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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
管理番号 1377064
審判番号 無効2019-800036  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-04-18 
確定日 2021-08-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第4708059号発明「旨み成分と栄養成分を保持した無洗米」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1 本件特許第4708059号の請求項1?3に係る発明は、平成17年3月28日に出願され、平成23年3月25日に特許権の設定登録がなされた。

2 これに対して、本件審判の請求より前に、請求人(幸南食糧株式会社)から、平成27年9月4日付けで、別件無効審判(無効2015-800173号)(以下、先の無効審判という。)が請求され、平成28年11月21日付けで被請求人(東洋ライス株式会社)から訂正請求がなされた。

3 特許庁は平成29年3月24日付けで、
「特許第4708059号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2-3〕について訂正することを認める。
特許第4708059号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。
特許第4708059号の請求項2ないし3に係る発明についての審判請求は、成り立たない。」
旨の審決(以下、「一次審決」という。)をし、その謄本は、平成29年4月3日に請求人に、同年4月1日に被請求人に、それぞれ送達された。

4 被請求人は平成29年4月22日、一次審決を不服として、請求項1に係る部分の取消しを求める訴えを知的財産高等裁判所に提起した(平成29年(行ケ)第10083号)。
請求人も、一次審決を不服として、請求項2及び3に係る部分の取消しを求める訴えを提起したが、出訴期間経過を理由に訴えが却下され、請求項2ないし3に係る発明についての当該審決は確定した(平成29年(行ケ)第10103号)。

5 知的財産高等裁判所は、平成29年12月21日付けで、
「特許庁が無効2015-800173号事件について平成29年3月24日にした審決のうち、特許第4708059号の請求項1に係る部分を取り消す。」
旨の判決(以下、「審決取消判決」という。)を言渡した。

6 一次審決が取り消されたため、確定していない請求項1に係る部分について、さらに審理が行われ、特許庁は平成31年1月18日付けで、
「特許第4708059号の明細書及び特許請求の範囲を、平成28年11月21日付け訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
請求項1についての本件審判の請求は、成り立たない。」
旨の審決(以下、「二次審決」という。)をし、その謄本は、平成31年1月28日に請求人に、同年1月26日に被請求人に送達された。その後、出訴期間の経過により、請求項1に係る発明についての当該審決は確定した。

以下、特許第4708059号を「本件特許」といい、その明細書を「本件特許明細書」といい、上記先の無効審判事件における平成28年11月21日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲を「本件特許請求の範囲」という。

7 その後、本件特許について、幸南食糧株式会社(以下「請求人」という。)から、平成31年4月18日付けで、本件特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明の特許を無効にすることを求める旨の本件審判の請求がなされた。

以下に、本件審判の請求以後の経緯を整理して示す。

平成31年4月18日 :審判請求書及び甲第1号証の提出(請求人)
令和元年 5月 9日 :上申書の提出(請求人)
同年 6月 4日 :証拠説明書(1)の提出(請求人)
同年 8月 9日 :審判事件答弁書の提出(被請求人)
同年 9月18日付け:審理事項通知書
同年 9月24日 :上申書の提出(被請求人)
同年 9月25日 :上申書の提出(請求人)
同年10月21日 :口頭審理陳述要領書及び
乙第1号証?第3号証の提出(被請求人)
同年10月23日 :口頭審理陳述要領書及び
甲第2号証?第9号証の提出(請求人)
同年10月29日 :証拠説明書の提出(被請求人)
同年10月30日 :証拠説明書(2)の提出(請求人)
同年11月19日 :上申書・証拠説明書(3)及び
甲第10号証、第11号証の提出(請求人)
同年 同月 同日 :口頭審理・証拠調べ
同年12月 3日 :上申書の提出(被請求人)


第2 本件特許発明
本件特許の請求項1?3に係る発明(以下、「本件特許発明1」?「本件特許発明3」のように表記することがある。)は、上記先の無効審判事件における平成28年11月21日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項によって特定される、以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
外から順に、表皮(1)、果皮(2)、種皮(3)、糊粉細胞層(4)と、澱粉を含まず食味上もよくない黄茶色の物質の層により表層部が構成され、該表層部の内側は、前記糊粉細胞層(4)に接して、一段深層に位置する薄黄色の一層の亜糊粉細胞層(5)と、該亜糊粉細胞層(5)の更に深層の、純白色の澱粉細胞層(6)により構成された玄米粒において、
前記玄米粒を構成する糊粉細胞層(4)と亜糊粉細胞層(5)と澱粉細胞層(6)の中で、摩擦式精米機により搗精され、表層部から糊粉細胞層(4)までが除去された、該一層の、マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)が米粒の表面に露出しており、且つ米粒の50%以上に『胚芽(7)の表面部を削りとられた胚芽(8)』または『舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部が削り取られた基底部である胚盤(9)』が残っており、
更に無洗米機(21)にて、前記糊粉細胞層(4)の細胞壁(4’)が破られ、その中の糊粉顆粒が米肌に粘り付けられた状態で米粒の表面に付着している『肌ヌカ』のみが分離除去されてなることを特徴とする旨み成分と栄養成分を保持した無洗米。

【請求項2】
外から順に、表皮(1)、果皮(2)、種皮(3)、糊粉細胞層(4)と、澱粉を含まず食味上もよくない黄茶色の物質の層により表層部が構成され、該表層部の内側は、前記糊粉細胞層(4)に接して、一段深層に位置する薄黄色の一層の亜糊粉細胞層(5)と、該亜糊粉細胞層(5)の更に深層の、純白色の澱粉細胞層(6)により構成された玄米粒において、
摩擦式精米機を全行程の終末寄りから少なくとも3分の2以上の行程に用いることによって、前記玄米粒を構成する糊粉細胞層(4)と亜糊粉細胞層(5)と澱粉細胞層(6)の中で、精米機による搗精により、表層部から糊粉細胞層(4)までを除去し、該糊粉細胞層(4)と澱粉細胞層(6)の間に位置する亜糊粉細胞層(5)を外面に残して、該一層の、マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)を米粒の表面に露出させ、且つ搗精後の米粒の50%以上に『胚芽(7)の表面部を削りとられた胚芽(8)』または『舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部を削り取り、残された基底部である胚盤(9)』を残した、白度35?38の精白米に仕上げ、
前記白度35?38の精白米を、更に無洗米機(21)により『肌ヌカ』のみを除去する無洗米処理をして、『肌ヌカ』のみが除去された、白度41以上となるように仕上げることを特徴とする旨み成分と栄養成分を保持した無洗米の製造方法。

【請求項3】
前記白度41以上の無洗米であって、これを炊飯すると黄色度13?18に炊き上がることを特徴とする請求項2に記載の旨み成分と栄養成分を保持した無洗米の製造方法。」


第3 請求人の主張の概要
1 本件審判の請求の趣旨
請求人が主張する本件審判における請求の趣旨は、「特許第4708059号発明の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」である(審判請求書「6.請求の趣旨」)。

2 請求人が主張する無効理由及び証拠方法の概要
請求人は、以下の無効理由を主張し、証拠方法として甲第1号証?甲第11号証を提出した。

3 審判請求書、上申書、及び口頭審理陳述要領書に記載した無効理由の概要
審判請求書、令和元年9月25日付け上申書、口頭審理陳述要領書及び令和元年11月19日付け上申書の記載を考慮し、審判請求書の「7」の「(1)請求の理由の要約」、「(3)特許無効審判請求の根拠」、「(4)本件特許を無効にすべき理由」の記載、及び審判請求書全体の記載から、請求人が主張する無効理由は、概略以下のとおりである(第1回口頭審理調書)。
なお、請求人は、令和元年5月9日付けで、上申書及び添付書類を提出しているが、本件審判事件の背景事情に関する参考情報に過ぎないと認める。

(1)無効理由
ア 無効理由1(サポート要件違反)
本件特許発明1?3は、特許請求の範囲の記載に不備があるため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって本件特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してなされたものであるから同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

イ 無効理由2(明確性要件違反)
本件特許発明1?3は、特許請求の範囲の記載に不備があるため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって本件特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してなされたものであるから同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(2)証拠方法(甲第1号証?甲第11号証)
請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。

甲第1号証 :「金芽米とは?」、「玄米の栄養と旨み成分が多い「亜糊粉層」はどの部分?」
、印刷日:令和元年4月16日
甲第2号証 :特公平6-75685号公報
甲第3号証 :特許第2602090号公報
甲第4号証 :特許第2615314号公報
甲第5号証 :特許第2651976号公報
甲第6号証 :特許第2711644号公報
甲第7号証 :特許第4216120号公報
甲第8号証 :特許第4485756号公報
甲第9号証 :「加除式 農業技術体系 作物編 1 基本編・イネ基礎編」、社団法人 農山漁村文化協会、1975年6月15日、第676の2頁?第676の3頁
甲第10号証 :「亜糊粉層を残す金芽米の製法とは?」、「匠が守る金芽米の品質」、「「金芽米」はお米の品種名ではありません。その”ひみつ”は「精米方法」。お米は精米方法で選ぶ時代です!」、「金芽米とは?」、「玄米の栄養と旨み成分が多い「亜糊粉層」はどの部分?」
、印刷日:令和元年10月11日
甲第11号証 :常識を破った先駆者たち|戦略経営者|TKCグループ
、印刷日:令和元年10月11日

なお、証拠の成立に関する認否について、被請求人は、甲第1号証?甲第11号証の成立を認めるとしている(第1回口頭審理調書)。


第4 答弁の趣旨並びにその主張の概要及び被請求人が提出した証拠方法
1 答弁の趣旨と主張の概要
(1)被請求人が主張する答弁の趣旨は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」である(答弁書「6.答弁の趣旨」)。

(2)そして被請求人は、審判事件答弁書、令和元年9月24日付け上申書、口頭審理陳述要領書及び令和元年12月3日付け上申書において、請求人が主張する上記無効理由は、理由がない旨の主張をしていると認める(第1回口頭審理調書)。

(3)また被請求人は、請求人が主張する無効理由2(特許法第36条第6項第2号違反)については、本件特許に係る先の無効審判事件において、本件特許発明1?3全てについて、特許法第36条第6項第2号違反による無効を主張していたものであるから、当該主張は一事不再理の原則に反するものであり、許されるべきものではない旨の主張もしていると認める(審判事件答弁書「7 理由」「(4) 特許法第36条第6項第2号違反について」「(4-1) 一事不再理」、口頭審理陳述要領書「5 陳述の要領」「(2-2) 特許法第36条第6項第2号(明確性要件)違反について」「(2-2-1) 一事不再理」)。

2 証拠方法(乙第1号証?乙第3号証)
被請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。

乙第1号証 :無効2015-800173号事件の一次審決謄本、平成29年3月24日
乙第2号証 :無効2015-800173号事件の二次審決謄本、平成31年1月18日
乙第3号証 :日本食品科学工学会第65回大会講演集、平成30年8月22日、第135頁

なお、証拠の成立に関する認否について請求人は、乙第1号証?乙第3号証については成立を認めるとしている(第1回口頭審理調書)。


第5 証拠の記載
1 甲号証の記載事項
(1)甲第1号証:
電子的技術情報である甲第1号証には、以下の記載がある。

(甲1a)「「金芽米(きんめまい)とは?」
「金芽米とは、玄米の栄養を残した、とても美味しい無洗米です。」
「栄養成分と旨み成分が多い「亜糊粉層(あこふんそう)」と胚芽の基底部である「金芽」を残す精米方法によって栄養と美味しさの両立を実現した健康志向のお米です。」」(第1頁中段)

(甲1b)「「玄米の栄養と旨み成分が多い「亜糊粉層(あこふんそう)」はどの部分?」
「亜糊粉層(あこふんそう)は、デンプン層とヌカ層の間にある厚さ数ミクロンの層で、上質な甘味、旨味の元と」」(第1頁下段)

(甲1c)「イラストはイメージです。
実際の亜糊粉層の色は白米と同じ色です。」(第1頁右下)


(2)甲第2号証:特公平6-75685号公報
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、以下の記載がある。

(甲2a)「<産業上の利用分野>
この発明は、噴風摩擦式精米機による搗精作業の最終段階に用いる仕上げ精米方法に係り、糠を湿潤化させて除糠する、いわゆる湿式、仕上げ精米方法の改良に関する。」(第1頁左欄第10行?第14行)

(甲2b)「<発明が解決しようとする問題点>
ところが、従来の加水式の仕上げ精米方法では単なる水が添加されるだけである為、充分な効果を期待できない。なぜなら、単なる水の場合には、浸透性や蒸発性が高い為、米粒表面に付着した水分は比較的短時間で米粒内部にまで浸透したり、また、米粒の表層に残留した水分は精米作業完了後に容易に蒸発してしまう。この結果、米粒表面に微細なひび割れが発生し、炊飯時に於ける花咲き米の原因となって食味の低下を招くことがある。
・・・
本発明はこのような点に鑑み、食味が良くて且つ米粒に対して水分添加による悪影響を与えず、表面光沢に富んだ精白米を得ることのできる精米方法を提供せんとするものである。」(第1頁右欄第9行?第2頁左欄第14行)

(甲2c)「<問題点を解決するための手段>
本発明の仕上げ精米方法の技術的手段は、噴風摩擦式による搗精作業の最終段階にある米粒に、水飴の水溶液を添加し、米粒表面の糠層を水飴水溶液の粘性と水分とによって湿潤化させて粘土状となし、更にこの粘土糠を小さな塊りに成長させて搗精部から排出し、米粒表面に残留した水飴水溶液はその後の乾燥によって米粒表面を覆う皮膜に転化させることにある。」(第2頁左欄第15行?第22行)


(3)甲第3号証:特許第2602090号公報
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、以下の記載がある。

(甲3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】精白米を水に浸け、洗滌、除糠を行い、吸水部分が主に米粒の表層部である洗い米を得、更に除水工程において洗滌水と表面付着水の除水を行い、洗い米を製造する方法であって、水中への浸漬から除水までの工程を米粒の吸水量が極くわずかであるうちに完了し、水の浸透を主に米粒の表層部でとどめるようにし、かつ米粒の含水率が除水した時点でほぼ16%を超えないことを特徴とする米粒に亀裂を有さない洗い米の製造方法。」

(甲3b)「<発明が解決しようとする課題>
生の米で、然も洗米の要らない米の製造は、炊飯時の煩雑さをなくすると同時に汚濁水の防止にも寄与することから、炊飯時に水洗不要の「洗い米」が消費者より要望されて久しい。そして、洗わなくても炊ける「洗い米」の製造法の開発が従来より試みられているが、炊いた米飯の食味は好ましいものでなかった。
本発明はこのような点に鑑み、水洗、除水後も米粒に亀裂が入らずしかも、炊いた米飯の食味が落ちない「洗い米」製造方法を提供することを目的とするものである。」(第2頁左欄第40行?右欄第50行)


(4)甲第4号証:特許第2615314号公報
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、以下の記載がある。

(甲4a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 洗滌時に吸水した水分が主に米粒の表層部にとどまっているうちに強制的に除水して得られる、米肌に亀裂がなく、米肌面にある陥没部の糠分がほとんど除去された、平均含水率が約13%以上16%を超えないことを特徴とする洗い米。
【請求項2】 請求項1記載の洗い米を、気密性のある包装材を使用した包装用袋に入れ、当該米と包装用袋との間に、米粒群のみかけの体積が最も小さい状態を保持するに必要な空気のみを残し、余剰空気はすべて排除して密封することを特徴とする洗い米の包装方法。」

(甲4b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、洗米を必要とせず水を入れるだけで直ちに炊飯できる洗い米及びその包装方法に関する。」

(甲4c)「【0003】
【発明が解決しょうとする課題】・・・
従来の乾燥洗い米と称する洗い米は、上記の問題点を解決した構成を有しないので砕米の飯となり美味な飯を得ることができなかったのである。本発明はこのような点に鑑み、水洗、除水後も米粒に亀裂が入らず、しかも、炊いた米飯の食味が低下しない洗い米を得ることを目的とするものである。」


(5)甲第5号証:特許第2651976号公報
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、以下の記載がある。

(甲5a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 通常の含水率を有する玄米又は精白米を、あらかじめ調質し、玄米においては精米加工し、いずれの場合でも15%以上19%を超えない高含水精白米とした上で水中で撹拌、洗滌して除糠を行い、次いで洗滌水及び米粒表面水の除水工程を経て、米粒が水に触れてから除水完了までの時間を11分以下となし、且つ水に漬ける前の精白米の含水率より、0%以上2%を超えることのない含水率で、米粒の平均含水率が、除水した時点で16%以上19%を超えない範囲で「かし置き」を必要としない含水量としたことを特徴とする、洗い米の製造方法。
【請求項2】 含水率が15%以上17%を超えない高含水率の玄米を無調質で精白し、当該精白米を水中で撹拌、洗滌、除糠を行い、次いで洗滌水及び米粒表面の除水工程を経て、その間の時間を11分以下となし、且つ平均含水率が除水した時点で、水に漬ける前の精白米の含水率より0%以上2%を超えない範囲の上昇含水率で、且つ平均含水率が16%以上19%を超えない範囲で「かし置き」を必要としない含水量としたことを特徴とする洗い米の製造方法。」

(甲5b)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、洗米及び「かし置き」を不要とし、水を入れるだけで直ちに炊飯可能な含水率の高い洗い米とその製造方法に関するものである。」

(甲5c)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】生の米で、然も洗米の要らない米の製造は、炊飯時の煩雑さをなくすると同時に汚濁水の防止にも寄与することから、「洗い米」が消費者より要望されて久しい。そして、洗わなくても炊ける洗い米の製造法の開発が従来より試みられていたが、炊いた米飯の食味は好ましいものではなかった。
・・・
従って本発明はこのような点に鑑み、水洗、除糠、乾燥後も米粒に亀裂が入らずしかも、標準含水率よりもはるかに高含水率で消費者が洗米もせず、かし置きもせず、釜に米と水を入れ、すぐにスイッチを入れ炊飯しても、従来の米で、従来の方法で炊き上げたものよりもおいしいご飯となり、然も炊飯前のなま米の状態では特別な密封包装を必要とせず、開封して、そのまま室内に放置していてもカビの発生や腐敗をしない日もちのする高含水率の洗い米及びその製造方法をここに提供せんとするものである。」


(6)甲第6号証:特許第2711644号公報
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には、以下の記載がある。

(甲6a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 連続洗米機と該洗米機の次工程に設けた除水装置とを備えた洗い米の製造装置であって、前記連続洗米機が、毎分600回転以上で回転する攪拌体を備え、かつ該連続洗米機に供給される精白米を前記連続洗米機と除水装置を極短時間で通過させることができ、前記連続洗米機と該除水装置とを通過させた洗い米の含水率を16%以下としうる除水能力を備えていることを特徴とする洗い米の製造装置。」

(甲6b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】生の米で、然も洗米の要らない米は、炊飯時の煩雑さをなくすると同時に汚濁水の防止にも寄与することから、水を加えるだけで直ちに炊ける「乾燥洗い米」が消費者より要望されて久しい。そして、上記のように、従来よりこのような乾燥洗い米を得るための研究がなされているが、炊いた米飯の食味が優れたものは今までに製造されていない。本発明はこのような点に鑑み、水洗後も米粒に亀裂が入らず、しかも、炊いた米飯の食味が低下しない乾燥洗い米を製造することが出来る洗い米の製造装置を提供することを目的とするものである。」


(7)甲第7号証:特許第4216120号公報
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には、以下の記載がある。

(甲7a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少ない水量の水で洗米を行う、連続式洗米機による無洗米製造時の洗米作業に於いて、
洗米作業の終了時に、洗米機への水の供給を停止すると共に、洗米機を加熱し、洗米機内に残っている、糠分の濃厚な洗浄水を加熱乾燥させて、洗米機内の各部に、糠分を薄い膜状にして付着残留させ、
次回の洗米作業時に、精白米と少量の水とによって、前記薄い膜状の付着残留物を、水に解かして排出する、連続式洗米機による無洗米製造時の洗米作業の終始方法。」

(甲7b)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記のように連続式洗米機で無洗米を作ろうとすると、先ず、コスト削減の為に、洗浄水の水量を可及的に少なくする必要がある。この為、洗浄水に含まれる糠分が濃厚となって、これが作業後に機内に付着したまま残り、そのまま放置すると、腐敗して、悪臭などを発生するようになる。特に夏期には顕著で、このままでは次の作業ができなくなる。この為、従来は作業終了後に、装置を分解して洗浄しており、これに手間がかかるので、作業能率を阻害する大きな要因となっていた。
【0005】
本発明は、このような点に鑑み、洗米作業終了後の分解洗浄を不要にして、作業能率の向上を図った、連続式洗米機による無洗米製造時の洗米作業の終始方法を提供するにある。また、本発明は、簡単かつ廉価に実施可能な、連続式洗米機による無洗米製造時の洗米作業の終始方法を提供するにある。」


(8)甲第8号証:特許第4485756号公報
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第8号証には、以下の記載がある。

(甲8a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌装置を構成する筒体内に装填された攪拌ロールの外周に、高突条及び低突条を軸方向に交互に配列し、該低突条は回転作用により、精白米を筒体の内周面が構成する硬質物に打ち付けて、該精白米の肌面の微細な陥没部に入り込んで付着している肌糠を、該肌糠の粘性により前記硬質物の内周面に付着させて抜き出し、更に、該低突条の周方向反対側において、筒体の内周面に近接して回転する高突条の回転作用によって、精白米群を筒体の内周面の硬質物に擦り付けながら回転させて、該硬質物に付着した肌糠を削り落とし、再び精白米に混在させ、前記作用を繰り返して、精白米の肌糠の除糠を行うことを特徴とする無洗米の製造方法。」

(甲8b)「【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、この発明では、排水処理を必要とせず、「水洗式」と同等の除糠度で、且つ、安定した高品質の無洗米を製造できる無洗米の製造方法及びその装置を提供することを課題とする。」


(9)甲第9号証:
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第9号証には、以下の記載がある。

「3.白米表層(サビオ層)の呈味成分
・・・
次にミネラル(P、K、Mg、Caなど)をみると、その約1/2はぬか層に貯えられているが、残りの大半は白米表層の亜糊粉層付近に集まっている。後述するようにMgはコメの食味をよくするミネラルであるが、これも白米表層にとくに多い。実際に、白米表層から削り取った米粉を口に含んでみると、うまいコメほど特有の強い甘味やコクが感じられる。白米表層には各種の呈味成分が集積しているので、最近ではサビオ層(ラテン語で味わうの意味)とも呼ばれるようになった。」(第676の2頁右欄下から3行目?第676の3頁第24行)


(10)甲第10号証:
電子的技術情報である甲第10号証には、以下の記載がある。

(甲10a)「「亜糊粉層を残す金芽米の製法とは?」
「独自の精米製法で玄米の表面から、少しずつヌカを取り除いていくことにより、お米の表面に均等に「亜糊粉層(あこふんそう)」を残します。」
「また、亜糊粉層は水に溶けやすく、洗うと取れてしまうので、とぎ洗いしなくてもいいように精米後に無洗米に仕上げています。」
「さらに無洗米にすることで、水質汚染の原因となるとぎ汁をなくし、環境保全に繋がります。」」(第1頁上段)

(甲10b)「「匠が守る金芽米の品質」
「金芽米の品質は、熟練の精米オペレーターである匠の技によって維持・管理されています。本当にヌカ層だけを取り除くことができたか、亜糊粉層はきれいに残っているか、目や手ざわりで確認し、品種や気温・湿度などの環境変化によって精米機の微妙な調節を、長年の経験と感性で見極めています。」」(第1頁中段)

(甲10c)「「「金芽米」はお米の品種名ではありません。
その”ひみつ”は「精米方法」。
お米は精米方法で選ぶ時代です!」
「「金芽米」の秘密は「精米方法」にあります。
もともと玄米には、栄養やおいしさが詰まっている「亜糊粉層」という層があるのですが、従来の精米機では、その層が糠と一緒に取れてしまっていたのです。
そこで新しく開発した精米機でその亜糊粉層を残すことに成功したのが金芽米なのです。
おいしいうえに、栄養価も高く、カロリーは控えめ。まさに新時代のお米「金芽米」を、ぜひお試しください。」」(第2頁中段)

(甲10d)「「金芽米(きんめまい)とは?」
「金芽米とは、玄米の栄養を残した、とても美味しい無洗米です。」
「栄養成分と旨み成分が多い「亜糊粉層(あこふんそう)」と胚芽の基底部である「金芽」を残す精米方法によって栄養と美味しさの両立を実現した健康志向のお米です。」」(第3頁上段)

(甲10e)「「玄米の栄養と旨み成分が多い「亜糊粉層(あこふんそう)」はどの部分?」
「亜糊粉層(あこふんそう)は、デンプン層とヌカ層の間にある厚さ数ミクロンの層で、上質な甘味、旨味の元となる糖質を作る酵素が含まれています。従来の白米では精米時にヌカと一緒に取り除かれてしまい、残っておりません。」」(第3頁中段)

(甲10f)「約30分煮てヌカ皮がめくれ上がった玄米の写真
糠皮をめくると、「亜糊粉層」は糠皮の裏側にあることが確認できます。写真の様に亜糊粉層は外側の糠皮と強くついている為、従来の精米では糠皮と共に剥がれてしまいます。」(第3頁下段)


(11)甲第11号証:
電子的技術情報である甲第11号証には、以下の記載がある。

(甲11a)「黄土色の海を見たのが“動機”
さて、第2の夢(無洗米)は何がきっかけで開発されることになったのか。一言でいえば黄土色に汚染された海を見たことだった。
・・・
肌ヌカで肌ヌカを取るという、奇想天外な方法を考案したわけだが、同時にその方法で無洗米にする機械(BG無洗米機/Bran=ヌカ、Grind=削る)も独力で開発した。「図表3(『戦略経営者』2014年1月号P14)のように、機械(円筒状の中)にコメを投入するとツメ(小突起)で撹拌され、肌ヌカはステンレス壁に付着します。この付着した肌ヌカに、他のコメ粒の肌ヌカを次々とぶつけていくと、壁面に肌ヌカが付着します。それを反対側のツメ(大突起)でそぎ落とします。これを高速回転で行って、最後に無洗米とそぎ落とされた肌ヌカを分けます」と雜賀社長は話す。

これが完成したのが1991年のことだった。黄土色の海を見て開発に着手してから15年を費やしている。」(第2頁中段?第3頁第5段落)

(甲11b)「国内外で注目浴びる「金芽米」
さらにもう一つ、雜賀社長が、パイオニア精神を発揮して手がけたモノがある。それは玄米、胚芽米、白米に次ぐ第4の米と言われる「金芽米」を開発したことだ。

金芽米とは、口当たりが白米と同じくらいよいうえに、白米よりうまみと甘味があり、栄養価が高いコメのこと。その理由は、従来の精米法では白米にする工程で削り取られてしまう「亜糊粉層」と「金芽」(胚芽の基底部)が残されている点にある。逆にいえば、亜糊粉層と金芽を残すことができる精米法を独自に編み出したということである。
・・・
「玄米からヌカを取ったものが白米ですが、米偏に白と書くとカス(粕)になります。ということは玄米の一番よい部分のヌカを取って、われわれはカスを食べているということです。そこで白米のようにおいしく食べられ、なおかつ健康にも良いコメは創れないだろうかと長年、考え続けました。その結果、ヌカの裏側に亜糊粉層があることがわかりました。昔から『皮と実の間にいいものがある』といわれますが、体にいいのはヌカではなく、この亜糊粉層であることを、後年、科学的にもつきとめています。しかし、ヌカと亜糊粉層は表裏一体のため、通常の精米法ではヌカを削るときに亜糊粉層も一緒に取られてしまいます。そこで玄米の表面から少しずつヌカを取り除きつつ、亜糊粉層と金芽を残して精米する“均圧精米法”を考案しました。この方法で精米されたコメをBG無洗米機にかけて、金芽米に仕上げるという仕組みです」
・・・
金芽米の特徴は、第1に「均圧精米法+BG無洗米機」によってつくられるため、「コシヒカリ」や「あきたこまち」など、どの品種も金芽米にして付加価値を高めることができること。第二に白米に比べてビタミンB1・Eが約2倍、腸内環境を整えるマルトース(麦芽糖)が約60倍、オリゴ糖が約12倍も含まれていることだ。」(第3頁第2段落?第7段落)


2 乙号証の記載
(1)乙第1号証:無効2015-800173号事件の一次審決謄本
乙第1号証には、以下の記載がある。

(乙1a)「(1) 無効理由1(方法的記載)
請求人が方法的記載であると主張する具体的箇所を以下に検討する。
・・・
(1-1) 請求項1に係る事項
特許発明1は「旨み成分と栄養成分を保持した無洗米」という物の発明であるから、請求項1にその物の製造方法が記載されているか否か検討する。
・・・
(1-3) まとめ
以上のことから、特許発明1に係る訂正特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記ア、オ及びカについて製造に関して経時的な要素の記載がある場合、あるいは、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、請求項1にはその物の製造方法が記載されているといえる。すなわち、請求項1の記載は「摩擦式精米機により搗精」という方法により(表層部から粉粉細胞層まで)「除去」し、摩擦式精米機による搗精後に、無洗米機に供給し、「無洗米機(21)にて」という方法により「『肌ヌカ』のみが分離除去されてなる」「旨み成分と栄養成分を保持した無洗米」を特定し、その物の製造方法が記載されているといえる。
・・・そして、特許明細書の【0026】及び【0027】の記載からすると、当業者にとって、摩擦式精米機ではない研削式精米機による搗精によっては、特許発明1を含む「旨み成分と栄養成分を保持した無洗米」を製造することが簡単ではないといえたとしても、不可能であるとまではいえないし、精米機によらない搗精についても同様である。
・・・そして、無洗米処理に係る技術常識からして、当業者にとって、無洗米機ではない洗米機や人の手によるものによっては、特許発明1を含む「旨み成分と栄養成分を保持した無洗米」を製造することが簡単ではないといえたとしても、不可能であるとまではいえない。
・・・
そして、請求項1全体の記載に係る「摩擦式精米機による搗精後に、無洗米機に供給」する旨の特定により、「摩擦式精米機」による「搗精」を行うこと、及び「無洗米機」による処理が行われることを重複しつつ特定していることになる。
ここで、物の発明に係る特許請求の範囲にその物を製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、平成24年(受)第2658号)。
しかしながら、特許明細書及び図面には不可能・非実際的事情について何ら記載がなく、当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるともいえない。
したがって、請求項1に係る発明は明確でない。

なお、被請求人は、訂正請求書において、概ね「『摩擦式精米機により搗精され』と『無洗米機(21)にて』の記載については、いずれも形式的に『物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合』に該当するとしても、明細書の記載並びに当該技術分野における出願時の技術常識を考慮すると『当該製造方法が当該物のどのような構造若しくは特性を表しているのかが明らかであるとき』に該当し、第三者の利益が不当に害されることもないことから、特許法第36条第6項第2号との関係で問題とされるべきプロダクト・バイ・プロセス・クレームには当たらず、明確性要件違反とはならないものである。」旨主張する(9ページ2行-12ページ18行)が、上記のとおり、「摩擦式精米機により搗精され」と「無洗米機(21)にて」の記載により物をその製造方法により区別しているといえるから、「単に状態を示すことにより構造又は特性を特定しているに過ぎない場合」に相当するとはいえず、「当該製造方法が当該物のどのような構造若しくは特性を表しているのかが明らかであるとき」に該当するとはいえない。

よって、特許発明1に係る特許は、無効理由1により、無効とされるべきものである。」(第28頁第8行?第32頁第12行)


(乙1b)「(2) 無効理由2(著しく不明確な記載)
請求人が著しく不明確な記載を含んでいると主張する具体的箇所を以下に検討する。

ア 請求項1の「食味上もよくない黄茶色の物質の層」なる記載は、請求項1の「外から順に、表皮(1)、果皮(2)、種皮(3)、糊粉細胞層(4)と」「構成された」「表層部」についての玄米一般に係る記載といえるから、当該記載により特許発明1が不明確になるものではない。したがって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。
・・・
イ 本件訂正により、請求項1の「亜糊粉細胞層(5)を外面に残して、該一層の、マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)を米粒の表面に露出させ、」なる記載は、技術的意義を拡張・変更していない「該一層の、マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)が米粒の表面に露出しており、」と訂正され、また、その記載内容自体が明確でないとはいえず、特許発明1が不明確になるものではない。したがって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。
・・・
ウ 本件訂正により、請求項1の「搗精後の米粒の50%以上に『胚芽(7)の表面部を削りとられた胚芽(8)』または『舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部を削り取り、残された基底部である胚盤(9)』を残し、」なる記載は、技術的意義を拡張・変更していない「米粒の50%以上に『胚芽(7)の表面部を削りとられた胚芽(8)』または『舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部が削り取られた基底部である胚盤(9)』が残っており、」と訂正され、また、この記載は1粒の米粒に係るものではなく、複数の米粒の半数以上のものについての記載と解されるのであって、その記載内容自体が明確でないとまではいえず、特許発明1が不明確になるものではない。したがって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。
・・・
エ 請求項2の「摩擦式精米機を全行程の終末寄りから少なくとも3分の2以上の行程に用い」なる記載は、「全行程の終末寄り」の「工程に」「摩擦式精米機」を「用い」ることが特定されているのであるから、特に「全行程」が精米工程を指すと解せるのであって、その記載内容自体が明確でないとまではいえず、特許発明2が不明確になるものではない。したがって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

オ 本件訂正により、請求項2の「残された基底部である胚盤(9)』が表面に現れた、白度35?38の精白米に仕上げ、前記白度35?38の精白米を、更に無洗米機(21)により『肌ヌカ』を除去する無洗米処理をして、『肌ヌカ』が除去された、白度41以上となるように精白米を仕上げた」なる記載は、技術的意義を拡張・変更していない「残された基底部である胚盤(9)』を残した、白度35?38の精白米に仕上げ、前記白度35?38の精白米を、更に無洗米機(21)により『肌ヌカ』のみを除去する無洗米処理をして、『肌ヌカ』のみが除去された、白度41以上となるように仕上げる」と訂正され、また、この記載は「白度35?38の精白米を」「無洗米処理をして、」「白度41以上となるように精白米を仕上げる」ことが明確に理解でき、その白度についての整合性がとれていないとする理由も見当たらないのであって、その記載内容自体が明確でないとまではいえず、特許発明2が不明確になるものではない。したがって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

カ 請求項3の「これを炊飯すると黄色度13?18に炊き上がる」なる記載は、記載内容自体が明確でないとはいえず、特に「炊飯する」手段を特定しないことにより特許発明3が不明確になるものでもない。したがって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

キ まとめ
以上のことから、無効理由1に係る理由を除く無効理由2に係る理由について、特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

よって、特許発明1ないし3に係る特許は、無効理由2により、無効とされるべきものではない。」(第32頁第14行?第34頁第11行)


(2)乙第2号証:無効2015-800173号事件の二次審決謄本
乙第2号証には、以下の記載がある。

(乙2a)「(1)無効理由1(方法的記載)
ア 取消判決において、
・・・
そうすると,請求項1に「摩擦式精米機により搗精され」及び「無洗米機(21)にて」という製造方法が記載されているとしても,本件発明に係る無洗米のどのような構造又は特性を表しているのかは,特許請求の範囲及び本件明細書の記載から一義的に明らかである。よって,請求項1の上記記載が明確性要件に違反するということはできない。」と判断された。
この判断は、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、本件無効審判事件について当合議体を拘束する。
したがって、本件訂正による請求項1の記載は、「無洗米」の発明でありながらその物の製造方法が記載されていることを理由に明確性要件に違反するとはいえない。」(第22頁下から3行目?第24頁第3行)


(乙2b)「(2)無効理由2(著しく不明確な記載)
請求人が著しく不明確な記載を含んでいると主張する具体的箇所を以下に検討する。
ア 請求項1の「食味上もよくない黄茶色の物質の層」なる記載は、本件特許明細書の「【0014】・・表皮1、果皮2、種皮3、糊粉細胞層4(これは数段堆積している個所もある)までの層は、澱粉を含まないし、食味上もよくない黄茶色の物質である。」という記載も参酌すれば、請求項1の「表皮(1)、果皮(2)、種皮(3)、糊粉細胞層(4)」のことを意味していることが理解できるから、当該記載により特許発明1が不明確になるものではない。

イ 本件訂正により、請求項1の「亜糊粉細胞層(5)を外面に残して、該一層の、マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)を米粒の表面に露出させ、」なる記載は、請求項1の「該一層の、マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)が米粒の表面に露出しており、」と訂正された。訂正後の上記記載は、マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する一層の亜糊粉細胞層が、米粒の表面にむき出しになる状態を意味すると解せられるから、その記載内容自体が明確でないとはいえず、特許発明1が不明確になるものではない。

ウ 本件訂正により、請求項1の「搗精後の米粒の50%以上に『胚芽(7)の表面部を削りとられた胚芽(8)』または『舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部を削り取り、残された基底部である胚盤(9)』を残し、」なる記載は、「米粒の50%以上に『胚芽(7)の表面部を削りとられた胚芽(8)』または『舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部が削り取られた基底部である胚盤(9)』が残っており、」と訂正された。訂正後の上記記載は、本件特許明細書の「【0041】・・また全米粒のうち、胚盤9または表面部が除去された胚芽8が残存した米粒の合計数が50%以上を占めているのである。」との記載も参酌すれば、1粒の米粒に係るものではなく、複数の米粒の半数以上に胚芽の表面部を削りとられた胚芽又は舌触りの良くない胚芽の表層部や突出部が削り取られた基底部である胚盤が残っている状態を意味すると解せられるから、その記載内容自体が明確でないとはいえず、特許発明1が不明確になるものではない。

エ まとめ
以上のとおりであるから、無効理由2により、特許請求の範囲の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

よって、特許発明1に係る特許は、無効理由2により無効とされるべきものではない。」(第24頁第5行?第25頁第5行)


(3)乙第3号証:
本件特許の出願前に頒布された刊行物である乙第3号証には、以下の記載がある。

「3Ka11 最近の米が持つ組織的特徴を活かした高LPS精白米の開発
・・・
【目的】最近の米粒の組織構造は澱粉貯蔵細胞層を覆っている最深層糠の亜糊粉層が肥厚し、逆に糊粉層が薄くなりつつあるという変化が生じている米が出現している。・・・
【結果】筆者は、旨味層といえる亜糊粉層を米粒の表面に露出させたコメの製造技術を開発し『 高栄養・良食味精白米の製造法』として報告した。開発時の米粒の亜糊粉層の厚みは、約5μmであったが、近年では長野県産コシヒカリ等で10μmの厚みを持つ米粒が多く観察されている。」(第135項左下欄)


第6 無効理由についての当審の判断
1 一事不再理について
上記第4 1 (3)に記載されているように、被請求人は、本件審判において請求人が主張する、無効理由2(特許法第36条第6項第2号違反)については、一事不再理の原則に反する旨の主張をしているので、まずこの点について判断する。

(1)特許法第167条の趣旨
特許法第167条は、特許無効審判の審決が確定したときは、当事者及び参加人は、同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができないという、いわゆる一事不再理の原則を規定している。
ここでの「同一の事実」とは、無効審判において無効理由として主張する事実が同一であることをいい、「同一の証拠」とは、同一性のある証拠を意味するものと解される。
以上のことを前提として、以下判断する。

(2)先の無効審判における請求人の主張と審決及び判決の判断の概要
先の無効審判における請求人の主張と審決及び判決の判断の概要は、以下のとおりである。

ア 先の無効審判における請求人の無効主張の概要
先の無効審判における、特許法第36条第6項第2号に関する請求人の主張の概要は以下のとおりである。

(ア)無効理由1(方法的記載)
本件特許の請求項1ないし3の記載は、「無洗米」の発明でありながらその物の製造方法が記載されているから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(イ)無効理由2(著しく不明確な記載)
本件特許の請求項1ないし3の記載は、著しく不明確な記載を含んでいるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
そして、具体的に不明確であるとされたのは、訂正前の請求項1?3の以下のa?fの記載である。

a 請求項1の「食味上もよくない黄茶色の物質の層」なる記載

b 請求項1の「亜糊粉細胞層(5)を外面に残して、該一層の、マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)を米粒の表面に露出させ、」なる記載

c 請求項1の「搗精後の米粒の50%以上に胚芽(7)の表面部を削りとられた胚芽(8)または舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部を削り取り、残された基底部である胚盤(9)を残し、」なる記載

d 請求項2の「摩擦式精米機を全行程の終末寄りから少なくとも3分の2以上の行程に用い、」なる記載

e 請求項2の「残された基底部である胚盤(9)』が表面に現れた、白度35?38の精白米に仕上げ、前記白度35?38の精白米を、更に無洗米機(21)により『肌ヌカ』を除去する無洗米処理をして、『肌ヌカ』が除去された、白度41以上となるように精白米を仕上げた」なる記載

f 請求項3の「これを炊飯すると黄色度13?18に炊き上がる」なる記載


イ 先の審決と判決の概要
(ア)無効理由1(方法的記載)
(ア-1)一次審決
一次審決においては、摘記(乙1a)に、請求項1の記載は「摩擦式精米機により搗精」という方法により(表層部から粉粉細胞層まで)「除去」し、摩擦式精米機による搗精後に、無洗米機に供給し、「無洗米機にて」という方法により「『肌ヌカ』のみが分離除去されてなる」「旨み成分と栄養成分を保持した無洗米」を特定し、その物の製造方法が記載されていること、及び、摩擦式精米機ではない研削式精米機を用いることや、無洗米機ではない洗米機や人の手によるものによって、「旨み成分と栄養成分を保持した無洗米」を製造することが、簡単ではないといえたとしても、不可能であるとまではいえないことが記載されている。
そして、物の発明に係る特許請求の範囲にその物を製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるには、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当であるとされているところ、本件特許明細書及び図面にはそのような事情について何ら記載がなく、当業者にとってそのような事情があったことが明らかであるともいえないため、請求項1の記載は明確ではないとした。

(アー2)審決取消判決
審決取消判決は、請求項1は全体として、物の発明である「無洗米」を特定する事項の一部に製造方法が記載されているということができるとしつつも、本件特許の特許請求の範囲及び明細書の記載によれば、請求項1に「摩擦式精米機により搗精され」及び「無洗米機(21)にて」という製造方法が記載されているとしても、本件発明に係る無洗米のどのような構造又は特性を表しているのかは、特許請求の範囲及び本件明細書の記載から一義的に明らかであるとして、請求項1は明確であるとした。

(アー3)二次審決
二次審決においては、摘記(乙2a)にあるように、上記(ア-2)の審決取消判決の判示内容は、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、先の無効審判事件について当合議体を拘束することから、本件訂正による請求項1の記載は、「無洗米」の発明でありながらその物の製造方法が記載されていることを理由に明確性要件に違反するとはいえないとした。


(イ)無効理由2(著しく不明確な記載)
(イ-1)一次審決
摘記(乙1b)にあるように、上記ア(イ)のa?fのいずれについても、本件特許発明1?3を不明確にするものではないと判断された。なお、b、c及びeについては、訂正後の請求項1?3について判断されたものである。

(イ-2)審決取消判決
審決取消判決中の、被告の主張に対する裁判所の判断において、判決は、被告(当審注:本件の審判請求人)の、本件訂正後の特許請求の範囲請求項1の「食味上もよくない黄茶色の物質の層」(当審注:上記ア(イ)のa)、「該一層の、マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)が米粒の表面に露出しており、」(当審注:上記ア(イ)のb(訂正後のもの))及び「米粒の50%以上に『胚芽(7)の表面部を削りとられた胚芽(8)』または『舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部が削り取られた基底部である胚盤(9)』が残っており、」(当審注:上記ア(イ)のc(訂正後のもの))との記載が明確性要件を満たすものとした判断が誤りであるとの主張に対し、本件訂正後の特許請求の範囲請求項1の記載及び本件明細書の記載によれば、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえないから、明確性要件違反には当たらないとした。

(イ-3)二次審決
摘記(乙2b)にあるように、上記(イ-2)で判示されたいずれの記載についても、本件特許発明1を不明確にするものではないと判断された。


(ウ)まとめ
以上のとおりであるから、先の無効審判において、以下のa?dの判断が下されている。

a 本件特許発明1に係る請求項1の記載は、「無洗米」の発明でありながらその物の製造方法が記載されていることを理由に明確性要件に違反する、というものではない。

b 本件特許発明1に係る請求項1の「食味上もよくない黄茶色の物質の層」、「亜糊粉細胞層(5)を外面に残して、該一層の、マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)を米粒の表面に露出させ」、及び「搗精後の米粒の50%以上に胚芽(7)の表面部を削りとられた胚芽(8)または舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部を削り取り、残された基底部である胚盤(9)を残し」なる記載は不明確ではない。

c 本件特許発明2に係る請求項2の「摩擦式精米機を全行程の終末寄りから少なくとも3分の2以上の行程に用い」及び「残された基底部である胚盤(9)』が表面に現れた、白度35?38の精白米に仕上げ、前記白度35?38の精白米を、更に無洗米機(21)により『肌ヌカ』を除去する無洗米処理をして、『肌ヌカ』が除去された、白度41以上となるように精白米を仕上げた」なる記載は不明確ではない。

d 本件特許発明3に係る請求項3の「これを炊飯すると黄色度13?18に炊き上がる」なる記載は不明確ではない。


(3)一事不再理についての当審の判断
本件審判において請求人が主張する無効理由2は、審判請求書の第9頁?第14頁、令和元年9月25日付け上申書の第4頁、口頭審理陳述要領書の第42頁?第45頁の記載から見ると、本件特許発明1ないし3は、希望的記載や、単なる発明の目的の記載があることにより、発明の特定事項の技術的意味を当事者が理解できず、さらに、本件特許の出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであること、を理由とするものである(第1回口頭審理調書)。

その一方で、先の無効審判における請求人の特許法第36条第6項第2号違反の主張は、上記(2)アで述べたとおり、「無洗米」の発明でありながらその物の製造方法が記載されていること、及び特定の著しく不明確な記載を含んでいることを理由とするものである。

本件審判において請求人が主張する無効理由2は、先の無効審判における請求人の、方法的記載により物の発明を特定している旨の主張と異なっていることは勿論のこと、請求項1?3に存在する特定の文言について著しく不明確な記載であるとの主張とも異なり、甲第1号証?第8号証、第10号証及び第11号証の技術常識を含めて考慮すると、請求項全体としての記載が不十分である点に関する主張である。

したがって両者は、その具体的な主張の内容が異なるものであるから、特許法167条に規定される「同一の事実及び同一の証拠に基づいて」の「同一の事実」に基づくものとはいえないし、技術常識から見て発明特定事項が不足していることを示すために請求人が提示する甲第1号証?第8号証、第10号証及び第11号証は、先の無効審判で提示されたものとは異なっているから、「同一の証拠」に基づくものともいえない。


(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件審判において請求人が主張する無効理由2は、一事不再理の原則に反するものではない。


2 無効理由1及び2についての当審の判断
上記のとおり、請求人の主張する無効理由2は、一事不再理の原則に反するものではないこととなったので、次に無効理由1及び2について判断する。
当審合議体は、以下の理由により、本件特許は上記無効理由1及び2によって無効にすべきものではないと判断する。

(1)無効理由1(特許法第36条第6項第1号:サポート要件違反)について
(1-1)無効理由1(サポート要件違反)の具体的内容
請求人が主張する無効理由1(サポート要件違反)の具体的内容は、概略、以下のア?オのとおりである。

ア 本件特許発明1の「該一層の、マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)が米粒表面に露出して」いる事実が実証されていない(審判請求書第5頁、令和元年9月25日付け上申書第2頁、第3頁、口頭審理陳述要領書第5頁、第6頁、第40頁?第42頁)。

イ 本件特許発明1の「・・・の、マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)が米粒の表面に露出して」いる、あるいは本件特許発明2の「・・・のマルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)を米粒の表面に露出させ」る状態を実現するには、一層の亜糊粉細胞層を検出できるセンサを備えた超微細加工が可能な精米機が必要であるにもかかわらず、本件特許明細書には、このようなセンサについて全く記載がないし、わずか一層の亜糊粉細胞層で表面が覆われた状態の精白米を製造することは、精密加工能力の面から不可能である(審判請求書第5頁、第6頁、第10頁、令和元年9月25日付け上申書第2頁、口頭審理陳述要領書第2頁?第4頁)。

ウ 白米の白度や成分分析は、精米の終了後に測定できるものであって、精米工程の最中に白度を検出して精米機を制御できるものではないことに加え、本件特許明細書に記載された精米機には白度計は装備されておらず、また精米中における白度の制御方法も全く記載されていないことから、精米中における白度の制御自体ができるものとは認められない(令和元年9月25日付け上申書第2頁、口頭審理陳述要領書第3頁、第4頁)。

エ 米粒の表面に亜糊粉細胞層が露出していることを確認する手段について、被請求人が、(1)亜糊粉細胞層が表面に現れたときに白度が35?38となるので、白度計等を用いて試験搗精することで対処できること、及び(2)亜糊粉細胞層を表面に有する無洗米には、完全精白米よりも多量のマルトオリゴ糖が含まれているため、成分分析によっても亜糊粉細胞層を特定することができると主張しているのに対して、上記(1)については、白度35?38の米粒は、亜糊粉細胞層の有無に関係なく、精米過程で必ず現れるものであるから、亜糊粉細胞層が露出していることを証明するものではないし、上記(2)については、亜糊粉細胞層は、玄米中にも存在しているわけであるから、マルトオリゴ糖の含有量が十分であったとしても、亜糊粉細胞層が露出していることの証拠にはなり得ない(令和元年9月25日付け上申書第2頁、第3頁、口頭審理陳述要領書第6頁、第40?42頁)。

オ 本件特許発明1の「・・・その中の糊粉顆粒が米肌に粘り付けられた状態で米粒の表面に付着している『肌ヌカ』のみが分離除去されてなること」、あるいは本件特許発明2の「・・・白度35?38の精白米を、更に無洗米機(21)により『肌ヌカ』のみを除去する無洗米処理をして」という状態について、亜糊粉細胞層が表面に露出している精白米から亜糊粉細胞層を全く脱落させることなく肌ヌカのみを都合よく分離除去できる無洗米機は世の中に存在しないことに加え、水洗式無洗米機を使用した場合、水溶性の亜糊粉細胞層は一瞬にして洗い流されてしまう(審判請求書第6頁?第7頁、口頭審理陳述要領書第6頁?第7頁)。


(1-2)無効理由1についての当審の判断
ア サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきとされる。

イ 本件特許発明の課題
本件特許発明の課題は、本件特許明細書の段落【0001】の「この発明は、白米でありながら、米粒の亜糊粉細胞層と胚盤を残して、旨み成分と栄養成分を保持した無洗米に関するものである。」との記載と、段落【0005】の「しかし、文献を調べても、これまで玄米の組織について研究されたものはあるが、それらの各組織の食味についての研究や、種々の状態に搗精された米粒表層部の断面を顕微鏡で見て、表層の糠層などが如何程除去されているかの研究発表等が全く存在しない。本発明は、白米でありながら旨み成分と栄養成分を保持した無洗米と、その製造方法及びその製造装置を提供するものである。」との記載及び本件特許明細書全体の記載からみて、本件特許発明1については、白米でありながら、米粒の亜糊粉細胞層と胚盤を残して、旨み成分と栄養成分を保持した無洗米の提供であり、本件特許発明2及び3については、該無洗米の製造方法の提供であるといえる。

ウ 本件特許の特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の請求項1には、
「外から順に、表皮(1)、果皮(2)、種皮(3)、糊粉細胞層(4)と、澱粉を含まず食味上もよくない黄茶色の物質の層により表層部が構成され、該表層部の内側は、前記糊粉細胞層(4)に接して、一段深層に位置する薄黄色の一層の亜糊粉細胞層(5)と、該亜糊粉細胞層(5)の更に深層の、純白色の澱粉細胞層(6)により構成された玄米粒において、」(以下、「玄米粒の構造」という。)との特定と、
「前記玄米粒を構成する糊粉細胞層(4)と亜糊粉細胞層(5)と澱粉細胞層(6)の中で、摩擦式精米機により搗精され」ることにより、「表層部から糊粉細胞層(4)までが除去された、該一層の、マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)が米粒の表面に露出しており、且つ米粒の50%以上に『胚芽(7)の表面部を削りとられた胚芽(8)』または『舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部が削り取られた基底部である胚盤(9)』が残っており、」(以下、「摩擦式精米機により亜糊粉細胞層が表面に露出するように搗精された米粒」という。)との特定、と
「更に無洗米機(21)にて、前記糊粉細胞層(4)の細胞壁(4’)が破られ、その中の糊粉顆粒が米肌に粘り付けられた状態で米粒の表面に付着している『肌ヌカ』のみが分離除去されてなること」(以下、「無洗米機により、亜糊粉細胞層を表面に露出するように搗精された米粒に付着している肌ヌカを除去された無洗米」という。)との特定と、「旨み成分と栄養成分を保持した無洗米。」(以下、得られた無洗米の性状)という。)との特定を有する物の発明が記載されている。

また請求項2には、
「外から順に、表皮(1)、果皮(2)、種皮(3)、糊粉細胞層(4)と、澱粉を含まず食味上もよくない黄茶色の物質の層により表層部が構成され、該表層部の内側は、前記糊粉細胞層(4)に接して、一段深層に位置する薄黄色の一層の亜糊粉細胞層(5)と、該亜糊粉細胞層(5)の更に深層の、純白色の澱粉細胞層(6)により構成された玄米粒において、」との特定と、
「摩擦式精米機を全行程の終末寄りから少なくとも3分の2以上の行程に用いることによって、前記玄米粒を構成する糊粉細胞層(4)と亜糊粉細胞層(5)と澱粉細胞層(6)の中で、精米機による搗精により、表層部から糊粉細胞層(4)までを除去し、該糊粉細胞層(4)と澱粉細胞層(6)の間に位置する亜糊粉細胞層(5)を外面に残して、該一層の、マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)を米粒の表面に露出させ、且つ搗精後の米粒の50%以上に『胚芽(7)の表面部を削りとられた胚芽(8)』または『舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部を削り取り、残された基底部である胚盤(9)』を残した、白度35?38の精白米に仕上げ」るという精米工程と、
「前記白度35?38の精白米を、更に無洗米機(21)により『肌ヌカ』のみを除去する無洗米処理をして、『肌ヌカ』のみが除去された、白度41以上となるように仕上げる」という無洗米機による肌ヌカ除去工程とを有する「旨み成分と栄養成分を保持した無洗米の製造方法。」という方法の発明が記載されている。

さらに請求項3には、請求項2の方法の発明においてさらに「前記白度41以上の無洗米であって、これを炊飯すると黄色度13?18に炊き上がること」を特定した「旨み成分と栄養成分を保持した無洗米の製造方法。」という方法の発明が記載されている。

エ 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載
本件特許発明の課題を解決できること、及び課題を解決するための手段について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。

(1a)(亜糊粉細胞層の性状に関する記載)「【0015】
前述した玄米、分搗き米、胚芽米などの食味がよくないのは、ご飯の美味しさの足を引っ張る物質が残っているせいである。それらが除去されている完全精白米でも、洗米して炊かないと食味が良くないのは、精米過程で発生した糊粉細胞層4の細胞壁4’が破られ、その中の糊粉顆粒が米肌に粘り付けられた状態で米粒の表面に『肌ヌカ』として付着されているからである。糊粉顆粒はそれほど食味の足を引っ張るものである。それに引きかえ、糊粉細胞層4に接して、糊粉細胞層4より一段深層に位置する薄黄色の亜糊粉細胞層5(これは厚みも薄く1層しかない。)は、黄茶色の糊粉細胞層4や、後述する純白色の澱粉細胞層6とは異質のものである。
【0016】
その成分は澱粉だけではなく、種々の有益成分を含有し、糠層(表皮1?糊粉細胞層4まで)と、胚乳(澱粉細胞層6)の中間的位置にあるというだけでなく、内容的にも、澱粉細胞と糊粉細胞との中間的な一面もあり、我々人間(特に米を主食としてきた日本人)にとって極めて美味しさを感じさせる旨み成分だけでなく、栄養的にも優れたもの、例えばマルトオリゴ糖類や、食物繊維や、良質の蛋白質などを含有しているのである。その亜糊粉細胞層5に接した深層には、成分がほとんど澱粉で占めている澱粉細胞層6があるが、澱粉細胞層6は米粒の中心部まで多段的に積層され、米粒の大部分を占める構成物である。」

(1b)(従来の米に関する記載)「【0018】
即ち、これまでに世に出されている米を調べても、亜糊粉細胞層5が、全部またはほとんど除去されてしまった完全精白米や高白度分搗き米か、それ以外は亜糊粉細胞層5を表皮1、果皮2、種皮3、糊粉細胞層4により、またはそのいずれかにより、米粒表面のほとんどを覆ったままの、玄米、発芽玄米、分搗き米、胚芽米しかなかったのである。つまり亜糊粉細胞層5が、いかに食味に『金層』として価値があっても、その表面に、美味しさの足を引っ張る糊粉細胞層4などが覆っていればその効果が出ないだけでなく、不味となるのである。
要するに本願発明者の調査の結果判明したことは、
(1)『完全精白米』の場合は、精米機によって、表皮1、果皮2、種皮3などと共に糊粉細胞層4や、その次の層に位置している、薄い厚みで一層しかない亜糊粉細胞層5までも、ほとんど除去され、それより次の深層にある澱粉細胞層6が露出した状態で完全精白米の表面を形成しているのである。
・・・
【0021】
しかし、いずれの分搗き米でも、・・・栄養も少ない。
(3)また『胚芽米』の状態は、最も精白されたものでも、分搗き米の7分搗き程度のものであって、それに胚芽7’が多く残存している違いだけである。その白度は28?32であり、無洗米機で肌ヌカを除去すると白度32?38になる。それを炊飯すると黄色度22以上もあり、糠臭く口当たりも悪い。
【0022】
つまり、ご飯が黄茶色で、また胚芽7がほとんどそのままの形状で多く残存していて、その胚芽7’の表面が一層口当たりを悪くしている。従って高栄養で且つ口当たりのよい『胚芽7の表面部を除去した胚芽8』や『胚盤9』の状態で残っている米粒はほとんどみられない。ここで『胚芽7』について説明すると、玄米粒における胚芽7は、図2のように、先端が円錐状になって米粒の中心部に向けて深く没入し、その頂部が米粒の頭部より盛り上がった状態になっている。そして『胚芽米』とは、図5に示す如く、玄米の表皮1や果皮2等を除去しても、胚芽米の胚芽7’は、玄米の時より僅かに小さくなっているものの、ほとんどそのまま残したものである。しかし胚芽7’の表面部、つまり米粒より盛り上がった部分は口当たりが悪く、かつ消化性も良くない。」(下線は、当審にて追加した。以下同様。)

(1c)(従来の米の改善の方向性に関する記載)「【0023】
しかし、図7の如く、『胚芽7の表面部を削りとられた胚芽8』になると、そのデメリットがかなり解消される。それを更に削り取ると図6に示す如く、胚芽の胚盤9だけが残ることになる。いずれにしても、この『胚芽7の表面部を除去された胚芽8』や『胚盤9』は消化性も良く、甘みもあり、またビタミンE等の栄養成分も多いのである。以上のことから考えると、従来は米の栄養成分は糠層や胚芽だけに目を向けられていたため、気付かなかったが、胚盤9や亜糊粉細胞層5には米粒の栄養成分及び旨み成分を多く含有しているのであるから、これを可及的に残すと共に、食味にマイナス作用を与える糊粉細胞層4やそれより表層の物質、いわゆる糠層成分や、胚芽7の表面部を可能なかぎり除去すれば良いことになる。
【0024】
ところが、これまでそのようなものが全く存在しなかった。特に、その存在の可能性が高いと思われる完全精白米より、僅かに精白度の低い分搗き米でも、そのような米が存在しなかったのである。
その理由として考えられるのは、
第一に、亜糊粉細胞層5の特徴が知られていなかったこと。
第二に、亜糊粉細胞層5は極めて厚みが薄く、且つ、岩盤的な硬い澱粉細胞層6の外側にある糊粉細胞層4と共に剥離されやすいこと。
第三に、従来から、飯米用の精米手段は摩擦式精米機にて『ヘの字型搗精』を行うことが常識とされていることから、その搗精方法では、必然的にそうなるからであろう。
即ち、この第三の理由について詳述すると、本願発明者の発見によるが、従来の摩擦式精米機では、白度32程度の精白途上のまだ比較的精白度の低い段階から、胚芽が根こそぎ脱落している米粒が多く、またその未精白状態の時に、精米機より排出される糠より微砕粒を除去しても、その糠にかなりの澱粉成分が含まれていることを発見した。
【0025】
それによって、これまでの概念では、摩擦式精米機では発生した糠粉を介在しながら、米粒同士を擦れ合わせて米粒の表面を剥離する方式であるから、球形とは異なる米粒表面の凹凸にかかわらず、表面が均等に剥離されていくものと考えられていたがそれは誤りであることが判明した。何故ならば、米粒の精白度が低いのに、かなりの米粒が根こそぎ脱芽しているだけでなく、米粒の深層部にしか存在しない澱粉成分が削られるということは、精米過程で一度に剥離される糠層はかなりの厚さで、しかも部分的に『むら剥離』が生じていることになるからである。従って、完全精白米に精白される直前の高白度分搗き米を1粒当たりで見ても、米粒の全表面の内、胚芽の脱芽だけでなく、深層の亜糊粉細胞層5が削ぎ落とされ、更に、澱粉細胞層6の表面も若干削りとられている過精白部分もあれば、未だ糊粉細胞層4が残ったままの未精白部分も多く存在するのである。
【0026】
それ故、このような完全精白米に仕上げる直前の高白度分搗き米は食味がよくなく敬遠されたのである。そもそもこれまでの、このような『むら剥離』そのものが知られていなかったのは、米の消費のうち、炊飯に供される米の99%以上は完全精白米であり、その完全精白米の精白過程では、澱粉細胞層6が、丁度、地層の岩盤の如く硬いため、それより深層の剥離は遅く、その間に『むら剥離』のため取り残されていた澱粉細胞層6より表層のものが剥離され、結果的に完全精白米に達する頃には、きれいにむら剥離状でなくなっていて、誰もその直前まで『むら剥離』になっていることに気付かなかったのである。しかし、『むら剥離』は摩擦式よりも、研削式の方がひどいのである。」

(1d)(栄養分が多く、食味も良い精白米の製造方法に関する記載)「【0028】
以上のことからも判るとおり、従来の精白米は、食べやすいが栄養成分が少ない精白米か、栄養成分が多いが極めて食味がまずいものしかなかったのである。それを解決するには、摩擦式精米機での精米過程で、これまで気付かなかった、低精白米の状態の時に、脱芽したり排出される糠の中に澱粉が含まれることを可及的に少なくし、つまり、
(1)可能な限り中途精米過程での1粒当りの米粒の剥離差を生じなくする、つまりむら剥離を無くすと共に、可能なかぎり高栄養・良食味の亜糊粉細胞層5と胚盤9か、または、口当たりの悪い胚芽7の表面部を除去した胚芽8を残るようにする。
(2)その上で、亜糊粉細胞層5が表面に露出した時に搗精を終わらせることが必要となる。
しかし、この(1)の問題は、それに気付けば対策はある。即ち、昔から精米業界で常識として行われてきた方式を、次のように変えることで実現できる。(尤もそれによってこれまでのような完全精白米に仕上げるには極めて不都合になる。)
【0029】
能率を向上させるために、従来の摩擦式精米機では精白除糠網筒の内面にイボ状、または線状等の突起を設け、糠層を一度に分厚く剥離していたのをなくし、同網筒の内面を滑面にしたり、更にこれも能率の向上には逆行するが、従来の『ヘの字型』搗精、即ち、精米行程の中間行程が、他の行程のところより集中して精白しているのを変え、全行程で均等に精白したり、非効率的ではあるが、同精米機の回転数を早めることなどが有効である。また(2)については、(1)の完了後に亜糊粉細胞層5が表面に現れた時の白度が35?38(米粒により差がある)となるので、最適の状態に仕上げるような白度計と黄色度計を用いて、試験搗精の上で、対処できる。従って、本発明の精米装置は、次のとおり従来の装置を若干変更するだけで実現できる。」

(1e)(実施例)「【0030】
<実施例の説明>
本発明の装置の1実施例を図3に基づき説明する。玄米張込口11より第1昇降機12を経て、供給された玄米を貯蔵する玄米タンク13からの玄米供給を受ける第1精米機14、及び第2昇降機15から低白度中途精白米の供給を受ける第2精米機16、及び第3昇降機17から高白度中途精白米の供給を受ける第3精米機18と、各装置が連設されて精米装置が構成されている。なお、第1精米機14、第2精米機16、第3精米機18はいずれも摩擦式精米機である(但し第1精米機14のみは研削式にする場合もある。)従来は、第2精米機16が第1精米機14及び第3精米機18よりも高馬力のモーターが付設されているが、本装置のモーター(いずれも図示せず)は3台とも同馬力のものを付設している。
【0031】
また、それらの摩擦式精米機の回転数も毎分900回転以上の高速回転で運転される。更にそれらの摩擦式精米機の精白除糠網筒(図示せず)の内面は、若干微細な凹凸があるものの、従来のものにくらべ、はるかに凸部が低くなっている。そして第3精米機18から排出された精白米は第4昇降機19より精白米タンク20に投入され、無洗米機21に供給され、同無洗米機21にて無洗米に仕上げられたものが排出口22より次行程に送られる構成になっている。この無洗米機21は肌ヌカを除去出来るものならどれでも良い。即ち、本願発明者の発明に係る特開平2-242647号公報、または特開2004-321001号公報に示されるものでも良い。
【0032】
次に、上記装置の作用説明と、本件発明の製造方法を説明する。玄米張込口11に投入された玄米は、第1昇降機12を経て、玄米タンク13に投入される。そして玄米タンク13より流下した玄米は、第1精米機14にて、薄く剥離した中途精白米に仕上げられ、第2昇降機15を経て、第2精米機16に供給される。第2精米機16では、その中途精白米の表面を薄く剥離し、更に精白度を高めた中途精白米に仕上げて、第3昇降機17を経て、第3精米機18に供給する。第3精米機18では、その中途精白米の表面を薄く剥離して白度35?38に仕上げて、第4昇降機19を経て、精白米タンク20に投入される。
【0033】
ここで、注釈を加えるが、第1精米機14は玄米を僅かに精白するだけであるから、従来のままでも米粒の亜糊粉細胞層5まで削られることはない。(但し、研削式の場合は砥石を60番以上にする必要あり)問題は全精米行程の中ほどを受け持つ、第2精米機16であるが、本装置では、(1)精白除糠網の内面がほとんど、滑面状となっているから、(2)また第2精米機16では第1精米機14や第3精米機18と同状の軽負荷しかかけないから、更に、(3)本装置は毎分900回の高速回転をさせているから、それらの作用により精白時に、従来の如く、一度に分厚く糠層が削ぎ落とされたり、ムラ剥離されることはない。また摩擦式精米機特有の胚芽が根こそぎ脱落することもない。」
・・・
【0035】
そして、その米を第2精米機16と同一構成の第3精米機18にて、第2精米機16とほぼ同負荷で搗精することによって、白度35?38に仕上げられるのである。(それは3台共ほぼ同負荷をかけるということであって、糠の発生量が3台が均等というのではない)。尤も、白度35?38の内のどの白度に仕上げるかは、上記装置のミニチュア機と、白度計と、炊飯器と、黄色度計を用い、そのロットの米はどの白度に仕上げれば良いかを事前に確認しておき、その白度で仕上げるのである。
【0036】
そして、その白度は、従来の第3精米機18より排出された完全精白米の白度より低いのである。ということは、本装置にて従来の完全精白米に仕上げることもはできないし、3台共にモーター馬力を大きくしてそれを果たそうとしても、米温が極めて上昇するだけでなく、極めて効率の悪いものとなる。しかし、本発明の米を製造するときは従来の場合より、米粒から剥離するものが少ないから、逆に消費電力が少ないのである。そして注目すべきは、そのようにして得た白度35?38に仕上がった精白米は、後述のとおりほとんど亜糊粉細胞層5も削ぎ落とされていないし、胚芽7の表面部を除去された胚芽8や、胚盤9もかなり残存しているのである。また、亜糊粉細胞層5の表面に未剥離の糊粉細胞層4がほとんど残存していないのである。
【0037】
以上のように本発明の精米装置では、
(1)全行程、もしくは終末寄りの行程が摩擦式精米機によって構成され、それが全精米行程の少なくとも3分の2以上を占めている。
(2)その摩擦式精米行程の全行程をほぼ均等負荷がかかる負荷配分になっている。
(3)同精米機の精白除糠網筒の内面はほぼ滑面状となっている。
(4)同精米機の精白ロールの回転数が毎分900回転以上の高速回転となっている。
との主要な要件を備えたものであるが、それらの(1)?(4)の全てを満たすことは相乗効果も働き最もよいが、その内の各項目の一つでもそれなりの効果を有するものである。」

(1f)(単機の場合に用いる精白ロールに関する記載)「【0038】
なお、図3の実施例は3台連座式となっているが、これを4台連座式にしても良いし、また単機でも、上記(1)?(4)を満たすものであればよい。但し、1台の1回通過式精米機でそれを行うには、従来の精白ロールのままでは出来ない。従って、その場合の精白ロールを第2実施例として、図4に示し、説明する。(但し精米機全体の図示は省略する)。図4は、本発明の1台による1回通過式精米機に用いられる『均圧型』精白ロールを示すものであるが、その特徴は、円筒状の胴体31の外面に縦走する2本の突条32、32’が、始点34と終点35の中ほどの曲点(アールを有す)33にて、167度前後の角度で矢印方向に曲がっていることである。しかも、始点34と終点35を結ぶ線が精白ロールの軸線方向と平行になっている。
【0039】
なお、36・36’・36’’・36’’’は、いずれも突条32の背陰部に開口した噴風口である。その精白ロールの作用は、精白室内に回転自在に設けられた精白ロールの右(図)に接続して、一体的に設けられた送米ラセン(図示せず)により、精白室内に送られた玄米は、送米ラセンと共に回転する精白ロールの突条32、32’によって、高圧状で攪拌されるが、精白ロールの突条32、32’は曲点33にて回転方向(矢印)に対して、約167度の角度で曲がっているため、中央部に高圧がかかることがない。
【0040】
また、曲点33から、終点35までは、僅かではあるが米の流れとは逆らう方向になっているため、終点35の近傍にある排出口に設けられた圧迫板(いずれも図示せず)の圧迫力も適圧で済む。ということは、終点35付近が極めて低圧になることもない。以上のとおりであるから、連座型であっても、或いは全精白行程を一本の精白ロールで済ます1回通過式の単機型であっても、その全行程(尤も排出口近傍の低圧部なったところを除いて)はほぼ均等に圧力がかかり、結果として全行程がほぼ均等に負荷がかかる負荷配分が行われ、上記に示す(1)?(4)が実現される。このようにして、第1実施例でも、第2実施例でも、共に、精米行程の最終行程を経た、白度35?38に仕上げられた精白米は、胚盤9や、表面部を除去された胚芽8が多く残存し、しかも亜糊粉細胞層5もほとんど残存し、またその表層にあった糊粉細胞層4を含めて、糠層がほとんど剥離されているのである。」

(1g)(無洗米機による肌ヌカ除去方法に関する記載)「【0041】
但し、精米機で仕上げられたままでは肌糠が表面に付着しているため、それを第4昇降機19にて精白米タンク20に投入し、無洗米機21にて肌糠を除去し、無洗米に仕上げられ、排出口22より排出する。このように無洗米機21にかけるのは、せっかく亜糊粉細胞層5や胚盤9などを残した精白米に仕上がっているのに、これを手作業や洗米機で強くゴシゴシと米を研がれると剥離しやすい亜糊粉細胞層5や胚盤9などが流失してしまうからである。その点、無洗米機21にかけた場合は、排出された無洗米は、亜糊粉細胞層5は除去されず、肌ヌカが除去され、白度41?45に仕上がっている。また全米粒のうち、胚盤9または表面部が除去された胚芽8が残存した米粒の合計数が50%以上を占めているのである。」

(1h)(本件特許発明の無洗米の性状に関する記載)「【0042】
次に、本発明の無洗米について説明する。本発明の精米機から排出された白度35?38の精白米には、その表面に糊粉細胞層4などの糠成分が残っていないことは前述した通りであるが、それが残っていれば無洗米機21にて肌糠を取り除いていても、糊粉細胞層4等の糠成分は黄茶色をしているため、白度は40以上に上がることはない。従って、白度41?45の本発明の無洗米は、おいしさの足を引っ張る糠成分がほとんど除去された無洗米に仕上がっていることになる。なお、従来の完全精白米や高白度の分搗き米の無洗米でも、白度41以上になる。しかし、本発明の無洗米との決定的な違いは、それらの無洗米は胚芽8や胚盤9は、ほとんど残留しないだけでなく、米粒表面に亜糊粉細胞層5が殆ど存在せず、澱粉細胞層6が表面に露出しているため、それがご飯に炊きあがると黄色度11以下(数字が小さくなる)の真白なご飯になる。
【0043】
それが、米偏に白と書いた『粕』(カス)の字を表すものである。それに対して、しかも、それには全米粒の内、胚盤9または表面を除去された胚芽8が残った米粒の合計数が50%以上も占めている。従って、その食味は、従来のご飯とは異なった美味しさがある。参考までに従来の米と比べた食味及び含有栄養成分を示すと、表1の通りである。
【0044】
【表1】




オ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1は、前記ウのとおりの特定事項を含む物の発明であるから、サポート要件を満たしているか否かについての判断を、前記ウにおいて定義した以下の三つの観点から検討する。

<観点1>
「摩擦式精米機により亜糊粉細胞層が表面に露出するように搗精された米粒」について
<観点2>
「無洗米機により、亜糊粉細胞層が表面に露出するように搗精された米粒に付着している肌ヌカを除去された無洗米」について
<観点3>
「得られた無洗米の性状」について

(アー1)観点1:「摩擦式精米機により亜糊粉細胞層が表面に露出するように搗精された米粒」について

a 本件特許発明1の、亜糊粉細胞層と胚盤を残して、旨み成分と栄養成分を保持した無洗米を製造するにあたっての、摩擦式精米機により亜糊粉細胞層が表面に露出するように搗精する工程について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、前述のとおり、以下の事項が記載されているといえる。

(a)従来、摩擦式精米機では、球形とは異なる米粒表面の凹凸にかかわらず、表面が均等に剥離されていくものと考えられていたことが誤りで、精米過程で一度に剥離される糠層はかなりの厚さであり、しかも部分的に『むら剥離』が生じていることになる結果、完全精白米に仕上げる直前の高白度の分搗き米は食味がよくなく、敬遠されていたこと(摘記(1c)の段落【0025】及び【0026】)

(b)従来の精白米は、食べやすいが栄養成分が少ないか、栄養分が多いが極めて食味がまずいものしかなかったという問題点を解決するために、摩擦式精米機での精米過程において、低精白米の状態の時に、脱芽したり排出される糠の中に澱粉が少なくするようにすることが必要であり、具体的には(A)可能な限り中途精米過程での1粒当りの米粒の剥離差を生じなくすると共に、可能な限り、高栄養・良食味の亜糊粉細胞層と胚盤か、口当たりの悪い胚芽の表面部を除去した胚芽が残るようにしたうえで、(B)亜糊粉細胞層が露出したときに搗精を終わらせることが必要であること(摘記(1d)の段落【0028】)

(c)上記(b)の(A)と(B)の条件を満たすような搗精の具体的な手法として、(A)については摩擦式精米機の精白除糠網筒の内面を滑らかにしたり、従来の『への字型』搗精を変えて全工程で均等に精白したり、精米機の回転数を早めるのが有効であること、(B)については、(A)の完了後に亜糊粉細胞層が表面に現れたときの白度が35?38となるので、試験搗精によって最適な状態を定めることにより、対処できること(摘記(1d)の段落【0029】)

(d)またその具体的実施態様について、(A)の観点については、
摩擦式精米機の回転数を毎分900回転以上の高速回転で運転すること、及び、精白除糠網筒の内面が、凸部が従来よりはるかに低くなっているものを用いていること(摘記(1e)の段落【0031】)、さらに、これらの方法により、一度に分厚く糠層が削ぎ落とされたり、ムラ剥離されたりすることがなく、摩擦式精米機特有の胚芽が根こそぎ脱落することもないこと(摘記(1e)の段落【0033】)。
また(B)の観点については、
三つの精米機を経て、白度35?38に仕上げることが記載され、その際、どの白度に仕上げるかは、ミニチュア機と、白度計と、炊飯器と、黄色度計を用い、そのロットの米はどの白度に仕上げればよいかを事前に確認して決定すること(摘記(1e)の段落【0035】)、さらに、得られた白度35?38に仕上がった精白米は、殆ど亜糊粉細胞層が削ぎ落とされていないし、胚芽の表面部が除去された胚芽や胚盤もかなり残存しており、かつ亜糊粉細胞層の表面に未剥離の糊粉細胞層が残存していないこと(摘記(1e)の段落【0036】)。

(e)具体的実施態様についてはさらに、精米装置は、
(1)全行程、もしくは終末寄りの行程が摩擦式精米機によって構成され、それが全精米行程の少なくとも3分の2以上を占めている。
(2)その摩擦式精米行程の全行程をほぼ均等負荷がかかる負荷配分になっている。
(3)同精米機の精白除糠網筒の内面はほぼ滑面状となっている。
(4)同精米機の精白ロールの回転数が毎分900回転以上の高速回転となっている。
ことを主要な要件として備えるものであり、全てを満たす場合に相乗効果が高いが、一つでも満たすことでそれなりの効果を有すること(摘記(1e)の段落【0037】)。

(f)そして、精米機は連座式でも単機でも上記(1)?(4)を満たせばよいものの、1台の1回通過式という特定の場合については、従来の精白ロールのままではできないために、円筒状の胴体の外面に縦走する2本の突条が、始点と終点の中ほどの曲点にて、167度前後の角度で矢印方向に曲がっていることを特徴とする、『均圧型』精白ロールを用いる必要があるとされ(摘記(1f)の段落【0038】)、当該精白ロールを用いれば、1回通過式の単機型であっても摩擦式精米工程の全行程がほぼ均等に負荷がかかる負担配分が行われ、上記(1)?(4)の要件が実現されること(摘記(1f)の段落【0039】、【0040】)。

b そうすると、従来の摩擦式精米機の『むら剥離』に関する知見(上記aの(a))、及び栄養分の保持と食味の両立のための具体的目標の知見(同(b))から、従来の精白米の問題点を解決するために、精米過程における米粒間の剥離差を生じなくし、高栄養・良食味の亜糊粉層と胚盤等が残るようにし、亜糊粉細胞層が露出したときに搗精を終えるようにすることが必要であると理解できる。
また、該目標の達成のための具体的手段の知見(同(c))、具体的手段の知見をさらに具体的実施態様としたもの(同(d))、具体的実施態様を実現する精米装置の要件(同(e))、及び1台の1回通過式という特定の場合に用いる精白ロールの知見(同(f))から、これらの方法、特に、(e)の(1)?(4)の方法を組合せることによって、できるだけ米粒同士の剥離差を生じなくなるような均一な精米を行うようにすれば、本件特許発明の課題である、米粒の亜糊粉細胞層と胚盤を残して、旨み成分と栄養成分を保持した無洗米を得る前段階としての、摩擦式精米機により亜糊粉細胞層が表面に露出するように搗精された米粒を得ることができることを理解できる。

また精米工程において亜糊粉細胞層が表面に露出している米粒ができているか否かを判断する手法としては、亜糊粉細胞層を有する米粒の白度は35?38程度になることを基礎として、ミニチュア機と、白度計と、炊飯器と、黄色度計とを用いて試験搗精をすることによって、精米する各ロットについて、亜糊粉細胞層が表面に露出した際にどの程度の白度となるのかを確認したうえで、それに基づいて、白度を見ながら実際の精米工程を実施すれば、亜糊粉細胞層が表面に露出した状態の米粒を得ることができるといえる。

そして、試験搗精等において、白度が35?38の米粒が、実際に亜糊粉細胞層を表面に有するか否かを確認する具体的方法については、摘記(1h)の段落【0042】及び【0044】に、亜糊粉細胞層が表面に露出している米粒から得られた無洗米は、従来の完全精白米や高白度の分搗き米と同様の白度を有しつつも、これらよりも多量のマルトオリゴ糖を含んでいることが示されているから、これを指標にする等して確認できるといえる。

c よって、本件特許発明1の課題である米粒の亜糊粉細胞層と胚盤を残して、旨み成分と栄養成分を保持した無洗米を提供する前段階としての、「摩擦式精米機により亜糊粉細胞層が表面に露出するように搗精された米粒」に関しては、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、提供できるように記載されているといえ、当業者が課題を解決することができると認識できるといえる。


(ア-2)観点1に関する請求人の主張について
前記(1-1)のア?エに示した、請求人の観点1に関する主張について以下に検討する。

a 請求人の主張アについて
請求人は、米粒の表面に亜糊粉細胞層が露出していることが証明されていないことを問題にしているが、上記(アー1)において述べたとおり、亜糊粉細胞層を有する米粒の白度は35?38程度になることを基礎として、ミニチュア機と、白度計と、炊飯器と、黄色度計とを用いて試験搗精をすることによって、精米する各ロットについて、亜糊粉細胞層が表面に露出した際にどの程度の白度となるのかを確認したうえで、それに基づいて、白度を見ながら実際の精米工程を実施すれば、亜糊粉細胞層が表面に露出した状態の米粒を得ることができるといえる。そして試験搗精等において、亜糊粉細胞層を表面に有するか否かを具体的に確認する方法については、精米後の白度の他、亜糊粉細胞層が表面に露出している米粒から得られた無洗米は、従来の完全精白米や高白度の分搗き米と同様の白度を有するが、これらよりも多量のマルトオリゴ糖を含んでいることを指標にする等して確認できるといえる。
したがって、請求人の上記主張アは採用できない。

b 請求人の主張イについて
請求人は、亜糊粉細胞層が表面に露出した米粒を得るには、亜糊粉細胞層を検知することができるセンサを備えた超微細加工が可能な精米機の必要性、及び、わずか一層の亜糊粉細胞層で表面が覆われた状態の精白米を製造する精密加工の困難性に関して主張しているが、センサを備えた精米機がなくとも、上記aでも述べたとおり、亜糊粉細胞層を有する米粒の白度は35?38程度になることを基礎として、ミニチュア機と、白度計と、炊飯器と、黄色度計とを用いて試験搗精をすることによって、精米する各ロットについて、亜糊粉細胞層が表面に露出した際にどの程度の白度となるのかを確認したうえで、それに基づいて、白度を観察しながら実際の精米工程を実施すれば、亜糊粉細胞層が表面に露出した状態の米粒を得ることができるといえる。
したがって、請求人の上記主張イは採用できない。

c 請求人の主張ウについて
請求人は、白米の白度や成分分析に関する、精米工程の最中の白度検出及び精米機制御の記載がないことを問題にしているが、精米機に白度計が装着されていなくとも、操作者が、試験搗精を経て定めた各ロット玄米の目標白度を有する精白米を得るために、精米機の出口から排出される精白米を見たり、手元にある白度計で白度計測したりした結果に基づいて、精米機を操作することは適宜可能であるといえるし、精米機に白度計が装備されていない限りは、精米工程における白度調整を行うことができないといえる根拠は、請求人から提示された証拠及び被請求人から提示された証拠のいずれからも見出すことができない。

また請求人は甲第10号証を提示し、本件特許発明1の無洗米を製造する際には、白度計は使用しておらず、熟練の精米オペレーターの視覚・触覚に基づく経験と勘によって製造している旨主張するが、甲第10号証に記載された“金芽米”が、本件特許発明1の無洗米に対応する製品であるのかという点は立証されていないことに加え、ウェブサイトに掲載される製品関連の情報は、あくまで一般消費者向けに、製品の概要を説明するために提供されているものであるから、当該ウェブサイトに白度計を使うことが記載されていないからといって、実際の精米工程において白度計を用いていないとはいえない。

したがって、請求人の上記主張ウは採用できない。

d 請求人の主張エについて
請求人は、米粒の表面に亜糊粉細胞層が露出していることを確認する手段についての、被請求人の米粒の白度、あるいはマルトオリゴ糖の含有量による確認に関する主張に対して、白度35?38の米粒は、亜糊粉細胞層の有無に関係なく、精米過程で必ず現れるし、マルトオリゴ糖の含有量が十分でも、亜糊粉細胞層は、玄米中にも存在しているので、いずれの指標も亜糊粉細胞層が露出している証拠ではない旨主張している。
しかしながら、上記a及びbでも述べたとおり、亜糊粉細胞層を有する米粒の白度は35?38程度になることを基礎として、ミニチュア機や白度計等を用いて試験搗精をすることによって、精米する各ロットについて、亜糊粉細胞層が表面に露出した際の白度を確認したうえで、それに基づいて、白度を見ながら実際の精米工程を実施すれば、亜糊粉細胞層が表面に露出した状態の米粒を得ることができるといえる。そして試験搗精において、亜糊粉細胞層を表面に有するか否かを具体的に確認する方法については、精米後の白度の他、亜糊粉細胞層が表面に露出している米粒から得られた無洗米は、従来の完全精白米や高白度の分搗き米と同様の白度を有するが、これらよりも多量のマルトオリゴ糖を含んでいることを指標にする等して確認できるといえる。
したがって、請求人の上記主張エは採用できない。


(ア-3)観点2:「無洗米機により、亜糊粉細胞層が表面に露出するように搗精された米粒に付着している肌ヌカを除去された無洗米」について
本件特許発明1の、亜糊粉細胞層と胚盤を残して、旨み成分と栄養成分を保持した無洗米を製造するにあたっての、亜糊粉細胞層が表面に露出するように搗精された米粒に付着している肌ヌカを除去する工程について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、摘記(1e)の段落【0031】に、無洗米機は肌ヌカを除去できるものであればどれでもよいとされ、摘記(1g)の段落【0041】に、精米機で仕上げられたままの米粒上には肌糠が表面に付着しているため、これを無洗米機で除去すると記載され、無洗米機を用いるのは、手作業や洗米機でゴシゴシと米を研いだ時のように、剥離しやすい亜糊粉細胞層や胚盤が流出してしまうことがないからであると記載されている。
したがって、当業者は、ゴシゴシと米を研ぐことのないような無洗米機を用いれば、亜糊粉細胞層や胚盤を流出させずに肌ヌカを除去することが可能であると認識できる。

よって、本件特許発明1の課題である米粒の亜糊粉細胞層と胚盤を残して、旨み成分と栄養成分を保持した無洗米を提供するための、「無洗米機により、亜糊粉細胞層が表面に露出するように搗精された米粒に付着している肌ヌカを除去された無洗米」に関しては、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、提供できるように記載されているといえ、当業者が課題を解決することができると認識できるといえる。


(ア-4)観点2に関する請求人の主張オについて
a 請求人は、甲第2号証?甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証を示したうえで、亜糊粉細胞層が表面に露出している精白米から、当該細胞層を全く脱落させることなく、肌ヌカのみを都合良く分離除去できる無洗米機は世の中に存在せず、水洗式無洗米機を用いた場合には、水溶性の亜糊粉細胞層は流れ落とされてしまう旨主張する。

しかしながら、【0044】の【表1】には、マルトオリゴ糖を豊富に含んでおり、亜糊粉細胞層を有する、食味にも優れた無洗米が得られていることが示されているから、無洗米機によって、亜糊粉細胞層を脱離させることなく、肌ヌカのみを除くことは可能であるものといえる。

b また、甲第2号証?甲第8号証については、精白米の表面に付着している肌ヌカを除いた、いわゆる無洗米の製造方法として、それぞれの課題認識の下、従来から様々なものが発明され、特許取得されていることを示しているだけであって、本件特許の出願時において、無洗米機によって亜糊粉細胞層と胚盤を残したまま肌ヌカを除去することができなかったことを示すものではない。

さらに甲第10号証と甲第11号証については、そもそも、これらのウェブサイトに記載されている“金芽米”が、本件特許発明1の無洗米に対応するものであることが立証されてはいないため、これらを本件特許発明1の無洗米と直接結びつけて議論することはできない。
仮にこれらの“金芽米”が本件特許発明1の無洗米と関連があるとしても、甲第10号証については、亜糊粉細胞層が水に溶けやすいため、研ぎ洗いしなくても良いように無洗米に仕上げていることを示しているだけで、無洗米機を用いることによって、亜糊粉細胞層と胚盤を残したまま肌ヌカを除去することができなかったことを示すものではない。
甲第11号証についても同様に、BG無洗米機や金芽米の開発経緯を単に示しているだけで、無洗米機を用いることによって、亜糊粉細胞層と胚盤を残したまま肌ヌカを除去することができなかったことを示すものではない。

c したがって、請求人の上記主張オは採用できない。


(ア-5)観点3:得られた無洗米の性状について
上記の精米工程及び無洗米機による肌ヌカ除去工程を経て得られる無洗米について本件特許明細書の発明の詳細な説明には、摘記(1h)の段落【0043】と【0044】の【表4】に、完全精白米と比べてビタミンE、B1、B2、食物繊維及びマルトオリゴ糖類の割合が高いことに加え、食味については、栄養価が高い玄米、胚芽米、7分搗き米のみならず、完全精白米と比べても食味官能に優れていることが示されている。
したがって、最終的に、本件特許発明1の課題である米粒の亜糊粉細胞層と胚盤を残して、旨み成分と栄養成分を保持した無洗米を提供するという課題を解決できると当業者が認識できるといえる。


(アー6)本件特許発明1についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、
「摩擦式精米機により亜糊粉細胞層が表面に露出するように搗精された米粒」を得ることができ、
「無洗米機により、亜糊粉細胞層が表面に露出するように搗精された米粒に付着している肌ヌカを除去された無洗米」を得ることができ、
得られた無洗米が、「旨み成分と栄養成分を保持」していることが示されているから、
最終的に、当業者は米粒の亜糊粉細胞層と胚盤を残して、旨み成分と栄養成分を保持した無洗米を提供するという本件特許発明1の課題を解決できると認識できる。

したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明である。


(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、旨み成分と栄養成分を保持した無洗米の製造方法として、
精米工程において、
「摩擦式精米機を全行程の終末寄りから少なくとも3分の2以上の行程に用いることによって」、「マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)を米粒の表面に露出させ、且つ搗精後の米粒の50%以上に『胚芽(7)の表面部を削りとられた胚芽(8)』または『舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部を削り取り、残された基底部である胚盤(9)』を残した、白度35?38の精白米に仕上げ」、
無洗米による肌ヌカ除去工程において、
「前記白度35?38の精白米を、更に無洗米機(21)により『肌ヌカ』のみを除去する無洗米処理をして、『肌ヌカ』のみが除去された、白度41以上となるように仕上げる」
ことを特定したものである。

そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明から、精米工程については、上記(ア-1)において述べたのと同様の理由により、表面に亜糊粉細胞層が露出した、白度35?38の米粒を得る精米方法が記載されていると当業者は認識できるし、精米後の無洗米機による肌ヌカ除去工程については、上記(ア-3)において述べたのと同様の理由により、亜糊粉細胞層を脱離させることなく、肌ヌカのみが除かれた無洗米を得る方法が記載されていることも当業者は認識できる。そして、上記(ア-5)において述べたとおり、それらの工程を経て得られた無洗米が、栄養価が高くかつ食味官能に優れていることも当業者が認識できるから、最終的に、当業者が、白米でありながら、米粒の亜糊粉細胞層と胚盤を残して、旨み成分と栄養成分を保持した無洗米の製造方法を提供するという、本件特許発明2の課題を解決できると認識できる。

したがって、本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載された発明である。


(ウ)本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明2を引用し、無洗米を炊飯したときの黄色度が13?18になることを特定したものである。
そして、上記(イ)において本件特許発明2について述べたとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、白米でありながら、米粒の亜糊粉細胞層と胚盤を残して、旨み成分と栄養成分を保持した無洗米の製造方法を提供するという課題を解決できることが記載されているといえるし、摘記(1h)の段落【0043】には、米粒の亜糊粉細胞層と胚盤を残して、旨み成分と栄養成分を保持した無洗米を、ご飯に炊き上げると、僅かに黄色みを帯びた黄色度13?18になると記載されているから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、炊飯後のお米の状態を含めて、白米でありながら、米粒の亜糊粉細胞層と胚盤を残して、旨み成分と栄養成分を保持した無洗米の製造方法を提供するという、本件特許発明3の課題を解決することが記載されているといえる。

したがって、本件特許発明3は、発明の詳細な説明に記載された発明である。


(エ)請求人のその他の主張について
a 請求人は、サポート要件に関して下記のカ及びキの主張をしている。

カ 甲第1号証に基づいて、被請求人のウェブサイト上では、亜糊粉細胞層が実際は白米と同じ色をしていると記載されており、本件特許発明1の無洗米における亜糊粉細胞層の「薄黄色」とは異なっているから、出願当時、被請求人は亜糊粉細胞層を検知できていなかったといえる。

キ 甲第9号証に基づいて、亜糊粉細胞層は、従来から教科書的文献において詳細に紹介され、栄養的見地から極めて重要であることが知られていたから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の亜糊粉細胞層に関する知見が新規であるとの記載(段落【0017】)と整合していない。

b しかしながら、甲第1号証はそもそも、“金芽米”が本件特許発明1の無洗米に対応するものであることが立証されてはいないため、これを本件特許発明1の無洗米と直接結びつけて議論することはできない。
さらに、ウェブサイト上の内容は、消費者向けにその構造を見た目でわかりやすくする場合もあるといえるし、本件特許明細書の発明の詳細の段落【0043】の記載から、亜糊粉細胞層を有する無洗米は、炊き上げると僅かに黄色みを帯びるものであり、その点を考慮に入れて亜糊粉細胞層を「薄黄色」と表現したものともいえるから、甲第1号証は、被請求人が亜糊粉細胞層を検知できていなかったことの根拠となるものでない。

c また甲第9号証についても、記載されているのは、ぬか層以外の層に含まれるミネラル分の大半は、白米表層の亜糊粉層付近に集まっていることであって、亜糊粉層自体にミネラルがあるとまではいっていないから、請求人の主張の根拠となるものではない。

d したがって、請求人の上記主張は採用できず、サポート要件に関する前記判断に影響を与えない。


(オ)被請求人の要旨変更に関する主張について
被請求人は、口頭審理・証拠調べにおいて、請求人による、口頭審理陳述要領書における甲第2号証?甲第9号証及に基づく主張、及び令和元年11月19日付け上申書における甲第10号証及び甲第11号証に基づく主張はいずれも、請求の理由を変更するものであるから、これらの証拠は採用すべきでないと主張している(第1回口頭審理調書)。
しかしながら、甲第2号証?第8号証、第10号証及び第11号証はいずれも、審判請求書で既になされた主張である、水洗式無洗米機を使用すれば、水溶性の亜糊粉細胞層など一瞬で流されてしまうという主張(上記(1-1)のオ:甲第2号証?第8号証、第10号証及び第11号証について)、あるいは精米工程中に白度を制御することが困難であるという主張(上記(1-1)のウ:甲第10号証)が技術常識であることを示すための間接事実立証のための間接証拠である。また、甲第9号証についても、米粒の構造について本件特許の出願前に知られていた技術常識を示しているに過ぎない。
したがって、あくまで本件特許発明1?3が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されていない(実証されていない)ことを主張するという点においては主要事実に変わりがないものと認められるので、これらの証拠の追加が請求の理由の要旨の変更にあたるとはいえない。


(1-3)無効理由1についてのまとめ
以上に述べた理由から、本件特許発明1?3を、請求人の主張する無効理由1(サポート要件違反)によって無効にすることはできない。


(2)無効理由2(特許法第36条第6項第2号:明確性要件違反)について
(2-1)無効理由2(明確性要件違反)の具体的内容
請求人が主張する無効理由2(明確性要件違反)の具体的内容は、概略、以下のア及びイのとおりである。

ア 本件特許発明1は、無洗米の正確な状態・構造を記載すべきであるのに、玄米粒と精白米の構成が殆どで、肝心の無洗米の状態が記載されていないし、精白米の構成は、実現不可能な、実証されていない希望的構造・発明が目的とする構造のみで特定されている(審判請求書第9頁、第10頁、口頭陳述要領書第42頁、第43頁)。

イ 本件特許発明2及び3は、希望的状況のみが記載されていて、その希望的状況をどのように実現するかが記載されていないし、亜糊粉細胞層の露出、白度35?38の精白米に仕上げること、及び肌ヌカのみを除去する無洗米処理についても、単に発明の目的を記載しているだけで方法の発明を記載しているとはいえず、発明の特定事項の技術的意味を当業者が理解できず、さらに本件特許の出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかである(審判請求書第11頁?第15頁、令和元年9月25日付け上申書第4頁、口頭審理陳述要領書第43頁?第45頁)。


(2-2)無効理由2について当審の判断
明確性要件の判断の前提
特許法第36条第6項第2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。
そして、特許を受けようとする発明が明確か否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断される。

イ 本件特許発明1について
(ア)本件特許発明1に係る請求項1の記載
本件特許発明1に係る請求項1の記載について検討する。

a 「外から順に、表皮(1)、果皮(2)、種皮(3)、糊粉細胞層(4)と、澱粉を含まず食味上もよくない黄茶色の物質の層により表層部が構成され、該表層部の内側は、前記糊粉細胞層(4)に接して、一段深層に位置する薄黄色の一層の亜糊粉細胞層(5)と、該亜糊粉細胞層(5)の更に深層の、純白色の澱粉細胞層(6)により構成された玄米粒において」との記載は、一般的な玄米粒の構造を特定しているものであり、技術常識からみて技術的意味が不明確なものではない。

b また、「前記玄米粒を構成する糊粉細胞層(4)と亜糊粉細胞層(5)と澱粉細胞層(6)の中で、摩擦式精米機により搗精され、表層部から糊粉細胞層(4)までが除去された、該一層の、マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層(5)が米粒の表面に露出しており」との記載は、マルトオリゴ糖類、食物繊維及び蛋白質を含有する亜糊粉細胞層が米粒の最外層に存在している構造を特定しているものであり、不明確なものではない。また前記(ア-1)で述べたとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、表面に亜糊粉細胞層を有する米粒が得られることが記載されており、これが希望的構造や単なる目的だけを記載した構造であるともいえないし、前記(1)オの(ア-4)及び(エ)で検討したように、甲第1号証?第8号証、第10号証及び第11号証を考慮しても、技術常識から、発明特定事項が不足しているともいえないので、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。

c さらに、「且つ米粒の50%以上に『胚芽(7)の表面部を削りとられた胚芽(8)』または『舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部が削り取られた基底部である胚盤(9)』が残っており」との記載も、表面が削られた胚芽、あるいは胚芽の表層部や突出部が削り取られた基底部分のみである胚盤を有する米粒が、全体の50%以上を占めていることを特定しているものであり、物の構造の特定として不明確なものではない。

d そして、「更に無洗米機(21)にて、前記糊粉細胞層(4)の細胞壁(4’)が破られ、その中の糊粉顆粒が米肌に粘り付けられた状態で米粒の表面に付着している『肌ヌカ』のみが分離除去されてなることを特徴とする旨み成分と栄養成分を保持した無洗米。」との記載についても、肌ヌカが分離除去されていることを特定しているのであるから、その構造が不明確であるとはいえないし、前記(ア-3)で述べたとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、肌ヌカのみの分離除去ができることが記載されているから、これが希望的構造や単なる目的だけを記載した構造であるともいえないし、技術常識から、発明特定事項が不足しているともいえないので、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。

(イ)小括
したがって、本件特許発明1に係る請求項1の記載は、希望的記載や、単なる発明の目的の記載があることにより、発明の特定事項の技術的意味を当事者が理解できず、さらに、本件特許の出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるとはいえず、そのことによって、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
したがって、本件特許発明1は不明確なものではない。


ウ 本件特許発明2について
(ア)本件特許発明2に係る請求項2の記載
a 本件特許発明2に係る請求項2においては、「摩擦式精米機を全行程の終末寄りから少なくとも3分の2以上の行程に用いる」ことにより、「マルトオリゴ糖類や食物繊維や蛋白質を含有する亜糊粉細胞層を米粒の表面に露出させ、且つ搗精後の米粒の50%以上に『胚芽(7)の表面部を削りとられた胚芽(8)』または『舌触りの良くない胚芽(7)の表層部や突出部を削り取り、残された基底部である胚盤(9)』を残した、白度35?38の精白米に仕上げる」という具体的な精米工程が記載されているから、当該工程が不明確であるとはいえない。

b また、「前記白度35?38の精白米を、更に無洗米機(21)により『肌ヌカ』のみを除去する無洗米処理をして、『肌ヌカ』のみが除去された、白度41以上となるように仕上げる」工程については、本件特許の発明の詳細の段落【0031】の記載からすると、本件特許の出願時に存在していた無洗米機の中から適宜選択して用いればよいと理解できるから、本件特許発明2を実現するための無洗米処理工程は、本件の発明の詳細の記載及び本件特許の出願時の技術常識に照らし明らかである。

c そして、前記(ア-1)、(ア-3)及び(ア-5)において述べたのと同様の理由により、精米工程において亜糊粉細胞層が米粒の表面に露出し、かつ米粒の50%以上に胚芽の表面部を削りとられた胚芽又は胚盤が残っている精白米を作ること、無洗米機により得られた精白米から『肌ヌカ』のみを除去すること、及び旨み成分と栄養成分を保持した無洗米を得ることはいずれも実現可能であり、希望的状況でないことは明らかである。

(イ)小括
したがって、本件特許発明2に係る請求項2の記載は、希望的記載や、単なる発明の目的の記載があることにより、発明の特定事項の技術的意味を当事者が理解できず、さらに、本件特許の出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるとはいえず、そのことによって、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
したがって、本件特許発明2は不明確なものではない。


エ 本件特許発明3について
本件特許発明3に係る請求項3は、本件特許発明2に係る請求項2を引用したうえで、無洗米を炊飯した後の黄色度を特定しているものであるから、上記ウで本件特許発明2について検討したのと同様の理由により、その記載が、希望的記載や、単なる発明の目的の記載があることにより、発明の特定事項の技術的意味を当事者が理解できず、さらに、本件特許の出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるとはいえず、そのことによって、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
したがって、本件特許発明3も不明確なものではない。


オ 請求人の無効理由2に関する主張(発明の特定事項の技術的意味を当業者が理解できず、さらに本件特許の出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであること)について

請求人は、審判請求書の第12頁?第14頁において、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0029】、【0037】、【0038】の内容を本件特許発明2及び3に入れ込まれていなければならなかったことは明らかであると主張している。
しかしながら、上記で述べたとおり、各発明特定事項の技術的意味を当業者が理解できないとはいえないし、本件特許発明2及び3には、少なくとも「摩擦式精米機を全行程の終末寄りから少なくとも3分の2以上の行程に用いる」という具体的工程が記載され、段落【0037】には、「それらの(1)?(4)の全てを満たすことは相乗効果も働き最もよいが、その内の各項目の一つでもそれなりの効果を有するものである。」と記載されているのであるから、少なくとも「摩擦式精米機を全行程の終末寄りから少なくとも3分の2以上の行程に用いる」という工程があれば、表面に亜糊粉細胞層を有する米粒を得ることができるといえる。
また、当該工程以外の方法(段落【0037】記載の(2)?(4)の工程)が全てないと、表面に亜糊粉細胞層を有する米粒を得ることができないとは、発明の詳細な説明において説明されていないとともに、そのことが技術常識であることを、甲第1号証?第8号証、第10号証及び第11号証を考慮したとしても、請求人が立証しているわけでもない。
したがって、本件特許の出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるとはいえず、請求人の上記主張は採用できない。


(2-3)無効理由2についてのまとめ
以上に述べた理由から、本件特許発明1?3を、請求人の主張する無効理由2(明確性要件違反)によって無効にすることはできない。


第7 結び
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許発明1?3に係る特許を無効にすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-12-26 
結審通知日 2020-01-09 
審決日 2020-01-24 
出願番号 特願2005-93152(P2005-93152)
審決分類 P 1 113・ 537- Y (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長井 啓子  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 村上 騎見高
中島 芳人
登録日 2011-03-25 
登録番号 特許第4708059号(P4708059)
発明の名称 旨み成分と栄養成分を保持した無洗米  
代理人 藤井 淳  
代理人 平野 和宏  
代理人 高田 一  
代理人 井内 龍二  
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