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審決分類 審判 一部無効 判示事項別分類コード:547  E04G
審判 一部無効 2項進歩性  E04G
管理番号 1377099
審判番号 無効2019-800073  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-09-25 
確定日 2021-08-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第4446127号発明「基礎コンクリート形成用型枠の支持具」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第4446127号(以下「本件特許」という。平成19年5月29日出願、平成22年1月29日登録、請求項の数は6である。)の特許請求の範囲の請求項1、2及び4?6に係る特許を無効とすることを求める事案であって、その手続の経緯(無効理由に係る主張に関するもの。)は、以下のとおりである。

令和 1年 9月25日:審判請求書提出
令和 1年12月11日:審判事件答弁書提出
令和 2年 1月22日:審理事項通知(起案日)
令和 2年 3月23日:口頭審理陳述要領書提出(請求人)
令和 2年 3月23日:口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
令和 2年 3月26日:口頭審理期日延期通知書(起案日)
令和 2年 5月15日:書面審理通知書(起案日)
令和 2年 6月18日:第1回口頭審尋
令和 2年 6月23日:上申書(3)提出(請求人、差出日)
令和 2年 7月 8日:上申書提出(被請求人)


第2 本件特許発明について
1 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件特許発明1」等といい、全体を「本件特許発明」という。)は、本件特許公報の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるところ、その本件特許発明1、2、4、5及び6は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
基礎コンクリート(30)を形成するために使用される型枠(20)の位置を固定するための支持具(10)であって、
全体を薄板によって形成するとともに、前記型枠(20)の側端面に当接される基部(11)と、この基部(11)の外側端部に一体化されて前記型枠(20)の外側角部(21)に係止される外側係止部(12)と、前記基部(11)の内側端部に一体化されて前記型枠(20)の内側角部(22)に係止される内側係止部(13)と、前記基部(11)の内側端部に一体化されて、前記基礎コンクリート(30)に埋設されることになるアンカー部(14)とを備えたものとし、
さらに、前記基部(11)とアンカー部(14)との間に、このアンカー部(14)から前記基部(11)を折り取るための折取部(15)を形成したことを特徴とする型枠(20)のための支持具(10)。
【請求項2】
前記内側係止部(13)を、前記型枠(20)の内側表面に弾発的に当接する弾性片としたことを特徴とする請求項1に記載の型枠(20)のための支持具(10)。
【請求項4】
前記アンカー部(14)の一部に、固化した前記基礎コンクリート(30)内での抵抗となるアンカー突起(14a)を形成したことを特徴とする請求項1?請求項3のいずれかに記載の型枠(20)のための支持具(10)。
【請求項5】
前記アンカー部(14)の一部に、アンカー穴(14b)を形成したことを特徴とする請求項1?請求項4のいずれかに記載の型枠(20)のための支持具(10)。
【請求項6】
前記基部(11)に、前記型枠(20)の側端面に形成してある連結ピンのための回避穴(11b)を形成したことを特徴とする請求項1?請求項5のいずれかに記載の型枠(20)のための支持具(10)。」


第3 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人は、本件特許発明の特許請求の範囲の請求項1、2、4、5及び6に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(審判請求書、口頭審理陳述要領書、上申書(3)参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証を提出している。

〔無効理由〕
1.特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであるから、本件特許の請求項1,2、4、5及び6に係る発明(以下「本件特許発明1」等という。)についての特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
2.本件特許発明1、2、4、5及び6は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された技術事項、及び周知技術に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号の該当し、無効とすべきである。
(審理事項通知書の2、参照。)

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。

甲第1号証:実用新案登録第3119713号公報
甲第2号証:特開2003-105971号公報
甲第3号証:実願昭57-113770号(実開昭59-19710号) のマイクロフィルム
甲第4号証:特開平5-195623号公報
甲第5号証:特開平7-279425号公報
甲第6号証:実願昭63-17858号(実開平1-122142号)
のマイクロフィルム、
甲第7号証:特開2003-343084号公報
甲第8号証:実願昭51-35045号(実開昭52-125826号) のマイクロフィルム
甲第9号証:実願昭55-57561号(実開昭56-159551号) のマイクロフィルム、
甲第10号証:特開平6-280390号公報
甲第11号証:特開平11-200626号公報
甲第12号証:実願昭48-90656号(実開昭50-38117号)
のマイクロフィルム
甲第13号証:特開平9-324429号公報
甲第14号証:エヌ・エス・ピー住宅基礎関連総合カタログ、令和2年
2月10日出力、株式会社エヌ・エス・ピー、URL: http
://www.kknsp.jp/wp-content/uploads/2019/11/nsp-catalog
-vol10.pdf
甲第15号証:環境への取り組み、株式会社東海建商、
令和2年2月10日出力、
URL: http://www.tokai-kensho.com/op.html

3 請求人の具体的な主張
(1)無効理由1
ア 本件特許請求の範囲の請求項1には、外側角部(21)及び内側角部(22)に対する係止のための具体的手段が示されていない。
すなわち、本件明細書には、発明の目的について「(コンクリートを)2度打ちする際の型枠20の支持を確実に行うことができて、構造が簡単で安価に提供することのできる支持具10を提案することにある。」と記載されている。従って、型枠によって囲まれた領域に生コンクリートを流し込んだ際にも、支持具が型枠に対して取付けた位置からずれないことが必要となる。
しかしながら、本件明細書の段落0016に記載されるように、「支持具10」を「基部11、外側係止部12、及び内側係止部13によって一つの型枠20の側端面を包み込むようにしながら」取り付けることのみでは、支持具は、型枠に対して上下方向において規制されずに移動自在であるため、外側の型枠の内側に流し込まれた生コンクリートによって下方へ押圧されて、型枠からずり下がる現象が発生し、確実な係止はされ得ないものと考えられる。
したがって、本件特許発明1、2、4、5及び6は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
(審判請求書33頁下から7行?34頁15行)

イ 支持具が型枠の適切な高さ位置よりも下方に移動してしまい、その状態でアンカー部がベース部に埋設された場合、型枠の外側への開きを防止するという作用効果が減少又は発揮されない恐れがある。
また、支持具が下方にずれる要因は、生コンクリート流し込みにおける生コンクリートの重みには限られず、生コンクリートの締め固めのためのバイブレータの振動が、ずれの要因となる場合もある。
さらに、支持具を型枠へ取付けた後、生コンクリートの流し込み開始前にも発生し得る。
以上説明したように、生コンクリート流し込み前或いは流し込み中に支持具が下方へ移動しないように型枠に固定することは、型枠の外側への開きを防止するという課題解決のために必須である。よって、外側角部及び内側角部に対する係止のための具体的手段が示されていない本件特許発明1、2、4-6には記載不備の無効理由が存在する。
(口頭審理陳述要領書16頁20行?17頁12行)

(2)証拠に記載の発明
ア 甲第1号証
甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「A.基礎コンクリート(C、BC)を形成するために使用される型枠(1)の位置を固定するための支持具(8)であって、
B.全体を薄板(9)によって形成するとともに、
C.前記型枠(1)の側端面に当接される基部(9の幅狭となる他端側)と、
F.前記基部(9の他端側)の内側端部に一体化されて、前記基礎コンクリート(C、BC)に埋設されることになるアンカー部(9の一端側)とを備えたものとし、
G1.さらに、前記基部(9の他端側)とアンカー部(9の一端側)との間に、このアンカー部(9の一端側)から前記基部(9の他端側)を切断するための切り欠き(13a,13b)を形成したことを特徴とする
H.型枠(1)のための支持具(8)。」
「K.前記アンカー部(9の一端側)の一部に、アンカー穴(6)を形成した支持具(8)。」
「L.前記基部(9の他端側)に、前記型枠(1)の側端面に形成してある連結ピンのための回避穴(6)を形成した支持具(8)。」
(審判請求書19頁21行?20頁10行)

イ 甲第2号証
甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
「A.基礎コンクリートを形成するために使用される型枠(3)の位置を固定するための支持具(10)であって、
C.前記型枠(3)の側端面に当接される基部(12)と、
D.この基部(12)の外側端部に一体化されて前記型枠(3)の外側角部に係止される外側係止部(17)と、
E.前記基部(12)の内側端部に一体化されて前記型枠(3)の内側角部に係止される内側係止部(15)と、
F.前記基部(12)の内側端部に一体化されて、前記基礎コンクリートに埋設されることになるアンカー部(11)とを備えたものとし、
G.さらに、前記基部(12)とアンカー部(11)との間に、このアンカー部(11)から前記基部(12)を折り取るための折取部(18)を形成したことを特徴とする
H.型枠(3)のための支持具(10)。」
「L.前記基部(12)に、前記型枠(3)の側端面に形成してある連結ピンのための回避穴(16)を形成したことを特徴とする型枠(3)のための支持具(10)。」
(審判請求書22頁18行?23頁6行)

(3)無効理由2(その1:甲第1号証を主引用例として検討)
ア 対比
(ア)本件特許発明1と甲1発明とは、以下の点で相違する。
相違点1:本件特許発明1は、「D.この基部(11)の外側端部に一体化されて前記型枠(20)の外側角部(21)に係止される外側係止部(12)」及び「E.前記基部(11)の内側端部に一体化されて前記型枠(20)の内側角部(22)に係止される内側係止部(13)」を備えているが、甲1発明はこれらを備えていない点。
相違点2:一致点の「G’.さらに、前記基部とアンカー部との間に、このアンカー部から前記基部を分離するための分離部D’を形成したことを特徴とする」に関し、本件特許発明1は、「G.さらに、前記基部(11)とアンカー部(14)との間に、このアンカー部(14)から前記基部(11)を折り取るための折取部(15)を形成したことを特徴とする」のに対し、甲1発明は、「G1.さらに、前記基部(9の他端側)とアンカー部(9の一端側)との間に、このアンカー部(9の一端側)から前記基部(9の他端側)を切断するための切り欠き(13a,13b)を形成したことを特徴とする」ものである点。
(審判請求書35頁9?22行)

イ 判断
(ア)相違点1について検討するに、甲2発明における「規制部17」は、本件特許発明1における「外側係止部(12)」に相当し、同様に「規制部15」は「内側係止部(13)」に相当する。よって、甲2発明は、本件特許発明1の「D.この基部(11)の外側端部に一体化されて前記型枠(20)の外側角部(21)に係止される外側係止部(12)」及び「E.前記基部(11)の内側端部に一体化されて前記型枠(20)の内側角部(22)に係止される内側係止部(13)」を備えている。尚、コンクリート型枠の支持具において外側係止部及び内側係止部を設ける点は、甲第3号証?甲第7号証の各記載事項から明らかなように、周知技術である。
(審判請求書35頁23行?36頁5行)

(イ)甲第1号証に記載の型枠傾倒防止具8,8’と甲第2号証に記載の段付き中間巾止め金具とは、本件特許発明1の支持具と同様に、基礎コンクリートを施工する際に型枠保持するために使用される保持具である点で共通し且つ当業者も同一であるから、両者の技術分野は関連するものである。
基礎コンクリートを形成するために使用される型枠の位置を固定するために型枠間に挟持される支持具において、型枠の側端面の所定部位に対して正しい姿勢で位置決し且つ位置決め状態を維持することは、当該支持具における自明の課題であり、甲第1号証に記載の型枠傾倒防止具8,8’と甲第2号証に記載の段付き中間巾止め金具10とは、共通の課題を有している。
甲第1号証に記載の型枠傾倒防止具8,8’と、甲第2号証に記載の段付き中間巾止め金具10とは、アンカー部が基礎コンクリート内に埋設されて型枠の傾倒を防止する点、並びに、型枠の離脱後に基礎コンクリートの外壁面から突出した部位を取り除くことができ、コンクリート基礎壁面を突出物が存在しない平滑な壁面とすることができる点で、作用が共通する。
甲第1号証に記載の型枠傾倒防止具8,8’と、甲第2号証に記載の段付き中間巾止め金具10とは、技術分野、課題、及び作用を共通とするものであるから、甲第1号証に記載の型枠傾倒防止具8,8’に、甲第2号証に記載の規制部15及び規制片17を適用する十分な動機付けが存在する。
(口頭審理陳述要領書5頁下から2行?6頁2行、8頁16?20行、9頁下から6?2行、10頁1?5行)

(ウ)甲第1号証に記載の型枠傾倒防止具8,8’と周知例として挙げた甲第3号証?甲第7号証に記載の保持具や金具とは、本件特許発明1の支持具と同様に、コンクリートを施工する際に型枠を保持するために使用される保持具である点で共通する。従って、甲第1号証に記載の型枠傾倒防止具8,8’と周知例として挙げた甲第3号証?甲第7号証に記載の保持具や金具とは、両者の技術分野が関連するものである。
第3号証?甲第7号証に記載の保持具や金具にも、コンクリート施工時に型枠を保持するという課題がある。従って、甲第1号証に記載の型枠傾倒防止具8,8’と甲第3号証?第7号証に記載の周知例とは、共通の課題を有している。
甲第1号証に記載の型枠傾倒防止具8,8’と、周知例として挙げた甲第3号証?甲第7号証に記載の保持具や金具とは、型枠と係合させる際の手順に注目して対比すれば、前者はそれ自体が型枠間に挟持され、後者は型枠をその保持具や金具に挿入するという点で相違する。しかしながら、支持具等の型枠への取付けからコンクリートの打設完了までの一連の過程における主要な作用、すなわち保持具の一端側がコンクリート内部に埋設されて他端側で型枠を保持する点に着目すれば、両者の作用が共通している。
甲第1号証に記載の型枠傾倒防止具8,8’と、周知例とした挙げた甲第3号証?甲第7号証に記載の保持具や金具とは、技術分野、課題、及び作用を共通とするものであるから、甲第1号証に記載の型枠傾倒防止具8,8’に、周知例を適用する十分な動機付けが存在する。
(口頭審理陳述要領書10頁13?18行、12頁1?4行、13頁下から5行?14頁2行、14頁4?7行)

(エ)相違点2について検討するに、甲2発明における「縦方向にミシン目状の分離部18」は、本件特許発明1における「折取部(15)」に相当する。よって、甲2発明は、本件特許発明1の「G.さらに、前記基部(11)とアンカー部(14)との間に、このアンカー部(14)から前記基部(11)を折り取るための折取部(15)を形成したことを特徴とする」構成を備えている。尚、コンクリート型枠の支持具においてアンカー部から基部を折り取るための折り取り部を形成した点は、甲第8号証?甲第11号証の各記載事項から明らかなように、周知技術である。
そして、甲2発明は、基礎コンクリートを形成するために使用される型枠を支持するための支持具に関する発明であり、本件特許発明1及び甲1発明と技術分野を同一にするものである。
従って、甲2発明を甲1発明に適用することは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に推考し得るものである。
(審判請求書36頁6?18、24?26行)

(4)無効理由2(その2:甲第2号証を主引用例として検討)
ア 対比
(ア)本件特許発明1と甲2発明とは、以下の点で相違する。
相違点3:本件特許発明1は、「B.全体を薄板によって形成するとともに、」との構成を備えているが、甲2発明は複数の薄板部材(挟着部12、金具本体11、規制片17)を固着して一体化することにより全体を形成している点。
(審判請求書38頁5?8行)

(イ)本件特許発明1では「全体を薄板によって形成するとともに」とのみ記載され、「基部(1)」、「外側係止部(12)」、「内側係止部(13)」及び「アンカー部(14)」が1枚の薄板から形成されることは特定されていない。従って、刊行物2の薄板からなる複数の部材を溶接等で一体化したものも、本件特許発明1における「基部(1)」、「外側係止部(12)」、「内側係止部(13)」及び「アンカー部(14)」を「一体化され」て「全体を薄板によって形成」したものに含まれるといえると考える。
(口頭審理陳述要領書2頁8?14行)

(ウ)甲第2号証の段落【0021】?【0023】、【0031】及び【0034】の規制部15及び規制片17についての記載、また図3には、規制部15は第1の型枠3の内側角部に、規制片17は第1の型枠3の外側角部にそれぞれ接する様子が図示されている点を総合すれば、規制部15及び規制片17は、第1の型枠3の厚さに対応する巾を有する挟着部12の両端に設けられて、第1の型枠3の側面に接するという構造を有するものであるから、規制部15及び規制片17は、第1の型枠3の角部に係止されるものかは不明であるが、少なくとも構造的には本件特許明細書に記載された外側係止部(12)及び内側係止部(13)と同様のものである。
(口頭審理陳述要領書3頁18行?4頁11行)

(エ)上記(イ)及び(ウ)のとおりとすれば、本件特許発明1と甲第2号証に記載の「段付き中間巾止め金具10」は同一といえる。
(口頭審理陳述要領書14頁10?14行)

イ 判断
(ア)相違点3について検討するに、甲1発明における「連結板9」は、本件特許発明1における「全体を薄板によって形成する」との構成を備えている。よって、甲1発明は、本件特許発明1の「B.全体を薄板によって形成するとともに、」との構成を備えている。さらに、全体を薄板によって形成したコンクリート型枠の支持具において、基部の外側端部に一体化された外側係止部及び基部の内側端部に一体化された内側係止部にそれぞれ相当する構成を設ける点は、甲第3号証?甲第7号証の各記載事項から明らかなように、周知技術である。
(審判請求書38頁9?19行)

第4 被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は、請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張する無効理由にはいずれも理由がない旨、主張している(審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書、上申書参照。)。

2 被請求人の具体的な主張
(1)無効理由1
本件特許発明1は、2度打ちする場合の型枠20の外側への開きを防止する支持具であって(段落【0011】参照)、本書(審決注:審判事件答弁書。以下同様。)4頁ないし5頁でも述べた通り、外側係止部(12)や内側係止部(13)によって型枠(20)に取り付けられることによって支持具が水平方向に固定され、アンカー部(14)がベース部(31)及び防湿部(33)内に埋設固定されていれば、型枠(20)をベース部(31)及び防湿部(33)に対してしっかりと固定することができるので、これにより型枠(20)の外側への開きを防止することができるのであって、本件特許発明1の課題を解決する上で、本件特許発明1の支持具が係止によって上下方向に全く移動しないように完全に固定されている必要はない。
本件特許発明1の課題を解決する上で、支持具(10)は、それ自体の自重等では容易に落下しない程度に型枠(20)に取り付けられていれば足り、生コンクリートを流し込んだ際に、多少下方にずれたとしても、アンカー部(14)がベース部(13)に埋設されれば、支持具(10)によって型枠(20)を支持固定することができるという作用効果を奏するものである。だからこそ、本件特許明細書中の実施例においても、上下方向についても移動不可能となるように完全に固定されるような構成にはなっていないのである。当業者であれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明や出願時の技術常識を考慮すれば、請求項1に更に係止のための具体的な手段が示されていなくとも、係止のための具体的な外側係止部(12)及び内側係止部(13)によって型枠(20)を挟み込む力を適宜調節し、本件特許発明1がその作用効果を奏するように、支持具(10)を型枠(20)に支持具(10)を適切に取り付けることは容易である。
したがって、請求人の「係止のための必要な手段が反映されていない」から記載不備の無効理由があるとの主張には理由がない。
(審判事件答弁書10頁11行?11頁5行)

(2)無効理由2(その1:甲第1号証を主引用例として検討)
ア 対比
請求人の主張の内、本件特許発明1と甲1発明との一致点・相違点(相違点1、相違点2)について、概ね請求人の主張するとおりであるが、その余は否認ないし争う。
(審判事件答弁書12頁6?8行)

イ 判断
(ア)相違点1
a 甲2発明の中間巾止め金具10は、甲第2号証の段落【0030】及び段落【0031】の記載によれば、挟着部12に形成された穴16と型枠3に形成された穴3aとを連通させ、それらの穴にピン7を貫通させ、隣接する型枠3によって挟着部12を挟み、ピン7によって型枠3に固定される。
したがって、甲2発明において、中間巾止め金具10を型枠3に取り付けるために機能しているのは、穴16及びピン7、又は、穴20であって、規制部17及び規制部15ではない。
また、甲第2号証の段落【0034】の記載によれば、規制部17及び規制部15は、型枠3に接することで、中間巾止め金具10が倒れることを防止(すなわち、支持部13側が挟着部12側に対して相対的に下がることを防止)して、支持部13(型枠6)の高さを保持するための部分にすぎず、中間巾止め金具10それ自体を型枠3に取り付けるための部分ではない。
したがって、そもそも甲2発明における「規制部17」は本件特許発明1における「外側係止部(12)」に相当せず、また、甲2発明における「規制部15」は本件特許発明1における「内側係止部(13)」には相当しない。
(審判事件答弁書12頁19行?14頁1行)

b 甲1発明が解決しようとする課題は2回打ち工法特有の課題であるから、当業者が、2回打ち工法専用品である甲1発明を1回打ち工法で使用することはない。また、2回打ち工法では内枠は予め形成されているベース部上に設置でき、内枠を浮かせる必要はないから、内枠を浮かせるために使用される1回打ち工法専用品である甲2発明を2回打ち工法で使用することはない。当業者であれば、甲1発明と甲2発明とを互い転用することはない。
甲1発明では、甲1発明の取付に関して、貫通孔6を設けるという簡単な構成によって上記課題を既に解決しているのであるから、当業者が甲1発明の取付に関して上記課題を解決しようとして、甲1発明に甲2発明の規制部15及び規制部17をあえて適用することはない。
(審判事件答弁書15頁18?22行、17頁10?13行)

c 甲3発明から甲7発明はいずれも本件特許発明1及び甲1発明とは技術分野が異なるから、甲第3号証から甲第7号証に記載の事項は、周知技術とはいえない。これらは、本件特許発明1及び公知技術1において想定される支持具とは使用場面も異なる部材ばかりである。
甲第3号証から甲第7号証は、単に、型枠の外側角部及び内側角部に接し得る部分を開示しているに過ぎず、当該部分が果たす機能は本件特許発明1の「外側係止部(12)」及び「内側係止部(13)」が果たす機能とは異なるものであって、本件特許発明1の「外側係止部(12)」及び「内側係止部(13)」に相当する部分は開示されているとはいえない。
(審判事件答弁書27頁下から5行?28頁4行)

(イ)相違点2
甲2発明に記載されている中間巾止め金具は、前述の通り、1回打ち工法において、立ち上がり部の型枠(内枠)を浮いた状態で支持するために外枠と内枠の両型枠を繋ぐ形で設置されるものであって、相応の強度が必要される大型の部材であり、本件特許発明1及び甲1発明において想定される支持具とは全く使用場面も大きさも異なる部材であるし、2回打ち工法特有の問題を解決するための甲1発明と、1回打ち工法を前提とする甲2発明とは技術分野も解決すべき課題も異なるものであって、そもそも甲2発明を甲1発明に適用する動機付けがなく、容易に適用できるとはいえない。
(審判事件答弁書28頁14?21行)

(3)無効理由2(その2:甲第2号証を主引用例として検討)
ア 対比
(ア)請求人の主張する相違点3が存する点のみ認め、その他の点では一致しているとの点を含め、その余は全て否認ないし争う。
(審判事件答弁書34頁20?22行)

(イ)甲2発明は、前述の通り、1回打ち工法において、立ち上がり部の型枠(内枠)を浮いた状態で支持するために外枠と内枠の両型枠を繋ぐ形で設置されるものであって、相応の強度が必要される大型の部材であり、本件特許発明1において想定される支持具とは全く使用場面も大きさも異なる部材である。
したがって、甲第2号証に記載の「段付き中間巾止め金具10」は、本件特許発明1の「支持具(10)」に相当しない。それゆえ、甲第2号証の「段付き中間巾止め金具10」が本件特許発明1の「支持具(10)」に相当するとした請求人の主張がそもそも誤りであり、この点は、一致点ではなく相違点である。
(審判事件答弁書35頁18?下から2行)

(ウ)上記のとおり、甲2発明における「規制部17」は本件特許発明1における「外側係止部(12)」に相当せず、また、甲2発明における「規制部15」は本件特許発明1における「内側係止部(13)」に相当しない。この点は一致点ではなく相違点である。
(審判事件答弁書36頁3?5、9行)

イ 判断
(ア)上記ア(ウ)の相違点について
甲3発明ないし甲7発明の技術分野及び目的は本書19頁ないし27頁で述べた通りであるところ、甲2発明と甲3発明ないし甲7発明とは技術分野及び目的が異なるから、甲第3号証ないし甲第7号証に記載の事項は周知技術ではないし、甲2発明に甲第3号証ないし甲第7号証に記載の事項を適用する動機付けもない。
また、甲2発明の中間巾止め金具10は、甲2発明を型枠3に取り付けるための部分として、穴16及びピン7、又は、穴20を既に備えているから、当業者が甲2発明の中間巾止め金具10を型枠3に取り付けること目的として、あえて甲第3号証ないし甲第7号証に記載の事項を甲2発明に適用する動機付けもない。
(審判事件答弁書36頁10?22行)

(イ)相違点3
甲2発明の技術分野及び目的は本書15頁に記載の通り、甲1発明の技術分野及び目的は本書14頁に記載の通りであるところ、甲2発明と甲1発明とは、技術分野及び目的が異なり、両者は使用場面も大きさも全く異なる部材である。甲2発明が想定しているのは、その使用目的故に複数の部材から構成され、複雑な形状・構造を有している大型の部材であって、これに甲1発明を適用して一枚の薄板に形成するする動機付けはない。
(審判事件答弁書36頁下から4行?37頁2行)


第5 証拠の記載
1 甲第1号証
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同様。)
(1)「【技術分野】
【0001】
本考案は、ベースコンクリート上にコンクリートを打設してコンクリート基礎を形成する際に使用すべく所定間隔で対向配置される内枠と外枠から成る型枠の外方への傾倒を防止するコンクリート型枠傾倒防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリート基礎を施工する際にベースコンクリート上にコンクリートを打設してコンクリート基礎を形成する際に使用すべく所定間隔で対向配置される内枠と外枠から成る型枠が使用されている。
【0003】
例えば、図5は従来のコンクリート基礎を形成する型枠保持具を示す断面図である。図5において、コンクリート基礎用型枠301は、地盤上に立設される縦長の外枠302と、該外枠302に対し所定間隔離間して対向配置すべくベースコンクリートBC上に立設される短尺の内枠304とから構築されており、上記外枠302の内側にベタ基礎となるベースコンクリートBCが打設された状態で、ベースコンクリートBC上に立設保持された内枠304と外枠302上部の間にコンクリートCが打設される。
【0004】
このように構成される型枠301では、ベースコンクリートBC上に打設されるコンクリートCの重量が縦長の外枠302の内側に作用することから、この外枠302の上端では垂直面に対し外側へδ1の傾倒が生じ、外枠302下方のベースコンクリートBC上面部位では更に少ない傾倒δ2が生じる。
【0005】
上記外枠302の傾倒によって、固化されているベースコンクリートBCの壁面を形成する外枠302の内壁と、ベースコンクリートBC上端側の外壁面との間に隙間(=傾倒δ2)が形成されるため、この隙間に打設されたコンクリートCが流れ込み、これが固化すると、上記外枠302を取外した際に流れ込んだコンクリートCがベースコンクリートBCの外壁面上に段差となって表出するため、コンクリート基礎壁面の外観が損なわれる問題を有していた。」

(2)「【考案の効果】
【0016】
本考案は以下の効果を奏する。
【0017】
請求項1に記載の考案によれば、薄板鋼鈑で方形状に形成された型枠傾倒防止具の一端が互いに接続される縦長外枠端部の縦長フランジ間に挟着され、上記縦長外枠の内部に臨む型枠傾倒防止具の一端がベースコンクリートBC内に固設された型枠傾倒防止具により縦長外枠が保持されているので、簡素な構成で上記縦長外枠の傾倒を防止することができ、施工作業が単純化されて施工効率を向上することができ、延いてはコストの低減を図ることができる。
【0018】
請求項2に記載の考案によれば、縦長外枠の離脱後にベースコンクリートBCの外壁面から突出した部位が外壁面に対応する切り欠きから容易に切断することができるので、コンクリート基礎壁面の外観が損なわれることなく平滑な壁面を形成することができる。」

(3)「【考案を実施するための最良の形態】
【0019】
本考案の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1および図2には、本考案の実施例が示されている。図1は本考案に係るコンクリート型枠傾倒防止具を使用して縦長外枠の傾倒を防止したコンクリート基礎型枠の断面図、図2は本考案に係るコンクリート型枠傾倒防止具の全体斜視図、図3は本考案に係るコンクリート型枠傾倒防止具の使用例を示す要部の部分斜視図である。
【0021】
図1において、1はコンクリート基礎型枠であって、このコンクリート基礎型枠1(以下型枠と称する)は、ベースコンクリートBCおよび該ベースコンクリートBC上に打設されるコンクリートCを収容保持すべく、地盤G上に型枠保持具Bを介して長手方向に複数の縦長外枠2が連続的に立設保持され、この縦長外枠2に対応して内枠4が所定間隔をもって上記ベースコンクリートBC上に立設保持されている。
【0022】
上記各縦長外枠2の長手方向両端には、該縦長外枠2同士を接続すべく後述する連結具を挿通するための複数の連結孔5を縦方向に穿設した縦長フランジFを備えている。
【0023】
図2において、8はコンクリート型枠傾倒防止具を示し、このコンクリート型枠傾倒防止具8(以下型枠傾倒防止具と称する)は、薄板鋼鈑で長手方向の一端側が幅広となる所定長さの台形状に形成された連結板9に、長手方向に複数(実施例では3個)の貫通孔6が穿設されている。
【0024】
そして、上記連結板9の幅狭となる他端側には、ベースコンクリートBCの外壁面から突出した該外壁面に対応する上下端縁に切断可能な切り欠き13a,13bが形成されている。
【0025】
これにより、打設されたコンクリートCが固化した状態で上記縦長外枠2を離脱した後は、ベースコンクリートBCの外壁面から突出した部位を切り欠き13a,13bから切断具(カッター)により切断することができる。
【0026】
上記型枠傾倒防止具8は、その一端側が上記縦長外枠2の下方に打設されるベースコンクリートBCの上面側内部に臨むように隣接する縦長外枠の縦長フランジF間に幅狭に形成された連結板9の他端側が挟持されると共に、挟持された他端側が上記貫通孔6と選択された上記縦長フランジFの連結孔5に連結片12を挿通した連結具10により挟着される。
【0027】
詳しくは、図3に示すように10は公知の連結具(以下クランプ装置と称する)であって、このクランプ装置10は、金属板を折曲成型したものであって、縦長外枠2の縦長フランジFの連結孔5に挿入される略半円筒状をなす金属製の連結片12と、隣接する縦長フランジFをクランプするためのクランプ部14により構成されている。
【0028】
上記クランプ部14は、断面コ字状に折曲形成されて、第1、第2の両クランプ片14a,14bが形成され、両クランプ片14a,14b間には環状の第1の補強リブ15aが設けられ、両クランプ片14a,14bの背部には第2の補強リブ15bが形成されている。
【0029】
第1のクランプ片14aは内方にわずかに湾曲されており、両クランプ片14a,14bの一端部は幅狭の把手部14cとなっている。第2のクランプ片14bの側縁には、断面円弧状のてこ作用片16が突設されている。一方のクランプ片14bの他端部が延長されて、その先端には上記連結片12がクランプ片14bに対してほぼ直角に折曲形成されている。
【0030】
そこで、上記構成のクランプ装置10により隣接する縦長外枠2を連結するには、上記連結片12を、隣接する縦長フランジFの選択された連結孔5とこの縦長フランジF間に挟持された連結板9他端側の貫通孔6に挿通させる。
【0031】
そして、上記クランプ装置10を、連結片12を中心として上記縦長外枠2の外面側に向けて回動させれば、両クランプ片14a,14bにより2枚の縦長フランジFが挟持され、隣接する縦長外枠2が連結される。
【0032】
次に、このクランプ装置10を開放する際は、てこ作用片16と縦長外枠2の外面との間にバール等を差込み、僅かな力を加えると上記縦長外枠2の外面が支点となり、てこの作用により作用片16が持ち上げられ上記クランプ装置10が開放されるようになっている。
【0033】
次に、型枠の施工手順を説明する。
【0034】
先ず、コンクリート基礎の型枠を施工する際に、地盤G上に設置した型枠保持具B上に複数の縦長外枠2を長手方向に列設した状態で立設保持し、これら縦長外枠2同士を長手方向に接続する際に、隣接する縦長フランジFが上記連結孔5を挿通した複数の連結具となるボルトなどを介して締結される。
【0035】
上記複数の縦長外枠2の縦長フランジF同士を締結する際に、上記連結板9の幅広状の一端側が上記縦長外枠2の下方に打設されるベースコンクリートBCの上面側内部に臨む位置になるように、隣接する縦長外枠端部の縦長フランジF間に他端側を位置決めし、その位置に対応すべく選択された縦長フランジFの連結孔5を上記連結板9他端側の貫通孔6に合致させて上記連結片12を挿通し、上記クランプ装置10を回動操作して連結板9の他端側を挟持する。
【0036】
複数の縦長外枠2が長手方向に立設保持された状態で、上記縦長外枠2の内側にベースコンクリートBCが打設されると、縦長外枠2の内側に突出した上記連結板9の一端側がベースコンクリートBCの内部に埋設される。
【0037】
ベースコンクリートBCが固化されると、複数の縦長外枠2に対応して内枠4が所定間隔をもって上記ベースコンクリートBC上に立設保持されると、上記縦長外枠2と内枠4で形成される間隙内にコンクリートCが打設される。
【0038】
上記ベースコンクリートBC上にコンクリートCが打設された際、コンクリートCの重量が縦長外枠2に外方に向けて作用するが、固設されたベースコンクリートBCにより一端側が保持された上記型枠傾倒防止具8により上記縦長外枠2の外側に向く傾倒が防止される。
【0039】
このように、複数の縦長外枠2同士を接続する際に、縦長フランジF間に連結具10を介して挟着された型枠傾倒防止具8の一端がベースコンクリートBC内に固設されるので、簡素な構成で上記縦長外枠2の傾倒を防止することができ、施工作業が単純化されて施工効率を向上することができ、延いてはコストの低減を図ることができる。
【0040】
また、上記連結板9の幅狭となる他端側には、ベースコンクリートBCの外壁面から突出した該外壁面に対応する上下端縁に切断可能な切り欠き13a,13bが形成されているので、縦長外枠2の離脱後にベースコンクリートBCの外壁面から突出した部位が上記切り欠き13a,13bからベースコンクリートBCの外壁面と略同一面上で切断することができ、コンクリート基礎壁面の外観が損なわれることなく平滑な壁面を形成することができる。
【0041】
次に、型枠傾倒防止具の変形例に付き図4を参照して説明する。
【0042】
図4は、上記実施例の変形例に係る型枠傾倒防止具の部分斜視図である。なお、前述した構成部材と同一構成部材は同一符号を付してその説明を省略する。
【0043】
図4において、8’は、変形例に係る型枠傾倒防止具であって、この型枠傾倒防止具8’は、薄板鋼鈑で矩形状に形成された連結板9’に、長手方向に複数(本変形例では3個)の貫通孔6が穿設されている。
【0044】
上記型枠傾倒防止具8’は、その一端側が上記縦長外枠2の下方に打設されるベースコンクリートBCの上面側内部に臨むように隣接する縦長外枠の縦長フランジF間に上記連結板9’の他端側が挟持され、挟持された他端側は上記貫通孔6と選択された上記縦長フランジFの連結孔5に連結具としてのボルト18を挿通しこのボルト18にナット20を螺着することで挟着される。
【0045】
本変形例に係る型枠傾倒防止具8’の作用、効果は、上記実施例と同じであり、その説明を省略する。なお、連結板9’他端側のベースコンクリートBCの外壁面から突出した該外壁面に対応する上下端縁にも図示しない切断可能な切り欠きを形成することができ、上記実施例と同様に上記切り欠きからベースコンクリートBCの外壁面と略同一面上で切断することができ、コンクリート基礎壁面の外観が損なわれることなく平滑な壁面を形成することができる。」

(4)【図1】?【図3】は以下のとおり。
【図1】


【図2】



【図3】


(5)上記(4)の図1を参照すると、3個の貫通孔6のうち、幅広となる連結板の一端側の2個はベースコンクリートBCに埋設されていることが看取でき、同じく図3を参照すると、縦長フランジFは、縦長外枠2の両端を折曲形成されたものであることが看取できる。

(6)上記(1)ないし(5)からみて、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「コンクリート基礎型枠1の縦長外枠2の傾倒を防止するために使用されるコンクリート型枠傾倒防止具8であって、
上記コンクリート基礎型枠1は、ベースコンクリートBCおよび該ベースコンクリートBC上に打設されるコンクリートCを収容保持すべく、地盤G上に型枠保持具Bを介して長手方向に複数の縦長外枠2が連続的に立設保持され、この縦長外枠2に対応して内枠4が所定間隔をもって上記ベースコンクリートBC上に立設保持されており、
上記各縦長外枠2の長手方向両端には、該縦長外枠2を折曲形成し、複数の連結孔5を縦方向に穿設した縦長フランジFを備えており、
隣接する縦長外枠2を連結するクランプ装置10は、金属板を折曲成型したものであって、縦長外枠2の縦長フランジFの連結孔5に挿入される連結片12と、隣接する縦長フランジFをクランプするためのクランプ部14とにより構成されており、
上記コンクリート型枠傾倒防止具8は、薄板鋼鈑で長手方向の一端側が幅広となる所定長さの台形状に形成された連結板9に、長手方向に3個の貫通孔6が穿設され、
幅狭に形成された連結板9の他端側は、隣接する縦長外枠の縦長フランジF間に挟持され、ベースコンクリートBCの外壁面から突出した該外壁面に対応する上下端縁に切断可能な切り欠き13a,13bが形成され、3個の貫通孔6のうち、幅広の連結板9の一端側の2個はベースコンクリートBCに埋設されており、
ベースコンクリートBC上にコンクリートCが打設された際、コンクリートCの重量が縦長外枠2に外方に向けて作用するが、固設されたベースコンクリートBCにより一端側が保持された上記型枠傾倒防止具8により上記縦長外枠2の外側に向く傾倒が防止され、
打設されたコンクリートCが固化した状態で上記縦長外枠2を離脱した後は、ベースコンクリートBCの外壁面から突出した部位を切り欠き13a,13bから切断具(カッター)により切断することができる、
コンクリート型枠傾倒防止具8。」

2 甲第2号証
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基礎コンクリートを打設する際に使用される一対の型枠を高低差をつけて支持するための段付き中間巾止め金具に関する。
【0002】
【従来の技術】埋立地や地盤の悪い場所などに基礎工事用コンクリートを打設するには、従来2種類の方法が利用されている。
【0003】第1の方法は、地表面に形成された捨てコンクリートの上面全体に防湿基礎コンクリートを成形し、その防湿基礎コンクリートの上部外周などに布基礎コンクリートを成形する方法であり、第2の方法は、前述の防湿基礎コンクリート及び布基礎コンクリートを同時に成形する方法いわゆるベタ基礎コンクリートである。
【0004】このベタ基礎コンクリートは、地盤と接する面積が大きく、また、地震、不同沈下、防湿、防虫にすぐれているので、近年多く利用されている。
【0005】出願人は、このベタ基礎コンクリートに使用され、対向する2枚のコンクリート型枠を異なる高さに支持するコンクリート型枠の支持金具を実公平6-18986号において開示している。
【0006】これは、「高さの異なる高低2箇所に支持部を備え、防湿基礎コンクリートの上に布基礎コンクリートを打設する場合に、所定の間隔で対向する一対の型枠を異なる高さに支持する」ものである。」

(2)「【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、基礎コンクリートの厚さは、寒冷地においては温暖地に比べて厚く形成されるようになっている。このような場合、第1の型枠3と第2の型枠6との段差が大きくなるので、支持杆4を長く製作して支持部5の位置を高く形成しなければならない。
【0010】しかしながら、この支持部5に第2の型枠6を支持させた場合、支持杆4には第2の型枠6の重量に起因する矢印A方向のトルクが付加されるので、支持杆4が傾き易く支持部5の高さが低くなる。これにより、第2の型枠6を所定位置に支持できなくなるという問題がある。
【0011】これを防止するためには支持杆4を強固に製作しなければならないので、コスト高を招き、重量も増加するので、搬送にも手間がかかるという新たな問題が発生する。
【0012】本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、段差の大小に拘わらず一対の型枠を高低差をつけて支持することができる段付き中間巾止め金具を提供するにある。」

(3)「【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1の実施例の段付き中間巾止め金具10につき図1?図3を参照して説明する。但し、従来例と同一箇所には同一符号を付す。
【0020】段付き中間巾止め金具10は、金具本体11と、金具本体11の端部に設けられた挟着部12と、挟着部12に対して金具本体11の反対側の端部に設けられた支持部13とから構成されている。
【0021】金具本体11は上下の端部を直角に折り曲げて補強用のリブ14を形成しており、これの挟着部12側の端部を規制部15としている。
【0022】挟着部12は金具本体11より薄板で形成され、金具本体11の端部にスポット溶接で一体に固着されている。この挟着部12は、後述するように隣接する一方の型枠3(以下第1の型枠3と云う)間に挟着されるもので、その巾寸法は、第1の型枠3の厚さに対応している。また、中央部には第1の型枠3の連結用3a(図9参照)に連通する穴16が形成されている。この穴16は円形でも水平方向に長い長穴であっても良い。
【0023】また、挟着部12の端部には、L字状の規制部としての規制片17が溶着されている。さらに、挟着部12の規制部15側の端部には、縦方向にミシン目状の分離部18が形成されている。
【0024】支持部13は、一対の立上り片13a、13bが形成されて全体として上部が開放するコ字状をなしている。この一対の立上り片13a、13bの間隔は、一方の型枠6(以下第2の型枠6という)の厚さ寸法に対応している。そして、端部がリブ14の上端に溶接されている。 また、立上り片13aの近傍にはV字状の切り込みからなる分離部19が形成されている。
【0025】この支持部13と挟着部12間の距離が両型枠3,6間の間隔に相当するもので、支持部13の溶接位置を変化させることにより、この距離を変化させることができる。
【0026】尚、本実施例においては、支持部13と金具本体11を別体で構成し、溶接により一体化したが、支持部13と金具本体11を一体に製作しても良い。
【0027】つぎに上記構成の作用について説明する。第1の型枠3及び第2の型枠6には、側面部に所定の間隔(h)で連結用の穴3a(3aのみ図示)が複数個形成されている。
【0028】そして、隣接する第1の型枠3及び第2の型枠6同士を連結用の穴を貫通したピン7により連結している。
【0029】作業に先立って基礎コンクリートの厚さ即ち所望の段差に相当する穴3aを選択する(段差はhの整数倍に設定される)。
【0030】つぎに、隣接する第1の型枠3間に中間巾止め金具10の挟着部12を挟み、穴16を穴3aに連通させ、ピン7を貫通させて連結する。
【0031】この場合、規制片17及びリブ14側の規制部15が第1の型枠3に接する。そこで、挟着部12を挟んで隣接する第1の型枠3間をピン7により固定する(図3参照)。
【0032】つぎに、支持部13の上に第2の型枠6を載置すれば、型枠が完成する。そこで、コンクリートを打設する。
【0033】コンクリートが固化したら、第1の型枠3及び第2の型枠6を取り外す。そして、コンクリートの外側に突出した支持部13の一対の立上り片13a、13bを分離部19から切り離し、さらに、挟着部12を分離部18から切り離す。これによりコンクリートの上面には突出物は存在しないので、安全性が向上する。
【0034】上記実施例によれば、つぎの効果を奏する。
(1)基礎コンクリートの厚さが異なる場合であっても、第1の型枠3の連結用の穴3aを適宜に選択することにより、1種類の中間巾止め金具10で対応することができる。
(2)挟着部13(審決注:「13」は「12」の誤記と認める。)に規制部15,17を設けたので、この規制部15,17が型枠3の側面に衝止して中間巾止め金具10の倒れを防止できて支持部13の高さを一体に保持できる。
(3)挟着部13(審決注:「13」は「12」の誤記と認める。)は薄片で形成されているので、隣接する第1の型枠3間の隙間を小さくすることができ、打設されたコンクリートの洩れやトロの流出を防止できる。
(4)挟着部12及び支持部13に分離部18,19を設けたので、型枠3,6を取り外した後、挟着部12及び支持部13を取り除くことができて、コンクリートの上面には突出物は存在せず、安全性を向上させることができる。」

(4)「【0038】また、規制部15(規制片17)は、図1の如く必ずしも左右両側にある必要はなく、図6又は図7に示すように何れか一方に、或いは図8に示すように両方の規制部15をなくして規制片17のみにしてもよく、要は金具本体11が傾斜や捻れを生じることなく型枠3に挟着されるようになっていれば良いものである。
【0039】
【発明の効果】本発明は、基礎コンクリートを打設する際に使用される一対の型枠を高低差をつけて支持するための段付き中間巾止め金具であって、金具本体と、この金具本体の端部に設けられ隣接する一方の型枠間に挟着され該金具本体を所定の高さに位置させる挟着部と、この挟着部に対して金具本体の反対側の端部に設けられ他方の型枠の下端を支持する支持部とを備えたので、段差の大小に拘わらず一対の型枠を高低差をつけて支持することができるため、基礎コンクリートの厚さが異なる場合であっても、1種類の中間巾止め金具で対応することができるという優れた効果を奏するものである。」

(5)【図1】?【図3】は以下のとおり。
【図1】


【図2】


【図3】



(6)上記(1)ないし(5)からみて、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認める。
「基礎コンクリートを打設する際に使用される一対の型枠を高低差をつけて支持するための段付き中間巾止め金具10であって、
段付き中間巾止め金具10は、金具本体11と、金具本体11の端部に設けられた挟着部12と、挟着部12に対して金具本体11の反対側の端部に設けられた支持部13とから構成され、
金具本体11は上下の端部を直角に折り曲げて補強用のリブ14を形成しており、これの挟着部12側の端部を規制部15とし、
挟着部12は金具本体11より薄板で形成され、金具本体11の端部にスポット溶接で一体に固着されて、隣接する第1の型枠3間に挟着されるもので、その巾寸法は、第1の型枠3の厚さに対応し、中央部には第1の型枠3の連結用3aに連通する穴16が形成され、
また、挟着部12の端部には、L字状の規制部としての規制片17が溶着され、
さらに、挟着部12の規制部15側の端部には、縦方向にミシン目状の分離部18が形成されており、
支持部13は、一対の立上り片13a、13bが形成されて全体として上部が開放するコ字状をなしており、この一対の立上り片13a、13bの間隔は、第2の型枠6の厚さ寸法に対応し、端部がリブ14の上端に溶接され、また、立上り片13aの近傍にはV字状の切り込みからなる分離部19が形成されており、
隣接する第1の型枠3間に中間巾止め金具10の挟着部12を挟み、穴16を、第1の型枠3の側面部に所定の間隔(h)で複数個形成された連結用の穴3aに連通させ、ピン7を貫通させて、隣接する第1の型枠3同士が連結され、
この場合、規制片17及びリブ14側の規制部15が第1の型枠3に接し、挟着部12を挟んで隣接する第1の型枠3間をピン7により固定し、つぎに、支持部13の上に第2の型枠6を載置すれば、型枠が完成するので、そこで、コンクリートを打設し、コンクリートが固化したら、第1の型枠3及び第2の型枠6を取り外し、そして、コンクリートの外側に突出した支持部13の一対の立上り片13a、13bを分離部19から切り離し、さらに、挟着部12を分離部18から切り離す、
段付き中間巾止め金具10。」

(3)甲第3号証
甲第3号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
ア 「本考案は新規且つ有用なコンクリート壁の構造に関し、更に詳しくはパネルをコンクリート型枠兼内装下地材として使用し、これとコンクリート壁とを物理的に一体化し、地震や火災時においても剥落の危険のなく且つ目地処理を必要としないコンクリート壁の構造に関する。」(明細書1頁末行?2頁5行)

イ 「本考案に用いられる接合具は、基本的には第1図に示した如く、接合壁1の両側に適宜間隔を置いて略水平方向に各2個の接合舌片2a、2a’及び2b、2b’を延設し、且つ接合壁1の延長部にコンクリート掛止部3を備えた構造からなる。接合具の素材としてはプラスチツク、金属等特に制限されないが、難燃プラスチツク、金属製のものが火災時においてもパネルとコンクリート壁との一体化構造を保持し、あるいは保持し易い点で好適である。コンクリート掛止部3に突起や透孔を設けたり、分枝状、波形状等とすることにより掛止部のコンクリート中への埋没掛合力を大巾に向上し得る。」(明細書5頁18行?6頁10行)

ウ 「第2図は第1図に示された接合具を用いて、パネル4a、4bをそれぞれ接合舌片2a、2a’間、2b、2b’間に嵌入させ、且つコンクリート掛止部3がコンクリート壁5中に埋没固定された例である。」(明細書6頁11?15行)

エ 「第3図は第2図において、コンクリート掛止部3の先端を分枝状としコンクリート壁5との掛合力を高めた例を示す。」(明細書6頁16?18行)

オ 「本考案は叙上のごとく、至極簡単な構造により、○1(審決注:丸囲み数字は「○数字」と表記する。以下同様。)パネルとコンクリート壁とを一体化し得るから地震や火災時においても落下する危険を回避し得る、○2コンクリート打設時に寸法の狂いが生じ難い、○3パネルに接合のための凹溝を形成させる必要がないから安価である、○4パネル接合と同時に目地壁が形成されるから、従前のパネル施工-目地仕上げという2工程を1工程に省力化し得る、等多くの利点を有するものである。」(明細書8頁9?18行)

(4)甲第4号証
甲第4号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
ア 「【0007】
【実施例】以下、この発明を具体化した実施例を図面に基づいて説明する。図1及び図2は本発明による一実施例の間隔保持具を示し、本体1は薄肉の焼入れ鋼板により短冊状に形成されている。本体1の両端には外側規制片2が上方へ折曲げて形成され、各外側規制片2の内側には内側規制片3が上方へ切り起して形成されている。そして、間隔保持具は外側規制片2と内側規制片3との間に一対の型枠嵌合部4を備え、本体1をベースコンクリート(図示略)上に設置し、各嵌合部4に型枠5を上方から嵌合して所定の対向間隔で保持できるように構成されている。
【0008】各内側規制片3には、その弾性により型枠5を外側規制片2側へ押圧する押圧部6が円弧状に折曲げて突設されるとともに、この押圧部6の上方には嵌合部4の上端が開くように斜状部7が設けられている。一方、外側規制片2は内側規制片3よりも短く形成され、その上端には型枠5の縁部8に上方から係合する掛止部9が内側へ円弧状に折曲形成されている。なお、本体1には内側規制片3を切り起すことにより開口部10が形成されている。
【0009】上記のように構成した間隔保持具を使用して型枠5を組立てる場合には、図1の左側に示すように、型枠5を嵌合部4に上方から嵌入する。このとき、型枠5の下端は内側規制片3の斜状部7に妨げられることなく押圧部6に係合し、内側規制片3が自身の弾性に抗していったん内側へ変形する。そして、型枠5の縁部8が外側規制片2の掛止部9を通過すると、同図の右側に示すように、内側規制片3が自身の弾性により外側に復元する。そのため、押圧部6が型枠5を外側規制片2側へ押圧し、縁部8が外側規制片2の内面に当接した状態で、掛止部9が縁部8に上方から係合する。従って、型枠5の組立てと同時に、簡単な操作で本体1を型枠5に確実に掛止して、間隔保持具の脱落を防止できる。
【0010】また、型枠5を取外す場合には、同図の鎖線で示すように、型枠5を外側へ傾ければ、掛止部9が縁部8から解離されるため、この状態で、型枠5を嵌合部4から上方へ容易に引き抜くことができる。それ故、従来とは異なり、組立て及び取外しに際して外側規制片2の一部を折曲げる必要がなく、工数を削減でき、作業能率を向上させることができる。その上、工具を使用する面倒もなくなり、立ったままの姿勢で容易に作業できる。」


(5)甲第5号証
甲第5号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
ア 「【0009】
【実施例】以下、本発明の詳細を図示実施例について説明する。図1で示す本例の保持具1は、鋼製の本体片10の両端部に外側係止片11を直角に折曲連設すると共に、夫々該係止片11から内側に一定の間隔をおいて、本体片10の長手方向の切り込み121による切り起しによって内側係止片12を該係止片11と同一方向に突出形成している。 【0010】
内側係止片12は半円弧状でその膨出部を外向きとして対向させ、その巾方向の両側を絞って中央部120を外側に突出させている。そして、該切り起し用の切り込み121に内側に向けた可撓用切り込み122を連続して設けて夫々内側係止片12を内側に可撓可能としている。また、外側係止片11の開放側端部には外側に向けてわん曲した短いガイド片部111を連設している。
【0011】これら本体片10、外側係止片11、ガイド片部111及び内側係止片12はプレス加工及び切り起し加工で一体に成形されている。これにより内側係止片12は切り込み122のため内側への可撓性を有して外側係止片11との間の間隔を可変できるのである。
【0012】このように構成した本例は、図2のように、保持具1の夫々の外側係止片11と内側係止片12との間にコンクリート型枠板2を上から差し込むことにより、対向配置した型枠板2の底部を挾持すると共に、上から別の保持具1で夫々の外側係止片11と内側係止片12との間で該型枠板2の上端部を挾持することで、対向した該型枠板2を一定の間隔をおいて保持するのである。
【0013】この際、型枠板2によって内側係止片12が内側に押圧され撓曲するため型枠板2を保持できるのである。このため型枠板2が変形している場合でも、内側係止片12が可撓して外側係止片11との間隔を可変できることから保持使用できるのである。」


(6)甲第6号証
甲第6号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
ア 「コンクリート型枠1を使用してコンクリート壁を施工するときには、積上げ金具2を介してコンクリート型枠1が積上げられる。積上げ金具2は、水平面部の両側部を互いに逆方向に直角に折り曲げられ、各折曲げ部の両端に、上下位置のコンクリート型枠1の周縁補強部が入り込むように切欠いた係止部3a、3bが設けられる。そして、コンクリート型枠1をコンクリート壁の厚さだけ離した間隔に2列に積上げるため、それぞれの補強部1aを積上げ金具2の係止部3a、3bに係合させれば、各コンクリート型枠1の横方向の位置規制がされる。」(明細書5頁20行?6頁11行)

イ 「積上げ金具2の係止部の内側位置に合成樹脂やゴム等の弾性体4が取付けられ、さらに積上げ金具2の係止部の外側位置の水平部に長孔5が設けられ、この長孔5に矢板6が差し込まれるようになっている。なお長孔5は、少し係止部寄りに設けるのが望ましい。弾性体4は、積上げ金具4の断面形状と略同一にされて積み上げ金具の下側面に取付けられ、さらに弾性体4は少し係上部(審決注:「係止部」の誤記と認める。)寄りに突出される。なお、前記弾性体4は、矢板6を長孔5に差し込むときに、コンクリート型枠1の補強部1aが容易に弾性変形するように、積上げ金具2の係止部3a、3bの端面とコンクリート型枠1との間の緩衝をさせる。」(明細書6頁12行?7頁4行)


(7)甲第7号証
甲第7号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
ア 「【0013】型枠支持金具10は、普通鋼材の薄板からなる所定幅の長方形の長尺板である基部11を有しており、基部11の長手方向の一端縁(図示右端)にて基部11に対して垂直にかつその上面及び下面側に曲設された第1及び第2縦垂直支持片13,14を有している。基部11には、長手方向の中間位置かつ幅方向の中間位置に長手方向に延びた長方形状で一端が丸くなっている長孔である係止孔12が設けられている。第1及び第2縦垂直支持片13,14は、基部11の幅方向中間位置からそれぞれ幅方向の両側に向けかつ基部11の幅方向両端を越えて延びた長方形の板材であって、基部11に対して垂直にかつ互いに基部11の一表面側及び他表面側に折り曲げられて基部11の両面側に配設されている。
【0014】また、基部11は、その長手方向の一端から型枠の厚さ寸法を隔てた位置から長手方向他端側に至る範囲にて、基部11の幅方向両端から基部11に対して垂直にかつ互いに基部11の一表面側及び他表面側に折り曲げられて基部11の両面側に配設された第1及び第2横垂直支持片15,16を設けている。第1横垂直支持片15は、その延長方向が第1縦垂直支持片13と交叉する基部11の幅方向一端に配設され、一方、第2横垂直支持片16は、その延長方向が第2縦垂直支持片14と交叉する基部11の幅方向他端に配設されている。ただし、これに限るものではなく、第1横垂直支持片15が幅方向の他端に配設され、第2横垂直支持片16が幅方向の一端に配設されるものであってもよい。
【0015】そして、基部11の一表面側の第1縦垂直支持片13と第1横垂直支持片15に挟まれた部分が、第1型枠挿嵌部17になっており、また、基部11の他表面側の第2縦垂直支持片14と第2横垂直支持片16に挟まれた部分が、第2型枠挿嵌部18になっている。この型枠支持金具10は、普通鋼材製の薄板にパンチング加工により所定形状の打ち抜いて打抜き板を形成し、さらに打抜き板にプレス加工を施して折り曲げることにより一体で形成される。
【0016】この型枠支持金具10の使用状態について説明する。図5に示すように、ベースコンクリートG上に、型枠支持具24が載置される。型枠支持具24は、長尺板状の基部25と、その長手方向一端に立設された係止片26と、基部25にて係止片26と所定間隔を隔てて互いに対向して立設された位置決め片27とを有しており、基部25の係止片26と位置決め片27との間に取付孔(図示しない)を設けている。型枠支持具24は、基部25に設けた取付孔に釘を打ち込むことによりベースG上に固定される。型枠支持具24の係止片26と位置決め片27との間に、成形面を位置決め片27側に合わせて下型枠21が挿嵌されて立設される。
【0017】下型枠21の上端には、型枠支持金具10が第2型枠挿嵌部18を嵌め合わせることにより取り付けられる。この型枠支持金具10の第1型枠挿嵌部17に、上型枠22が、成形面を第1縦垂直支持片13に合わせて挿嵌されて下型枠21上に積み重ねられる。さらに、図5に示すように、基部11の係止孔12に固定部材19が打ち込まれ、下及び上型枠21,22が、型枠支持金具10にさらに強固に固定される。このように組み立てられた下及び上型枠21,22の成形面側にコンクリートが打設され、乾燥後に下及び上型枠21,22が取り外され、図6に示すようにコンクリート基礎Kが形成される。」


(8)甲第8号証
甲第8号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
ア 「(a)はコンクリート型枠締付金具を示し、(16)はその締付杆で、丸棒の中間両側部に僅小間隙を設けて座金ストツパー(17)および折取り溝(18)を内外に並設すると共にそれらの間に座金(19)を嵌着し、先端部にねじ(20)を装設してなる。(21)(22)は締付杆(16)のねじ(20)部に取付ける押え座金およびナツト、(b)は堰板(1)(6)の外面に当てる横ばたで、2個のパイプを僅小間隙を設けて並設し図示してないが適当箇所を連結金具により締付け固定して構成する。(A)は基礎コンクリートを示す。」(明細書3頁7?16行)

イ 「そこでコンクリートを打設しそれが固まつて基礎コンクリート(A)が形成された後型枠を解体するときは、順次ナット(22)、座金(21)、ばた(b)を取除き、一方クリツプ(13)は第2図に実線で示す状態から上記と反対に操作し鎖線で示すようにそのU形片(15)を外側へ離脱させて抜取る。」(明細書4頁第20行?第5頁第5行)

ウ 「その後、先ず足し片(11)を取外した後、堰板(1)(6)を除去して締付杆(16)の両側突出部を折取り溝(18)より折取る。」(明細書5頁6?8行)


(9)甲第9号証
甲第9号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
ア 「図中(1)は短冊状板材の累積型枠に於ける間隔規正具で、両端部にはUクリップ(2)の軸孔(3)(3)が穿設してありその内側には型枠(4)の設置幅の間隔をおいて切込溝(5)(5)が設けてある。又、裏側には切込溝(5)(5)相互間隔全幅に渡り突条(6)が形成してある。尚、(7)は折曲げ片、(8)は型枠(4)の止め金具、(9)は型枠(2)の上下両端に直角に設けた曲縁で、該曲縁には一定間隔にUクリップ(2)の軸孔(10)が多数穿設してある。」(明細書2頁1?9行)

イ 「本考案品に係わる累積型枠に於ける間隔規正具は下記の様に使用するものである。即ち、先ずベースコンクリート上に適当な間隔で設置した止め金具(8)の両端嵌合部へ型枠(4)(4)を嵌合して、型枠(4)(4)の底部の幅を規正保持した後、この型枠(4)(4)の上部に本考案品に係わる累積型枠に於ける間隔規正具(1)を、該間隔規正具(1)の両端部へ設けたUクリップ(2)の軸孔(3)と型枠(4)に設けたUクリップ(2)の軸孔(10)を合わせ、且つ、該間隔規正具(1)の裏面に切込溝(5)(5)の全幅に渡り設けた突条(6)部が型枠(4)と型枠(4)との間へ嵌合する様に設置し、その上に型枠(4)(4)を積み重ねてUクリップ(2)の軸を型枠(4)と該間隔規正具(1)とのUクリップ(2)の軸孔(3)(10)へ差し通してから、Uクリップ(2)の胴部を側方へ押し込んで型枠(4)(4)の曲縁(9)(9)を挟持固定した後、型枠(4)(4)の上端へ止め金具(8)を嵌合して固定してからコンクリートを打ち込み、コンクリートが固まってから型枠(4)を離脱し、コンクリートから突き出た間隔規正具(1)の両端部を切込溝から折り取って建築基礎の施工を完了するものである。」(明細書2頁10行?3頁11行)

(10)甲第10号証
甲第10号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
ア 「【0021】図1に示すように間隔保持具本体1は例えば軟鉄等よりなる平板状の板材をプレス等により横断面が下向き凹状となるように湾曲形成されている。この保持具本体1は上側水平部2と、該水平部2の両側に下方へ折り曲げ形成した左側壁部3及び右側壁部4とから構成されている。
【0022】間隔保持具本体1の両端部は上方にそれぞれ湾曲され、一対の外側位置規制片5、6が形成されている。この外側位置規制片5,6によりコンクリート型枠K,Kの下端外側面の位置規制を行う。
【0023】前記間隔保持具本体1の中間部の側壁部3,4には前記コンクリート型枠K,Kの内側面と対応する位置に切欠部7,8が形成されている。このため本体1は両切欠部7,8の間に位置する上側水平部2のみで連結され、この部分がコンクリート打設後に両外側位置規制片5,6を本体1の中間部から切り離すための分離部2a,2bとなる。この分離部2a,2bでの上下方向への折り曲げ強度は他の本体1部分と比較して格段に小さく、外側位置規制片5,6を把持して折り曲げ可能である。なお、分離部2a,2bの強度はコンクリート打設時に水平方向に作用する引張力に充分耐えうるように設定される。
【0024】次に、上記のように構成した間隔保持具について、その作用を説明する。図1,2に示す布基礎コンクリート型枠K,K内に生コンクリートを充填して、ベースコンクリートCBの上面に布基礎コンクリートCを打設する。コンクリートCの硬化後に型枠K,Kを除去すると、図2に示すようにコンクリートCの最下部に保持具本体1の中央部は埋め込まれ、本体1の両端部及び外側位置規制片5,6が露出する。その後、外側位置規制片5,6を把持して分離部2a,2bを中心に上方に折り曲げる作業及び復元する作業を数回行うことにより、分離部2a,2bの金属疲労により外側位置規制片5,6を本体1の中間部から分離することができる。このため、ベタ基礎コンクリート上に布基礎コンクリートを打設する場合は、布基礎コンクリート打設後にその型枠を外して露出している外側位置規制片5,6を分離することができるので、作業上安全であり、又、美観上もよい。」

イ 「【0036】次に、請求項6記載の発明を具体化した第6実施例を図24により説明する。この実施例では前述した各実施例において、上側水平部2の分離部2a,2bに対しミシン目15を形成している。このミシン目15により外側位置規制片5,6を上下方向へ往復回動した場合に、分離部2a,2bの金属疲労が促進されて規制部5,6の折り取り作業を迅速に行うことができる。このミシン目15に代えて、溝(図示略)を形成してもよい。」

(11)甲第11号証
甲第11号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
ア 「【0016】基礎コンクリート用型枠20の間隔保持具19はベースコンクリート16上の端部に固定され、基礎コンクリート用型枠20がその間隔保持具19に支持される。別の間隔保持具21は両側に各一対の外側位置規制片25と内側位置規制片31を有し、基礎コンクリート22の幅が上下において同一になるように兼用型枠17と基礎コンクリート用型枠20の上端部に係合される。そして、前記両型枠17、20間にコンクリートが打設され、ベースコンクリート16上に基礎コンクリート22が硬化、形成される。
【0017】図2に示すように、前記間隔保持具19を構成する基板23は、その長さ方向へ延びる一対の補強突条24を有している。この補強突条24は、鉄等の平板状をなす板材をプレス等により横断面が凹凸状になるように折り曲げて形成されている。外側位置規制片25は、基板23の一端を垂立位置まで上方へ折り曲げて形成されている。幅狭部26は、外側位置規制片25の上部両側に横U字状をなすように切欠かれて形成され、内側へ折り曲げやすくなっている。係止部27は前記幅狭部26の上端に折り曲げ形成されている。
【0018】この係止部27は平面凹状に形成された凹部28とその両端が延長形成された指掛け部29とより構成されている。そして、指掛け部29に指をかけて内側下方へ折り曲げることにより、係止部27を屈曲させ、基礎コンクリート用型枠20の下端上縁部30に係止部27を係合させることができるようになっている。
【0019】内側位置規制片31は、外側位置規制片25から内方へ基礎コンクリート22の幅の分だけ隔てた基板23中央に、基板23に対して垂直になるように上方へ切り起こすことにより形成されている。そして、基礎コンクリート用型枠20の内側面の位置規制を行うようになっている。また、補強凹部32は基板23から内側位置規制片31にかけての中央部分に、プレス加工法等により凹設され、内側位置規制片31の強度を増強している。
【0020】折り取り手段としてのミシン目33は、内側位置規制片31の外側位置において、基板23の幅方向に延びるように形成されている。そのミシン目33により、基礎コンクリート22形成後に基礎コンクリート22から露出した外側位置規制片25及び外側位置規制片25が形成された側の基板23を折り取ることができるようになっている。」

イ 「【0037】・第1実施形態のコンクリート用型枠の間隔保持具19によれば、間隔保持具19の中間部には、折り取り手段としてのミシン目33が形成されている。このため、基礎コンクリート22形成後、ベースコンクリート16上に露出している外側位置規制片25と内側位置規制片31が形成された基板23をミシン目33から折り取ることができる。そのため、作業員が引っかけたり、見栄えが悪いといった問題を解決することができる。」

ウ 「【0063】・前記各実施形態の折り取り手段としてのミシン目33を、基板23の表面側若しくは裏面側に溝を形成する又は基板23の幅方向へ所定の長さだけ切り込んでスリットを形成すること。
【0064】このように構成した場合も、基礎コンクリート22形成後、ベースコンクリート16上に露出している外側位置規制片15と内側位置規制片31が形成された基板23を溝又はスリットから容易に折り取ることができる。」

(12)甲第12号証
甲第12号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
ア 「また基筒1をコンクリートに埋設した際、螺溝5の他端側に螺着されたボルト7の頭部6は基筒1の抜け止め作用を成し、螺溝5に螺着固定されたボルトに外力が掛かつても基筒1より大径の頭部6で抜け止めされて基筒1はコンクリートから抜けることがない。しかもボルト7は螺溝5に螺着されるので、取付けが簡単であり、ボルトの螺入に対しても容易に基筒1から貫けないものである。」(明細書3頁15行?4頁3行)

(13)甲第13号証
甲第13号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
ア 「【0018】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態を、図1?3に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、この実施形態の布基礎コンクリート11は、ベースコンクリート12上に一体的に形成され、その布基礎コンクリート11にはアンカーボルト13が所定間隔をおいて埋設固定されている。アンカーボルト13は2つの第1分割片14と第2分割片15に分割形成され、第1分割片14は布基礎コンクリート11内に埋設される。折曲部16は第1分割片14の下端に布基礎コンクリート11の幅方向に延びるように直角に折曲形成されている。連結手段を構成する雌ねじ部としての細長いナット17は第1分割片14の上端に溶接接合され、そのナット17の上端面17aは布基礎コンクリート11の上端面11aと面一になっている。」

イ 「【0043】請求項2に記載の発明によれば、アンカーボルトを構成する一方の分割片の端部には折曲部が設けられていることから、その分割片を基礎コンクリートに強固に固定することができる。また、連結手段として両分割片にねじ部を設け、両ねじ部を螺合することにより両分割片を連結するようにしたことから、両分割片を確実に連結固定することができる。」


第6 無効理由の判断
1 無効理由1
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

イ 本件特許発明の課題
本件特許発明の課題についてみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下のとおり記載されている。

(ア)「【0001】
本発明は、基礎コンクリートを形成するために使用される型枠の位置がズレないようにするための支持具に関し、特に、薄板によって形成するようにした支持具に関するものである。
(イ)「【0007】
「2度打ち」によって基礎コンクリート30を形成する場合、当然、ベース部31が固化した後に、このベース部31の上に布基礎32となるべき生コンクリートを打設するのであるが、ベース部31が固化するまでの間に、布基礎32を形成すべき型枠20が外側に開いてしまうことがある。型枠20が開いてしまうことは、固化したベース部31と型枠20との間に、後に打設される生コンクリートの所謂「トロ」が侵入することを意味し、その結果、トロがベース部31外面を汚すだけでなく、当該ベース部31上に形成すべき布基礎32がベース部31とはズレて形成されてしまうこともある。このような、ベース部31の汚れや、ベース部31と布基礎32とのズレは避けなければならない。」
(ウ)「【0008】
その点、特許文献2に記載された「基礎コンクリート型枠装置と型枠連結具及び型枠固定具」は「従来技術による型枠板を木杭によって固定支持する構造を改善する基礎コンクリート型枠装置と型枠連結具及び型枠固定具を提供する」ことを目的としてなされたものであるから、図6に示すように、「型枠の組立て及び解体作業が容易で転用回数も多くなって経済的であると共に、地盤に対する型枠の固定支持力も向上する」ことができると考えられる。」
(エ)「【0010】
この特許文献2のように、「型枠板5の長手方向の中間部に、地盤中に打ち込む金属製のアンカー杭7が挿通される挿通孔を設けた型枠固定具3を装着させる」ことは、型枠そのものの価格を引き上げることになって、施工上好ましくないと考えられる。特に、型枠20の高さが大きいものになると、上方部分に「型枠固定具3を装着させる」ことが困難になるだけでなく、型枠20の上方部分が外側に開くのを防止仕切れない、という虞も出てくる。」
(オ)「【0012】
すなわち、本発明の目的とするところは、2度打ちする際の型枠20の支持を確実に行うことができて、構造が簡単で安価に提供することのできる支持具10を提案することにある。」

上記(ア)ないし(オ)の記載からみて、本件特許発明は、「2度打ち」によって基礎コンクリートを形成するために使用される型枠の位置がズレないようにするための支持具に関し、従来の技術は、型枠そのものの価格を引き上げることなり、特に、型枠の高さが大きいものになると、上方部分に「型枠固定具3を装着させる」ことが困難になるだけでなく、型枠20の上方部分が外側に開くのを防止仕切れない、という問題点を有していたところ、本件特許発明は、「2度打ちする際の型枠の支持を確実に行うことができて、構造が簡単で安価に提供することのできる支持具を提案すること」を課題とするものである。

ウ 本件特許発明1について
本件特許発明1は、課題解決の手段として、「全体を薄板によって形成するとともに、前記型枠(20)の側端面に当接される基部(11)と、この基部(11)の外側端部に一体化されて前記型枠(20)の外側角部(21)に係止される外側係止部(12)と、前記基部(11)の内側端部に一体化されて前記型枠(20)の内側角部(22)に係止される内側係止部(13)と、前記基部(11)の内側端部に一体化されて、前記基礎コンクリート(30)に埋設されることになるアンカー部(14)とを備えたもの」である。

エ 発明の詳細な説明の記載
本件特許発明の課題解決の手段に関して、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下のとおり記載されている。

(ア)「【0015】
また、本発明に係る支持具10は、その全体が金属板等の薄板によって形成されるものである。この支持具10を薄板によって形成する必要があるのは、例えばプレス機の1回打ちによって簡単に製造できるようにして、安価に提供できるようにするとともに、簡単な構造とすることにより、当該支持具10の型枠20に対する取付作業をも簡単に行えるようにするためである。
【0016】
換言すれば、この支持具10は、図1に示すように、一枚の薄板によって、基部11、外側係止部12、内側係止部13、及びアンカー部14を備えたものであるが、これを使用する場合には、まず、基部11は、図2及び図3に示すように、型枠20の側端面であって、基礎コンクリート30の布基礎32を形成する部分より下側に当接される。このとき、基部11の外側端部に一体化された外側係止部12は、型枠20の外側角部21に係止されるとともに、基部11の内側端部に一体化された内側係止部13は、型枠20の内側角部22に係止される。つまり、この支持具10は、基部11、外側係止部12、及び内側係止部13によって一つの型枠20の側端面を包み込むようにしながら、これに簡単に取り付けられるのである。
(イ)「【0017】
一つの型枠20の側端面であって、基礎コンクリート30の布基礎32を形成する部分より下側に取り付けられた支持具10は、図2に示すように、そのアンカー部14がベース部31または防湿部33側に延出することになる。この状態で、別の型枠20を、当該支持具10を取り付けた先の型枠20に当接させることにより、図3に示すように、当該支持具10は2枚の型枠20の間に挟み込まれて固定されることになる。なお、各型枠20は、別の金具や支持杭23等によって、位置決めや固定がなされる。」
(ウ)「【0019】
以上のようにして組み立てた各型枠20の間に、まず、ベース部31及び防湿部33とすべき生コンクリートを打設して、その硬化を待つのである。このベース部31及び防湿部33となる生コンクリートが硬化することによって、本発明に係る支持具10のアンカー部14が硬化コンクリート中に埋設固定されることになる。そして、この支持具10は、その外側係止部12や内側係止部13によって型枠20に取り付けてあるから、型枠20をベース部31または防湿部33に対してしっかりと支持固定することになるのである。従って、布基礎32となる生コンクリートが次に打設されるまでの間、支持具10は型枠20を外に広がらないようにそのまま保持し、各型枠20とベース部31あるいは防湿部33との間に「トロ」が侵入するような隙間を形成させることはない。」

上記(ア)ないし(ウ)によれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、
・その全体が金属板等の薄板によって形成されるので、簡単に製造できて安価に提供でき、簡単な構造とすることにより取付作業を簡単に行えること、
・外側係止部及び内側係止部が、型枠の外側角部及び内側角部に係止されることにより、支持具は、基部、外側係止部及び内側係止部によって一つの型枠の側端面を包み込むようにしながら簡単に取り付けられること、
・硬化したコンクリート中にアンカー部が埋設固定されることにより、型枠をベース部または防湿部に対してしっかりと支持固定すること、
が記載されていることを、当業者が理解することができる。

オ 上記イないしエによれば、当業者は、発明の詳細な説明の記載に基づき、本件特許発明1の「「全体を薄板によって形成するとともに、前記型枠(20)の側端面に当接される基部(11)と、この基部(11)の外側端部に一体化されて前記型枠(20)の外側角部(21)に係止される外側係止部(12)と、前記基部(11)の内側端部に一体化されて前記型枠(20)の内側角部(22)に係止される内側係止部(13)と、前記基部(11)の内側端部に一体化されて、前記基礎コンクリート(30)に埋設されることになるアンカー部(14)とを備えたもの」との構成により、本件特許発明の課題を解決することができると認識することができる。

カ 請求人の主張について
請求人は、概略、発明の目的は、2度打ちする際の型枠の支持を確実に行うことができる支持具を提案することにあるので、支持具が型枠に対して取付けた位置からずれないことが必要となるが、基部、外側係止部、内側係止部で型枠の側面に取り付けるのみでは確実な係止はされ得ないものと考えられるので、本件特許発明1は、外側角部及び内側角部に対する係止のための具体的手段が示されておらず、課題を解決するための手段が反映されていない旨、主張する(上記第3の3(1))。
しかしながら、上記エのとおり、発明の詳細な説明には、外側係止部及び内側係止部が、型枠の外側角部及び内側角部に係止されることにより、支持具は、基部、外側係止部及び内側係止部によって一つの型枠の側端面を包み込むようにしながら簡単に取り付けられることが記載されており、基部、外側係止部及び内側係止部により、支持具を型枠に取り付けられることが理解できる。
請求人が主張するように、型枠に対して上下方向において規制されずに、移動自在であって、生コンクリートの流し込み等に下方にずれることが想定される(上記第3の3(1)ア及びイ)としても、本件特許発明の支持具は、発明の詳細な説明の記載によれば、硬化したコンクリート中にアンカー部が埋設固定されることにより、型枠をベース部または防湿部に対してしっかりと支持固定するものであるから、コンクリートの硬化前であれば、生コンクリートの流し込み等の作業の影響による移動を確実に規制されることまで求められておらず、ある程度の位置の精度で型枠に保持されていれば足りるものと認められる。そして、仮に、支持具が所定の距離以上移動したとしても、コンクリートの打設前であれば、元の位置に戻すこともできる。
よって、本件特許発明の支持具は、その発明の課題において、下方に移動不可能な程度に確実に保持されること、及びそのための構成が必須というものではなく、請求人の無効理由1についての主張は、採用することができない。

キ まとめ
以上のとおり、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明2、4、5及び6は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲のものであるから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

2 無効理由2(その1)
無効理由2を、甲第1号証を主引用例として検討する。
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明の「ベースコンクリートBC」及び「該ベースコンクリートBC上に打設されるコンクリートC」、「縦長外枠2」、「コンクリート型枠傾倒防止具8」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本件特許発明1の「基礎コンクリート」、「型枠」、「支持具」に相当する。

(イ)甲1発明において、「固設されたベースコンクリートBCにより一端側が保持された上記型枠傾倒防止具8により上記縦長外枠2の外側に向く傾倒が防止され」ることは、縦長外枠2の位置を内外方向に固定しているといえるから、甲1発明の「コンクリート型枠傾倒防止具8」は、本件発明1の「基礎コンクリートを形成するために使用される型枠の位置を固定するための支持具」に相当する。

(ウ)甲1発明の「コンクリート型枠傾倒防止具8」の「連結板9」が「薄板鋼鈑で長手方向の一端側が幅広となる所定長さの台形状に形成された」ことは、本件発明1の「支持具」を「全体を薄板によって形成する」ことに相当する。
甲1発明の「コンクリート型枠傾倒防止具8」は、幅狭に形成された連結板9の他端側が、縦長フランジFに挟持されることから、該連結板9の他端側は、本件特許発明1の「型枠の側端面に当接される基部」に相当する。

(エ)甲1発明において、「型枠傾倒防止具8」は、「固設されたベースコンクリートBCにより一端側が保持され」るから、「型枠傾倒防止具8」の「連結板9」の「幅広となる所定長さの台形状に形成された」「一端側」は、本件特許発明1の「基礎コンクリートに埋設されることとなる」ものである。
また、「3個の貫通孔6のうち、幅広の連結板9の一端側の2個はベースコンクリートBCに埋設されて」いるものであって、「固設されたベースコンクリートBCにより一端側が保持された上記型枠傾倒防止具8により上記縦長外枠2の外側に向く傾倒が防止され」ることから、上記の2個の貫通孔6は、アンカーの機能を備えることは自明である。
よって、甲1発明の「型枠傾倒防止具8」の「連結板9」の「一端側」は、本件特許発明1の「基礎コンクリートに埋設されることになるアンカー部」に相当する。

(オ)上記(イ)の「基部」及び上記(エ)の「アンカー部」を参照すると、甲1発明の「幅狭に形成された連結板9の他端側」に「ベースコンクリートBCの外壁面から突出した該外壁面に対応する上下端縁に切断可能な切り欠き13a,13bが形成」されたことと、本件特許発明1の「基部とアンカー部との間に、このアンカー部から基部を折り取るための折取部を形成したこと」とは、「基部とアンカー部との間に、このアンカー部から基部を取り除くための切断部を形成したこと」で共通する。

(カ)上記(ア)ないし(オ)からみて、本件特許発明1と甲1発明とは、
「基礎コンクリートを形成するために使用される型枠の位置を固定するための支持具であって、
全体を薄板によって形成するとともに、前記型枠の側端面に当接される基部と、前記基部の内側端部に一体化されて、前記基礎コンクリートに埋設されることになるアンカー部とを備えたものとし、
さらに、前記基部とアンカー部との間に、このアンカー部から前記基部を取り除くための切断部を形成した型枠のための支持具。」で一致するものの、以下の2点で相違している。

〔相違点1〕本件特許発明1は、基部の外側端部に一体化されて前記型枠の外側角部に係止される外側係止部と、前記基部の内側端部に一体化されて前記型枠の内側角部に係止される内側係止部とを備えているのに対し、甲1発明は、そのような構成が設けられていない点。

〔相違点2〕基部を取り除くための切断部について、本件特許発明1は、基部を折り取るための折取部を形成したのに対し、甲1発明は、切断具(カッター)により切断することができる切り欠き13a,13bを形成した点。

イ 判断
上記相違点1及び2について検討する。
(ア)相違点1について
a 甲1発明の縦長外枠2の縦長フランジFは、縦長外枠2の長手方向両端を折曲形成したものに過ぎず、かつ、隣接する縦長フランジFは、クランプ装置10のクランプ部14によりクランプされることからみて、上記相違点1で挙げたとおり、本件特許発明1の「外側角部」に相当する構成は備えていない。
そして、隣接する縦長フランジFは、クランプ装置10のクランプ部14によりクランプされるという構成を採用する以上、該クランプの支障となる「外側角部」を新たに形成することは、当業者が容易になし得たことではない。
加えて、仮に、該「外側角部」に係止する「外側係止部」を形成することが周知または公知技術であったとしても、上記のとおり「外側角部」を設けることが容易になし得たことではない以上、該「外側角部」に係止される「外側係止部」を形成することも、当業者が容易になし得たことではない。
よって、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

b 請求人は、甲2発明の規制片17及び規制部15が、それぞれ、本件特許発明1の「外側係止部」及び「内側係止部」に相当する旨、主張する(上記第3の3(3)イ(ア))。
しかしながら、甲2発明の「規制片17」及び「規制部15」は、「第1の型枠3に接し」、そして「規制部15,17が型枠3の側面に衝止して中間巾止め金具10の倒れを防止できて支持部13の高さを一体に保持できる。」(上記第5の2(3)【0034】)との機能を奏するものではあるが、該規制部15及び規制片17が、第1の型枠3にどの程度係合するのか不明である。そして、甲2発明の「狭着部16」の「中央部には第1の型枠3の連結用3aに連通する穴16が形成され」ることで、「狭着部12を挟んで隣接する第1の型枠3間をピン7により固定」しており、「また、規制部15(規制片17)は、図1の如く必ずしも左右両側にある必要はなく、図6又は図7に示すように何れか一方に、或いは図8に示すように両方の規制部15をなくして規制片17のみにしてもよく、要は金具本体11が傾斜や捻れを生じることなく型枠3に挟着されるようになっていれば良いものである。」(上記第5の2(4)【0038】)と記載されているように、規制部15と規制片17の両方が備わっていなければならないものでもないことから、甲2発明の規制片17及び規制部15が、本件特許発明1の「型枠の外側角部に係止される外側係止部」及び「型枠の内側角部に係止される内側係止部」に相当するとは認められない。

c また、請求人は、相違点1に係る構成は甲第3号証ないし甲第7号用に記載されたように周知技術である旨、主張する(上記第3の3(3)イ(ア))。
しかしながら、甲第4号証ないし甲第7号証に記載の保持具や金具と、甲1発明のコンクリート型枠傾倒防止具8とは、単に、型枠と保持具や金具との位置関係についてみれば似たものではあるが、甲1発明のコンクリート型枠傾倒防止具8は、型枠に固定支持されるのに対し、甲第4号証ないし甲第7号証に記載の保持具や金具は、型枠同士の位置を維持するための金具であるから、固定されるもの及び固定対象が相違している。
さらに、甲第3号証に記載の接合具は、型枠の機能を有するパネル4a,4bに係止されているとの特定はない。
よって、甲第3号証ないし甲第7号証に記載の事項から、相違点1に係る構成が、周知技術であるとはいえない。

d 上記b及びcにおいて検討したとおり、相違点1に係る構成は、甲第2号証に記載されておらず、かつ、甲第3号証ないし甲第7号証の記載事項からみて周知技術ともいえないから、甲1発明に甲2発明や甲第3号証ないし甲第7号証に記載の事項を適用したとしても、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、請求人の主張は採用できない。

(イ)相違点2について
コンクリートを打設した後の不要な部材を取り除くために、該部材を折り取るための折取部を形成することは、甲第8?11号証に記載されているように、本件特許の出願前に慣用的に用いられている手段であるから、甲1発明の切断可能な切り欠き13a,13bに代えて、上記の慣用手段を用いることにより、相違点2に係る本特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 小括
以上のことから、本件特許発明1は、甲1発明、甲2発明及び周知慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2、4、5及び6について
本件特許発明2、4、5及び6は、本件特許発明1の構成を全て含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記(1)で検討した理由と同じ理由により、甲1発明、甲2発明及び周知慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 無効理由2(その2)
無効理由2を、甲第2号証を主引用例として検討する。
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
(ア)甲2発明の「基礎コンクリート」、「第1の型枠」及び「第2の型枠」は、それらの機能及び構造からみて、それぞれ、本件特許発明1の「基礎コンクリート」、「型枠」に相当する。
また同様に、「段付き中間巾止め金具10」は「支持具」に相当する。
なお、被請求人は、「段付き中間巾止め金具10」は「支持具」に相当しない旨主張する(上記第4の2(3)ア(イ))が、「段付き中間巾止め金具10」と「支持具」は、その詳細な構造や機能が相違するとしても、型枠を支持する金具である点では一致しているから、上記のとおり相当するものと認める。

(イ)甲2発明において、「一対の型枠を高低差をつけて支持すること」は、型枠の位置を固定しているといえるので、甲2発明の「基礎コンクリートを打設する際に使用される一対の型枠を高低差をつけて支持するための段付き中間巾止め金具10」は、本件特許発明1の「基礎コンクリートを形成するために使用される型枠の位置を固定するための支持具」に相当する。

(ウ)甲2発明の「狭着部12」は、「隣接する第1の型枠3間に狭着されるもの」であるから、本件特許発明1の「前記型枠の側端面に当接される基部」に相当する。

(エ)甲2発明において、「コンクリートの外側に突出した支持部13の一対の立上り片13a、13bを分離部19から切り離し、さらに、挟着部12を分離部18から切り離す」ものであることから、甲2発明の「挟着部12の規制部15側の端部には、縦方向にミシン目状の分離部18が形成されて」いること、及び「立上り片13aの近傍にはV字状の切り込みからなる分離部19が形成されて」いることと、本件特許発明1の「基部を折り取るための折取部を形成した」こととは、「部材を取り除くための分離部を形成した」ことで共通する。

(オ)したがって、本件特許発明1と甲2発明とは、
「基礎コンクリートを形成するために使用される型枠の位置を固定するための支持具であって、
前記型枠の側端面に当接される基部を備え、
部材を取り除くための分離部を形成した型枠のための支持具。」で一致するものの、以下の4点で相違している。
〔相違点A〕本件特許発明1は、全体を薄板によって形成するのに対し、甲2発明は、そのような特定がない点。
〔相違点B〕本件特許発明1は、前記型枠の側端面に当接される基部と、この基部の外側端部に一体化されて前記型枠の外側角部に係止される外側係止部と、前記基部の内側端部に一体化されて前記型枠の内側角部に係止される内側係止部とを備えるのに対し、甲2発明は、そのような特定がない点。
〔相違点C〕本件特許発明1は、前記基部の内側端部に一体化されて、前記基礎コンクリートに埋設されることになるアンカー部とを備えたのに対し、甲2発明は、アンカー部を備えるかどうか不明な点。
〔相違点D〕部材を取り除くための分離部について、本件特許発明1は、部材を折り取るための折取部であるのに対し、甲2発明は、部材を折り取るための折取部ではない点。

イ 判断
上記相違点A?Dについて検討する。
(ア)相違点A
a 本件特許発明1の「全体を薄板によって形成する」との特定事項についてみると、その意味していることが必ずしも明確ではない。
そこで、上記特定事項について本件特許明細書をみると、「【0015】また、本発明に係る支持具10は、その全体が金属板等の薄板によって形成されるものである。この支持具10を薄板によって形成する必要があるのは、例えばプレス機の1回打ちによって簡単に製造できるようにして、安価に提供できるようにするとともに、簡単な構造とすることにより、当該支持具10の型枠20に対する取付作業をも簡単に行えるようにするためである。」、「【0016】換言すれば、この支持具10は、図1に示すように、一枚の薄板によって、基部11、外側係止部12、内側係止部13、及びアンカー部14を備えたものであるが、・・・」と記載されていることからみて、本件特許発明1の「全体を薄板によって形成する」は、「一枚の薄板で全体を構成する」ことを意味していると解される。
請求人は、概略、本件特許発明1においては、一枚の薄板から形成されることは特定されていない旨、主張する(第3の3(4)ア(イ))が、上記のとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

b 続いて、甲2発明の「段付き中間巾止め金具10」を「全体を薄板で形成する」ことが容易想到かどうかについて検討する。
甲第2号証の記載をみると、「本実施例において、支持具13と金具本体11を別体で構成し、溶接により一体化したが、支持具13と金具本体11を一体に製作しても良い」(上記第5の2(3)の【0026】)とあり、「段付き中間巾止め金具10」を主に構成する「支持具13」、「金具本体11」及び「挟着部12」のうち、「支持具13」と「金具本体11」については、一体に製作することを示唆しているが、「挟着部12」まで一体に製作することまでは示唆していない。
「挟着部12」については、「挟着部12は薄片で形成されているので、隣接する第1の型枠間の隙間を小さくすることができ、打設されたコンクリートの洩れやトロの流出を防止できる」(同【0034】)と記載されていることからみて、「薄片」であって、第1の型枠間の隙間に配置されるような薄いものが用いられる。
これに対し、「支持具13」及び「金具本体11」は、板状のものであったとしても、薄板とは特定されておらず、かつ、甲2発明の「段付き中間巾止め金具10」は、「一対の型枠を高低差をつけて支持するための」ものであるから、支持すべき型枠の重量に対する強度を勘案すると、「支持具13」及び「金具本体11」に対して、隙間に配置される「挟着部12」ほどの薄いものを用いるとは考え難い。
よって、「支持具13」及び「金具本体11」には、上記「挟着部12」の薄片よりも厚いものが用いられていると解することが自然である。
してみると、「支持具13」と「金具本体11」に加えて、同じ厚み(薄さ)ではない「挟着部12」まで一枚の薄板で一体に製作することは困難を伴うから、甲2発明の「段付き中間巾止め金具10」を、一枚の薄板で全体を構成すること、つまり、相違点Aに係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

c また、請求人は、概略、甲1発明における「連結板9」は「全体を薄板によって形成する」ものであり、外側係止部と内側係止部を一体化することは、甲第3号証?甲第7号証の記載から周知技術である旨、主張する(第3の3(4)イ(ア))。
しかしながら、上記a及びbで検討したとおりであるから、請求人が主張する周知技術に関わらず、甲2発明において、全体を薄板によって形成することは、当業者が容易になし得たことではない。


(イ)相違点B
a 甲2発明の「規制片17」及び「規制部15」は、第1の型枠3に接するものであって、「規制部15,17が型枠3の側面に衝止して中間巾止め金具10の倒れを防止できて支持部13の高さを一体に保持できる。」(上記第5の2(3)【0034】)との機能を奏するものではあるが、該規制部15,規制片17が、第1の型枠3にどの程度接して係合するのか不明である。そして、「また、規制部15(規制片17)は、図1の如く必ずしも左右両側にある必要はなく、図6又は図7に示すように何れか一方に、或いは図8に示すように両方の規制部15をなくして規制片17のみにしてもよく、要は金具本体11が傾斜や捻れを生じることなく型枠3に挟着されるようになっていれば良いものである。」(上記第5の2(4)【0038】)と記載されているように、規制部15と規制片17の両方が備わっていなければならないものでもないことから、規制部15と規制片17とが、第1の型枠3に係合するものとは認められない。
よって、相違点Bに係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

b なお、無効理由2(その1)の検討において、相違点Bと同様の相違点1に係る構成について、請求人は、甲第3号証ないし甲第7号証に記載されたように周知技術である旨、主張する(上記第3の3(3)イ(ア))。
しかしながら、上記第6の2(1)イ(ア)c及びdで検討したとおり、相違点Bに係る構成は周知技術とはいえず、甲第3号証ないし甲第7号に記載の事項に基いて、相違点Bに係る本件特許発明1の構成を容易に想到し得たともいえない。

c 請求人は、相違点Bを相違点として認定していないが、上記a及びbのとおり、実質的な相違点であって、かつ、当業者が容易になし得たことでもない。

(ウ)相違点C
甲2発明の「段付き中間巾止め金具10」は、その構造が「金具本体11と、金具本体11の端部に設けられた挟着部12と、挟着部12に対して金具本体11の反対側の端部に設けられた支持部13とから構成され」るものであって、アンカー部を設けたとの特定はない。
そして、甲2発明の「段付き中間巾止め金具10」は、「基礎コンクリートを打設する際に使用される一対の型枠を高低差をつけて支持するため」に用いるものであるから、取り外される型枠を支持する必要がなくなるコンクリートの硬化後に、段付き中間巾止め金具10をその硬化したコンクリート中に固定する必要はない。よって、甲2発明にはアンカー部を設ける動機付けが見当たらない。
なお、甲1発明は、実質的にアンカー部を備えているが(上記2(1)ア(エ))、甲2発明にアンカー部を設ける動機付けがない以上、甲1発明のアンカー部を適用することは、当業者が容易になし得たことではない。
以上のことから、相違点Cについて、請求人は相違点として認定していないが、実質的な相違点であって、しかも、甲2発明の段付き中間巾止め金具10にアンカー部を設けることにより、上記相違点Cに係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

(エ)相違点D
コンクリートを打設した後の不要な部材を取り除くために、該部材を折り取るための折取部を形成することは、甲第8?11号証に記載されているように、本件特許の出願前に慣用的に用いられている手段であるから、甲2発明の分離部18に代えて、上記の慣用手段を用いることにより、相違点Dに係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲2発明と同一ではなく、甲2発明、甲1発明及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでなない。

2 本件特許発明2、4、5及び6
本件特許発明2、4、5及び6は、本件特許発明1の構成を全て含み、さらに構成を限定したものであるから、上記1で検討した理由と同じ理由により、甲2発明、甲1発明及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第7 むすび
以上のとおり、本件特許発明1、2、4、5及び6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしており、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものでもないから、審判請求人の主張する無効理由によって、本件特許発明1、2、4、5及び6に係る特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-09-29 
結審通知日 2020-10-12 
審決日 2020-10-29 
出願番号 特願2007-142255(P2007-142255)
審決分類 P 1 123・ 547- Y (E04G)
P 1 123・ 121- Y (E04G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 隆  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 住田 秀弘
長井 真一
登録日 2010-01-29 
登録番号 特許第4446127号(P4446127)
発明の名称 基礎コンクリート形成用型枠の支持具  
代理人 藤川 敬知  
代理人 加藤 洪太郎  
代理人 山田 博司  
代理人 夏目 武志  
代理人 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所  
代理人 川岸 弘樹  
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