパイプの内側に打ち込みロッドを挿入し、該打ち込みロッドを前後に加振して、該打ち込みロッドの先端部で先端ビットの内面を打撃することによりパイプを地中に打ち込む方法であり、
パイプの一端部側にはプレス加工によって雄ネジ部が形成されていて他端部側には一端部の雄ネジ部に対応した雌ネジ部がプレス加工によって形成されており、パイプとは別体構成の先端ビットがパイプの雄ネジ部に螺着されていて、その先端ビット付きのパイプを地中に打ち込み、その先端ビット付きのパイプの雌ネジ部に別途のパイプの雄ネジ部を螺着することにより、先端ビット付きのパイプの後側に別途のパイプを継ぎ足すことを特徴とするパイプ打ち込み方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2021-03-25 
結審通知日 2021-03-30 
審決日 2021-04-15 
出願番号 特願2017-170213(P2017-170213)
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (E02D)
P 1 113・ 16- YAA (E02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神尾 寧  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 住田 秀弘
長井 真一
登録日 2018-02-16 
登録番号 特許第6288895号(P6288895)
発明の名称 パイプ打ち込み方法  
代理人 國弘 安俊  
代理人 岩田 徳哉  
代理人 岩田 徳哉  
代理人 岩田 徳哉  
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