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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1377184
審判番号 不服2020-16498  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-01 
確定日 2021-09-02 
事件の表示 特願2015-255926「加速度に基づく動き許容および予測符号化」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月11日出願公開、特開2016-126797、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成27年12月28日(パリ条約による優先権主張2014年12月27日,米国,2015年11月18日,米国)の出願であって,令和2年1月14日付けで拒絶の理由が通知され,同年4月8日に意見書とともに手続補正書が提出され,同年8月20日付けで拒絶査定(謄本送達日同年8月24日)がなされ,これに対して同年12月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,令和3年2月2日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ,同年3月8日に上申書が提出されたものである。


第2 原査定の概要

原査定(令和2年8月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1-9
・引用文献等 1-3

<引用文献等一覧>
1.特開2009-151446号公報
2.特開2009-277033号公報
3.特開平09-006891号公報


第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正(以下,「本件補正」という。)は,特許法17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
本件補正によって請求項1に「前記検知された動きに応じて、前記スキャナーの、前記スキャン可能な対象に相対的な」という事項,及び,「自動的に」という事項を追加する補正は,本件補正前の「速度」及び「スキャンする」との事項をそれぞれ限定的に減縮するものであり,また,当該「前記検知された動きに応じて、前記スキャナーの、前記スキャン可能な対象に相対的な」という事項は,当初明細書の段落【0032】に,「スキャナー12の画像センサ22が活動化される間、スキャナー12の動きセンサ26は、スキャン可能な対象に相対的なスキャナー12の動きを検知する。」と記載され,また,「自動的に」という事項は,当初明細書の段落【0035】に,「関心領域30は、プロセッサ16が、スキャン可能なコードが位置決めされるであろうということを予測する領域であり、したがって、プロセッサ16が、復号アルゴリズムを実行することを始めるべきである画像の領域である。関心領域30の位置は、速度および運動方向データに応答して規定される。」と記載され,同段落【0036】に,「関心領域30が規定されると、捕捉される画像32(その外側の境界により図4?図7に示されている画像)をスキャンまたは復号するプロセスが、関心領域30で始まる。」(下線は当審で付加。)と記載されているから,本件補正は新規事項を追加するものではないといえる。
そして,以下第4?第6に示すように,補正後の請求項1?9に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明

本願請求項1?9に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明9」という。)は,特許請求の範囲の請求項1?9に記載された,次のとおりのものと認める。(下線部は,補正された箇所を示す。)

「 【請求項1】
スキャン可能な対象の画像の内部の関心領域(region of interest)の位置を予測する方法であって、
プロセッサおよび画像センサを有するスキャナーを用意するステップと、
視野方向(viewing direction)で、スキャン可能な対象に向かって当該スキャン可能な対象を検知するステップであって、撮像面が前記視野方向と直交する、検知するステップと、
前記画像センサに対するゲインおよび露出時間をセットするステップと、
前記スキャン可能な対象の画像を前記画像センサによって捕捉するステップと、
前記スキャン可能な対象に相対的な、動きセンサ面内の前記スキャナーの動きを検知するステップであって、前記動きセンサ面が前記撮像面と平行であり、前記動きが検出されると、前記ゲインを増大すること、または、前記露出時間を低下させることのいずれかを引き起こす、検知するステップと、
前記検知された動きに応じて、前記スキャナーの、前記スキャン可能な対象に相対的な速度、および、前記速度に対応する運動方向を出力するステップと、
関心領域を、前記捕捉される画像内で、前記速度および前記運動方向に応答して位置決めするステップと、
前記捕捉される画像を、前記関心領域を起点として自動的にスキャンするステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記関心領域を位置決めする前記ステップが、
動きが検出されないときに、前記関心領域を、前記捕捉される画像の中心で位置決めする(locating)ステップと、
動きが検出されるときに、前記関心領域を、前記捕捉される画像の前記中心からの、および、前記捕捉される画像の縁部の方への、ずれ方向(offset direction)において位置決めするステップであって、前記ずれ方向が前記運動方向と実質的に平行である、位置決めするステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記関心領域を位置決めする前記ステップが、
動きが検出されるときに、前記関心領域を、前記画像の前記中心から測定されるずれ距離(offset distance)で位置決めするステップであって、前記ずれ距離が前記速度に比例する、位置決めするステップ
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
光源を用意するステップと、
前記光源を、前記視野方向で光を方向設定する(direct light)ように構成する(configuring)ステップと、
前記光源を、選択的に非活動化状態および活動化状態の1つであるように構成するステップと、
前記光源を、動きが検出されるときに活動化するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
光源を用意するステップと、
前記光源を、光を前記視野方向で方向設定するように構成するステップと、
前記光源を、選択的に非活動化状態および活動化状態の1つであるように構成するステップと、
前記光源を、動きが検出されるときに活動化するステップと
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
光源を用意するステップと、
前記光源を、光を前記視野方向で方向設定するように構成するステップと、
前記光源を、選択的に非活動化状態および活動化状態の1つであるように構成するステップと、
前記光源を、動きが検出されるときに活動化するステップと
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記画像センサと前記スキャン可能な対象との間の距離に対応する撮像距離(imaging distance)を規定するステップと、
前記画像センサに対する前記露出時間を規定するステップと、
前記露出時間および前記撮像距離に基づいて前記速度を推定するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記画像センサと前記スキャン可能な対象との間の距離に対応する撮像距離を規定するステップと、
前記画像センサに対する前記露出時間を規定するステップと、
前記露出時間および前記撮像距離に基づいて前記速度を推定するステップと
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記画像センサと前記スキャン可能な対象との間の距離に対応する撮像距離を規定するステップと、
前記画像センサに対する露出時間を規定するステップと、
前記露出時間および前記撮像距離に基づいて前記速度を推定するステップと
をさらに含む、請求項3に記載の方法。」


第5 引用例

1 引用例1に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,特開2009-151446号公報(平成21年7月9日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

A 「【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、読み取りエリア内に複数の情報コードが含まれる場合に、ユーザが希望する情報コードを迅速かつ的確に特定でき、ひいては読取処理時間を短縮化できる光学的情報読取装置を提供することを目的とする。

…(中略)…

【0045】
(1.全体構成)
図1に示す光学的情報読取装置1は、バーコードや二次元コードを読み取るコードリーダとして構成されるものであり、主に、照明光源21、受光センサ23、フィルタ25、結像レンズ27等の光学系と、メモリ35、制御回路40、操作スイッチ42、液晶表示装置46等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、電源スイッチ41、電池49等の電源系と、から構成されている。なお、これらは、図略のプリント配線板に実装あるいは図略のハウジング内に内装されている。」

B 「【0056】
このように光学的情報読取装置1を構成することによって、例えば、電源スイッチ41がオンされて所定の自己診断処理等が正常終了し、情報コードCの読み取りが可能な状態になると、照明光Lfの発光を指示する操作スイッチ42(例えばトリガースイッチ)の入力を受け付ける。これにより、作業者がトリガースイッチを押圧しオンにすることで、制御回路40が同期信号を基準に照明光源21に発光信号を出力するので、当該発光信号を受けた照明光源21は、LEDを発光させて照明光Lfを照射する。
【0057】
すると、情報コードCに照射された照明光Lfが反射しその反射光Lrが読取口およびフィルタ25を介して結像レンズ27に入射するため、受光センサ23の受光面23aには、結像レンズ27により情報コードCの像、つまりコード画像が結像される。受光センサ23の各受光素子はこの結像に応じた信号をそれぞれ出力する。受光センサ23から出力される信号データは増幅回路31で増幅された後、A/D変換回路にてデジタル信号に変換され、情報コードCの画像を含んだ画像データとしてメモリ35内に記憶されることとなる。なお、本実施形態では、受光センサ23が「受光手段」の一例に相当し、情報コードが記録された読取対象からの反射光を受光するように機能する。また、制御回路40は、「画像生成手段」の一例に相当し、第1の時期(後述する画像取得処理がなされる時期(図2))における受光センサ23による受光結果に基づいて読取対象の第1画像を生成するように機能する。また、制御回路40は、「デコード手段」の一例にも相当し、読取対象の第1画像に含まれる情報コードの画像をデコードするように機能する。」

C 「【0060】
そして、S1にて取得した画像データ内に含まれる情報コードをデコードする処理を行う(S3)。このデコード処理では、画像データ内に含まれる情報コードの全てのデコードを行う。即ち、画像データ内に含まれる情報コードが1つのみである場合にはその情報コードのデコードを行い、画像データ内に2以上の情報コードが含まれる場合にはその複数の情報コードを全てデコードする。そして、各情報コードとそのデコード結果とを対応付けてメモリ35に記憶しておく。なお、画像データに基づいてバーコードや二次元コードのデコードを行う技術は公知であるので詳細は省略するが、概要としては、S1にて取得した画像データを2値化した後、所定の情報処理を施すことによって情報コードとして符号化された文字データ等をデコードし、その内容をメモリ35に記憶している。」

D 「【0087】
図2に示すように、S7の処理が終わると、S8にて情報コード選択処理が行われる。この情報コード選択処理は、S7にて設定された各領域のポイント値(優先順位)に基づき、取得画像に複数含まれる情報コードの中からいずれかの情報コードを選択する処理である。具体的には、情報コードの配置領域か否かをポイント値が大きい領域(即ち、より優先順位が高い領域)から順に調べ、よりポイント値が大きい領域に配置される情報コードをデコードすべき情報コードとして選択するように処理を行っている。例えば、図10(a)のように各領域が設定された場合、ポイント値「4」の領域に一部が配置される情報コードがあればその情報コードが選択されることとなる。また、そのような情報コードが存在しない場合、ポイント値「3」の領域に一部が配置される情報コードが存在するか否かを調べ、存在する場合にはその情報コードをデコードすべき情報コードとして選択する。
【0088】
なお、S7では第1画像から第2画像に変化する際に、画像中心位置へ接近しようとする領域のポイント値が高くなるように各領域が数値設定されるため、S8の処理では、第1画像から第2画像に変化する際に画像中心位置に接近しようとするコード画像に対応した情報コードが選択されることとなる。例えば、図7の例では、画像中心位置に近づこうとする右下領域のポイント値が高くなるように数値設定され、画像中心位置に接近しようとするコード画像(符号Q1',Q2"参照)に対応した情報コードQ2が選択されることとなる。」

E 「【0125】
上記実施形態では、異なる時期に得られた2つの画像(第1画像及び第2画像)を用いて光学的情報読取装置1の操作方向及び操作量を検出したが、光学的情報読取装置1内に加速度センサを設け、これを「操作方向検出手段」「操作量検出手段」として機能させてもよい。」

F 「【0128】
この構成の場合、第1の時期後(S1にて画像取得がなされた後)に第1加速度センサ71及び第2加速度センサ72から制御回路40に入力される値に基づいて、光学的情報読取装置1の移動方向及び移動量(より詳しくは読取口3付近の移動方向及び移動量)を検出することができる。具体的には、第1加速度センサ71の値に基づきX軸方向における単位時間当たりの移動量Lxを算出でき、第2加速度センサ72に基づきY軸方向における単位時間当たりの移動量Lyを算出できるため、これら移動量Lx、Lyから単位時間当たりの全体の移動量Laを求め、これを光学的情報読取装置1の操作量としてS7以降の処理で用いることができる。また、移動量Lx、Lyから図17(a)のように移動方向θを求めこれを操作方向としてS7以降の処理で用いることができる。」

2 引用発明

ア 上記記載事項Aの「本発明は…(中略)…読み取りエリア内に複数の情報コードが含まれる場合に、ユーザが希望する情報コードを迅速かつ的確に特定でき、ひいては読取処理時間を短縮化できる光学的情報読取装置」との記載,及び同じく記載事項Aの「光学的情報読取装置1は、バーコードや二次元コードを読み取るコードリーダとして構成され」との記載から,引用例1には,“読み取りエリア内に複数の情報コードが含まれる場合に,ユーザが希望する情報コードを迅速かつ的確に特定でき,ひいては読取処理時間を短縮化できる光学的情報読取装置1における方法”について記載されているといえる。
また,同じく上記記載事項Aの「光学的情報読取装置1は、バーコードや二次元コードを読み取るコードリーダとして構成され…(中略)…受光センサ23…(中略)…と…制御回路40…(中略)…等のマイクロコンピュータ…(中略)…から構成され」との記載から,引用例1には,“バーコードや二次元コードを読み取るコードリーダとして構成される前記光学的情報読取装置1は,受光センサ23と制御回路40等のマイクロコンピュータとから構成され”ていることが記載されているといえる。

イ 上記記載事項Bの「情報コードCの読み取りが可能な状態になると、照明光Lfの発光を指示する操作スイッチ42…の入力を受け付け…(中略)…情報コードCに照射された照明光Lfが反射しその反射光Lrが…(中略)…受光センサ23の受光面23aに…(中略)…コード画像が結像され…(中略)…受光センサ23から出力される信号データは…(中略)…情報コードCの画像を含んだ画像データとしてメモリ35内に記憶され」との記載から,引用例1には,“情報コードCの読み取りが可能な状態になると,照明光Lfの発光を指示する操作スイッチ42の入力を受け付け,前記情報コードCに照射された照明光Lfが反射しその反射光Lrが受光センサ23の受光面23aにコード画像として結像され,前記受光センサ23から出力される信号データは,情報コードCの画像を含んだ画像データとしてメモリ35内に記憶され”ることが記載されているといえる。

ウ 上記記載事項Bの「第1の時期…(中略)…における受光センサ23による受光結果に基づいて読取対象の第1画像を生成する…(中略)…第1画像に含まれる情報コードの画像をデコードする」との記載,及び,上記記載事項Cの「画像データ内に含まれる情報コードをデコードする処理…(中略)…デコード処理では、画像データ内に含まれる情報コードの全てのデコードを行…(中略)…画像データ内に2以上の情報コードが含まれる場合にはその複数の情報コードを全てデコードする」との記載から,引用例1には,“第1の時期における受光センサ23による受光結果に基づいて読取対象の第1画像を生成し,前記第1画像に含まれる情報コードの画像をデコードし,前記画像データ内に含まれる情報コードをデコードする処理では,画像データ内に含まれる情報コードの全てのデコードを行い,画像データ内に2以上の情報コードが含まれる場合にはその複数の情報コードを全てデコード”することが記載されているといえる。

エ 上記記載事項Eの「異なる時期に得られた2つの画像(第1画像及び第2画像)を用いて光学的情報読取装置1の操作方向及び操作量を検出した」との記載,及び上記記載事項Dの「第1画像から第2画像に変化する際に、画像中心位置へ接近しようとする領域のポイント値が高くなるように各領域が数値設定され」との記載から,引用例1には,“異なる時期に得られた2つの画像である第1画像及び第2画像を用い,第1画像から第2画像に変化する際に,画像中心位置へ接近しようとする領域のポイント値が高くなるように各領域が数値設定”されることが読み取れる。
また,上記記載事項Dの「情報コード選択処理は…(中略)…取得画像に複数含まれる情報コードの中からいずれかの情報コードを選択する処理である…情報コードの配置領域か否かをポイント値が大きい領域…から順に調べ、よりポイント値が大きい領域に配置される情報コードをデコードすべき情報コードとして選択する」との記載,及び上記認定事項から,引用例1には,“異なる時期に得られた2つの画像である第1画像及び第2画像を用い,第1画像から第2画像に変化する際に,画像中心位置へ接近しようとする領域のポイント値が高くなるように各領域が数値設定し,取得画像に複数含まれる情報コードの中からいずれかの情報コードを選択する情報コード選択処理では,情報コードの配置領域か否かをポイント値が大きい領域から順に調べ,よりポイント値が大きい領域に配置される情報コードをデコードすべき情報コードとして選択”することが記載されているといえる。

オ 上記記載事項Eの「光学的情報読取装置1内に加速度センサを設け、これを「操作方向検出手段」「操作量検出手段」として機能させてもよい」との記載,及び上記記載事項Fの「第1の時期後…に第1加速度センサ71及び第2加速度センサ72から…(中略)…値に基づいて、光学的情報読取装置1の移動方向及び移動量…を検出する…(中略)…第1加速度センサ71の値に基づきX軸方向における単位時間当たりの移動量Lxを算出でき、第2加速度センサ72に基づきY軸方向における単位時間当たりの移動量Lyを算出できるため、これら移動量Lx、Lyから単位時間当たりの全体の移動量Laを求め、これを光学的情報読取装置1の操作量として…用いる」との記載から,引用例1には,“光学的情報読取装置1内に加速度センサを設け,これを操作方向検出手段及び操作量検出手段として機能させてもよく,第1の時期後に第1加速度センサ71及び第2加速度センサ72からの値に基づいて,光学的情報読取装置1の移動方向及び移動量を検出し,第1加速度センサ71の値に基づきX軸方向における単位時間当たりの移動量Lxを算出し,第2加速度センサ72に基づきY軸方向における単位時間当たりの移動量Lyを算出して,これら移動量Lx,Lyから単位時間当たりの全体の移動量Laを求め,これを光学的情報読取装置1の操作量として用いる”ことが記載されているといえる。

カ 以上,上記ア?オより,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「読み取りエリア内に複数の情報コードが含まれる場合に,ユーザが希望する情報コードを迅速かつ的確に特定でき,ひいては読取処理時間を短縮化できる光学的情報読取装置1における方法であって,
バーコードや二次元コードを読み取るコードリーダとして構成される前記光学的情報読取装置1は,受光センサ23と制御回路40等のマイクロコンピュータとから構成され,
情報コードCの読み取りが可能な状態になると,照明光Lfの発光を指示する操作スイッチ42の入力を受け付け,前記情報コードCに照射された照明光Lfが反射しその反射光Lrが受光センサ23の受光面23aにコード画像として結像され,前記受光センサ23から出力される信号データは,情報コードCの画像を含んだ画像データとしてメモリ35内に記憶され,
第1の時期における受光センサ23による受光結果に基づいて読取対象の第1画像を生成し,前記第1画像に含まれる情報コードの画像をデコードし,前記画像データ内に含まれる情報コードをデコードする処理では,画像データ内に含まれる情報コードの全てのデコードを行い,画像データ内に2以上の情報コードが含まれる場合にはその複数の情報コードを全てデコードし,
異なる時期に得られた2つの画像である第1画像及び第2画像を用い,第1画像から第2画像に変化する際に,画像中心位置へ接近しようとする領域のポイント値が高くなるように各領域が数値設定し,取得画像に複数含まれる情報コードの中からいずれかの情報コードを選択する情報コード選択処理では,情報コードの配置領域か否かをポイント値が大きい領域から順に調べ,よりポイント値が大きい領域に配置される情報コードをデコードすべき情報コードとして選択し,
光学的情報読取装置1内に加速度センサを設け,これを操作方向検出手段及び操作量検出手段として機能させてもよく,第1の時期後に第1加速度センサ71及び第2加速度センサ72からの値に基づいて,光学的情報読取装置1の移動方向及び移動量を検出し,第1加速度センサ71の値に基づきX軸方向における単位時間当たりの移動量Lxを算出し,第2加速度センサ72に基づきY軸方向における単位時間当たりの移動量Lyを算出して,これら移動量Lx,Lyから単位時間当たりの全体の移動量Laを求め,これを光学的情報読取装置1の操作量として用いることができる
光学情報読取装置1における方法。」

3 引用例2に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,特開2009-277033号公報(平成21年11月26日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

G 「【0006】
本発明の課題は、光照射によるコード情報読取において、容易且つ効果的に省電力化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明の携帯型コード読取装置は、
加速度を所定周期で検知する加速度検知手段と、
光を照射してコード情報を読み取る読取手段と、
前記コード情報を読み取るアクティブ状態において前記読取手段の光の照射をオンし、所定時間の前記検知された加速度の平均値及び当該平均値を用いた分散値を算出し、当該分散値と所定の設定値とを比較し、その比較結果に応じて、前記アクティブ状態でない状態に遷移した場合に前記読取手段の光の照射をオフする制御手段と、を備える。」

H 「【0087】
以上、本実施の形態によれば、HT1は、アクティブの状態に設定し、レーザスキャナ部20により検知された加速度データGx,Gy,Gzについて、時刻t1?t0、t2?t0間の加速度データの平均値Agx1,Agy1,Agz1,Agx2,Agy2,Agz2を算出し、時刻t1?t0、t2?t0間の加速度Gx,Gy,Gz及び平均値Agx1,Agy1,Agz1,Agx2,Agy2,Agz2から分散値Bg1,Bg2を算出する。そして、HT1は、アクティブの状態においてレーザスキャナ部20のレーザ光及び照準光の照射をオンする。
【0088】
そして、HT1は、アクティブの状態において、分散値Bg1が設定値C1より小さいか否かを判別し、分散値Bg1が設定値C1より小さい場合に、スタンバイ状態としてレーザ光及び照準光の照射をオフする。このため、スキャン動作を行わないスタンバイの状態において、レーザ光及び照準光の照射をオフして、容易且つ効果的にHT1の省電力化を実現できる。特に、スタンバイの状態において、ユーザの不規則な操作に対応してレーザ光及び照準光の照射をオフでき、練習や訓練をしていないユーザに対してもHT1の省電力化を実現できる。特に、HT1が電池駆動であるため、その電池寿命を延ばすことができる。」

4 引用例3に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,特開平9-6891号公報(平成9年1月10日公開。以下,これを「引用例3」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

I 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば2次元データシンボルのようなコード化された情報を読み取るデータシンボル読み取り装置およびデータシンボル読み取りシステムに関する。」

J 「【0041】そして、各予備撮像により検出された2つの黒色パターン像から、一方の黒色パターン像に対する他方の黒色パターン像のずれ量を求め、この黒色パターン像のずれ量および前記各撮像の時間差に基づいて、データシンボル38の移動速度を算出し、この移動速度に基づいて、適正露光量となる適正露光時間および照明の適正光量と、後述する本撮像(本露光)までの待機時間(データシンボル38が、シンボル読み取り領域36内の所定位置、例えば、略中央に到達するまでの時間)とを求め、これらを設定した後、待機時間が経過するまで待機する。」


第6 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「光学的情報読取装置1」は,「バーコードや二次元コードを読み取るコードリーダとして構成される」ものであるから,“スキャナー”と言い得,また,引用発明の「受光センサ23」及び「制御回路40等のマイクロコンピュータ」はそれぞれ,本願発明1の「画像センサ」及び「プロセッサ」に相当するといえることから,引用発明の「光学的情報読取装置1」は,本願発明1の「スキャナー」に相当する。
また,引用発明の「光学的情報読取装置1における方法」と本願発明の「スキャン可能な対象の画像の内部の関心領域(region of interest)の位置を予測する方法」とは,“方法”である点で共通し,当該方法が,“プロセッサおよび画像センサを有するスキャナーを用意するステップ”を含む点で一致する。

イ 引用発明は,「情報コードCの読み取りが可能な状態になると,照明光Lfの発光を指示する操作スイッチ42の入力を受け付け,前記情報コードCに照射された照明光Lfが反射しその反射光Lrが受光センサ23の受光面23aにコード画像として結像され」るものであるところ,当該「情報コードC」,すなわち“スキャン可能な対象”を検知しているといえる。
また,引用発明の「受光センサ23」は,「情報コードCに照射された照明光Lfが反射しその反射光Lrが受光センサ23の受光面23aにコード画像として結像され」るところ,当該「受光センサ23の受光面23a」は,“撮像面”といい得るものであって,これは,「光学的情報読取装置1」の視野方向に対して直行していることが技術常識である。
以上を総合すると,引用発明と本願発明1とは,“視野方向(viewing direction)で,スキャン可能な対象に向かって当該スキャン可能な対象を検知するステップであって,撮像面が前記視野方向と直交する,検知するステップ”を含む点で一致する。

ウ 引用発明は,「受光センサ23による受光結果に基づいて読取対象の第1画像を生成」していることから,上記アの認定を踏まえると,引用発明と本願発明1とは,“前記スキャン可能な対象の画像を前記画像センサによって捕捉するステップ”を含む点で一致する。

エ 引用発明は,「光学的情報読取装置1内に加速度センサを設け,…(中略)…第1加速度センサ71の値に基づきX軸方向における単位時間当たりの移動量Lxを算出し,第2加速度センサ72に基づきY軸方向における単位時間当たりの移動量Lyを算出」するものであるところ,当該「加速度センサ」が設けられる面は,“動きセンサ面”といえる。
そして,引用発明の「受光センサ23の受光面23a」は,上記“動きセンサ面”と平行であることは自明であるから,引用発明と本願発明1とは,下記の点(相違点2)で相違するものの,“前記スキャン可能な対象に相対的な,動きセンサ面内の前記スキャナーの動きを検知するステップであって,前記動きセンサ面が前記撮像面と平行である,検知するステップ”を含む点で一致する。

オ 引用発明は,「光学的情報読取装置1内に加速度センサを設け,これを操作方向検出手段及び操作量検出手段として機能させてもよく,第1の時期後に第1加速度センサ71及び第2加速度センサ72からの値に基づいて,光学的情報読取装置1の移動方向及び移動量を検出し,第1加速度センサ71の値に基づきX軸方向における単位時間当たりの移動量Lxを算出し,第2加速度センサ72に基づきY軸方向における単位時間当たりの移動量Lyを算出して,これら移動量Lx,Lyから単位時間当たりの全体の移動量Laを求め」るものであって,当該「第1加速度センサ71の値に基づきX軸方向における単位時間当たりの移動量Lxを算出」すること,及び「第2加速度センサ72に基づきY軸方向における単位時間当たりの移動量Lyを算出」することは,「光学的情報読取装置1」の“スキャン可能な対象に相対的な速度”を算出しているといい得,「第1加速度センサ71及び第2加速度センサ72からの値に基づいて,光学的情報読取装置1の移動方向」を検出することは,「光学的情報読取装置1」の“前記速度に対応する運動方向”を検出しているといえることから,上記アの認定も踏まえて総合すると,引用発明と本願発明1とは,“前記検知された動きに応じて,前記スキャナーの,前記スキャン可能な対象に相対的な速度,および,前記速度に対応する運動方向を出力するステップ”を含む点で一致する。

カ 引用発明は,「第1の時期における受光センサ23による受光結果に基づいて読取対象の第1画像を生成し,前記第1画像に含まれる情報コードの画像をデコードし,前記画像データ内に含まれる情報コードをデコードする処理では,画像データ内に含まれる情報コードの全てのデコードを行い,画像データ内に2以上の情報コードが含まれる場合にはその複数の情報コードを全てデコード」するものであるとともに,「異なる時期に得られた2つの画像である第1画像及び第2画像を用い,第1画像から第2画像に変化する際に,画像中心位置へ接近しようとする領域のポイント値が高くなるように各領域が数値設定し,取得画像に複数含まれる情報コードの中からいずれかの情報コードを選択する情報コード選択処理では,情報コードの配置領域か否かをポイント値が大きい領域から順に調べ,よりポイント値が大きい領域に配置される情報コードをデコードすべき情報コードとして選択」するものであるから,当該「デコードすべき情報コードとして選択」される「取得画像に複数含まれる情報コードの中」の「情報コード」は,“関心領域”といい得るものである。
そして,引用発明は,「光学的情報読取装置1内に加速度センサを設け,これを操作方向検出手段及び操作量検出手段として機能させてもよ」いものであること,及び上記エの認定事項から総合すると,引用発明と本願発明1とは,“関心領域を,前記捕捉される画像内で,前記速度および前記運動方向に応答して位置決めするステップ”を含む点で一致する。

キ 以上,ア?カの検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
方法であって,
プロセッサおよび画像センサを有するスキャナーを用意するステップと,
視野方向(viewing direction)で,スキャン可能な対象に向かって当該スキャン可能な対象を検知するステップであって,撮像面が前記視野方向と直交する,検知するステップと,
前記スキャン可能な対象の画像を前記画像センサによって捕捉するステップと,
前記スキャン可能な対象に相対的な,動きセンサ面内の前記スキャナーの動きを検知するステップであって,前記動きセンサ面が前記撮像面と平行である,検知するステップと,
前記検知された動きに応じて,前記スキャナーの,前記スキャン可能な対象に相対的な速度,および,前記速度に対応する運動方向を出力するステップと,
関心領域を,前記捕捉される画像内で,前記速度および前記運動方向に応答して位置決めするステップと,
を含む,方法。

〈相違点1〉
本願発明1が,「スキャン可能な対象の画像の内部の関心領域(region of interest)の位置を予測する方法」であるのに対し,引用発明は,「光学的情報読取装置1における方法」である点。

〈相違点2〉
本願発明1が,「前記画像センサに対するゲインおよび露出時間をセットするステップ」を有し,「前記動きが検出されると、前記ゲインを増大すること、または、前記露出時間を低下させることのいずれかを引き起こす」ものであるのに対し,引用発明は,そのようなゲイン及び露出時間のセットについての特定はされていない点。

〈相違点3〉
本願発明1が,「前記捕捉される画像を、前記関心領域を起点として自動的にスキャンするステップ」を有するのに対し,引用発明は,「画像データ内に含まれる情報コードをデコードする処理では,画像データ内に含まれる情報コードの全てのデコードを行い,画像データ内に2以上の情報コードが含まれる場合にはその複数の情報コードを全てデコード」するものであって,関心領域を起点として自動的にスキャンするものではない点。

(2)相違点についての判断
相違点1?3について検討する。
引用発明は,「読み取りエリア内に複数の情報コードが含まれる場合に,ユーザが希望する情報コードを迅速かつ的確に特定でき,ひいては読取処理時間を短縮化できる光学的情報読取装置1における方法」において,当該「複数の情報コード」のデコードに際し,「画像データ内に含まれる情報コードをデコードする処理では,画像データ内に含まれる情報コードの全てのデコードを行い,画像データ内に2以上の情報コードが含まれる場合にはその複数の情報コードを全てデコード」するものであって,当該デコード時には複数ある「情報コード」全てがデコードされるものである。
そして,引用発明と本願発明1とは,上記(1)オに示したとおり,“関心領域を,前記捕捉される画像内で,前記速度および前記運動方向に応答して位置決めする”点で共通するといえるものの,それは,上記全ての「情報コード」がデコードされた後であるから,「スキャン可能な対象の画像の内部の関心領域(region of interest)の位置を予測する」必要性はない。
また,引用発明は,相違点2に係る構成,すなわち「前記画像センサに対するゲインおよび露出時間をセットするステップ」を有していないので,「前記動きが検出されると、前記ゲインを増大すること、または、前記露出時間を低下させることのいずれかを引き起こす」こともなく,このことにより,相違点3に係る構成である,「捕捉される画像を、前記関心領域を起点として自動的にスキャン」する必要性もない。
そして,相違点1及び3に係る構成は,上記第5 3及び4に示した引用例2及び引用例3にも記載が無く,また,本願第1国出願前に周知な技術ともいえないから,その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明,並びに引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2?9について
本願発明2?9は,本願発明1の構成を全て含むものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,並びに引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について

<特許法29条2項について>

審判請求時の補正により,本願発明1?9は,「前記捕捉される画像を、前記関心領域を起点として自動的にスキャンするステップ」という事項を有するものとなったが,上記第6に示したとおり,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1?3(上記第5の引用例1?3)に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-20 
出願番号 特願2015-255926(P2015-255926)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山崎 慎一
山澤 宏
発明の名称 加速度に基づく動き許容および予測符号化  
代理人 宮前 徹  
代理人 山本 修  
代理人 中村 彰吾  
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