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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1377219
審判番号 不服2021-1095  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-27 
確定日 2021-09-07 
事件の表示 特願2016- 18930「回路基板」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 1日出願公開、特開2016-201532、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年2月3日の出願(パリ条約による優先権主張2015年4月8日 韓国)であって、その手続きの経緯は以下のとおりである。
令和 2年 1月14日付け:拒絶理由通知
令和 2年 3月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 5月19日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知
令和 2年 7月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 9月17日付け:令和2年7月2日の手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定
令和 3年 1月27日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年9月17日付け拒絶査定)における拒絶の理由は、次のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1-11
・引用文献等 3-7

引用文献等一覧
3.特開2013-135168号公報
4.特開2005-311182号公報
5.特開2012-253167号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2014-192518号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2011-222579号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は、令和3年1月27日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
上面と下面とを含む柱形状を有し、熱伝導性物質で形成され、前記上面から前記下面まで貫通する機能孔が備えられた熱伝達用構造体が絶縁部に挿入され、
前記絶縁部には、さらに、コア層を含むコア部が備えられ、
前記熱伝達用構造体の表面には、前記熱伝達用構造体と前記絶縁部とが密着するように、プライマー層が備えられ、
前記プライマー層を貫通する第1ビア及び第2ビアが前記熱伝達用構造体の表面に接触し、
前記コア層はグラファイトを含み、前記熱伝達用構造体の側面と接触する、回路基板。
【請求項2】
前記機能孔に絶縁物質が充填された請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記機能孔に充填された絶縁物質は、前記絶縁部と一体になるように形成される請求項2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記熱伝達用構造体の上面に一面が接触する前記第1ビアと、
前記第1ビアの他面に接触する第1金属パターンと、
前記第1金属パターンに接続する第1結合部材と、をさらに含む請求項3に記載の回路基板。
【請求項5】
前記第1結合部材は、第1電子部品に接続可能に設けられ、
前記第1電子部品は、第1領域と、動作の際に前記第1領域よりも温度が高くなる第2領域とを含む請求項4に記載の回路基板。
【請求項6】
前記熱伝達用構造体の少なくとも一部が前記第1電子部品の垂直下方に位置するように形成される請求項5に記載の回路基板。
【請求項7】
前記熱伝達用構造体の下面に一面が接触する前記第2ビアと、
前記第2ビアの他面に接触する第2金属パターンと、
前記第2金属パターンに接続する第2結合部材と、をさらに含み、
前記熱伝達用構造体の熱が前記第2ビア及び前記第2金属パターンを経由して前記第2結合部材に移動する請求項6に記載の回路基板。
【請求項8】
複数の絶縁層と、前記複数の絶縁層に形成される複数の金属層と、前記複数の絶縁層のうちの少なくとも一つの絶縁層を貫通し、前記複数の金属層のうちの少なくとも二つの金属層を接続させる複数のビアと、を含み、
第1領域と、動作の際に前記第1領域よりも温度が高くなる第2領域とを含む第1電子部品に接続可能な複数のパッドが最外層の表面の金属層に形成された回路基板において、
キャビティが備えられ、コア層を含むコア部と、
前記キャビティに少なくとも一部が挿入され、熱伝導性物質で形成された熱伝達用構造体と、
前記熱伝達用構造体及び前記コア部を覆う絶縁層と、を含み、
前記コア層はグラファイトを含み、前記熱伝達用構造体の側面と接触し、
前記熱伝達用構造体は、上面と下面とを含む柱形状を有し、
前記上面から前記下面まで貫通する機能孔が備えられ、前記絶縁層を形成する物質が前記機能孔に充填され、
前記熱伝達用構造体の表面には、前記熱伝達用構造体と前記絶縁層とが密着するように、プライマー層が備えられ、
前記プライマー層を貫通する第1ビア及び第2ビアが形成された、回路基板。
【請求項9】
前記熱伝達用構造体の上面に一面が接触する前記第1ビアと、
前記第1ビアの他面に接触する第1金属パターンと、
前記第1金属パターンに接続する第1結合部材と、をさらに含み、
前記第1結合部材は、前記第1電子部品に接続可能に設けられる請求項8に記載の回路基板。
【請求項10】
前記熱伝達用構造体の下面に一面が接触する前記第2ビアと、
前記第2ビアの他面に接触する第2金属パターンと、
前記第2金属パターンに接続する第2結合部材と、をさらに含み、
前記第1電子部品の熱が前記第1結合部材、前記第1金属パターン、前記第1ビア、前記熱伝達用構造体、第2ビア及び前記第2金属パターンを経由して前記第2結合部材に移動する請求項9に記載の回路基板。
【請求項11】
前記複数のパッドには熱が通過する第1パッド及び電気信号が通過する第2パッドが含まれ、前記第1結合部材は、前記第1パッドに接続可能に形成され、前記第2パッドに接続する導体は、前記熱伝達用構造体に接続しない請求項10に記載の回路基板。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下同様。)
「【0009】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る半田バンプを有するプリント配線板100の断面が図6に示される。そのプリント配線板100では、銅製の放熱ブロック80がコア基板30に内蔵され、該コア基板30の第1面と第2面に1層のビルドアップ層が形成されている。
【0010】
コア基板30は第1の放熱ブロック80を収容するための貫通孔(開口)20を有する絶縁性基材30Mと絶縁性基材の主面(F)に形成されている第1の導体層34Aと絶縁性基材の副面(S)に形成されている第2の導体層34Bを有する。主面と副面は対向する面である。貫通孔(開口)20は絶縁性基材を貫通している。さらに、コア基板は、第1の導体層と第2の導体層とを接続しているスルーホール導体36を有している。コア基板の第1面(FF)は第1導体層の上面でありコア基板の第2面(SS)は第2導体層の上面である。コア基板に形成されている貫通孔20に放熱ブロック80が収容されている。放熱ブロックは主面と主面と反対側の副面を有している。放熱ブロックの主面上にビア導体60Mが接続され、副面上にビア導体60Dが接続されている。」

「【0012】
絶縁性基材30Mの主面Fと第1の導体層と放熱ブロックの主面上に上側のビルドアップ層が形成されている。上側のビルドアップ層は1層であって、絶縁層50Aと絶縁層上の導体層58Aと異なる導体層を接続し絶縁層50Aを貫通するビア導体60A、60Mで形成されている。図6では、ビア導体60Aはコア基板の導体層34Aと絶縁層上の導体層58Aやスルーホール導体と絶縁層上に形成されている導体層58Aを接続している。また、ビア導体(上側の接続ビア導体)60Mは放熱ブロック(放熱ブロック)の主面と導体層58Aを接続している。
【0013】
絶縁性基材30Mの副面Sと第2の導体層と放熱ブロックの副面上に下側のビルドアップ層が形成されている。下側のビルドアップ層は1層であって、絶縁層50Bと絶縁層上の導体層58Bと異なる導体層を接続し絶縁層50Bを貫通するビア導体60B、60Dで形成されている。図6では、ビア導体60Bはコア基板の導体層34Bと絶縁層上の導体層58Bやスルーホール導体と絶縁層上に形成されている導体層58Bを接続している。また、ビア導体(下側の接続ビア導体)60Dは放熱ブロック(放熱ブロック)の副面と導体層58Bを接続している。」

「【0039】
上側のビルドアップ層上に半田バンプ76Uを介してICチップ90がプリント配線板100へ実装される。そして、プリント配線板100がマザーボードに実装される(図7)。」

図6


図7


ここで、段落【0010】に「放熱ブロックは主面と主面と反対側の副面を有している。」の記載を参酌すると、図6より、放熱ブロック80は、主面と主面と反対側の副面を有している柱形状であることが見て取れる。

上記記載より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、引用文献3の記載箇所を示す。)。
「コア基板30にビルドアップ層が形成されているプリント配線板100であって(【0009】)、
コア基板30は放熱ブロック80を収容するための貫通孔20を有する絶縁性基材30Mを有し(【0010】)、
貫通孔20に収容されている銅製の放熱ブロック80は、主面と主面と反対側の副面を有している柱形状であり(【0009】、【0010】、図6)、
絶縁性基材30Mの主面Fと放熱ブロックの主面上に上側のビルドアップ層が形成され、
上側のビルドアップ層は、絶縁層50Aと絶縁層上の導体層58Aと、絶縁層50Aを貫通するビア導体60Mで形成され、
ビア導体60Mは放熱ブロックの主面と導体層58Aを接続しており(【0012】)、
絶縁性基材30Mの主面と対向する副面Sと放熱ブロックの副面上に下側のビルドアップ層が形成され、
下側のビルドアップ層は、絶縁層50Bと絶縁層上の導体層58Bと、絶縁層50Bを貫通するビア導体60Dで形成され、
ビア導体60Dは放熱ブロックの副面と導体層58Bを接続している(【0010】、【0013】)、
プリント配線板100。」

2 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0023】
基板35は、多層配線構造を有したプリント回路板であり、大略すると金属基材42と、樹脂38と、ビア(図示せず)とを有した構成とされている。基板35は、異なる熱膨張係数を有した半導体素子31と実装基板41とを電気的に接続するためのものである。半導体素子31と実装基板41との間は、金属基材42を貫通するビアにより電気的に接続される。」

「【0030】
上記説明したように、金属基材42の半導体素子31が接続される接続領域Aに貫通穴37を形成し、金属基材42の実装基板41が接続される接続領域Bに貫通穴37よりも穴径の大きな貫通穴36を形成して、貫通穴36,37に樹脂38を充填することで、半導体素子31と基板35との間の熱膨張係数の差と、実装基板41と基板35との間の熱膨張係数の差とを小さくして、半導体素子31及び実装基板41が破損することを防止することができる。また、接続領域Aに対応する金属基材42には、例えば、穴径が0.30mmの円筒状の貫通穴36を配設ピッチ1.0で設け、接続領域Bに対応する金属基材42には、穴径が0.75mmの円筒状の貫通穴37を配設ピッチ1.0で設けることができる。」



図2から、樹脂38に覆われた金属基材42で構成された基板35が見て取れる。

以上の記載より、引用文献4には次の事項が記載されている。
・異なる熱膨張係数を有した半導体素子31と実装基板41とを接続するための基板35であって、基板35は樹脂38に覆われた金属基材42で構成されている(【0023】、図2)。
・金属基材42の半導体素子31が接続される接続領域Aに貫通穴37を形成し、金属基材42の実装基板41が接続される接続領域Bに貫通穴37よりも穴径の大きな貫通穴36を形成して、貫通穴36,37に樹脂38を充填することで、半導体素子31と基板35との間の熱膨張係数の差と、実装基板41と基板35との間の熱膨張係数の差とを小さくして、半導体素子31及び実装基板41が破損することを防止する(【0030】)。

上記記載事項より、引用文献4には次の技術が記載されているといえる。
「基板における半導体素子が接続される接続領域、及び基板における実装基板が接続される接続領域において、基板を構成する基材に貫通穴を形成して樹脂を充填することにより、半導体素子と基板との間及び実装基板と基板との間の熱膨張係数の差を小さくして、半導体素子及び実装基板が破損することを防止する技術。」

3 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0045】
[金属ベース材31]
金属ベース材31の材質は、特に限定されるものではないが、アルミニウム、鉄、銅、ステンレス又はこれらの合金が好ましく、特に、放熱性、価格、軽量性及び加工性の面でバランスが取れているという点で、アルミニウムが好ましい。また、金属ベース材31は、熱伝導性絶縁層32との密着性を向上させるため、熱伝導性絶縁層32との接着面に、アルマイト処理、脱脂処理、サンドブラスト、エッチング、各種メッキ処理、カップリング剤などを使用したプライマー処理などの各種表面処理が施されていることが望ましい。」

4 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0023】
2枚の金属板2、3で挟まれた半導体チップ9、ボンディングワイヤ15、ゲート端子14の先端(ボンディングワイヤ15との接続している側)は、プライマ(プライマ層7)で被覆され、その上を樹脂パッケージ12でモールドされている。プライマは、硬い樹脂パッケージ12と金属板2、3や半導体チップ9の間の接合性を高めるために塗布される下地材である。典型的には、樹脂パッケージにはエポキシ系の樹脂が用いられ、プライマには熱硬化ポリイミド系の樹脂が用いられる。プライマ層7は、樹脂パッケージ12を生成する前に、金属板2、3に半導体チップ9がハンダ付けされたアセンブリの全体をプライマの溶液に浸して塗布され、形成される。樹脂パッケージ12は、プライマ層7が形成されたアセンブリを金型に入れ、溶融したエポキシ系の樹脂を射出成形して作られる。樹脂パッケージ12用のエポキシ系樹脂には、剛性を増すために金属フィラーが混合される場合がある。そのような場合、樹脂パッケージ12と金属板等の接合性がさらに低くなるので、プライマ層7の重要性が増す。なお、プライマ層7の厚みは10?20ミクロン程度であり、非常に薄いが、図3ではプライマ層7の厚みをデフォルメして描いてあること留意されたい。」

5 引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0017】
<硬化型熱伝導性組成物の硬化物層> 図1を参照して、硬化型熱伝導性組成物の硬化物層14は、発熱体11a、11b、放熱体13と接する。これらの接触面は、熱抵抗ができる限り小さくなるよう密着している必要がある。これにより、発熱体から生じる熱を効率よく放熱体に伝えることが可能となる。硬化型熱伝導性組成物をプライマーを用いて接着することにより、硬化型熱伝導性組成物の硬化物層と、他構成物との間の熱抵抗を非常に小さくすることが可能である。」

第5 対比、判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「主面と主面と反対側の副面を有している柱形状」である「銅製の放熱ブロック80」は、本願発明1の「上面と下面とを含む柱形状を有し、熱伝導性物質で形成」された「熱伝達用構造体」に相当する。
但し、熱伝達用構造体が、本願発明1は「前記上面から前記下面まで貫通する機能孔が備えられ」ているのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。

イ 引用発明の「放熱ブロック80」は「絶縁性基材30M」の「貫通孔20に収容され」、「放熱ブロックの主面上に」「絶縁層50A」からなる「上側のビルドアップ層が形成され」、「放熱ブロックの副面上に」「絶縁層50B」からなる「下側のビルドアップ層が形成され」ているので、「放熱ブロック」は、「絶縁性基材30M」、「絶縁層50A」及び「絶縁層50B」に取り囲まれている。このことは、「放熱ブロック」が絶縁部に挿入されているともいえる。
そうすると、引用発明において、「放熱ブロック」が、「絶縁性基材30M」、「絶縁層50A」及び「絶縁層50B」に取り囲まれていことは、本願発明1の「熱伝達用構造体が絶縁部に挿入され」ていることに相当する。

ウ 本願明細書の「絶縁部120が3層の絶縁層10、121、121'で構成され、中心部に位置する絶縁層がコア部10である場合が示されている」(段落【0025】)の記載を参酌すると、引用発明の両面に「ビルドアップ層が形成されている」「絶縁性基材30M」は、本願発明1の「前記絶縁部」に備えられた「コア部」に相当する。
但し、コア部について、本願発明1は「コア部が」「コア層を含」み、「前記コア層はグラファイトを含み、前記熱伝達用構造体の側面と接触する」のに対して、引用発明にそのような特定がない点で相違する。

エ 引用発明の「放熱ブロック80」には、絶縁性基材30M、絶縁層50A及び絶縁層50Bとの密着性を高める層は設けられていない。
そうすると、本願発明1は「前記熱伝達用構造体の表面には、前記熱伝達用構造体と前記絶縁部とが密着するように、プライマー層が備えられ」ているのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。

オ 引用発明において「ビア導体60Mは放熱ブロック主面と導体層58Aを接続しており」「ビア導体60Dは放熱ブロックの副面と導体層58Bを接続している」ことは、本願発明1の「第1ビア及び第2ビアが前記熱伝達用構造体の表面に接触」することに相当する。
但し、第1ビア及び第2ビアについて、本願発明1が「前記プライマー層を貫通する」のに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。

カ 引用発明の「プリント配線板100」は「コア基板30にビルドアップ層が形成されている」ので、本願発明1の「コア部が備えられ」た「絶縁部」を有する「回路基板」に相当する。

キ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。
(一致点)
「上面と下面とを含む柱形状を有し、熱伝導性物質で形成された熱伝達用構造体が絶縁部に挿入され、
前記絶縁部にはコア部が備えられ、
第1ビア及び第2ビアが前記熱伝達用構造体の表面に接触する、回路基板。」

(相違点1)
熱伝達用構造体が、本願発明1は「前記上面から前記下面まで貫通する機能孔が備えられ」ているのに対して、引用発明はそのような特定がない点。
(相違点2)
コア部について、本願発明1は「コア部が」「コア層を含」み、「前記コア層はグラファイトを含み、前記熱伝達用構造体の側面と接触する」のに対して、引用発明にそのような特定がない点。
(相違点3)
本願発明1は「前記熱伝達用構造体の表面には、前記熱伝達用構造体と前記絶縁部とが密着するように、プライマー層が備えられ」ているのに対して、引用発明はそのような特定がない点。
(相違点4)
第1ビア及び第2ビアについて、本願発明1が「前記プライマー層を貫通する」のに対して、引用発明はそのような特定がない点。

(2)相違点についての判断
まず、相違点1について検討する。
引用発明の「放熱ブロック80」には、上面から下面まで貫通する孔は存在しない。そして、引用文献3には、放熱ブロック80に孔をあける等の加工を施すことの記載も示唆もないことから、引用発明において、「放熱ブロック80」に上面から下面まで貫通する機能孔を設けることの動機はない。

引用文献4には、基板における半導体素子が接続される接続領域、及び基板における実装基板が接続される接続領域において、基板を構成する基材に貫通穴を形成して樹脂を充填することにより、半導体素子と基板との間及び実装基板と基板との間の熱膨張係数の差を小さくして、半導体素子及び実装基板が破損することを防止する技術が記載されている(上記「第4 2」)。
ここで、引用発明の「プリント配線板100」は、ICチップ90をマザーボードに実装するために、ICチップ90とマザーボードとを接続するためのものである(【0039】、図7)。
そうすると、ICチップ及びマザーボードの熱膨張係数は、一般的に異なるのであるから、ICチップ及びマザーボードが破損することを防止するため引用発明の「プリント配線板100」に、引用文献4に記載された、半導体素子と基板との間及び実装基板と基板との間の熱膨張係数の差を小さくして、破損することを防止する技術の適用を試みることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。
しかしながら、引用発明に上記技術を適用したものは、ICチップ及びマザーボードが破損することを防止するために、プリント配線板100とICチップとの接続領域及びプリント配線板100とマザーボードとの接続領域の全てに渡る領域において、プリント配線板100の基材をなす絶縁性基材30Mに貫通穴を形成して樹脂を充填することによりプリント配線板100の熱膨張係数を調整することになる。よって、絶縁性基材30Mに貫通穴を形成して樹脂を充填することに換えて、「放熱ブロック80」のみに貫通する穴を設けて、上記相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易になしえたこととはいえない。

また、引用文献5ないし7はプライマーについて記載されているが、回路基板の熱伝達用構造体に、上面から下面まで貫通する機能孔を設けることは記載されていない。

したがって、上記相違点1に係る構成は、引用発明、引用文献4ないし7に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献4ないし7に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7も、本願発明1の「前記上面から前記下面まで貫通する機能孔が備えられた熱伝達用構造体」(相違点1に係る構成)を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献4ないし7に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明8ないし11について
本願発明8ないし11も、本願発明1の「前記上面から前記下面まで貫通する機能孔が備えられ」た「熱伝達用構造体」を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献4ないし7に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
本願発明1ないし11は「前記上面から前記下面まで貫通する機能孔が備えられた熱伝達用構造体」を有するものであり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献3ないし7に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-18 
出願番号 特願2016-18930(P2016-18930)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 黒田 久美子  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 畑中 博幸
須原 宏光
発明の名称 回路基板  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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